(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128957
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】表面テクスチャを有する電気コネクタ用電気コンタクト要素および電気コンタクト要素の表面処理の方法
(51)【国際特許分類】
H01R 13/04 20060101AFI20240913BHJP
H01R 43/16 20060101ALI20240913BHJP
H01R 13/11 20060101ALN20240913BHJP
【FI】
H01R13/04 E
H01R43/16
H01R13/11 K
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024033467
(22)【出願日】2024-03-06
(31)【優先権主張番号】10 2023 106 086.4
(32)【優先日】2023-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】518345815
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ ソリューソンズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110004347
【氏名又は名称】弁理士法人大場国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フェリックス グライナー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ライドナー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン トス
(72)【発明者】
【氏名】エシュテバン ザンチェツ
(72)【発明者】
【氏名】マルティン フィールト
(72)【発明者】
【氏名】マティアス カッセル
(72)【発明者】
【氏名】ヘルゲ シュミット
(72)【発明者】
【氏名】ハイサム キーラ
【テーマコード(参考)】
5E063
【Fターム(参考)】
5E063GA03
5E063GA07
5E063XA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】一定のかつ長期的な電気的性能を維持しつつ嵌合力を最小化するコネクタ用コンタクト要素、および、コンタクト要素の任意の面の構造化を可能とする方法を提供する。
【解決手段】本発明は、接続領域(6)およびコンタクト領域(8)を有する、電気コネクタ(3)用の導電性コンタクト要素(1)に関する。コンタクト領域は、主領域(2)、端部領域(4)およびコンタクト面(5)を備える。コンタクト面は、主領域の少なくとも1つの面(50、52、53)および端部領域の少なくとも1つの面に配置される。端部領域のコンタクト面の内側のみに、補助材料が充填された空洞部が微細構造に配置され、微細構造の領域において、コンタクト面は、表面テクスチャを有する。さらに、本発明は、電気コネクタ用の導電性コンタクト要素のコンタクト領域の端部領域のコンタクト面の内側に補助材料を封入する。
【選択図】
図3a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気コネクタ(3)用の導電性コンタクト要素(1)であって、
前記導電性コンタクト要素(1)は、接続領域(6)およびコンタクト領域(8)を備えており、
前記コンタクト領域(8)は、主領域(2)と、端部領域(4)と、相手側コネクタ(37)の相手側コンタクト要素(39)との電気的接触のためのコンタクト面(5)とを備え、
前記コンタクト面(5)は、前記主領域(2)の少なくとも1つの面(50、51、52、53)および前記端部領域(4)の少なくとも1つの面(50、51、52、53)に配置され、
前記端部領域(4)の前記コンタクト面(5)の内側のみに、補助材料(9)が充填された空洞部(7)が微細構造(11)に配置され、
前記コンタクト面(5)は、前記微細構造(11)の領域において部分的に表面テクスチャ(31)を有する、
導電性コンタクト要素(1)。
【請求項2】
前記表面テクスチャ(31)は、隆起部(15)および凹部(17)を備える、請求項1に記載の導電性コンタクト要素(1)。
【請求項3】
前記表面テクスチャ(31)は、幾何学的要素の所定のパターンを備える、請求項1または2に記載の導電性コンタクト要素(1)。
【請求項4】
前記微細構造(11)は、少なくとも部分的に周期的構造を形成する、請求項1から3のいずれか一項に記載の導電性コンタクト要素(1)。
【請求項5】
前記表面テクスチャ(31)の幾何学的要素は、前記微細構造(11)のそれぞれの空洞部(7)の上方に隆起する、請求項1から4のいずれか一項に記載の導電性コンタクト要素(1)。
【請求項6】
前記コンタクト領域(8)の前記端部領域(4)の少なくとも2つの面(50、51、52、53)は、長手軸(L)に沿って前記コンタクト要素(1)の挿入方向(43)に先細りになっている、請求項1から5のいずれか一項に記載の導電性コンタクト要素(1)。
【請求項7】
前記端部領域(4)の前記少なくとも2つの先細りの面(50、51、52、53)は各々、各縁部外形(30)が少なくとも部分的に三次関数グラフの経路に従うように収束する2つの収束する縁部外形(30)を有し、
前記三次関数グラフの経路は、前記長手軸(L)の経路に依存する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の導電性コンタクト要素(1)。
【請求項8】
前記三次関数グラフは、
【数1】
の式に従い、x
0=前記主領域(2)の全長であり、d=前記主領域(2)の公称厚さであり、xは前記長手軸Lの経路に従う、請求項1から7のいずれか一項に記載の導電性コンタクト要素(1)。
【請求項9】
前記補助材料(9)は、酸化防止剤、腐食抑制剤、潤滑剤および酸の群から選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の導電性コンタクト要素(1)。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の電気コンタクト要素(1)を備える電気コネクタ(3)。
【請求項11】
電気コネクタ(3)用の導電性コンタクト要素(1)のコンタクト領域(8)の端部領域(4)のコンタクト面(5)の内側に補助材料(9)を封入するための方法であって、
- 前記端部領域(4)の前記コンタクト面(5)に前記補助材料(9)を塗布するステップと、
