(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012894
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】経路生成装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/10 20060101AFI20240124BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240124BHJP
B60W 40/02 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
B60W30/10
G08G1/16 C
B60W40/02
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114687
(22)【出願日】2022-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 一貴
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA15
3D241BB37
3D241DC01Z
3D241DC25Z
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181CC24
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】目標経路の頻繁な変化を抑制する。
【解決手段】経路生成装置100は、自車両の周辺領域の物体の位置情報を取得する外部センサ3および周辺認識部11と、位置情報に基づいて自車両の目標経路を生成する経路生成部12と、位置情報に基づいて隣接車線を走行する並走車両から車幅方向所定範囲内のバッファ領域が目標経路に重なるか否かを判定する第1判定部13と、バッファ領域が目標経路に重なると判定されると並走車両から離間する方向に目標経路をオフセットするオフセット部14と、位置情報に基づいて自車両の進行方向所定範囲内に左隣接車線を走行する左並走車両と右隣接車線を走行する右並走車両とが存在するか否かを判定する第2判定部15と、バッファ領域に左並走車両と右並走車両とが存在すると判定されると目標経路のオフセットを禁止するオフセット禁止部16と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の周辺領域の物体の位置情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部により取得された位置情報に基づいて、前記自車両の目標経路を生成する経路生成部と、
前記情報取得部により取得された位置情報に基づいて、前記自車両が走行する自車線に隣接する隣接車線を走行する並走車両から車幅方向所定範囲内のバッファ領域が、前記経路生成部により生成された目標経路に重なるか否かを判定する第1判定部と、
前記第1判定部により前記バッファ領域が前記目標経路に重なると判定されると、前記並走車両から離間する方向に前記目標経路をオフセットするオフセット部と、
前記情報取得部により取得された位置情報に基づいて、前記自車両の進行方向所定範囲内に前記自車線の左側に隣接する左隣接車線を走行する左並走車両と前記自車線の右側に隣接する右隣接車線を走行する右並走車両とが存在するか否かを判定する第2判定部と、
前記第2判定部により前記進行方向所定範囲内に前記左並走車両と前記右並走車両とが存在すると判定されると、前記オフセット部による前記目標経路のオフセットを禁止するオフセット禁止部と、を備えることを特徴とする経路生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の経路生成装置において、
前記オフセット禁止部は、前記第2判定部により前記進行方向所定範囲内に前記左並走車両と前記右並走車両とが存在すると判定された場合、前記第1判定部により前記左並走車両に対応する前記バッファ領域および前記右並走車両に対応する前記バッファ領域のいずれか一方が前記目標経路に重なると判定されると、前記オフセット部による前記目標経路のオフセットを禁止することを特徴とする経路生成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の経路生成装置において、
