(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129000
(43)【公開日】2024-09-26
(54)【発明の名称】音響共振器およびフィルタデバイス
(51)【国際特許分類】
H03H 9/25 20060101AFI20240918BHJP
H03H 9/145 20060101ALI20240918BHJP
H03H 9/17 20060101ALI20240918BHJP
H03H 9/54 20060101ALI20240918BHJP
H03H 9/64 20060101ALI20240918BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
H03H9/25 Z
H03H9/145 C
H03H9/17 F
H03H9/54 Z
H03H9/64 Z
B81B3/00
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024067671
(22)【出願日】2024-04-18
(62)【分割の表示】P 2022014153の分割
【原出願日】2022-02-01
(31)【優先権主張番号】63/144,977
(32)【優先日】2021-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/388,745
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダイヤー グレッグ
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア ブライアント
(72)【発明者】
【氏名】コスケラ ジュリウス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】通信機器に使用するための音響共振器を用いる無線周波数フィルタを提供する。
【解決手段】方向励起フィルムバルク音響共振器(XBAR)100は、前面112及び背面114を有する圧電プレート110を含む。背面は、基板120の表面に取り付けられ、圧電プレートの一部は、基板内のキャビティ140に跨るダイアフラム115を形成する。前面に形成される薄膜導体パターンは、マルチマーク・インターデジタル変換器(IDT)130を含み、IDTのフィンガ136はダイアフラム上にある。IDTは、長さ方向に2つ以上のセクションに分割され、各セクションは、各他のセクションのマークとは異なるそれぞれのマークを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面及び背面を有する圧電プレートであって、前記背面は基板の表面に取り付けられ、前記圧電プレートの一部は、前記基板のキャビティにまたがるダイアフラムを形成する、圧電プレートと、前記前面上の導体パターンであって、前記導体パターンがマルチマーク・インターデジタル変換器(IDT)を備え、前記IDTのフィンガが前記ダイアフラム上にある、導体パターンと、を備える、音響共振器。
【請求項2】
一次剪断音響モードは、前記圧電プレートの前記IDTによって励起される、請求項1に記載の音響共振器。
【請求項3】
前記一次剪断音響モードは、前記IDTに印加される無線周波数信号に応答して励起される、請求項2に記載の音響共振器。
【請求項4】
前記IDTのマークは、前記IDTの長さに沿って変化する、請求項1に記載の音響共振器。
【請求項5】
前記IDTは、長さ方向に2つ以上のセクションに分割され、各セクションは、各他のセクションのマークとは異なるそれぞれのマークを有する、請求項1に記載の音響共振器。
【請求項6】
前記IDTのマークは、前記IDTの長さ方向に連続的に変化する、請求項1に記載の音響共振器。
【請求項7】
前記IDTのピッチは、前記IDTの全体にわたって一定である、請求項1に記載の音響共振器。
【請求項8】
前記IDTのピッチは、前記IDTの長さ方向に変化する、請求項1に記載の音響共振器。
【請求項9】
前記IDTは、長さ方向に2つ以上のセクションに分割され、各セクションは、各他のセクションのピッチとは異なるそれぞれのピッチを有する、請求項8に記載の音響共振器。
【請求項10】
前記IDTのピッチは、前記IDTの長さ方向に連続的に変化する、請求項8に記載の音響共振器。
【請求項11】
前面及び背面を有する圧電プレートであって、前記背面は基板の表面に取り付けられ、前記圧電プレートの一部は、前記基板内のそれぞれのキャビティにまたがる複数のダイアフラムを形成する、圧電プレートと、前記前面上の導体パターンであって、前記導体パターンが複数のインターデジタル変換器(IDT)を備え、前記複数のIDTのフィンガが複数のダイアフラムのそれぞれのダイアフラム上にある、導体パターンと、を備える、フィルタデバイスであって、前記複数のIDTのうちの第一のIDTは、マルチマークIDTである、フィルタデバイス。
【請求項12】
一次剪断音響モードは、前記圧電プレートの前記複数のIDTのそれぞれのIDTによって励起される、請求項11に記載のフィルタデバイス。
【請求項13】
前記一次剪断音響モードは、前記それぞれのIDTに印加されるそれぞれの無線周波数信号に応答して励起される、請求項12に記載のフィルタデバイス。
【請求項14】
前記複数のIDTのマークの全ては、マルチマークIDTである、請求項11に記載のフィルタデバイス。
【請求項15】
前記第一のIDTは、長さ方向に2つ以上のセクションに分割され、各セクションは、各他のセクションのマークとは異なるそれぞれのマークを有する、請求項11に記載のフィルタデバイス。
【請求項16】
前記第一のIDTのマークは、前記第一のIDTの長さ方向に連続的に変化する、請求項11に記載のフィルタデバイス。
【請求項17】
前記第一のIDTのピッチは、前記第一のIDTの全体にわたって一定である、請求項11に記載のフィルタデバイス。
【請求項18】
前記第一のIDTのピッチは、前記第一のIDTの長さ方向に変化する、請求項11に記載のフィルタデバイス。
【請求項19】