- 前記端部領域(4)の前記コンタクト面(5)に微細構造(11)を形成するステップと、
- 前記微細構造(11)を有する前記端部領域(4)の前記コンタクト面(5)の内側の空洞部(7)に前記補助材料(9)を最終的に封入するステップと
を含み、
幾何学的要素の所定のパターンの形態における表面テクスチャ(31)が、前記端部領域(4)の前記コンタクト面(5)に形成され、
前記端部領域(4)の前記コンタクト面(5)は、前記微細構造(11)を形成するようにレーザ放射(29、29’)で処理され、
前記レーザ放射(29、29’)は、前記端部領域(4)の前記コンタクト面(5)に対して横切る方向に当たり、
前記レーザ放射(29、29’)は、前記コネクタ(3)の長手軸(L)に垂直に当たらない、
方法。
【請求項12】
前記レーザ放射(29、29’)は、前記コンタクト要素(1)の前記長手軸(L)に対する角度βで前記端部領域(4)の前記コンタクト面(5)に当たり、
前記角度βは、0°<β<90°の間の範囲である、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記コンタクト面(5)は、前記微細構造(11)を形成するようにレーザ放射(29、29’)の干渉パターン(27)で処理される、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
最初に前記補助材料(9)が前記コンタクト面(5)に塗布され、その後、前記微細構造(11)が形成される、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記補助材料(9)は、前記微細構造(11)が前記コンタクト面(5)に形成されるときに、前記微細構造(11)の前記空洞部(7)に封入される、請求項11から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクト面を有する電気コネクタ用導電性コンタクト要素、およびそのようなコンタクト要素を備える電気コネクタに関する。
【0002】
本発明はさらに、電気コネクタ用導電性コンタクト要素のコンタクト領域の端部領域のコンタクト面の内側に補助材料を封入する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
非常に多数の設計の電気コネクタおよびそのコンタクト要素が、従来技術において知られている。電気コネクタは、電気的接続を確立するために、適した相手側コネクタと嵌合することが意図されている。電気コネクタは一般に、信号伝送または電力伝送のいずれかに用いられ、2つの電子サブシステム間の分離可能なインターフェースを提供する電気機械システムとして定義され得る。この目的で、電気コネクタは、一般に、コネクタが差し込み接続されたときに相手側コネクタのコンタクト要素と接触する導電性コンタクト要素を有する。一方のコネクタのコンタクト要素はコンタクトピンとして設計され、相手側コネクタのコンタクト要素はばねコンタクトとして設計される場合が多い。コネクタおよび相手側コネクタが互いに差し込み接続されると、ばねコンタクトがコンタクトピンに弾性ばね力を及ぼすことで、高信頼な導電接続を確保する。
【0004】
電気コネクタは、自動車において、例えば電力を伝送し、電気-電子システムをネットワーク化するために用いられる。自動車において、コネクタは、激しい温度変動、振動および腐食媒体にさらされる。動作温度の増大は、特に広く用いられているスズめっき銅系コンタクト要素の場合に、摩耗の増大をもたらす。最も深刻な摩耗メカニズムは、フレッティング腐食である。微小振動により生じるこの振動摩耗は、コンタクト領域における絶縁性酸化物層の形成、およびそれによるコネクタの機能不全をもたらす。
【0005】
例えばスズ、ニッケルまたはそれらの合金を有するベースコンタクト面は、小さな相対運動が生じた場合に、摩擦腐食(フレッティングまたはかじり)を特に受けやすい。さらに、多極コネクタの嵌合力は、消費者が必要とする値の範囲外である場合が多い。例えば貴金属ベースの高価なコンタクト面を用いる場合、冷間圧接の傾向が既知の課題である。
【0006】
高い耐摩耗性に加えて、コネクタの組立ておよびメンテナンスを容易にするために、小さい嵌合力および引抜き力が必要とされている。
【0007】
加えて、コネクタの相手側コネクタとの嵌合中、コンタクト要素のコンタクト面に部分的な摩滅が生じる。摩滅により生じるこの摩耗により、コネクタの嵌合頻度が制限され、よってそれらの動作時間が低減する。
【0008】
嵌合力を最適化するために、従来技術のコネクタにおけるコンタクト要素のコンタクト面の内側に微細構造が形成され、この微細構造に補助材料が封入される。コネクタが相手側コネクタと嵌合すると、コンタクト面がわずかに破れ開き、補助材料が現れる。従来技術においては、コネクタのコンタクト要素のコンタクト面全体が構造化される。補助材料の漏出が嵌合力を低減させるのみならず、このときコンタクト面に付着する補助材料が、導電性の低減をもたらし、したがってより安定性の低い電気コンタクトをもたらす場合がある。加えて、コンタクト要素を製造するとき、特にレーザを用いて微細構造を形成するときに、レーザに向く面を構造化することのみが可能である。コネクタタイプによっては、これは嵌合力を低減させるのに最適な面ではない場合がある。
【0009】
レーザ構造化プロセスは自動プロセスであるため、複数のコンタクト要素がキャリアレールにおいて数ミリメートル間隔で配置され、レーザを用いて1つずつ構造化される。キャリアレールにおけるこの配置に起因して、隣接するコンタクト要素に向く面は、レーザ光線が到達できないため、照射することが不可能である。
【0010】
これは、レーザに向く面のみを照射し、それにより構造化することができることを意味する。これにより、嵌合力の低減が不十分になる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、一定のかつ長期的な電気的性能を維持しつつ嵌合力を最小化する改良されたコネクタ用コンタクト要素、および、コンタクト要素の任意の面の構造化を可能とする方法の両方が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題は、独立請求項の主題により解決される。本発明の有利な実施形態が、従属請求項の対象である。
【0013】
本発明は、より小さい嵌合力を実現するために、コンタクト要素のコンタクト面全体を構造化する必要はないという発想を含む。コンタクト要素の最前部において最も大きい嵌合力に打ち勝つ必要があるが、嵌合力の寄与は、コンタクト要素の長さに沿って減少する。これは、コンタクト要素の一部分のみを構造化すれば十分であることを意味する。
