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特開2024-128969車両の能動的な操舵システムにおける操舵運動を減衰させるための装置及び方法、装置を含む車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128969
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】車両の能動的な操舵システムにおける操舵運動を減衰させるための装置及び方法、装置を含む車両
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20240913BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20240913BHJP
   B62D 111/00 20060101ALN20240913BHJP
   B62D 121/00 20060101ALN20240913BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20240913BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D113:00
B62D111:00
B62D121:00
B62D101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024035972
(22)【出願日】2024-03-08
(31)【優先権主張番号】10 2023 202 152.8
(32)【優先日】2023-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】イェアク シュトレッカー
【テーマコード(参考)】
3D232
【Fターム(参考)】
3D232CC04
3D232DA03
3D232DA04
3D232DA09
3D232DA10
3D232DA23
3D232DA29
3D232DA46
3D232DA62
3D232DC33
3D232DC34
3D232DD06
3D232DE06
3D232EB04
3D232EB12
3D232EC23
3D232EC37
3D232GG01
(57)【要約】
【課題】車両の能動的な操舵システムにおける操舵運動を減衰させるための方法及び装置に関する。装置を含む車両にも関する。
【解決手段】本方法においては、能動的な操舵システムの操舵運動に車両の外部から作用する力、又は、能動的な操舵システムの操舵運動に車両の外部から作用するトルクを特徴付ける量が特定され(202)、量は、操舵システム(102)の操舵運動に加速させるように作用し、量に依存して、操舵運動の速度を制限することが実施される(208)。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(100)の能動的な操舵システム(102)における操舵運動を減衰させるための方法において、
前記能動的な操舵システム(102)の操舵運動に前記車両(100)の外部から作用する力、又は、前記能動的な操舵システムの操舵運動に前記車両の外部から作用するトルクを特徴付ける量であって、前記操舵システム(102)の前記操舵運動に加速させるように作用する量が特定され(202)、
前記量に依存して、前記操舵運動の速度を制限することが実施される(208)
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
目標操舵位置要求の最大変化分が指定され(208)、前記操舵運動の速度は、前記目標操舵位置要求に依存しており、前記操舵運動の速度を制限することは、前記目標操舵位置要求を前記最大変化分に制限することを含み、
又は、
目標操舵角度要求の最大変化分が指定され(208)、前記操舵運動の速度は、前記目標操舵角度要求に依存しており、前記操舵運動の速度を制限することは、前記目標操舵角度要求を前記最大変化分に制限することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記最大変化分を制限することは、前記力に基づいて、特にスケーリング又は修正された力に基づいて実施され、前記最大変化分は、力の上昇に伴って減少し、
又は、
前記最大変化分を制限することは、前記トルクに基づいて、特にスケーリング又は修正されたトルクに基づいて実施され、前記最大変化分は、トルクの上昇に伴って減少する、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記最大変化分に制限された目標操舵位置要求と、制限されていない目標操舵位置要求との間の距離、又は、前記最大変化分に制限された目標操舵角度要求と、制限されていない目標操舵角度要求との間の距離が特定され、
前記距離が閾値よりも小さいことが確認され、
前記距離が閾値よりも小さい場合には、前記操舵運動の速度を制限すること(208)は、前記最大変化分に制限する代わりに、前記最大変化分に比較してより大きい変化分に制限することを含む、