前記オフセット禁止部は、前記第2判定部により前記進行方向所定範囲内に前記左並走車両と前記右並走車両とが存在すると判定された場合、前記第1判定部により前記左並走車両に対応する前記バッファ領域および前記右並走車両に対応する前記バッファ領域の両方が前記目標経路に重なると判定されると、前記オフセット部による前記目標経路のオフセットを禁止することを特徴とする経路生成装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の経路生成装置において、
前記オフセット禁止部は、前記情報取得部により取得された位置情報に基づいて、車幅方向において前記バッファ領域が前記目標経路を越えた越境量を算出し、算出された前記越境量だけ前記バッファ領域を狭めることで、前記オフセット部による前記目標経路のオフセットを禁止することを特徴とする経路生成装置。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の経路生成装置において、
前記車幅方向所定範囲の長さは、予め定められることを特徴とする経路生成装置。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載の経路生成装置において、
前記進行方向所定範囲の長さは、前記自車両を基準として定められることを特徴とする経路生成装置。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1項に記載の経路生成装置において、
前記並走車両は、前記自車両の前方において前記隣接車線を走行する並走車両と、前記自車両の後方において前記隣接車線を走行する並走車両と、を含むことを特徴とする経路生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動運転機能や運転支援機能を有する車両の目標経路を生成する経路生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、運転支援機能を有する車両の目標経路を生成するようにした装置が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1記載の装置では、先行車および進入車の走行軌跡を取得し、先行車および進入車の走行軌跡のずれ量が所定値以下となる地点以降において進入車の走行軌跡に基づいて自車の目標走行軌跡を設定する。
【0003】
自動運転機能や運転支援機能を有する車両が普及することで、交通社会全体の安全性や利便性が向上し、持続可能な輸送システムを実現することができる。また、輸送の効率性や円滑性が向上することで、CO2排出量が削減され、環境への負荷を軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、隣接車線を走行する並走車両の車幅が大きい場合等は、乗員の不安を軽減するために並走車両から一定の距離をとるように目標経路を生成することが好ましい。しかしながら、このような並走車両が左右両側に存在し、かつ、自車両が並走車両を追い越し、あるいは自車両がこのような並走車両に追い越される走行シーンが連続する場合には、目標経路が頻繁に変化することで、かえって乗員に違和感を与えるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様である経路生成装置は、自車両の周辺領域の物体の位置情報を取得する情報取得部と、情報取得部により取得された位置情報に基づいて、自車両の目標経路を生成する経路生成部と、情報取得部により取得された位置情報に基づいて、自車両が走行する自車線に隣接する隣接車線を走行する並走車両から車幅方向所定範囲内のバッファ領域が、経路生成部により生成された目標経路に重なるか否かを判定する第1判定部と、第1判定部によりバッファ領域が目標経路に重なると判定されると、並走車両から離間する方向に目標経路をオフセットするオフセット部と、情報取得部により取得された位置情報に基づいて、自車両の進行方向所定範囲内に自車線の左側に隣接する左隣接車線を走行する左並走車両と自車線の右側に隣接する右隣接車線を走行する右並走車両とが存在するか否かを判定する第2判定部と、第2判定部により進行方向所定範囲内に左並走車両と右並走車両とが存在すると判定されると、オフセット部による目標経路のオフセットを禁止するオフセット禁止部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、目標経路の頻繁な変化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る経路生成装置の要部構成の一例を概略的に示すブロック図。