前記第一のIDTは、長さ方向に2つ以上のセクションに分割され、各セクションは、各他のセクションのピッチとは異なるそれぞれのピッチを有する、請求項18に記載のフィルタデバイス。
【請求項20】
前記第一のIDTのピッチは、前記第一のIDTの長さ方向に連続的に変化する、請求項18に記載のフィルタデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(著作権及びトレードドレスの通知)
本特許文書の開示の一部には、著作権の保護の対象となる材料を含む。本特許文書は、所有者のトレードドレスである事項又はトレードドレスとなり得る事項を図示及び/又は記載し得る。著作権及びトレードドレスの所有者は、その特許開示が米国特許商標庁の特許ファイル又は記録内にあるので、当該特許開示を任意の者が複製することに異議はないが、それ以外は何であれ、全ての著作権及びトレードドレス権を留保する。
【0002】
(関連出願情報)
本特許は、2021年2月3日に出願された「CHIRPED XBAR ELECTRODES」と題する仮特許出願第63/144,977号の優先権を主張し、その内容全体は参照によりここに組み込まれるものとする。
【0003】
本特許は、2020年11月9日に出願された「TRANSVERSELY-EXCITED FILM BULK ACOUSTIC RESONATOR WITH MULTI-PITCH INTERDIGITAL TRANSDUCER」と題する特許文献1に関連する。
【0004】
本開示は、音響波共振器を用いる無線周波数フィルタに関し、特に通信機器に使用するためのフィルタに関する。
【背景技術】
【0005】
無線周波数(RF)フィルタは、一部の周波数を通過させ、他の周波数を停止させるように構成された2ポートデバイスであり、「通過」は比較的低い信号損失で送信することを意味し、「阻止」はブロックすること又は大幅に減衰させることを意味する。フィルタを通過する周波数の範囲は、フィルタの「通過帯域」と呼ばれる。このようなフィルタによって阻止される周波数の範囲は、フィルタの「阻止帯域」と呼ばれる。一般的なRFフィルタは、少なくとも1つの通過帯域と、少なくとも1つの阻止帯域を有する。通過帯域又は阻止帯域の特定の要件は、特定の用途に依存する。例えば、「通過帯域」は、フィルタの挿入損失が1dB、2dB、又は3dBなどの定義された値よりも優れている周波数範囲として定義され得る。「阻止帯域」は、フィルタの拒否が用途に応じて20dB、30dB、40dB、又はそれ以上などの定義された値よりも大きい周波数範囲として定義され得る。
【0006】
RFフィルタは、情報が無線リンクを介して送信される通信システムで使用される。例えば、RFフィルタは、セルラーベースステーション、携帯電話及びコンピューティングデバイス、衛星トランシーバ及び地上局、IoT(Internet of Things)デバイス、ラップトップコンピュータ及びタブレット、固定ポイント無線リンク、及び他の通信システムのRFフロントエンドにあり得る。RFフィルタは、レーダ、電子及び情報戦システムでも使用される。
【0007】
RFフィルタは、通常、特定の用途ごとに、挿入損失、拒否、絶縁、電力処理、直線性、サイズ及びコストなどの性能パラメータ間の最良の妥協点を実現するために多くの設計上のトレードオフを必要とする。特定の設計及び製造方法と機能強化は、これらの要件の1つ又は複数を同時に実現できる。
【0008】
無線システムにおけるRFフィルタの性能の向上は、システム性能に幅広い影響を与える可能性がある。RFフィルタの改善を活用して、セルサイズの拡大、バッテリ寿命の延長、データレートの向上、ネットワーク容量の拡大、コストの削減、セキュリティの強化、信頼性の向上などのシステム性能の改善を実現できる。これらの改善は、無線システムの多くのレベルで、例えば、RFモジュール、RFトランシーバ、モバイル又は固定サブシステム、又はネットワークレベルなど、個別に又は組み合わせて実現できる。
【0009】
現在の通信システム用の高性能RFフィルタは、一般に、弾性表面波(SAW)共振器、バルク音響波(BAW)共振器、フィルムバルク音響波共振器(FBAR)、及びその他のタイプの音響共振器を含む音響波共振器を組み込んでいる。しかしながら、これらの既存技術は、将来の通信ネットワークで提案されているより高い周波数及び帯域幅での使用には適していない。
【0010】
通信チャネルの帯域幅をより広くしたいという要望は、必然的に高い周波数の通信帯域を使用することになる。携帯電話ネットワークの無線アクセス技術は、3GPP(3rdGeneration Partnership Project)(登録商標)によって標準化されている。第五世代モバイルネットワークの無線アクセス技術は、5G NR(new radio)規格で定義されている。5G NR規格では、いくつかの新しい通信帯域が定義されている。そのうちの2つが、3300MHz~4200MHzの周波数帯を使用するn77と、4400MHz~5000MHzの周波数帯を使用するn79である。帯域n77及び帯域n79の両方は、時分割多重(TDD)を使用しており、その結果、帯域n77及び/又は帯域n79で動作する通信デバイスは、アップリンク及びダウンリンク通信の両方で、同じ周波数を使用する。帯域n77及び帯域n79のバンドパスフィルタは、通信機器の送信電力に対応できるものでなければならない。5GHzと6GHzのWiFi帯域にも、高い周波数と広い帯域幅が必要である。5G NR規格では、24.25GHz~40GHzの周波数を有するミリ波通信帯も定義されている。
【0011】
