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特開2024-129031血液脳関門を超える薬剤の送達のための方法および組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129031
(43)【公開日】2024-09-26
(54)【発明の名称】血液脳関門を超える薬剤の送達のための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/34 20060101AFI20240918BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240918BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20240918BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20240918BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20240918BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240918BHJP
   C07K 14/01 20060101ALI20240918BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240918BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 31/522 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALN20240918BHJP
【FI】
C12N15/34 ZNA
C12N15/62 Z
C07K7/06
C12N15/864 100Z
C12N15/113 Z
C07K19/00
C07K14/01
C12N5/10
A61K35/76
A61P25/28
A61P25/08
A61P9/10
A61P25/00
A61P21/00
A61P21/04
A61P3/00
A61P43/00 105
A61P1/16
A61P25/16
A61P25/14
A61P25/02
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K31/522
A61K31/7105
A61K31/713
A61K48/00
C12N15/34
A61K31/7088
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024092463
(22)【出願日】2024-06-06
(62)【分割の表示】P 2021500538の分割
【原出願日】2019-07-11
(31)【優先権主張番号】62/696,422
(32)【優先日】2018-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】503146324
【氏名又は名称】ザ ブリガム アンド ウィメンズ ホスピタル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】The Brigham and Women’s Hospital, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100196966
【弁理士】
【氏名又は名称】植田 渉
(72)【発明者】
【氏名】ベイ,フェンフェン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】細胞中へのおよび血液脳関門を超える薬剤の浸透を増強する人工的なターゲティング配列、およびこの配列を含む組成物を提供する。
【解決手段】AAVカプシドを含むアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであって、前記AAVカプシドがペプチドインサートを含み、前記ペプチドインサートが、TVSALFK(配列番号8)の5~7個の連続するアミノ酸、またはTVSALK(配列番号4)の5~6個の連続するアミノ酸からなる、AAVベクター、ならびに前記AAVベクターを含む、細胞に導入遺伝子を送達する方法において使用するための組成物が提供される。
【選択図】図3C-D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列TVSALFK(配列番号8);TVSALK(配列番号4);KLASVT(配
列番号83);またはKFLASVT(配列番号84)からの少なくとも4個の連続する
アミノ酸を含むアミノ酸配列を含むAAVカプシドタンパク質。
【請求項2】
配列TVSALK(配列番号4);TVSALFK(配列番号8);KLASVT(配
列番号83);またはKFLASVT(配列番号84)からの少なくとも5個の連続する
アミノ酸を含むアミノ酸配列を含む請求項1に記載のAAVカプシドタンパク質。
【請求項3】
配列TVSALK(配列番号4);TVSALFK(配列番号8);KLASVT(配
列番号83);またはKFLASVT(配列番号84)からの少なくとも6個の連続する
アミノ酸を含むアミノ酸配列を含む請求項1に記載のAAVカプシドタンパク質。
【請求項4】
前記AAVは、AAV9である、請求項1~3のいずれか一項に記載のAAVカプシド
タンパク質。
【請求項5】
AAV9 VP1を含む請求項1~4のいずれか一項に記載のAAVカプシドタンパク
質。
【請求項6】
配列番号85のアミノ酸588および589に対応する位置にターゲティング配列が挿
入されている、請求項5に記載のAAVカプシドタンパク質。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のAAVカプシドタンパク質をコードする核酸。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載のカプシドタンパク質を含むAAV。
【請求項9】
導入遺伝子、好ましくは治療用導入遺伝子をさらに含む請求項8に記載のAAV。
【請求項10】
V[S/p][A/m/t/]L(配列番号79)、TV[S/p][A/m/t/]
L(配列番号80)、TV[S/p][A/m/t/]LK(配列番号81)、またはT
V[S/p][A/m/t/]LFK.(配列番号82)を含むターゲティング配列。
【請求項11】
前記ターゲティング配列は、VPALR(配列番号1);VSALK(配列番号2);
TVPALR(配列番号3);TVSALK(配列番号4);TVPMLK(配列番号1
2);TVPTLK(配列番号13);FTVSALK(配列番号5);LTVSALK
(配列番号6);TVSALFK(配列番号8);TVPALFR(配列番号9);TV
PMLFK(配列番号10)、またはTVPTLFK(配列番号11)を含む、請求項1
0に記載のターゲティング配列。
【請求項12】
請求項10または11に記載のターゲティング配列と、異種配列とを含む融合タンパク
質。
【請求項13】
請求項10または11に記載のターゲティング配列を含むAAVカプシドタンパク質。
【請求項14】
AAV9 VP1を含む請求項13に記載のAAVカプシドタンパク質。
【請求項15】
前記ターゲティング配列は、配列番号のアミノ酸588および589に対応する位置に
挿入されている、請求項14に記載のAAVカプシドタンパク質。
【請求項16】
請求項10~16のいずれか一項に記載のターゲティング配列、融合タンパク質、また
はAAVカプシドタンパク質をコードする核酸。
【請求項17】
請求項13~15のいずれか一項に記載のカプシドタンパク質を含むAAV。
【請求項18】
導入遺伝子、好ましくは治療用導入遺伝子をさらに含む請求項17に記載のAAV。
【請求項19】
細胞に導入遺伝子を送達する方法であって、前記細胞と、請求項1~9、17、または
18に記載のAAVとを接触させることを含む方法。
【請求項20】
前記細胞は、神経細胞(任意選択で後根神経節神経細胞)、星状膠細胞、心筋細胞、ま
たは筋細胞である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記細胞は、生きている対象中に存在する、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記対象は、哺乳類対象である、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記細胞は、脳、脊髄、後根神経節、心臓、または筋肉、およびこれらの組み合わせか
ら選択される組織中に存在する、請求項20~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記対象は、神経変性疾患、てんかん;脳卒中;脊髄小脳失調症;キャナヴァン病;異
染性白質ジストロフィー;脊髄性筋萎縮症;フリートライヒ運動失調症;X連鎖中心核ミ
オパチー;リソソーム蓄積症;バース症候群;デュシェンヌ型筋ジストロフィー;ウィル
ソン病;またはクリグラー・ナジャー症候群1型を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記神経変性疾患は、パーキンソン病;アルツハイマー病;ハンチントン病;筋萎縮性
側索硬化症;および多発性硬化症である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記対象は、脳がんを有し、前記方法は、抗がん剤をコードするAAVを投与すること
を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記抗がん剤は、HSV.TK1であり、前記方法は、ガンシクロビルを投与すること
をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記細胞は、前記対象の脳中に存在し、前記AAVを、非経口送達;脳内;または髄腔
内送達により投与する、請求項22~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記非経口送達は、静脈内送達、動脈内送達、皮下送達、腹腔内送達、または筋肉内送
達による、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記髄腔内送達は、腰椎注射、大槽注射、または実質内注射による、請求項28に記載
の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2018年7月11日に出願された米国仮特許出願第62/696,422
号の利益を主張する。前述の内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出されており、かつその全体が参照に
より本明細書に組み込まれる配列表を含む。2019年7月11日に作成された前記AS
CIIコピーは、名称が29618-0200WO1_SL.txtであり、サイズが5
8,834バイトである。
【0003】
血液脳関門を超える薬剤の浸透を増強する配列、この配列を含む組成物、およびこれら
の使用方法が本明細書で記載される。
【背景技術】
【0004】
遺伝子治療薬等の治療薬の送達は、多くの病態の処置の開発への障害である。血液脳関
門(BBB)は、病態(例えば、神経変性疾患、例えばパーキンソン病;アルツハイマー
病;ハンチントン病;筋萎縮性側索硬化症;および多発性硬化症)を処置するための哺乳
類の中枢神経系(CNS)への薬物送達(特に、ヒト脳への送達)にとって重要な障害で
ある。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、細胞中へのおよび血液脳関門を超える薬剤の浸透を増強する人工的なターゲ
ティング配列の開発に基づく。
【0006】
したがって、配列TVSALFK(配列番号8);TVSALK(配列番号4);KL
ASVT(配列番号83);またはKFLASVT(配列番号84)からの少なくとも4
個の連続するアミノ酸を含むターゲティング配列を含むAAVカプシドタンパク質(例え
ば、操作されたAAVカプシドタンパク質)が本明細書で提供される。いくつかの実施形
態では、このAAVカプシドタンパク質は、配列TVSALK(配列番号4);TVSA
LFK(配列番号8);KLASVT(配列番号83);またはKFLASVT(配列番
号84)からの少なくとも5個の連続するアミノ酸を含むターゲティング配列を含む。い
くつかの実施形態では、このAAVカプシドタンパク質は、配列TVSALK(配列番号
4);TVSALFK(配列番号8);KLASVT(配列番号83);またはKFLA
SVT(配列番号84)からの少なくとも6個の連続するアミノ酸を含むターゲティング
配列を含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、このAAVはAAV9であるが、当分野で既知の他のAAV
(例えば、AAV1、2、3、4、5、6、7、8、およびこれらのバリアント、ならび
に当分野で既知であるかまたは本明細書で説明されている他のもの)も使用し得る。
【0008】
いくつかの実施形態では、このAAVカプシドタンパク質は、AAV9 VP1(例え
ば配列番号85)を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、このターゲティング配列は、配列番号85のアミノ酸588
および589の間に対応する位置でカプシドタンパク質に挿入されている。
【0010】
本明細書で記載されているターゲティング配列を含むAAVカプシドタンパク質をコー
ドする核酸もまた本明細書で提供される。
【0011】
加えて、本明細書で記載されているターゲティング配列を含むカプシドタンパク質を含
むAAVが本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、AAVは、導入遺伝子、好
ましくは治療用導入遺伝子または診断用導入遺伝子をさらに含む。治療用導入遺伝子とし
て、例えば、タンパク質機能を回復させるcDNA、遺伝子編集用のガイドRNA、RN
A、またはmiRNAが挙げられ得る。
【0012】
V[S/p][A/m/t/]L(配列番号79)、TV[S/p][A/m/t/]
L(配列番号80)、TV[S/p][A/m/t/]LK(配列番号81)、またはT
V[S/p][A/m/t/]LFK.(配列番号82)を含むターゲティング配列もま
た本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、このターゲティング配列は、VPA
LR(配列番号1);VSALK(配列番号2);TVPALR(配列番号3);TVS
ALK(配列番号4);TVPMLK(配列番号12);TVPTLK(配列番号13)
;FTVSALK(配列番号5);LTVSALK(配列番号6);TVSALFK(配
列番号8);TVPALFR(配列番号9);TVPMLFK(配列番号10)、または
TVPTLFK(配列番号11)を含む。異種(例えば非AAV PV1)配列に連結さ
れているターゲティング配列を含む融合タンパク質、およびターゲティング配列を含むA
AVカプシドタンパク質(例えばAAV9 VP1)もまた提供される。いくつかの実施
形態では、このターゲティング配列は、配列番号85のアミノ酸588および589に対
応する位置に挿入されている。
【0013】
加えて、本明細書で記載されているターゲティング配列、融合タンパク質、またはAA
Vカプシドタンパク質をコードする核酸と、ターゲティング配列を含むカプシドタンパク
質を含むAAVが本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、このAAVは、導入
遺伝子、好ましくは治療用導入遺伝子または診断用導入遺伝子をさらに含む。治療用導入
遺伝子として、例えば、タンパク質機能を回復させるcDNA、遺伝子編集用のガイドR
NA、RNA、またはmiRNAが挙げられ得る。
【0014】
さらに、細胞に導入遺伝子を送達する方法であって、この細胞と、本明細書で記載され
ているAAVまたは融合タンパク質とを接触させることを含む方法が本明細書で提供され
る。いくつかの実施形態では、この細胞は、生きている対象(例えば哺乳類対象)中に存
在する。いくつかの実施形態では、この細胞は、脳、脊髄、後根神経節、心臓、または筋
肉、およびこれらの組み合わせから選択される組織中に存在する。いくつかの実施形態で
は、この細胞は、神経細胞(任意選択で後根神経節神経細胞)、星状膠細胞、心筋細胞、
または筋細胞である。
【0015】
いくつかの実施形態では、この対象は、神経変性疾患、てんかん;脳卒中;脊髄小脳失
調症;キャナヴァン病;異染性白質ジストロフィー;脊髄性筋萎縮症;フリートライヒ運
動失調症;X連鎖中心核ミオパチー(X-linked centronuclear myopathy);リソソーム
蓄積症;バース症候群;デュシェンヌ型筋ジストロフィー;ウィルソン病;またはクリグ
ラー・ナジャー症候群1型を有する。いくつかの実施形態では、神経変性疾患は、パーキ
ンソン病;アルツハイマー病;ハンチントン病;筋萎縮性側索硬化症;および多発性硬化
症である。
【0016】
いくつかの実施形態では、この対象は、脳がんを有し、この方法は、抗がん剤をコード
するAAVを投与することを含む。いくつかの実施形態では、この抗がん剤は、HSV.
