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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128966
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】化合物粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 45/00 20060101AFI20240913BHJP
   G02B 5/20 20060101ALN20240913BHJP
【FI】
C01G45/00
G02B5/20
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024035367
(22)【出願日】2024-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2023037918
(32)【優先日】2023-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094536
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 隆二
(74)【代理人】
【識別番号】100129805
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100189315
【弁理士】
【氏名又は名称】杉原 誉胤
(72)【発明者】
【氏名】田中 章宣
【テーマコード(参考)】
2H148
4G048
【Fターム(参考)】
2H148AA07
2H148AA15
2H148AA24
4G048AA03
4G048AB01
4G048AC08
4G048AD03
4G048AE05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】原料の焼成温度の低温化を実現し、可視光線領域における透過率は低く、一方近赤外線領域における透過率が高い近赤外線透過材料を製造できる製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の化合物粒子の製造方法は、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、B、F、Al、Si、P、S、Cl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Se、Br、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、I、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Tl、Pb、Biのうちから選択される元素を含む2種以上の原料化合物を粉砕混合し、混合原料を得る工程と、得られた前記混合原料を焼成し、化合物を得る工程と、得られた前記化合物を粉砕し、化合物粒子を得る工程と、を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、B、F、Al、Si、P、S、Cl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Se、Br、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、I、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Tl、Pb、Biのうちから選択される元素を含む2種以上の原料化合物を粉砕混合し、混合原料を得る工程と、
得られた前記混合原料を焼成し、化合物を得る工程と、
得られた前記化合物を粉砕し、化合物粒子を得る工程と、
を有することを特徴とする化合物粒子の製造方法。
【請求項2】
前記化合物粒子の波長550nm、及び波長700nmの光の反射率が20%R以下であることを特徴とする請求項1に記載の化合物粒子の製造方法。
【請求項3】
前記化合物粒子が、酸化物粒子であることを特徴とする請求項1、又は2に記載の化合物粒子の製造方法。
【請求項4】
前記化合物粒子の構成元素が、Cr、Mn、Fe、Co、Niのうちから選択される1種以上の元素を含むことを特徴とする請求項1、又は2に記載の化合物粒子の製造方法。
【請求項5】
前記化合物粒子の構成元素が、Mnを含むことを特徴とする請求項4に記載の化合物粒子の製造方法。
【請求項6】
前記原料化合物が、電解MnOであることを特徴とする請求項1、又は2に記載の化合物粒子の製造方法。
【請求項7】
前記混合原料が粉末状であって、その平均粒径D50が、4.2μm以下であることを特徴とする請求項1、又は2に記載の化合物粒子の製造方法。
【請求項8】
前記原料化合物は、ボールミル粉砕、ビーズミル粉砕、ジェットミル粉砕、ローラーミル粉砕、ハンマーミル粉砕、ピンミル粉砕のうちから選択される1種以上の粉砕方法で粉砕混合されることを特徴とする請求項1、又は2に記載の化合物粒子の製造方法。
【請求項9】
前記混合原料の焼成温度が、1100℃以下であることを特徴とする請求項1、又は2に記載の化合物粒子の製造方法。
【請求項10】
基材と、前記基材上に形成されている近赤外線反射下膜と、前記近赤外線反射下膜上に形成されている近赤外線透過上膜と、を有する遮熱部材の製造方法であって、
基材上に、近赤外反射材料を含有する近赤外線反射下膜を形成する下膜形成工程と、
前記近赤外線反射下膜上に、構成元素として、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、B、F、Al、Si、P、S、Cl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Se、Br、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、I、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Tl、Pb、Biのうちから選択される2種以上の元素を含む化合物粒子を有する近赤外線透過材料を含有する近赤外線透過上膜を形成する上膜形成工程と、を有することを特徴とする遮熱部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、赤外線センサや、赤外線カメラは、幅広い技術分野で有効活用されてきている。例えば、スマートフォンなどの情報通信端末の分野において、セキュリティー強化の観点から、顔認証などが導入されており、正確な顔の形状を検出するため、赤外線センサや、赤外線カメラが利用されている。また、自動車分野において、車両周囲の状況を検出するために、車両に赤外線センサや、赤外線カメラが取り付けられている。
【0003】
顔の形状や、車両周囲の状況を正確に検出するためには、高精度な赤外線センサや、近赤外線カメラが求められており、それの実現には、近赤外線のみ透過し、それ以外の波長、例えば可視光線を透過させないフィルタや塗料が必要となっている。
【0004】
このようなフィルタや、塗料の材料として、特許文献1に開示されている赤外線透過製品では、酸化チタンや、酸化亜鉛を透明樹脂に配合した組成物を、塗料としている。また、特許文献2、3は、アゾ系の染顔料を透明樹脂に配合した組成物を、近赤外線を透過させる塗膜とする構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-56346号公報
【特許文献2】特許第6899061号公報
【特許文献3】特開2021-56345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された酸化チタンや、酸化亜鉛を透明樹脂に配合した組成物から形成された塗料の近赤外線領域における透過率を上げようとすると可視光線領域における透過率も上がってしまうことや、酸化チタンや酸化亜鉛は光触媒性能を有することから、配合する樹脂を劣化させてしまうという懸念があった。さらに、アゾ系の染顔料といった有機染顔料は、一般的に紫外線に弱いと言われており、耐候性や、耐久性の点で懸念があった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みて、可視光線領域における透過率は低く、近赤外線領域におけるが高い化合物粒子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明の化合物粒子の製造方法は、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、B、F、Al、Si、P、S、Cl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Se、Br、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、I、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Tl、Pb、Biのうちから選択される元素を含む2種以上の原料化合物を粉砕混合し、混合原料を得る工程と、得られた前記混合原料を焼成し、化合物を得る工程と、得られた前記化合物を粉砕し、化合物粒子を得る工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
ここで、本発明の化合物粒子の製造方法において、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、B、F、Al、Si、P、S、Cl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Se、Br、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、I、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Tl、Pb、Biのうちから選択される元素を含む2種以上の原料化合物を粉砕混合し、混合原料を得る工程を、「粉砕混合工程」とし、また得られた前記混合原料を焼成し、化合物を得る工程を、「焼成工程」とし、さらに得られた前記化合物を粉砕し、化合物粒子を得る工程を、「粉砕工程」として、以下説明する。
【0010】
先ず、粉砕混合工程において、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、B、F、Al、Si、P、S、Cl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Se、Br、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、I、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Tl、Pb、Biのうちから選択される元素を含む2種以上の原料化合物を粉砕混合し、混合原料を得る。なお、希土類元素(レアアース)とは、原子番号57のLa(ランタン)から原子番号71のLu(ルテチウム)までの15元素(ランタノイド)と、原子番号21のSc(スカンジウム)、原子番号29のY(イットリウム)を加えた17元素であり、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luを示す。
【0011】
原料化合物として、以下のような化合物を用いると好ましい。
【0012】
マンガン原料は、例えば電解二酸化マンガン(MnO)、酸化マンガン(II)(一酸化マンガン)、酸化マンガン(II,III)、酸化マンガン(III)、酸化マンガン(IV)(二酸化マンガン)、酸化マンガン(VI)、酸化マンガン(VII)などが挙げられる。特に、電解二酸化マンガン(MnO)は、例えば原料の二酸化マンガン鉱石等を粉砕し、一酸化マンガンへの還元、硫酸への溶解、精製等の工程を経て得られる高純度硫酸マンガン液を電気分解により得られる高純度二酸化マンガンであって、一般的な二酸化マンガンに比べて低不純物、微細で均一な形状であることから、焼成時の反応性に優れ、より低温で目的物を生成でき、生成物の微粒子化に寄与する観点で好ましい。
【0013】
イットリウム原料は、例えば酸化イットリウム(Y)、炭酸イットリウム(Y(CO・3HO)、酢酸イットリウム(Y(CHCOO)・4HO)、フッ化イットリウム(YF)、硝酸イットリウム(Y(NO・nHO)などが挙げられる。特に酸化イットリウム(Y)が好ましい。
【0014】
リチウム原料は、例えば水酸化リチウム(LiOH)、炭酸リチウム(LiCO)、硝酸リチウム(LiNO)、水酸化リチウム・水和物(LiOH・HO)、酸化リチウム(LiO)、その他脂肪酸リチウムや、リチウムハロゲン化合物などが挙げられる。特にリチウムの水酸化物塩、炭酸塩、硝酸塩が好ましい。
【0015】
マグネシウム原料は、例えば酸化マグネシウム(MgO)、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、フッ化マグネシウム(MgF)、硝酸マグネシウム(Mg(NO)、塩化マグネシウム(MgCl)、硫酸マグネシウム(MgSO)などが挙げられる。特に酸化マグネシウムが好ましい。
【0016】
アルミニウム原料は、例えば水酸化アルミニウム(Al(OH))、フッ化アルミニウム(AlF)などが挙げられる。特に水酸化アルミニウムが好ましい。
【0017】
亜鉛原料は、例えば酸化亜鉛(ZnO)、硫化亜鉛(ZnS)、フッ化亜鉛四水和物(ZnF・4HO)、ステアリン酸亜鉛([CH(CH16COO]Zn)などが挙げられる。特に酸化亜鉛(ZnO)が好ましい。
【0018】
ナトリウム原料は、例えば炭酸ナトリウム(NaCO)、水酸化ナトリウム(NaOH)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)、硝酸ナトリウム(NaNO)、硫酸ナトリウム(NaSO)、塩化ナトリウム(NaCl)などが挙げられる。特に炭酸ナトリウム(NaCO)が好ましい。
【0019】
カルシウム原料は、例えば炭酸カルシウム(CaCO)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム(CaOH)、硝酸カルシウム(Ca(NO)、硫酸カルシウム(CaSO)などが挙げられる。特に炭酸カルシウム(CaCO)が好ましい。
【0020】
ストロンチウム原料は、例えば炭酸ストロンチウム(SrCo)、硫酸ストロンチウム(SrSO)、硝酸ストロンチウム(Sr(NO)、塩化ストロンチウム(SrCl)などが挙げられる。
【0021】
バリウム原料は、例えば炭酸バリウム(BaCO)、硫酸バリウム(BaSO)、水酸化バリウム(Ba(OH))、フッ化バリウム(BaF)などが挙げられる。特に炭酸バリウム(BaCO)が好ましい。
【0022】
ビスマス原料は、例えば酸化ビスマス(Bi)、塩基性炭酸ビスマス((BiO)CO)、硫酸ビスマス(Bi(SO)、硝酸ビスマス五水和物(Bi(NO・5HO)などが挙げられる。特に塩基性炭酸ビスマス((BiO)CO)が好ましい。
【0023】
ランタン原料は、例えば酸化ランタン(La)、炭酸ランタン(La(CO)、水酸化ランタン(La(OH))、硫酸ランタン(La(SO・9HO)、硝酸ランタン(La(NO・6HO)などが挙げられる。特に炭酸ランタン(La(CO)が好ましい。
【0024】
プラセオジム原料は、例えば酸化プラセオジム(Pr11)、酢酸プラセオジム((CHCOO)Pr・nHO)、フッ化プラセオジム(PrF)、炭酸プラセオジム八水和物(Pr(CO・8HO)などが挙げられる。特に酸化プラセオジム(Pr11)が好ましい。
【0025】
ネオジム原料は、例えば酸化ネオジム(Nd)、炭酸ネオジム(Nd(CO・8HO)、フッ化ネオジム(NdF)などが挙げられる。特に炭酸ネオジム(Nd(CO・8HO)が好ましい。
【0026】
鉄原料は、例えば酸化鉄(Fe)、酸化鉄(Fe)、硫酸鉄(FeSO)、炭酸鉄(FeCO)、硝酸鉄(Fe(NO)などが挙げられる。特に酸化鉄(Fe)が好ましい。
【0027】
チタン原料は、例えば酸化チタン(TiO)(ルチル、アナターゼ、ブルッカイト、ブロンズ)、チタンテトライソプロポキシド([(CHCHO]Ti)などが挙げられる。特に酸化チタン(TiO)(アナターゼ)が好ましい。
【0028】
ニッケル原料は、塩基性炭酸ニッケル(II)(NiCO・2Ni(OH)・4HO)、酸化ニッケル(II)(NiO)、硫酸ニッケル(II)六水和物(NiSO・6HO)、塩化ニッケル(II)六水和物(NiCl・6HO)、硝酸ニッケル(II)六水和物(Ni(NO・6HO)、酢酸ニッケル(II)四水和物((CHCOO)Ni・4HO)、水酸化ニッケル(II)(Ni(OH))などが挙げられる。特に塩基性炭酸ニッケル(II)(NiCO・2Ni(OH)・4HO)が好ましい。
【0029】
クロム原料は、酸化クロム(III)(Cr)、酢酸クロム(III)(Cr(CHCOO))、塩化クロム(III)(CrCl)、フッ化クロム(III)(CrF)、硝酸クロム(III)九水和物(Cr(NO・9HO)、硫酸クロム(III)(Cr(SO)などが挙げられる。特に酸化クロム(III)(Cr)が好ましい。
【0030】
コバルト原料は、水酸化コバルト(II)(Co(OH))、酸化コバルト(II、III)(Co)、酸化コバルト(II)(CoO)、炭酸コバルト(II)(CoCO)、酢酸コバルト(II)((CHCOO)Co)、硝酸コバルト(II)六水和物(Co(NO・6HO)、硫酸コバルト(II)七水和物(CoSO・7HO)などが挙げられる。特に水酸化コバルト(II)(Co(OH))が好ましい。
【0031】
スカンジウム原料は、例えば酸化スカンジウム(Sc)、硝酸スカンジウム五水和物(Sc(NO)・5HO)などが挙げられる。特に酸化スカンジウム(Sc)が好ましい。
【0032】
ジスプロシウム原料は、例えば酸化ジスプロシウム(Dy)、炭酸ジスプロシウム二水和物(Dy(CO)・2HO)、フッ化ジスプロシウム(III)(DyF)、硝酸ジスプロシウム六水和物(Dy(NO・6HO)などが挙げられる。特に酸化ジスプロシウム(Dy)が好ましい。
【0033】
ホルミウム原料は、例えば酸化ホルミウム(Ho)、酢酸ホルミウム・一水和物(Ho(OOCCH・HO)、炭酸ホルミウム二水和物(Ho(CO・2HO)などが挙げられる。特に酸化ホルミウム(Ho)が好ましい。
【0034】
エルビウム原料は、例えば酸化エルビウム(Er)、フッ化エルビウム(ErF)、酢酸エルビウム(III)四水和物(Er(CHCOO)・4HO)などが挙げられる。特に酸化エルビウム(Er)が好ましい。
【0035】
ツリウム原料は、例えば酸化ツリウム(Tm)、酢酸ツリウム(III)四水和物(Tm(OOCCH・4HOなどが挙げられる。特に酸化ツリウム(Tm)が好ましい。
【0036】
イッテルビウム原料は、例えば酸化イッテルビウム(Yb)、フッ化イッテルビウム(III)(YbF)、塩化イッテルビウム(III)(YbCl)、イッテルビウム(III)イソプロポキシド(Yb(OC)などが挙げられる。特に酸化イッテルビウムが好ましい。
【0037】
ルテチウム原料は、例えば酸化ルテチウム(Lu)、酢酸ルテチウム四水和物((CHCOO)Lu・4HO)、塩化ルテチウム(III)六水和物(LuCl・6HO)などが挙げられる。特に酸化ルテチウム(Lu)が好ましい。
また、上述した原料化合物のうちから選択した2種以上の原料化合物を混合する際、それらの原料化合物に対して、ホウ素化合物を添加してもよい。
【0038】
ホウ素化合物は、フラックス成分として、原料化合物の複合化を促進するために添加される。また、ホウ素化合物は、焼成後、固溶せずに、本発明の化合物粒子の表面に不純物として残存するが、水洗や湿式による粉砕等することにより、除去することが可能である。本発明の化合物粒子に含まれるホウ素化合物の含有量は、5質量%未満であると好ましく、3質量%未満であるとより好ましく、1質量%未満であるとさらに好ましい。なお、当該ホウ素化合物の含有量は、ICP発光分析(アジレント・テクノロジー社製:AG-5110)により、「ホウ素(B)」元素としての含有量を重量比として算出したものである。
【0039】
ここで、ホウ素化合物として、ホウ酸、又はホウ酸リチウムが好ましい。ホウ酸リチウムは、例えばメタホウ酸リチウム(LiBO)、四ホウ酸リチウム(Li)、五ホウ酸リチウム(LiB)、及び過ホウ酸リチウム(Li)などの各種形態のものを挙げられるが、特に四ホウ酸リチウム(Li)が好ましい。
【0040】
そして、上述した各種原料化合物の粉砕混合方法は、乾式または湿式にて実施することができる。乾式の場合、焼成粉をアトライタ、ブレード式粉砕機、ジェットミル、ハンマーミル、ピンミル、又はボールミルなど市販されている乾式粉砕装置を使用し、焼成粉を粉砕することができる。他方、湿式の場合、焼成粉と水若しくは有機溶媒とを混合して、水若しくは有機溶媒中に焼成粉を分散させたスラリーとする。次に、当該スラリーを、ボールミルやビーズミルなどのメディアミル、高速せん断を利用した乳化機・分散機など市販されている湿式粉砕装置を使用し、当該スラリー中に分散した焼成粉を粉砕することができる。使用するビーズとしては、例えばジルコニアビーズ、アルミナビーズ、ガラスビーズ、SUSビーズ、炭化タングステンビーズ、炭化ケイ素ビーズなどが挙げられる。また、粉砕メディアを利用せず、高圧条件下で粒子間衝突により粉砕させるメディアレス粉砕機を用いてもよく、粉砕メディアから生じる金属粉等のコンタミネーションのリスクを低減する観点で好ましい。当該原料化合物を均一に混合することができれば、その方法を特に限定するものではない。
【0041】
具体的には、ミキサー等の公知の混合機を用いて各原料化合物を同時、又は適当な順序で加えて湿式、又は乾式で撹拌混合すればよい。湿式混合の場合、粉砕用の溶媒や分散剤などの液媒体を加えて湿式混合することによりスラリー化させ、得られたスラリーを湿式粉砕機で粉砕するのが好ましい。ここで、粉砕用の溶媒としては、例えば水、有機溶媒(アルコール、アセトン、トルエンなど)等が挙げられる。また、これら粉砕用の溶媒のうちから選択される1種以上の溶媒であってもよい。また、分散剤としては、例えばリン酸類と、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコース、ポリビニルピロリドン、及びそれらの共重合体とを含む群のうちから選択される1種以上が挙げられる。さらに、特にサブミクロンオーダーまで粉砕するのが好ましい。サブミクロンオーダーまで粉砕した後、造粒及び焼成することにより、焼成反応前の各粒子の均一性を高めることができ、反応性を高めることができる。
【0042】
このようにして、粉砕混合工程において、各原料化合物が粉砕混合されることにより、粉末状の混合原料が得られる。
【0043】
また、各原料化合物を粉砕混合し、得られた粉末状の混合原料の平均粒径D50が、4.2μm以下であると、混合原料の焼成温度が低温でも均一な酸化物を構成しやすい点で好ましい。また、粉末状の混合原料の平均粒径D50は、4μm以下であるとより好ましく、3.5μm以下であるとさらに好ましく、3μm以下であると特に好ましく、2.5μm以下であるとより特に好ましく、2μm以下であるとさらに特に好ましく、1.5μm以下であるとまた特に好ましい。典型的には、粉末状の混合原料の平均粒径D50は、0.01μm~4.2μmであってもよく、0.1μm~1.5μmであってもよく、0.2μm~1.2μmであってもよい。
【0044】
混合原料の粒度分布の評価は、レーザ回折・散乱法粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製:MT3300EXII)を用いて、JIS Z 8825:2013に準じたレーザ回折・散乱法により行う。また、フィルタリングは行なわず、試料を、超音波出力40Wで、3分間に亘って超音波処理をした後、測定する。
【0045】
具体的には、スラリー状の試料を、測定装置に設けられた試料循環器の試料投入口に、当該測定装置が測定可能範囲内であると判定するまで投入した後、当該測定装置内蔵の超音波分散処理(超音波出力40W、3分間)を行い、表示が安定したことを確認後、測定を行う。
【0046】
また、粉砕混合工程を経て、得られた混合原料に対し、必要に応じて造粒乾燥してもよい。
【0047】
具体的に、造粒方法は、粉砕された各種原料化合物が分離せずに造粒粒子内で分散していれば湿式でも乾式でもよく、押し出し造粒法、転動造粒法、流動造粒法、混合造粒法、噴霧乾燥造粒法、加圧成型造粒法、又はロール等を用いたフレーク造粒法でもよい。但し、湿式造粒した場合には、焼成前に充分に乾燥させることが必要である。乾燥方法としては、噴霧熱乾燥法、熱風乾燥法、真空乾燥法、フリーズドライ法などの公知の乾燥方法によって乾燥させればよく、特に噴霧熱乾燥法が好ましい。噴霧熱乾燥法は、熱噴霧乾燥機(スプレードライヤー)を用いて行なうのが好ましい。熱噴霧乾燥機(スプレードライヤー)を用いて造粒することにより、粒度分布をよりシャープにすることができるばかりか、丸く凝集してなる凝集粒子(二次粒子)を含むように調製することができる。
【0048】
次に、焼成工程は、粉砕混合工程により得られた混合原料を焼成し、化合物が得られる。
【0049】
具体的に、混合原料の焼成は、焼成炉にて、大気雰囲気下、酸素ガス雰囲気下、酸素分圧を調整した雰囲気下、又は二酸化炭素ガス雰囲気下、又はその他の雰囲気下において、50~200℃/hrの昇温速度で昇温し、400~1500℃の温度(焼成炉内の焼成物に熱電対を接触させた場合の温度を意味する。)で0.5~30時間保持するように、混合原料を焼成するのが好ましい。但し、ホウ素化合物と共に焼成する場合は、上述した焼成温度よりも低い温度域で焼成することができる。なお、焼成炉の種類は特に限定するものではない。例えばロータリーキルン、静置炉、その他の焼成炉を用いて焼成することができる。
【0050】
混合原料の焼成温度が、1100℃以下であると、公知の化合物製造条件と比較すると相対的に低温での焼成が実現できており、エネルギーコストの削減ができる点で好ましい。また、混合原料の焼成温度が、1050℃以下であるとより好ましく、1000℃以下であるとさらに好ましい。典型的には、混合原料の焼成温度は、400℃~1200℃であってもよく、500℃~1100℃であってもよく、700℃~1000℃であってもよく、850℃~950℃であってもよい。
【0051】
また、混合原料の焼成時間は、50時間以下であると、公知の化合物製造条件と比較すると相対的に短時間での焼成が実現できており、エネルギーコストの削減ができる点で好ましい。また、混合原料の焼成時間は、40時間以下であるとより好ましく、20時間以下であるとさらに好ましい。典型的には、混合原料の焼成時間は、1時間~50時間であってもよく、6時間~30時間であってもよく、10時間~25時間であってもよい。
