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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129036
(43)【公開日】2024-09-26
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/30 20060101AFI20240918BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20240918BHJP
   H05B 33/14 20060101ALI20240918BHJP
   H10K 59/121 20230101ALI20240918BHJP
   H10K 59/123 20230101ALI20240918BHJP
   G02F 1/1368 20060101ALN20240918BHJP
【FI】
G09F9/30 338
H01L29/78 612B
H01L29/78 616V
H01L29/78 617L
H01L29/78 617M
H01L29/78 617N
H01L29/78 618B
G09F9/30 365
H05B33/14 Z
H10K59/121 213
H10K59/123
H01L29/78 618E
G02F1/1368
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024096104
(22)【出願日】2024-06-13
(62)【分割の表示】P 2023090627の分割
【原出願日】2015-01-30
(31)【優先権主張番号】P 2014022872
(32)【優先日】2014-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2014022871
(32)【優先日】2014-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2014051131
(32)【優先日】2014-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2014051136
(32)【優先日】2014-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】肥塚 純一
(72)【発明者】
【氏名】神長 正美
(72)【発明者】
【氏名】島 行徳
(72)【発明者】
【氏名】黒崎 大輔
(72)【発明者】
【氏名】中田 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
(57)【要約】      (修正有)
【課題】酸化物半導体を用いたオン電流が大きい半導体装置を提供する。
【解決手段】駆動回路部に設けられた第1のトランジスタと、画素部に設けられた第2のトランジスタとを有する半導体装置であって、第1のトランジスタと第2のトランジスタは構造が異なる。また、第1のトランジスタ及び第2のトランジスタは、トップゲート構造のトランジスタであって、酸化物半導体膜において、ゲート電極と重ならない領域に不純物元素を有する。酸化物半導体膜において、不純物元素を有する領域は低抵抗領域とし
ての機能を有する。また、酸化物半導体膜において、不純物元素を有する領域は、水素を含む膜と接している。また、駆動回路部に設けられた第1のトランジスタは、第1の膜及び第2の膜が積層された酸化物半導体膜を有し、画素部に設けられた第2のトランジスタは、第1の膜と金属元素の原子数比が異なる酸化物半導体膜を有してもよい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲートドライバと、画素と、有し、
前記ゲートドライバは、第1のトランジスタを有し、
前記画素は、第2のトランジスタを有し、
前記第1のトランジスタは、
第1のゲート電極と、
前記第1のゲート電極上の第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜上の第1の半導体膜と、
前記第1の半導体膜上の第2の絶縁膜と、
前記第2の絶縁膜上の領域と、前記第1の半導体膜と重なる領域と、を有する第2のゲート電極と、
前記第1の半導体膜の上面と接する領域と、前記第2の絶縁膜の側面と接する領域と、前記第2のゲート電極の側面と接する領域と、前記第2のゲート電極の上面と接する領域と、を有する第3の絶縁膜と、
前記第1の半導体膜と接する領域を有する第1のソース電極と、
前記第1の半導体膜と接する領域を有する第1のドレイン電極と、を有し、
前記第2のゲート電極は、第1の導電膜と、前記第1の導電膜上の第2の導電膜と、を有し、
前記第1のゲート電極は、前記第2のゲート電極と常に導通し、
前記第1の半導体膜は、Inと、Gaと、Znと、を含み、
前記第1の半導体膜は、第1のチャネル形成領域を有し、
前記第1のトランジスタのチャネル長方向の断面視において、前記第1の導電膜の端部は、前記第2の導電膜の端部より外側に位置する領域を有し、
前記第1のトランジスタのチャネル長方向の断面視において、前記第2の絶縁膜の端部は、前記第1の導電膜の端部より外側に位置する領域を有し、
前記第2のトランジスタは、
前記第1の絶縁膜の上に接して設けられる第2の半導体膜と、
前記第2の半導体膜上に接して設けられる第4の絶縁膜と、
前記第4の絶縁膜上の領域と、前記第2の半導体膜と重なる領域と、を有する第3のゲート電極と、
前記第2の半導体膜の上面と接する領域と、前記第4の絶縁膜の側面と接する領域と、前記第3のゲート電極の側面と接する領域と、前記第3のゲート電極の上面と接する領域と、を有する前記第3の絶縁膜と、
前記第2の半導体膜と接する領域を有する第2のソース電極と、
前記第2の半導体膜と接する領域を有する第2のドレイン電極と、を有し、
前記第3のゲート電極は、前記第2のゲート電極と同一の材料を有し、
前記第3のゲート電極は、第3の導電膜と、前記第3の導電膜上の第4の導電膜と、を有し、
前記第2の半導体膜は、Inと、Gaと、Znと、を含み、
前記第2の半導体膜は、単層膜であり、
前記第2の半導体膜は、第2のチャネル形成領域を有し、
前記第2のトランジスタのチャネル長方向の断面視において、前記第3の導電膜の端部は、前記第4の導電膜の端部より外側に位置する領域を有し、
前記第2のトランジスタのチャネル長方向の断面視において、前記第4の絶縁膜の端部は、前記第3の導電膜の端部より外側に位置する領域を有し、
前記第3の絶縁膜は、前記第1の絶縁膜の上面と接する領域を有し、
前記第1の半導体膜に、ナノビーム電子線回折を行うと、スポットが観測される、リング状に輝度の高い領域がされる、またはリング状の領域内に複数のスポットが観測され、
前記第2の半導体膜に、ナノビーム電子線回折を行うと、スポットが観測される、リング状に輝度の高い領域がされる、またはリング状の領域内に複数のスポットが観測される、表示装置。
【請求項2】
ゲートドライバと、画素と、有し、
前記ゲートドライバは、第1のトランジスタを有し、
前記画素は、第2のトランジスタと、発光素子と、を有し、
前記第1のトランジスタは、
第1のゲート電極と、
前記第1のゲート電極上の第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜上の第1の半導体膜と、
前記第1の半導体膜上の第2の絶縁膜と、
前記第2の絶縁膜上の領域と、前記第1の半導体膜と重なる領域と、を有する第2のゲート電極と、
前記第1の半導体膜の上面と接する領域と、前記第2の絶縁膜の側面と接する領域と、前記第2のゲート電極の側面と接する領域と、前記第2のゲート電極の上面と接する領域と、を有する第3の絶縁膜と、
前記第1の半導体膜と接する領域を有する第1のソース電極と、
前記第1の半導体膜と接する領域を有する第1のドレイン電極と、を有し、
前記第2のゲート電極は、第1の導電膜と、前記第1の導電膜上の第2の導電膜と、を有し、
前記第1のゲート電極は、前記第2のゲート電極と常に導通し、
前記第1の半導体膜は、Inと、Gaと、Znと、を含み、
前記第1の半導体膜は、第1のチャネル形成領域を有し、
前記第1のトランジスタのチャネル長方向の断面視において、前記第1の導電膜の端部は、前記第2の導電膜の端部より外側に位置する領域を有し、
前記第1のトランジスタのチャネル長方向の断面視において、前記第2の絶縁膜の端部は、前記第1の導電膜の端部より外側に位置する領域を有し、
前記第2のトランジスタは、
前記第1の絶縁膜の上に接して設けられる第2の半導体膜と、
前記第2の半導体膜上に接して設けられる第4の絶縁膜と、
前記第4の絶縁膜上の領域と、前記第2の半導体膜と重なる領域と、を有する第3のゲート電極と、
前記第2の半導体膜の上面と接する領域と、前記第4の絶縁膜の側面と接する領域と、前記第3のゲート電極の側面と接する領域と、前記第3のゲート電極の上面と接する領域と、を有する前記第3の絶縁膜と、
前記第2の半導体膜と接する領域を有する第2のソース電極と、
前記第2の半導体膜と接する領域を有する第2のドレイン電極と、を有し、
前記第3のゲート電極は、前記第2のゲート電極と同一の材料を有し、
前記第3のゲート電極は、第3の導電膜と、前記第3の導電膜上の第4の導電膜と、を有し、
前記第2の半導体膜は、Inと、Gaと、Znと、を含み、
前記第2の半導体膜は、単層膜であり、
前記第2の半導体膜は、第2のチャネル形成領域を有し、
前記第2のトランジスタのチャネル長方向の断面視において、前記第3の導電膜の端部は、前記第4の導電膜の端部より外側に位置する領域を有し、
前記第2のトランジスタのチャネル長方向の断面視において、前記第4の絶縁膜の端部は、前記第3の導電膜の端部より外側に位置する領域を有し、
前記第3の絶縁膜は、前記第1の絶縁膜の上面と接する領域を有し、
前記第1の半導体膜に、ナノビーム電子線回折を行うと、スポットが観測される、リング状に輝度の高い領域がされる、またはリング状の領域内に複数のスポットが観測され、
前記第2の半導体膜に、ナノビーム電子線回折を行うと、スポットが観測される、リング状に輝度の高い領域がされる、またはリング状の領域内に複数のスポットが観測され、
前記第2のソース電極または前記第2のドレイン電極の一方は、前記発光素子の一方の電極と常に導通し、
前記第2のトランジスタは、シングルゲート型のトランジスタである、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、酸化物半導体膜を用いた半導体装置及び該半導体装置を用いた表示
装置に関する。
【0002】
なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明
の一態様の技術分野は、物、方法、または、製造方法に関する。または、本発明は、プロ
セス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター)に
関する。特に、本発明の一態様は、半導体装置、表示装置、発光装置、蓄電装置、記憶装
置、それらの駆動方法、またはそれらの製造方法に関する。
【0003】
なお、本明細書等において、半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる
装置全般を指す。トランジスタなどの半導体素子をはじめ、半導体回路、演算装置、記憶
装置は、半導体装置の一態様である。撮像装置、表示装置、液晶表示装置、発光装置、電
気光学装置、発電装置(薄膜太陽電池、有機薄膜太陽電池等を含む)、及び電子機器は、
半導体装置を有している場合がある。
【背景技術】
【0004】
絶縁表面を有する基板上に形成された半導体薄膜を用いてトランジスタ(薄膜トランジ
スタ(TFT)ともいう)を構成する技術が注目されている。該トランジスタは集積回路
(IC)や画像表示装置(表示装置)のような電子デバイスに広く応用されている。トラ
ンジスタに適用可能な半導体薄膜としてシリコンを代表とする半導体材料が広く知られて
いるが、その他の材料として酸化物半導体が注目されている。
【0005】
例えば、酸化物半導体として、In、Zn、Ga、Snなどを含む非晶質酸化物を用い
てトランジスタを作製する技術が特許文献1で開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-165529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
酸化物半導体膜を用いたトランジスタとしては、例えば、逆スタガ型(ボトムゲート構
造ともいう)またはプレナー型(トップゲート構造ともいう)等が挙げられる。酸化物半
導体膜を用いたトランジスタを表示装置に適用する場合、プレナー型のトランジスタより
も逆スタガ型のトランジスタの方が、作製工程が比較的簡単であり製造コストを抑えられ
るため、利用される場合が多い。しかしながら、表示装置の画面の大型化、または表示装
置の画質の高精細化(例えば、4k×2k(水平方向画素数=3840画素、垂直方向画
素数=2160画素)または8k×4k(水平方向画素数=7680画素、垂直方向画素
数=4320画素)に代表される高精細な表示装置)が進むと、逆スタガ型のトランジス
タでは、ゲート電極とソース電極及びドレイン電極との間の寄生容量があるため、該寄生
容量によって信号遅延等が大きくなり、表示装置の画質が劣化するという問題があった。
また、逆スタガ型のトランジスタの場合、プレナー型のトランジスタと比較して、トラン
ジスタの占有面積が大きくなるといった問題がある。そこで、酸化物半導体膜を用いたプ
レナー型のトランジスタについて、安定した半導体特性及び高い信頼性を有する構造で、
且つ簡単な作製工程で形成されるトランジスタの開発が望まれている。
【0008】
上記問題に鑑み、本発明の一態様は、酸化物半導体を用いた新規な半導体装置を提供す
る。とくに、酸化物半導体を用いたプレナー型の半導体装置を提供する。または酸化物半
導体を用いたオン電流が大きい半導体装置を提供する、または酸化物半導体を用いたオフ
電流が小さい半導体装置を提供する、または酸化物半導体を用いた占有面積の小さい半導
体装置を提供する、または酸化物半導体を用いた安定な電気特性をもつ半導体装置を提供
する、または酸化物半導体を用いた信頼性の高い半導体装置を提供する、または新規な半
導体装置を提供する、または新規な表示装置を提供することを課題の1つとする。
【0009】
なお、上記の課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一
態様は、必ずしも、これらの課題の全てを解決する必要はない。上記以外の課題は、明細
書等の記載から自ずと明らかになるものであり、明細書等の記載から上記以外の課題を抽
出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、駆動回路部に設けられた第1のトランジスタと、画素部に設けられ
た第2のトランジスタとを有する半導体装置であって、第1のトランジスタと第2のトラ
ンジスタは構造が異なる。また、第1のトランジスタ及び第2のトランジスタは、トップ
ゲート構造のトランジスタであって、各々のトランジスタの酸化物半導体膜において、ゲ
ート電極と重ならない領域に不純物元素を有する。酸化物半導体膜において、不純物元素
を有する領域は低抵抗領域としての機能を有する。また、酸化物半導体膜において、不純
物元素を有する領域は、水素を含む膜と接している。また、水素を含む膜の開口部におい
て不純物元素を有する領域と接する、ソース電極及びドレイン電極としての機能を有する
導電膜を有してもよい。
【0011】
本発明の一態様は、駆動回路部に設けられた第1のトランジスタと、画素部に設けられ
た第2のトランジスタ及び第3のトランジスタとを有する半導体装置であって、少なくと
も第2のトランジスタと第3のトランジスタは構造が異なる。また、第1のトランジスタ
乃至第3のトランジスタは、トップゲート構造のトランジスタであって、各々のトランジ
スタの酸化物半導体膜において、ゲート電極と重ならない領域に不純物元素を有する。ま
た、酸化物半導体膜において、不純物元素を有する領域は、水素を含む膜と接している。
また、水素を含む膜の開口部において不純物元素を有する領域と接する、ソース電極及び
ドレイン電極としての機能を有する導電膜を有してもよい。
【0012】
なお、駆動回路部に設けられた第1のトランジスタは、酸化物半導体膜を介して重なる
2つのゲート電極を有してもよい。
【0013】
なお、駆動回路部に設けられた第1のトランジスタ及び画素部に設けられた第3のトラ
ンジスタは、酸化物半導体膜を介して重なる2つのゲート電極を有してもよい。
【0014】
また、駆動回路部に設けられた第1のトランジスタは、第1の膜及び第2の膜が積層さ
れた酸化物半導体膜を有し、画素部に設けられた第2のトランジスタは、第1の膜と金属
元素の原子数比が異なる酸化物半導体膜を有してもよい。さらに、第2のトランジスタに
含まれる酸化物半導体膜は、第1のトランジスタの酸化物半導体膜に含まれる第2の膜と
金属元素の原子数比が同じであってもよい。
【0015】
また、画素部に設けられた第3のトランジスタは、第1の膜及び第2の膜が積層された
酸化物半導体膜を有し、画素部に設けられた第2のトランジスタは、第1の膜と金属元素
の原子数比が異なる酸化物半導体膜を有してもよい。さらに、第2のトランジスタに含ま
れる酸化物半導体膜は、第3のトランジスタの酸化物半導体膜に含まれる第2の膜と金属
元素の原子数比が同じであってもよい。
【0016】
また、駆動回路部に設けられた第1のトランジスタ及び画素部に設けられた第3のトラ
ンジスタは、それぞれ第1の膜及び第2の膜が積層された酸化物半導体膜を有し、第1の
膜及び第2の膜の金属元素の原子数比が異なってもよい。
【0017】
不純物元素として、水素、ホウ素、炭素、窒素、フッ素、アルミニウム、シリコン、リ
ン、塩素、または希ガス元素がある。
【0018】
酸化物半導体膜において、水素と、希ガス元素、ホウ素、炭素、窒素、フッ素、アルミ
ニウム、シリコン、リン、及び塩素の少なくとも一の不純物元素を有することで、導電性
が高まる。このため、酸化物半導体膜において、該不純物元素を有する領域を、ゲート電
極と重ならない領域に有し、且つ不純物元素を有する領域がソース電極及びドレイン電極
と接することで、トランジスタの寄生抵抗及び寄生容量を低減することが可能であり、オ
ン電流の高いトランジスタとなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様により、酸化物半導体を用いた新規な半導体装置を提供することができ
る。とくに、酸化物半導体を用いたプレナー型の半導体装置を提供することができる。ま
たは、酸化物半導体を用いたオン電流が大きい半導体装置を提供することができる。また
は、酸化物半導体を用いたオフ電流が小さい半導体装置を提供することができる。または
、酸化物半導体を用いた占有面積の小さい半導体装置を提供することができる。または、
酸化物半導体を用いた安定な電気特性をもつ半導体装置を提供することができる。または
、酸化物半導体を用いた信頼性の高い半導体装置を提供することができる。または、新規
な半導体装置を提供することができる。または、新規な表示装置を提供することができる
【0020】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本発明の
一態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果
は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図
面、請求項などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】半導体装置の一態様を説明する上面図。
図2】半導体装置の一態様を説明する断面図。
図3】半導体装置の一態様を説明する断面図。
図4】半導体装置の作製方法の一態様を説明する断面図。
図5】半導体装置の作製方法の一態様を説明する断面図。
図6】半導体装置の作製方法の一態様を説明する断面図。
図7】半導体装置の一態様を説明する上面図。
図8】半導体装置の一態様を説明する断面図。
図9】半導体装置の一態様を説明する断面図。
図10】半導体装置の一態様を説明する断面図。
図11】半導体装置の一態様を説明する上面図。
図12】半導体装置の一態様を説明する断面図。
図13】半導体装置の一態様を説明する断面図。
図14】半導体装置の一態様を説明する断面図。
図15】半導体装置の一態様を説明する断面図。
図16】半導体装置の一態様を説明する断面図。
図17】半導体装置の一態様を説明する断面図。
図18】半導体装置の一態様を説明する上面図。
図19】半導体装置の一態様を説明する断面図。
図20】半導体装置の一態様を説明する断面図。
図21】半導体装置の一態様を説明する上面図。
図22】半導体装置の一態様を説明する断面図。
図23】半導体装置の一態様を説明する断面図。
図24】半導体装置の作製方法の一態様を説明する断面図。
図25】半導体装置の作製方法の一態様を説明する断面図。
図26】半導体装置の作製方法の一態様を説明する断面図。
図27】半導体装置の作製方法の一態様を説明する断面図。
図28】本発明の一態様に係るトランジスタのバンド構造を説明する図。
図29】トランジスタの構造を説明する断面図。
図30】トランジスタの構造を説明する断面図。
図31】トランジスタの構造を説明する断面図。
図32】トランジスタの構造を説明する断面図。
図33】トランジスタの構造を説明する断面図。
図34】トランジスタの作製工程を説明する断面図。
図35】計算モデルを説明する図。
図36】初期状態と最終状態を説明する図。
図37】活性化障壁を説明する図。
図38】初期状態と最終状態を説明する図。
図39】活性化障壁を説明する図。
図40】VHの遷移レベルを説明する図。
図41】表示装置を説明するブロック図及び回路図。
図42】表示装置の一態様を説明する上面図。
図43】表示装置の一態様を説明する断面図。
図44】表示装置の一態様を説明する断面図。
図45】発光装置の画素部の構成について説明する断面図。
図46】表示モジュールを説明する図。
図47】電子機器を説明する図。
図48】抵抗率の温度依存性を説明する図。
図49】CAAC-OSの断面におけるCs補正高分解能TEM像、およびCAAC-OSの断面模式図。
図50】CAAC-OSの平面におけるCs補正高分解能TEM像。
図51】CAAC-OSおよび単結晶酸化物半導体のXRDによる構造解析を説明する図。
図52】CAAC-OSの電子回折パターンを説明する図。
図53】In-Ga-Zn酸化物の電子照射による結晶部の変化を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、本明細書に開示する発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する
。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱するこ
となく、その形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される
。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない
【0023】
なお、図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解の簡単のため、
実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、
必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0024】
なお、本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの序数詞は、構成要素の
混同を避けるために付すものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
【0025】
なお、本明細書等において「上」や「下」の用語は、構成要素の位置関係が「直上」ま
たは「直下」であることを限定するものではない。例えば、「ゲート絶縁膜上のゲート電
極」の表現であれば、ゲート絶縁膜とゲート電極との間に他の構成要素を含むものを除外
しない。
【0026】
また、本明細書等において「電極」や「配線」の用語は、これらの構成要素を機能的に
限定するものではない。例えば、「電極」は「配線」の一部として用いられることがあり
、その逆もまた同様である。さらに、「電極」や「配線」の用語は、複数の「電極」や「
配線」が一体となって形成されている場合なども含む。
【0027】
また、「ソース」や「ドレイン」の機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合
や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このた
め、本明細書等においては、「ソース」や「ドレイン」の用語は、入れ替えて用いること
ができるものとする。
【0028】
なお、本明細書等において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するも
の」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するも
の」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない
。例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線をはじめ、トランジス
タなどのスイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、キャパシタ、その他の各種機能を有
する素子などが含まれる。
【0029】
(実施の形態1)
本実施の形態では、半導体装置及び半導体装置の作製方法の一形態を、図1乃至図10
を用いて説明する。
【0030】
<半導体装置の構成1>
図1及び図2に、半導体装置に含まれるトランジスタの一例として、トップゲート構造
のトランジスタを示す。ここでは、半導体装置の一例として表示装置を用いて説明する。
また、表示装置の駆動回路部及び画素部それぞれに設けられるトランジスタの構造を説明
する。本実施の形態では、駆動回路部に設けられるトランジスタと、画素部に設けられる
トランジスタにおいて、酸化物半導体膜の構造が異なることを特徴とする。
【0031】
図1に駆動回路部に設けられるトランジスタ100g及び画素部に設けられるトランジ
スタ100hの上面図を示し、図2にトランジスタ100g、100hの断面図を示す。
図1(A)はトランジスタ100gの上面図であり、図1(B)はトランジスタ100h
の上面図である。図2(A)は、図1(A)の一点鎖線A-B間の断面図、及び図1(B
)の一点鎖線C-D間の断面図である。図2(B)は、図1(A)の一点鎖線G-H間の
断面図、及び図1(B)の一点鎖線I-J間の断面図である。なお、図1では、明瞭化の
ため、基板101、絶縁膜104、絶縁膜126、絶縁膜127、などを省略している。
また、図2(A)は、トランジスタ100g、100hのチャネル長方向の断面図である
。また、図2(B)は、トランジスタ100g、100hのチャネル幅方向の断面図であ
る。
【0032】
なお、トランジスタの上面図においては、以降の図面においてもトランジスタ100g
及びトランジスタ100hと同様に、構成要素の一部を省略して図示する場合がある。ま
た、一点鎖線A-B方向及び一点鎖線C-D方向をチャネル長方向、一点鎖線G-H方向
及び一点鎖線I-J方向をチャネル幅方向と呼称する場合がある。
【0033】
図2に示すトランジスタ100gは、基板101上に形成された絶縁膜104上の多層
膜107と、多層膜107に接する絶縁膜116と、絶縁膜116を介して多層膜107
と重なる導電膜119とを有する。導電膜119は、ゲート電極としての機能を有する。
また、絶縁膜116は、ゲート絶縁膜としての機能を有する。多層膜107は、チャネル
領域107a、及び低抵抗領域107b、107cを有する。また、チャネル領域107
aは、絶縁膜104に接するチャネル領域105aと、チャネル領域105aに接するチ
ャネル領域106aを有する。低抵抗領域107bは、絶縁膜104に接する低抵抗領域
105bと、低抵抗領域105bに接する低抵抗領域106bを有する。低抵抗領域10
7cは、絶縁膜104に接する低抵抗領域105cと、低抵抗領域105cに接する低抵
抗領域106cを有する。なお、図2に図示しないが、チャネル領域105a、低抵抗領
域105b、及び低抵抗領域105cを有する酸化物半導体膜を酸化物半導体膜105と
いい、チャネル領域106a、低抵抗領域106b、及び低抵抗領域106cを有する酸
化物半導体膜を酸化物半導体膜106という。すなわち、多層膜107は、酸化物半導体
膜105及び酸化物半導体膜106が積層されている。
【0034】
なお、上面形状において、酸化物半導体膜105の端部の外側に酸化物半導体膜106
の端部が位置する。すなわち、酸化物半導体膜106は、酸化物半導体膜105の上面及
び側面を覆う。
【0035】
また、トランジスタ100gにおいて、低抵抗領域107b、107cに接する絶縁膜
126が設けられる。また、絶縁膜126上に絶縁膜127を有してもよい。また、絶縁
膜126及び絶縁膜127の開口部128、129において、多層膜107の低抵抗領域
107b、107cに接する導電膜134、135が設けられる。
【0036】
トランジスタ100hは、基板101上に形成された絶縁膜104上の酸化物半導体膜
108と、酸化物半導体膜108に接する絶縁膜117と、絶縁膜117を介して酸化物
半導体膜108と重なる導電膜120とを有する。
【0037】
導電膜120は、ゲート電極としての機能を有する。また、絶縁膜117は、ゲート絶
縁膜としての機能を有する。
【0038】
酸化物半導体膜108は、導電膜120と重なるチャネル領域108aと、チャネル領
域108aを挟む低抵抗領域108b、108cとを有する。
【0039】
また、トランジスタ100hにおいて、低抵抗領域108b、108cに接する絶縁膜
126が設けられる。また、絶縁膜126上に絶縁膜127を有してもよい。また、絶縁
膜126及び絶縁膜127の開口部130、131において、酸化物半導体膜108の低
抵抗領域108b、108cに接する導電膜136、137が設けられる。
【0040】
なお、導電膜134、135、136、137を覆うように窒化物絶縁膜162を設け
ることが好ましい。窒化物絶縁膜162を設けることで、外部からの不純物の拡散を防ぐ
ことができる。
【0041】
トランジスタ100gと、トランジスタ100hにおいて、多層膜107に含まれる酸
化物半導体膜105と酸化物半導体膜108は、組成が異なる。一方、多層膜107に含
まれる酸化物半導体膜106と酸化物半導体膜108は組成が同じである。すなわち、酸
化物半導体膜105及び酸化物半導体膜108は、別の工程で形成され、且つ酸化物半導
体膜106及び酸化物半導体膜108は同じ工程で形成される。
【0042】
トランジスタ100gは、酸化物半導体膜105にチャネルが形成される。このため、
酸化物半導体膜105は、酸化物半導体膜106より膜厚が大きい。
【0043】
酸化物半導体膜105の膜厚は、3nm以上200nm以下、または10nm以上50
nm以下、または20nm以上35nm以下である。酸化物半導体膜106、108の膜
厚は、3nm以上200nm以下、または3nm以上100nm以下、または10nm以
上100nm以下、または30nm以上50nm以下である。
【0044】
酸化物半導体膜105、106、108は、少なくともInを含む金属酸化物で形成さ
れ、代表的には、In-Ga酸化物、In-M-Zn酸化物(Mは、Mg、Al、Ti、
Ga、Y、Zr、La、Ce、Nd、又はHf)等で形成される。なお、酸化物半導体膜
106より、酸化物半導体膜105のインジウムの含有量が多いことで、トランジスタ1
00gは、埋め込みチャネルを形成することが可能である。後述する<バンド構造>にお
いて、詳細を説明するが、このため、トランジスタ100gのしきい値電圧の変動を低減
することが可能であり、またチャネル抵抗を低減できる。
【0045】
酸化物半導体膜105は、M(Mは、Mg、Al、Ti、Ga、Y、Zr、La、Ce
、Nd、又はHf)に対するInの原子数比が大きい。酸化物半導体膜105がIn-M
-Zn酸化物(Mは、Mg、Al、Ti、Ga、Y、Zr、La、Ce、Nd、又はHf
)の場合、酸化物半導体膜105を成膜するために用いるターゲットにおいて、金属元素
の原子数比をIn:M:Zn=x:y:zとすると、x/yは、1より大きく
6以下であることが好ましい。ターゲットの金属元素の原子数比の代表例としては、In
:M:Zn=2:1:1.5、In:M:Zn=2:1:2.3、In:M:Zn=2:
1:3、In:M:Zn=3:1:2、In:M:Zn=3:1:3、In:M:Zn=
3:1:4等がある。
【0046】
酸化物半導体膜106、108は、M(Mは、Mg、Al、Ti、Ga、Y、Zr、L
a、Ce、Nd、又はHf)に対するInの原子数比が同じ、又は小さい。酸化物半導体
膜106、108がIn-M-Zn酸化物(Mは、Mg、Al、Ti、Ga、Y、Zr、
La、Ce、Nd、又はHf)の場合、酸化物半導体膜106、108を成膜するために
用いるターゲットにおいて、金属元素の原子数比をIn:M:Zn=x:y:z
すると、x/yは、1/6以上1以下であることが好ましい。また、z/yは、
1/3以上6以下、さらには1以上6以下であることが好ましい。なお、z/yを1
以上6以下とすることで、酸化物半導体膜106、108としてCAAC-OS(C A
xis Aligned Crystalline Oxide Semiconduc
tor)膜が形成されやすくなる。ターゲットの金属元素の原子数比の代表例としては、
In:M:Zn=1:1:1、In:M:Zn=1:1:1.2、In:M:Zn=1:
3:2、In:M:Zn=1:3:4、In:M:Zn=1:3:6、In:M:Zn=
1:3:8、In:M:Zn=1:4:4、In:M:Zn=1:4:5、In:M:Z
n=1:4:6、In:M:Zn=1:4:7、In:M:Zn=1:4:8、In:M