横方向励起フィルムバルク音響共振器(XBAR)は、マイクロ波フィルタに使用するための音響共振器構造である。XBARは、「TRANSVERSELY EXCITED FILM BULK ACOUSTIC RESONATOR」と題する特許文献2に記載されている。XBAR共振器は、単結晶圧電材料の薄い浮遊層又はダイアフラム上に形成されたインターデジタル変換器(IDT)を備えている。IDTは、第一のバスバーから延びる第一のセットの平行フィンガと、第二のバスバーから延びる第二のセットの平行フィンガとを含む。第一及び第二の平行フィンガは、インターリーブされている。IDTに印加されたマイクロ波信号により、圧電ダイアフラムに剪断一次音響波が励起される。XBAR共振器は、非常に高い電気機械結合と高い周波数性能を提供する。XBAR共振器は、バンドリジェクトフィルタ、バンドパスフィルタ、デュプレクサ、マルチプレクサなど、様々なRFフィルタに使用することができる。XBARは、3GHzを超える周波数を有する通信帯域用フィルタに適している。マトリックスXBARフィルタは、1GHz~3GHzの周波数にも適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許出願番号第17/093239号
【特許文献2】米国特許第10491291号明細書
【特許文献3】米国特許第10601392号明細書
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】横方向励起フィルムバルク音響共振器(XBAR)の概略平面図、2つの概略断面図、及び詳細図を含む。
【
図3】XBARの剪断水平音響モードを示す図である。
【
図4】マルチマーク・インターデジタル変換器(IDT)の平面図である。
【
図6】従来のIDT及び別のマルチマークIDTについての、IDTの長さに沿った位置の関数としてのマークのグラフである。
【
図7】従来のIDTを有するXBARを用いたフィルタとマルチマークIDTを有するXBARを用いたフィルタについて、周波数の関数としての入力伝達関数の大きさのグラフである。
【
図9】マルチマーク・マルチピッチIDTの平面図である。
【
図10】別のマルチマーク・マルチピッチIDTの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この説明全体を通して、図に表示される要素には、3桁又は4桁の参照番号が割り当てられる。ここで、下2桁は要素に固有であり、上1桁又は上2桁は要素が最初に導入された図番号である。図と共に説明されていない要素は、同じ参照番号を有する前述の要素と同じ特性及び機能を有すると推定され得る。
【0015】
(装置の説明)
図1は、横方向励起フィルムバルク音響共振器(XBAR)100の簡略化された概略上面図、直交断面図、及び詳細断面図を示す。XBAR100などのXBARタイプの共振器は、バンドリジェクトフィルタ、バンドパスフィルタ、デュプレクサ、及びマルチプレクサを含む様々なRFフィルタで使用し得る。XBARは、周波数が3GHzを超える通信帯域のフィルタでの使用に特に適している。
【0016】
XBAR100は、それぞれ平行な前面112及び背面114を有する圧電プレート110の表面上に形成された薄膜導体パターンから構成される。圧電プレートは、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、ケイ酸ランタンガリウム、窒化ガリウム、又は窒化アルミニウムなどの圧電材料の薄い単結晶層である。圧電プレートは、前面と背面に対するX、Y、Z結晶軸の配向が既知で一貫しているようにカットされる。圧電プレートは、Zカットであり、すなわち、Z軸が前面112及び背面114に垂直である。しかしながら、XBARは、他の結晶学的配向を有する圧電プレート上に製造されてもよい。
【0017】
圧電プレート110の背面114は、基板に形成されたキャビティ140にまたがるダイアフラム115を形成する圧電プレート110の部分を除いて、基板120の表面に取り付けられている。キャビティにまたがる圧電プレートの部分は、マイクロフォンのダイアフラムに物理的に類似しているため、本明細書では「ダイアフラム」115と呼ばれる。
図1に示すように、ダイアフラム115は、キャビティ140の周囲145の全ての周りで圧電プレート110の残りの部分と隣接している。この文脈において、「隣接」とは、「介在物なしで連続的に接続されている」ことを意味する。他の構成では、ダイアフラム115は、キャビティ140の周囲145の少なくとも50%の周りで圧電プレートと隣接していてもよい。
【0018】
基板120は、圧電プレート110に機械的支持を提供する。基板120は、例えば、シリコン、サファイア、石英、又は他の何らかの材料、あるいは材料の組み合わせであり得る。圧電プレート110の背面114は、ウェーハボンディングプロセスを用いて基板120に取り付けてもよい。代替として、圧電プレート110は、基板120上に成長させても、あるいは他の何らかの方法で基板に取り付けてもよい。圧電プレート110は、基板に直接取り付けても、あるいは1つ又は複数の中間材料層を介して基板に取り付けてもよい(
図1に図示せず)。
【0019】
「キャビティ」は、「中実体内の空の空間」という従来の意味を有する。キャビティ140は、(断面A-A及び断面B-Bに示すように)基板120を完全に貫通する穴であってもよいし、ダイアフラム115の下の基板120の凹部であってもよい。キャビティ140は、例えば、圧電プレート110と基板120とが取り付け合わされる前又は後に、基板120を選択的にエッチングすることによって形成されてもよい。
【0020】
XBAR100の導体パターンは、インターデジタル変換器(IDT)130を含む。
IDT130は、第一のバスバー132から延びるフィンガ136などの第一の複数の平行なフィンガと、第二のバスバー134から延びる第二の複数のフィンガとを含む。第一及び第二の複数の平行なフィンガは、インターリーブされる。インターリーブされたフィンガは、一般にIDTの「アパーチャ」と呼ばれる距離APにわたってオーバーラップする。IDT130の最も外側のフィンガ間の中心間距離Lは、IDTの「長さ」である。
【0021】
第一及び第二のバスバー132、134は、第一100の端子として機能する。IDT130の2つのバスバー132、134の間に印加される無線周波数又はマイクロ波信号は、圧電プレート110内の音波を励起する。以下で詳述するように、一次音響モードは、音響エネルギーが圧電プレート110の表面に実質的に直交する方向に沿って伝播するバルク剪断モードであり、これはまた、IDTフィンガによって生成された電界の方向に垂直又は横方向である。したがって、XBARは、横方向励起フィルムバルク波共振器と見なされる。
