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特開2024-128949透明ヒーター用基材およびそれを用いた透明ヒーター
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128949
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】透明ヒーター用基材およびそれを用いた透明ヒーター
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/84 20060101AFI20240913BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20240913BHJP
   G02B 1/11 20150101ALI20240913BHJP
   G02B 1/118 20150101ALI20240913BHJP
   H05B 3/06 20060101ALI20240913BHJP
   H05B 3/10 20060101ALI20240913BHJP
   H05B 3/16 20060101ALI20240913BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20240913BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
H05B3/84
G02B5/22
G02B1/11
G02B1/118
H05B3/06 B
H05B3/10 B
H05B3/16
B32B7/027
B32B27/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024026216
(22)【出願日】2024-02-26
(31)【優先権主張番号】P 2023037299
(32)【優先日】2023-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】日比野 利保
(72)【発明者】
【氏名】三井 博子
【テーマコード(参考)】
2H148
2K009
3K034
3K092
4F100
【Fターム(参考)】
2H148CA12
2H148CA14
2H148CA17
2K009AA01
2K009AA02
3K034AA02
3K034AA04
3K034AA06
3K034AA15
3K034AA16
3K034BA08
3K034BB05
3K034BB08
3K034BB14
3K034JA10
3K092PP15
3K092QA03
3K092QB43
3K092RF03
3K092RF12
3K092RF14
3K092RF22
4F100AA37
4F100AB24
4F100AB24B
4F100AH08B
4F100AR00B
4F100AR00C
4F100AR00D
4F100AR00E
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100CA13C
4F100DC11
4F100DC11B
4F100DD07E
4F100DE04
4F100GB48
4F100JD10
4F100JD10C
4F100JD10E
4F100JG01
4F100JG01B
4F100JG04
4F100JG04D
4F100JJ06B
4F100JK06
4F100JL09
4F100JL10
4F100JL10C
4F100JM01
4F100JN01A
4F100JN06E
4F100JN18E
4F100YY00B
4F100YY00E
(57)【要約】
【課題】赤外線入射角によらず赤外線の反射を抑制することができる透明ヒーター用基材を提供すること。
【解決手段】透明基材上に、導電性細線を含む発熱用導電体を有し、導電性細線上に、黒色顔料および/または赤外線吸収顔料を含有する着色層を有する、透明ヒーター用基材。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材上に、導電性細線を含む発熱用導電体を有し、導電性細線上に、黒色顔料および/または赤外線吸収顔料を含有する着色層を有する、透明ヒーター用基材。
【請求項2】
さらに絶縁層を有する、請求項1記載の透明ヒーター用基材。
【請求項3】
絶縁層上に、さらに波長400~700nmにおける透過率が10%未満であり、波長900~2,000nmにおける透過率が70%以上である赤外線透過層を有する、請求項2記載の透明ヒーター用基材。
【請求項4】
絶縁層上に、さらに反射防止層を有する請求項2または3記載の透明ヒーター用基材。
【請求項5】
前記反射防止層の波長900~2,000nmにおける屈折率が1.20~1.48である、請求項4記載の透明ヒーター用基材。
【請求項6】
前記反射防止層がモスアイ構造を有する、請求項4記載の透明ヒーター用基材。
【請求項7】
前記導電性細線が銀および有機成分を含有し、銀の含有量が50~90体積%である、請求項1記載の透明ヒーター用基材。
【請求項8】
請求項1記載の透明ヒーター用基材を具備する、透明ヒーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明基材上に発熱用導電体および着色層を有する透明ヒーター用基材とそれを用いた透明ヒーターに関する。
【背景技術】
【0002】
電圧の印加により発熱する発熱板は、車両のフロントウィンドウやリアウィンドウなどに用いられている。視認性に優れた発熱板として、一対のガラスと、電圧を印加される一対のバスバーと、一対のバスバーの間を線状に延びて連結する複数の主導電性細線と、隣り合う二つの主導電性細線の間を連結する連結導電性細線とを含む発熱用導電体と、を備える、発熱板が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、氷雪の付着や表面の曇りを抑制するシート状ヒーターとして、平面状の導電体を含むヒーターエレメント層と、前記ヒーターエレメント層の表面側に設けられた少なくとも1つの表面側層と、を備え、前記表面側層の最表層の放射率が0.7以下である、シート状ヒーターが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-112105号公報
【特許文献2】特開2021-132009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、車載カメラや車載表示装置、防犯カメラなどにおいても、カバーガラスの結露や曇りを防止するために、電圧の印加により発熱する発熱用導電体を有する透明ヒーターが用いられている。赤外線センサーに用いられるヒーターには、光源から発射される赤外線の反射によるセンシング精度の低下を抑制するために、赤外線の反射を抑制することが求められている。特に、赤外線の入射角によらず反射率を抑えることで、センサーの視野角を広げることができる。しかしながら、特許文献1~2に開示された発熱体やシート状ヒーターをかかる赤外線センサー用のヒーターに適用すると、導電性細線や導電体により赤外線を反射する課題や、かかる反射が、赤外線の入射角に依存して変化する課題があった。
【0005】
本発明は、係る従来技術の課題に鑑み、赤外線入射角によらず赤外線の反射を抑制することができる透明ヒーター用基材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、主として以下の構成を有する。
(1)透明基材上に、導電性細線を含む発熱用導電体を有し、導電性細線上に、黒色顔料および/または赤外線吸収顔料を含有する着色層を有する、透明ヒーター用基材。
(2)さらに絶縁層を有する、(1)記載の透明ヒーター用基材。
(3)絶縁層上に、さらに波長400~700nmにおける透過率が10%未満であり、波長900~2,000nmにおける透過率が70%以上である赤外線透過層を有する、(2)記載の透明ヒーター用基材。
(4)絶縁層上に、さらに反射防止層を有する(2)または(3)記載の透明ヒーター用基材。
(5)前記反射防止層の波長900~2,000nmにおける屈折率が1.20~1.48である、(4)記載の透明ヒーター用基材。
(6)前記反射防止層がモスアイ構造を有する、(4)または(5)記載の透明ヒーター用基材。
(7)前記導電性細線が銀および有機成分を含有し、銀の含有量が50~90体積%である、(1)~(6)のいずれか記載の透明ヒーター用基材。
(8)(1)~(7)のいずれか記載の透明ヒーター用基材を具備する、透明ヒーター。
【発明の効果】
【0007】
本発明の透明ヒーター用基材は、赤外線入射角によらず赤外線の反射を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の透明ヒーター用基材の一態様を模式的に表した断面図である。
図2】本発明の透明ヒーター用基材の別の一態様を模式的に表した断面図である。
図3】本発明の透明ヒーター用基材の別の一態様を模式的に表した断面図である。
図4】本発明の透明ヒーター用基材の別の一態様を模式的に表した断面図である。
図5】本発明の透明ヒーター用基材に含まれる発熱用導電体のパターンの一態様を模式的に表した図である。