TK1であり、この方法は、ガンシクロビルを投与することをさらに含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、この細胞は対象の脳中に存在し、このAAVを、非経口送達
(例えば、静脈内送達、動脈内送達、皮下送達、腹腔内送達、もしくは筋肉内送達による
);脳内;または髄腔内送達(例えば、腰椎注射、大槽注射、もしくは実質内注射による
)により投与する。
【0018】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発
明が属する分野の当業者により一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書では、
本発明での使用のための方法および材料が記載されているが、当分野で既知の他の適切な
方法および材料も使用し得る。材料、方法、および例は一例にすぎず、限定することは意
図されていない。本明細書で言及されている全ての刊行物、特許出願、特許、配列、デー
タベースエントリ、および他の参考文献は、それらの全体が参照により組み込まれる。矛
盾する場合には、定義を含む本明細書が支配する。
【0019】
本発明の他の特徴および利点は、下記の詳細な説明および図面ならびに特許請求の範囲
から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】細胞透過性ペプチド(CPP)をそのカプシドに挿入することによるAAV9の操作の例示的な戦略を示す。図1Aは、AAV9ウイルスの3Dモデルである。アミノ酸588および589(VP1ナンバリング)の間でカプシドに挿入されている個々のCPPは、受容体結合がおそらく起こる3倍軸で表示されるだろう。図1Bは、個々のAAVの製造方法を示す。pRC(操作されているかまたはされていない)、pヘルパー、およびpAAVを含む3種のプラスミドを、HEK 293T細胞に共トランスフェクトし、AAVを回収し、イオジキサノール勾配を使用して精製する。
図2A】低用量の候補AAVの静脈内投与後のマウス脳切片の代表的な画像およびその定量分析を示す。遺伝子背景が混在しているマウスを使用する。候補AAVは、挿入されたCPPが異なるが(表3を参照されたい)、全てが、レポーターとして核赤色蛍光タンパク質(RFP)を発現する。製造収率が低い候補AAVは、さらなるスクリーニングのために除外される。AAVの用量は、1匹の動物当たり1×1010vg(ウイルスゲノム)である。図2A中の各白色の点は、RFP標識細胞を表す。
図2B】低用量の候補AAVの静脈内投与後のマウス脳切片の代表的な画像およびその定量分析を示す。遺伝子背景が混在しているマウスを使用する。候補AAVは、挿入されたCPPが異なるが(表3を参照されたい)、全てが、レポーターとして核赤色蛍光タンパク質(RFP)を発現する。製造収率が低い候補AAVは、さらなるスクリーニングのために除外される。AAVの用量は、1匹の動物当たり1×1010vg(ウイルスゲノム)である。図2Bでは、P<0.05、対AAV9、ANOVA。
図2C】反復実験におけるAAV.CPP.11およびAAV.CPP.12の静脈内投与後のマウス脳切片の代表的な画像およびその定量分析を示す。AAV.CPP.11およびAAV.CPP.12はそれぞれ、CPP BIP1およびCPP BIP2を含む(表3を参照されたい)。AAVの用量は、1匹の動物当たり1×1011vgまで増加している。候補AAVは、レポーターとして核赤色蛍光タンパク質(RFP)を発現する。図2C中の各白色の点は、RFP標識細胞を表す。
図2D】反復実験におけるAAV.CPP.11およびAAV.CPP.12の静脈内投与後のマウス脳切片の代表的な画像およびその定量分析を示す。AAV.CPP.11およびAAV.CPP.12はそれぞれ、CPP BIP1およびCPP BIP2を含む(表3を参照されたい)。AAVの用量は、1匹の動物当たり1×1011vgまで増加している。候補AAVは、レポーターとして核赤色蛍光タンパク質(RFP)を発現する。図2Dでは、P<0.05、**P<0.01、対AAV9、ANOVA。
図3A】より良好な脳形質導入に向けてAAV9をさらに操作するためのBIPターゲティング配列の最適化を示す。(AAV.CPP.11中のような)AAV9をより効率的に脳に形質導入することを可能にするBIP1(VPALR、配列番号1)は、ラット中のタンパク質Ku70に由来する。ヒト、マウス、およびラットのKu70タンパク質は、その正確なアミノ酸配列が異なる。AAV.CPP.12中のようなBIP2(VSALK、配列番号2)は、BIP1と関連する「合成」ペプチドである。さらなる操作は、最終的に操作されたAAVの種特異性を最小限に抑えることを期待して、VSALK配列に焦点を当てている。新規のターゲティング配列を生成するために、目的のアミノ酸をVSALK配列に追加し、他の場合では、個々のアミノ酸の位置を切り替える。スクリーニング用に新規の候補AAVを生成するために、全ての新規のBIP2由来配列をAAV9カプシドに再び挿入する。順に挙げられている配列は、配列番号69、70、71、1~6、72、7、および8である。
図3B】より多くの候補AAVの静脈内投与後のマウス脳切片の代表的な画像およびその定量分析を示す。全ての候補AAVは、レポーターとして核赤色蛍光タンパク質(RFP)を発現する。AAVの用量は、1匹の動物当たり1×1011vgである。図3B中の各白色の点は、RFP標識細胞を表す。AAV.CPP.16およびAAV.CPP.21を、脳形質導入が頑強でありかつ広範囲であるトップヒットとして同定した。
図3C-D】図3Cは、より多くの候補AAVの静脈内投与後のマウス脳切片の代表的な画像およびその定量分析を示す。全ての候補AAVは、レポーターとして核赤色蛍光タンパク質(RFP)を発現する。AAVの用量は、1匹の動物当たり1×1011vgである。AAV.CPP.16およびAAV.CPP.21を、脳形質導入が頑強でありかつ広範囲であるトップヒットとして同定した。図3Cでは、P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、対AAV9、ANOVA。図3Dは、候補AAVの静脈内投与後の肝臓における形質導入効率の定量分析を示す。形質導入された肝臓細胞の割合を表す。AAVの用量は、1匹の動物当たり1×1011vgである。***P<0.001、対AAV9、ANOVA。
図4A-B】ヒト血液脳関門のインビトロでのスフェロイドモデルにおける選択された候補AAVのスクリーニングを示す。図4Aは、表面で関門を形成するヒト微小血管内皮細胞と、スフェロイド内部のヒト周皮細胞および星状膠細胞とを含むスフェロイドを示す。候補AAVを、周辺の培地からスフェロイド内へと浸透して内部で細胞に形質導入する能力に関して評価した。図4Bは、AAV9、AAV.CPP.16、およびAAV.CPP.21で処理したスフェロイドの画像を示す。
図4C-D】ヒト血液脳関門のインビトロでのスフェロイドモデルにおける選択された候補AAVのスクリーニングを示す。候補AAVを、周辺の培地からスフェロイド内へと浸透して内部で細胞に形質導入する能力に関して評価した。図4C~4Dは、AAV9、AAV.CPP.16、およびAAV.CPP.21で処理したスフェロイドの画像を示す。
図4E】ヒト血液脳関門のインビトロでのスフェロイドモデルにおける選択された候補AAVのスクリーニングを示す。図4Eは、様々なAAVで処理されたスフェロイドの相対的なRFP強度を示す。***P<0.001、対AAV9、ANOVA。
図5A】C57BL/6J近交系マウスでのAAV9、AAV.CPP.16、およびAAV.CPP.21の静脈内投与後の脳切片の代表的な画像およびその定量分析を示す。全ての候補AAVは、レポーターとして核赤色蛍光タンパク質(RFP)を発現する。AAVの用量は、1匹の動物当たり1×1012vgである。図5A中の各白色の点は、RFP標識細胞を表す。
図5B】C57BL/6J近交系マウスでのAAV9、AAV.CPP.16、およびAAV.CPP.21の静脈内投与後の脳切片の代表的な画像およびその定量分析を示す。全ての候補AAVは、レポーターとして核赤色蛍光タンパク質(RFP)を発現する。AAVの用量は、1匹の動物当たり1×1012vgである。図5Bでは、P<0.05、***P<0.001、ANOVA。
図6A】BALB/cJ近交系マウスでのAAV9、AAV.CPP.16、およびAAV.CPP.21の静脈内投与後の脳切片の代表的な画像およびその定量分析を示す。全ての候補AAVは、レポーターとして核赤色蛍光タンパク質(RFP)を発現する。AAVの用量は、1匹の動物当たり1×1012vgである。図6A中の各白色の点は、RFP標識細胞を表す。
図6B】BALB/cJ近交系マウスでのAAV9、AAV.CPP.16、およびAAV.CPP.21の静脈内投与後の脳切片の代表的な画像およびその定量分析を示す。全ての候補AAVは、レポーターとして核赤色蛍光タンパク質(RFP)を発現する。AAVの用量は、1匹の動物当たり1×1012vgである。図6Bでは、***P<0.001、ANOVA。
図7A】C57BL/6J近交系マウスでの高用量のAAV.CPP.16およびAAV.CPP.21の静脈内投与後の脳切片の代表的な画像およびその定量分析を示す。候補AAVは両方とも、レポーターとして核赤色蛍光タンパク質(RFP)を発現する。AAVの用量は、1匹の動物当たり4×1012vgである。図7A中の各白色の点は、RFP標識細胞を表す。
図7B】C57BL/6J近交系マウスでの高用量のAAV.CPP.16およびAAV.CPP.21の静脈内投与後の脳切片の代表的な画像およびその定量分析を示す。候補AAVは両方とも、レポーターとして核赤色蛍光タンパク質(RFP)を発現する。AAVの用量は、1匹の動物当たり4×1012vgである。図7Bでは、P<0.05、Student検定。
図8A-1】AAV.CPP.16およびAAV.CPP.21が、マウスの複数の脳領域(例えば、大脳皮質、中脳、および海馬)にわたり成熟神経細胞(NeuN抗体により標識されている)に形質導入することを示す。形質導入された神経細胞を、NeuN抗体およびRFPで共標識する。成体C57BL/6Jマウス(6週齢)に、4×1012vgのAAVを静脈内投与した。
図8A-2】図8A-1の続きである。
図8B】AAV.CPP.16およびAAV.CPP.21がマウスの脊髄および運動神経細胞の標的化においてAAV9と比較して能力の増強を示すことを示す。新生仔マウス(生後1日)に、4×1010vgのAAVを静脈内投与した。脊髄の前角での運動神経細胞を、CHAT抗体染色を使用して可視化した。RFPシグナルおよびCHATシグナルの共局在化は、運動神経細胞の特異的な形質導入を示唆する。
図9A】AAV.CPP.16が成体マウスの心臓の標的化においてAAV9と比較して能力の増強を示すことを示す。成体C57BL/6Jマウス(6週齢)に、1×1011vgのAAVを静脈内投与した。全DAPI染色細胞に対するRFP標識細胞の割合を表す。P<0.05、Student検定。
図9B】AAV.CPP.16が成体マウスの骨格筋の標的化においてAAV9と比較して能力の増強を示すことを示す。成体C57BL/6Jマウス(6週齢)に、1×1011vgのAAVを静脈内投与した。全DAPI染色細胞に対するRFP標識細胞の割合を表す。P<0.05、Student検定。
図9C】AAV.CPP.16が成体マウスの後根神経節(DRG)の標的化においてAAV9と比較して能力の増強を示すことを示す。成体C57BL/6Jマウス(6週齢)に、1×1011vgのAAVを静脈内投与した。全DAPI染色細胞に対するRFP標識細胞の割合を表す。P<0.05、Student検定。
