IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ C&eホールディングス株式会社の特許一覧

特開2024-128961減衰装置、制振装置、壁体構造、木造住宅及び摩擦ダンパ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128961
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】減衰装置、制振装置、壁体構造、木造住宅及び摩擦ダンパ
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/02 20060101AFI20240913BHJP
   F16F 15/023 20060101ALI20240913BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
F16F15/02 L
F16F15/023 A
F16F15/02 E
E04H9/02 311
【審査請求】未請求
【請求項の数】30
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024034874
(22)【出願日】2024-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2023037600
(32)【優先日】2023-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】523049122
【氏名又は名称】C&eホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100227868
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 一樹
(72)【発明者】
【氏名】渥美 幸久
(72)【発明者】
【氏名】花井 進吾
【テーマコード(参考)】
2E139
3J048
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AB03
2E139AC02
2E139AC23
2E139AC66
2E139BA12
2E139BA19
2E139BD14
3J048AA06
3J048AC01
3J048AC04
3J048AD12
3J048BE03
3J048BE12
3J048DA02
3J048EA38
(57)【要約】
【課題】複数種類のダンパの組合せを実現する減衰装置、制振装置、壁体構造、木造住宅及び摩擦ダンパを提供する。
【解決手段】一方の端部である第1減衰装置端部201が第1の柱側に配置されるとともに他方の端部である第2減衰装置端部202が第2の柱側に配置される減衰装置200であって、減衰力を付与するオイルダンパ210と、減衰力を付与する摩擦ダンパ220と、を備え、第1減衰装置端部201と第2減衰装置端部202とが近接又は離隔する変位において、変位が所定値以下の場合には、オイルダンパ210が機能し、変位が所定値を超えた場合には、オイルダンパ210及び摩擦ダンパ220が機能する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端部である第1端部が一の構造部材側に配置されるとともに他方の端部である第2端部が他の構造部材側に配置される減衰装置であって、
減衰力を付与する主ダンパと、
減衰力を付与する副ダンパと、
を備え、
前記第1端部と前記第2端部とが軸線に沿って近接又は離隔する変位において、
前記変位が所定値以下の場合には、前記主ダンパが機能し、
前記変位が所定値を超えた場合には、前記主ダンパ及び前記副ダンパが機能する
減衰装置。
【請求項2】
前記主ダンパは、シリンダ及び前記シリンダに対して移動するロッドを有したオイルダンパとされている
請求項1に記載の減衰装置。
【請求項3】
前記副ダンパは、摩擦ダンパとされている
請求項2に記載の減衰装置。
【請求項4】
前記ロッドの移動量は、前記変位に対応しており、
前記摩擦ダンパは、被摺動部材及び前記被摺動部材に接触した状態で前記軸線に沿って摺動する摺動部材を有し、
前記被摺動部材は、前記ロッドと接続され、
前記オイルダンパと前記摩擦ダンパとを連動させる連動機構を備え、
前記連動機構は、前記変位が所定値を超えた場合に、前記被摺動部材に対して前記摺動部材を摺動させる
請求項3に記載の減衰装置。
【請求項5】
前記被摺動部材は、前記軸線に沿って延びた棒状の被摺動ロッドとされ、
前記摺動部材は、前記被摺動ロッドが前記軸線に沿って挿通され、内周面が前記被摺動ロッドの外周面に接触する筒状部品とされている
請求項4に記載の減衰装置。
【請求項6】
前記摩擦ダンパは、前記筒状部品を保持する保持ユニットを備え、
前記連動機構は、前記シリンダと固定された枠体を備え、
前記枠体は、前記筒状部品を保持した前記保持ユニットを前記軸線の方向に隙間を空けて挟み込んでいる
請求項5に記載の減衰装置。
【請求項7】
前記保持ユニットは、
前記筒状部品が前記軸線に沿って嵌め込まれる貫通穴が形成された保持部材、及び
前記筒状部品を前記保持部材に向かって押さえ込む押え部材
を有している
請求項6に記載の減衰装置。
【請求項8】
前記筒状部品は、外径が縮小する先細り筒部及び前記軸線に沿ったスリットを有し、
前記保持部材の前記貫通穴には、前記筒状部品の前記先細り筒部が嵌め込まれる
請求項7に記載の減衰装置。
【請求項9】
前記筒状部品の前記先細り筒部は、傾斜勾配が1度以上10度以下とされている
請求項8に記載の減衰装置。
【請求項10】
前記筒状部品の前記被摺動ロッドの前記外周面に接触する部分は、金属中に固体潤滑剤を分散させた金属系無給油軸受とされている
請求項8に記載の減衰装置。
【請求項11】
前記枠体は、前記被摺動ロッドが前記軸線の方向に挿通されるブッシュを有し、
前記ブッシュは、前記被摺動ロッドを、前記軸線を中心とした半径方向に保持している
請求項10に記載の減衰装置。
【請求項12】
前記摩擦ダンパは、前記筒状部品を保持する保持ユニットを備え、
前記連動機構は、
前記軸線に沿って延び、前記シリンダと接続され、前記シリンダを挟むように向かい合って配置された2つのサイド部材と、
2つの前記サイド部材の間に配置され、前記被摺動ロッドが前記軸線に沿って挿通され、各前記サイド部材と接続された第1枠体部材と、
2つの前記サイド部材の間に配置され、前記被摺動ロッドが前記軸線に沿って挿通され、各前記サイド部材と接続された第2枠体部材と、
を備え、
前記第1枠体部材及び前記第2枠体部材は、
前記軸線の方向において離隔して配置され、
前記筒状部品を保持した前記保持ユニットを前記軸線の方向に隙間を空けて挟み込んでいる
請求項5に記載の減衰装置。
【請求項13】
各前記サイド部材は、前記オイルダンパの前記シリンダの前記基端側の一部の範囲にのみ接触し、かつ、前記シリンダの外周面と前記軸線の方向に沿った1つの線で接触している
請求項12に記載の減衰装置。
【請求項14】
各前記サイド部材は、前記第1枠体部材の外周面及び前記第2枠体部材の外周面と面で接触している
請求項13に記載の減衰装置。
【請求項15】
前記第1枠体部材及び前記第2枠体部材の前記軸線と直交する断面形状は、前記軸線を中心とした円形状とされ、
前記オイルダンパの前記シリンダの前記軸線と直交する断面形状は、前記軸線を中心とした円形状とされ、
前記サイド部材の前記軸線と直交する断面形状は、
前記軸線を中心とした半径方向の外側に向かって凸とされ、
前記オイルダンパの前記シリンダと接触する範囲においては、2箇所の屈曲部が形成された弓なり形状とされ、
前記第1枠体部材及び前記第2枠体部材と接触する範囲においては、前記第1枠体部材の外周面及び前記第2枠体部材の外周面に沿った円弧形状とされている
請求項14に記載の減衰装置。
【請求項16】
前記第1枠体部材は、前記軸線の方向において前記第2枠体部材と前記オイルダンパの前記シリンダの先端との間に配置され、
前記サイド部材の前記軸線と直交する断面形状は、前記オイルダンパの前記シリンダの前記先端から前記第1枠体部材までの範囲内で連続的に変化している
請求項15に記載の減衰装置。
【請求項17】
前記保持ユニットの前記軸線と直交する断面形状は、前記軸線を中心とした円形状とされ、
前記第1枠体部材及び前記第2枠体部材の前記軸線と直交する断面形状は、前記軸線を中心とした円形状とされ、
前記オイルダンパの前記シリンダの前記軸線と直交する断面形状は、前記軸線を中心とした円形状とされている
請求項12に記載の減衰装置。
【請求項18】
前記保持ユニットは、
前記筒状部品が前記軸線に沿って嵌め込まれる貫通穴が形成された保持部材、
前記筒状部品を前記保持部材に向かって押さえ込む押え部材、及び
前記保持部材及び前記押え部材を締結する3本以上のねじ部材
を有し、
前記ねじ部材は、前記軸線を中心とした周方向において等角度間隔に配置されている
請求項12に記載の減衰装置。
【請求項19】
前記オイルダンパは、前記ロッドの停止位置から所定変位までの間で耐力が0.8kN/mm以上の勾配で立ち上がり、前記所定変位以降ではその耐力を略一定に維持するバイリニア特性を持つタイプとされている
請求項2から18のいずれかに記載の減衰装置。
【請求項20】
請求項1から18のいずれかに記載の減衰装置と、
前記第1端部と接続され、前記軸線に沿って延びたブレースと、
を備えている
制振装置。
【請求項21】
請求項20に記載の制振装置と、
前記一の構造部材と、
前記他の構造部材と、
を備えている
壁体構造。
【請求項22】
請求項21に記載の壁体構造を備えている
木造住宅。
【請求項23】
請求項12から18のいずれかに記載の減衰装置と、
前記第1端部と接続され、前記軸線に沿って延びたブレースと、
鉛直方向に延びた木製の前記一の構造部材と、
鉛直方向に延び、前記一の構造部材に対して水平方向に離隔して配置された木製の前記他の構造部材と、
を備え、
鉛直方向及び水平方向に直交する奥行方向としたとき、2つの薄板状の前記サイド部材は、前記軸線の方向及び前記奥行方向に直交した方向において向かい合っている
壁体構造。
【請求項24】
請求項23に記載の壁体構造を備えている
木造住宅。
【請求項25】
一方の端部である第1端部が一の構造部材側に配置されるとともに他方の端部である第2端部が他の構造部材側に配置される減衰装置であって、
前記第1端部と前記第2端部とが軸線に沿って近接又は離隔する変位において、
停止位置から第1所定変位までの間で耐力が立ち上がり、前記第1所定変位から第2所定変位まで間は耐力が略一定となり、前記第2所定変位以降で耐力が立ち上がる
減衰装置。
【請求項26】
軸線に沿って延びた棒状の被摺動ロッドと、
前記被摺動ロッドが前記軸線に沿って挿通され、内周面が前記被摺動ロッドの外周面に接触する筒状部品と、を備え、
前記筒状部品は、前記軸線に沿ったスリット及び外径が縮小する先細り筒部を有し、
前記筒状部品の前記先細り筒部が前記軸線に沿って嵌め込まれる貫通穴が形成された保持部材を備えている
摩擦ダンパ。
【請求項27】
前記筒状部品を前記保持部材に向かって押さえ込む押え部材を備えている
請求項26に記載の摩擦ダンパ。
【請求項28】
前記筒状部品の前記被摺動ロッドの前記外周面に接触する部分は、金属中に固体潤滑剤を分散させた金属系無給油軸受とされている
請求項26に記載の摩擦ダンパ。
【請求項29】
前記筒状部品の前記先細り筒部は、傾斜勾配が1度以上10度以下とされている
請求項26から28のいずれかに記載の摩擦ダンパ。
【請求項30】
前記筒状部品が前記貫通穴へ押し込まれる量を規制するスペーサを備えている
請求項26から28のいずれかに記載の摩擦ダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、減衰装置、制振装置、壁体構造、木造住宅及び摩擦ダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば木造住宅の壁体構造においては、耐震性向上の観点から、鉛直方向に延びた柱同士の間に筋交いタイプの制振装置を設けることがある。例えば特許文献1には、直線状のブレース(補強部材)とダンパとの組み合わせによって構成された制振装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-144387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ダンパとして例えばオイルダンパを採用した場合、オイルダンパは繰り返しの耐久性に優れ、かつ、小さな地震揺れにも減衰の効果を発揮するので、オイルダンパは頻度が多い小さな地震に対して特に有効な場合があると言える。
しかしながら、オイルダンパを大きな地震に対応させようとした場合、オイルダンパの大型化が必須となるので、オイルダンパは設置可能なスペースが限られた木造住宅の壁体構造には不向きであることがある。
【0005】
また、ダンパとして例えば摩擦ダンパを採用した場合、摩擦ダンパは大きな地震揺れに合わせた摩擦力(減衰力)を容易に設定することができるので、摩擦ダンパは大きな地震に対して特に有効な場合があると言える。
しなしながら、摩擦ダンパに大きな地震揺れに合わせた摩擦力を設定すると小さな地震揺れに対しては減衰の効果が発揮されにくくなるので、摩擦ダンパは小さな地震が頻発する地域には不向きであることがある。
【0006】
このように、ダンパはその種類によって特有の性質を有しているが、複数種類のダンパを組み合わせることで、異なる種類のダンパの利点を組み合わせることができる可能性がある。
