(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128950
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】消臭材料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61L 9/00 20060101AFI20240913BHJP
B01J 35/61 20240101ALI20240913BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20240913BHJP
B01J 37/00 20060101ALI20240913BHJP
B01J 29/44 20060101ALI20240913BHJP
D06M 15/233 20060101ALI20240913BHJP
D06M 15/263 20060101ALI20240913BHJP
D06M 11/83 20060101ALI20240913BHJP
D06M 11/79 20060101ALI20240913BHJP
D06M 11/45 20060101ALI20240913BHJP
D06M 11/28 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
A61L9/00 C
B01J35/61
B01J37/04 102
B01J37/00 H
B01J29/44 M
D06M15/233
D06M15/263
D06M11/83
D06M11/79
D06M11/45
D06M11/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024027719
(22)【出願日】2024-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2023038085
(32)【優先日】2023-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三友 大河
(72)【発明者】
【氏名】永井 直
(72)【発明者】
【氏名】福本 晴彦
【テーマコード(参考)】
4C180
4G169
4L031
4L033
【Fターム(参考)】
4C180AA01
4C180BB08
4C180BB11
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4G169AA01
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4G169BA07A
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4L031AB31
4L031BA04
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4L031BA20
4L031DA13
4L033AB04
4L033AC11
4L033CA13
4L033CA18
(57)【要約】
【課題】本発明は、所望の形状を有し、外観が良好で意匠性が求められる用途に使用でき、臭気成分を吸着・分解する臭い除去触媒を表面に有し、かつ、接触や洗浄・洗濯等による臭い除去触媒の離脱が少なく、効率的かつ持続的に臭気成分を吸着・分解し、大気中の臭気を低減し得る消臭材料、およびその製造方法を提供することを課題としている。
【解決手段】基材(A)の表面の少なくとも一部に、
示差走査熱量測定(DSC)におけるガラス転移温度(Tg)が30℃以下のバインダー(B1)を含むバインダー(B)を介して、
第8~12族の金属元素の1種以上が多孔質担体に担持されてなる臭い除去触媒(C)が保持されてなる、消臭材料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材(A)の表面の少なくとも一部に、
示差走査熱量測定(DSC)におけるガラス転移温度(Tg)が30℃以下のバインダー(B1)を含むバインダー(B)を介して、
第8~12族の金属元素の1種以上が多孔質担体に担持されてなる臭い除去触媒(C)が保持されてなる、消臭材料。
【請求項2】
前記バインダー(B1)が、示差走査熱量測定(DSC)におけるガラス転移温度(Tg)が10~30℃の範囲にあり、かつ、平均粒径が40~140nmの範囲にある、請求項1に記載の消臭材料。
【請求項3】
前記バインダー(B)と前記臭い除去触媒(C)の質量比[(B):(C)]が、90:10~10:90の範囲にある、請求項1に記載の消臭材料。
【請求項4】
前記臭い除去触媒(C)が、基材(A)の表面の少なくとも一部に、0.05~30.0g/m2の範囲で保持されている、請求項1に記載の消臭材料。
【請求項5】
前記臭い除去触媒(C)が、基材(A)の表面の少なくとも一部に、0.05~5.0g/m2の範囲で保持されている、請求項1に記載の消臭材料。
【請求項6】
前記臭い除去触媒(C)の平均粒径が、0.01~50μmの範囲にある、請求項1に記載の消臭材料。
【請求項7】
前記バインダー(B1)が、アクリル系バインダーおよび/またはスチレン系バインダーである、請求項1に記載の消臭材料。
【請求項8】
前記バインダー(B)が、前記バインダー(B1)と、前記バインダー(B1)以外のバインダー(B2)とを、質量比[(B1):(B2)]が30:70~100:0の範囲で含む、請求項1に記載の消臭材料。
【請求項9】
前記基材(A)が織布または不織布である、請求項1に記載の消臭材料。
【請求項10】
消臭性織布または消臭性不織布である、請求項1に記載の消臭材料。
【請求項11】
示差走査熱量測定(DSC)におけるガラス転移温度(Tg)が30℃以下のバインダー(B1)を含むバインダー(B)を含有するエマルションに、
第8~12族の金属元素の1種以上が多孔質担体に担持されてなる臭い除去触媒(C)を混合して混合物を得る工程と、
前記混合物を、基材(A)の表面の少なくとも一部に塗工する塗工工程と、
乾燥工程とを有する、消臭材料の製造方法。
【請求項12】
前記バインダー(B1)が、示差走査熱量測定(DSC)におけるガラス転移温度(Tg)が10~30℃の範囲にあり、かつ、平均粒径が40~140nmの範囲にあり、
前記塗工工程が、前記混合物を、基材(A)の表面の少なくとも一部にスプレー塗工する工程である、請求項11に記載の消臭材料の製造方法。
【請求項13】
請求項1~10のいずれかに記載の消臭材料を製造する、請求項11に記載の消臭材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消臭材料およびその製造方法に関する。詳しくは、本発明は、基材上に臭い除去触媒が保持された消臭材料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境中で発生する様々な臭気(排気ガス、ゴミや食品の臭気、新築家屋・建物から排出される臭気等)は大きな社会課題であり、それぞれの環境に対して有効な対処方法が必要とされる。特に、住居、ホテル・レストランなどの公共施設、電車・自動車など交通機関等の閉鎖的な空間での臭気は問題となるが、人が共存するため安全性に懸念がある特殊な装置(オゾン脱臭、次亜塩素酸脱臭等)の設置は難しく、使い勝手の良い吸着剤が好適に用いられている。しかしながら、吸着剤は継続使用すると吸着容量を超えて破過してしまうため、頻繁に交換する必要がある。また、特に温度が高い日には、一度吸着した臭気成分が脱離することにより悪臭を発生することが問題となる。
【0003】
このため、閉鎖空間における臭気を素早く吸着除去するとともに、持続的に長期間臭いを低減することができ、におい戻りのない消臭材料の出現が求められている。持続的に長期間臭気を低減する消臭材料としては、単に臭気を吸着除去するのみならず、吸着した臭気を分解する消臭材料が望まれる。