図10A】AAV.CPP.16およびAAV.CPP.21がAAV9と比較して非ヒト霊長類での静脈内投与後に一次視覚野の脳細胞に形質導入する能力の増強を示すことを示す。2×1013vg/kgの(レポーター遺伝子としての)AAVs-CAG-AADCを、既存の中和抗体が少ない3カ月齢のカニクイザルに静脈内注射した。AAV形質導入細胞(黒色で示す)を、AADCに対する抗体染色を使用して可視化した。左のパネルの四角形の領域は、右側のパネルで拡大されている。AAV.CPP.16は、AAV9と比べて有意に多くの細胞に形質導入した。AAV.CPP.21もAAV9と比べて多くの細胞に形質導入したが、その効果は、AAV.CPP.16と比較してあまり明らかでなかった。
図10B】AAV.CPP.16およびAAV.CPP.21がAAV9と比較して非ヒト霊長類での静脈内投与後に頭頂葉皮質の脳細胞に形質導入する能力の増強を示すことを示す。2×1013vg/kgの(レポーター遺伝子としての)AAVs-CAG-AADCを、既存の中和抗体が少ない3カ月齢のカニクイザルに静脈内注射した。AAV形質導入細胞(黒色で示す)を、AADCに対する抗体染色を使用して可視化した。左のパネルの四角形の領域は、右側のパネルで拡大されている。AAV.CPP.16は、AAV9と比べて有意に多くの細胞に形質導入した。AAV.CPP.21もAAV9と比べて多くの細胞に形質導入したが、その効果は、AAV.CPP.16と比較してあまり明らかでなかった。
図10C】AAV.CPP.16およびAAV.CPP.21がAAV9と比較して非ヒト霊長類での静脈内投与後に視床の脳細胞に形質導入する能力の増強を示すことを示す。2×1013vg/kgの(レポーター遺伝子としての)AAVs-CAG-AADCを、既存の中和抗体が少ない3カ月齢のカニクイザルに静脈内注射した。AAV形質導入細胞(黒色で示す)を、AADCに対する抗体染色を使用して可視化した。左のパネルの四角形の領域は、右側のパネルで拡大されている。AAV.CPP.16は、AAV9と比べて有意に多くの細胞に形質導入した。AAV.CPP.21もAAV9と比べて多くの細胞に形質導入したが、その効果は、AAV.CPP.16と比較してあまり明らかでなかった。
図10D】AAV.CPP.16およびAAV.CPP.21がAAV9と比較して非ヒト霊長類での静脈内投与後に小脳の脳細胞に形質導入する能力の増強を示すことを示す。2×1013vg/kgの(レポーター遺伝子としての)AAVs-CAG-AADCを、既存の中和抗体が少ない3カ月齢のカニクイザルに静脈内注射した。AAV形質導入細胞(黒色で示す)を、AADCに対する抗体染色を使用して可視化した。左のパネルの四角形の領域は、右側のパネルで拡大されている。AAV.CPP.16およびAAV.CPP.21は両方とも、AAV9と比べて有意に多くの細胞に形質導入した。
図11】AAV.CPP.16およびAAV.CPP.21がLY6Aに結合しないことを示す。LY6Aは、AAV.PHP.Bおよびそのバリアント(例えば、AAV.PHP.eB(米国特許第9102949号明細書、米国特許出願公開第20170166926号明細書))の受容体として機能し、ある特定のマウス株でのBBBの横断におけるAAV.PHP.eBの頑強な効果を媒介する(Hordeaux et al. Mol Ther 2019 27(5):912-921;Huang et al. 2019, dx.doi.org/10.1101/538421)。培養された293細胞におけるマウスLY6Aの過剰発現により、細胞表面へのAAV.PHP.eBの結合が有意に増加する(図11A)。逆に、LY6Aの過剰発現により、AAV9、AAV.CPP.16、またはAAV.CPP.21に関するウイルス結合は増加しない(図11B)。このことは、AAV.CPP.16またはAAV.CPP.21が受容体としてAAV.PHP.eBとLY6Aを共有しないことを示唆する。
図12A】AAV.CPP.21を使用して膠芽腫(GBM)のマウスモードの脳腫瘍に治療用遺伝子を全身送達し得ることを示す。図11Aでは、静脈内投与されたAAV.CPP.21-H2BmCherryは、腫瘤(特に、腫瘍が拡がるフロンティア)を標的とすることが示された。
図12B】AAV.CPP.21を使用して膠芽腫(GBM)のマウスモードの脳腫瘍に治療用遺伝子を全身送達し得ることを示す。図11Bでは、「自殺遺伝子」HSV.TK1を全身送達するためのAAV.CPP.21の使用により、プロドラッグであるガンシクロビルと併用した場合に、脳腫瘤の縮小がもたらされる。HSV.TK1は、その他の方法で「休眠」ガンシクロビルを腫瘍死滅剤へと変える。P<0.05、Student検定。
図12C】AAV.CPP.21を使用して膠芽腫(GBM)のマウスモードの脳腫瘍に治療用遺伝子を全身送達し得ることを示す。図11Cでは、「自殺遺伝子」HSV.TK1を全身送達するためのAAV.CPP.21の使用により、プロドラッグであるガンシクロビルと併用した場合に、脳腫瘤の縮小がもたらされる。HSV.TK1は、その他の方法で「休眠」ガンシクロビルを腫瘍死滅剤へと変える。P<0.05、Student検定。
図13-1】成体マウス脳に局所注射された場合に、AAV.CPP.21は、AAV9と比較して脳組織のより広範なかつ頑強な形質導入を生じることを示す。成体マウス(>6週齢)でAAV(1×1011vg)の脳内注射を実施し、AAV注射後3週間で脳組織を採取して調べた。**P<0.01、Student検定。
図13-2】図13-1の続きである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
BBBを超える送達での困難さが、がんおよび神経変性障害等の脳障害を処置するため
の治療薬の開発の妨げになっている。脳、脊髄、および眼への治療用遺伝子の送達のため
の重要な研究および臨床ツールとして、アデノ随伴ウイルス(AAV)が浮上している(
例えば、米国特許第9102949号明細書;同第9585971号明細書;および同第
20170166926号明細書を参照されたい)。しかしながら、AAV9等の既存の
AAVは、BBBの横断効率が制限されているか、一部の非霊長類の種でしか機能しない
かのいずれかである。
【0022】
既知の細胞透過性ペプチド(CPP)に基づく合理的な設計および標的化スクリーニン
グ(例えば、Gomez et al., Bax-inhibiting peptides derived from Ku70 and cell-pen
etrating pentapeptides. Biochem. Soc. Trans. 2007;35(Pt 4):797-801を参照されたい
)を介して、AAVのカプシドへと操作された場合に脳への遺伝子送達の効率を最大3桁
まで改善するターゲティング配列が発見されている。この方法を使用して、膠芽腫の動物
モデルにおいて腫瘍サイズを劇的に減少させるそのようなAAVベクターの1つが操作に
より作製された。
【0023】
ターゲティング配列
本方法により、例えば、AAV(例えば、AAV1、AAV2、AAV8、もしくはA
AV9)のカプシドに挿入された場合に、または化学的にもしくは融合タンパク質として
発現により生物学的薬剤(例えば、抗体もしくは他の大きい生体分子)にコンジュゲート
された場合に、BBBを介した浸透を増強する多くの潜在的ターゲティングペプチドが同
定された。
【0024】
いくつかの実施形態では、このターゲティングペプチドは、少なくとも5個のアミノ酸
の配列を含む。いくつかの実施形態では、このアミノ酸配列は、配列VPALR(配列番
号1)およびVSALK(配列番号2)の少なくとも4個(例えば5個)の連続するアミ
ノ酸を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、このターゲティングペプチドは、Xの配
列を含み、ここで
(i)X、X、X、Xは、V、A、L、I、G、P、S、T、またはMの内の
任意の4個の異なるアミノ酸であり;
(ii)Xは、K、R、H、D、またはEである(配列番号73)。
【0026】
いくつかの実施形態では、このターゲティングペプチドは、少なくとも6個のアミノ酸
の配列を含む。いくつかの実施形態では、このアミノ酸配列は、配列TVPALR(配列
番号3)、TVSALK(配列番号4)、TVPMLK(配列番号12)、およびTVP
TLK(配列番号13)の少なくとも4個(例えば5個または6個)の連続するアミノ酸
を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、このターゲティングペプチドは、X
の配列を含み、
(i)Xは、Tであり;
(ii)X、X、X、Xは、V、A、L、I、G、P、S、T、またはMの内
の任意の4個の異なるアミノ酸であり;
(iii)Xは、K、R、H、D、またはEである(配列番号74)。
【0028】
いくつかの実施形態では、このターゲティングペプチドは、X
の配列を含み、
(i)X、X、X、Xは、V、A、L、I、G、P、S、T、またはMからの
任意の4個の異なるアミノ酸であり;
(ii)Xは、K、R、H、D、またはEであり;
(iii)Xは、EまたはDである(配列番号75)。
【0029】
いくつかの実施形態では、このターゲティングペプチドは、少なくとも7個のアミノ酸
の配列を含む。いくつかの実施形態では、このアミノ酸配列は、配列FTVSALK(配
列番号5)、LTVSALK(配列番号6)、TVSALFK(配列番号8)、TVPA
LFR(配列番号9)、TVPMLFK(配列番号10)、およびTVPTLFK(配列
番号11)の少なくとも4個(例えば、5個、6個、または7個)の連続するアミノ酸を
含む。いくつかの他の実施形態では、このターゲティングペプチドは、X
の配列を含み、
(i)Xは、F、L、W、またはYであり;
(ii)Xは、Tであり;
(iii)X、X、X、Xは、V、A、L、I、G、P、S、T、またはMの
内の任意の4個の異なるアミノ酸であり;
(iv)Xは、K、R、H、D、またはEである(配列番号76)。
【0030】
いくつかの実施形態では、このターゲティングペプチドは、X
の配列を含み、
(i)Xは、Tであり;
(ii)X、X、X、Xは、V、A、L、I、G、P、S、T、またはMの内
の任意の4個の異なるアミノ酸であり;
(iii)Xは、K、R、H、D、またはEであり;
(iv)Xは、EまたはDである(配列番号77)。
【0031】
いくつかの実施形態では、このターゲティングペプチドは、X
の配列を含み、
(i)X、X、X、Xは、V、A、L、I、G、P、S、T、またはMの内の
任意の4個の異なるアミノ酸であり;
(ii)Xは、K、R、H、D、またはEであり;
(iii)Xは、EまたはDであり;
(iv)Xは、AまたはIである(配列番号78)。
【0032】
いくつかの実施形態では、このターゲティングペプチドは、V[S/p][A/m/t
/]L(配列番号79)(大文字がある位置では、大文字が好ましい)の配列を含む。い
くつかの実施形態では、このターゲティングペプチドは、TV[S/p][A/m/t/
]L(配列番号80)の配列を含む。いくつかの実施形態では、このターゲティングペプ
チドは、TV[S/p][A/m/t/]LK(配列番号81)の配列を含む。いくつか
の実施形態では、このターゲティングペプチドは、TV[S/p][A/m/t/]LF
K.(配列番号82)の配列を含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、このターゲティングペプチドは、VPALR(配列番号1)
またはVSALK(配列番号2)からならない。
【0034】
上述した5個、6個、または7個のアミノ酸の配列を含む具体例のアミノ酸配列を、表
1に列挙する。
【0035】
【表1-1】
【0036】
【表1-2】
【0037】
反転した配列を含むターゲティングペプチド(例えば、KLASVT(配列番号83)
およびKFLASVT(配列番号84))も使用し得る。
【0038】
本明細書で開示されているターゲティングペプチドを、ペプチド模倣物を製造するため
の当分野で既知の方法に従って改変し得る。例えば、Qvit et al., Drug Discov Today.