:Zn=1:5:5、In:M:Zn=1:5:6、In:M:Zn=1:5:7、In
:M:Zn=1:5:8、In:M:Zn=1:6:8等がある。
【0047】
トランジスタ100gは、M(Mは、Mg、Al、Ti、Ga、Y、Zr、La、Ce
、Nd、又はHf)に対するInの原子数比が大きい酸化物半導体膜105にチャネルが
形成されるため、電界効果移動度が高い。代表的には、電界効果移動度が10cm/V
sより大きく60cm/Vs未満、好ましくは15cm/Vs以上50cm/Vs
未満のトランジスタである。しかしながら、光が照射されるとオフ状態における電流が増
大してしまう。このため、駆動回路部に遮光膜を設けることで、電界効果移動度が高く、
且つオフ状態における電流の低いトランジスタとなる。この結果、高速動作が可能な駆動
回路部を作製することができる。
【0048】
一方、トランジスタ100hは、M(Mは、Mg、Al、Ti、Ga、Y、Zr、La
、Ce、Nd、又はHf)に対するInの原子数比が同じ、又は小さい酸化物半導体膜に
チャネルが形成されるため、酸化物半導体膜に光が照射されても、オフ電流の増大量が少
ない。このため、画素部に、M(Mは、Mg、Al、Ti、Ga、Y、Zr、La、Ce
、Nd、又はHf)に対するInの原子数比が同じ、又は小さい酸化物半導体膜を有する
トランジスタを設けることで、光照射の劣化が少なく、表示品質に優れた画素部を作製す
ることができる。
【0049】
また、表示装置において、駆動回路部と画素部に含まれるトランジスタのチャネル長が
異なってもよい。
【0050】
代表的には、駆動回路部に含まれるトランジスタ100gのチャネル長を2.5μm未
満、又は1.45μm以上2.2μm以下とすることができる。一方、画素部に含まれる
トランジスタ100hのチャネル長を2.5μm以上、又は2.5μm以上20μm以下
とすることができる。
【0051】
駆動回路部に含まれるトランジスタ100gのチャネル長を、2.5μm未満、好まし
くは1.45μm以上2.2μm以下とすることで、画素部に含まれるトランジスタ10
0hと比較して、電界効果移動度を高めることが可能であり、オン電流を増大させること
ができる。この結果、高速動作が可能な駆動回路部を作製することができる。
【0052】
多層膜107において、導電膜119と重ならない領域には、酸素欠損を形成する元素
を有する。また、酸化物半導体膜108において、導電膜120と重ならない領域には、
酸素欠損を形成する元素を有する。以下、酸化物半導体膜に添加することで、酸化物半導
体膜に酸素欠損を形成する元素を、不純物元素と称して説明する。不純物元素の代表例と
しては、水素、ホウ素、炭素、窒素、フッ素、アルミニウム、シリコン、リン、塩素、希
ガス元素等がある。希ガス元素の代表例としては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプ
トン及びキセノンがある。
【0053】
また、絶縁膜126は水素を含む膜であり、代表的には窒化物絶縁膜がある。窒化物絶
縁膜の例としては、窒化シリコン膜、窒化アルミニウム膜等がある。絶縁膜126が多層
膜107及び酸化物半導体膜108に接することで、絶縁膜126に含まれる水素が多層
膜107及び酸化物半導体膜108に拡散する。この結果、多層膜107及び酸化物半導
体膜108であって、絶縁膜126と接する領域においては、水素が多く含まれる。
【0054】
不純物元素が酸化物半導体に添加されると、酸化物半導体中の金属元素及び酸素の結合
が切断され、酸素欠損が形成される。不純物元素の添加により酸素欠損が形成された酸化
物半導体に水素を添加すると、酸素欠損サイトに水素が入り、伝導帯近傍にドナー準位が
形成され、酸化物半導体は導電率が高くなる。その結果、酸化物導電体を形成することが
できる。このため、酸化物導電体は透光性を有する。なお、ここでは、導電体化された酸
化物半導体を酸化物導電体という。
【0055】
酸化物導電体は、縮退半導体であり、伝導帯端とフェルミ準位とが一致または略一致し
ていると推定される。このため、酸化物導電体膜とソース電極及びドレイン電極としての
機能を有する導電膜との接触はオーミック接触であり、酸化物導電体膜とソース電極及び
ドレイン電極としての機能を有する導電膜との接触抵抗を低減できる。
【0056】
即ち、低抵抗領域107b、107c、108b、108cは、ソース領域及びドレイ
ン領域としての機能を有する。
【0057】
また、導電膜134、135、136、137がタングステン、チタン、アルミニウム
、銅、モリブデン、クロム、又はタンタル単体若しくは合金等の酸素と結合しやすい導電
材料を用いて形成される場合、酸化物半導体膜に含まれる酸素と導電膜134、135、
136、137に含まれる導電材料とが結合し、多層膜107及び酸化物半導体膜108
において、酸素欠損が形成される。また、多層膜107及び酸化物半導体膜108に導電
膜134、135、136、137を形成する導電材料の構成元素の一部が混入する場合
もある。これらの結果、導電膜134、135、136、137と接する低抵抗領域10
7b、107c、108b、108cは、導電性が高まり、ソース領域及びドレイン領域
としての機能を有する。
【0058】
不純物元素が希ガス元素であって、多層膜107及び酸化物半導体膜108がスパッタ
リング法で形成される場合、低抵抗領域107b、107c、108b、108cはそれ
ぞれ希ガス元素を含み、且つチャネル領域107a、108aと比較して、低抵抗領域1
07b、107c、108b、108cの方が希ガス元素の濃度が高い。これは、多層膜
107及び酸化物半導体膜108がスパッタリング法で形成される場合、スパッタリング
ガスとして希ガスを用いるため、多層膜107及び酸化物半導体膜108に希ガスが含ま
れること、並びに低抵抗領域107b、107c、108b、108cにおいて、酸素欠
損を形成するために、意図的に希ガスが添加されることが原因である。なお低抵抗領域1
07b、107c、108b、108cにおいて、チャネル領域107a、108aと異
なる希ガス元素が添加されていてもよい。
【0059】
また、低抵抗領域107b、107cは絶縁膜126と接するため、チャネル領域10
7aと比較して、水素の濃度が高い。また、低抵抗領域108b、108cは絶縁膜12
6と接するため、チャネル領域108aと比較して、水素の濃度が高い。
【0060】
低抵抗領域107b、107c、108b、108cにおいて、二次イオン質量分析法
により得られる水素の濃度は、8×1019atoms/cm以上、又は1×1020
atoms/cm以上、又は5×1020atoms/cm以上とすることができる
。なお、チャネル領域107a、108aの二次イオン質量分析法により得られる水素濃
度は、5×1019atoms/cm以下、又は1×1019atoms/cm以下
、又は5×1018atoms/cm以下、又は1×1018atoms/cm以下
、又は5×1017atoms/cm以下、又は1×1016atoms/cm以下
とすることができる。
【0061】
チャネル領域107a、108aと比較して、低抵抗領域107b、107c、108
b、108cは、水素濃度が高く、且つ希ガス元素の添加による酸素欠損量が多い。この
ため、導電性が高くなり、ソース領域及びドレイン領域としての機能を有する。代表的に
は、低抵抗領域107b、107c、108b、108cの抵抗率として、1×10-3
Ωcm以上1×10Ωcm未満、又は1×10-3Ωcm以上1×10-1Ωcm未満
とすることができる。
【0062】
なお、低抵抗領域107b、107c、108b、108cにおいて、水素の量は酸素
欠損の量と同じ又は少ないと、水素が酸素欠損に捕獲されやすく、チャネル領域107a
、108aに拡散しにくい。この結果、ノーマリーオフ特性のトランジスタを作製するこ
とができる。
【0063】
また、低抵抗領域107b、107c、108b、108cにおいて、水素の量と比較
して酸素欠損の量が多い場合、水素の量を制御することで、低抵抗領域107b、107
c、108b、108cのキャリア密度を制御することができる。又は、低抵抗領域10
7b、107c、108b、108cにおいて、酸素欠損の量と比較して水素の量が多い
場合、酸素欠損の量を制御することで、低抵抗領域107b、107c、108b、10
8cのキャリア密度を制御することができる。なお、低抵抗領域107b、107c、1
08b、108cのキャリア密度を5×1018個/cm以上、又は1×1019個/
cm以上、又は1×1020個/cm以上とすることで、チャネル領域とソース電極
及びドレイン電極としての機能を有する導電膜134、135、136、137との間の
抵抗が小さく、オン電流の大きいトランジスタを作製することが可能である。
【0064】
本実施の形態に示すトランジスタ100g、100hは、チャネル領域と、ソース電極
及びドレイン電極としての機能を有する導電膜134、135、136、137との間に
、低抵抗領域107b、107c、108b、108cを有するため寄生抵抗が小さい。
【0065】
また、トランジスタ100gにおいて、導電膜119と、導電膜134、135とが重
ならない。このため、導電膜119と、導電膜134、135との間の寄生容量を低減す
ることが可能である。また、トランジスタ100hにおいて、導電膜120と、導電膜1
36、137とが重ならない。このため、導電膜120と、導電膜136、137との間
の寄生容量を低減することが可能である。この結果、基板101として大面積基板を用い
た場合、導電膜119、120、134、135、136、137における信号遅延を低
減することが可能である。
【0066】
このため、トランジスタ100g、100hは、オン電流が大きく、電界効果移動度が
高い。
【0067】
また、トランジスタ100gにおいて、導電膜119をマスクとして、不純物元素が多
層膜107に添加される。また、トランジスタ100hにおいて、導電膜120をマスク
として、不純物元素が酸化物半導体膜108に添加される。すなわち、セルフアラインで
低抵抗領域を形成することができる。
【0068】
駆動回路部に含まれるトランジスタ100gはオン電流が大きく電界効果移動度が高い
。このため、駆動回路部の占有面積の小さい表示装置を作製することができる。
【0069】
また、電界効果移動度が高いトランジスタを用いることで、駆動回路部の一例である信
号線駆動回路にデマルチプレクサ回路を形成することが可能である。デマルチプレクサ回
路は、一つの入力信号を複数の出力のいずれかへ分配する回路であるため、入力信号用の
入力端子数を削減することが可能である。例えば、一画素が、赤色用サブ画素、緑色用サ
ブ画素、及び青色用サブ画素を有し、且つ各画素にデマルチプレクサ回路を設けることで
、各サブ画素に入力する入力信号をデマルチプレクサ回路で分配することが可能であるた
め、入力端子を1/3に削減することが可能である。
【0070】
また、オン電流の大きいトランジスタ100hを画素部に設けることで、大型の表示装
置や高精細な表示装置において配線数が増大しても、各配線における信号遅延を低減する
ことが可能であり、表示むらを抑えることが可能である。
【0071】
以上のことから、高速動作が可能なトランジスタを用いて駆動回路部を作製するととも
に、寄生容量及び寄生抵抗の少ないトランジスタを用いて画素部を作製することで、高精
細で、倍速駆動が可能な表示装置を作製することができる。
【0072】
以下に、図1に示す構成の詳細について説明する。
【0073】
基板101としては、様々な基板を用いることができ、特定のものに限定されることは
ない。基板の一例としては、半導体基板(例えば単結晶基板又はシリコン基板)、SOI
基板、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板、金属基板、ステンレス・スチル基板、
ステンレス・スチル・ホイルを有する基板、タングステン基板、タングステン・ホイルを
有する基板、可撓性基板、貼り合わせフィルム、繊維状の材料を含む紙、又は基材フィル
ムなどがある。ガラス基板の一例としては、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケ
イ酸ガラス、又はソーダライムガラスなどがある。可撓性基板、貼り合わせフィルム、基
材フィルムなどの一例としては、以下のものがあげられる。例えば、ポリエチレンテレフ
タレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(
PES)に代表されるプラスチックがある。又は、一例としては、アクリル等の合成樹脂
などがある。又は、一例としては、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニル、又はポリ塩化ビ
ニルなどがある。又は、一例としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、アラミ
ド、エポキシ、無機蒸着フィルム、又は紙類などがある。特に、半導体基板、単結晶基板
、又はSOI基板などを用いてトランジスタを製造することによって、特性、サイズ、又
は形状などのばらつきが少なく、電流能力が高く、サイズの小さいトランジスタを製造す
ることができる。このようなトランジスタによって回路を構成すると、回路の低消費電力
化、又は回路の高集積化を図ることができる。
【0074】
また、基板101として、可撓性基板を用い、可撓性基板上に直接、トランジスタを形
成してもよい。又は、基板101とトランジスタの間に剥離層を設けてもよい。剥離層は
、その上に半導体装置を一部あるいは全部完成させた後、基板101より分離し、他の基
板に転載するのに用いることができる。その際、トランジスタは耐熱性の劣る基板や可撓
性の基板にも転載できる。なお、上述の剥離層には、例えば、タングステン膜と酸化シリ
コン膜との無機膜の積層構造の構成や、基板上にポリイミド等の有機樹脂膜が形成された
構成等を用いることができる。
【0075】
トランジスタが転載される基板の一例としては、上述したトランジスタを形成すること
が可能な基板に加え、紙基板、セロファン基板、アラミドフィルム基板、ポリイミドフィ
ルム基板、石材基板、木材基板、布基板(天然繊維(絹、綿、麻)、合成繊維(ナイロン
、ポリウレタン、ポリエステル)若しくは再生繊維(アセテート、キュプラ、レーヨン、
再生ポリエステル)などを含む)、皮革基板、又はゴム基板などがある。これらの基板を
用いることにより、特性のよいトランジスタの形成、消費電力の小さいトランジスタの形
成、壊れにくい装置の製造、耐熱性の付与、軽量化、又は薄型化を図ることができる。
【0076】
絶縁膜104は、酸化物絶縁膜又は窒化物絶縁膜を単層又は積層して形成することがで
きる。なお、多層膜107及び酸化物半導体膜108との界面特性を向上させるため、絶
縁膜104において少なくとも多層膜107及び酸化物半導体膜108と接する領域は酸
化物絶縁膜で形成することが好ましい。また、絶縁膜104として加熱により酸素を放出
する酸化物絶縁膜を用いることで、加熱処理により絶縁膜104に含まれる酸素を、多層
膜107及び酸化物半導体膜108に移動させることが可能である。また、絶縁膜104
として、基板101と接する領域を窒化物絶縁膜で形成することで、基板101に含まれ
る元素が多層膜107及び酸化物半導体膜108に移動することを防ぐことが可能であり
、好ましい。
【0077】
絶縁膜104の厚さは、50nm以上、又は100nm以上3000nm以下、又は2
00nm以上1000nm以下とすることができる。絶縁膜104を厚くすることで、絶
縁膜104の酸素放出量を増加させることができると共に、絶縁膜104と多層膜107
及び酸化物半導体膜108との界面における界面準位密度、並びに多層膜107に含まれ
るチャネル領域107a、酸化物半導体膜108に含まれるチャネル領域108aに含ま
れる酸素欠損を低減することが可能である。
【0078】
絶縁膜104として、例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒
化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウム又はGa-Zn酸化物な
どを用いればよく、単層又は積層で設けることができる。
【0079】
ここでは、絶縁膜104として、絶縁膜104a及び絶縁膜104bを積層して形成す
る。なお、絶縁膜104aとして窒化物絶縁膜を用いることで、基板101に含まれる元
素の拡散を防ぐことができる。また、絶縁膜104bとして酸化物絶縁膜を用いることで
、多層膜107及び酸化物半導体膜108との界面における界面準位密度等を低減するこ
とができる。
【0080】
多層膜107及び酸化物半導体膜108において、第14族元素の一つであるシリコン
や炭素が含まれると、多層膜107及び酸化物半導体膜108において、酸素欠損が増加
し、n型化してしまう。このため、多層膜107及び酸化物半導体膜108であって、特
にチャネル領域107a、108aにおいて、シリコンや炭素の濃度(二次イオン質量分
析法により得られる濃度)を、2×1018atoms/cm以下、又は2×1017
atoms/cm以下とすることができる。この結果、トランジスタは、しきい値電圧
がプラスとなる電気特性(ノーマリーオフ特性ともいう。)を有する。
【0081】
また、多層膜107及び酸化物半導体膜108であって、特にチャネル領域107a、
108aにおいて、二次イオン質量分析法により得られるアルカリ金属又はアルカリ土類
金属の濃度を、1×1018atoms/cm以下、又は2×1016atoms/c
以下とすることができる。アルカリ金属及びアルカリ土類金属は、酸化物半導体と結
合するとキャリアを生成する場合があり、トランジスタのオフ電流が増大してしまうこと
がある。このため、チャネル領域107a、108aのアルカリ金属又はアルカリ土類金
属の濃度を低減することが好ましい。この結果、トランジスタは、しきい値電圧がプラス
となる電気特性(ノーマリーオフ特性ともいう。)を有する。
【0082】
また、多層膜107及び酸化物半導体膜108であって、特にチャネル領域107a、
108aに窒素が含まれていると、キャリアである電子が生じ、キャリア密度が増加し、
n型化となる場合がある。この結果、窒素が含まれている酸化物半導体膜を用いたトラン
ジスタはノーマリーオン特性となりやすい。従って、当該酸化物半導体膜であって、特に
チャネル領域107a、108aにおいて、窒素はできる限り低減されていることが好ま
しい。例えば、二次イオン質量分析法により得られる窒素濃度を、5×1018atom
s/cm以下にすることができる。
【0083】
多層膜107及び酸化物半導体膜108であって、特にチャネル領域107a、108
aにおいて、不純物元素を低減することで、酸化物半導体膜のキャリア密度を低減するこ
とができる。このため、多層膜107及び酸化物半導体膜108であって、特にチャネル
領域107a、108aにおいては、キャリア密度を1×1017個/cm以下、又は
1×1015個/cm以下、又は1×1013個/cm以下、又は8×1011個/
cm以下、又は1×1011個/cm以下、好ましくは1×1010個/cm未満
であり、1×10-9個/cm以上とすることができる。
【0084】
多層膜107及び酸化物半導体膜108として、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低
い酸化物半導体膜を用いることで、さらに優れた電気特性を有するトランジスタを作製す
ることができる。ここでは、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い(酸素欠損の少ない
)ことを高純度真性又は実質的に高純度真性とよぶ。高純度真性又は実質的に高純度真性
である酸化物半導体は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることがで
きる場合がある。従って、当該酸化物半導体膜にチャネル領域が形成されるトランジスタ
は、しきい値電圧がプラスとなる電気特性(ノーマリーオフ特性ともいう。)になりやす
い。また、高純度真性又は実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、欠陥準位密度が
低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。また、高純度真性又は実質的に高純
度真性である酸化物半導体膜は、オフ電流が著しく小さく、ソース電極とドレイン電極間
の電圧(ドレイン電圧)が1Vから10Vの範囲において、オフ電流が、半導体パラメー
タアナライザの測定限界以下、すなわち1×10-13A以下という特性を得ることがで
きる。従って、当該酸化物半導体膜にチャネル領域が形成されるトランジスタは、電気特
性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとなる場合がある。
【0085】
また、多層膜107を構成する酸化物半導体膜105、106、及び酸化物半導体膜1
08は、例えば非単結晶構造でもよい。非単結晶構造は、例えば、後述するCAAC-O
S、多結晶構造、後述する微結晶構造、又は非晶質構造を含む。非単結晶構造において、
非晶質構造は最も欠陥準位密度が高く、CAAC-OSは最も欠陥準位密度が低い。
【0086】
なお、多層膜107を構成する酸化物半導体膜105、106、及び酸化物半導体膜1
08が、非晶質構造の領域、微結晶構造の領域、多結晶構造の領域、CAAC-OSの領
域、単結晶構造の領域の二種以上を有する混合膜であってもよい。混合膜は、例えば、非
晶質構造の領域、微結晶構造の領域、多結晶構造の領域、CAAC-OSの領域、単結晶
構造の領域のいずれか二種以上の領域を有する単層構造の場合がある。また、混合膜は、
例えば、非晶質構造の領域、微結晶構造の領域、多結晶構造の領域、CAAC-OSの領
域、単結晶構造の領域のいずれか二種以上が積層された構造の場合がある。
【0087】
なお、多層膜107において、チャネル領域107aと、低抵抗領域107b、107
cとの結晶性が異なる場合がある。また、酸化物半導体膜108において、チャネル領域
108aと、低抵抗領域108b、108cとの結晶性が異なる場合がある。これは、低
抵抗領域107b、107c、108b、108cに不純物元素が添加された際に、低抵
抗領域107b、107c、108b、108cにダメージが入ってしまい、結晶性が低
下するためである。
【0088】
絶縁膜116、117は、酸化物絶縁膜又は窒化物絶縁膜を単層又は積層して形成する
ことができる。なお、多層膜107及び酸化物半導体膜108との界面特性を向上させる
ため、絶縁膜116、117において少なくとも多層膜107及び酸化物半導体膜108
と接する領域は酸化物絶縁膜を用いて形成することが好ましい。絶縁膜116、117と
して、例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化
アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウム又はGa-Zn酸化物などを用いればよく
、単層又は積層で設けることができる。
【0089】
また、絶縁膜116、117として、酸素、水素、水等のブロッキング効果を有する絶
縁膜を設けることで、多層膜107及び酸化物半導体膜108からの酸素の外部への拡散
と、外部から多層膜107及び酸化物半導体膜108への水素、水等の侵入を防ぐことが
できる。酸素、水素、水等のブロッキング効果を有する絶縁膜としては、酸化アルミニウ
ム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化窒化ガリウム、酸化イットリウム、酸化
窒化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム等がある。
【0090】
また、絶縁膜116、117として、ハフニウムシリケート(HfSiO)、窒素が
添加されたハフニウムシリケート(HfSi)、窒素が添加されたハフニウム
アルミネート(HfAl)、酸化ハフニウム、酸化イットリウムなどのhig
h-k材料を用いることでトランジスタのゲートリークを低減できる。
【0091】
また、絶縁膜116、117として、加熱により酸素を放出する酸化物絶縁膜を用いる
ことで、加熱処理により絶縁膜116、117に含まれる酸素を、多層膜107及び酸化
物半導体膜108に移動させることが可能である。
【0092】
絶縁膜116、117の厚さは、5nm以上400nm以下、又は5nm以上300n
m以下、又は10nm以上250nm以下とすることができる。
【0093】
導電膜119、120は、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン
、ニッケル、鉄、コバルト、タングステンから選ばれた金属元素、又は上述した金属元素
を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金等を用いて形成することがで
きる。また、マンガン、ジルコニウムのいずれか一又は複数から選択された金属元素を用
いてもよい。また、導電膜119、120は、単層構造でも、二層以上の積層構造として
もよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、マンガンを含む銅膜の単層
構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にチタン膜を積
層する二層構造、窒化チタン膜上にタングステン膜を積層する二層構造、窒化タンタル膜
又は窒化タングステン膜上にタングステン膜を積層する二層構造、マンガンを含む銅膜上
に銅膜を積層する二層構造、チタン膜と、そのチタン膜上にアルミニウム膜を積層し、さ
らにその上にチタン膜を形成する三層構造、マンガンを含む銅膜上に銅膜を積層し、さら
にその上にマンガンを含む銅膜を形成する三層構造等がある。また、アルミニウムに、チ
タン、タンタル、タングステン、モリブデン、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ば
れた元素の一又は複数を組み合わせた合金膜、もしくは窒化膜を用いてもよい。
【0094】
また、導電膜119、120は、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジ
ウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウ
ム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化シリコン
を含むインジウム錫酸化物等の透光性を有する導電性材料を適用することもできる。また
、上記透光性を有する導電性材料と、上記金属元素の積層構造とすることもできる。
【0095】
導電膜119、120の厚さは、30nm以上500nm以下、又は100nm以上4
00nm以下とすることができる。
【0096】
導電膜134、135、136、137は、ソース電極及びドレイン電極としての機能
を有する。導電膜134、135、136、137は、導電膜119、120に示す材料
及び構造を適宜用いることができる。
【0097】
絶縁膜127は、酸化物絶縁膜又は窒化物絶縁膜を単層又は積層して形成することがで
きる。なお、絶縁膜127として加熱により酸素を放出する酸化物絶縁膜を用いることで
、加熱処理により絶縁膜127に含まれる酸素を、多層膜107及び酸化物半導体膜10
8に移動させることが可能である。
【0098】
絶縁膜127として、例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒
化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウム又はGa-Zn酸化物な
どを用いればよく、単層又は積層で設けることができる。
【0099】
絶縁膜127の厚さは、30nm以上500nm以下、又は100nm以上400nm
以下とすることができる。
【0100】
<半導体装置の構成2>
次に、半導体装置の別の構成について、図3を用いて説明する。ここでは、駆動回路部
に形成されるトランジスタ100i、画素部に形成されるトランジスタ100j、それぞ
れにおいて、ゲート電極としての機能を有する導電膜119、120が積層構造であるこ
とを特徴とする。なお、図3(A)は、チャネル長方向のトランジスタ100i、100
jの断面図を示し、図3(B)は、チャネル幅方向のトランジスタ100i、100jの
断面図を示す。
【0101】
導電膜119は、絶縁膜116に接する導電膜119a、及び導電膜119aに接する
導電膜119bを有する。また、導電膜119aの端部は、導電膜119bの端部より外
側に位置する。即ち、導電膜119aが、導電膜119bから迫り出した形状を有する。
【0102】
また、絶縁膜116の端部が、導電膜119aの端部より外側に位置している。即ち、
絶縁膜116が、導電膜119aから迫り出した形状を有する。さらには、絶縁膜116
の側面は湾曲してしてもよい。
【0103】
導電膜120は、絶縁膜117に接する導電膜120a、及び導電膜120aに接する
導電膜120bを有する。また、導電膜120aの端部は、導電膜120bの端部より外
側に位置する。即ち、導電膜120aが、導電膜120bから迫り出した形状を有する。
【0104】
また、絶縁膜117の端部が、導電膜120aの端部より外側に位置している。即ち、
絶縁膜117が、導電膜120aから迫り出した形状を有する。さらには、絶縁膜117
の側面は湾曲してしてもよい。
【0105】
導電膜119a、120aとして、チタン、タンタル、モリブデン、タングステンの単
体若しくは合金、又は窒化チタン、窒化タンタル、窒化モリブデン、窒化タングステン等
を用いて形成することができる。又は、導電膜119a、120aは、Cu-X合金(X
は、Mn、Ni、Cr、Fe、Co、Mo、Ta、又はTi)等を用いて形成することが
できる。
【0106】
導電膜119b、120bは、低抵抗材料を用いて形成する。導電膜119b、120
bとして、銅、アルミニウム、金、銀、タングステン等の単体若しくは合金、又はこれを
主成分とする化合物等を用いて形成することができる。
【0107】
なお、導電膜119a、120aとしてCu-X合金(Xは、Mn、Ni、Cr、Fe
、Co、Mo、Ta、又はTi)を用いた場合、加熱処理により絶縁膜と接する領域に被
覆膜が形成される場合がある。被覆膜は、Xを含む化合物で形成される。Xを含む化合物
の一例としては、Xの酸化物、Xの窒化物等がある。導電膜119a、120aの表面に
被覆膜が形成されることで、被覆膜がブロッキング膜となり、Cu-X合金膜中のCuが
、酸化物半導体膜に入り込むことを抑制することができる。
【0108】
なお、多層膜107及び酸化物半導体膜108であってチャネル領域の銅の濃度を1×
1018atoms/cm以下とすることで、ゲート絶縁膜としての機能を有する絶縁
膜116、117と多層膜107及び酸化物半導体膜108の界面における電子トラップ
準位密度を低減することが可能である。この結果、サブスレッショルドスイング値(S値
)の優れたトランジスタを作製することが可能である。
【0109】
また、トランジスタ100i、100jに示すように、図3に示す形状の導電膜119
、120、及び絶縁膜116、117を有することで、トランジスタのドレイン領域の電
界緩和が可能である。そのため、ドレイン領域の電界に起因したトランジスタのしきい値
電圧の変動などの劣化を低減することが可能である。
【0110】
<半導体装置の構成3>
次に、半導体装置の別の構成について、図7及び図8を用いて説明する。ここでは、駆
動回路部に形成されるトランジスタ100kがデュアルゲート構造のトランジスタである
ことを特徴とする。図7(A)はトランジスタ100kの上面図であり、図7(B)はト
ランジスタ100zの上面図である。図8(A)は、図7(A)の一点鎖線A-B間の断
面図、及び図7(B)の一点鎖線C-D間の断面図である。図8(B)は、図7(A)の
一点鎖線G-H間の断面図、及び図7(B)の一点鎖線I-J間の断面図である。
【0111】
図8に示すトランジスタ100kは、基板101上の導電膜102と、基板101及び
導電膜102上の絶縁膜104と、絶縁膜104上の多層膜107と、多層膜107に接
する絶縁膜116と、絶縁膜116を介して多層膜107と重なる導電膜119とを有す
る。多層膜107の構成は、<半導体装置の構成1>に示す多層膜107と同様であるた
め、詳細な説明を省略する。
【0112】
導電膜102及び導電膜119は、ゲート電極としての機能を有する。即ち、トランジ
スタ100kは、デュアルゲート構造のトランジスタである。また、絶縁膜104及び絶
縁膜116は、ゲート絶縁膜としての機能を有する。
【0113】
なお、図示しないが、導電膜102は、多層膜107の全域と重なるようにしてもよい
【0114】
なお、基板101上に窒化物絶縁膜161を設けることが好ましい。窒化物絶縁膜16
1としては、窒化シリコン膜、窒化アルミニウム膜等がある。窒化物絶縁膜161及び絶
縁膜104aで導電膜102を覆うことで、導電膜102に含まれる金属元素の拡散を防
ぐことが可能であり好ましい。
【0115】
トランジスタ100kにおいて、導電膜102及び導電膜119が接続せず、それぞれ
異なる電位を印加することで、トランジスタ100kのしきい値電圧を制御することがで
きる。又は、図8(B)に示すように、導電膜102及び導電膜119が接続し、同じ電
位を印加することで、初期特性バラつきの低減、-GBT(-Gate Bias-Te
mperature)ストレス試験の劣化の抑制、及び異なるドレイン電圧におけるオン
電流の立ち上がり電圧の変動の抑制が可能である。また、多層膜107において、図8
B)に示すように導電膜102及び導電膜119が接続することで、導電膜102、11
9の電界が多層膜107の上面及び側面に影響するため、多層膜107全体においてキャ
リアが流れる。即ち、キャリアの流れる領域が膜厚方向においてより大きくなるため、キ
ャリアの移動量が増加する。この結果、トランジスタ100kのオン電流が大きくなる共
に、電界効果移動度が高くなる。トランジスタのチャネル長を2.5μm未満、又は1.