【0052】
そして、粉砕工程は、焼成湖底により得られた前記化合物を粉砕し、化合物粒子が得られる。
【0053】
焼成工程において、混合原料を焼成し得られた化合物、すなわち焼成粉を、以下の粉砕方法により粉砕することにより、本発明の化合物粒子が得られる。また、粉砕された焼成粉を篩などによって分級した得られた篩下(微粒側)を本発明の化合物粒子として用いてもよい。篩上(粗粒側)は再度粉砕し、分級して用いてもよい。
【0054】
具体的に、焼成粉の粉砕方法は、乾式または湿式にて実施することができる。乾式の場合、焼成粉をアトライタ、ブレード式粉砕機、ジェットミル、ハンマーミル、ピンミル、又はボールミルなど市販されている乾式粉砕装置を使用し、焼成粉を粉砕することができる。他方、湿式の場合、焼成粉と水若しくは有機溶媒とを混合して、水若しくは有機溶媒中に焼成粉を分散させたスラリーとする。次に、当該スラリーを、ボールミルやビーズミルなどのメディアミル、高速せん断を利用した乳化機・分散機など市販されている湿式粉砕装置を使用し、当該スラリー中に分散した焼成粉を粉砕することができる。使用するビーズとしては、例えばジルコニアビーズ、アルミナビーズ、ガラスビーズ、SUSビーズ、炭化タングステンビーズ、炭化ケイ素ビーズなどが挙げられる。また、粉砕メディアを利用せず、高圧条件下で粒子間衝突により粉砕させるメディアレス粉砕機を用いてもよく、粉砕メディアから生じる金属粉等のコンタミネーションのリスクを低減する観点で好ましい。なお、当該スラリーと共に、必要に応じて分散剤を添加してもよい。ここで、粉砕用の溶媒としては、例えば水、有機溶媒(アルコール、アセトン、トルエンなど)等が挙げられる。また、これら粉砕用の溶媒のうちから選択される1種以上の溶媒であってもよい。また、分散剤としては、例えばリン酸類と、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコース、ポリビニルピロリドン、及びそれらの共重合体とを含む群のうちから選択される1種以上が挙げられる。
【0055】
そして、湿式粉砕の場合、粉砕された焼成粉と溶媒とをろ過器や遠心分離機などを用いて分離し、溶媒が揮発する温度で乾燥することにより、粉砕された本発明の化合物粒子が得られる。
【0056】
また、焼成粉の粉砕方法は、上述した粉砕を2回繰り返す二段階粉砕処理を実施することにより、より小径化した本発明の化合物粒子としてもよい。一段階目の粉砕方式として、上述した乾式粉砕装置または湿式粉砕装置を用いた粉砕方式などが挙げられる。次に、二段階目の粉砕方式として、上述した乾式粉砕装置または湿式粉砕装置を用いた粉砕方式などが挙げられる。
【0057】
上述した本発明の化合物粒子の製造方法により、得られた化合物粒子について、以下説明する。
【0058】
本発明の化合物粒子の製造方法により、得られた化合物粒子は、構成元素として、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、B、F、Al、Si、P、S、Cl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Se、Br、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、I、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Tl、Pb、Biのうちから選択される2種以上の元素を含むものである。
本発明の化合物粒子の製造方法により、得られた化合物粒子(以下、本発明の化合物粒子ともいう。)は、粉末状であり、上述した元素を2種以上含むものである。また、本発明の化合物粒子は、無機化合物粒子であると好ましく、金属元素およびまたは半金属元素を含むものであると好ましい。なお、本明細書において、特段の説明がない限り、Be元素、及びMg元素は、アルカリ土類金属に含まれるとする。
【0059】
また、本発明の化合物粒子の製造方法により、得られた化合物粒子は、前記化合物粒子の波長550nm、及び波長700nmの光の反射率が20%R以下であることを特徴とする。
この構成により、本発明の化合物粒子は、可視光線領域である波長550nm、及び波長700nmの光の反射率が低い値を有するということは、可視光線領域において、光の乱反射(ハレーション)防止性能に優れる、すなわち可視光線領域において、可視光線を単に透過しないというだけでなく、可視光線の吸収性能にも優れるという、別の利点があると考える。また、波長550nm、及び波長700nmの光の反射率が15%R以下であるとより好ましく、12%R以下であるとさらに好ましく、10%R以下であると特に好ましく、5%R以下であるとより特に好ましく、0%であると最も好ましい。さらに、本発明の化合物粒子の波長550nm、波長600nm、波長650nm、及び波長700nmの光の反射率が上述した上限値以下であるとより好ましい。本発明の化合物粒子の波長550nm~700nmの光の反射率が上述した上限値以下であるとさらに好ましい。なお、本発明の化合物粒子の波長550nm、及び波長700nmの光の反射率は、典型的には、0.001%R~10%Rである。また、当該波長550nm、及び波長700nmの光の反射率は、0.1%R~5%Rであってもよく、0.11%R~3%Rであってもよい。さらに、当該波長550nm、及び波長700nmの光の反射率は、0.001%R~0.99%Rであってもよく、0.001%R~0.1%Rであってもよい。
【0060】
反射率は、φ60mm積分球ユニットを取り付けた分光光度計(株式会社日立ハイテクサイエンス製:紫外可視近赤外分光光度計UH4150形)を用いて測定され、本発明に係る化合物粒子を充填したサンプルを取り付け、波長550nm、及び波長700nmの光に対する反射率が測定される。
【0061】
また、本発明の化合物粒子の製造方法により、得られた化合物粒子は、前記化合物粒子が、酸化物粒子であることを特徴とする。
本発明の化合物粒子が酸化物粒子であると、可視光線領域における透過率は低く抑えることができる。
【0062】
また、本発明の化合物粒子の製造方法により、得られた化合物粒子は、前記化合物粒子の構成元素が、Cr、Mn、Fe、Co、Niのうちから選択される1種以上の元素を含むことを特徴とする。
本発明の化合物粒子の構成元素が、Cr、Mn、Fe、Co、Niのうちから選択される1種以上の元素を含むものであると、可視光線領域における透過率は低く、近赤外線領域における透過率が高くなる点でより好ましい。
【0063】
また、本発明の化合物粒子の製造方法により、得られた化合物粒子は、前記化合物粒子の構成元素が、Mnを含むことを特徴とする。
本発明の化合物粒子の構成元素が、Mnを含むものであると、可視光線領域における透過率は低く、近赤外線領域における透過率が高くなる点で特に好ましい。
【0064】
また、本発明の化合物粒子の製造方法により、得られた化合物粒子の構成元素として、Mnを含み、さらにCr、Fe、Co、Niのうちから選択される1種以上の元素を含むものであってもよい。
本発明の化合物粒子の構成元素として、Mnを含み、さらにCr、Fe、Co、Niのうちから選択される1種以上の元素を含むものであると、可視光線領域における透過率は低く、近赤外線領域における透過率が高くなるからである。
【0065】
さらに、本発明の化合物粒子の具体例を挙げて、以下説明する。
【0066】
例えば、本発明の化合物粒子のうち、構成元素としてMnを含む酸化物粒子である化合物粒子の組成式を、AxMnyOzと表す。構成元素Mnは、遷移金属であるマンガン元素を表し、結合した構成元素Aに応じて、原子価2~7を取り得ることができ、特に+2、+3、+4、+6、+7の状態で安定する。また、構成元素Aは、Mnを除く、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、B、F、Al、Si、P、S、Cl、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Se、Br、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、I、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Tl、Pb、Biのうちから選択される1種以上の元素を含むものであると好ましい。さらに、構成元素Oは、酸素元素を表し、電気的中性条件を満たす量となればよく、酸素過剰、酸素欠損も包含する。
【0067】
また、本発明の化合物粒子のうち、構成元素としてMnを含む酸化物粒子であって、その組成式(AxMnyOz)中の構成元素Aの係数xと、構成元素Mnの係数yとが、x/y=0.001以上5.00以下であると、波長1000nm付近から緩やかに透過性が向上し、波長2000nm付近の長波長領域で高い透過率を示す観点で好ましい。また、x/y=0.10以上1.50以下であるとより好ましい。構成元素AとMnとの原子比が1:2となる酸化物を主とする場合、x/y=0.40以上0.60以下であるとより好ましい。構成元素AとMnとの原子比が1:1となる酸化物を主とする場合、x/y=0.90以上1.10以下であるとより好ましい。また、構成元素Aの係数xは、構成元素Aが複数元素の場合、構成元素Aである複数元素の係数の総和である。なお、構成元素Oの係数zは、構成元素A及びMnの電荷の総和を中和する値であればよい。それぞれ係数x、y、zは、AxMnyOz全体を100原子%とした際の各原子%を示す。
【0068】
また、本発明の化合物粒子のうち、構成元素としてMnを含む酸化物粒子であって、その組成式(AxMnyOz)中の構成元素AがLiを含む化合物粒子の場合、構成元素AがLiを含むものであると、可視光線領域における透過率は低く、近赤外線領域における透過率が高くなる観点で好ましい。
【0069】
構成元素Aにリチウムを含む、本発明の化合物粒子は、一般的に、スピネル型(Fd3-m)の結晶構造を有するものやジグザグ層状岩塩構造を有するものであるが、これには限定されない。また、当該化合物粒子は、一般的に酸素欠損を含み、酸素の一部がフッ素で置換されていてもよい。
【0070】
本発明の化合物粒子のうち、構成元素としてMnを含む酸化物粒子であって、その組成式(AxMnyOz)中の構成元素AがLiを含む化合物粒子の場合、x/y=0.001以上5.00以下であると、波長1000nm付近から緩やかに透過性が向上し、波長2000nm付近の長波長領域で高い透過率を示す観点で好ましい。また、x/y=0.10以上2.00以下であるとより好ましく、x/y=0.40以上0.60以下であるとさらに好ましい
【0071】
また、本発明の化合物粒子のうち、構成元素としてMnを含む酸化物粒子であって、その組成式(AxMnyOz)中の構成元素AがYを含む化合物粒子の場合、可視光線領域での透過を抑制しつつ、近赤外線領域である波長1000nm付近の低波長側から急峻に立ち上がり、以降、高い透過性を示す観点で好ましい。
【0072】
また、本発明の化合物粒子のうち、構成元素としてMnを含む酸化物粒子であって、その組成式(AxMnyOz)中の構成元素AがYを含む化合物の場合、x/y=0.001以上5.00以下であると、可視光線領域での透過を抑制しつつ、近赤外線領域では高い透過性を示す観点で好ましい。また、x/y=0.10以上1.00以下であるとより好ましい。構成元素AとMnとの原子比が1:2となる酸化物を主とする場合、x/y=0.40以上0.60以下であるとより好ましい。構成元素AとMnとの原子比が1:1となる酸化物を主とする場合、x/y=0.90以上1.10以下であるとより好ましい。
【0073】
さらに、本発明の化合物粒子のうち、構成元素としてMnを含む酸化物であって、その組成式(AxMnyOz)中の構成元素AがYを含む化合物の場合、そのCuKα線を使用したXRDスペクトルにおける2θ=32.5~33.5°に現れる(112)面由来のピーク強度に対する2θ=35.5~36.5°に現れる(211)面由来のピーク強度の強度比(211)/(112)が2.50以下であると好ましく、0.10以上1.00以下であると黒色度が高い観点(CIE1976、すなわちCIE1976(L)色空間を用いて測定されるa(赤色度)、b(黄色度)がそれぞれ0に近い)で特に好ましい。
【0074】
このCuKα線を使用したXRDスペクトルにおいて、2θ=32.5~33.5°に現れる(112)面由来のピーク強度に対する2θ=35.5~36.5°に現れる(211)面由来のピーク強度の強度比(211)/(112)が2.50以下であると好ましく、0.10以上1.00以下であると黒色度が高い観点(a、bが0に近い)でより好ましい。この構成元素としてMnを含む酸化物粒子であり、且つ構成元素AにYを含み、その組成式をAxMnyOzと表される本発明の化合物粒子をメノウ乳鉢で十分に混合及び粉砕した後、目開き75μmの篩で分級し、篩下容器中の混合状態の良好な中心部の粉体をガラス試料板に0.5g分取し、表面が平滑になるようにガラス板で充填したサンプルを、以下の粉末X線回折測定条件に従って、CuKα線を使用した粉末X線回折測定を行い、X線回折パターンを得る。そして、得られたX線回折パターン中の2θ=32.5~33.5°にあるピーク強度はYMnO(112)面に起因し、2θ=35.5~36.5°にあるピーク強度はMn(221)面に起因する。
【0075】
=粉末X線回折測定条件=
・装置:MiniFlexII(株式会社リガク製)
・測定範囲(2θ):5~90°
・サンプリング幅:0.02°
・スキャンスピード:1.0°/min
・X線:CuKα線
・電圧:30kV
・電流:15mA
・発散スリット:1.25°
・散乱スリット:1.25°
・受光スリット:0.3mm
・X線解析ソフトウェア:PDXL2 Version2.9.1.0
【0076】
また、本発明の化合物粒子の製造方法により、得られた化合物粒子は、前記化合物粒子のSEM観察による一次粒子径の平均値が1nm以上20μm以下であることを特徴とする。
本発明の化合物粒子のSEM観察による一次粒子径の平均値が1nm以上20μm以下であると、近赤外線に対する透過性が向上する点で好ましい。
【0077】
また、当該一次粒子径の平均値が10nm以上であるとより好ましく、30nm以上であるとさらに好ましく、40nm以上であると特に好ましい。一方、当該一次粒子径の平均値が1μm以下であるとより好ましく、0.5μm以下であるとさらに好ましい。典型的には、当該一次粒子径の平均値は、20nm~1μmであってもよく、30nm~150nmであってもよく、35nm~120nmであってもよい。
【0078】
ここで、SEM観察による、当該化合物粒子の一次粒子径の平均値は、電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用い、加速電圧1kVの条件下で、SEM像を観察することによって、求められる。具体的には、本発明の化合物粒子(任意で抽出した30個)を直接観察し、それらの一次粒子径を測定し、それらの算術平均値を算出することにより、SEM観察による一次粒子径の平均値とする。なお、測定倍率は、一次粒子径の大きさにより、500倍~100,000倍の範囲で適切な倍率を選択するとよい。
【0079】
また、本発明の化合物粒子の製造方法により、得られた化合物粒子は、前記化合物粒子のSEM観察による二次粒子径の平均値が10nm以上20μm以下であることを特徴とする。
本発明の化合物粒子のSEM観察による二次粒子径の平均値が10nm以上20μm以下であると、近赤外線に対する透過性が向上する点で好ましい。典型的には、当該二次粒子径の平均値は、50nm~1μmであってもよく、100nm~1μmであってもよい。
【0080】
また、当該二次粒子径の平均値が50nm以上であるとより好ましく、100nm以上であるとさらに好ましい。一方、当該二次粒子径の平均値が10μm以下であるとより好ましく、2μm以下であるとさらに好ましい。
【0081】
ここで、SEM観察による、当該化合物粒子の二次粒子径の平均値は、電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用い、加速電圧1kVの条件下で、SEM像を観察することによって、求められる。具体的には、本発明の化合物粒子(任意で抽出した30個)を直接観察し、それらの二次粒子径を測定し、それらの算術平均値を算出することにより、SEM観察による二次粒子径の平均値とする。なお、測定倍率は、二次粒子径の大きさにより、500倍~100,000倍の範囲で適切な倍率を選択するとよい。
【0082】
また、本発明の化合物粒子の製造方法により、得られた化合物粒子は、前記化合物粒子は、BET法により測定された比表面積が0.20m/g以上であることを特徴とする。
本発明の化合物粒子は、BET法により測定された比表面積が0.20m/g以上であると、当該化合物粒子の分散性が向上する点で好ましい。また、比表面積が10.0m/g以上であると、より好ましく、比表面積が15.0m/g以上であると、さらに好ましい。典型的には、BET法により測定された比表面積が0.20m/g~500m/gであってもよく、0.20m/g~300m/gであってもよく、0.20m/g~200m/gであってもよく、0.20m/g~100m/gであってもよい。
【0083】
本発明の化合物粒子の比表面積(SSA)は、株式会社マウンテック製の「Macsorb(HM model-1201)を用いて、JIS R 1626-1996(ファインセラミックス粉体の気体吸着BET法による比表面積の測定方法)の「6.2 流動法の(3.5)一点法」に準拠して測定を行うことにより求めることができる。その際、キャリアガスであるヘリウムと、吸着質ガスである窒素の混合ガスを使用する。また、キャリブレーションには、窒素ガスを使用する。
【0084】
また、本発明の化合物粒子の製造方法により、得られた化合物粒子は、レーザ回折・散乱法を用いた粒子径分布測定による積算体積分率50%である粒子径が、0.1μm以上20μm以下であると好ましく、0.2μm以上10μm以下であるとより好ましく、0.3μm以上1μm以下であるとさらに好ましい。
【0085】
粒子の粒度分布の評価は、レーザ回折・散乱法粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製:MT3300EXII)を用いて、JIS Z 8825:2013に準じたレーザ回折・散乱法により行う。また、フィルタリングは行なわず、試料を、超音波出力40Wで、3分間に亘って超音波処理をした後、測定する。
【0086】
具体的には、スラリー状の試料を、測定装置に設けられた試料循環器の試料投入口に、当該測定装置が測定可能範囲内であると判定するまで投入した後、当該測定装置内蔵の超音波分散処理(超音波出力40W、3分間)を行い、表示が安定したことを確認後、測定を行う。
【0087】
また、本発明の化合物粒子の製造方法により、製造された化合物粒子は、CIE1976で測定されるLが45以下であることを特徴とする。
本発明の化合物粒子は、CIE1976で測定されるLが45以下であると、見た目がより黒色となり、可視光線領域の透過率を低下させることができる点で好ましく、40以下であるとより好ましく、35以下であるとさらに好ましく、30以下であると特に好ましく、20以下であるとより特に好ましく、10以下であるとさらに特に好ましく、0であると最も好ましい。なお、本発明の化合物粒子では、典型的にはCIE1976で測定されるLは1~45であってもよく、10~45であってもよく、20~45であってもよい。
【0088】
ここで、CIE1976、すなわちCIE1976(L)色空間を用いて測定されるLの値は、明度を示すものである。Lの値が100に近いほど、色が白に近づいて薄くなることを示し、Lの値が0に近いほど、色が黒に近づいて濃くなることを示している。具体的には、当該Lの値は、色彩色差計(コニカミノルタ社製:CR-300)を用い、JIS Z 8722:2009に準拠して実施することにより求められる。
【0089】
さらに、CIE1976(L)色空間のaの値は、-5~20であると好ましく、-5~15であるとより好ましく、-5~10であるとさらに好ましく、-5~5であると特に好ましく、-2~2であるとより特に好ましく、0であると最も好ましい。aの値が0に近いほど、着色が抑制されていることを示す。また、CIE1976(L)色空間のbの値は、-10~25であると好ましく、-5~20であるとより好ましく、-5~15であるとさらに好ましく、-5~5であると特に好ましく、-2~2であるとより特に好ましく、0であると最も好ましい。bの値が0に近いほど、着色が抑制されていることを示す。具体的には、当該a及びbの値は、当該Lの値と同様に、色彩色差計(コニカミノルタ社製:CR-300)を用い、JIS Z 8722:2009に準拠して実施することにより求められる。
【0090】
また、本発明の化合物粒子の製造方法により、得られた化合物粒子は、前記化合物粒子は近赤外線透過材料用とすることができる。
本発明の化合物粒子は、上述した通り、可視光線領域における透過率が低く、近赤外線領域においては優れた透過性能を有するものであるから、近赤外線透過材料用として用いることができる。
【0091】
なお、本発明の化合物粒子は、分散性を高める観点から、表面処理を行ってもよく、また表面処理剤を系内に添加してもよい。表面処理剤は、例えばシランカップリング剤などが挙げられる。また、表面処理剤は、1種類でもよく、また2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0092】
本発明の化合物粒子の製造方法により、得られた化合物粒子は、以下の通り、分散体と混合されることにより、本発明の近赤外線透過材料が得られる。
【0093】
分散体が樹脂である場合、本発明の化合物粒子に対して、分散体である樹脂を所定の割合となるように混合することにより、本発明の近赤外線透過材料(分散体:樹脂)が得られる。具体的には、分散体が熱硬化性樹脂の場合、加熱する前に本発明の化合物粒子と熱硬化性樹脂とを混合してもよく、さらに当該熱硬化性樹脂を希釈する有機溶剤を加えて混合してもよい。ここで、本発明の化合物粒子と熱硬化性樹脂とを混合する際、自転公転ミキサー、撹拌機、3本ロールなどを用いることができる。その後、熱硬化性樹脂が硬化する温度まで加熱して硬化させることにより、本発明の近赤外透過材料(分散体:樹脂)を得ることができる。
【0094】
また、分散体が熱可塑性樹脂の場合、例えば混錬機などで加熱された当該熱可塑性樹脂中に本発明の化合物粒子を混合することにより、本発明の近赤外透過材料(分散体:樹脂)を得ることができる。さらに、分散体が樹脂フィルムの場合、例えば本発明の化合物粒子をPETやポリエチレンナフタレート(PEN)製のフィルム上に塗工することにより、本発明の近赤外透過材料(分散体:樹脂)を得ることができる。当該塗工の際、本発明の化合物粒子、樹脂、及び有機溶剤を配合した混合物を、バーコーターやブレードを用いて塗工することができる。さらに、本発明の化合物粒子と樹脂とを混合した混合物を押出成形することによりフィルム状に形成してもよい。
【0095】
なお、本発明の近赤外線透過材料(分散体:樹脂)は、本発明の化合物粒子が分散体である樹脂中に均一となるように分散されていると好ましい。
【0096】
分散体がガラスである場合、本発明の化合物粒子に対して、分散体であるガラス、例えば粉末ガラスを所定の割合となるように混合することにより、本発明の近赤外線透過材料(分散体:ガラス)が得られる。なお、本発明の近赤外線透過材料(分散体:ガラス)は、本発明の化合物粒子が分散体であるガラス中に均一となるように分散されていると好ましい。
【0097】
分散体が有機溶媒である場合、本発明の化合物粒子に対して、分散体である有機溶媒を所定の割合となるように混合することにより、本発明の近赤外線透過材料(分散体:有機溶媒)が得られる。
【0098】
先ず、本発明の化合物粒子と有機溶媒とを混合することにより、有機溶媒中に本発明の化合物粒子を分散させたスラリーが得られる。この際、分散剤を添加してもよい。次に、得られたスラリーを、ビーズミル等のメディアミル、高水圧式ジェットミル又はホモジナイザー等によって湿式粉砕や分散処理を行うことにより、本発明の近赤外線透過材料(分散体:有機溶媒)を得ることができる。ここで、ビーズミルに使用するビーズとして、例えばジルコニアビーズやアルミナビーズ等が挙げられる。さらに、分散剤は、これを湿式粉砕時にスラリーに添加してもよく、あるいは湿式粉砕して得られた油性分散液に添加してもよい。分散剤の添加量は、適宜調整されるとよい。
【0099】
なお、本発明の近赤外線透過材料(分散体:有機溶媒)は、本発明の化合物粒子が分散体である有機溶媒中に均一となるように分散されていると好ましい。
【0100】
分散体が水である場合、本発明の化合物粒子に対して、分散体である水を所定の割合となるように混合することにより、本発明の近赤外線透過材料(分散体:水)が得られる。
【0101】
先ず、本発明の化合物粒子と水とを混合することにより、水中に本発明の化合物粒子を分散させたスラリーが得られる。この際、分散剤を添加してもよい。次に、得られたスラリーを、ビーズミル等のメディアミル、高水圧式ジェットミル又はホモジナイザー等によって湿式粉砕や分散処理を行うことにより、本発明の近赤外線透過材料(分散体:水)を得ることができる。ここで、ビーズミルに使用するビーズとして、例えばジルコニアビーズやアルミナビーズ等が挙げられる。さらに、分散剤は、これを湿式粉砕時にスラリーに添加してもよく、あるいは湿式粉砕して得られた油性分散液に添加してもよい。分散剤の添加量は、適宜調整されるとよい。
【0102】
なお、本発明の近赤外線透過材料(分散体:水)は、本発明の化合物粒子が分散体である水中に均一となるように分散されていると好ましい。
【0103】
本発明の近赤外線透過材料は、本発明の化合物粒子と分散体とを混合する際、分散剤を添加してもよい。分散剤として、リン酸類と、シランカップリング剤と、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコース、ポリビニルピロリドン、及びそれらの共重合体とを含む群のうちから選択される1種以上が挙げられる。ここで、シランカップリング剤としては、例えばビニルトリメトキシシラン(官能基:ビニル)、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(官能基:エポキシ)、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(官能基:メタクリル)、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(官能基:アクリル)、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(官能基:アミノ)が挙げられる。