請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
モータ出力、車両速度、車両横方向加速度、及び/又は、走行状況に依存して、前記外部から作用する力又は前記外部から作用するトルクを特徴付ける量及び/又は前記最大変化分のスケーリングが実施される(202)、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記スケーリングは、モータ出力の低下に伴って、車両速度の低下に伴って、又は、車両横方向加速度の低下に伴って、前記量若しくは又は前記最大変化分を変化させることを含む(202)、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記外部から作用する力又は前記外部から作用するトルクを特徴付ける量が絶対値的に増加している場合には、前記スケーリングは、当該量を維持することを含み、及び/又は、
前記外部から作用する力又は前記外部から作用するトルクを特徴付ける量が絶対値的に低下している場合には、前記スケーリングは、当該量を制限することを含み(202)、及び/又は、
前記最大変化分が絶対値的に増加している場合には、前記スケーリングは、当該最大変化分を維持することを含み、及び/又は、
前記最大変化分が絶対値的に低下している場合には、前記スケーリングは、当該最大変化分を制限することを含む(202)、
請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記外部から作用する力又は前記外部から作用するトルクを特徴付ける量を制限することは、
前記量が閾値よりも大きい場合に、第1の最大変化分によって前記量を制限すること(208)を企図し、かつ、
前記量が前記閾値以下である場合に、第2の最大変化分によって前記量を制限することを企図する、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記走行状況が識別された場合(206)には、操舵速度が低減されるべきであることが操作要素にフィードバックされる(212)、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記目標操舵位置要求又は前記目標操舵角度要求は、人が操舵手段(108)の運動によって指定した角度に依存して決定され(208)、
前記操舵手段(108)を介して出力される、当該運動に対抗するように作用する対抗トルクによって、前記操舵速度が低減されるべきであることが前記人にフィードバックされる(212)、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
装置、特に能動的な操舵システム(102)であって、
前記装置は、前記能動的な操舵システム(102)の操舵運動に外部から作用する力、又は、外部から作用するトルクを特徴付ける量を検出するように構成された手段(104)を含み、
前記装置は、前記操舵運動に作用する力又は前記操舵運動に作用するトルクを生成するように構成されたモータ(106)を含み、
前記装置は、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法を実施するように構成された制御装置(112)を含む、
ことを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項11に記載の装置(102)を含むことを特徴とする車両(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来技術
本発明は、車両の能動的な操舵システムにおける操舵運動を減衰させるための装置及び方法と、装置を含む車両とに関する。
【背景技術】
【0002】
能動的な操舵システムにおいては、操舵運動を支援するための能動的な操舵システムのモータが、モータ内の磁場弱化に起因してもはや所望のトルクを形成することができなくなり、かつ、所望の挙動を実現することができなくなるという状況が発生する可能性がある。電動パワーステアリング(Electric Power Steering:EPS)システムの場合には、これによってステアリングホイールに非常に大きい力が生じ、運転者は、ステアリングホイールを限定的にしか把持することができなくなる。したがって、場合によってはリミットストッパまで、又は、操舵システム内のダイナミクス若しくは力が、モータによる所望のトルクの形成が可能となる範囲内に再び入るまで、ステアリングホイールは、操舵システム全体と同様にさらに回転させられる。ステアバイワイヤ(Steer by Wire:SbW)システムの場合には、この挙動は、被操舵車輪を動作させるアクチュエータにおいて発生する。このことはつまり、場合によってはリミットストッパまで、又は、操舵システム内のダイナミクス若しくは力が、モータによる所望のトルクの形成が可能となる範囲内に再び入るまで、被操舵車軸が、所望の目標位置に対してさらに動作させられるということを意味する。SbWシステムの場合には、運転者にとって、自身のステアリングホイール角度に関して不所望な車両運動が発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
