(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128977
(43)【公開日】2024-09-25
(54)【発明の名称】電動車両
(51)【国際特許分類】
B60K 1/00 20060101AFI20240917BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20240917BHJP
B60G 9/04 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
B60K1/00
B60L15/20 J
B60G9/04
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036098
(22)【出願日】2023-03-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】岡本 公雄
(72)【発明者】
【氏名】山之内 尚弥
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 直哉
【テーマコード(参考)】
3D235
3D301
5H125
【Fターム(参考)】
3D235AA02
3D235BB18
3D235BB19
3D235CC12
3D235CC14
3D235DD13
3D235EE24
3D235FF34
3D235HH52
3D301AA74
3D301BA20
3D301CA28
3D301DA08
3D301DA33
3D301DA96
3D301DA98
5H125AA01
5H125AC12
5H125FF01
(57)【要約】
【解決手段】電動車両10は、電動機26を有する駆動ユニット14と、車体16に対して駆動ユニット14を支持する支持構造20とを備える。支持構造20は、駆動ユニット14の前方側に配置される前方支持部材54を有する。前方支持部材54は、車体16の車幅方向において駆動ユニット14の幅よりも小さい幅を有する。前方支持部材54は、駆動ユニット14から車体16の前方に向けて延在し、且つトーションビーム38と交差し、トーションビーム38に対して前方側で車体16に固定される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体に取り付けられ電力によって駆動する電動機を有する駆動ユニットと、
前記車体に支持され前記車体の車幅方向に離間する一対のトレーリングアームを、前記車幅方向に延在するトーションビームによって互いに接続するサスペンション装置と、
前記車体に対して前記駆動ユニットを支持する支持構造と、
を備え、
前記駆動ユニットが前記トーションビームより後方に配置され、前記駆動ユニットによって前記車体に設けられる後輪を駆動する電動車両であって、
前記支持構造は、前記車体の前後方向において前記駆動ユニットの前方側に配置される前方支持部材を有し、
前記前方支持部材が、前記車体の車幅方向において前記駆動ユニットの幅よりも小さい幅を有し、前記駆動ユニットから前記車体の前方に向けて延在し、且つ前記トーションビームと交差し、前記トーションビームに対して前方側で前記車体に固定される、電動車両。
【請求項2】
請求項1記載の電動車両において、
前記前方支持部材は、前記車幅方向における前記駆動ユニットの一端と他端との間の幅領域内に配置される、電動車両。
【請求項3】
請求項1又は2記載の電動車両において、
前記車体の前後方向と直交し、且つ前記車幅方向と直交する高さ方向から見た平面視において、前記トーションビームは、前記前方支持部材と交差する交差部を有し、
前記交差部は、前記前方支持部材に対して離間し、且つ上方に向けて凸状に湾曲して形成される、電動車両。
【請求項4】
請求項1又は2記載の電動車両において、
前記支持構造は、前記駆動ユニットの後方に配置される後方支持部材を備え、
前記後方支持部材は、前記車体に対して固定される複数の固定部を有し、前記複数の固定部によって前記車体に固定される、電動車両。
【請求項5】
請求項1記載の電動車両において、
前記前方支持部材は、前記駆動ユニットから前記前方に向かうにつれて、車高方向の幅が小さくなる、電動車両。
【請求項6】
請求項1又は2記載の電動車両において、
前記車体の平面視において、前記前方支持部材が前記前後方向に沿って直線状に形成される、電動車両。
【請求項7】