【0104】
本発明の近赤外線透過材料は、本発明の化合物粒子の製造方法により、製造された化合物粒子と、近赤外線を透過する成分を含む分散体とを有する近赤外線透過材料であって、前記化合物粒子の構成元素として、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、B、F、Al、Si、P、S、Cl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Se、Br、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、I、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Tl、Pb、Biのうちから選択される2種以上の元素を含むことを特徴とする。
本発明の近赤外線透過材料は、上述した本発明の化合物粒子の製造方法により、製造された化合物粒子と、近赤外線を透過する成分を有する分散体とを含むものであって、当該化合物粒子と分散体とを混合した混合物や、当該化合物粒子が分散体の表面上に塗工されたものであってもよい。また、本発明の近赤外線透過材料に含まれる化合物粒子は、無機化合物粒子であると好ましく、金属元素およびまたは半金属元素を含むものであると好ましい。
【0105】
本発明の近赤外線透過材料に含まれる化合物粒子は、同一組成、且つ同一特性の化合物粒子に限定されない。例えば、流動性を調製するため、同一組成で異なる粒度分布を有する化合物粒子を適宜混同したものであってもよい。また、近赤外線領域の透過率を調製するため、異なる組成の化合物粒子を適宜混合したものであってもよい。さらに、用途に応じて、組成も特性も異なる化合物粒子を適宜混合したものであてもよい。
【0106】
分散体は、近赤外線を透過する成分を有するものであればよく、分散体に含有される全ての成分が近赤外線を透過する成分であることを示すものではない。
【0107】
なお、本発明の近赤外線透過材料は、化合物粒子が分散体中に均一に分散した構造だけでなく、複数の化合物粒子が凝集した凝集体を形成し、分散体中に分散した構造や、分散体中に偏析した状態も含まれる。
【0108】
また、本発明の近赤外線透過材料は、前記近赤外線透過材料の波長550nm、及び波長700nmの光の反射率が20%R以下であることを特徴とする。
本発明の近赤外線透過材料の波長550nm、及び波長700nmの光の反射率が20%R以下であると、可視光線を単に透過しないというだけでなく、可視光線の吸収性能にも優れる点で好ましい。波長550nm、及び波長700nmの光の反射率が15%R以下であるとより好ましく、12%R以下であるとさらに好ましく、10%R以下であると特に好ましく、5%R以下であるとより特に好ましく、0%であると最も好ましい。さらに、本発明の近赤外線透過材料の波長550nm、波長600nm、波長650nm、及び波長700nmの光の反射率が上述した上限値以下であるとより好ましい。本発明の近赤外線透過材料の波長550nm~700nmの光の反射率が上述した上限値以下であるとさらに好ましい。なお、本発明の近赤外線透過材料の波長550nm、及び波長700nmの光の反射率は、典型的には、0.001%R~10%Rである。また、当該波長550nm、及び波長700nmの光の反射率は、0.1%R~5%Rであってもよく、0.11%R~3%Rであってもよい。さらに、当該波長550nm、及び波長700nmの光の反射率は、0.001%R~0.99%Rであってもよく、0.001%R~0.1%Rであってもよい。
【0109】
反射率の測定に用いられる本発明に係る化合物粒子は、本発明の近赤外線透過材料から次のような方法により取り出すことができる。分散体が樹脂であれば、当該樹脂が十分に焼失する温度、及び時間に加熱することにより、当該化合物粒子を取り出すことができる。また、分散体が有機溶媒や水などの溶媒であれば、各溶媒を揮発させることにより、当該化合物粒子を取り出すことができる。
【0110】
また、本発明の近赤外線透過材料に含まれる化合物粒子は、酸化物粒子であることを特徴とする。
本発明の近赤外線透過材料に含まれる化合物粒子が酸化物粒子であると、可視光線領域における透過率は低く抑えることができる。
【0111】
さらに、本発明の近赤外線透過材料に含まれる化合物粒子は、前記構成元素が、Cr、Mn、Fe、Co、Niのうちから選択される1種以上の元素を含むものであるとより好ましい。
本発明の近赤外線透過材料に含まれる化合物粒子が、構成元素として、Cr、Mn、Fe、Co、Niのうちから選択される1種以上の元素を含むものであると、可視光線領域における透過率は低く、近赤外線領域における透過率が高くなる点でより好ましく、特にMnを含むものであると好ましい。
【0112】
また、本発明の近赤外線透過材料は、本発明の近赤外線透過材料に含有される化合物粒子の構成元素として、Mnを含み、さらにCr、Fe、Co、Niのうちから選択される1種以上の元素を含むものであってもよい。
本発明の近赤外線透過材料に含有される化合物粒子の構成元素として、Mnを含み、さらにCr、Fe、Co、Niのうちから選択される1種以上の元素を含むものであると、可視光線領域における透過率は低く、近赤外線領域における透過率が高くなるからである。
【0113】
また、本発明の近赤外線透過材料は、波長700nm(可視光線領域)の透過率が30%以下であり、且つ波長2000nm(近赤外線領域)の透過率が10%T以上であって、前記波長700nm(可視光線領域)の透過率よりも大きいことを特徴とする。
本発明の近赤外線透過材料の透過率は、本発明の近赤外線透過材料をポリエチレンテレフタレート(以下、PETという。)製のフィルム上に塗布し、焼成して得られた近赤外線透過膜(サンプル)に対し、分光光度計を用いて測定する。可視光線領域である波長700nmの透過率が30%T以下であり、且つ波長2000nm(近赤外線領域)の透過率が10%T以上であって、前記波長700nmの透過率よりも大きいものであると、可視光線を極力透過させず、近赤外線を透過させる点で好ましい。
【0114】
また、可視光線領域である波長700nmの透過率が27%T以下であるとより好ましく、20%T以下であるとさらに好ましく、15%T以下であると特に好ましく、10%T以下であるとより特に好ましく、5%T以下であるとまた特に好ましく、0%Tであると最も好ましい。本発明の近赤外線透過材料の波長700nm(可視光線領域)の透過率は、典型的には、0.001%T~30%Tであってもよく、0.1%T~20%Tであってもよく、0.11%T~13%Tであってもよく、0.1%T~10%Tであってもよく、1%T~10%Tであってもよく、5%T~10%Tであってもよい。
【0115】
一方、波長2000nm(近赤外線領域)の透過率が30%T以上であるとより好ましく、50%T以上であるとさらに好ましく、80%T以上であると特に好ましい。
【0116】
なお、可視光線領域である波長550nmの透過率が15%T以下であるとより好ましく、10%T以下であるとさらに好ましく、5%T以下であると特に好ましく、0%Tであると最も好ましい。本発明の近赤外線透過材料の波長550nm(可視光線領域)の透過率は、典型的には、0.001%T~30%Tであってもよく、0.1%T~20%Tであってもよく、0.11%T~13%Tであってもよく、0.1%T~10%Tであってもよく、1%T~10%Tであってもよく、5%T~10%Tであってもよい。
【0117】
また、本発明の近赤外線透過材料は、前記近赤外線透過材料の波長700nm(可視光線領域)の透過率が30%T以下であり、且つ波長1000nm(近赤外線領域)、及び波長2000nm(近赤外線領域)の透過率が10%T以上であって、前記波長700nm(可視光線領域)の透過率よりも大きいことを特徴とする。
可視光線領域である波長700nmの透過率が30%T以下であり、且つ波長1000(近赤外線領域)、及び波長2000nm(近赤外線領域)の透過率が10%T以上であって、前記波長700nmの透過率よりも大きいものであると、可視光線を極力透過させず、幅広い波長領域の近赤外線を透過させる点で好ましい。さらに、本発明の近赤外線透過材料の可視光線領域である波長700nmの透過率が30%T以下であり、且つ近赤外線領域である波長1000nm、1200nm、1400nm、1600nm、1800nm、2000nm、2200nm、及び2400nmの透過率が10%T以上であって、前記波長700nmの透過率よりも大きいものであると、より好ましい。本発明の近赤外線透過材料の可視光線領域である波長700nmの透過率が30%T以下であり、且つ近赤外線領域である波長1000nm~2400nmの透過率が10%T以上であって、前記波長700nmの透過率よりも大きいものであると、さらに好ましい。
【0118】
また、本発明の近赤外線透過材料は、CIE1976で測定されるLが45以下であることを特徴とする。
本発明の近赤外線透過材料は、CIE1976で測定されるLが45以下であると、見た目がより黒色となり、可視光線領域の透過率を低下させることができる点で好ましく、40以下であるとより好ましく、35以下であるとさらに好ましく、30以下であると特に好ましく、20以下であるとより特に好ましく、10以下であるとさらに特に好ましく、0であると最も好ましい。なお、本発明の近赤外線透過材料では、典型的にはCIE1976で測定されるLは1~45であってもよく、10~45であってもよく、20~45であってもよい。
【0119】
さらに、CIE1976(L)色空間のaの値は、-5~20であると好ましく、-5~15であるとより好ましく、-5~10であるとさらに好ましく、-5~5であると特に好ましく、-2~2であるとより特に好ましく、0であると最も好ましい。aの値が0に近いほど、着色が抑制されていることを示す。また、CIE1976(L)色空間のbの値は、-10~25であると好ましく、-5~20であるとより好ましく、-5~15であるとさらに好ましく、-5~5であると特に好ましく、-2~2であるとより特に好ましく、0であると最も好ましい。bの値が0に近いほど、着色が抑制されていることを示す。なお、本発明の近赤外線透過材料のCIE1976(L)色空間のL、a、bの値は、本発明の近赤外線透過材料に含まれる分散体が無色透明、又はそれに近いものである場合、上述した本発明の化合物粒子のCIE1976(L)色空間のL、a、bの値と同等の値を示す。
【0120】
また、本発明の近赤外線透過材料は、前記分散体が、樹脂、ガラス、有機溶剤、若しくは水、又はこれらの2種以上の混合物であることを特徴とする。
分散体は、近赤外線を透過する成分を有するものであると好ましい。
【0121】
分散体に用いられる樹脂として、樹脂の種類に特に制限はなく、所望の形状に成形可能な樹脂を用いることができ、例えば熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂、及び二液混合硬化性樹脂を用いることができる。
【0122】
これらの樹脂のうち、膜厚が厚いシートへの成形加工が容易である観点からは、マトリクス樹脂として熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。熱可塑性樹脂の例として、ポリエチレンや、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートや、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリル酸、又はそのエステルや、ポリメタクリル酸、又はそのエステル等のポリアクリル酸系樹脂、ポリスチレンや、ポリ塩化ビニル等のポリビニル系樹脂、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリウレタン等のウレタン樹脂などの少なくとも1種以上の樹脂が挙げられる。なお、当該熱可塑性樹脂には、多層型に成形したもの、ポリマーブレンド、コポリマーも含まれる。
【0123】
また、膜厚が薄いシートへの成形加工が容易である観点からは、マトリクス樹脂として熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂、及び二液混合硬化性樹脂のうち少なくとも一つ以上を用いることが好ましい。熱硬化性樹脂の例として、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。さらに、電離放射線硬化性樹脂の例として、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリエステルアルキド樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、ポリマーだけでなく、オリゴマー、モノマーも使用することができる。また、二液混合硬化性樹脂の例として、エポキシ樹脂が挙げられる。
【0124】
分散体に用いられるガラスとして、例えば、ガラス板、水ガラス、石英、及び粉末ガラスが挙げられる。
【0125】
分散体に用いられる有機溶媒として、水溶性有機溶媒及び非水溶性有機溶媒の双方を用いることができる。水溶性有機溶媒を用いる場合には、水と混合してなる混合溶媒としても用いることができる。具体的には、水溶性有機溶媒として、例えばモノアルコール、多価アルコール、ケトン、エステル、アミン、チオール、ピロリドン系等といった水と相溶できる有機溶媒を用いることができる。ここで、モノアルコールとして、例えばメタノール、エタノール、工業用エタノール、イソプロピルアルコールなどが挙げられる。また、多価アルコールとして、例えばエチレングリコール、オリゴエチレングリコール、プロピレングリコール、オリゴプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体、ブチレングリコールなどが挙げられる。さらに、ケトンとして、例えばアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどが挙げられる。
【0126】
一方、非水溶性有機溶媒として、例えば飽和又は不飽和の炭化水素系化合物やハロゲン化炭化水素とその環状化合物、長鎖のモノアルコールや多価アルコール、及び芳香族系化合物等に代表される水と相溶しない有機溶媒を用いることができる。これらの有機溶媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0127】
分散体に用いられる水として、一般的な水道水(イオン成分を含む。)、イオン交換水、純水、及び超純水が挙げられる。
【0128】
上述した分散体として用いられる、樹脂、ガラス、有機溶媒、又は水は、特段に説明がない限り、本発明の近赤外線透過材料の特性に影響を及ぼすものではない。
【0129】
本発明の化合物粒子、及び近赤外線透過材料は、添加物として、Nb、Ta、Ti、Si、Zr、Zn、Al、Y、V、ランタノイド系(La、Ce、Nd、Eu、Gd、Dy、Yb等)などの酸化物粒子を含有してもよい。本発明の化合物粒子、及び近赤外線透過材料における添加物の含有量は、1質量%未満であるのが好ましく、0.1質量%未満であるのがより好ましく、0.01質量%未満であるとさらに好ましい。なお、本発明化合物粒子、及び近赤外線透過材料の特性を損なわない範囲であれば、当該添加物の含有量は、上述した範囲を超えてもよい。
【0130】
さらに、本発明の化合物粒子、及び近赤外線透過材料は、その作用効果を阻害しない範囲で、当該化合物粒子乃至酸化物粒子に由来する成分、及び、分散体に由来する成分以外の成分(「他成分」という。)を含有してもよい。他成分としては、例えばNb、Ta、Ti、Si、Zr、Zn、Al、Y、V、ランタノイド系(La、Ce、Nd、Eu、Gd、Dy、Yb等)などが挙げられる。但し、これらに限定するものではない。本発明の化合物粒子、及び近赤外線透過材料における他成分の含有量は、5質量%未満であるのが好ましく、4質量%未満であるのがより好ましく、3質量%未満であるとさらに好ましい。なお、本発明の化合物粒子、及び近赤外線透過材料は、意図したものではなく、不可避不純物を含むことが想定される。不可避不純物の総含有量は10質量%未満であると好ましく、7質量%未満であるとより好ましく、5質量%未満であるとさらに好ましく、3質量%未満であると特に好ましく、1質量%未満であるとまた特に好ましい。
【0131】
本発明の近赤外線透過膜は、上述した本発明の近赤外線透過材料を含むことを特徴とする。
本発明の近赤外線透過膜は、上述した本発明の近赤外線透過材料を含んでおり、光学フィルタとして、赤外線センサや赤外線カメラに利用可能である。
【0132】
本発明の近赤外線センサは、上述した本発明の近赤外線透過膜が形成された光学フィルタを有することを特徴とする。
本発明の近赤外線センサは、上述した本発明の近赤外線透過膜が形成された光学フィルタを有することにより、可視光線は極力透過させないが、近赤外線は透過させることができる点で好ましい。
【0133】
上述した本発明の近赤外線透過膜の製造方法について、以下説明する。
【0134】
本発明の近赤外線透過膜の製造方法は、上述した本発明の近赤外線透過材料を、基材上に塗布し、乾燥することにより、近赤外線透過膜を生成する工程を有する。なお、基材は、ガラス、アクリル、樹脂成型体などが挙げられる。
【0135】
上述した本発明の近赤外線透過材料の製造方法により生成された近赤外線透過材料を、バーコーターを用いて基材上に塗布する。そして、本発明の近赤外線透過材料が塗布された基材を、静置炉内に載置し、室温(25℃)で3時間に亘って乾燥することにより、本発明の近赤外線透過膜が得られる。また、本発明の近赤外線透過材料が塗布された基材を静置炉内に載置し、110℃に加熱し、6時間に亘って乾燥し、又は600℃に加熱し、3時間に亘って焼成してもよい。
【0136】
本発明の遮熱部材は、基材と、前記基材上に形成されている近赤外線反射下膜と、前記近赤外線反射下膜上に形成されている近赤外線透過上膜と、を有する遮熱部材であって、前記近赤外線反射下膜は、近赤外反射材料を含有し、前記近赤外線透過上膜は、構成元素として、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、B、F、Al、Si、P、S、Cl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Se、Br、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、I、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Tl、Pb、Biのうちから選択される2種以上の元素を含む化合物粒子を有する近赤外線透過材料を含有し、前記遮熱部材の波長8000nm~2500nmの光の最大反射率が40%R以上であることを特徴とする。
上述した構成により、本発明の遮熱部材は、遮熱性を有し、また外観が黒色系であることから、車両や、建築物の外壁などの用途に利用可能である。
【0137】
本発明の遮熱部材に係る基材は、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム、アルミニウム合金、高張力鋼等が挙げられる。
【0138】
本発明の遮熱部材に係る近赤外線反射下膜は、基材上に形成されている。また、近赤外線反射下膜は、近赤外反射材料を含有する。
【0139】
ここで、近赤外反射材料としては、赤外線の帯域において高い反射率を有するものである。具体的には、近赤外反射材料は、波長800nm~2500nmの近赤外線波長域の光を反射すると好ましく、波長1000nm~2000nmの近赤外線波長域の光を反射すると、遮熱性の観点でより好ましい。当該波長域における光の最大反射率が40%R以上であると好ましく、60%R以上であるとより好ましく、70%R以上であるとさらに好ましく、80%R以上であると特に好ましく、90%R以上であるとより特に好ましく、100%R以上であると最も好ましい。なお、測定誤差等により、当該光の最大反射率の測定値が100%Rを超える場合があるが、理論上限値は100%Rであるため、当該測定値が100%R超の場合、100%Rとみなす。
【0140】
また、近赤外反射材料は、波長1000nm、又は2000nmにおける光の最小反射率が40%R以上であると好ましく、60%R以上であるとより好ましく、70%R以上であるとさらに好ましく、80%R以上であると特に好ましく、90%R以上であるとより特に好ましく、100%R以上であると最も好ましい。
【0141】
さらに、近赤外反射材料は、当該波長域における光の最小反射率が40%R以上であると好ましく、60%R以上であるとより好ましく、70%R以上であるとさらに好ましく、80%R以上であると特に好ましく、90%R以上であるとより特に好ましく、100%R以上であると最も好ましい。
【0142】
近赤外反射材料は、例えば無機系材料であってもよく、有機系材料であってもよく、それらを組み合わせたものであってもよい。
【0143】
無機系材料としては、アルミニウム、金、銀、銅、黄銅、錫、鉄、ステンレス鋼、チタニウム等の金属またはこれらの金属を含む合金であってもよく、二酸化チタン、低次酸化チタン、酸化亜鉛、低次酸化亜鉛、酸化アルミニウム、インミンブルー、コバルトブルー、低次酸化アルミニウム等の金属酸化物、低次金属酸化物、複合金属酸化物、複合低次金属酸化物であってもよく、硫酸バリウム、硫化亜鉛、炭酸マグネシウム等の化合物塩、混合化合物塩であってもよい。
【0144】
有機系材料としては、銅フタロシアニン顔料、異種金属(ニッケル、コバルト、鉄など)フタロシアニン顔料、無金属フタロシアニン顔料、塩素化フタロシアニン顔料、塩素/臭素化フタロシアニン顔料、臭素化フタロシアニン顔料、アントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリレン系顔料、モノアゾ系顔料、ジスアゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、金属錯体系顔料、キノフタロン系顔料、インダンスレンブルー顔料、ジオキサジンバイオレット顔料、アンスラキノン顔料、金属錯体顔料、ベンツイミダゾロン系顔料であってもよい。
【0145】
さらに、近赤外反射材料は、上述した無機系材料、又は有機系材料から選択される1種又は2種以上を用いることができる。
【0146】
本発明の遮熱部材に係る近赤外線透過上膜は、近赤外線反射下膜上に形成されている。また、近赤外線透過上膜は、構成元素として、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、B、F、Al、Si、P、S、Cl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Se、Br、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、I、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Tl、Pb、Biのうちから選択される2種以上の元素を含む化合物粒子を有する近赤外線透過材料を含有する。
【0147】
近赤外線透過上膜に含有する化合物粒子を有する近赤外線透過材料は、本発明の化合物粒子の製造方法により、製造された化合物粒子を有するものであり、本発明の近赤外線透過材料であるから、詳細な説明は省略する。
【0148】
本発明の遮熱部材は、波長800nm~2500nmの近赤外線波長域の光を反射すると好ましく、波長1000nm~2000nmの近赤外線波長域の光を反射すると、遮熱性の観点でより好ましい。当該波長域における光の最大反射率が40%R以上であると、本発明の遮熱部材の最外表面における近赤外波長域の光の反射率が向上し、遮熱効果を高める点で好ましい。当該光の最大反射率が60%R以上であるとより好ましく、70%R以上であるとさらに好ましく、80%R以上であると特に好ましく、90%R以上であるとより特に好ましく、100%R以上であると最も好ましい。なお、測定誤差等により、当該光の最大反射率の測定値が100%Rを超える場合があるが、理論上限値は100%Rであるため、当該測定値が100%R超の場合、100%Rとみなす。
【0149】
また、本発明の遮熱部材は、波長1000nm、又は2000nmにおける光の最小反射率が40%R以上であると好ましく、60%R以上であるとより好ましく、70%R以上であるとさらに好ましく、80%R以上であると特に好ましく、90%R以上であるとより特に好ましく、100%R以上であると最も好ましい。
【0150】
さらに、本発明の遮熱部材は、当該波長域における光の最小反射率が40%R以上であると好ましく、60%R以上であるとより好ましく、70%R以上であるとさらに好ましく、80%R以上であると特に好ましく、90%R以上であるとより特に好ましく、100%R以上であると最も好ましい。
【0151】
本発明の遮熱部材は、基材と、前記基材上に形成されている近赤外線反射下膜と、前記近赤外線反射下膜上に形成されている近赤外線透過上膜と、を有する遮熱部材であって、前記近赤外線反射下膜は、近赤外反射材料を含有し、前記近赤外線透過上膜は、構成元素として、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、B、F、Al、Si、P、S、Cl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Se、Br、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、I、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Tl、Pb、Biのうちから選択される2種以上の元素を含む化合物粒子を有する近赤外線透過材料を含有し、前記近赤外線反射下膜の波長800nm~2500nmの光の最大反射率が40%R以上であり、且つ前記近赤外線透過上膜の波長800nm~2500nmの最大透過率が40%T以上であることを特徴とする。
上述した構成により、本発明の遮熱部材は、遮熱性を有し、また外観が黒色系であることから、車両や、建築物の外壁などの用途に利用可能である。
【0152】