【0014】
特に、本発明は、接続領域およびコンタクト領域を有する電気コンタクト要素を備える。コンタクト領域は、主領域と、端部領域と、相手側コネクタの相手側コンタクト要素との電気的接触のためのコンタクト面とを備える。コンタクト面は、主領域の少なくとも1つの面および端部領域の少なくとも1つの面に配置され、端部領域のコンタクト面の内側のみに、補助材料が充填された空洞部(caverns)が微細構造に配置される。加えて、コンタクト面は、微細構造の領域において部分的に表面テクスチャを有する。
【0015】
本発明に係る解決策は、コンタクト要素に補助材料を堅固に埋め込む。これは、補助材料が、コンタクト面の内側において表面テクスチャに配置される空洞部に充填されることによる。これは、補助材料が例えば樹脂化といった悪影響を受けることを防止する。補助材料の堅固な埋め込みにより、補助材料の不所望な損失が防止される。液体の補助材料に加えて、固体の補助材料が、このように空洞部の表面テクスチャに封入されてもよい。加えて、嵌合力が最も大きいが相手側コネクタとの電気的接触が形成されない領域に微細構造を配置することにより、漏出した補助材料が電気的性能に影響を及ぼさないことが確実になる。
【0016】
添加剤とも呼ばれる補助材料は、特定の特性を実現または改善するために少量添加される物質である。
【0017】
空洞部は、コンタクト面の内側に人為的に形成される空洞である。コンタクト面の下方への空洞部の配置は、空洞部がコンタクト面における出口を有しないか、またはせいぜい、コンタクト面から空洞部への破壊口(breakthrough)を形成しないと空洞部に充填される補助材料に到達することができないほどに狭い出口を有しないことを意味する。
【0018】
本発明の有利なさらなる発展例によれば、表面テクスチャは、隆起部および凹部を備える。隆起部および凹部の配置により、幾何学的要素の所定のパターンを有する表面テクスチャが得られる。
【0019】
テクスチャ表面およびまたは表面テクスチャは、幾何学的要素の決定的なパターンを有する表面である。それらの要素は、構造の奥行きまたは高さの、その横方向範囲に対する高い比を有してよい。テクスチャ表面は、少なくとも1つの方向に周期性を有してよい。テクスチャの例は、円形、楕円形、正方形、直線状またはV字形状の断面を有するコンタクト面における隆起部または凹部である。表面テクスチャまたはテクスチャ表面により、コネクタおよび相手側コネクタが嵌合したときのコンタクト要素のコンタクト面と相手側コネクタのコンタクト面との間の接触面積が低減する。これにより、コンタクト面間に働く摩擦力が低減し、これに伴って、必要な嵌合力の低減が有利に得られる。
加えて、コンタクト面間の接触点が増加するため、テクスチャ表面により、コネクタのコンタクト面と相手側コネクタのコンタクト面との間の電気的接触抵抗が低減する。さらなる利点は、コンタクト面の摩滅がテクスチャ化により低減することである。
【0020】
本発明のさらなる有利な発展例によれば、微細構造は、少なくとも部分的に周期的構造を形成する。そのような構造は、製造が容易であり、再現可能性の利点を有する。周期的構造は、例えば線パターン、ドットパターン、ハニカムパターン、十字パターン等を形成することができる。
【0021】
微細構造は、マイクロメートル範囲の細密な構造である。これは、特定の要素、この場合は空洞部の実質的に規則的な配置である。空洞部における空間的寸法は、0.1~50μmの範囲であることが好ましい。
【0022】
微細構造は、例えば、コンタクト面に平行に延在し、表面の近傍に配置されてよい。これにより、摩滅の間に、コンタクト面から微細構造の空洞部へと開口部が形成されることが確実になり、それにより、補助材料が空洞部からコンタクト面へと漏れ、そこで所望の肯定的効果を実現する。
【0023】
本発明のさらなる有利な発展例によれば、表面テクスチャの幾何学的要素は、微細構造のそれぞれの空洞部の上方に隆起する。この実施形態において、コンタクト面は、瘤部(knob)によりテクスチャ化されてよく、この瘤部には、補助材料が充填された空洞部が配置される。これにより、テクスチャ化されたコンタクト面、およびコンタクト面の内側に位置する補助材料を有する空洞微細構造の利点を、特に簡単かつ省スペースな方法で実現することができる。表面テクスチャおよび空洞部の微細構造を交互に、すなわち互いにオフセットして配置することも、勿論可能である。
【0024】
本発明のさらなる有利な発展例によれば、コンタクト領域の端部領域の少なくとも2つの面(side surfaces)は、長手軸Lに沿ってコンタクト要素の挿入方向に先細りになっている。有利には、端部領域の少なくとも2つの先細りの面は各々、各縁部外形が少なくとも部分的に三次関数グラフの経路に従うように収束する2つの収束する縁部外形(edge contours)を有し、三次関数グラフの経路は、長手軸Lの経路に依存する。
【0025】
本発明のさらなる有利な発展例によれば、三次関数グラフは、
【数1】
の式に従い、x
0=主領域の全長であり、d=主領域の公称厚さであり、xは長手軸Lの経路に従う。
【0026】
コネクタを相手側コネクタと嵌合させるときの嵌合力の主な部分は、コンタクト要素のコンタクト領域の端部領域に印加する必要がある。この端部領域は、相手側コンタクト要素のばねコンタクトを押し広げなければならない。結果として、この領域における形状の最適化および嵌合力の低減が、特に重要である。端部領域の有利な設計により、嵌合力がさらに低減し、コンタクト要素はまた、相手側コンタクト要素のジオメトリの影響を受けない。
【0027】
本発明のさらなる有利な発展例によれば、補助材料は、酸化防止剤、腐食抑制剤、潤滑剤および酸の群から選択されてよい。補助材料は、固体または液体の補助材料、例えば、黒鉛、カーボンナノチューブ(CNT)、MoS2、AgS2またはこれらの物質の混合物などのオイル、グリース、ペーストまたは固体潤滑剤であってよい。
【0028】
本発明に係るコンタクト要素は、本発明に係る方法により製造することができる。
【0029】
本発明によれば、電気コネクタ用の導電性コンタクト要素のコンタクト領域の端部領域のコンタクト面の内側に補助材料を封入するための方法であって、端部領域のコンタクト面に補助材料を塗布するステップと、端部領域のコンタクト面に微細構造を形成するステップと、端部領域のコンタクト面の内側の微細構造の空洞部に補助材料を封入するステップとを含む方法が提供される。幾何学的要素の所定のパターンの形態における表面テクスチャが、端部領域のコンタクト面に形成され、端部領域のコンタクト面は、微細構造を形成するようにレーザ放射で処理される。レーザ放射は、コンタクト要素の長手軸Lに垂直にではなく、端部領域のコンタクト面に対して横切る方向に当たる。