2017 Feb; 22(2): 454-462;Farhadi and Hashemian, Drug Des Devel Ther. 2018; 12:
1239-1254;Avan et al., Chem. Soc. Rev., 2014,43, 3575-3594;Pathak, et al., Ind
o American Journal of Pharmaceutical Research, 2015. 8;Kazmierski, W.M., ed., P
eptidomimetics Protocols, Human Press (Totowa NJ 1998);Goodman et al., eds., Ho
uben-Weyl Methods of Organic Chemistry: Synthesis of Peptides and Peptidomimetic
s, Thiele Verlag (New York 2003);およびMayo et al., J. Biol. Chem., 278:45746 (
2003)を参照されたい。いくつかの場合では、本明細書で開示されているペプチドおよび
断片のこの改変ペプチド模倣バージョンは、非ペプチド模倣ペプチドと比較して、インビ
ボでの安定性の増強を示す。
【0039】
ペプチド模倣物を作製する方法は、ペプチド配列中のアミノ酸の内の1つまたは複数(
例えば全て)を、D-アミノ酸鏡像異性体で置換することを含む。そのような配列は、本
明細書では「レトロ(retro)」配列と称される。別の方法では、アミノ酸残基のN末端
からC末端への順序が反転されており、その結果、元々のペプチドのN末端からC末端へ
のアミノ酸残基の順序が、改変されたペプチド模倣物ではC末端からN末端へのアミノ酸
残基の順序となる。そのような配列は、「インベルソ」配列と称され得る。
【0040】
ペプチド模倣物は、レトロバージョンおよびインベルソバージョンの両方であり得、即
ち、本明細書で開示されているペプチドの「レトロ-インベルソ」バージョンであり得る
。この新規のペプチド模倣物は、このペプチド模倣物でのN末端からC末端へのアミノ酸
残基の順序が元々のペプチドでのC末端からN末端へのアミノ酸残基の順序と一致するよ
うに配置されたD-アミノ酸で構成され得る。
【0041】
ペプチド模倣物を製造する他の方法は、ペプチド中の1個または複数個のアミノ酸残基
を、このアミノ酸の化学的に区別されているが認識されている機能的類似体(即ち、人工
アミノ酸類似体)で置き換えることを含む。人工アミノ酸類似体として、β-アミノ酸、
β-置換β-アミノ酸(「β-アミノ酸」)、アミノ酸の亜リン酸類似体(例えば、∀
-アミノホスホン酸、および∀-アミノホスフィン酸)、ならびに非ペプチド結合を有す
るアミノ酸が挙げられる。人工アミノ酸を使用して、ペプチド模倣物(例えば、ペプチド
オリゴマー(例えば、ペプトイドアミドもしくはエステル類似体)、β-ペプチド、環状
ペプチド、オリゴ尿素、またはオリゴカルバメートペプチド;または複素環分子)を作製
し得る。例示的なレトロ-インベルソターゲティングペプチド模倣物として、KLASV
TおよびKFLASVT(これらの配列は全てのD-アミノ酸を含む)が挙げられる。こ
れらの配列を、例えばアミノ末端のビオチン化およびカルボキシ末端のアミド化により、
改変し得る。
【0042】
AAV
本方法および本組成物での使用のためのウイルスベクターとして、本明細書で記載され
ているターゲティングペプチドと、任意選択の、標的組織中での発現のための導入遺伝子
とを含む組換えレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、アルファウイル
ス、およびレンチウイルスが挙げられる。
【0043】
本方法での核酸の送達に有用な好ましいウイルスベクターシステムは、アデノ随伴ウイ
ルス(AAV)である。AAVは、25nmのカプシドを有する小さい非エンベロープウ
イルスである。野生型ウイルスと関連していることが知られているかまたは示されている
疾患はない。AAVは、一本鎖DNA(ssDNA)ゲノムを有する。AAVは、長期に
わたるエピソーム導入遺伝子発現を示すことが示されており、AAVは、脳(特に神経細
胞)において優れた導入遺伝子発現を示している。AAVのわずか300個の塩基対を含
むベクターを、パッケージ化して統合し得る。外来性DNA用のスペースは、約4.7k
bに制限されている。AAVベクター(例えば、Tratschin et al., Mol. Cell. Biol. 5
:3251-3260 (1985)で記載されているもの)を使用して、細胞にDNAを導入し得る。A
AVベクターを使用して、様々な核酸が様々な細胞型に導入されている(例えば、Hermon
at et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6466-6470 (1984);Tratschin et al., Mol
. Cell. Biol. 4:2072-2081 (1985);Wondisford et al., Mol. Endocrinol. 2:32-39 (1
988);Tratschin et al., J. Virol. 51:611-619 (1984);およびFlotte et al., J. Bio
l. Chem. 268:3781-3790 (1993)を参照されたい)。多数の代替AAVバリアント(10
0種超がクローニングされている)およびAAVバリアントが、望ましい特性に基づいて
同定されている。いくつかの実施形態では、AAVは、AAV1、AAV2、AAV4、
AAV5、AAV6、AV6.2、AAV7、AAV8、AAV9、rh.10、rh.