請求項5記載の電動車両において、
前記前方支持部材は、板状に形成され、前記前方支持部材の板厚方向が、前記車体の前記車幅方向である、電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動ユニットによって走行可能な電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低炭素社会又は脱炭素社会の実現に向けた取り組みが活発化し、車両においてもCO2排出量の削減やエネルギー効率の改善のために、電動化技術に関する研究開発が行われている。特許文献1には、モータを含む車両後部構造を備えた電動車両が開示されている。車両後部構造は、電動機と、トーションビームのサスペンションと、電動機を支持する支持部材とを備える。サスペンションは、一対のトレーリングアームを接続するトーションビームを備える。支持部材が、トレーリングアームとの干渉を避けるために、電動機の前方且つ車幅方向に分岐した二股状で車体に対して固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電動化技術に関する特許文献1では、電動車両の電動機の前方において車体に対して支持部材が2カ所で固定されるため、支持部材が大型化するという問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題の解決のため、電動車両の走行時における前後方向の荷重を受ける支持構造を簡素化して軽量化を図り、且つ製造コストの削減の達成を目的としたものである。そして、延いてはエネルギー効率の改善に寄与することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様は、車体と、前記車体に取り付けられ電力によって駆動する電動機を有する駆動ユニットと、前記車体に支持され前記車体の車幅方向に離間する一対のトレーリングアームを、前記車幅方向に延在するトーションビームによって互いに接続するサスペンション装置と、前記車体に対して前記駆動ユニットを支持する支持構造と、を備え、前記駆動ユニットが前記トーションビームより後方に配置され、前記駆動ユニットによって前記車体に設けられる後輪を駆動する電動車両であって、前記支持構造は、前記車体の前後方向において前記駆動ユニットの前方側に配置される前方支持部材を有し、前記前方支持部材が、前記車体の車幅方向において前記駆動ユニットの幅よりも小さい幅を有し、前記駆動ユニットから前記車体の前方に向けて延在し、且つ前記トーションビームと交差し、前記トーションビームに対して前方側で前記車体に固定される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電動車両が走行して加減速時に駆動ユニットに発生する前後方向への荷重を前方支持部材によって効率的に受けることができるため、駆動ユニットの幅よりも大きい前方支持部材を用いる構造と比較し、前後方向の荷重を受ける支持構造を簡素化して軽量化を図ることができる。これにより、電動車両の製造コストの削減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る電動車両の全体説明図である。
【
図2】
図2は、車体の後端近傍を下方から見た平面図である。
【
図3】
図3は、
図2のIII-III線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に示されるように、本実施形態に係る電動車両10は、バッテリ12の電力によって駆動する駆動ユニット14を備えた電気自動車(EV)である。なお、電動車両10は、電気自動車に限定されるものではない。バッテリ12を用いる車両であれば、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)又は燃料電池自動車(FCV)等の種々の電動車両10に適用可能である。
【0010】
電動車両10は、車体16と、車体16に取り付けられ電力によって駆動する駆動ユニット14と、後輪24Rを支持するサスペンション装置18と、車体16に対して駆動ユニット14を支持する支持構造20とを備える。
【0011】