45μm以上2.2μm以下とすることで、オン電流がさらに増大するとともに、電界効
果移動度を高めることができる。また、トランジスタ100kは、オン電流が大きいため
、平面における面積を小さくすることが可能である。この結果、駆動回路部の占有面積が
小さい、狭額縁化された表示装置を作製することが可能である。
【0116】
トランジスタ100zは、<半導体装置の構成1>に示すトランジスタ100hと同様
の構成とすることができるため、詳細な説明を省略する。
【0117】
本実施の形態に示す表示装置において、駆動回路部と画素部において、トランジスタの
構造が異なる。駆動回路部に含まれるトランジスタは、デュアルゲート構造である。即ち
、画素部と比較して、電界効果移動度の高いトランジスタを駆動回路部に有する。この結
果、高速動作が可能な駆動回路部を作製することができる。また、高速動作が可能なトラ
ンジスタを用いて駆動回路部を作製するとともに、寄生容量及び寄生抵抗の少ないトラン
ジスタを用いて画素部を作製することで、高精細で、倍速駆動が可能な表示装置を作製す
ることができる。
【0118】
<半導体装置の構成4>
次に、半導体装置の別の構成について、図9を用いて説明する。ここでは、駆動回路部
に形成されるトランジスタ100m、画素部に形成されるトランジスタ100n、それぞ
れにおいて、ゲート電極としての機能を有する導電膜119、120が積層構造であるこ
とを特徴とする。なお、図9(A)は、チャネル長方向のトランジスタ100m、100
nの断面図を示し、図9(B)は、チャネル幅方向のトランジスタ100m、100nの
断面図を示す。
【0119】
導電膜119、120は、本実施の形態の<半導体装置の構成2>に示す導電膜119
、120と同様の積層構造を有する。
【0120】
また、絶縁膜116、117は、本実施の形態の<半導体装置の構成2>に示す絶縁膜
116、117と同様の構造を有する。
【0121】
トランジスタ100m、100nに示すように、図9に示す形状の導電膜119、12
0、及び絶縁膜116、117を有することで、トランジスタのドレイン領域の電界緩和
が可能である。そのため、ドレイン領域の電界に起因したトランジスタのしきい値電圧の
変動などの劣化を低減することが可能である。
【0122】
<半導体装置の構成5>
次に、半導体装置の別の構成について、図10を用いて説明する。ここでは、駆動回路
部に形成されるトランジスタ111w、111x、及び画素部に形成されるトランジスタ
111yが多層膜を有することを特徴とする。なお、図10(A)は、チャネル長方向の
トランジスタ111w、100hの断面図を示し、図10(B)は、チャネル長方向のト
ランジスタ111x、111yの断面図を示す。
【0123】
図10(A)に示すトランジスタ111wに含まれる多層膜107は、チャネル領域1
07a、及び低抵抗領域107b、107cを有する。また、チャネル領域107aは、
絶縁膜104に接するチャネル領域142aと、チャネル領域142aに接するチャネル
領域105aと、チャネル領域105aに接するチャネル領域106aを有する。低抵抗
領域107bは、絶縁膜104に接する低抵抗領域142bと、低抵抗領域142bに接
する低抵抗領域105bと、低抵抗領域105bに接する低抵抗領域106bを有する。
低抵抗領域107cは、絶縁膜104に接する低抵抗領域142cと、低抵抗領域142
cに接する低抵抗領域105cと、低抵抗領域105cに接する低抵抗領域106cを有
する。なお、図10に図示しないが、チャネル領域142a、低抵抗領域142b、及び
低抵抗領域142cを有する酸化物半導体膜を酸化物半導体膜142という。すなわち、
多層膜107は、酸化物半導体膜142、酸化物半導体膜105、及び酸化物半導体膜1
06が順に積層されている。
【0124】
図10(B)に示すトランジスタ111xに含まれる多層膜107は、チャネル領域1
07a、及び低抵抗領域107b、107cを有する。また、チャネル領域107aは、
絶縁膜104に接するチャネル領域142aと、チャネル領域142aに接するチャネル
領域105aと、チャネル領域105aに接するチャネル領域106aと、チャネル領域
106aに接するチャネル領域143aとを有する。低抵抗領域107bは、絶縁膜10
4に接する低抵抗領域142bと、低抵抗領域142bに接する低抵抗領域105bと、
低抵抗領域105bに接する低抵抗領域106bと、低抵抗領域106bに接する低抵抗
領域143bとを有する。低抵抗領域107cは、絶縁膜104に接する低抵抗領域14
2cと、低抵抗領域142cに接する低抵抗領域105cと、低抵抗領域105cに接す
る低抵抗領域106cと、低抵抗領域106cに接する低抵抗領域143cとを有する。
なお、図10に図示しないが、チャネル領域143a、低抵抗領域143b、及び低抵抗
領域143cを有する酸化物半導体膜を酸化物半導体膜143という。すなわち、多層膜
107は、酸化物半導体膜142、酸化物半導体膜105、酸化物半導体膜106、及び
酸化物半導体膜143が順に積層されている。
【0125】
図10(B)に示すトランジスタ111yに含まれる多層膜110は、チャネル領域1
10a、及び低抵抗領域110b、110cを有する。また、チャネル領域110aは、
絶縁膜104に接するチャネル領域108aと、チャネル領域108aに接するチャネル
領域144aとを有する。低抵抗領域110bは、絶縁膜104に接する低抵抗領域10
8bと、低抵抗領域108bに接する低抵抗領域144bとを有する。低抵抗領域110
cは、絶縁膜104に接する低抵抗領域108cと、低抵抗領域108cに接する低抵抗
領域144cとを有する。なお、図10に図示しないが、チャネル領域144a、低抵抗
領域144b、及び低抵抗領域144cを有する酸化物半導体膜を酸化物半導体膜144
という。すなわち、多層膜110は、酸化物半導体膜108及び酸化物半導体膜144が
順に積層されている。
【0126】
酸化物半導体膜142、143、144は、酸化物半導体膜105、106、108と
比較して、エネルギーギャップが大きく、電子親和力が小さく、絶縁性が高いことが好ま
しい。また、酸化物半導体膜142、143、144は、酸化物半導体膜105、106
、108と比較して、インジウムの含有量が少ないことが好ましい。また、酸化物半導体
膜142、143、144は、外部からの不純物を遮蔽する機能を有することが好ましい
。このような酸化物半導体膜としては、M(Mは、Mg、Al、Ti、Ga、Y、Zr、
La、Ce、Nd、又はHf)に対するInの原子数比が小さい。酸化物半導体膜142
、143、144がIn-M-Zn酸化物(Mは、Mg、Al、Ti、Ga、Y、Zr、
La、Ce、Nd、又はHf)の場合、酸化物半導体膜142、143、144を成膜す
るために用いるターゲットにおいて、金属元素の原子数比をIn:M:Zn=x:y
:zとすると/yは、1/6以上1未満であることが好ましい。また、z
は、1/3以上6以下、さらには1以上6以下であることが好ましい。なお、z
を1以上6以下とすることで、酸化物半導体膜142、143、144としてCAA
C-OS膜が形成されやすくなる。ターゲットの金属元素の原子数比の代表例としては、
In:M:Zn=1:3:2、In:M:Zn=1:3:4、In:M:Zn=1:3:
6、In:M:Zn=1:3:8、In:M:Zn=1:4:4、In:M:Zn=1:
4:5、In:M:Zn=1:4:6、In:M:Zn=1:4:7、In:M:Zn=
1:4:8、In:M:Zn=1:5:5、In:M:Zn=1:5:6、In:M:Z
n=1:5:7、In:M:Zn=1:5:8、In:M:Zn=1:6:8等がある。
【0127】
図10(A)に示すトランジスタ111wは、酸化物半導体膜142は、酸化物半導体
膜105と比較して、エネルギーギャップが大きく、電子親和力が小さいため、チャネル
が酸化物半導体膜105に形成される。即ち、埋め込みチャネル構造となる。また、酸化
物半導体膜105を構成する金属元素を一種以上含んでいる酸化物半導体膜106及び酸
化物半導体膜142を有しているため、酸化物半導体膜105と酸化物半導体膜106と
の界面、及び酸化物半導体膜105と酸化物半導体膜142との界面に界面準位を形成し
にくくなる。よって、酸化物半導体膜106及び酸化物半導体膜142を設けることによ
り、トランジスタのしきい値電圧などの電気特性のばらつきや変動を低減することができ
る。
【0128】
また、図10(B)に示すトランジスタ111xも同様に、酸化物半導体膜142、1
43は、酸化物半導体膜105、106と比較して、エネルギーギャップが大きく、電子
親和力が小さいため、チャネルが酸化物半導体膜105に形成される。即ち、埋め込みチ
ャネル構造となる。また、酸化物半導体膜142、143を有する多層膜107を形成す
ることで、酸化物半導体膜142と酸化物半導体膜105との界面、酸化物半導体膜10
5と酸化物半導体膜106との界面、及び酸化物半導体膜106と酸化物半導体膜143
との界面に、界面準位を形成しにくくなる。この結果、トランジスタのしきい値電圧など
の電気特性のばらつきや変動を低減することができる。
【0129】
また、図10(B)に示すトランジスタ111yも同様に、酸化物半導体膜144を有
する多層膜110を形成することで、酸化物半導体膜144と酸化物半導体膜108との
界面に、界面準位を形成しにくくなる。この結果、トランジスタのしきい値電圧などの電
気特性のばらつきや変動を低減することができる。
【0130】
<バンド構造>
次に、本実施の形態に示すトランジスタの代表例として、図8に示すトランジスタ10
0kの任意断面におけるバンド構造について説明する。
【0131】
図28(A)に、図8(A)に示すトランジスタ100kのチャネル領域を含むO-P
断面におけるバンド構造を示す。なお、チャネル領域106aはチャネル領域105aよ
りもエネルギーギャップが少し大きいとする。また、絶縁膜104a、絶縁膜104bお
よび絶縁膜116は、チャネル領域106aおよびチャネル領域105aよりも十分にエ
ネルギーギャップが大きいとする。また、チャネル領域106a、チャネル領域105a
、絶縁膜104a、絶縁膜104bおよび絶縁膜116のフェルミ準位(Efと表記する
。)は、それぞれの真性フェルミ準位(Eiと表記する。)と同程度とする。また、導電
膜102および導電膜119の仕事関数は、該フェルミ準位と同程度とする。
【0132】
ゲート電圧をトランジスタのしきい値電圧以上としたとき、チャネル領域106aとチ
ャネル領域105aとの間の伝導帯下端のエネルギーの差により、電子はチャネル領域1
05aを優先的に流れる。即ち、チャネル領域105aに電子が埋め込まれると推定する
ことができる。なお、伝導帯下端のエネルギーをEcと表記し、価電子帯上端のエネルギ
ーをEvと表記する。
【0133】
したがって、本発明の一態様に係るトランジスタは、電子の埋め込みによって界面散乱
の影響が低減されている。そのため、本発明の一態様に係るトランジスタは、チャネル抵
抗が小さい。
【0134】
次に、図28(B)に、図8(A)に示すトランジスタ100kのソース領域またはド
レイン領域を含むQ-R断面におけるバンド構造を示す。なお、低抵抗領域105b、1
05c、106b、106cは、縮退状態とする。即ち、低抵抗領域105b、105c
、106b、106cにおいて、フェルミ準位Efは伝導帯下端のエネルギーEcと同程
度とする。また、低抵抗領域105bにおいて、伝導帯下端のエネルギーはチャネル領域
105aのフェルミ準位と同程度とする。また、低抵抗領域106bにおいて、伝導帯下
端のエネルギーはチャネル領域106aのフェルミ準位と同程度とする。低抵抗領域10
5cおよび低抵抗領域106cも同様である。
【0135】
このとき、導電膜134と、低抵抗領域106bと、はエネルギー障壁が十分小さいた
め、オーミック接触となる。また、低抵抗領域106bと、低抵抗領域105bと、はオ
ーミック接触となる。同様に、導電膜135と、低抵抗領域106cと、はエネルギー障
壁が十分小さいため、オーミック接触となる。また、低抵抗領域106cと、低抵抗領域
105cと、はオーミック接触となる。したがって、導電膜134および導電膜135と
、チャネル領域106aおよびチャネル領域105aと、の間で、電子の授受がスムーズ
に行われることがわかる。
【0136】
以上に示したように、本発明の一態様に係るトランジスタは、ソース電極およびドレイ
ン電極と、チャネル領域と、の間の電子の授受がスムーズに行われ、かつチャネル抵抗の
小さいトランジスタである。即ち、優れたスイッチング特性を有するトランジスタである
ことがわかる。
【0137】
<半導体装置の作製方法1>
次に、図1および図2に示すトランジスタ100g、100hの作製方法について、図
4乃至図6を用いて説明する。
【0138】
トランジスタ100g、100hを構成する膜(絶縁膜、酸化物半導体膜、導電膜等)
は、スパッタリング法、化学気相堆積(CVD)法、真空蒸着法、パルスレーザー堆積(
PLD)法を用いて形成することができる。あるいは、塗布法や印刷法で形成することが
できる。成膜方法としては、スパッタリング法、プラズマ化学気相堆積(PECVD)法
が代表的であるが、熱CVD法でもよい。熱CVD法の例として、MOCVD(有機金属
化学堆積)法やALD(原子層成膜)法を使ってもよい。
【0139】
熱CVD法は、チャンバー内を大気圧又は減圧下とし、原料ガスと酸化剤を同時にチャ
ンバー内に送り、基板近傍又は基板上で反応させて基板上に堆積させることで成膜を行う
。このように、熱CVD法は、プラズマを発生させない成膜方法であるため、プラズマダ
メージにより欠陥が生成されることが無いという利点を有する。
【0140】
また、ALD法は、チャンバー内を大気圧又は減圧下とし、反応のための原料ガスが順
次にチャンバーに導入され、そのガス導入の順序を繰り返すことで成膜を行う。例えば、
それぞれのスイッチングバルブ(高速バルブともよぶ。)を切り替えて2種類以上の原料
ガスを順番にチャンバーに供給し、複数種の原料ガスが混ざらないように第1の原料ガス
と同時又はその後に不活性ガス(アルゴン、或いは窒素など)などを導入し、第2の原料
ガスを導入する。なお、同時に不活性ガスを導入する場合には、不活性ガスはキャリアガ
スとなり、また、第2の原料ガスの導入時にも同時に不活性ガスを導入してもよい。また
、不活性ガスを導入する代わりに真空排気によって第1の原料ガスを排出した後、第2の
原料ガスを導入してもよい。第1の原料ガスが基板の表面に吸着して第1の単原子層を成
膜し、後から導入される第2の原料ガスと反応して、第2の単原子層が第1の単原子層上
に積層されて薄膜が形成される。
【0141】
このガス導入順序を制御しつつ所望の厚さになるまで複数回繰り返すことで、段差被覆
性に優れた薄膜を形成することができる。薄膜の厚さは、ガス導入順序を繰り返す回数に
よって調節することができるため、精密な膜厚調節が可能であり、微細なトランジスタを
作製する場合に適している。
【0142】
図4(A)に示すように、基板101上に絶縁膜104を形成する。次に、駆動回路部
の絶縁膜104上に酸化物半導体膜105を形成する。
【0143】
絶縁膜104は、スパッタリング法、CVD法、蒸着法、パルスレーザー堆積(PLD
)法、印刷法、塗布法等を適宜用いて形成することができる。また、基板101上に絶縁
膜を形成した後、該絶縁膜に酸素を添加して、絶縁膜104を形成することができる。絶
縁膜に添加する酸素としては、酸素ラジカル、酸素原子、酸素原子イオン、酸素分子イオ
ン等がある。また、添加方法としては、イオンドーピング法、イオン注入法、プラズマ処
理法等がある。また、絶縁膜上に酸素の脱離を抑制する膜を形成した後、該膜を介して絶
縁膜に酸素を添加してもよい。
【0144】
また、プラズマCVD装置の真空排気された処理室内に載置された基板を180℃以上
280℃以下、又は200℃以上240℃以下に保持し、処理室に原料ガスを導入して処
理室内における圧力を100Pa以上250Pa以下、又は100Pa以上200Pa以
下とし、処理室内に設けられる電極に0.17W/cm以上0.5W/cm以下、又
は0.25W/cm以上0.35W/cm以下の高周波電力を供給する条件により、
加熱処理により酸素を放出することが可能な酸化シリコン膜又は酸化窒化シリコン膜を絶
縁膜104として形成することができる。
【0145】
ここで、絶縁膜104a及び絶縁膜104bを積層して形成し、絶縁膜104としても
よい。例えば、絶縁膜104aとして厚さ100nmの窒化シリコン膜をプラズマCVD
法を用いて形成し、絶縁膜104bとして厚さ300nmの酸化窒化シリコン膜をプラズ
マCVD法を用いて形成する。
【0146】
酸化物半導体膜105の形成方法について以下に説明する。絶縁膜104上にスパッタ
リング法、塗布法、パルスレーザー蒸着法、レーザーアブレーション法、熱CVD法等に
より酸化物半導体膜を形成する。次に、酸化物半導体膜上にリソグラフィ工程によりマス
クを形成した後、該マスクを用いて酸化物半導体膜の一部をエッチングすることで、図4
(A)に示すように、酸化物半導体膜105を形成することができる。この後、マスクを
除去する。なお、酸化物半導体膜の一部をエッチングして酸化物半導体膜105を形成し
た後、加熱処理を行ってもよい。
【0147】
または、酸化物半導体膜105として印刷法を用いることで、素子分離された酸化物半
導体膜105を直接形成することができる。
【0148】
スパッタリング法で酸化物半導体膜を形成する場合、プラズマを発生させるための電源
装置は、RF電源装置、AC電源装置、DC電源装置等を適宜用いることができる。なお
、AC電源装置又はDC電源装置を用いることで、CAAC-OS膜を形成することが可
能である。また、RF電源装置を用いたスパッタリング法で酸化物半導体膜を形成するよ
りも、AC電源装置又はDC電源装置を用いたスパッタリング法で酸化物半導体膜を形成
した方が、膜厚の分布、膜組成の分布、又は結晶性の分布が均一となるため好ましい。
【0149】
スパッタリングガスは、希ガス(代表的にはアルゴン)、酸素、希ガス及び酸素の混合
ガスを適宜用いる。なお、希ガス及び酸素の混合ガスの場合、希ガスに対して酸素のガス
比を高めることが好ましい。
【0150】
また、金属元素の原子数比をIn:M:Zn=x:y:zとすると、x/y
は、1より大きく6以下であるIn-M-Zn酸化物(Mは、Mg、Al、Ti、Ga、
Y、Zr、La、Ce、Nd、又はHf)ターゲットを用いて酸化物半導体膜105を形
成する。
【0151】
なお、酸化物半導体膜を形成する際に、例えば、スパッタリング法を用いる場合、基板
温度を150℃以上750℃以下、又は150℃以上450℃以下、又は200℃以上3
50℃以下として、酸化物半導体膜を成膜することで、CAAC-OS膜を形成すること
ができる。また、基板温度を25℃以上150℃未満とすることで、微結晶酸化物半導体
膜を形成することができる。
【0152】
また、後述するCAAC-OS膜を成膜するために、以下の条件を適用することが好ま
しい。
【0153】
成膜時の不純物混入を抑制することで、不純物によって結晶状態が崩れることを抑制で
きる。例えば、成膜室内に存在する不純物濃度(水素、水、二酸化炭素及び窒素など)を
低減すればよい。また、成膜ガス中の不純物濃度を低減すればよい。具体的には、露点が
-80℃以下、又は-100℃以下である成膜ガスを用いる。
【0154】
また、成膜ガス中の酸素割合を高め、電力を最適化することで成膜時のプラズマダメー
ジを軽減すると好ましい。成膜ガス中の酸素割合は、30体積%以上、又は100体積%
とする。
【0155】
また、酸化物半導体膜を形成した後、加熱処理を行い、酸化物半導体膜の脱水素化又は
脱水化をしてもよい。加熱処理の温度は、代表的には、150℃以上基板歪み点未満、又
は250℃以上450℃以下、又は300℃以上450℃以下とする。
【0156】
加熱処理は、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン、クリプトン等の希ガス、又は窒
素を含む不活性ガス雰囲気で行う。又は、不活性ガス雰囲気で加熱した後、酸素雰囲気で
加熱してもよい。なお、上記不活性雰囲気及び酸素雰囲気に水素、水などが含まれないこ
とが好ましい。処理時間は3分以上24時間以下とする。
【0157】
該加熱処理は、電気炉、RTA装置等を用いることができる。RTA装置を用いること
で、短時間に限り、基板の歪み点以上の温度で熱処理を行うことができる。そのため加熱
処理時間を短縮することができる。
【0158】
酸化物半導体膜を加熱しながら成膜することで、さらには酸化物半導体膜を形成した後
、加熱処理を行うことで、酸化物半導体膜において、二次イオン質量分析法により得られ
る水素濃度を5×1019atoms/cm以下、又は1×1019atoms/cm
以下、5×1018atoms/cm以下、又は1×1018atoms/cm
下、又は5×1017atoms/cm以下、又は1×1016atoms/cm
下とすることができる。
【0159】
ALDを利用する成膜装置により酸化物半導体膜、例えばInGaZnO(X>0)
膜を成膜する場合には、In(CHガスとOガスを順次繰り返し導入してInO
層を形成し、その後、Ga(CHガスとOガスを同時に導入してGaO層を形
成し、更にその後Zn(CHとOガスを同時に導入してZnO層を形成する。な
お、これらの層の順番はこの例に限らない。また、これらのガスを混ぜてInGaO
やInZnO層、GaInO層、ZnInO層、GaZnO層などの混合化合物層を形
成してもよい。なお、Oガスに変えてAr等の不活性ガスでバブリングしたHOガス
を用いてもよいが、Hを含まないOガスを用いる方が好ましい。また、In(CH
ガスにかえて、In(Cガスを用いてもよい。また、Ga(CHガス
にかえて、Ga(Cガスを用いてもよい。また、Zn(CHガスにかえ
てZn(Cガスを用いてもよい。
【0160】
ここでは、スパッタリング法により、厚さ35nmの酸化物半導体膜を形成する。次に
、当該酸化物半導体膜上にマスクを形成し、酸化物半導体膜の一部を選択的にエッチング
することで、酸化物半導体膜105を形成する。なお、酸化物半導体膜105として、I
n:Ga:Zn=3:1:2のIn-Ga-Zn酸化物膜を形成する。
【0161】
次に、図4(B)に示すように、駆動回路部において酸化物半導体膜105上に酸化物
半導体膜106を形成し、画素部に酸化物半導体膜108を形成する。即ち、酸化物半導
体膜105及び酸化物半導体膜106が順に積層した多層膜107を形成する。
【0162】
なお、当該工程において、酸化物半導体膜105の上面及び側面を覆うように酸化物半
導体膜106を形成することで、後のソース電極及びドレイン電極としての機能を有する
導電膜の形成工程において、酸化物半導体膜105をエッチングしない。この結果、トラ
ンジスタのチャネル幅方向における酸化物半導体膜105の長さの変動を低減できるため
好ましい。
【0163】
ここでは、スパッタリング法により、厚さ20nmの酸化物半導体膜を形成する。次に
、当該酸化物半導体膜上にマスクを形成し、酸化物半導体膜の一部を選択的にエッチング
することで、酸化物半導体膜106、108を形成する。なお、酸化物半導体膜106、
108として、In:Ga:Zn=1:1:1.2のIn-Ga-Zn酸化物膜を形成す
る。
【0164】
次に、加熱処理を行い、絶縁膜104に含まれる酸素を酸化物半導体膜に移動させる。
なお、当該加熱処理は、酸化物半導体膜106、108となる酸化物半導体膜を形成した
後であって、該酸化物半導体膜をエッチングして酸化物半導体膜106、108を形成す
る前に行ってもよい。
【0165】
なお、加熱処理は、350℃より高く650℃以下、又は450℃以上600℃以下で
行うことで、後述するCAAC化率が、60%以上100%未満、又は80%以上100
%未満、又は90%以上100%未満、又は95%以上98%以下である酸化物半導体膜
を得ることができる。また、水素、水等の含有量が低減された酸化物半導体膜を得ること
が可能である。すなわち、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い酸化物半導体膜を形成
することができる。
【0166】
次に、図4(C)に示すように、絶縁膜104、多層膜107及び酸化物半導体膜10
8上に、絶縁膜115を形成する。次に、絶縁膜115上に導電膜119、120を形成
する。
【0167】
導電膜119、120として例えば低抵抗材料を用いる場合、酸化物半導体膜に低抵抗
材料が混入すると、トランジスタの電気特性の不良が生じてしまう。本実施の形態では、
導電膜119、120を形成する前に絶縁膜115を形成することで、酸化物半導体膜1
05、108のチャネル領域が導電膜119、120に接しないため、トランジスタの電
気特性、代表的にはしきい値電圧の変動量を抑えることができる。
【0168】
絶縁膜115として酸化シリコン膜又は酸化窒化シリコン膜をCVD法を用いて形成す
ることができる。この場合、原料ガスとしては、シリコンを含む堆積性気体及び酸化性気
体を用いることが好ましい。シリコンを含む堆積性気体の代表例としては、シラン、ジシ
ラン、トリシラン、フッ化シラン等がある。酸化性気体としては、酸素、オゾン、一酸化
二窒素、二酸化窒素等がある。
【0169】
また、絶縁膜115として、堆積性気体に対する酸化性気体を20倍より大きく100
倍未満、又は40倍以上80倍以下とし、処理室内の圧力を100Pa未満、又は50P
a以下とするCVD法を用いることで、欠陥量の少ない酸化窒化シリコン膜を形成するこ
とができる。
【0170】
また、プラズマCVD装置の真空排気された処理室内に載置された基板を280℃以上
400℃以下に保持し、処理室に原料ガスを導入して処理室内における圧力を20Pa以
上250Pa以下、さらに好ましくは100Pa以上250Pa以下とし、処理室内に設
けられる電極に高周波電力を供給する条件により、絶縁膜115として、緻密である酸化
シリコン膜又は酸化窒化シリコン膜を形成することができる。
【0171】
また、絶縁膜115を、マイクロ波を用いたプラズマCVD法を用いて形成することが
できる。マイクロ波とは300MHzから300GHzの周波数域を指す。マイクロ波は
電子温度が低く、電子エネルギーが小さい。また、供給された電力において、電子の加速
に用いられる割合が少なく、より多くの分子の解離及び電離に用いられることが可能であ
り、密度の高いプラズマ(高密度プラズマ)を励起することができる。このため、被成膜
面及び堆積物へのプラズマダメージが少なく、欠陥の少ない絶縁膜115を形成すること
ができる。
【0172】
また、絶縁膜115を、有機シランガスを用いたCVD法を用いて形成することができ
る。有機シランガスとしては、珪酸エチル(TEOS:化学式Si(OC)、
テトラメチルシラン(TMS:化学式Si(CH)、テトラメチルシクロテトラシ
ロキサン(TMCTS)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、ヘキサ
メチルジシラザン(HMDS)、トリエトキシシラン(SiH(OC)、トリ
スジメチルアミノシラン(SiH(N(CH)などのシリコン含有化合物を用
いることができる。有機シランガスを用いたCVD法を用いることで、被覆性の高い絶縁
膜115を形成することができる。
【0173】
また、絶縁膜115として酸化ガリウム膜を形成する場合、MOCVD法を用いて形成
することができる。
【0174】
また、絶縁膜115として、MOCVD法やALD法などの熱CVD法を用いて、酸化
ハフニウム膜を形成する場合には、溶媒とハフニウム前駆体化合物を含む液体(ハフニウ
ムアルコキシド溶液、代表的にはテトラキスジメチルアミドハフニウム(TDMAH))
を気化させた原料ガスと、酸化剤としてオゾン(O)の2種類のガスを用いる。なお、
テトラキスジメチルアミドハフニウムの化学式はHf[N(CHである。また
、他の材料液としては、テトラキス(エチルメチルアミド)ハフニウムなどがある。
【0175】
また、絶縁膜115として、MOCVD法やALD法などの熱CVD法を用いて、酸化
アルミニウム膜を形成する場合には、溶媒とアルミニウム前駆体化合物を含む液体(トリ
メチルアルミニウム(TMA)など)を気化させた原料ガスと、酸化剤としてHOの2
種類のガスを用いる。なお、トリメチルアルミニウムの化学式はAl(CHである
。また、他の材料液としては、トリス(ジメチルアミド)アルミニウム、トリイソブチル
アルミニウム、アルミニウムトリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタン
ジオナート)などがある。なお、ALD法で形成することで、被覆性が高く、膜厚の薄い
絶縁膜115を形成することが可能である。
【0176】
また、絶縁膜115として、MOCVD法やALD法などの熱CVD法を用いて、酸化
シリコン膜を形成する場合には、ヘキサクロロジシランを被成膜面に吸着させ、吸着物に
含まれる塩素を除去し、酸化性ガス(O、一酸化二窒素)のラジカルを供給して吸着物
と反応させる。
【0177】
ここでは、絶縁膜115として、プラズマCVD法により厚さ100nmの酸化窒化シ
リコン膜を形成する。
【0178】
導電膜119、120は、スパッタリング法、真空蒸着法、パルスレーザー堆積(PL
D)法、熱CVD法等を用いて導電膜を形成し、該導電膜上にリソグラフィ工程によりマ
スクを形成した後エッチング処理を行い、形成する。
【0179】
また、ALDを利用する成膜装置により導電膜としてタングステン膜を成膜することが
できる。この場合には、WFガスとBガスを順次繰り返し導入して初期タングス
テン膜を形成し、その後、WFガスとHガスを同時に導入してタングステン膜を形成
する。なお、Bガスに代えてSiHガスを用いてもよい。
【0180】
また、ここでは、導電膜上にリソグラフィ工程によりマスク122、123を形成した
後、該導電膜をエッチングして、導電膜119、120を形成する。
【0181】
なお、導電膜119、120は、上記形成方法の代わりに、電解メッキ法、印刷法、イ
ンクジェット法等で形成してもよい。
【0182】
次に、図5(A)に示すように、マスク122、123を残したまま、絶縁膜115を
エッチングして、絶縁膜116、117を形成する。
【0183】
次に、図5(B)に示すように、マスク122、123を残したまま、多層膜107及
び酸化物半導体膜108に不純物元素125を添加する。この結果、多層膜107及び酸
化物半導体膜108においてマスク122、123に覆われていない領域に不純物元素が
添加される。なお、不純物元素125の添加により、多層膜107及び酸化物半導体膜1
08には酸素欠損が形成される。
【0184】
なお、マスク122、123を除去した後、不純物元素125を酸化物半導体膜に添加
することが可能な厚さの膜、代表的には窒化物絶縁膜、酸化物絶縁膜等を形成し、不純物
元素125を酸化物半導体膜に添加してもよい。なお、不純物元素125を酸化物半導体
膜に添加することが可能な厚さは、0.1nm以上50nm以下、または1nm以上10
nm以下である。
【0185】
不純物元素125の添加方法としては、イオンドーピング法、イオン注入法、プラズマ
処理法等がある。プラズマ処理法の場合、添加する不純物元素を含むガス雰囲気にてプラ
ズマを発生させて、プラズマ処理を行うことによって、不純物元素を添加することができ
る。上記プラズマを発生させる装置としては、ドライエッチング装置やプラズマCVD装
置、高密度プラズマCVD装置等を用いることができる。また、プラズマ処理を行う場合
は、平行平板電極のカソード側に基板を設置し、基板101側にバイアスが印加されるよ
うに、RF電力を供給すればよい。該RF電力としては、例えば、電力密度を0.1W/
cm以上2W/cm以下とすればよい。この結果、多層膜107及び酸化物半導体膜
108へ不純物元素の添加量を増加させることが可能であり、多層膜107及び酸化物半
導体膜108により多くの酸素欠損を形成できる。
【0186】
なお、不純物元素125の原料ガスとして、B、PH、CH、N、NH
