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特開2024-128987情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128987
(43)【公開日】2024-09-25
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/04 20230101AFI20240917BHJP
   G06Q 10/08 20240101ALI20240917BHJP
   G06Q 10/083 20240101ALI20240917BHJP
   B63G 8/00 20060101ALN20240917BHJP
   G06Q 50/40 20240101ALN20240917BHJP
【FI】
G06Q10/04
G06Q10/08
G06Q10/083
B63G8/00
G06Q50/40
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024092271
(22)【出願日】2024-06-06
(62)【分割の表示】P 2022192680の分割
【原出願日】2019-05-22
(31)【優先権主張番号】P 2018127684
(32)【優先日】2018-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121131
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100168686
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 勇介
(72)【発明者】
【氏名】梅田 哲士
【テーマコード(参考)】
5L010
5L050
【Fターム(参考)】
5L010AA00
5L050CC41
(57)【要約】      (修正有)
【課題】予測対象空間の設定を最適化する情報処理装置、情報処理方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】データ収集装置、需要予測装置及び配車装置を含み、ひとつ以上の移動体との間で情報を送受信し、かつ、移動体を制御する動体制御システムにおいて、需要予測装置12は、輸送対象物を積み輸送する移動体の予測対象空間毎の需要データを取得する取得部122と、予測対象空間毎に需要データを予測する予測モデルを学習する学習部123と、予測モデルの予測精度に基づいて、予測対象空間の結合又は分割を決定する決定部126と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸送対象物を積み輸送する移動体の予測対象空間ごとの需要データを取得する取得部と、
前記予測対象空間ごとに前記需要データを予測する予測モデルを学習する学習部と、
前記予測モデルの予測精度に基づいて、前記予測対象空間の結合又は分割を決定する決定部と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記決定部は、前記予測精度が第1の閾値よりも低い前記予測対象空間を結合対象として決定する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記決定部は、前記結合対象の前記予測対象空間同士を結合する、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記決定部は、前記結合対象の前記予測対象空間と、前記結合対象の前記予測対象空間の属性に対応する属性を有する他の前記予測対象空間とを結合する、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記決定部は、前記結合対象の前記予測対象空間と、前記結合対象の前記予測対象空間に隣接する他の前記予測対象空間とを結合する、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記決定部は、前記予測精度が第2の閾値よりも高い前記予測対象空間を分割対象として決定する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記決定部は、前記需要データのデータ数が所定の基準を満たした前記予測対象空間を分割対象として決定する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記決定部は、前記予測対象空間の属性に応じて分割可否を判定する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記決定部は、時間の経過に応じて、前記予測対象空間の結合又は分割を再決定する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記決定部は、前記予測対象空間の属性の変化に応じて、前記予測対象空間の結合又は分割を再決定する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記予測対象空間は、水平方向の位置情報及び高さ方向の位置情報により定義される、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記予測対象空間は、地図情報に基づいて設定される、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記移動体は、車両であり、前記需要データは、前記輸送対象物の需要量に関するデータである、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項14】
輸送対象物を積み輸送する移動体の予測対象空間ごとの需要データを取得することと、
前記予測対象空間ごとに前記需要データを予測する予測モデルを学習することと、
前記予測モデルの予測精度に基づいて、前記予測対象空間の結合又は分割を決定することと、
を含む、プロセッサにより実行される情報処理方法。
【請求項15】
コンピュータを、
輸送対象物を積み輸送する移動体の予測対象空間ごとの需要データを取得する取得部と、
前記予測対象空間ごとに前記需要データを予測する予測モデルを学習する学習部と、
前記予測モデルの予測精度に基づいて、前記予測対象空間の結合又は分割を決定する決定部と、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ドローン及び自動運転技術等の、移動体に関する技術が多く開発されている。そのひとつとして、移動体を用いて輸送物を効率的に輸送するための技術がある。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、タクシーの需要予測に関し、地上を網目状のメッシュに区切り、メッシュごとに将来の乗客数を予測する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-043296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の技術では、予測対象空間の粒度(即ち、メッシュの大きさ)は均一且つ固定的に設定される。設定されるメッシュが小さいと、メッシュごとのデータ数が不足して、予測精度が悪いメッシュが発生するおそれがある。他方、予測精度を向上させるためにメッシュを大きく設定することも可能ではあるが、予測結果の用途を考慮すると、メッシュは小さいほど望ましいと言える。需要が発生すると予測される場所が曖昧になることは望ましくためである。しかし、上記特許文献1では、メッシュの大きさに関し何ら工夫がされていなかった。
【0006】
そこで、本開示では、予測対象空間の設定を最適化することが可能な仕組みを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示によれば、輸送対象物を積み輸送する移動体の予測対象空間ごとの需要データを取得する取得部と、前記予測対象空間ごとに前記需要データを予測する予測モデルを学習する学習部と、前記予測モデルの予測精度に基づいて、前記予測対象空間の結合又は分割を決定する決定部と、を備える情報処理装置が提供される。
【0008】
また、本開示によれば、輸送対象物を積み輸送する移動体の予測対象空間ごとの需要データを取得することと、前記予測対象空間ごとに前記需要データを予測する予測モデルを学習することと、前記予測モデルの予測精度に基づいて、前記予測対象空間の結合又は分割を決定することと、を含む、プロセッサにより実行される情報処理方法が提供される。
【0009】
また、本開示によれば、コンピュータを、輸送対象物を積み輸送する移動体の予測対象空間ごとの需要データを取得する取得部と、前記予測対象空間ごとに前記需要データを予測する予測モデルを学習する学習部と、前記予測モデルの予測精度に基づいて、前記予測対象空間の結合又は分割を決定する決定部と、として機能させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように本開示によれば、予測対象空間の設定を最適化することが可能な仕組みが提供される。なお、上記の効果は必ずしも限定的なものではなく、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書に示されたいずれかの効果、または本明細書から把握され得る他の効果が奏されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の一実施形態に係る移動体制御システムの構成の一例を示す図である。
