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特開2024-129039ミトコンドリア機能を向上させる組成物および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129039
(43)【公開日】2024-09-26
(54)【発明の名称】ミトコンドリア機能を向上させる組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20240918BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240918BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20240918BHJP
   C12P 1/04 20060101ALI20240918BHJP
   A61K 35/74 20150101ALI20240918BHJP
   A61K 38/44 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240918BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240918BHJP
   A23K 10/18 20160101ALI20240918BHJP
   C12N 15/53 20060101ALN20240918BHJP
   C12N 15/31 20060101ALN20240918BHJP
【FI】
C12N1/20 A
C12N1/21 ZNA
A23L33/135
C12P1/04 Z
A61K35/74 A
A61K38/44
A61P43/00 107
A61P25/00
A61P21/00
A23K10/18
C12N1/21
C12N15/53
C12N15/31
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024096452
(22)【出願日】2024-06-14
(62)【分割の表示】P 2020561586の分割
【原出願日】2019-01-23
(31)【優先権主張番号】62/620,641
(32)【優先日】2018-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/721,979
(32)【優先日】2018-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】592017633
【氏名又は名称】ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】ルブクン ギャリー
(72)【発明者】
【氏名】ゴヴィンダン ジェイ. アマラナス
(72)【発明者】
【氏名】ジャヤマニ エランパリシ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ミトコンドリアおよび/またはペルオキシソームの機能を増強するための細菌またはその代謝物を含む方法および組成物を提供する。
【解決手段】膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIのうちの1つまたは複数をコードする1つまたは複数の核酸配列を含みかつ発現する一定量の1種類または複数種類の細菌を含む、組成物が提供される。
【選択図】図1C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIのうちの1つまたは複数をコードする1つまたは複数の核酸配列を含みかつ発現する一定量の1種類または複数種類の細菌を含む、組成物。
【請求項2】
前記細菌が、酢酸菌科(Acetobacteriaceae family)の細菌である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記細菌が、グルコノバクター属の種(Gluconobacter spp.)、アセトバクター属の種(Acetobacter spp.)、グルコンアセトバクター属の種(Gluconoacaetobacter spp.)、アシドモナス属の種(Acidomonas spp.)、アメヤマエア属の種(Ameyamaea spp.)、アサイア属の種(Asaia spp.)、グラニュリバクター属の種(Granulibacter spp.)、コザキア属の種(Kozakia spp.)、ネオアサイア属の種(Neoasaia spp.)、ネオコマガタエア属の種(Neokomagataea spp.)、サッカリバクター属の種(Saccharibacter spp.)、スワミナタニア属の種(Swaminathania spp.)、またはタンチカロエニア属の種(Tanticharoenia spp.)である、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
前記核酸配列のうちの1つまたは複数が、外来性核酸配列である、請求項1~3のいずれか一項記載の組成物。
【請求項5】
前記細菌が、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIの各々をコードする核酸配列を含みかつ発現する、請求項1~4のいずれか一項記載の組成物。
【請求項6】
前記一定量の1種類または複数種類の細菌が凍結乾燥されている、請求項1~5のいずれか一項記載の組成物。
【請求項7】
前記一定量が、それを必要とする対象に投与されると、ヒト細胞において、ミトコンドリア転写因子A(TFAM)またはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γコアクチベーター1(PGC)の発現および/または活性を誘導するのに有効な量である、請求項1~6のいずれか一項記載の組成物。
【請求項8】
ヒト細胞においてTFAMまたはPGCの発現および/または活性を誘導するのに有効な前記量が、少なくとも1×106個の細菌である、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および2,5-ジケト-D-グルコン酸からなる群より選択される1つまたは複数の添加された細菌代謝物をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項記載の組成物。
【請求項10】
前記細菌が、生存可能であるか、弱毒化されているか、または熱失活化されている、請求項1~9のいずれか一項記載の組成物。
【請求項11】
食品、飲料、飼料組成物、プロバイオティクス、栄養サプリメント、または薬学的組成物として製剤化されている、請求項1~10のいずれか一項記載の組成物。
【請求項12】
プレバイオティクスをさらに含む、請求項1~11のいずれか一項記載の組成物。
【請求項13】
前記プレバイオティクスが、フルクトオリゴ糖、イヌリン、イソマルトオリゴ糖、ラクチロール、ラクトスクロース、ラクツロース、大豆オリゴ糖、トランスガラクトオリゴ糖、またはキシロオリゴ糖を含む、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項1~13のいずれか一項記載の組成物。
【請求項15】
経口投与用に製剤化されている、請求項1~14のいずれか一項記載の組成物。
【請求項16】
腸溶コーティングされた製剤である、請求項15記載の組成物。
【請求項17】
膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIからなる群より選択される酵素をコードする1つまたは複数の核酸配列を含みかつ発現する少なくとも1種類の細菌に由来する治療有効量の抽出物またはフラクションを含む、組成物。
【請求項18】
前記少なくとも1種類の細菌が、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIの各酵素を含みかつ発現する、請求項17記載の組成物。
【請求項19】
前記抽出物またはフラクションが、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および2,5-ジケト-D-グルコン酸から選択される1つまたは複数の代謝物を含む、請求項18記載の組成物。
【請求項20】
前記抽出物またはフラクションが、
(i)1%グルコースを含有するLysogeny broth標準培地(1%トリプトン、0.5%酵母エキス、および1%塩化ナトリウム)、
(ii)Hestrin-Schramm標準培地(D-グルコース2%、0.5%酵母エキス、0.5%ペプトン、0.27%リン酸二ナトリウム、0.115%クエン酸)、または
(iii)8%グルコース、0.5%酵母エキス、0.2%マンニトール、0.05%硫酸マグネシウム、および10%炭酸カルシウムを含むCaCO3培地、
を含む培地で培養された細菌細胞に由来する、請求項17、18、または19記載の組成物。
【請求項21】
前記抽出物またはフラクションが、前記組成物を投与された宿主哺乳動物の少なくとも1つの細胞型におけるATP産生を促進する代謝物または細菌副産物を含む、請求項17~20のいずれか一項記載の組成物。
【請求項22】
前記抽出物またはフラクションが、生存可能な細菌細胞を含まない、請求項17~21のいずれか一項記載の組成物。
【請求項23】
前記抽出物またはフラクションが、検出可能な細菌を欠いている、請求項17~22のいずれか一項記載の組成物。
【請求項24】
前記抽出物またはフラクションが、弱毒化または熱失活化された細菌をさらに含む、請求項17~23のいずれか一項記載の組成物。
【請求項25】
前記細菌が、酢酸菌科の細菌である、請求項17~24のいずれか一項記載の組成物。
【請求項26】
前記細菌が、グルコノバクター属の種、アセトバクター属の種、グルコンアセトバクター属の種、アシドモナス属の種、アメヤマエア属の種、アサイア属の種、グラニュリバクター属の種、コザキア属の種、ネオアサイア属の種、ネオコマガタエア属の種、サッカリバクター属の種、スワミナタニア属の種、またはタンチカロエニア属の種である、請求項25記載の組成物。
【請求項27】
前記核酸配列のうちの1つまたは複数が、外来性核酸配列である、請求項17~26のいずれか一項記載の組成物。
【請求項28】
食品、飲料、飼料組成物、栄養サプリメント、または薬学的組成物として製剤化されている、請求項17~27のいずれか一項記載の組成物。
【請求項29】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項17~28のいずれか一項記載の組成物。
【請求項30】
経口投与用に製剤化されている、請求項17~29のいずれか一項記載の組成物。
【請求項31】
細胞内ATP産生の増加を必要とする対象の少なくとも1つの細胞型において細胞内ATP産生を増加させる方法であって、少なくとも1つの細胞型において細胞内ATP産生を増加させるのに有効な量の、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIのうちの1つもしくは複数をコードする1つもしくは複数の核酸配列を含みかつ発現する少なくとも1種類の非病原性細菌またはその抽出物もしくはフラクションを含む組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項32】
前記少なくとも1種類の細菌が、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIの各々を発現する、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記少なくとも1種類の細菌が、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および2,5-ジケト-D-グルコン酸のうちの1つまたは複数を産生する、請求項31または32記載の方法。
【請求項34】
前記少なくとも1種類の細菌が、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および2,5-ジケト-D-グルコン酸の各々を産生する、請求項31、32、または33記載の方法。
【請求項35】
前記核酸配列のうちの1つまたは複数が、前記細菌に対し外来性である、請求項31~34のいずれか一項記載の方法。
【請求項36】
前記1つまたは複数の細胞型において、ミトコンドリア電子伝達系の複合体Iおよび/または複合体IIの活性が増加する、請求項31~35のいずれか一項記載の方法。
【請求項37】
前記投与することが、ミトコンドリア膜電位を増加させる、請求項31~36のいずれか一項記載の方法。
【請求項38】
前記対象がヒトである、請求項31~37のいずれか一項記載の方法。
【請求項39】
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γコアクチベーター1-α(PGC-1α)および/またはミトコンドリア転写因子A(TFAM)の発現が増加する、請求項31~38のいずれか一項記載の方法。
【請求項40】
AMP活性化タンパク質キナーゼ(AMPK)リン酸化レベル、核呼吸因子-2(Nrf2)タンパク質レベル、PGCα mRNAレベル、TFAM mRNAレベル、および/またはミトコンドリアDNA複製が増加する、請求項31~39のいずれか一項記載の方法。
【請求項41】
ミトコンドリアDNA(mtDNA)のコピー数が増加する、請求項31~40のいずれか一項記載の方法。
【請求項42】
ミトコンドリア呼吸複合体I NADH:ユビキノンレダクターゼに変異を有する対象の発育成長速度を向上させる、請求項31~41のいずれか一項記載の方法。
【請求項43】
少なくとも1種類のミトコンドリアβ酸化酵素の発現が増加する、請求項31~42のいずれか一項記載の方法。
【請求項44】
前記少なくとも1種類のミトコンドリアβ酸化酵素が、B0303.3、cpt-2、cpt-1、ech-1.2、またはacdh-7である、請求項31~43のいずれか一項記載の方法。
【請求項45】
前記対象の寿命が延びる、請求項31~44のいずれか一項記載の方法。
【請求項46】
ミトコンドリア新生が維持されるかまたは増加する、請求項31~45のいずれか一項記載の方法。
【請求項47】
細胞内ATP産生が、前記組成物を投与する前の細胞内ATP産生と比べて、少なくとも10%増加する、請求項31~46のいずれか一項記載の方法。
【請求項48】
細菌抽出物を作る方法であって、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIのうちの1つまたは複数をコードする1つまたは複数の核酸配列を含みかつ発現する少なくとも1種類の細菌を、
(i)1%グルコースを含有するLysogeny broth標準培地(1%トリプトン、0.5%酵母エキス、および1%塩化ナトリウム)、
(ii)Hestrin-Schramm標準培地(D-グルコース2%、0.5%酵母エキス、0.5%ペプトン、0.27%リン酸二ナトリウム、0.115%クエン酸)、または
(iii)8%グルコース、0.5%酵母エキス、0.2%マンニトール、0.05%硫酸マグネシウム、および10%炭酸カルシウムを含むCaCO3培地、
を含む培地で培養することを含む、方法。
【請求項49】
前記少なくとも1種類の細菌が、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIの各々をコードする核酸配列を含みかつ発現する、請求項48記載の方法。
【請求項50】
前記少なくとも1種類の細菌が、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および2,5-ジケト-D-グルコン酸のうちの1つまたは複数を産生する、請求項48または49記載の方法。
【請求項51】
前記組成物を投与された宿主哺乳動物の少なくとも1つの細胞型における細胞内ATP産生を増加させるのに有効な量の、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および/または2,5-ジケト-D-グルコン酸を含む、組成物。
【請求項52】
前記組成物を投与されたヒト対象の少なくとも1つの細胞型においてミトコンドリア転写因子A(TFAM)またはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γコアクチベーター1(PGC)の発現および/または活性を増加させるのに有効な量の、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および/または2,5-ジケト-D-グルコン酸を含む、組成物。
【請求項53】
細菌抽出物またはその活性フラクションを含む、請求項51または52記載の組成物。
【請求項54】
(i)食品、飲料、飼料組成物、栄養サプリメント、または薬学的組成物として製剤化されており、かつ/または
(ii)グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および2,5,-ジケト-D-グルコン酸の各々を含む、
請求項51または52記載の組成物。
【請求項55】
パーキンソン病を治療する方法であって、パーキンソン病を有する対象に、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIのうちの1つもしくは複数をコードする1つもしくは複数の核酸配列を含みかつ発現する治療有効量の少なくとも1種類の細菌またはその抽出物もしくはフラクションを含む組成物を投与することを含み、そうすることでパーキンソン病の少なくとも1つの症状を軽減させる、方法。
【請求項56】