発明の開示
独立請求項に記載の方法、装置及び車両によって、能動的な操舵システムのモータが所望のトルクを形成することができなくなるということが回避される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
能動的な操舵システムという用語は、被操舵車輪の操舵角度がメカトロニクスシステムによって設定されるような、車両の操舵手段を指している。メカトロニクスシステムの一例は、ステアバイワイヤ(SbW)であり、ステアバイワイヤ(SbW)の場合には、ステアリングホイールアクチュエータ(SWA)とステアリングラックアクチュエータ(SRA)との間の機械的な連結部が省略されている。ステアリングラックアクチュエータは、被操舵車輪を動作させる。
【0005】
車両の能動的な操舵システムにおける操舵運動を減衰させるための方法においては、能動的な操舵システムの操舵運動に車両の外部から作用する力、又は、能動的な操舵システムの操舵運動に車両の外部から作用するトルクを特徴付ける量が特定され、この量は、操舵システムの操舵運動に加速させるように作用し、この量に依存して、操舵運動の速度を制限することが実施される。車両の外部から作用する力は、所定の走行状況においては、操舵運動に加速させるように作用する。このことは、例えば、外部から作用する力が大きくて、この力に応じて車両の被操舵車輪又は被操舵車軸が動作させられるような操縦において発生する可能性がある。このことはつまり、力の方向が、初めのうちは運動方向と同一であり、この力がモータを押し進めるということを意味している。この操縦についての例は、車両のオーバーステアリング時、又は、車両による急激な方向転換時における操舵である。こうした操縦は、大きい力及び大きい操舵ダイナミクスを特徴とする。この大きい操舵ダイナミクスを達成するために、モータは、通常、運動の開始時には外部から作用する力と同一方向に動作し、すなわち、モータは、この運動を支援する。このことはつまり、モータトルクと運動方向とは、通常、操舵運動の加速フェーズにおけるモータモード時には、同一の方向に進行するということを意味する。この加速フェーズの後には、操舵運動が低減されるべきである減速フェーズが続く。ここで、モータトルクは、発電機モード時には自身の方向を転換し、操舵ダイナミクスを低減するために運動方向に対抗するように、かつ、外部から作用する力に対抗するように作用する。ここで、操舵速度と外部から作用する力とが相応に大きい場合に、モータの磁場弱化に基づいて最大限可能なモータトルクが、操舵速度を低減するためにもはや十分ではなくなるということが、操舵運動を減衰させることによって回避される。その結果、被操舵車輪又は被操舵車軸が、外部から作用する力のみに基づいて挙動するということが回避され、場合によってはリミットストッパまでほぼ制動されることなくさらに動作させられるということが回避される。このことはつまり、モータがもはや所望の挙動を実現することができなくなるということが回避されるということを意味する。
【0006】
一実施形態においては、目標操舵位置要求の最大変化分が指定され、操舵運動の速度は、目標操舵位置要求に依存しており、操舵運動の速度を制限することは、目標操舵位置要求を最大変化分に制限することを含む。
【0007】
一実施形態においては、目標操舵角度要求の最大変化分が指定され、操舵運動の速度は、目標操舵角度要求に依存しており、操舵運動の速度を制限することは、目標操舵角度要求を最大変化分に制限することを含む。
【0008】
最大変化分を制限することは、好ましくは力に基づいて、特にスケーリング又は修正された力に基づいて実施され、最大変化分は、力の上昇に伴って減少し、又は、最大変化分を制限することは、トルクに基づいて、特にスケーリング又は修正されたトルクに基づいて実施され、最大変化分は、トルクの上昇に伴って減少する。
【0009】
好ましくは、最大変化分に制限された目標操舵位置要求と、制限されていない目標操舵位置要求との間の距離、又は、最大変化分に制限された目標操舵角度要求と、制限されていない目標操舵角度要求との間の距離が特定され、距離が閾値よりも小さいことが確認され、距離が閾値よりも小さい場合には、操舵運動の速度を制限することは、最大変化分に制限する代わりに、最大変化分に比較してより大きい変化分に制限することを含む。これにより、結果的に生じる目標操舵位置要求又は目標操舵角度要求における、さもなければ発生する可能性のあった跳躍的変化が回避される。
【0010】
好ましくは、モータ出力、車両速度、車両横方向加速度、及び/又は、走行状況に依存して、外部から作用する力又は外部から作用するトルクを特徴付ける量及び/又は最大変化分のスケーリングが実施される。これにより、制限することが、状況に応じて最適化される。
【0011】
好ましくは、スケーリングは、モータ出力の低下に伴って、車両速度の低下に伴って、又は、車両横方向加速度の低下に伴って、量若しくは最大変化分を変化させることを含む。これにより、外部から作用する力の強さ、又は、外部から作用するトルクの強さへの適合が実施される。
【0012】