図6図1に記載の本発明の透明ヒーター用基材の一態様の上面図である。
図7】実施例において用いた導電性細線形成用フォトマスクのパターンを表した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の透明ヒーター用基材は、透明基材上に、導電性細線を含む発熱用導電体を有し、導電性細線上に、黒色顔料および/または赤外線吸収顔料を含有する着色層を有する。透明基材は、赤外線を透過するとともに、発熱用導電体を保護する作用を有する。発熱用導電体は、電圧の印加により導電性細線に電流が流れることにより発熱し、透明ヒーターの熱源となる。導電性細線上の着色層は、導電性細線による赤外線の反射を抑制することができる。さらに、絶縁層を有してもよく、導電性細線を外気や水分から保護し、発熱用導電体の腐食を抑制し、耐湿熱性を向上させることができる。また、発熱用導電体を面内で均一に発熱させることができる。絶縁層を有する場合、絶縁層上に、さらに赤外線透過層や反射防止層を有することが好ましい。赤外線透過層により、可視光を遮光して赤外線センサーを目立たなくすることができるため、意匠性を向上させることができる。反射防止層により、絶縁層による赤外線の反射を抑制することができる。
【0010】
図1に、本発明の透明ヒーター用基材の一態様を模式的に表した断面図を示す。透明基材1上に、導電性細線2Aおよびバスバー電極2Bを含む発熱用導電体2を有し、導電性細線2A上に着色層3を有する。図2~4に、本発明の透明ヒーター用基材の別の一態様を模式的に表した断面図を示す。図2に示す透明ヒーター用基材は、透明基材1上に、導電性細線2Aおよびバスバー電極2Bを含む発熱用導電体2を有し、導電性細線2A上に着色層3を有し、導電性細線2Aと着色層3を覆う絶縁層4を有する。図3に示す透明ヒーター用基材は、透明基材1上に、導電性細線2Aおよびバスバー電極2Bを含む発熱用導電体2を有し、導電性細線2A上に着色層3を有し、導電性細線2Aと着色層3を覆う絶縁層4上に、さらに反射防止層5を有する。図4に示す透明ヒーター用基材は、透明基材1上に、導電性細線2Aおよびバスバー電極2Bを含む発熱用導電体2を有し、導電性細線2A上に着色層3を有し、導電性細線2Aと着色層3を覆う絶縁層4上に、赤外線透過層6と、さらにその上に反射防止層5を有する。
【0011】
なお、本発明における「透明」とは、波長400~2,000nmにおける透過率を1nm刻みに測定したときの最小値が70%以上であることを指す。
【0012】
各層について説明する。
【0013】
(透明基材)
透明基材としては、例えば、ソーダガラス、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス等のガラスからなるガラス基板などの無機材料からなる基材や、エポキシ基板、ポリエーテルイミド樹脂基板、ポリエーテルケトン樹脂基板、ポリサルフォン系樹脂基板、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム等の有機材料からなる基材などが挙げられる。これらの中でも、有機材料からなる基材は、軽量で、曲面や異形面への貼り合わせが容易である点で好ましい。透明基材は、SiO層などのブロック層を有してもよい。ブロック層を有することにより、透明基材中の不純物の他層への拡散を抑制することができる。
【0014】
透明基材は、表面処理が施されたものであってもよい。表面処理方法としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、UVオゾン処理等が挙げられる。後述する製造方法において、導電性細線を含む発熱用導電体の形成における現像残渣を抑制する観点からは、コロナ放電処理やプラズマ処理が好ましく、プラズマ処理がより好ましい。一方、装置の簡便性の観点からは、コロナ放電処理やUVオゾン処理が好ましく、UVオゾン処理がより好ましい。
【0015】
(発熱用導電体)
発熱用導電体は、導電性細線を含む。導電性細線を含むことにより、赤外線を透過しつつ、電圧の印加により導通して発熱するため、透明ヒーター用基材全体としての透明性を担保することができる。発熱用導電体は、外部電極と接続するための端子電極をさらに含んでもよい。
【0016】
導電性細線を形成する導電体としては、例えば、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、ビスマス(Bi)、鉛(Pb)、亜鉛(Zn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)等の金属などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの中でも、導電性の観点から、銀、銅、アルミニウムが好ましく、銀がより好ましい。これらは導電性に優れることから、導電性細線の面積をより小さくして、赤外線反射率をより低減することができる。また、これらの導電体は、スパッタや真空蒸着などの真空工程で成膜した薄膜を、レジストを用いたウェットエッチング法によりパターン形成してもよいし、上記導電体を含む導電性粒子と有機成分を複合した導電性組成物を印刷法やフォトリソグラフィー法でパターン形成してもよい。
【0017】
パターン形成に用いられる導電性組成物において、導電性粒子の1次粒子径は、導電性を向上させる観点から、10nm以上が好ましく、微細なパターンを形成する観点から、60nm以下が好ましい。一方、導電性粒子の1次粒子径は、表面活性を低減し、導電性粒子の安定性を向上させる観点から、100nm以上が好ましい。この場合も、微細なパターンを形成する観点から、1μm以下が好ましい。1次粒子径100nm以上の導電性粒子は、後述する被覆層を有しない場合でも安定性が高く、導電性粒子同士または導電性粒子と有機成分との反応を抑制することができることから、後述するキュア工程において被覆層を除去するための高温処理を要しないため、透明基材として有機材料からなる基材を用いる場合など、低温での硬化が求められる場合にも適用することができる。ここで、導電性粒子の1次粒子径とは、走査型電子顕微鏡を用いて無作為に選択した100個の1次粒子の粒子径の平均値により算出することができる。それぞれの1次粒子の粒子径は、1次粒子における長径と短径を測定し、その平均値から算出することができる。
【0018】
パターン形成に用いられる導電性組成物が1次粒子径10~60nmの導電性粒子および有機成分を含有する場合、導電性粒子は、その表面の少なくとも一部に被覆層を有することが好ましい。導電性粒子の表面の少なくとも一部に被覆層を有することにより、導電性粒子の表面活性を低減し、導電性粒子同士または導電性粒子と有機成分との反応を抑制することができる。導電性粒子の表面は、被覆層により完全に被覆されていることが好ましい。
【0019】
被覆層は、炭素を含むことがより好ましい。炭素を含むことにより、導電性粒子の分散性をより向上させることができる。
【0020】
導電性粒子表面に炭素を含む被覆層を形成する方法としては、例えば、熱プラズマ法により導電性粒子を作製する際に、反応性ガスと接触させる方法(特開2007-138287号公報)などが挙げられる。
【0021】
被覆層の平均厚みは、0.1~10nmが好ましい。この範囲であれば、導電性粒子同士の融着を抑制し、より微細なパターンを形成することができる。また、200~350℃の温度で熱処理することにより、被覆層を除去して所望の導電性を発現することができる。
【0022】
導電性細線は、前記金属などの導電体とともに、有機成分として、感光剤の光硬化物を含有することが好ましい。感光剤を含有する導電性組成物から、フォトリソグラフィーによりパターン加工して得られる導電性細線は、感光剤の光硬化物を含有する。
【0023】
さらに必要に応じて、樹脂、多官能モノマー、硬化剤、紫外線(UV)吸収剤、重合禁止剤、密着改良剤、溶剤、界面活性剤、溶解抑止剤、安定剤、消泡剤、酸化防止剤等の添加剤や、それらの光硬化物を含有することもできる。
【0024】
導電性細線における銀の含有量は、導電性を向上させる観点から、50体積%以上が好ましい。一方、導電性粒子の含有量は、パターン加工性を向上させる観点から、90体積%以下が好ましい。
【0025】
導電性細線は、有機化合物を10~50体積%含有することが好ましい。有機化合物を10体積%以上含有することにより、導電性細線の密着性を向上させることができる。一方、有機化合物を50体積%以下含有することにより、導電性細線の導電性を向上させることができる。
【0026】
導電性細線の線幅は、導電性を向上させる観点から、0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、1μm以上がさらに好ましい。一方、導電性細線の線幅は、赤外線透過率をより向上させ、赤外線反射率をより低減する観点から、10μm以下が好ましく、7μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましい。
【0027】
導電性細線は、隣接する細線同士が他の細線により連結された網目構造を有することが好ましい。網目構造を有することにより、発熱用導電体を面内で均一に発熱させることができる。
【0028】