図2】本実施形態に係る需要予測装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図3】本実施形態に係る単位セルの設定の一例を示す図である。
図4】初期状態において行われる1回目の過去の需要予測に伴うセル結合処理において生成されるセルリストの一例を示す図である。
図5】初期状態において行われる2回目の過去の需要予測に伴うセル結合処理において生成されるセルリストの一例を示す図である。
図6】初期状態において行われる3回目の過去の需要予測に伴うセル結合処理において生成されるセルリストの一例を示す図である。
図7】本実施形態に係る需要予測装置により初期状態において実行される1回目の過去の需要予測に伴うセル結合処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図8】本実施形態に係る需要予測装置により初期状態において実行される2回目以降の過去の需要予測に伴うセル結合処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図9】X回目の需要予測に伴うセル結合処理において生成されるセルリストの一例を示す図である。
図10】X回目の需要予測に伴うセル分割処理において生成されるセルリストの一例を示す図である。
図11】本実施形態に係る需要予測装置により実行されるX回目の需要予測に伴うセル分割処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図12】本実施形態に係る単位セルの地図情報に基づく設定の一例を説明するための図である。
図13】本実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。
なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.概要
1.1.システム構成
1.2.提案技術の概要
2.機能構成例
3.セルの結合及び分割
3.1.セルの結合
3.2.セルの分割
3.3.補足
4.ハードウェア構成例
5.まとめ
【0014】
<<1.概要>>
<1.1.システム構成>
図1は、本開示の一実施形態に係る移動体制御システムの構成の一例を示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係る移動体制御システム1は、ひとつ以上の移動体2との間で情報を送受信し、移動体2を制御する。
【0015】
(1)移動体2
移動体2は、陸上、空中、水上、水中又は宇宙空間等の実空間を任意に移動する。例えば、移動体2は、トラック、バス若しくはタクシー等の車両、飛行機若しくはドローン等の飛行体、船、潜水艦、又は人工衛星等として実現され得る。移動体2は、任意の輸送対象物を積み輸送することができる。輸送対象物としては、人間、動物、又は貨物等が挙げられる。本明細書では、移動体2はタクシーであり、輸送対象物は乗客(人間)であるものとし、配車のユースケースについて説明する。
【0016】
図1に示すように、移動体2は、ログ生成装置21及び端末装置22を含む。
【0017】
・ログ生成装置21
ログ生成装置21は、タクシー2による輸送対象物の輸送に関する情報を検出する。例えば、ログ生成装置21は、GNSS衛星3からのGNSS信号に基づいてタクシー2の水平方向の位置情報を検出する。さらに、ログ生成装置21は、気圧情報等の高さ方向の位置情報を検出してもよい。他にも、ログ生成装置21は、速度、加速度及び角速度等のタクシー2の移動に関する情報を検出してもよい。また、ログ生成装置21は、乗客の人数、性別、年齢及び生体情報等の、輸送対象物に関する情報を検出してもよい。
【0018】
ログ生成装置21は、検出した情報に基づいて車両動態ログデータを生成し、データ収集装置11に送信する。ログ生成装置21は、周期的に輸送に関する情報の検出、車両動態ログデータの生成及び送信を行う。その周期は、例えば1分単位である。車両動態ログデータのフォーマットの一例を、表1に示す。
【0019】
【表1】
【0020】
ここで、「CompanyID」は、タクシー2を運用するタクシー会社の識別情報である。「RadioNumber」は、タクシー2が使用する無線の識別情報である。「IsDispatch」は、タクシー2が移動体制御システム1による配車指示を受け入れ可能であるか否かを示す情報である。「Latitude」及び「Longitude」は、タクシー2の水平方向の位置情報である。車両動態ログデータは、さらに、タクシー2の高さ方向の位置情報を含んでいてもよい。「Direction」は、タクシー2が進行する方向を示す情報である。「SpeedFrom」は、タクシー2のスピードの下限を示す情報である。「SpeedTo」は、タクシー2のスピードの上限を示す情報である。「VehicleStatus」は、車両状態を示す情報である。なお、実車とは乗客を乗せている状態を示し、空車とは乗客を乗せていない状態を示し、迎車とは乗客を迎えに行く途中の状態を示す。「DriverNumber」とは、タクシー2を運転する乗務員の識別情報である。「StatusTime」とは、車両動態ログデータに対応する時刻を示す情報であり、典型的には車両動態ログデータが生成された時刻を示す情報である。
【0021】
・端末装置22
端末装置22は、配車装置13から受信した情報を出力する情報処理装置である。例えば、端末装置22は、カーナビゲーション装置、スマートフォン又はタブレット端末等により実現され、情報を視覚的に出力する。タクシー2の乗務員は、端末装置22により出力された情報に基づいて、タクシー2を運転して乗客を乗せる。
【0022】
(2)移動体制御システム1
図1に示すように、移動体制御システム1は、データ収集装置11、需要予測装置12及び配車装置13を含む。
【0023】
・データ収集装置11
データ収集装置11は、タクシー2に関するデータを収集する情報処理装置である。データ収集装置11は、移動体制御システム1の制御対象の複数のタクシー2から車両動態ログデータを収集及び蓄積する。
【0024】
データ収集装置11は、所定の期間(以下、集計期間とも称する)内に収集された車両動態ログデータを、予測対象空間ごとに集計する。データ収集装置11は、かかる集計により、集計期間におけるタクシー2の予測対象空間ごとの需要データを生成する。需要データとは、輸送対象物の需要量に関するデータである。タクシー2の需要データは、タクシー2の台数、乗客数、又は乗車回数の時間ごとのデータ、又はこれらの平均値等の統計量である。例えば、データ収集装置11は、需要データとして、集計期間内に予測対象空間に存在したタクシー2の台数を集計する。
【0025】
予測対象空間とは、需要予測装置12による需要予測の対象となる空間である。予測対象空間は、地理的な位置情報(即ち、水平方向の位置情報)により定義され得る。例えば、実空間が水平方向に125m四方の網目状に区切られ、各々の125m四方の矩形が予測対象空間として取り扱われる。予測対象空間は、地理的な位置情報に加えて、高さ方向の位置情報により定義されてもよい。例えば、実空間が1辺125mの立方体ごとに区切られ、各々の立方体が予測対象空間として取り扱われてもよい。以下では、予測対象空間をセルとも称する。セルの形状は正方形に限定されないし、セルの形状及び大きさは任意に設定され得る。
【0026】
なお、セルは、後述するように結合/分割され得る。最小単位のセルを、以下では単位セルとも称する。ひとつ以上の単位セルを結合して得らえるセルを、以下では結合セルとも称する。単位セルと結合セルとを特に区別する必要が無い場合、これらをセルと総称する。
【0027】
データ収集装置11は、集計結果に基づいて需要データを生成し、需要予測装置12に送信する。需要データのフォーマットの一例を、表2に示す。表2では、集計期間は10分である。
【0028】
【表2】
【0029】
ここで、「Timestamp」とは、集計期間の始期、終期又はそれらの間の時刻情報である。「Cell id」とは、セルの識別情報である。「Ride count」とは、集計期間(例えば、10分)内にセル内に存在したタクシー2の台数である。
【0030】
・需要予測装置12
需要予測装置12は、入力された情報に基づいて、予測対象空間ごとのタクシー2の需要を予測する情報処理装置である。需要予測装置12は、予測に用いる予測モデルの学習も行う。
【0031】
需要予測装置12は、データ収集装置11により生成された過去の需要データに基づいて、将来のある時刻(以下、予測対象時刻とも称する)におけるセルごとのタクシー2の需要を予測する。予測されるタクシー2の需要とは、例えば予測対象時刻にセル内に存在すべきタクシー2の台数であってもよいし、予測対象時刻から所定期間における乗客数、又は予測対象時刻から所定期間における乗車回数であってもよい。さらに、需要予測装置12は、外部データに基づいて、セルごとのタクシー2の需要を予測してもよい。外部データとしては、気象情報、電車遅延情報、又は交通事故情報等の、タクシー2の需要に影響を与え得るデータである。