【0022】
IDT130は、少なくともIDT130のフィンガがキャビティ140にまたがっている、又はその上に懸架されているダイアフラム115上に配置されるように、圧電プレート110上に配置される。
図1に示すように、キャビティ140は、IDT130のアパーチャAP及び長さLよりも広い範囲を有する長方形の形状を有する。XBARのキャビティは、規則的なポリゴンや不規則なポリゴンなど、様々な形状を有してもよい。XBARのキャビティは、辺の数が4つより多くても、少なくてもよく、それらの辺は直線であっても、あるいは曲線であってもよい。
【0023】
図1の提示を容易にするために、IDTフィンガの幾何学的ピッチ及び幅は、XBARの長さ(寸法L)及びアパーチャ(寸法AP)に関して著しく誇張されている。一般的なXBARは、IDT110に10を超える平行なフィンガを有する。XBARは、IDT110に数百、場合によっては数千の平行なフィンガを有し得る。同様に、断面図のフィンガの太さは著しく誇張されている。
【0024】
詳細な概略断面図を参照すると、前面誘電体層150は、圧電プレート110の前面に、任意選択で形成することができる。XBARの「前面」は、定義上、基板とは反対側を向いている表面である。前面誘電体層150は、IDTフィンガ(例えば、IDTフィンガ138b)の間にのみ形成され得るか、あるいは誘電体層がIDTフィンガ(例えば、IDTフィンガ138a)の両方の間及び上に形成されるようにブランケット層として堆積され得る。前面誘電体層150は、二酸化ケイ素又は窒化ケイ素などの非圧電誘電体材料であり得る。前面誘電体層150の厚さは、典型的には、圧電プレートの厚さ以下である。前面誘電体層150は、2つ以上の材料の複数の層から形成され得る。
【0025】
IDTフィンガ138a及び138bは、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ベリリウム、金、タングステン、モリブデン、又は何らかの他の導電性材料であり得る。IDTフィンガは、アルミニウム又は少なくとも50%のアルミニウムを含む合金から形成されている場合、「実質的にアルミニウム」であると見なされる。IDTフィンガは、銅又は少なくとも50%の銅を含む合金から形成されている場合、「実質的に銅」であると見なされる。クロム又はチタンなどの他の金属の薄い(導体の総厚に対して)層を、フィンガと圧電プレート110との間の接着を改善するために、及び/又はフィンガを不動態化又はカプセル化するために、及び/又はパワーハンドリングを改善するために、フィンガの下及び/又は上、及び/又はフィンガ内の層として形成することができる。IDTのバスバー132、134は、フィンガと同じ材料又は異なる材料で製造することができる。
【0026】
寸法pは、IDTフィンガの中心間の間隔又は「ピッチ」であり、これはIDTのピッチ及び/又はXBARのピッチと呼ばれる場合がある。寸法mは、IDTフィンガの幅又は「マーク」である。
【0027】
図2は、ソリッドマウントXBAR(SM XBAR)200の詳細な概略断面図を示している。SM XBARは、特許文献3に最初に記載されている。SM XBAR200は、圧電プレート110とIDT(そのうちのフィンガ230と235のみが見える)
とを含む。圧電プレート110は、平行な前面112と背面114とを有する。寸法tpは、圧電プレート110の厚さである。IDTフィンガ230、235の幅(又はマーク)は寸法mで、IDTフィンガの厚さは寸法tmで、IDTピッチは寸法pである。
【0028】
図1に示すXBARデバイスとは対照的に、SM XBARのIDTは、基板(
図1では120)内の空洞にまたがるダイアフラム上に形成されていない。その代わりに、音響ブラッグ反射器240が、圧電プレート110の基板220の表面222と背面114との間にある。音響ブラッグ反射器240は、基板220の表面222と圧電プレート110の背面114との間に配置され、機械的に取り付けられている両方である。いくつかの状況において、音響ブラッグ反射器240と基板220の表面222との間、及び/又はブラッグ反射器240と圧電プレート110の背面114との間に、追加材料の薄い層が配置されてもよい。そのような追加の材料層は、例えば、圧電プレート110、音響ブラッグ反射器240、及び基板220の結合を容易にするために存在してもよい。
【0029】
音響ブラッグ反射器240は、高い音響インピーダンスを有する材料と低い音響インピーダンスを有する材料とを交互に配置する複数の誘電体層を含む。「高い」及び「低い」
は、相対的な用語である。各層について、比較のための基準は、隣接する層である。各「高」音響インピーダンス層は、両方の隣接する低音響インピーダンス層よりも高い音響インピーダンスを有する。各「低」音響インピーダンス層は、両方の隣接する高音響インピーダンス層よりも低い音響インピーダンスを有する。後述するように、XBARの圧電プレートにおける一次音響モードは、剪断バルク波である。音響ブラッグ反射器240の各層は、SM XBAR200の共振周波数又はその近傍で一次音響モードと同じ偏波を有する剪断バルク波の波長の1/4に等しい厚さ、又は約1/4の厚さを有している。比較的低い音響インピーダンスを有する誘電体材料には、二酸化ケイ素、炭素含有酸化ケイ素、架橋ポリフェニレンポリマーなどのプラスチックが含まれる。比較的高い音響インピーダンスを有する材料には、酸化ハフニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、及びダイヤモンドが含まれる。音響ブラッグ反射器240の高音響インピーダンス層の全てが必ずしも同じ材料である必要はなく、低音響インピーダンス層の全てが必ずしも同じ材料である必要はない。
図2の例では、音響ブラッグ反射器240は、合計6つの層を有する。音響ブラッグ反射器は、6つより多い層を有しても、あるいは6つより少ない層を有してもよい。
【0030】