本発明の近赤外線反射下膜は、波長800nm~2500nmの近赤外線波長域の光を反射すると好ましく、波長1000nm~2000nmの近赤外線波長域の光を反射すると、遮熱性の観点でより好ましい。当該波長域における光の最大反射率が40%R以上であると、本発明の近赤外線反射下膜の表面における近赤外波長域の光の反射率が向上し、遮熱効果を高める点で好ましい。当該光の最大反射率が60%R以上であるとより好ましく、70%R以上であるとさらに好ましく、80%R以上であると特に好ましく、90%R以上であるとより特に好ましく、100%R以上であると最も好ましい。なお、測定誤差等により、当該光の最大反射率の測定値が100%Rを超える場合があるが、理論上限値は100%Rであるため、当該測定値が100%R超の場合、100%Rとみなす。
【0153】
また、本発明の近赤外線反射下膜は、波長1000nm、又は2000nmにおける光の最小反射率が40%R以上であると好ましく、60%R以上であるとより好ましく、70%R以上であるとさらに好ましく、80%R以上であると特に好ましく、90%R以上であるとより特に好ましく、100%R以上であると最も好ましい。
【0154】
さらに、本発明の近赤外線反射下膜は、当該波長域における光の最小反射率が40%R以上であると好ましく、60%R以上であるとより好ましく、70%R以上であるとさらに好ましく、80%R以上であると特に好ましく、90%R以上であるとより特に好ましく、100%R以上であると最も好ましい。
【0155】
本発明の近赤外線透過上膜は、波長800nm~2500nmの近赤外線波長域の光を透過すると好ましく、波長1000nm~2000nmの近赤外線波長域の光を透過すると、遮熱性の観点でより好ましい。当該波長域における光の最大透過率が40%T以上であると、本発明の近赤外線反射下膜の表面における近赤外波長域の光の反射率が向上し、遮熱効果を高める点で好ましい。当該光の最大透過率が60%T以上であるとより好ましく、70%T以上であるとさらに好ましく、80%T以上であると特に好ましく、90%T以上であるとより特に好ましく、100%T以上であると最も好ましい。なお、測定誤差等により、当該光の最大透過率の測定値が100%Tを超える場合があるが、理論上限値は100%Tであるため、当該測定値が100%T超の場合、100%Tとみなす。
【0156】
また、本発明の近赤外線透過上膜は、波長1000nm、又は2000nmにおける光の最小透過率が40%T以上であると好ましく、60%T以上であるとより好ましく、70%T以上であるとさらに好ましく、80%T以上であると特に好ましく、90%T以上であるとより特に好ましく、100%T以上であると最も好ましい。
【0157】
さらに、本発明の近赤外線透過上膜は、当該波長域における光の最小透過率が40%T以上であると好ましく、60%T以上であるとより好ましく、70%T以上であるとさらに好ましく、80%T以上であると特に好ましく、90%T以上であるとより特に好ましく、100%T以上であると最も好ましい。
【0158】
本発明の遮熱部材の製造方法は、基材上に、近赤外反射材料を含有する近赤外線反射下膜を形成する下膜形成工程と、前記近赤外線反射下膜上に、構成元素として、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、B、F、Al、Si、P、S、Cl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Se、Br、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、I、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Tl、Pb、Biのうちから選択される2種以上の元素を含む化合物粒子を有する近赤外線透過材料を含有する近赤外線透過上膜を形成する上膜形成工程と、を有することを特徴とする。
【0159】
下膜形成工程としては、基材上に箔片状の近赤外反射材料を配置する方法や、近赤外反射材料と分散体とを混合させた塗料を塗布する方法や、真空蒸着、スパッタリング、電解又は無電解メッキ等の薄膜形成法を用いることができる。
【0160】
これらの方法により、基材上に、近赤外反射材料を含有する近赤外線反射下膜が形成される。
【0161】
上膜形成工程としては、下膜形成工程により形成された近赤外線反射下膜上に、構成元素として、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、B、F、Al、Si、P、S、Cl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Se、Br、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、I、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Tl、Pb、Biのうちから選択される2種以上の元素を含む化合物粒子を有する近赤外線透過材料を塗布する方法や、真空蒸着、スパッタリング、電解又は無電解メッキ等の薄膜形成法を用いることができる。また、近赤外線透過上膜に含まれる化合物粒子は、本発明の化合物粒子の製造方法により、製造されたものである。
【0162】
これらの方法により、近赤外線反射下膜上に、構成元素として、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、B、F、Al、Si、P、S、Cl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Se、Br、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、I、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Tl、Pb、Biのうちから選択される2種以上の元素を含む化合物粒子を有する近赤外線透過材料を含有する近赤外線透過上膜が形成される。
【0163】
このようにして、本発明の遮熱部材が得られる。
【0164】
なお、本明細書において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特に断らない限り、「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」旨の意も包含する。また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現する場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
【発明の効果】
【0165】
本発明の化合物粒子の製造方法は、原料の焼成温度の低温化を実現し、可視光線は極力透過させないが、近赤外線は透過させることができる化合物粒子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0166】
図1】本発明の実施例1~8に係る近赤外線透過材料、比較例1に係る酸化チタン混合物、及び比較例2に係るカーボンブラック混合物の物性値及び測定結果の一覧表である。
図2】本発明の実施例1~8に係る近赤外線透過材料から形成された塗膜の波長400nm~2400nmの透過率を示すグラフである。
図3】本発明の実施例C1、及び比較例C1~C4に係る遮熱部材の物性値及び測定結果の一覧表である。
図4】本発明の実施例C1、及び比較例C1~C4に係る遮熱部材の波長550nm~2000nmの反射率を示すグラフである。
図5】本発明の実験例1~3に係る近赤外線透過材料、比較例1に係る酸化チタン混合物、及び比較例2に係るカーボンブラック混合物の物性値及び測定結果の一覧表である。
図6】本発明の実験例4~14に係る近赤外線透過材料の物性値及び測定結果の一覧表である。
図7】本発明の実験例15~20に係る近赤外線透過材料の物性値及び測定結果の一覧表である。
図8】本発明の実験例21~26に係る近赤外線透過材料の物性値及び測定結果の一覧表である。
図9】本発明の実験例1~3、10、26に係る近赤外線透過材料の物性値及び測定結果の一覧表である。
図10】本発明の実験例27~30に係る近赤外線透過材料の物性値及び測定結果の一覧表である。
図11】本発明の実験例31~38に係る近赤外線透過材料の物性値及び測定結果の一覧表である。
図12】本発明の実験例39~41に係る近赤外線透過材料の物性値及び測定結果の一覧表である。
図13】本発明の実験例1~3に係る近赤外線透過材料から形成された塗膜の波長400nm~2400nmの透過率を示すグラフである。
図14】(a)は本発明の実験例4~9に係る近赤外線透過材料から形成された塗膜の波長400nm~2400nmの透過率を示すグラフであり、(b)は本発明の実験例10~14に係る近赤外線透過材料から形成された塗膜の波長400nm~2400nmの透過率を示すグラフである。
図15】本発明の実験例15~20に係る近赤外線透過材料から形成された塗膜の波長400nm~2400nmの透過率を示すグラフである。
図16】本発明の実験例21~26に係る近赤外線透過材料から形成された塗膜の波長400nm~2400nmの透過率を示すグラフである。
図17】本発明の実験例1~3、10、26に係る近赤外線透過材料から形成された塗膜の波長400nm~2400nmの透過率を示すグラフである。
図18】本発明の実験例27~30に係る近赤外線透過材料から形成された塗膜の波長400nm~2400nmの透過率を示すグラフである。
図19】本発明の実験例31~38に係る近赤外線透過材料から形成された塗膜の波長400nm~2400nmの透過率を示すグラフである。
図20】本発明の実験例39~41に係る近赤外線透過材料から形成された塗膜の波長400nm~2400nmの透過率を示すグラフである。
図21】本発明の実験例10、35、36に係る近赤外線透過材料から形成された塗膜の波長400nm~2400nmの透過率を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0167】
以下、本発明に係る実施形態の化合物粒子の製造方法について、以下の実施例によりさらに説明する。但し、以下の実施例は、本発明を限定するものではない。
【0168】
(実施例1)
実施例1に係る化合物は、その組成式をAxXyOzと表した場合、構成元素AがY、であり、構成元素XがMnであるマンガン酸イットリウム粒子(YMO)である。
【0169】
実施例1に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)は、構成元素A(Y)のモル数が1.000mol、構成元素X(Mn)のモル数が1.000mol、A+Xのモル数が2.000mol、A/(A+X)のモル比が0.500、X/(A+X)のモル比が0.500、及びA/Xのモル比が1.000であった。
【0170】
具体的には、原料化合物として、電解二酸化マンガン(86.94g/mol)と、酸化イットリウム(225.81g/mol)と、を、モル比でMn:Y=1.0:1.0となるように秤量し、ボールミル粉砕機を用いて粉砕混合して混合原料を得た。原料化合物100gとφ15mmのジルコニア製ビーズ6kgとを5Lのプラスチック容器中に投入し、5時間粉砕混合して混合原料を得た。得られた実施例1に係る混合原料の平均粒径D50は、1.2μmであった。
【0171】
得られた混合原料をアルミナ製るつぼに入れ、静置式電気炉を用いて、大気雰囲気下、焼成温度(保持温度)1000℃で20時間保持し、その後は常温まで自然冷却した後、焼成して得られた焼成粉を乳鉢で解砕し、目開き75μmの篩で分級し、篩下の粉体を、焼成粉として得た。
【0172】
このように焼成して得られた焼成粉に対して、以下のように二段階粉砕処理を行った。
【0173】
先ず、一段階目の粉砕処理として、焼成して得られた焼成粉30gと、φ0.8mmジルコニアビーズ100gと、純水45gとを、100mLのプラスチック容器に投入し、当該プラスチック容器を株式会社セイワ技研製ロッキングシェイカーにセットし、当該ロッキングシェイカーを用いて4時間粉砕処理した。その後、メッシュを用いて当該ジルコニアビーズを分離した後、小形遠心機(エッペンドルフ・ハイマック・テクノロジーズ株式会社製:CT6E)を用いて固液分離し、乾燥機を用いて固形分を110℃で乾固して、一段階目の粉砕処理された乾燥粉を得た。
【0174】
次に、二段階目の粉砕処理として、一段階目の粉砕処理された乾燥粉30gと、φ0.2mmジルコニアビーズ100gと、純水45gとを、100mLのプラスチック容器に投入し、当該プラスチック容器を株式会社セイワ技研製ロッキングシェイカーにセットし、当該ロッキングシェイカーを用いて4時間粉砕処理した。その後、メッシュを用いて当該ジルコニアビーズを分離した後、小形遠心機(エッペンドルフ・ハイマック・テクノロジーズ株式会社製:CT6E)を用いて固液分離し、乾燥機を用いて固形分を110℃で乾固することにより、実施例1に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)を得た。
【0175】
そして、実施例1に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)20.0gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように容器中で混合し、得られた混合物を、ペイントシェーカーを用いて2時間分散処理することにより、実施例1に係る近赤外線透過材料を得た。
【0176】
このようにして得られた実施例1に係る近赤外線透過材料を、PET製のフィルム(東レ株式会社製「ルミラー(登録商標)」:#100-T60)上にバーコーター(No.10)を用いて塗布することにより、塗膜を形成し、実施例1に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0177】
(実施例2)
実施例2に係る化合物は、その組成式をAxXyOzと表した場合、構成元素AがY、であり、構成元素XがMnであるマンガン酸イットリウム粒子(YMO)である。
【0178】
実施例2に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)は、構成元素A(Y)のモル数が1.000mol、構成元素X(Mn)のモル数が1.000mol、A+Xのモル数が2.000mol、A/(A+X)のモル比が0.500、X/(A+X)のモル比が0.500、及びA/Xのモル比が1.000であった。
【0179】
実施例2に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)は、四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、酸化イットリウム(225.81g/mol)とを、モル比でMn:Y=1.0:1.0となるように秤量し、乳鉢を用いて混合して混合原料を得た。得られた実施例2に係る混合原料の平均粒径D50は、4.3μmであった。なお、四ホウ酸リチウム(169.1218g/mol)を、当該混合原料に対し、3.2質量%となるように添加し、混合すると好ましい。
【0180】
得られた混合原料をアルミナ製るつぼに入れ、静置式電気炉を用いて、大気雰囲気下、焼成温度(保持温度)1200℃で20時間保持し、その後は常温まで自然冷却した後、焼成して得られた焼成粉を乳鉢で解砕し、目開き75μmの篩で分級し、篩下の粉体を、焼成粉として得た。
【0181】
このように焼成して得られた焼成粉に対して、実施例1と同様に、二段階粉砕処理を行うことにより、実施例2に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)を得た。
【0182】
また、実施例2に係る近赤外線透過材料、及び実施例2に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)は、それぞれ実施例1と同様にして、得られた。
【0183】
(実施例3)
実施例3に係る化合物は、その組成式をAxXyOzと表した場合、構成元素AがY、であり、構成元素XがMnであるマンガン酸イットリウム粒子(YMO)、及びYMnである。
【0184】
実施例3に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)、及びYMnは、構成元素A(Y)のモル数が1.000mol、構成元素X(Mn)のモル数が1.000mol、A+Xのモル数が2.000mol、A/(A+X)のモル比が0.500、X/(A+X)のモル比が0.500、及びA/Xのモル比が1.000であった。
【0185】
具体的には、原料化合物として、電解二酸化マンガン(86.94g/mol)と、炭酸イットリウム三水和物(357.83g/mol)と、を、モル比でMn:Y=1.0:1.0となるように秤量し、ボールミル粉砕機を用いて粉砕混合して混合原料を得た。原料化合物100gとφ15mmのジルコニア製ビーズ6kgとを5Lのプラスチック容器中に投入し、5時間粉砕混合して混合原料を得た。得られた実施例3に係る混合原料の平均粒径D50は、3.8μmであった。
【0186】
得られた混合原料をアルミナ製るつぼに入れ、静置式電気炉を用いて、大気雰囲気下、焼成温度(保持温度)900℃で20時間保持し、その後は常温まで自然冷却した後、焼成して得られた焼成粉を乳鉢で解砕し、目開き75μmの篩で分級し、篩下の粉体を、焼成粉として得た。
【0187】
このように焼成して得られた焼成粉に対して、実施例1と同様に、二段階粉砕処理を行うことにより、実施例3に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)、及びYMnを得た。上述したように、実施例3は、原料化合物として、炭酸イットリウム三水和物に変更し、また焼成温度を900℃に変更したことにより、実施例1とは結晶構造の異なる生成物(YMnO、YMn)を合成することができ、透過率や、色差を調整することができた。
【0188】
また、実施例3に係る近赤外線透過材料、及び実施例3に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)は、それぞれ実施例1と同様にして、得られた。
【0189】
(実施例4)
実施例4に係る化合物は、その組成式をAxXyOzと表した場合、構成元素AがY及びB、であり、構成元素XがMnであるマンガン酸イットリウム粒子(YMO)である。
【0190】
実施例4に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)は、構成元素A(Y、B)のモル数が1.0126mol、構成元素X(Mn)のモル数が1.000mol、A+Xのモル数が2.013mol、A/(A+X)のモル比が0.500、X/(A+X)のモル比が0.500、及びA/Xのモル比が1.010であった。
【0191】
具体的には、原料化合物として、電解二酸化マンガン(86.94g/mol)と、酸化イットリウム(225.81g/mol)と、四ホウ酸リチウム(169.1218g/mol)と、を、モル比でMn:Y:B=1.0:1.0:0.013となるように秤量し、ボールミル粉砕機を用いて粉砕混合して混合原料を得た。原料化合物100gとφ15mmのジルコニア製ビーズ6kgとを5Lのプラスチック容器中に投入し、5時間粉砕混合して混合原料を得た。得られた実施例4に係る混合原料の平均粒径D50は、0.60μmであった。
【0192】
得られた混合原料をアルミナ製るつぼに入れ、静置式電気炉を用いて、大気雰囲気下、焼成温度(保持温度)900℃で20時間保持し、その後は常温まで自然冷却した後、焼成して得られた焼成粉を乳鉢で解砕し、目開き75μmの篩で分級し、篩下の粉体を、焼成粉として得た。
【0193】
このように焼成して得られた焼成粉に対して、実施例1と同様に、二段階粉砕処理を行うことにより、実施例4に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)を得た。上述したように、実施例4は、原料化合物として、四ホウ酸リチウムを加え、また焼成温度を900℃に変更したことにより、実施例1とは結晶構造の異なる生成物(YMnO、YMn、Mn)を合成することができ、透過率や、色差を調整することができた。
【0194】
また、実施例4に係る近赤外線透過材料、及び実施例4に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)は、それぞれ実施例1と同様にして、得られた。
【0195】
(実施例5)
実施例5に係る化合物は、その組成式をAxXyOzと表した場合、構成元素AがY及びB、であり、構成元素XがMnであるマンガン酸イットリウム粒子(YMO)である。
【0196】
実施例5に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)は、構成元素A(Y、B)のモル数が1.0126mol、構成元素X(Mn)のモル数が1.000mol、A+Xのモル数が2.013mol、A/(A+X)のモル比が0.500、X/(A+X)のモル比が0.500、及びA/Xのモル比が1.010であった。
【0197】
具体的には、原料化合物として、電解二酸化マンガン(86.94g/mol)と、炭酸イットリウム三水和物(357.83g/mol)と、四ホウ酸リチウム(169.1218g/mol)と、を、モル比でMn:Y:B=1.0:1.0:0.013となるように秤量し、ボールミル粉砕機を用いて粉砕混合して混合原料を得た。原料化合物100gとφ15mmのジルコニア製ビーズ6kgとを5Lのプラスチック容器中に投入し、5時間粉砕混合して混合原料を得た。得られた実施例5に係る混合原料の平均粒径D50は、0.58μmであった。
【0198】
得られた混合原料をアルミナ製るつぼに入れ、静置式電気炉を用いて、大気雰囲気下、焼成温度(保持温度)975℃で20時間保持し、その後は常温まで自然冷却した後、焼成して得られた焼成粉を乳鉢で解砕し、目開き75μmの篩で分級し、篩下の粉体を、焼成粉として得た。
【0199】
このように焼成して得られた焼成粉に対して、実施例1と同様に、二段階粉砕処理を行うことにより、実施例5に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)を得た。上述したように、実施例5は、原料化合物として、炭酸イットリウム三水和物に変更し、且つ四ホウ酸リチウムを加え、また焼成温度を975℃に変更したことにより、実施例1とは結晶構造の異なる生成物(YMnO、YMn)を合成することができ、透過率や、色差を調整することができた。
【0200】
また、実施例5に係る近赤外線透過材料、及び実施例5に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)は、それぞれ実施例1と同様にして、得られた。
【0201】
(実施例6)
実施例6に係る化合物は、その組成式をAxXyOzと表した場合、構成元素AがY及びB、であり、構成元素XがMnであるマンガン酸イットリウム粒子(YMO)である。
【0202】
実施例6に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)は、構成元素A(Y、B)のモル数が1.0316mol、構成元素X(Mn)のモル数が1.000mol、A+Xのモル数が2.032mol、A/(A+X)のモル比が0.510、X/(A+X)のモル比が0.490、及びA/Xのモル比が1.030であった。
【0203】
具体的には、原料化合物として、電解二酸化マンガン(86.94g/mol)と、酸化イットリウム(225.81g/mol)と、四ホウ酸リチウム(169.1218g/mol)と、を、モル比でMn:Y:B=1.0:1.0:0.032となるように秤量し、ボールミル粉砕機を用いて粉砕混合して混合原料を得た。原料化合物100gとφ15mmのジルコニア製ビーズ6kgとを5Lのプラスチック容器中に投入し、5時間粉砕混合して混合原料を得た。得られた実施例6に係る混合原料の平均粒径D50は、0.96μmであった。
【0204】
得られた混合原料をアルミナ製るつぼに入れ、静置式電気炉を用いて、大気雰囲気下、焼成温度(保持温度)975℃で20時間保持し、その後は常温まで自然冷却した後、焼成して得られた焼成粉を乳鉢で解砕し、目開き75μmの篩で分級し、篩下の粉体を、焼成粉として得た。
【0205】
このように焼成して得られた焼成粉に対して、実施例1と同様に、二段階粉砕処理を行うことにより、実施例6に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)を得た。上述したように、実施例6は、原料化合物として、四ホウ酸リチウムを加え、また焼成温度を975℃に変更したことにより、実施例1とは結晶構造の異なる生成物(YMnO、YBO)を合成することができ、透過率や、色差を調整することができた。
【0206】
また、実施例6に係る近赤外線透過材料、及び実施例6に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)は、それぞれ実施例1と同様にして、得られた。
【0207】
(実施例7)
実施例7に係る化合物は、その組成式をAxXyOzと表した場合、構成元素AがY、であり、構成元素XがMnであるマンガン酸イットリウム粒子(YMO)である。
【0208】
実施例7に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)は、構成元素A(Y)のモル数が1.000mol、構成元素X(Mn)のモル数が1.000mol、A+Xのモル数が2.000mol、A/(A+X)のモル比が0.500、X/(A+X)のモル比が0.500、及びA/Xのモル比が1.000であった。
【0209】
具体的には、原料化合物として、電解二酸化マンガン(86.94g/mol)と、炭酸イットリウム三水和物(357.83g/mol)と、を、モル比でMn:Y=1.0:1.0となるように秤量し、ボールミル粉砕機を用いて粉砕混合して混合原料を得た。原料化合物100gとφ15mmのジルコニア製ビーズ6kgとを5Lのプラスチック容器中に投入し、5時間粉砕混合して混合原料を得た。得られた実施例7に係る混合原料の平均粒径D50は、0.69μmであった。
【0210】
得られた混合原料をアルミナ製るつぼに入れ、静置式電気炉を用いて、大気雰囲気下、焼成温度(保持温度)975℃で20時間保持し、その後は常温まで自然冷却した後、焼成して得られた焼成粉を乳鉢で解砕し、目開き75μmの篩で分級し、篩下の粉体を、焼成粉として得た。
【0211】
このように焼成して得られた焼成粉に対して、実施例1と同様に、二段階粉砕処理を行うことにより、実施例7に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)を得た。上述したように、実施例7は、原料化合物として、炭酸イットリウム三水和物に変更し、また焼成温度を975℃に変更したことにより、実施例1とは結晶構造の異なる生成物(YMnO)を合成することができ、透過率や、色差を調整することができた。