【
図2】
図1の経路生成部による基準目標経路の生成について説明するための図。
【
図3】
図1の第1判定部による基準目標経路のオフセット要否判定について説明するための図。
【
図4】並走車両のバッファ領域が基準目標経路に重ならない走行シーンにおける目標経路について説明するための図。
【
図5A】オフセットを禁止しない場合の、左並走車両のバッファ領域が基準目標経路に重なる走行シーンにおける目標経路について説明するための図。
【
図5B】オフセットを禁止する場合の、左並走車両のバッファ領域が基準目標経路に重なる走行シーンにおける目標経路について説明するための図。
【
図6A】オフセットを禁止しない場合の、右並走車両のバッファ領域が基準目標経路に重なる走行シーンにおける目標経路について説明するための図。
【
図6B】オフセットを禁止する場合の、右並走車両のバッファ領域が基準目標経路に重なる走行シーンにおける目標経路について説明するための図。
【
図7A】オフセットを禁止しない場合の、左右両側の並走車両のバッファ領域が基準目標経路に重なる走行シーンにおける目標経路について説明するための図。
【
図7B】オフセットを禁止する場合の、左右両側の並走車両のバッファ領域が基準目標経路に重なる走行シーンにおける目標経路について説明するための図。
【
図8】
図1のECUにより実行される経路生成処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、
図1~
図8を参照して本発明の実施形態について説明する。本発明の実施形態に係る経路生成装置は、自車両の運転者に対する運転支援を行うないし自車両を自動運転するように走行用アクチュエータを制御する運転支援機能を有する車両に適用され、自車両の目標経路(目標走行軌道)を生成する。本実施形態における「運転支援」は、運転者の運転操作を支援する運転支援と、運転者の運転操作によらず車両を自動運転する自動運転とを含み、SAEにより定義されるレベル1~レベル4の自動運転に相当し、「自動運転」は、レベル5の自動運転に相当する。
【0010】
運転支援中ないし自動運転中は、カメラ等による自車両周辺の認識結果に基づいて例えば自車線の中心に沿って目標経路が生成され、生成された目標経路に沿って走行するように自車両の転舵機構が制御される。また、例えば先行車両から一定の距離をとって走行するように駆動機構および制動機構が制御される。この場合、並走車両が隣接車線から自車線に車線変更(カットイン)して先行車両になると、その先行車両から一定の距離をとって走行するように駆動機構および制動機構が制御される。
【0011】
しかしながら、単に自車線の中心に沿った目標経路に沿って走行するように転舵機構が制御されると、並走車両の車幅が大きい場合や並走車両が自車線寄りに走行している場合等に乗員が不安を感じることがある。そこで、本実施形態では、このような自車線近くを走行する並走車両から離間する方向に目標経路をオフセットすることで、先行車両だけでなく並走車両からも一定の距離をとるように経路生成装置を構成する。
【0012】
この場合、自車線近くを走行する並走車両が左右両側に存在し、かつ、自車両が並走車両を追い越し、あるいは自車両がこのような並走車両に追い越される走行シーンが連続すると、目標経路が頻繁に変化することで、かえって乗員に違和感を与えるおそれがある。そこで、本実施形態では、走行シーンに応じて目標経路のオフセットを禁止することで、目標経路の頻繁な変化を抑制することができるよう、以下のように経路生成装置を構成する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る経路生成装置(以下、装置)100の要部構成の一例を概略的に示すブロック図である。
図1に示すように、装置100は、主に電子制御ユニット(ECU)10により構成される。ECU10は、CPU、RAM、ROM、I/Oインタフェース、その他の周辺回路を有するコンピュータを含んで構成される。ECU10は、例えば自車両1に搭載されて自車両1の動作を制御する複数のECU群の一部として構成される。
【0014】