前記少なくとも1種類の細菌が、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIの各々を発現する、請求項55記載の方法。
【請求項58】
前記少なくとも1種類の細菌が、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および/または2,5-ジケト-D-グルコン酸のうちの1つまたは複数を産生する、請求項55または56記載の方法。
【請求項59】
前記少なくとも1種類の細菌が、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および/または2,5-ジケト-D-グルコン酸の各々を産生する、請求項55~58のいずれか一項記載の方法。
【請求項60】
前記少なくとも1つの症状が、振戦、睡眠障害、運動障害、不随意運動、筋硬直、律動性筋収縮、動作緩慢、緩慢な引きずり歩行、疲労、めまい、バランス障害、不穏、健忘症、錯乱、認知症、認知障害、発話障害、不安、感情鈍麻、嗅覚の異常または喪失、尿失禁、表情低下、体重減少、および便秘からなる群より選択される、請求項55~59のいずれか一項記載の方法。
【請求項61】
ミトコンドリア電子伝達系障害を治療する方法であって、ミトコンドリア電子伝達系障害を有する対象に、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIのうちの1つもしくは複数をコードする1つもしくは複数の核酸配列を含みかつ発現する治療有効量の少なくとも1種類の細菌またはその抽出物もしくはフラクションを含む組成物を投与することを含み、そうすることでミトコンドリア電子伝達系障害の少なくとも1つの症状を軽減させる、方法。
【請求項62】
前記ミトコンドリア電子伝達系障害が、複合体Iおよび/または複合体IIの障害または活性低下を含む、請求項61記載の方法。
【請求項63】
前記ミトコンドリア電子伝達系障害が、NADHデヒドロゲナーゼ(NADH-CoQレダクターゼ)欠損症、コハク酸デヒドロゲナーゼ欠損症、リー症候群、ミトコンドリアDNA枯渇、またはミトコンドリア不足である、請求項61または62記載の方法。
【請求項64】
前記少なくとも1つの症状が、ミオパシー、ミトコンドリア脳筋症、高度虚弱、発育遅延、筋緊張低下、傾眠、呼吸不全、運動失調、ミオクローヌス、乳酸アシドーシス、痙攣、疲労、眼振、反射不全、飲食困難、呼吸困難、運動失調、先天性ミオパシー、小児ミオパシー、およびヘパトパシーからなる群より選択される、請求項61~63のいずれか一項記載の方法。
【請求項65】
前記少なくとも1種類の細菌が、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIの各々を発現する、請求項61~64のいずれか一項記載の方法。
【請求項66】
前記少なくとも1種類の細菌が、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および/または2,5-ジケト-D-グルコン酸のうちの1つまたは複数を産生する、請求項61~65のいずれか一項記載の方法。
【請求項67】
前記少なくとも1種類の細菌が、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および/または2,5-ジケト-D-グルコン酸の各々を産生する、請求項61~66のいずれか一項記載の方法。
【請求項68】
ペルオキシソーム障害を治療する方法であって、ペルオキシソーム障害を有する対象に、治療有効量の少なくとも1種類の細菌またはその細菌抽出物を含む組成物を投与することを含み、前記細菌が以下の酵素:膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIを発現するように、前記細菌が1つまたは複数の核酸配列を含み、前記投与することで、ペルオキシソーム障害の少なくとも1つの症状を軽減させる、方法。
【請求項69】
前記ペルオキシソーム障害が、Zellweger症候群スペクトラム(PBD-ZSD)または根性点状軟骨異形成症1型(RCDP1)である、請求項68記載の方法。
【請求項70】
前記PBD-ZSDが、乳児レフサム病、新生児副腎白質ジストロフィー、またはZellweger症候群である、請求項68または69記載の方法。
【請求項71】
前記少なくとも1つの症状が、骨格および頭蓋顔面異形症、肝機能障害、進行性感音難聴、ならびに網膜症からなる群より選択される、請求項68、69、または70記載の方法。
【請求項72】
前記少なくとも1種類の細菌が、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIの各々を発現する、請求項68~71のいずれか一項記載の方法。
【請求項73】
前記少なくとも1種類の細菌が、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および/または2,5-ジケト-D-グルコン酸のうちの1つまたは複数を産生する、請求項68~72のいずれか一項記載の方法。
【請求項74】
前記少なくとも1種類の細菌が、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および/または2,5-ジケト-D-グルコン酸の各々を産生する、請求項68~73のいずれか一項記載の方法。
【請求項75】
細胞におけるミトコンドリアまたはペルオキシソームの新生を増加させる方法であって、細胞におけるミトコンドリアまたはペルオキシソームの新生を増加させるのに有効な量の、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIをコードする1つまたは複数の核酸配列を含みかつ発現する少なくとも1種類の細菌またはそのフラクションもしくは抽出物を含む組成物を対象に投与することを含む、方法。
【請求項76】
ペルオキシソームのサイズおよび/または数が増大する、請求項75記載の方法。
【請求項77】
ミトコンドリア活性が増加する、請求項75または76記載の方法。
【請求項78】
前記少なくとも1種類の細菌が、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIをコードするの各々を発現する、請求項75記載の方法。
【請求項79】
前記少なくとも1種類の細菌が、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および/または2,5-ジケト-D-グルコン酸のうちの1つまたは複数を産生する、請求項75~78のいずれか一項記載の方法。
【請求項80】
前記少なくとも1種類の細菌が、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および/または2,5-ジケト-D-グルコン酸の各々を産生する、請求項75~79のいずれか一項記載の方法。
【請求項81】
アルツハイマー病を治療する方法であって、アルツハイマー病を有する対象に、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIのうちの1つもしくは複数をコードする1つもしくは複数の核酸配列を含みかつ発現する治療有効量の少なくとも1種類の細菌またはその抽出物もしくはフラクションを含む組成物を投与することを含み、そうすることでアルツハイマー病の少なくとも1つの症状を軽減させる、方法。
【請求項82】
前記少なくとも1種類の細菌が、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIの各々を発現する、請求項81記載の方法。
【請求項83】
前記少なくとも1種類の細菌が、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および/または2,5-ジケト-D-グルコン酸のうちの1つまたは複数を産生する、請求項81または82記載の方法。
【請求項84】
前記少なくとも1種類の細菌が、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および/または2,5-ジケト-D-グルコン酸の各々を産生する、請求項81、82、または83記載の方法。
【請求項85】
前記少なくとも1つの症状が、認知低下、錯乱、妄想、失見当識、物忘れ、集中困難、新規記憶を形成できないこと、簡単な計算ができないこと、一般的な物を認識できないこと、攻撃性、激越、易怒性、意味のない独り言の繰り返し、人格変化、不穏、抑制欠如、徘徊、怒り、感情鈍麻、漠然とした不満、孤独感、気分変動、鬱、幻覚、妄想症、食欲喪失、筋運動の統合不能、および支離滅裂な会話からなる群より選択される、請求項81~84のいずれか一項記載の方法。
【請求項86】
パーキンソン病またはアルツハイマー病の治療のための、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および/または2,5-ジケト-D-グルコン酸を含む組成物の使用。
【請求項87】
パーキンソン病またはアルツハイマー病の治療における、請求項1または17記載の組成物の使用。
【請求項88】
細胞内ATP産生を増加させるための、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および/または2,5-ジケト-D-グルコン酸を含む組成物の使用。
【請求項89】
細胞内ATP産生を増加させるための、請求項1または17記載の組成物の使用。
【請求項90】
ミトコンドリア電子伝達系障害またはペルオキシソーム障害を治療するための、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および/または2,5-ジケト-D-グルコン酸を含む組成物の使用。
【請求項91】
ミトコンドリア電子伝達系障害またはペルオキシソーム障害を治療するための、請求項1または17記載の組成物の使用。
【請求項92】
細胞におけるミトコンドリアまたはペルオキシソームの新生を増加させるための、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および/または2,5-ジケト-D-グルコン酸を含む組成物の使用。
【請求項93】
細胞におけるミトコンドリアまたはペルオキシソームの新生を増加させるための、請求項1または17記載の組成物の使用。
【請求項94】
TFAMまたはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γコアクチベーター1(PGC-1)の発現および/または活性を増加させるための、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および/または2,5-ジケト-D-グルコン酸を含む組成物の使用。
【請求項95】
TFAMまたはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γコアクチベーター1(PGC-1)の発現および/または活性を増加させるための、請求項1または17記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2018年1月23日に出願された米国特許仮出願第62/620,641号、および同年8月23日に出願された同第62/721,979号の利益を主張するものであり、それぞれ参照により全体的に本明細書に組み入れられる。
【0002】
米国政府による助成金
本発明は、米国国立衛生研究所から第AG043181-16A号助成金として授与された政府支援によりなされた。米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
発明の分野
本発明の分野は、ミトコンドリア機能不全関連疾患の症状を治療するための細菌組成物または細菌抽出物に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
ミトコンドリアは、ATP生成、脂肪酸β酸化、アミノ酸異化、ケトン体生成、活性酸素種(ROS)の生成、およびカルシウム恒常性において重要な役割を果たす。ミトコンドリア機能不全は、神経および筋肉変性、循環器障害、肥満、糖尿病、および老化などの状態を含む、多くのヒト疾患と関連がある。ミトコンドリアは、ATP産生の減少、ROS産生の増加、およびアポトーシス経路の活性化を通じて老化をもたらす。ミトコンドリアのエネルギー産生の減少は、酸化ストレスの増加と相まって、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、および筋萎縮性側索硬化症を含むいくつかの神経変性疾患において原因的な役割を果たす。また、老化は、こうした神経変性疾患のいくつかの圧倒的な最大リスク要因である。ミトコンドリア機能不全は、それが根本的な原因であるか副次的な原因であるかに関わらず、神経変性疾患の治療薬を特定するための格好の標的となる。平均余命が世界的に延びるなか、老化に関連するミトコンドリア機能の低下の影響を受ける人の数は、近い将来相当増加しよう。かくして、神経変性疾患の進行を遅らせるのみならず、高齢化人口においてミトコンドリア機能の保護または向上のための予防策としても使用できる新たな治療アプローチに対する未解決の大きな臨床的需要がある。
【発明の概要】
【0005】
概要
本明細書に記載される方法、組成物、および治療は、部分的には、たとえば細胞内エネルギー(たとえばATP)の産生を増加させることによりミトコンドリア機能を向上させる、細菌抽出物または細菌組成物の発見に基づく。したがって、本明細書では、ミトコンドリア機能不全と関連がある代謝障害、神経変性障害(たとえば特にパーキンソン病)、およびペルオキシソーム障害の治療のための細菌抽出物および組成物が提供される。
【0006】
本発明は、広くは、ミトコンドリア機能を促進し、増強し、かつ/または回復させるための、生きているもしくは不活化された酢酸菌科(Acetobacteriaceae family)微生物のメンバー、微生物の組み合わせ、抽出物、活性フラクション、または代謝物、またはそれらの組み合わせの使用に関する。そのような組成物は、疾患、発育遅延、ならびにミトコンドリア機能不全と関連がある症状(たとえば、老化、代謝障害、筋肉障害、および神経変性疾患)の治療または予防に使用することができる。
【0007】
本明細書の一局面では、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIのうちの1つまたは複数をコードする1つまたは複数の核酸配列を含みかつ発現する、一定量の1種類または複数種類の細菌を含む組成物が提供される。
【0008】
この局面および本明細書に記載されるすべての他の局面の一態様では、前述の細菌は、酢酸菌科の細菌である。
【0009】
この局面および本明細書に記載されるすべての他の局面の別の態様では、前述の細菌は、グルコノバクター属の種(Gluconobacter spp.)、アセトバクター属の種(Acetobacter spp.)、グルコンアセトバクター属の種(Gluconoacaetobacter spp.)、アシドモナス属の種(Acidomonas spp.)、アメヤマエア属の種(Ameyamaea spp.)、アサイア属の種(Asaia spp.)、グラニュリバクター属の種(Granulibacter spp.)、コザキア属の種(Kozakia spp.)、ネオアサイア属の種(Neoasaia spp.)、ネオコマガタエア属の種(Neokomagataea spp.)、サッカリバクター属の種(Saccharibacter spp.)、スワミナタニア属の種(Swaminathania spp.)、もしくはタンチカロエニア属の種(Tanticharoenia spp.)、またはこれらのうちの2種以上の組み合わせ(たとえば、これらのうち3種以上、4種以上、5種以上、6種以上、7種以上、8種以上、9種以上、10種以上、11種以上、または12種以上の組み合わせ)である。
【0010】
この局面および本明細書に記載されるすべての他の局面の別の態様では、前述の細菌は、グルコノバクター・アルビダス(Gluconobacter albidus)、グルコノバクター・セリナス(Gluconobacter cerinus)、グルコノバクター・フラテルイ(Gluconobacter frateruii)、グルコノバクター・ヤポニカス(Gluconobacter japonicus)、グルコノバクター・コンドニ(Gluconobacter kondonii)、グルコノバクター・ネフェリ(Gluconobacter nephelii)、グルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)、グルコンアセトバクター・ジアゾトロフィカス(Gluconoacetobacter diazotrophicus)、グルコンアセトバクター・ハンセニ(Gluconoacetobacter hansenii)、グルコンアセトバクター・サッカリボランス(Gluconoacetobacter saccharivorans)、アセトバクター・アセティ(Acetobacter aceti)、またはアセトバクター・マロラム(Acetobacter malorum)である。この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、前述の細菌は、グルコノバクターEBT 405(Gluconobacter EBT 405)である。別の態様では、前述の組成物は、これらの細菌種のうちの少なくとも2種以上、少なくとも3種以上、少なくとも4種以上、少なくとも5種以上、少なくとも6種以上、少なくとも7種以上、少なくとも8種以上、少なくとも9種以上、少なくとも10種以上、少なくとも11種以上、少なくとも12種(またはすべて)を含む。