【0032】
需要予測装置12は、予測結果を示す需要予測データを生成し、配車装置13に送信する。需要予測データのフォーマットの一例を、表3に示す。表3では、予測対象時刻は30分後である。
【0033】
【表3】
【0034】
・配車装置13
配車装置13は、需要予測データに基づいて、タクシー2の配車を行う情報処理装置である。
【0035】
配車装置13は、各々のセルの需要予測データ及び各々のタクシー2の位置情報に基づいて、予測対象時刻における各々のセルの需要を満たす台数のタクシー2が供給されるように、各々のタクシー2に配車指示を送信し得る。例えば、配車装置13は、セルの近くに位置するタクシー2のうち、予測対象時刻における当該セルの需要と同一又はそれ以上の台数のタクシー2に対し、当該セルへ移動するよう指示する。配車指示は、例えば、行き先のセルのセルID及び予測対象時刻を含む。
【0036】
配車装置13は、各々のセルの需要予測データをタクシー2に送信してもよい。その場合、各々のタクシー2の乗務員により、行き先が選択される。
【0037】
<1.2.提案技術の概要>
前提として、セルが小さいと、セルごとの需要データのデータ数が不足して学習が不十分なものとなり、予測精度が低いセルが発生するおそれがある。一方で、セルが大きいと、セルごとの需要データのデータ数が多くなるので、学習が十分に行われて高い予測精度が発揮され得る。
【0038】
そこで、需要予測装置12は、予測精度が低過ぎるセルを他のセルと結合する。これにより、結合後のセルのデータ数は結合前よりも増加するので、予測精度を向上させることができる。他方、需要予測装置12は、予測精度が高すぎるセルをより小さい複数のセルに分割する。これにより、分割後のセルは分割前のセルと比較して小さくなるので、需要が発生すると予測される場所をより詳細に特定することが可能となる。このようにして、需要予測装置12は、十分な高さの予測精度を実現可能であり、且つ需要が発生すると予測される場所を詳細に特定することが可能なセルを、設定することが可能となる。
【0039】
また、タクシーの需要は、隣り合うセルであっても大きく異なる場合がある。例えば、駅のロータリーに面した領域を含むセルか、そのひとつ隣りのセルかによって、タクシーの需要は大きく異なる。そこで、需要予測装置12は、セルごとに予測モデルを学習し、セルごとの予測モデルを用いてセルごとの需要を予測する。これにより、どのセルにおいても高い予測精度を発揮することが可能となる。
【0040】
<<2.機能構成例>>
図2は、本実施形態に係る需要予測装置12の機能構成の一例を示すブロック図である。図2に示すように、需要予測装置12は、データ蓄積部121、取得部122、学習部123、予測部124、評価部125、決定部126及び出力部127を含む。
【0041】
(1)データ蓄積部121
データ蓄積部121は、需要予測のための各種データ蓄積する機能を有する。そのようなデータの一例として、上述した需要データ、及び外部データが挙げられる。
【0042】
さらに、データ蓄積部121は、セルの属性を示す情報(以下、属性データとも称する)を蓄積する。セルの属性とは、実空間の地形、用途、又は内部に存在する建物の種別等を示す情報であり、これらの情報を位置情報に対応付けて保持する地図情報に基づいて設定される。セルの属性としては、例えば、市街地、幹線道路、繁華街、駅前、公園、河川、海、又は施設等が挙げられる。なお、セルの属性が市街地、幹線道路、繁華街又は駅前であるとは、セルに占める市街地、幹線道路、繁華街又は駅前の面積が支配的であることを意味する。同様に、セルの属性が公園、河川、海、又は施設であるとは、セルに占める公園、河川、海、又は施設の面積が支配的であることを意味する。なお、公園、河川、海、又は施設を属性とするセルでは、タクシー2が乗客を乗せることが想定されず、通常はタクシー2の需要が発生しない。
【0043】
データ蓄積部121は、蓄積した各種データを、取得部122に出力する。
【0044】
(2)取得部122
取得部122は、データ蓄積部121から需要予測のための各種データを取得する機能を有する。取得部122は、決定部126により決定されたセルごとの、需要予測のためのデータを取得する。例えば、決定部126により複数のセルが結合された場合、結合された複数のセルの各々のデータを統合することで、結合後のセルのデータを取得する。その際、例えば、取得部122は、結合された複数のセルの需要データを合算し、外部データについては平均値をとる等の統計処理を行い、属性データを統一する。
【0045】
取得部122は、取得したデータを、学習部123、予測部124及び決定部126の各々に出力する。
【0046】
(3)学習部123
学習部123は、需要予測のための予測モデルを学習する機能を有する。詳しくは、学習部123は、決定部126により決定されたセルの各々における需要予測のための予測モデルのパラメータを、データ蓄積部121により蓄積されたデータに基づき学習する。
予測モデルとは、セルごとの需要データを予測するためのモデルであり、予測部124により使用される。学習部123は、学習により得られたパラメータを、予測部124に出力する。
【0047】
(4)予測部124
予測部124は、セルごとに需要予測を行う機能を有する。詳しくは、予測部124は、決定部126により決定されたセルの各々における予測対象時刻におけるタクシー2の需要データを、データ蓄積部121により蓄積されたデータに基づき予測する。予測には、学習部123により学習されたパラメータが適用された予測モデルが用いられる。なお、予測モデルとしては、MLP(Multilayer perceptron)等のニューラルネットワーク又はXGBoost(eXtreme Gradient Boosting)等の決定木など、任意のモデルが用いられ得る。
【0048】
予測部124は、予測結果を示す情報を評価部125に出力する。
【0049】
(5)評価部125
評価部125は、セルごとに需要予測の予測精度を評価する機能を有する。詳しくは、評価部125は、予測部124により予測結果と実際の需要とを比較して、予測精度を計算する。例えば、評価部125は、需要予測結果に含まれる予測対象時刻におけるタクシー2の台数と、予測対象時刻において実際に取得された需要データに含まれるタクシー2の台数とを比較して、その一致度合いを予測精度として計算する。評価部125は、複数の予測対象時刻における比較結果の平均値等の統計量を、予測精度として計算してもよい。
【0050】
なお、評価部125は、セルごとのデータ数をカウントして、需要データのデータ数を予測精度としてもよい。需要データのデータ数とは、蓄積された需要データの数であってもよいし、蓄積された需要データにおける需要数(例えば、タクシー2の台数、乗客数、又は乗車回数)、又はその総和若しくは平均値等の統計量であってもよい。
【0051】
評価部125は、計算した予測精度を示す情報、及び予測部124による予測結果を示す情報を対応付けて、決定部126及び出力部127に出力する。
【0052】
(6)決定部126
決定部126は、セルを決定する機能を有する。詳しくは、決定部126は、セルごとの予測モデルの予測精度に基づいて、セルの結合又は分割を決定する。決定部126は、結合すると判定したセルを他のセルと結合する。また、決定部126は、分割すると決定したセルを複数のセルに分割する。このようにして、各々のセルの形状及び大きさが決定される。
【0053】
決定部126は、決定結果を示す情報を、取得部122及び学習部123の各々に出力する。
【0054】
(7)出力部127
出力部127は、需要予測装置12による予測結果を出力する機能を有する。例えば、出力部127は、予測部124によるセルごとの需要の予測結果、及び評価部125によるセルごとの予測モデルの評価結果を対応付けて、出力する。
【0055】
<<3.セルの結合及び分割>>
<3.1.セルの結合>
決定部126は、予測精度が第1の閾値よりも低いセルを結合対象として決定する。第1の閾値よりも低いとは、第1の閾値以下を意味していてもよいし、第1の閾値未満を意味していてもよい。結合後のセルのデータ数は、結合前の各々セルのデータ数の和となる。従って、結合によりデータ数が増加するので、予測精度を向上させることが可能となる。
【0056】
換言すると、決定部126は、需要データのデータ数が所定の基準を満たしたセルを結合対象として決定してもよい。例えば、決定部126は、データ数が所定の閾値を下回るセルを、結合対象として決定する。これにより、予測精度に基づき結合対象を決定する場合と同様の効果が得られる。
【0057】
決定部126は、結合対象のセルとの関係で所定の結合基準を満たす他のセルを、当該結合対象のセルと結合する。他方、決定部126は、所定の基準を満たす他のセルが存在しない場合、結合対象のセルを、結合対象から外す。以下、結合基準の一例を説明する。
【0058】
・結合基準の一例
決定部126は、結合対象のセル同士を結合してもよい。これにより、データ数が少なく予測精度が低いセル同士が結合される。結合後の結合セルのデータ数は、結合前の各々のセルのデータ数の和となるので、予測精度の向上が期待される。従って、セルの予測精度を効率的に向上させることが可能となる。
