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特開2024-129013シルセスキオキサン高分子およびそれを含むコーティング組成物
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  • 特開-シルセスキオキサン高分子およびそれを含むコーティング組成物 図1
  • 特開-シルセスキオキサン高分子およびそれを含むコーティング組成物 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129013
(43)【公開日】2024-09-26
(54)【発明の名称】シルセスキオキサン高分子およびそれを含むコーティング組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/04 20060101AFI20240918BHJP
   C08F 299/08 20060101ALI20240918BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20240918BHJP
   C03C 17/30 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
C08G77/04
C08F299/08
C09D183/04
C03C17/30 A
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024087506
(22)【出願日】2024-05-29
(62)【分割の表示】P 2020545030の分割
【原出願日】2018-11-12
(31)【優先権主張番号】10-2017-0153244
(32)【優先日】2017-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】515068085
【氏名又は名称】ドンジン セミケム カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DONGJIN SEMICHEM CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100194973
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 祐朗
(72)【発明者】
【氏名】イ インギュ
(72)【発明者】
【氏名】オ ソンヨン
(72)【発明者】
【氏名】ユ ヒョンソク
(72)【発明者】
【氏名】チェ ジシク
(72)【発明者】
【氏名】ナム ドンジン
(72)【発明者】
【氏名】チェ スンソク
(72)【発明者】
【氏名】シン キュスン
【テーマコード(参考)】
4G059
4J038
4J127
4J246
【Fターム(参考)】
4G059AA01
4G059AA08
4G059AC16
4G059FA22
4G059FB05
4J038DL031
4J038DL101
4J038GA01
4J038GA07
4J038KA04
4J038KA06
4J038KA09
4J038NA11
4J038PA17
4J038PA19
4J038PC03
4J127AA01
4J127AA03
4J127BB041
4J127BB081
4J127BB151
4J127BB221
4J127BC031
4J127BC051
4J127BC131
4J127BD301
4J127BD311
4J127BD321
4J127BD331
4J127BE591
4J127BE59Y
4J127BF711
4J127BG101
4J127BG201
4J127BG231
4J127BG331
4J127BG361
4J127EA13
4J127FA08
4J246AA03
4J246AB06
4J246BA120
4J246BA12X
4J246BB020
4J246BB022
4J246BB02X
4J246CA120
4J246CA12E
4J246CA12X
4J246CA130
4J246CA13X
4J246CA650
4J246CA65X
4J246CA690
4J246CA69X
4J246FA071
4J246FA081
4J246FA131
4J246FA151
4J246FA321
4J246FA381
4J246FA391
4J246FA451
4J246FA461
4J246FC091
4J246FE22
4J246FE23
4J246FE26
4J246FE34
4J246GA01
4J246GA11
4J246GC09
4J246GC26
4J246GC37
4J246GD08
4J246HA24
4J246HA26
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ガラス基材にコーティングされてガラス基材の強度を向上させるシルセスキオキサン高分子およびそれを含むコーティング組成物を提供する。
【解決手段】シルセスキオキサン高分子は、下記式:

および下記式:

の繰り返し単位を含む。R1は水素、重水素、ハロゲン、アミン基、エポキシ基、ヒドロキシ基、チオール基、イソシアネート基、ニトリル基、ニトロ基、および有機基、R2は、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、イソシアネート基および有機基である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式1及び化学式2の繰り返し単位を含む、シルセスキオキサン高分子。
[化学式1]
[化学式2]