、AlH、AlCl、SiH、Si、F、HF、H及び希ガスの一以上
を用いることができる。又は、希ガスで希釈されたB、PH、N、NH、A
lH、AlCl、F、HF及びHの一以上を用いることができる。希ガスで希釈
されたB、PH、N、NH、AlH、AlCl、F、HF及びH
一以上を用いて不純物元素125を多層膜107及び酸化物半導体膜108に添加するこ
とで、希ガスと、水素、ホウ素、炭素、窒素、フッ素、アルミニウム、シリコン、リン及
び塩素の一以上とを同時に多層膜107及び酸化物半導体膜108に添加することができ
る。
【0187】
又は、希ガスを多層膜107及び酸化物半導体膜108に添加した後、B、PH
、CH、N、NH、AlH、AlCl、SiH、Si、F、HF
及びHの一以上を多層膜107及び酸化物半導体膜108に添加してもよい。
【0188】
又は、B、PH、CH、N、NH、AlH、AlCl、SiH
Si、F、HF及びHの一以上を多層膜107及び酸化物半導体膜108に添
加した後、希ガスを多層膜107及び酸化物半導体膜108に添加してもよい。
【0189】
不純物元素125の添加は、加速電圧、ドーズ量などの注入条件を適宜設定して制御す
ればよい。例えば、イオン注入法でアルゴンの添加を行う場合、加速電圧10kV、ドー
ズ量は1×1013ions/cm以上1×1016ions/cm以下とすればよ
く、例えば、1×1014ions/cmとすればよい。また、イオン注入法でリンイ
オンの添加を行う場合、加速電圧30kV、ドーズ量は1×1013ions/cm
上5×1016ions/cm以下とすればよく、例えば、1×1015ions/c
とすればよい。
【0190】
この結果、多層膜107に低抵抗領域107b、107cを形成することができる。ま
た、酸化物半導体膜108に低抵抗領域108b、108cを形成することができる。こ
ののち、マスク122、123を取り除く。
【0191】
なお、導電膜119、120が露出した状態で不純物元素125を添加すると、導電膜
119、120の一部が剥離し、絶縁膜116、117の側面に付着してしまう。この結
果、トランジスタのリーク電流が増大してしまう。このため、マスク122、123で導
電膜119、120を覆った状態で、多層膜107及び酸化物半導体膜108に不純物元
素125を添加することで、導電膜119、120の一部が絶縁膜116、117の側面
に付着することを防ぐことができる。
【0192】
こののち、加熱処理を行い、不純物元素125が添加された領域の導電性をさらに高め
てもよい。加熱処理の温度は、代表的には、150℃以上基板歪み点未満、又は250℃
以上450℃以下、又は300℃以上450℃以下とする。
【0193】
次に、図5(C)に示すように、絶縁膜104、多層膜107及び酸化物半導体膜10
8、絶縁膜116、117、導電膜119、120上に絶縁膜126を形成する。
【0194】
絶縁膜126の形成方法としては、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法、パルス
レーザー堆積(PLD)法等がある。なお、シラン及びアンモニア、又はシラン及び窒素
を原料ガスに用いたプラズマCVD法により、水素を含む窒化シリコン膜を形成すること
ができる。また、プラズマCVD法を用いることで、多層膜107及び酸化物半導体膜1
08にダメージを与えることが可能であり、多層膜107及び酸化物半導体膜108に酸
素欠損を形成することができる。
【0195】
絶縁膜126には水素が含まれているため、多層膜107及び酸化物半導体膜108に
おいて、不純物元素が添加された領域と絶縁膜126とが接することで絶縁膜126に含
まれる水素が、多層膜107及び酸化物半導体膜108であって、且つ不純物元素が添加
された領域に移動する。不純物元素が添加された領域には酸素欠損が含まれるため、多層
膜107及び酸化物半導体膜108に低抵抗領域を形成することができる。
【0196】
又は、絶縁膜126の代わりに、アルミニウム膜若しくは酸化アルミニウム膜を形成し
た後、加熱処理を行うことで、多層膜107及び酸化物半導体膜108に含まれる酸素が
アルミニウム膜若しくは酸化アルミニウム膜と反応し、絶縁膜126として酸化アルミニ
ウム膜が形成されるとともに、多層膜107及び酸化物半導体膜108の低抵抗領域10
7b、107c、108b、108cにおいて、酸素欠損が形成される。この結果、さら
に低抵抗領域107b、107c、108b、108cの導電性を高めることが可能であ
る。
【0197】
ここでは、絶縁膜126として厚さ100nmの窒化シリコン膜をプラズマCVD法を
用いて形成する。
【0198】
こののち、加熱処理を行い、低抵抗領域107b、107c、108b、108cの導
電性をさらに高めてもよい。加熱処理の温度は、代表的には、150℃以上基板歪み点未
満、又は250℃以上450℃以下、又は300℃以上450℃以下とする。
【0199】
次に、図6(A)に示すように、絶縁膜127を形成してもよい。絶縁膜127を形成
することで、のちに形成される導電膜134、135、136、137と、導電膜119
、120との間における寄生容量を低減することができる。
【0200】
次に、絶縁膜126、127に開口部128、129、130、131を形成し、低抵
抗領域の一部を露出させた後、導電膜134、135、136、137を形成する。また
、窒化物絶縁膜162を形成することが好ましい(図6(B)参照。)。
【0201】
導電膜134、135、136、137は、導電膜119、120と同様の形成方法を
適宜用いることができる。窒化物絶縁膜162は、スパッタリング法、CVD法等を適宜
用いて形成することができる。
【0202】
以上の工程により、トランジスタ100g、100hを作製することができる。
【0203】
<半導体装置の作製方法2>
次に、図8に示すトランジスタ100k、100zの作製方法について、説明する。
【0204】
駆動回路部の基板101上に絶縁膜161を形成し、絶縁膜161上に導電膜102を
形成する。導電膜102は、導電膜119、120の作製方法を適宜用いることができる
【0205】
次に、絶縁膜161及び導電膜102上に、絶縁膜104a及び絶縁膜104bを積層
して、絶縁膜104を形成する。
【0206】
こののち、図4(A)及び図4(B)の工程により、多層膜107及び酸化物半導体膜
108を形成する。
【0207】
次に、図4(C)に示すように、絶縁膜115を形成した後、絶縁膜115の一部をエ
ッチングして、図7(A)に示す開口部113を形成する。
【0208】
次に、図4(C)に示す導電膜119、120を形成した後、図5、及び図6と同様の
工程により、トランジスタ100k、100zを作製することができる。
【0209】
本実施の形態に示すトランジスタは、ソース電極及びドレイン電極としての機能を有す
る導電膜と、ゲート電極としての機能を有する導電膜とが重ならないため、寄生容量を低
減することが可能であり、オン電流が大きい。また、本実施の形態に示すトランジスタは
、安定して低抵抗領域を形成することが可能なため、従来と比べ、オン電流は向上し、ト
ランジスタの電気特性のバラツキが低減する。
【0210】
本実施の形態に示す構成および方法などは、他の実施の形態に示す構成および方法など
と適宜組み合わせて用いることができる。
【0211】
(実施の形態2)
本実施の形態では、半導体装置及び半導体装置の作製方法の一形態を、図11乃至図2
7を用いて説明する。
【0212】
<半導体装置の構成1>
図11乃至図13に、半導体装置に含まれるトランジスタの一例として、トップゲート
構造のトランジスタを示す。ここでは、半導体装置の一例として表示装置を用いて説明す
る。また、表示装置の駆動回路部及び画素部それぞれに設けられるトランジスタの構造を
説明する。
【0213】
図11に駆動回路部に設けられるトランジスタ100s及び画素部に設けられるトラン
ジスタ100t、100uの上面図を示し、図12及び図13にトランジスタ100s及
びトランジスタ100t、100uの断面図を示す。図11(A)はトランジスタ100
sの上面図であり、図11(B)はトランジスタ100tの上面図であり、図11(C)
はトランジスタ100uの上面図である。図12は、図11(A)の一点鎖線A-B間の
断面図、図11(B)の一点鎖線C-D間の断面図、及び図11(C)の一点鎖線E-F
間の断面図である。図13は、図11(A)の一点鎖線G-H間の断面図、及び図11
B)の一点鎖線I-J間の断面図、及び図11(C)の一点鎖線K-L間の断面図である
【0214】
図12及び図13に示すトランジスタ100sは、基板101上の絶縁膜104と、絶
縁膜104上の多層膜107と、多層膜107に接する絶縁膜116と、絶縁膜116を
介して多層膜107と重なる導電膜119とを有する。トランジスタ100sは、実施の
形態1に示すトランジスタ100gと同じ構造であるため、詳細な説明は、実施の形態1
のトランジスタ100gの説明を援用することができる。
【0215】
トランジスタ100tは、基板101上に形成された絶縁膜104上の酸化物半導体膜
108と、酸化物半導体膜108に接する絶縁膜117と、絶縁膜117を介して酸化物
半導体膜108と重なる導電膜120とを有する。トランジスタ100tは、実施の形態
1に示すトランジスタ100hと同じ構造であるため、詳細な説明は、実施の形態1のト
ランジスタ100hの説明を援用することができる。
【0216】
トランジスタ100uは、基板101上に形成された絶縁膜104上の多層膜147と
、多層膜147に接する絶縁膜118と、絶縁膜118を介して多層膜147と重なる導
電膜121とを有する。トランジスタ100uは、トランジスタ100sと同じ構造であ
る。
【0217】
導電膜121は、ゲート電極としての機能を有する。また、絶縁膜118は、ゲート絶
縁膜としての機能を有する。
【0218】
多層膜147は、導電膜121と重なるチャネル領域147aと、チャネル領域147
aを挟む低抵抗領域147b、147cとを有する。また、チャネル領域147aは、絶
縁膜104に接するチャネル領域145aと、チャネル領域145aに接するチャネル領
域146aを有する。低抵抗領域147bは、絶縁膜104に接する低抵抗領域145b
と、低抵抗領域145bに接する低抵抗領域146bを有する。低抵抗領域147cは、
絶縁膜104に接する低抵抗領域145cと、低抵抗領域145cに接する低抵抗領域1
46cを有する。なお、図12には図示しないが、チャネル領域145a、低抵抗領域1
45b、及び低抵抗領域145cを有する酸化物半導体膜を酸化物半導体膜145といい
、チャネル領域146a、低抵抗領域146b、及び低抵抗領域146cを有する酸化物
半導体膜を酸化物半導体膜146という。すなわち、多層膜147は、酸化物半導体膜1
45及び酸化物半導体膜146が積層されている。
【0219】
なお、上面形状において、酸化物半導体膜145の端部の外側に酸化物半導体膜146
の端部が位置する。すなわち、酸化物半導体膜146は、酸化物半導体膜145の上面及
び側面を覆う。
【0220】
また、トランジスタ100uにおいて、低抵抗領域147b、147cに接する絶縁膜
126が設けられる。また、絶縁膜126上に絶縁膜127を有してもよい。また、絶縁
膜126及び絶縁膜127の開口部132、133において、多層膜147の低抵抗領域
147b、147cに接する導電膜138、139が設けられる。
【0221】
多層膜147において、導電膜121と重ならない領域には、酸素欠損を形成する元素
を有する。酸素欠損を形成する元素としては、実施の形態1に示す不純物元素を用いるこ
とができる。
【0222】
また、絶縁膜126は水素を含む膜であり、代表的には窒化物絶縁膜がある。窒化物絶
縁膜の例としては、窒化シリコン膜、窒化アルミニウム膜等がある。絶縁膜126が多層
膜147に接することで、絶縁膜126に含まれる水素が多層膜147に拡散する。この
結果、多層膜147であって、絶縁膜126と接する領域においては、水素が多く含まれ
る。
【0223】
不純物元素が酸化物半導体に添加されると、酸化物半導体中の金属元素及び酸素の結合
が切断され、酸素欠損が形成される。不純物元素の添加により酸素欠損が形成された酸化
物半導体に水素を添加すると、酸素欠損サイトに水素が入り、伝導帯近傍にドナー準位が
形成され、酸化物半導体は導電率が高くなる。その結果、酸化物導電体を形成することが
できる。このため、酸化物導電体は透光性を有する。
【0224】
酸化物導電体は、縮退半導体であり、伝導帯端とフェルミ準位とが一致または略一致し
ていると推定される。このため、酸化物導電体膜とソース電極及びドレイン電極としての
機能を有する導電膜との接触はオーミック接触であり、酸化物導電体膜とソース電極及び
ドレイン電極としての機能を有する導電膜との接触抵抗を低減できる。
【0225】
即ち、低抵抗領域147b、147cは、ソース領域及びドレイン領域としての機能を
有する。
【0226】
また、導電膜138、139がタングステン、チタン、アルミニウム、銅、モリブデン
、クロム、又はタンタル単体若しくは合金等の酸素と結合しやすい導電材料を用いて形成
される場合、酸化物半導体膜に含まれる酸素と導電膜138、139に含まれる導電材料
とが結合し、多層膜147において、酸素欠損が形成される。また、多層膜147に導電
膜138、139を形成する導電材料の構成元素の一部が混入する場合もある。これらの
結果、導電膜138、139と接する低抵抗領域147b、147cは、導電性が高まり
、ソース領域及びドレイン領域としての機能を有する。
【0227】
不純物元素が希ガス元素であって、多層膜147がスパッタリング法で形成される場合
、低抵抗領域147b、147cはそれぞれ希ガス元素を含み、且つチャネル領域147
aと比較して、低抵抗領域147b、147cの方が希ガス元素の濃度が高い。これは、
多層膜147がスパッタリング法で形成される場合、スパッタリングガスとして希ガスを
用いるため、多層膜147に希ガスが含まれること、並びに低抵抗領域147b、147
cにおいて、酸素欠損を形成するために、意図的に希ガスが添加されることが原因である
。なお低抵抗領域147b、147cにおいて、チャネル領域147aと異なる希ガス元
素が添加されていてもよい。
【0228】
また、低抵抗領域147b、147cは絶縁膜126と接するため、チャネル領域14
7aと比較して、水素の濃度が高い。
【0229】
低抵抗領域147b、147cにおいて、二次イオン質量分析法により得られる水素の
濃度は、8×1019atoms/cm以上、又は1×1020atoms/cm
上、又は5×1020atoms/cm以上とすることができる。なお、チャネル領域
147aの二次イオン質量分析法により得られる水素濃度は、5×1019atoms/
cm以下、又は1×1019atoms/cm以下、又は5×1018atoms/
cm以下、又は1×1018atoms/cm以下、又は5×1017atoms/
cm以下、又は1×1016atoms/cm以下とすることができる。
【0230】
チャネル領域147aと比較して、低抵抗領域、147b、147cは、水素濃度が高
く、且つ希ガス元素の添加による酸素欠損量が多い。このため、導電性が高くなり、ソー
ス領域及びドレイン領域としての機能を有する。代表的には、低抵抗領域147b、14
7cの抵抗率として、1×10-3Ωcm以上1×10Ωcm未満、又は1×10-3
Ωcm以上1×10-1Ωcm未満とすることができる。
【0231】
なお、低抵抗領域147b、147cにおいて、水素の量は酸素欠損の量と同じ又は少
ないと、水素が酸素欠損に捕獲されやすく、チャネル領域147aに拡散しにくい。この
結果、ノーマリーオフ特性のトランジスタを作製することができる。
【0232】
また、低抵抗領域147b、147cにおいて、水素の量と比較して酸素欠損の量が多
い場合、水素の量を制御することで、低抵抗領域147b、147cのキャリア密度を制
御することができる。又は、低抵抗領域147b、147cにおいて、酸素欠損の量と比
較して水素の量が多い場合、酸素欠損の量を制御することで、低抵抗領域147b、14
7cのキャリア密度を制御することができる。なお、低抵抗領域147b、147cのキ
ャリア密度を5×1018個/cm以上、又は1×1019個/cm以上、又は1×
1020個/cm以上とすることで、チャネル領域とソース電極及びドレイン電極とし
ての機能を有する導電膜138、139との間の抵抗が小さく、オン電流の大きいトラン
ジスタを作製することが可能である。
【0233】
本実施の形態に示すトランジスタ100s、100t、100uは、チャネル領域と、
ソース電極及びドレイン電極としての機能を有する導電膜134、135、136、13
7、138、139との間に、低抵抗領域107b、107c、108b、108c、1
47b、147cを有するため寄生抵抗が小さい。
【0234】
また、トランジスタ100sにおいて、導電膜119と、導電膜134、135とが重
ならない。このため、導電膜119と、導電膜134、135との間の寄生容量を低減す
ることが可能である。また、トランジスタ100tにおいて、導電膜120と、導電膜1
36、137とが重ならない。このため、導電膜120と、導電膜136、137との間
の寄生容量を低減することが可能である。また、トランジスタ100uにおいて、導電膜
121と、導電膜138、139とが重ならない。このため、導電膜121と、導電膜1
38、139との間の寄生容量を低減することが可能である。この結果、基板101とし
て大面積基板を用いた場合、導電膜119、120、121、134、135、136、
137、138、139における信号遅延を低減することが可能である。
【0235】
このため、トランジスタ100s、100t、100uは、オン電流が大きく、電界効
果移動度が高い。
【0236】
また、トランジスタ100sにおいて、導電膜119をマスクとして、不純物元素が多
層膜107に添加される。また、トランジスタ100tにおいて、導電膜120をマスク
として、不純物元素が酸化物半導体膜108に添加される。トランジスタ100uにおい
て、導電膜121をマスクとして、不純物元素が多層膜147に添加される。すなわち、
セルフアラインで低抵抗領域を形成することができる。
【0237】
駆動回路部に含まれるトランジスタ100sはオン電流が大きく電界効果移動度が高い
。このため、駆動回路部の占有面積の小さい表示装置を作製することができる。
【0238】
また、電界効果移動度が高いトランジスタを用いることで、駆動回路部の一例である信
号線駆動回路にデマルチプレクサ回路を形成することが可能である。デマルチプレクサ回
路は、一つの入力信号を複数の出力のいずれかへ分配する回路であるため、入力信号用の
入力端子数を削減することが可能である。例えば、一画素が、赤色用サブ画素、緑色用サ
ブ画素、及び青色用サブ画素を有し、且つ各画素にデマルチプレクサ回路を設けることで
、各サブ画素に入力する入力信号をデマルチプレクサ回路で分配することが可能であるた
め、入力端子を1/3に削減することが可能である。
【0239】
また、オン電流の大きいトランジスタ100t、100uを画素部に設けることで、大
型の表示装置や高精細な表示装置において配線数が増大しても、各配線における信号遅延
を低減することが可能であり、表示むらを抑えることが可能である。また、発光装置を構
成するEL素子の輝度は、EL素子の駆動を制御するトランジスタに流れる電流に比例す
る。このため、EL素子を駆動するトランジスタとして、トランジスタ100uのように
、オン電流が大きく電界効果移動度が高いトランジスタを用いることで、EL素子の輝度
を高めることが可能である。また、トランジスタ100uは、オン電流が大きいため、平
面におけるトランジスタの占有面積を小さくすることが可能であるため、画素において、
トランジスタの配置の自由度が高まる。この結果、高解像度の表示装置を作製することが
可能である。
【0240】
以上のことから、高速動作が可能なトランジスタを用いて駆動回路部を作製するととも
に、寄生容量及び寄生抵抗の少ないトランジスタを用いて画素部を作製することで、高精
細で、倍速駆動が可能な表示装置を作製することができる。
【0241】
以下に、図12に示す構成の詳細について説明する。なお、ここでは、主にトランジス
タ100sの構成の詳細について説明する。
【0242】
トランジスタ100sにおいて、多層膜107に含まれる酸化物半導体膜105と酸化
物半導体膜106は、組成が異なる。また、トランジスタ100uにおいて、多層膜14
7に含まれる酸化物半導体膜145と酸化物半導体膜146は、組成が異なる。一方、多
層膜107に含まれる酸化物半導体膜105と多層膜147に含まれる酸化物半導体膜1
45は組成が同じである。また、多層膜107に含まれる酸化物半導体膜106と、酸化
物半導体膜108と、多層膜147に含まれる酸化物半導体膜146とは組成が同じであ
る。すなわち、酸化物半導体膜105及び酸化物半導体膜145、並びに酸化物半導体膜
106、酸化物半導体膜108及び酸化物半導体膜146は、それぞれ同時に形成される
【0243】
トランジスタ100uは、酸化物半導体膜145にチャネルが形成される。このため、
酸化物半導体膜145は、酸化物半導体膜146より膜厚が大きい。
【0244】
酸化物半導体膜145の膜厚は、酸化物半導体膜105の膜厚の範囲において、所望の
厚さにすることができる。
【0245】
酸化物半導体膜145、146は、酸化物半導体膜105、106、108に示す材料
を適宜用いることができる。酸化物半導体膜146より、酸化物半導体膜145のインジ
ウムの含有量が多いことで、トランジスタ100uは、埋め込みチャネルを形成すること
が可能である。このため、トランジスタ100uのしきい値電圧の変動を低減することが
可能であり、またチャネル抵抗を低減できる。
【0246】
具体的には、酸化物半導体膜145は、酸化物半導体膜105に示す材料を適宜用いる
ことができる。
【0247】
また、具体的には、酸化物半導体膜146は、酸化物半導体膜106、108に示す材
料を適宜用いることができる。
【0248】
トランジスタ100uは、M(Mは、Mg、Al、Ti、Ga、Y、Zr、La、Ce
、Nd、又はHf)に対するInの原子数比が大きい酸化物半導体膜145にチャネルが
形成されるため、電界効果移動度が高い。代表的には、電界効果移動度が10cm/V
sより大きく60cm/Vs未満、好ましくは15cm/Vs以上50cm/Vs
未満のトランジスタである。しかしながら、光が照射されるとオフ状態における電流が増
大してしまう。このため、トランジスタ100uと重なるように遮光膜を設けることで、
電界効果移動度が高く、且つオフ状態における電流の低いトランジスタとなる。この結果
、高速動作が可能なトランジスタを作製することができる。
【0249】
また、多層膜147において、第14族元素の一つであるシリコンや炭素、アルカリ金
属又はアルカリ土類金属、窒素、不純物元素等の濃度を低減することが好ましい。代表的
には、多層膜107における、第14族元素の一つであるシリコンや炭素、アルカリ金属
又はアルカリ土類金属、窒素、不純物元素等の濃度と同様の濃度とすることで、トランジ
スタ100uは、しきい値電圧がプラスとなる電気特性(ノーマリーオフ特性ともいう。
)を有する。
【0250】
多層膜147であって、特にチャネル領域147aにおいて、チャネル領域107aと
同様に、不純物元素を低減することで、酸化物半導体膜のキャリア密度を低減することが
できる。
【0251】
多層膜147として、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い酸化物半導体膜を用いる
ことで、さらに優れた電気特性を有するトランジスタを作製することができる。ここでは
、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い(酸素欠損の少ない)ことを高純度真性又は実
質的に高純度真性とよぶ。高純度真性又は実質的に高純度真性である酸化物半導体は、キ
ャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができる場合がある。従って、
当該酸化物半導体膜にチャネル領域が形成されるトランジスタは、しきい値電圧がプラス
となる電気特性(ノーマリーオフ特性ともいう。)になりやすい。また、高純度真性又は
実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密
度も低くなる場合がある。また、高純度真性又は実質的に高純度真性である酸化物半導体
膜は、オフ電流が著しく小さく、ソース電極とドレイン電極間の電圧(ドレイン電圧)が
1Vから10Vの範囲において、オフ電流が、半導体パラメータアナライザの測定限界以
下、すなわち1×10-13A以下という特性を得ることができる。従って、当該酸化物
半導体膜にチャネル領域が形成されるトランジスタは、電気特性の変動が小さく、信頼性
の高いトランジスタとなる場合がある。
【0252】
また、酸化物半導体膜145、146は、酸化物半導体膜105、106、108に示
す結晶構造を適宜用いることができる。
【0253】
なお、多層膜147において、チャネル領域147aと、低抵抗領域147b、147
cとの結晶性が異なる場合がある。これは、低抵抗領域147b、147cに不純物元素
が添加された際に、低抵抗領域147b、147cにダメージが入ってしまい、結晶性が
低下するためである。
【0254】
<半導体装置の構成2>
次に、半導体装置の別の構成について、図14及び図15を用いて説明する。ここでは
、駆動回路部に形成されるトランジスタ100v、画素部に形成されるトランジスタ10
0w、100x、それぞれにおいて、ゲート電極としての機能を有する導電膜119、1
20、121が積層構造であることを特徴とする。なお、図14は、チャネル長方向のト
ランジスタ100v、100w、100xの断面図を示し、図15は、チャネル幅方向の
トランジスタ100v、100w、100xの断面図を示す。トランジスタ100vは、
実施の形態1に示すトランジスタ100iと同じ構造であるため、詳細な説明は、実施の
形態1のトランジスタ100iの説明を援用することができる。トランジスタ100wは
、実施の形態1に示すトランジスタ100jと同じ構造であるため、詳細な説明は、実施
の形態1のトランジスタ100jの説明を援用することができる。トランジスタ100x
は、本実施の形態に示すトランジスタ100vと同じ構造である。
【0255】
トランジスタ100xが有する導電膜121は、絶縁膜118に接する導電膜121a
、及び導電膜121aに接する導電膜121bを有する。また、導電膜121aの端部は
、導電膜121bの端部より外側に位置する。即ち、導電膜121aが、導電膜121b
から迫り出した形状を有する。
【0256】
また、絶縁膜118の端部が、導電膜121aの端部より外側に位置している。即ち、
絶縁膜118が、導電膜121aから迫り出した形状を有する。さらには、絶縁膜118
の側面は湾曲してしてもよい。
【0257】
導電膜121aとして、導電膜119a、120aの材料を適宜用いることができる。
導電膜121bとして、導電膜119b、120bの材料を適宜用いることができる。
【0258】
なお、多層膜147であってチャネル領域の銅の濃度を、多層膜107に示す範囲の濃
度とすることで、サブスレッショルドスイング値(S値)の優れたトランジスタを作製す
ることが可能である。
【0259】
また、トランジスタ100xは、トランジスタ100v、100wと同様に、図14
図15に示す形状の導電膜121及び絶縁膜118を有することで、トランジスタのド
レイン領域の電界緩和が可能である。そのため、ドレイン領域の電界に起因したトランジ
スタのしきい値電圧の変動などの劣化を低減することが可能である。
【0260】
<半導体装置の構成3>
次に、半導体装置の別の構成について、図16及び図17を用いて説明する。ここでは
、駆動回路部に形成されるトランジスタ111a、111d、及び画素部に形成されるト
ランジスタ111b、111c、111e、111fが多層膜を有することを特徴とする
。なお、図16は、チャネル長方向のトランジスタ111a、111b、111cの断面
図を示し、図17は、チャネル長方向のトランジスタ111d、111e、111fの断
面図を示す。
【0261】
トランジスタ111aは、実施の形態1に示すトランジスタ111wと同じ構造である
ため、詳細な説明は、実施の形態1のトランジスタ111wの説明を援用することができ
る。トランジスタ111bは、実施の形態1に示すトランジスタ100hと同じ構造であ
るため、詳細な説明は、実施の形態1のトランジスタ100hの説明を援用することがで
きる。トランジスタ111cは、本実施の形態に示すトランジスタ111aと同じ構造で
あるため、詳細な説明は、実施の形態1に示すトランジスタ111wの説明を援用するこ
とができる。トランジスタ111dは、実施の形態1に示すトランジスタ111xと同じ
構造であるため、詳細な説明は、実施の形態1のトランジスタ111xの説明を援用する
ことができる。トランジスタ111eは、実施の形態1に示すトランジスタ111yと同
じ構造であるため、詳細な説明は、実施の形態1のトランジスタ111yの説明を援用す
ることができる。トランジスタ111fは、本実施の形態に示すトランジスタ111dと
同じ構造であるため、詳細な説明は、実施の形態1に示すトランジスタ111xの説明を
援用することができる。
【0262】
図16に示すトランジスタ111cに含まれる多層膜147は、チャネル領域147a
、及び低抵抗領域147b、147cを有する。また、チャネル領域147aは、絶縁膜
104に接するチャネル領域148aと、チャネル領域148aに接するチャネル領域1
45aと、チャネル領域145aに接するチャネル領域146aとを有する。低抵抗領域
147bは、絶縁膜104に接する低抵抗領域148bと、低抵抗領域148bに接する
低抵抗領域145bと、低抵抗領域145bに接する低抵抗領域146bとを有する。低
抵抗領域147cは、絶縁膜104に接する低抵抗領域148cと、低抵抗領域148c
に接する低抵抗領域145cと、低抵抗領域145cに接する低抵抗領域146cとを有
する。なお、図16に図示しないが、チャネル領域148a、低抵抗領域148b、及び
低抵抗領域148cを有する酸化物半導体膜を酸化物半導体膜148という。すなわち、
多層膜147は、酸化物半導体膜148、酸化物半導体膜145、酸化物半導体膜146
が順に積層されている。
【0263】
図17に示すトランジスタ111fに含まれる多層膜147は、チャネル領域147a
、及び低抵抗領域147b、147cを有する。また、チャネル領域147aは、絶縁膜
104に接するチャネル領域148aと、チャネル領域148aに接するチャネル領域1
45aと、チャネル領域145aに接するチャネル領域146aと、チャネル領域146
aに接するチャネル領域149aとを有する。低抵抗領域147bは、絶縁膜104に接
する低抵抗領域148bと、低抵抗領域148bに接する低抵抗領域145bと、低抵抗
領域145bに接する低抵抗領域146bと、低抵抗領域146bに接する低抵抗領域1
49bとを有する。低抵抗領域147cは、絶縁膜104に接する低抵抗領域148cと
、低抵抗領域148cに接する低抵抗領域145cと、低抵抗領域145cに接する低抵
抗領域146cと、低抵抗領域146cに接する低抵抗領域149cとを有する。なお、
図17に図示しないが、チャネル領域149a、低抵抗領域149b、及び低抵抗領域1
49cを有する酸化物半導体膜を酸化物半導体膜149という。すなわち、多層膜147
は、酸化物半導体膜148、酸化物半導体膜145、酸化物半導体膜146、及び酸化物
半導体膜149が順に積層されている。
【0264】
酸化物半導体膜148、149は、酸化物半導体膜145、146と比較して、エネル
ギーギャップが大きく、電子親和力が小さく、絶縁性が高いことが好ましい。また、酸化
物半導体膜148、149は、酸化物半導体膜145、146と比較して、インジウムの
含有量が少ないことが好ましい。また、酸化物半導体膜148、149は、外部からの不