導電性細線の厚みは、導電性を向上させる観点から、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上がさらに好ましい。一方、赤外線透過率を向上させる観点から、5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましく、1μm以下がさらに好ましい。なお、導電性細線の厚みは、透明ヒーター用基材の断面観察により求めることができる。より具体的には、透明ヒーター用基材の導電性細線が形成された部分を、ダイアモンドペンを用いて破断する。電界効果型走査型電子顕微鏡FE-SEM(例えば、S-4800、日立ハイテック社製)を用いて、加速電圧3.0kV、倍率15,000倍の条件で、破断面から無作為に選択した3箇所を撮像し、各撮像からそれぞれ無作為に選択した1箇所について、導電性細線の厚みを測定し、その平均値を導電性細線の厚みとする。
【0029】
(着色層)
着色層は、黒色顔料および/または赤外線吸収顔料を含有する。着色層が赤外線を吸収することにより、光線入射角によらず赤外線の反射を抑制することができる。ここでいう黒色顔料とは、波長400~2,000nmの全域にわたって吸収を有する顔料または複数の顔料の組み合わせを指す。また、赤外線吸収顔料とは、波長800~2,000nmの範囲に特定の吸収を有する顔料を指す。着色層は、赤外線の反射をより抑制する観点から、複数の黒色顔料や赤外線吸収顔料を組み合わせてもよい。
【0030】
黒色顔料としては、例えば、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ピランスロン系顔料、ジオキサジン系顔料、チオインジゴ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、キノフタロン系顔料、スレン系顔料、インドリン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ベンゾフラノン系顔料、ペリレン系顔料、アニリン系顔料、アゾ系顔料、アゾメチン系顔料、縮合アゾ系顔料、カーボンブラック、金属錯体系顔料、金属窒化物、レーキ顔料、トナー顔料、蛍光顔料などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの中でも、耐熱性の観点から、アントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ピランスロン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ベンゾフラノン系顔料、ペリレン系顔料、縮合アゾ系顔料、カーボンブラックや、チタン、ジルコニウム、銅などの金属の窒化物が好ましく、より広域に吸収を有するカーボンブラック、窒化チタンがより好ましい。
【0031】
カーボンブラックとしては、例えば、チャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ランプブラックが挙げられる。
【0032】
赤外線吸収顔料としては、例えば、シアニン化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、インモニウム化合物、ピロロピロ-ル化合物、スクアリリウム化合物、クロコニウム化合物等が挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの中でも、シアニン化合物、ピロロピロ-ル化合物、スクアリリウム化合物が好ましい。
【0033】
着色層は、黒色顔料および/または赤外線吸収顔料に加えて、感光剤の光反応物を含有することが好ましい。感光剤を含有する着色樹脂組成物から、フォトリソグラフィーによりパターン加工して得られる着色層は、感光剤の光反応物を含有する。感光剤としては、例えば、キノンジアジド化合物、オキシムエステル化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、ビイミダゾール化合物などが挙げられる。これらの感光剤を選択することにより、ポジ型またはネガ型のフォトリソグラフィーが可能である。導電性細線の上に位置精度よく着色層を形成するためには、微細加工性に優れたポジ型のフォトリソグラフィーが好ましく、この場合、感光剤としては、キノンジアジド化合物が好ましい。さらに必要に応じて、樹脂、架橋剤、硬化促進剤、UV吸収剤、重合禁止剤、密着改良剤、溶剤、界面活性剤、溶解抑止剤、安定剤、消泡剤、酸化防止剤等の添加剤や、それらの光硬化物を含有することもできる。
【0034】
着色層の厚みは、赤外線反射率をより低減する観点から、0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましい。一方、着色層の厚みは、赤外線透過率を向上させる観点から、3μm以下が好ましく、1μm以下がさらに好ましい。なお、導電性細線上の着色層の厚みは、導電性細線の厚みと同様のFE-SEM観察により測定することができる。
【0035】
(絶縁層)
本発明における絶縁層とは、体積抵抗率が1.0×1015Ω・m以上、吸水率が1%未満である層であって、前述の着色層を除く層を指す。体積抵抗率がかかる範囲であることにより、電流のリークが少なく、発熱用導電体を面内で均一に発熱させることができる。また、吸水率がかかる範囲であることにより、外気や水分による導電性細線の腐食を抑制し、耐湿熱性を向上させることができる。
【0036】
ここで、体積抵抗率は、表面抵抗測定機(例えば、“ロレスタ(登録商標)”-FP;三菱油化(株)製)により測定される表面抵抗率ρs(Ω/□)と、絶縁層の厚みt(cm)との積から算出することができる。
【0037】
吸水率は、絶縁層を吸水させた後に熱重量測定することにより算出することができる。より具体的には、絶縁層を、スパチュラを用いて削りとり、シャーレに移し、水を張ったデシケーター中で24時間保管することで絶縁層に吸水する。その後熱重量分析装置(例えば、TGA-50;(株)島津製作所製)により50℃で60分間加熱しながら重量を測定し、加熱前後の重量変化から吸水率を測定することができる。
【0038】
絶縁層を、透明基材/発熱用導電体間に有してもよいし、発熱用導電体よび着色層を覆うように有してもよい。透明基材/発熱用導電体間の絶縁層は、発熱用導電体の下地として、密着性を向上させることができる。
【0039】
絶縁層としては、例えば、SiO等の無機材料を含む層や、樹脂を含有する絶縁性組成物の硬化物からなる層などが挙げられる。これらの中でも、曲げ耐性を向上させる観点から、樹脂を含有する絶縁性組成物の硬化物からなる層が好ましい。
【0040】
絶縁層は、芳香環を有する樹脂を含有することが好ましく、耐湿熱性をより向上させることができる。芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環、ビフェニル環、アントラセン環、ピレン環などが挙げられる。これらを2種以上有してもよい。これらの中でも、多環構造を有する芳香環がより好ましく、ナフタレン環、フルオレン環、アントラセン環、ピレン環がより好ましい。これらの芳香環は、置換基を有してもよい。
【0041】
絶縁層は、感光剤の光硬化物を含有することが好ましい。感光剤を含有する絶縁性樹脂組成物から、フォトリソグラフィーによりパターン加工して得られる絶縁層は、感光剤の光硬化物を含有する。
【0042】
さらに必要に応じて、多官能モノマー、硬化剤、UV吸収剤、重合禁止剤、密着改良剤、溶剤、界面活性剤、溶解抑止剤、安定剤、消泡剤、酸化防止剤等の添加剤や、それらの光硬化物を含有することもできる。
【0043】
絶縁層の厚みは、耐湿熱性をより向上させる観点から、0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましい。一方、絶縁層の厚みは、透明性および曲げ耐性を向上させる観点から、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましい。なお、絶縁層の厚みは、導電性細線の厚みと同様のFE-SEM観察により測定することができる。
【0044】
(赤外線透過層)
本発明における赤外線透過層とは、波長400~700nmにおける透過率が10%未満であり、波長900~2,000nmにおける透過率が70%以上である層であって、前述の着色層および絶縁層を除く層を指す。ここで、波長400~700nmにおける透過率が10%を未満であるとは、かかる波長範囲で透過率を1nm刻みに測定したときの最大値が10%未満であることを指し、波長900~2,000nmにおける透過率が70%以上であるとは、かかる波長範囲で透過率を1nm刻みに測定したときの最小値が70%を以上であることを指す。波長400~700nmの可視光の透過率が低いことにより、可視光を遮光して赤外線センサーを目立たなくすることができるため、意匠性を向上させることができる。また、赤外線の透過率が高いことにより、赤外線センサーの感度を向上させることができる。このような赤外線透過層としては、例えば、国際公開2019/230684号に記載の近赤外線透過遮光膜などが挙げられる。
【0045】