図2に示すように、IDTフィンガ230、235は、長方形の断面を有する。IDTフィンガ230、235は、台形、T字形、又は段付きなどの何らかの他の断面を有していてもよい。IDTフィンガ230、235は、アルミニウム又は何らかの他の金属であり得る単層構造として示されている。IDTフィンガは、異なる音響損失及び/又は異なる音響インピーダンスを有するように選択され得る複数の材料層を含んでもよい。複数の材料層が使用される場合、層の断面形状は、異なっていてもよい。さらに、IDTフィンガ230、235と圧電プレート110との間に、チタンやクロムなどの別の材料の薄い接着層が形成されてもよい。
図2には示されていないが、一部又は全部のIDTフィンガは、圧電プレート110を介して部分的に延びる、又は完全に貫通して延びる溝又はスロットに配置されてもよい。
【0031】
図3は、XBARにおける関心のある一次音響モードの図解である。
図3は、圧電プレート310と、3つのインターリーブされたIDTフィンガ330を含むXBAR300の小さな部分を示し、IDTフィンガ330は、フィンガからフィンガへと電気極性が交互に変わる。RF電圧は、インターリーブされたフィンガ330に印加される。この電圧は、フィンガ間に時間とともに変化する電界を生成する。「電界」とラベル付けされた矢印によって示されるように、電界の方向は、圧電プレート310の表面に対して、主として横方向、又は平行である。圧電プレートの誘電率が高いので、RF電気エネルギーは、空気に比べてプレートの内側に非常に集中する。横方向電界は、圧電プレート310において、(圧電プレートの2つの表面の間の体積によって形成される音響キャビティによって定義される共振周波数で)剪断一次音響モードに強く結合する剪断変形を導入する。この文脈では、「剪断変形」は、材料内の平行な平面が平行のままであり、相互に(それぞれの平面内で)並進しながら一定の分離距離を維持する変形として定義される。「剪断音響モード」は、媒体の剪断変形をもたらす媒体内の音響振動モードとして定義される。XBAR300の剪断変形は、曲線360によって表され、隣接する小さな矢印は、共振周波数での原子運動の方向及び相対的な大きさの概略的な表示を提供する。原子運動の程度と、圧電プレート310の厚さとは、視覚化を容易にするために著しく誇張されている。
原子運動は主として横方向(すなわち、
図3に示すように水平)であるが、励起された一次剪断音響モードの音響エネルギーの流れの方向は、矢印365によって示すように、圧電プレートの表面に実質的に垂直である。
【0032】
剪断音響波共振に基づく音響共振器は、現在の最先端のフィルムバルク音響共振器(FBAR)及び、厚さ方向に電界を印加するソリッドマウント共振器バルク音響波(SMRBAW)デバイスよりも優れた性能を達成できる。このようなデバイスでは、音響モードは、厚さ方向の原子運動と音響エネルギーの流れの方向とで圧縮される。さらに、剪断波XBAR共振の圧電結合は、他の音響共振器と比較して高くなることがある(>20%)。高い圧電結合により、かなりの帯域幅を有するマイクロ波及びミリ波フィルタの設計と実装が可能になる。
【0033】
XBAR一次音響モードは、そのほとんどがバルクであり、その結果、マーク及びピッチに対する周波数依存性が弱くなる可能性がある。したがって、XBARのIDTにおけるマーク、又はマーク及びピッチのチャーピング(chirping)(又は分散)は、一次モード共振をわずかに広げるだけで、金属及び伝搬モードなどのマーク及び/又はピッチに依存する望ましくないスプリアスモードを潜在的に抑制することが可能である。
【0034】
図4は、例示的なマルチマークIDT400の平面図である。「マルチマークIDT」
は、IDTであり、IDTフィンガのマークは、IDTの長さに沿って変化する。長さに沿った任意の点で、マークは、IDTのアパーチャ全体にわたって変化しないことがある。さらに、ピッチは、IDT全体にわたって一定であることができる。マルチマークIDT400は、
図1のXBAR100のようなXBARの一部分であってもよい。
【0035】
マルチマークIDT400は、第一のバスバー432と、第二のバスバー434と、フィンガ436のような複数のインターリーブされたフィンガと、を含む。インターリーブされたフィンガは、第一及び第二のバスバー432、434から交互に延びる。マルチマークIDT400は、IDTの長さLに沿って、セクションA、セクションB、及びセクションCとして識別される3つのセクションに分割される。マルチマークIDT400では、セクションA、B、及びCのそれぞれは、20のフィンガを含み、フィンガの総数は60である。3つのセクションと60のフィンガの使用は、例示的なものである。IDTは、フィンガの総数が60より多くてもよいし、60より少なくてもよい。IDTは、その長さに沿って、2つ以上のセクションに分割されてもよく、その各セクションは、複数の隣接するフィンガを含む。フィンガの総数は、2つ以上のセクションの間で本質的に等しく分割されてもよい。この文脈では、「本質的に」とは、「可能な限り近い」という意味である。例えば、33、34、33のフィンガを有する3つのセクションに分割された100のフィンガを有するIDTは、本質的に均等に分割されていると見なされる。フィンガの総数は、2つ以上のセクション間で不均等に分割されていてもよい。
【0036】
この例では、セクションBのフィンガは、マークmを有し、これは、IDTの公称マークである。セクションAのフィンガは、m(1-δm)のマークを有し、セクションCのフィンガは、m(1+δm)のマークを有する。δmは、0より大きく、0.05以下である。δmは、典型的には、0.01未満であってよい。δmは、スプリアスモードを最も効果的に低減するために、フィルタ設計中に選択されてもよい。IDT400の長さLに沿った任意の点で、マークは、アパーチャA全体にわたって一定である。IDTフィンガのピッチは、一定で全てのセクションで同じである。IDTが2つのセクション又は3つ以上のセクションに分割される場合、最大マークはm(1+δm)であり、最小マークはm(1-δm)であってもよい。
【0037】