前記化学式1および化学式2において、R1は、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、アミン基、エポキシ基、シクロヘキシルエポキシ基、(メタ)アクリル基、ヒドロキシ基、チオール基、イソシアネート基、ニトリル基、ニトロ基、炭素数1乃至40のアルキル基、炭素数2乃至40のアルケニル基、炭素数1乃至40のアルコキシ基、炭素数3乃至40のシクロアルキル基、炭素数3乃至40のヘテロシクロアルキル基、炭素数6乃至40のアリール基、炭素数3乃至40のヘテロアリール基、炭素数3乃至40のアラルキル基、炭素数3乃至40のアリールオキシ基または炭素数3乃至40のアリールチオール基であり、R2は、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、イソシアネート基、炭素数1乃至40のアルキル基、炭素数2乃至40のアルケニル基、炭素数3乃至40のシクロアルキル基、炭素数3乃至40のヘテロシクロアルキル基、炭素数6乃至40のアリール基、炭素数3乃至40のヘテロアリール基、炭素数3乃至40のアラルキル基または炭素数2乃至40のエポキシ基であり、nおよびmは、それぞれ独立して、1乃至100,000の整数であり、
n:mは、1:1乃至100:1である。
【請求項2】
前記シルセスキオキサン高分子は、下記の化学式3を含む、請求項1に記載のシルセスキオキサン高分子。
[化学式3]
前記化学式3におけるR1、R2、nおよびmは、前記化学式1および化学式2において定義した通りである。
【請求項3】
R1は、アミノ基、(メタ)アクリル基、ヒドロキシ基、チオール基、ビニル基およびエポキシ基よりなる群から選ばれる反応性置換基または官能基を有し、R2は、水素、メチル基、エチル基またはプロピル基である、請求項1または2に記載のシルセスキオキサン高分子。
【請求項4】
下記の化学式1および化学式2の繰り返し単位を含むシルセスキオキサン高分子;および
溶媒を含む、コーティング組成物。
[化学式1]
[化学式2]
前記化学式1および化学式2において、R1は、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、アミン基、エポキシ基、シクロヘキシルエポキシ基、(メタ)アクリル基、ヒドロキシ基、チオール基、イソシアネート基、ニトリル基、ニトロ基、炭素数1乃至40のアルキル基、炭素数2乃至40のアルケニル基、炭素数1乃至40のアルコキシ基、炭素数3乃至40のシクロアルキル基、炭素数3乃至40のヘテロシクロアルキル基、炭素数6乃至40のアリール基、炭素数3乃至40のヘテロアリール基、炭素数3乃至40のアラルキル基、炭素数3乃至40のアリールオキシ基または炭素数3乃至40のアリールチオール基であり、R2は、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、イソシアネート基、炭素数1乃至40のアルキル基、炭素数2乃至40のアルケニル基、炭素数3乃至40のシクロアルキル基、炭素数3乃至40のヘテロシクロアルキル基、炭素数6乃至40のアリール基、炭素数3乃至40のヘテロアリール基、炭素数3乃至40のアラルキル基または炭素数2乃至40のエポキシ基であり、n及びmは、それぞれ独立して、1乃至100,000の整数であり、
n:mは、1:1乃至100:1である。
【請求項5】
前記シルセスキオキサン高分子は、下記の化学式3を含む、請求項4に記載のコーティング組成物。
[化学式3]
前記化学式3におけるR1、R2、nおよびmは、前記化学式1および化学式2において定義した通りである。
【請求項6】
R1は、アミノ基、(メタ)アクリル基、ヒドロキシ基、チオール基、ビニル基およびエポキシ基よりなる群から選ばれる反応性置換基または官能基を有し、R2は、水素、メチル基、エチル基またはプロピル基である、請求項4または5に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
前記シルセスキオキサン高分子の含量は、50乃至99重量%であり、前記溶媒の含量は、1乃至50重量%である、請求項4または5に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
ガラス基材;および
請求項4または5に記載のコーティング組成物がコーティングされて硬化したコーティング層と、を備えるガラスパネル。
【請求項9】
前記シルセスキオキサン高分子コーティング層の層厚は、50nm乃至100μmである、請求項8に記載のガラスパネル。
【請求項10】
前記シルセスキオキサン高分子コーティング層は、前記ガラス基材の片面または両面にコーティングされる、請求項8に記載のガラスパネル。
【請求項11】
前記ガラスパネルは、ボールドロップ評価において500g以下のボールに対して破損が生じない、請求項8に記載のガラスパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シルセスキオキサン高分子およびそれを含むコーティング組成物に係り、さらに詳しくは、ガラス基材(glass base material)にコートされてガラス基材の強度を向上させるシルセスキオキサン高分子およびそれを含むコーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ガラス製品は、壁材、床材、タイル、屋根材、窓などの建築物または構造物において使われるだけでなく、コップ、皿、食器などの家庭用品として使用され、半導体製造装置などの産業用としても使われ、自動車部品、光学製品、眼鏡、電子製品などの多岐にわたって使われている。特に、ガラス製品は、アクリル樹脂よりも熱とスクラッチに強く、可視光線透過率が高く、屈曲した(curved)形態を有するように製作され得るので、タッチスクリーンパネルなどの電子製品に幅広く応用されている。
【0003】
しかしながら、ガラスは、指でタッチ(touch)したとき、指紋などにより汚れ、柔軟性および強度が弱く、衝撃を受けたとき、破損され易く、ガラス片が飛散されるという問題点があった。特に、板型ではなく、屈曲した形態を有するガラスの場合、屈曲部分に応力が集中し、衝撃を受けたとき、さらに破損されやすいという問題点があった。これは、ガラス自体の特性のためばかりではなく、ガラス表面に生じる微小ひび割れ(micro crack)のためでもある。ガラスは、製造過程で、目視で見えない程度の微小ひび割れが表面に生じ、これらのひび割れは、ガラスの強度を大きく低下させる。このような問題点を解決するために、化学反応を用いた強度改善作業が一般に行われている。