好ましくは、外部から作用する力又は外部から作用するトルクを特徴付ける量が絶対値的に増加している場合には、スケーリングは、当該量を維持することを含み、及び/又は、外部から作用する力又は外部から作用するトルクを特徴付ける量が絶対値的に低下している場合には、スケーリングは、当該量を制限することを含み、及び/又は、最大変化分が絶対値的に増加している場合には、スケーリングは、当該最大変化分を維持することを含み、及び/又は、最大変化分が絶対値的に低下している場合には、スケーリングは、当該最大変化分を制限することを含む。これにより、量又は最大変化分は、外部から作用する力が増加している場合にはこの力に追従し、又は、外部から作用するトルクが増加している場合にはこのトルクに追従し、外部から作用する力が低下している場合、又は、外部から作用するトルクが低下している場合には、強さへの適合が実施される。
【0013】
好ましくは、外部から作用する力又は外部から作用するトルクを特徴付ける量を制限することは、量が閾値よりも大きい場合に、第1の最大変化分によって量を制限することを企図し、かつ、量が閾値以下である場合に、第2の最大変化分によって量を制限することを企図する。これにより、2つの異なる勾配によって制限が行われる。
【0014】
走行状況が識別された場合には、操舵速度が低減されるべきであることが操作要素にフィードバックされると好ましい。これにより、要求された操舵ダイナミクスが実現されないということが通知される。
【0015】
好ましくは、目標操舵位置要求又は目標操舵角度要求は、人が操舵手段の運動によって指定した角度に依存して決定され、操舵手段を介して出力される、当該運動に対抗するように作用する対抗トルクによって、操舵速度が低減されるべきであることが人にフィードバックされる。このフィードバックは、人にとって特に良好に知覚可能である。
【0016】
本装置、特に能動的な操舵システムにおいては、本装置は、能動的な操舵システムの操舵運動に外部から作用する力又は外部から作用するトルクを特徴付ける量を検出するように構成された手段を含み、本装置は、操舵運動に作用する力又は操舵運動に作用するトルクを生成するように構成されたモータを含み、本装置は、本方法を実施するように構成された制御装置を含む。本装置は、本方法の利点に対応する利点を有する。本装置は、相応の機構によって両方の車輪を動作させる1つのモータを含み得る。本装置は、それぞれの被操舵車輪ごとに1つのモータを含み得るものであり、すなわち、これらの車輪同士は、機械的な連結部を有していない。本装置は、両方の車輪が機械的に連結されている1つの装置に作用する複数のモータを含み得るものであり、又は、それぞれの被操舵車輪ごとに作用する複数のモータを含み得るものである。
【0017】
本装置を含む車両は、本装置の利点に対応する利点を有する。
【0018】
さらなる有利な実施形態は、以下の説明及び図面から見て取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】車両の概略図である。
図2】車両の能動的な操舵システムの操舵運動を減衰させるための方法における各ステップを備えたフローチャートである。
図3a】操舵運動時における目標操舵位置と操舵位置との時間的な推移を示す図である。
図3b】能動的な操舵システムの外部から操舵運動に作用する力の時間的な推移を示す図である。
図3c】能動的な操舵システムのモータによって生成されるトルクの時間的な推移を示す図である。
図3d】本方法における量の時間的な推移を示す図である。
図4】操舵運動時における移行挙動からの一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1には、車両100が概略的に示されている。車両100は、車両の能動的な操舵システム102の操舵運動を減衰させるための装置を含む。
【0021】
本装置は、能動的な操舵システム102の操舵運動に外部から作用する力を特徴付ける量を検出するように構成された手段104を含む。
【0022】
本装置は、操舵運動に作用する力を生成するように構成されたモータ106を含む。
【0023】
モータ106は、本例においては、車両100の少なくとも1つの車輪を動作させるように構成された第1のアクチュエータである。
【0024】
本装置は、車両を操舵する人の要望を検出するように構成された操舵手段108を含む。
【0025】
本装置は、操舵手段108を動作させるように構成されたモータ110を含む。
【0026】
操舵手段108及びモータ110は、本例においては、第2のアクチュエータである。
【0027】
第1のアクチュエータと第2のアクチュエータとは、本例においては、機械的に互いに分離されている。
【0028】
操舵手段108は、本例においては、人が生成するトルクによって動作させられるステアリングホイールである。操舵手段108は、他の操作部も含み得る。操作部は、例えばジョイスティックとして構成可能である。
【0029】
本例においては、操舵手段108によって目標操舵位置が指定される。目標操舵位置は、例えばSbWシステムのステアリングラックの目標ステアリングラック位置である。操舵手段108は、目標操舵位置を、人からではなく完全自動運転用の機能から受信するように構成可能である。