赤外線透過層の厚みは、可視光の透過率をより低減する点から、0.1μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましい。一方、赤外線透過層の厚みは、赤外線の透過率を向上させる観点から、10μm以下が好ましく、5μm以下がさらに好ましい。なお、赤外線透過層の厚みは、導電性細線と同様のFE-SEM観察により測定することができる。
【0046】
(反射防止層)
本発明における反射防止層とは、波長900~2,000nmの透過率の最小値が90%以上であり、かつ後述する方法で測定した5°入射の表面反射率が2%未満である層であって、前述の着色層、絶縁層および赤外線透過層を除く層を指す。
【0047】
表面反射率は、反射防止層の測定試料面に対する垂直方向に対して入射角5°で、波長900~2,000nmの範囲で反射率を1nm刻みに反射率を測定したときの最大値を指す。他の層の影響を排除するために、透明基材上に部分的に反射防止層を形成し、反射防止層を形成していない面に黒色テープを貼り合わせた積層体に対して、反射防止層を形成した面側から、測定試料面に対する垂直方向に対して入射角5°で、波長900~2,000nmの範囲で反射率を1nm刻みに測定し、その最大値を算出する。黒色テープとしては、例えば、“カットエース(登録商標)”(つや消し黒、光洋化学(株)製)やタフジョイテープ(黒色粘着性ポリエチレン絶縁テープ、ネクロス電工(株)製)などが挙げられる。
【0048】
反射防止層は、透明基材よりも屈折率が低いことが好ましく、空気との屈折率差を小さくすることにより、赤外線の反射をより抑制することができる。反射防止層の屈折率は、赤外線の反射をより抑制する観点から、1.20~1.48が好ましい。低屈折率の反射防止層は、例えば、特開2007-119744号公報に記載の硬化膜や、特開2010-215746号公報に記載の塗料組成物を塗布・乾燥して得られる反射防止フィルムなどが挙げられる。なお、反射防止層の屈折率は、温度:23℃、波長:1320nmにおける屈折率を指し、プリズムカプラー(例えば、モデル2010/M(メトリコン社製)を用いて測定することができる。
【0049】
反射防止層は、モスアイ構造を有することが好ましい。モスアイ構造を有することにより、入射角によらず赤外線の反射をより抑制することができる。モスアイ構造を有する反射防止層としては、例えば、特開2016-122163号公報に記載の光学フィルムや特開2018-124595号公報に記載の反射防止構造体などが挙げられる。
【0050】
本発明の透明ヒーター用基材は、波長900~2,000nmにおいて、測定試料面に対する垂直方向に対して入射角5°で1nm刻みに測定した反射率の最大値が、9%未満であることが好ましく、赤外線入射角によらず赤外線の反射をより抑制することができる。かかる反射率の最大値は、6%未満がより好ましい。また、波長900~2,000nmにおいて、測定試料面に対する垂直方向に対して入射角0°で1nm刻みに測定した透過率の最小値が80%以上であることが好ましく、赤外線センサーの感度を向上させることができる。かかる透過率の最小値は、90%以上がより好ましい。透明ヒーター用基材の透過率や反射率を上記範囲にする手段としては、例えば、導電性細線上に、前述の着色層を形成することや、導電性細線の線幅を細くすることなどが挙げられる。
【0051】
(透明ヒーター用基材の製造方法)
次に、本発明の透明ヒーター用基材の製造方法について説明する。本発明の透明ヒーター用基材の製造方法は、基材上に少なくとも発熱用導電体を形成する工程、着色層を形成する工程を含むことが好ましい。さらに必要に応じて、絶縁層、赤外線透過層、反射防止層を形成する工程を含んでもよい。
【0052】
まず、透明基材上に、導電性細線を含む発熱用導電体を形成する。発熱用導電体は、例えば、前述の導電性粒子を含む金属薄膜を、フォトレジストを用いたウェットエッチング法によりパターン形成する方法や、前述の導電性粒子と有機成分および/またはその硬化前の成分を含む導電性組成物を用いてフォトリソグラフィーによりパターン形成する方法などにより形成することができる。ウェットエッチング法によりパターン形成する場合、金属スパッタや蒸着などにより、透明基材全面に導電体を形成する工程、フォトレジストを導電体上に塗布し、乾燥する工程、露光・現像によりフォトレジストをパターン加工する工程、ウェットエッチング法により発熱用導電体を構成する導電性細線パターンを形成する工程、フォトレジストを除去する工程を有することが好ましい。また、フォトリソグラフィーによりパターン形成する場合、導電性組成物を基材上に塗布する塗布工程、塗布膜を乾燥するプリベーク工程、プリベーク膜を露光および現像して導電性細線のパターンを形成する工程(露光工程および現像工程)、得られた導電性細線のパターンをキュアするキュア工程を有することが好ましい。
【0053】
塗布工程において導電性組成物を基材上に塗布する方法としては、例えば、スピンコーター、バーコーター、ブレードコーター、ロールコーター、ダイコーター、カレンダーコーター、メニスカスコーターを用いた塗布、スクリーン印刷、スプレー塗布、ディップコートなどが挙げられる。
【0054】
プリベーク工程およびキュア工程における乾燥方法としては、例えば、加熱乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、赤外線照射などが挙げられる。加熱乾燥装置としては、例えば、ホットプレート、熱風乾燥機(オーブン)などが挙げられる。
【0055】
プリベーク工程の温度および時間は、導電性組成物の組成や、乾燥する塗布膜の膜厚によって適宜設定することができる。加熱温度は50~150℃が好ましく、加熱時間は10秒間~30分間が好ましい。
【0056】
露光工程において用いる光源としては、例えば、水銀灯のj線、i線、h線、g線などが好ましい。露光に用いるフォトマスクとしては、ソーダガラス製または石英製ガラスが好ましい。図5に、本発明の透明ヒーター用基材に含まれる発熱用導電体のパターンの一態様の模式図を示す。透明基材1上の発熱用導電体2は、網目状の導電性細線2Aとそれに接続する一対のバスバー電極2Bを有する。
【0057】
現像工程において用いる現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機アルカリ類;エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド類;トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール等のアルコールアミン類等の有機アルカリ類などのアルカリ性物質を水に溶解したアルカリ水溶液が挙げられる。これらに、水溶性有機溶剤や界面活性剤などを適宜添加してもよい。水溶性有機溶剤としては、例えば、エタノール、γ-ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。界面活性剤としては、例えば、非イオン系界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤の添加量は、現像液中0.01~1質量%が好ましい。
【0058】
キュア工程の雰囲気、温度および時間は、導電性組成物の組成や、乾燥する塗布膜の膜厚によって適宜設定することができるが、空気中でキュアすることが好ましい。導電性粒子が被覆層を有する場合、加熱温度は200~260℃が好ましく、加熱時間は30~90分間が好ましい。導電性粒子が被覆層を有さず、好ましくは1次粒子径が100nm以上である場合は、加熱温度は120~180℃が好ましく、加熱時間は30~90分間が好ましい。
【0059】
次に、形成した導電性細線を含む発熱用導電体上に、着色層を形成する。このとき、外部接続用の引き出し電極上の着色層を除去することが好ましい。この部分を予め精密に除去しておくことにより、後の外部電極との接続を容易にすることができる。
【0060】
着色層は、例えば、黒色顔料および/または赤外線吸収顔料を、導電性細線上に電着塗装により堆積させる方法、黒色顔料および/または赤外線吸収顔料を含有する着色樹脂組成物を用いてフォトリソグラフィーによりパターン形成する方法などにより形成することができる。これらの中でも、顔料の選択性が広いことから、黒色顔料および/または赤外線吸収顔料を含有する着色樹脂組成物を用いてフォトリソグラフィーによりパターン形成する方法が好ましい。フォトリソグラフィーによりパターン形成する場合、黒色顔料および/または赤外線吸収顔料を含有する着色樹脂組成物を、発熱用導電体を有する透明基材上に塗布する塗布工程、塗布膜を乾燥するプリベーク工程、プリベーク膜を露光および現像してパターンを形成する工程(露光工程、現像工程)、得られたパターンをキュアするキュア工程を有することが好ましい。
【0061】
塗布工程およびプリベーク工程としては、発熱用導電体の形成における塗布工程およびプリベーク工程と同様の工程が挙げられる。
【0062】
露光工程は、引き出し電極以外のエリアを遮光して引き出し電極を露光する工程、着色樹脂組成物を形成していない透明基板の裏面側から基板全面を露光する工程の2つの工程に分けられる。光源としては、発熱用導電体の形成における光源が挙げられる。
【0063】
現像工程およびキュア工程としては、発熱用導電体の形成における現像工程およびキュア工程と同様の工程が挙げられる。