【0059】
決定部126は、結合対象のセルと、当該結合対象のセルの属性に対応する属性を有する他のセルとを結合してもよい。結合対象のセルの属性に対応する属性とは、結合対象のセルの属性と同一又は類似する属性である。類似する属性とは、需要データが類似する傾向にある属性であり、例えば、河川と海とは、同じくタクシー2が乗客を乗せることが想定されない(即ち、需要が常に0)点で、類似する属性である。対応する属性を有するセル同士は、需要データが類似する傾向にあるので、結合したセル内の位置ごとの予測精度のばらつきを抑制することが可能となる。
【0060】
決定部126は、結合対象のセルと、結合対象のセルに隣接する他のセルとを結合する。隣接するとは、セルの境界同士の少なくとも一部が接することを意味する。隣接するセル同士では、遠く離れたセル同士よりも需要データが類似する傾向にあるので、結合したセル内の位置ごとの予測精度のばらつきを抑制することが可能となる。
【0061】
以上、結合基準の一例を説明した。結合基準を満たすセルが複数ある場合、決定部126は、ランダムに、又は結合基準を満たす度合いが高いセルを優先的に結合する。
【0062】
・セル結合のタイミング
決定部126は、需要予測の度に、セルの結合を行うか否かを判定し得る。詳しくは、需要予測装置12は、予測モデルを用いた需要予測、及び予測精度の評価を行い、その評価結果に基づいて、セルの結合を行うか否かを判定する。セルの結合を行うと判定した場合、需要予測装置12は、セルの結合、及び新たな結合セルにおける予測モデルの学習を行う。
【0063】
需要予測装置12は、新たな結合セルに関し学習した予測モデルを用いて過去の需要予測を行い、予測精度の評価を行う。過去の需要予測とは、過去の第1の時刻の需要データに基づいて、第1の時刻より後の第2の時刻の需要を予測することを指す。過去の需要予測は、典型的には、セルの結合/分割後の予測モデルの評価のために行われる。なお、予測モデルの学習に用いられるデータと、過去の需要予測に用いられるデータとは、典型的には異なる。需要予測装置12は、予測精度が向上する等の所望の評価結果が得られるまで、結合のやり直し、新たな結合セルにおける予測モデルの学習、過去の需要予測及び評価を行ってもよい。その後、需要予測装置12は、新たな結合セルに関しては新たに学習した予測モデルを用いて需要予測を行う。
【0064】
まだ需要予測が行われていない初期状態においては、需要予測装置12は、過去の需要予測を行い、セルの結合を行う。結合すべきセルがすべて結合された場合、需要予測装置12は、過去の需要予測及びセルの結合を終了する。その後は、需要予測装置12は、結合セルを用いて需要予測を行う。
【0065】
・具体例
以下、図3図6を参照しながら、初期状態において行われる過去の需要予測に伴うセル結合処理の具体例を説明する。図3図6に示す例では、需要予測装置12は、セルリストを更新しながら、セルの結合を決定する。セルリストとは、セルの結合/分割に関する情報をセルごとに対応付けたリストである。
【0066】
図3は、本実施形態に係る単位セルの設定の一例を示す図である。図3では、地図30に、所定範囲内に設定された単位セルを示す情報31が重畳された様子が示されている。
図3に示した例では、実空間が水平方向に網目状に区切られ、各々の矩形が単位セルとして取り扱われる例が示されている。セルの属性は、駅前、幹線道路、繁華街、市街地又は公園のいずれかであり、セルの属性ごとに異なるハッチングが付されている。各々のセル内の数字は、セルIDである。
【0067】
図4は、初期状態において行われる1回目の過去の需要予測に伴うセル結合処理において生成されるセルリストの一例を示す図である。図4に示すように、セルリストでは、セルID、平均乗車回数、セル内インデックス、属性、予測精度及び再結合/分割可否フラグが、セルごとに対応付けられている。なお、平均乗車回数とは、セルごとの集計期間における乗車回数の平均値であり、データ数に相当する。セル内インデックスとは、セルに含まれる各々の単位セルを識別するための識別情報である。具体的には、セル内インデックスは、セルに含まれる単位セルの総数と単位セルのインデックスとを「-」で繋いだ情報である。再結合/分割可否フラグとは、再結合及び分割の対象とするか否かを示すフラグであり、OKは再結合及び分割の対象とすることを示し、NGは再結合及び分割の対象としないことを示す。
【0068】
まず、決定部126は、セルリストにセルの属性をマッピングする。次いで、決定部126は、図4に示すように、属性が公園であるセルを結合して、結合前のセルの各々に結合セルIDを割り当て、再結合/分割可否フラグをNGとする。これは、公園内ではタクシー2の需要が発生しないためである。次に、予測部124は、セルごとに(結合セルについては結合セルごとに)、過去の需要予測を行う。そして、評価部125は、予測部124による予測結果を評価して、予測精度をセルリストに書き込む。
【0069】
第1の閾値が95%であるとすると、決定部126は、予測精度が95%以上であるセルについて、再結合/分割可否フラグをNGとする。他方、決定部126は、予測精度が95%未満であるセルについて、再結合/分割可否フラグをOKとする。図4に示すように、決定部126は、予測精度が96%であるセルIDが141のセル、及び属性が公園であるセルIDが121~124の単位セルを結合した結合セルに、再結合/分割可否フラグとしてNGを付し、その他のセルにOKを付している。
【0070】
以上により、1回目の過去の需要予測に伴うセル結合処理が終了する。続いて、図5を参照しながら、2回目の過去の需要予測に伴うセル結合処理について説明する。
【0071】
図5は、初期状態において行われる2回目の過去の需要予測に伴うセル結合処理において生成されるセルリストの一例を示す図である。まず、決定部126は、図4に示したセルリストにおいて、互いに隣接し、属性が同一であり、且つ再結合/分割可否フラグがOKであるセルを結合する。例えば、決定部126は、図5に示すように、セルIDが111、112及び114である単位セルを結合し、セルIDが143、144である単位セルを結合し、セルIDが113、131、132である単位セルを結合し、セルIDが133、134及び312である単位セルを結合する。次に、予測部124は、新たな結合セルごとに過去の需要予測を行う。そして、評価部125は、予測部124による予測結果を評価して、予測精度をセルリストに書き込む。
【0072】
第1の閾値が95%であるとすると、決定部126は、新たな結合セルのうち、予測精度が95%以上である結合セルについて、再結合/分割可否フラグをNGとする。他方、決定部126は、新たな結合セルのうち、予測精度が95%未満である結合セルについて、再結合/分割可否フラグをOKとする。図5に示すように、決定部126は、予測精度が95%となった、セルIDが131、134及び312の単位セルを結合した結合セルに、再結合/分割可否フラグとしてNGを付している。さらに、決定部126は、予測精度が68%となった、セルIDが143、144の単位セルを結合した結合セル、並びに予測精度が89%となった、セルIDが113、131、132の単位セルを結合した結合セルに、再結合/分割可否フラグとしてOKを付している。他方、決定部126は、予測精度が90%であるものの、隣接する他セルがない、セルIDが111、112、114の単位セルを結合した結合セルに、再結合/分割可否フラグとしてNGを付している。
【0073】
以上により、2回目の過去の需要予測に伴うセル結合処理が終了する。続いて、図6を参照しながら、3回目の過去の需要予測に伴うセル結合処理について説明する。
【0074】
図6は、初期状態において行われる3回目の過去の需要予測に伴うセル結合処理において生成されるセルリストの一例を示す図である。まず、決定部126は、図5に示したセルリストにおいて、互いに隣接し、属性が同一であり、且つ再結合/分割可否フラグがOKであるセルを結合する。例えば、決定部126は、図6に示すように、セルIDが143、144、113、131、132である単位セルを結合する。次に、予測部124は、セルごとに過去の需要予測を行う。そして、評価部125は、予測部124による予測結果を評価して、予測精度をセルリストに書き込む。
【0075】
第1の閾値が95%であるとすると、決定部126は、新たな結合セルのうち、予測精度が95%以上である結合セルについて、再結合/分割可否フラグをNGとする。他方、決定部126は、新たな結合セルのうち、予測精度が95%未満である結合セルについて、再結合/分割可否フラグをOKとする。図5に示すように、決定部126は、予測精度が97%となった、セルIDが143、144、113、131、132である単位セルを結合した結合セルに、再結合/分割可否フラグとしてNGを付している。
【0076】
図6に示したセルリストによれば、全てのセルにおいて再結合/分割可否フラグがNGとなってので、需要予測装置12は、初期状態における過去の需要予測及びセル結合処理を終了する。
【0077】
・処理の流れ
以下、図7及び図8を参照しながら、初期状態において行われる過去の需要予測に伴うセル結合処理の流れの一例を説明する。
【0078】