ECU10には、自車両1に搭載された走行用アクチュエータ2と、外部センサ3とが接続される。走行用アクチュエータ2には、自車両1を駆動するエンジンやモータ等の駆動機構、自車両1を制動するブレーキ等の制動機構、自車両1を転舵させるステアリングギア等の転舵機構が含まれる。
【0015】
外部センサ3は、自車両1の周辺領域の物体の位置を含む外部状況を検出する。外部センサ3は、CCDやCMOS等の撮像素子を有し、自車両1の周辺を撮像するカメラを含む。外部センサ3は、自車両1から周辺領域の物体までの距離を検出する距離検出部を含んでもよい。距離検出部は、例えば、ミリ波(電波)を照射し、照射波が物体に当たって戻ってくるまでの時間から、その物体までの距離や方向を測定するミリ波レーダにより構成される。距離検出部は、レーザ光を照射し、照射光が物体に当たって戻ってくるまでの時間から、その物体までの距離や方向を測定するライダ(LiDAR)により構成されてもよい。
【0016】
ECU10は、演算部の機能的構成として、周辺認識部11と、経路生成部12と、第1判定部13と、オフセット部14と、第2判定部15と、オフセット禁止部16と、走行制御部17とを有する。すなわち、ECU10の演算部は、周辺認識部11と、経路生成部12と、第1判定部13と、オフセット部14と、第2判定部15と、オフセット禁止部16と、走行制御部17として機能する。
【0017】
周辺認識部11は、外部センサ3からの信号に基づいて、自車両1の進行方向を中心とする周辺領域の道路上の区画線、縁石、ガードレール等の位置を認識することで、自車両1が走行する自車線LOを認識する。また、自車線LOの左右に隣接する隣接車線LA,LB(左隣接車線LA、右隣接車線LB)を認識する。
【0018】
周辺認識部11は、さらに、自車線LOにおいて自車両1の前方を走行する先行車両、後方を走行する後続車両、および隣接車線LA,LBを走行する並走車両4A,4Bを含む他車両の輪郭の位置を認識することで、他車両を認識する。なお、並走車両4A,4Bは、自車両1の前方において隣接車線LA,LBを走行する並走車両4A,4Bと、自車両1の後方において隣接車線LA,LBを走行する並走車両4A,4Bと、を含む。
【0019】
すなわち、周辺認識部11は、外部センサ3からの信号に基づいて、走行車線および他車両を含む自車両1の周辺領域の物体の位置情報を取得する。換言すると、外部センサ3と周辺認識部11とが、自車両1の周辺領域の物体の位置情報を取得する情報取得部として機能する。
【0020】
図2は、経路生成部12による基準目標経路R1の生成について説明するための図である。経路生成部12は、周辺認識部11による認識結果に基づいて、例えば、自車両1が走行する自車線LOの中心に沿って基準目標経路R1を生成する。一般的な道路形状は、曲率が一定の割合で変化するクロソイド曲線を用いて設計されており、道路形状に対応するクロソイド曲線の一部の区間は、3次関数等の高次関数を用いて近似することができる。二輪モデル等の車両運動モデルを用いて近似してもよい。
【0021】
経路生成部12は、周辺認識部11による認識結果に基づいて自車線LOに対する自車両1の進行方向を特定し、自車両1の現地点を原点O、特定された進行方向をX軸として、自車線LOの中心線を表す3次関数F(X)を導出する。すなわち、最小二乗法等のカーブフィッティング手法を用いて、周辺認識部11により認識された左右の区画線(あるいは縁石、ガードレール等)を近似する下式(i),(ii)の3次関数FL(X),FR(X)を導出する。
FL(X)=C3LX3+C2LX2+C1LX+C0L ・・・(i)
FR(X)=C3RX3+C2RX2+C1RX+C0R ・・・(ii)
【0022】
次いで、左右の区画線に対応する3次関数FL(X),FR(X)に基づいて自車線LOの中心線に対応する下式(iii)の3次関数F(X)を導出し、導出された3次関数F(X)で表される中心線に沿って通常の基準目標経路R1を生成する。
F(X)=C3X3+C2X2+C1X+C0 ・・・(iii)
C3=(C3L+C3R)/2,C2=(C2L+C2R)/2,
C1=(C1L+C1R)/2,C0=(C0L+C0R)/2
【0023】
図3は、第1判定部13による基準目標経路R1のオフセット要否判定について説明するための図である。