車体16は、フレーム17と、車体16の下部を構成するフロアパネル22を備える。フロアパネル22は、電動車両10の前後方向(矢印A方向)に沿って延在する。車体16におけるフレーム17の前部には前輪24Fが不図示のフロントサスペンション装置を介して回転可能に支持される。車体16におけるフレーム17の後部には後輪24Rが回転可能に支持される。フロアパネル22は、前輪24F及び後輪24Rが接する路面G(地面)に対して略平行に配置される。
図2に示すように、フレーム17は、車幅方向に延在する第1及び第2クロスメンバー171、172を有する。第1クロスメンバー171は、一対の後輪24Rの間に配置される。第2クロスメンバー172は、第1クロスメンバー171の前方に配置される。
【0012】
図2に示すように、駆動ユニット14は、例えば電動機26及び減速ギアを有する。電動機26は、例えば電力によって回転するモータである。支持構造20を介して、駆動ユニット14がフロアパネル22の後端部221の領域に配置される。駆動ユニット14は後輪24Rを駆動する。駆動ユニット14は、フロアパネル22の後端部221において車幅方向(矢印B方向)の略中央部に配置される。駆動ユニット14は、車体16(フロアパネル22)の後端161よりも前方に配置される。駆動ユニット14は、一対の後輪24Rの間に配置される。
図3に示すように、電動車両10の車高方向(矢印C方向)において、駆動ユニット14がフロアパネル22から下方に突出して配置される。なお、後輪24Rを駆動するための駆動ユニット14とは別に、フレーム17の前部に前輪24Fを駆動するための駆動ユニットを設けてもよい。
【0013】
図2に示すように、駆動ユニット14は、電動機26及び減速ギアを内蔵したハウジング28を有する。電動機26は、電力によってハウジング28内で回転可能である。減速ギアの回転中心には、回転シャフト30が取り付けられる。ハウジング28に対して駆動ユニット14の回転シャフト30が車幅方向の両側にそれぞれ延在する。電動機26が駆動することで減速ギアを介して回転シャフト30が回転する。なお、駆動ユニット14は、電動機26及び減速ギアを備える構成に限定されない。駆動ユニット14を、電動機26のみから構成してもよい。
【0014】
回転シャフト30の端部には、ジョイント32を介して一対のドライブシャフト34が連結される。一対のドライブシャフト34は、車体16の車幅方向(矢印B方向)に沿って配置される。ドライブシャフト34を介して回転シャフト30と後輪24Rとが互いに連結される。
【0015】
サスペンション装置18は、一対のトレーリングアーム361、362と、一対のトレーリングアーム361、362を互いに接続するトーションビーム38と、トレーリングアーム361、362に保持されるダンパ40及びスプリング42とを備える。
【0016】
一対のトレーリングアーム361、362は、車体16の前後方向(矢印A方向)に沿って延在し、且つ車体16の車幅方向(矢印B方向)に互いに離間して配置される。一対のトレーリングアーム361、362は、後輪24Rに対して車幅方向内方に配置される。一対のトレーリングアーム361、362の前端が、車体16の第2クロスメンバー172に対して揺動可能に支持される。車体16の前後方向において、一対のトレーリングアーム361、362の後部には後輪24Rが支持される。トレーリングアーム361、362の前端を支点として、トレーリングアーム361、362の後端側がフロアパネル22に対して接近又は離間する方向に揺動することで、トレーリングアーム361、362によって後輪24Rが上下方向に揺動可能に支持される。
【0017】
トレーリングアーム361、362は、ダンパ受け部44と、スプリング受け部46とを備える。ダンパ受け部44は、トレーリングアーム361、362の後端に設けられる。ダンパ受け部44と車体16との間にダンパ40が保持される。ダンパ40は、フロアパネル22に対して略直交するように配置される(
図4参照)。スプリング受け部46は、トレーリングアーム361、362の略中央部から車幅方向内方に張り出している。スプリング受け部46と車体16との間にスプリング42が保持される。スプリング42は、例えばコイルスプリングである。スプリング42の弾発力は、フロアパネル22に略直交する方向(車高方向)に付勢される。
【0018】
電動車両10の走行中において、路面Gから後輪24Rに入力された荷重がスプリング42によって吸収され、ダンパ40によって減衰される。
【0019】