【0004】
化学反応を用いたガラス強度の改善作業は、約400乃至500℃の塩浴槽(溶融硝酸カリウム)において、4乃至8時間の間、イオン交換反応を行い、ガラス表面のナトリウムイオン(Na)をイオン半径の大きなカリウムイオン(K)で置換させて、ガラスの表面強度を増加させる技術である。このような化学反応を用いる方法は、実用的な強度を得るために、数時間乃至数十時間の長時間を要することにより、生産性の低いという問題点があった。また、化学反応時、ガラスを化学薬品で食刻(etching)処理すると、外観斑の問題が生じるので、機械的研磨(polishing)作業が必要であるという短所があった。機械的研磨作業は、人手による手工業であって、生産性が低く、不良率が高くて、生産収率が低く、強度の向上にも限界があった。例えば、一般の機械的研磨を行ったガラスは、ボールドロップ(ball drop)破壊強度が低く、130gの鋼球を約30cmの高さから落下させたとき、80%以上破壊される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ガラスを化学反応によって直接改質するのではなく、簡単なコーティング工程によってガラスの機械的強度を向上させることができる、シルセスキオキサン高分子およびそれを含むコーティング組成物を提供することである。
【0006】
本発明の他の目的は、ガラスへの接着性に優れたシルセスキオキサン高分子およびそれを含むコーティング組成物を提供することである。
【0007】
本発明のまた他の目的は、ガラスの光学的特性を維持しながら、ガラスの表面硬度などの機械的強度、耐摩擦性、および耐汚れ性が向上した強化ガラスパネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明は、下記の化学式1および化学式2の繰り返し単位を含む、シルセスキオキサン高分子を提供する。
[化学式1]
[化学式2]
【0009】
前記化学式1および化学式2において、R1は、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、アミン基、エポキシ基、シクロヘキシルエポキシ基、(メタ)アクリル基、ヒドロキシ基、チオール基、イソシアネート基、ニトリル基、ニトロ基、炭素数1乃至40のアルキル基、炭素数2乃至40のアルケニル基、炭素数1乃至40のアルコキシ基、炭素数3乃至40のシクロアルキル基、炭素数3乃至40のヘテロシクロアルキル基、炭素数6乃至40のアリール基、炭素数3乃至40のヘテロアリール基、炭素数3乃至40のアラルキル基、炭素数3乃至40のアリールオキシ基または炭素数3乃至40のアリールチオール基であり、R2は、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、イソシアネート基、炭素数1乃至40のアルキル基、炭素数2乃至40のアルケニル基、炭素数3乃至40のシクロアルキル基、炭素数3乃至40のヘテロシクロアルキル基、炭素数6乃至40のアリール基、炭素数3乃至40のヘテロアリール基、炭素数3乃至40のアラルキル基または炭素数2乃至40のエポキシ基であり、nおよびmは、それぞれ独立して、1乃至100,000の整数であり、n:mは、1:1乃至100:1である。
【0010】
また、本発明は、前記シルセスキオキサン高分子;および溶媒を含む、コーティング組成物を提供する。
【0011】
また、本発明は、ガラス基材;と、前記コーティング組成物がコーティングされて硬化したコーティング層と、を備えるガラスパネルを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るシルセスキオキサン高分子およびそれを含むコーティング組成物は、簡単なコーティング工程によって、ガラス基材の片面または両面にコーティング層を形成することにより、ガラスの光学的特性を維持しながら、ガラスの機械的強度、表面硬度、耐摩擦性、および耐汚れ性を向上させることができる。本発明に係るコーティング組成物は、様々な形態のガラス基材に適用され、ガラス基材との接着力に優れるという長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施例に係る平板型ガラスパネルの構造を示す断面図である。
図2】本発明の他の実施例に係る屈曲型ガラスパネルの構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付された図面を参照して、本発明について詳述する。
【0015】
本発明は、ガラス基材にコーティングされてガラス基材の強度を向上させる物質であって、下記の化学式1および化学式2の繰り返し単位を含む、シルセスキオキサン高分子を提供する。
[化学式1]
[化学式2]
【0016】
前記化学式1および化学式2において、R1は、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、アミン基、エポキシ基、シクロヘキシルエポキシ基、(メタ)アクリル基、ヒドロキシ基、チオール基、イソシアネート基、ニトリル基、ニトロ基、炭素数1乃至40のアルキル基、炭素数2乃至40のアルケニル基、炭素数1乃至40のアルコキシ基、炭素数3乃至40のシクロアルキル基、炭素数3乃至40のヘテロシクロアルキル基、炭素数6乃至40のアリール基、炭素数3乃至40のヘテロアリール基、炭素数3乃至40のアラルキル基、炭素数3乃至40のアリールオキシ基または炭素数3乃至40のアリールチオール基であり、R2は、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、イソシアネート基、炭素数1乃至40のアルキル基、炭素数2乃至40のアルケニル基、炭素数3乃至40のシクロアルキル基、炭素数3乃至40のヘテロシクロアルキル基、炭素数6乃至40のアリール基、炭素数3乃至40のヘテロアリール基、炭素数3乃至40のアラルキル基または炭素数2乃至40のエポキシ基(例えば、シクロヘキシルエポキシ基)である。nおよびmは、それぞれ独立して、1乃至100,000、好ましくは2乃至1000、さらに好ましくは2乃至50の整数であり、前記nとmとの比率は、1:1乃至100:1であってもよい。