【0030】
本発明に係る方法の一実施形態において、レーザ放射は、コンタクト要素の長手軸Lに対する角度βで端部領域のコンタクト面に当たり、この角度βは、0°<β<90°の間の範囲である。
【0031】
表面テクスチャおよび微細構造をコンタクト要素の端部領域に形成することにより、レーザ放射を用いてコンタクト要素の任意の面を有利に処理することができる。レーザ光線は、キャリアレールに配置されたときに隣接するコンタクト要素に向くコンタクト要素の面を処理することもできる。
【0032】
端部領域のさらなる有利な形状はまた、レーザ光線が長手軸Lに垂直にコンタクト要素に当たらなくとも、レーザ光線が照射対象の端部領域の表面に横切る方向に当たることにより、均一な照射が可能であることを意味する。このタイプの照射を用いて、微細構造を非常に短時間に正確かつ再現可能な方法で大きな面積にわたって形成できることが有利である。
【0033】
特に有利な実施形態において、コンタクト面は、微細構造を形成するようにレーザ放射の干渉パターンで処理される。2つ以上の重畳された、好ましくはコヒーレントな直線偏光のレーザ光線が、選択的に調節可能な干渉パターンを生成する。レーザ放射の強度は、干渉パターン内で分布する。正の干渉の場合、これは増大し、コンタクト面が溶融する特に高温の領域をもたらす。一方、最小の強度においては、コンタクト面が大幅に低温であるため、コンタクト面が溶融せず、すなわちこの箇所に存在するすべての補助材料が存在したままとなるが、正の干渉の領域では蒸発する。加えて、(負の干渉の領域における)最低温度と(正の干渉の領域における)最高温度との間の大きい温度勾配により、コンタクト面における溶融材料の対流およびテクスチャの形成が生じる。
テクスチャは、コンタクト面における材料が最高温度の領域から最低温度の領域へと移送されるときに形成される。
【0034】
本発明に係る方法のさらなる実施形態において、補助材料が最初にコンタクト面に塗布されてよく、次いで微細構造が形成されてよい。例えば、コンタクト面は、最初に補助材料で被覆されてよく、すなわち完全に覆われてよく、これにより、補助材料の塗布が容易になる。微細構造を形成すると、空洞部が後に形成される領域、すなわち補助材料が微細構造に封入される領域に補助材料が適用される。この目的で、コンタクト面がレーザ放射で処理される。
【0035】
一実施形態によれば、補助材料は、微細構造の形成中に微細構造に封入されてよい。この実施形態によれば、微細構造を形成するステップと、補助材料を微細構造に、すなわち微細構造の空洞部に封入するステップとが、1つのステップで行われ、これにより、本発明に係る方法が迅速化する。
【0036】
本発明のより良好な理解のために、以下の図面に示す実施形態に関連して本発明をより詳細に説明する。同じ部分には、同じ参照符号および同じ構成要素名が付されている。さらに、図示および説明されている様々な実施形態におけるいくつかの特徴または特徴の組合せは、独立した発明的解決策または本発明に係る解決策に相当する場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】コンタクト要素の相手側コンタクト要素との嵌合の模式的な断面図である。
【
図2】本発明に係るコンタクト要素の模式的な側面図である。
【
図3a】本発明に係るコンタクト要素の模式的な上面図である。
【
図3b】Rを有する本発明に係るコンタクト要素の模式的な上面図である。
【
図4a】本発明に係るコンタクト要素の上面の模式図である。
【
図4b】本発明に係るコンタクト要素の面の模式図である。
【
図5】本発明に係るコンタクト要素の面の拡大模式図である。
【
図6a】本発明に係るコンタクト要素の上面のさらなる実施形態の模式図である。
【
図6b】本発明に係るコンタクト要素の面のさらなる実施形態の模式図である。
【
図7a】本発明に係るコンタクト要素の上面のさらなる実施形態の模式図である。
【
図7b】本発明に係るコンタクト要素の上面のさらなる実施形態の模式図である。
【
図7c】本発明に係るコンタクト要素の面のさらなる実施形態の模式図である。
【
図8】本発明に係るコンタクト要素の面のさらなる実施形態の模式図である。
【
図9】本発明に係る方法によるレーザを用いたコンタクト面の表面処理の模式図である。
【
図10】本発明の方法によるレーザ処理後のコンタクト面の模式的な断面図である。
【
図11】本発明の方法によるレーザ処理の模式図である。
【
図12】本発明に係るコンタクト要素のさらなる実施形態の模式図である。
【
図13】本発明に係るコンタクト要素のさらなる実施形態のレーザ処理の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、コネクタ3のコンタクト要素1の、相手側コネクタ37の相手側コンタクト要素39との嵌合を模式的に示す。嵌合中、コンタクト要素1は、相対挿入方向43に沿って相手側コンタクト要素39に対して移動する。コネクタを相手側コネクタ37に挿入することにより、コンタクト要素1のコンタクト領域8が相手側コンタクト要素39の相手側コンタクト領域41と接触する。この過程で、相手側コンタクト領域41の弾性変形可能なばねコンタクト47が、コンタクト要素1がばねコンタクト47間で力嵌め状態に保持される程度まで押し広げられる。
ばねコンタクト47によりコンタクト領域8のコンタクト面5に及ぼされる接触圧力に起因して、コンタクト面5とばねコンタクト47との間に摩擦力が働き、コネクタ3の相手側コネクタ37との嵌合中にこれに打ち勝つ必要がある。摩擦力に打ち勝つために必要な力、いわゆる嵌合力が、本発明に係るコネクタ3のコンタクト要素1の構成により有利に最小化されるべきである。
【0039】
図2、
図3aおよび
図3bは、本発明に係るコネクタ3のコンタクト要素1を様々な視点から示す。
図2は、必要なケーブルを取り付けるための接続領域6と、相手側コンタクト要素39との電気的接続を確立するためのコンタクト領域8とを有する、コンタクト要素1の側面図を示す。コンタクト領域8は、主領域2および端部領域4を備える。端部領域4は、差し込み接続されたときに相手側コンタクト要素39と最初に接触するコンタクト要素1の部分であり、例えば図示の実施形態においては1mmである。端部領域4が相手側コンタクト領域41のばねコンタクト47と接触すると、ばねコンタクト47を押し広げるために、第1の嵌合力に打ち勝つ必要がある。最初にばねコンタクト47が押し広げられて初めて、主領域2がばねコンタクト47と接触する。