【0011】
この局面および本明細書に記載されるすべての他の局面の別の態様では、前述の核酸配列のうちの1つまたは複数は、外来性核酸配列である。
【0012】
この局面および本明細書に記載されるすべての他の局面の別の態様では、前述の細菌は、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIの各々をコードする核酸配列を含みかつ発現する。
【0013】
この局面および本明細書に記載されるすべての他の局面の別の態様では、前述の一定量の1種類または複数種類の細菌は、凍結乾燥されている。
【0014】
この局面および本明細書に記載されるすべての他の局面の別の態様では、前述の一定量は、それを必要とする対象に投与されると、ヒト細胞において、ミトコンドリア転写因子A(TFAM)またはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γコアクチベーター1(PGC)の発現および/または活性を誘導するのに有効な量である。
【0015】
この局面および本明細書に記載されるすべての他の局面の別の態様では、前述のヒト細胞においてTFAMまたはPGCの発現および/または活性を誘導するのに有効な量は、1×106個の細菌である。
【0016】
この局面および本明細書に記載されるすべての他の局面の別の態様では、前述の組成物は、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および2,5-ジケト-D-グルコン酸からなる群より選択される1つまたは複数の添加された細菌代謝物をさらに含む。
【0017】
この局面および本明細書に記載されるすべての他の局面の別の態様では、前述の細菌は、生存可能であるか、弱毒化されているか、または熱失活化されている。
【0018】
この局面および本明細書に記載されるすべての他の局面の別の態様では、前述の組成物は、食品、飲料、飼料組成物、プロバイオティクス、栄養サプリメント、または薬学的組成物として製剤化されている。
【0019】
この局面および本明細書に記載されるすべての他の局面の別の態様では、前述の組成物は、プレバイオティクスをさらに含む。
【0020】
この局面および本明細書に記載されるすべての他の局面の別の態様では、前述のプレバイオティクスは、フルクトオリゴ糖、イヌリン、イソマルトオリゴ糖、ラクチロール、ラクトスクロース、ラクツロース、大豆オリゴ糖、トランスガラクトオリゴ糖、またはキシロオリゴ糖を含む。
【0021】
この局面および本明細書に記載されるすべての他の局面の別の態様では、前述の組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含む。
【0022】
この局面および本明細書に記載されるすべての他の局面の別の態様では、前述の組成物は、経口投与用に製剤化されている。
【0023】
この局面および本明細書に記載されるすべての他の局面の別の態様では、前述の組成物は、腸溶コーティングされた製剤である。
【0024】
本明細書で提供される別の局面は、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIからなる群より選択される酵素をコードする1つまたは複数の核酸配列を含みかつ発現する少なくとも1種類の細菌に由来する治療有効量の抽出物またはフラクションを含む、組成物に関する。
【0025】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の一態様では、前述の少なくとも1種類の細菌は、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIの各酵素を含みかつ発現する。
【0026】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、前述の抽出物またはフラクションは、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および2,5-ジケト-D-グルコン酸から選択される1つまたは複数の代謝物を含む。
【0027】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、前述の抽出物またはフラクションは、(i)1%グルコースを含有するLysogeny broth標準培地(1%トリプトン、0.5%酵母エキス、および1%塩化ナトリウム)、(ii)Hestrin-Schramm標準培地(D-グルコース2%、0.5%酵母エキス、0.5%ペプトン、0.27%リン酸二ナトリウム、0.115%クエン酸)、または(iii)8%グルコース、0.5%酵母エキス、0.2%マンニトール、0.05%硫酸マグネシウム、および10%炭酸カルシウムを含むCaCO3培地、を含む培地で培養された細菌細胞に由来する。
【0028】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、前述の抽出物またはフラクションは、組成物を投与された宿主哺乳動物の少なくとも1つの細胞型におけるATP産生を促進する代謝物または細菌副産物を含む。
【0029】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、前述の抽出物またはフラクションは、生存可能な細菌細胞を含まない。
【0030】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、前述の抽出物またはフラクションは、検出可能な細菌を欠いている。
【0031】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、前述の抽出物またはフラクションは、弱毒化または熱失活化された細菌をさらに含む。
【0032】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、前述の細菌は、酢酸菌科の細菌である。
【0033】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、前述の細菌は、グルコノバクター属の種、アセトバクター属の種、グルコンアセトバクター属の種、アシドモナス属の種、アメヤマエア属の種、アサイア属の種、グラニュリバクター属の種、コザキア属の種、ネオアサイア属の種、ネオコマガタエア属の種、サッカリバクター属の種、スワミナタニア属の種、もしくはタンチカロエニア属の種、またはこれらのうち2種以上の組み合わせ(たとえば、これらの3種以上、4種以上、5種以上、6種以上、7種以上、8種以上、9種以上、10種以上、11種以上、または12種以上の組み合わせ)である。
【0034】
この局面および本明細書に記載されるすべての他の局面の別の態様では、前述の細菌は、グルコノバクター・アルビダス、グルコノバクター・セリナス、グルコノバクター・フラテルイ、グルコノバクター・ヤポニカス、グルコノバクター・コンドニ、グルコノバクター・ネフェリ、グルコノバクター・オキシダンス、グルコンアセトバクター・ジアゾトロフィカス、グルコンアセトバクター・ハンセニ、グルコンアセトバクター・サッカリボランス、アセトバクター・アセティ、またはアセトバクター・マロラムである。この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、前述の細菌は、グルコノバクターEBT 405である。別の態様では、前述の組成物は、これらの細菌種のうち少なくとも2種以上、少なくとも3種以上、少なくとも4種以上、少なくとも5種以上、少なくとも6種以上、少なくとも7種以上、少なくとも8種以上、少なくとも9種以上、少なくとも10種以上、少なくとも11種以上、少なくとも12種(またはすべて)を含む。
【0035】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、前述の核酸配列のうちの1つまたは複数は、外来性核酸配列である。
【0036】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、前述の組成物は、食品、飲料、飼料組成物、栄養サプリメント、または薬学的組成物として製剤化されている。
【0037】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、前述の組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含む。
【0038】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、前述の組成物は、経口投与用に製剤化されている。
【0039】
また、本明細書の別の局面では、細胞内ATP産生の増加を必要とする対象の少なくとも1つの細胞型において細胞内ATP産生を増加させる方法が提供され、該方法は、少なくとも1つの細胞型において細胞内ATP産生を増加させるのに有効な量の、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIのうちの1つもしくは複数をコードする1つもしくは複数の核酸配列を含みかつ発現する少なくとも1種類の細菌またはその抽出物もしくはフラクションを含む組成物を該対象に投与することを含む。
【0040】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の一態様では、前述の少なくとも1種類の細菌は、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIの各々を発現する。
【0041】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、前述の少なくとも1種類の細菌は、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および2,5-ジケト-D-グルコン酸のうちの1つまたは複数を産生する。
【0042】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、前述の少なくとも1種類の細菌は、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および2,5-ジケト-D-グルコン酸の各々を産生する。
【0043】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、前述の核酸配列のうちの1つまたは複数は、細菌に対し外来性である。
【0044】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、前述の1つまたは複数の細胞型において、ミトコンドリア電子伝達系の複合体Iおよび/または複合体IIの活性が増加する。
【0045】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、前述の投与することが、ミトコンドリア膜電位を増加させる。
【0046】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、前述の対象はヒトである。
【0047】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γコアクチベーター1-α(PGC-1α)および/またはミトコンドリア転写因子A(TFAM)の発現が増加する。
【0048】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、AMP活性化タンパク質キナーゼ(AMPK)リン酸化レベル、核呼吸因子-2(Nrf2)タンパク質レベル、PGCα mRNAレベル、TFAM mRNAレベル、および/またはミトコンドリアDNA複製が増加する。
【0049】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、ミトコンドリアDNA(mtDNA)のコピー数が増加する。
【0050】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、前述の方法は、ミトコンドリア呼吸複合体I NADH:ユビキノンレダクターゼに変異を有する対象の発育成長速度を向上させる。
【0051】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、少なくとも1種類のミトコンドリアβ酸化酵素の発現が増加する。
【0052】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、前述の少なくとも1種類のミトコンドリアβ酸化酵素は、B0303.3、cpt-2、cpt-1、ech-1.2、またはacdh-7である。
【0053】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、前述の対象の寿命が延びる。
【0054】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、ミトコンドリア新生が維持されるかまたは増加する。
【0055】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、細胞内ATP産生が、前述の組成物を投与する前の細胞内ATP産生と比べて、少なくとも10%増加する。
【0056】
本明細書で提供される別の局面は、細菌抽出物を作る方法に関し、該方法は、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIのうちの1つまたは複数をコードする1つまたは複数の核酸配列を含みかつ発現する少なくとも1種類の細菌を、(i)1%グルコースを含有するLysogeny broth標準培地(1%トリプトン、0.5%酵母エキス、および1%塩化ナトリウム)、(ii)Hestrin-Schramm標準培地(D-グルコース2%、0.5%酵母エキス、0.5%ペプトン、0.27%リン酸二ナトリウム、0.115%クエン酸)、または(iii)8%グルコース、0.5%酵母エキス、0.2%マンニトール、0.05%硫酸マグネシウム、および10%炭酸カルシウムを含むCaCO3培地、を含む培地で培養することを含む。
【0057】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の一態様では、前述の少なくとも1種類の細菌は、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIの各々をコードする核酸配列を含みかつ発現する。
【0058】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、前述の少なくとも1種類の細菌は、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および2,5-ジケト-D-グルコン酸のうちの1つまたは複数を産生する。
【0059】
本明細書の別の局面ではまた、組成物を投与された宿主哺乳動物の少なくとも1つの細胞型における細胞内ATP産生を増加させるのに有効な量の、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および/または2,5-ジケト-D-グルコン酸を含む組成物が提供される。
【0060】
本明細書で提供される別の局面は、組成物を投与されたヒト対象の少なくとも1つの細胞型においてミトコンドリア転写因子A(TFAM)またはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γコアクチベーター1(PGC)の発現および/または活性を増加させるのに有効な量の、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および/または2,5-ジケト-D-グルコン酸を含む組成物に関する。
【0061】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の一態様では、前述の組成物は、細菌抽出物またはその活性フラクションを含む。
【0062】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、前述の組成物は、食品、飲料、飼料組成物、栄養サプリメント、または薬学的組成物として製剤化されている。
【0063】
本明細書の別の局面では、パーキンソン病を治療する方法が提供され、該方法は、パーキンソン病を有する対象に、治療有効量の、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIのうちの1つもしくは複数をコードする1つもしくは複数の核酸配列を含みかつ発現する少なくとも1種類の細菌またはその抽出物もしくはフラクションを含む組成物を投与することを含み、そうすることでパーキンソン病の少なくとも1つの症状を軽減させる。
【0064】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の一態様では、前述の少なくとも1種類の細菌が、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIの各々を発現する。
【0065】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、前述の少なくとも1種類の細菌は、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および/または2,5-ジケト-D-グルコン酸のうちの1つまたは複数を産生する。