例示したマルチマークIDT400では、マークは、左(図中)から右へ単調に増加する。これは、全てのマルチマークIDTにおいて、そうであるとは限らない。マルチマークIDTの各セクションは、他の順序で配置されてもよい。さらに、マルチマークIDT400では、隣接するセクション間のマークの変化は、一定である。これも、全てのマルチマークIDTにおいて、そうであるとは限らない。隣接するセクション間のマークの変化は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0038】
図5は、連続的に変化するマークを有する別のマルチマークIDT500の平面図である。IDT500は、第一のバスバー532と、第二のバスバー534と、フィンガ536のような複数のインターリーブされたフィンガと、を含む。インターリーブされたフィンガは、第一及び第二のバスバー532、534から交互に延びている。IDT500は、セクションに分割されておらず、その長さLに沿ってフィンガ536のマークが連続的に変化している。IDT500は、例示的に、60のフィンガを有する。IDTは、フィンガの総数が60より多くてもよいし、60より少なくてもよい。マルチマークIDT500は、
図1のXBAR100のようなXBARの一部分であってもよい。
【0039】
図5に示すように、IDT500の左端のマークはm(1-δm)であり、IDT500の右端のマークはm(1+δm)である。マークは、この2つの極値の間で連続的に変化する。マークの変化は、典型的には、IDTの長さLに沿った位置の一次関数であってもよいが、必ずしもそうでなくてもよい。δmは、0より大きく、0.05以下であり、典型的には0.01未満である。δmは、スプリアスモードを最も効果的に低減するために、フィルタ設計中に選択されてもよい。IDT500の長さに沿った任意の点で、マークは、アパーチャA全体にわたって一定である。IDTフィンガのピッチは、IDT全体にわたって一定である。
【0040】
図6は、従来のIDT及び別の例示的なマルチマークIDTについて、IDTの長さに沿った位置の関数としてのマークのグラフ600である。破線610は、マークがチャーピングされていない従来のIDTについて、IDTの長さに沿った位置の関数としてのマークを示す。実線620は、チャーピングされたマークを有するマルチマークIDTについて、IDTの長さに沿った位置の関数としてのマークを示す。この例では、チャーピングが三角形のプロファイルを有するように、マルチマークIDTのマークに線形勾配が適用される。各フィンガのマークには0.5nmの差があり、最も幅の広いフィンガのマークは、最も幅の狭いフィンガのマークより20nm大きくなっている。一点鎖線630は、マルチマークIDTのマークに線形勾配が適用されるチャーピングされたマークを有する別のマルチマークIDTについて、IDTの長さに沿った位置の関数としてのマークを示す。他の例示的なIDTは、連続するフィンガの間のマークに他の差、例えば、0.1nm~0.9nmの範囲の差を有することができ、最も広いフィンガと最も狭いフィンガとの間の差は、他の値、例えば1nm~100nmの範囲とすることができる。
【0041】
図7は、XBARデバイスで実装された2つのバンドパスフィルタの、入出力伝達関数であるS2,1の大きさを示すグラフ700である。S2,1のデータは、有限要素法を用いた2つのフィルタのシミュレーションによって決定された。破線の曲線710は、従来のIDTを有するXBARを用いた第一のフィルタについてのS2,1のプロットである。実線の曲線720は、マルチマークIDTを有するが、それ以外は第一のバンドパスフィルタと同一の第二のバンドパスフィルタについてのS2,1のプロットである。曲線710と720を比較すると、2つのフィルタの通過帯域が非常に類似していることが分かる。マルチマークIDTを有する第二のフィルタは、第一のフィルタと比較して、スプリアスモードのピークアドミタンスが減少している。
【0042】
XBARにおけるIDTのマークのわずかな変動は、剪断一次モードへの影響が無視できる程度で、スプリアスモードの破滅的又は破壊的干渉をもたらす可能性がある。この効果は、
図7のグラフの一部の拡大図である
図8に示されている。
図8において、破線の曲線810は、従来のIDTを有するフィルタのS21対周波数のプロットである。実線の曲線820は、マルチマークIDTを有するフィルタのS21対周波数のプロットである。マルチマークIDTを有するフィルタは、従来のIDTを有するフィルタと比較して、帯域N79の通過帯域内のスプリアスモードを低減しているので、損失を少なくすることができる。マルチマークIDTのチャーピングされたマークは、XBARの剪断一次音響モードの共振周波数及び反共振周波数に無視できる程度の影響を与える。
【0043】
図7及び
図8に示すデータを生成するために使用されるフィルタは、ラダーフィルタ回路内に4つの直列共振器及び4つの分流共振器を含む。全ての共振器は、XBARである。これらのフィルタは、例示的なものである。フィルタは、共振器をより少なく有しても、より多く有してもよく、直列共振器及びシャント共振器をより多く有しても、より少なく有してもよい。マルチマークIDTは、2つのセクションに分割されても、3つ以上のセクションに分割されてもよく、あるいは連続的であってもよい。セクションの数は、フィルタ内の全ての共振器について同じでなくてもよく、フィルタは、セクション化されたマルチマークIDTと連続的なマルチマークIDTの両方を含んでもよい。δmの値は、共振器の一部又は全部で異なっていてもよい。フィルタは、均一マーク共振器とマルチマーク共振器との組み合わせを含んでもよい。
【0044】
図9は、例示的なマルチピッチ・マルチマークIDT900の平面図である。「マルチピッチIDT」は、IDTフィンガのピッチがIDTの長さに沿って変化するIDTである。長さに沿った任意の点で、ピッチは、IDTのアパーチャ全体にわたって変化しないことがある。さらに、マークは、IDTがマルチマーク・マルチピッチIDTであるように、上記のように、IDTの長さに沿って変化することもできる。マルチピッチ・マルチマークIDT900は、
図1のXBAR100のようなXBARの一部分であってもよい。
【0045】
マルチピッチ・マルチマークIDT900は、第一のバスバー932と、第二のバスバー934と、フィンガ936のような複数のインターリーブされたフィンガと、を含む。