【0064】
絶縁層を形成する工程としては、SiO等の無機材料の場合、例えば、スパッタや蒸着などの真空プロセスが挙げられる。また、絶縁性組成物の硬化物の場合、例えば、前述の樹脂を含有する絶縁性樹脂組成物を塗布する塗布工程、塗布膜を乾燥するプリベーク工程、プリベーク膜を露光および現像してパターンを形成する工程(露光工程、現像工程)、得られたパターンをキュアするキュア工程を含むことが好ましい。各工程としては、発熱用導電体の形成における各工程と同様の工程が挙げられる。
【0065】
反射防止層を形成する方法としては、例えば、フィルム形態の反射防止層を貼り合わせる方法、スパッタや蒸着などの真空プロセスにより無機材料かからなる層を形成する方法、反射防止層を構成する材料を含む樹脂組成物を塗布する塗布工程、塗布膜を乾燥するプリベーク工程、プリベーク膜を露光および現像してパターンを形成する工程(露光工程、現像工程)、得られたパターンをキュアするキュア工程を含む方法などが挙げられる。フィルム形態の反射防止層を貼り合わせる場合、粘着層を介して、透明基材上の発熱用導電体および着色層と同じ側の面に反射防止層を貼合することが好ましい。反射防止層を構成する材料を含む樹脂組成物から反射防止層を形成する場合、各工程としては、発熱用導電体の形成における各工程と同様の工程が挙げられる。
【0066】
赤外線透過層を形成する方法としては、例えば、国際公開2019/230684号に記載の着色樹脂組成物を塗布する塗布工程、塗布膜を乾燥するプリベーク工程、プリベーク膜を露光および現像してパターンを形成する工程(露光工程、現像工程)、得られたパターンをキュアするキュア工程を含む方法が挙げられる。各工程としては、発熱用導電体の形成における各工程と同様の工程が挙げられる。
【0067】
本発明によれば、赤外線入射角によらず赤外線の反射を抑制することができる透明ヒーター用基材を提供することができる。
【0068】
本発明の透明ヒーターは、前述の透明ヒーター用基材を備える。さらに、制御回路および透明ヒーター用基材と制御回路を接続するフレキシブルプリント回路基板(FPC)を備えることが好ましい。
【0069】
本発明の透明ヒーターは、例えば、前述の透明ヒーター用基材の発熱用導電体の引き出し電極部に、異方性導電膜(ACF)を介して、制御回路と接続したFPCを装着することにより、製造することができる。
【実施例0070】
以下、本発明の実施例について説明する。まず、実施例および比較例で用いた材料について説明する。
(透明基材)
無アルカリガラスOA-11(波長400~2,000nmにおける透過率を1nm刻みに測定したときの最小値:92%、日本電気硝子(株)製)
PETフィルム“ルミラー(登録商標)”U40(波長400~2,000nmにおける透過率を1nm刻みに測定したときの最小値:91%、東レ(株)製)
(導電性粒子)
表面被覆層の平均厚みが1nmで、1次粒子径が50nmのナノ銀粒子:Ag-T11S(日清エンジニアリング(株)製)
1次粒子径が500nmのマイクロ銀粒子:AG-STR-257(DOWAエレクトロニクス(株))
(着色剤)
カーボンブラック:MA100(三菱化学(株)製)
窒化チタン:TiN(日清エンジニアリング(株)製)
(赤外線透過剤)
ビスベンゾフラン系顔料:“Irgaphor(登録商標)” Black S0100CF(BASF(株)製)
(樹脂)
アクリル樹脂A:メタクリル酸ジシクロペンタニル/メタクリル酸/スチレン=10/44/46(モル%)からなる共重合体のカルボキシル基に対して、0.15当量のグリシジルメタクリレートを付加反応させたもの(ベンゼン環含有、重量平均分子量(Mw):13,600)
カルド樹脂B:V-259ME(新日鉄住金化学(株)製)
フェノールノボラック樹脂C:WR-101(DIC(株)製)
(感光剤)
光重合開始剤:NCI-831((株)ADEKA製)
光重合開始剤:HABI-101(常州強力電子新材料有限公司製)
光重合開始剤:OXE-01(BASF(株)製)
キノンジアジド化合物:TDF-517(ダイトーケミックス(株)製)
(その他の成分)
多官能モノマー:PE-4A(共栄社化学(株)製)
多官能モノマー:DPHA(日本化薬(株)製)
多官能モノマー:TMPA(共栄社化学(株)製)
多官能モノマー:M-315(東亜合成(株)製)
シランカップリング剤:KBM-503(信越化学工業(株)製)
シランカップリング剤:KBM5103(信越化学工業(株)製)
金属キレート化合物:AL-A(a)(川研ファインケミカル(株)製)
エポキシ化合物:PG-100(大阪ガスケミカル(株)製)
分散剤:“BYK(登録商標)”-LP21116(ビックケミー社製)
分散剤:“BYK”-2200(ビックケミー社製)
界面活性剤:“BYK”-333(ビックケミー社製)
(溶剤)
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(三協化学(株)製)
DPM:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(東邦化学工業(株)製)
AcAc:アセチルアセトン(東京化成(株)製)
DMIB:ジメチルイソブチルアミド(三菱ガス化学(株)製)
KYM:“キョーワノール(登録商標)”M(KHネオケム(株)製)
(反射防止フィルム)
AR-1:モスアイ構造を有する反射防止フィルム(ME2-M1000、デクセリアルズ(株)製)
(導電性細線形成用フォトマスク)
図7に示すバスバー電極部7およびメッシュ状の導電性細線部8の開口部として下記に示す開口部を有するソーダガラス製フォトマスクを用いた。下記のいずれのフォトマスクにおいても、バスバー電極部7は、短辺が2mmで長辺が150mmであり、バスバー間の距離は170mmである。
フォトマスクM1の導電性細線部:開口幅6μm、メッシュピッチ500μm
フォトマスクM2の導電性細線部:開口幅6μm、メッシュピッチ200μm
フォトマスクM3の導電性細線部:開口幅3μm、メッシュピッチ500μm
フォトマスクM4の導電性細線部:開口幅3μm、メッシュピッチ200μm
フォトマスクM5の導電性細線部:開口幅12μm、メッシュピッチ500μm。
【0071】
(製造例1:導電性組成物(A-1)の調製)
導電性粒子Ag-T11Sを30.00g、2-エチルヘキサン酸(東京化成(株)製)を0.90g、アクリル樹脂Aを4.98g、PGMEAを41.86g、DPMを41.86g秤量し、ホモジナイザーを用いて、1,200rpmの条件で30分間混合処理を施し、さらに、高圧湿式メディアレス微粒化装置“ナノマイザー(登録商標)”(ナノマイザー(株))を用いて分散して、固形分濃度30.00質量%の銀粒子分散液を得た。得られた銀粒子分散液のうち59.80gを秤量し、NCI-831を0.16g、HABI-101を0.08g、PE-4Aを1.20g、KBM-503を0.60g、AL-A(a)の5質量%AcAc溶液を0.4g、DPMを15.07g、PGMEAを21.47gおよびAcAcを1.22g添加し、室温で撹拌混合し、導電性組成物(A-1)を得た。
【0072】
(製造例2:導電性組成物(A-2)の調製)
導電性粒子Ag-T11Sを33.00g、2-エチルヘキサン酸(東京化成(株)製)を0.33g、アクリル樹脂Aを1.49g、DMIBを40.63g、DPMを40.63g秤量し、ホモジナイザーを用いて、1,200rpmの条件で30分間混合処理を施し、さらに、高圧湿式メディアレス微粒化装置“ナノマイザー(登録商標)”(ナノマイザー(株))を用いて分散して、固形分濃度30.00質量%の銀粒子分散液を得た。得られた分散液のうち58.04gを秤量し、アクリル樹脂Aを0.53g、NCI-831を0.20g、HABI-101を0.04g、PE-4Aを1.20g、KBM-503を0.60g、AL-A(a)の5質量%AcAc溶液を0.40g、DMIBを14.09g、DPMを7.69g、PGMEAを16.00gおよびAcAcを1.22g添加し、室温で撹拌混合し、導電性組成物(A-2)を得た。
【0073】
(製造例3:導電性組成物(A-3)の調製)
導電性粒子Ag-T11Sを36.00g、2-エチルヘキサン酸(東京化成(株)製)を0.18g、アクリル樹脂Aを1.08g、DMIBを43.47g、DPMを43.47g秤量し、ホモジナイザーを用いて、1,200rpmの条件で30分間混合処理を施し、さらに、高圧湿式メディアレス微粒化装置“ナノマイザー(登録商標)”(ナノマイザー(株))を用いて分散して、固形分濃度30.00質量%の銀粒子分散液を得た。得られた分散液のうち62.10gを秤量し、NCI-831を0.20g、HABI-101を0.04g、PE-4Aを0.84g、KBM-503を0.27g、AL-A(a)の5質量%AcAc溶液を0.10g、DMIBを12.67g、DPMを6.27g、PGMEAを16.00gおよびAcAcを1.22g添加し、室温で撹拌混合し、導電性組成物(A-3)を得た。
【0074】
(製造例4:導電性組成物(A-4)の調製)
100mLクリーンボトルに、アクリル樹脂Aを13.47g、M-315を2.56g、OXE-01を1.02g、KYMを25.00g秤量し、自転-公転真空ミキサー“あわとり錬太郎(登録商標)”ARE-310((株)シンキー製)を用いて混合して、42.05gの樹脂溶液を得た。