【0066】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、前述の少なくとも1種類の細菌は、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および/または2,5-ジケト-D-グルコン酸の各々を産生する。
【0067】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、前述の少なくとも1つの症状は、振戦、睡眠障害、運動障害、不随意運動、筋硬直、律動性筋収縮、動作緩慢、緩慢な引きずり歩行、疲労、めまい、バランス障害、不穏、健忘症、錯乱、認知症、認知障害、発話障害、不安、感情鈍麻、嗅覚の異常または喪失、尿失禁、表情低下、体重減少、および便秘からなる群より選択される。
【0068】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、前述の細菌はグルコノバクターEBT 405である。
【0069】
本明細書で提供される別の局面は、ミトコンドリア電子伝達系障害を治療する方法に関し、該方法は、ミトコンドリア電子伝達系障害を有する対象に、治療有効量の、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIのうちの1つもしくは複数をコードする1つもしくは複数の核酸配列を含みかつ発現する少なくとも1種類の細菌またはその抽出物もしくはフラクションを含む組成物を投与することを含み、そうすることでミトコンドリア電子伝達系障害の少なくとも1つの症状を軽減させる。
【0070】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の一態様では、前述のミトコンドリア電子伝達系障害は、複合体Iおよび/または複合体IIの障害または活性低下を含む。
【0071】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、前述のミトコンドリア電子伝達系障害は、NADHデヒドロゲナーゼ(NADH-CoQレダクターゼ)欠損症、コハク酸デヒドロゲナーゼ欠損症、リー症候群、ミトコンドリアDNA枯渇、またはミトコンドリア不足である。
【0072】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、前述の少なくとも1つの症状は、ミオパシー、ミトコンドリア脳筋症、高度虚弱、発育遅延、筋緊張低下、傾眠、呼吸不全、運動失調、ミオクローヌス、乳酸アシドーシス、痙攣、疲労、眼振、反射不全、飲食困難、呼吸困難、運動失調、先天性ミオパシー、小児ミオパシー、およびヘパトパシーからなる群より選択される。
【0073】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、前述の少なくとも1種類の細菌は、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIの各々を発現する。
【0074】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、前述の少なくとも1種類の細菌は、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および/または2,5-ジケト-D-グルコン酸のうちの1つまたは複数を産生する。
【0075】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、前述の少なくとも1種類の細菌は、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および/または2,5-ジケト-D-グルコン酸の各々を産生する。
【0076】
本明細書で提供される別の局面は、ペルオキシソーム障害を治療する方法に関し、該方法は、ペルオキシソーム障害を有する対象に組成物を投与することを含み、該組成物は治療有効量の少なくとも1種類の細菌またはその細菌抽出物を含み、該細菌は、該細菌が膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIといった酵素を発現するように、1つまたは複数の核酸配列を含んでおり、該投与することで、ペルオキシソーム障害の少なくとも1つの症状を軽減させる。
【0077】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、前述のペルオキシソーム障害は、Zellweger症候群スペクトラム(PBD-ZSD)または根性点状軟骨異形成症1型(RCDP1)である。
【0078】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、前述のPBD-ZSDは、乳児レフサム病、新生児副腎白質ジストロフィー、またはZellweger症候群である。
【0079】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、前述の少なくとも1つの症状は、骨格および頭蓋顔面異形症、肝機能障害、進行性感音難聴、ならびに網膜症からなる群より選択される。
【0080】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、前述の少なくとも1種類の細菌は、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIの各々を発現する。
【0081】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、前述の少なくとも1種類の細菌は、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および/または2,5-ジケト-D-グルコン酸のうちの1つまたは複数を産生する。
【0082】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、前述の少なくとも1種類の細菌は、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および/または2,5-ジケト-D-グルコン酸の各々を産生する。
【0083】
本明細書の別の局面ではまた、細胞におけるミトコンドリアまたはペルオキシソームの新生を増加させる方法が提供され、該方法は、細胞におけるミトコンドリアまたはペルオキシソームの新生を増加させるのに有効な量の、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIをコードする1つまたは複数の核酸配列を含みかつ発現する少なくとも1種類の細菌またはそのフラクションもしくは抽出物を含む組成物を対象に投与することを含む。
【0084】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の一態様では、ペルオキシソームのサイズおよび/または数が増大する。
【0085】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の一態様では、ミトコンドリア活性が増加する。
【0086】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、前述の少なくとも1種類の細菌は、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIをコードするの各々を発現する。
【0087】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、前述の少なくとも1種類の細菌は、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および/または2,5-ジケト-D-グルコン酸のうちの1つまたは複数を産生する。
【0088】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、前述の少なくとも1種類の細菌は、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および/または2,5-ジケト-D-グルコン酸の各々を産生する。
【0089】
また、本明細書の別の局面では、アルツハイマー病を治療する方法が提供され、該方法は、アルツハイマー病を有する対象に、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIのうちの1つもしくは複数をコードする1つもしくは複数の核酸配列を含みかつ発現する治療有効量の少なくとも1種類の細菌またはその抽出物もしくはフラクションを含む組成物を投与することを含み、そうすることでアルツハイマー病の少なくとも1つの症状を軽減させる。
【0090】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の一態様では、前述の少なくとも1種類の細菌が、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIの各々を発現する。
【0091】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、前述の少なくとも1種類の細菌は、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および/または2,5-ジケト-D-グルコン酸のうちの1つまたは複数を産生する。
【0092】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、前述の少なくとも1種類の細菌は、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および/または2,5-ジケト-D-グルコン酸の各々を産生する。
【0093】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、前述の少なくとも1つの症状は、認知低下、錯乱、妄想、失見当識、物忘れ、集中困難、新規記憶を形成できないこと、簡単な計算ができないこと、一般的な物を認識できないこと、攻撃性、激越、易怒性、意味のない独り言の繰り返し、人格変化、不穏、抑制欠如、徘徊、怒り、感情鈍麻、漠然とした不満、孤独感、気分変動、鬱、幻覚、妄想症、食欲喪失、筋運動の統合不能、および支離滅裂な会話からなる群より選択される。
【0094】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、前述の細菌はグルコノバクターEBT 405である。
【0095】
本明細書で提供される別の局面は、パーキンソン病またはアルツハイマー病の治療のための、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および/または2,5-ジケト-D-グルコン酸を含む組成物の使用に関する。
【0096】
本明細書で提供される別の局面は、パーキンソン病またはアルツハイマー病の治療における本明細書に記載される組成物の使用に関する。
【0097】
本明細書で提供される別の局面は、細胞内ATP産生を増加させるための、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および/または2,5-ジケト-D-グルコン酸を含む組成物の使用に関する。
【0098】
本明細書で提供される別の局面は、細胞内ATP産生を増加させるための本明細書に記載される組成物の使用に関する。
【0099】
本明細書で提供される別の局面は、ミトコンドリア電子伝達系障害またはペルオキシソーム障害を治療するための、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および/または2,5-ジケト-D-グルコン酸を含む組成物の使用に関する。
【0100】
本明細書で提供される別の局面は、ミトコンドリア電子伝達系障害またはペルオキシソーム障害を治療するための本明細書に記載される組成物の使用に関する。
【0101】
本明細書で提供される別の局面は、細胞におけるミトコンドリアまたはペルオキシソームの新生を増加させるための、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および/または2,5-ジケト-D-グルコン酸を含む組成物の使用に関する。
【0102】
本明細書で提供される別の局面は、細胞におけるミトコンドリアまたはペルオキシソームの新生を増加させるための本明細書に記載される組成物の使用に関する。
【0103】
本明細書で提供される別の局面は、TFAMまたはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γコアクチベーター1(PGC-1)の発現および/または活性を増加させるための、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および/または2,5-ジケト-D-グルコン酸を含む組成物の使用に関する。
【0104】
本明細書で提供される別の局面は、TFAMまたはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γコアクチベーター1(PGC-1)の発現および/または活性を増加させるための本明細書に記載される組成物の使用に関する。
【0105】
本明細書で提供される別の局面は、アルツハイマー病またはパーキンソン病の治療または予防のための膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIのうちの1つまたは複数をコードする1つまたは複数の核酸配列を含みかつ発現する、一定量の1種類または複数種類の細菌を含む、組成物の使用に関する。
【0106】
この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の一態様では、前述の1種類または複数種類の細菌は、グルコノバクターEBT 405を含む。
【0107】
定義
「患者」、「対象」、および「個体」という用語は、本明細書では交換可能に用いられ、処置(予防処置を含む)が提供される動物、特にヒトを指す。「対象」という用語は、本明細書で使用する場合、ヒトおよび非ヒト動物を指す。「非ヒト動物」および「非ヒト哺乳動物」という用語は、本明細書では交換可能に用いられ、すべての脊椎動物、たとえば非ヒト霊長類(特に高等な霊長類)、ヒツジ、イヌ、げっ歯類(たとえばマウスまたはラット)、モルモット、ヤギ、ブタ、ネコ、ウサギ、ウシなどの哺乳動物、およびニワトリ、両生類、爬虫類その他などの非哺乳動物を含む。一態様では、対象はヒトである。別の態様では、対象は実験動物または疾患モデルとしての代用動物である。別の態様では、対象はコンパニオンアニマル(たとえば、イヌ、ネコ、ラット、モルモット、ハムスターその他)を含む家畜化動物である。本明細書では、対象は、限定ではないが、胎児、新生児、乳児、幼児、小児、青年、成人、更年期後、または老年の対象を含め、どの発達年齢でもよいことが、特に企図される。
【0108】
本明細書で使用する場合、「プレバイオティクス」は、消化管微生物叢の組成および/または活性の両方において、宿主に利益を与え得る(または与えなくてもよい)特定の変化を可能にするか促進する成分を指す。いくつかの態様では、プレバイオティクスは、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、ヘミセルロース(たとえば、アラビノキシラン、キシラン、キシログルカン、およびグルコマンナン)、イヌリン、キチン、ラクツロース、マンナンオリゴ糖、オリゴフルクトース濃縮イヌリン、ガム(たとえばグアーガム、アラビアゴムおよびカラギーナン)、オリゴフルクトース、オリゴデキストロース、タガトース、難消化性マルトデキストリン(たとえば、難消化性デンプン)、トランスガラクトオリゴ糖、ペクチン(たとえば、キシロガラクツロナン、柑橘類ペクチン、リンゴペクチン、およびラムノガラクツロナン-I)、食物繊維(たとえば、大豆繊維、サトウダイコン繊維、エンドウ繊維、トウモロコシふすま、および大麦繊維)、ならびにキシロオリゴ糖のうちの1つまたは複数を含み得る。
【0109】
本明細書で使用する場合、「投与する」、「導入する」、および「移植する」という用語は、対象内に細胞(たとえば本明細書に記載されるような細菌組成物)を配置する文脈において交換可能に用いられ、ここで、細胞は、所望の効果(たとえば、ミトコンドリアATP産生の増加)が生じるように、所望の部位(たとえば腸またはその一領域)における導入細胞の少なくとも部分的な局在化が得られる方法またはルートにより配置される。細胞は、送達された細胞または細胞構成要素の一部が生存可能でいられる対象内の所望の場所への送達が得られる任意の適切なルートにより投与され得る。対象に投与された後の細胞の生存可能期間は、わずか数時間(たとえば6~24時間)から、数日間、数年間にも及ぶ、すなわち長期生着であり得る。いくつかの態様では、「投与する」という用語は、1つまたは複数の細菌代謝物および/または副産物を含むが完全に生存細菌細胞は含まない、細菌抽出物または調製物の投与を指す。
【0110】
本明細書で使用する場合、「予防する」または「予防」は、方法(たとえば本明細書に記載される組成物の投与など)の作用によって疾患状態が生じない、任意の方法に関する。一局面では、予防は、無処置対照で発生する程には疾患が確立されないことも意味し得ることが理解される。たとえば、疾患頻度の確立が、無処置対照に対して相対的に5、10、15、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、または100%低下することがあり得る。したがって、疾患の予防は、対象が疾患を発症する可能性が、無処置の対象(たとえば本明細書に記載される組成物で処置されていない対象)に対して相対的に低下することを包含する。