図2に示すように、トーションビーム38は、車体16の車幅方向(矢印B方向)に沿って配置される。トーションビーム38は、駆動ユニット14に対して前方に配置される。すなわち、トーションビーム38に対して駆動ユニット14が後方に配置される。トーションビーム38は、トレーリングアーム361、362の前端に対して後方に配置される。
【0020】
トーションビーム38の両端部は、トレーリングアーム361、362に連結される一対の連結部481、482を有する。
図4に示す車体16の前方から見たとき、車高方向において、連結部481、482が後輪24Rの中心軸線と略同一高さに配置される。なお、連結部481、482の高さは、後輪24Rの中心軸線と略同一高さに配置される場合に限定されるものではない。
図2に示すように、トーションビーム38は、トレーリングアーム361、362の前端に対して後方となる位置でトレーリングアーム361、362に連結される。トーションビーム38の連結部481、482は、トレーリングアーム361、362に対して下方から取り付けられ溶接等によって固定される。電動車両10の走行中において後輪24Rと共に一対のトレーリングアーム361、362が揺動したとき、トレーリングアーム361、362に伴ってトーションビーム38が揺動する。
【0021】
図4に示すように、トーションビーム38は、車体16の前方から見たときに上方に向けて凸状に湾曲した交差部50を有する。交差部50は、車体16の車幅方向となるトーションビーム38の延在方向において略中央部に設けられる。交差部50は、一対の連結部481、482から延在方向中央に向けて徐々に上方に向けて緩やかに湾曲する。交差部50を含むトーションビーム38は略円弧状に形成される。交差部50の上面501は、フロアパネル22に向かうように上方に向けて凸状に湾曲する。交差部50の下面502は、上方に向けて凹状に湾曲して窪む。交差部50の上部とフロアパネル22とが車高方向に離間する。
【0022】
図2に示すように、支持構造20は、複数の支持部材52を有する。複数の支持部材52は、前方支持部材54と、後方支持部材56とを備える。
【0023】
前方支持部材54は、車体16の前後方向において駆動ユニット14の前方に配置される。前方支持部材54は、板厚方向が車体16の車幅方向となる板状に形成される。前方支持部材54は、駆動ユニット14から車体16の前方に向けて直線状に延在する。すなわち、
図2に示す車体16の平面視において、前方支持部材54が前後方向(矢印A方向)に沿って直線状に形成される。
図3に示すように、前方支持部材54の後端541Rは、ボルト58によって駆動ユニット14におけるハウジング28の前端に連結される。前方支持部材54は、駆動ユニット14から前方に向かうにつれて、車高方向の幅Hが小さくなる。前方支持部材54の車高方向の幅Hは、前方支持部材54の後端541Rが最も大きい。
【0024】
図2に示されるように、車体16の車幅方向において、前方支持部材54の幅W1は、駆動ユニット14の幅W2(ハウジング28の幅)よりも小さい(W1<W2)。車体16の車幅方向(矢印B方向)において、駆動ユニット14のハウジング28の幅方向一端281と幅方向他端282との間の幅領域内に前方支持部材54が配置されて連結される。
【0025】
図2に示すように、車体16の前後方向と直交し、且つ車幅方向と直交する車高方向から見た平面視において、前方支持部材54とトーションビーム38の交差部50とが交差する。
図4に示すように、車体16の前方から見たとき、前方支持部材54に対して交差部50が上方に湾曲して離間している。車高方向において前方支持部材54と交差部50とが離間する。
【0026】
図2に示すように、前方支持部材54の前端541Fは、トーションビーム38に対して前方で車体16に固定される。前方支持部材54の前端541Fは、第2クロスメンバー172の下面に設けられたマウント部材60によって支持される。マウント部材60の内部の弾性部材62の中心部に、前方支持部材54の前端541Fが挿入されて保持される。弾性部材62によって前方支持部材54の前端541Fの振動が吸収され緩和される。
【0027】
後方支持部材56は、車体16の前後方向(矢印A方向)において駆動ユニット14の後方に配置される。後方支持部材56は、車体16(フロアパネル22)の後端161と駆動ユニット14との間に配置される。
【0028】