純物を遮蔽する機能を有することが好ましい。このような酸化物半導体膜としては、M(
Mは、Mg、Al、Ti、Ga、Y、Zr、La、Ce、Nd、又はHf)に対するIn
の原子数比が小さい。酸化物半導体膜148、149がIn-M-Zn酸化物(Mは、M
g、Al、Ti、Ga、Y、Zr、La、Ce、Nd、又はHf)の場合、酸化物半導体
膜148、149を成膜するために用いるターゲットにおいて、金属元素の原子数比をI
n:M:Zn=x:y:zとすると/yは、1/6以上1未満であること
が好ましい。また、z/yは、1/3以上6以下、さらには1以上6以下であること
が好ましい。なお、z/yを1以上6以下とすることで、酸化物半導体膜148、1
49としてCAAC-OS膜が形成されやすくなる。ターゲットの金属元素の原子数比の
代表例としては、In:M:Zn=1:3:2、In:M:Zn=1:3:4、In:M
:Zn=1:3:6、In:M:Zn=1:3:8、In:M:Zn=1:4:4、In
:M:Zn=1:4:5、In:M:Zn=1:4:6、In:M:Zn=1:4:7、
In:M:Zn=1:4:8、In:M:Zn=1:5:5、In:M:Zn=1:5:
6、In:M:Zn=1:5:7、In:M:Zn=1:5:8、In:M:Zn=1:
6:8等がある。
【0265】
図16に示すトランジスタ111aでは、酸化物半導体膜142は、酸化物半導体膜1
05と比較して、エネルギーギャップが大きく、電子親和力が小さいため、チャネルが酸
化物半導体膜105に形成される。即ち、埋め込みチャネル構造となる。また、酸化物半
導体膜105を構成する金属元素を一種以上含んでいる酸化物半導体膜106及び酸化物
半導体膜142を有しているため、酸化物半導体膜105と酸化物半導体膜106との界
面、及び酸化物半導体膜105と酸化物半導体膜142との界面に界面準位を形成しにく
くなる。よって、酸化物半導体膜106及び酸化物半導体膜142を設けることにより、
トランジスタのしきい値電圧などの電気特性のばらつきや変動を低減することができる。
なお、トランジスタ111cにおいても同様の効果を有する。
【0266】
また、図17に示すトランジスタ111dも同様に、酸化物半導体膜142、143は
、酸化物半導体膜105、106と比較して、エネルギーギャップが大きく、電子親和力
が小さいため、チャネルが酸化物半導体膜105に形成される。即ち、埋め込みチャネル
構造となる。また、酸化物半導体膜142、143を有する多層膜107を形成すること
で、酸化物半導体膜142と酸化物半導体膜105との界面、酸化物半導体膜105と酸
化物半導体膜106との界面、及び酸化物半導体膜106と酸化物半導体膜143との界
面に、界面準位を形成しにくくなる。この結果、トランジスタのしきい値電圧などの電気
特性のばらつきや変動を低減することができる。なお、トランジスタ111fにおいても
同様の効果を有する。
【0267】
また、図17に示すトランジスタ111eも同様に、酸化物半導体膜144を有する多
層膜110を形成することで、酸化物半導体膜144と酸化物半導体膜108との界面に
、界面準位を形成しにくくなる。この結果、トランジスタのしきい値電圧などの電気特性
のばらつきや変動を低減することができる。
【0268】
<半導体装置の構成4>
次に、半導体装置の別の構成について、図18乃至図20を用いて説明する。ここでは
、駆動回路部に形成されるトランジスタ111g、及び画素部に形成されるトランジスタ
111iがデュアルゲート構造のトランジスタであることを特徴とする。図18(A)は
トランジスタ111gの上面図であり、図18(B)はトランジスタ111hの上面図で
あり、図18(C)はトランジスタ111iの上面図である。図19は、図18(A)の
一点鎖線A-B間の断面図、図18(B)の一点鎖線C-D間の断面図、及び図18(C
)の一点鎖線E-F間の断面図である。図20は、図18(A)の一点鎖線G-H間の断
面図、図18(B)の一点鎖線I-J間の断面図、及び図18(C)の一点鎖線K-L間
の断面図である。
【0269】
図19及び図20に示すトランジスタ111gは、基板101上の導電膜102と、基
板101及び導電膜102上の絶縁膜104と、絶縁膜104上の多層膜107と、多層
膜107に接する絶縁膜116と、絶縁膜116を介して多層膜107と重なる導電膜1
19とを有する。多層膜107の構成は、<半導体装置の構成1>に示す多層膜107と
同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0270】
導電膜102及び導電膜119は、ゲート電極としての機能を有する。即ち、トランジ
スタ111gは、デュアルゲート構造のトランジスタである。また、絶縁膜104及び絶
縁膜116は、ゲート絶縁膜としての機能を有する。
【0271】
トランジスタ111hは、<半導体装置の構成1>に示すトランジスタ100tと同様
の構成とすることができるため、詳細な説明を省略する。
【0272】
図19及び図20に示すトランジスタ111iは、基板101上の導電膜103と、基
板101及び導電膜103上の絶縁膜104と、絶縁膜104上の多層膜147と、多層
膜147に接する絶縁膜118と、絶縁膜118を介して多層膜147と重なる導電膜1
21とを有する。多層膜147の構成は、<半導体装置の構成1>に示す多層膜147と
同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0273】
なお、基板101上に窒化物絶縁膜161を設けることが好ましい。窒化物絶縁膜16
1としては、窒化シリコン膜、窒化アルミニウム膜等がある。窒化物絶縁膜161及び絶
縁膜104aで導電膜102、103を覆うことで、導電膜102、103に含まれる金
属元素の拡散を防ぐことが可能であり好ましい。
【0274】
導電膜103及び導電膜121は、ゲート電極としての機能を有する。即ち、トランジ
スタ111iは、デュアルゲート構造のトランジスタである。また、絶縁膜104及び絶
縁膜118は、ゲート絶縁膜としての機能を有する。
【0275】
なお、図19及び図20に示す導電膜102、103は、多層膜107、147の全面
と重なっているが、導電膜102、103はそれぞれ、多層膜107、147の一部と重
なるようにしてもよい。
【0276】
トランジスタ111gにおいて、導電膜102及び導電膜119が接続せず、それぞれ
異なる電位を印加することで、トランジスタ111gのしきい値電圧を制御することがで
きる。又は、図20に示すように、導電膜102及び導電膜119が接続し、同じ電位を
印加することで、初期特性バラつきの低減、-GBT(-Gate Bias-Temp
erature)ストレス試験の劣化の抑制、及び異なるドレイン電圧におけるオン電流
の立ち上がり電圧の変動の抑制が可能である。また、多層膜107において、図20に示
すように導電膜102及び導電膜119が接続することで、導電膜102、119の電界
が多層膜107の上面及び側面に影響するため、多層膜107全体においてキャリアが流
れる。即ち、キャリアの流れる領域が膜厚方向においてより大きくなるため、キャリアの
移動量が増加する。この結果、トランジスタ111gのオン電流が大きくなると共に、電
界効果移動度が高くなる。トランジスタのチャネル長を2.5μm未満、又は1.45μ
m以上2.2μm以下とすることで、オン電流がさらに増大するとともに、電界効果移動
度を高めることができる。また、トランジスタ111gは、オン電流が大きいため、平面
における面積を小さくすることが可能である。この結果、駆動回路部の占有面積が小さい
、狭額縁化された表示装置を作製することが可能である。
【0277】
なお、トランジスタ111iにおいても、導電膜103及び導電膜121の接続構造に
より、トランジスタ111gと同様の効果を有する。このため、平面におけるトランジス
タの占有面積を小さくすることが可能であるため、画素において、トランジスタの配置の
自由度が高まる。この結果、高解像度の表示装置を作製することが可能である。
【0278】
本実施の形態に示す表示装置において、駆動回路部に含まれるトランジスタは、デュア
ルゲート構造である。即ち、画素部と比較して、電界効果移動度の高いトランジスタを駆
動回路部に有する。この結果、高速動作が可能な駆動回路部を作製することができる。ま
た、高速動作が可能なトランジスタを用いて駆動回路部を作製するとともに、寄生容量及
び寄生抵抗の少ないトランジスタを用いて画素部を作製することで、高精細で、倍速駆動
が可能な表示装置を作製することができる。
【0279】
<半導体装置の構成5>
次に、半導体装置の別の構成について、図21乃至図23を用いて説明する。ここでは
、画素部に形成されるトランジスタ111mがデュアルゲート構造のトランジスタである
ことを特徴とする。図21(A)はトランジスタ111jの上面図であり、図21(B)
はトランジスタ111kの上面図であり、図21(C)はトランジスタ111mの上面図
である。図22は、図21(A)の一点鎖線A-B間の断面図、図21(B)の一点鎖線
C-D間の断面図、及び図21(C)の一点鎖線E-F間の断面図である。図23は、図
21(A)の一点鎖線G-H間の断面図、図21(B)の一点鎖線I-J間の断面図、及
図21(C)の一点鎖線K-L間の断面図である。
【0280】
図22及び図23に示すトランジスタ111jは、<半導体装置の構成1>に示すトラ
ンジスタ100sと同じシングルゲート構造であるため、詳細な説明を省略する。
【0281】
図22及び図23に示すトランジスタ111kは、<半導体装置の構成1>に示すトラ
ンジスタ100tと同じ構造であるため、詳細な説明を省略する。
【0282】
図22及び図23に示すトランジスタ111mは、<半導体装置の構成4>に示すトラ
ンジスタ111iと同じデュアルゲート構造であるため、詳細な説明を省略する。
【0283】
本実施の形態に示す表示装置において、画素部に設けられるトランジスタ111i、1
11mは多層膜147を遮光する導電膜103、121を有する。このため、トランジス
タ111i、111mは、電界効果移動度が高く、且つオフ状態における電流の低いため
、平面におけるトランジスタの占有面積を小さくすることが可能であるため、画素におい
て、トランジスタの配置の自由度が高まるとともに、画質の劣化が少ない。この結果、高
画質で高解像度の表示装置を作製することが可能である。また、寄生容量及び寄生抵抗の
少ないトランジスタを用いて画素部を作製することで、高精細で、倍速駆動が可能な表示
装置を作製することができる。
【0284】
<半導体装置の作製方法1>
次に、図11乃至図13に示すトランジスタ100s、100t、100uの作製方法
について、図24乃至図27を用いて説明する。
【0285】
トランジスタ100s、100t、100uを構成する膜(絶縁膜、酸化物半導体膜、
導電膜等)は、実施の形態1に示すトランジスタを構成する膜の作製方法を適宜用いるこ
とができる。
【0286】
図24(A)に示すように、実施の形態1と同様に、基板101上に絶縁膜104を形
成する。次に、駆動回路部の絶縁膜104上に酸化物半導体膜105を形成し、画素部の
絶縁膜104上に酸化物半導体膜145を形成する。
【0287】
ここでは、絶縁膜104として厚さ300nmの酸化窒化シリコン膜をプラズマCVD
法を用いて形成する。
【0288】
酸化物半導体膜105、106、108、145、146は、実施の形態1に示す酸化
物半導体膜105、106、108と同様に形成することができる。
【0289】
また、実施の形態1と同様に、酸化物半導体膜を形成した後、加熱処理を行い、酸化物
半導体膜の脱水素化又は脱水化をしてもよい。
【0290】
ここでは、スパッタリング法により、厚さ35nmの酸化物半導体膜を形成する。次に
、当該酸化物半導体膜上にマスクを形成し、酸化物半導体膜の一部を選択的にエッチング
することで、酸化物半導体膜105、145を形成する。なお、酸化物半導体膜として、
In:Ga:Zn=3:1:2のIn-Ga-Zn酸化物膜を形成する。
【0291】
次に、図24(B)に示すように、駆動回路部において、酸化物半導体膜105上に酸
化物半導体膜106を形成し、画素部において、酸化物半導体膜108を形成し、酸化物
半導体膜145上に酸化物半導体膜146を形成する。即ち、酸化物半導体膜105及び
酸化物半導体膜106が順に積層した多層膜107を形成する。また、酸化物半導体膜1
45及び酸化物半導体膜146が順に積層した多層膜147を形成する。
【0292】
なお、当該工程において、酸化物半導体膜105の上面及び側面を覆うように酸化物半
導体膜106を形成することで、後のソース電極及びドレイン電極としての機能を有する
導電膜の形成工程において、酸化物半導体膜105をエッチングしない。また、酸化物半
導体膜145の上面及び側面を覆うように酸化物半導体膜146を形成することで、後の
ソース電極及びドレイン電極としての機能を有する導電膜の形成工程において、酸化物半
導体膜145をエッチングしない。これらの結果、トランジスタのチャネル幅方向におけ
る酸化物半導体膜105、145の長さの変動を低減できるため好ましい。
【0293】
ここでは、スパッタリング法により、厚さ20nmの酸化物半導体膜を形成する。次に
、当該酸化物半導体膜上にマスクを形成し、酸化物半導体膜の一部を選択的にエッチング
することで、酸化物半導体膜106、108、146を形成する。なお、酸化物半導体膜
106、108、146として、In:Ga:Zn=1:1:1.2のIn-Ga-Zn
酸化物膜を形成する。
【0294】
次に、加熱処理を行い、絶縁膜104に含まれる酸素を酸化物半導体膜に移動させる。
なお、当該加熱処理は、酸化物半導体膜106、108、146となる酸化物半導体膜を
形成した後であって、該酸化物半導体膜をエッチングして酸化物半導体膜106、108
、146を形成する前に行ってもよい。
【0295】
なお、加熱処理は、350℃より高く650℃以下、又は450℃以上600℃以下で
行うことで、後述するCAAC化率が、60%以上100%未満、又は80%以上100
%未満、又は90%以上100%未満、又は95%以上98%以下である酸化物半導体膜
を得ることができる。また、水素、水等の含有量が低減された酸化物半導体膜を得ること
が可能である。すなわち、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い酸化物半導体膜を形成
することができる。
【0296】
次に、図25(A)に示すように、絶縁膜104、多層膜107、147及び酸化物半
導体膜108上に、実施の形態1と同様に、絶縁膜115を形成する。次に、実施の形態
1と同様に、絶縁膜115上に導電膜119、120、121を形成する。
【0297】
ここでは、絶縁膜115として、プラズマCVD法により厚さ100nmの酸化窒化シ
リコン膜を形成する。
【0298】
また、ここでは、導電膜上にリソグラフィ工程によりマスク122、123、124を
形成した後、該導電膜をエッチングして、導電膜119、120、121を形成する。
【0299】
次に、図25(B)に示すように、実施の形態1と同様に、マスク122、123、1
24を残したまま、絶縁膜115をエッチングして、絶縁膜116、117、118を形
成する。
【0300】
次に、図26(A)に示すように、実施の形態1と同様に、マスク122、123、1
24を残したまま、多層膜107、147及び酸化物半導体膜108に不純物元素125
を添加する。この結果、多層膜107、147及び酸化物半導体膜108においてマスク
122、123、124に覆われていない領域に不純物元素が添加される。なお、不純物
元素125の添加により、多層膜107、147及び酸化物半導体膜108には酸素欠損
が形成される。
【0301】
この結果、多層膜107に低抵抗領域107b、107cを形成することができる。酸
化物半導体膜108に低抵抗領域108b、108cを形成することができる。また、多
層膜147に低抵抗領域147b、147cを形成することができる。こののち、マスク
122、123、124を取り除く。
【0302】
なお、導電膜119、120、121が露出した状態で不純物元素125を添加すると
、導電膜119、120、121の一部が剥離し、絶縁膜116、117、118の側面
に付着してしまう。この結果、トランジスタのリーク電流が増大してしまう。このため、
マスク122、123、124で導電膜119、120、121を覆った状態で、多層膜
107、147及び酸化物半導体膜108に不純物元素125を添加することで、導電膜
119、120、121の一部が絶縁膜116、117、118の側面に付着することを
防ぐことができる。なお、マスク122、123、124を除去した後、多層膜107、
147及び酸化物半導体膜108に不純物元素125を添加してもよい。
【0303】
こののち、実施の形態1と同様に、加熱処理を行い、不純物元素125が添加された領
域の導電性をさらに高めてもよい。
【0304】
次に、図27(A)に示すように、実施の形態1と同様に、絶縁膜104、多層膜10
7、147及び酸化物半導体膜108、絶縁膜116、117、118、導電膜119、
120、121上に絶縁膜126を形成する。
【0305】
ここでは、絶縁膜126として厚さ100nmの窒化シリコン膜をプラズマCVD法を
用いて形成する。
【0306】
こののち、実施の形態1と同様に、加熱処理を行い、低抵抗領域107b、107c、
108b、108c、147b、147cの導電性をさらに高めてもよい。加熱処理の温
度は、代表的には、150℃以上基板歪み点未満、又は250℃以上450℃以下、又は
300℃以上450℃以下とする。
【0307】
次に、図27(A)に示すように、実施の形態1と同様に、絶縁膜127を形成しても
よい。絶縁膜127を形成することで、のちに形成される導電膜134、135、136
、137、138、139と、導電膜119、120、121との間における寄生容量を
低減することができる。
【0308】
次に、実施の形態1と同様に、絶縁膜126、127に開口部128、129、130
、131、132、133(図21参照。)を形成し、低抵抗領域の一部を露出させた後
、導電膜134、135、136、137、138、139を形成する。また、窒化物絶
縁膜162を形成することが好ましい(図27(B)参照。)。
【0309】
導電膜134、135、136、137、138、139は、導電膜119、120と
同様の形成方法を適宜用いることができる。窒化物絶縁膜162は、スパッタリング法、
CVD法等を適宜用いて形成することができる。
【0310】
以上の工程により、トランジスタ100s、100t、100uを作製することができ
る。
【0311】
<半導体装置の作製方法2>
次に、図18乃至図20に示すトランジスタ111g、111h、111iの作製方法
について、説明する。
【0312】
基板101上に絶縁膜161を形成し、絶縁膜161上に導電膜102、103を形成
する。導電膜102、103は、導電膜119、120の作製方法を適宜用いることがで
きる。
【0313】
次に、絶縁膜161及び導電膜102、103上に絶縁膜104を形成する。
【0314】
こののち、図24の工程により、多層膜107、147、及び酸化物半導体膜108を
形成する。
【0315】
次に、図25(A)に示すように、絶縁膜115を形成した後、絶縁膜115の一部を
エッチングして、図18(A)に示す開口部113及び図18(C)に示す開口部114
を形成する。
【0316】
次に、図25(A)に示す導電膜119、120、121を形成した後、図25(B)
図26、及び図27と同様の工程により、トランジスタ111g、111h、111i
を作製することができる。
【0317】
本実施の形態に示すトランジスタは、ソース電極及びドレイン電極としての機能を有す
る導電膜と、ゲート電極としての機能を有する導電膜とが重ならないため、寄生容量を低
減することが可能であり、オン電流が大きい。また、本実施の形態に示すトランジスタは
、安定して低抵抗領域を形成することが可能なため、従来と比べ、オン電流は向上し、ト
ランジスタの電気特性のバラツキが低減する。
【0318】
本実施の形態に示す構成および方法などは、他の実施の形態に示す構成および方法など
と適宜組み合わせて用いることができる。
【0319】
(実施の形態3)
ここでは、先の実施の形態に示すトランジスタの変形例について、図29乃至図33
用いて説明する。ここでは、トランジスタとして、画素部に形成されるトランジスタを代
表例として用いて説明する。図29に示すトランジスタは、基板101上の絶縁膜104
上に形成された酸化物半導体膜108と、酸化物半導体膜108に接する絶縁膜117と
、絶縁膜117と接し且つ酸化物半導体膜108と重畳する導電膜120と、を有する。
【0320】
また、酸化物半導体膜108に接する絶縁膜126、及び絶縁膜126に接する絶縁膜
127が、トランジスタに設けられている。また、絶縁膜126及び絶縁膜127の開口
部において、酸化物半導体膜108と接する導電膜136、137が、トランジスタに設
けられている。
【0321】
図29(A)に示すトランジスタにおいて、酸化物半導体膜108は、導電膜120と
重なる領域に形成されるチャネル領域108aと、チャネル領域108aを挟み、且つ不
純物元素を含む領域、即ち低抵抗領域108b、108cとを有する。また、導電膜13
6、137は、低抵抗領域108b、108cと接する。
【0322】
または、図29(B)に示すトランジスタのように、酸化物半導体膜108において、
導電膜136、137と接する領域108d、108eに、不純物元素が添加されていな
くともよい。この場合、導電膜136、137と接する領域108d、108eとチャネ
ル領域108aとの間に、不純物元素を有する領域、即ち低抵抗領域108b、108c
を有する。なお、領域108d、108eは、導電膜136、137に電圧が印加される
と導電性を有するため、ソース領域及びドレイン領域としての機能を有する。
【0323】
なお、図29(B)に示すトランジスタは、導電膜136、137を形成した後、導電
膜120及び導電膜136、137をマスクとして、不純物元素を酸化物半導体膜に添加
することで、形成できる。
【0324】
導電膜120において、導電膜120の端部がテーパ形状であってもよい。即ち、絶縁
膜117及び導電膜120が接する面と、導電膜120の側面となす角度θ1が、90°
未満、または10°以上85°以下、または15°以上85°以下、または30°以上8
5°以下、または45°以上85°以下、または60°以上85°以下であってもよい。
角度θ1を、90°未満、または10°以上85°以下、または15°以上85°以下、
または30°以上85°以下、または45°以上85°以下、または60°以上85°以
下とすることで、絶縁膜117及び導電膜120の側面における絶縁膜126の被覆性を
高めることが可能である。
【0325】
次に、低抵抗領域108b、108cの変形例について説明する。なお、図29(C)
乃至図29(F)は、図29(A)に示す酸化物半導体膜108の近傍の拡大図である。
ここでは、チャネル長Lは、一対の低抵抗領域の間隔である。
【0326】
図29(C)に示すように、チャネル長方向の断面形状において、チャネル領域108
a及び低抵抗領域108b、108cの境界が、絶縁膜117を介して、導電膜120の
端部と、一致または略一致している。即ち、上面形状において、チャネル領域108a及
び低抵抗領域108b、108cの境界が、導電膜120の端部と、一致または概略一致
している。
【0327】
または、図29(D)に示すように、チャネル長方向の断面形状において、チャネル領
域108aが、導電膜120の端部と重ならない領域を有する。該領域はオフセット領域
として機能する。チャネル長方向におけるオフセット領域の長さをLoffと示す。なお
、オフセット領域が複数ある場合は、一つのオフセット領域の長さをLoffという。L
offは、チャネル長Lに含まれる。また、Loffは、チャネル長Lの20%未満、ま
たは10%未満、または5%未満、または2%未満である。
【0328】
または、図29(E)に示すように、チャネル長方向の断面形状において、低抵抗領域
108b、108cが、絶縁膜117を介して、導電膜120と重なる領域を有する。該
領域はオーバーラップ領域として機能する。チャネル長方向におけるオーバーラップ領域
の長さをLovと示す。Lovは、チャネル長Lの20%未満、または10%未満、また
は5%未満、または2%未満である。
【0329】
または、図29(F)に示すように、チャネル長方向の断面形状において、チャネル領
域108aと低抵抗領域108bの間に低抵抗領域108fを有し、チャネル領域108
aと低抵抗領域108cの間に低抵抗領域108gを有する。低抵抗領域108f、10
8gは、低抵抗領域108b、108cより不純物元素の濃度が低く、抵抗率が高い。こ
こでは、低抵抗領域108f、108gは、絶縁膜117と重なるが、絶縁膜117及び
導電膜120と重なってもよい。
【0330】
なお、図29(C)乃至図29(F)においては、図29(A)に示すトランジスタの
説明をしたが、図29(B)に示すトランジスタにおいても、図29(C)乃至図29
F)の構造を適宜適用することができる。
【0331】
図30(A)に示すトランジスタは、絶縁膜117の端部が、導電膜120の端部より
外側に位置する。即ち、絶縁膜117が、導電膜120から迫り出した形状を有する。チ
ャネル領域108aから絶縁膜126を遠ざけることが可能であるため、絶縁膜126に
含まれる窒素、水素等が、チャネル領域108aに入り込むのを抑制することができる。
【0332】
図30(B)に示すトランジスタは、絶縁膜117及び導電膜120がテーパ形状であ
り、且つそれぞれのテーパ部の角度が異なる。即ち、絶縁膜117及び導電膜120が接
する面と、導電膜120の側面のなす角度θ1と、酸化物半導体膜108及び絶縁膜11
7が接する面と、絶縁膜117の側面のなす角度θ2との角度が異なる。角度θ2は、9
0°未満、または30°以上85°以下、または45°以上70°以下であってもよい。
例えば、角度θ2が角度θ1より小さいと、絶縁膜126の被覆性が高まる。また、角度
θ2が角度θ1より大きいと、トランジスタの微細化が可能である。
【0333】
次に、低抵抗領域108b、108cの変形例について、図30(C)乃至図30(F
)を用いて説明する。なお、図30(C)乃至図30(F)は、図30(A)に示す酸化
物半導体膜108の近傍の拡大図である。
【0334】
図30(C)に示すように、チャネル長方向の断面形状において、チャネル領域108
a及び低抵抗領域108b、108cの境界が、導電膜120の端部と、絶縁膜117を
介して、一致または概略一致している。即ち、上面形状において、チャネル領域108a
及び低抵抗領域108b、108cの境界が、導電膜120の端部と、一致若しくは略一
致している。
【0335】
または、図30(D)に示すように、チャネル長方向の断面形状において、チャネル領
域108aが、導電膜120と重ならない領域を有する。該領域はオフセット領域として
機能する。即ち、上面形状において、低抵抗領域108b、108cの端部が、絶縁膜1
17の端部と、一致または略一致しており、導電膜120の端部と重ならない。
【0336】
または、図30(E)に示すように、チャネル長方向の断面形状において、低抵抗領域
108b、108cが、絶縁膜117を介して、導電膜120と重なる領域を有する。該
領域をオーバーラップ領域という。即ち、上面形状において、低抵抗領域108b、10
8cの端部が、導電膜120と重なる。
【0337】
または、図30(F)に示すように、チャネル長方向の断面形状において、チャネル領
域108aと低抵抗領域108bの間に低抵抗領域108fを有し、チャネル領域108
aと低抵抗領域108cの間に低抵抗領域108gを有する。低抵抗領域108f、10
8gは、低抵抗領域108b、108cより不純物元素の濃度が低く、抵抗率が高い。こ
こでは、低抵抗領域108f、108gは、絶縁膜117と重なるが、絶縁膜117及び
導電膜120と重なってもよい。
【0338】
なお、図30(C)乃至図30(F)においては、図30(A)に示すトランジスタの
説明をしたが、図30(B)に示すトランジスタにおいても、図30(C)乃至図30
F)の構造を適宜適用することが可能である。
【0339】
図31(A)に示すトランジスタは、導電膜120が積層構造であり、絶縁膜117と
接する導電膜120a、及び導電膜120aに接する導電膜120bとを有する。また、
導電膜120aの端部は、導電膜120bの端部より外側に位置する。即ち、導電膜12
0aが、導電膜120bから迫り出した形状を有する。
【0340】
次に、低抵抗領域108b、108cの変形例について説明する。なお、図31(B)
乃至図31(E)、図32(A)、及び図32(B)は、図31(A)に示す酸化物半導
体膜108の近傍の拡大図である。
【0341】
図31(B)に示すように、チャネル長方向の断面形状において、チャネル領域108
a及び低抵抗領域108b、108cの境界が、導電膜120に含まれる導電膜120a
の端部と、絶縁膜117を介して、一致または略一致している。即ち、上面形状において
、チャネル領域108a及び低抵抗領域108b、108cの境界が、導電膜120の端
部と、一致または略一致している。
【0342】
または、図31(C)に示すように、チャネル長方向の断面形状において、チャネル領
域108aが、導電膜120と重ならない領域を有する。該領域はオフセット領域として
機能する。即ち、上面形状において、低抵抗領域108b、108cの端部が、導電膜1
20の端部と重ならない。
【0343】
または、図31(D)に示すように、チャネル長方向の断面形状において、低抵抗領域
108b、108cが、導電膜120、ここでは導電膜120aと重なる領域を有する。
該領域をオーバーラップ領域という。即ち、上面形状において、低抵抗領域108b、1
08cの端部が、導電膜120aと重なる。
【0344】
または、図31(E)に示すように、チャネル長方向の断面形状において、チャネル領
域108aと低抵抗領域108bの間に低抵抗領域108fを有し、チャネル領域108
aと低抵抗領域108cの間に低抵抗領域108gを有する。不純物元素は、導電膜12
0aを通過して低抵抗領域108f、108gに添加されるため、低抵抗領域108f、
108gは、低抵抗領域108b、108cより不純物元素の濃度が低く、抵抗率が高い
。なお、ここでは、低抵抗領域108f、108gは、導電膜120aと重なるが、導電
膜120a及び導電膜120bと重なってもよい。
【0345】
または、図32(A)に示すように、チャネル長方向の断面形状において、導電膜12
0aの端部は、導電膜120bの端部より外側に位置し、且つ導電膜120aがテーパ形
状であってもよい。即ち、絶縁膜117及び導電膜120aが接する面と、導電膜120
aの側面のなす角度が90°未満、または5°以上45°以下、または5°以上30°以
下であってもよい。
【0346】
さらには、絶縁膜117の端部が、導電膜120aの端部より外側に位置してもよい。
【0347】
さらには、絶縁膜117の側面は湾曲してしてもよい。
【0348】
さらには、絶縁膜117がテーパ形状であってもよい。即ち、酸化物半導体膜108及
び絶縁膜117が接する面と、絶縁膜117の側面のなす角度が90°未満、好ましくは
30°以上90°未満であってもよい。
【0349】
図32(A)に示す酸化物半導体膜108は、チャネル領域108aと、チャネル領域
108aを挟む低抵抗領域108f、108gと、低抵抗領域108f、108gを挟む
低抵抗領域108h、108iと、低抵抗領域108h、108iを挟む低抵抗領域10
8b、108cとを有する。不純物元素は、絶縁膜117及び導電膜120aを通過して
低抵抗領域108f、108g、108h、108iに添加されるため、低抵抗領域10
8f、108g、108h、108iは、低抵抗領域108b、108cより不純物元素
の濃度が低く、抵抗率が高い。