【0111】
「相乗効果」または「相乗的相互作用」は、2種類以上の微生物または代謝物の、それぞれの効果の和よりも大きい併用効果を生じる相互作用または協働を指す。たとえば、一態様では、2種類以上の微生物間の「相乗効果」は、第1の微生物が排泄物または代謝物を分泌し、それを第2の微生物が増殖または他のプロセスのための燃料として用いた結果であり得る。
【0112】
「減少」、「低下した」、「低下」、または「阻害する」という用語はすべて、本明細書で使用される場合、特性、レベル、または他のパラメーターの統計学的に有意な量の減少または低減を意味する。いくつかの態様では、「低下させる」、「低下」、または「減少」、または「阻害する」は、典型的には、基準レベル(たとえば所与の処置の不存在)と比べて少なくとも10%の減少を意味し、たとえば、少なくとも約10%の、少なくとも約20%の、少なくとも約25%の、少なくとも約30%の、少なくとも約35%の、少なくとも約40%の、少なくとも約45%の、少なくとも約50%の、少なくとも約55%の、少なくとも約60%の、少なくとも約65%の、少なくとも約70%の、少なくとも約75%の、少なくとも約80%の、少なくとも約85%の、少なくとも約90%の、少なくとも約95%の、少なくとも約98%の、少なくとも約99%の、またはそれ以上の減少を含み得る。本明細書で使用する場合、「低下」または「阻害」は、基準レベルと比べて完全な阻害または低下は包含しない。「完全な阻害」は、基準レベルと比べて100%の阻害である。減少は、好ましくは、所与の障害のない個体の正常範囲内として許容されるレベルまでの低下であり得る。
【0113】
「増加した」、「増加」、または「増強」、または「活性化させる」という用語はすべて、本明細書で使用される場合、特性、レベル、または他のパラメーターの統計学的に有意な量の増加を広く意味し、誤解を避けるために記すと、「増加した」、「増加」、または「増強」、または「活性化させる」という用語は、基準レベルと比べて少なくとも10%の増加を意味し、たとえば少なくとも約20%の、または少なくとも約30%の、または少なくとも約40%の、または少なくとも約50%の、または少なくとも約60%の、または少なくとも約70%の、または少なくとも約80%の、または少なくとも約90%の増加、および最大で100%の増加、または基準レベルと比べて10~100%の間の任意の増加、または基準レベルと比べて少なくとも約2倍の、または少なくとも約3倍の、または少なくとも約4倍の、または少なくとも約5倍の、または少なくとも約10倍の増加、少なくとも約20倍の増加、少なくとも約50倍の増加、少なくとも約100倍の増加、少なくとも約1000倍の増加、またはそれ以上の増加を意味する。
【0114】
「薬学的に許容される」という用語は、不適切な毒性なく対象(たとえば哺乳動物またはヒト)に投与され得る化合物および組成物を指し得る。
【0115】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、活性成分と組み合せると、該成分に生物学的活性を保持させ、そして対象の免疫系と(所望でないかぎり)実質的に反応しない任意の材料または物質を含み得る。例には、限定ではないが、リン酸緩衝食塩水などの標準的な薬学的担体、油/水エマルジョンなどのエマルジョン、およびさまざまなタイプの湿潤剤のすべてが含まれる。「薬学的に許容される担体」という用語は、組織培養培地および細菌培養培地を除く。
【0116】
本明細書で使用する場合、「含む」という用語は、提示されている定義された要素に加えて他の要素も存在し得ることを意味する。「含む」の使用は、限定ではなく包括を示す。
【0117】
本明細書で使用する場合、「から本質的になる」という用語は、所与の態様に必要な要素を指す。この用語は、本発明のその態様の基本的および新奇のまたは機能的特徴に大きく影響しない追加要素の存在を許容する。
【0118】
「からなる」という用語は、本明細書に記載される組成物、方法、およびそれらの各構成要素を指し、その態様の記載に示されていない要素は除外される。
【0119】
さらに、文脈的に特に必要ないかぎり、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含む。
【0120】
実施例中以外で、または断りがある場合、本明細書で使用される成分または反応条件の量を表す数字は、すべての場合において「約」という用語で修飾されていると理解されたい。「約」という用語を%と共に用いる場合は、±1%を意味し得る。
【図面の簡単な説明】
【0121】
この特許または出願ファイルは、カラー制作の図面を最低1つは含む。カラー図面を含むこの特許または特許出願の公報は、請求および必要な手数料の支払いがあり次第、特許庁より提供される。
【0122】
図1A】グルコンアセトバクター(Gluconoacetobacter)の摂食は、spg-7(ad2249)、nduf-7(et7)、およびgas-1(fc21)変異株の発育遅延表現型を抑制する。
図1B】すべての体細胞でルシフェラーゼを発現する株を用いて評価すると、グルコンアセトバクターの摂食は、大腸菌(E.coli)OP50-1を摂食した虫と比べて、野生型動物のATP含有量を増加させる。
図1C】生化学的方法により内在性ATPレベルを測定して評価すると、グルコンアセトバクターの摂食は、大腸菌OP50-1を摂食した虫と比べて、野生型動物のATP含有量を増加させる。
図1D-F】図1D、グルコンアセトバクターの摂食は、spg-7(ad2249)動物のATP含有量を野生型レベルまで回復させる。図1E、グルコンアセトバクターの摂食は、nduf-7(et7)動物のATP含有量を野生型レベルまで回復させる。図1F、MitoTracker Red CMXRosを用いて評価すると、グルコンアセトバクターの摂食は、spg-7(ad2249)、nduf-7(et7)、およびgas-1(fc21)変異動物のミトコンドリア膜電位を、大腸菌OP50-1を摂食した対応する変異虫と比べて、増加させる。
図1G-H】図1G、グルコンアセトバクター属の種(Gluconacetobacter spp.)を摂食し、かつさまざまな用量のパラコートで処置された動物は、大腸菌OP50を摂食し、かつパラコートで処置された動物と比べて、ATPレベルの代替である生物発光の大幅に高いレベルを有した。図1H、グルコンアセトバクター属の種を摂食し、かつさまざまな用量のロテノンで処置された動物は、大腸菌OP50を摂食し、かつロテノンで処置された動物と比べて、ATPレベルの代替である生物発光の大幅に高いレベルを有した。
図2A-C】図2A、大腸菌OP50を摂食し、かつMPP+または6-OHDAまたはパラコートのいずれかで処置された虫は、ミトコンドリアストレスレポーターhsp-6::gfp発現を誘導したが、グルコンアセトバクター属の種を摂食した虫は、GFP発現を誘導できなかった。図2B、spg-7(ad2249);tbb-6::gfp動物にグルコンアセトバクター属の種を摂食させると、tbb-6::gfp発現の活性化が抑制された。図2C、グルコンアセトバクターの摂食は、hphd-1::gfp発現を抑制する。
図2D-G】図2D、グルコンアセトバクターの摂食は、B0303.3::gfp発現を増加させる。図2E、グルコンアセトバクターの摂食は、prx-11::gfp発現を増加させる。図2F、tcer-1(RNAi)は、グルコンアセトバクター属の種を摂食した虫におけるcpt-2::gfpの誘導を抑制する。図2G、nhr-49(RNAi)は、グルコンアセトバクター属の種を摂食した虫におけるacox-1.2::gfpの誘導を抑制する。
図2H-K】図2H、tcer-1(RNAi)は、グルコンアセトバクター属の種を摂食した虫におけるech-1.2::gfpの誘導を抑制する。図2I、nhr-49(RNAi)は、グルコンアセトバクター属の種を摂食した虫におけるacdh-7::gfpの誘導を抑制する。図2J、nhr-49(RNAi)は、グルコンアセトバクター属の種を摂食した虫におけるpmp-4::gfpの誘導を抑制する。図2K、nhr-49(RNAi)は、グルコンアセトバクター属の種を摂食した虫におけるprx-6::gfpの誘導を抑制する。
図3A-B】図3A、グルコンアセトバクター属の種を摂食したtcer-1(tm1452)およびnhr-49(nr2041)動物は、グルコンアセトバクター属の種を摂食した野生型虫と比べて、発育が遅かった。図3B、tcer-1、nhr-49、およびprx-5のRNAiは、グルコンアセトバクター属の種の摂食が誘導する生物発光表現型の増加を抑制した。
図3C-D】図3C、nhr-49(RNAi)は、グルコンアセトバクター属の種を摂食したspg-7(ad2249)およびnduf-7(et19)変異虫の、加速された発育進行表現型を抑制した。図3D、prx-5(RNAi)は、グルコンアセトバクター属の種を摂食したspg-7(ad2249)およびnduf-7(et19)変異虫の、加速された発育進行表現型を抑制した。
図3E-F】図3E、Mito CMXRosを用いて評価すると、nhr-49(RNAi)は、spg-7(ad2249)変異株の低下したミトコンドリア膜電位を悪化させた。図3F、ミトコンドリア移行TOM20-RFP融合タンパク質を用いて評価した、大腸菌OP50を摂食した虫と比べての、グルコンアセトバクター属の種を摂食した虫の筋肉における融合ミトコンドリア表現型を示す代表写真である。
図3G-H】図3G、ペルオキシソーム移行GFP-DAF-22融合タンパク質を用いて評価した、グルコンアセトバクター属の種を摂食した虫の腸内の増加した点状構造を示す代表写真であり、ペルオキシソームの増加を示している。図3H、HyPerセンサーを発現するトランスジェニック虫を用いて評価すると、グルコンアセトバクター属の種を摂食した虫は、わずかにより低いH2O2レベルを有し、グルコンアセトバクター属の種を示している。
図4A-B】図4A、グルコンアセトバクター属の種を摂食した虫は、虫が老化するにしたがい、大腸菌OP50を摂食した動物と比べて、ATPレベルの代替である生物発光の大幅に高いレベルを有した。図4B、グルコンアセトバクター属の種の大腸菌での希釈は、ATPレベルの代替である生物発光の大幅により高いレベルを誘導する。
図4C-D】図4C、グルコンアセトバクター・ハンセニ(Gluconacetobacter hanseni)(MGH単離物)、基準のグルコンアセトバクター・ハンセニATCC 23769、およびG.ハンセニATCC 23769の非セルロース産生変異株などのグルコンアセトバクター株は、大腸菌OP50を摂食した動物と比べて、ATPレベルの代替である生物発光の大幅に高いレベルを誘導する。図4D、酢酸菌のメンバーは、大腸菌OP50を摂食した動物と比べて、ATPレベルの代替である生物発光の大幅に高いレベルを誘導する。
図4E-F】図4E、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ、シトクロムoユビキノールオキシダーゼサブユニットII、およびユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニットの変異株を摂食した虫は、野生型G.オキシダンスを摂食した虫と比べて、ATPレベルの代替である生物発光の低いレベルを有する。図4F、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ、膜結合型FAD依存性デヒドロゲナーゼ、および膜結合型PQQ依存性デヒドロゲナーゼ3の欠失変異を摂食した虫では、野生型G.オキシダンスを摂食した虫と比べて、ATP産生が減少した。
図4G-I】図4G、RT-PCRにより評価すると、グルコンアセトバクター属の種に曝露したヒト初代皮膚線維芽細胞では、擬似処置細胞と比べて、PGC-1α遺伝子発現が増加した。図4H、RT-PCRにより評価すると、グルコンアセトバクター属の種に曝露したヒト初代皮膚線維芽細胞では、擬似処置細胞と比べて、TFAM遺伝子発現が増加した。図4I、グルコンアセトバクター属の種に曝露したヒト初代皮膚線維芽細胞では、擬似処置細胞と比べて、mtDNAコピー数が増加した。
図5A-C】図5A、グルコンアセトバクター属の種、アセトバクター属の種、およびグルコノバクター属の種は、spg-7(ad2249)の発育遅延表現型を抑制する。図5B、グルコンアセトバクター属の種、アセトバクター属の種、およびグルコノバクター属の種は、大腸菌OP50-1を摂食した虫と比べて、野生型動物の発育成長速度を加速させる。図5C、グルコンアセトバクター属の種を摂食した野生型虫の、加速された発育成長を示す代表写真。
図5D-G】図5D、グルコンアセトバクター属の種を摂食した野生型虫は、大腸菌OP50-1を摂食した虫と比べてわずかに長い。グルコンアセトバクター属の種の摂食は、動物がL1幼虫ステージから産卵する成虫ステージに達するまでの時間を短縮する。図5E、グルコンアセトバクター属の種の摂食は、動物がL4幼虫ステージから産卵する成虫ステージに達するまでの時間を短縮する。図5F、グルコンアセトバクター属の種は、摂食開始から6時間以内に、そして摂食18時間までには最大レベルで、ATPレベルの代替である生物発光の増加を誘導する。TMRE色素を用いて評価すると、グルコンアセトバクター属の種を摂食したspg-7(ad2249)変異株は、大腸菌OP50を摂食した動物と比べて、大幅に増加したミトコンドリア膜電位を有した。図5G、グルコンアセトバクター属の種を摂食し、かつロテノンまたはパラコートまたはアジ化ナトリウムで処置された動物は、大腸菌OP50を摂食し、かつロテノンまたはパラコートまたはアジ化ナトリウムで処置された動物と比べて、ATPレベルの代替である生物発光の大幅に高いレベルを有した。
図5H-I】図5H、TMRE色素を用いて評価すると、グルコンアセトバクター属の種を摂食したspg-7(ad2249)変異株は、大腸菌OP50を摂食した動物と比べて、大幅に増加したミトコンドリア膜電位を有した。図5I、グルコンアセトバクター属の種を摂食し、かつロテノンまたはパラコートまたはアジ化ナトリウムで処置された動物は、大腸菌OP50を摂食し、かつロテノンまたはパラコートまたはアジ化ナトリウムで処置された動物と比べて、ATPレベルの代替である生物発光の大幅に高いレベルを有した。
図6A-B】図6A、グルコンアセトバクター属の種を摂食した動物は、大腸菌OP50を摂食した動物よりも、ロテノンまたはパラコートに対し耐性が高かった。図6B、spg-7(ad2249);tbb-6::gfp動物にグルコンアセトバクター属の種を摂食させると、tbb-6::gfp発現の活性化が抑制された。
図6C-F】図6C~6F、グルコンアセトバクターの摂食は、虫大腸菌OP50を摂食した虫と比べて、cpt-2::gfp(図6C)、acox-1.2::gfp(図6D)、pmp-4::gfp(図6E)、acdh-7::gfp(図6F)発現を増加させる。
図6G-J】図6G、グルコンアセトバクターの摂食は、虫大腸菌OP50を摂食した虫と比べて、ech-1.2::gfp発現を増加させる。図6H、グルコンアセトバクターを摂食した虫における、大腸菌OP50の摂食と比べて増加したB0303.3::gfp発現を示す代表図。図6I、グルコンアセトバクターを摂食した虫における、大腸菌OP50の摂食と比べて増加したacdh-7::gfp発現を示す代表図。図6J、グルコンアセトバクターを摂食した虫における、大腸菌OP50を摂食した虫と比べて増加したacox-1.2::gfp発現を示す代表図。
図6K-L】図6K、グルコンアセトバクターを摂食した虫における、大腸菌OP50の摂食と比べて増加したcpt-1::gfp発現を示す代表図。図6L、グルコンアセトバクターを摂食した虫における、大腸菌OP50の摂食と比べて変化のないrpt-3::gfp発現を示す代表図。
図7A-B】図7A、グルコンアセトバクターを摂食した虫における、大腸菌OP50を摂食した虫と比べて増加したicl-1::gfp発現を示す代表図。図7B、グルコンアセトバクターの摂食は、fat-7::gfp発現に影響しない。
図7C-D】図7C、グルコンアセトバクターの摂食はUbV-gfp発現に影響しないが、ボルテゾミブでの処置はUbV-gfpを安定化させることを示す代表図。図7D、lgg-1::GFP株を用いて評価した、グルコンアセトバクターの摂食はオートファジーを誘導しないが、飢餓はオートファジーを誘導することを示す代表図。
図7E-H】図7E、nhr-49の腸特異性過剰発現は、グルコンアセトバクター属の種を摂食したnhr-49(nr2041)変異株の成長速度を加速させるのに十分であった。図7F、nhr-49::GFP転写融合を用いて評価した、グルコンアセトバクター属の種を摂食した虫においてnhr-49遺伝子発現が誘導されたことを示す代表図。図7G、大腸菌OP50を摂食した虫と比べて腸細胞核でのTCER-1::GFP発現が増加することを示す代表図。図7H、ミトコンドリアを染色するローダミン6G色素を用いて評価した、グルコンアセトバクターの摂食が、大腸菌OP50を摂食した虫と比べて、虫の皮下組織においてミトコンドリア融合を誘導することを示す代表図。
図8A-C】図8A、グルコンアセトバクターの摂食がprx-5(RNAi)処置虫におけるペルオキシソーム移行障害を回復させないことを示す代表図。図8B、GFPをゴルジ体に移行させるトランスジェニック株を用いて評価した、グルコンアセトバクターの摂食はゴルジ体の形態または分布に影響しないことを示す代表図。図8C、GFPを腸内リソソームに移行させるトランスジェニック株を用いて評価した、グルコンアセトバクターの摂食はリソソームの形態または分布に影響しないことを示す代表図。