ばねコンタクト47は、所望の嵌合位置に達するまで、主領域2により押し広げられ続ける。結果として、端部領域4がばねコンタクト47と接触するときに、最も大きい嵌合力に打ち勝つ必要があることが明確である。
【0040】
図3aは、端部領域4を有するコンタクト要素1の上面図を示す。
図2および
図3aから見ることができるように、コンタクト要素1は、その長さが長手軸Lに沿ってx方向に延びる。コンタクト領域8は、4つの面を備えることが好ましい。
図3の平面図において視認可能な上面50は、x-y平面に延在する。コンタクト領域8の下面51は、これに平行に配置される(
図2)。第1の面52および第2の面53は、各々x-z平面において、上面50および下面51に対して横切る向きに配置される。コンタクト要素1と相手側コンタクト要素39との間の電気的接触は、コンタクト領域8におけるコンタクト面5を介して確立される。
コンタクト面5は、コンタクト領域8の任意の数の面50、51、52、53に配置されてよく、それにより、主領域2の少なくとも1つの面および端部領域4の少なくとも1つの面に有利に配置される。端部領域4のコンタクト面5のみが、部分的に表面テクスチャ31を有し、補助材料9が充填された空洞部7が、表面テクスチャ31の領域においてコンタクト面5の内側に配置される。空洞部7は、コンタクト面5の内側において微細構造11に配置される。図示の実施形態において、コンタクト面5は、xy平面に延在する上面50に配置される。上面50および下面51は、例えば第1の面52および第2の面53よりも大きい表面積を有する。
【0041】
微細構造および表面テクスチャをコンタクト領域8の端部領域4のみに配置することにより、同じ電気的性能を維持しつつ、嵌合力が有利に最小化される。嵌合中、漏出した補助材料が端部領域の表面に分散する。これは、2つのコネクタ3、37を嵌合させるために必要な嵌合力がより小さくなることを意味する。同時に、余分な補助材料が主領域2のコンタクト面5に到達することが防止される。コンタクト要素1と相手側コンタクト要素39との間の電気的接触は、この箇所で生じる。これは、電気的接触および安定した電気的接続が、主領域2のコンタクト面5における余分な補助材料による影響を受けないことを意味する。
【0042】
図3bは、コンタクト要素1のコンタクト領域8のさらなる例示的実施形態を示す。有利には、中間部分10が、端部領域4と主領域2との間に配置されてよい。この有利な実施形態において、中間部分10は、導電性材料からなる。好ましくは、中間部分10は、主領域2と同じ材料から作製される。端部領域4は、プラスチックなどの非導電性材料から作製されることが有利である。ただし、端部領域4も導電性材料から作製されることも可能である。この実施形態において、コンタクト面5は、端部領域4の少なくとも1つの面、中間部分10の少なくとも1つの面、および主領域2の少なくとも1つの面に配置されることが好ましい。
端部領域4のコンタクト面5および中間部分10のコンタクト面5は、部分的に表面テクスチャ31を有し、補助材料9が充填された空洞部7が、表面テクスチャ31の領域においてコンタクト面5の内側に配置される。空洞部7は、コンタクト面5の内側において微細構造11に配置される。この実施形態は、特に、嵌合力の低減が特に重要である、例えばエレクトロモビリティに用いられるような高電流コネクタに用いられる。コンタクト要素の、有利なものとして言及されている他の特徴も、勿論この実施形態に適用可能である。
【0043】
有利には、端部領域4が、プラスチックなどの、例えば100~400℃の低い溶融温度または軟化温度を有する非導電性材料から作製される場合、補助材料9を有する空洞部7を形成するようにベース材料13を形成することができるので、導電性被膜25が設けられなくてもよい。ただし、非導電性被膜25が端部領域4に施されてもよく、これは補助材料9を封入した空洞部7を形成するのに有利である。
【0044】
図4~
図8は、コンタクト要素1のコンタクト領域8の様々な有利な実施形態を示す。コンタクト領域8の向きは、隣接する座標系において各場合で規定される。
図4は、コンタクト領域8の上面50の上面図を示し、
図4bは、コンタクト領域8の第1の面52の上面図を示す。コンタクト領域8の有利な実施形態によれば、コンタクト領域8の上面50および下面51は、例えばテクスチャ化され、微細構造11を有する。
【0045】
加えて、端部領域4の面は、コンタクト要素1の挿入方向において長手軸Lに沿って先細りになっている。コンタクト領域8の下面51および第2の面53は、形状が上面50および第1の面52に対応する。図示の
図4aおよび
図4bにおいて、コンタクト領域8は、第1の面52よりも大きい表面積を有する上面50を有する。図示の上面50および第1の面52の端部領域は各々、異なる形状を有する。いずれの形状も、本発明に係る端部領域の実施形態を表し、その各々にコンタクト面5が配置されてよい。この場合、縁部外形30の有利な設計、ならびに、テクスチャおよび微細構造を有する端部領域4の上面50および下面51の有利な設計の両方により、嵌合力の低減が実現される。
【0046】
長手軸Lに沿った面の先細りは、第1の面52についての一例として
図5において詳細に示されている。第1の面52は、上側および下側の縁部外形30を有し、ここで「上側」および「下側」という用語は、長手軸Lに関してz軸に沿って定義される。2つの縁部外形30は、各縁部外形30が少なくとも部分的に三次関数グラフの経路に従うように収束する。三次関数グラフの経路は、長手軸Lの経路に依存する。よって、例えば、上側の縁部外形30は、長手軸Lに沿って三次関数グラフに従う。同じことが、下側の縁部外形30にも当てはまる。
【0047】
さらに、
図5に示す第1の面52の上側および下側の縁部外形30の三次関数グラフの経路は、
【数1】
の式に従い、x
0=主領域2の全長、d=主領域2の公称厚さであり、xは、長手軸Lの経路に従う。長さx
0は、座標の原点を指す。x
0座標から、縁部外形30の各々が式(1)の経路に従うことが有利である。端部領域の2つの縁部外形のこの有利な形状により、コネクタ3を相手側コネクタ37と嵌合させるときの必要な嵌合力が最小化する。ただし、2つの縁部外形が上記の式(1)から逸脱する場合もあり、その場合も嵌合力の低減を実現できることは明確である。また、詳細に説明した第1の面52の実施形態が、第2の面53にも当てはまることは明確である。
【0048】
ただし、さらなる有利な実施形態においては、式(1)に従う縁部外形を有する端部領域4の面がテクスチャ化され微細構造11を有することも可能であることが明確に理解される。結果として、任意の面が、これらの有利な特徴を組合せでまたは個別に有してよい。