【0004】
大気中の臭気成分を吸着・分解する技術としては、光触媒やPt担持シリカ触媒等が大気中の揮発性有機化合物(VOC)分解に有効であることが知られている。
特許文献1には、多孔質シリカに白金とルテニウムの複合体を担持させてなる触媒が、エチレンまたはメルカプタン化合物を酸化分解できることが教示されている。
【0005】
特許文献2には、有機物質に由来する揮発性有機化合物(VOC)の吸着剤として、パラジウムがドーピングされたZSM-5が開示されており、エチレンを吸着し得ることが示されている。
【0006】
特許文献3には、多孔質担体の表面にアニリン等による化学添着層を設け、ルテニウム、白金、パラジウムなどの触媒成分を担持させた脱臭剤が、また特許文献4には、活性炭に金属酸化触媒を担持した脱臭剤が記載されている。
【0007】
しかしながら、臭気成分を吸着・分解する臭い除去触媒は、通常顆粒状あるいは粉末状であって、そのまま室内等で用いるのには適さないといった問題があり、所望の形状を有する消臭材料に加工することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2019/027057号
【特許文献2】特開2015-213908号公報
【特許文献3】特開2002-200150号公報
【特許文献4】特開2000-312710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
臭い除去触媒を含む消臭材料としては、臭い除去触媒を賦形したもの、臭い除去触媒を基材に混合して賦形したもの、臭い除去触媒を基材の表面に設けたものなどが挙げられるが、大気中の臭気成分を吸着・分解するためには、臭い除去触媒成分と臭気成分との接触が必要であるため、臭い除去触媒の性能を充分に生かすためには、消臭材料の表面に臭い除去触媒が位置することが望まれる。また、所望の形状の消臭材料を提供するには、所望の形状を有する基材の表面に、臭い除去触媒を設けることが望まれる。
しかしながら、表面に臭い除去触媒を付着させた消臭材料では、接触等により臭い除去触媒が脱落し、経時的に消臭の効果が低減するという問題がある。また、消臭材料の洗浄を行った場合、特に消臭材料が織布や不織布などの繊維材料である場合には洗濯を行った場合にも、消臭効果が持続することが望まれる。
【0010】
本発明は、所望の形状を有し、外観が良好で意匠性が求められる用途に使用でき、臭気成分を吸着・分解する臭い除去触媒を表面に有し、かつ、接触や洗浄・洗濯等による臭い除去触媒の離脱が少なく、効率的かつ持続的に臭気成分を吸着・分解し、大気中の臭気を低減し得る消臭材料を提供することを課題としている。また本発明は、前記のような消臭材料を製造する方法を提供することを課題としており、基材に対しての臭い除去触媒の付与を常温で行うことができ、これにより加温できない基材を原料に用いることもできる、消臭材料の製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記のような状況に鑑みて鋭意研究した結果、基材上に特定のバインダーにより臭い除去触媒を保持させた消臭材料が、接触や洗浄、洗濯等による臭い除去触媒の離脱が少なく、優れた臭い除去効果を長期間維持できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、たとえば以下の〔1〕~〔13〕の事項に関する。
【0012】
〔1〕
基材(A)の表面の少なくとも一部に、
示差走査熱量測定(DSC)におけるガラス転移温度(Tg)が30℃以下のバインダー(B1)を含むバインダー(B)を介して、
第8~12族の金属元素の1種以上が多孔質担体に担持されてなる臭い除去触媒(C)が保持されてなる、消臭材料。
【0013】
〔2〕
前記バインダー(B1)が、示差走査熱量測定(DSC)におけるガラス転移温度(Tg)が10~30℃の範囲にあり、かつ、平均粒径が40~140nmの範囲にある、〔1〕に記載の消臭材料。
〔3〕
前記バインダー(B)と前記臭い除去触媒(C)の質量比[(B):(C)]が、90:10~10:90の範囲にある、〔1〕または〔2〕に記載の消臭材料。
〔4〕
前記臭い除去触媒(C)が、基材(A)の表面の少なくとも一部に、0.05~30.0g/m2の範囲で保持されている、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の消臭材料。
【0014】
〔5〕
前記臭い除去触媒(C)が、基材(A)の表面の少なくとも一部に、0.05~5.0g/m2の範囲で保持されている、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の消臭材料。
〔6〕
前記臭い除去触媒(C)の平均粒径が、0.01~50μmの範囲にある、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の消臭材料。
〔7〕
前記バインダー(B1)が、アクリル系バインダーおよび/またはスチレン系バインダーである、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の消臭材料。
【0015】
〔8〕
前記バインダー(B)が、前記バインダー(B1)と、前記バインダー(B1)以外のバインダー(B2)とを、質量比[(B1):(B2)]が30:70~100:0の範囲で含む、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の消臭材料。
〔9〕
前記基材(A)が織布または不織布である、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の消臭材料。
〔10〕
消臭性織布または消臭性不織布である、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の消臭材料。
【0016】
〔11〕
示差走査熱量測定(DSC)におけるガラス転移温度(Tg)が30℃以下のバインダー(B)を含有するエマルションに、
第8~12族の金属元素の1種以上が多孔質担体に担持されてなる臭い除去触媒(C)を混合して混合物を得る工程と、
前記混合物を、基材(A)の表面の少なくとも一部に塗工する塗工工程と、
乾燥工程と
を有する、消臭材料の製造方法。
【0017】
〔12〕
前記バインダー(B1)が、示差走査熱量測定(DSC)におけるガラス転移温度(Tg)が10~30℃の範囲にあり、かつ、平均粒径が40~140nmの範囲にあり、
前記塗工工程が、前記混合物を、基材(A)の表面の少なくとも一部にスプレー塗工する工程である、〔11〕に記載の消臭材料の製造方法。
〔13〕
〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の消臭材料を製造する、〔11〕または〔12〕に記載の消臭材料の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、所望の形状を有し、外観が良好で意匠性が求められる用途に使用でき、臭気成分を吸着・分解する臭い除去触媒を表面に有し、かつ、接触や洗浄・洗濯等による臭い除去触媒の離脱が少なく、効率的かつ持続的に臭気成分を吸着・分解し、大気中の臭気を低減し得る消臭材料を提供することができる。また本発明によれば、前記のような優れた消臭材料を製造することができ、基材に対しての臭い除去触媒の付与を常温で行うことができ、これにより加温できない基材を原料に用いることもできる、消臭材料の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施例1,2,3,5および比較例1の、ラビングテスト前後のSEM観察結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について具体的に説明する。