図7は、本実施形態に係る需要予測装置12により初期状態において実行される1回目の過去の需要予測に伴うセル結合処理の流れの一例を示すフローチャートである。図7に示すように、まず、決定部126は、セルリストを初期化する(ステップS102)。次いで、決定部126は、セルリストにセルの属性を書き込む(ステップS104)。次に、決定部126は、所定の属性を有するセルを結合し、セルリストに結合したセルの情報、及び再結合/分割可否フラグ=NGを書き込む(ステップS106)。所定の属性としては、例えば、公園等の、タクシー2の需要が発生しないと想定される属性である。
【0079】
その後、需要予測装置12は、再結合/分割可否フラグが空であるセルを、結合可否の判断対象のセルとして、以下の説明する処理を行う。まず、取得部122は、判断対象のセルのデータ(需要データ、外部データ、及び属性データ)を取得する(ステップS108)。次いで、学習部123は、判断対象のセルの予測モデルを学習する(ステップS110)。次に、予測部124は、判断対象のセルの過去の需要予測を行う(ステップS112)。次いで、評価部125は、判断対象のセルの予測モデルを評価する(ステップS114)。そして、決定部126は、ステップS114における評価結果に基づいて、判断対象のセルの結合可否を判断し、判断結果をセルリストに書き込む(ステップS116)。次に、決定部126は、全てのセルについて結合可否を判断したかを判定する(ステップS118)。かかる判断は、セルリストの再結合/分割可否フラグがOK又はNGで全て埋まっているか否かにより行われ得る。未判断のセルが残っていると判定された場合(ステップS118/NO)、処理はステップS108に戻り、未判断のセルを判断対象のセルとして、ステップS108以降の処理が実行される。一方で、全てのセルについて結合可否を判断したと判定された場合(ステップS118/YES)、処理は終了する。
【0080】
図8は、本実施形態に係る需要予測装置12により初期状態において実行される2回目以降の過去の需要予測に伴うセル結合処理の流れの一例を示すフローチャートである。図8に示すように、まず、決定部126は、前回の過去の需要予測に伴い生成されたセルリストを取得する(ステップS202)。次いで、決定部126は、再結合/分割可否フラグ=OKであるセルを結合し、新たに結合した結合セルの再結合/分割可否フラグをクリアする(ステップS204)。
【0081】
その後、需要予測装置12は、再結合/分割可否フラグが空である結合セルを、再結合可否の判断対象のセルとして、以下の説明する処理を行う。まず、取得部122は、判断対象の結合セルのデータ(需要データ、外部データ、及び属性データ)を取得する(ステップS206)。例えば、取得部122は、判断対象の結合セルを構成する単位セルのデータを取得して統合する。次いで、学習部123は、判断対象の結合セルの予測モデルを学習する(ステップS208)。次に、予測部124は、判断対象の結合セルの過去の需要予測を行う(ステップS210)。次いで、評価部125は、判断対象の結合セルの予測モデルを評価する(ステップS212)。そして、決定部126は、ステップS212における評価結果に基づいて、判断対象の結合セルの再結合可否を判断し、判断結果をセルリストに書き込む(ステップS214)。次に、決定部126は、全ての結合セルについて再結合可否を判断したかを判定する(ステップS216)。かかる判断は、セルリストの再結合/分割可否フラグがOK又はNGで全て埋まっているか否かにより行われ得る。未判断の結合セルが残っていると判定された場合(ステップS216/NO)、処理はステップS206に戻り、未判断の結合セルを判断対象のセルとして、ステップS206以降の処理が実行される。一方で、全ての結合セルについて再結合可否を判断したと判定された場合(ステップS216/YES)、処理は終了する。
【0082】
<3.2.セルの分割>
決定部126は、予測精度が第2の閾値よりも高いセルを分割対象として決定する。第2の閾値よりも高いとは、第2の閾値以上を意味していてもよいし、第1の閾値超を意味していてもよい。ここでの第2の閾値は、第1の閾値と同じか第1の閾値を超える値である。分割後の各々のセルのデータ数は、典型的には分割前のセルのデータ数よりも少なくなるので、分割後のセルの予測精度を高すぎない程度に減少させることが可能となる。また、分割後のセルは分割前のセルと比較して小さくなるので、需要が発生すると予測される場所をより詳細に特定することが可能となる。
【0083】
換言すると、決定部126は、需要データのデータ数が所定の基準を満たしたセルを分割対象として決定してもよい。例えば、決定部126は、データ数が所定の閾値を超えた、データ数が所定の増加量を示した、又はデータ数が所定の増加率を示した等の所定の基準を満たすセルを、分割対象として決定する。これにより、予測精度に基づき分割対象を決定する場合と同様の効果が得られる。
【0084】
決定部126は、結合セルを分割対象としてもよい。即ち、一旦結合されたセルが、予測精度の向上に伴い分割され得る。このように、予測精度の向上に伴いセルの粒度を細かくすることが可能となる。
【0085】
決定部126は、セルの属性に応じてセルの分割可否を判定してもよい。例えば、決定部126は、公園、河川、海、又は施設等のタクシー2が乗客を乗せることが想定されず、タクシー2の需要が発生しない属性を有するセルは、分割しないと判定する。このようなセルでは、需要が発生しないので、細かく予測モデルを生成するメリットが薄いためである。不要な分割を避けることで、予測モデルの学習に関する処理負荷を軽減することが可能となる。
【0086】
決定部126は、分割後のセルのデータ数が所定の基準を満たすようセルを分割してもよい。例えば、決定部126は、各々の分割後のセルの需要データのデータ数が所定の閾値を超えるように、セルを分割してもよい。これにより、分割後のセルのデータ数が極端に少なくなることを防止し、予測精度が低下し過ぎないようにすることが可能となる。
【0087】
決定部126は、分割後のセルが結合セルである場合に、分割後のセルを構成する単位セルが互いに隣接するように、分割後のセルを決定してもよい。隣接するセル同士では、遠く離れたセル同士よりも、需要データが類似する傾向にあるので、分割後のセル内の位置ごとの予測精度のばらつきを抑制することが可能となる。
【0088】
・セル分割のタイミング
決定部126は、需要予測の度に、セルの分割を行うか否かを判定し得る。詳しくは、需要予測装置12は、予測モデルを用いた需要予測、及び予測精度の評価を行い、その評価結果に基づいて、セルの分割を行うか否かを判定する。セルの分割を行うと判定した場合、需要予測装置12は、セルの分割、及び分割したセルにおける予測モデルの学習を行う。
【0089】
需要予測装置12は、分割したセルに関し学習した予測モデルを用いて過去の需要予測を行い、予測精度の評価を行う。需要予測装置12は、予測精度の低下幅が所定範囲に収まる等の所望の評価結果が得られるまで、分割のやり直し、分割したセルにおける予測モデルの学習、過去の需要予測及び評価を行ってもよい。その後、需要予測装置12は、分割したセルに関しては新たに学習した予測モデルを用いて需要予測を行う。
【0090】
・具体例
以下、図9及び図10を参照しながら、需要予測に伴うセル分割処理の具体例を説明する。図9及び図10に示す例では、需要予測装置12は、セルリストを更新しながら、セルの分割を決定する。
【0091】
図9は、X回目の需要予測に伴うセル結合処理において生成されるセルリストの一例を示す図である。図9では、図3図6を参照して説明したセルの結合が行われた後、X回目の需要予測の際に生成されるセルリストが示されている。なお、Xは、1以上の整数である。予測部124は、セルごとに(結合されたセルについては結合セルごとに)、X回目の需要予測を行う。そして、評価部125は、予測部124による予測結果を評価して、予測精度をセルリストに書き込む。
【0092】
決定部126は、結合セルごとの需要データのデータ数に基づいて、分割を試みる結合セルを決定し得る。例えば、決定部126は、データ数が所定の閾値を超えた、データ数が所定の増加量を示した、又はデータ数が所定の増加率を示した等の所定の基準を満たす結合セルの分割を試みる。図9に示した例では、セルIDが143、144、113、131及び132の単位セルを結合した結合セルのデータ数が所定の増加量を示したものとし、当該結合セルが分割を試みる結合セルとして決定されたものとする。
【0093】
決定部126は、分割を試みる結合セルの分割可否を判断する。詳しくは、第2の閾値が95%であるとすると、決定部126は、分割を試みる結合セルのうち、予測精度が95%を超える結合セルについて、再結合/分割可否フラグをOKとする。他方、決定部126は、分割を試みる結合セルのうち、予測精度が95%以下である結合セルについて、再結合/分割可否フラグをNGとする。図9に示すように、決定部126は、予測精度が97%となった、セルIDが143、144、113、131及び132の単位セルを結合した結合セルに、再結合/分割可否フラグとしてOKを付している。他方、決定部126は、他の結合セルではすべて予測精度が95%以下であるので、再結合/分割可否フラグとしてNGを付している。
【0094】