後方支持部材56は、ロッド部材64と、ロッド部材64と駆動ユニット14とを接続する接続部材66と、ロッド部材64の両端部に設けられる複数の固定部68とを備える。ロッド部材64は、軸状に形成され車体16の車幅方向(矢印B方向)に沿って配置される。ロッド部材64は、駆動ユニット14の回転シャフト30と略平行に配置される。車幅方向におけるロッド部材64の長さは、駆動ユニット14の幅W2(ハウジング28の幅)よりも長い。なお、ロッド部材64の長さは、駆動ユニット14の幅W2よりも長い場合に限定されない。
【0029】
接続部材66は、ロッド部材64の長手方向中央部に接続される。接続部材66は、ロッド部材64に対して前方に延出する。
図3に示すように、接続部材66は、ボルト70を介して駆動ユニット14のハウジング28の後端と接続される。ボルト70の締結方向は、車体16の車幅方向である。これにより、後方支持部材56のロッド部材64と駆動ユニット14の後端とが連結される。なお、接続部材66の締結方向は、車体16の車幅方向に限定されるものではない。駆動ユニット14の後端に対して、接続部材66が前後方向に締結されてもよい。
【0030】
複数の固定部68は、ロッド部材64を車体16のフロアパネル22に固定する。複数の固定部68は、例えばロッド部材64の両端部に配置される一対の固定部681、682である。以下、後方支持部材56が、一対の固定部681、682を備える場合について説明する。一対の固定部681、682は、ロッド部材64を間にしてロッド部材64の長手方向(矢印B方向)に離間する。一対の固定部681、682は、フロアパネル22の下面223に設けられる取付部72に当接した状態で締結部材74によって固定される。固定部681、682の固定方向は、ロッド部材64の延在方向(矢印B方向)に対して直交する上下方向(矢印C方向)である。締結部材74によって固定部681、682がフロアパネル22に向けて固定される。
【0031】
本実施形態は、以下の効果を奏する。
【0032】
図2に示すように、電動車両10は、車体16と、車体16に取り付けられ電力によって駆動する電動機26を有する駆動ユニット14と、車体16に支持され車体16の車幅方向に離間する一対のトレーリングアーム361、362を、車幅方向に延在するトーションビーム38によって互いに接続するサスペンション装置18と、車体16に対して駆動ユニット14を支持する支持構造20とを備える。駆動ユニット14がトーションビーム38より後方に配置され、支持構造20は、車体16の前後方向(矢印A方向)において駆動ユニット14の前方側に配置される前方支持部材54を有する。前方支持部材54が、車体16の車幅方向(矢印B方向)において駆動ユニット14の幅W2よりも小さい幅W1を有する。前方支持部材54が、駆動ユニット14から車体16の前方に向けて延在し、且つトーションビーム38と交差し、トーションビーム38に対して前方側で車体16に固定される。
【0033】
この構成によれば、電動車両10の走行時において、車両の加減速時に駆動ユニット14に発生する前後方向への荷重を前方支持部材54によって効率的に受けることができる。そのため、駆動ユニット14の幅W2よりも大きい前方支持部材を用いる構造と比較し、前後方向の荷重を受ける支持構造20を簡素化して軽量化を図ることができる。これにより、電動車両10の製造コストを削減することが可能となる。
【0034】
前方支持部材54は、車幅方向における駆動ユニット14(ハウジング28)の幅方向一端281と幅方向他端282との間の幅領域内に配置されるため、車体16の車幅方向において、前方支持部材54によって駆動ユニット14の重心に近い位置を支持することができる。これにより、電動車両10の走行時に生じる荷重を前方支持部材54によって効果的に緩和できる。
【0035】
車体16の前後方向と直交し、且つ車幅方向と直交する車高方向から見た平面視において、トーションビーム38は、前方支持部材54と交差する交差部50を有し、
図4に示すように、交差部50は、前方支持部材54に対して離間し、且つ上方に向けて凸状に湾曲して形成される。
【0036】
この構成によれば、トーションビーム38の交差部50を上方に向けて湾曲させることで、平面視において前方支持部材54とトーションビーム38とを効果的に交差させることができる。そのため、支持構造20をコンパクトに構成し、車体16の取り付けスペースを効率的に使うことができる。トーションビーム38を上方に湾曲させることで、車体16がロールするときのロール中心を高くすることができ操縦安定性を高めることができる。
【0037】