図8D-F】図8D、GFPを小胞体(ER)に移行させるトランスジェニック株を用いて評価した、グルコンアセトバクターの摂食はERの形態または分布に影響しないことを示す代表図。図8E、Amplex redアッセイを用いて評価すると、グルコンアセトバクター属の種を摂食し、かつH2O2で処置された虫は、大腸菌OP50を摂食した虫と比べて低いH2O2レベルを有した。図8F、グルコンアセトバクター属の種を摂食した虫の細胞内グルタチオン濃度は、大腸菌OP50を摂食した虫と比べて、影響されなかった。
図8G-H】図8G、酢酸菌の異なるメンバーによる、CaCO3培地プレートにおけるコロニー周囲のハロー形成を示す代表図。図8H、グルコノバクター・オキシダンスのトランスポゾン変異株は、C.エレガンス(C. elegans)spg-7(ad2249)の発育成長遅延表現型を抑制できなかった。
図9A】野生型動物の発育成長遅延表現型を抑制できなかったグルコノバクター・オキシダンストランスポゾン変異株を示す代表図。
図9B】膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ、シトクロムoユビキノールオキシダーゼサブユニットII、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、および炭素-窒素ヒドロラーゼの変異株は、CaCO3を含有する培地プレートの周囲に澄んだハローを形成できない。
図9C】さまざまなデヒドロゲナーゼの欠失アレル、かつ膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ、膜結合型FAD依存性デヒドロゲナーゼ、および膜結合型PQQ依存性デヒドロゲナーゼ3の欠失変異を摂食したspg-7(ad2249)変異虫は、野生型G.オキシダンスを摂食した虫と比べて成長が遅かったことが見出された。
図9D】大腸菌OP50をヒト初代皮膚線維芽細胞に曝露すると、ATP産生が大幅に低下するが、グルコンアセトバクター属の種は、擬似処置細胞と比べて、ATP産生に影響しない。
図9E】グルコンアセトバクター属の種は、より高い細菌用量でも、細胞内ATP産生を低下させない。
図10図10A、ドーパミン作動性神経においてヒトα-シヌクレインおよびGFPを発現するトランスジェニック虫に、第1幼虫ステージから大腸菌op50またはEBT405を摂食させ、そしてL4幼虫ステージでロテノン処置に供した。矢印は、CEPニューロンの軸索を示す。ロテノン処置動物では、CEPニューロンは変性しているか、失われている。図10B、CEPニューロン喪失の定量化。3つの独立した試験を実施し、各試験は20~30匹の動物からなった。
図11】ヒトAβ1-42の全神経的発現は、腸内でUPRmtレポーターphsp-6::gfpを十分に誘導する。陰性対照細菌またはグルコンアセトバクターEBT405細菌のどちらかを摂食した、ヒトAβ1-42を発現していない株(左の対照株)、またはヒトAβ1-42を発現している株(中央および右の画像)の代表的蛍光顕微鏡写真。株はすべて、phsp-6::gfpおよびphsp-4::mcherryレポーターを含有する。対照株(左の画像)では基底レベルのphsp-6::gfp発現しか観測されず、GFPはヒトAβ1-42担持株の腸内で活性化しているが(中央の画像);しかしグルコンアセトバクターEBT405細菌を摂食した株では、phsp-6::gfp発現は低下している。ER小胞体ストレス応答UPRERレポーターphsp-4::mcherryは、貯精嚢(spematheca)(白い矢印ヘッド)において若干活性化しているに過ぎない。左の画像のスケールバーは200 μMである。
図12】ヒト凝集性tau変異株の全神経的発現は、腸内でUPRmtストレスレポーターphsp-6::gfpを十分に誘導する。陰性対照細菌またはEBT405細菌のいずれかを摂食した、ヒトtau変異株を発現していない株(左の対照株)、およびヒトtau変異株を発現している株(中央および右の画像)のいずれかの代表的蛍光顕微鏡写真。株はすべて、phsp-6::gfp、phsp-4::mcherryレポーターおよびpharnygealマーカー(白い矢印)、pmyo-2:mcherryを含有する。対照株(左の画像)では基底レベルのphsp-6::gfp発現しか観測されず、GFPはヒトtau変異株担持株の腸内で活性化しているが(中央の画像);しかしグルコンアセトバクターEBT405細菌を摂食した株では、phsp-6::gfp発現は低下している。pharygealマーカーの発現は影響されていないので、この低下は特異的である。UPRERレポーターphsp-4::mcherryは、貯精嚢(白い矢印ヘッド)において若干活性化しているに過ぎない。左の画像のスケールバーは200 μMである。
図13】HTSストラテジーの概略図を示す。
図14】EBT405の摂食が、Aβ凝集体を低下させることを示す、データを示す。陰性対照細菌またはEBT405を摂食し、かつL1ステージ後60時間で撮像された、GFPと結合したAβ3-42ペプチドを発現するCL2331株の代表的蛍光顕微鏡写真。矢印はアミロイド堆積を示す。スケールバーは200 μM。
【発明を実施するための形態】
【0123】
詳細な説明
本明細書では、ミトコンドリア機能不全および/またはペルオキシソーム機能不全に関するかそれを特徴とする疾患および/または障害を治療または予防するための方法および組成物が提供される。そのような組成物は、酢酸菌科の1つまたは複数の細菌種、またはそれに由来する細菌抽出物もしくは構成要素を含む。
【0124】
ミトコンドリア機能/機能不全および細胞内ATP産生
ミトコンドリアは、ほとんどの真核細胞に存在する細胞内小器官であり、主な機能として、酸化的リン酸化により、多様な細胞内プロセスで使用されるエネルギーをATPの形態で産生する。たとえば、グルコースまたは脂肪酸の代謝由来のエネルギーがATPに変換され、次いでそれが、エネルギーを必要とするさまざまな生合成反応および他の代謝活性を誘導するのに用いられる。ミトコンドリアは、核DNAとは別に、ヒト細胞では約16,000塩基対の環状二本鎖DNAを含む、独自のゲノムを有する。各ミトコンドリアは独自のゲノムのコピーを複数有し得、個々の細胞は数百のミトコンドリアを有し得る。ミトコンドリアは、トリカルボン酸(TCA)回路、ヘム合成、脂肪酸のβ酸化、アミノ酸代謝等において役割を果たしている。さらに、カルシウム恒常性を維持する機能、活性酸素産生系、および代謝物、イオン、タンパク質等の輸送系がミトコンドリア内に存在する。このように、ミトコンドリアは、真核細胞における異化および同化の両方の反応において重要な役割を果たす。
【0125】
ミトコンドリア機能不全はさまざまな疾患をもたらし得ることが示されている。一部のミトコンドリア疾患は、ミトコンドリアゲノム中の変異または欠失による。ミトコンドリアは分裂し、それらの宿主細胞よりも早い代謝回転速度で増殖し、それらの複製は核ゲノムの制御下にある。したがって、細胞中のミトコンドリアの閾値比率が不十分である場合、また組織内のそのような細胞の閾値比率が欠陥ミトコンドリアを有する場合、組織または器官の機能不全の症状が生じ得る。事実上どの組織でも冒され得、種々の組織が関与する程度によっては、非常に多様な症状を呈し得る。
【0126】
ミトコンドリアの疾患は、脳、心臓、肝臓、骨格筋、腎臓、ならびに内分泌系および呼吸器系などのエネルギー需要の高い器官において、最も顕著である。ミトコンドリア機能の軽度の障害でさえ、疾患の症状に反映されることがある。ミトコンドリア疾患の症状は、運動制御の喪失、筋肉の弱さおよび痛み、痙攣、視覚/聴覚問題、心疾患、肝疾患、胃腸障害、嚥下困難その他を含み得る。ミトコンドリア疾患は、遺伝性の場合もあれば、自然な変異による場合もあり、両方ともミトコンドリア中に通常存在するタンパク質またはRNA分子の機能の変化につながり得る。
【0127】
本明細書に記載される細菌組成物、抽出物、および/または構成要素は、少なくとも多少のミトコンドリア活性を保持している対象の細胞、組織、器官、その他において、たとえその活性が損なわれていたとしても、最大の効果を有するであろう、ということは特筆に値する。本明細書に記載される細菌組成物、抽出物、および/または構成要素は、ミトコンドリアおよびペルオキシソームの両方の新生を誘導し得る(それによって全体的な細胞の代謝機能が増強される)が、本明細書に記載される組成物の利益は、電子伝達系を通じての既存のミトコンドリア機能の増強によると考えられる。すなわち、本明細書に記載される組成物は、ミトコンドリア機能不全を修復するのに外来性遺伝子を提供するのではなく、ミトコンドリアの既存の機能を、ミトコンドリアの数および/または各ミトコンドリア内の電子伝達系の機能をいずれも増加させることによって、増強する。この機能の増強はおそらく、部分的には、本明細書に記載される細菌により生成された代謝物による。
【0128】
ミトコンドリア機能不良と関連がある障害としてはまた、たとえば、代謝障害、神経変性障害、老化関連障害、および慢性炎症性障害が挙げられる。ミトコンドリア障害はまた、遺伝性および/または後天性ミトコンドリア機能不全を伴う疾患、たとえばシャルコー・マリー・トゥース病2A2型、ミトコンドリア脳症・乳酸アシドーシス・卒中症候群(MELAS)、リー症候群、バース症候群、レーベル視神経症、脂肪酸酸化障害、遺伝型聾盲、毒物および/または薬物への曝露により誘導される代謝異常(たとえば、シスプラチン誘発性難聴)を挙げることができる。
【0129】
繰り返しになるが、本明細書に記載される方法および組成物は、ミトコンドリア機能不良を伴う疾患または障害の治癒を意図したものではなく、ミトコンドリア機能不良と関連がある少なくとも1つの疾患の症状を軽減させるのに有用である。つまり、本明細書に記載される組成物は、遺伝的ミトコンドリア欠陥を補正することはできないが、細胞に存在するミトコンドリア機能を、疾患の存在にもかかわらず増強するのに用いられ得る。このことは、たとえば、ミトコンドリアの数を増加させることにより、または電子伝達系(たとえば複合体Iおよび複合体III)を通過する流れを増加させることにより、達成することができる。したがって、一態様では、本明細書に記載される組成物および方法で処置される対象は、(処置前は)非罹患対象と比べて少なくとも10%のミトコンドリア機能および/またはペルオキシソーム機能を保持している。他の態様では、対象は、(処置前は)非罹患者と比べて少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%のミトコンドリア機能および/またはペルオキシソーム機能を保持している。
【0130】
本明細書ではまた、正常なミトコンドリア機能および/またはペルオキシソーム機能を保持している人を処置してミトコンドリア機能を増強させ、それによって能力、たとえば運動競技の能力を増強させることができることが、企図される。
【0131】
特定の態様では、本明細書に記載される方法および組成物は、ミトコンドリア機能および/またはペルオキシソーム機能を、そのような処置前のミトコンドリア機能および/またはペルオキシソーム機能と比べて(たとえば、ATP産生を測定することにより評価すると)少なくとも10%増加させることができる。いくつかの態様では、ミトコンドリア機能および/またはペルオキシソーム機能は、そのような処置前のミトコンドリア機能および/またはペルオキシソーム機能と比べて少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも1000倍、またはそれ以上増加する。
【0132】
電子伝達系の欠損:多くの疾患が、ミトコンドリアの欠損(複合体I、II、IIIもしくはIVの障害)または酵素の欠損(たとえばピルビン酸デヒドロゲナーゼの障害)を伴うことがわかっている。複合体I、II、III、およびIVは、ミトコンドリアの内膜に埋め込まれたタンパク質複合体である。それらは呼吸鎖として知られており、(NADHなどの)電子供与体と(02などの)電子受容体との間の電子の移動を、H+イオンの移動と共役させることにより機能する。結果として生じる内膜を挟んだ電子化学的プロトン勾配が、いずれも細胞のサイトゾルにおいて産生されるグルコース、ピルビン酸、およびNADHの酸化により、アデノシン三リン酸(ATP)の形態の化学エネルギーを生成するのに用いられる。この細胞呼吸のプロセスは、好気性呼吸としても公知であり、酸素の存在に依存する。酸素が限られる場合、糖分解産物はミトコンドリアとは無関係のプロセスである嫌気性発酵により代謝される。発酵と比べて、好気性呼吸中のグルコースからのATPの産生は約13倍高い。
【0133】
複合体I~IVは、電子伝達系として知られる4連の反応の間電子を担持し、結果としてエネルギーが生産される。第5のグループ(複合体V)は、ATPを生成するATPシンターゼ酵素である。電子伝達系とATPシンターゼは共に呼吸鎖を形成し、そのプロセス全体が、酸化的リン酸化またはOXPHOSとして知られている。
【0134】
複合体I欠損症:この鎖の第1の段階である複合体Iは、ミトコンドリア異常が最も多い部位であり、呼吸鎖欠損症の実に3分の1を占める。複合体I欠損症は、出生時または早期小児期に現れることが多い、普通は進行性の神経変性障害であって、特に脳、心臓、肝臓、および骨格筋などの高エネルギーレベルを要する器官および組織においてさまざまな臨床症状をもたらす。いくつかの特定のミトコンドリア障害が複合体I欠損症と関連付けられており、レーベル遺伝性視神経症(LHON)、ミトコンドリアミオパシー・脳症・乳酸アシドーシス・卒中症候群(MELAS)、赤色ぼろ線維ミオクローヌスてんかん症候群(MERRF)、およびリー症候群(LS)が挙げられる。
【0135】
これまでに、複合体I欠損症の3つの主要な型が同定されている:i)貧弱な筋緊張、発育遅延、心臓疾患、乳酸アシドーシス、および呼吸不全を特徴とする、致死性乳児多システム障害;ii)小児期または成人期に始まり、虚弱または運動不耐性を特徴とする、ミオパシー(筋疾患);およびiii)小児期または成人期に始まり、眼筋麻痺、色素性網膜症(失明を伴う網膜色変化)、聴覚損失、感覚ニューロパチー(感覚器官に関する神経障害)、痙攣、認知症、運動失調(異常筋肉協調)、および不随意運動を含み得るさまざまな症状の組み合わせを伴う、ミトコンドリア脳筋症(脳および筋疾患)。この型の複合体I欠損症は、リー症候群およびMELASの原因となり得る。複合体I欠損症のほとんどの症例が、常染色体劣性遺伝(父親と母親の両方からの欠陥核遺伝子の組み合わせ)の結果である。より低頻度では、この障害は母系遺伝性または孤発性であり、遺伝子欠陥はミトコンドリアDNAに存在する。
【0136】
一態様では、本明細書に記載される組成物および方法は、本明細書に記載される組成物または代謝物と基準細胞を接触させないこと以外は実質的に同じ細胞または細胞集団における細胞内ATPレベルと比べて、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも100倍、少なくとも1000倍、またはそれ以上、細胞内ATPレベルを増加させる。一態様では、本明細書に記載される組成物および方法は、ミトコンドリア機能不全を有する対象の細胞内ATPレベルを、そのような組成物および方法で処置されていない対象(または対象群)に対し相対的に回復させる。
【0137】
代謝障害:代謝障害としては、たとえば、II型糖尿病、肥満、高血糖、グルコース不耐性、インスリン抵抗性(すなわち、高インスリン血症、メタボリックシンドローム、シンドロームX)、高コレステロール血症、高血圧、高リポタンパク血症、高脂血症(たとえば脂質異常症)、高トリグリセリド血症、心血管疾患、粥状動脈硬化、末梢血管疾患、腎疾患、ケトアシドーシス、血栓性障害、腎症、糖尿病性ニューロパチー、糖尿病性網膜症、性的機能不全、皮膚症(dermatopathy)、胃腸障害、低血糖、メタボリックシンドローム、癌、または浮腫が挙げられる。本明細書に記載される方法および組成物は、そのような疾患または障害の根本的な原因に対処するものではないかもしれないが、そのような方法および組成物が提供するミトコンドリア機能の促進によって、ミトコンドリアの機能不全または不足と関連のあるこれらの疾患または障害のそのような面が寛解し得る。
【0138】
本明細書で提供される方法および組成物の一態様では、対象は、代謝障害に罹患しているか、易発症性である。代謝障害に罹患しているか、発症のリスクがある対象は、当技術分野で公知の方法により特定される。たとえば糖尿病は、たとえば空腹時血中グルコースレベルもしくはインスリンの測定、または耐糖検査により、診断することができる。正常な成人のグルコースレベルは、60~126 mg/dlである。正常なインスリンレベルは、7 mU/mL±3 mUである。グルコース不耐性は、75 g経口耐糖検査での2時間後グルコースレベル140~199 mg/dL(7.8~11.0 mmol)により診断される。インスリン抵抗性は、空腹時血清インスリンレベルがおよそ60 pmol/Lよりも高いことにより診断される。低血糖は、血中グルコースレベルが2.8~3.0 mmol/L(50~54 mg/dl)よりも低いことにより診断され得る。高血圧は、随時血圧が140/90以上であることにより診断され得る。心血管疾患は、少なくとも部分的には、コレステロールレベル(たとえば、LDL、HDL、VLDLその他)を測定することにより、診断され得る。たとえば、LDLコレステロールが137よりも高いこと、または総コレステロールが200よりも高いことは、心血管疾患の目安である。高血糖は、血中グルコースレベルが10 mmol/1(180 mg/dl)よりも高いことにより診断される。肥満は、たとえば肥満度指数により診断される。代わりに、腹囲(脂肪分布を推定)、ウエスト・ヒップ比(脂肪分布を推定)、皮脂厚(いくつかの部位で測定される場合、脂肪分布を推定)、またはバイオインピーダンス(除脂肪組織のほうが体脂肪組織よりも電流をよく通す(すなわち体脂肪組織は電流を妨害する)という理論に基づき、脂肪%を推定)が測定される。正常な、過体重の、または肥満の人のパラメーターは、次のとおりである:低体重:BMI<18.5;正常:BMI 18.5~24.9;過体重:BMI = 25~29.9。過体重の人は、腹囲>94cm(男性)または>80cm(女性)、およびウエスト・ヒップ比≧0.95(男性)および≧0.80(女性)として、特徴付けられる。肥満の人は、BMIが30~34.9(体重と身長の「正常な」関係よりも20%以上高い)であり、体脂肪率>30%(女性)および25%(男性)であり、かつ腹囲>102 cm(40インチ)(男性)または88 cm(35インチ)(女性)、として特徴付けられる。重度または病的な肥満の人は、BMI≧35として特徴付けられる。