【0350】
図32(B)に示す酸化物半導体膜108は、チャネル領域108aと、チャネル領域
108aを挟む低抵抗領域108h、108iと、低抵抗領域108h、108iを挟む
低抵抗領域108b、108cとを有する。不純物元素は、絶縁膜117を通過して低抵
抗領域108h、108iに添加されるため、低抵抗領域108h、108iは、低抵抗
領域108b、108cより不純物元素の濃度が低く、抵抗率が高い。
【0351】
なお、チャネル長方向において、チャネル領域108aは導電膜120bと重なり、低
抵抗領域108f、108gは、導電膜120bの外側に突出している導電膜120aと
重なり、低抵抗領域108h、108iは、導電膜120aの外側に突出している絶縁膜
117と重なり、低抵抗領域108b、108cは絶縁膜117の外側に設けられる。
【0352】
図31(E)及び図32に示すように、酸化物半導体膜108が低抵抗領域108b、
108cより、不純物元素の濃度が低く、抵抗率が高い低抵抗領域108f、108g、
108h、108iを有することで、ドレイン領域の電界緩和が可能である。そのため、
ドレイン領域の電界に起因したトランジスタのしきい値電圧の変動などの劣化を低減する
ことが可能である。
【0353】
図33(A)に示すトランジスタは、チャネル領域108a及び低抵抗領域108b、
108cを含む酸化物半導体膜108を有し、低抵抗領域108b、108cは、チャネ
ル領域108aより膜厚の小さい領域を有する。代表的には、低抵抗領域108b、10
8cは、チャネル領域108aより厚さが0.1nm以上5nm以下小さい領域を有する
【0354】
図33(B)に示すトランジスタは、酸化物半導体膜108に接する絶縁膜104、1
17の少なくとも一方が多層構造である。例えば、絶縁膜104は、絶縁膜104a、及
び絶縁膜104a及び酸化物半導体膜108に接する絶縁膜104bを有する。また、絶
縁膜117は、酸化物半導体膜108に接する絶縁膜117a、及び絶縁膜117aに接
する絶縁膜117bを有する。
【0355】
絶縁膜104b、117aは、窒素酸化物が少なく、欠陥準位の密度が低い酸化物絶縁
膜を用いて形成することができる。窒素酸化物が少なく、欠陥準位の密度が低い酸化物絶
縁膜とは、具体的には、真空準位から4.6eV以上8eV以下にある欠陥準位の密度が
少ない酸化物絶縁膜であり、言い換えると、窒素酸化物に起因する欠陥準位の密度が少な
い酸化物絶縁膜である。窒素酸化物が少なく、欠陥準位の密度が低い酸化物絶縁膜として
、窒素酸化物の放出量の少ない酸化窒化シリコン膜、または窒素酸化物の放出量の少ない
酸化窒化アルミニウム膜等を用いることができる。なお、絶縁膜104b、117aは、
平均膜厚が、0.1nm以上50nm以下、または0.5nm以上10nm以下である。
【0356】
なお、窒素酸化物の放出量の少ない酸化窒化シリコン膜は、昇温脱離ガス分析法(TD
S(Thermal Desorption Spectroscopy))において、
窒素酸化物の放出量よりアンモニアの放出量が多い膜であり、代表的にはアンモニアの放
出量が1×1018個/cm以上5×1019個/cm以下である。なお、アンモニ
アの放出量は、膜の表面温度が50℃以上650℃以下、好ましくは50℃以上550℃
以下の加熱処理による放出量とする。
【0357】
絶縁膜104a、117bは、加熱により酸素を放出する酸化物絶縁膜を用いて形成す
ることができる。なお、絶縁膜104a、117bは、平均膜厚が5nm以上1000n
m以下、または10nm以上500nm以下である。
【0358】
加熱により酸素を放出する酸化物絶縁膜の代表例としては、酸化窒化シリコン膜、酸化
窒化アルミニウム膜等がある。
【0359】
窒素酸化物(NO、xは0以上2以下、好ましくは1以上2以下)、代表的にはNO
またはNOは、絶縁膜104および絶縁膜117などに準位を形成する。当該準位は、
酸化物半導体膜108のエネルギーギャップ内に形成される。そのため、窒素酸化物が、
絶縁膜104、117及び酸化物半導体膜108の界面に拡散すると、当該準位が絶縁膜
104、117側において電子をトラップする場合がある。この結果、トラップされた電
子が、絶縁膜104、117及び酸化物半導体膜108界面近傍に留まるため、トランジ
スタのしきい値電圧をプラス方向にシフトさせてしまう。
【0360】
また、窒素酸化物は、加熱処理においてアンモニア及び酸素と反応する。絶縁膜104
a、117bに含まれる窒素酸化物は、加熱処理において、絶縁膜104b、117aに
含まれるアンモニアと反応するため、絶縁膜104a、117bに含まれる窒素酸化物が
低減される。このため、絶縁膜104、117及び酸化物半導体膜108の界面において
、電子がトラップされにくい。
【0361】
絶縁膜104b、117aとして、窒素酸化物が少なく、欠陥準位の密度が低い酸化物
絶縁膜を用いることで、トランジスタのしきい値電圧のシフトを低減することが可能であ
り、トランジスタの電気特性の変動を低減することができる。
【0362】
なお、トランジスタの作製工程の加熱処理、代表的には300℃以上基板歪み点未満の
加熱処理により、絶縁膜104b、117aは、100K以下のESRで測定して得られ
たスペクトルにおいてg値が2.037以上2.039以下の第1のシグナル、g値が2
.001以上2.003以下の第2のシグナル、及びg値が1.964以上1.966以
下の第3のシグナルが観測される。なお、第1のシグナル及び第2のシグナルのスプリッ
ト幅、並びに第2のシグナル及び第3のシグナルのスプリット幅は、XバンドのESR測
定において約5mTである。また、g値が2.037以上2.039以下の第1のシグナ
ル、g値が2.001以上2.003以下の第2のシグナル、及びg値が1.964以上
1.966以下である第3のシグナルのスピンの密度の合計が1×1018spins/
cm未満であり、代表的には1×1017spins/cm以上1×1018spi
ns/cm未満である。
【0363】
なお、100K以下のESRスペクトルにおいてg値が2.037以上2.039以下
の第1シグナル、g値が2.001以上2.003以下の第2のシグナル、及びg値が1
.964以上1.966以下の第3のシグナルは、二酸化窒素起因のシグナルに相当する
。即ち、g値が2.037以上2.039以下の第1のシグナル、g値が2.001以上
2.003以下の第2のシグナル、及びg値が1.964以上1.966以下である第3
のシグナルのスピンの密度の合計が少ないほど、酸化物絶縁膜に含まれる窒素酸化物の含
有量が少ないといえる。
【0364】
また、トランジスタの作製工程の加熱処理、代表的には300℃以上基板歪み点未満の
加熱処理後において、窒素酸化物が少なく、欠陥準位の密度が低い酸化物絶縁膜は、SI
MS(Secondary Ion Mass Spectrometry)で測定され
る窒素濃度が6×1020atoms/cm以下である。
【0365】
基板温度が220℃以上、または280℃以上、または350℃以上であり、シラン及
び一酸化二窒素を用いたプラズマCVD法を用いて、窒素酸化物が少なく、欠陥準位の密
度が低い酸化物絶縁膜を形成することで、緻密であり、且つ硬度の高い膜を形成すること
ができる。
【0366】
図33(C)に示すトランジスタは、酸化物半導体膜108、絶縁膜117、及び導電
膜120と、絶縁膜126との間に、絶縁膜141を有する。絶縁膜141は、図33
B)の絶縁膜104b、117aに示す、窒素酸化物が少なく、欠陥準位の密度が低い酸
化物絶縁膜を用いて形成することができる。
【0367】
また、チャネル長方向の断面形状において、チャネル領域108a及び低抵抗領域10
8bの間に低抵抗領域108fを有し、チャネル領域108a及び低抵抗領域108cの
間に低抵抗領域108gを有する。低抵抗領域108f、108gは、低抵抗領域108
b、108cより不純物元素の濃度が低く、抵抗率が高い。なお、ここでは、低抵抗領域
108f、108gは、絶縁膜117及び導電膜120の側面に接する絶縁膜141と重
なる領域である。なお、低抵抗領域108f、108gは、絶縁膜126及び絶縁膜14
1と重なってもよい。
【0368】
図33(D)に示すトランジスタは、絶縁膜117が、酸化物半導体膜108のチャネ
ル領域108aに接するとともに、低抵抗領域108b、108cに接する。また、絶縁
膜117は、チャネル領域108aと接する領域と比較して、低抵抗領域108b、10
8cと接する領域の膜厚が薄く、代表的には、平均膜厚が、0.1nm以上50nm以下
、または0.5nm以上10nm以下である。この結果、絶縁膜117を介して、酸化物
半導体膜108に不純物元素を添加することが可能であると共に、絶縁膜126に含まれ
る水素を絶縁膜117を介して、酸化物半導体膜108へ移動させることができる。この
結果、低抵抗領域108b、108cを形成することができる。
【0369】
さらに、絶縁膜104を絶縁膜104a、104bの多層構造とし、加熱により酸素を
放出する酸化物絶縁膜を用いて絶縁膜104aを形成し、窒素酸化物が少なく、欠陥準位
の密度が低い酸化物絶縁膜を用いて絶縁膜104bを形成する。さらに、窒素酸化物が少
なく、欠陥準位の密度が低い酸化物絶縁膜を用いて絶縁膜117を形成する。即ち、窒素
酸化物が少なく、欠陥準位の密度が低い酸化物絶縁膜で、酸化物半導体膜108を覆うこ
とができる。この結果、絶縁膜104aに含まれる酸素を、加熱処理により酸化物半導体
膜108に移動させ、酸化物半導体膜108のチャネル領域108aに含まれる酸素欠損
を低減しつつ、絶縁膜104b、117と、酸化物半導体膜108との界面におけるキャ
リアのトラップを低減することが可能である。この結果、トランジスタのしきい値電圧の
シフトを低減することが可能であり、トランジスタの電気特性の変動を低減することがで
きる。
【0370】
(実施の形態4)
ここでは、絶縁膜上に酸素の脱離を抑制する膜を形成した後、該膜を介して絶縁膜に酸
素を添加する方法を図34(A)及び図34(B)を用いて説明する。
【0371】
図34(A)に示すように、基板101上に絶縁膜104を形成する。
【0372】
次に、絶縁膜104上に、酸素の脱離を抑制する膜145dを形成する。次に、膜14
5dを介して絶縁膜104に酸素146dを添加する。
【0373】
酸素の脱離を抑制する膜145dとして、アルミニウム、クロム、タンタル、チタン、
モリブデン、ニッケル、鉄、コバルト、タングステンから選ばれた金属元素、上述した金
属元素を成分とする合金、上述した金属元素を組み合わせた合金、上述した金属元素を有
する金属窒化物、上述した金属元素を有する金属酸化物、上述した金属元素を有する金属
窒化酸化物等の導電性を有する材料を用いて形成する。
【0374】
酸素の脱離を抑制する膜145dの厚さは、1nm以上20nm以下、又は2nm以上
10nm以下とすることができる。
【0375】
膜145dを介して絶縁膜104に酸素146dを添加する方法としては、イオンドー
ピング法、イオン注入法、プラズマ処理法等がある。なお、基板101側にバイアスを印
加した状態で発生したプラズマに膜145dを曝すことで、絶縁膜104への酸素添加量
を増加させることが可能であり好ましい。このようなプラズマ処理を行う装置の一例とし
て、アッシング装置がある。
【0376】
絶縁膜104上に膜145dを設けて酸素を添加することで、膜145dが絶縁膜10
4から酸素が脱離することを抑制する保護膜として機能する。このため、絶縁膜104に
より多くの酸素を添加することができる。
【0377】
また、プラズマ処理で酸素の導入を行う場合、マイクロ波で酸素を励起し、高密度な酸
素プラズマを発生させることで、絶縁膜104への酸素導入量を増加させることができる
【0378】
こののち、膜145dを除去することで、図34(B)に示すように、基板101上に
酸素が添加された絶縁膜104を形成することができる。
【0379】
(実施の形態5)
本実施の形態では、酸化物半導体膜の低抵抗領域に形成されるVHについて説明する
【0380】
<(1). VHの形成しやすさ及び安定性>
酸化物半導体膜(以下、IGZOと示す。)が完全な結晶の場合、室温では、Hは、優
先的にab面に沿って拡散する。また、450℃の加熱処理の際には、Hは、ab面及び
c軸方向それぞれに拡散する。そこで、ここでは、IGZOに酸素欠損Vが存在する場
合、Hは酸素欠損V中に入りやすいか否かについて計算を行った。ここで、酸素欠損V
にHがある状態をVHと表記する。
【0381】
計算には、図35に示すInGaZnO結晶モデルを用いた。ここで、VH中のH
がVから出ていき、酸素と結合する反応経路の活性化障壁(E)を、NEB(Nud
ged Elastic Band)法を用いて計算した。計算条件を表1に示す。
【0382】
【表1】
【0383】
また、InGaZnO結晶モデルにおいて、酸素が結合する金属元素及びその数の違
いから、図35に示すように酸素サイト1乃至酸素サイト4がある。ここでは、酸素欠損
を形成しやすい酸素サイト1及び酸素サイト2について計算を行った。
【0384】
はじめに、酸素欠損Vを形成しやすい酸素サイト1として、3個のInと1個のZn
と結合した酸素サイトについて計算を行った。
【0385】
初期状態のモデルを図36(A)に示し、最終状態のモデルを図36(B)に示す。ま
た、初期状態及び最終状態において、算出した活性化障壁(E)を図37に示す。なお
、ここでの初期状態とは、酸素欠損V中にHがある状態(VH)であり、最終状態と
は、酸素欠損Vと、1個のGa及び2個のZnと結合した酸素とHとが結合した状態(
H-O)を有する構造である。
【0386】
計算の結果、酸素欠損V中のHが他のOと結合するには約1.52eVのエネルギー
が必要であるのに対して、Oと結合したHが酸素欠損V中に入るには約0.46eVの
エネルギーが必要であった。
【0387】
ここで、計算により得られた活性化障壁(E)と数式1より、反応頻度(Γ)を算出
した。なお、数式1において、kはボルツマン定数であり、Tは絶対温度である。
【0388】
【数1】
【0389】
頻度因子ν=1013[1/sec]と仮定して350℃における反応頻度を算出した
図36(A)に示すモデルから図36(B)に示すモデルへHが移動する頻度は5.5
2×10[1/sec]であった。また、図36(B)に示すモデルから図36(A)
に示すモデルへHが移動する頻度は1.82×10[1/sec]であった。このこと
から、IGZO中を拡散するHは、近くに酸素欠損VがあるとVHを形成しやすく、
一旦VHを形成すると酸素欠損Vから放出されにくいと考えられる。
【0390】
次に、酸素欠損Vを形成しやすい酸素サイト2として、1個のGaと2個のZnと結
合した酸素サイトについて計算を行った。
【0391】
初期状態のモデルを図38(A)に示し、最終状態のモデルを図38(B)に示す。ま
た、初期状態及び最終状態において、算出した活性化障壁(E)を図39に示す。なお
、ここでの初期状態とは、酸素欠損V中にHがある状態(VH)であり、最終状態と
は、酸素欠損Vと、1個のGa及び2個のZnと結合した酸素とHとが結合した状態(
H-O)を有する構造である。
【0392】
計算の結果、酸素欠損V中のHが他のOと結合するには約1.75eVのエネルギー
が必要であるのに対して、Oと結合したHが酸素欠損V中に入るには約0.35eVの
エネルギーが必要であった。
【0393】
また、計算により得られた活性化障壁(E)と上記の数式1より、反応頻度(Γ)を
算出した。
【0394】
頻度因子ν=1013[1/sec]と仮定して350℃における反応頻度を算出した
図38(A)に示すモデルから図38(B)に示すモデルへHが移動する頻度は7.5
3×10-2[1/sec]であった。また、図38(B)に示すモデルから図38(A
)に示すモデルへHが移動する頻度は1.44×1010[1/sec]であった。この
ことから、一旦VHを形成すると酸素欠損VからHは放出されにくいと考えられる。
【0395】
以上のことから、アニール時にIGZO中のHは拡散し易く、酸素欠損Vがある場合
は酸素欠損Vの中に入ってVHとなりやすいことが分かった。
【0396】
<(2). VHの遷移レベル>
IGZO中において酸素欠損VとHが存在する場合、<(1). VHの形成しや
すさ及び安定性>で示した、NEB法を用いた計算より、酸素欠損VとHはVHを形
成しやすく、さらにVHは安定であると考えられる。そこで、VHがキャリアトラッ
プに関与するかを調べるため、VHの遷移レベルの算出を行った。
【0397】
計算にはInGaZnO結晶モデル(112原子)を用いた。図35に示す酸素サイ
ト1および酸素サイト2に対してVHモデルを作成し、遷移レベルの算出を行った。計
算条件を表2に示す。
【0398】
【表2】
【0399】
実験値に近いバンドギャップが出るよう、交換項の混合比を調整したことで、欠陥のな
いInGaZnO結晶モデルのバンドギャップは3.08eVとなり、実験値の3.1
5eVと近い結果となった。
【0400】
欠陥Dをもつモデルの遷移レベル(ε(q/q’))は、以下の数式2により算出され
る。なお、ΔE(D)は欠陥Dの電荷qにおける形成エネルギーであり、数式3より算
出される。
【0401】
【数2】
【0402】
【数3】
【0403】
数式2及び数式3において、Etot(D)は欠陥Dを含むモデルの電荷qにおける
全エネルギー、Etot(bulk)は欠陥のないモデル(完全結晶)の全エネルギー、
Δnは欠陥に関する原子iの増減数、μは原子iの化学ポテンシャル、εVBMは欠
陥のないモデルにおける価電子帯上端のエネルギー、ΔVは静電ポテンシャルに関する
補正項、Eはフェルミエネルギーである。
【0404】
算出したVHの遷移レベルを図40に示す。図40中の数値は伝導帯下端からの深さ
である。図40より、酸素サイト1に対するVHの遷移レベルは伝導帯下端の下0.0
5eVに存在し、酸素サイト2に対するVHの遷移レベルは伝導帯下端の下0.11e
Vに存在するため、それぞれのVHは電子トラップに関与すると考えられる。すなわち
、VHはドナーとして振る舞うことが明らかになった。また、VHを有するIGZO
は導電性を有することが明らかになった。
【0405】
<酸化物導電体膜>
Hを有する酸化物導電体膜における、抵抗率の温度依存性について、図48を用い
て説明する。
【0406】
ここでは、酸化物導電体膜を有する試料を作製した。酸化物導電体膜としては、酸化物
半導体膜が窒化シリコン膜に接することで形成された酸化物導電体膜(OC_SiN
、ドーピング装置において酸化物半導体膜にアルゴンが添加され、且つ窒化シリコン膜と
接することで形成された酸化物導電体膜(OC_Ar dope+SiN)、またはプ
ラズマ処理装置において酸化物半導体膜がアルゴンプラズマに曝され、且つ窒化シリコン
膜と接することで形成された酸化物導電体膜(OC_Ar plasma+SiN)を
作製した。なお、窒化シリコン膜は、水素を含む。
【0407】
酸化物導電体膜(OC_SiN)を含む試料の作製方法を以下に示す。ガラス基板上
に、厚さ400nmの酸化窒化シリコン膜をプラズマCVD法により形成した後、酸素プ
ラズマに曝し、酸素イオンを酸化窒化シリコン膜に添加することで、加熱により酸素を放
出する酸化窒化シリコン膜を形成した。次に、加熱により酸素を放出する酸化窒化シリコ
ン膜上に、原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1.2のスパッタリングターゲットを
用いたスパッタリング法により、厚さ100nmのIn-Ga-Zn酸化物膜を形成し、
450℃の窒素雰囲気で加熱処理した後、450℃の窒素及び酸素の混合ガス雰囲気で加
熱処理した。次に、プラズマCVD法で、厚さ100nmの窒化シリコン膜を形成した。
次に、350℃の窒素及び酸素の混合ガス雰囲気で加熱処理した。
【0408】
酸化物導電体膜(OC_Ar dope+SiN)を含む試料の作製方法を以下に示
す。ガラス基板上に、厚さ400nmの酸化窒化シリコン膜をプラズマCVD法により形
成した後、酸素プラズマに曝し、酸素イオンを酸化窒化シリコン膜に添加することで、加
熱により酸素を放出する酸化窒化シリコン膜を形成した。次に、加熱により酸素を放出す
る酸化窒化シリコン膜上に、原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1.2のスパッタリ
ングターゲットを用いたスパッタリング法により、厚さ100nmのIn-Ga-Zn酸
化物膜を形成し、450℃の窒素雰囲気で加熱処理した後、450℃の窒素及び酸素の混
合ガス雰囲気で加熱処理した。次に、ドーピング装置を用いて、In-Ga-Zn酸化物
膜に、加速電圧を10kVとし、ドーズ量が5×1014/cmのアルゴンを添加して
、In-Ga-Zn酸化物膜に酸素欠損を形成した。次に、プラズマCVD法で、厚さ1
00nmの窒化シリコン膜を形成した。次に、350℃の窒素及び酸素の混合ガス雰囲気
で加熱処理した。
【0409】
酸化物導電体膜(OC_Ar plasma+SiN)を含む試料の作製方法を以下
に示す。ガラス基板上に、厚さ400nmの酸化窒化シリコン膜をプラズマCVD法によ
り形成した後、酸素プラズマに曝すことで、加熱により酸素を放出する酸化窒化シリコン
膜を形成した。次に、加熱により酸素を放出する酸化窒化シリコン膜上に、原子数比がI
n:Ga:Zn=1:1:1.2のスパッタリングターゲットを用いたスパッタリング法
により、厚さ100nmのIn-Ga-Zn酸化物膜を形成し、450℃の窒素雰囲気で
加熱処理した後、450℃の窒素及び酸素の混合ガス雰囲気で加熱処理した。次に、プラ
ズマ処理装置において、アルゴンプラズマを発生させ、加速させたアルゴンイオンをIn
-Ga-Zn酸化物膜に衝突させることで酸素欠損を形成した。次に、プラズマCVD法
で、厚さ100nmの窒化シリコン膜を形成した。次に、350℃の窒素及び酸素の混合
ガス雰囲気で加熱処理した。
【0410】
次に、各試料の抵抗率を測定した結果を図48に示す。ここで、抵抗率の測定は4端子
のvan-der-Pauw法で行った。図48において、横軸は測定温度を示し、縦軸
は抵抗率を示す。また、酸化物導電体膜(OC_SiN)の測定結果を四角印で示し、
酸化物導電体膜(OC_Ar dope+SiN)の測定結果を丸印で示し、酸化物導
電体膜(OC_Ar plasma+SiN)の測定結果を三角印で示す。
【0411】
なお、図示しないが、窒化シリコン膜と接しない酸化物半導体膜は、抵抗率が高く、抵
抗率の測定が困難であった。このため、酸化物導電体膜は、酸化物半導体膜より抵抗率が
低いことがわかる。
【0412】
図48からわかるように、酸化物導電体膜(OC_Ar dope+SiN)及び酸
化物導電体膜(OC_Ar plasma+SiN)が、酸素欠損及び水素を含む場合
、抵抗率の変動が小さい。代表的には、80K以上290K以下において、抵抗率の変動
率は、±20%未満である。または、150K以上250K以下において、抵抗率の変動
率は、±10%未満である。即ち、酸化物導電体は、縮退半導体であり、伝導帯端とフェ
ルミ準位とが一致または略一致していると推定される。このため、酸化物導電体膜をトラ
ンジスタのソース領域及びドレイン領域として用いることで、酸化物導電体膜とソース電
極及びドレイン電極として機能する導電膜との接触がオーミック接触となり、酸化物導電
体膜とソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜との接触抵抗を低減できる。ま
た、酸化物導電体の抵抗率は温度依存性が低いため、酸化物導電体膜とソース電極及びド
レイン電極として機能する導電膜との接触抵抗の変動量が少なく、信頼性の高いトランジ
スタを作製することが可能である。
【0413】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置に含まれる酸化物半導体膜の構成につ
いて以下詳細に説明を行う。
【0414】
本明細書において、「平行」とは、二つの直線が-10°以上10°以下の角度で配置
されている状態をいう。したがって、-5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「略
平行」とは、二つの直線が-30°以上30°以下の角度で配置されている状態をいう。
また、「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態
をいう。したがって、85°以上95°以下の場合も含まれる。また、「略垂直」とは、
二つの直線が60°以上120°以下の角度で配置されている状態をいう。
【0415】
また、本明細書において、結晶が三方晶または菱面体晶である場合、六方晶系として表
す。
【0416】
<酸化物半導体の構造>
以下では、酸化物半導体の構造について説明する。
【0417】
酸化物半導体は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体とに分けら
れる。非単結晶酸化物半導体としては、CAAC-OS、多結晶酸化物半導体、nc-O
S(nanocrystalline Oxide Semiconductor)、擬
似非晶質酸化物半導体(a-like OS:amorphous like Oxid
e Semiconductor)、非晶質酸化物半導体などがある。
【0418】
また別の観点では、酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体と、それ以外の結晶性酸化物
半導体とに分けられる。結晶性酸化物半導体としては、単結晶酸化物半導体、CAAC-
OS、多結晶酸化物半導体、nc-OSなどがある。
【0419】
非晶質構造の定義としては、一般に、準安定状態で固定化していないこと、等方的であ
って不均質構造を持たないことなどが知られている。また、結合角度が柔軟であり、短距
離秩序性は有するが、長距離秩序性を有さない構造と言い換えることもできる。
【0420】
逆の見方をすると、本質的に安定な酸化物半導体の場合、完全な非晶質(comple
tely amorphous)酸化物半導体と呼ぶことはできない。また、等方的でな
い(例えば、微小な領域において周期構造を有する)酸化物半導体を、完全な非晶質酸化
物半導体と呼ぶことはできない。ただし、a-like OSは、微小な領域において周
期構造を有するものの、鬆(ボイドともいう。)を有し、不安定な構造である。そのため
、物性的には非晶質酸化物半導体に近いといえる。
【0421】
<CAAC-OS>
まずは、CAAC-OSについて説明する。
【0422】
CAAC-OSは、c軸配向した複数の結晶部(ペレットともいう。)を有する酸化物
半導体の一つである。
【0423】
透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Micr
oscope)によって、CAAC-OSの明視野像と回折パターンとの複合解析像(高
分解能TEM像ともいう。)を観察すると、複数のペレットを確認することができる。一
方、高分解能TEM像ではペレット同士の境界、即ち結晶粒界(グレインバウンダリーと
もいう。)を明確に確認することができない。そのため、CAAC-OSは、結晶粒界に
起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
【0424】
以下では、TEMによって観察したCAAC-OSについて説明する。図49(A)に
、試料面と略平行な方向から観察したCAAC-OSの断面の高分解能TEM像を示す。
高分解能TEM像の観察には、球面収差補正(Spherical Aberratio
n Corrector)機能を用いた。球面収差補正機能を用いた高分解能TEM像を
、特にCs補正高分解能TEM像と呼ぶ。Cs補正高分解能TEM像の取得は、例えば、
日本電子株式会社製原子分解能分析電子顕微鏡JEM-ARM200Fなどによって行う
ことができる。
【0425】
図49(A)の領域(1)を拡大したCs補正高分解能TEM像を図49(B)に示す
図49(B)より、ペレットにおいて、金属原子が層状に配列していることを確認でき
る。金属原子の各層の配列は、CAAC-OSの膜を形成する面(被形成面ともいう。)
または上面の凹凸を反映しており、CAAC-OSの被形成面または上面と平行となる。
【0426】
図49(B)に示すように、CAAC-OSは特徴的な原子配列を有する。図49(C
)は、特徴的な原子配列を、補助線で示したものである。図49(B)および図49(C
)より、ペレット一つの大きさは1nm以上3nm以下程度であり、ペレットとペレット
との傾きにより生じる隙間の大きさは0.8nm程度であることがわかる。したがって、
ペレットを、ナノ結晶(nc:nanocrystal)と呼ぶこともできる。また、C
AAC-OSを、CANC(C-Axis Aligned nanocrystals
)を有する酸化物半導体と呼ぶこともできる。
【0427】
ここで、Cs補正高分解能TEM像をもとに、基板5120上のCAAC-OSのペレ
ット5100の配置を模式的に示すと、レンガまたはブロックが積み重なったような構造
となる(図49(D)参照。)。図49(C)で観察されたペレットとペレットとの間で
傾きが生じている箇所は、図49(D)に示す領域5161に相当する。
【0428】
また、図50(A)に、試料面と略垂直な方向から観察したCAAC-OSの平面のC
s補正高分解能TEM像を示す。図50(A)の領域(1)、領域(2)および領域(3
)を拡大したCs補正高分解能TEM像を、それぞれ図50(B)、図50(C)および
図50(D)に示す。図50(B)、図50(C)および図50(D)より、ペレットは
、金属原子が三角形状、四角形状または六角形状に配列していることを確認できる。しか
しながら、異なるペレット間で、金属原子の配列に規則性は見られない。
【0429】
次に、X線回折(XRD:X-Ray Diffraction)によって解析したC
AAC-OSについて説明する。例えば、InGaZnOの結晶を有するCAAC-O
Sに対し、out-of-plane法による構造解析を行うと、図51(A)に示すよ
うに回折角(2θ)が31°近傍にピークが現れる場合がある。このピークは、InGa
ZnOの結晶の(009)面に帰属されることから、CAAC-OSの結晶がc軸配向
性を有し、c軸が被形成面または上面に略垂直な方向を向いていることが確認できる。
【0430】
なお、CAAC-OSのout-of-plane法による構造解析では、2θが31
°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れる場合がある。2θが36°
近傍のピークは、CAAC-OS中の一部に、c軸配向性を有さない結晶が含まれること
を示している。より好ましいCAAC-OSは、out-of-plane法による構造
解析では、2θが31°近傍にピークを示し、2θが36°近傍にピークを示さない。
【0431】
一方、CAAC-OSに対し、c軸に略垂直な方向からX線を入射させるin-pla
ne法による構造解析を行うと、2θが56°近傍にピークが現れる。このピークは、I
nGaZnOの結晶の(110)面に帰属される。CAAC-OSの場合は、2θを5
6°近傍に固定し、試料面の法線ベクトルを軸(φ軸)として試料を回転させながら分析
(φスキャン)を行っても、図51(B)に示すように明瞭なピークは現れない。これに
対し、InGaZnOの単結晶酸化物半導体であれば、2θを56°近傍に固定してφ
スキャンした場合、図51(C)に示すように(110)面と等価な結晶面に帰属される
ピークが6本観察される。したがって、XRDを用いた構造解析から、CAAC-OSは
、a軸およびb軸の配向が不規則であることが確認できる。
【0432】
次に、電子回折によって解析したCAAC-OSについて説明する。例えば、InGa
ZnOの結晶を有するCAAC-OSに対し、試料面に平行にプローブ径が300nm
の電子線を入射させると、図52(A)に示すような回折パターン(制限視野透過電子回
折パターンともいう。)が現れる場合がある。この回折パターンには、InGaZnO