<消臭材料>
本発明の消臭材料は、基材(A)の表面の少なくとも一部に、バインダー(B)により臭い除去触媒(C)が保持された消臭材料である。
【0021】
基材(A)
本発明の消臭材料の基材となる基材(A)は、表面の少なくとも一部に後述する臭い除去触媒(C)を保持し得るものであればよく、消臭材料として所望の形状を有するものである。
【0022】
基材(A)は、その素材を特に限定されるものではなく、無機基材、有機基材、複合基材のいずれからなるものであってもよい。また基材(A)は、その形状を特に限定されるものではなく、公知の形状のものを制限なく用いることができ、たとえば、繊維状、糸状、織布状、不織布状、ひも状、板状、球状、棒状、粒子状、ブロック状、シート状、フィルム状、多孔質形状、不定形等の形状、あるいはこれらを複合した形状のものを挙げることができる。基材(A)の大きさについても、表面の少なくとも一部に後述する臭い除去触媒(C)を保持し得るものであれば特に限定されるものではなく、臭い除去触媒(C)の径以上の大きさの表面を有するものを制限なく用いることができる。
【0023】
本発明では、消臭材料を、そのまま消臭用品として用いることができるほか、消臭効果を有する各種製品の材料として用いることができ、たとえば、壁材、床材、天井材、壁紙、窓枠、タイル等の建材、カーテン、マット、家具、クッション、小物等のインテリア材、肌着、靴下、エプロン、制服、手術着、介護用衣類等の衣類、まくら、布団、布団カバー、シーツ等の寝具、自動車や列車等の車両内装材、ゴミ箱、生ごみ容器等の容器、ごみ焼却場、生鮮処理場等の臭気濃度の高い施設の建材および備品等、消臭材料を適用する各種製品の材料として用いることができる。このため本発明に係る基材(A)は、その用途に応じた素材および形状のものとすることができる。
【0024】
このような基材(A)としては、たとえば、繊維状、糸状、織布状、不織布状のものが好適であり、織布状または不織布状のものが各種製品の材料としての汎用性の面でより好適である。基材(A)が繊維状、糸状、織布状または不織布状である場合、これらを構成する単繊維の繊維径は、たとえば1μm以上、好ましくは5μm以上、より好ましくは10~50μm程度であると、臭い除去触媒(C)を保持しやすいため望ましい。繊維状、糸状、織布状または不織布状である場合の基材(A)は、無機基材、有機基材、複合基材のいずれを素材とした繊維から構成されたものであってもよく、繊維としては、グラスウール、炭素繊維、天然繊維、合成繊維、複合繊維等が挙げられる。
【0025】
合成繊維としては、公知の樹脂から得られる繊維を使用することができる。好ましい樹脂は、ポリエステル、ポリアミド、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニル、ポリビニリデン、ポリウレタン及びポリスチレン等である。これらの樹脂は、単独重合体であっても共重合体であってもよい。共重合体の場合、単量体の重合割合は、特に限定されない。
【0026】
バインダー(B)
本発明に係るバインダー(B)は、上述した基材(A)の表面の少なくとも一部に、後述する臭い除去触媒(C)を保持・付着させるものである。本発明において、バインダーとは、固形分であるバインダー樹脂成分を意味し、分散媒・溶媒等は含まない。
バインダー(B)は、示差走査熱量測定(DSC)におけるガラス転移温度(Tg)が30℃以下のバインダー(B1)を含む。
【0027】
バインダー(B1)は、示差走査熱量測定(DSC)におけるガラス転移温度(Tg)が30℃以下のバインダーである。
【0028】
バインダー(B1)のガラス転移温度(Tg)は、30℃以下であればよく、好ましくは-50~30℃、より好ましくは-40℃~30℃、さらに好ましくは-30~30℃である。このようなガラス転移温度を有するバインダー(B1)を用いることにより、加熱下での接着を行わない場合にも強固に付着して、基材(A)上に臭い除去触媒(C)を保持することができ、消臭材料からの臭い除去触媒(C)の脱落を抑制でき、接触に対する耐性、洗浄・洗濯に対する耐性(耐洗濯性)に優れたものとなり、消臭効果を長期に持続できるため好ましい。
【0029】
また、好適な一態様において、バインダー(B1)のガラス転移温度(Tg)は、10~30℃、好ましくは15~30℃、より好ましくは15~25℃である。このようなガラス転移温度を有するバインダー(B1)は、バインダーとしての作用を常温で好適に有するため、たとえば0~40℃等の常温環境下で、基材(A)と臭い除去触媒(C)とを好適に接着できるので好ましい。
【0030】
またバインダー(B1)は、特に限定されるものではないが、好適な一態様において、レーザー回折式粒度分布計による平均粒径が好ましくは40~140nm、より好ましくは50~130nm、さらに好ましくは80~120nmであることが望ましい。このような平均粒径を有するバインダー(B1)は、臭い除去触媒(C)の粒子を基材(A)に接着する接着性に優れるとともに、消臭材料をスプレー塗工により製造するのにも好適であるため好ましい。
【0031】
バインダー(B1)としては、アクリル系バインダー、アクリルシリコーン系バインダー、スチレン系バインダー、アクリルスチレン系バインダー等の接着性を有する樹脂バインダーのうち、前記の条件を満たすものが好適に用いられ、これらのうちではアクリル系バインダーおよびスチレン系バインダーがより好適に用いられる。これらのバインダーは、1種単独で用いられてもよく、2種以上組み合わせて用いられてもよい。
【0032】
本発明に係るバインダー(B)は、上述したバインダー(B1)のみで構成されることも好ましいが、上述したバインダー(B1)に加えて、バインダー(B1)以外のバインダーであるバインダー(B2)を含有してもよい。
【0033】
バインダー(B2)としては、接着性を有する樹脂バインダーのうち、ガラス転移温度が30℃を超えるものが挙げられる。
【0034】
バインダー(B)中におけるバインダー(B2)の割合は、固形分量全体に対して、通常70質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。バインダー(B)中におけるバインダー(B2)の含有割合の下限値は、特に限定されるものではないが、バインダー(B)がバインダー(B2)を含む場合、たとえば1質量%、好ましくは5質量%、より好ましくは10質量%である。
【0035】
すなわちバインダー(B)は、バインダー(B1)とバインダー(B2)とを、質量比[(B1):(B2)]が、通常30:70~100:0である範囲、好ましくは40:60~100:0である範囲、より好ましくは50:50~100:0である範囲で含有する。バインダー(B)がバインダー(B2)を含有する場合、バインダー(B1)とバインダー(B2)との質量比[(B1):(B2)]は、たとえば30:70~99:1、好ましくは40:60~95:5、より好ましくは50:50~90:10の範囲とすることができる。なお、この質量比はバインダー樹脂成分である固形分の質量比であり、分散媒あるいは溶媒等を含むものではない。
本発明では、このようなバインダー(B)を用いることによって、得られる消臭材料中の基材(A)と臭い除去触媒(C)とが、強固に付着して、基材(A)上に臭い除去触媒(C)を保持することができ、消臭材料からの臭い除去触媒(C)の脱落が抑制されるため好ましい。
【0036】
臭い除去触媒(C)
本発明に係る臭い除去触媒(C)は、第8~12族の金属元素の1種以上が多孔質担体に担持されてなる。このような臭い除去触媒は、大気中の臭気成分を吸着・分解することができる。
【0037】