【0139】
神経変性疾患:神経変性障害としては、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、およびハンチントン病などの疾患が挙げられる。
【0140】
一態様では、神経変性障害はパーキンソン病である。パーキンソン病(PD)は、静止時振戦、硬直、動作緩慢、および体位不安定を特徴とする神経変性運動障害である。PD症状は、古典的には、黒質緻密部(SNc)におけるドーパミン枯渇およびドーパミン作動性神経変性によるとされている。しかし、さらなる神経回路が冒され、かつ非運動性症状が多く存在することから、全身性の病態が示唆される。ミトコンドリア機能不全が疾患プロセスにおける一次的な現象であるという説得力のあるエビデンスがある。PD関連の変異とミトコンドリア動態とが相互関係にあることが報告されている。PD関連の変異はミトコンドリア動態を攪乱させ得、またこれらの変異の帰結はミトコンドリア動態により調節され得る。
【0141】
一態様では、パーキンソン病の有効治療は、パーキンソン病の症状の適切な制御を維持するのに必要なL-DOPAなどの薬理学的治療剤の用量の低下により決定される。別の態様では、治療の有効性は、当技術分野では公知の統一パーキンソン病評価尺度(UPDRS)を用いてモニタリングされる。
【0142】
アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病、フリードリッヒ運動失調、遺伝性痙性対麻痺、鉄蓄積性神経変性(NBIA)、および視神経委縮I型も、それぞれ、さまざまなミトコンドリア活性欠陥と関連がある(たとえば Lin et al. Nature 443: 787-795 (2006)を参照)。
【0143】
炎症性疾患:慢性炎症性疾患としては、セリアック病、血管炎、ループス、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、過敏性腸疾患、粥状動脈硬化、関節炎、および乾癬などの疾患が挙げられる。本明細書に記載される方法および組成物は、そのような疾患または障害の根本的な原因に対処するものではないかもしれないが、そのような方法および組成物が提供するミトコンドリア機能の促進によって、ミトコンドリアの機能不全または不足と関連のあるこれらの疾患または障害のそのような面が寛解し得る。
【0144】
老化:老化は、易罹患性の増大と関連のある、代謝および生理の変化の進行性の蓄積である。老化の膜仮説(MHA)では、老化を、酸素ラジカルによる損傷に次ぐ細胞の防御機構および修復機構の有効性の減少と関連付けている。その結果、生化学的および代謝のエラーが生じ、それが進行的に蓄積して、細胞の老化および最終的には死をもたらす。したがって、MHAは、活性酸素種(ROS)が誘導する細胞膜構造の損傷が、細胞老化の主要なメディエーターである、と示唆している。
【0145】
ROSは、酸化的リン酸化の正常副産物であり、また、虚血、低灌流の条件下で、および環境汚染物質に応答して、形成される。ROSまたはフリー酸素ラジカルの多くの有害な活性のなかに、ミトコンドリアDNA(mtDNA)の直接的損傷がある。mtDNA損傷の進行的な蓄積によって、細胞は酸化的リン酸化反応を有効に行えなくなり、それによって生体エネルギーが不足した細胞となる。ミトコンドリアDNAの損傷は経時的に蓄積し、やがて細胞が機能不全となり、続いて器官の不全、老化、そして最終的には死に至る。さらに、老化と関連がある、オキシダント防御酵素スーパーオキシドジスムターゼおよびカタラーゼの低下のエビデンスもある。したがって、ROSの有害作用の増加だけでなく、ROSに対する防御および有効なミトコンドリア機能に必要な酵素およびミトコンドリア代謝物の減少がある。
【0146】
ペルオキシソーム障害
いくつかの態様では、対象は、ミトコンドリア機能不全の存在の有無にかかわらずペルオキシソーム障害を有する。
【0147】
ペルオキシソームは、赤血球を除くすべての真核細胞で発現する細胞内小器官であり、細胞内代謝において重要な役割を果たす。ペルオキシソームは、異なる組織および細胞型の具体的な代謝需要に基づき形状および数を変化させる動的な小器官である。ペルオキシソームは、超長鎖脂肪酸をより短い脂肪酸へと分解することができ、より短い脂肪酸はそれからβ酸化サイクルに入ることができる(VLCFA:炭素鎖>22)。ペルオキシソームは細胞内抗オキシダント活性における役割もある。
【0148】
ペルオキシソームはまた、胆汁酸、ドコサヘキサエン酸(docosohexanoic acid)、オメガ3脂肪酸、および膜リン脂質の特殊な分類であるプラスマロゲンなどの脂質の合成に関与している。単一の細胞がペルオキシソームなしで生存することは特定の条件下で可能かもしれないが、この小器官は組織および器官の適切な機能および生存性にとっては必須である。ペルオキシソームの重要性は、機能性ペルオキシソームの喪失を原因とするペルオキシソーム新生障害または「PBD」と呼ばれる疾患群により、最も顕著である(Weller et al., 2003)。
【0149】
いくつかの態様では、本明細書に記載される方法および組成物は、ペルオキシソーム疾患または障害を治癒するものではなく、むしろペルオキシソーム機能不良と関連がある少なくとも1つの疾患症状を軽減するのに有用である。つまり、本明細書に記載される組成物は遺伝性ペルオキシソーム欠陥を補正することはできないが、既存のペルオキシソーム機能を増強させるのに用いることができる。このことは、たとえばペルオキシソームの数を増加させること、またはペルオキシソームの代謝(たとえば超長鎖脂肪酸(VLCFA)の代謝)経路を通過する流れを増加させることによって実現することができる。したがって、一態様では、本明細書に記載される組成物および方法で治療される対象は、非罹患対象のペルオキシソーム機能と比べて少なくとも10%のペルオキシソーム機能を保持している。他の態様では、対象は、非罹患者と比べて少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%のペルオキシソーム機能を保持している。
【0150】
ペルオキシソーム新生障害は、障害の重度に基づき3つの表現型に分けられる、連続体の障害である。最も重度の型はZellweger症候群(ZS)であり、次が中間型の新生児副腎白質ジストロフィー(NALD)であり、一番軽度なのが乳児レフサム病(IRD)である。ZSの子どもは、新生児期の早期に深刻な筋緊張低下、顔異形、肝機能障害、痙攣を呈し、生後1年以上生存することはめったにない。生化学的レベルでは、ラボ検査によりペルオキシソーム代謝の深刻な欠損が示され、これらの患者由来の細胞には機能性細胞内ペルオキシソームがほとんど存在していない。NALDとIRDとを互いに区別することはより難しく、これらが事例のほとんどを占め、患者は成人期を生存することができる。どちらも生後間もなく現れ得るが、発育遅延、軽度の肝機能障害により、および視聴覚障害により盲聾児に分類されて、後になって診断されることが多い。NALD-IRD児の一部は、正常なミエリンの破壊を示す白質ジストロフィーを発症する。また、副腎不全および骨減少症を発症することもあり、後者は病的骨折の原因となる。NALD-IRD患者由来の細胞は、ZS患者よりも多くの機能的ペルオキシソームを含有し、ラボ検査ではより高い残存ペルオキシソーム代謝が見られる。ペルオキシソームが作る産物の欠損、および(超長鎖脂肪酸などの)蓄積する基質の毒性の結果、臨床的特徴が生じる。
【0151】
これらの常染色体劣性遺伝疾患はペルオキシソーム機能不全に由来し、現在の治療は主に、支持的ケア、食事管理、対症療法、およびペルオキシソームの薬理学的誘発の使用を伴う治療ストラテジーに焦点を当てている。本明細書に記載される細菌または抽出物もしくは代謝物の調製物をペルオキシソーム欠損症の対象に投与すると、ペルオキシソーム活性または機能を向上させることができ、それによって治療効果を提供することができる。
【0152】
改変細菌
いくつかの態様では、本明細書に記載される組成物または細菌抽出物のうちの1つまたは複数が、改変微生物を含む。たとえば、改変微生物としては、1つまたは複数の導入された遺伝子変化を内包する微生物が挙げられ、そのような変化は、細菌の染色体または内在性プラスミドに含まれる1つまたは複数のヌクレオチドの挿入、欠失、転座、もしくは置換、またはそれらの任意の組み合わせであり、該遺伝子変化により、1つまたは複数のタンパク質コード遺伝子、非タンパク質コード遺伝子、遺伝子調節領域、またはそれらの任意の組み合わせの変更、破壊、除去、または付加が生じ得、また、そのような変化は2つ以上の別個のゲノム領域の融合であってもよいし、合成により導いてもよい。改変微生物は、限定ではないが、部位特異的変異誘発、トランスポゾン変異誘発、ノックアウト、ノックイン、ポリメラーゼ連鎖反応変異誘発、化学的変異誘発、紫外線による変異誘発、(化学的または電気穿孔による)形質転換、ファージ形質導入、またはそれらの任意の組み合わせを含む技法を用いて生産することができる。
【0153】
一態様では、細菌は、グラム陰性細菌の、酢酸菌科の細菌である。酢酸菌科のメンバーは、一般に、発酵中に糖またはエタノールを酸化して酢酸を産生する能力によってグループ分けされる。一態様では、細菌は、アセトバクター属の種であり、グルコノバクター属の種およびグルコンアセトバクター属の種を含む他の酢酸菌科のメンバーと区別される。
【0154】
別の態様では、細菌はグルコノバクター属の種である。グルコノバクター属の種の非限定例としては、グルコノバクター・アルビダス、グルコノバクター・アサイー(Gluconobacter asaii)、グルコノバクター・ケレウィシアエ(Gluconobacter cerevisiae)、グルコノバクター・セリナス、グルコノバクター・フラテルイ、グルコノバクター・ヤポニカス、グルコノバクター・カンカナブリエンシス(Gluconobacter kanchanaburiensis)、グルコノバクター・コンドニ、グルコノバクター・ネフェリ、グルコノバクター・オキシダンス、グルコノバクター・スファエリカス(Gluconobacter sphaericus)、グルコノバクター・タイランディカス(Gluconobacter thailandicus)、グルコノバクター・ウチムラエ(Gluconobacter uchimurae)、およびグルコノバクター・ワンケリナエ(Gluconobacter wancherniae)が挙げられる。
【0155】
別の態様では、細菌はグルコンアセトバクター属の種である。グルコンアセトバクター属の種の非限定例としては、グルコンアセトバクター・アッゲリス(Gluconoacaetobacter aggeris)、グルコンアセトバクター・アスケンシス(Gluconoacaetobacter asukensis)、グルコンアセトバクター・アゾトカプタンス(Gluconoacaetobacter azotocaptans)、グルコンアセトバクター・ジアゾトロフィカス(Gluconoacaetobacter diazotrophicus)、グルコンアセトバクター・エンタニ(Gluconoacaetobacter entanii)、グルコンアセトバクター・エウロパエウス(Gluconoacaetobacter europaeus)、グルコンアセトバクター・ハンセニ(Gluconoacaetobacter hansenii)、グルコンアセトバクター・インテルメジウス(Gluconoacaetobacter intermedius)、グルコンアセトバクター・ヨハンナエ(Gluconoacaetobacter johannae)、グルコンアセトバクター・カキアセティ(Gluconoacaetobacter kakiaceti)、グルコンアセトバクター・コンブカエ(Gluconoacaetobacter kombuchae)、グルコンアセトバクター・リクエファシエンス(Gluconoacaetobacter liquefaciens)、グルコンアセトバクター・マルタセティ(Gluconoacaetobacter maltaceti)、グルコンアセトバクター・メデリネンシス)Gluconoacaetobacter medellinensis、グルコンアセトバクター・ナタイコラ(Gluconoacaetobacter nataicola)、グルコンアセトバクター・オボエジエンス(Gluconoacaetobacter oboediens)、グルコンアセトバクター・ラエティカス(Gluconoacaetobacter rhaeticus)、グルコンアセトバクター・サッカリ(Gluconoacaetobacter sacchari)、グルコンアセトバクター・サッカリボランス(Gluconoacaetobacter saccharivorans)、グルコンアセトバクター・スクロファーメンタンス(Gluconoacaetobacter sucrofermentans)、グルコンアセトバクター・スイングシ(Gluconoacaetobacter swingsii)、グルコンアセトバクター・タカマツズケンシス(Gluconoacaetobacter takamatsuzukensis)、グルコンアセトバクター・ツムリコラ(Gluconoacaetobacter tumulicola)、グルコンアセトバクター・ツムリソリ(Gluconoacaetobacter tumulisoli)、およびグルコンアセトバクター・キシリナス(Gluconoacaetobacter xylinus)が挙げられる。この局面および本明細書で提供されるすべての他の局面の別の態様では、細菌はグルコノバクターEBT 405である。
【0156】
いくつかの態様では、細菌は、グルコノバクター・アルビダス、グルコノバクター・セリナス、グルコノバクター・フラテルイ、グルコノバクター・ヤポニカス、グルコノバクター・コンドニ、グルコノバクター・ネフェリ、グルコノバクター・オキシダンス、グルコンアセトバクター・ジアゾトロフィカス、グルコンアセトバクター・ハンセニ、グルコンアセトバクター・サッカリボランス、アセトバクター・アセティ、またはアセトバクター・マロラムである。
【0157】
いくつかの態様では、細菌は酢酸菌科のメンバーではなく、同様の代謝物(たとえばグルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および/または2,5-ジケト-D-グルコン酸)を産生するように遺伝子改変されている。たとえば、いくつかの態様では、本明細書に記載される細菌は、たとえば、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIのうちの1つまたは複数を発現するように遺伝子改変されている。細菌細胞に形質転換または形質導入により異種性遺伝子材料を導入する方法は周知であり、非限定例として、化学的形質転換、微粒子銃、および電気穿孔が挙げられる。所与の細菌に最適なアプローチは当業者には公知である。
【0158】
以下の配列は、改変細菌において発現し得る選択的代謝経路酵素について提供される。
【0159】
SEQ ID NO: 1 > mGDHヌクレオチド配列
【0160】
SEQ ID NO: 2 > mGDHタンパク質配列
【0161】
SEQ ID NO: 3 > ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニットヌクレオチド配列
【0162】
SEQ ID NO: 4 > ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニットタンパク質配列
【0163】
SEQ ID NO: 5 > TonB依存性受容体ヌクレオチド配列
【0164】
SEQ ID NO: 6 > TonB依存性受容体タンパク質配列
【0165】
SEQ ID NO: 7 > 炭素-窒素ヒドロラーゼヌクレオチド配列
【0166】
SEQ ID NO: 8 > 炭素-窒素ヒドロラーゼタンパク質配列
【0167】
SEQ ID NO: 9 > ユビキノールオキシダーゼサブユニットIIヌクレオチド配列
【0168】
SEQ ID NO: 10 > ユビキノールオキシダーゼサブユニットIIタンパク質配列
【0169】
遺伝子材料(たとえば、プラスミド、DNAその他)の細菌への移入を促進するために、細菌を特定の条件に曝露することにより、人工的な細胞コンピテンスを誘導することができる。たとえば、細胞コンピテンスを誘導する1つの方法は、2価カチオンを含む(たとえば塩化カルシウム)溶液中で細菌をインキュベートして、部分的に膜を破壊し、それから宿主細胞にヒートショックを与えてたとえばプラスミドDNAを吸収するよう誘導することによる。細胞コンピテンスを誘導する代替方法は電気穿孔であり、細胞を電場に曝露し、それによって細胞膜に小さな穴を開けることができ、したがってプラスミドDNAが細胞に入ることができる。