そして、その組み合わせによっては、例えば幅広い大きさの地震揺れに対応可能で、かつ、繰り返しの耐久性についても考慮された減衰装置を提供できる。
【0007】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、複数種類のダンパの組合せを実現した減衰装置、制振装置、壁体構造、木造住宅及び摩擦ダンパを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために、本開示の減衰装置、制振装置、壁体構造、木造住宅及び摩擦ダンパは、以下の手段を採用する。
本開示の第1態様に係る減衰装置は、一方の端部である第1端部が一の構造部材側に配置されるとともに他方の端部である第2端部が他の構造部材側に配置される減衰装置であって、減衰力を付与する主ダンパと、減衰力を付与する副ダンパと、を備え、前記第1端部と前記第2端部とが軸線に沿って近接又は離隔する変位において、前記変位が所定値以下の場合には、前記主ダンパが機能し、前記変位が所定値を超えた場合には、前記主ダンパ及び前記副ダンパが機能する。
【0009】
本態様に係る減衰装置によれば、第1端部と第2端部とが軸線に沿って近接又は離隔する変位において、変位が所定値以下の場合には、主ダンパが機能し、変位が所定値を超えた場合には、主ダンパ及び副ダンパが機能するので、小さな地震揺れに対しては主ダンパによる減衰力によって装置としての減衰性能を発揮して、大きな地震揺れに対しては副ダンパによる減衰力を追加したより大きな減衰力によって装置としての減衰性能を発揮することができる。
そのため、例えば、頻度が多い小さな地震に対しては主ダンパで対応することして、頻度が少ない大きな地震に対しては主ダンパ及び副ダンパで対応することができる。
これによって、例えば、主ダンパには繰り返しの耐久性に優れ、かつ、小さな地震揺れにも効果を発揮するダンパを採用して、副ダンパには減衰力が大きく大きな地震揺れに特に効果を発揮するダンパを採用するなど、ダンパ特有の性質を利用した複数種類のダンパの組合せを実現して、小さな地震揺れから大きな地震揺れまで対応可能で、かつ、繰り返しの耐久性についても考慮された減衰装置を提供することができる。
【0010】
本開示の第2態様に係る減衰装置は、第1態様において、前記主ダンパは、シリンダ及び前記シリンダに対して移動するロッドを有したオイルダンパとされている。
【0011】
本態様に係る減衰装置によれば、主ダンパは、オイルダンパとされているので、繰り返しの耐久性に優れ、かつ、小さな地震揺れにも効果を発揮する。
【0012】
本開示の第3態様に係る減衰装置は、第2態様において、前記副ダンパは、摩擦ダンパとされている。
【0013】
本態様に係る減衰装置によれば、副ダンパは、摩擦ダンパとされているので、大きな減衰力を設定しやすい。
【0014】
本開示の第4態様に係る減衰装置は、第3態様において、前記ロッドの移動量は、前記変位に対応しており、前記摩擦ダンパは、被摺動部材及び前記被摺動部材に接触した状態で前記軸線に沿って摺動する摺動部材を有し、前記被摺動部材は、前記ロッドと接続され、前記オイルダンパと前記摩擦ダンパとを連動させる連動機構を備え、前記連動機構は、前記変位が所定値を超えた場合に、前記被摺動部材に対して前記摺動部材を摺動させる。
【0015】
本態様に係る減衰装置によれば、連動機構は、変位が所定値を超えた場合に、被摺動部材に対して摺動部材を摺動させるので、変位が所定値を超えた場合に、オイルダンパのロッドと摩擦ダンパとを並列に接続することができる。これによって、変位が所定値を超えた場合に、摩擦ダンパによる減衰力を追加的に付与することができる。
【0016】
本開示の第5態様に係る減衰装置は、第4態様において、前記被摺動部材は、前記軸線に沿って延びた棒状の被摺動ロッドとされ、前記摺動部材は、前記被摺動ロッドが前記軸線に沿って挿通され、内周面が前記被摺動ロッドの外周面に接触する筒状部品とされている。
【0017】
本態様に係る減衰装置によれば、摺動部材は、被摺動ロッドが前記軸線に沿って挿通され、内周面が前記被摺動ロッドの外周面に接触する筒状部品とされているので、筒状部品とそれに挿通された被摺動ロッドとの間に発生する摩擦力によって減衰力を付与することができる。
【0018】
本開示の第6態様に係る減衰装置は、第5態様において、前記摩擦ダンパは、前記筒状部品を保持する保持ユニットを備え、前記連動機構は、前記シリンダと固定された枠体を備え、前記枠体は、前記筒状部品を保持した前記保持ユニットを前記軸線の方向に隙間を空けて挟み込んでいる。
【0019】
本態様に係る減衰装置によれば、枠体は、筒状部品を保持した保持ユニットを軸線の方向に隙間を空けて挟み込んでいるので、隙間がゼロにならない範囲で保持ユニットが移動している場合には、保持ユニットは枠体と当接しないので、筒状部品が被摺動ロッドに対して摺動することがない。一方で、隙間がゼロになり枠体とともに保持ユニットが移動している場合には、保持ユニットは被摺動ロッドに対して移動するので、保持ユニットに保持された筒状部品が被摺動ロッドに対して摺動して摩擦力が発生する。
【0020】
本開示の第7態様に係る減衰装置は、第6態様において、前記保持ユニットは、前記筒状部品が前記軸線に沿って嵌め込まれる貫通穴が形成された保持部材、及び前記筒状部品を前記保持部材に向かって押さえ込む押え部材を有している。
【0021】
本態様に係る減衰装置によれば、保持ユニットは、筒状部品が軸線に沿って嵌め込まれる貫通穴が形成された保持部材、及び筒状部品を保持部材に向かって押さえ込む押え部材を有しているので、簡便な構成で筒状部品を保持することができる。また、押え部材が筒状部品を押さえ付けているので、筒状部品が保持部材の貫通穴から抜けることを防止することができる。
【0022】
本開示の第8態様に係る減衰装置は、第7態様において、前記筒状部品は、外径が縮小する先細り筒部及び前記軸線に沿ったスリットを有し、前記保持部材の前記貫通穴には、前記筒状部品の前記先細り筒部が嵌め込まれる。
【0023】
本態様に係る減衰装置によれば、筒状部品は、外径が縮小する先細り筒部及び軸線に沿ったスリットを有し、保持部材の貫通穴には、筒状部品の先細り筒部が嵌め込まれるので、先細り筒部と貫通穴との接触によって、筒状部品を保持部材(貫通穴)に向かって押し込む力を、筒状部品の内径を変化させる半径方向の力に変換することができる。これによって、挿通された被摺動ロッドに対する筒状部品の接触力を変化させることができ、被摺動ロッドとの間に発生する摩擦力を調節することができる。また、先細り筒部の形状に起因したくさび効果によって、小さな押込み力で筒状部品の内周面を被摺動ロッドの外周面に強い力で接触させることができる。
【0024】
本開示の第9態様に係る減衰装置は、第8態様において、前記筒状部品の前記先細り筒部は、傾斜勾配が1度以上10度以下とされている。
【0025】
本態様に係る減衰装置によれば、筒状部品の先細り筒部は、傾斜勾配が1度以上10度以下とされているので、筒状部品の押込み量に対する筒状部品の半径方向における変形量を小さくすることができ、かつ、くさび効果を効率的に発揮させることができる。
【0026】
本開示の第10態様に係る減衰装置は、第5態様から第9態様のいずれかにおいて、前記筒状部品の前記被摺動ロッドの前記外周面に接触する部分は、金属中に固体潤滑剤を分散させた金属系無給油軸受とされている。
【0027】
本態様に係る減衰装置によれば、筒状部品の被摺動ロッドの外周面に接触する部分は金属系無給油軸受とされているので、被摺動ロッドと間で繰り返される摺動に対する耐久性を向上させることができる。また、筒状部品の被摺動ロッドの外周面に接触する部分が金属系無給油軸受であっても、くさび効果を利用した強い力で被摺動ロッドの外周面に押し付けることで十分な摩擦力を確保することができる。
また、例えば先細り筒部を有した筒状部品(くさび効果を発生させる構造)を金属系無給油軸受と組み合わせることによって、強い摩擦力及び耐久性が考慮された摩擦ダンパを提供することができる。
【0028】
本開示の第11態様に係る減衰装置は、第10態様において、前記枠体は、前記被摺動ロッドが前記軸線の方向に挿通されるブッシュを有し、前記ブッシュは、前記被摺動ロッドを、前記軸線を中心とした半径方向に保持している。
【0029】
本態様に係る減衰装置によれば、ブッシュは被摺動ロッドを半径方向に保持しているので、被摺動ロッドの半径方向の振れや撓みを防止して、被摺動ロッドによって伝達される軸線の方向に沿った荷重の入力を安定化させることができる。これによって、減衰装置としての剛性が低下すること、ひいては減衰装置が発揮し得る耐力(減衰力)の立ち上がりが緩やかになることを防止することができる。
【0030】
本開示の第12態様に係る減衰装置は、第5態様から第9態様のいずれかにおいて、前記摩擦ダンパは、前記筒状部品を保持する保持ユニットを備え、前記連動機構は、前記軸線に沿って延び、前記シリンダと接続され、前記シリンダを挟むように向かい合って配置された2つのサイド部材と、2つの前記サイド部材の間に配置され、前記被摺動ロッドが前記軸線に沿って挿通され、各前記サイド部材と接続された第1枠体部材と、2つの前記サイド部材の間に配置され、前記被摺動ロッドが前記軸線に沿って挿通され、各前記サイド部材と接続された第2枠体部材と、を備え、前記第1枠体部材及び前記第2枠体部材は、前記軸線の方向において離隔して配置され、前記筒状部品を保持した前記保持ユニットを前記軸線の方向に隙間を空けて挟み込んでいる。
【0031】
本態様に係る減衰装置によれば、第1枠体部材及び第2枠体部材は、軸線の方向において離隔して配置され、保持ユニット及び保持ユニットに保持された筒状部品を含んだ摩擦ユニットを軸線の方向に隙間を空けて挟み込んでいるので、隙間がゼロにならない範囲で保持ユニットが移動している場合には、保持ユニットは第1枠体ブロック及び第2枠体ブロックと当接しないので、筒状部品が被摺動ロッドに対して摺動することがない。一方で、隙間がゼロになり第1枠体ブロック及び第2枠体ブロックとともに保持ユニットが移動している場合には、保持ユニットは被摺動ロッドに対して移動するので、保持ユニットに保持された筒状部品が被摺動ロッドに対して摺動して摩擦力が発生する。
また、2つのサイド部材によってオイルダンパのシリンダと第1枠体ブロック及び第2枠体ブロックとが接続されているので、簡易な構成でそれらを一体化することができる。
【0032】
本開示の第13態様に係る減衰装置は、第12態様において、各前記サイド部材は、前記オイルダンパの前記シリンダの前記基端側の一部の範囲にのみ接触し、かつ、前記シリンダの外周面と前記軸線の方向に沿った1つの線で接触している。
【0033】
本態様に係る減衰装置によれば、各サイド部材は、オイルダンパのシリンダの基端側の一部の範囲にのみ接触し、かつ、シリンダの外周面と軸線の方向に沿った1つの線で接触しているので、基端側の一部の範囲でシリンダを支持するとともに、シリンダの支持箇所の面積をできる限り小さくすることでシリンダがサイド部材の接触によって変形する可能性を低減している。また、シリンダの基端側の内部にはロッドの端部(シリンダの内部に収容された方の端部)が到達しないので、仮にサイド部材の接触によって一部の範囲でシリンダが変形したとしても、オイルダンパの減衰性能に影響を与えにくい。
【0034】
本開示の第14態様に係る減衰装置は、第13態様において、各前記サイド部材は、前記第1枠体部材の外周面及び前記第2枠体部材の外周面と面で接触している。
【0035】
本態様に係る減衰装置によれば、各サイド部材は、第1枠体ブロックの外周面及び第2枠体ブロックの外周面と面で接触しているので、第1枠体ブロックの及び第2枠体ブロックを安定的に支持することができる。
【0036】
本開示の第15態様に係る減衰装置は、第14態様において、前記第1枠体部材及び前記第2枠体部材の前記軸線と直交する断面形状は、前記軸線を中心とした円形状とされ、前記オイルダンパの前記シリンダの前記軸線と直交する断面形状は、前記軸線を中心とした円形状とされ、前記サイド部材の前記軸線と直交する断面形状は、前記軸線を中心とした半径方向の外側に向かって凸とされ、前記オイルダンパの前記シリンダと接触する範囲においては、2箇所の屈曲部が形成された弓なり形状とされ、前記第1枠体部材及び前記第2枠体部材と接触する範囲においては、前記第1枠体部材の外周面及び前記第2枠体部材の外周面に沿った円弧形状とされている。
【0037】
本態様に係る減衰装置によれば、サイド部材の軸線と直交する断面形状は、軸線を中心とした半径方向の外側に向かって凸とされ、オイルダンパのシリンダと接触する範囲においては、2箇所の屈曲部が形成された弓なり形状とされ、第1枠体ブロック及び第2枠体ブロックと接触する範囲においては、第1枠体ブロックの外周面及び第2枠体ブロックの外周面に沿った円弧形状とされているので、サイド部材の断面形状を変化させることで、オイルダンパのシリンダへのサイド部材の接触のさせ方と各枠体ブロックへのサイド部材の接触のさせ方を変えることができる。
【0038】
本開示の第16態様に係る減衰装置は、第15態様において、前記第1枠体部材は、前記軸線の方向において前記第2枠体部材と前記オイルダンパの前記シリンダの先端との間に配置され、前記サイド部材の前記軸線と直交する断面形状は、前記オイルダンパの前記シリンダの前記先端から前記第1枠体部材までの範囲内で連続的に変化している。
【0039】