その後、決定部126は、実際にセルを分割し、分割後のセルについて再分割可否を判断する。この点について、図10を参照して説明する。
【0095】
図10は、X回目の需要予測に伴うセル分割処理において生成されるセルリストの一例を示す図である。まず、決定部126は、図9に示したセルリストにおいて、再結合/分割可否フラグがOKである結合セルを分割する。例えば、決定部126は、図10に示すように、セルIDが143、144、113、131及び132の単位セルを結合した結合セルを、セルIDが143及び144である単位セルを結合した結合セルと、セルIDが113、131及び132である単位セルを結合した結合セルとに分割する。次に、予測部124は、分割後のセルごとに、過去の需要予測を行う。そして、評価部125は、予測部124による予測結果を評価して、予測精度をセルリストに書き込む。
【0096】
第2の閾値が95%であるとすると、決定部126は、分割後のセルのうち、予測精度が95%を超えるセルについて、再結合/分割可否フラグをOKとする。他方、決定部126は、分割後のセルのうち、予測精度が95%以下である結合セルについて、再結合/分割可否フラグをNGとする。図10に示すように、決定部126は、予測精度が95%となった、セルIDが143及び144である単位セルを結合した結合セルと、セルIDが113、131及び132である単位セルを結合した結合セルとの各々に、再結合/分割可否フラグとしてNGを付している。
【0097】
図10に示したセルリストによれば、全てのセルにおいて再結合/分割可否フラグがNGとなってので、セル分割処理を終了する。
【0098】
・処理の流れ
以下、図11を参照しながら、X回目の需要予測に伴うセル分割処理の流れの一例を説明する。
【0099】
図11は、本実施形態に係る需要予測装置12により実行されるX回目の需要予測に伴うセル分割処理の流れの一例を示すフローチャートである。図11に示すように、まず、取得部122は、結合セルごとのデータ数を取得する(ステップS302)。ここでのデータ数とは、例えば、需要データにおける平均乗車回数である。次いで、決定部126は、データ数が所定の増加量を示した結合セルの分割可否を判断する(ステップS304)。例えば、決定部126は、データ数が所定の増加量を示した結合セルの予測精度に基づいて、分割可否を判断する。次に、決定部126は、分割可能と判断した結合セルを分割し、セルリストを更新する(ステップS306)。
【0100】
その後、需要予測装置12は、分割後のセルを、再分割可否の判断対象のセルとして、以下に説明する処理を行う。まず、取得部122は、判断対象の分割後のセルのデータ(需要データ、外部データ、及び属性データ)を取得する(ステップS308)。詳しくは、取得部122は、判断対象の分割後のセルを構成する単位セルのデータを取得して統合する。次いで、学習部123は、判断対象の分割後のセルの予測モデルを学習する(ステップS310)。次に、予測部124は、判断対象の分割後のセルの過去の需要予測を行う(ステップS312)。次いで、評価部125は、判断対象の分割後のセルの予測モデルを評価する(ステップS314)。そして、決定部126は、ステップS314における評価結果に基づいて、判断対象の分割後のセルの再分割可否を判断し、判断結果をセルリストに書き込む(ステップS316)。次に、決定部126は、全ての分割後のセルについて再分割可否を判断したかを判定する(ステップS318)。かかる判断は、セルリストの再結合/分割可否フラグがOK又はNGで全て埋まっているか否かにより行われ得る。未判断の分割後のセルが残っていると判定された場合(ステップS318/NO)、処理はステップS308に戻り、未判断の分割後のセルを判断対象のセルとして、ステップS308以降の処理が実行される。一方で、全ての分割後のセルについて再分割可否を判断したと判定された場合(ステップS318/YES)、処理は終了する。
【0101】
<3.3.補足>
・セルの更新タイミング
決定部126は、時間の経過に応じて、セルの結合又は分割を再決定してもよい。例えば、決定部126は、所定の時間が経過した場合に、単位セルを対象として上述したセルの結合処理を行い、その後分割処理を行ってもよい。これにより、常に最新の状況に応じたセルを決定することが可能となる。
【0102】
決定部126は、セルの属性の変化に応じて、セルの結合又は分割を再決定してもよい。既存の建物の取り壊し、新たな建物の建築、又は道路の増設等により、セルの属性は変化し得る。この点、セルの属性の変化に応じてセルが更新されることにより、常に最新の状況に応じたセルを決定することが可能となる。
【0103】
・セルの生成方法
上記では、単位セルは、実空間が水平方向に網目状に区切られた正方形の形状を有するものとして説明したが、本技術はかかる例に限定されない。例えば、セルは、地図情報に基づいて設定され得る。その一例を、図12を参照して説明する。
【0104】
図12は、本実施形態に係る単位セルの地図情報に基づく設定の一例を説明するための図である。図12では、地図30に、所定範囲内に設定された単位セルを示す情報32が重畳された様子が示されている。単位セルを示す情報32によれば、駅前の属性を有するセル33A~33Cが、駅前の空間に沿って設定されている。また、幹線道路の属性を有するセル34A~34Dが、幹線道路に沿って設定されている。また、繁華街の属性を有するセル35A~35Gが、繁華街に沿って設定されている。図12では図示されていないが、市街地の属性を有するセルが、市街地に沿って設定される。単位セルは、それぞれの単位セルにおいて需要予測が最適になるように(例えば、予測精度が第1の閾値以上第2の閾値以下となるように)、できるだけ小さく設定されることが望ましい。
【0105】
また、単位セルは、建物等のタクシー2が通行できない領域を除いて設定されてもよい。即ち、単位セルは、道路等のタクシー2が通行可能な領域に設定されてもよい。さらに、単位セルは、道路の進行方向ごとに、設定されてもよい。これにより、道路ごとに、さらには進行方向ごとに需要が予測されることとなるので、需要が発生すると予測される場所をより詳細に特定することが可能となる。
【0106】
<<4.ハードウェア構成例>>
最後に、図13を参照して、本実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成について説明する。図13は、本実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。なお、図13に示す情報処理装置900は、例えば、図2に示した需要予測装置12を実現し得る。本実施形態に係る需要予測装置12による情報処理は、ソフトウェアと、以下に説明するハードウェアとの協働により実現される。
【0107】
図13に示すように、情報処理装置900は、CPU(Central Processing Unit)901、ROM(Read Only Memory)902、RAM(Random Access Memory)903及びホストバス904aを備える。また、情報処理装置900は、ブリッジ904、外部バス904b、インタフェース905、入力装置906、出力装置907、ストレージ装置908、ドライブ909、接続ポート911及び通信装置913を備える。情報処理装置900は、CPU901に代えて、又はこれとともに、電気回路、DSP若しくはASIC等の処理回路を有してもよい。
【0108】
CPU901は、演算処理装置および制御装置として機能し、各種プログラムに従って情報処理装置900内の動作全般を制御する。また、CPU901は、マイクロプロセッサであってもよい。ROM902は、CPU901が使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する。RAM903は、CPU901の実行において使用するプログラムや、その実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する。CPU901は、例えば、図2に示す取得部122、学習部123、予測部124、評価部125、決定部126及び出力部127を形成し得る。
【0109】
CPU901、ROM902及びRAM903は、CPUバスなどを含むホストバス904aにより相互に接続されている。ホストバス904aは、ブリッジ904を介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バスなどの外部バス904bに接続されている。なお、必ずしもホストバス904a、ブリッジ904および外部バス904bを分離構成する必要はなく、1つのバスにこれらの機能を実装してもよい。
【0110】
入力装置906は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、マイクロフォン、スイッチ及びレバー等、ユーザによって情報が入力される装置によって実現される。また、入力装置906は、例えば、赤外線やその他の電波を利用したリモートコントロール装置であってもよいし、情報処理装置900の操作に対応した携帯電話やPDA等の外部接続機器であってもよい。さらに、入力装置906は、例えば、上記の入力手段を用いてユーザにより入力された情報に基づいて入力信号を生成し、CPU901に出力する入力制御回路などを含んでいてもよい。情報処理装置900のユーザは、この入力装置906を操作することにより、情報処理装置900に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