図3に示すように、第1判定部13は、周辺認識部11による認識結果に基づいて、並走車両4A,4Bから車幅方向所定範囲内のバッファ領域5が基準目標経路R1に重なるか否かを判定する。換言すると、下式(iv)が成立するか否かを判定する。下式(iv)において、“YA”は周辺認識部11により認識された左並走車両4Aの右端のY座標、“YB”は右並走車両4Bの左端のY座標、“W”は車幅方向所定範囲の長さである。
YB+W≦F(X)≦YA-W ・・・(iv)
【0024】
第1判定部13は、バッファ領域5が基準目標経路R1に重なる(式(iv)が成立しない)と判定すると、乗員の不安を軽減するために基準目標経路R1をオフセットすることが必要であると判定する。第1判定部13による基準目標経路R1のオフセット要否判定に用いられるバッファ領域5の幅、すなわち車幅方向所定範囲の長さWは、熟練運転者による試験の結果に基づいて所定値(例えば、2.0~2.4m程度)に予め定められる。
【0025】
図4~
図7Bは、様々な走行シーンにおける最終的な目標経路について説明するための図である。
図4に示すように、左右いずれの並走車両4A,4Bのバッファ領域5も基準目標経路R1に重ならない走行シーンでは、経路生成部12により生成された基準目標経路R1が、そのまま最終的な目標経路として決定される。
【0026】
一方、
図5Aに示すように、左並走車両4Aのバッファ領域5が基準目標経路R1に重なる走行シーンでは、第1判定部13により基準目標経路R1のオフセットが必要であると判定される。この場合、オフセット部14は、先ず、並走車両4A,4Bの少なくとも一方が区画線を越えて自車線LOにカットインしたか否かを判定し、カットインしていないと判定されるとオフセットを許可する一方、カットインしたと判定されるとオフセットを禁止する。並走車両4A,4Bの少なくとも一方がカットインしたと判定され、オフセット部14による基準目標経路R1のオフセットが禁止されると、経路生成部12により生成された基準目標経路R1が最終的な目標経路として決定される。
【0027】
並走車両4A,4Bのいずれも区画線を越えて自車線LOにカットインしていないと判定されると、オフセット部14による基準目標経路R1のオフセットが許可される。この場合、オフセット部14は、第1判定部13により左並走車両4Aのバッファ領域5が基準目標経路R1に重なると判定されると、左並走車両4Aから離間する方向に基準目標経路R1をオフセットする。より具体的には、左並走車両4Aのバッファ領域5を避けるように基準目標経路R1をオフセットし、オフセット経路R2を生成する。
【0028】
第2判定部15は、周辺認識部11による認識結果に基づいて、自車両1の進行方向所定範囲内に左並走車両4Aと右並走車両4Bとが存在するか否かを判定する(基準目標経路R1のオフセット禁止判定)。第2判定部15は、進行方向所定範囲内に左並走車両4Aと右並走車両4Bとが存在すると判定すると、現在の走行シーンが、基準目標経路R1をオフセットすることで、かえって乗員に違和感を与えるおそれのある走行シーンであると判定する。
【0029】
第2判定部15による基準目標経路R1のオフセット禁止判定に用いられる進行方向所定範囲の長さDは、自車両1を基準として定められる。自車両1から進行方向所定範囲の前端までの長さと、自車両1から進行方向所定範囲の後端までの長さとは、同じ長さに定められてもよく、異なる長さに定められてもよい。進行方向所定範囲の長さDは、自車両1の走行速度、並走車両4A,4Bの走行速度、後続車両の走行速度に応じて補正されてもよく、自車両1が走行中の道路の種別や気象条件等に応じて補正されてもよい。
【0030】
第2判定部15により進行方向所定範囲内に左並走車両4Aと右並走車両4Bとが存在しないと判定されると、オフセット部14により生成されたオフセット経路R2が最終的な目標経路として決定される。
【0031】
一方、第2判定部15により進行方向所定範囲内に左並走車両4Aと右並走車両4Bとが存在すると判定されると、オフセット禁止部16は、
図5Bに示すように、オフセット部14による基準目標経路R1のオフセットを禁止する。より具体的には、車幅方向において左並走車両4Aのバッファ領域5(バッファ領域5の右端)が基準目標経路R1を越えた越境量εa(
図5A)を算出し、算出された越境量εaだけ左並走車両4Aのバッファ領域5を狭めるセットバックを行う。
【0032】