【0075】
得られた樹脂溶液を42.05g、AG-STR-257を57.96g混合し、3本ローラーミルEXAKT M-50(EXAKT社製)を用いて混練し、導電性組成物(A-4)を得た。
【0076】
(製造例5:着色樹脂組成物(B-1)の調製)
100mLクリーンボトルに、フェノールノボラック樹脂Cを3.09g、TDF-517を0.77g、PGMEAを40.14g入れ、自転-公転真空ミキサー“あわとり練太郎(登録商標)”ARE-310((株)シンキー製)を用いて混合して、44.0gの樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液を44.0g、MA-100を0.6g、カルド樹脂Bを0.18g、“BYK”-LP21116を0.36gおよびPGMEAを4.86g混合し、0.05mmφジルコニアビーズ(東レ(株)製)を70体積%充填した遠心分離セパレーターを具備した、ウルトラアペックスミル(寿工業(株)製)を用いて混練し、50.0gの着色樹脂組成物(B-1)を得た。
【0077】
(製造例6:着色樹脂組成物(B-2)の調製)
MA-100にかえて窒化チタンを0.6g、“BYK”-LP21116にかえて“BYK”-2200を0.36g用いたこと以外は製造例5と同様にして、50.0gの着色樹脂組成物(B-2)を得た。
【0078】
(製造例7:絶縁性樹脂組成物(C-1)の調製)
クリーンボトルに、アクリル樹脂Aを15.0g、TMPAを5.0g、PG-100を4.8g、OXE-01を0.2gおよびPGMEAを75.0g添加し、1時間撹拌して絶縁性樹脂組成物(C-1)を得た。
【0079】
(製造例8:赤外線透過着色樹脂組成物(D-1)の調製)
ビスベンゾフラノン系顔料“Irgaphor” Black S0100CFを120g、アクリル樹脂AのPGMEA40質量%溶液を171g、“BYK”-2200を20gおよびPGMEAを689gタンクに仕込み、ホモミキサーを用いて20分間撹拌し、予備分散液を得た。ビーズ径0.30mmφのジルコニアビーズを75体積%充填した遠心分離セパレーターを具備した寿工業(株)製分散機ウルトラアペックスミルUAM015に、得られた予備分散液を供給し、回転速度12m/sで20分間分散処理を行った。続いて、分散処理後の液を、ビーズ径0.05mmφのジルコニアビーズを75体積%充填したウルトラアペックスミルUAM015に供給し、回転速度8m/sで90分間分散処理を行い、顔料分散液を得た。
【0080】
得られた顔料分散液27.08gに、アクリル樹脂Aを29.83g、DPHAを8.74g、KBM5103を0.4g、“BYK”-333のPGMEA10質量%溶液0.3gを33.65gのPGMEAに溶解した溶液を添加して、赤外線透過着色樹脂組成物(D-1)を得た。
【0081】
次に、実施例および比較例で行った評価方法について説明する。
【0082】
(1)膜厚
各実施例および比較例において形成した層の膜厚は、電子顕微鏡FE-SEM(S-4800、日立ハイテック社製)を用いて観察した破断面の撮像から測定した。各実施例および各比較例により得られた透明ヒーター用基材のうち、各層が形成されている部分を、ダイアモンドペンを用いて破断し、電界効果型走査型電子顕微鏡FE-SEM(S-4800、日立ハイテック社製)を用いて、加速電圧3.0kV、倍率15,000倍の条件で、破断面から無作為に選択した3箇所を撮像した。各撮像からそれぞれ無作為に選択した1箇所について、各層の厚みを測定し、その平均値を各層の厚みとした。
【0083】
(2)発熱用導電体の導電性細線の線幅
各実施例および比較例において形成した発熱用導電体の導電性細線から無作為に選択した3箇所について、デジタルマイクロスコープ(「VHX-5000」(商品名、(株)キーエンス製))を用いて線幅を測定し、その平均値を発熱用導電体の導電性細線の線幅とした。
【0084】
(3)導電性細線中の銀粒子の体積分率
実施例1において形成した発熱用導電体の一部を、スパチュラを用いて削り、その重量を測定した。その後、熱重量分析装置(TGA-50;(株)島津製作所製)内で、600℃で60分間加熱し、残存有機成分をすべて除去し、加熱後のサンプル重量を測定した。加熱前のサンプル重量と加熱後のサンプル重量の差から導電性細線中に含まれる有機成分の重量を算出し、有機成分の重量比と銀粒子の重量比を算出した。銀粒子の密度を10、有機成分の密度を1.1として、銀粒子の体積分率を算出した。
【0085】
(4)絶縁層(C-1)および下地絶縁層(S-1)の体積抵抗率および吸水率
実施例3~4、6~14において形成された絶縁層(C-1)および実施例10~12において形成された下地絶縁層(S-1)のそれぞれの体積抵抗率および吸水率を測定するため、製造例7により得られた絶縁性樹脂組成物を用いて、ITO付きガラス基板(ITO厚み100nm、ジオマテック社製)上に、実施例3における絶縁層形成、実施例10における下地絶縁層形成と、それぞれ同様にしてプリベーク膜を作製した。パラレルライトマスクアライナーを用いて、超高圧水銀灯を光源とし、プリベーク膜を全面露光した後、実施例3、実施例10における絶縁層形成と同様に現像し、リンスし、キュアして、絶縁層、下地絶縁層をそれぞれ形成した。前述の方法により測定した膜厚は、絶縁層が2.5μm、下地絶縁層が1.0μmであった。
【0086】
得られた絶縁層および下地絶縁層について、表面抵抗測定機(“ハイレスタ(登録商標)”-UX;日東精工アナリテック(株)製)を用いて表面抵抗率ρs(Ω/□)を測定し、絶縁層の膜厚(m)を乗算して体積抵抗率(Ω・m)を算出した。
【0087】
また、得られた絶縁層および下地絶縁層それぞれ一部を、スパチュラを用いて削り、シャーレに移した。シャーレを、水を張ったデシケーターに入れ23℃で24時間保管し、絶縁層および下地絶縁層に吸水させた。その後、熱重量分析装置(TGA-50;(株)島津製作所製)により50℃で60分間加熱しながら重量を測定し、加熱前後の重量変化から吸水率を測定した。
【0088】
(5)赤外線透過層(D-1)の透過率および吸水率
実施例5~14において形成された赤外線透過層(D-1)の透過率および吸水率を測定するため、製造例8により得られた赤外線透過着色樹脂組成物を用いて、10cm角の無アルカリガラスOA-11上に、実施例5における赤外線透過層形成と同様にしてプリベーク膜を作製した。パラレルライトマスクアライナーを用いて、超高圧水銀灯を光源とし、プリベーク膜を全面露光した後、実施例5における赤外線透過層形成と同様にして現像し、リンスし、キュアして、赤外線透過層を形成した。
【0089】
得られた赤外線透過層について、分光光度計V-670(ARMN733付属、JASCO製)を用いて、波長400~800nmにおける透過率を1nm刻みで測定し、その平均値を求めた。このとき、測定試料面に対する垂直方向に対して、入射角0°として測定した。また、分光光度計V-670(ARMN733付属、JASCO製)を用いて、波長900~2,000nmにおける透過率を1nm刻みで測定し、その最小値を求めた。このとき、測定試料面に対する垂直方向に対して、入射角0°として測定した。
【0090】
その後、得られた赤外線透過層の一部を、スパチュラを用いて削り、(4)に記載の絶縁層(C-1)および下地絶縁層(S-1)の吸水率の測定と同様に吸水率を測定した。
【0091】
(6)反射防止層(AR-1)の透過率および表面反射率
実施例2、4、6~14において形成された反射防止層(AR-1)の表面反射率を測定するため、5cm角の無アルカリガラスOA-11上に反射防止フィルムAR-1を貼り合わせ、分光光度計V-670(ARMN733付属、JASCO製)を用いて、波長400~800nmにおける透過率を1nm刻みで測定し、その平均値を求めた。このとき、測定試料面に対する垂直方向に対して、入射角0°として測定した。また、分光光度計V-670(ARMN733付属、JASCO製)を用いて、波長900~2,000nmにおける透過率を1nm刻みで測定し、その最小値を求めた。このとき、測定試料面に対する垂直方向に対して、入射角0°として測定した。
【0092】
その後、反射防止フィルムAR-1が貼ってある反対面側に黒色テープ(“カットエース(登録商標)” つや消し黒、光洋化学(株)製)を貼り合わせた。得られた積層体に対して、反射防止フィルムAR-1側から、分光光度計V-670(ARMN733付属、JASCO製)を用いて、波長900~2,000nmにおける反射率を1nm刻みで測定し、その最大値を表面反射率として測定した。このとき、測定試料面に対する垂直方向に対して、入射角0°として測定した。
【0093】
(7)反射防止層(AR-1)の吸水率
実施例2、4、6~14において形成された反射防止層(AR-1)の吸水率を測定するため、反射防止フィルムAR-1を2cm各の小片に切り取り、シャーレに移し、(4)に記載の絶縁層(C-1)および下地絶縁層(S-1)の吸水率の測定と同様に吸水率を測定した。
【0094】
(8)絶縁層(C-1)および反射防止層(AR-1)の屈折率