【0017】
前記化学式1および化学式2において、前記アルキル基は、具体的に、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などであってもよく、アリール基は、フェニル基であってもよい。前記化学式2において、R2は、水素、メチル基、エチル基またはプロピル基であってもよく、-OR2は、酸素を含むことにより、シルセスキオキサン高分子の溶解度、分散性、相溶性を調節する。
【0018】
必要に応じて、前記R1およびR2は、重水素、ハロゲン、アミノ基、ビニル基、(メタ)アクリル基、チオール基、イソシアネート基、ニトリル基、ニトロ基などの置換基で置換されてもよい。具体的に、R1は、アミノ基、(メタ)アクリル基、ヒドロキシ基、チオール基などの反応性置換基、またはビニル基、エポキシ基などの反応性官能基を有してもよく、例えば、前記反応性置換基または官能基を有するアルキル基であってもよく、このような反応性置換基または官能基により、本発明のシルセスキオキサン高分子が架橋結合され得る。前記反応性置換基または官能基を有するR1としては、(メタ)アクリルオキシプロピル基、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基などが例示される。本発明のシルセスキオキサン高分子が反応性置換基または反応性官能基を有する場合、全体のR1に対して、反応性置換基または反応性官能基を有するR1の比率は、例えば、10乃至100%、具体的には、50乃至100%である。前記反応性置換基または官能基の含量が少なすぎると、シルセスキオキサン高分子の架橋結合力が低く、最終的に形成されるコーティング膜の硬度が低下し、またはシルセスキオキサン高分子の架橋結合に長時間を要するという問題があった。
【0019】
前記シルセスキオキサン高分子は、下記の化学式3で示される。
[化学式3]
【0020】
前記化学式3におけるR1、R2、nおよびmは、前記化学式1および化学式2において定義した通りである。前記化学式3で示されるシルセスキオキサン高分子は、nで示される繰り返し単位およびmで示される繰り返し単位のランダム若しくはブロック共重合体であって、n:mの比率を調節して、ガラス基材との付着特性を調節することができる。前記シルセスキオキサン高分子において、nで示される繰り返し単位は、シルセスキオキサン高分子の強度を強化する役割をし、mで示される繰り返し単位は、シルセスキオキサン高分子とガラス基材との接着力を向上させる役割をし、n:mの比率は、1:1乃至100:1の比率を有してもよく、具体的には、5:1乃至30:1の比率を有してもよい。ここで、nで示される繰り返し単位の含量が少なすぎると、アルコキシ(-OR2)の比率が過度に増加し、シルセスキオキサン高分子溶液の滑り(oily)特性が増大して、コーティングの際に付着力が低下する恐れがある。これに対して、nで示される繰り返し単位の含量が多すぎると、アルコキシ(-OR2)の比率が小さすぎて、ガラス基材との接着力が低下する恐れがある。
【0021】
前記化学式1および化学式2の繰り返し単位を含むシルセスキオキサン高分子、具体的に、前記化学式3を含むシルセスキオキサン高分子の重量平均分子量は、必要に応じて、広範囲で変化し得るが、通常、1,000乃至1,000,000の重量平均分子量を有してもよく、1,000乃至500,000の重量平均分子量を有してもよく、1,000乃至100,000の重量平均分子量を有してもよい。ここで、前記シルセスキオキサン高分子の重量平均分子量が1,000未満であれば、シリコーン油と同じ物性を有するようになって、コーティング性、弾性率、硬度などの物理的特性に劣るという問題があり、1,000,000を超過すれば、加工性に劣るという問題がある。
【0022】
前記化学式1および化学式2の繰り返し単位を含むシルセスキオキサン高分子、具体的に、前記化学式3を含むシルセスキオキサン高分子は、はしご形(ladder type)構造または線形(linear)構造を有する有機・無機混成化(複合)高分子であって、ガラス基板上へのコーティングの際に、弾性および引張力に優れ、溶媒への溶解度が高くて、工程性に優れるという長所がある。また、前記シルセスキオキサン高分子は、分子の中間に-OR2基を含むので、ガラス基材の表面のSi-OH、Si-Oなどと共有結合され、ガラス基材との結合力および付着力に優れ、ガラス基材の光学的特性を損なうことなく、ガラス基材の表面硬度、スクラッチ特性などを向上させる。
【0023】
前記シルセスキオキサン高分子は、トリアルコキシシランを加水分解してから縮合する通常のはしご形シルセスキオキサン高分子の製造工程(大韓民国特許公開10-2013-0110018参照)において、縮合度を調節し、または縮合反応で生成したはしご形シルセスキオキサン高分子とアルコール(R2-OH)とを反応させ、Si-O-Si結合を部分的に切断して製造することができる。例えば、下記の実施例に記載のように、蒸留水とアルコール溶媒とを混合した後、クロロシランモノマーを添加して前駆体を製造し、前記前駆体を部分的に縮合して、nで示される繰り返し単位およびmで示される繰り返し単位を有する前記化学式1および化学式2の繰り返し単位を含むシルセスキオキサン高分子、具体的に、前記化学式3を含むシルセスキオキサン高分子を製造することができる(すなわち、前記化学式3を含むシルセスキオキサン高分子は、シラン(-Si-)間の-O-とアルコールとを反応させることにより、Si-O-Si結合をランダムに切断して製造することができる)。
【0024】