本態様に係る減衰装置によれば、サイド部材の軸線と直交する断面形状は、オイルダンパのシリンダの先端から第1枠体ブロックまでの範囲内で連続的に変化しているので、シリンダ及び第1枠体ブロックのいずれにも影響を与えない範囲でサイド部材の断面形状を変化させることができる。
【0040】
本開示の第17態様に係る減衰装置は、第12態様から第16態様のいずれかにおいて、前記保持ユニットの前記軸線と直交する断面形状は、前記軸線を中心とした円形状とされ、前記第1枠体部材及び前記第2枠体部材の前記軸線と直交する断面形状は、前記軸線を中心とした円形状とされ、前記オイルダンパの前記シリンダの前記軸線と直交する断面形状は、前記軸線を中心とした円形状とされている。
【0041】
本態様に係る減衰装置によれば、保持ユニットの軸線と直交する断面形状は、軸線を中心とした円形状とされ、第1枠体部材及び第2枠体部材の軸線と直交する断面形状は、軸線を中心とした円形状とされ、オイルダンパのシリンダの軸線と直交する断面形状は、軸線を中心とした円形状とされているので、装置全体としての形状に一体感を持たせ優れた美観を創出すことができる。
【0042】
本開示の第18態様に係る減衰装置は、第12態様から第17態様のいずれかにおいて、前記保持ユニットは、前記筒状部品の前記軸線に沿って嵌め込まれる貫通穴が形成された保持部材、前記筒状部品を前記保持部材に向かって押さえ込む押え部材、及び前記保持部材及び前記押え部材を締結する3本以上のねじ部材を有し、前記ねじ部材は、前記軸線を中心とした周方向において等角度間隔に配置されている。
【0043】
本態様に係る減衰装置によれば、保持ユニットは、保持部材及び押え部材を締結する3本以上のねじ部材を有し、ねじ部材は、軸線を中心とした周方向において等角度間隔に配置されているので、周方向において均等に筒状部品を押さえ込むことができる。
【0044】
本開示の第19態様に係る減衰装置は、第2態様から第18態様のいずれかにおいて、前記オイルダンパは、前記ロッドの停止位置から所定変位までの間で耐力が0.8kN/mm以上の勾配で立ち上がり、前記所定変位以降ではその耐力を略一定に維持するバイリニア特性を持つタイプとされている。
【0045】
本実施形態によれば、オイルダンパは、停止位置から所定変位までの間で耐力が0.8kN/mm以上の勾配で立ち上がり、所定変位以降はその耐力を略一定に維持するバイリニア特性を持つタイプとされているので、小さな地震に対しても、初期の段階から減衰力を発揮させることができる。
【0046】
本開示の第20態様に係る制振装置は、第2態様から第19態様のいずれかに記載の減衰装置と、前記第1端部と接続され前記軸線に沿って延びたブレースと、を備えている。
【0047】
本開示の第21態様に係る壁体構造は、第20態様に記載の制振装置と、前記一の構造部材と、前記他の構造部材と、を備えている。
【0048】
本開示の第22態様に係る木造住宅は、第21態様に記載の壁体構造を備えている。
【0049】
本開示の第23態様に係る壁体構造は、第12態様から第18態様のいずれかに記載の減衰装置と、前記第1端部と接続され、前記軸線に沿って延びたブレースと、鉛直方向に延びた木製の前記一の構造部材と、鉛直方向に延び、前記一の構造部材に対して水平方向に離隔して配置された木製の前記他の構造部材と、を備え、鉛直方向及び水平方向に直交する奥行方向としたとき、2つの薄板状の前記サイド部材は、前記軸線の方向及び前記奥行方向に直交した方向において向かい合っている。
【0050】
本態様に係る壁体構造によれば、2つの薄板状のサイド部材は、軸線の方向及び奥行方向に直交した方向において向かい合っているので、奥行方向に沿った軸線回りのモーメントが制振装置(特に減衰装置)に発生したとき、2つのサイド部材によって引張/圧縮の釣合いをとることができる(一方のサイド部材に引張荷重が作用して、他方のサイド部材に圧縮荷重が作用する。)。
【0051】
本開示の第24態様に係る木造住宅は、第23態様に記載の壁体構造を備えている。
【0052】
本開示の第25態様に係る減衰装置は、一方の端部である第1端部が一の構造部材側に配置されるとともに他方の端部である第2端部が他の構造部材側に配置される減衰装置であって、前記第1端部と前記第2端部とが軸線に沿って近接又は離隔する変位において、前記停止位置から第1所定変位までの間で耐力が立ち上がり、前記第1所定変位から第2所定変位まで間は耐力が略一定となり、前記第2所定変位以降で耐力が立ち上がる。
【0053】
本態様に係る減衰装置によれば、第1端部と第2端部とが軸線に沿って近接又は離隔する変位において、停止位置から第1所定変位までの間で耐力が立ち上がり、第1所定変位から第2所定変位まで間は耐力が略一定となるので、小さな地震に対して初期の段階から減衰力を発揮させることができる。また、前記第2所定変位以降で再び耐力が立ち上がるので、大きな地震に対してより大きな減衰力を発揮させることができる。
【0054】
本開示の第26態様に係る摩擦ダンパは、軸線に沿って延びた棒状の被摺動ロッドと、前記被摺動ロッドが前記軸線に沿って挿通され、内周面が前記被摺動ロッドの外周面に接触する筒状部品と、前記筒状部品を保持する保持部材と、を備え、前記筒状部品は、前記軸線に沿ったスリット及び外径が縮小する先細り筒部を有し、前記保持部材は、前記筒状部品の前記先細り筒部が嵌め込まれる貫通穴を有している。
【0055】
本態様に係る摩擦ダンパによれば、筒状部品は軸線に沿ったスリット及び外径が縮小する先細り筒部を有し、保持部材は筒状部品の先細り筒部が嵌め込まれる貫通穴を有しているので、先細り筒部と貫通穴との接触によって、筒状部品を保持部材(貫通穴)に向かって押し込む力を、筒状部品の内径を変化させる半径方向の力に変換することができる。これによって、挿通された被摺動ロッドに対する筒状部品の接触力を変化させることができ、被摺動ロッドとの間に発生する摩擦力を調節することができる。また、先細り筒部の形状に起因したくさび効果によって、小さな押込み力で筒状部品の内周面を被摺動ロッドの外周面に強い力で接触させることができる。
【0056】
本開示の第27態様に係る摩擦ダンパは、第26態様において、前記筒状部品を前記保持部材に向かって押さえ込む押え部材を備えている。
【0057】
本態様に係る摩擦ダンパによれば、摩擦ダンパは、筒状部品を保持部材に向かって押さえ込む押え部材を備えているので、筒状部品が貫通穴から抜けることを防止することができる。
【0058】
本開示の第28態様に係る摩擦ダンパは、第26態様又は第27態様において、前記筒状部品の前記被摺動ロッドの前記外周面に接触する部分は、金属中に固体潤滑剤を分散させた金属系無給油軸受とされている。
【0059】
本態様に係る摩擦ダンパによれば、筒状部品の被摺動ロッドの外周面に接触する部分は金属系無給油軸受とされているので、被摺動ロッドと間で繰り返される摺動に対する耐久性を向上させることができる。また、筒状部品の被摺動ロッドの外周面に接触する部分が金属系無給油軸受であっても、くさび効果を利用した強い力で摺動ロッドの外周面に押し付けることで十分な摩擦力を確保することができる。
以上より、金属系無給油軸受とくさび効果との組み合わせによって、耐久性が考慮された摩擦ダンパを提供することができる。
【0060】
本開示の第29態様に係る摩擦ダンパは、第26態様から第28態様のいずれかにおいて、前記筒状部品の前記先細り筒部は、傾斜勾配が1度以上10度以下とされている。
【0061】
本態様に係る摩擦ダンパによれば、筒状部品の先細り筒部は傾斜勾配が1度以上10度以下とされているので、筒状部品の押込み量に対する筒状部品の半径方向における変形量を小さくすることができ、かつ、くさび効果を効率的に発揮させることができる。
【0062】
本開示の第30態様に係る摩擦ダンパは、第26態様から第29態様のいずれかにおいて、前記筒状部品が前記貫通穴へ押し込まれる量を規制するスペーサを備えている。
【0063】
本態様に係る摩擦ダンパによれば、筒状部品が貫通穴へ押し込まれる量を規制するスペーサを備えているので、筒状部品が貫通穴に必要以上に押し込まれること防止している。
【発明の効果】
【0064】
本開示によれば、複数種類のダンパの組合せを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1】本開示の第1実施形態に係る壁体構造の正面図である。
図2】本開示の第1実施形態に係る制振装置の正面図である。
図3図2に示す切断線III-IIIにおける断面図である。
図4図2に示すF4部の部分拡大図である。
図5図4に示すF5部の部分拡大図である。
図6】本開示の第1実施形態に係る減衰装置が有する摩擦ダンパの正面図である。
図7】本開示の第1実施形態に係る減衰装置が有する摩擦ダンパの正面断面図である。
図8】摩擦ダンパが有する摺動筒の正面図である。
図9図8に示す摺動筒の平面図である。
図10】本開示の第1実施形態に係る減衰装置が有する摩擦ダンパ近傍の概略正面図である。
図11】変位の最大値が距離Gよりも小さい場合の連動機構の移動(振動)を示した概略図である。
図12】変位の最大値が距離Gよりも大きい場合の連動機構及び摩擦ダンパの摩擦ユニットの移動(振動)を示した概略図である。
図13】層間変位(横軸)と減衰装置で発生した耐力(縦軸)との関係が示されたグラフ図である。
図14】層間変位(横軸)と減衰装置で発生した耐力(縦軸)との関係が1周期の揺れの範囲で示されたグラフ図である。
図15】変形例3に係る摩擦ダンパの部分的な正面図である。
図16図15に示す摩擦ダンパの側面図である。
図17図15に示す切断線XVII-XVIIにおける断面図である。
図18】正面視した壁体構造の変形を示した概念図である。
図19】変形例4に係る減衰装置が有する摩擦ダンパの正面断面図である。
図20】本開示の第2実施形態に係る壁体構造の正面図である。
図21】本開示の第2実施形態に係る制振装置の正面図である。
図22】本開示の第2実施形態に係る制振装置の側面図である。
図23図22に示す切断線XXIII-XXIIIにおける断面図である。
図24】本開示の第2実施形態に係る減衰装置が有する摩擦ダンパの摩擦ユニットの斜視図である。
図25図24に示す切断線XXV-XXVにおける摩擦ユニットの正面断面図である。
図26】本開示の第2実施形態に係る減衰装置が有する摩擦ダンパ近傍の概略正面図である。
図27図23に示す切断線VII-VIIにおける横断面図である。
図28図23に示す切断線VIII-VIIIにおける横断面図である。
図29図23に示す切断線IX-IXにおける横断面図である。
図30図23に示す切断線X-Xにおける横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
本開示の第1実施形態及び第2実施形態に係る減衰装置、制振装置、壁体構造、木造住宅及び摩擦ダンパについて、図面を参照しつつ説明する。
【0067】
[第1実施形態]
以下、第1実施形態について説明する。
【0068】
<壁体構造について>
図1に示すように、壁体構造10は、例えば、木造住宅の壁体に採用される構造物であって、土台14の上において鉛直方向に延びた第1の柱11(第1の構造部材)及び第2の柱12(第2の構造部材)並びに各柱の上において水平方向に延びた梁15を有する枠状の構造体と、第1の柱11の上部から第2の柱12の下部にかけて配置された制振装置50と、を備えている。
壁体構造10の枠状の構造体は、例えば、枠組壁工法によって製作されている。ただし、この工法は例示であり、これ以外の工法を採用してもよい。
【0069】
土台14は、水平方向に延びた木材であり、例えば、図示しない基礎の上に設けられている。土台14は、各柱を支え、鉛直方向の荷重を基礎に伝えるための部材である。
【0070】
第1の柱11は、鉛直方向に延びた木材であり、土台14の一端側(図1において左側)に下端が嵌め込まれている。第1の柱11は、主として鉛直方向の荷重が負荷される部材である。
第1の柱11の寸法は、例えば、規格(工法)によって定められている。本実施形態の場合、その幅寸法(水平方向の寸法)は105mm、高さ寸法(鉛直方向の寸法)は約2600mm、奥行寸法は105mmとされている。ただし、これらの数値は例示であり、これら以外の寸法であってもよい。
【0071】
第2の柱12は、鉛直方向に延びた木材であり、土台14の他端側(図1において右側)に下端が嵌め込まれている。第2の柱12は、主として鉛直方向の荷重が負荷される部材である。
第2の柱12の寸法は、例えば、規格(工法)によって定められている。本実施形態の場合、その幅寸法は105mm、高さ寸法は約2600mm、奥行寸法は105mmとされている。ただし、これらの数値は例示であり、これら以外の寸法であってもよい。
第2の柱12は、水平方向において第1の柱11と離隔して設けられている。水平方向における第1の柱11と第2の柱12との距離(中心間のピッチ)は、例えば、規格(工法)によって決められている。本実施形態の場合、そのピッチは、約910mmとされている。ただし、これらの数値は例示であり、これら以外の寸法であってもよい。
【0072】
梁15は、水平方向に延びた木材であり、第1の柱11の上端及び第2の柱12の上端が嵌め込まれている。
【0073】
<制振装置について>
本実施形態に係る壁体構造10は、上述した枠状の構造体に制振装置50が取り付けられて構成されている。
以下、制振装置50について詳細に説明する。
【0074】
<<概要>>
図1に示すように、制振装置50は、ブレース100及び減衰装置200を備え、それらが第1制振装置端部51と第2制振装置端部52とを結ぶ軸線Cに沿って並べられて構成された装置である。
【0075】