多孔質担体としては、金属成分を担持し得る多孔質担体をいずれも用いることができ、活性炭、セルロース担体等の有機担体、金属酸化物担体、複合酸化物担体等の無機担体、これらの複合体である複合担体等をいずれも用いることができる。これらのうちでは、活性炭、酸化物担体、複合酸化物担体等、担体自身が臭気成分を吸着し得る多孔質担体が好ましく、酸化物担体または複合酸化物担体が、所望の粒子径および細孔径を有する多孔質担体の入手容易性の点でより好ましい。
【0038】
酸化物担体としては、たとえば、アルミナ、多孔質シリカ等が挙げられる。複合酸化物としては、たとえば、チタン酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、アルミン酸マグネシウムなどが挙げられる。これらのうちでも、ゼオライト(結晶性アルミノケイ酸塩)が好ましく、MFI型ゼオライトが特に好ましい。
【0039】
多孔質担体の平均粒径は、通常0.01~50μm、好ましくは0.03~30μm、より好ましくは0.05~20μmの範囲にある。このような平均粒径を有する多孔質担体は、充分な量の金属成分を担持でき、かつ、臭い除去触媒をバインダーとともに、スプレー塗工により基材上に塗工できるため好ましい。
【0040】
多孔質担体に担持されている第8~12族の金属元素としては、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cdの1種以上が挙げられる。これらの金属元素は、多孔質担体上に、金属単体の形態で担持されていてもよく、酸化物、塩化物等の金属化合物の形態で担持されていてもよく、2種以上の金属元素の複合酸化物等の形態で担持されていてもよい。このような金属元素が1種以上多孔質担体に担持された本発明に係る臭い除去触媒(C)は、大気中の臭気成分を好適に吸着・分解して、臭いを低減、除去することができる。この効果は、本発明に係る臭い除去触媒(C)が、周囲の気体中の臭気物質を多孔質担体の細孔中に吸着することで素早く低減し、吸着した臭気物質の少なくとも一部を、担持された金属成分により分解することによりもたらされると考えられ、これにより長期にわたって脱臭性能を維持すると考えられる。
【0041】
本発明に係る臭い除去触媒(C)としては、特に限定されるものではないが、多孔質担体にPt(白金)を含む1種以上の金属元素が担持されていることが好ましい。多孔質担体にPtを含む金属元素が担持されている場合、担持されている金属種は、Ptのみであってもよく、Ptとその他の第8~12族の金属元素との組み合わせであってもよい。担持されている金属全体(Ptとその他の金属の合計)中のPtの割合は、好ましくは1mol%以上、より好ましくは10mol%以上であることが望ましい。多孔質担体にPtを含む金属元素が担持されている臭い除去触媒(C)では、アルデヒド類、カルボン酸類、エステル類などの種々の臭気物質を分解することができ、臭気物質の分解効果が大きく、臭いを低減する効果が特に長期間持続し、効率的に脱臭でき、また臭気物質を放出して臭いを拡散するという問題を生じにくいため好ましい。
【0042】
本発明に係る臭い除去触媒(C)は、第8~12族の金属元素の1種以上が多孔質担体に担持されてなり、大気中の臭気成分を吸着・分解し得る臭い除去触媒であればよく、市販品であっても調製して得たものであってもよい。臭い除去触媒(C)を調製する方法としては、公知の方法を適宜採用することができ、たとえば、多孔質担体に、金属元素を含む化合物を溶解した水溶液等を、多孔質担体に含浸し、必要に応じて乾燥・焼成する方法などを採用することができる。
【0043】
本発明に係る臭い除去触媒(C)は、平均粒径が、通常0.01~50μm、好ましくは0.03~30μm、より好ましくは0.05~20μm、さらに好ましくは0.5~10μmの範囲にあることが望ましい。なお、臭い除去触媒(C)の粒子は、金属成分が担持された多孔質担体の単粒子の形態であってもよく、複数の粒子が凝集した複合粒子の形態であってもよい。このような平均粒径を有する臭い除去触媒(C)は、上述したバインダー(B)とともに、スプレー塗工により基材上に塗工できるため好ましい。
【0044】
その他の成分
本発明の消臭材料は、上述した基材(A)、バインダー(B)および臭い除去触媒(C)のみから構成されていてもよいが、本発明の目的を損なわない範囲で、その他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、例えば、バインダー(B)の分散媒としての水あるいは有機溶剤、その他の分散媒あるいは溶剤、界面活性剤、増粘剤、その他の添加剤等が挙げられる。分散媒あるいは溶剤は、消臭材料の製造段階あるいは製造後経時的に、揮発により除去されてもよい。
【0045】
界面活性剤としては、たとえば、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸ナトリウム、アセチレングリコール系界面活性剤などを挙げることができる。増粘剤としては、たとえば、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、キサンタンガムなどの多糖類、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸系増粘剤などを挙げることができる。その他の添加剤としては、耐候剤、酸化防止剤、顔料、染料、無機充填剤等を挙げることができる。
【0046】
また、本発明の消臭材料は、臭い除去触媒(C)に加えて、その他の臭い除去成分を含有してもよい。その他の臭い除去成分としては、公知のものを制限なく用いることができるが、たとえば、化学吸着剤を好ましく用いることができる。本発明の消臭材料が、臭い除去触媒(C)に加えて、臭気物質と化学的な相互作用により消臭する化学吸着剤を含む場合には、臭いを低減する初期性能が向上した消臭材料とすることができる。化学吸着剤としては、東亞合成製ケスモンNS-750(有機アミン担持シリカ;アルデヒド用)、NS-70(Ca、Mg系化合物;酸用)、NS-10(リン酸ジルコニア;アンモニア用)、NS―20C(Cu系化合物担持シリカ;硫黄化合物用);大塚化学製ケムキャッチ(アジピン酸ジヒドラジド;アルデヒド用);シナセンゼオミック製ダッシュライトS(アミン化合物担持シリカ;アルデヒド用)等を挙げることができる。
【0047】
消臭材料
本発明の消臭材料は、上述した基材(A)の表面の少なくとも一部に、バインダー(B)により臭い除去触媒(C)が保持された消臭材料である。
【0048】
臭い除去触媒(C)は、基材(A)の表面全体に保持されていてもよく、一部のみに保持されていてもよい。たとえば基材(A)が織布状、不織布状、シート状、板状等である場合には、臭い除去触媒(C)が片面のみに保持されていてもよく、両面に保持されていてもよい。基材(A)が単繊維、複合繊維、無撚糸、撚糸、織布状、不織布状、ひも状、ロープ状等、繊維から構成されるものである場合には、臭い除去触媒(C)が構成する繊維表面全体に保持されていてもよく、一部に保持されていてもよい。またたとえば基材(A)が多孔質形状である場合には、多孔質内部まで保持されていてもよい。
【0049】
本発明では、消臭材料が、消臭性織布または消臭性不織布などの消臭性繊維材料であることも好ましい。このような消臭材料は、たとえば、織布または不織布などの繊維材料である基材(A)の少なくとも一部に臭い除去触媒(C)が保持された消臭性織布や消臭性不織布の形態であってもよく、単繊維、複合繊維、無撚糸、撚糸などの繊維状の基材(A)の少なくとも一部に臭い除去触媒(C)が保持された消臭性繊維の形態であってもよく、消臭性繊維から得た消臭性織布や消臭性不織布の形態であってもよい。
【0050】