図5Bの例では、左並走車両4Aのバッファ領域5がセットバックされる。この場合、第1判定部13により、下式(v)が成立し、左並走車両4Aのバッファ領域5が基準目標経路R1に重ならないと判定されるため、基準目標経路R1のオフセットが不要であると判定されることで、基準目標経路R1のオフセットが禁止される。この場合、経路生成部12により生成された基準目標経路R1が最終的な目標経路として決定される。
YB+W≦F(X)≦YA-W+εa ・・・(v)
【0033】
図6Aに示すように、右並走車両4Bのバッファ領域5が基準目標経路R1に重なる走行シーン(カットインなし)でも、第1判定部13により基準目標経路R1のオフセットが必要であると判定され、オフセット部14によりオフセット経路R2が生成される。そして、第2判定部15により進行方向所定範囲内に左並走車両4Aと右並走車両4Bとが存在すると判定されると、
図6Bに示すように、オフセット禁止部16により越境量εb(
図6A)が算出され、右並走車両4Bのバッファ領域5がセットバックされる。この場合、第1判定部13により、下式(vi)が成立し、右並走車両4Bのバッファ領域5が基準目標経路R1に重ならないと判定されるため、基準目標経路R1のオフセットが不要であると判定されることで、基準目標経路R1のオフセットが禁止される。この場合も、経路生成部12により生成された基準目標経路R1が最終的な目標経路として決定される。
YB+W-εb≦F(X)≦YA-W ・・・(vi)
【0034】
図7Aに示すように、左右両方の並走車両4A,4Bのバッファ領域5が基準目標経路R1に重なる走行シーン(カットインなし)でも、第1判定部13により基準目標経路R1のオフセットが必要であると判定され、オフセット部14によりオフセット経路R2が生成される。そして、第2判定部15により進行方向所定範囲内に左並走車両4Aと右並走車両4Bとが存在すると判定されると、
図7Bに示すように、オフセット禁止部16により越境量εa,εb(
図7A)が算出され、左右両方のバッファ領域5がセットバックされる。この場合、第1判定部13により、下式(vi)が成立し、左右のバッファ領域5のいずれも基準目標経路R1に重ならないと判定されるため、基準目標経路R1のオフセットが不要であると判定されることで、基準目標経路R1のオフセットが禁止される。この場合も、経路生成部12により生成された基準目標経路R1が最終的な目標経路として決定される。
YB+W-εb≦F(X)≦YA-W+εa ・・・(vii)
【0035】
走行制御部17は、最終的に決定された目標経路に沿って自車両1が走行するように、走行用アクチュエータ2を制御する。これにより、自車両1が並走車両4A,4Bを追い越し、あるいは自車両1が並走車両4A,4Bに追い越される走行シーンが連続する場合でも、目標経路の頻繁な変化が抑制されるため、円滑な車両挙動を実現することができる。なお、並走車両4A,4Bが自車線LOにカットインして先行車両になった場合は、その先行車両から一定の距離をとって自車線LO中央(基準目標経路R1上)を走行するように駆動機構および制動機構が制御されるため、円滑な車両挙動を実現することができる。
【0036】
図8は、ECU10により実行される経路生成処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、例えば、自車両1が始動してECU10が起動されると開始され、ECU10の処理周期に対応する所定周期で繰り返し実行される。
【0037】
図8に示すように、経路生成処理では、先ずステップS1で、外部センサ3からの信号に基づいて自車線LOが認識され、認識結果に基づいて基準目標経路R1が生成される。次いでステップS2で、並走車両4A,4Bの少なくとも一方が区画線を越えて自車線LOにカットインしたか否かが判定される。ステップS2で否定されるとステップS3に進み、肯定されるとステップS4に進む。ステップS3では、外部センサ3からの信号に基づいて左右の並走車両4A,4Bおよびそれらに対応するバッファ領域5が認識され、認識結果に基づいて各バッファ領域5がステップS1で生成された基準目標経路R1に重なるか否かが判定される。ステップS3で否定されると、ステップS4に進み、ステップS1で生成された基準目標経路R1が最終的な目標経路として決定される。
【0038】
一方、ステップS3で肯定されると、ステップS5に進み、ステップS1で生成された基準目標経路R1がバッファ領域5を避けるようにオフセットされ、オフセット経路R2が生成される。次いでステップS6で、自車両1の進行方向所定範囲内に左並走車両4Aと右並走車両4Bとが存在するか否かが判定される。ステップS6で否定されると、ステップS7に進み、ステップS5で生成されたオフセット経路R2が最終的な目標経路として決定される。