本発明に係るコーティング組成物は、前記化学式1および化学式2の繰り返し単位を含むシルセスキオキサン高分子、具体的に、前記化学式3を含むシルセスキオキサン高分子および溶媒を含む。前記化学式1および化学式2の繰り返し単位を含むシルセスキオキサン高分子、具体的に、前記化学式3を含むシルセスキオキサン高分子は、分子量、R1およびR2の種類に応じて液体状態で存在してもよく、この場合、別途の溶媒を用いる必要がない。しかし、シルセスキオキサン高分子が固体状態で存在し、またはコーティング性を向上させる必要がある場合は、前記シルセスキオキサン高分子を溶媒に溶かして組成物を形成することができる。前記溶媒としては、シルセスキオキサン高分子を溶解させることができ、加熱などにより除去されやすい溶媒であれば特に制限なく使用することができ、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、セロソルブ系などのアルコール類、乳酸系、アセトン、メチル(イソブチル)エチルケトンなどのケトン類、エチレングリコールなどのグリコール類、テトラヒドロフランなどのフラン系、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどの極性溶媒だけでなく、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、クレゾール、クロロホルム、ジクロロベンゼン、ジメチルベンゼン、トリメチルベンゼン、ピリジン、メチルナフタレン、ニトロメタン、アクリロニトリル、メチレンクロライド、オクタデシルアミン、アニリン、ジメチルスルホキシド、ベンジルアルコールなど多様な溶媒を使用することができるがこれに制限されない。本発明に係るコーティング組成物において、前記シルセスキオキサン高分子の含量は、30乃至90重量%、好ましくは40乃至70重量%であり、さらに好ましくは50乃至65重量%であり、前記溶媒の含量は、10乃至70重量%、好ましくは30乃至60重量%であり、さらに好ましくは35乃至50重量%である。ここで、前記シルセスキオキサン高分子の含量が少なすぎまたは多すぎると、コーティング組成物の粘度が低すぎまたは高すぎて、コーティング膜が円滑に形成されない恐れがある。
【0025】
本発明に係るコーティング組成物は、必要に応じて、開始剤、消泡剤、レベリング剤などの添加剤をさらに含んでもよい。前記開始剤は、シルセスキオキサン高分子が、(メタ)アクリル((meth)acryl)基、ビニル基、エポキシ基などの反応性置換基または官能基を有する場合、これらと反応して、シルセスキオキサン高分子を架橋させる役割をする。前記開始剤としては、例えば、クロロアセトフェノン(chloro acetophenone)、トリクロロアセトフェノン(trichloro acetophenone)、ジエトキシアセトフェノン(diethoxy acetophenone)、1-フェニル-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン(1-phenyl-2-hydroxyl-2-methylpropane-1-one)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン(2-methyl-1-(4-methylthiophenyl)-2-morpholinopropane-1-one)、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(trimethyl benzoyldiphenylphosphine oxide)、カンファーキノン(camphor quinone)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルブチレート)、3,3-ジメチル-4-メトキシ-ベンゾフェノン、p-メトキシベンゾフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンなどの光開始剤、t-ブチルペルオキシマレイン酸、t-ブチルヒドロペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、N-ブチル-4,4’-ジ(t-ブチルペルオキシ)バレレートなどの熱開始剤などを用いることができる。前記消泡剤としては、シリコン系(例えば、BYK社製品であるBYK-063、BYK-065、BYK-072、BYK-085、BYK-141など)、非シリコン系(例えば、BYK-1752、BYK-1790、BYK-1794、BYK-054、BYK-055、BYK-057など)などを用いることができ、前記レベリング剤としては、ポリエーテルジメチルポリシロキサン系(Polyether-modified polydimethylsiloxane、例えば、BYK社製品であるBYK-300、BYK-301、BYK-302、BYK-331、BYK-335、BYK-306、BYK-330、BYK-341、BYK-344、BYK-307、BYK-333、BYK-310など)、ポリエーテルヒドロキシポリジメチルシロキサン系(Polyether modified hydroxyfunctional poly-dimethyl-siloxane、例えば、BYK社のBYK-308、BYK-373など)、ポリメチルアルキルシロキサン系(Methylalkylpolysiloxane、例えば、BYK-077、BYK-085など)、ポリエーテルポリメチルアルキルシロキサン系(Polyether modified methylalkylpolysiloxane、例えば、BYK-320、BYK-325など)、ポリエステルポリメチルアルキルシロキサン系(Polyester modified poly-methyl-alkyl-siloxane、例えば、BYK-315など)、アラルキルポリメチルアルキルシロキサン系(Aralkyl modified methylalkyl polysiloxane、例えば、BYK-322、BYK-323など)、ポリエステルヒドロキシポリジメチルシロキサン系(Polyester modified hydroxy functional