39、rh.43、またはCSp3であり;CNSでの使用の場合には、いくつかの実施
形態では、AAVは、AAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV6、AAV8、
またはAAV9である。一例として、AAV9は、血液脳関門をある程度効率的に横断す
ることが示されている。本方法を使用して、本明細書で記載されているターゲティング配
列のカプシドタンパク質への挿入(例えば、アミノ酸588および589の間でのAAV
9カプシドタンパク質VP1への挿入)により、AAVカプシドを、BBBを超えるかま
たは特定の組織への浸透を増加させるように遺伝子操作し得る。
【0044】
例示的な野生型AAV9カプシドタンパク質VP1(Q6JC40-1)配列は、下記
の通りである。
【0045】
【化1】
【0046】
したがって、本明細書で記載されているターゲティングペプチド配列の内の1つまたは
複数を含むAAV(例えば、本明細書で記載されているターゲティング配列を含むカプシ
ドタンパク質(例えば、配列番号1を含むカプシドタンパク質)を含むAAV)であって
、ターゲティングペプチド配列は、例えばアミノ酸588および589の間で、この配列
に挿入されている、AAVが本明細書で提供される。
【0047】
いくつかの実施形態では、このAAVはまた、導入遺伝子配列(即ち、異種配列)、例
えば、例えば本明細書で記載されているかもしくは当分野で既知の治療薬をコードする導
入遺伝子、またはレポータータンパク質、例えば、蛍光タンパク質、検出可能な生成物を
生じる反応を触媒する酵素、または細胞表面抗原も含む。この導入遺伝子は、好ましくは
、標的組織中でのこの導入遺伝子の発現を促進する/駆動する配列に連結されている。
【0048】
治療薬としての使用のための例示的な導入遺伝子として、下記が挙げられる:神経細胞
アポトーシス抑制タンパク質(NAIP)、神経成長因子(NGF)、膠細胞由来成長因
子(GDNF)、脳由来成長因子(BDNF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、チロ
シンヒドロキシラーゼ(TH)、GTP-シクロヒドロラーゼ(GTPCH)、アミノ酸
デカルボキシラーゼ(AADC)、アスパルトアシラーゼ(ASPA)、血液因子、例え
ば、β-グロビン、ヘモグロビン、組織プラスミノーゲンアクチベータ、および凝固因子
;コロニー刺激因子(CSF);インターロイキン、例えば、IL-1、IL-2、IL
-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9等;成長因子、例
えば、ケラチノサイト成長因子(KGF)、幹細胞因子(SCF)、線維芽細胞成長因子
(FGF、例えば、塩基性FGFおよび酸性FGF)、肝細胞成長因子(HGF)、イン
スリン様成長因子(IGF)、骨形成タンパク質(BMP)、上皮成長因子(EGF)、
増殖分化因子-9(GDF-9)、肝細胞腫由来成長因子(HDGF)、ミオスタチン(
GDF-8)、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン、血小板由来成長因子(P
DGF)、トロンボポエチン(TPO)、形質転換成長因子アルファ(TGF-α)、形
質転換成長因子ベータ(TGF-β)等;可溶性受容体、例えば、可溶性TNF-α受容
体、可溶性VEGF受容体、可溶性インターロイキン受容体(例えば、可溶性IL-1受
容体および可溶性II型IL-1受容体)、可溶性ガンマ/デルタT細胞受容体、可溶性
受容体のリガンド結合断片等;酵素、例えば、α-グルコシダーゼ、イミグルセラーゼ、
β-グルコセレブロシダーゼ、およびアルグルセラーゼ;酵素アクチベータ、例えば、組
織プラスミノーゲンアクチベータ;ケモカイン、例えば、IP-10、インターフェロン
-ガンマにより誘発されるモノカイン(Mig)、Groa/IL-8、RANTES、
MIP-1α、MIP-1β、MCP-1、PF-4等;血管形成剤、例えば、血管内皮
成長因子(VEGF、例えば、VEGF121、VEGF165、VEGF-C、VEG
F-2)、形質転換成長因子-ベータ、塩基性線維芽細胞成長因子、神経膠腫由来成長因
子、アンジオゲニン、アンジオゲニン-2等;抗血管形成剤、例えば、可溶性VEGF受
容体;タンパク質ワクチン;神経活性ペプチド、例えば、神経成長因子(NGF)、ブラ
ジキニン、コレシストキニン、ガストリン、セクレチン、オキシトシン、性腺刺激ホルモ
ン放出ホルモン、ベータ-エンドルフィン、エンケファリン、サブスタンスP、ソマトス
タチン、プロラクチン、ガラニン、成長ホルモン放出ホルモン、ボンベシン、ダイノルフ
ィン、ワルファリン、ニューロテンシン、モチリン、甲状腺刺激ホルモン、神経ペプチド
Y、黄体ホルモン、カルシトニン、インスリン、グルカゴン、バソプレシン、アンジオテ
ンシンII、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン、血管作用性小腸ペプチド、睡眠ペプチド
等;血栓溶解薬;心房性ナトリウム利尿ペプチド;リラキシン;グリア線維酸性タンパク
質;卵胞刺激ホルモン(FSH);ヒトアルファ-1アンチトリプシン;白血病抑制因子
(LIF);形質転換成長因子(TGF);組織因子;黄体ホルモン;マクロファージ活
性化因子;腫瘍壊死因子(NTF);好中球走化性因子(NCF);神経成長因子;組織
メタロプロテアーゼ阻害物質;血管作用性小腸ペプチド;アンジオゲニン;アンジオトロ
ピン;フィブリン;ヒルジン;IL-1受容体アンタゴニスト等。目的のタンパク質のい
くつかの他の例として、下記が挙げられる:毛様体神経栄養因子(CNTF);ニューロ
トロフィン3および4/5(NT-3および4/5);グリア細胞由来神経栄養因子(G
DNF);芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC);血友病関連の凝固タンパク
質、例えば、第VIII因子、第IX因子、第X因子;ジストロフィンまたはミニ-ジス
トロフィン;リソソーム酸リパーゼ;フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH);糖
原病関連の酵素、例えば、グルコース-6-ホスファターゼ、酸性マルターゼ、グリコー
ゲン脱分枝酵素、筋肉グリコーゲンホスホリラーゼ、肝臓グリコーゲンホスホリラーゼ、
筋ホスホフルクトキナーゼ、ホスホリラーゼキナーゼ(例えばPHKA2)、グルコース
トランスポーター(例えばGLUT2)、アルドラーゼA、β-エノラーゼ、およびグリ
コーゲンシンターゼ;リソソーム酵素(例えば、ベータ-N-アセチルヘキソサミニダー
ゼA);ならびにこれらの任意のバリアント。
【0049】
この導入遺伝子はまた、抗体もコードし得、例えば、例えばPD-L1、PD-1、C
TLA-4(細胞傷害性T-リンパ球関連タンパク質-4;CD152);LAG-3(
リンパ球活性化遺伝子3;CD223);TIM-3(T-細胞免疫グロブリンドメイン
およびムチンドメイン3;HAVCR2);TIGIT(IgドメインおよびITIMド
メインを有するT-細胞免疫受容体);B7-H3(CD276);VSIR(V-セッ
ト免疫調節性受容体、VISTA、B7H5、C10orf54としても知られる);B
TLA 30(B-およびT-リンパ球アテニュエータ、CD272);GARP(糖タ
ンパク質A反復;優性;PVRIG(PVR関連の免疫グロブリンドメイン含有);また
はVTCN1(Vセットドメイン含有T細胞活性化阻害剤1、B7-H4としても知られ
る)への免疫チェックポイント阻害抗体もコードし得る。
【0050】
他の導入遺伝子として、標的遺伝子の発現を変化させる/減少させる小さいまたは抑制
性の核酸が挙げられ得、例えば、siRNA、shRNA、miRNA、アンチセンスオ
リゴ、または遺伝子発現を変化させる長い非コードRNA(例えば、国際公開第2012
087983号パンフレットおよび米国特許出願公開第20140142160号明細書
を参照されたい)、またはCRISPR Cas9/cas12a、およびガイドRNA
が挙げられ得る。
【0051】
ウイルスはまた、導入遺伝子の発現を促進する1つまたは複数の配列も含み得、例えば
、1つもしくは複数のプロモーター配列;エンハンサー配列、例えば、5’非翻訳領域(
UTR)もしくは3’UTR;ポリアデニル化部位;ならびに/またはインスレーター配
列も含み得る。いくつかの実施形態では、このプロモーターは、脳組織特異的プロモータ
ーであり、例えば、神経細胞特異的プロモーターまたは膠細胞特異的プロモーターである
。ある特定の実施形態では、このプロモーターは、下記から選択される遺伝子のプロモー
ターである:神経核(NeuN)、グリア線維酸性タンパク質(GFAP)、MeCP2
、大腸腺腫様ポリポーシス(APC)、イオン化カルシウム結合アダプター分子1(Ib
a-1)、シナプシンI(SYN)、カルシウム/カルモジュリン依存性タンパク質キナ
ーゼII、チューブリンアルファI、神経細胞特異的エノラーゼ、および血小板由来成長
因子ベータ鎖。いくつかの実施形態では、このプロモーターは、pan細胞型プロモータ
ーであり、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、ベータグルクロニダーゼ、(GU
SB)、ユビキチンC(UBC)、またはラウス肉腫ウイルス(RSV)のプロモーター
である。ウッドチャック肝炎ウイルス転写後反応エレメント(WPRE)も使用し得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、AAVはまた、標的組織(例えばCNS)への送達を増加さ
せる1つもしくは複数の追加の変異も有するか、または(例えば、Pulicherla et al. (2
011) Mol Ther 19:1070-1078で記載されているような)組織外ターゲティングを減少させ
る1つもしくは複数の追加の変異(例えば、CNS、心臓、もしくは筋肉への送達が意図
されている場合に肝臓への送達を減少させる変異)も有するか、または例えばChen et al
. (2008) Nat Med 15:1215-1218もしくはXu et al., (2005) Virology 341:203-214もし
くは米国特許第9102949号明細書;同第9585971号明細書;および米国特許
出願公開第20170166926号明細書で記載されているような他のターゲティング
ペプチドの付加も有する。sfn.org/~/media/SfN/Documents/Short%20Courses/2011%20Sho
rt%20Course%20I/2011_SC1_Gray.ashxで入手可能なGray and Samulski (2011) “Vector
design and considerations for CNS applications,” in Gene Vector Design and Appl
ication to Treat Nervous System Disorders ed. Glorioso J., editor. (Washington,
DC: Society for Neuroscience; ) 1-9も参照されたい。
【0053】
タグ/融合体としてのターゲティングペプチド
本明細書で記載されているターゲティングペプチドを使用して、BBBを超える他の(
異種)分子の浸透も、例えば、この分子へのコンジュゲーションにより増加させ得るか、
または例えば抗体もしくは他の大きい生体分子との融合タンパク質の一部としての発現に
より増加させ得る。これらとして、本明細書で記載されている治療薬またはレポーターお
よび表2で列挙されているものに加えて、ゲノム編集タンパク質またはゲノム編集複合体
(例えば、(例えば、N末端、C末端、または内部で)本明細書で記載されているペプチ
ドに融合した遺伝子編集タンパク質(例えば、Cas9またはCas12a)を含むTA
LE、ZFN、塩基エディター(Base editor)、およびCRISPR RNP、ならび
にガイドRNA)が挙げられ得る。融合体/複合体は、Ku70由来のあらゆる他の配列
を含まず(例えば、異種非Ku70配列を含む)、かつ天然では存在しない。
【0054】
いくつかの実施形態では、非AAV融合タンパク質の一部として使用されるターゲティ
ング配列は、VPALR(配列番号1)またはVSALK(配列番号2)を含まないか、
またはからならない。
【0055】
使用方法
本明細書で記載されている方法および組成物を使用して、任意の組成物(例えば、目的
の配列)を組織(例えば、中枢神経系(脳)、心臓、筋肉、または後根神経節もしくは脊