本発明の消臭材料において、各成分の構成比は、その形態や製造方法等によっても異なるため特に限定されるものではないが、好ましい一態様において、前記バインダー(B)と前記臭い除去触媒(C)の質量比[(B):(C)]が、たとえば90:10~10:90、好ましくは80:20~20:80、より好ましくは70:30~30:70、さらに好ましくは60:40~40:60の範囲とすることができる。このような質量比でバインダー(B)と臭い除去触媒(C)を含む消臭材料では、臭い除去触媒(C)がバインダー(B)により基材(A)の表面に強固に保持され、かつ、臭い除去触媒(C)の性能がバインダー(B)により阻害されないため好ましく、また特に、バインダー(B)と臭い除去触媒(C)を含む混合物を、基材(A)上にスプレー塗工する工程を経て消臭材料を製造する場合に適しているため好ましい。
【0051】
また本発明の消臭材料の好ましい一態様では、臭い除去触媒(C)が、基材(A)の表面の少なくとも一部に、たとえば0.05~30.0g/m2の範囲、好ましくは0.05~5.0g/m2の範囲、より好ましくは0.1~4g/m2の範囲、さらに好ましくは0.15~3g/m2の範囲、またさらに好ましくは0.2~2g/m2の範囲で保持されていることが望ましい。すなわち本発明の消臭材料の好ましい一態様では、基材(A)の表面上の、臭い除去触媒(C)を保持した部位において、上述の範囲で臭い除去触媒(C)が基材(A)の表面に保持されていることが望ましい。このような範囲で臭い除去触媒(C)が保持された消臭材料は、充分な消臭効果を示し、かつ、臭い除去触媒(C)の保持量が適切で無駄がなく経済的であり、接触や洗浄・洗濯等による脱落が少ないことから好ましい。特に基材(A)が織布状、不織布状である場合には、臭い除去触媒(C)を保持した部位において、基材上の臭い除去触媒(C)の保持量が上記の範囲であると充分な消臭効果を示し、かつ、臭い除去触媒(C)の保持量が適切で無駄がなく経済的であり、接触や洗浄・洗濯等による脱落が少なく耐洗濯性にも優れ、外観に優れ、擦れによる変色等の劣化が生じにくいといった効果を充分に示すため好ましい。
【0052】
本発明の消臭材料は、臭気の低減が求められる空間にそのまま静置して用いてもよく、またさらに加工して用いてもよい。本発明の消臭材料の用途としては、家庭用としては、たとえば室内、冷蔵庫、トイレやごみ箱などにおける消臭のためおよび体臭除去・防止のために用いることができ、さらに、工業用としては、たとえば汚水処理場、魚類加工場、魚粉製造場、畜舎、畜糞あるいは鶏糞乾燥場やパルプ工場などにおける悪臭の除去のため適宜に用いることができる。
【0053】
また本発明の消臭材料は、特に制限なく種々の用途に適用することができ、たとえば、椅子張り地、カーテン、カーペット、タイル、壁紙、または乗り物用内装材等に適用することができる。乗り物用内装の、乗り物としては、自動車、電車、旅客機、船舶をあげることができる。乗り物用内装材としては、天井材、インナーパネル、ドアトリム、ヘッドレスト、ハンドル、シフトレバー、インストルメンツパネル、シートカバー、床材、床マット、バックドアパネルをあげることができる。本発明の消臭製品の他の用途として、例えば、肌着、靴下、エプロン等の衣類、介護用衣類、布団、座布団、毛布、じゅうたん、ソファ、エアーフィルター、布団カバー、カーテン、カーシート等の消臭シートを加工した製品等の繊維製品に使用することができる。
【0054】
<消臭材料の製造方法>
上述した本発明の消臭材料を製造する方法としては、本発明の消臭材料を製造しうる方法を制限なく適用することができ、基材(A)の表面に、バインダー(B)を介して、臭い除去触媒(C)を保持させる方法をいずれも採用することができる。
たとえば、基材(A)上にバインダー(B)を塗布し、臭い除去触媒(C)を付着させる方法や、バインダー(B)と臭い除去触媒(C)とを含むエマルション状の混合物を、浸漬、スプレー塗工、塗布等の方法により基材(A)上に塗工し、乾燥させる方法などが挙げられる。
【0055】
これらのうちでも、バインダー(B)と臭い除去触媒(C)とを含むエマルション状の混合物を、基材(A)上に塗工し、乾燥させる方法が好ましく、塗工をスプレー塗工により行うことが特に好ましい。以下、この方法についてさらに説明する。
【0056】
好適な一態様である本発明の消臭材料の製造方法では、
示差走査熱量測定(DSC)におけるガラス転移温度(Tg)が10~30℃の範囲にあり、粒径が40~140nmの範囲にあるバインダー(B1)を含むバインダー(B)を含有するエマルションに、第8~12族の金属元素の1種以上が多孔質担体に担持されてなる臭い除去触媒(C)を混合して混合物を得る工程と、
前記混合物を、基材(A)の表面の少なくとも一部にスプレー塗工する工程と、
乾燥工程とを有する。
【0057】
このような本発明の消臭材料の製造方法で用いる、基材(A)、バインダー(B)および臭い除去触媒(C)の各成分については、消臭材料についての項で詳述した通りである。
発明の消臭材料の製造方法において、バインダー(B)はこれを含有するエマルションの形態で用いる。バインダー(B)を含有するエマルションは、バインダー(B)を水などの分散媒に分散させて調製してもよく、また、バインダー(B)を構成するバインダー(B1)、(B2)を重合により製造する場合に、得られたバインダー(B1)、(B2)を含む重合液を、これらを含有するエマルションとして用いてもよい。
【0058】
混合物を得る工程においては、バインダー(B)を含有するエマルションと、臭い除去触媒(C)とを混合して混合物を得る。混合物はエマルションの形態であることが、スプレー塗工に適することから望ましく、混合物を得る工程において、水などの分散媒、上述した界面活性剤や増粘剤等の添加剤を添加して混合物を得てもよい。また、目的とする消臭材料が、臭い除去触媒(C)以外のその他の臭い除去成分を含む場合、混合物中に添加してもよく、また、別途用いてもよい。
【0059】
混合物を得る工程では、バインダー(B)と臭い除去触媒(C)との固形分としての質量比[(B):(C)]が、たとえば90:10~10:90、好ましくは80:20~20:80、より好ましくは70:30~30:70、さらに好ましくは60:40~40:60の範囲であることが望ましい。このような質量比でバインダー(B)と臭い除去触媒(C)を含む混合物を用いると、混合物がスプレー塗工に好適であり、臭い除去触媒(C)がバインダー(B)により基材(A)の表面に強固に保持され、かつ、臭い除去触媒(C)の性能がバインダー(B)により阻害されない消臭材料が得られるため好ましい。
【0060】
混合物中のバインダー(B)および臭い除去触媒(C)の濃度は、混合物の粘度やスプレー塗工の条件等により適宜調整することができる。
前記混合物を、基材(A)の表面の少なくとも一部にスプレー塗工する工程は、基材(A)表面上の塗工希望箇所に前記混合物をスプレー塗工し、バインダー(B)および臭い除去触媒(C)を基材(A)表面上に同時に付着させる工程であり、これにより、臭い除去触媒(C)が基材(A)表面にバインダー(B)を介して付着する。スプレー塗工には、公知のスプレー塗工装置を適宜用いることができる。
【0061】
本発明の消臭材料の製造方法では、前記のスプレー塗工する工程の後に、乾燥工程を有する。この乾燥工程は、スプレー塗工された混合物中に含まれる分散媒あるいは溶媒を揮発除去する工程である。乾燥工程は、たとえば、室温での静置、加熱下での静置、送風処理、温風処理、減圧処理、これらの組み合わせなどの方法により行うことができる。本発明では、バインダー(B)が上述した特定のガラス転移温度を有するバインダー(B1)を含んでいることから、高温下での処理を行わなくとも、臭い除去触媒(C)を基材(A)上に強固に保持することができる。このため本発明の消臭材料の製造方法においては、高温での処理を伴うことなく乾燥工程を行うことができる。乾燥工程の温度としては、たとえば-10~100℃、好ましくは0~80℃、より好ましくは5~50℃、さらに好ましくは10~45℃の条件で行うことができ、常温あるいは室温で行うことも好ましい。本発明ではこのような温度条件で乾燥工程を好適に行うことができるため、高温処理が好ましくない基材を基材(A)として採用することもできる。