インターリーブされたフィンガは、第一及び第二のバスバー932、934から交互に延びている。上記の
図4について同様に説明したように、マルチピッチ・マルチマークIDT900は、IDTの長さLに沿って、セクションA、セクションB、及びセクションCとして識別される3つのセクションに分割することが可能である。マルチピッチ・マルチマークIDT900では、セクションA、B、及びCのそれぞれは、20のフィンガを含み、フィンガの総数は60である。3つのセクションと60のフィンガの使用は、例示的なものである。IDTは、フィンガの総数が60より多くてもよいし、60より少なくてもよい。IDTは、その長さに沿って、2つ以上のセクションに分割されてもよく、その各セクションは、複数の隣接するフィンガを含む。フィンガの総数は、2つ以上のセクションの間で本質的に等しく分割されてもよい。この文脈では、「本質的に」とは、「可能な限り近い」という意味である。例えば、33、34、33のフィンガを有する3つのセクションに分割された100のフィンガを有するIDTは、本質的に均等に分割されている見みなされる。フィンガの総数は、2つ以上のセクション間で不均等に分割されていてもよい。分割は、マークのチャーピングの分割と同じであっても、異なっていてもよい。
【0046】
この例では、セクションBのフィンガは、IDTのピッチpを有し、これは、IDTの公称ピッチである。セクションAのフィンガは、p(1-δp)のピッチを有し、セクションCのフィンガは、p(1+δp)のピッチを有する。δpは、0より大きく、0.05以下である。δpは、典型的には、0.01以下であってよい。δpは、スプリアスモードを最も効果的に低減するために、フィルタ設計中に選択されてもよい。IDT900の長さLに沿った任意の点で、ピッチは、アパーチャA全体にわたって一定である。IDTフィンガのマークも、
図4に示すIDT400のセクションによる変化と同様に、セクションによって変化する。マークは、ピッチと同じセクションだけ変化してもよいし、ピッチと異なるセクションだけ変化してもよい。あるいは、マークは、
図5に示すマークの連続的な変化と同様に、連続的に変化することができる。
【0047】
図10は、別の例示的なマルチピッチ・マルチマークIDT1000の平面図である。
マルチピッチ・マルチマークIDT900は、
図1のXBAR100のようなXBARの一部であってもよい。マルチピッチ・マルチマークIDT1000は、第一のバスバー1032と、第二のバスバー1034と、フィンガ1036などの複数のインターリーブされたフィンガと、を含む。インターリーブされたフィンガは、第一及び第二のバスバー1032、1034から交互に延びている。この例では、マークは、
図5に示すマークの連続的な変化と同様に、連続的に変化する。また、ピッチもマークと同様に連続的に変化する。
図10に示すように、マークとピッチとの両方は、図の方向に向かって、左から右へ連続的に増加する。あるいは、マークとピッチのいずれか一方が左から右へ連続的に増加し、マークとピッチの他方が左から右へ連続的に減少することも可能である。
【0048】
他の例では、IDTのピッチは、
図5に示すマークの連続的な変化と同様に、連続的に変化することができる。ピッチは、マークが変化するように変化してもよいし、異なる速度で変化してもよい。ピッチとマークの両方は、連続的に変化してもよい。ピッチ及び/
又はマークは、IDTの長さに沿って複数の最大値と最小値との間で変化してもよい。ピッチが連続的に変化している間にマークがセクションごとに変化してもよいし、マークが連続的に変化している間にピッチがセクションごとに変化してもよい。マークは、IDTの長さに沿って一方向に増加し(連続的に又はセクションごとに)、ピッチは、同じ方向に減少する(連続的に又はセクションごとに)ことがある。マークとピッチの変化は、互いに対して最適化することができ、マークとピッチの変化は、スプリアスモードの最大の抑制がフィルタの最高の性能を達成するように、共振器ごとに異なることもできる。
【0049】
(結びのコメント)
この説明全体を通して、示される実施形態及び実施例は、開示又は特許請求される装置及び手順に対する制限ではなく、模範と見なされるべきである。本明細書に提示される例の多くは、方法動作又はシステム要素の特定の組み合わせを含むが、それらの動作及びそれらの要素は、同じ目的を達成するために他の方法で組み合わせることができることを理解されたい。フローチャートに関しては、ステップを追加することも、より少なくすることもでき、示されているステップを組み合わせて、あるいはさらに改良して、本明細書に記載の方法を達成することもできる。一実施形態に関連してのみ論じられる動作、要素、及び特徴は、他の実施形態における同様の役割から除外されることを意図するものではない。
【0050】
本明細書で使用される場合、「複数」とは2つ以上を意味する。本明細書で使用される場合、アイテムの「セット」は、そのようなアイテムの1つ又は複数を含み得る。本明細書で使用される場合、書面による説明又は特許請求の範囲において、「備える」、「含む」、「携える」、「有する」、「含有する」、「関与する」などの用語は、オープンエンドであると理解されるべきであり、つまり、これに限定されない。クレームに関して、それぞれ「からなる」及び「本質的にからなる」の移行句のみが、クローズエンド又はセミクローズエンドの移行句である。クレーム要素を変更するためのクレームでの「第一」、「第二」、「第三」などの序数詞の使用は、それ自体では、あるクレーム要素の他のクレーム要素に対するいかなる優先性、優先順位、又は順序、又は方法の動作が実行される時間的な順序を意味するものではなく、クレーム要素を区別するのに、特定の名称を有するあるクレーム要素を同じ名称を有する別の要素から区別するためのラベルとしてのみ使用することで(但し、序数詞を使用するため)、これらのクレーム要素を区別するためである。本明細書で使用される場合、「及び/又は」は、列挙されたアイテムが代替物であることを意味するが、代替物は、列挙されたアイテムの任意の組み合わせも含む。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電プレートと、