髄(末梢神経系))に送達し得る。いくつかの実施形態では、この方法は、特定の脳の領
域(例えば、大脳皮質、小脳、海馬、黒質、扁桃体)への送達を含む。いくつかの実施形
態では、この方法は、神経細胞、星状膠細胞、膠細胞、または心筋細胞への送達を含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、この方法および組成物(例えばAAV)を使用して、核酸配
列を、疾患(例えば、CNSの疾患;例えば、米国特許第9102949号明細書;同第
9585971号明細書;および米国特許出願公開第20170166926号明細書を
参照されたい)を有する対象に送達する。いくつかの実施形態では、この対象は、表2で
列挙されている状態を有し、いくつかの実施形態では、ベクターを使用して、表2で列挙
されている対応する疾患を処置するために、表2で列挙されている治療薬を送達する。こ
の治療薬を、例えばウイルスベクターにより核酸として送達し得る(この核酸は、治療用
タンパク質もしくは他の核酸(例えば、アンチセンスオリゴ、siRNA、shRNA等
をコードする)か、または本明細書で記載されているターゲティングペプチドとの融合タ
ンパク質/複合体として送達し得る)。
【0057】
【表2】
【0058】
いくつかの実施形態では、この組成物および方法を使用して、脳がんを処置する。脳が
んとして、膠芽腫(例えば多形性膠芽腫(GBM))、転移(例えば、肺がん、乳がん、
黒色腫、または結腸がんから転移)、髄膜腫、下垂体腺腫、および聴神経腫瘍が挙げられ
る。この組成物は、下記の抗がん剤に連結されたターゲティングペプチドを含む:例えば
、標的細胞中でアポトーシスを誘発する「自殺遺伝子」(例えば、HSV.TK1、単純
ヘルペスウイルスもしくは大腸菌(Escherichia coli)由来のシトシンデアミナーゼ(C
D)、または大腸菌(Escherichia coli)プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)
/フルダラビン;Krohne et al., Hepatology. 2001 Sep;34(3):511-8; Dey and Evans,
“Suicide Gene Therapy by Herpes Simplex Virus-1 Thymidine Kinase (HSV-TK)” (20
11) DOI: 10.5772/18544を参照されたい)、当分野で既知であるかまたは本明細書で記載
されている免疫チェックポイント阻害抗体。例えば、本明細書で記載されているターゲテ
ィングペプチドを含むAAVベクターを使用して、脳腫瘍に「自殺遺伝子」HSV.TK
1を送達し得る。HSV.TK1は、それがなければ「休眠」しているガンシクロビルを
腫瘍死滅剤へと変える。したがって、この方法は、本明細書で記載されているターゲティ
ングペプチドを含みかつHSV.TK1をコードするAAV(例えばAAV9)と、プロ
ドラッグガンシクロビルとを、脳がんと診断されている対象に全身(例えば静脈内)投与
することを含み得る。
【0059】
医薬組成物および投与方法
本明細書で記載されている方法は、活性成分として本ターゲティングペプチドを含む医
薬組成物の使用を含む。
【0060】
医薬組成物は、典型的には、薬学的に許容される担体を含む。本明細書で使用される場
合、文言「薬学的に許容される担体」は、薬学的投与に適合する生理食塩水、溶媒、分散
媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤等を含む。
【0061】
医薬組成物は、典型的には、その意図された投与経路に適合するように製剤化されてい
る。投与経路の例として、非経口投与が挙げられ、例えば、静脈内投与、動脈内投与、皮
下投与、腹腔内投与、筋肉内投与、または注射投与、または注入投与が挙げられる。その
ため、送達は、全身または局所であり得る。
【0062】
適切な医薬組成物を製剤化する方法は当分野で既知であり、例えば、Remington: The S
cience and Practice of Pharmacy, 21st ed., 2005;およびDrugs and the Pharmaceuti
cal Sciences: a Series of Textbooks and Monographs (Dekker, NY)のシリーズの本を
参照されたい。例えば、非経口投与に使用される溶液または懸濁液として、下記の成分が
挙げられ得る:滅菌希釈剤、例えば、注射用の水、生理食塩水、固定油、ポリエチレング
リコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒;抗菌剤、例えば、
ベンジルアルコールまたはメチルパラベン;酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸または
亜硫酸水素ナトリウム;キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸;緩衝剤、例えば、
酢酸塩、クエン酸塩、またはリン酸塩、および浸透圧の調整用の薬剤、例えば、塩化ナト
リウムまたはブドウ糖。pHを、塩酸または水酸化ナトリウム等の酸または塩基で調整し
得る。この非経口製剤を、アンプル、使い捨てシリンジ、またはガラス製のもしくはプラ
スチック製の複数回の用量のバイアルに封入し得る。
【0063】
注射可能な使用に適した医薬組成物として、滅菌された水溶液(水溶性)または分散液
と、滅菌された注射可能な溶液または分散液の即時調製用の滅菌粉末とが挙げられ得る。
静脈内投与の場合、適切な担体として、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL
TM(BASF,Parsippany,NJ)、またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)
が挙げられる。全ての場合において、この組成物は滅菌されてなければならず、かつ容易
に注射可能である限りにおいて流体であるべきである。この組成物は、製造および貯蔵の
条件下で安定であるべきであり、かつ細菌および真菌等の微生物による作用から保護され
なければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロー
ル、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール等、ならびにこれらの適
切な混合物を含む溶媒または分散媒体であり得る。例えば、レシチン等のコーティングの
使用により、分散の場合には必要な粒子サイズの維持により、および界面活性剤の使用に
より、適切な流動性を維持し得る。微生物による作用の予防を、様々な抗菌剤および抗真
菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサー
ル等)により達成し得る。多くの場合では、この組成物に、等張剤(例えば、糖、多価ア
ルコール(例えば、マンニトール、ソルビトール)、塩化ナトリウム)を含めることが好
ましい。この注射可能な組成物の持続的吸収を、この組成物に、吸収を遅延させる薬剤(
例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)を含めることによりもたらし得
る。
【0064】
上記で列挙されている成分の内の1つまたは組み合わせと共に、適切な溶媒に、必要な
量の活性化合物を組み入れ、必要に応じて、続いて滅菌ろ過することにより、滅菌された
注射可能な溶液を調製し得る。一般に、分散液は、活性化合物を、基本的な分散媒体と上
記で列挙されているものからの必要な他の成分とを含む滅菌ビヒクルに組み込むことによ
り調製される。滅菌された注射可能な溶液の調製のための滅菌粉末の場合では、好ましい
調製方法は、減圧乾燥および凍結乾燥であり、これらにより、予め滅菌ろ過した溶液から
、活性成分および任意の追加の所望の成分の粉末が得られる。
【0065】
一実施形態では、本治療用化合物を、この治療用化合物を身体からの迅速な排出から保
護する担体(例えば、インプラントおよびマイクロカプセル化送達システム等の制御放出
製剤)と共に調製する。生分解性で生体適合性のポリマー(例えば、エチレン酢酸ビニル
、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸
)を使用し得る。そのような製剤を、標準的な技術を使用して調製し得るか、または例え
ばAlza CorporationおよびNova Pharmaceuticals
,Inc.から商業的に得ることができる。リポソーム懸濁液(細胞抗原に対するモノク
ローナル抗体により選択細胞にターゲティングされるリポソームを含む)も、薬学的に許
容される担体として使用し得る。これらを、例えば米国特許第4,522,811号明細
書で記載されているように、当業者に既知の方法に従って調製し得る。
【0066】
本医薬組成物を、投与の指示書と一緒に、キット、容器、パック、またはディスペンサ
に含め得る。例えば、本明細書で記載されているターゲティングペプチドと、HSV.T
K1をコードする核酸とを含むAAVを含む組成物を、ガンシクロビルと共にキットで提
供し得る。
【実施例0067】
本発明を、特許請求の範囲で記載されている本発明の範囲を限定しない下記の実施例で
さらに記載する。
【0068】
材料および方法
下記の実施例では、下記の材料および方法を使用した。
【0069】
1.カプシドバリアントの生成
カプシドバリアントプラスミドを生成するために、細胞透過性ペプチド(表3)をコー
ドするDNA断片を合成し(GenScript)、CloneEZシームレスクローニ
ング技術(GenScript)を使用して、アミノ酸位置588および589(VP1
アミノ酸ナンバリング)の間でAAV9 Rep-capプラスミド(pRC9)の骨格
に挿入した。CPP BIP1(VPALR、配列番号1)およびBIP2(VSALK
、配列番号2)、ならびにこれらの誘導体(例えば、AAV.CPP.16中のTVSA
LK(配列番号4)、およびAAV.CPP.21中のTVSALFK(配列番号8))
は、Ku70タンパク質に由来しており、これらの配列を下記に記載する。
【0070】
【化2】
【0071】
加えて、AAV9、AAV.CPP.16、およびAAV.CPP.21のVP1タン
パク質配列を下記に記載する。
【0072】
【化3-1】
【0073】
【化3-2】
【0074】
2.組換えAAVの製造
標準的な3プラスミド共トランスフェクションプロコトル(pRCプラスミド、pヘル
パープラスミド、およびpAAVプラスミド)を使用して、組換えAAVをパッケージン
グした。導入遺伝子(例えば、ユビキタスEF1aプロモーターにより駆動される核指向
性RFP H2B-mCherry(nucleus-directed RFP H2B-mCherry))を有するp
RC9(またはそのバリアント)、pヘルパー、およびpAAVを、ポリエチレンイミン
(PEI、Polysciences)を使用して、HEK 293T細胞に共トランス
フェクトした。rAAVベクターを、トランスフェクションの72時間および120時間
後に血清フリー培地から回収し、ならびにトランスフェクションの120時間後に細胞か
ら回収した。この培地中のAAV粒子を、8% PEG-8000(重量/体積)による
PEG沈殿法を使用して濃縮した。ウイルス粒子を含む細胞ペレットを再懸濁させ、超音
波処理により溶解させた。PEG沈殿および細胞溶解物から組み合わせウイルスベクター
を、30分にわたり37℃でDNアーゼおよびRNアーゼにより処理し、次いで超遠心分
離(VTi 50ローター、40,000r.p.m、18℃、1時間)によるイオジキ
サノール勾配(15%、25%、40%、および60%)によって精製した。次いで、r
AAVを、Millipore Amiconフィルタユニット(UFC910008、
100K MWCO)を使用して濃縮し、0.001% Pluronic F68(G
ibco)を含むDulbeccoのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で製剤化した。
【0075】
3.AAV滴定
ウイルス力価を、定量PCRを使用してDNアーゼ耐性ゲノムコピーを測定することに
より決定した。pAAV-CAG-GFPをPVUII(NEB)で消化してプラスミド
ITR用のフリー末端を生成し、標準曲線の生成に使用した。ウイルスサンプルをDNア
ーゼIと共にインキュベートして夾雑DNAを除去し、続いて水酸化ナトリウム処理して
ウイルスカプシドを溶解させてウイルスゲノムを放出させた。定量PCRを、ITRフォ