【0030】
操舵手段108によって、目標操舵位置の代わりに目標操舵角度を指定することができる。個別車輪が操舵される場合には、操舵手段108によって、ステアリングラックに対する目標操舵位置又は目標操舵角度を指定する代わりに、それぞれの被操舵車輪ごとの車輪操舵角度を指定することができる。
【0031】
本装置は、以下において説明される操舵運動を減衰させるための方法を実施するように構成された制御装置112を含む。
【0032】
本方法は、例示的に中央動作装置としてステアリングラックアクチュエータ(SRA)、すなわち、第1のアクチュエータを備えたSbWシステムに関して説明される。本方法は、電動パワーステアリング(EPS)システムに適用可能であり、又は、その他のアクチュエータ、例えば車輪を個々の車輪ごとにも操舵するためのアクチュエータを備えたシステムに適用可能である。
【0033】
個別車輪が操舵される場合には、個別車輪動作装置を設けることができ、この場合、本方法における各ステップは、それぞれの車輪に個々に関連している。なぜなら、それぞれ力が異なっているからである。
【0034】
図2には、本方法における各ステップを備えたフローチャートが示されている。
【0035】
ステップ202においては、能動的な操舵システム102の操舵運動に車両100の外部から作用する力を特徴付ける量が特定される。
【0036】
減衰を最適化するために、外部から作用する力を特徴付ける量をスケーリングすることができる。スケーリングが行われない名目上のケースにおいては、例えばスケーリングは、1である。
【0037】
例えば、モータ出力、車両速度、車両横方向加速度、及び/又は、走行状況に依存して、外部から作用する力を特徴付ける量のスケーリングが実施される。
【0038】
例えば、スケーリングは、モータ出力の低下に伴って、車両速度の低下に伴って、又は、車両横方向加速度の低下に伴って、量を変化させることを含む。
【0039】
スケーリングは、例えば特性曲線を用いて、モータ出力、車両速度又は車両横方向加速度に依存して実施される。
【0040】
車両加速度若しくは車両横方向加速度、又は、スケーリングの対象となる量が欠如している場合には、スケーリングを1にセットすることができる。
【0041】
例えば、外部から作用する力を特徴付ける量が絶対値的に増加している場合には、スケーリングは、当該量を維持することを含む。
【0042】
例えば、外部から作用する力を特徴付ける量が絶対値的に低下している場合には、スケーリングは、当該量を制限することを含む。
【0043】
ステップ204においては、操舵システム102の操舵運動を特徴付ける量が特定される。
【0044】
例えば、能動的な操舵システム102のモータ106によって生成されて能動的な操舵システム102の操舵運動に作用する力を特徴付ける量が特定される。
【0045】
ステップ206においては、能動的な操舵システム102の操舵運動に車両100の外部から作用する力が、操舵システム102の操舵運動に加速させるように作用するかどうかがチェックされる。
【0046】
例えば、以下の走行状況:
モータによって生成された力が閾値を上回っている走行状況、
車両の外部から作用する力が閾値を上回っている走行状況
のうちの1つが識別されたかどうかが、量に依存してチェックされる。
【0047】
さらに、その識別された走行状況において、モータ106によって生成された力と、車両100の外部から作用する力とがまず始めに操舵運動を支援するように作用して、続いて、モータ106によって生成された力が、操舵運動に対抗するように作用し、かつ、車両100の外部から作用する力が、操舵運動を支援するように作用するかどうかが、量に依存してチェックされる。
【0048】
上記の走行状況が識別されると、ステップ208が実施される。そうでない場合には、ステップ210が実施される。
【0049】
ステップ208においては、この走行状況において操舵運動の速度を制限することが実施される。ステップ208は、目標操舵位置要求の場合において説明される。目標操舵角度要求の場合にも、相応にステップ208が実施される。
【0050】
例えば、目標操舵位置要求の最大変化分が指定される。操舵運動の速度を制限することは、例えば目標操舵位置要求をこの最大変化分に制限することを含む。
【0051】
要求の最大変化分は、例えば外部から作用する力に基づいて特定され、この場合、最大変化分は、力の増加に伴って低減される。追加的に、車両速度、横方向加速度、走行状況、及び/又は、モータ出力に基づいて、関係性を修正することができる。
【0052】
目標操舵位置要求又は目標操舵角度要求は、例えば人が操舵手段108の運動によって指定した角度に依存して決定される。
【0053】
制限された目標操舵位置要求における跳躍的変化を回避するために、最大変化分に制限された目標操舵位置要求と、制限されていない目標操舵位置要求との間の距離を特定することができる。制限された目標操舵角度要求における跳躍的変化を回避するために、最大変化分に制限された目標操舵角度要求と、制限されていない目標操舵角度要求との間の距離を特定することができる。