このような本発明の消臭材料の製造方法では、上述した本発明の消臭材料を好適に製造することができる。
【実施例0062】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0063】
<原料1>
実施例および比較例において、原料としては以下のものを用いた。
【0064】
基材
基材(A-1):黒色フエルト生地(ポリエステル製不織布、ダイソー製)、平均繊維径15μm、目付190g/m2
基材(A-2):ベージュ色フエルト生地(ポリエステル製不織布、ダイソー製)、平均繊維径15μm、目付190g/m2
【0065】
バインダー
[製造例1](バインダーB-1の製造)
撹拌機、還流コンデンサー、滴下装置、及び温度計を備えた反応容器に、イオン交換水660g及びドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム0.4gを仕込み、撹拌下に窒素置換しながら72℃まで昇温した。内温を72℃に保ち、重合開始剤として過硫酸カリウム4gを添加し、溶解後、予めイオン交換水400g、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム1gにアクリルアミド18g、スチレン450g、2-エチルヘキシルアクリレート380g、メタクリル酸18g、2-ヒドロキシエチルメタクリレート18g、トリメチロールプロパントリメタクリレート9gを撹拌下に加えて作成した乳化物を、反応溶液内に連続的に4時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間の熟成を行った。得られた水性エマルジョンを常温まで冷却した後、イオン交換水とアンモニウム水溶液とを添加して固形分45重量%、pH7.5に調整した。DSCによるガラス転移温度(Tg)が22℃、平均粒径が110nmであるスチレン/アクリル系バインダー(バインダーB-1)を含むバインダーエマルション(B-1)を得た。
【0066】
[製造例2](バインダーB-2の製造)
撹拌機、還流コンデンサー、滴下装置、及び温度計を備えた反応容器に、イオン交換水550g及びドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム3gを仕込み、撹拌下に窒素置換しながら72℃まで昇温した。内温を72℃に保ち、重合開始剤として過硫酸カリウム3gを添加し、溶解後、予めイオン交換水400g、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム3gにアクリルアミド10g、メチルメタクリレート500g、2-エチルヘキシルアクリレート425g、メタクリル酸20g、ポリエチレングリコールジメタクリレート9g、t-ドデシルメルカプタン1gを撹拌下に加えて作成した乳化物を、反応溶液内に連続的に4時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間の熟成を行った。得られた水性エマルジョンを常温まで冷却した後、イオン交換水とアンモニウム水溶液とを添加して固形分50重量%、pH7.5に調整した。DSCによるガラス転移温度(Tg)が27℃、平均粒径が110nmであるアクリル系バインダー(バインダーB-2)を含むバインダーエマルション(B-2)を得た。
【0067】
[製造例3](バインダーB’-3の製造)
撹拌機、還流コンデンサー、滴下装置、及び温度計を備えた反応容器に、イオン交換水550g及びドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム1gを仕込み、撹拌下に窒素置換しながら72℃まで昇温した。内温を72℃に保ち、重合開始剤として過硫酸カリウム3gを添加し、溶解後、予めイオン交換水400g、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム3gにアクリルアミド15g、メチルメタクリレート590g、n-ブチルアクリレート330g、2-ヒドロキシエチルメタクリレート20g、メタクリル酸20g、エチレングリコールジメタクリレート15g、t-ドデシルメルカプタン1gを撹拌下に加えて作成した乳化物を、反応溶液内に連続的に4時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間の熟成を行った。得られた水性エマルジョンを常温まで冷却した後、イオン交換水とアンモニウム水溶液とを添加して固形分50重量%、pH7.5に調整した。DSCによるガラス転移温度(Tg)が57℃、平均粒径が160nmであるアクリル系バインダー(バインダーB’-3)を含むバインダーエマルション(B’-3)を得た。
【0068】
臭い除去触媒
[製造例4](臭い除去触媒C-1の製造)
Ptを含む化合物として、ヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物(富士フイルム和光純薬(株)製)0.05gを秤量し、50ccの蒸留水に溶解させた。この溶液を200ccナス型フラスコに投入し、次いでMFI型ゼオライト(H-ZSM‐5、東ソー(株)製 HSZ 822HOA、シリカ/アルミナ比(SiO2/Al2O3比(mol/mol)):23、平均粒径:5μm)を2.0g投入して、1%Pt/ゼオライトとなるようにして、Pt化合物溶液をゼオライトに含浸させた。次いでフラスコをエバポレーター装置に取り付け、80℃、真空下にて水を蒸発させ、残った粉体を回収した。回収した粉体を、100%H2流通下で、5℃/minで200℃まで昇温して2時間水素還元を行い、Pt/ゼオライト触媒を得た。得られたPt/ゼオライト触媒をスーパージェットミル(SJ-500、日清エンジニアリング製)で破砕することにより、Ptが1%ゼオライトに担持され、平均粒径2μmである臭い除去触媒(C-1)を調製した。
【0069】
<評価方法>
外観(色差)評価
色差計CM-3700A(コニカミノルタ製)を用い、 測定法:反射測定・SCE、光源:D65、視野:10°、測定径:MAV(Φ8mm)、押え板:黒板の測定条件により、未処理の基材との色差ΔE*の測定を行った。
なお、一般に、色差ΔE*が1.6以下である場合(色差が小さく、色の離間比較で気づかれる色差がない程度である場合)を良好、1.6を超える場合を不良と判断することができる(TOYO INK ホームページより;
https://www.toyoink1050plus.com/color/chromatics/basic/005.php )
【0070】
臭気強度の評価
(ISO12219-7に準拠したブタノール基準臭の作り方)
洗浄済み10Lテドラーバッグ(GLサイエンス製)に、活性炭フィルターを通した空気10Lをこのテドラーバックに導入し、導入口にシリコーン製キャップをした。表1に記載した1-ブタノール/水 濃度の1-ブタノール水溶液を、1-ブタノールとイオン交換水を用いてそれぞれ50mL作成した。各臭気強度に該当する濃度の1-ブタノール水溶液10mLを10L空気の入ったテドラーバッグにシリンジで注入し、室温で4時間静置し、液が完全に気化したことを確認した。なお、臭気強度とは、表2に示す臭いの程度を数値化した指標である。
【0071】
(官能評価方法)
消臭剤塗工物を、洗浄済み3Lテドラーバッグ(GLサイエンス製)に入れた。活性炭フィルターを通した空気を2.5Lテドラーバックに導入し、導入口にシリコーン製キャップをした。次いで、1500vol.ppmのトリメチルアミン/空気1.7mLを、ガスタイトシリンジを用いてテドラーバックに注入し、袋内のトリメチルアミン濃度を約1ppmになるよう調整した。80℃で、24h静置した後の臭気強度をパネラー5人で官能評価した。ここで、臭気強度は表2で作成した基準臭との比較から評価し、5人の平均値を値とした。同様の操作で、塗工物を入れない3Lテドラーバッグに、空気2.5Lと1500vol.ppmのトリメチルアミン/空気1.7mLを注入してトリメチルアミン濃度を約1ppmのブランクを作成し、80℃で24h静置した後の臭気強度をパネラー5人で官能評価した。5人の平均値をブランクの値とした。