【0039】
一方、ステップS6で肯定されると、ステップS8に進み、左右のバッファ領域5の越境量εa,εbが算出される。次いで
【0040】
ステップS9で、ステップS3で認識されたバッファ領域5がステップS8で算出された越境量εa,εbだけセットバックされ、ステップS3に戻る。この場合、ステップS3で否定され、ステップS4で基準目標経路R1が最終的な目標経路として決定される。
【0041】
このように、並走車両4A,4Bのバッファ領域5が基準目標経路R1に重なる走行シーンでは並走車両4A,4Bから離間する方向に基準目標経路R1がオフセットされるため(ステップS3,S5,S7)、乗員の不安を軽減可能な経路を生成することができる。また、進行方向所定範囲内に左並走車両4Aと右並走車両4Bとが存在する走行シーンでは基準目標経路R1のオフセットが禁止されるため(ステップS6~S9,S3~S4)、オフセットにより、かえって乗員に違和感を与えることを防止することができる。
【0042】
また、車幅方向においてバッファ領域5が基準目標経路R1を越えた越境量εだけバッファ領域5をセットバックすることでオフセットを禁止するため(ステップS8~S9)、円滑に基準目標経路R1のオフセットを禁止することができる。すなわち、バッファ領域5が基準目標経路R1に重なるか否かの判定結果に基づいて基準目標経路R1をオフセットするか否かを決定する基本の処理パターン(S1~S5)を維持したまま、円滑に基準目標経路R1のオフセットを禁止することができる。
【0043】
本実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)装置100は、自車両1の周辺領域の物体の位置情報を取得する外部センサ3および周辺認識部11と、外部センサ3および周辺認識部11により取得された位置情報に基づいて、自車両1の基準目標経路R1を生成する経路生成部12と、外部センサ3および周辺認識部11により取得された位置情報に基づいて、自車両1が走行する自車線LOに隣接する隣接車線LA,LBを走行する並走車両4A,4Bから車幅方向所定範囲内のバッファ領域5が、経路生成部12により生成された基準目標経路R1に重なるか否かを判定する第1判定部13と、第1判定部13によりバッファ領域5が目標経路に重なると判定されると、並走車両4A,4Bから離間する方向に基準目標経路R1をオフセットするオフセット部14と、外部センサ3および周辺認識部11により取得された位置情報に基づいて、自車両1の進行方向所定範囲内に自車線LOの左側に隣接する左隣接車線LAを走行する左並走車両4Aと自車線LOの右側に隣接する右隣接車線LBを走行する右並走車両4Bとが存在するか否かを判定する第2判定部15と、第2判定部15により進行方向所定範囲内に左並走車両4Aと右並走車両4Bとが存在すると判定されると、オフセット部14による基準目標経路R1のオフセットを禁止するオフセット禁止部16と、を備える(
図1)。
【0044】
左右の隣接車線LA,LBに並走車両4A,4Bが存在する場合には、自車両1がいずれかの並走車両4A,4Bを追い越し、あるいは自車両1がいずれかの並走車両4A,4Bに追い越される走行シーンが連続することがある。この場合、車幅の大きい並走車両4A,4Bや自車線LO寄りに走行する並走車両4A,4Bが自車両1の前方に現れるたびに基準目標経路R1をオフセットすると、目標経路が頻繁に変化することで、かえって乗員に違和感を与えるおそれがある。
【0045】
左右両方の並走車両4A,4Bが存在する場合は基準目標経路R1のオフセットを禁止することで、並走車両を追い越し、並走車両に追い越される走行シーンが連続する場合でも、目標経路の頻繁な変化を抑制し、円滑な車両挙動を実現することができる。また、並走車両4A,4Bが自車線LOにカットインして先行車両になった場合は、その先行車両から一定の距離をとって自車線LO中央(基準目標経路R1上)を走行するように駆動機構および制動機構が制御されるため、円滑な車両挙動を実現することができる。
【0046】
(2)オフセット禁止部16は、第2判定部15により進行方向所定範囲内に左並走車両4Aと右並走車両4Bとが存在すると判定された場合、第1判定部13により左並走車両4Aに対応するバッファ領域5および右並走車両4Bに対応するバッファ領域5のいずれか一方が基準目標経路R1に重なると判定されると、オフセット部14による基準目標経路R1のオフセットを禁止する(