【0049】
例えば、この実施形態における上面50および下面51は、1.2mmの幅b1を有し、第1の面52および第2の面53は、0.6mmの幅b2を有する。ただし、本実施形態はこのサイズに限定されず、適用分野に応じて任意のコネクタ幅が実現されてよい。有利には、コネクタ幅b1は0.3mmから12mmまでの範囲であり、コネクタ幅b2は0.3mmから2mmまでの範囲である。
【0050】
コンタクト領域8のさらなる有利な実施形態が、
図6に示されている。
図6aは、コンタクト領域8の上面50の上面図を示し、
図6bは、コンタクト領域8の第1の面52の上面図を示す。この実施形態においては、全ての面50、51、52、53が、式(1)に対応する。特に、この有利な実施形態におけるコンタクト領域8は、表面テクスチャを有し、補助材料が充填された空洞部が内側に配置されるコンタクト面5を、端部領域の全ての面50、51、52、53に有する。この実施形態は、正方形プラグに特に好適であり、この場合、全ての4つの面50、51、52、53にコンタクト面が配置される。例えば、コンタクト領域8の幅b
2は、上面50および下面51の両方について、また第1の面52および第2の面53についても、0.63mmである。ただし、面の他の寸法もこの実施形態の意義の範囲内であることが分かる。
【0051】
したがって、上面50および第1の面52について示されている実施形態は、下面51および第2の面53にも当てはまることは明確である。
【0052】
図7は、コンタクト領域8の上面50および第1の面52のさらなる有利な実施形態を示す。
図7aおよび
図7bは、コンタクト領域8の上面50の2つの有利な実施形態を示す。それぞれの端部領域4は、異なるように形成される。
図7cは、コンタクト領域8の第1の面52のさらなる有利な実施形態を示す。第1の面52は、
図6bに示す実施形態よりも大きい表面積を有する。例えば、面52、53は、0.8mmの幅b
3を有する。
【0053】
図8は、コンタクト領域8の第1の面52のさらなる有利な実施形態を示し、ここでは、端部領域4が切り取られることが示されている。
図8における切断線Sは、コネクタが本発明の範囲から逸脱しない限りにおいて端部領域4の先端が切り取られてよく、この場合も本発明の肯定的に言及されている効果が実現されることを示す。
【0054】
これらの異なる実施形態は、異なるコンタクト領域を有する異なるコネクタタイプに用いられる。本発明に係るコンタクト要素および本発明に係る方法は、種々の異なるコネクタタイプに用いることができ、したがって特定のタイプのコネクタに限定されないことを示すことが意図されている。
【0055】
コンタクト要素1のコンタクト領域8の端部領域4のコンタクト面5の内側に補助材料9を封入するための本発明に係る方法を、下記で説明する。下記で説明する方法は、端部領域4および中間部分10を有するコンタクト要素に補助材料を封入するために用いることもできることは明確である。
【0056】
図9は、コンタクト面5の内側に補助材料9を封入するための本発明に係る方法を示す。本発明に係る方法の開始材料は、コネクタ3のコンタクト要素1のコンタクト領域8であり、コンタクト領域8は、主領域2と、端部領域4と、相手側コネクタ37の相手側コンタクト要素39との機械的かつ電気的な接触のためのコンタクト面5とを備える。主領域2は、導電性であり、ベース材料13からなる。ベース材料13は、例えば銅または銅合金であってよい。加えて、
図9aに示すように、例えば、被膜25が、ベース材料13の表面に施されていてよい。被膜25は、例えば、スズ、ニッケル、銀またはスズ、ニッケル、銀および/もしくは他の元素の合金を含んでよい。
被膜25は、例えば溶融スズめっきまたは電気めっきによりベース材料13に施されていてよく、それにより、さらなる中間層が可能となる。ベース材料とは逆向きの被膜25の面が、コンタクト面5を形成する。端部領域4も導電性であってよく、同じことが主領域2についても当てはまる。端部領域4が、例えば100~400℃の低い溶融温度または軟化温度を有する非導電性材料、例えばプラスチックから作製される場合、補助材料9を有する空洞部7を形成するようにベース材料13を形成することができるので、導電性被膜25が設けられないことが有利である。ただし、非導電性被膜25が端部領域4に施されてもよく、これは補助材料9の格納した空洞部7を形成するのに有利である。
【0057】
最初に、補助材料9がコンタクト面5に塗布される。例えば、コンタクト面5は、例えば
図9aに示すように、完全に補助材料9で被覆されてよい。補助材料9は、黒鉛、CNT、MoS
2、AgS
2またはそれらの混合物などのオイル、グリース、ペーストまたは固体潤滑剤であってよい。
【0058】
補助材料9がコンタクト面5に塗布された後、次いで微細構造11が形成される。図示の例示的プロセスにおいては、補助材料9が、微細構造11の形成中に微細構造11に封入される。この目的で、コンタクト面は、レーザ放射29、29’により干渉パターン27で処理される。レーザを用いることにより、非常に大きいコンタクト面を非常に短時間で微細構造化できることが有利である。
【0059】
図示の実施形態において、例えば、微細構造11は、周期的に交替する隆起部15および凹部17からなり、凹部17は溝を形成し、隆起部はその間に壁を形成する。これにより、周期長pを有する微細構造11としての規則的な周期的ストリップ構造が得られる。
【0060】
レーザ干渉テクスチャリングにおいて、2つ以上の重畳された、好ましくはコヒーレントなまたは直線偏光のレーザ光線29、29’が、特異的に調節可能な干渉パターン27を生成する。このための前提条件は、レーザ光線29、29’の空間的かつ時間的なコヒーレンスである。空間的コヒーレンスは、環境、または干渉放射を生成するための装置の光学素子との相互作用により損なわれる場合がある。時間的コヒーレンスは、レーザ放射29、29’のスペクトル帯域幅λに依存する。スペクトル帯域幅の共通コヒーレンス長は、266から1064nmまでの範囲である。
【0061】
レーザ放射ならびにレーザ光線の数および互いに対する位置合わせを選択することにより、異なる干渉パターン27、例えば線パターン、ドットパターン、ハニカムパターン、十字パターン等を生成することができる。干渉パターン27は、端部領域4のコンタクト面5の微細構造11および表面テクスチャ31を画定する。
【0062】