polydimethylsiloxane、例えば、BYK-370など)ポリエステルアクリルポリジメチルシロキサン系(Acrylic functional polyester modified polydimethylsiloxane、例えば、BYK-371、BYK-UV3570など)、ポリエーテル-ポリエステルヒドロキシポリジメチルシロキサン系(Polyether-polyester modified hydroxy functional polydimethylsiloxane、例えば、BYK-375など)、ポリエーテルポリジメチルシロキサン系(Polyether modified dimethylpolysiloxane、例えば、BYK-345、BYK-348、BYK-346、BYK-UV3510、BYK-332、BYK-337など)、非イオンポリアクリル系(Non-ionic acrylic copolymer、例えば、BYK-380など)、イオン性ポリアクリル系(Ionic acrylic copolymer、例えば、BYK-381など)、ポリアクリレート系(Polyacrylate、例えば、BYK-353、BYK-356、BYK-354、BYK-355、BYK-359、BYK-361N、BYK-357、BYK-358N、BYK-352など)、ポリメタクリレート系(Polymethacrylate、例えば、BYK-390など)、ポリエーテルアクリルポリジメチルシロキサン系(Polyether modified acryl functional polydimethylsiloxane、例えば、BYK-UV3500、BYK-UV3530など)、ポリエーテルシロキサン系(Polyether modified siloxane、例えば、BYK-347など)、アルコールアルコキシレート系(Alcohol alkoxylates、例えば、BYK-DYNWET800など)、アクリレート系(Acrylate、例えば、BYK-392など)、ヒドロキシシリコンポリアクリレート系(Silicone modified polyacrylate(OH-functional)、例えば、BYK-Silclean3700など)などを用いることができる。前記添加剤の使用量は、添加剤の使用目的により異なるが、シルセスキオキサン高分子および溶媒の合計100重量部に対して、0.1乃至10重量部、具体的には1乃至5重量部である。
【0026】
本発明に係るコーティング組成物は、ガラス基材(glass base material)にコーティングし、乾燥または硬化させてコーティング層を形成すると、ガラスの光学的特性を維持しながら、ガラスの表面硬度などの機械的強度、耐摩擦性、および耐汚れ性が向上した強化ガラスパネルを製造することができる。前記コーティング組成物の硬化は、加熱、光照射、常温保存、水分注入、触媒注入などの常法で行われ得る。図1および図2は、それぞれ本発明の一実施例に係る平板型および屈曲型強化ガラスパネルの構造を示す断面図である。図1および図2に示すように、本発明に係る強化ガラスパネルは、平板型および屈曲型ガラス基材10、12、および前記ガラス基材10、12の表面(前面および/または後面)にコーティングされ、前記化学式3を含むシルセスキオキサン高分子で形成されたシルセスキオキサン高分子コーティング層20を備える。本発明に係るコーティング組成物によって形成されるシルセスキオキサン高分子コーティング層20は、図1に示すように、平板型ガラス基材10の前面(図1のA)、両面(図1のB)、または後面(図1のC)に形成される。また、前記シルセスキオキサン高分子コーティング層20は、図2に示すように、屈曲型ガラス基材12の前面(図2のA)、両面(図2のB)、または後面(図2のC)に形成される。前記シルセスキオキサン高分子コーティング層20の厚さは、50nm乃至100μm、具体的には0.1乃至50μm、さらに具体的には1乃至30μmである。ここで、前記コーティング層20の厚さが50nm以下に形成されると、耐摩擦および耐汚れ(耐指紋)性は維持されるものの、衝撃強度の向上効果が足りないことがある。これに対して、コーティング層20の厚さが100μmを超過して形成されると、強化ガラスパネルの衝撃強度は増加するものの、衝撃を受ける場合、コーティング層20にひび割れが生じ、またはコーティング層20が損傷し得る。また、前記ガラスパネルは、ボールドロップ評価において、500g以下のボールに対して破損が生じないことが好ましい。前記ボールドロップ評価は、一定の高さから鋼球(steel ball)を下降させて破壊強度を調べる方法である。
【0027】
前記ガラス基材10、12としては、建築物または構造物の壁材(セメント壁材を含む)、床材(セメント床材を含む)、煉瓦、タイル、屋根、窓、コップ、皿、食器、半導体製造装置、自動車ガラス、光学製品、眼鏡、電子製品、太陽電池自体および保護用として用いられるガラスであってもよいが、これらに限定されるものではない。特に、本発明に係るコーティング組成物は、壁材(セメント壁材を含む)、床材(セメント床材を含む)、煉瓦、タイル、屋根、窓などの建築物または構造物、コップ、皿、食器などの家庭用品、半導体製造装置、自動車ガラス、光学製品、眼鏡、携帯電話などの電子製品、太陽電池自体および保護用として用いられるガラスなどに有用に使用され得る。ここで、ガラスは、Siを含む固体物質を総称する。
【0028】
本発明により形成されたシルセスキオキサン高分子コーティング層20は、ガラスと光学的特性(屈折率など)が類似したシリコン系物質からなるので、ガラスの優れた光学的特性を維持しながら、表面硬度、機械的強度、耐摩擦および耐汚れ防止、耐指紋性能などの物理的特性を向上させることができる。また、本発明によれば、様々な形態のガラス表面上にコーティング組成物をコーティングするだけであるので、コーティング工程が容易であるという長所がある。
[発明の実施形態]
【0029】
以下、具体的な実施例を用いて本発明についてさらに詳述する。下記の実施例は本発明を例示するためのものであって、本発明が下記の実施例に限定されるのではない。
【0030】