枠状の構造体に取り付けられた状態の制振装置50は、第1制振装置端部51が第1の柱11の上部に配置され、第2制振装置端部52が第2の柱12の下部に配置されており、第1の柱11の上部から第2の柱12の下部にかけて筋交いのように斜めに配置されている。
なお、第1制振装置端部51及び第2制振装置端部52の位置は、適宜入れ替えてもよい。
【0076】
第1制振装置端部51は、第1ブラケット301を介して第1の柱11に取り付けられている。
第1ブラケット301は、複数のビスで第1の柱11の上部に固定されている。
第1ブラケット301は、第1制振装置端部51を第1ブラケット支点部301aで回動自在に軸支している。このとき、第1制振装置端部51の回転軸は、奥行方向に沿っている。
なお、奥行方向は、鉛直方向及び水平方向に略直交する方向である。
【0077】
第2制振装置端部52は、第2ブラケット302及び接続ロッド303を介して第2の柱12に取り付けられている。
第2ブラケット302は、複数のビスで第2の柱12の下部に固定されている。
第2ブラケット302は、第2制振装置端部52と接続された接続ロッド303の端部を第2ブラケット支点部302aで回動自在に軸支している。このとき、接続ロッド303の回転軸は、奥行方向に沿っている。
【0078】
<<ブレースについて>>
図1に示すように、ブレース100は、第1の柱11側に配置される第1ブレース端部101から第2の柱12側に配置される第2ブレース端部102に向かって延びた金属製の棒状の部材である。
第1ブレース端部101及び第2ブレース端部102は、軸線C上に位置している。すなわち、ブレース100は、軸線Cに沿って延びている。
ブレース100は、例えば、所定の肉厚が設定された円管とされている。ただし、ブレース100は必ずしも円管である必要はなく、円形状以外の横断面形状の管、中実の棒や角材であってもよい。
【0079】
第1ブレース端部101は、上述した第1制振装置端部51でもあり、第1ブラケット301に対して回動自在に接続されている。
図1及び図2に示すように、第2ブレース端部102は、減衰装置200の第1減衰装置端部201と接続されている。
【0080】
<<減衰装置について>>
減衰装置200は、所望の減衰力を発生させる装置である。
減衰装置200は、第1の柱11側に配置される第1減衰装置端部201(第1端部)と第2の柱12側に配置される第2減衰装置端部202(第2端部)とを有している。
第1減衰装置端部201は、ブレース100の第2ブレース端部102と接続されている。
第2減衰装置端部202は、上述した第2制振装置端部52でもあり、接続ロッド303と接続されている。
【0081】
図2に示すように、減衰装置200は、減衰力を付与する複数のダンパと、所定の場合にそれらのダンパを連動させる連動機構230と、を備えている。
【0082】
複数のダンパは、例えば主ダンパ及び副ダンパとされている。
主ダンパ及び副ダンパは、機器としては別個のものであるが、連動機構230によって所定の場合にそれらの機能が連動するように構成されている。
具体的には、主ダンパ及び副ダンパは、減衰装置200の軸線Cに沿った変位の量に応じてそれぞれの機能が連動するように構成されている。
より具体的には、減衰装置200は、軸線Cに沿った変位(変位の絶対値)が所定値以下の場合には主ダンパが単独で機能して、軸線Cに沿った変位(変位の絶対値)が所定値を超えた場合には主ダンパ及び副ダンパの両方が機能するように構成されている。
【0083】
言い換えれば、減衰装置200は、小さな変位(頻度が多い小さな地震揺れ)に対しては主ダンパによる減衰力によって制振装置50としての減衰性能を発揮させ、大きな変位(頻度が少ない大きな地震揺れ)に対しては副ダンパによる減衰力を追加したより大きな減衰力によって制振装置50としての減衰性能を発揮させるように構成されていることになる。
そのため、主ダンパには、繰り返しの耐久性に優れ、かつ、小さな地震揺れにも効果を発揮するダンパを採用することが好ましく、副ダンパには、減衰力が大きく大きな地震揺れに対して特に効果を発揮するダンパを採用することが好ましい。
【0084】
本実施形態の場合、例えば、主ダンパにオイルダンパ210を採用し、副ダンパに摩擦ダンパ220を採用している。
【0085】
なお、軸線Cに沿った変位は、例えば地震揺れによって木造住宅に生じた層間変位によって第1の柱11の上部と第2の柱12の下部とが近接又は離隔することによって生じる。
層間変位とは、土台14に対して柱11,12が傾くことで梁15が水平方向にずれた量のことである。
【0086】
ここで、軸線Cに沿った変位について、図18に示すように、土台14に対して柱11,12がθだけ傾くことで梁15に所定の層間変位dが生じた場合を例にして詳細に説明する。なお、傾きθを層間変形角θとも言う。また、幾何的な関係性から、同じ層間変形角θであれば、柱11,12が長いほど層間変位dが大きくなる。
第1ブラケット301は第1の柱11に固定されているので、第1制振装置端部51が接続される第1ブラケット301の第1ブラケット支点部301aは、第1の柱11の傾きによって水平方向及び鉛直方向に移動する。また、第2ブラケット302は第2の柱12に固定されているので、接続ロッド303を介して第2制振装置端部52が接続される第2ブラケット302の第2ブラケット支点部302aは、第2の柱12の傾きによって水平方向及び鉛直方向に移動する。
このとき、第1ブラケット301は第1の柱11の上部に固定され、第2ブラケット302は第2の柱12の下部に固定されているので、同じ層間変形角θでも、第2ブラケット支点部302aよりも上部にある第1ブラケット支点部301aの移動量の方が第2ブラケット支点部302aの移動量よりも大きくなる。この移動量の差は、幾何的な関係性から、層間変形角θが大きくなるほど、また、第1ブラケット支点部301aと第2ブラケット支点部302aとが鉛直方向に離隔するほど大きくなる。
この移動量の差によって、変形前の第1ブラケット支点部301aと第2ブラケット支点部302aとを結ぶ線分L1(図18では実線で表示、軸線Cと一致)の長さと、変形後の第1ブラケット支点部301aと第2ブラケット支点部302aとを結ぶ線分L2(図18では二点鎖線で表示、軸線Cと一致)の長さと、に差が生じる。要するに、柱11の上部にある第1ブラケット支点部301aが第2の柱12の下部にある第2ブラケット支点部302aから相対的に離隔又は近接することになる。そして、その第1ブラケット支点部301aと第2ブラケット支点部302aとの間の離隔量又は近接量が、減衰装置200における第1制振装置端部51と第2制振装置端部52との間の離隔量又は近接量として反映され、軸線Cに沿った変位となる。
【0087】
以下、オイルダンパ210、摩擦ダンパ220及び連動機構230の詳細な構成について説明する。
【0088】
図2及び図3に示すように、オイルダンパ210は、シリンダ211と、軸線Cの方向に延びたロッド212と、備えている。
シリンダ211は、ロッド212の一部を収容する円筒状の筐体である。シリンダ211は円筒状の筐体とされているので、その横断面形状(軸線Cと直交する切断面における断面形状)は円形状である。
ロッド212は、シリンダ211に対して軸線Cに沿って進退する棒状の部分である。
【0089】
摩擦ダンパ220は、被摺動ロッド221(被摺動部材)と、摩擦ユニットUfと、を備えている。
摩擦ユニットUfは、摺動筒222(摺動部材、筒状部品)及び摺動筒222を保持する保持ユニットUhを有している。
保持ユニットUhは、摺動筒222が嵌め込まれる保持ブロック223(保持部材)、摺動筒222を保持ブロック223に向かって押さえ込む押えブロック224(押え部材)及び保持ブロック223と押えブロック224とを締結する複数の締結部材225を有している。
被摺動ロッド221、保持ブロック223や押えブロック224は、例えば金属製とされる。
【0090】
連動機構230は、連結ブロック231と、主ダンパサイド部材232と、副ダンパサイド部材233と、第1枠体ブロック234(第1枠体部材)と、第2枠体ブロック235(第2枠体部材)と、を備えている。
連動機構230を構成する各部は、例えば金属製とされる。
【0091】
オイルダンパ210の基端は、連動機構230の連結ブロック231と接続されている。ここで言う「オイルダンパ210の基端」とは、ロッド212が突出していない側のシリンダ211の端部である。一方、ロッド212が突出している側のシリンダ211の端部を「シリンダ211の先端」と言う。
この連結ブロック231は、ブレース100の第2ブレース端部102と接続される部品でもあり、上端が上述した第1減衰装置端部201とされている。
【0092】
連結ブロック231の側面には、軸線Cの方向に延びた2つの主ダンパサイド部材232の一方の端部が接続されている。
図4に示すように、2つの主ダンパサイド部材232の他方の端部は、少なくとも停止位置にあるオイルダンパ210のロッド212の先端よりも第2減衰装置端部202に近い位置にあり、それら(2つの主ダンパサイド部材232)の間に配置された第1枠体ブロック234の側面と接続されている。
停止位置とは、初期位置、地震発生前の位置、軸線Cに沿った変位がゼロの位置、揺れ/振動の中心の位置や層間変位がゼロの位置等を意味している。
【0093】
図4及び図5に示すように、第1枠体ブロック234の側面には、主ダンパサイド部材232の他に、軸線Cの方向に延びた2つの副ダンパサイド部材233の一方の端部が接続されている。すなわち、第1枠体ブロック234によって主ダンパサイド部材232と副ダンパサイド部材233とが接続され一体化していることになる。
2つの副ダンパサイド部材233の他方の端部は、それらの間に配置された第2枠体ブロック235の側面と接続されている。
このとき、対向する2つの副ダンパサイド部材233の間で、かつ、第1枠体ブロック234と第2枠体ブロック235との間には、摩擦ダンパ220の摩擦ユニットUfを設けるためのスペースが確保されている。
【0094】
上述の通り、連動機構230に含まれている連結ブロック231、2つの主ダンパサイド部材232、2つの副ダンパサイド部材233、第1枠体ブロック234及び第2枠体ブロック235は、互いに接続されているので、減衰装置200において一体物として捉えることができる。そのため、連動機構230に含まれている各部材は、上述のように別体としなくてもよく、適宜一体化(一部品化)してもよい。
また、連動機構230は、連結ブロック231を介してオイルダンパ210のシリンダ211と接続されているので、減衰装置200において一体物として捉えることができる。
なお、連動機構230に含まれている各部材同士の接続方法は特に限定されず、溶接や締結等の任意の接続方法を適宜選択することができる。
【0095】
オイルダンパ210のシリンダ211から突出したロッド212の端部は、被摺動ロッド221と接続されている。
被摺動ロッド221は、軸線Cに沿って延びた棒状の部品であり、例えば直径が15mm~30mm程度とされている。
この被摺動ロッド221は、接続ロッド303と接続される部品でもあり、先端が上述した第2減衰装置端部202とされている。
被摺動ロッド221、ロッド212及び接続ロッド303は、互いに接続されているので、減衰装置200において一体物として捉えることができる。そのため、被摺動ロッド221、ロッド212及び接続ロッド303は、上述のように別体としなくてもよく、適宜一体化(一部品化)してもよい。
【0096】
被摺動ロッド221は、第1枠体ブロック234の貫通穴234aに圧入された摺動ブッシュ234b及び第2枠体ブロック235の貫通穴235aに圧入された摺動ブッシュ235bに接触した状態で、軸線Cに沿って挿通されている。
摺動ブッシュ234b及び摺動ブッシュ235bは、被摺動ロッド221を半径方向に保持しつつ軸線Cの方向には滑らかに移動させる部品であり、例えば自己潤滑タイプのすべり軸受とされる。
摺動ブッシュ234b及び摺動ブッシュ235bを設けることによって、被摺動ロッド221の半径方向の振れや撓みを防止して、被摺動ロッド221によって伝達される軸線Cの方向に沿った荷重の入力を安定化させている。これによって、減衰装置200としての剛性が低下すること、ひいては減衰装置200が発揮し得る耐力(減衰力)の立ち上がりが緩やかになることを防止している。
【0097】
対向する2つの副ダンパサイド部材233の間、かつ、第1枠体ブロック234と第2枠体ブロック235との間には、摩擦ユニットUf(摺動筒222を保持した保持ユニットUh)が設けられている。
摩擦ユニットUfは、減衰装置200において一体物として捉えることができる。そのため、摩擦ユニットUfに含まれている各部材は、上述のように別体としなくてもよく、適宜一体化(一部品化)してもよい。
摩擦ユニットUfには、被摺動ロッド221が挿通されている。ただし、摩擦ユニットUfは、被摺動ロッド221に対して自由に移動できるものではなく、一定の力が作用したときに被摺動ロッド221との間で摩擦を生じさせながら移動する。
【0098】
図8及び図9に示すように、摺動筒222は、被摺動ロッド221が挿通される部材であり、筒本体222a及び摩擦材222bを有している。
【0099】
筒本体222aは、所定の内径を有し、軸線Cを中心として軸線Cに沿って延びた筒状の部品である。筒本体222aの軸線Cの方向に沿った寸法は、例えば15mm~30mm程度とされている。
筒本体222aは、例えば金属製とされる。
筒本体222aは、外径が先細りした先細り筒部222a1を有している。