実施例3~4、6~14において形成された絶縁層(C-1)および実施例2、4、6~14において形成された反射防止層(AR-1)の屈折率を測定するため、実施例3により形成された絶縁層(C-1)および実施例2において用いた反射防止フィルムAR-1について、プリズムカプラー(モデル2010/M、メトリコン社製)を用いて、温度:23℃波長:1,320nmにおける屈折率をそれぞれ測定した。
【0095】
(9)赤外線反射率
各実施例および各比較例により得られた透明ヒーター用基材のうち、導電性細線が形成されている箇所について、分光光度計V-670(ARMN733付属、JASCO製)を用いて、波長900~2,000nmにおける反射率を1nm刻みで測定し、その最大値を求めた。なお、赤外線反射率は入射角に依存するため、ここでは、入射角の代表値として2点を選択し、測定試料面に対する垂直方向に対して入射角5°および60°のそれぞれについて測定した。
【0096】
(10)赤外線透過率
各実施例および各比較例により得られた透明ヒーター用基材のうち、導電性細線が形成されている箇所について、分光光度計V-670(ARMN733付属、JASCO製)を用いて、波長900~2,000nmにおける透過率を1nm刻みで測定し、その最小値を求めた。なお、赤外線透過率は入射角に依存するため、ここでは、入射角の代表値として2点を選択し、測定試料面に対する垂直方向に対して入射角0°および60°のそれぞれについて測定した。
【0097】
(11)視野角
上述の方法により測定した赤外線反射率および赤外線透過率のうち、入射角60°における赤外線透過率(60°T%)、(入射角60°の反射率と入射角5°の反射率の差(ΔR=(入射角60°の反射率)-(入射角5°の反射率))から、以下の基準により視野角を評価した。
A:(60°T%)≧80、かつΔR<10
B:(60°T%)≧80、かつΔR≧10
C:80>(60°T%)≧70、かつΔR<10
D:80>(60°T%)≧70、かつΔR≧10
E:70>(60°T%)。
【0098】
(12)可視光透過率
各実施例および各比較例により得られた透明ヒーター用基材のうち、導電性細線および着色層が形成されている箇所について、分光光度計V-670(ARMN733付属、JASCO製)を用いて、波長400~800nmにおける透過率を1nm刻みで測定し、その平均値を求めた。このとき、測定試料面に対する垂直方向に対して、入射角0°として測定した。
【0099】
(13)シート抵抗
各実施例および比較例により得られた透明ヒーター用基材のバスバー電極間の抵抗値を、抵抗測定用テスター(2407A:BKプレシジョン社製)を用いて測定し、得られた値に電極幅/電極間距離の値を乗じてシート抵抗(Ω/□)を算出した。なお、電極幅は150mm、電極間距離は170mmとした。
【0100】
(14)密着性
各実施例および各比較例により得られた透明ヒーター用基材のうち、導電性細線部について、JIS-K5600-5-6(1999年)に準拠して、5B~0Bの6段階評価(数字が大きい程、密着性が高い)によるクロスカット試験を行った。密着性は3B以上が好ましく、4B以上がより好ましい。
【0101】
(15)耐湿熱性
各実施例および比較例により得られた透明ヒーター用基材について、絶縁劣化特性評価システムETAC SIR13商品名、楠本化成(株)製)を用いて、発熱用導電体のバスバー電極部に電極を取り付け、85℃85%RH条件に設定された高温高湿槽内に透明ヒーター用基材を入れた。槽内環境が安定してから5分間経過後に5Vの電圧を引加し、初期の抵抗値を測定した。その後、1,000時間経過後の抵抗値を測定し、下記式により抵抗値変化率△Rを求めた。ΔRが小さいほど、耐湿熱性に優れていると判断した。
△R[%]={(1,000時間経過後の抵抗値-初期の抵抗値)/初期の抵抗値}×100。
【0102】
(実施例1)
<発熱用導電体の形成>
製造例1により得られた導電性組成物(A-1)を、10cm角の無アルカリガラスOA-11上に、スピンコーター(「1H-360S(商品名、ミカサ(株)製)」)を用いて、300rpmで10秒間、500rpmで1秒間の条件でスピンコートした後、ホットプレート(「SCW-636(商品名、大日本スクリーン製造(株)製)」)を用いて、100℃で2分間プリベークし、プリベーク膜を作製した。パラレルライトマスクアライナー(「PLA-501F(商品名、キヤノン(株)製)」)を用いて、超高圧水銀灯を光源とし、フォトマスクM1を介してプリベーク膜を露光した。この後、自動現像装置(「AD-2000(商品名、滝沢産業(株)製)」)を用いて、0.08質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で40秒間シャワー現像し、次いで水で30秒間リンスし、プリベーク膜のパターン加工を行った。
【0103】
パターン加工された基板を、オーブンを用いて、空気中、230℃で60分間キュアし、発熱用導電体(A-1)を形成した。前述の方法により測定した発熱用導電体(A-1)の導電性細線の線幅は6μm、メッシュピッチは500μm、銀粒子の体積分率は56%であった。
【0104】
<着色層の形成>
製造例5により得られた着色樹脂組成物(B-1)を、発熱用導電体を形成した基材上に、スピンコーターを用いて、600rpmで5秒間スピンコートした後、ホットプレートを用いて、100℃で5分間プリベークし、プリベーク膜を作製した。パラレルライトマスクアライナーを用いて、超高圧水銀灯を光源とし、導電性細線のエリアを遮光して露光した後、基板を反転して着色樹脂組成物を形成していない透明基板の裏面側から基板全面を露光した。この後、自動現像装置を用いて、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で40秒間シャワー現像し、次いで水で30秒間リンスし、導電性細線上のみに着色層(B-1)をパターン形成した。
【0105】
パターン加工された基板を、オーブンを用いて、空気中、220℃50分間キュアし、着色層を硬化し、透明ヒーター用基材1を得た。得られた透明ヒーター用基材1について、前述の方法により評価した結果を表1に示す。透明ヒーター用基材1における発熱用導電体(A-1)の導電性細線の膜厚は0.5μm、着色層(B-1)の膜厚は0.7μmであった。
【0106】
(実施例2)
着色層(B-1)上に、反射防止フィルムAR-1を貼り合わせたこと以外は実施例1と同様にして、透明ヒーター用基材2を得た。反射防止フィルムの波長400~800nmにおける透過率の最小値は99%、波長900~2,000nmの透過率の最大値は99%、表面反射率は1%、屈折率は1.46、吸水率は3%であった。評価結果を表1に示す。
【0107】
(実施例3)
着色層(B-1)上に、以下の方法により絶縁層を形成したことを以外は実施例1と同様にして、透明ヒーター用基材3を得た。
【0108】
<絶縁層の形成>
製造例7により得られた絶縁性樹脂組成物(C-1)を、発熱用導電体(A-1)および着色層(B-1)を形成した基板上に、スピンコーターを用いて、650rpmで5秒間スピンコートした後、ホットプレートを用いて、100℃で2分間プリベークし、プリベーク膜を作製した。パラレルライトマスクアライナーを用いて、超高圧水銀灯を光源とし、バスバー電極部を遮光してプリベーク膜を露光した。この後、自動現像装置を用いて、0.08質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間シャワー現像し、次いで水で30秒間リンスし、パターン加工を行った。
【0109】
パターン加工された基板を、オーブンを用いて、空気中、220℃で60分間キュアし、絶縁層(C-1)を形成した。透明ヒーター用基材3における絶縁層(C-1)の膜厚は2.5μm、体積抵抗率は3.0×1016(Ω・m)、吸水率は0.7%、屈折率は1.50あった。評価結果を表1に示す。
【0110】
(実施例4)
絶縁層(C-1)上に反射防止フィルムAR-1を貼り合わせたこと以外は実施例3と同様にして、透明ヒーター用基材4を得た。評価結果を表1に示す。
【0111】
(実施例5)
着色層(B-1)上に、以下の方法により赤外線透過層を形成したこと以外は実施例1と同様にして、透明ヒーター用基材5を得た。
【0112】
<赤外線透過層の形成>
製造例8により得られた赤外線透過着色樹脂組成物(D-1)を、発熱用導電体(A-1)および着色層(B-1)を形成した基板上に、スピンコーターを用いて、500rpmで5秒間スピンコートした後、ホットプレートを用いて、100℃で2分間プリベークし、プリベーク膜を作製した。パラレルライトマスクアライナーを用いて、超高圧水銀灯を光源とし、バスバー電極部を遮光してプリベーク膜を露光した。この後、自動現像装置を用いて、0.4質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間シャワー現像し、次いで水で30秒間リンスし、パターン加工を行った。
【0113】
パターン加工された基板を、オーブンを用いて、空気中、220℃で60分間キュアし、赤外線透過層(D-1)を形成し、透明ヒーター用基材5を得た。透明ヒーター用基材5における赤外線透過層(D-1)の膜厚は3.0μm、波長400~800nmにおける透過率の最大値は1%、波長900~2,000nmにおける透過率の最小値は92%、吸水率は2%であった。評価結果を表1に示す。