【0212】
また、実施例7に係る近赤外線透過材料、及び実施例7に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)は、それぞれ実施例1と同様にして、得られた。
【0213】
(実施例8)
実施例8に係る化合物は、その組成式をAxXyOzと表した場合、構成元素AがY及びB、であり、構成元素XがMnであるマンガン酸イットリウム粒子(YMO)である。
【0214】
実施例8に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)は、構成元素A(Y、B)のモル数が1.126mol、構成元素X(Mn)のモル数が1.000mol、A+Xのモル数が2.126mol、A/(A+X)のモル比が0.530、X/(A+X)のモル比が0.470、及びA/Xのモル比が1.126であった。
【0215】
具体的には、原料化合物として、電解二酸化マンガン(86.94g/mol)と、炭酸イットリウム三水和物(357.83g/mol)と、四ホウ酸リチウム(169.1218g/mol)と、を、モル比でMn:Y:B=1.0:1.0:0.126となるように秤量し、ボールミル粉砕機を用いて粉砕混合して混合原料を得た。原料化合物100gとφ15mmのジルコニア製ビーズ6kgとを5Lのプラスチック容器中に投入し、5時間粉砕混合して混合原料を得た。得られた実施例8に係る混合原料の平均粒径D50は、0.65μmであった。
【0216】
得られた混合原料をアルミナ製るつぼに入れ、静置式電気炉を用いて、大気雰囲気下、焼成温度(保持温度)975℃で20時間保持し、その後は常温まで自然冷却した後、焼成して得られた焼成粉を乳鉢で解砕し、目開き75μmの篩で分級し、篩下の粉体を、焼成粉として得た。
【0217】
このように焼成して得られた焼成粉に対して、実施例1と同様に、二段階粉砕処理を行うことにより、実施例8に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)を得た。上述したように、実施例8は、原料化合物として、炭酸イットリウム三水和物に変更し、且つ四ホウ酸リチウムを加え、また焼成温度を975℃に変更したことにより、実施例1とは結晶構造の異なる生成物(YMnO、YBO)を合成することができ、透過率や、色差を調整することができた。
【0218】
また、実施例8に係る近赤外線透過材料、及び実施例8に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)は、それぞれ実施例1と同様にして、得られた。
【0219】
(比較例1)
比較例1は、一次粒子径が35nmであり、且つ二次粒子径が140nmである酸化チタンの凝集体(7質量部)に対して、透明樹脂(アクリルポリオール;100質量部)、及び硬化剤(ヘキサメチレンジイソシアネート;20質量部)を配合し、溶融混合することにより、比較例1に係る酸化チタン混合物を得た。
【0220】
(比較例2)
比較例2は、一次粒子径が15nmでありBET比表面積が120m/gの単一の黒色顔料であるカーボンブラックを用いた。具体的には、当該カーボンブラックの凝集体(20質量部)に対して、透明樹脂(メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体;100質量部)、及びPGMEA(120質量部)となるように、3本ロールで配合・混練することにより、比較例2に係るカーボンブラック混合物を得た。
【0221】
以下、本発明に係る実施形態の遮熱部材について、以下の実施例によりさらに説明する。但し、以下の実施例は、本発明を限定するものではない。
【0222】
(実施例C1)
先ず、近赤外反射材料である酸化チタン(TiO)7.6gと、アクリル樹脂11.1gと、酢酸エチル18.9gとを容器中で混合し、得られた混合物を、ペイントシェイカーを用いて、10分間分散処理を実施し、実施例C1に係る混合塗料を得た。
【0223】
実施例C1に係る混合塗料を、基材(SUS304)上に刷毛で塗布し、110℃で1時間乾燥させることにより、実施例C1に係る近赤外線反射下膜(膜厚53.5μm)を形成した。
【0224】
次に、近赤外透過材料を構成する化合物粒子である実施例8に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)、及びYMn7.6gと、アクリル樹脂11.1gと、酢酸エチル18.9gとを容器中で混合し、得られた混合物を、ペイントシェイカーを用いて、2時間分散処理を実施し、実施例C1に係るYMO塗料を得た。
【0225】
実施例C1に係るYMO塗料を、実施例C1に係る近赤外線反射下膜上にスピンコーター(1000rpm、20s)を用いて塗布し、乾燥させることにより、実施例C1に係る近赤外線透過上膜(膜厚14μm)を形成した。
【0226】
このようにして、実施例C1に係る遮熱部材を得た。
【0227】
(比較例C1)
比較例C1に係る遮熱部材は、基材(SUS304)上に、近赤外線反射下膜及び近赤外線透過上膜を形成しなかった。
【0228】
(比較例C2)
先ず、カーボンブラック2.12gと、アクリル樹脂11.1gと、酢酸エチル18.9gとを容器中で混合し、得られた混合物を、ペイントシェイカーを用いて、2時間分散処理を実施し、比較例C2に係る混合塗料を得た。
【0229】
比較例C2に係る混合塗料を、基材(SUS304)上にスピンコーター(1000rpm、20s)を用いて塗布し、110℃で1時間乾燥させることにより、比較例C2に係る下膜(膜厚17μm)を形成した。
【0230】
このようにして、比較例C2に係る遮熱部材を得た。なお、比較例C2に係る下膜上には、近赤外線透過上膜を形成しなかった。
【0231】
(比較例C3)
先ず、近赤外反射材料である酸化チタン(TiO)7.6gと、アクリル樹脂11.1gと、酢酸エチル18.9gとを容器中で混合し、得られた混合物を、ペイントシェイカーを用いて、10分間分散処理を実施し、比較例C3に係る混合塗料を得た。
【0232】
比較例C3に係る混合塗料を、基材(SUS304)上に刷毛で塗布し、110℃で1時間乾燥させることにより、比較例C3に係る近赤外線反射下膜(膜厚58μm)を形成した。
【0233】
このようにして、比較例C3に係る遮熱部材を得た。なお、比較例C3に係る近赤外線反射下膜上には、近赤外線透過上膜を形成しなかった。
【0234】
(比較例C4)
先ず、カーボンブラック2.12gと、アクリル樹脂11.1gと、酢酸エチル18.9gとを容器中で混合し、得られた混合物を、ペイントシェイカーを用いて、2時間分散処理を実施し、比較例C4に係る混合塗料を得た。
【0235】
比較例C4に係る混合塗料を、基材(SUS304)上にスピンコーター(1000rpm、20s)を用いて塗布し、110℃で1時間乾燥させることにより、比較例C4に係る下膜(膜厚17μm)を形成した。
【0236】
次に、近赤外透過材料を構成する化合物粒子である実施例8に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)、及びYMn7.6gと、アクリル樹脂11.1gと、酢酸エチル18.9gとを容器中で混合し、得られた混合物を、ペイントシェイカーを用いて、2時間分散処理を実施し、比較例C4に係るYMO塗料を得た。
【0237】
比較例C4に係るYMO塗料を、比較例C4に係る下膜上にスピンコーター(1000rpm、20s)を用いて塗布し、乾燥させることにより、比較例C4に係る近赤外線透過上膜(膜厚14μm)を形成した。
【0238】
このようにして、比較例C4に係る遮熱部材を得た。
【0239】
本発明に係る実施形態の化合物、化合物粒子、近赤外線透過材料、及び近赤外線透過膜について、本発明に関連する以下の実験例によりさらに説明する。但し、以下の実験例は、本発明を限定するものではない。
【0240】
(実験例1)
実験例1に係るマンガン酸化物は、構成元素AがLi、Mg、Alであるマンガン酸リチウム粒子(LMO-MgAl)である。
【0241】
実験例1に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO-MgAl)は、構成元素A(Li、Mg、Al)のモル数が0.625mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が1.625mol、A/(A+Mn)のモル比が0.385、Mn/(A+Mn)のモル比が0.615、及びA/Mnのモル比が0.625であった。
【0242】
具体的には、四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、炭酸リチウム(73.891g/mol)と、酸化マグネシウム(40.304g/mol)と、水酸化アルミニウム(78.000g/mol)とを、モル比でMn:Li:Mg:Al=1.04:0.60:0.004:0.044となるように秤量し、混合して混合原料を得た。
【0243】
得られた混合原料をアルミナ製るつぼに入れ、静置式電気炉を用いて、大気雰囲気下、焼成温度(保持温度)770℃で20時間保持し、その後は常温まで自然冷却して、焼成粉を得た。
【0244】
焼成して得られた焼成粉を乳鉢で解砕し、目開き75μmの篩で分級し、篩下の粉体を実験例1に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO-MgAl)として得た。
【0245】
次に、実験例1に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO-MgAl)20.0gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が80%となるように容器中で混合し、得られた混合物を、ペイントシェーカーを用いて2時間分散処理することにより、実験例1に係る近赤外線透過材料を得た。
【0246】
このようにして得られた実験例1に係る近赤外線透過材料を、PET製のフィルム(東レ株式会社製「ルミラー(登録商標)」:#100-T60)上にバーコーター(No.10)を用いて塗布することにより、塗膜を形成し、実験例1に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0247】
(実験例2)
実験例2に係るマンガン酸化物は、構成元素AがLi、Mg、Alであるマンガン酸リチウム粒子(LMO-MgAl)である。
【0248】
実験例2に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO-MgAl)は、構成元素A(Li、Mg、Al)のモル数が0.625mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が1.625mol、A/(A+Mn)のモル比が0.385、Mn/(A+Mn)のモル比が0.615、及びA/Mnのモル比が0.625であった。
【0249】
実験例2に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO-MgAl)は、(i)混合原料を焼成する焼成温度が570℃であったこと、(ii)後述する粉砕処理を行ったこと以外は、実験例1と同様にして、得られた。
【0250】
実験例2における粉砕処理は、焼成して得られた焼成粉30g、及び純水45gと共に、φ0.8mmジルコニアビーズ100gを100mlのプラスチック容器へ投入し、株式会社セイワ技研製ロッキングシェイカーにて4時間粉砕処理を行った。次に、メッシュを用いて当該ジルコニアビーズを分離した後、小形遠心機(エッペンドルフ・ハイマック・テクノロジーズ株式会社製:CT6E)を用いて固液分離し、乾燥機を用いて固形分を110℃で乾固して、実験例2に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO-MgAl)を得た。
【0251】
実験例2に係る近赤外線透過材料は、実験例1と同様にして、得られた。そして、実験例2に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、バーコーターを用いて2回塗布したこと以外は、実験例1と同様にして、実験例2に係る近赤外線透過膜(膜厚9μm)を得た。
【0252】
(実験例3)
実験例3に係るマンガン酸化物は、構成元素AがLi、Mg、Alであるマンガン酸リチウム粒子(LMO-MgAl)である。
【0253】
実験例3に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO-MgAl)は、構成元素A(Li、Mg、Al)のモル数が0.625mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が1.625mol、A/(A+Mn)のモル比が0.385、Mn/(A+Mn)のモル比が0.615、及びA/Mnのモル比が0.625であった。
【0254】
実験例3に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO-MgAl)は、(i)混合原料を焼成する焼成温度が570℃であったこと、(ii)後述する二段階粉砕処理を行ったこと、(iii)実験例3に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO-MgAl)と、アクリル樹脂及び酢酸エチルを混合する際、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように混合したこと以外は、実験例1と同様にして、得られた。
【0255】
実験例3における二段階粉砕処理は、先ず一段階目の粉砕処理として、実験例2における粉砕処理を行った。次に、二段階目の粉砕処理として、実験例2における粉砕処理を行って得られた乾燥粉30g、及び純水45gと共に、φ0.2mmジルコニアビーズ100gを100mlのプラスチック容器へ投入し、株式会社セイワ技研製ロッキングシェイカーにて4時間粉砕処理を行った。次に、メッシュを用いて当該ジルコニアビーズを分離した後、小形遠心機(エッペンドルフ・ハイマック・テクノロジーズ株式会社製:CT6E)を用いて固液分離し、乾燥機を用いて固形分を110℃で乾固して、実験例3に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO-MgAl)を得た。
【0256】
実験例3に係る近赤外線透過材料は、実験例1と同様にして、得られた。そして、実験例3に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実験例1と同様にして、実験例3に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0257】
(実験例4)
実験例4に係るマンガン酸化物は、構成元素AがNaであるマンガン酸ナトリウム粒子(NaMnO)である。
【0258】
実験例4に係るマンガン酸ナトリウム粒子(NaMnO)は、構成元素A(Na)のモル数が0.5mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が1.5mol、A/(A+Mn)のモル比が0.3、Mn/(A+Mn)のモル比が0.7、及びA/Mnのモル比が0.5であった。
【0259】
実験例4に係るマンガン酸ナトリウム粒子(NaMnO)は、四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、炭酸ナトリウム(105.99g/mol)とを、モル比でMn:Na=1.00:0.50となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0260】
次に、実験例4に係る近赤外線透過材料は、実験例4に係るマンガン酸ナトリウム粒子(NaMnO)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が80%となるように容器中で混合したこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0261】
そして、実験例4に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実験例1と同様にして、実験例4に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0262】
(実験例5)
実験例5に係るマンガン酸化物は、構成元素AがCaであるマンガン酸カルシウム粒子(CaMnO)である。
【0263】
実験例5に係るマンガン酸カルシウム粒子(CaMnO)は、構成元素A(Ca)のモル数が0.5mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が1.5mol、A/(A+Mn)のモル比が0.3、Mn/(A+Mn)のモル比が0.7、A/Mnのモル比が0.5であった。
【0264】
実験例5に係るマンガン酸カルシウム粒子(CaMnO)は、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、炭酸カルシウム(100.09g/mol)とを、モル比でMn:Ca=1.00:0.50となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1000℃であったこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0265】
次に、実験例5に係る近赤外線透過材料は、実験例5に係るマンガン酸カルシウム粒子(CaMnO)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が80%となるように容器中で混合したこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0266】
そして、実験例5に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実験例1と同様にして、実験例5に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0267】
(実験例6)
実験例6に係るマンガン酸化物は、構成元素AがSrであるマンガン酸ストロンチウム粒子(SrMnO)である。
【0268】
実験例6に係るマンガン酸ストロンチウム粒子(SrMnO)は、構成元素A(Sr)のモル数が0.5mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が1.5mol、A/(A+Mn)のモル比が0.3、Mn/(A+Mn)のモル比が0.7、及びA/Mnのモル比が0.5であった。
【0269】
実験例6に係るマンガン酸ストロンチウム粒子(SrMnO)は、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、炭酸ストロンチウム(147.63g/mol)とを、モル比でMn:Sr=1.00:0.50となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1000℃であったこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0270】
次に、実験例6に係る近赤外線透過材料は、実験例6に係るマンガン酸ストロンチウム粒子(SrMnO)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が80%となるように容器中で混合したこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0271】
そして、実験例6に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実験例1と同様にして、実験例6に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0272】
(実験例7)
実験例7に係るマンガン酸化物は、構成元素AがBaであるマンガン酸バリウム粒子(BaMnO)である。
【0273】
実験例7に係るマンガン酸バリウム粒子(BaMnO)は、構成元素A(Ba)のモル数が0.5mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が1.5mol、A/(A+Mn)のモル比が0.3、Mn/(A+Mn)のモル比が0.7、A/Mnのモル比が0.5であった。
【0274】
実験例7に係るマンガン酸バリウム粒子(BaMnO)は、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、炭酸バリウム(197.34g/mol)とを、モル比でMn:Ba=1.00:0.50となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1000℃であったこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0275】
次に、実験例7に係る近赤外線透過材料は、実験例7に係るマンガン酸バリウム粒子(BaMnO)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が80%となるように容器中で混合したこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0276】
そして、実験例7に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実験例1と同様にして、実験例7に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0277】
(実験例8)
実験例8に係るマンガン酸化物は、構成元素AがYであるマンガン酸イットリウム粒子(YMO)である。
【0278】
実験例8に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)は、構成元素A(Y)のモル数が0.5mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が1.5mol、A/(A+Mn)のモル比が0.3、Mn/(A+Mn)のモル比が0.7、及びA/Mnのモル比が0.5であった。
【0279】
実験例8に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)は、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、酸化イットリウム(225.81g/mol)とを、モル比でMn:Y=1.00:0.50となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1000℃であったこと、(iii)実験例2の粉砕処理を行ったこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0280】
次に、実験例8に係る近赤外線透過材料は、実験例8に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が80%となるように容器中で混合したこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0281】
そして、実験例8に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実験例1と同様にして、実験例8に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0282】
(実験例9)
実験例9に係るマンガン酸化物は、構成元素AがBiであるマンガン酸ビスマス粒子(BiMnO)である。
【0283】
実験例9に係るマンガン酸ビスマス粒子(BiMnO)は、構成元素A(Bi)のモル数が0.5mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が1.5mol、A/(A+Mn)のモル比が0.3、Mn/(A+Mn)のモル比が0.7、及びA/Mnのモル比が0.5であった。
【0284】
実験例9に係るマンガン酸ビスマス粒子(BiMnO)は、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、塩基性炭酸ビスマス(509.97g/mol)とを、モル比でMn:Bi=1.00:0.50となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が800℃であったこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0285】
次に、実験例9に係る近赤外線透過材料は、実験例9に係るマンガン酸ビスマス粒子(BiMnO)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が80%となるように容器中で混合したこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0286】
そして、実験例9に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実験例1と同様にして、実験例9に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0287】
(実験例10)
実験例10に係るマンガン酸化物は、構成元素AがYであるマンガン酸イットリウム粒子(YMnO)である。
【0288】
実験例10に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)は、構成元素A(Y)のモル数が1mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が2mol、A/(A+Mn)のモル比が0.5、Mn/(A+Mn)のモル比が0.5、A/Mnのモル比が1.0であった。
【0289】
実験例10に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMnO)は、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、酸化イットリウム(225.81g/mol)とを、モル比でMn:Y=1.00:1.00となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1200℃であったこと、(iii)実験例2の粉砕処理を行ったこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0290】