【0054】
例えば、この距離が閾値よりも小さいかどうかが確認される。例えば、この距離が閾値よりも小さいことが確認された場合には、操舵運動の速度を制限することは、最大変化分に制限する代わりに、最大変化分とは異なる他の変化分に制限すること含み、これにより、制限された要求が、制限されていない要求に順応するようにする。
【0055】
一実施形態においては、外部から作用する力を特徴付ける量を制限することは、外部から作用する力を特徴付ける量が閾値、特に750Nよりも大きい場合に、第1の最大変化分によって量を制限することを含む。
【0056】
一実施形態においては、量を制限することは、外部から作用する力を特徴付ける量が閾値以下である場合に、第2の最大変化分によって量を制限することを含む。
【0057】
ステップ210においては、本方法に基づいて操舵運動の速度を制限することは、実施されない。その他の方法又は機能に基づいて操舵運動の速度を制限することは、排除されていない。
【0058】
ステップ208の後、任意選択肢としてステップ212を設けることができる。
【0059】
ステップ212においては、操舵速度が低減されるべきであることが操作要素にフィードバックされる。
【0060】
例えば、人による操舵手段の運動に対抗するように作用する対抗トルクによって、操舵速度が低減されるべきであることが人にフィードバックされる。この対抗トルクは、例えばモータ110によって生成される。この対抗トルクは、例えば操舵手段を介して出力される。この場合、対抗トルクは、例えば特定された最大変化分の指定を考慮して計算される。
【0061】
一実施形態においては、外部から作用する力を特徴付ける量は、能動的な操舵システムのタイロッドに印加される力である。
【0062】
一実施形態においては、モータ106によって生成される力を特徴付ける量は、モータ106のトルクである。
【0063】
図3aには、例示的な操舵運動時における目標操舵位置302と操舵位置304との時間的な推移が示されている。目標操舵位置302の推移及び操舵位置304の推移は、本例では、第1の位置における第1の時点において開始する。
【0064】
本例においては、目標操舵位置302によって、第2の時点(8.1)から第3の時点まで、第1の位置から第2の位置に上昇する目標操舵位置302が指定される。このことは、本例においては非常に急峻な左カーブに相当する。続いて、第3の時点(8.2)後に、第2の位置から降下する目標操舵位置302が指定される。
【0065】
操舵位置304は、本例においてはフェーズ1において位相遅延を伴って目標操舵位置302に追従し、第4の時点において第1の操舵位置に到達する。続いて、操舵位置304は、第5の時点において第2の操舵位置に降下し、続いて第3の操舵位置に上昇する。
【0066】
目標操舵位置302は、第6の時点と第7の時点との間のフェーズ2においては、高回転数に起因してモータ106内に磁場弱化が発生するような大きさの勾配を有し、このことに起因して、モータ106は、操舵運動を減衰させるために十分に大きいトルクをもはや生成することができない。したがって、第8の時点と第9の時点との間のフェーズ3においては、操舵位置304が、外部から作用する力によって決定される。
【0067】
図3bには、能動的な操舵システムの外部から操舵運動に作用するこの力306の時間的な推移が、フェーズ1、2及び3において第1の力と第2の力との間で示されている。
【0068】
図3cには、モータ106によって生成されるこのトルク308の時間的な推移が、フェーズ1、2及び3において第1のトルクと第2のトルクとの間で示されている。
【0069】
本実施例においては、フェーズ1の終了時に、減衰が必要とされる走行状況が識別される。これにより、フェーズ2及び3における推移を、モータ106によって図3a乃至図3cに示されている推移とは異なるように設定することができる。
【0070】
図3dの上側の部分には、制限されていない目標操舵位置302の時間的な推移と、本方法によって最大変化分に制限された目標操舵位置要求310の時間的な推移とが、フェーズ1、2及び3において示されている。図3dの下側の部分には、これに対応する、能動的な操舵システム102のタイロッドの制限されていない操舵速度312の推移と、本方法による結果として生じる操舵速度314の推移とが、第1の操舵速度と第2の操舵速度との間で示されている。
【0071】
図4には、操舵運動時における跳躍的変化を回避するための例示的な移行挙動からの一部が示されている。
【0072】
跳躍的変化を回避するために、最大変化分に制限された目標操舵位置要求404と、制限されていない目標操舵位置要求406との間の距離402が特定される。距離402が閾値よりも小さい場合には、制限された目標操舵位置要求404が、制限されていない目標操舵位置要求406に合うように適応させられる。
【0073】
これにより、モータ106によって実際に制御することができる、結果的に生じる目標操舵位置の推移が得られる。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
図4
【外国語明細書】