筒本体222aには、軸線Cの方向に沿って延びた縦スリット222a2が形成されている。すなわち、軸線Cの方向から平面視した筒本体222aの形状は、対向する2つの端部を有するC型とされている。
【0100】
摩擦材222bは、所定の内径を有し、軸線Cを中心として軸線Cに沿って延びた筒状の部品/部分であり、筒本体222aの内周面に設けられている。したがって、摩擦材222bの外径は、筒本体222aの内径に略一致している。
摩擦材222bは、例えば金属中に固体潤滑剤を分散させた金属系無給油軸受とされる。摩擦材222bに金属系無給油軸受を用いることで、被摺動ロッド221と間で繰り返される摺動に対する耐久性を向上させることができる。なお、摩擦材222bの種類は、要求される摩擦力(減衰力)によって適宜変更できる。
摩擦材222bには、軸線Cの方向に沿って延びた縦スリット222b2が形成されている。すなわち、軸線Cの方向から平面視した摩擦材222bの形状は、対向する2つの端部を有するC型とされている。縦スリット222b2の位置は、例えば、筒本体222aの縦スリット222a2の位置と対応している。
摩擦材222bの内径は、被摺動ロッド221の外径と略一致しており、摩擦材222bの内周面は、摺動筒222に挿通された被摺動ロッド221の外周面に対して所定の接触力で接触している。これによって、摺動筒222が被摺動ロッド221に対して軸線Cに沿って移動するときに、摺動筒222(摩擦材222b)と被摺動ロッド221との間で摩擦が発生する。そして、摺動筒222を被摺動ロッド221に対して移動させる為に必要な力(摩擦力に抗う力)が摩擦ダンパ220の減衰力となる。
【0101】
図6及ぶ図7に示すように、被摺動ロッド221が挿通された摺動筒222は、保持ブロック223、押えブロック224及び締結部材225を有した保持ユニットUhに保持されている。
以下、その形態を具体的に説明する。
【0102】
摺動筒222は、保持ブロック223に形成された貫通穴223aに嵌め込まれている。
貫通穴223aは、軸線Cに沿って形成された穴であり、内径が先細りした先細り穴部223a1及び内径が略一定のストレート穴部223a2を有している。
貫通穴223aには、被摺動ロッド221が非接触で挿通されている。ただし、上述の通り、貫通穴223aに嵌め込まれた摺動筒222は、被摺動ロッド221と接触している。
【0103】
先細り穴部223a1の傾斜勾配は、筒本体222aの先細り筒部222a1の傾斜勾配と略一致している。
このとき、先細り穴部223a1の最小径は、先細り筒部222a1の最小径よりも小さい。また、先細り穴部223a1の最大径は、先細り筒部222a1の最小径よりも大きく、かつ、先細り筒部222a1の最大径よりも小さい。
このような寸法が設定された先細り穴部223a1に対して、筒本体222aの先細り筒部222a1が嵌め込まれている。
【0104】
先細り筒部222a1を先細り穴部223a1に嵌め込む際には摺動筒222を貫通穴223a(先細り穴部223a1)に押し込むが、筒本体222aには縦スリット222a2が形成され、かつ、摩擦材222bには縦スリット222b2が形成されているので、筒本体222aの先細り筒部222a1と保持ブロック223の先細り穴部223a1との接触によって、筒本体222a及び摩擦材222bは内径が小さくなる方向に変形する。このとき、先細り筒部222a1の形状に起因したくさび効果によって、小さな押込み力で摺動筒222の内周面(摩擦材222b)を被摺動ロッド221の外周面に強い接触力で接触させることができる。
これによって、摩擦材222bに金属系無給油軸受を用いたとしても、十分な摩擦を摩擦材222bと被摺動ロッド221との間で発生させることができるようになる。また、貫通穴223a(先細り穴部223a1)に対する摺動筒222の押込み量を調節することで、被摺動ロッド221に対する摺動筒222の内周面(摩擦材222b)の接触力が調節され、所望の減衰力を発生させるための摩擦力を摩擦ダンパ220に設定することができるようになる。
【0105】
ここで、くさび効果を発生させる先細り筒部222a1の傾斜勾配は、例えば1度以上10度以下とされている。
傾斜勾配を1度程度とすることで、摺動筒222の押込み量に対する筒本体222aの半径方向における変形量を小さくすることができ、接触力(摩擦力)の細かな調節ができるようになる。一方で、傾斜勾配を10度程度とすることで、先細り筒部222a1の形状に起因したくさび効果を効率的に発揮させることができる。本実施形態では、これらの下限値及び上限値のバランスを考慮した上で、先細り筒部222a1の傾斜勾配を上述のように設定している。
【0106】
貫通穴223aに嵌め込まれた摺動筒222は、押えブロック224によって保持ブロック223に向かって押え込まれている。押えブロック224は、締結部材225によって保持ブロック223に固定されている。
これによって、摺動筒222が保持ブロック223の貫通穴223aから抜けること防止している。すなわち、貫通穴223aに対する摺動筒222の押込み量が設定値よりも小さくなることを防止している。
押えブロック224には貫通穴224aが形成されており、貫通穴224aには被摺動ロッド221が非接触で挿通されている。
【0107】
締結部材225は、例えばボルトであり、押えブロック224側から保持ブロック223に向けて挿入されており、頭部が押えブロック224に形成されたザグリに収容され、軸部の先端(おねじ)が保持ブロック223に形成されためねじ穴と螺合している。
なお、締結部材225は、保持ブロック223側から押えブロック224に向けて挿入されてもよい。この場合、保持ブロック223にザグリが形成され、押えブロック224にめねじ穴が形成される。
【0108】
以上のようにして、摺動筒222が保持ユニットUhに保持されることになる。
【0109】
締結部材225としてのボルトは、呼び長さLを被摺動ロッド221の直径の2倍以上とすることが好ましい。
以下、その理由を説明する。
【0110】
前提として、摺動筒222が押し込まれた初期の状態において、ボルトの軸部には軸力が作用しており、それに伴ってボルトの軸部(めねじ穴と螺合した部分以外の軸部)には無負荷状態の長さLと比べて長くなるような軸方向変形(弾性変形)がΔL1だけ生じているものとする。すなわち、軸力が作用した状態のボルトの軸部の長さはL+ΔL1であり、ΔL1だけ押えブロック224を保持ブロック223側に押し込む余裕があることになる。
ここで、仮に摩擦材222b及び/又は被摺動ロッド221の外周面が僅かに摩耗してしまい、接触力を維持する為に摺動筒222の押込み量を初期の押込み量よりもΔL2(<ΔL1)だけ大きくしなければならない場合、そのΔL2は軸方向変形ΔL1によって補うことができる。
このとき、軸方向変形ΔL1は、ボルトの呼び長さLが長いほど大きく確保しやすい。なぜなら、単位長さ当たりの軸部で許容可能な弾性変形の量はボルトの材料等で決まっているので、ボルトの呼び長さLが長いほど全体として大きく弾性変形できるからである。そのため、ボルトの呼び長さLを被摺動ロッド221の直径の2倍以上とすることで、軸方向変形ΔL1を十分に確保できるようにした。
【0111】
<<減衰装置の動きについて>>
減衰装置200は、連動機構230及びオイルダンパ210のシリンダ211を含む一体物と、被摺動ロッド221及びロッド212を含む一体物と、摩擦ユニットUfとに大別できる。そこで、以下の説明では、例えば図10に示すように、各一体物を構成する各部材間の境界を省略した概略図を用いることにする。
【0112】
連動機構230は、摩擦ユニットUfを軸線Cの方向に挟み込んだ枠体を含んでいる。
本実施形態の場合、この枠体は、副ダンパサイド部材233、第1枠体ブロック234及び第2枠体ブロック235によって構成されており、主ダンパサイド部材232及び連結ブロック231を介してオイルダンパ210のシリンダ211の基端と接続されている。
【0113】
図10に示すように、減衰装置200が停止位置にあるとき、枠体と摩擦ユニットUfとの間には、軸線Cの方向に所定の距離Gが隙間として設けられている。詳細には、減衰装置200が停止位置にあるとき、第1枠体ブロック234と押えブロック224との間及び第2枠体ブロック235と保持ブロック223との間には、所定の距離Gが隙間として設けられている。
停止位置にある減衰装置200に軸線Cに沿った変位が生じた場合(すなわち、図2に示された第1減衰装置端部201と第2減衰装置端部202とが軸線Cに沿って互いに近接又は離隔した場合)、第1減衰装置端部201を有する連動機構230及びその連動機構230と接続されたオイルダンパ210のシリンダ211が、第2減衰装置端部202を有する被摺動ロッド221及びその被摺動ロッド221と接続されたロッド212に対して軸線Cに沿って相対的に移動することになる。
なお、図11及び図12に示す減衰装置200では、説明の簡便化のために、連動機構230の位置のみを移動させている。
【0114】
図11に示すように、軸線Cに沿った変位の最大値(軸線Cに沿った振幅)が距離Gよりも小さい場合、連動機構230は、摩擦ユニットUfと接触しない範囲で移動する。
なお、図11において、変位はA1とされている。
【0115】
このとき、連動機構230を移動させるためには、連動機構230と接続されたオイルダンパ210のシリンダ211をロッド212に対して移動させる力が必要になる。これによって、オイルダンパ210による減衰力が付与されることになる。
【0116】
図12に示すように、軸線Cに沿った変位の最大値が距離Gよりも大きい場合、連動機構230は、摩擦ユニットUfと当接した後、摩擦ユニットUfとの接触状態を保ちながら摩擦ユニットUfと共に移動する。
なお、図12において、変位はA2とされている。このとき、摩擦ユニットUfの停止位置からの移動量は、A2-Gとなる。
連動機構230と摩擦ユニットUfとの当接とは、具体的には、連動機構230の第2枠体ブロック235と摩擦ユニットUfの保持ブロック223との当接、又は、連動機構230の第1枠体ブロック234と摩擦ユニットUfの押えブロック224との当接を意味している(図5及び図10を参照)。
【0117】
連動機構230が摩擦ユニットUfと当接するまでの間は、上述と同様の原理で、オイルダンパ210のみで減衰力が付与される。すなわち、連動機構230が摩擦ユニットUfと当接するまでの間は、減衰装置200としての減衰性能は主としてオイルダンパ210によって発揮されることになる。
連動機構230が摩擦ユニットUfと当接した後は、摩擦ユニットUfが連動機構230と共にオイルダンパ210のロッド212と接続された被摺動ロッド221に対して移動する。このとき、連動機構230を移動させるためには、連動機構230と接続されたオイルダンパ210のシリンダ211をロッド212に対して移動させる力に加えて、摩擦ユニットUfを移動させる力(すなわち、摩擦Fによって発生する摩擦力に抗う力)が必要になる。これによって、摩擦ダンパ220による減衰力が追加的に付与されることになる。すなわち、連動機構230が摩擦ユニットUfと当接した後は、減衰装置200としての減衰性能はオイルダンパ210及び摩擦ダンパ220によって発揮されることになる。
【0118】
本実施形態で使用されるオイルダンパ210は、例えば、バイリニア特性を持つタイプとされることが好ましい。
バイリニア特性とは、ロッド212の停止位置から所定変位までの間で急激に耐力が立ち上がり、所定変位以降ではその耐力を略一定に維持する(立ち上がり時の耐力の勾配よりも緩やかな勾配となる場合も含む)特性のことである。
耐力(kN)の立ち上がりは、ロッド212の軸線Cに沿った変位(mm)に対して、例えば0.8kN/mm以上の勾配とされる。層間変形角θ(rad)との関係で表現すれば、耐力(kN)の立ち上がりは、1/500radで1.5kNとなる勾配とされる。なお、この耐力の勾配は、少なくとも、梁15が約2.8mmの振幅、かつ、約2Hzの周波数で水平方向に変位(振動)したときに発揮される。ただし、これらの数値は例示であり、これら以外の数値であってもよい。
【0119】
図13には、バイリニア特性を持つタイプのオイルダンパ210を使用した場合の、層間変位(横軸)と減衰装置200で発生した耐力(縦軸)との関係がグラフで示されている。
なお、このグラフでは、層間変位がd2を超えたときに連動機構230が摩擦ユニットUfと接触するように構成されているものとする。また、層間変位が減衰装置200の軸線Cに沿った変位と所定の関係があることは、上述した通りである。
【0120】
まず、地震揺れによって層間変位が生じると、停止位置からd2までの範囲では、オイルダンパ210が単独で機能する。すなわち、減衰装置200としての減衰力はオイルダンパ210のみによって付与されている状態である。
このとき、層間変位がゼロ(停止位置)からd1までの範囲では、耐力が急激に立ち上がる。一方、層間変位がd1からd2までの範囲では、耐力が略一定とされている。これらの挙動は、オイルダンパ210のバイリニア特性によるものである。
【0121】
層間変位が更に大きくなりd2を超えると、連動機構230が摩擦ユニットUfと接触して、摩擦ダンパ220が追加的に機能する。すなわち、減衰装置200としての減衰力はオイルダンパ210及び摩擦ダンパ220によって付与されている状態である。
このとき、d2を超えた範囲で耐力が再び立ち上がる。これは、追加的に付与された摩擦ダンパ220の減衰力によるものである。
【0122】