[製造例1-1乃至1-7および比較例1-1乃至1-4]シルセスキオキサン高分子の合成
冷却管と攪拌機を備えたフラスコに、蒸溜水32gおよびメタノール100gを投入し、温度を-4℃に維持しながら、3-(トリクロロシリル)プロピルメタクリレート(3-(trichlorosilyl)propylmethacrylate)261.61gを10分にわたって徐々に滴加した。20分間さらに撹拌し、トルエン500gを滴加し、温度を常温に上げて、10分間さらに撹拌した(Si-OHとSi-アルコキシ(OR2)との同時収得)。以降、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(2-(3,4-epoxycyclohexyl)ethyltrimethoxysilane)24.64gを滴加し、10分間撹拌した。前記反応液にNaCO20重量%水溶液10gを一度に滴加し、温度を100℃に上げて、1日間、縮合反応を進行した。反応液を水層とトルエン層とに層分離して精製し、pHが中性であることを確認してから、トルエン層を真空減圧してトルエンを全て除去して、シルセスキオキサン高分子を得た。
【0031】
得られたシルセスキオキサン高分子は、化学式3に示すように、線形構造を有し、重量平均分子量は10,000であり、未反応状態モノマーは存在しなかった。前記重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定したポリスチレン換算平均分子量である。得られたシルセスキオキサン高分子を、TGA(Thermo Gravimetric Analyzer)を用いた分解温度測定法で分析した結果、アルコキシ(メトキシ)の残存率は、3重量%であり、1H-NMRで分析した結果、n:mの比率は、約2:1であった。以降、同じ方法で、製造例1-2乃至1-7および比較例1-1乃至1-4について、n:mの比率のみを、それぞれ下記の表1に示すように変えて、それぞれのシルセスキオキサン高分子を製造した。
【0032】
前記アルコキシの残存率は、TGAを用いて、150℃乃至250℃の区間における縮合で相殺するアルコキシ基の分解量を確認して測定しており、n:mの比率は、繰り返し単位n、mの官能基から導き出されたSi-Cの面積積分量と、繰り返しmでのみ示されるSi-OCHのC部分積分量とを計算して測定した。
【0033】
【表1】
【0034】
[製造例2-1乃至2-7および比較例2-1乃至2-4]コーティング組成物の製造
製造例1-1乃至1-7および比較例1-1乃至1-4で得られたシルセスキオキサン高分子30gを、それぞれメチルイソブチルケトン70gに溶かしてコーティング組成物100gを製造した。製造されたコーティング組成物100重量部に対して、光開始剤としてクロロアセトフェノン3重量部、BYK-347 1重量部、BYK-UV3500 1重量部を添加し、10分間撹拌してそれぞれの光硬化型コーティング組成物を製造した。
【0035】
[実施例3-1乃至3-7および比較例3-1乃至3-4]強化ガラスパネルの製造
厚さ80μmの板型ガラス基板(ゴリラガラス基板)に、製造例2-1乃至2-7および比較例2-1乃至2-4で得られたコーティング組成物を、それぞれ浸漬法(dip coating)で塗布し、85℃の熱風条件で、10分間熱処理した後、UVを照射して硬化した。以降、200℃の熱風条件で、1.5時間の間焼成(aging)処理し、ガラス基板に10μm厚さのコーティング膜を形成して、強化ガラスパネルを製造した。
【0036】
実施例3-1乃至3-7および比較例3-1乃至3-4で製造された強化ガラスパネルに対して、下記の方法で物性を評価し、その結果を表2に示した。
【0037】
(1)鉛筆硬度:JIS 5600-5-4に従って、1000g荷重で評価した。鉛筆は三菱製品を用いて、一つの鉛筆硬度ごとに5回ずつ実験を行い、2個以上のスクラッチが生じると、不良と判定した(例えば、2個未満のスクラッチが生じた回数/5のように表記しており、5回全体で2個未満のスクラッチが生じると、5/5と表記した)。
【0038】
(2)接着力評価:JIS K5600-5-6に従って、1mm間隔でカッター刃(cutter)で掻いて、格子状に100個の升目を作り、粘着テープを貼り付け、90°方向に引き剥がして、コーティング層の表面が粘着テープについてから剥離されるかを目視確認した。100個のうち剥離しなかった升目の個数を表1に示した(例えば、剥離しなかった個数/100と表記しており、100個が剥離していなければ、100/100と表記した)。
【0039】
(3)耐摩擦評価:JIS K5600-5-4に従って、1000g荷重で評価した。スチールウール(steel wool)を用いてスクラッチが生じる回数を確認した。
【0040】
(4)耐汚れ性(耐指紋)評価:接触角測定器を用いて、コーティング前後の接触角を確認した。
【0041】
【表2】
【0042】
[実施例4]強化ガラスパネルの製造
板型ガラス基板の代わりに、屈曲型ガラス基板を用いたことを除いては、実施例3-1と同様な方法で、強化ガラスパネルを製造した。
【0043】
[実施例5]強化ガラスパネルの製造
浸漬法の代わりに、スプレーガンを用いて、コーティング組成物を塗布したことを除いては、実施例3-2と同様な方法で、強化ガラスパネルを製造した。
【0044】
[実施例6]強化ガラスパネルの製造
浸漬法の代わりに、スロットダイコーティング(Slot Die Coating)を用いて、コーテイング組成物を5mm/secの速度で塗布したことを除いては、実施例3-2と同様な方法で、強化ガラスパネルを製造した。
【0045】
実施例4乃至実施例6で製造された強化ガラスパネルに対して、実施例3-1と同様な方法で物性を評価し、その結果を表3に示した。
【0046】
【表3】
【0047】
[実施例7]強化ガラスパネルの製造
厚さ80μmの板型ガラス基板の前面、後面、または前面および後面の全部に、10um厚さのコーテイング膜を形成したことを除いては、実施例3-2と同様な方法で、強化ガラスパネルを製造した。
【0048】