【0114】
(実施例6)
実施例3と同様に絶縁層(C-1)まで形成した基板を用いて、実施例5に記載の方法と同様にして赤外線透過層(D-1)を形成した。さらに赤外線透過層(D-1)上に反射防止フィルムAR-1を貼り合わせて、透明ヒーター用基材6を得た。透明ヒーター用基材6における発熱用導電体(A-1)の膜厚は0.5μm、着色層(B-1)の膜厚は0.7μm、絶縁層(C-1)の膜厚は2.5μm、赤外線透過層(D-1)の膜厚は3.0μmであった。評価結果を表1に示す。
【0115】
(実施例7)
<発熱用導電体の形成>において、フォトマスクM1をフォトマスクM2に変更したこと以外は実施例6と同様にして、透明ヒーター用基材7を得た。発熱用導電体の導電性細線の線幅は6μm、メッシュピッチは200μmであった。評価結果を表2に示す。
【0116】
(実施例8)
<発熱用導電体の形成>において、フォトマスクM1をフォトマスクM3に変更したこと以外は実施例6と同様にして、透明ヒーター用基材8を得た。発熱用導電体の導電性細線の線幅は3μm、メッシュピッチは500μmであった。評価結果を表2に示す。
【0117】
(実施例9)
<発熱用導電体の形成>において、フォトマスクM1をフォトマスクM4に変更したこと以外は実施例6と同様にして、透明ヒーター用基材9を得た。発熱用導電体の導電性細線の線幅は3μm、メッシュピッチは200μmであった。評価結果を表2に示す。
【0118】
(実施例10)
10cm角の無アルカリガラスOA-11上に、製造例7により得られた絶縁性樹脂組成物(C-1)を、スピンコーターを用いて、1,000rpmで10秒スピンコートした後、ホットプレートを用いて、100℃で2分間プリベークし、プリベーク膜を作製した。パラレルライトマスクアライナーを用いて超高圧水銀灯を光源とし、プリベーク膜を露光した。この後、自動現像装置を用いて、0.08質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間シャワー現像し、次いで水で30秒間リンスし、パターン加工を行った。
【0119】
パターン加工された基板を、オーブンを用いて、空気中、240℃で60分間キュアし、下地絶縁層(S-1)を形成した。前述の方法により測定した下地絶縁層(S-1)の体積抵抗率は3.0×1016(Ω・m)、吸水率は0.7%であった。
【0120】
その後、10cm角の無アルカリガラスOA-11を上記方法により得られた基材に変更したこと以外は実施例9と同様にして、透明ヒーター用基材10を得た。評価結果を表2に示す。透明ヒーター用基材10における下地絶縁層(S-1)の膜厚は1.0μm、体積抵抗率は3.0×1016(Ω・m)、吸水率は0.7%であった。
【0121】
(実施例11)
<発熱用導電体の形成>において、導電性組成物(A-1)を導電性組成物(A-2)に変更したこと以外は実施例10と同様にして、発熱用導電体(A-2)を形成し、透明ヒーター用基材11を得た。前述の方法により測定した発熱用導電体(A-2)の導電性細線の線幅は3μm、メッシュピッチは200μm、膜厚は0.5μm、銀粒子の体積分率は67%であった。
【0122】
(実施例12)
<発熱用導電体の形成>において、導電性組成物(A-1)を導電性組成物(A-3)に変更したこと以外は実施例10と同様にして、発熱用導電体(A-3)を形成し、透明ヒーター用基材12を得た。前述の方法により測定した発熱用導電体(A-3)の導電性細線の線幅は3μm、メッシュピッチは200μm、膜厚は0.5μm、銀粒子の体積分率は80%であった。
【0123】
(実施例13)
<発熱用導電体の形成>
製造例4により得られた導電性組成物(A-4)から、“ルミラー”U40上に、エマルジョン厚16μm、500メッシュのステンレススクリーンを用いて、10cm角の塗布膜を形成し、100℃で10分間プリベークし、プリベーク膜を作製した。パラレルライトマスクアライナー(「PLA-501F(商品名、キヤノン(株)製)」)を用いて、超高圧水銀灯を光源とし、フォトマスクM3を介してプリベーク膜を露光した。この後、自動現像装置(「AD-2000(商品名、滝沢産業(株)製)」)を用いて、0.1質量%炭酸ナトリウム水溶液で40秒間シャワー現像し、次いで水で30秒間リンスし、プリベーク膜のパターン加工を行った。
【0124】
パターン加工された基板を、オーブンを用いて、空気中、170℃で30分間キュアし、発熱用導電体(A-4)を形成した。
【0125】
<着色層の形成>
製造例5により得られた着色樹脂組成物(B-1)を、発熱用導電体を形成した基材上に、スピンコーターを用いて、400rpmで5秒間スピンコートした後、ホットプレートを用いて、100℃で5分間プリベークし、プリベーク膜を作製した。パラレルライトマスクアライナーを用いて、超高圧水銀灯を光源とし、導電性細線のエリアを遮光して露光した後、基板を反転して着色樹脂組成物を形成していない透明基板の裏面側から基板全面を露光した。この後、自動現像装置を用いて、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で40秒間シャワー現像し、次いで水で30秒間リンスし、導電性細線上のみに着色層(B-1)をパターン形成した。パターン加工された基板を、オーブンを用いて、空気中、170℃30分間キュアし、着色層を硬化した。
【0126】
<絶縁層の形成>
製造例7により得られた絶縁性樹脂組成物(C-1)を、発熱用導電体(A-4)および着色層(B-1)を形成した基板上に、スピンコーターを用いて、500rpmで5秒間スピンコートした後、ホットプレートを用いて、100℃で2分間プリベークし、プリベーク膜を作製した。パラレルライトマスクアライナーを用いて、超高圧水銀灯を光源とし、バスバー電極部を遮光してプリベーク膜を露光した。この後、自動現像装置を用いて、0.08質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間シャワー現像し、次いで水で30秒間リンスし、パターン加工を行った。パターン加工された基板を、オーブンを用いて、空気中、160℃で60分間キュアし、絶縁層(C-1)を形成した。
【0127】
<赤外線透過層の形成>
製造例8により得られた赤外線透過着色樹脂組成物(D-1)を、発熱用導電体(A-4)、着色層(B-1)および絶縁層(C-1)を形成した基板上に、スピンコーターを用いて、500rpmで5秒間スピンコートした後、ホットプレートを用いて、100℃で2分間プリベークし、プリベーク膜を作製した。パラレルライトマスクアライナーを用いて、超高圧水銀灯を光源とし、バスバー電極部を遮光してプリベーク膜を露光した。この後、自動現像装置を用いて、0.4質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間シャワー現像し、次いで水で30秒間リンスし、パターン加工を行った。パターン加工された基板を、オーブンを用いて、空気中、160℃で60分間キュアし、赤外線透過層(D-1)を形成した。
【0128】
さらに赤外線透過層(D-1)上に反射防止フィルムAR-1を貼り合わせ、透明ヒーター用基材13を得た。評価結果を表3に示す。
【0129】
(実施例14)
<着色層の形成>において、着色樹脂組成物(B-1)を着色樹脂組成物(B-2)に変更した以外は実施例13と同様にして透明ヒーター用基材14を得た。評価結果を表3に示す。
【0130】
(比較例1)
着色層(B-1)を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして、透明ヒーター用基材11を得た。評価結果を表4に示す。
【0131】
(比較例2)
着色層(B-1)を形成しなかったこと以外は実施例2と同様にして、透明ヒーター用基材12を得た。評価結果を表4に示す。
【0132】
(比較例3)
着色層(B-1)を形成しなかったこと以外は実施例3と同様にして、透明ヒーター用基材13を得た。評価結果を表4に示す。
【0133】
(比較例4)
着色層(B-1)を形成しなかったこと以外は実施例4と同様にして、透明ヒーター用基材14を得た。評価結果を表4に示す。
【0134】
(比較例5)
<発熱用導電体の形成>において、フォトマスクM1をフォトマスクM5に変更したこと以外は比較例4と同様にして、透明ヒーター用基材15を得た。透明ヒーター用基材15における発熱用導電体(A-1)の導電性細線の線幅は12μm、メッシュピッチは500μm、膜厚は0.5μmであった。評価結果を表4に示す。
【0135】
【表1】
【0136】
【表2】
【0137】
【表3】
【0138】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明の透明ヒーター用基材は、赤外線を用いたセンサーの凍結防止や防曇効果を得るための透明ヒーターに好適に利用できる。
【符号の説明】
【0140】
1 透明基材
2 発熱用導電体
3 着色層
4 絶縁層
5 反射防止層
6 赤外線透過層
7 バスバー電極部
8 導電性細線部
2A 導電性細線
2B バスバー電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7