次に、実験例10に係る近赤外線透過材料は、実験例10に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMnO)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように容器中で混合したこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0291】
そして、実験例10に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実験例1と同様にして、実験例10に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0292】
(実験例11)
実験例11に係るマンガン酸化物は、構成元素AがLaであるマンガン酸ランタン粒子(LaMnO)である。
【0293】
実験例11に係るマンガン酸ランタン粒子(LaMnO)は、構成元素A(La)のモル数が1mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が2mol、A/(A+Mn)のモル比が0.5、Mn/(A+Mn)のモル比が0.5、及びA/Mnのモル比が1.0であった。
【0294】
実験例11に係るマンガン酸ランタン粒子(LaMnO)は、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、炭酸ランタン(457.84g/mol)とを、モル比でMn:La=1.00:1.00となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1200℃であったこと、(iii)実験例2の粉砕処理を行ったこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0295】
次に、実験例11に係る近赤外線透過材料は、実験例11に係るマンガン酸ランタン粒子(LaMnO)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように容器中で混合したこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0296】
そして、実験例11に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実験例1と同様にして、実験例11に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0297】
(実験例12)
実験例12に係るマンガン酸化物は、構成元素AがPrであるマンガン酸プラセオジム粒子(PrMnO)である。
【0298】
実験例12に係るマンガン酸プラセオジム粒子(PrMnO)は、構成元素A(Pr)のモル数が1mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が2mol、A/(A+Mn)のモル比が0.5、Mn/(A+Mn)のモル比が0.5、A/Mnのモル比が1.0であった。
【0299】
実験例12に係るマンガン酸プラセオジム粒子(PrMnO)は、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、酸化プラセオジム(1021.44g/mol)とを、モル比でMn:Pr=1.00:1.00となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1200℃であったこと、(iii)実験例2の粉砕処理を行ったこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0300】
次に、実験例12に係る近赤外線透過材料は、実験例12に係るマンガン酸プラセオジム粒子(PrMnO)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように容器中で混合したこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0301】
そして、実験例12に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実験例1と同様にして、実験例12に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0302】
(実験例13)
実験例13に係るマンガン酸化物は、構成元素AがNdであるマンガン酸ネオジム粒子(NdMnO)である。
【0303】
実験例13に係るマンガン酸ネオジム粒子(NdMnO)は、構成元素A(Nd)のモル数が1mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が2mol、A/(A+Mn)のモル比が0.5、Mn/(A+Mn)のモル比が0.5、A/Mnのモル比が1.0であった。
【0304】
実験例13に係るマンガン酸ネオジム粒子(NdMnO)は、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、炭酸ネオジム八水和物(612.62g/mol)とを、モル比でMn:Nd=1.00:1.00となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1200℃であったこと、(iii)実験例2の粉砕処理を行ったこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0305】
次に、実験例13に係る近赤外線透過材料は、実験例13に係るマンガン酸ネオジム粒子(NdMnO)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように容器中で混合したこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0306】
そして、実験例13に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実験例1と同様にして、実験例13に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0307】
(実験例14)
実験例14に係るマンガン酸化物は、構成元素AがFeであるマンガン酸鉄粒子(FeMnO)である。
【0308】
実験例14に係るマンガン酸鉄粒子(FeMnO)は、構成元素A(Fe)のモル数が2mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が3mol、A/(A+Mn)のモル比が0.7、Mn/(A+Mn)のモル比が0.3、及びA/Mnのモル比が2.0であった。
【0309】
実験例14に係るマンガン酸鉄粒子(FeMnO)は、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、酸化鉄(III)(159.69g/mol)とを、モル比でMn:Fe=0.50:1.00となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1200℃であったこと、(iii)実験例2の粉砕処理を行ったこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0310】
次に、実験例14に係る近赤外線透過材料は、実験例14に係るマンガン酸鉄粒子(FeMnO)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように容器中で混合したこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0311】
そして、実験例14に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実験例1と同様にして、実験例14に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0312】
(実験例15)
実験例15に係るマンガン酸化物は、構成元素AがLiであるマンガン酸リチウム粒子(LMO)である。
【0313】
実験例15に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO)は、構成元素A(Li)のモル数が0.001mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が1.001mol、A/(A+Mn)のモル比が0.001、Mn/(A+Mn)のモル比が0.999、及びA/Mnのモル比が0.001であった。
【0314】
実験例15に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO)は、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、炭酸リチウム(73.891g/mol)とを、モル比でMn:Li=1.00:0.001となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が620℃で24時間焼成したこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0315】
次に、実験例15に係る近赤外線透過材料は、実験例1と同様にして、得られた。そして、実験例15に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実験例1と同様にして、実験例15に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0316】
(実験例16)
実験例16に係るマンガン酸化物は、構成元素AがLiであるマンガン酸リチウム粒子(LMO)である。
【0317】
実験例16に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO)は、構成元素A(Li)のモル数が0.012mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が1.012mol、A/(A+Mn)のモル比が0.012、Mn/(A+Mn)のモル比が0.988、A/Mnのモル比が0.012であった。
【0318】
実験例16に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO)は、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、炭酸リチウム(73.891g/mol)とを、モル比でMn:Li=1.00:0.012となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が620℃で24時間焼成したこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0319】
次に、実験例16に係る近赤外線透過材料は、実験例1と同様にして、得られた。そして、実験例16に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実験例1と同様にして、実験例16に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0320】
(実験例17)
実験例17に係るマンガン酸化物は、構成元素AがLiであるマンガン酸リチウム粒子(LMO)である。
【0321】
実験例17に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO)は、構成元素A(Li)のモル数が0.1mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が1.1mol、A/(A+Mn)のモル比が0.09、Mn/(A+Mn)のモル比が0.91、A/Mnのモル比が0.1であった。
【0322】
実験例17に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO)は、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、炭酸リチウム(73.891g/mol)とを、モル比でMn:Li=1.00:0.10となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が620℃で24時間焼成したこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0323】
次に、実験例17に係る近赤外線透過材料は、実験例1と同様にして、得られた。そして、実験例17に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実験例1と同様にして、実験例17に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0324】
(実験例18)
実験例18に係るマンガン酸化物は、構成元素AがLiであるマンガン酸リチウム粒子(LMO)である。
【0325】
実験例18に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO)は、構成元素A(Li)のモル数が0.5mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が1.5mol、A/(A+Mn)のモル比が0.33、Mn/(A+Mn)のモル比が0.67、A/Mnのモル比が0.5であった。
【0326】
実験例18に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO)は、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、炭酸リチウム(73.891g/mol)とを、モル比でMn:Li=1.00:0.50となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が620℃で24時間焼成したこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0327】
次に、実験例18に係る近赤外線透過材料は、実験例1と同様にして、得られた。そして、実験例18に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実験例1と同様にして、実験例18に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0328】
(実験例19)
実験例19に係るマンガン酸化物は、構成元素AがLiであるマンガン酸リチウム粒子(LMO)である。
【0329】
実験例19に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO)は、構成元素A(Li)のモル数が1mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が2mol、A/(A+Mn)のモル比が0.50、Mn/(A+Mn)のモル比が0.50、A/Mnのモル比が1であった。
【0330】
実験例19に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO)は、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、炭酸リチウム(73.891g/mol)とを、モル比でMn:Li=1.00:1.00となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が620℃で24時間焼成したこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0331】
次に、実験例19に係る近赤外線透過材料は、実験例1と同様にして、得られた。そして、実験例19に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実験例1と同様にして、実験例19に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0332】
(実験例20)
実験例20に係るマンガン酸化物は、構成元素AがLiであるマンガン酸リチウム粒子(LMO)である。
【0333】
実験例20に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO)は、構成元素A(Li)のモル数が1.5mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が2.5mol、A/(A+Mn)のモル比が0.60、Mn/(A+Mn)のモル比が0.40、A/Mnのモル比が1.5であった。
【0334】
実験例20に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO)は、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、炭酸リチウム(73.891g/mol)とを、モル比でMn:Li=1.00:1.50となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が620℃で24時間焼成したこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0335】
次に、実験例20に係る近赤外線透過材料は、実験例1と同様にして、得られた。そして、実験例20に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実験例1と同様にして、実験例20に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0336】
(実験例21)
実験例21に係るマンガン酸化物は、構成元素AがYであるマンガン酸イットリウム粒子(YMO)である。
【0337】
実験例21に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)は、構成元素A(Y)のモル数が0.1mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が1.1mol、A/(A+Mn)のモル比が0.1、Mn/(A+Mn)のモル比が0.9、及びA/Mnのモル比が0.1であった。
【0338】
実験例21に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)は、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、酸化イットリウム(225.81g/mol)とを、モル比でMn:Y=1.00:0.10となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1200℃であったこと、(iii)実験例3の二段階粉砕処理を行ったこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0339】
次に、実験例21に係る近赤外線透過材料は、実験例21に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように容器中で混合したこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0340】
そして、実験例21に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実験例1と同様にして、実験例21に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0341】
(実験例22)
実験例22に係るマンガン酸化物は、構成元素AがYであるマンガン酸イットリウム粒子(YMO)である。
【0342】
実験例22に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)は、構成元素A(Y)のモル数が0.4mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が1.4mol、A/(A+Mn)のモル比が0.3、Mn/(A+Mn)のモル比が0.7、及びA/Mnのモル比が0.4であった。
【0343】
実験例22に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)は、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、酸化イットリウム(225.81g/mol)とを、モル比でMn:Y=1.00:0.40となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1200℃であったこと、(iii)実験例3の二段階粉砕処理を行ったこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0344】
次に、実験例22に係る近赤外線透過材料は、実験例22に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように容器中で混合したこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0345】
そして、実験例22に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実験例1と同様にして、実験例22に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0346】
(実験例23)
実験例23に係るマンガン酸化物は、構成元素AがYであるマンガン酸イットリウム粒子(YMO)である。
【0347】
実験例23に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)は、構成元素A(Y)のモル数が0.5mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が1.5mol、A/(A+Mn)のモル比が0.3、Mn/(A+Mn)のモル比が0.7、及びA/Mnのモル比が0.5であった。
【0348】
実験例23に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)は、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、酸化イットリウム(225.81g/mol)とを、モル比でMn:Y=1.00:0.50となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1200℃であったこと、(iii)実験例3の二段階粉砕処理を行ったこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0349】
次に、実験例23に係る近赤外線透過材料は、実験例23に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように容器中で混合したこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0350】
そして、実験例23に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実験例1と同様にして、実験例23に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0351】
(実験例24)
実験例24に係るマンガン酸化物は、構成元素AがYであるマンガン酸イットリウム粒子(YMO)である。
【0352】
実験例24に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)は、構成元素A(Y)のモル数が0.6mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が1.6mol、A/(A+Mn)のモル比が0.4、Mn/(A+Mn)のモル比が0.6、及びA/Mnのモル比が0.6であった。
【0353】
実験例24に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)は、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、酸化イットリウム(225.81g/mol)とを、モル比でMn:Y=1.00:0.60となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1200℃であったこと、(iii)実験例3の二段階粉砕処理を行ったこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0354】
次に、実験例24に係る近赤外線透過材料は、実験例24に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように容器中で混合したこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0355】
そして、実験例24に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実験例1と同様にして、実験例24に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0356】
(実験例25)
実験例25に係るマンガン酸化物は、構成元素AがYであるマンガン酸イットリウム粒子(YMO)である。
【0357】
実験例25に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)は、構成元素A(Y)のモル数が0.75mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が1.75mol、A/(A+Mn)のモル比が0.43、Mn/(A+Mn)のモル比が0.57、A/Mnのモル比が0.75であった。
【0358】