なお、図13に示す二点鎖線は、層間変位の全範囲でオイルダンパ210のみが機能した場合の耐力のプロファイルである。これは、本実施形態に含まれないが、参考のために表示している。
【0123】
以上ように、減衰装置200は、層間変位d2を境界に、オイルダンパ210のみが機能するのかオイルダンパ210及び摩擦ダンパ220の両方が機能するのか、が分かれている。
そして、連動機構230が摩擦ユニットUfと接触するときの層間変位の数値(図13におけるd2)が第1枠体ブロック234と押えブロック224との間に設けられた距離Gに依存することを踏まえれば、距離Gを調節することでd2の数値を調節することができる。言い換えれば、例えば、比較的に頻度の多い小さな地震揺れ(主としてオイルダンパ210で受け持ちたい地震揺れ)で生じ得る層間変位の数値を予めd2に設定しておけば、その層間変位の数値であるd2を狙って距離Gを決定することができる。距離Gは、オイルダンパ210のバイリニア特性を考慮して、例えば1mm以上5mm以下とされる。
【0124】
図14には、バイリニア特性を持つタイプのオイルダンパ210を使用した場合の、層間変位(横軸)と減衰装置200で発生した耐力(縦軸)との関係が1周期の揺れの範囲で示されている。
これを見ても明らかなように、摩擦ダンパ220で減衰力が追加的に付与された範囲(図14において破線の四角で表示)については、耐力が立ち上がっている。
【0125】
[変形例1]
上述の説明では主ダンパとして流体系ダンパの一種であるオイルダンパ210を採用し、副ダンパとして履歴系ダンパの一種である摩擦ダンパ220を採用したが、これら以外のダンパの種類や組合せであってもよい。
例えば、繰り返しの耐久性に優れ、かつ、小さな地震揺れから効き始める履歴系ダンパと大きな地震揺れに効果を発揮する他の履歴系ダンパとを組み合わせてもよいし、繰り返しの耐久性に優れ、かつ、小さな地震揺れから効き始める流体系ダンパと大きな地震揺れに効果を発揮する粘弾性系ダンパとを組み合わせてもよい。
【0126】
[変形例2]
上述の説明では、オイルダンパ210はバイリニア特性を持つタイプとしたが、この特性は必須ではなく、例えば通常のオイルダンパを採用してもよい。
いずれの場合であっても、一般的にオイルダンパは繰り返しの耐久性に優れ、かつ、小さな地震揺れにも効果を発揮するので、比較的に頻度の多い小さな地震揺れをそのオイルダンパで受け持つことで、小さな地震揺れを効果的に抑制できる。
【0127】
[変形例3]
摩擦ダンパ220は、被摺動ロッド221と摺動筒222との間で摩擦力を発生させていたが、摩擦を発生させることができる構造であれば、この形態に限定されない。
例えば、図15から図17に示すように、軸線Cの方向に沿って長穴421aが形成された被摺動プレート421(被摺動部材)を2枚の挟持プレート422(摺動部材)で挟み込んでボルト・ナット系の締結部材423で保持することで、被摺動プレート421と各挟持プレート422の間に摩擦力を発生させてもよい。
この場合、被摺動プレート421がオイルダンパ210のロッド212と接続され、挟持プレート422が連動機構230の枠体に囲われることになる。
【0128】
各挟持プレート422は、プレート本体422a及びプレート本体422aの表面に設けられた摩擦材422bを有しており、摩擦材422bが被摺動プレート421に接触することになる。
被摺動プレート421に対する摩擦材422bの接触力は、プレート本体422aを介して伝達される締結部材423の締付け力によって調節される。
【0129】
[変形例4]
図19に示すように、摩擦ダンパ220は、スペーサ226を備えていてもよい。
スペーサ226は、例えば、所定の内径及び外径を有し、軸線Cを中心として軸線Cに沿って延びた筒状の部品である。
スペーサ226は、例えば金属製とされる。
貫通穴223aの先細り穴部223a1とストレート穴部223a2との境界には段差面223a3が形成されており、スペーサ226の一方の端面はその段差面223a3に接触している。これに対して、スペーサ226の他方の端面には、摺動筒222の端部が接触している。これによって、摺動筒222が保持ブロック223の貫通穴223aに必要以上に押し込まれること防止している。すなわち、貫通穴223aに対する摺動筒222の押込み量が規制され、押込み量が設定値よりも大きくなることを防止している。
スペーサ226の内径は、被摺動ロッド221に接触しない寸法に設定されている。これは、スペーサ226が被摺動ロッド221に設計上想定していない摩擦力を付与しないようにするためである。
スペーサ226の外径は、貫通穴223aの先細り穴部223a1の内径以下、かつ、貫通穴223aのストレート穴部223a2の内径より大きい寸法に設定されている。これは、スペーサ226の一方の端面を貫通穴223aの段差面223a3に接触させるためである。
【0130】
軸線Cの方向に沿った寸法が異なる複数種類のスペーサ226を用意する、若しくはスペーサ226の当該寸法を調整することで、貫通穴223aに対する摺動筒222の押込み量を調整してもよい。
【0131】
[変形例5]
本実施形態で説明した摩擦ダンパ220は、必ずしも他のダンパ(例えばオイルダンパ210)と組み合わせて使用する必要はなく、例えば摩擦ダンパ220単独で使用することもできる。
【0132】
[本実施形態の効果]
本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
軸線Cに沿った変位が所定値以下の場合には、主ダンパ(例えばオイルダンパ210)のみが機能し、変位が所定値を超えた場合には、主ダンパ及び副ダンパ(例えば摩擦ダンパ220)が機能するので、小さな地震揺れに対しては主ダンパによる減衰力によって装置としての減衰性能を発揮して、大きな地震揺れに対しては副ダンパによる減衰力を追加したより大きな減衰力によって装置としての減衰性能を発揮することができる。
そのため、例えば、頻度が多い小さな地震に対しては主ダンパで対応することして、頻度が少ない大きな地震に対しては主ダンパ及び副ダンパで対応することができる。
これによって、例えば、主ダンパには繰り返しの耐久性に優れ、かつ、小さな地震揺れにも効果を発揮するダンパを採用して、副ダンパには減衰力が大きく大きな地震揺れに特に効果を発揮するダンパを採用するなど、ダンパ特有の性質を利用した複数種類のダンパの組合せを実現して、小さな地震揺れから大きな地震揺れまで対応可能で、かつ、繰り返しの耐久性についても考慮された減衰装置200を提供することができる。
【0133】
主ダンパがオイルダンパ210とされている場合、繰り返しの耐久性に優れ、かつ、小さな地震揺れにも効果を発揮する。
【0134】
副ダンパが摩擦ダンパ220とされている場合、大きな減衰力を設定しやすい。
【0135】
連動機構230は、変位が所定値を超えた場合に、被摺動ロッド221に対して摺動筒222を摺動させるので、変位が所定値を超えた場合に、オイルダンパ210と摩擦ダンパ220とを並列に接続することができる。これによって、変位が所定値を超えた場合に、摩擦ダンパ220による減衰力を追加的に付与することができる。
【0136】
枠体は、摩擦ユニットUf(摺動筒222を保持した保持ユニットUh)を軸線Cの方向に隙間を空けて挟み込んでいるので、隙間がゼロにならない範囲で摩擦ユニットUfが移動している場合には、摩擦ユニットUfは枠体と当接しないので、摺動筒222が被摺動ロッド221に対して摺動することがない。一方で、隙間がゼロになり枠体とともに摩擦ユニットUfが移動している場合には、摩擦ユニットUfは被摺動ロッド221に対して移動するので、摩擦ユニットUfに含まれた摺動筒222が被摺動ロッド221に対して摺動して摩擦力が発生する。
【0137】
保持ユニットUhは、摺動筒222が軸線Cに沿って嵌め込まれる貫通穴223aが形成された保持ブロック223、及び摺動筒222を保持ブロック223(貫通穴223a)に向かって押さえ込む押えブロック224を有しており、それらが締結部材225としてのボルトで締結されているので、簡便な構成で摺動筒222を保持することができる。
また、押えブロック224が摺動筒222を押さえ付けているので、摺動筒222が保持ブロック223の貫通穴223aから抜けることを防止することができる。
【0138】
摺動筒222は、外径が縮小する先細り筒部222a1及び軸線Cに沿った縦スリット222a2を有し、保持ブロック223の貫通穴223aには、摺動筒222の先細り筒部222a1が嵌め込まれるので、先細り筒部222a1と貫通穴223aとの接触によって、摺動筒222を保持ブロック223(貫通穴223a)に向かって押し込む力を、摺動筒222の内径を変化させる半径方向の力に変換することができる。これによって、挿通された被摺動ロッド221に対する摺動筒222の接触力を変化させることができ、被摺動ロッド221との間に発生する摩擦力を調節することができる。
また、先細り筒部222a1の形状に起因したくさび効果によって、小さな押込み力で摺動筒222の内周面(摩擦材222b)を被摺動ロッド221の外周面に強い力で接触させることができる。
【0139】
摺動筒222の先細り筒部222a1は、傾斜勾配が1度以上10度以下とされているので、摺動筒222の押込み量に対する筒本体222aの半径方向における変形量、かつ、くさび効果を効率的に発揮させることができる。
【0140】
摺動筒222の被摺動ロッド221の外周面に接触する部分は金属系無給油軸受とされているので、被摺動ロッド221と間で繰り返される摺動に対する耐久性を向上させることができる。また、摺動筒222の被摺動ロッド221の外周面に接触する部分が金属系無給油軸受であっても、くさび効果を利用した強い力で被摺動ロッド221の外周面に押し付けることで十分な摩擦力を確保することができる。
また、例えば先細り筒部222a1を有した摺動筒222(くさび効果を発生させる構造)を金属系無給油軸受と組み合わせることによって、強い摩擦力及び耐久性が考慮された摩擦ダンパ220を提供することができる。
【0141】
摺動ブッシュ234b、235bは、被摺動ロッド221を半径方向に保持しているので、被摺動ロッド221の半径方向の振れや撓みを防止して、被摺動ロッド221によって伝達される軸線Cの方向に沿った荷重の入力を安定化させることができる。これによって、減衰装置200としての剛性が低下すること、ひいては減衰装置200が発揮し得る耐力(減衰力)の立ち上がりが緩やかになることを防止することができる。
【0142】
オイルダンパ210は、バイリニア特性を持つタイプとされているので、小さな地震に対しても、初期の段階から減衰力を発揮させることができる。
【0143】
[第2実施形態]
以下、第2実施形態について説明する。
なお、第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0144】
<壁体構造について>
図20に示すように、壁体構造10は、例えば、木造住宅の壁体に採用される構造物であって、土台14の上において鉛直方向に延びた第1の柱11(第1の構造部材)及び第2の柱12(第2の構造部材)並びに各柱の上において水平方向に延びた梁15を有する枠状の構造体と、第1の柱11の上部から第2の柱12の下部にかけて配置された制振装置50と、を備えている。
【0145】
<制振装置について>
本実施形態に係る壁体構造10は、第1実施形態と同様、枠状の構造体に制振装置50が取り付けられて構成されている。
以下、制振装置50について詳細に説明する。
【0146】
<<概要>>
図20に示すように、制振装置50は、ブレース100及び減衰装置200を備え、それらが第1制振装置端部51と第2制振装置端部52とを結ぶ軸線Cに沿って並べられて構成された装置である。
【0147】
枠状の構造体に取り付けられた状態の制振装置50は、第1制振装置端部51が第2の柱12の下部に配置され、第2制振装置端部52が第1の柱11の上部に配置されており、第1の柱11の上部から第2の柱12の下部にかけて筋交いのように斜めに配置されている。
なお、第1制振装置端部51及び第2制振装置端部52の位置は、適宜入れ替えてもよい。
【0148】
第1制振装置端部51は、第1ブラケット301を介して第2の柱12に取り付けられている。
第1ブラケット301は、複数のビスで第2の柱12の下部に固定されている。
第1ブラケット301は、第1制振装置端部51を第1ブラケット支点部301aで回動自在に軸支している。このとき、第1制振装置端部51の回転軸は、奥行方向に沿っている。
なお、奥行方向は、鉛直方向及び水平方向に略直交する方向である。
【0149】
第2制振装置端部52は、第2ブラケット302及び接続ロッド303を介して第1の柱11に取り付けられている。
第2ブラケット302は、複数のビスで第1の柱11の上部に固定されている。
第2ブラケット302は、第2制振装置端部52と接続された接続ロッド303の端部を第2ブラケット支点部302aで回動自在に軸支している。このとき、接続ロッド303の回転軸は、奥行方向に沿っている。
【0150】
<<ブレースについて>>
図20に示すように、ブレース100は、第2の柱12側に配置される第1ブレース端部101から第1の柱11側に配置される第2ブレース端部102に向かって延びた金属製の棒状の部材である。
【0151】
<<減衰装置について>>
減衰装置200は、所望の減衰力を発生させる装置である。
減衰装置200は、第2の柱12側に配置される第1減衰装置端部201と第1の柱11側に配置される第2減衰装置端部202とを有している。
【0152】