支持構造20は、駆動ユニット14の後方に配置される後方支持部材56を備え、後方支持部材56は、車体16に対して固定される複数の固定部681、682を有し、複数の固定部681、682によって車体16に固定される。この構成によれば、駆動ユニット14の駆動トルクによって、電動車両10の加減速時に大きな荷重が生じたとき、車幅方向(左右方向)に働く荷重を、複数の固定部681、682で固定された後方支持部材56によって受けることで効果的に緩和することができる。車体16の前後方向において、車体16に対する前方支持部材54の固定点と後方支持部材56の固定点との取付ピッチPを確保できるため、駆動ユニット14の駆動トルクに起因した大きな荷重を効果的に緩和できる。電動車両10が加速した際、駆動ユニット14の騒音及び振動が車体16に伝達することを抑制できる。
【0038】
図3に示すように、前方支持部材54は、駆動ユニット14から前方に向かうにつれて、車高方向の幅Hが小さくなる。この構成によれば、前方支持部材54を車体16の前後方向に沿って延在させることで、駆動ユニット14をより確実に支持することができるため、前方支持部材54によって十分な耐荷重性能を備えることができる。前方支持部材54の前方側の車高方向の幅Hを小さくできるため、支持構造20を軽量及びコンパクトな構造とすることができる。
【0039】
図2に示すように、車体16の平面視において、前方支持部材54が前後方向に沿って直線状に形成されるため、前方支持部材54の形成が容易であり、製造コストの削減並びに組付作業性を高めることができる。車両の加減速時に駆動ユニット14に発生する前後方向への荷重を前方支持部材54によってより効率的に受けることができる。
【0040】
前方支持部材54は、板状に形成され、前方支持部材54の板厚方向が、車体16の車幅方向である。これにより、安価に前方支持部材54を実現することができる。
【0041】
上記の実施形態をまとめると、以下のようになる。
【0042】
上記の実施形態は、車体(16)と、前記車体に取り付けられ電力によって駆動する電動機(26)を有する駆動ユニット(14)と、前記車体に支持され前記車体の車幅方向に離間する一対のトレーリングアーム(361、362)を、前記車幅方向に延在するトーションビーム(38)によって互いに接続するサスペンション装置(18)と、前記車体に対して前記駆動ユニットを支持する支持構造(20)と、を備え、前記駆動ユニットが前記トーションビームより後方に配置され、前記駆動ユニットによって前記車体に設けられる後輪(24R)を駆動する電動車両(10)であって、前記支持構造は、前記車体の前後方向において前記駆動ユニットの前方側に配置される前方支持部材(54)を有し、前記前方支持部材が、前記車体の車幅方向において前記駆動ユニットの幅(W2)よりも小さい幅(W1)を有し、前記駆動ユニットから前記車体の前方に向けて延在し、且つ前記トーションビームと交差し、前記トーションビームに対して前方側で前記車体に固定される。
【0043】
前記前方支持部材は、前記車幅方向における前記駆動ユニットの一端(281)と他端(282)との間の幅領域内に配置される。
【0044】
前記車体の前後方向と直交し、且つ前記車幅方向と直交する高さ方向から見た平面視において、前記トーションビームは、前記前方支持部材と交差する交差部(50)を有し、前記交差部は、前記前方支持部材に対して離間し、且つ上方に向けて凸状に湾曲して形成される。
【0045】
前記支持構造は、前記駆動ユニットの後方に配置される後方支持部材(56)を備え、前記後方支持部材は、前記車体に対して固定される複数の固定部(681、682)を有し、前記複数の固定部によって前記車体に固定される。
【0046】
前記前方支持部材は、前記駆動ユニットから前記前方に向かうにつれて、車高方向の幅(H)が小さくなる。
【0047】
前記車体の平面視において、前記前方支持部材が前記前後方向に沿って直線状に形成される。
【0048】
前記前方支持部材は、板状に形成され、前記前方支持部材の板厚方向が、前記車体の前記車幅方向である。
【0049】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0050】
10…電動車両
14…駆動ユニット
16…車体
18…サスペンション装置
20…支持構造
26…電動機
361、362…トレーリングアーム
38…トーションビーム
54…前方支持部材