実験例25に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)は、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、酸化イットリウム(225.81g/mol)とを、モル比でMn:Y=1.00:0.75となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1200℃であったこと、(iii)実験例3の二段階粉砕処理を行ったこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0359】
次に、実験例25に係る近赤外線透過材料は、実験例25に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように容器中で混合したこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0360】
そして、実験例25に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実験例1と同様にして、実験例25に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0361】
(実験例26)
実験例26に係るマンガン酸化物は、構成元素AがYであるマンガン酸イットリウム粒子(YMO)である。
【0362】
実験例26に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)は、構成元素A(Y)のモル数が1mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が2mol、A/(A+Mn)のモル比が0.5、Mn/(A+Mn)のモル比が0.5、A/Mnのモル比が1.0であった。
【0363】
実験例26に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)は、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、酸化イットリウム(225.81g/mol)とを、モル比でMn:Y=1.00:1.00となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1200℃であったこと、(iii)実験例3の二段階粉砕処理を行ったこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0364】
次に、実験例26に係る近赤外線透過材料は、実験例26に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように容器中で混合したこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0365】
そして、実験例26に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実験例1と同様にして、実験例26に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0366】
(実験例27)
実験例27に係るマンガン酸化物は、構成元素AがLi、Tiであるマンガン酸リチウム粒子(LMO-Ti)である。
【0367】
実験例27に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO-Ti)は、構成元素A(Li、Ti)のモル数が1.1mol、Mnのモル数が1.9mol、A+Mnのモル数が3mol、A/(A+Mn)のモル比が0.4、Mn/(A+Mn)のモル比が0.6、A/Mnのモル比が0.58であった。
【0368】
実験例27に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO-Ti)は、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、炭酸リチウム(73.891g/mol)と、酸化チタン(79.87g/mol)とを、モル比でMn:Li:Ti:=1.90:1.00:0.10となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1000℃であったこと、(iii)実験例2の粉砕処理を行ったこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0369】
次に、実験例27に係る近赤外線透過材料は、実験例1と同様にして、得られた。そして、実験例27に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実験例1と同様にして、実験例27に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0370】
(実験例28)
実験例28に係るマンガン酸化物は、構成元素AがLi、Tiであるマンガン酸リチウム粒子(LMO-Ti)である。
【0371】
実験例28に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO-Ti)は、構成元素A(Li、Ti)のモル数が1.5mol、Mnのモル数が1.5mol、A+Mnのモル数が3mol、A/(A+Mn)のモル比が0.5、Mn/(A+Mn)のモル比が0.5、A/Mnのモル比が1.00であった。
【0372】
実験例28に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO-Ti)は、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、炭酸リチウム(73.891g/mol)と、酸化チタン(79.87g/mol)とを、モル比でMn:Li:Ti:=1.50:1.00:0.50となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1000℃であったこと、(iii)実験例2の粉砕処理を行ったこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0373】
次に、実験例28に係る近赤外線透過材料は、実験例1と同様にして、得られた。そして、実験例28に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実験例1と同様にして、実験例28に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0374】
(実験例29)
実験例29に係るマンガン酸化物は、構成元素AがLi、Yであるマンガン酸リチウム粒子(LMO-Y)である。
【0375】
実験例29に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO-Y)は、構成元素A(Li、Y)のモル数が1.1mol、Mnのモル数が1.9mol、A+Mnのモル数が3mol、A/(A+Mn)のモル比が0.4、Mn/(A+Mn)のモル比が0.6、及びA/Mnのモル比が0.58であった。
【0376】
実験例29に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO-Y)は、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、炭酸リチウム(73.891g/mol)と、酸化イットリウム(225.81g/mol)とを、モル比でMn:Li:Y=1.90:1.00:0.10となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1000℃であったこと、(iii)実験例2の粉砕処理を行ったこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0377】
次に、実験例29に係る近赤外線透過材料は、実験例1と同様にして、得られた。そして、実験例29に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実験例1と同様にして、実験例29に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0378】
(実験例30)
実験例30に係るマンガン酸化物は、構成元素AがLi、Yであるマンガン酸リチウム粒子(LMO-Y)である。
【0379】
実験例30に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO-Y)は、構成元素A(Li、Y)のモル数が1.5mol、Mnのモル数が1.5mol、A+Mnのモル数が3mol、A/(A+Mn)のモル比が0.5、Mn/(A+Mn)のモル比が0.5、及びA/Mnのモル比が1.00であった。
【0380】
実験例30に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO-Y)は、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、炭酸リチウム(73.891g/mol)と、酸化イットリウム(225.81g/mol)とを、モル比でMn:Li:Y=1.50:1.00:0.50となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1000℃であったこと、(iii)実験例2の粉砕処理を行ったこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0381】
次に、実験例30に係る近赤外線透過材料は、実験例1と同様にして、得られた。そして、実験例30に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実験例1と同様にして、実験例30に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0382】
(実験例31)
実験例31に係るマンガン酸化物は、構成元素AがY、Tiであるマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Ti)である。
【0383】
実験例31に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Ti)は、構成元素A(Y、Ti)のモル数が1.1mol、Mnのモル数が0.9mol、A+Mnのモル数が2mol、A/(A+Mn)のモル比が0.55、Mn/(A+Mn)のモル比が0.45、及びA/Mnのモル比が1.22であった。
【0384】
実験例31に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Ti)は、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、酸化イットリウム(225.81g/mol):1molと、酸化チタン(79.87g/mol)とを、モル比でMn:Y:Ti=0.90:1.00:0.1となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1200℃であったこと、(iii)実験例2の粉砕処理を行ったこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0385】
次に、実験例31に係る近赤外線透過材料は、実験例31に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Ti)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように容器中で混合したこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0386】
そして、実験例31に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実験例1と同様にして、実験例31に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0387】
(実験例32)
実験例32に係るマンガン酸化物は、構成元素AがY、Tiであるマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Ti)である。
【0388】
実験例32に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Ti)は、構成元素A(Y、Ti)のモル数が1.3mol、Mnのモル数が0.7mol、A+Mnのモル数が2mol、A/(A+Mn)のモル比が0.65、Mn/(A+Mn)のモル比が0.35、及びA/Mnのモル比が1.86であった。
【0389】
実験例32に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Ti)は、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、炭酸リチウム(73.891g/mol)と、酸化イットリウム(225.81g/mol)とを、モル比でMn:Li:Y=1.70:1.00:0.30となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1200℃であったこと、(iii)実験例2の粉砕処理を行ったこと以外、実験例1と同様にして、が得られた。
【0390】
次に、実験例32に係る近赤外線透過材料は、実験例32に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Ti)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように容器中で混合したこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0391】
そして、実験例32に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実験例1と同様にして、実験例32に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0392】
(実験例33)
実験例33に係るマンガン酸化物は、構成元素AがY、Tiであるマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Ti)である。
【0393】
実験例33に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Ti)は、構成元素A(Y、Ti)のモル数が1mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が2mol、A/(A+Mn)のモル比が0.5、Mn/(A+Mn)のモル比が0.5、及びA/Mnのモル比が1.00であった。
【0394】
実験例33に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Ti)は、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、炭酸リチウム(73.891g/mol)と、酸化イットリウム(225.81g/mol)とを、モル比でMn:Li:Y=1.00:0.90:0.10となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1200℃であったこと、(iii)実験例2の粉砕処理を行ったこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0395】
次に、実験例33に係る近赤外線透過材料は、実験例33に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Ti)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように容器中で混合したこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0396】
そして、実験例33に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実験例1と同様にして、実験例33に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0397】
(実験例34)
実験例34に係るマンガン酸化物は、構成元素AがY、Tiであるマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Ti)である。
【0398】
実験例34に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Ti)は、構成元素A(Y、Ti)のモル数が1mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が2mol、A/(A+Mn)のモル比が0.5、Mn/(A+Mn)のモル比が0.5、A/Mnのモル比が1.00であった。
【0399】
実験例34に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Ti)は、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、炭酸リチウム(73.891g/mol)と、酸化イットリウム(225.81g/mol)とを、モル比でMn:Li:Y=1.00:0.70:0.30となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1200℃であったこと、(iii)実験例2の粉砕処理を行ったこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0400】
次に、実験例34に係る近赤外線透過材料は、実験例34に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Ti)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように容器中で混合したこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0401】
そして、実験例34に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実験例1と同様にして、実験例34に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0402】
(実験例35)
実験例35に係るマンガン酸化物は、構成元素AがY、Znであるマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Zn)である。
【0403】
実験例35に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Zn)は、構成元素A(Y、Zn)のモル数が1mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が2mol、A/(A+Mn)のモル比が0.5、Mn/(A+Mn)のモル比が0.5、及びA/Mnのモル比が1.00であった。
【0404】
実験例35に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Zn)は、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、酸化イットリウム(225.81g/mol)と、酸化亜鉛(81.41g/mol)とを、モル比でMn:Y:Zn=1.00:0.90:0.10となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1200℃であったこと、(iii)実験例2の粉砕処理を行ったこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0405】
次に、実験例35に係る近赤外線透過材料は、実験例35に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Zn)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように容器中で混合したこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0406】
そして、実験例35に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実験例1と同様にして、実験例35に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0407】
(実験例36)
実験例36に係るマンガン酸化物は、構成元素AがY、Znであるマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Zn)である。
【0408】
実験例36に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Zn)は、構成元素A(Y、Zn)のモル数が1mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が2mol、A/(A+Mn)のモル比が0.5、Mn/(A+Mn)のモル比が0.5、及びA/Mnのモル比が1.00であった。
【0409】
実験例36に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Zn)は、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、酸化イットリウム(225.81g/mol)と、酸化亜鉛(81.41g/mol)とを、モル比でMn:Y:Zn=1.00:0.90:0.10となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1200℃であったこと、(iii)実験例3の二段階粉砕処理を行ったこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0410】
次に、実験例36に係る近赤外線透過材料は、実験例36に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Zn)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように容器中で混合したこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0411】
そして、実験例36に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実験例1と同様にして、実験例36に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0412】
(実験例37)
実験例37に係る構成元素AがY、Znであるマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Zn)である。
【0413】
実験例37に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Zn)は、構成元素A(Y、Zn)のモル数が1mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が2mol、A/(A+Mn)のモル比が0.5、Mn/(A+Mn)のモル比が0.5、及びA/Mnのモル比が1.00であった。
【0414】
実験例37に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Zn)は、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、酸化イットリウム(225.81g/mol)と、酸化亜鉛(81.41g/mol)とを、モル比でMn:Y:Zn=1.00:0.95:0.05となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1200℃であったこと、(iii)実験例3の二段階粉砕処理を行ったこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0415】
次に、実験例37に係る近赤外線透過材料は、実験例37に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Zn)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように容器中で混合したこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0416】
そして、実験例37に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実験例1と同様にして、実験例37に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0417】
(実験例38)
実験例38に係る構成元素AがY、Znであるマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Zn)である。
【0418】
実験例38に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Zn)は、構成元素A(Y、Zn)のモル数が1mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が2mol、A/(A+Mn)のモル比が0.5、Mn/(A+Mn)のモル比が0.5、及びA/Mnのモル比が1.00であった。
【0419】
実験例38に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Zn)は、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、酸化イットリウム(225.81g/mol)と、酸化亜鉛(81.41g/mol)とを、モル比でMn:Y:Zn=1.00:0.70:0.30となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が1200℃であったこと、(iii)実験例3の二段階粉砕処理を行ったこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0420】