【0072】
【0073】
【0074】
[実施例1]
・塗工用混合物の製造
臭い除去触媒(C-1)1.7g、バインダーエマルション(B-1)5g、5%シックナーSN615(サンノブコ(株)製)水溶液1.8g、10%DOWFAX2A1(ダウ(株)製)水溶液3g、水22gを混合し、撹拌することにより、粒子が均一に分散された塗工液を得た。
【0075】
・消臭材料の製造
上記で得た塗工用混合物1をスプレー塗工器(アネスト岩田(株)製、商品名WIDER1-10E1G)にて、基材(A-1)または(A-2)の片面に、室温(23℃)にて、臭い除去触媒(C-1)の保持量が表3に示す量となるよう均質にスプレー塗工した。これを室温(23℃)にて24時間静置して乾燥し、表3に示す量で臭い除去触媒(C-1)が保持された各消臭材料を得た。
【0076】
・消臭材料の評価
(消臭評価1)
基材(A-1)上に臭い除去触媒(C-1)を0.3g/m2保持した消臭材料20cm2を用い、トリメチルアミン初期濃度1ppmで、上述の臭気強度の評価方法により、消臭評価(官能評価)を実施した。結果、80℃、24時間後の、5人のパネラーの臭気強度の平均値は、ブランクが4.9、消臭材料が1.4であり、消臭強度3未満の良好な消臭性能が確認された。
【0077】
(外観評価、ラビング評価)
得られた各消臭材料について、上述の方法により外観(色差)評価を行った。
また、基材(A-1)上に臭い除去触媒(C-1)を0.3g/m
2保持した消臭材料を用い、塗工面を上にして消臭材料を台秤に静置し、JIS L 0803準拠試験用白綿布(カナキン3号)乾布を指に巻いて、荷重100gになる力で、約10cmを往復50回摩擦するラビングテストを行い、その前後において、SEMにて倍率500倍に拡大して消臭材料を観察し、表面状態を確認して、繊維上に保持された臭い除去触媒粒子のラビングテスト後の剥がれの有無を評価した。SEM観察結果を表3および
図1に示す。
さらに、基材(A-1)上に臭い除去触媒(C-1)を0.3g/m
2保持した消臭材料の、前記ラビングテストの前後において、外観(色差)評価および消臭評価1を行った。結果を表3に示す。
【0078】
[実施例2~5,比較例1]
実施例1において、用いたバインダーエマルションを、表3に示す種類および量比としたことの他は、実施例1と同様にして塗工用混合物を製造し、これを用いて実施例1と同様に消臭材料を製造、評価した。結果を表3に示す。なお、消臭評価については、消臭評価1(官能評価)の結果、臭気強度が3未満で充分な消臭性能が得られたものを〇、臭気強度が3以上で消臭性能が不十分であったものを×と評価した。
また、実施例2、3、5および比較例1のラビングテスト前後のSEM観察結果を
図1に示す。
【0079】
【0080】
上記の実施例においては、色差ΔE*が小さく、基材の外観を損なわずに、充分な消臭効果を示す量の臭い除去触媒が基材表面に保持された消臭材料が得られており、ラビングテスト後にも充分に小さい色差ΔE*を有するとともに消臭効果を充分に有していることが示されている。
【0081】
<原料2>
以下の実施例および比較例において、原料としては、上記製造例4で製造の臭い除去触媒C-1、および、以下のものを用いた。
【0082】
基材
基材(A-3):PET不織布(05TH-80、広瀬製紙(株)製)、目付80g/m2)
基材(A-4):ポリエステル製カーテン生地(4Pラスター、ユニベール(株)製)、目付86g/m2)
【0083】
バインダー
[製造例5](バインダーB-4の製造)
撹拌機、還流コンデンサー、滴下装置、及び温度計を備えた反応容器に、イオン交換水730g及びドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム1.2gを仕込み、撹拌下に窒素置換しながら72℃まで昇温した。内温を72℃に保ち、重合開始剤として過硫酸カリウム2.2gを添加し、溶解後、予めイオン交換水320g、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム1.8gにアクリルアミド13g、メタクリル酸メチル280g、アクリル酸nーブチル430g、アクリル酸エチル85g、メタクリル酸17g、メタクリル酸2ヒドロキシエチル17g、ジビニルベンゼン17gを撹拌下に加えて作成した乳化物を、反応溶液内に連続的に4.5時間かけて滴下した。滴下終了後、4時間の熟成を行った。得られた水性エマルジョンを常温まで冷却した後、イオン交換水とアンモニウム水溶液とを添加して固形分44重量%、pH7.5に調整した。DSCによるガラス転移温度(Tg)が-7℃、平均粒径が130nmであるアクリル系バインダー(バインダーB-4)を含むバインダーエマルション(B-4)を得た。
【0084】
[製造例6](バインダーB-5の製造)
撹拌機、還流コンデンサー、滴下装置、及び温度計を備えた反応容器に、イオン交換水670g及びドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム1.8gを仕込み、攪拌下に窒素置換しながら72℃まで昇温した。内温を72℃に保ち、重合開始剤として過硫酸カリウム4.3gを添加し、溶解後、予めイオン交換水350g、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム1.8gにアクリルアミド17.4g、イタコン酸17.4g、メタクリル酸2ヒドロキシエチル17.4g、メタクリル酸メチル163g、アクリル酸nーブチル553g、アクリル酸エチル87g、ジビニルベンゼン17.4gを攪拌下に加えて作成した乳化物を、反応溶液内に連続的に5時間かけて滴下した。滴下終了後、6時間の熟成を行った。得られた水性エマルジョンを常温まで冷却した後、イオン交換水とアンモニウム水溶液とを添加して固形分44.5重量%、pH7.7に調整した。DSCによるガラス転移温度(Tg)が-25℃、平均粒径が120nmであるアクリル系バインダー(バインダーB-5)を含むバインダーエマルション(B-5)を得た。
【0085】
[製造例7](バインダーB’-6の製造)
撹拌機、還流コンデンサー、滴下装置、及び温度計を備えた反応容器に、イオン交換水550g及びドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム1gを仕込み、撹拌下に窒素置換しながら72℃まで昇温した。内温を72℃に保ち、重合開始剤として過硫酸カリウム3gを添加し、溶解後、予めイオン交換水400g、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム3gにアクリルアミド15g、メチルメタクリレート590g、n-ブチルアクリレート330g、2-ヒドロキシエチルメタクリレート20g、メタクリル酸20g、エチレングリコールジメタクリレート15g、t-ドデシルメルカプタン1gを撹拌下に加えて作成した乳化物を、反応溶液内に連続的に4時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間の熟成を行った。得られたバインダー1を含む水溶液を常温まで冷却した後、イオン交換水とアンモニウム水溶液とを添加して固形分50%、pH7.5に調整した。DSCによるガラス転移温度(Tg)が56℃であるアクリル系バインダー(バインダーB’-6)を含むバインダーエマルション(B’-6)を得た。
【0086】
臭い除去触媒
[製造例8](臭い除去触媒C-2の製造)