【0111】
出力装置907は、取得した情報をユーザに対して視覚的又は聴覚的に通知することが可能な装置で形成される。このような装置として、CRTディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、ELディスプレイ装置、レーザープロジェクタ、LEDプロジェクタ及びランプ等の表示装置や、スピーカ及びヘッドホン等の音声出力装置や、プリンタ装置等がある。出力装置907は、例えば、情報処理装置900が行った各種処理により得られた結果を出力する。具体的には、表示装置は、情報処理装置900が行った各種処理により得られた結果を、テキスト、イメージ、表、グラフ等、様々な形式で視覚的に表示する。他方、音声出力装置は、再生された音声データや音響データ等からなるオーディオ信号をアナログ信号に変換して聴覚的に出力する。
【0112】
ストレージ装置908は、情報処理装置900の記憶部の一例として形成されたデータ格納用の装置である。ストレージ装置908は、例えば、HDD等の磁気記憶デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス又は光磁気記憶デバイス等により実現される。ストレージ装置908は、記憶媒体、記憶媒体にデータを記録する記録装置、記憶媒体からデータを読み出す読出し装置および記憶媒体に記録されたデータを削除する削除装置などを含んでもよい。このストレージ装置908は、CPU901が実行するプログラムや各種データ及び外部から取得した各種のデータ等を格納する。ストレージ装置908は、例えば、図2に示すデータ蓄積部121を形成し得る。
【0113】
ドライブ909は、記憶媒体用リーダライタであり、情報処理装置900に内蔵、あるいは外付けされる。ドライブ909は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリ等のリムーバブル記憶媒体に記録されている情報を読み出して、RAM903に出力する。また、ドライブ909は、リムーバブル記憶媒体に情報を書き込むこともできる。
【0114】
接続ポート911は、外部機器と接続されるインタフェースであって、例えばUSB(Universal Serial Bus)などによりデータ伝送可能な外部機器との接続口である。
【0115】
通信装置913は、例えば、ネットワーク920に接続するための通信デバイス等で形成された通信インタフェースである。通信装置913は、例えば、有線若しくは無線LAN(Local Area Network)、LTE(Long Term Evolution)、Bluetooth(登録商標)又はWUSB(Wireless USB)用の通信カード等である。また、通信装置913は、光通信用のルータ、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)用のルータ又は各種通信用のモデム等であってもよい。この通信装置913は、例えば、インターネットや他の通信機器との間で、例えばTCP/IP等の所定のプロトコルに則して信号等を送受信することができる。本実施形態では、通信装置913は、需要データ及び外部データを受信し、需要予測データ又は配車指示を端末装置22に送信する。
【0116】
なお、ネットワーク920は、ネットワーク920に接続されている装置から送信される情報の有線、または無線の伝送路である。例えば、ネットワーク920は、インターネット、電話回線網、衛星通信網などの公衆回線網や、Ethernet(登録商標)を含む各種のLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)などを含んでもよい。また、ネットワーク920は、IP-VPN(Internet Protocol-Virtual Private Network)などの専用回線網を含んでもよい。
【0117】
以上、本実施形態に係る情報処理装置900の機能を実現可能なハードウェア構成の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材を用いて実現されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより実現されていてもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用するハードウェア構成を変更することが可能である。
【0118】
なお、上述のような本実施形態に係る情報処理装置900の各機能を実現するためのコンピュータプログラムを作製し、PC等に実装することが可能である。また、このようなコンピュータプログラムが格納された、コンピュータで読み取り可能な記録媒体も提供することができる。記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等である。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信されてもよい。
【0119】
<<5.まとめ>>
以上、図1図13を参照して、本開示の一実施形態について詳細に説明した。上記説明したように、本実施形態に係る需要予測装置12は、輸送対象物を積み輸送する移動体のセルごとの需要データを取得し、セルごとに需要データを予測する予測モデルを学習する。そして、需要予測装置12は、予測モデルの予測精度に基づいて、セルの結合又は分割を決定する。例えば、需要予測装置12は、予測精度が低過ぎるセルを他のセルと結合する。これにより、結合後のセルのデータ数は結合前よりも増加するので、予測精度を向上させることができる。他方、需要予測装置12は、予測精度が高すぎるセルをより小さい複数のセルに分割する。これにより、分割後のセルは分割前のセルと比較して小さくなるので、需要が発生すると予測される場所をより詳細に特定することが可能となる。このようにして、需要予測装置12は、十分な高さの予測精度を実現可能であり、且つ需要が発生すると予測される場所を詳細に特定することが可能なセルを、設定することが可能となる。また、需要予測装置12は、セルごとに予測モデルを学習することで、どのセルにおいても高い予測精度を発揮することが可能となる。
【0120】
例えば、需要予測装置12は、タクシーの需要予測に関しては、全てのセルにおいて信頼性の高いタクシーの需要発生を予測することができる。これにより、タクシーの最適な配車が実現されるので、無駄な流し営業時間を削減し、タクシーの生産性を向上させることが可能となる。
【0121】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0122】
例えば、上記実施形態では、タクシーの配車のユースケースについて説明したが、本技術の適用先はかかる例に限定されない。例えば、本技術は、走行経路を柔軟に設定可能な乗合タクシー又はバスの、走行経路の設定のために用いられてもよい。この場合、タクシーの配車の例と同様に乗合タクシー又はバスの需要が予測されて、需要が多いと予測されたセルを優先的に通るように走行経路が設定される。また、本技術は、宅配物の集荷のために用いられてもよい。この場合、タクシーの配車の例と同様に集荷用のトラックの需要が予測されて、需要が多いと予測されたセルを優先的に通るようにトラックの走行経路が設定される。また、本技術は、駐車場の選定のために用いられてもよい。この場合、セルごとに駐車場の空きが予測されて、空きが多いと予測されたセルへ移動するように配車指示が通知される。
【0123】
また、本明細書においてフローチャートを用いて説明した処理は、必ずしも図示された順序で実行されなくてもよい。いくつかの処理ステップは、並列的に実行されてもよい。
また、追加的な処理ステップが採用されてもよく、一部の処理ステップが省略されてもよい。
【0124】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0125】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(1)
輸送対象物を積み輸送する移動体の予測対象空間ごとの需要データを取得する取得部と、
前記予測対象空間ごとに前記需要データを予測する予測モデルを学習する学習部と、
前記予測モデルの予測精度に基づいて、前記予測対象空間の結合又は分割を決定する決定部と、
を備える情報処理装置。
(2)
前記決定部は、前記予測精度が第1の閾値よりも低い前記予測対象空間を結合対象として決定する、前記(1)に記載の情報処理装置。
(3)
前記決定部は、前記結合対象の前記予測対象空間同士を結合する、前記(2)に記載の情報処理装置。
(4)
前記決定部は、前記結合対象の前記予測対象空間と、前記結合対象の前記予測対象空間の属性に対応する属性を有する他の前記予測対象空間とを結合する、前記(2)又は(3)に記載の情報処理装置。
(5)
前記決定部は、前記結合対象の前記予測対象空間と、前記結合対象の前記予測対象空間に隣接する他の前記予測対象空間とを結合する、前記(2)~(4)のいずれか一項に記載の情報処理装置。
(6)