図5B、
図6B)。
【0047】
(3)オフセット禁止部16は、第2判定部15により進行方向所定範囲内に左並走車両4Aと右並走車両4Bとが存在すると判定された場合、第1判定部13により左並走車両4Aに対応するバッファ領域5および右並走車両4Bに対応するバッファ領域5の両方が基準目標経路R1に重なると判定されると、オフセット部14による基準目標経路R1のオフセットを禁止する(
図7B)。
【0048】
(4)オフセット禁止部16は、外部センサ3および周辺認識部11により取得された位置情報に基づいて、車幅方向においてバッファ領域5が基準目標経路R1を越えた越境量εを算出し、算出された越境量εだけバッファ領域5を狭めることで、オフセット部14による基準目標経路R1のオフセットを禁止する(
図5B、
図6B、
図7B)。この場合、バッファ領域5が基準目標経路R1に重なるか否かの判定結果に基づいて基準目標経路R1をオフセットするか否かを決定する基本の処理パターンを維持したまま、円滑に基準目標経路R1のオフセットを禁止することができる。
【0049】
(5)車幅方向所定範囲の長さWは、予め定められる。例えば、熟練運転者による試験の結果に基づいて予め定められる。これにより、並走車両4A,4Bとの距離に応じ、適切な走行シーンで基準目標経路R1をオフセットすることができる。
【0050】
(6)進行方向所定範囲の長さDは、自車両1を基準として定められる。例えば、自車両1の走行速度、並走車両4A,4Bの走行速度、後続車両の走行速度、自車両1が走行中の道路の種別や気象条件等に応じ、自車両1を基準として定められる。
【0051】
(7)並走車両4A,4Bは、自車両1の前方において隣接車線LA,LBを走行する並走車両4A,4Bと、自車両1の後方において隣接車線LA,LBを走行する並走車両4A,4Bと、を含む。
【0052】
上記実施形態では、周辺認識部11が外部センサ3からの信号に基づいて走行車線および他車両を含む自車両1の周辺領域の物体の位置情報を取得する例を説明したが、自車両の周辺領域の物体の位置情報を取得する情報取得部は、このようなものに限らない。例えば、他車両やインフラ設備、クラウドサーバ等とのV2X(Vehicle-to-Everything)通信を介して自車両の周辺領域の物体の位置情報を取得してもよい。
【0053】
上記実施形態では、経路生成部12が自車線LOの中心線に沿って基準目標経路R1を生成する例を説明したが、自車両の目標経路を生成する経路生成部は、このようなものに限らない。例えば、運転者の好みに応じて変更可能な設定値、あるいは運転者の走行履歴に基づく学習値に基づいて、中心線よりも道路の外側に寄った基準目標経路R1を生成してもよい。自車線LOの曲率半径に応じて中心線よりも旋回方向内側に寄った基準目標経路R1を生成してもよい。
【0054】
上記実施形態では、オフセット禁止部16がバッファ領域5をセットバックすることでオフセットを禁止する例を説明したが、オフセット禁止部は、左右両方の並走車両4A,4Bが存在すると判定されるとオフセットを禁止するものであればよい。例えば、左右両方の並走車両4A,4Bが存在すると判定されると、オフセット前の基準目標経路R1を最終的な目標経路として決定する(
図8のS6で肯定されるとS4に進む)ことでオフセットを禁止するものでもよい。
【0055】
上記実施形態では、装置100が走行制御部17を備える例を説明したが、経路生成装置は、このようなものに限らない。例えば、最終的に決定された目標経路を車両前方の道路に重畳して表示するようにヘッドアップディスプレイ等の表示部を制御する表示制御部を備えるものでもよい。
【0056】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能であり、変形例同士を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 自車両、2 走行用アクチュエータ、3 外部センサ、4A,4B 並走車両、5 バッファ領域、10 電子制御ユニット(ECU)、11 周辺認識部、12 経路生成部、13 第1判定部、14 オフセット部、15 第2判定部、16 オフセット禁止部、17 走行制御部、100 経路生成装置(装置)