端部領域4のコンタクト面5がレーザ放射29および29’からなる干渉パターン27で処理される場合、2つ以上の重畳されたコヒーレントな直線偏光のレーザ光線29および29’が、特異的に調節可能な干渉パターン27を生成する。レーザ放射の強度は、干渉パターン27内で分布する。正の干渉(+)の場合、これは増大し、端部領域4のコンタクト面5が溶融する特に高温の領域をもたらす。他方、負の干渉(-)による最小の強度においては、端部領域4のコンタクト面5が大幅に低温であるため、端部領域4のコンタクト面5が溶融せず、言い換えればこの箇所に位置する補助材料9が存在したままとなるが、正の干渉の領域では蒸発する。
加えて、(負の干渉の領域における)最低温度と(正の干渉の領域における)最高温度との間の大きい温度勾配により、端部領域4のコンタクト面5の溶融材料の対流およびテクスチャ31の形成が生じる。テクスチャ31は、端部領域4のコンタクト面5の材料が最高温度の領域から最低温度の領域へと移送されることにより形成される。
【0063】
補助材料9の層が塗布された導電性コンタクト領域8の端部領域4のコンタクト面5に、レーザ放射29および29’からなる干渉パターン27が照射される場合(
図9a)、以下のことが生じる。正の干渉(+)の領域においては、補助材料9が蒸発および揮発し、一方で負の干渉(-)の領域においては、補助材料9が端部領域4のコンタクト面5に残留する。さらに、端部領域4のコンタクト面5の材料は、正の干渉の領域において溶融し、負の干渉の領域へと誘導されるように溢れ出し、そこで隆起部15を形成しながら、そこに残留する補助材料9を覆う。これにより、端部領域4のコンタクト面5を
図9bおよび
図9cに示すように形成することができ、これは瘤状構造33を有し、各瘤部33は、補助材料が充填された空洞7を有する。
【0064】
したがって、干渉テクスチャリングの間、微細構造11が形成されるときに、補助材料9が微細構造11に封入される。同時に、端部領域4のコンタクト面5のテクスチャ化31が生じる。図示の実施形態において、表面テクスチャ31は、瘤状構造33により、規則的に配置された瘤部35およびその間の凹部17を伴って形成される。図示の実施形態例において、表面テクスチャ31、すなわち瘤状構造33は、補助材料9が充填された空洞部7の微細構造11と合致する。表面テクスチャ31は、微細構造11の空洞部7の上方に隆起する。図示の例において、補助材料9が充填された空洞部7が、各瘤部35に配置される。
【0065】
図10において、導電性コンタクト領域8を有する本発明に係るコンタクト要素1の部分が、相手側コンタクト要素39と差し込み接続されたときの模式的な部分断面図で示されている。
【0066】
コンタクト領域8は、例えばコンタクトピンとして設計され、断面図で示されている。コンタクト領域8は、導電性であり、ベース材料13、例えば銅または銅合金からなる。コンタクト領域8は、コンタクト面5を有する。補助材料9が充填された空洞部7が、コンタクト面5の内側において微細構造11に配置される。図示の実施形態におけるコンタクト面5は、周期的に交替する隆起部15および凹部17からなる表面テクスチャ31を有する。補助材料9が充填された微細構造11の空洞部7が、各隆起部15に配置される。よって、
図10のコンタクト領域8の表面テクスチャ31および微細構造11は、被膜25が省かれ補助材料9がベース材料13に直接塗布されている点を除き、
図9のものと実質的に対応する。
【0067】
図10はまた、相手側コネクタ37の相手側コンタクト要素39の一部を示す。相手側コネクタ37は、コネクタ3と差し込み接続されることが意図されている。相手側コンタクト要素39は、コネクタ3が相手側コネクタ37と嵌合したときにコンタクト要素1のコンタクト領域8と接触する相手側コンタクト領域41を有する。相手側コンタクト領域41は、弾性変形可能なばねコンタクトとして設計される。
【0068】
コネクタ3および相手側コネクタ37が
図10に示すように互いに差し込み接続される場合、導電接続を確立するために、相手側コンタクト領域41のさらなるコンタクト面がコンタクト領域8のコンタクト面5に接触する。コネクタ3の相手側コネクタ37との嵌合中、コンタクト要素1は、相対挿入方向43に沿って相手側コンタクト要素39に対して移動する。
【0069】
相手側コンタクト要素39の相手側コンタクト領域41によりコンタクト要素1のコンタクト領域8に及ぼされる接触圧力に起因して、コンタクト面5と相手側コンタクト領域41の他方のコンタクト面との間に摩擦力が働き、コネクタ3の相手側コネクタ37との嵌合中にこれに打ち勝つ必要がある。これらの力を低減するために、コンタクト面5に表面テクスチャ31が設けられる。加えて、コンタクト領域8の端部領域4の表面テクスチャ31および微細構造11は、嵌合中に部分的に破壊される。摩擦力により、コンタクト面5の内側に予め配置された閉じた空洞部7へのアクセスが生じる。空洞部7は、コンタクト面5に向かって開く。補助材料9が空洞部7から漏れ、コンタクト面5における補助材料9の薄膜45を形成することができ、これは例えば摩擦の低減および腐食の保護といった所望の肯定的効果を有する。
【0070】
図11は、レーザ干渉テクスチャリングの間におけるコンタクト要素1に関するレーザの位置および向きを模式的に示す。一例として、多数のコンタクト要素1が互いに近くに配置される。
図11は、複数のコンタクト要素1の例示的な上面図を示す。一方側がキャリアレールに固定されたコンタクト要素1のそのような配置は、レーザを用いた自動プロセスにおいて可能な限り迅速かつ効率的に多数のコンタクト要素を処理することを可能とするために用いられる。2つの隣接するコンタクト要素1の間の距離は、例えば1.2mmであってよい。
【0071】
結果として、そのような配置では、コンタクト領域8の主領域2のレーザ処理が限られた範囲でのみ可能であることが明確である。レーザに向く1つの面のみを、レーザ放射を用いて処理することができる。したがって、隣接するコンタクト要素1に向く主領域2の面を処理することはほとんど不可能である。
【0072】
本発明に係る方法においては、コンタクト領域8の端部領域4のみがレーザ放射により処理されることが有利である。よって、本発明に係る方法は、レーザ放射により、キャリアレールにおいて近接配置されたコンタクト要素1を簡単にかつ高い費用効果で処理するために用いることができる。
【0073】
図11に示すように、レーザ放射が端部領域4のコンタクト面5に対して横切る方向に当たる。これは、所望の領域における均一な表面処理を実現する。ただし、レーザ放射は、コンタクト要素3の長手軸Lに垂直に当たらない。この軸は、コンタクト要素の長さ全体に沿って延びる。特に、処理対象のコンタクト要素1の長手軸Lとレーザ放射との間の角度βは、0°<β<90°の範囲である。
【0074】