前記決定部は、前記予測精度が第2の閾値よりも高い前記予測対象空間を分割対象として決定する、前記(1)~(5)のいずれか一項に記載の情報処理装置。
(7)
前記決定部は、前記需要データのデータ数が所定の基準を満たした前記予測対象空間を分割対象として決定する、前記(1)~(6)のいずれか一項に記載の情報処理装置。
(8)
前記決定部は、前記予測対象空間の属性に応じて分割可否を判定する、前記(1)~(7)のいずれか一項に記載の情報処理装置。
(9)
前記決定部は、時間の経過に応じて、前記予測対象空間の結合又は分割を再決定する、前記(1)~(8)のいずれか一項に記載の情報処理装置。
(10)
前記決定部は、前記予測対象空間の属性の変化に応じて、前記予測対象空間の結合又は分割を再決定する、前記(1)~(9)のいずれか一項に記載の情報処理装置。
(11)
前記予測対象空間は、水平方向の位置情報及び高さ方向の位置情報により定義される、前記(1)~(10)のいずれか一項に記載の情報処理装置。
(12)
前記予測対象空間は、地図情報に基づいて設定される、前記(1)~(11)のいずれか一項に記載の情報処理装置。
(13)
前記移動体は、車両であり、前記需要データは、前記輸送対象物の需要量に関するデータである、前記(1)~(12)のいずれか一項に記載の情報処理装置。
(14)
輸送対象物を積み輸送する移動体の予測対象空間ごとの需要データを取得することと、 前記予測対象空間ごとに前記需要データを予測する予測モデルを学習することと、
前記予測モデルの予測精度に基づいて、前記予測対象空間の結合又は分割を決定することと、
を含む、プロセッサにより実行される情報処理方法。
(15)
コンピュータを、
輸送対象物を積み輸送する移動体の予測対象空間ごとの需要データを取得する取得部と、
前記予測対象空間ごとに前記需要データを予測する予測モデルを学習する学習部と、
前記予測モデルの予測精度に基づいて、前記予測対象空間の結合又は分割を決定する決定部と、
として機能させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0126】
1 移動体制御システム
2 移動体、タクシー
3 GNSS衛星
11 データ収集装置
12 需要予測装置
13 配車装置
21 ログ生成装置
22 端末装置
121 データ蓄積部
122 取得部
123 学習部
124 予測部
125 評価部
126 決定部
127 出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2024-06-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸送対象物を輸送する移動体の需要データを、道路を含む予測対象空間ごとに予測する予測部と、
前記予測対象空間ごとの前記需要データに基づいて、前記移動体が優先的に通る前記予測対象空間を設定し、前記移動体が移動する経路を設定する設定部と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記予測部は、道路の進行方向ごとに前記需要データを予測する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記予測部は、前記予測対象空間ごとに駐車場の空きを予測し、
前記設定部は、前記予測対象空間ごとの駐車場の空きの予測結果に基づいて、前記移動体が移動する前記予測対象空間を設定する、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記予測対象空間の結合又は分割を決定する決定部を、
さらに備える請求項1~3のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記決定部は、前記予測対象空間の属性の変化に応じて、前記予測対象空間の結合又は分割を決定する、
請求項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記属性は、実空間の地形、用途、又は、内部に存在する建物の種別を示す情報である、
請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記属性は、市街地、幹線道路、繁華街、駅前、公園、河川、海、又は、施設のうち1つ以上を含む、
請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記予測部は、前記需要データを予測対象空間ごとに予測する予測モデルを用いて、前記需要データを前記予測対象空間ごとに予測し、
前記決定部は、前記予測モデルの予測精度、又は、前記需要データのデータ数に基づいて、前記予測対象空間の結合又は分割を決定する、
請求項4~7のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記決定部は、予測精度閾値より高い前記予測対象空間を分割対象として決定する、
請求項に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記需要データを予測対象空間ごとに予測する予測モデルを学習する学習部を
さらに備え、
前記予測部は、前記予測モデルを用いて、前記需要データを前記予測対象空間ごとに予測する
請求項1~7のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記学習部は、前記予測対象空間ごとに前記予測モデルを学習する
請求項10に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記移動体は、車両、飛行体、船、潜水艦、又は、人工衛星であり、
前記輸送対象物は、人間、動物、又は、貨物である
請求項1~11のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記予測対象空間は、水平方向の位置情報及び高さ方向の位置情報により定義される
請求項1~12のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記予測対象空間は、地図情報に基づいて設定される、
請求項1~13のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項15】
前記需要データは、前記輸送対象物の需要量に関するデータである、
請求項1~14のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項16】
情報処理装置が、
輸送対象物を輸送する移動体の需要データを、道路を含む予測対象空間ごとに予測することと、
前記予測対象空間ごとの前記需要データに基づいて、前記移動体が優先的に通る前記予測対象空間を設定し、前記移動体が移動する経路を設定することと、
を含む情報処理方法。
【請求項17】
コンピュータに、
輸送対象物を輸送する移動体の需要データを、道路を含む予測対象空間ごとに予測することと、
前記予測対象空間ごとの前記需要データに基づいて、前記移動体が優先的に通る前記予測対象空間を設定し、前記移動体が移動する経路を設定することと、
を含む処理を実行させるためのプログラム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
開示では、予測対象空間ごとの需要データに基づいて移動体の経路を設定することが可能な仕組みを提案する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本開示によれば、輸送対象物を輸送する移動体の需要データを、道路を含む予測対象空間ごとに予測する予測部と、前記予測対象空間ごとの前記需要データに基づいて、前記移動体が優先的に通る前記予測対象空間を設定し、前記移動体が移動する経路を設定する設定部と、を備える情報処理装置が提供される。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
また、本開示によれば、情報処理装置が、輸送対象物を輸送する移動体の需要データを、道路を含む予測対象空間ごとに予測することと、前記予測対象空間ごとの前記需要データに基づいて、前記移動体が優先的に通る前記予測対象空間を設定し、前記移動体が移動する経路を設定することと、を含む情報処理方法が提供される。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
また、本開示によれば、コンピュータに、輸送対象物を輸送する移動体の需要データを、道路を含む予測対象空間ごとに予測することと、前記予測対象空間ごとの前記需要データに基づいて、前記移動体が優先的に通る前記予測対象空間を設定し、前記移動体が移動する経路を設定することと、を含む処理を実行させるためのプログラムが提供される。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
以上説明したように本開示によれば、予測対象空間ごとの需要データに基づいて移動体の経路を設定することが可能な仕組みが提供される。なお、上記の効果は必ずしも限定的なものではなく、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書に示されたいずれかの効果、または本明細書から把握され得る他の効果が奏されてもよい。