ワードプライマー5’-GGAACCCCTAGTGATGGAGTT(配列番号91)
およびITRリバースプライマー5’-CGGCCTCAGTGAGCGA(配列番号9
2)を使用して実施した。ベクター力価を、rAAV-2参照標準物質(RSM、ATC
C、カタログ番号:VR-1616、Manassas,VA)に対して正規化した。
【0076】
4.マウスでのAAVの投与
静脈内投与のために、滅菌生理食塩水(0.2ml)で希釈したAAVを、成体マウス
(6週齢超)で尾静脈注射により投与した。次いで、動物を3週間にわたり生存させた後
、安楽死させて組織を採取した。脳内注射のために、PBS(10ul)で希釈したAA
Vを、十字縫合から1.0mm右、0.3後方、2.6mm深さの座標に、Hamilt
onシリンジを使用して注射した。全ての動物実験を、IACUCにより承認されたAA
ALAC認定施設で実施した。
【0077】
5.マウス組織の処理
麻酔した動物に、冷リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を経心的に灌流させ、続いて4%
パラホルムアルデヒド(PFA)を経心的に灌流させた。組織を、一晩4%PFAで後固
定し、次いで、2日にわたり30%ショ糖溶液に浸漬した後、OCTに埋め込んでスナッ
プ凍結させた。典型的には、80um厚の脳切片を、自然蛍光の画像化のために切断し、
40um厚の脳切片を、IHCのために切断した。
【0078】
6.インビトロでのヒトBBBスフェロイドモデル
熱い1%アガロース(重量/体積、50ul)を96ウェルプレートに入れて、冷却し
た/固化させた。次いで、このアガロースゲル上に、初代ヒト星状膠細胞(Lonza
Bioscience)、ヒト脳微小血管周皮細胞(HBVP、ScienCell R
esearch Laboratories)、およびヒト脳微小血管内皮細胞(hCM
EC/D3;Cedarlane)を、1:1:1の比(各タイプ1500個の細胞)で
播種した。細胞を、48~72時間にわたり5%CO2インキュベータ中において37℃
で培養して、多細胞BBBスフェロイドの自発的構築を可能にした。このスフェロイドの
周辺では、BBBを模倣する多細胞による関門が形成されることが報告された。この培養
培地にAAVs-H2B-mCherryを添加し、4日後に、全てのスフェロイドを、
4%PFAを使用して固定し、Nunc Lab-Tek II 薄ガラス8ウェルチャ
ンバーカバーガラス(Thermo Scientific)に移し、Zeiss LS
M710共焦点顕微鏡を使用して画像化した。このスフェロイド内のRFPシグナルの強
度を調べて、「リードアウト」として使用した。
【0079】
7.非ヒト霊長類(NHP)でのAAV投与
全てのNHP試験を、IACUCにより承認されたAAALAC認定施設でCROによ
り実施した。カニクイザルを、AAV9に対する中和抗体がほぼ存在しないかまたは存在
しないかに関して予めスクリーニングした(<1:5の力価)。PBS/0.001%F
68で希釈したAAVを、蠕動ポンプを使用して(橈側皮静脈または大腿静脈を介して)
静脈内注射した。3週間後、動物にPBSを経心的に灌流させ、続いて4%PFAを経心
的に灌流させた。次いで、組織を回収し、パラフィン埋め込みおよび切片化のために処理
した。
【0080】
8.免疫組織化学
10%ロバ血清および2%Triton X-100を含むPBSで希釈した一次抗体
により、マウス組織切片のフローティング染色を実施した。使用した一次抗体として下記
が挙げられる:ニワトリ抗GFP(1:1000);ウサギ抗RFP(1:1000);
マウス抗NeuN(1:500);ラット抗GFAP(1:500);ヤギ抗GFAP(
1:500);マウス抗CD31(1:500)。Alexa Fluor 488、A
lexa Fluor 555、またはAlexa Fluor 647のフルオロフォ
アにコンジュゲートした二次抗体を、1:200の希釈で、一次抗体の宿主種に対して適
用した。
【0081】
NHP組織のパラフィン切片の場合には、DAB染色を実施して、AAV-AADCに
より形質導入された細胞を可視化した。ウサギ抗AADC抗体(1:500、Milli
pore)を、一次抗体として使用した。
【0082】
9.AAV結合アッセイ
HEK293T細胞を、5%CO2インキュベータ中において37℃で培養した。1つ
のウェル当たり250,000個の細胞の密度での24ウェルプレートへのHEK293
T細胞の播種の1日後に、200ulのDMEM(31053028;Gibco)、1
ugのDNAプラスミド、および3ugのPEIのトランスフェクション混合物を使用し
て、この細胞に、LY6AのcDNAプラスミドを一過的にトランスフェクトした。トラ
ンスフェクションの48時間後、細胞を氷上に置いて10分にわたり冷却した。次いで、
培地を、10000のMOIでrAAVs-mCherryを含む500ulの氷冷血清
フリーDMEM培地に交換した。1時間にわたる氷上でのインキュベーション後、おそら
くAAVが表面に結合している細胞を冷PBSで3回洗浄し、次いでゲノムDNAを単離
した。細胞に結合しているウイルス粒子を、mCherryに特異的なプライマーによる
qPCRを使用することにより定量し、参照としてヒトGCGを使用してHEK293T
ゲノムに対して正規化した。
【0083】
10.膠芽腫のマウスモデル
全ての実験を、Brigham and Women’s Hospital and
Harvard Medical SchoolにてAnimal Care and
Use Committees (IACUC)により承認されたプロトコルに従って
実施した。20+/-1g(Envigo)の重量の同系免疫応答性C57BL/6雌マ
ウスを使用した。2μlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に再懸濁させたGL261-
Luc(100,000個のマウス膠芽腫細胞)を、26ゲージ針(80075;Ham
ilton)を備えた10μlのシリンジを使用して、頭蓋内に注射した。定位固定フレ
ームを使用して、移植部位の位置を決めた(十字縫合からの座標(mm):2右、0.5
前方、大脳皮質への3.5の深さ)。7日後、200ulのAAV-HSV-TK1(1
E+12個のウイルスゲノム、IV)を1回投与し、ガンシクロビル(50mg/kg)
を10日にわたり毎日投与した。
【0084】
[実施例1]
AAV9カプシドの改変
血液脳関門を横断する生体分子またはウイルスの浸透を増強するであろうペプチド配列
を同定するために、AAVペプチドディスプレイ技術を使用した。表3で列挙されている
個々の細胞透過性ペプチドを、図1Aに示されているように、アミノ酸588および58
9(VP1ナンバリング)の間でAAV9カプシドに挿入した。この挿入を、AAVパッ
ケージングのために共トランスフェクトされる3種のプラスミドの内の1つであるRCプ
ラスミドを改変することにより実行し、図1Bは、この実験の例示的な模式図を示す。個
々のAAVバリアントを、別々に製造してスクリーニングした。さらなる詳細に関しては
、材料および方法#1~3を参照されたい。
【0085】
【表3】
【0086】
[実施例2]
インビボでのスクリーニングの最初のラウンド
核RFP(H2B-RFP)を発現するAAVを、C57BL/6遺伝子背景およびB
ALB/c遺伝子背景が混在している成体マウスに静脈内注射した。3週間後、脳組織を
採取して切片化して、RFP標識細胞を明らかにした(図2Aおよび図2Cでの白色の点
、それぞれ図2Bおよび図2Dで定量されている)。CPP BIP1およびBIP2を
、それぞれAAV.CPP.11およびAAV.CPP.12のカプシドに挿入した。さ
らなる詳細に関しては、材料および方法#4~5を参照されたい。
【0087】
[実施例3]
改変AAV9カプシドの最適化
BIPターゲティング配列を最適化することにより、AAV.CPP.11およびAA
V.CPP.12をさらに操作した。BIPインサートは、タンパク質Ku70に由来し
た(完全な配列に関しては、図3Aおよび材料/方法#1を参照されたい)。「合成」起
源であるBIP配列VSALKを、操作AAVベクターの潜在的な種特異性を最小限に抑
えるための研究焦点として選択した。AAVを製造し、AAV9と比較して脳形質導入効
率に関して別々に試験した(図3B~Cを参照されたい)。レポーター遺伝子RFPを送
達するいくつかのAAVバリアントのIV注射後3週間でのマウス肝臓における細胞形質
導入の割合を、図3Dに示す。さらなる詳細に関しては、材料および方法#1~5を参照
されたい。
【0088】
[実施例4]
インビトロモデル-BBB浸透スクリーニング
AAVバリアントの一部を、インビトロでのスフェロイドBBBモデルを使用して、ヒ
トBBBを超える能力に関してスクリーニングした。このスフェロイドは、表面で関門を
形成するヒト微小血管内皮細胞と、ヒト周皮細胞および星状膠細胞とを含む。レポーター
として核RFPを有するAAVを、周囲の培地からこのスフェロイドの内部に浸透して内
部で細胞に形質導入する能力に関して評価した。図4Aは、実験の概要を示す。図4B
Dは、wt AAV9、AAV.CPP.16、およびAAV.CPP.21それぞれの
結果を示し、これらのおよび他のペプチドを図4Eで定量する。このモデルでは、ペプチ
ド11、15、16、および21が、スフェロイドへの最大の浸透を引き起こした。さら
なる詳細に関しては、材料および方法#6を参照されたい。
【0089】
[実施例5]
インビボでのBBB浸透スクリーニング
実施例2に関して上述したように実施した実験において、インビボでのモデルでのさら
なる評価のために、AAV.CPP.16およびAAV.CPP.21を選択した。全て
のAAVが、レポーターとして核RFPを有した。両方とも、C57BL/6J成体マウ
ス(図5Aでの脳切片における白色の点、図5Bで定量されている)およびBALB/c
成体マウス(図6Aでの脳切片における白色の点、図6Bで定量されている)において、
AAV9と比較して、静脈内投与後に脳細胞に形質導入する能力の増強を示した。
【0090】
高用量のAAV.CPP.16およびAAV.CPP.21(1匹のマウス当たり4×
1012vg、IV投与)により、マウスでは広範な脳形質導入がもたらされた。両方の
AAVが、レポーターとして核RFPを有した(図7Aでの脳切片における白色の点、図
7Bで定量されている)。
【0091】
[実施例6]
改変AAVのインビボでの分布
図8Aで示すように、AAV.CPP.16およびAAV.CPP.21は、マウスの
複数の脳領域(例えば、大脳皮質、中脳、および海馬)にわたり、神経細胞(NeuN抗
体により標識されている)を優先的に標的とした。両方のAAVが、レポーターとして核
RFPを有した。
【0092】
AAV.CPP.16およびAAV.CPP.21はまた、マウスの脊髄および運動神
経細胞の標的化において、AAV9と比較して能力の増強も示した。全てのAAVがレポ
ーターとして核RFPを有しており、新生仔マウスに静脈内投与した(4回×1010
g)。運動神経細胞を、CHAT抗体染色を使用して可視化した。図8BでのRFPシグ
ナルおよびCHATシグナルの共局在化は、運動神経細胞の特異的な形質導入を示唆した
【0093】
マウスの様々な組織に形質導入するAAV-CAG-H2B-RFPおよびAAV.C
PP.16-CAG-H2B-RFPの相対能力も評価した。1/1011vgを静脈内
注射した。形質導入された細胞の数を、DAPI核染色により標識された全細胞の数に対
して正規化した。この結果は、AAV.CPP.16が、マウスの心臓組織(図9A);
骨格筋組織(図9B)、および後根神経節組織(図9C)の標的化において、AAV9と
比べて効率的であることを示した。
【0094】
[実施例7]
非ヒト霊長類モデルでのBBB浸透
2×1013vg/kgのAAVs-CAG-AADC(レポーター遺伝子として)を
、3カ月齢のカニクイザルに静脈内注射した。AAV形質導入細胞(黒色で示す)を、A
ADCに対する抗体染色を使用して可視化した。図10A~Dに示すように、AAV.C
PP.16およびAAV.CPP.21は、AAV9と比較して、非ヒト霊長類での静脈
内投与後に脳組織に形質導入する能力の増強を示した。AAV.CPP.16は、一次視
覚野(図10A)、頭頂葉皮質(図10B)、視床(図10C)、および小脳(図10D
)において、wt AAV9と比べて有意に多くの細胞に形質導入した。さらなる詳細に
関しては、材料および方法#7~8を参照されたい。
【0095】
[実施例8]
AAV.CPP.16およびAAV.CPP.21はLY6Aに結合しない
LY6AはAAV.PHP.eBの受容体として機能し、ある特定のマウス株でのBB