図12は、コンタクト要素1の別の例示的実施形態を示す。この実施形態において、コンタクト領域8は、上面および下面50、51よりも面積の大きい面52、53を有する。左面52および右面53はまた、この実施形態においてはxz平面に延在し、上面50および下面51はxy平面に延在する。一例として、コンタクト領域8の端部領域4のテクスチャ化の対象となる表面は、面52、53に配置される。
【0075】
図13に示すように、本発明に係る方法は、キャリアレール49に取り付けられ、その面52、53が処理対象となるコンタクト要素1の、レーザ放射29、29’による表面処理を可能とする。前述したように、キャリアレール49において互いに隣接して配置された2つのコンタクト要素1の間の距離は、面全体をテクスチャ化するには小さすぎる。
【符号の説明】
【0076】
1 コンタクト要素
2 主領域
3 コネクタ
4 端部領域
5 コンタクト面
6 接続領域
7 空洞部
8 コンタクト領域
9 補助材料
10 中間部分
11 微細構造
13 ベース材料
15 隆起部
17 凹部
19 均一なパターン
25 被膜
27 干渉パターン
29、29’ レーザ放射
30 縁部外形
31 表面テクスチャ
33 瘤状構造
35 瘤部
37 相手側コネクタ
39 相手側コンタクト要素
41 相手側コンタクト領域
43 挿入方向
45 補助材料から形成される薄膜
47 ばねコンタクト
49 キャリアレール
50 上面
51 下面
52 第1の面
53 第2の面
L 長手軸
S 切断線
p 周期長
λ スペクトル帯域幅レーザ放射
a キャリアレールにおけるコネクタの間隔
+ 正の干渉
- 負の干渉
α 角度
β 角度
【手続補正書】
【提出日】2024-05-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気コネクタ(3)用の導電性コンタクト要素(1)であって、
前記導電性コンタクト要素(1)は、接続領域(6)およびコンタクト領域(8)を備えており、
前記コンタクト領域(8)は、主領域(2)と、端部領域(4)と、相手側コネクタ(37)の相手側コンタクト要素(39)との電気的接触のためのコンタクト面(5)とを備え、
前記コンタクト面(5)は、前記主領域(2)の少なくとも1つの面(50、51、52、53)および前記端部領域(4)の少なくとも1つの面(50、51、52、53)に配置され、
前記端部領域(4)の前記コンタクト面(5)の内側のみに、補助材料(9)が充填された空洞部(7)が微細構造(11)に配置され、
前記コンタクト面(5)は、前記微細構造(11)の領域において部分的に表面テクスチャ(31)を有する、
導電性コンタクト要素(1)。
【請求項2】
前記表面テクスチャ(31)は、隆起部(15)および凹部(17)を備える、
請求項1に記載の導電性コンタクト要素(1)。
【請求項3】
前記表面テクスチャ(31)は、幾何学的要素の所定のパターンを備える、
請求項1に記載の導電性コンタクト要素(1)。
【請求項4】
前記微細構造(11)は、少なくとも部分的に周期的構造を形成する、
請求項1に記載の導電性コンタクト要素(1)。
【請求項5】
前記表面テクスチャ(31)の幾何学的要素は、前記微細構造(11)のそれぞれの空洞部(7)の上方に隆起する、
請求項1に記載の導電性コンタクト要素(1)。
【請求項6】
前記コンタクト領域(8)の前記端部領域(4)の少なくとも2つの面(50、51、52、53)は、長手軸(L)に沿って前記導電性コンタクト要素(1)の挿入方向(43)に先細りになっている、
請求項1に記載の導電性コンタクト要素(1)。
【請求項7】
前記端部領域(4)の前記少なくとも2つの先細りの面(50、51、52、53)は各々、各縁部外形(30)が少なくとも部分的に三次関数グラフの経路に従うように収束する2つの収束する縁部外形(30)を有し、
前記三次関数グラフの経路は、前記長手軸(L)の経路に依存する、
請求項6に記載の導電性コンタクト要素(1)。
【請求項8】
前記三次関数グラフは、
の式に従い、x
0=前記主領域(2)の全長であり、d=前記主領域(2)の公称厚さであり、xは前記長手軸Lの経路に従う、
請求項7に記載の導電性コンタクト要素(1)。
【請求項9】
前記補助材料(9)は、酸化防止剤、腐食抑制剤、潤滑剤および酸の群から選択される、
請求項1に記載の導電性コンタクト要素(1)。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の導電性電気コンタクト要素(1)を備える電気コネクタ(3)。
【請求項11】
電気コネクタ(3)用の導電性コンタクト要素(1)のコンタクト領域(8)の端部領域(4)のコンタクト面(5)の内側に補助材料(9)を封入するための方法であって、
- 前記端部領域(4)の前記コンタクト面(5)に前記補助材料(9)を塗布するステップと、
- 前記端部領域(4)の前記コンタクト面(5)に微細構造(11)を形成するステップと、
- 前記微細構造(11)を有する前記端部領域(4)の前記コンタクト面(5)の内側の空洞部(7)に前記補助材料(9)を最終的に封入するステップと
を含み、
幾何学的要素の所定のパターンの形態における表面テクスチャ(31)が、前記端部領域(4)の前記コンタクト面(5)に形成され、
前記端部領域(4)の前記コンタクト面(5)は、前記微細構造(11)を形成するようにレーザ放射(29、29’)で処理され、
前記レーザ放射(29、29’)は、前記端部領域(4)の前記コンタクト面(5)に対して横切る方向に当たり、
前記レーザ放射(29、29’)は、前記電気コネクタ(3)の長手軸(L)に垂直に当たらない、
方法。
【請求項12】
前記レーザ放射(29、29’)は、前記導電性コンタクト要素(1)の前記長手軸(L)に対する角度βで前記端部領域(4)の前記コンタクト面(5)に当たり、
前記角度βは、0°<β<90°の間の範囲である、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記コンタクト面(5)は、前記微細構造(11)を形成するようにレーザ放射(29、29’)の干渉パターン(27)で処理される、
請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
最初に前記補助材料(9)が前記コンタクト面(5)に塗布され、その後、前記微細構造(11)が形成される、
請求項11または12に記載の方法。
【請求項15】
前記補助材料(9)は、前記微細構造(11)が前記コンタクト面(5)に形成されるときに、前記微細構造(11)の前記空洞部(7)に封入される、
請求項11または12に記載の方法。
【外国語明細書】