の結晶の(009)面に起因するスポットが含まれる。したがって、電子回折によっても
、CAAC-OSに含まれるペレットがc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に
略垂直な方向を向いていることがわかる。一方、同じ試料に対し、試料面に垂直にプロー
ブ径が300nmの電子線を入射させたときの回折パターンを図52(B)に示す。図5
2(B)より、リング状の回折パターンが確認される。したがって、電子回折によっても
、CAAC-OSに含まれるペレットのa軸およびb軸は配向性を有さないことがわかる
。なお、図52(B)における第1リングは、InGaZnOの結晶の(010)面お
よび(100)面などに起因すると考えられる。また、図52(B)における第2リング
は(110)面などに起因すると考えられる。
【0433】
上述したように、CAAC-OSは結晶性の高い酸化物半導体である。酸化物半導体の
結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、逆の見方をす
るとCAAC-OSは不純物や欠陥(酸素欠損など)の少ない酸化物半導体ともいえる。
【0434】
なお、不純物は、酸化物半導体の主成分以外の元素で、水素、炭素、シリコン、遷移金
属元素などがある。例えば、シリコンなどの、酸化物半導体を構成する金属元素よりも酸
素との結合力の強い元素は、酸化物半導体から酸素を奪うことで酸化物半導体の原子配列
を乱し、結晶性を低下させる要因となる。また、鉄やニッケルなどの重金属、アルゴン、
二酸化炭素などは、原子半径(または分子半径)が大きいため、酸化物半導体の原子配列
を乱し、結晶性を低下させる要因となる。
【0435】
酸化物半導体が不純物や欠陥を有する場合、光や熱などによって特性が変動する場合が
ある。例えば、酸化物半導体に含まれる不純物は、キャリアトラップとなる場合や、キャ
リア発生源となる場合がある。また、酸化物半導体中の酸素欠損は、キャリアトラップと
なる場合や、水素を捕獲することによってキャリア発生源となる場合がある。
【0436】
不純物および酸素欠損の少ないCAAC-OSは、キャリア密度の低い酸化物半導体で
ある。具体的には、キャリア密度を8×1011/cm未満、好ましくは1×1011
/cm未満、さらに好ましくは1×1010/cm未満であり、1×10-9/cm
以上とすることができる。そのような酸化物半導体を、高純度真性または実質的に高純
度真性な酸化物半導体と呼ぶ。CAAC-OSは、不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低
い。即ち、安定な特性を有する酸化物半導体であるといえる。
【0437】
<nc-OS>
次に、nc-OSについて説明する。
【0438】
nc-OSは、高分解能TEM像において、結晶部を確認することのできる領域と、明
確な結晶部を確認することのできない領域と、を有する。nc-OSに含まれる結晶部は
、1nm以上10nm以下、または1nm以上3nm以下の大きさであることが多い。な
お、結晶部の大きさが10nmより大きく100nm以下である酸化物半導体を微結晶酸
化物半導体と呼ぶことがある。nc-OSは、例えば、高分解能TEM像では、結晶粒界
を明確に確認できない場合がある。なお、ナノ結晶は、CAAC-OSにおけるペレット
と起源を同じくする可能性がある。そのため、以下ではnc-OSの結晶部をペレットと
呼ぶ場合がある。
【0439】
nc-OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上
3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OSは、異なるペ
レット間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。し
たがって、nc-OSは、分析方法によっては、a-like OSや非晶質酸化物半導
体と区別が付かない場合がある。例えば、nc-OSに対し、ペレットよりも大きい径の
X線を用いた場合、out-of-plane法による解析では、結晶面を示すピークは
検出されない。また、nc-OSに対し、ペレットよりも大きいプローブ径(例えば50
nm以上)の電子線を用いる電子回折を行うと、ハローパターンのような回折パターンが
観測される。一方、nc-OSに対し、ペレットの大きさと近いかペレットより小さいプ
ローブ径の電子線を用いるナノビーム電子回折を行うと、スポットが観測される。また、
nc-OSに対しナノビーム電子回折を行うと、円を描くように(リング状に)輝度の高
い領域が観測される場合がある。さらに、リング状の領域内に複数のスポットが観測され
る場合がある。
【0440】
このように、ペレット(ナノ結晶)間では結晶方位が規則性を有さないことから、nc
-OSを、RANC(Random Aligned nanocrystals)を有
する酸化物半導体、またはNANC(Non-Aligned nanocrystal
s)を有する酸化物半導体と呼ぶこともできる。
【0441】
nc-OSは、非晶質酸化物半導体よりも規則性の高い酸化物半導体である。そのため
、nc-OSは、a-like OSや非晶質酸化物半導体よりも欠陥準位密度が低くな
る。ただし、nc-OSは、異なるペレット間で結晶方位に規則性が見られない。そのた
め、nc-OSは、CAAC-OSと比べて欠陥準位密度が高くなる。
【0442】
<a-like OS>
a-like OSは、nc-OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する酸化物
半導体である。
【0443】
a-like OSは、高分解能TEM像において鬆が観察される場合がある。また、
高分解能TEM像において、明確に結晶部を確認することのできる領域と、結晶部を確認
することのできない領域と、を有する。
【0444】
鬆を有するため、a-like OSは、不安定な構造である。以下では、a-lik
e OSが、CAAC-OSおよびnc-OSと比べて不安定な構造であることを示すた
め、電子照射による構造の変化を示す。
【0445】
電子照射を行う試料として、a-like OS(試料Aと表記する。)、nc-OS
(試料Bと表記する。)およびCAAC-OS(試料Cと表記する。)を準備する。いず
れの試料もIn-Ga-Zn酸化物である。
【0446】
まず、各試料の高分解能断面TEM像を取得する。高分解能断面TEM像により、各試
料は、いずれも結晶部を有することがわかる。
【0447】
なお、どの部分を一つの結晶部と見なすかの判定は、以下のように行えばよい。例えば
、InGaZnOの結晶の単位格子は、In-O層を3層有し、またGa-Zn-O層
を6層有する、計9層がc軸方向に層状に重なった構造を有することが知られている。こ
れらの近接する層同士の間隔は、(009)面の格子面間隔(d値ともいう。)と同程度
であり、結晶構造解析からその値は0.29nmと求められている。したがって、格子縞
の間隔が0.28nm以上0.30nm以下である箇所を、InGaZnOの結晶部と
見なすことができる。なお、格子縞は、InGaZnOの結晶のa-b面に対応する。
【0448】
図53は、各試料の結晶部(22箇所から45箇所)の平均の大きさを調査した例であ
る。ただし、上述した格子縞の長さを結晶部の大きさとしている。図53より、a-li
ke OSは、電子の累積照射量に応じて結晶部が大きくなっていくことがわかる。具体
的には、図53中に(1)で示すように、TEMによる観察初期においては1.2nm程
度の大きさだった結晶部(初期核ともいう。)が、累積照射量が4.2×10/n
においては2.6nm程度の大きさまで成長していることがわかる。一方、nc-O
SおよびCAAC-OSは、電子照射開始時から電子の累積照射量が4.2×10
/nmまでの範囲で、結晶部の大きさに変化が見られないことがわかる。具体的には、
図53中の(2)および(3)で示すように、電子の累積照射量によらず、nc-OSお
よびCAAC-OSの結晶部の大きさは、それぞれ1.4nm程度および2.1nm程度
であることがわかる。
【0449】
このように、a-like OSは、電子照射によって結晶部の成長が見られる場合が
ある。一方、nc-OSおよびCAAC-OSは、電子照射による結晶部の成長がほとん
ど見られないことがわかる。即ち、a-like OSは、nc-OSおよびCAAC-
OSと比べて、不安定な構造であることがわかる。
【0450】
また、鬆を有するため、a-like OSは、nc-OSおよびCAAC-OSと比
べて密度の低い構造である。具体的には、a-like OSの密度は、同じ組成の単結
晶の密度の78.6%以上92.3%未満となる。また、nc-OSの密度およびCAA
C-OSの密度は、同じ組成の単結晶の密度の92.3%以上100%未満となる。単結
晶の密度の78%未満となる酸化物半導体は、成膜すること自体が困難である。
【0451】
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において、
菱面体晶構造を有する単結晶InGaZnOの密度は6.357g/cmとなる。よ
って、例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体におい
て、a-like OSの密度は5.0g/cm以上5.9g/cm未満となる。ま
た、例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において
、nc-OSの密度およびCAAC-OSの密度は5.9g/cm以上6.3g/cm
未満となる。
【0452】
なお、同じ組成の単結晶が存在しない場合がある。その場合、任意の割合で組成の異な
る単結晶を組み合わせることにより、所望の組成における単結晶に相当する密度を見積も
ることができる。所望の組成の単結晶に相当する密度は、組成の異なる単結晶を組み合わ
せる割合に対して、加重平均を用いて見積もればよい。ただし、密度は、可能な限り少な
い種類の単結晶を組み合わせて見積もることが好ましい。
【0453】
以上のように、酸化物半導体は、様々な構造をとり、それぞれが様々な特性を有する。
なお、酸化物半導体は、例えば、非晶質酸化物半導体、a-like OS、nc-OS
、CAAC-OSのうち、二種以上を有する積層膜であってもよい。
【0454】
以上、本実施の形態で示す構成、方法は、他の実施の形態で示す構成、方法と適宜組み
合わせて用いることができる。
【0455】
(実施の形態7)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置を用いることができる表示装置につい
て、図41を用いて説明を行う。
【0456】
図41(A)に示す表示装置は、表示素子の画素を有する領域(以下、画素部542と
いう)と、画素部542の外側に配置され、画素を駆動するための回路を有する回路部(
以下、駆動回路部544という)と、素子の保護機能を有する回路(以下、保護回路54
6という)と、端子部547と、を有する。なお、保護回路546は、設けない構成とし
てもよい。
【0457】
駆動回路部544の一部、または全部は、画素部542と同一基板上に形成されている
ことが望ましい。これにより、部品数や端子数を減らすことが出来る。駆動回路部544
の一部、または全部が、画素部542と同一基板上に形成されていない場合には、駆動回
路部544の一部、または全部は、COG(Chip On Glass)やTAB(T
ape Automated Bonding)によって、実装することができる。
【0458】
画素部542は、X行(Xは2以上の自然数)Y列(Yは2以上の自然数)に配置され
た複数の表示素子を駆動するための回路(以下、画素回路541という)を有し、駆動回
路部544は、画素を選択する信号(走査信号)を出力する回路(以下、ゲートドライバ
544aという)、画素の表示素子を駆動するための信号(データ信号)を供給するため
の回路(以下、ソースドライバ544b)などの駆動回路を有する。
【0459】
ゲートドライバ544aは、シフトレジスタ等を有する。ゲートドライバ544aは、
端子部547を介して、シフトレジスタを駆動するための信号が入力され、信号を出力す
る。例えば、ゲートドライバ544aは、スタートパルス信号、クロック信号等が入力さ
れ、パルス信号を出力する。ゲートドライバ544aは、走査信号が与えられる配線(以
下、走査線GL_1乃至GL_Xという)の電位を制御する機能を有する。なお、ゲート
ドライバ544aを複数設け、複数のゲートドライバ544aにより、走査線GL_1乃
至GL_Xを分割して制御してもよい。または、ゲートドライバ544aは、初期化信号
を供給することができる機能を有する。ただし、これに限定されず、ゲートドライバ54
4aは、別の信号を供給することも可能である。
【0460】
ソースドライバ544bは、シフトレジスタ等を有する。ソースドライバ544bは、
端子部547を介して、シフトレジスタを駆動するための信号の他、データ信号の元とな
る信号(画像信号)が入力される。ソースドライバ544bは、画像信号を元に画素回路
541に書き込むデータ信号を生成する機能を有する。また、ソースドライバ544bは
、スタートパルス、クロック信号等が入力されて得られるパルス信号に従って、データ信
号の出力を制御する機能を有する。また、ソースドライバ544bは、データ信号が与え
られる配線(以下、信号線DL_1乃至DL_Yという)の電位を制御する機能を有する
。または、ソースドライバ544bは、初期化信号を供給することができる機能を有する
。ただし、これに限定されず、ソースドライバ544bは、別の信号を供給することも可
能である。
【0461】
ソースドライバ544bは、例えば複数のアナログスイッチなどを用いて構成される。
ソースドライバ544bは、複数のアナログスイッチを順次オン状態にすることにより、
画像信号を時分割した信号をデータ信号として出力できる。また、シフトレジスタなどを
用いてソースドライバ544bを構成してもよい。
【0462】
複数の画素回路541のそれぞれは、走査信号が与えられる複数の走査線GLの一つを
介してパルス信号が入力され、データ信号が与えられる複数の信号線DLの一つを介して
データ信号が入力される。また、複数の画素回路541のそれぞれは、ゲートドライバ5
44aによりデータ信号のデータの書き込み及び保持が制御される。例えば、m行n列目
の画素回路541は、走査線GL_m(mはX以下の自然数)を介してゲートドライバ5
44aからパルス信号が入力され、走査線GL_mの電位に応じて信号線DL_n(nは
Y以下の自然数)を介してソースドライバ544bからデータ信号が入力される。
【0463】
図41(A)に示す保護回路546は、例えば、ゲートドライバ544aと画素回路5
41の間の配線である走査線GLに接続される。または、保護回路546は、ソースドラ
イバ544bと画素回路541の間の配線である信号線DLに接続される。または、保護
回路546は、ゲートドライバ544aと端子部547との間の配線に接続することがで
きる。または、保護回路546は、ソースドライバ544bと端子部547との間の配線
に接続することができる。なお、端子部547は、外部の回路から表示装置に電源及び制
御信号、及び画像信号を入力するための端子が設けられた部分をいう。
【0464】
保護回路546は、自身が接続する配線に一定の範囲外の電位が与えられたときに、該
配線と別の配線とを導通状態にする回路である。
【0465】
図41(A)に示すように、画素部542と駆動回路部544にそれぞれ保護回路54
6を設けることにより、ESD(Electro Static Discharge:
静電気放電)などにより発生する過電流に対する表示装置の耐性を高めることができる。
ただし、保護回路546の構成はこれに限定されず、例えば、ゲートドライバ544aに
保護回路546を接続した構成、またはソースドライバ544bに保護回路546を接続
した構成とすることもできる。あるいは、端子部547に保護回路546を接続した構成
とすることもできる。
【0466】
また、図41(A)においては、ゲートドライバ544aとソースドライバ544bに
よって駆動回路部544を形成している例を示しているが、この構成に限定されない。例
えば、ゲートドライバ544aのみを形成し、別途用意されたソースドライバ回路が形成
された基板(例えば、単結晶半導体膜、多結晶半導体膜で形成された駆動回路基板)を実
装する構成としても良い。
【0467】
また、図41(A)に示す複数の画素回路541は、例えば、図41(B)に示す構成
とすることができる。
【0468】
図41(B)に示す画素回路541は、液晶素子570と、トランジスタ550と、容
量素子560と、を有する。
【0469】
トランジスタ550として、先の実施の形態に示すトランジスタを適宜適用することが
できる。
【0470】
液晶素子570の一対の電極の一方の電位は、画素回路541の仕様に応じて適宜設定
される。液晶素子570は、書き込まれるデータにより配向状態が設定される。なお、複
数の画素回路541のそれぞれが有する液晶素子570の一対の電極の一方に共通の電位
(コモン電位)を与えてもよい。また、各行の画素回路541の液晶素子570の一対の
電極の一方に異なる電位を与えてもよい。
【0471】
m行n列目の画素回路541において、トランジスタ550のソース電極またはドレイ
ン電極の一方は、信号線DL_nに電気的に接続され、他方は液晶素子570の一対の電
極の他方に電気的に接続される。また、トランジスタ550のゲート電極は、走査線GL
_mに電気的に接続される。トランジスタ550は、オン状態またはオフ状態になること
により、データ信号のデータの書き込みを制御する機能を有する。
【0472】
容量素子560の一対の電極の一方は、電位が供給される配線(以下、電位供給線VL
)に電気的に接続され、他方は、液晶素子570の一対の電極の他方に電気的に接続され
る。なお、電位供給線VLの電位の値は、画素回路541の仕様に応じて適宜設定される
。容量素子560は、書き込まれたデータを保持する保持容量としての機能を有する。
【0473】
例えば、図41(B)の画素回路541を有する表示装置では、例えば、図41(A)
に示すゲートドライバ544aにより各行の画素回路541を順次選択し、トランジスタ
550をオン状態にしてデータ信号のデータを書き込む。
【0474】
データが書き込まれた画素回路541は、トランジスタ550がオフ状態になることで
保持状態になる。これを行毎に順次行うことにより、画像を表示できる。
【0475】
また、図41(A)に示す複数の画素回路541は、例えば、図41(C)に示す構成
とすることができる。
【0476】
また、図41(C)に示す画素回路541は、トランジスタ552、554と、容量素
子562と、発光素子572と、を有する。ここでは、トランジスタ552及びトランジ
スタ554いずれか一方または双方に先の実施の形態に示すトランジスタを適宜適用する
ことができる。
【0477】
トランジスタ552のソース電極及びドレイン電極の一方は、データ信号が与えられる
配線(信号線DL_n)に電気的に接続される。さらに、トランジスタ552のゲート電
極は、ゲート信号が与えられる配線(走査線GL_m)に電気的に接続される。
【0478】
トランジスタ552は、オン状態またはオフ状態になることにより、データ信号のデー
タの書き込みを制御する機能を有する。
【0479】
トランジスタ552としては、しきい値電圧がプラスとなる電気特性(ノーマリーオフ
特性ともいう。)を有するトランジスタを適用することが好ましい。また、カットオフ電
流の低減されたトランジスタを適用することが好ましい。このため、実施の形態1に示す
100h、100j、100z、100n、100y、または実施の形態2に示すトラン
ジスタ100t、100w、111b、111e、111h、111kを適宜用いること
が好ましい。
【0480】
容量素子562の一対の電極の一方は、電位が与えられる配線(以下、電位供給線VL
_aという)に電気的に接続され、他方は、トランジスタ552のソース電極及びドレイ
ン電極の他方に電気的に接続される。
【0481】
容量素子562は、書き込まれたデータを保持する保持容量としての機能を有する。
【0482】
トランジスタ554のソース電極及びドレイン電極の一方は、電位供給線VL_aに電
気的に接続される。さらに、トランジスタ554のゲート電極は、トランジスタ552の
ソース電極及びドレイン電極の他方に電気的に接続される。
【0483】
トランジスタ554は、オン状態又はオフ状態になることにより、発光素子572に流
れる電流を制御する機能を有する。
【0484】
駆動トランジスタとして機能するトランジスタ554は、発光素子572に十分な輝度
を得るために、オン電流の高いトランジスタを適用することが求められる。また、表示装
置の駆動周波数を向上させてより滑らかな動画表示を実現するために、電界効果移動度が
高いトランジスタを適用することが求められる。このため、トランジスタ554として、
実施の形態2に示すトランジスタ100u、100x、111c、111f、111i、
111mを適宜用いることが好ましい。
【0485】
トランジスタのチャネル長を小さくすることで、高い電界効果移動度が得られる一方で
、トランジスタのしきい値電圧がマイナス方向に変動(シフト)する場合がある。トラン
ジスタ554のチャネル長を0.5μm以上4.5μm以下とし、且つ実施の形態2に示
すトランジスタ111i、111mのように、電気的に接続された一対のゲート電極を設
けることで、オン電流及び電界効果移動度を向上させつつ、しきい値電圧のマイナス方向
への変動を抑制することができる。
【0486】
一方、選択トランジスタとして機能するトランジスタ552は、トランジスタ554ほ
ど高い電界効果移動度を要しないため、そのチャネル長をトランジスタ554のチャネル
長よりも大きくすることで、トランジスタ554のしきい値電圧のマイナス方向への変動
(シフト)を抑制する。これによって、表示装置の高速動作及び低消費電力化を図ること
が可能となる。
【0487】
例えば、トランジスタ554のチャネル長を0.5μm以上4.5μm以下とした場合
には、トランジスタ552のチャネル長を6μmとすることができる。ただし、トランジ
スタ552のチャネル長は、少なくともトランジスタ554のチャネル長よりも大きけれ
ばよく、表示装置に求められる特性によって適宜設定することができる。
【0488】
また、トランジスタ552のカットオフ電流の値は、トランジスタ554のカットオフ
電流の値よりも小さいことが好ましい。例えば、トランジスタ552のチャネル長とチャ
ネル幅の比(L/W比ともいう)をトランジスタ554のL/W比よりも大きくすること
により、トランジスタ552のカットオフ電流の値を、トランジスタ554のカットオフ
電流の値よりも小さくできる。また、トランジスタ554とトランジスタ552のチャネ
ル幅が同等の場合には、トランジスタ552のチャネル長をトランジスタ554のチャネ
ル長よりも大きくすることで、トランジスタ552のカットオフ電流の値を低減すること
が可能となる。
【0489】
なお、トランジスタ552を、電気的に接続された一対のゲート電極を有する構成とし
てもよい。ただし、トランジスタ552をシングルゲート構造とすることで、一対のゲー
ト電極間の接続部となるための領域を削減することができるため、トランジスタの面積を
縮小することができ、画素の開口率の低下を抑制することができる。なお、表示装置が大
型化した場合では、画素の選択トランジスタとして機能するトランジスタ552へのゲー
ト配線の寄生容量が大きくなるため、シングルゲート構造とすることが効果的である。
【0490】
発光素子572のアノード及びカソードの一方は、電位供給線VL_bに電気的に接続
され、他方は、トランジスタ554のソース電極及びドレイン電極の他方に電気的に接続
される。
【0491】
発光素子572としては、例えば有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子とも
いう)などを用いることができる。ただし、発光素子572としては、これに限定されず
、無機材料からなる無機EL素子を用いても良い。
【0492】
なお、電位供給線VL_a及び電位供給線VL_bの一方には、高電源電位VDDが与
えられ、他方には、低電源電位VSSが与えられる。
【0493】
図41(C)の画素回路541を有する表示装置では、例えば、図41(A)に示すゲ
ートドライバ544aにより各行の画素回路541を順次選択し、トランジスタ552を
オン状態にしてデータ信号のデータを書き込む。
【0494】
データが書き込まれた画素回路541は、トランジスタ552がオフ状態になることで
保持状態になる。さらに、書き込まれたデータ信号の電位に応じてトランジスタ554の
ソース電極とドレイン電極の間に流れる電流量が制御され、発光素子572は、流れる電
流量に応じた輝度で発光する。これを行毎に順次行うことにより、画像を表示できる。
【0495】
また、図41(A)に示す複数の画素回路541は、例えば、図41(D)に示す構成
とすることができる。
【0496】
図41(D)に示す画素回路541は、データ信号のデータ書き込みを制御する選択ト
ランジスタとして機能するトランジスタ552と、駆動トランジスタとして機能するトラ
ンジスタ554と、トランジスタ556と、容量素子562と、発光素子572と、を有
する。ここでは、トランジスタ552として、実施の形態2に示すトランジスタ100t
、100w、111b、111e、111h、111kを適宜適用することが可能であり
、トランジスタ554として、実施の形態2に示すトランジスタ100u、100x、1
11c、111f、111i、111mを適宜適用することが可能である。
【0497】
トランジスタ552のソース電極及びドレイン電極の一方は、データ信号が与えられる
配線(信号線DL_n)に電気的に接続される。さらにトランジスタ552のゲート電極
は、ゲート信号が与えられる配線(走査線GL_m)に電気的に接続される。
【0498】
トランジスタ552は、オン状態又はオフ状態となることにより、データ信号のデータ
の書き込みを制御する機能を有する。すなわち、トランジスタ552は、選択トランジス
タとしての機能を有する。
【0499】
トランジスタ554のソース電極及びドレイン電極の一方は、電位が与えられる配線(
以下、電位供給線VL_a1という)と電気的に接続され、トランジスタ554のソース
電極及びドレイン電極の他方は、発光素子572の一方の電極に電気的に接続される。さ
らにトランジスタ554のゲート電極は、トランジスタ552のソース電極及びドレイン
電極の他方、及び容量素子562の一方の電極に電気的に接続される。
【0500】
トランジスタ556のソース電極及びドレイン電極の一方は、データの基準電位が与え
られる配線MLと接続され、トランジスタ556のソース電極及びドレイン電極の他方は
、発光素子572の一方の電極、及び容量素子562の他方の電極に電気的に接続される
。さらに、トランジスタ556のゲート電極は、ゲート信号が与えられる走査線GL_m
に電気的に接続される。
【0501】
トランジスタ556は、発光素子572に流れる電流を調整する機能を有する。例えば
、トランジスタ554のしきい値電圧や電界効果移動度のばらつき、又はトランジスタ5
54が劣化した場合にトランジスタ556のソース電極及びドレイン電極の一方が接続さ
れた配線MLに流れる電流をモニタリングすることで、発光素子572に流れる電流を補
正することができる。配線MLに与えられる電位としては、例えば、発光素子572のし
きい値電圧以下の電圧とすることができる。
【0502】
本実施の形態において、トランジスタ556のチャネル長は、例えば、トランジスタ5
54のチャネル長よりも大きくすることが好ましい。なお、トランジスタ556はシング
ルゲート構造としてもよいし、トランジスタ554と同様にデュアルゲート構造としても
よい。ただし、トランジスタ556をシングルゲート構造とすると、第1のゲート電極と
第2のゲート電極を接続するための領域を削除することができるため、トランジスタの面
積を縮小することができる。これによって、画素の開口率を増加させることができるため
、好ましい。
【0503】
容量素子562の一対の電極の一方は、トランジスタ552のソース電極及びドレイン
電極の他方、及びトランジスタ554のゲート電極と電気的に接続され、容量素子562
の一対の電極の他方は、トランジスタ554のソース電極及びドレイン電極の他方、トラ
ンジスタ556のソース電極及びドレイン電極の他方、及び発光素子572の一方の電極
に電気的に接続される。
【0504】
発光素子572の一対の電極の一方は、トランジスタ554のソース電極及びドレイン
電極の他方、容量素子562の他方の電極、及びトランジスタ556のソース電極及びド
レイン電極の他方と電気的に接続される。また、発光素子572の一対の電極の他方は、
カソードとして機能する電位供給線VL_bに電気的に接続される。
【0505】
また、配線MLと平行な方向に延伸した電位供給線VL_a2が設けられる。電位供給
線VL_a2は、アノード線として機能する電位供給線VL_a1と接続しており、電位
供給線VL_a1、VL_a2の配線抵抗を低減することが可能である。この結果、大面
積基板を用いた表示装置において、配線の電圧降下を低減することが可能であり、表示装
置の輝度ムラを低減することができる。
【0506】
電位供給線VL_a1、VL_a2と、電位供給線VL_bとの一方には、高電源電位
VDDが与えられ、他方には低電源電位VSSが与えられる。図41(D)に示す構成に
おいては、電位供給線VL_a1、VL_a2に高電源電位VDDを、電位供給線VL_
bに低電源電位VSSを、それぞれ与える構成としている。
【0507】
図41(D)の画素回路541を有する表示装置では、例えば、図41(A)に示すゲ
ートドライバ544aにより各行の画素回路541を順次選択し、トランジスタ552を
オン状態にしてデータ信号のデータを書き込む。
【0508】
データが書き込まれた画素回路541は、トランジスタ552がオフ状態になることで
保持状態となる。さらにトランジスタ552は、容量素子562と接続しているため、書
き込まれたデータを長時間保持することが可能となる。また、トランジスタ554により
、ソース電極とドレイン電極の間に流れる電流量が制御され、発光素子572は、流れる
電流量に応じた輝度で発光する。これを行毎に順次行うことにより、画像を表示できる。
【0509】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いること
ができる。
【0510】
(実施の形態8)
本実施の形態においては、先の実施の形態で例示したトランジスタを用いた表示装置の
一例について、図42乃至図44を用いて以下説明を行う。
【0511】
図42は、表示装置の一例を示す上面図である。図42示す表示装置700は、第1の
基板701上に設けられた画素部702と、第1の基板701に設けられたソースドライ
バ回路部704及びゲートドライバ回路部706と、画素部702、ソースドライバ回路
部704、及びゲートドライバ回路部706を囲むように配置されるシール材712と、
第1の基板701に対向するように設けられる第2の基板705と、を有する。なお、第
1の基板701と第2の基板705は、シール材712によって封止されている。すなわ
ち、画素部702、ソースドライバ回路部704、及びゲートドライバ回路部706は、
第1の基板701とシール材712と第2の基板705によって封止されている。なお、
図42には図示しないが、第1の基板701と第2の基板705の間には表示素子が設け
られる。
【0512】
また、表示装置700は、第1の基板701上のシール材712によって囲まれている
領域とは異なる領域に、画素部702、ソースドライバ回路部704、及びゲートドライ
バ回路部706と電気的に接続されるFPC端子部708(FPC:Flexible
printed circuit)が設けられる。また、FPC端子部708には、FP