図21から図23に示すように、減衰装置200は、減衰力を付与する複数のダンパと、所定の場合にそれらのダンパを連動させる連動機構230と、を備えている。
【0153】
複数のダンパは、例えば主ダンパ及び副ダンパとされている。
本実施形態の場合、例えば、主ダンパにオイルダンパ210を採用し、副ダンパに摩擦ダンパ220を採用している。
【0154】
摩擦ダンパ220は、被摺動ロッド221と、摩擦ユニットUfと、を備えている。
摩擦ユニットUfは、摺動筒222及び摺動筒222を保持する保持ユニットUhを有している。
保持ユニットUhは、摺動筒222が嵌め込まれる保持ブロック223、摺動筒222を保持ブロック223に向かって押さえ込む押えブロック224及び保持ブロック223と押さえ込む押えブロック224とを締結する複数のねじ部材225’を有している。
保持ブロック223及び押えブロック224は円柱状の部材である。保持ブロック223及び押えブロック224は円柱状の部材とされているので、それらの横断面形状は円形状である。また、保持ユニットUhの外形状を構成する保持ブロック223及び押えブロック224の横断面形状が円形状とされているので、保持ユニットUhとしての横断面形状も略円形状であると言える。保持ブロック223及び押えブロック224の外径は、例えはオイルダンパ210のシリンダ211の外径よりも小さい。
【0155】
連動機構230は、連結ブロック231と、サイドプレート236(サイド部材)と、第1枠体ブロック234と、第2枠体ブロック235と、を備えている。
【0156】
サイドプレート236は、軸線Cの方向に延びた金属製の薄い板材である。
2つのサイドプレート236は、オイルダンパ210のシリンダ211を挟むように向かい合って配置されている。
2つのサイドプレート236の一方の端部は、それらの間に配置された連結ブロック231の側面と接続されている(例えば、ボルト237による締結)。これによって、2つのサイドプレート236は、連結ブロック231を介してシリンダ211の基端と間接的に接続される。
2つのサイドプレート236の他方の端部は、少なくとも停止位置にあるオイルダンパ210のロッド212の先端よりも第2減衰装置端部202に近い位置にあり、それら(2つのサイドプレート236)の間に配置された第1枠体ブロック234及び第2枠体ブロック235の側面と接続されている(例えば、ボルト238やボルト239による締結)。
【0157】
連結ブロック231は、オイルダンパ210のシリンダ211の基端と接続された円柱状の部材である。
連結ブロック231は円柱状の部材とされているので、その横断面形状は円形状である。連結ブロック231の外径は、例えはオイルダンパ210のシリンダ211の外径と略等しい。
連結ブロック231は、例えば金属製とされる。
【0158】
第1枠体ブロック234及び第2枠体ブロック235は、対向する2つのサイドプレート236の間で軸線Cの方向において離隔して配置された円柱状の部材である。第1枠体ブロック234及び第2枠体ブロック235は円柱状の部材とされているので、それらの横断面形状は円形状である。第1枠体ブロック234及び第2枠体ブロック235の外径は、例えはオイルダンパ210のシリンダ211の外径と略等しい。
第1枠体ブロック234は、軸線Cの方向において第2枠体ブロック235とオイルダンパ210のシリンダ211の先端との間に配置されている。
第1枠体ブロック234及び第2枠体ブロック235は、例えば金属製とされる。
【0159】
対向する2つのサイドプレート236の間、かつ、第1枠体ブロック234と第2枠体ブロック235との間には、摩擦ダンパ220の摩擦ユニットUfを設けるためのスペースが確保されている。
【0160】
上述の通り、連動機構230に含まれている連結ブロック231、2つのサイドプレート236、第1枠体ブロック234及び第2枠体ブロック235は、互いに接続されているので、減衰装置200において一体物として捉えることができる。そのため、連動機構230に含まれている各部材は、上述のように別体としなくてもよく、適宜一体化(一部品化)してもよい。
【0161】
第1実施形態と同様、被摺動ロッド221の半径方向の振れや撓みを防止するために、摺動ブッシュ234bを第1枠体ブロック234に設けて、摺動ブッシュ235bを第2枠体ブロック235に設けてもよい。
【0162】
対向する2つのサイドプレート236の間、かつ、第1枠体ブロック234と第2枠体ブロック235との間には、摩擦ユニットUf(摺動筒222を保持した保持ユニットUh)が設けられている。
【0163】
図24及び図25に示すように、ねじ部材225’は、例えばボルトであり、保持ブロック223側から押えブロック224に向けて挿入されており、頭部が保持ブロック223に形成されたザグリに収容され、軸部の先端(おねじ)が押えブロック224に形成されためねじ穴と螺合している。
なお、ねじ部材225’は、押えブロック224側から保持ブロック223に向けて挿入されてもよい。この場合、押えブロック224にザグリが形成され、保持ブロック223にめねじ穴が形成される。
円柱状の保持ブロック223及び円柱状の押えブロック224が採用された本実施形態の場合、ねじ部材225’の数は、3本以上とされることが好ましい(図24では4本)。そして、それらのねじ部材225’を、軸線Cを中心とした周方向において等角度間隔に配置することで、周方向において均等に摺動筒222を押さえ込むことができる。
【0164】
<<減衰装置の動きについて>>
減衰装置200は、連動機構230及びオイルダンパ210のシリンダ211を含む一体物と、被摺動ロッド221及びロッド212を含む一体物と、摩擦ユニットUfとに大別できる。そこで、図10に倣って、各一体物を構成する各部材間の境界を省略した概略図を図26に示す。
【0165】
連動機構230は、摩擦ユニットUfを軸線Cの方向に挟み込んだ枠体を含んでいる。
本実施形態の場合、この枠体は、サイドプレート236、第1枠体ブロック234及び第2枠体ブロック235によって構成されており、サイドプレート236と接続された連結ブロック231を介してオイルダンパ210のシリンダ211の基端と接続されている。
【0166】
減衰装置の動きは、第1実施形態と同様である。そのため、ここでは簡単な説明に留めておく。
【0167】
減衰装置200が停止位置にあるとき、枠体と摩擦ユニットUfとの間には、軸線Cの方向に所定の距離Gが隙間として設けられている。
停止位置にある減衰装置200に軸線Cに沿った変位が生じた場合、連動機構230及びその連動機構230と接続されたオイルダンパ210のシリンダ211が、被摺動ロッド221及びその被摺動ロッド221と接続されたロッド212に対して軸線Cに沿って相対的に移動することになる。
【0168】
軸線Cに沿った変位の最大値(軸線Cに沿った振幅)が距離Gよりも小さい場合、連動機構230は、摩擦ユニットUfと接触しない範囲で移動する。
このとき、連動機構230を移動させるためには、連動機構230と接続されたオイルダンパ210のシリンダ211をロッド212に対して移動させる力が必要になる。これによって、オイルダンパ210による減衰力が付与されることになる。
【0169】
軸線Cに沿った変位の最大値が距離Gよりも大きい場合、連動機構230は、摩擦ユニットUfと当接した後、摩擦ユニットUfとの接触状態を保ちながら摩擦ユニットUfと共に移動する。
連動機構230が摩擦ユニットUfと当接するまでの間は、上述と同様の原理で、オイルダンパ210のみで減衰力が付与される。
連動機構230が摩擦ユニットUfと当接した後は、摩擦ユニットUfが連動機構230と共にオイルダンパ210のロッド212と接続された被摺動ロッド221に対して移動する。このとき、連動機構230を移動させるためには、連動機構230と接続されたオイルダンパ210のシリンダ211をロッド212に対して移動させる力に加えて、摩擦ユニットUfを移動させる力(すなわち、摩擦Fによって発生する摩擦力に抗う力)が必要になる。これによって、摩擦ダンパ220による減衰力が追加的に付与されることになる。すなわち、連動機構230が摩擦ユニットUfと当接した後は、減衰装置200としての減衰性能はオイルダンパ210及び摩擦ダンパ220によって発揮されることになる。
【0170】
<<サイドプレートの横断面形状について>>
図21から図23に示すように、各サイドプレート236は、オイルダンパ210のシリンダ211の外周面に沿って軸線Cの方向に延びた金属製の薄い板材である。
図27図28図29及び図30に示すように、各サイドプレート236の横断面形状は、概略、軸線Cを中心とした半径方向の外側に向かった凸形状とされている。ただし、各サイドプレート236の横断面形状の特徴は、軸線Cの方向の位置によって異なっていてもよい。
以下、各サイドプレート236の横断面形状について詳細に説明する。
【0171】
図23に示すように、各サイドプレート236は、軸線Cの方向に沿って、シリンダ基端側部分236A、シリンダ先端側部分236B、中間部分236C及び枠体側部分236Dの4つの部分に区別される。
【0172】
シリンダ基端側部分236Aは、サイドプレート236の端部(連結ブロック231側の端部)からシリンダ211の内部にあるロッド212の基端の位置までの部分である。ただし、ここで言う「ロッド212の基端の位置」は、ロッド212が最もシリンダ211に入り込んだとき(すなわち、ロッド212が最も縮んだとき。図23において二点鎖線で表示。)のロッド212の基端の位置を意味する。
以下、サイドプレート236の端部に対応するシリンダ基端側部分236Aの位置を「シリンダ基端側部分236Aの始端」と定義し、ロッド212の基端の位置に対応するシリンダ基端側部分236Aの位置を「シリンダ基端側部分236Aの終端」と定義する。
【0173】
シリンダ先端側部分236Bは、シリンダ基端側部分236Aの終端からシリンダ211の先端の位置までの部分である。
以下、シリンダ基端側部分236Aの終端に対応するシリンダ先端側部分236Bの位置を「シリンダ先端側部分236Bの始端」と定義し、シリンダ211の先端の位置に対応するシリンダ先端側部分236Bの位置を「シリンダ先端側部分236Bの終端」と定義する。
【0174】
中間部分236Cは、シリンダ先端側部分236Bの終端から第1枠体ブロック234の端面の位置までの部分である。ただし、ここで言う「第1枠体ブロック234の端面」は、シリンダ211と向かい合った第1枠体ブロック234の端面を意味する。
以下、シリンダ先端側部分236Bの終端に対応する中間部分236Cの位置を「中間部分236Cの始端」と定義し、第1枠体ブロック234の端面の位置に対応するシリンダ先端側部分236Bの位置を「中間部分236Cの終端」と定義する。
【0175】
枠体側部分236Dは、中間部分236Cの終端からサイドプレート236の端部(第2枠体ブロック235側の端部)までの部分である。
以下、中間部分236Cの終端に対応する中間部分236Cの位置を「枠体側部分236Dの始端」と定義し、サイドプレート236の端部に対応するシリンダ先端側部分236Bの位置を「枠体側部分236Dの終端」と定義する。
【0176】
なお、これらの部分は、サイドプレート236として一部品で構成されており、互いに構造的に独立した部品ではない。
また、これらの部分の境界は厳密なものではなく、各部分の始端位置及び終端位置はずれてもよい。
【0177】
図27に示すように、シリンダ基端側部分236Aの横断面形状は、周方向に離隔した2箇所の屈曲部236a1が形成された弓なり形状とされている。
一方の屈曲部236a1と他方の屈曲部236a1との間は、略直線形状の直線部236a2とされている。
一方のサイドプレート236の直線部236a2と、それと略平行に向かい合った他方のサイドプレート236の直線部236a2と、の間の距離は、オイルダンパ210のシリンダ211の外径と等しい。そのため、軸線Cと直交する切断面において、各サイドプレート236の直線部236a2は、シリンダ211の外周面に点で接触している(図27において黒塗りの丸で表示)。したがって、図22及び図23に示すように、各サイドプレート236の直線部236a2は、シリンダ211の外周面に線(線Lc)で接触する。線Lcは、軸線Cの方向に沿った線である。
これによって、シリンダ基端側部分236Aの一部の範囲でシリンダ211を支持するとともに、支持箇所の面積をできる限り小さくすることでシリンダ211がサイドプレート236の接触によって変形する可能性を低減している。また、シリンダ基端側部分236Aにはロッド212の端部が到達しないので、仮にサイドプレート236の接触によって一部の範囲のシリンダ211が変形したとしても、オイルダンパ210の減衰性能に影響を与えにくい。
なお、軸線Cに沿った全範囲においてシリンダ基端側部分236Aがシリンダ211と接触する必要はなく、少なくとも軸線Cに沿ったいずれかの範囲においてシリンダ基端側部分236Aがシリンダ211と接触すればよい。
【0178】
図28に示すように、シリンダ先端側部分236Bの横断面形状は、周方向に離隔した2箇所の屈曲部236b1が形成された弓なり形状とされている。
一方の屈曲部236b1と他方の屈曲部236b1との間は、略直線形状の直線部236b2とされている。
例えば図23の二点鎖線で示すように、シリンダ先端側部分236Bは、正面視したとき、半径方向の外側に向かって僅かに膨らむように撓んでいる/湾曲している。そのため、図28に示すように、一方のサイドプレート236の直線部236b2と、それと略平行に向かい合った他方のサイドプレート236の直線部236b2と、の間の距離は、オイルダンパ210のシリンダ211の外径よりも大きい。したがって、軸線Cと直交する切断面において、各サイドプレート236の直線部236a2は、シリンダ211の外周面に接触していない(図28において白抜きの丸で表示)。