以降、実施例7で製造された強化ガラスパネルに対して、ボールドロップ(ball drop)評価を進行し、その結果を表4に示した。
【0049】
前記ボールドロップ評価は、強化ガラスパネルの試片を固定させ、一定の高さ(1m)から鋼球(steel ball、20-2000g)を下降させて、破壊の有無を評価した。一つのボールドロップ評価ごとに5回ずつ実験を行い、2個以上のクラックが生じると、不良と判定した(破損有り:〇、破損無し:×)。
【0050】
【表4】
【0051】
上記した実施例および比較例から、本発明に係るシルセスキオキサン高分子およびそれを含むコーティング組成物は、簡単なコーティング工程を通じて、ガラス基材の表面にコーティング層を形成することにより、ガラスの光学的特性を維持しながら、ガラスの機械的強度、表面硬度、耐摩擦性、および耐汚れ性などを向上させることが分かる。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-05-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式1及び化学式2の繰り返し単位を含む、シルセスキオキサン高分子。
[化学式1]
[化学式2]
前記化学式1および化学式2において、R1は、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、アミノ基、エポキシ基、シクロヘキシルエポキシ基、(メタ)アクリル基、ヒドロキシ基、チオール基、イソシアネート基、ニトリル基、ニトロ基、炭素数1乃至40のアルキル基、炭素数2乃至40のアルケニル基、炭素数1乃至40のアルコキシ基、炭素数3乃至40のシクロアルキル基、炭素数3乃至40のヘテロシクロアルキル基、炭素数6乃至40のアリール基、炭素数3乃至40のヘテロアリール基、炭素数乃至40のアラルキル基、炭素数乃至40のアリールオキシ基または炭素数乃至40のアリールチオール基であり、R2は、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、イソシアネート基、炭素数1乃至40のアルキル基、炭素数2乃至40のアルケニル基、炭素数3乃至40のシクロアルキル基、炭素数3乃至40のヘテロシクロアルキル基、炭素数6乃至40のアリール基、炭素数3乃至40のヘテロアリール基、炭素数乃至40のアラルキル基または炭素数2乃至40のエポキシ基であり、nおよびmは、それぞれ独立して、1乃至100,000の整数であり、
n:mは、1:1乃至100:1である。
【請求項2】
前記シルセスキオキサン高分子は、下記の化学式3を含む、請求項1に記載のシルセスキオキサン高分子。
[化学式3]
前記化学式3におけるR1、R2、nおよびmは、前記化学式1および化学式2において定義した通りである。
【請求項3】
R1は、アミノ基、(メタ)アクリル基、ヒドロキシ基、チオール基、ビニル基およびエポキシ基よりなる群から選ばれる反応性置換基または官能基を有し、R2は、水素、メチル基、エチル基またはプロピル基である、請求項1または2に記載のシルセスキオキサン高分子。
【請求項4】
下記の化学式1および化学式2の繰り返し単位を含むシルセスキオキサン高分子;および溶媒を含む、コーティング組成物。
[化学式1]
[化学式2]
前記化学式1および化学式2において、R1は、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、アミノ基、エポキシ基、シクロヘキシルエポキシ基、(メタ)アクリル基、ヒドロキシ基、チオール基、イソシアネート基、ニトリル基、ニトロ基、炭素数1乃至40のアルキル基、炭素数2乃至40のアルケニル基、炭素数1乃至40のアルコキシ基、炭素数3乃至40のシクロアルキル基、炭素数3乃至40のヘテロシクロアルキル基、炭素数6乃至40のアリール基、炭素数3乃至40のヘテロアリール基、炭素数乃至40のアラルキル基、炭素数乃至40のアリールオキシ基または炭素数乃至40のアリールチオール基であり、R2は、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、イソシアネート基、炭素数1乃至40のアルキル基、炭素数2乃至40のアルケニル基、炭素数3乃至40のシクロアルキル基、炭素数3乃至40のヘテロシクロアルキル基、炭素数6乃至40のアリール基、炭素数3乃至40のヘテロアリール基、炭素数乃至40のアラルキル基または炭素数2乃至40のエポキシ基であり、n及びmは、それぞれ独立して、1乃至100,000の整数であり、
n:mは、1:1乃至100:1である。
【請求項5】
前記シルセスキオキサン高分子は、下記の化学式3を含む、請求項4に記載のコーティング組成物。
[化学式3]
前記化学式3におけるR1、R2、nおよびmは、前記化学式1および化学式2において定義した通りである。
【請求項6】
R1は、アミノ基、(メタ)アクリル基、ヒドロキシ基、チオール基、ビニル基およびエポキシ基よりなる群から選ばれる反応性置換基または官能基を有し、R2は、水素、メチル基、エチル基またはプロピル基である、請求項4または5に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
前記シルセスキオキサン高分子の含量は、50乃至99重量%であり、前記溶媒の含量は、1乃至50重量%である、請求項4または5に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
ガラス基材;および
請求項4または5に記載のコーティング組成物がコーティングされて硬化したコーティング層と、を備えるガラスパネル。
【請求項9】
記コーティング層の層厚は、50nm乃至100μmである、請求項8に記載のガラスパネル。
【請求項10】
記コーティング層は、前記ガラス基材の片面または両面にコーティングされる、請求項8に記載のガラスパネル。
【請求項11】
前記ガラスパネルは、ボールドロップ評価において500g以下のボールに対して破損が生じない、請求項8に記載のガラスパネル。
【外国語明細書】