第一のバスバーと、前記第一のバスバーから延びる複数の第一のフィンガと、第二のバスバーと、前記第二のバスバーから延び、前記第一のフィンガとインターリーブされる複数の第二のフィンガと、を含むマルチマーク・インターデジタル変換機(IDT)を形成する前記圧電プレート上の導体パターンと、
を備え、
前記IDTは、前記第一のバスバーが延びる方向と平行な長さ方向で前記IDTの長さを分割することで得られる複数のセクションを有し、
前記複数のセクションの各々における前記第一のフィンガおよび前記第二のフィンガの幅は、各セクション内で一定であるマークであって、前記IDTの複数のセクションの隣接セクション間で変化し、
前記マルチマークIDTは、前記IDTの長さ方向に沿って三角形のプロファイルを有し、
前記IDTおよび前記圧電プレートは、前記IDTに適用される無線周波数信号が前記圧電プレートで一次剪断音響モードを励起するように構成される、音響共振器。
【請求項2】
前記一次剪断音響モードは、音響エネルギーが前記圧電プレートの表面に実質的に直交する方向であって、前記IDTによって生成された電界の方向の横方向に沿って伝播する前記圧電プレートでバルク剪断音響波を励起する、請求項1に記載の音響共振器。
【請求項3】
前記IDTの前記第一のフィンガおよび前記第二のフィンガの前記マークは、前記IDTのミドルセクションで最大のマークである、請求項1に記載の音響共振器。
【請求項4】
線形勾配は、前記三角形のプロファイルを形成するために、前記マルチマークIDTの前記マークに適用される、請求項1に記載の音響共振器。
【請求項5】
前記複数のセクションは、前記複数のセクションの第二のセクションの第二のマークより大きな第一のマークを有する第一のセクションを有する、請求項1に記載の音響共振器。
【請求項6】
前記第一のマークおよび前記第二のマークから得られる平均は、前記マルチマークIDTの公証マークと等しい、請求項5に記載の音響共振器。
【請求項7】
前記圧電プレートが直接的または1つ以上の中間層を介して取り付けられる基板をさらに備える、請求項1に記載の音響共振器。
【請求項8】
前記圧電プレートと前記基板との間に配置されるブラッグ反射器をさらに備える、請求項7に記載の音響共振器。
【請求項9】
キャビティは、前記圧電プレートと前記基板との間に配置され、前記圧電プレートの一部は、前記IDTが表面に配置されるダイヤフラムを前記キャビティにわたって形成する、請求項7に記載の音響共振器。
【請求項10】
前記複数の第一のフィンガおよび第二のフィンガのマークは、前記IDTの長さ方向に沿って前記複数のセクションのセクションごとに変化する、請求項1に記載の音響共振器。
【請求項11】
圧電プレートと、
第一のバスバーと、前記第一のバスバーから延びる複数の第一のフィンガと、第二のバスバーと、前記第二のバスバーから延び、前記第一のフィンガとインターリーブされる複数の第二のフィンガと、を含むマルチマーク・インターデジタル変換機(IDT)を形成する前記圧電プレート上の導体パターンと、
を各々備える、複数のバルク音響波共振器を備え、
前記バルク音響波共振器の各々の前記IDTは、前記第一のバスバーが延びる方向と平行な長さ方向で前記IDTの長さを分割することで得られる複数のセクションを有し、
前記バルク音響波共振器の各々の前記複数のセクションの各々における前記第一のフィンガおよび前記第二のフィンガの幅は、各セクション内で一定であるマークであって、前記IDTの複数のセクションの隣接セクション間で変化し、
前記バルク音響波共振器の各々の前記マルチマークIDTは、前記IDTの長さ方向に沿って三角形のプロファイルを有し、
前記バルク音響波共振器の各々の前記IDTおよび前記圧電プレートは、前記IDTに適用される無線周波数信号が前記圧電プレートで一次剪断音響モードを励起するように構成される、フィルタデバイス。
【請求項12】
前記バルク音響波共振器の各々に対し、前記一次剪断音響モードは、音響エネルギーが前記圧電プレートの表面に実質的に直交する方向であって、前記IDTによって生成された電界の方向の横方向に沿って伝播する前記圧電プレートでバルク剪断音響波を励起する、請求項11に記載のフィルタデバイス。
【請求項13】
前記バルク音響波共振器の各々に対し、前記IDTの前記第一のフィンガおよび前記第二のフィンガの前記マークは、前記IDTのミドルセクションで最大のマークである、請求項11に記載のフィルタデバイス。
【請求項14】
前記バルク音響波共振器の各々に対し、線形勾配は、前記三角形のプロファイルを形成するために、前記マルチマークIDTの前記マークに適用される、請求項11に記載のフィルタデバイス。
【請求項15】
前記バルク音響波共振器の各々の前記複数のセクションは、前記複数のセクションの第二のセクションの第二のマークより大きな第一のマークを有する第一のセクションを有する、請求項11に記載のフィルタデバイス。
【請求項16】
前記バルク音響波共振器の各々に対し、前記第一のマークおよび前記第二のマークから得られる平均は、前記マルチマークIDTの公証マークと等しい、請求項15に記載のフィルタデバイス。
【請求項17】
前記バルク音響波共振器の各々に対し、前記圧電プレートが直接的または1つ以上の中間層を介して取り付けられる基板をさらに備える、請求項11に記載のフィルタデバイス。
【請求項18】
前記バルク音響波共振器の少なくとも1つは、前記圧電プレートと前記基板との間に配置されるブラッグ反射器をさらに備える、請求項17に記載のフィルタデバイス。
【請求項19】
前記バルク音響波共振器の各々に対し、キャビティは、前記圧電プレートと前記基板との間に配置され、前記圧電プレートの一部は、前記IDTが表面に配置されるダイヤフラムを前記キャビティにわたって形成する、請求項17に記載のフィルタデバイス。
【請求項20】
前記バルク音響波共振器の各々に対し、前記複数の第一のフィンガおよび第二のフィンガのマークは、前記IDTの長さ方向に沿って前記複数のセクションのセクションごとに変化する、請求項11に記載のフィルタデバイス。
【外国語明細書】