なお、図23の二点鎖線で示した形状は、シリンダ先端側部分236Bの形状の一例を誇張して表示したものであり、実際の形状を限定するものではない。
【0179】
図29及び図30に示すように、枠体側部分236Dの横断面形状は、第1枠体ブロック234の外周面及び第2枠体ブロック235の外周面に沿った円弧形状とされている。また、一方の枠体側部分236Dと、それと向かい合った他方の枠体側部分236Dと、の間の距離(内径)は、第1枠体ブロック234の外径及び第2枠体ブロック235の外径にと等しい。そのため、各サイドプレート236は、第1枠体ブロック234の外周面及び第2枠体ブロック235の外周面に面で接触する。
これによって、サイドプレート236で第1枠体ブロック234の及び第2枠体ブロック235を安定的に支持することができる。
なお、保持ユニットUhに含まれた保持ブロック223の外径及び押えブロック224の外径は、一方の枠体側部分236Dと他方の枠体側部分236Dとの間の距離(内径)よりも小さく設定されている。そのため、各サイドプレート236は、保持ユニットUhと接触しない。これは、サイドプレート236が保持ユニットUhに設計上想定していない摩擦力を付与しないようにするためである。
【0180】
シリンダ先端側部分236Bでは弓なり形状とされていた横断面形状が、枠体側部分236Dでは円弧形状とされている。これは、例えば、軸線Cの方向に沿って中間部分236Cの横断面形状を連続的に変形/変化させることで実現している。
サイドプレート236の横断面形状は、例えば絞り加工で変形/変化させることができる。
【0181】
図20に示すように、地震揺れによって第1の柱11及び第2の柱12が傾いた際に柱11,12が撓むことがあり、その撓みによって、奥行方向に沿った軸線回りのモーメントMが制振装置50に発生するこがある。
そこで、壁体構造10において、オイルダンパ210のシリンダ211を挟むように配置された2つのサイドプレート236の対向方向を、軸線Cの方向及び奥行方向に直交した方向とすることで、2つのサイドプレート236によってモーメントMに起因した引張/圧縮の釣合いをとることができる(一方のサイドプレート236に引張荷重が作用して、他方のサイドプレート236に圧縮荷重が作用する。)。これによって、薄い板材であるサイドプレート236でモーメントMに対抗することができる。また、サイドプレート236を薄肉化することで制振装置50の軽量化や小型化を実現できる。
【0182】
[変形例6]
サイドプレート236の枠体側部分236Dの横断面形状を、シリンダ基端側部分236Aと同様の弓なり形状としてもよい。
この場合、軸線Cと直交する切断面において、各サイドプレート236は、第1枠体ブロック234の外周面及び第2枠体ブロック235の外周面に線で接触する。
【0183】
<<サイドプレートの固定について>>
図29に示すように、サイドプレート236は、第1枠体ブロック234に対してボルト238で締結されている。
【0184】
ボルト238は、例えば段付きボルトであり、ねじ部238a、円筒部238b及び頭部238cを有している。したがって、円筒部238bの直径は、ねじ部238aの呼び径よりも大きい。
ボルト238のねじ部238aは、第1枠体ブロック234に形成されためねじ穴234cに螺合される。
ボルト238の円筒部238bは、第1枠体ブロック234に形成された段付き穴234d及びサイドプレート236に形成された貫通穴236d1に挿入されている。円筒部238bの直径は、段付き穴234dの直径及び貫通穴236d1の直径と略等しく又はそれらの直径より僅かに大きく設定されている。そのため、段付き穴234d及び貫通穴236d1に嵌合した円筒部238bは、段付き穴234d及び貫通穴236d1に対してがたつかないように構成されている。なお、段付き穴234dの直径がめねじ穴234cの呼び径よりも大きいことは言うまでもない。
ボルト238の頭部238cは、サイドプレート236の外周面に接触している。
【0185】
これによって、仮にボルト238が緩んだとしても、ボルト238のねじ部238aが第1枠体ブロック234のめねじ穴234cに螺合して、かつ、ボルト238の円筒部238bがサイドプレート236の貫通穴236d1に嵌合している限り、軸線Cの方向においてはサイドプレート236と第1枠体ブロック234との拘束が維持される。すなわち、サイドプレート236としての機能が維持されることになる。
【0186】
段付きとされたボルト238及びそれによって締結される部材の構成は、例えば、ボルト237及びそれによって締結される部材、並びにボルト239及びそれによって締結される部材にも適用できる。
【0187】
[本実施形態の効果]
本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
サイドプレート236は、オイルダンパ210のシリンダ211の基端側の一部の範囲にのみ接触し、かつ、シリンダ211の外周面と線Lcで接触しているので、基端側の一部の範囲でシリンダ211を支持するとともに、支持箇所の面積をできる限り小さくすることでシリンダ211がサイドプレート236の接触によって変形する可能性を低減している。
また、シリンダ211の基端側の内部にはロッド212の端部(シリンダ211の内部に収容された方の端部)が到達しないので、仮にサイドプレート236の接触によって一部の範囲でシリンダ211が変形したとしても、オイルダンパ210の減衰性能に影響を与えにくい。
【0188】
サイドプレート236は、第1枠体ブロック234及び第2枠体ブロック235に対しては面で接触しているので、第1枠体ブロック234の及び第2枠体ブロック235を安定的に支持することができる。
【0189】
中間部分236Cにてサイドプレート236の断面形状を変化させることで、オイルダンパ210のシリンダ211への接触のさせ方と第1枠体ブロック234及び第2枠体ブロック235への接触のさせ方を変えることができる。
【0190】
第1枠体ブロック234及び第2枠体ブロック235の軸線Cと直交する断面形状は、軸線Cを中心とした円形状とされ、オイルダンパ210のシリンダ211の軸線Cと直交する断面形状は、軸線Cを中心とした円形状とされているので、装置全体としての形状に一体感を持たせ優れた美観を創出すことができる。
【0191】
保持ユニットUhは、保持ブロック223及び押えブロック224を締結する3本以上のねじ部材225’を有し、ねじ部材225’は、軸線Cを中心とした周方向において等角度間隔に配置されているので、周方向において均等に摺動筒222を押さえ込むことができる。
【0192】
2つのサイドプレート236は、軸線Cの方向及び奥行方向に直交した方向において向かい合っているので、奥行方向に沿った軸線回りのモーメントが制振装置50(特に減衰装置200)に発生したとき、2つのサイドプレート236によって引張/圧縮の釣合いをとることができる(一方のサイドプレート236に引張荷重が作用して、他方のサイドプレート236に圧縮荷重が作用する。)。
【符号の説明】
【0193】
10 壁体構造
11 第1の柱(第1の構造部材)
12 第2の柱(第2の構造部材)
14 土台
15 梁
50 制振装置
51 第1制振装置端部(第1端部)
52 第2制振装置端部(第2端部)
100 ブレース
101 第1ブレース端部
102 第2ブレース端部
200 減衰装置
201 第1減衰装置端部
202 第2減衰装置端部
210 オイルダンパ(主ダンパ)
211 シリンダ
212 ロッド
220 摩擦ダンパ(副ダンパ)
221 被摺動ロッド(被摺動部材)
222 摺動筒(摺動部材、筒状部品)
222a 筒本体
222a1 先細り筒部
222a2 縦スリット
222b 摩擦材
222b2 縦スリット
223 保持ブロック(保持部材)
223a 貫通穴
223a1 先細り穴部
223a2 ストレート穴部
223a3 段差面
224 押えブロック(押え部材)
224a 貫通穴
225 締結部材(ボルト)
225’ ねじ部材(ボルト)
226 スペーサ
230 連動機構
231 連結ブロック
232 主ダンパサイド部材
233 副ダンパサイド部材
234 第1枠体部材(第1枠体ブロック)
234a 貫通穴
234b 摺動ブッシュ
234c めねじ穴
234d 段付き穴
235 第2枠体部材(第2枠体ブロック)
235a 貫通穴
235b 摺動ブッシュ
236 サイドプレート(サイド部材)
236A シリンダ基端側部分
236a1 屈曲部
236a2 直線部
236B シリンダ先端側部分
236b1 屈曲部
236b2 直線部
236C 中間部分
236D 枠体側部分
236d1 貫通穴
237 ボルト
238 ボルト
238a ねじ部
238b 円筒部
238c 頭部
239 ボルト
301 第1ブラケット
301a 第1ブラケット支点部
302 第2ブラケット
302a 第2ブラケット支点部
303 接続ロッド
421 被摺動プレート(被摺動部材)
421a 長穴
422 挟持プレート(摺動部材)
422a プレート本体
422b 摩擦材
423 締結部材(ボルト・ナット)
Uf 摩擦ユニット
Uh 保持ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
【手続補正書】
【提出日】2024-07-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図10
【補正方法】変更
【補正の内容】
図10
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図11
【補正方法】変更
【補正の内容】
図11
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図12
【補正方法】変更
【補正の内容】
図12
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図13
【補正方法】変更
【補正の内容】
図13
【手続補正5】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図14
【補正方法】変更
【補正の内容】
図14
【手続補正6】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図15
【補正方法】変更
【補正の内容】
図15
【手続補正7】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図16
【補正方法】変更
【補正の内容】
図16
【手続補正8】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図17
【補正方法】変更
【補正の内容】
図17
【手続補正9】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図18
【補正方法】変更
【補正の内容】
図18
【手続補正10】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図19
【補正方法】変更
【補正の内容】
図19
【手続補正11】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図20
【補正方法】変更
【補正の内容】
図20
【手続補正12】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図21
【補正方法】変更
【補正の内容】
図21
【手続補正13】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図22
【補正方法】変更
【補正の内容】
図22
【手続補正14】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図23
【補正方法】変更
【補正の内容】
図23
【手続補正15】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図24
【補正方法】変更
【補正の内容】
図24
【手続補正16】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図25
【補正方法】変更
【補正の内容】
図25
【手続補正17】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図26
【補正方法】変更
【補正の内容】
図26
【手続補正18】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図27
【補正方法】変更
【補正の内容】
図27
【手続補正19】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図28
【補正方法】変更
【補正の内容】
図28
【手続補正20】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図29
【補正方法】変更
【補正の内容】
図29
【手続補正21】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図30
【補正方法】変更
【補正の内容】
図30