Bの横断におけるAAV.PHP.eBの頑強な効果を媒介する。培養された293細胞
におけるマウスLY6Aの過剰発現により、細胞表面へのAAV.PHP.eBの結合が
有意に増加した(図11Aを参照されたい)。逆に、LY6Aの過剰発現により、AAV
9、AAV.CPP.16、またはAAV.CPP.21に関するウイルス結合は増加し
ない(図11Bを参照されたい)。このことは、AAV.CPP.16またはAAV.C
PP.21が受容体としてLY6AをAAV.PHP.eBと共有しないことを示唆する
。さらなる詳細に関しては、材料および方法#9を参照されたい。
【0096】
[実施例9]
AAV.CPP.21を使用する脳への治療用タンパク質の送達
AAV.CPP.21を使用して、脳腫瘍のマウスモデルにおいて「自殺遺伝子」HS
V.TK1を全身送達した。HSV.TK1は、それがなければ「休眠」しているガンシ
クロビルを腫瘍死滅剤へと変える。静脈内投与されたAAV.CPP.21-H2BmC
herry(図12A、左下および右中央のパネル)は、腫瘤(特に、腫瘍が拡がるフロ
ンティア)を標的とすることが示された。図12B~Cに示すように、「自殺遺伝子」H
SV.TK1を全身送達するためのAAV.CPP.21の使用により、プロドラッグで
あるガンシクロビルと併用した場合に、脳腫瘤の縮小がもたらされた。これらの結果は、
AAV.CPP.21を使用して脳腫瘍に治療用遺伝子を全身送達し得ることを示す。さ
らなる詳細に関しては、材料および方法#10を参照されたい。
【0097】
[実施例10]
AAV.CPP.21の脳内投与
(例えば実施例2での)全身投与に加えて、本明細書で記載されているAAVを、マウ
ス脳に局所的に投与した。AAV9-H2B-RFPおよびAAV.CPP.21-H2
B-RFPの脳内注射(図13)により、AAV9で処置された脳切片と比較して、AA
V.CPP.21で処置された脳切片において広範なかつ高強度のRFPシグナルが生じ
た。さらなる詳細に関しては、材料および方法#4を参照されたい。
【0098】
他の実施形態
本発明を、その詳細な説明と併せて記載しているが、上記の記載は、添付の特許請求の
範囲により画定される本発明の範囲を例示することが意図されており限定することは意図
されていないことを理解しなければならない。他の態様、利点、および改変は、下記の特
許請求の範囲内である。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C-D】
図4A-B】
図4C-D】
図4E
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A-1】
図8A-2】
図8B
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図10D
図11
図12A
図12B
図12C
図13-1】
図13-2】
【配列表】
2024129031000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-07-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
AAVカプシドを含むアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであって、前記AAVカプシドがペプチドインサートを含み、前記ペプチドインサートが、TVSALFK(配列番号8)の5~7個の連続するアミノ酸、またはTVSALK(配列番号4)の5~6個の連続するアミノ酸からなる、AAVベクター。
【請求項2】
前記ペプチドインサートが、TVSALK(配列番号4)の連続するアミノ酸からなる、請求項1に記載のAAVベクター。
【請求項3】
前記ペプチドインサートが、TVSALFK(配列番号8)の連続するアミノ酸からなる、請求項1に記載のAAVベクター。
【請求項4】
前記AAVカプシドは、AAV9カプシドである、請求項1~3のいずれか一項に記載のAAVベクター。
【請求項5】
前記ペプチドインサートが、配列番号85のアミノ酸588および589の間にある、請求項1~4のいずれか一項に記載のAAVベクター。
【請求項6】
導入遺伝子配列をさらに含む請求項1~5のいずれか一項に記載のAAVベクター。
【請求項7】
前記導入遺伝子配列が、治療タンパク質または核酸をコードする、請求項6に記載のAAVベクター。
【請求項8】
標的遺伝子の発現を変化させる非コードRNAをさらに含む、請求項1~5のいずか一項に記載のAAVベクター。
【請求項9】
非コードRNAが、shRNA、siRNA、またはmiRNAである、請求項8に記載のAAVベクター。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のAAVベクターを含む、細胞に導入遺伝子を送達する方法において使用するための組成物であって、前記方法が、前記細胞と、前記AAVベクターとを接触させることを含む、組成物。
【請求項11】
前記細胞は、神経細胞、星状膠細胞、心筋細胞、または筋細胞である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記細胞は、後根神経節神経細胞である、請求項10または11に記載の組成物。
【請求項13】
前記細胞は、生きている対象中に存在する、請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
前記対象は、哺乳類対象である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記細胞は、脳、脊髄、後根神経節、心臓、または筋肉、およびこれらの組み合わせから選択される組織中に存在する、請求項10に記載の組成物。
【請求項16】
前記対象は、神経変性疾患、てんかん;脳卒中;脊髄小脳失調症;キャナヴァン病;異染性白質ジストロフィー;脊髄性筋萎縮症;フリートライヒ運動失調症;X連鎖中心核ミオパチー;リソソーム蓄積症;バース症候群;デュシェンヌ型筋ジストロフィー;ウィルソン病;またはクリグラー・ナジャー症候群1型を有する、請求項13または14に記載の組成物。
【請求項17】
前記神経変性疾患は、パーキンソン病;アルツハイマー病;ハンチントン病;筋萎縮性側索硬化症;または多発性硬化症である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記対象は、脳がんを有し、前記AAVベクターは、抗がん医薬をコードする導入遺伝子配列を含み、前記抗がん医薬は、タンパク質または核酸である、請求項13または14に記載の組成物。
【請求項19】
前記抗がん医薬は、HSV.TK1であり、前記方法は、ガンシクロビルを投与することをさらに含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
記細胞は、前記対象の脳中に存在し、前記組成物が、非経口送達;脳内;または髄腔内送達により投与される、請求項13または14に記載の組成物。
【請求項21】
前記非経口送達は、静脈内送達、動脈内送達、皮下送達、腹腔内送達、または筋肉内送達による、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記髄腔内送達は、腰椎注射、大槽注射、または実質内注射による、請求項20に記載
の組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0098
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0098】
他の実施形態
本発明を、その詳細な説明と併せて記載しているが、上記の記載は、添付の特許請求の
範囲により画定される本発明の範囲を例示することが意図されており限定することは意図
されていないことを理解しなければならない。他の態様、利点、および改変は、下記の特
許請求の範囲内である。

本発明の様々な実施形態を以下に示す。
1.配列TVSALFK(配列番号8);TVSALK(配列番号4);KLASVT(配列番号83);またはKFLASVT(配列番号84)からの少なくとも4個の連続するアミノ酸を含むアミノ酸配列を含むAAVカプシドタンパク質。
2.配列TVSALK(配列番号4);TVSALFK(配列番号8);KLASVT(配列番号83);またはKFLASVT(配列番号84)からの少なくとも5個の連続するアミノ酸を含むアミノ酸配列を含む上記1に記載のAAVカプシドタンパク質。
3.配列TVSALK(配列番号4);TVSALFK(配列番号8);KLASVT(配列番号83);またはKFLASVT(配列番号84)からの少なくとも6個の連続するアミノ酸を含むアミノ酸配列を含む上記1に記載のAAVカプシドタンパク質。
4.前記AAVは、AAV9である、上記1~3のいずれかに記載のAAVカプシドタンパク質。
5.AAV9 VP1を含む上記1~4のいずれかに記載のAAVカプシドタンパク質。
6.配列番号85のアミノ酸588および589に対応する位置にターゲティング配列が挿入されている、上記5に記載のAAVカプシドタンパク質。
7.上記1~6のいずれかに記載のAAVカプシドタンパク質をコードする核酸。
8.上記1~6のいずれかに記載のカプシドタンパク質を含むAAV。
9.導入遺伝子、好ましくは治療用導入遺伝子をさらに含む上記8に記載のAAV。
10.V[S/p][A/m/t/]L(配列番号79)、TV[S/p][A/m/t/]L(配列番号80)、TV[S/p][A/m/t/]LK(配列番号81)、またはTV[S/p][A/m/t/]LFK.(配列番号82)を含むターゲティング配列。
11.前記ターゲティング配列は、VPALR(配列番号1);VSALK(配列番号2);TVPALR(配列番号3);TVSALK(配列番号4);TVPMLK(配列番号12);TVPTLK(配列番号13);FTVSALK(配列番号5);LTVSALK(配列番号6);TVSALFK(配列番号8);TVPALFR(配列番号9);TVPMLFK(配列番号10)、またはTVPTLFK(配列番号11)を含む、上記10に記載のターゲティング配列。
12.上記10または11に記載のターゲティング配列と、異種配列とを含む融合タンパク質。
13.上記10または11に記載のターゲティング配列を含むAAVカプシドタンパク質。
14.AAV9 VP1を含む上記13に記載のAAVカプシドタンパク質。
15.前記ターゲティング配列は、配列番号のアミノ酸588および589に対応する位置に挿入されている、上記14に記載のAAVカプシドタンパク質。
16.上記10~16のいずれかに記載のターゲティング配列、融合タンパク質、またはAAVカプシドタンパク質をコードする核酸。
17.上記13~15のいずれかに記載のカプシドタンパク質を含むAAV。
18.導入遺伝子、好ましくは治療用導入遺伝子をさらに含む上記17に記載のAAV。
19.細胞に導入遺伝子を送達する方法であって、前記細胞と、上記1~9、17、または18に記載のAAVとを接触させることを含む方法。
20.前記細胞は、神経細胞(任意選択で後根神経節神経細胞)、星状膠細胞、心筋細胞、または筋細胞である、上記19に記載の方法。
21.前記細胞は、生きている対象中に存在する、上記19に記載の方法。
22.前記対象は、哺乳類対象である、上記19に記載の方法。
23.前記細胞は、脳、脊髄、後根神経節、心臓、または筋肉、およびこれらの組み合わせから選択される組織中に存在する、上記20~22のいずれかに記載の方法。
24.前記対象は、神経変性疾患、てんかん;脳卒中;脊髄小脳失調症;キャナヴァン病;異染性白質ジストロフィー;脊髄性筋萎縮症;フリートライヒ運動失調症;X連鎖中心核ミオパチー;リソソーム蓄積症;バース症候群;デュシェンヌ型筋ジストロフィー;ウィルソン病;またはクリグラー・ナジャー症候群1型を有する、上記23に記載の方法。
25.前記神経変性疾患は、パーキンソン病;アルツハイマー病;ハンチントン病;筋萎縮性側索硬化症;および多発性硬化症である、上記24に記載の方法。
26.前記対象は、脳がんを有し、前記方法は、抗がん剤をコードするAAVを投与することを含む、上記23に記載の方法。
27.前記抗がん剤は、HSV.TK1であり、前記方法は、ガンシクロビルを投与することをさらに含む、上記26に記載の方法。
28.前記細胞は、前記対象の脳中に存在し、前記AAVを、非経口送達;脳内;または髄腔内送達により投与する、上記22~27のいずれかに記載の方法。
29.前記非経口送達は、静脈内送達、動脈内送達、皮下送達、腹腔内送達、または筋肉内送達による、上記28に記載の方法。
30.前記髄腔内送達は、腰椎注射、大槽注射、または実質内注射による、上記28に記載の方法。
【外国語明細書】