Ptを含む化合物として、ヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物(富士フイルム和光純薬(株)製)0.05gを秤量し、50ccの蒸留水に溶解させた。この溶液を200ccナス型フラスコに投入し、次いでMFI型ゼオライト(H-ZSM‐5、東ソー(株)製 HSZ 891HOA、シリカ/アルミナ比(SiO2/Al2O3比(mol/mol)):1500、平均粒径:4μm)を2.0g投入して、1%Pt/ゼオライトとなるようにして、Pt化合物溶液をゼオライトに含浸させた。次いでフラスコをエバポレーター装置に取り付け、80℃、真空下にて水を蒸発させ、残った粉体を回収した。回収した粉体を、100%H2流通下で、5℃/minで200℃まで昇温して2時間水素還元を行い、Pt/ゼオライト触媒を得た。得られたPt/ゼオライト触媒をスーパージェットミル(SJ-500、日清エンジニアリング製)で破砕することにより、Ptが1%ゼオライトに担持され、平均粒径2μmである臭い除去触媒(C-2)を調製した。
【0087】
<評価方法>
柔軟性の官能評価
20cm×30cmの塗工品を手に載せて持ち上げ、同じ大きさの塗工前品との比較を行い、以下のように評価した。
〇:塗工前とほとんど変化なし
△:塗工前より少し硬くなったが、まだ柔らかい
×:塗工前よりかなり硬い
【0088】
耐洗濯性試験
SEKマーク繊維製品の洗濯方法(一般社団法人繊維評価技術協議会)に準じて、表4に記載の条件で実施した。
【0089】
【0090】
[実施例6]
・塗工用混合物(塗工液)の製造
臭い除去触媒(C-1)0.85g、臭い除去触媒(C-2)0.85g、化学吸着剤としてケスモンNS-750(東亞合成製)2.0g、バインダーエマルション(B-4)5g、5%シックナーSN615(サンノブコ(株)製)水溶液1.8g、10%DOWFAX2A1(ダウ(株)製)水溶液3g、水22gを混合し、撹拌することにより、粒子が均一に分散された塗工液1を得た。
【0091】
・消臭材料の製造
上記で得た塗工液1をスプレー塗工器(アネスト岩田(株)製、商品名 WIDER1-10E1G)にて、基材(A-3)の片面に対し、室温(23℃)にて、臭い除去触媒(C-1)+臭い除去触媒(C-2)の保持量が1.0 g/m2、ケスモンNS―750の保持量が1.2 g/m2となるよう均質にスプレー塗工した。これを80℃にて10分間乾燥し、前述の保持量で臭い除去触媒成分および化学吸着剤を保持した消臭材料(D-1)を得た。
【0092】
・消臭材料の評価
(柔軟性評価)
上記で得た消臭材料(D-1)を用いて前記の柔軟性官能評価を行った。結果を表5に示す。
(消臭評価2)
上記で得た消臭材料(D-1)を用い、消臭材料100cm2を用い、5Lサンプリングバック(フレックサンプラー、近江オドエアーサービス(株)製)に入れ、空気3Lを導入し、導入口にシリコーン製キャップをした。次いで、20000vol.ppmの酢酸/空気5.5mLを、ガスタイトシリンジを用いてサンプリングバックに注入し、袋内の酢酸濃度を約30ppmになるよう調整した。室温で4h静置したときの袋内の酢酸濃度を検知管81(ガステック(株)製)で評価し、結果を表5に示した。評価においては、臭い除去触媒を入れずにサンプリングバッグのみで同様の評価を行った結果をブランクとし、ブランクに対しての消臭率が70%以上のものを〇、50%以上70%未満のものを△、50%未満のものを×と評価した。また、袋内のアンモニア濃度を約100ppmとした場合、および、袋内のアセトアルデヒド濃度を約14ppmとした場合についても、酢酸の場合と同様にして消臭率を求めて、消臭評価を行い、結果を表5に示した。
【0093】
[実施例7]
実施例6の塗工液の製造において、バインダーエマルション(B-4)の代わりに、バインダーエマルション(B-5)を用いた以外は、同様の方法で塗工液2を得た。得られた塗工液2を塗工液1に代えて用いたことの他は、実施例6の消臭材料の製造と同様の方法で消臭材料(D-2)を作成し、柔軟性評価と消臭評価2を行った。結果を表5に示す。
【0094】
[比較例2]
実施例6の塗工液の製造において、バインダーエマルション(B-4)の代わりに、バインダーエマルション(B’-6)を用いた以外は、同様の方法で塗工液3を得た。得られた塗工液3を塗工液1に代えて用いたことの他は、実施例6の消臭材料の製造と同様の方法で消臭材料(D’-3)を作成し、柔軟性評価と消臭評価2を行った。結果を表5に示す。
【0095】
[比較例3]
消臭材料(D-1)に代えて、基材(A-3)のみを用いて、実施例6と同様に消臭評価2を行った。結果を表5に示す。
【0096】
[実施例8]
実施例6と同様の方法で塗工液1を得た。実施例6の消臭材料の製造において、基材(A-3)の代わりに、基材(A-4)を用いた以外は、実施例6と同様の方法で塗工液1を用いて消臭材料(D-4)を作成し、柔軟性評価と消臭評価2を行った。結果を表5に示す。
【0097】
[実施例9]
実施例7と同様の方法で塗工液2を得た。実施例6の消臭材料の製造において、基材(A-3)の代わりに基材(A-4)を用い、塗工液1の代わりに塗工液2を用いたこと以外は、実施例6と同様の方法で消臭材料(D-5)を作成し、柔軟性評価と消臭評価2を行った。結果を表5に示す。
【0098】
[比較例4]
比較例2と同様の方法で塗工液3を得た。実施例6の消臭材料の製造において、基材(A-3)の代わりに基材(A-4)を用い、塗工液1の代わりに塗工液3を用いたこと以外は、実施例6と同様の方法で消臭材料(D’-6)を作成し、柔軟性評価と消臭評価2を行った。結果を表5に示す。
【0099】
[比較例5]
消臭材料(D-1)に代えて、基材(A-4)のみを用いて、実施例6と同様に消臭評価2を行った。結果を表5に示す。
【0100】
【0101】
[実施例10]
(耐洗濯性評価)
実施例8と同様の方法で消臭材料(D-4)を作成し、前記の耐洗濯性試験を行った。
耐洗濯性試験前後の消臭材料(D-4)について、実施例6と同様に、酢酸での消臭評価2を行った。結果を表6に示す。
また、耐洗濯性試験前後の消臭材料(D-4)の乾燥重量測定、および、基材(A-4)のみでの重量測定を行い、重量変化が基材上に付着した成分(塗工液の固形分)が均質に脱落した変化であるとみなして、耐洗濯性試験後の臭い除去触媒の残存率(消臭剤成分の残存率と同値)を求めたところ、耐洗濯性試験前の38%であった。
【0102】
[実施例11]
消臭材料(D-4)に代えて、実施例9と同様にして得た消臭材料(D-5)を用いたこと以外は、実施例10と同様にして耐洗濯性試験および評価を行った。結果を表6に示す。
【0103】
[比較例6]
消臭材料(D-4)に代えて、比較例4と同様にして得た消臭材料(D’-6)を用いたこと以外は、実施例10と同様にして耐洗濯性試験および評価を行った。結果を表6に示す。
【0104】
[比較例7]
消臭材料(D-4)に代えて、基材(A-4)のみを用いて、実施例10と同様にして耐洗濯性試験および評価を行った。結果を表6に示す。
【0105】
本発明に係る消臭材料は、大気中の臭気物質による臭気を軽減・除去する消臭効果を有するとともに、外観に優れ、接触や洗浄・洗濯による外観の損傷や消臭効果の低減が少ないことから、そのままで、消臭効果を有する各種製品の原料としても好適に用いることができ、たとえば室内用の消臭機能を有する製品の材料等に好適に用いることができる。本発明に係る消臭材料を用いた製品としては、特に制限なく種々の用途に適用することができ、たとえば、壁材、床材、天井材、壁紙、窓枠、タイル等の建材、カーテン、マット、家具、クッション、小物等のインテリア材、肌着、靴下、エプロン、制服、手術着、介護用衣類等の衣類、まくら、布団、布団カバー、シーツ等の寝具、自動車や列車等の車両内装材、ゴミ箱、生ごみ容器等の容器、ごみ焼却場、生鮮処理場等の臭気濃度の高い施設の建材および備品等、消臭材料を適用する各種製品の材料として好適に用いることができる。