C716が接続され、FPC716によって画素部702、ソースドライバ回路部704
、及びゲートドライバ回路部706に各種信号等が供給される。また、画素部702、ソ
ースドライバ回路部704、ゲートドライバ回路部706、及びFPC端子部708には
、信号線710が各々接続されている。FPC716により供給される各種信号等は、信
号線710を介して、画素部702、ソースドライバ回路部704、ゲートドライバ回路
部706、及びFPC端子部708に与えられる。
【0513】
また、表示装置700にゲートドライバ回路部706を複数設けてもよい。また、表示
装置700としては、ソースドライバ回路部704、及びゲートドライバ回路部706を
画素部702と同じ第1の基板701に形成している例を示しているが、この構成に限定
されない。例えば、ゲートドライバ回路部706のみを第1の基板701に形成しても良
い、またはソースドライバ回路部704のみを第1の基板701に形成しても良い。この
場合、ソースドライバ回路またはゲートドライバ回路等が形成された基板(例えば、単結
晶半導体膜、多結晶半導体膜で形成された駆動回路基板)を、第1の基板701に実装す
る構成としても良い。なお、別途形成した駆動回路基板の接続方法は、特に限定されるも
のではなく、COG方法、ワイヤボンディング方法などを用いることができる。
【0514】
また、表示装置700が有する画素部702、ソースドライバ回路部704及びゲート
ドライバ回路部706は、複数のトランジスタを有しており、本発明の一態様の半導体装
置であるトランジスタを適用することができる。
【0515】
また、表示装置700は、様々な素子を有することが出来る。該素子は、例えば、液晶
素子、EL(エレクトロルミネッセンス)素子(有機物及び無機物を含むEL素子、有機
EL素子、無機EL素子)、LED(白色LED、赤色LED、緑色LED、青色LED
など)、トランジスタ(電流に応じて発光するトランジスタ)、電子放出素子、電子イン
ク、電気泳動素子、グレーティングライトバルブ(GLV)、プラズマディスプレイ(P
DP)、MEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム)を用いた表示素子、
デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、DMS(デジタル・マイクロ・シャッター
)、MIRASOL(登録商標)、IMOD(インターフェアレンス・モジュレーション
)素子、シャッター方式のMEMS表示素子、光干渉方式のMEMS表示素子、エレクト
ロウェッティング素子、圧電セラミックディスプレイ、カーボンナノチューブを用いた表
示素子などの少なくとも一つを有している。これらの他にも、電気的または磁気的作用に
より、コントラスト、輝度、反射率、透過率などが変化する表示媒体を有していても良い
。EL素子を用いた表示装置の一例としては、ELディスプレイなどがある。電子放出素
子を用いた表示装置の一例としては、フィールドエミッションディスプレイ(FED)又
はSED方式平面型ディスプレイ(SED:Surface-conduction E
lectron-emitter Display)などがある。液晶素子を用いた表示
装置の一例としては、液晶ディスプレイ(透過型液晶ディスプレイ、半透過型液晶ディス
プレイ、反射型液晶ディスプレイ、直視型液晶ディスプレイ、投射型液晶ディスプレイ)
などがある。電子インク又は電気泳動素子を用いた表示装置の一例としては、電子ペーパ
ーなどがある。なお、半透過型液晶ディスプレイや反射型液晶ディスプレイを実現する場
合には、画素電極の一部、または、全部が、反射電極としての機能を有するようにすれば
よい。例えば、画素電極の一部、または、全部が、アルミニウム、銀、などを有するよう
にすればよい。さらに、その場合、反射電極の下に、SRAMなどの記憶回路を設けるこ
とも可能である。これにより、さらに、消費電力を低減することができる。
【0516】
なお、表示装置700における表示方式は、プログレッシブ方式やインターレース方式
等を用いることができる。また、カラー表示する際に画素で制御する色要素としては、R
GB(Rは赤、Gは緑、Bは青を表す)の三色に限定されない。例えば、Rの画素とGの
画素とBの画素とW(白)の画素の四画素から構成されてもよい。または、ペンタイル配
列のように、RGBのうちの2色分で一つの色要素を構成し、色要素よって、異なる2色
を選択して構成してもよい。またはRGBに、イエロー、シアン、マゼンタ等を一色以上
追加してもよい。なお、色要素のドット毎にその表示領域の大きさが異なっていてもよい
。ただし、開示する発明はカラー表示の表示装置に限定されるものではなく、モノクロ表
示の表示装置に適用することもできる。
【0517】
本実施の形態においては、表示素子として液晶素子及びEL素子を用いる構成について
図43及び図44を用いて説明する。なお、図43は、図42に示す一点鎖線Q-Rに
おける断面図であり、表示素子として液晶素子を用いた構成である。また、図44は、図
42に示す一点鎖線Q-Rにおける断面図であり、表示素子としてEL素子を用いた構成
である。
【0518】
図43(A)及び図44(A)は、第1の基板701、第2の基板705としてガラス
等を用いた表示装置700であり、機械的強度が高い。また、図43(B)及び図44
B)は、第1の基板701、第2の基板705としてプラスチック等を用いた表示装置7
00aであり、可撓性を有する。なお、第1の基板701は、トランジスタ750、75
2、容量素子790が形成された絶縁膜719と接着剤720を介して固定されている。
また、第2の基板705は、着色膜736、遮光膜738等が形成された絶縁膜739と
接着剤740を介して固定されている。
【0519】
まず、図43及び図44に示す共通部分について最初に説明し、次に異なる部分につい
て以下説明する。
【0520】
<表示装置の共通部分に関する説明>
図43及び図44に示す表示装置700、700aは、引き回し配線部711と、画素
部702と、ソースドライバ回路部704と、FPC端子部708と、を有する。また、
引き回し配線部711は、信号線710を有する。また、画素部702は、トランジスタ
750及び容量素子790を有する。また、ソースドライバ回路部704は、トランジス
タ752を有する。
【0521】
トランジスタ750及びトランジスタ752は、先の実施の形態に示すトランジスタの
構造を適宜用いることができる。
【0522】
本実施の形態で用いるトランジスタは、高純度化し、酸素欠損の形成を抑制した酸化物
半導体膜を有する。該トランジスタは、オフ状態における電流値(オフ電流値)を低くす
ることができる。よって、画像信号等の電気信号の保持時間を長くすることができ、電源
オン状態では書き込み間隔も長く設定できる。よって、リフレッシュ動作の頻度を少なく
することができるため、消費電力を抑制する効果を奏する。
【0523】
また、本実施の形態で用いるトランジスタは、比較的高い電界効果移動度が得られるた
め、高速駆動が可能である。例えば、このような高速駆動が可能なトランジスタを液晶表
示装置に用いることで、画素部のスイッチングトランジスタと、駆動回路部に使用するド
ライバトランジスタを同一基板上に形成することができる。すなわち、別途駆動回路とし
て、シリコンウェハ等により形成された半導体装置を用いる必要がないため、半導体装置
の部品点数を削減することができる。また、画素部においても、高速駆動が可能なトラン
ジスタを用いることで、高画質な画像を提供することができる。
【0524】
また、図43及び図44において、トランジスタ750、トランジスタ752、及び容
量素子790上に、絶縁膜766及び平坦化絶縁膜770が設けられている。
【0525】
絶縁膜766としては、先の実施の形態に示す絶縁膜126と、同様の材料及び作製方
法により形成することができる。また、平坦化絶縁膜770としては、ポリイミド樹脂、
アクリル樹脂、ポリイミドアミド樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリアミド樹脂、エポ
キシ樹脂等の耐熱性を有する有機材料を用いることができる。なお、これらの材料で形成
される絶縁膜を複数積層させることで、平坦化絶縁膜770を形成してもよい。また、平
坦化絶縁膜770を設けない構成としてもよい。
【0526】
また、信号線710は、トランジスタ750、752のソース電極及びドレイン電極と
して機能する導電膜と同じ工程で形成される。なお、信号線710は、トランジスタ75
0、752のゲート電極として機能する導電膜を用いてもよい。信号線710として、例
えば、銅元素を含む材料を用いた場合、配線抵抗に起因する信号遅延等が少なく、大画面
での表示が可能となる。
【0527】
また、FPC端子部708は、接続電極760、異方性導電膜780、及びFPC71
6を有する。なお、接続電極760は、トランジスタ750、752のソース電極及びド
レイン電極として機能する導電膜と同じ工程で形成される。また、接続電極760は、F
PC716が有する端子と異方性導電膜780を介して、電気的に接続される。
【0528】
また、第1の基板701及び第2の基板705としては、例えばガラス基板を用いるこ
とができる。また、第1の基板701及び第2の基板705として、可撓性を有する基板
を用いてもよい。該可撓性を有する基板としては、例えばプラスチック基板等が挙げられ
る。
【0529】
また、第1の基板701と第2の基板705の間には、構造体778が設けられる。構
造体778は、絶縁膜を選択的にエッチングすることで得られる柱状のスペーサであり、
第1の基板701と第2の基板705の間の距離(セルギャップ)を制御するために設け
られる。なお、構造体778として、球状のスペーサを用いていても良い。
【0530】
また、第2の基板705側には、ブラックマトリクスとして機能する遮光膜738と、
カラーフィルタとして機能する着色膜736と、遮光膜738及び着色膜736に接する
絶縁膜734が設けられる。
【0531】
<表示素子として液晶素子を用いる表示装置の構成例>
図43に示す表示装置700、700aは、液晶素子775を有する。液晶素子775
は、導電膜772、導電膜774、及び液晶層776を有する。導電膜774は、第2の
基板705側に設けられ、対向電極としての機能を有する。図43に示す表示装置700
、700aは、導電膜772と導電膜774に印加される電圧によって、液晶層776の
配向状態が変わることによって光の透過、非透過が制御され画像を表示することができる
【0532】
また、導電膜772は、トランジスタ750が有するソース電極及びドレイン電極とし
て機能する導電膜に接続される。導電膜772は、平坦化絶縁膜770上に形成され画素
電極、すなわち表示素子の一方の電極として機能する。また、導電膜772は、反射電極
としての機能を有する。図43に示す表示装置700、700aは、外光を利用し導電膜
772で光を反射して着色膜736を介して表示する、所謂反射型のカラー液晶表示装置
である。
【0533】
導電膜772としては、可視光において透光性のある導電膜、または可視光において反
射性のある導電膜を用いることができる。可視光において透光性のある導電膜としては、
例えば、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)の中から選ばれた一種を含む材
料を用いるとよい。可視光において反射性のある導電膜としては、例えば、アルミニウム
、または銀を含む材料を用いるとよい。本実施の形態においては、導電膜772として、
可視光において、反射性のある導電膜を用いる。
【0534】
また、図43に示す表示装置700、700aにおいては、画素部702の平坦化絶縁
膜770の一部に凹凸が設けられている。該凹凸は、例えば、平坦化絶縁膜770を有機
樹脂膜等で形成し、該有機樹脂膜の表面に凹部または凸部を設けることで形成することが
できる。また、反射電極として機能する導電膜772は、上記凹凸に沿って形成される。
したがって、外光が導電膜772に入射した場合において、導電膜772の表面で光を乱
反射することが可能となり、視認性を向上させることができる。
【0535】
なお、図43に示す表示装置700、700aは、反射型のカラー液晶表示装置につい
て例示したが、これに限定されない、例えば、導電膜772を可視光において、透光性の
ある導電膜を用いることで透過型のカラー液晶表示装置としてもよい。透過型のカラー液
晶表示装置の場合、平坦化絶縁膜770に設けられる凹凸については、設けない構成とし
てもよい。
【0536】
なお、図43において図示しないが、導電膜772、774の液晶層776と接する側
に、それぞれ配向膜を設ける構成としてもよい。また、図43において図示しないが、偏
光部材、位相差部材、反射防止部材などの光学部材(光学基板)などは適宜設けてもよい
。例えば、偏光基板及び位相差基板による円偏光を用いてもよい。また、光源としてバッ
クライト、サイドライトなどを用いてもよい。
【0537】
表示素子として液晶素子を用いる場合、サーモトロピック液晶、低分子液晶、高分子液
晶、高分子分散型液晶、強誘電性液晶、反強誘電性液晶等を用いることができる。これら
の液晶材料は、条件により、コレステリック相、スメクチック相、キュービック相、カイ
ラルネマチック相、等方相等を示す。
【0538】
また、横電界方式を採用する場合、配向膜を用いないブルー相を示す液晶を用いてもよ
い。ブルー相は液晶相の一つであり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリ
ック相から等方相へ転移する直前に発現する相である。ブルー相は狭い温度範囲でしか発
現しないため、温度範囲を改善するために数重量%以上のカイラル剤を混合させた液晶組
成物を用いて液晶層に用いる。ブルー相を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物は、
応答速度が短く、光学的等方性であるため配向処理が不要であり、視野角依存性が小さい
。また配向膜を設けなくてもよいのでラビング処理も不要となるため、ラビング処理によ
って引き起こされる静電破壊を防止することができ、作製工程中の液晶表示装置の不良や
破損を軽減することができる。
【0539】
また、表示素子として液晶素子を用いる場合、TN(Twisted Nematic
)モード、IPS(In-Plane-Switching)モード、FFS(Frin
ge Field Switching)モード、ASM(Axially Symme
tric aligned Micro-cell)モード、OCB(Optical
Compensated Birefringence)モード、FLC(Ferroe
lectric Liquid Crystal)モード、AFLC(AntiFerr
oelectric Liquid Crystal)モードなどを用いることができる
【0540】
また、ノーマリブラック型の液晶表示装置、例えば垂直配向(VA)モードを採用した
透過型の液晶表示装置としてもよい。垂直配向モードとしては、いくつか挙げられるが、
例えば、MVA(Multi-Domain Vertical Alignment)
モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード
、ASVモードなどを用いることができる。
【0541】
<表示素子として発光素子を用いる表示装置>
図44に示す表示装置700、700aは、発光素子782を有する。発光素子782
は、導電膜784、EL層786、及び導電膜788を有する。図44に示す表示装置7
00、700aは、発光素子782が有するEL層786が発光することによって、画像
を表示することができる。
【0542】
また、導電膜784は、トランジスタ750が有するソース電極及びドレイン電極とし
て機能する導電膜に接続される。導電膜784は、平坦化絶縁膜770上に形成され画素
電極、すなわち表示素子の一方の電極として機能する。導電膜784としては、可視光に
おいて透光性のある導電膜、または可視光において反射性のある導電膜を用いることがで
きる。可視光において透光性のある導電膜としては、例えば、インジウム(In)、亜鉛
(Zn)、錫(Sn)の中から選ばれた一種を含む材料を用いるとよい。可視光において
反射性のある導電膜としては、例えば、アルミニウム、または銀を含む材料を用いるとよ
い。
【0543】
また、図44に示す表示装置700、700aには、平坦化絶縁膜770及び導電膜7
84上に絶縁膜730が設けられる。絶縁膜730は、導電膜784の一部を覆う。なお
、発光素子782はトップエミッション構造である。したがって、導電膜788は透光性
を有し、EL層786が発する光を透過する。なお、本実施の形態においては、トップエ
ミッション構造について、例示するが、これに限定されない。例えば、導電膜784側に
光を射出するボトムエミッション構造や、導電膜784及び導電膜788の双方に光を射
出するデュアルエミッション構造にも適用することができる。
【0544】
また、発光素子782と重なる位置に、着色膜736が設けられ、絶縁膜730と重な
る位置、引き回し配線部711、及びソースドライバ回路部704に遮光膜738が設け
られている。また、着色膜736及び遮光膜738は、絶縁膜734で覆われている。ま
た、発光素子782と絶縁膜734の間は封止膜732で充填されている。なお、図44
に示す表示装置700、700aにおいては、着色膜736を設ける構成について例示し
たが、これに限定されない。例えば、EL層786を塗り分けにより形成する場合におい
ては、着色膜736を設けない構成としてもよい。
【0545】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いること
ができる。
【0546】
(実施の形態9)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置を用いる発光装置の一態様について説
明する。なお、本実施の形態では、発光装置の画素部の構成について、図45を用いて説
明する。
【0547】
図45では、第1の基板502上に複数のFET500が形成されており、各FET5
00は、各発光素子(504R、504G、504B、504W)と電気的に接続されて
いる。具体的には、各FET500は発光素子が有する第1の導電膜506と電気的に接
続されている。なお、各発光素子(504R、504G、504B、504W)は、第1
の導電膜506、第2の導電膜507、EL層510、及び第3の導電膜512によって
構成される。
【0548】
また、各発光素子(504R、504G、504B、504W)に対向する位置に、着
色層(514R、514G、514B、514W)がそれぞれ設けられている。なお、着
色層(514R、514G、514B、514W)としては、第2の基板516に接して
設けられている。また、第1の基板502と第2の基板516との間には封止膜518が
設けられている。封止膜518としては、例えば、ガラスフリットなどのガラス材料や、
二液混合型の樹脂などの常温で硬化する硬化樹脂、光硬化性の樹脂、熱硬化性の樹脂など
の樹脂材料を用いることができる。
【0549】
また、隣り合う第1の導電膜506及び第2の導電膜507の端部を覆うように隔壁5
08が設けられている。また、隔壁508上には、構造体509が設けられている。なお
、第1の導電膜506は、反射電極としての機能と、発光素子の陽極としての機能を有す
る。また、第2の導電膜507は、各発光素子の光路長を調整する機能を有する。また、
第2の導電膜507上には、EL層510が形成されており、EL層510上には、第3
の導電膜512が形成されている。また、第3の導電膜512は、半透過・半反射電極と
して機能と、発光素子の陰極としての機能を有する。また、構造体509は、発光素子と
着色層の間に設けられ、スペーサとしての機能を有する。
【0550】
また、EL層510については、各発光素子(504R、504G、504B、504
W)で共通して用いることができる。なお、各発光素子(504R、504G、504B
、504W)は、第1の導電膜506と第3の導電膜512によってEL層510からの
発光を共振させる微小光共振器(マイクロキャビティともいう)構造を有しており、同じ
EL層510を有していても異なる波長の光のスペクトルを狭線化して取り出すことがで
きる。具体的には、各発光素子(504R、504G、504B、504W)は、EL層
510の下方に設けられる第2の導電膜507の膜厚をそれぞれ調整することによって、
EL層510から得られるスペクトルを所望の発光スペクトルとし、色純度の良い発光を
得ることができる。したがって、図45に示す構成とすることにより、EL層の塗り分け
の工程が不要となり、高精細化を実現することが容易となる。
【0551】
また、図45に示す発光装置は、着色層(カラーフィルタともいう)によって、さらに
所望の発光スペクトルの光が射出される構成である。したがって、マイクロキャビティ構
造とカラーフィルタとを組み合わせることで、さらに色純度の良い発光を得ることができ
る。具体的には、発光素子504Rは、赤色発光が得られるように発光素子の光路長が調
整されており、着色層514Rを通って矢印の方向に赤色の光が射出される。また、発光
素子504Gは、緑色発光が得られるように発光素子の光路長が調整されており、着色層
514Gを通って矢印の方向に緑色の光が射出される。また、発光素子504Bは、青色
発光が得られるように発光素子の光路長が調整されており、着色層514Bを通って矢印
の方向に青色の光が射出される。また、発光素子504Wは、白色発光が得られるように
発光素子の光路長が調整されており、着色層514Wを通って矢印の方向に白色の光が射
出される。
【0552】
なお、各発光素子の光路長の調整方法については、これに限定されない。例えば、各発
光素子において、EL層510の膜厚を調整して光路長を調整してもよい。
【0553】
また、着色層(514R、514G、514B)としては、特定の波長帯域の光を透過
する機能を有していればよく、例えば、赤色の波長帯域の光を透過する赤色(R)のカラ
ーフィルタ、緑色の波長帯域の光を透過する緑色(G)のカラーフィルタ、青色の波長帯
域の光を透過する青色(B)のカラーフィルタなどを用いることができる。また、着色層
514Wとしては、例えば、顔料等を含まないアクリル系の樹脂材料等を用いればよい。
着色層(514R、514G、514B、514W)としては、様々な材料を用いて、印
刷法、インクジェット法、フォトリソグラフィ技術を用いたエッチング方法などで形成す
ることができる。
【0554】
第1の導電膜506としては、例えば、反射率が高い(可視光の反射率が40%以上1
00%以下、好ましくは70%以上100%以下)金属膜を用いることができる。第1の
導電膜506としては、アルミニウム、銀、または、これらの金属材料を含む合金(例え
ば、銀とパラジウムと銅の合金)を、単層または積層して形成することができる。
【0555】
また、第2の導電膜507としては、例えば、導電性の金属酸化物を用いて形成するこ
とができる。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、インジ
ウムスズ酸化物(Indium Tin Oxide、ITOともいう)、インジウム亜
鉛酸化物(Indium Zinc Oxide)、またはこれらの金属酸化物材料に酸
化シリコン、酸化タングステンを含ませたものを用いることができる。第2の導電膜50
7を設けることによって、後に形成されるEL層510と第1の導電膜506との間に形
成される絶縁膜の生成を抑制することができるので好適である。また、第1の導電膜50
6の下層に、第2の導電膜507として用いる導電性の金属酸化物を形成してもよい。
【0556】
また、第3の導電膜512としては、反射性を有する導電性材料と透光性を有する導電
性材料とにより形成され、可視光の反射率が20%以上80%以下、好ましくは40%以
上70%以下であると好ましい。第3の導電膜512としては、例えば、銀、マグネシウ
ム、またはこれらの金属材料を含む合金等を薄く(例えば、10nm以下)形成し、その
後、第2の導電膜507に用いることのできる導電性の金属酸化物を形成すればよい。
【0557】
以上に説明した構成においては、第2の基板516側に発光を取り出す構造(トップエ
ミッション構造)の発光装置となるが、FET500が形成されている第1の基板501
側に光を取り出す構造(ボトムエミッション構造)、または第1の基板501側及び第2
の基板516側の双方に光を取り出す構造(デュアルエミッション構造)の発光装置とし
ても良い。ボトムエミッション構造の場合、例えば、着色層(514R、514G、51
4B、514W)を第1の導電膜506の下方に形成する構成とすればよい。なお、光を
射出する側の基板には、透光性の基板を用いればよく、光を射出しない側の基板には、透
光性の基板及び遮光性の基板を用いることができる。
【0558】
また、図45においては、発光素子が4色(赤(R)、緑(G)、青(B)、白(W)
)の構成について例示したが、これに限定されない。例えば、発光素子が3色(赤(R)
、緑(G)、青(B))の構成としてもよい。
【0559】
(実施の形態10)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置を用いることができる表示モジュール
及び電子機器について、図46及び図47を用いて説明を行う。
【0560】
図46に示す表示モジュール8000は、上部カバー8001と下部カバー8002と
の間に、FPC8003に接続されたタッチパネル8004、FPC8005に接続され
た表示パネル8006、バックライト8007、フレーム8009、プリント基板801
0、バッテリー8011を有する。
【0561】
本発明の一態様の半導体装置は、例えば、表示パネル8006に用いることができる。
【0562】
上部カバー8001及び下部カバー8002は、タッチパネル8004及び表示パネル
8006のサイズに合わせて、形状や寸法を適宜変更することができる。
【0563】
タッチパネル8004は、抵抗膜方式または静電容量方式のタッチパネルを表示パネル
8006に重畳して用いることができる。また、表示パネル8006の対向基板(封止基
板)に、タッチパネル機能を持たせるようにすることも可能である。また、表示パネル8
006の各画素内に光センサを設け、光学式のタッチパネルとすることも可能である。
【0564】
バックライト8007は、光源8008を有する。なお、図46において、バックライ
ト8007上に光源8008を配置する構成について例示したが、これに限定さない。例
えば、バックライト8007の端部に光源8008を配置し、さらに光拡散板を用いる構
成としてもよい。なお、有機EL素子等の自発光型の発光素子を用いる場合、または反射
型パネル等の場合においては、バックライト8007を設けない構成としてもよい。
【0565】
フレーム8009は、表示パネル8006の保護機能の他、プリント基板8010の動
作により発生する電磁波を遮断するための電磁シールドとしての機能を有する。またフレ
ーム8009は、放熱板としての機能を有していてもよい。
【0566】
プリント基板8010は、電源回路、ビデオ信号及びクロック信号を出力するための信
号処理回路を有する。電源回路に電力を供給する電源としては、外部の商用電源であって
も良いし、別途設けたバッテリー8011による電源であってもよい。バッテリー801
1は、商用電源を用いる場合には、省略可能である。
【0567】
また、表示モジュール8000は、偏光板、位相差板、プリズムシートなどの部材を追
加して設けてもよい。
【0568】
図47(A)乃至図47(D)は、電子機器を示す図である。これらの電子機器は、筐
体600、表示部601、スピーカ603、LEDランプ604、操作キー605(電源
スイッチ、又は操作スイッチを含む)、接続端子606、センサ607(力、変位、位置
、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、
硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を
測定する機能を含むもの)、マイクロフォン608、等を有することができる。
【0569】
図47(A)はモバイルコンピュータであり、上述したものの他に、スイッチ609、
赤外線ポート620、等を有することができる。図47(B)は記録媒体を備えた携帯型
の画像再生装置(たとえば、DVD再生装置)であり、上述したものの他に、第2表示部
602、記録媒体読込部621、等を有することができる。図47(C)はテレビ受像器
であり、上述したものの他に、チューナ、画像処理部、等を有することができる。図47
(D)は持ち運び型テレビ受像器であり、上述したものの他に、信号の送受信が可能な充
電器627等を有することができる。
【0570】
図47(E)乃至図47(G)に、折りたたみ可能な携帯情報端末610を示す。図4
7(E)に展開した状態の携帯情報端末610を示す。図47(F)に展開した状態又は
折りたたんだ状態の一方から他方に変化する途中の状態の携帯情報端末610を示す。図
47(G)に折りたたんだ状態の携帯情報端末610を示す。携帯情報端末610は、折
りたたんだ状態では可搬性に優れ、展開した状態では、継ぎ目のない広い表示領域により
表示の一覧性に優れる。
【0571】
表示部612はヒンジ613によって連結された3つの筐体615に支持されている。
ヒンジ613を介して2つの筐体615間を屈曲させることにより、携帯情報端末610
を展開した状態から折りたたんだ状態に可逆的に変形させることができる。本発明の一態
様を適用して作製された表示装置を表示部612に用いることができる。例えば、曲率半
径1mm以上150mm以下で曲げることができる表示装置を適用できる。
【0572】
図47(A)乃至図47(G)に示す電子機器は、様々な機能を有することができる。
例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッ
チパネル機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア(プ
ログラム)によって処理を制御する機能、無線通信機能、無線通信機能を用いて様々なコ
ンピュータネットワークに接続する機能、無線通信機能を用いて様々なデータの送信又は
受信を行う機能、記録媒体に記録されているプログラム又はデータを読み出して表示部に
表示する機能、等を有することができる。さらに、複数の表示部を有する電子機器におい
ては、一つの表示部を主として画像情報を表示し、別の一つの表示部を主として文字情報
を表示する機能、または、複数の表示部に視差を考慮した画像を表示することで立体的な
画像を表示する機能、等を有することができる。さらに、受像部を有する電子機器におい
ては、静止画を撮影する機能、動画を撮影する機能、撮影した画像を自動または手動で補
正する機能、撮影した画像を記録媒体(外部又はカメラに内蔵)に保存する機能、撮影し
た画像を表示部に表示する機能、等を有することができる。なお、図47(A)乃至図4
7(G)に示す電子機器が有することのできる機能はこれらに限定されず、様々な機能を
有することができる。
【0573】
本実施の形態において述べた電子機器は、何らかの情報を表示するための表示部を有す
ることを特徴とする。なお、本発明の一態様の半導体装置は、表示部を有さない電子機器
にも適用することができる。
【0574】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いること
ができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11
図12
図13
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図15
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