次に、実験例38に係る近赤外線透過材料は、実験例38に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-Zn)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように容器中で混合したこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0421】
そして、実験例38に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実験例1と同様にして、実験例38に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0422】
(実験例39)
実験例39に係るマンガン酸化物は、構成元素AがY、Ca、Al、Ti、Fe、Zn、Biであるマンガン酸イットリウム粒子(YMO-CaAlTiFeZnBi)である。
【0423】
実験例39に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-CaAlTiFeZnBi)は、構成元素A(Y、Ca、Al、Ti、Fe、Zn、Bi)のモル数が1mol、Mnのモル数が1mol、A+Mnのモル数が2mol、A/(A+Mn)のモル比が0.5、Mn/(A+Mn)のモル比が0.5、及びA/Mnのモル比が1.00であった。
【0424】
実験例39に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-CaAlTiFeZnBi)は、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、酸化イットリウム(225.81g/mol)と、炭酸カルシウム(100.09g/mol)と、水酸化アルミニウム(78.00g/mol)と、酸化チタン(79.87g/mol)と、酸化鉄(159.69g/mol)と、酸化亜鉛(81.41g/mol)と、塩基性炭酸ビスマス(509.97g/mol)とを、モル比でMn:Y:Ca:Al:Ti:Fe:Zn:Bi=1.00:0.94:0.01:0.01:0.01:0.01:0.01:0.01となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が800℃で15時間焼成したこと、(iii)実験例2の粉砕処理を行ったこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0425】
次に、実験例39に係る近赤外線透過材料は、実験例39に係るマンガン酸イットリウム粒子(YMO-CaAlTiFeZnBi)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように容器中で混合したこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0426】
そして、実験例39に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実験例1と同様にして、実験例39に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0427】
(実験例40)
実験例40に係るマンガン酸化物は、構成元素AがLi、Ca、Al、Ti、Fe、Zn、Biであるマンガン酸リチウム粒子(LMO-CaAlTiFeZnBi)である。
【0428】
実験例40に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO-CaAlTiFeZnBi)は、構成元素A(Li、Ca、Al、Ti、Fe、Zn、Bi)のモル数が1mol、Mnのモル数が2mol、A+Mnのモル数が3mol、A/(A+Mn)のモル比が0.33、Mn/(A+Mn)のモル比が0.67、A/Mnのモル比が0.5であった。
【0429】
実験例40に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO-CaAlTiFeZnBi)は、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、炭酸リチウム(73.891g/mol)と、炭酸カルシウム(100.09g/mol)と、水酸化アルミニウム(78.00g/mol)と、酸化チタン(79.87g/mol)と、酸化鉄(159.69g/mol)と、酸化亜鉛(81.41g/mol)と、塩基性炭酸ビスマス(509.97g/mol)とを、モル比でMn:Li:Ca:Al:Ti:Fe:Zn:Bi=1.00:0.94:0.01:0.01:0.01:0.01:0.01:0.01となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が800℃で15時間焼成したこと、(iii)実験例2の粉砕処理を行ったこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0430】
次に、実験例40に係る近赤外線透過材料は、実験例40に係るマンガン酸リチウム粒子(LMO-CaAlTiFeZnBi)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように容器中で混合したこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0431】
そして、実験例40に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実験例1と同様にして、実験例40に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0432】
(実験例41)
実験例41に係るマンガン酸化物は、構成元素AがLi、Y、Ca、Al、Ti、Fe、Zn、Biであるマンガン酸リチウムイットリウム粒子(LYMO-CaAlTiFeZnBi)である。
【0433】
実験例41に係るマンガン酸リチウムイットリウム粒子(LYMO-CaAlTiFeZnBi)は、構成元素A(Li、Y、Ca、Al、Ti、Fe、Zn、Bi)のモル数が1.06mol、Mnのモル数が0.94mol、A+Mnのモル数が2mol、A/(A+Mn)のモル比が0.53、Mn/(A+Mn)のモル比が0.47、及びA/Mnのモル比が1.13であった。
【0434】
実験例41に係るマンガン酸リチウムイットリウム粒子(LYMO-CaAlTiFeZnBi)は、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)と、炭酸リチウム(73.891g/mol)と、酸化イットリウム(225.81g/mol)と、炭酸カルシウム(100.09g/mol)と、水酸化アルミニウム(78.00g/mol)と、酸化チタン(79.87g/mol)と、酸化鉄(159.69g/mol)と、酸化亜鉛(81.41g/mol)と、塩基性炭酸ビスマス(509.97g/mol)とを、モル比でMn:Li:Y:Ca:Al:Ti:Fe:Zn:Bi=0.94:0.50:0.50:0.01:0.01:0.01:0.01:0.01:0.01となるように秤量し、混合して混合原料を得たこと、(ii)混合原料を焼成する焼成温度が800℃で15時間焼成したこと、(iii)実験例2の粉砕処理を行ったこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0435】
次に、実験例41に係る近赤外線透過材料は、実験例41に係るマンガン酸リチウムイットリウム粒子(LYMO-CaAlTiFeZnBi)7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように容器中で混合したこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0436】
そして、実験例41に係る近赤外線透過材料の塗膜の形成は、実験例1と同様にして、実験例41に係る近赤外線透過膜(膜厚5μm)を得た。
【0437】
(比較例3)
比較例3は、四三酸化マンガンのみからなる酸化マンガン混合物である。
【0438】
比較例3に係るマンガン酸粒子のMnのモル数が1molと、A+Mnのモル数が1molと、A/(A+Mn)のモル比が0.0と、Mn/(A+Mn)のモル比が1.0と、A/Mnのモル比が0.0であった。
【0439】
比較例3に係るマンガン酸粒子は、(i)四三酸化マンガン(228.81g/mol)のみからなること、(ii)原料を焼成する焼成温度が1200℃であったこと、(iii)実験例3の二段階粉砕処理を行ったこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0440】
次に、比較例3に係る酸化マンガン混合物は、比較例3に係るマンガン酸粒子7.6gと、アクリル樹脂(三菱レーヨン製:ダイヤナールLR167)11.1gと、酢酸エチル18.9gとを用い、固形分換算顔料濃度(PWC)が60%となるように容器中で混合したこと以外、実験例1と同様にして、得られた。
【0441】
そして、比較例3に係る酸化マンガン混合物の塗膜の形成は、実験例1と同様にして、比較例3に係る酸化マンガン混合物膜(膜厚5μm)を得た。
【0442】
そして、実施例1~8に係る近赤外線透過材料、実験例1~41に係る近赤外線透過材料、比較例1に係る酸化チタン混合物、比較例2に係るカーボンブラック混合物、及び比較例3に係る酸化マンガン混合物について、次のような物性を測定した。以下、測定した物性値、及びその物性値の測定方法を示すとともに、測定結果を図1~18に示す。
【0443】
〈元素分析〉
実施例1~8、又は実験例1~41に係る近赤外線透過材料に含まれる化合物粒子、又はマンガン酸化物粒子の組成(原子比)は、マルチタイプ ICP 発光分光分析装置であるICP-OES(Inductivity Coupled Plasma Optical Emission Spectrometry)を用いて分析した。分析に用いたICP-OES装置として、アジレント・テクノロジー株式会社製ICP-OES(700シリーズ)を用いた。
【0444】
〈レーザ回折・散乱法〉
粒子の粒度分布の評価は、レーザ回折・散乱法粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製:MT3300EXII)を用いて、JIS Z 8825:2013に準じたレーザ回折・散乱法により行った。また、フィルタリングは行なわず、試料を、超音波出力40Wで、3分間に亘って超音波処理をした後、測定した。ここで、実施例1~8、又は実験例1~41に係る近赤外線透過材料は、近赤外線透過材料用粒子である化合物粒子、又はマンガン酸化物粒子と分散体とが混合されており、そのままでは粒度分布の評価を行うことができないため、分散体と混合される前の化合物粒子、又はマンガン酸化物粒子を用いて、粒度分布の評価を行った。なお、D50は体積分率にして50%に至る粒子径を示す。
【0445】
具体的には、スラリー状の試料を、測定装置に設けられた試料循環器の試料投入口に、当該測定装置が測定可能範囲内であると判定するまで投入した後、当該測定装置内蔵の超音波分散処理(超音波出力40W、3分間)を行い、表示が安定したことを確認後、測定を行った。他方、比較例1に係る酸化チタン混合物、比較例2に係るカーボンブラック混合物、及び比較例3に係る酸化マンガン混合物も同様に測定した。
【0446】
〈粒子径測定〉
実施例1~8、又は実験例1~41に係る近赤外線透過材料に含まれる化合物粒子、又はマンガン酸化物粒子の一次、二次粒子径の平均値の測定は、電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)(株式会社日立ハイテクサイエンス製:S-4800)にて撮影された粒子画像を解析して算出した。
【0447】
具体的には、20個の一次、二次粒子の水平フェレ径を測定し、その個数平均値を二次粒子径の平均値とした。実施例1~8、又は実験例1~41に係る近赤外線透過材料は、近赤外線透過材料用粒子である化合物粒子、又はマンガン酸化物粒子と分散体とが混合されたものであることから、分散体と混合される前の化合物粒子、又はマンガン酸化物粒子を、加速電圧1kVの条件下で、SEM観察し、FE-SEMを用いて直接測定した。他方、比較例1に係る酸化チタン混合物、比較例2に係るカーボンブラック混合物、及び比較例3に係る酸化マンガン混合物も同様に測定した。
【0448】
〈比表面積(SSA)〉
比表面積(SSA)は、株式会社マウンテック製の「Macsorb(HM model-1201)を用いて、JIS R 1626-1996(ファインセラミックス粉体の気体吸着BET法による比表面積の測定方法)の「6.2 流動法の(3.5)一点法」に準拠して測定を行った。その際、キャリアガスであるヘリウムと、吸着質ガスである窒素の混合ガスを使用した。また、キャリブレーションには、窒素ガスを使用した。ここで、実施例1~8、又は実験例1~41に係る近赤外線透過材料は、近赤外線透過材料用粒子である化合物粒子、又はマンガン酸化物粒子と分散体とが混合されており、そのままでは比表面積(SSA)を測定することができないため、分散体と混合される前の化合物粒子、又はマンガン酸化物粒子を用いて、比表面積(SSA)を測定した。他方、比較例1に係る酸化チタン混合物、比較例2に係るカーボンブラック混合物、及び比較例3に係る酸化マンガン混合物も同様に測定した。
【0449】
〈反射率測定〉
実施例1~8、又は実験例1~41に係る近赤外線透過材料に含まれる化合物粒子、又はマンガン酸化物粒子、比較例1に係る酸化チタン混合物、及び比較例2に係るカーボンブラック混合物、及び比較例3に係る酸化マンガン混合物を充填した各サンプルの反射率の測定は、φ60mm積分球ユニットを取り付けた分光光度計(株式会社日立ハイテクサイエンス製:紫外可視近赤外分光光度計UH4150形)を用いて、波長550nmの反射率を測定した。ここで、実施例1~8、又は実験例1~41に係る近赤外線透過材料は、近赤外線透過材料用粒子である化合物粒子、又はマンガン酸化物粒子と分散体とが混合されており、そのままでは反射率を測定することができないため、分散体と混合される前の化合物粒子、又はマンガン酸化物粒子を用いて、反射率を測定した。他方、比較例1に係る酸化チタン混合物、比較例2に係るカーボンブラック混合物、及び比較例3に係る酸化マンガン混合物も同様に測定した。
【0450】
〈L測定〉
上述した通り、実施例1~8、又は実験例1~41に係る近赤外線透過材料をPET製のフィルム(東レ株式会社製「ルミラー(登録商標)」:#100-T60)上にバーコーター(No.10)を用いて塗布し、形成した実施例1~8、又は実験例1、3~41では膜厚5μm、実験例2では膜厚9μmの塗膜試料に対し、色彩色差計(コニカミノルタ社製:CR-300)を用い、JIS Z 8722:2009に準拠して、CIE1976(L)色空間におけるL、a、bの値を求めた。なお、Lの値は明度を示し、aの値(正の値は赤寄り、負の値は緑寄り)及びbの値(正の値は黄寄り、負の値は青寄り)は色度を示す。他方、比較例1に係る酸化チタン混合物、比較例2に係るカーボンブラック混合物、及び比較例3に係る酸化マンガン混合物も同様に塗膜試料を作成し、測定を行った。
【0451】
〈透過率測定〉
実施例1~8、又は実験例1~41に係る近赤外線透過材料を、PET製のフィルム(東レ株式会社製「ルミラー(登録商標)」:#100-T60)上に塗布し、生成した実施例1~8、又は実験例1~41に係る近赤外線透過膜(サンプル)の透過率を、下記透過率測定条件に従って、JIS K 0115、2004「吸光光度分析方法通則」に準拠し、紫外-可視吸収スペクトル(UV-Vis吸収スペクトル)を測定した。また、比較例1に係る酸化チタン混合物を、当該PET製のフィルム上に塗布し、生成した比較例1に係る酸化チタン混合物膜(サンプル)、比較例2に係るカーボンブラック混合物を、当該PET製のフィルム上に塗布し、生成した比較例2に係るカーボンブラック膜(サンプル)、及び比較例3に係る酸化マンガン混合物を、当該PET製のフィルム上に塗布し、生成した比較例3に係る酸化マンガン混合物膜(サンプル)の透過率についても、下記透過率測定条件に従って、分光光度計にて測定した。
【0452】
=透過率測定条件=
・測定装置:紫外可視近赤外分光光度計UH4150形(株式会社日立ハイテクサイエンス製)
・測定モード:波長スキャン
・データモード:%T(透過)
・測定波長範囲:240~2500nm
・スキャンスピード:600nm/min
・サンプリング間隔:2nm
【0453】
透過率測定条件に基づいて、測定して得られた透過率から、波長500nm、及び波長700nmにおける透過率、及び波長1000nm、及び波長2000nmにおける透過率を算出した。
【0454】
〈遮熱部材の反射率測定〉
実施例C1、比較例C1~C4に係る遮熱部材の波長240~2500nmの反射率を、下記反射率測定条件に従って、φ60mm積分球ユニットを取り付けた分光光度計を用いて、測定した。測定して得られた反射率から、波長550nm、波長700nm、波長1000nm、及び波長2000nmにおける反射率を算出した。
【0455】
=反射率測定条件=
・測定装置:紫外可視近赤外分光光度計UH4150形(株式会社日立ハイテクサイエンス製)
・測定モード:波長スキャン
・データモード:%R(反射)
・測定波長範囲:240~2500nm
・スキャンスピード:600nm/min
・サンプリング間隔:2nm
【0456】
〈遮熱部材のL測定〉
実施例C1、比較例C1~C4に係る遮熱部材の最外層に対し、色彩色差計(コニカミノルタ社製:CR-300)を用い、JIS Z 8722:2009に準拠して、CIE1976(L)色空間におけるL、a、bの値を求めた。なお、Lの値は明度を示し、aの値(正の値は赤寄り、負の値は緑寄り)及びbの値(正の値は黄寄り、負の値は青寄り)は色度を示す。
【0457】
図1に示す通り、実施例1~8に係る化合物粒子、及び近赤外線透過材料は、構成元素として、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、B、F、Al、Si、P、S、Cl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Se、Br、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、I、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Tl、Pb、Biのうちから選択される2種以上の元素を含むものであると、可視光線を極力透過させず、近赤外線を透過させることができるものであった。また、実験例1~41に係るマンガン酸化物、マンガン酸化物粒子、及び近赤外線透過材料も、同様に、可視光線を極力透過させず、近赤外線を透過させることができるものであった(図5~12を参照)。
【0458】
また、実施例1~8に係る化合物粒子、及び近赤外線透過材料は、波長550nmの光の反射率が20%R以下であることから、可視光線を極力透過させず、近赤外線を透過させることができるものであった。また、実験例1~41に係るマンガン酸化物、マンガン酸化物粒子、及び近赤外線透過材料も、同様に、可視光線を極力透過させず、近赤外線を透過させることができるものであった(図5~12を参照)。
【0459】
また、実施例1~8に係る化合物粒子、及び近赤外線透過材料に含まれる化合物粒子は、酸化物粒子であると、可視光線を極力透過させず、近赤外線を透過させることができるものであった。また、実験例1~41に係るマンガン酸化物、マンガン酸化物粒子、及び近赤外線透過材料も、同様に、可視光線を極力透過させず、近赤外線を透過させることができるものであった(図5~12を参照)。
【0460】
また、実施例1~8に係る化合物粒子、及び近赤外線透過材料は、構成元素が、Cr、Mn、Fe、Co、Niのうちから選択される1種以上の元素を含むものであると、可視光線領域における透過率は低く、近赤外線領域における透過率は高かった。また、実験例1~41に係るマンガン酸化物、マンガン酸化物粒子、及び近赤外線透過材料も、同様に、可視光線領域における透過率は低く、近赤外線領域における透過率は高かった。(図5~12を参照)。
【0461】
また、実施例1~8に係る化合物粒子のSEM観察による一次粒子径の平均値が、1nm以上20μm以下であると、近赤外線領域の透過率が向上した。
【0462】
また、実施例1~8に係る化合物粒子のSEM観察による二次粒子径の平均値が、10nm以上20μm以下であると、近赤外線領域の透過率が向上した。また、実験例1~41に係るマンガン酸化物粒子も、同様に、近赤外線領域の透過率が向上した(図5~12を参照)。
【0463】
また、実施例1~8に係る化合物粒子のBET法により測定された比表面積が0.20m/g以上であると、化合物粒子の分散性が向上した。また、実験例1~41に係るマンガン酸化物粒子も、同様に、マンガン酸化物粒子の分散性が向上した(図5~12を参照)。
【0464】
実施例1~8に係る化合物粒子、及び近赤外線透過材料は、CIE1976で測定されたLが45以下であると、見た目がより黒色となり、可視光線領域の透過率を低下させることができた。なお、図1に示す実施例1~8のCIE1976で測定されたL、a、bの値は、実施例1~8に係る化合物粒子に、アクリル樹脂及び酢酸エチルを加えて混合したものであるため、実施例1~8に係る化合物粒子における測定値と同等の値を示す。実験例1~41に係るマンガン酸化物粒子、及び近赤外線透過材料も、同様に、見た目がより黒色となり、可視光線領域の透過率を低下させることができた(図5~12を参照)。
【0465】
図2に示す通り、実施例1~8に係る近赤外線透過材料は、波長700nm(可視光線領域)の透過率が30%T以下であり、且つ波長2000nm(近赤外線領域)の透過率が10%T以上であって、前記波長700nm(可視光線領域)の透過率よりも大きいものであると、可視光線を極力透過させず、近赤外線を透過させるものであった。また、実験例1~41に係る近赤外線透過材料も、同様に、可視光線を極力透過させず、近赤外線を透過させるものであった(図13~21を参照)。
【0466】
また、実施例1~8に係る近赤外線透過材料は、波長700nm(可視光線領域)の透過率が30%T以下であり、且つ波長1000nm、及び波長2000nm(近赤外線領域)の透過率が10%T以上であって、前記波長700nm(可視光線領域)の透過率よりも大きいものであると、可視光線を極力透過させず、近赤外線を透過させるものであった。また、実験例3、5、8~10、13、14、17、21~26、31~41に係る近赤外線透過材料も、同様に、可視光線を極力透過させず、近赤外線を透過させるものであった(図13~21を参照)。
【0467】
また、図1に示す実施例1~8に係る近赤外線透過材料に含まれる化合物粒子の製造工程において、原料化合物を微細に粉砕混合し、微細化した混合原料を焼成することにより、均一な酸化物が得られた。
【0468】
また、図1に示す実施例1に係る近赤外線透過材料に含まれる化合物粒子の製造工程において、マンガン原料として、電解二酸化マンガンを用い、原料化合物を微細に粉砕混合することにより、混合原料を微細化することができ、また電解二酸化マンガンが反応性に富むため、均一な酸化物が得られた。
【0469】
さらに、実施例1に係る近赤外線透過材料に含まれる化合物粒子の製造工程において、マンガン原料として、電解二酸化マンガンを用い、原料化合物を微細に粉砕混合した場合、混合原料を微細化することができ、また電解二酸化マンガンが反応性に富むため、ホウ素化合物を添加する必要がなく、より純度の高い化合物粒子を得ることができる。
【0470】
さらに、図3に示す実施例C1に係る遮熱部材の最外層におけるCIE1976で測定されたLが45以下であると、見た目がより黒色となり、可視光線領域の透過率を低下させることができた。
【0471】
図3、及び図4に示す実施例C1に係る遮熱部材の波長550nm、700nm(可視光線領域)の光の反射率が20%R以上であることから、可視光での吸収を有するものであった。また、実施例C1に係る遮熱部材の波長1000nm、2000nm(近赤外線領域)の光の反射率が40%R以上であることから、遮熱性を有するものであった。
【0472】
図3、及び図4に示す実施例C1に係る遮熱部材は、近赤外線反射下膜に含有される近赤外反射材料(酸化チタン)により、反射光が観測され、可視光線領域では近赤外線透過上膜に含有される近赤外透過材料により、低反射率となる。近赤外線透過上膜に含有される近赤外透過材料により、近赤外線領域では反射特性は維持される。よって、実施例C1に係る遮熱部材は、遮熱性を有するものである。一方、比較例C2、C4は、下膜にカーボンブラックを含有することにより、光の大部分を吸収してしまう。また、比較例C3は、酸化チタンが含有された近赤外線反射下膜が形成されているが、近赤外線透過上膜が形成されていないことにより、可視光線領域及び近赤外線領域の両方を反射してしまう。
【0473】
本明細書開示の発明は、各発明や実施形態の構成の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な構成を本明細書開示の他の構成に変更して特定したもの、或いはこれらの構成に本明細書開示の他の構成を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な構成を部分的な作用効果が得られる限度で削除して特定した上位概念化したものを含む。
【産業上の利用可能性】
【0474】
本発明に係る化合物粒子の製造方法は、焼成温度の低温化を実現することができ、エネルギーコストの削減に好適である。また、本発明に係る化合物粒子の製造方法により、製造された化合物粒子は、耐候性や、耐久性に優れており、経時変化による不良品の発生率を抑えられることから、廃棄物を減らすことができ、廃棄物の処分におけるエネルギーコストも削減することができる。さらに、本発明に係る化合物粒子の製造方法により、製造された化合物粒子は、塗膜の形成も良好であるため、被覆された被覆材料も同様に廃棄物を減らすことができ、また不良品の発生率を抑えることができる。これらの点により、天然資源の持続可能な管理及び効率的な利点、並びに脱炭素(カーボンニュートラル)化を達成することにつながる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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