【0170】
プラスミドにより供給された核酸(たとえばDNA)は、ゲノムに安定的に組み込むこともできるし、エピソームとして、たとえばプラスミドまたは他のエピソームベクター上で維持することもできる。いくつかの態様では、本明細書に記載される1種類または複数種類の酵素の発現を指令する配列が、細胞中の天然の調節エレメントの制御下に置かれる場合がある。他の態様では、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIの少なくとも1つの発現のためのコンストラクトが、一般に、コード配列の発現を指令するプロモーター、エンハンサー、その他などの調節エレメントを含む。調節エレメントのセットの制御下の遺伝子は、一般に、それらのエレメントに「機能的に連結されている」と言われる。典型的には、発現ベクターは、転写プロモーター、トランスジーンをコードする配列、および転写ターミネーターを含む。
【0171】
本明細書に記載される発現ベクター、またはベクターは、核酸分子であり、該分子が宿主細胞に導入されると発現する遺伝子をコードしている。典型的には、発現ベクターは、転写プロモーター、遺伝子をコードする配列、および転写ターミネーターを含む。発現ベクター内の遺伝子発現は、ふつう、プロモーターの制御下に置かれており、そのような遺伝子は該プロモーターと「機能的に連結されている」と言われる。同様に、調節エレメントとコアプロモーターとは、調節エレメントがコアプロモーターの活性を調節する場合は、機能的に連結されている。
【0172】
いくつかの態様では、形質転換細胞に、プラスミドにより供給された核酸配列の陽性細胞をインビトロで選択することを可能にする陽性マーカーを含めることが、有用であり得る。陽性選択マーカーは、遺伝子であり得、宿主細胞に導入されると、該遺伝子を担持する細胞の陽性選択を可能にする優性表現型を発現させる。このタイプの遺伝子は当技術分野で公知であり、たとえば、抗生物質抵抗性遺伝子(たとえば、ブラスチジン、ミコフェノール酸、ピュロマイシン、ゼオシン、アクチノマイシン、アンピシリン、カナマイシン、ネオマイシン、硫酸ポリミキシンB、またはストレプトマイシンに対する抵抗性)、または基質を着色物に変換する酵素(たとえば、X-galをガラクトースおよび不溶性青色色素に変換する、β-ガラクトシダーゼの発現による青白選別)、その他が挙げられる。他の選択ツールとしては、たとえば、放射性核酸プローブおよびトランスジーンにより発現したタンパク質に特異的な標識化抗体を挙げることができる。
【0173】
プレバイオティクス
プレバイオティクスは、細菌の宿主、たとえばヒトには消化されないが、宿主内の有益な細菌により発酵可能であり、かつ該細菌の増殖および/または活性を選択的に促進する成分または組成物である。そのような選択的発酵は、消化管微生物叢の組成および/または活性の両方において、宿主の良好な状態および健康に中性または良性の利益を与える特定の変化を可能にする。プレバイオティクスは、細菌組成物の生存、コロニー形成、および持続に有用な、複合糖質、アミノ酸、ペプチド、または他の栄養素を含み得る。
【0174】
好適なプレバイオティクスは、ふつう、植物由来の複合糖質、オリゴ糖または多糖である。一般に、プレバイオティクスはヒトには不消化性または難消化性であり、細菌の食料供給源となる。本明細書で提供される薬学的剤形、薬学的組成物、および方法で使用され得るプレバイオティクスとしては、限定ではないが、ガラクトオリゴ糖(GOS)、トランスガラクトオリゴ糖、フルクトオリゴ糖、またはオリゴフルクトース(FOS)、イヌリン、オリゴフルクトース濃縮イヌリン、ラクツロース、アラビノキシラン、キシロオリゴ糖(XOS)、マンノオリゴ糖、グアーガム、アラビアゴム、タガトース、アミロース、アミロペクチン(amylopectic)、キシラン、ペクチン、それらの組み合わせ等が挙げられる。
【0175】
いくつかの態様では、プレバイオティクスとして、1種類または複数種類の非消化性オリゴ糖、非消化性多糖、遊離単糖、非消化性糖、デンプン、または非デンプン多糖の混合物が挙げられる。好適なオリゴ糖およびそれらの生産方法は、Laere KJM, “Degradation of structurally different non-digestible oligosaccharides by intestinal bacteria: glycosylhydrolases of Bi. Adolescentis (2000) PhD thesis, Wageningen Agricultural University, Wageneingen, The Netherlandsにさらに記載されている。
【0176】
細菌の培養および貯蔵
バンキングについては、細菌組成物に含まれる株は、(1)検体から直接単離しても、バンクされたストックから取得してもよく、(2)任意で、増殖を補助する栄養寒天またはブロスで培養して生存可能なバイオマスを生成させてもよく、かつ(3)該バイオマスを複数のアリコートとして保存し長期貯蔵してもよい。
【0177】
培養段階を用いる態様では、寒天またはブロスは、増殖を可能にする必須要素および特定の因子を提供する栄養分を含有する。一例が、20 g/Lのグルコース、10 g/Lの酵母エキス、10 g/Lの大豆ペプトン、2 g/Lのクエン酸、1.5 g/Lのリン酸二水素ナトリウム、100 mg/Lのクエン酸鉄アンモニウム、80 mg/Lの硫酸マグネシウム、10 mg/Lのヘミンクロリド、2 mg/Lの塩化カルシウム、および1 mg/Lのメナジオンで構成される培地である。さまざまな微生物培地およびバリエーションが当技術分野で周知である(たとえば R. M. Atlas, Handbook of Microbiological Media (2010) CRC Press)。培地は、最初に培養物に添加してもよく、培養中に添加してもよく、または培養中ずっと間欠的/連続的に流してもよい。細菌組成物中の株は、単独で培養しても、細菌組成物のサブセット集団として培養しても、または細菌組成物を含む種々の種または株の一集団として培養してもよい。一例として、第1の株を第2の株と一緒に混合連続培養で、培養物が培養から洗い出されないように両細胞の最大増殖率よりも低い希釈率で、培養することができる。
【0178】
播種された培養物を、好ましい条件で、バイオマスが構築されるのに十分な時間インキュベートする。ヒト用の細菌組成物の場合、それは正常な体温(37℃)、pH、および正常なヒトのニッチと同様の値の他のパラメーターであることが多い。環境は、能動的に制御しても、受動的に(たとえばバッファーにより)制御しても、または浮動させてもよい。たとえば、嫌気性細菌(たとえば腸内微生物叢)組成物の場合、無酸素性/還元性環境が採用され得る。このことは、システインなどの還元剤/因子をブロスに添加することにより、かつ/またはブロスから酸素を奪うことにより、実現され得る。一例として、細菌組成物の培養物を、予め1 g/Lのシステイン・HClで還元した上記培地中、37℃、pH 7で増殖させることができる。
【0179】
培養物が十分なバイオマスを生成したら、バンキングまたは貯蔵のために保存することができる。生物を、冷凍から保護する化学環境(「抗凍結剤」の添加)、乾燥から保護する化学環境(「抗凍結乾燥剤(lyoprotectant)」の添加)、および/または浸透圧ショックから保護する化学環境(「浸透圧保護剤」の添加)に置き、複数の(任意で同一の)容器に分配して、均等なバンクを作ることができ、そして培養物を保存用に処理することができる。容器は、一般に不透過性で、環境から確実に隔離できるように蓋を有する。凍結保存処理は、液体を超低温(たとえば-80℃以下)で凍結させることにより実現される。乾燥保存は、培養物から、(噴霧乾燥または「クールドライ」の場合は)蒸発、または(たとえば凍結乾燥、噴霧凍結乾燥では)昇華により、除水する。除水によって、低温貯蔵よりも高い温度での細菌組成物の長期貯蔵安定性が向上する。細菌組成物が芽胞を作る種を含み、その結果として芽胞が産生される場合、最終組成物は密度勾配遠心法などの追加手段により精製され得、そして上記の技法を用いて保存され得る。細菌組成物のバンキングは、株を個別に培養し保存することによって、または複数の株を混合して、組み合わされたバンクを作製することによって、なされ得る。凍結保存の一例として、細菌組成物の培養物を遠心法により収集して、培養培地由来の細胞をペレット化することができ、そして上澄みをデカントし15%グリセロールを含有する新鮮培養ブロスと交換することができる。次いで培養物を1 mLクライオチューブに分注し、密封し、そして-80℃に置いて長期生存可能に保持することができる。この手技は、冷凍貯蔵から戻した後の許容可能な生存能を実現する。
【0180】
生物の生産は、培地の組成および培養条件を含め、バンキングと同様の培養段階を用いて実施することができる。特に臨床開発または製品製造では、操作スケールを拡大して実施することができる。スケールが拡大されると、最終培養前に、細菌組成物のいくつかの下位培養がなされ得る。最終培養の終了時に培養物を収集して、さらなる製剤化により投与用の剤形とすることができる。このことは、濃縮、望ましくない培地成分の除去、および/または細菌組成物を保存し、かつ選択ルートで投与されるのを許容可能にする化学環境への導入を含み得る。たとえば、細菌組成物は、濃度1010 CFU/mLとなるように培養され得、そしてタンジェンシャル・フロー・マイクロフィルター法により20倍に濃縮され得、消費培地は、ジアフィルタリングにより、2%ゼラチン、100 mMトレハロース、および10 mMリン酸ナトリウム緩衝液からなる保存培地と交換され得る。次いでこの懸濁液を凍結乾燥して粉末にし、滴定することができる。
【0181】
乾燥後、粉末をブレンドして適切な効力とすることができ、そして他の培養物、および/または粘稠性を与え扱いやすくするための結晶セルロースなどの充填剤と混合することができ、そして本明細書で提供される細菌組成物を製剤化することができる。
【0182】
一態様では、組成物中の細菌細胞の1つまたは複数の集団を同時培養する。
【0183】
いくつかの態様では、細菌を、0~5%酵母エキスブロスからなる培地で増殖させない。他の態様では、本明細書に記載される代謝物の生産を最適化するために、細菌を、グルコースまたは別の代謝可能な単糖(たとえばフルクトース)もしくは二糖(たとえばスクロース)を含む0~5%酵母エキスブロス中で増殖させる。いくつかの態様では、グルコースまたは代謝可能な単糖もしくは二糖の濃度は、0.5~5%である。一態様では、培地は、3%酵母エキスブロスを含む。
【0184】
いくつかの態様では、細菌培地にコーンスティープリカー(たとえば、0.5~5%コーンスティープリカー)を添加して、代謝物の生産を最適化する。コーンスティープリカーは、トウモロコシ湿式粉砕の副産物である。その構成要素は、溶性タンパク質、アミノ酸、糖質、有機酸(たとえば乳酸)、ビタミン、およびミネラルである。コーングルテン飼料中、他の成分と組み合わされることもあり、乳牛および肉牛、家禽、ブタの完全飼料、およびペットフードに広く用いられている。一部のコーンスティープリカーは、酢酸、食品酸の生産、および発酵プロセスで使用される。一部のコーンスティープリカーは、製薬業界で、静注液および薬物、なかでも特に抗生物質(ペニシリン)の生産に使用される。特定の態様では、コーンスティープリカーの濃度は、0.5~4%、0.5~3%、0.5~2%、0.5~1%、2~4%、3%、2~5%、3~5%、4~5%、1~4%、またはそれらの間の任意の範囲である。一態様では、コーンスティープリカーの濃度は3%である。
【0185】
用量、投与、および製剤
いくつかの態様では、本明細書に記載される細菌または細菌集合体を含む組成物中、たとえば2~5×105個の、またはそれ以上の、たとえば、1×106個、1×107個、1×108個、5×108個、1×109個、5×109個、1×1010個、5×1010個、1×1011個の、またはそれ以上の細胞が投与され得る。細菌の用量範囲は効力次第であり、所望の効果、たとえば治療される対象のミトコンドリア機能不全関連疾患の少なくとも1つの症状の軽減を得るのに十分な量を含む。用量は、許容不能な有害な副作用をもたらすほど高くてはいけない。一般に、用量は、病気のタイプ、そして患者の年齢、状態、および性別によって変わる。用量は、当業者により決定され得、また、何らかの合併症が生じた場合は個々の医師により調節され得る。
【0186】
本明細書に記載されるさまざまな局面での使用では、本明細書に記載される組成物中の有効量の細胞は、少なくとも1×105個の細菌細胞、少なくとも1×106個の細菌細胞、少なくとも1×107個の細菌細胞、少なくとも1×108個の細菌細胞、少なくとも1×109個の細菌細胞、少なくとも1×1010個の細菌細胞、少なくとも1×1011個の細菌細胞、少なくとも1×1012個の細菌細胞、またはそれ以上を含む。本明細書に記載される局面のいくつかの態様では、細菌細胞(たとえば、腐敗中の果実から単離)が、それを必要とする対象に投与される前に培養中で増殖されるか維持される。一態様では、細菌株は微生物バンクから入手される。いくつかの態様では、2種類以上の細菌株が、たとえば単一の混合物中、一緒に投与される。とはいえ本明細書では、2種類以上の細菌株を、別々の剤形として、またはそれらの株の下位混合物もしくは下位組み合わせとして投与できることが、具体的に企図される。したがって、たとえば3メンバーの共同体の場合、該共同体は、たとえば、3メンバーすべてを含む単一の調製物として(1つまたは複数の用量単位で、たとえば1つまたは複数のカプセルで)、または合わせて所与の株の全メンバーを含む2つ以上の別個の調製物として、投与され得る。単一の混合物としての投与が好ましいが、たとえば各株の個々の単位を使用する潜在的な利点は、任意の所与の対象に投与される実際の株を、必要に応じて、たとえば望ましい共同体をともに構成する単一種の用量単位の適切な組み合わせを選択することにより、特化することができる、ということである。
【0187】
いくつかの態様では、本明細書に記載される組成物は、1種類または複数種類の薬学的に許容される担体を含有する形態で投与され得る。好適な担体が当技術分野で周知であり、組成物を投与する所望の形態およびモードにより変わる。たとえば、薬学的に許容される担体としては、充填剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤、滑剤、潤滑剤等などの希釈剤または賦形剤を挙げることができる。典型的には、担体は、固体(粉末を含む)、液体、またはそれらの組み合わせであり得る。各担体は、組成物中の他の成分と混在でき、かつ対象にとって有害でないという意味で、好ましくは「許容可能」である。担体は、生物学的に許容可能かつ不活性であり得る(たとえば、組成物が適切な部位に送達されるまで生物学的材料の生存能を維持することを可能にする)。
【0188】
経口組成物は、不活性希釈剤または可食担体を含み得る。経口治療薬投与の目的で、活性化合物を賦形剤と混和することができ、そして錠剤、ドロップ、甘味錠、トローチ、またはカプセル、たとえばゼラチンカプセルの形態で使用することができる。経口組成物はまた、本開示の組成物を食品と組み合わせることで調製され得る。いくつかの態様では、細菌は、食料品に調合され得る。本明細書に記載される方法および組成物と一緒に用いられる食料品の一部の非限定例としては、アイスキャンディ、チーズ、クリーム、チョコレート、ミルク、肉、飲料、野菜のピクルス、ケフィア、味噌、ザワークラウトその他が挙げられる。他の態様では、食料品は、ジュース、清涼飲料、茶、飲料調製物、ゼリー飲料、および機能的飲料;ビールなどのアルコール飲料;米製品、麺類、パン、およびパスタなどの糖質含有食品;魚、ハム、ソーセージ、シーフード練り製品などの練り製品;カレー、濃厚なデンプン質のソースのかかった食品、および中華スープなどのレトルトパウチ製品;スープ;ミルク、乳飲料、アイスクリーム、およびヨーグルトなどの乳製品;発酵大豆ペースト、発酵飲料、およびピクルスなどの発酵製品;豆製品;ビスケット、クッキー等、キャンディー、チューイングガム、グミ、ゼリーを含む冷製デザート、クリームキャラメル、および冷凍デザートなどのさまざまな菓子類;即席スープおよび即席大豆スープなどのインスタント食品;等であり得る。微生物を殺してしまわないように、食品調製物は細菌株との混合後は調理を必要としないことが好ましい。
【0189】
一態様では、投与に用いられる食品は冷やされており、たとえば冷やしたフレーバー水である。特定の態様では、食料品は、潜在的アレルゲン食料品ではない(たとえば、大豆、小麦、ピーナツ、木の実、乳製品、卵、貝類、または魚類ではない)。薬学的に適合する結合剤、および/またはアジュバント材が、組成物の一部として含まれ得る。錠剤、丸薬、カプセル、トローチ等は、次の成分のいずれかを、または似た性質の化合物を含有し得る:結晶セルロース、トラガカントガム、またはゼラチンなどの結合剤;デンプンまたはラクトースなどの賦形剤、アルギン酸、プリモゲル、またはトウモロコシデンプンなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムまたはステロート(sterote)などの潤滑剤;コロイド状二酸化ケイ素などの滑剤;スクロースまたはサッカリンなどの甘味剤;またはペパーミント、サリチル酸メチル、オレンジフレーバー、もしくは他の好適なフレーバーなどの香料。これらは例示のみを目的とし、限定の意図はない。
【0190】
経口投与に好適な製剤は、錠剤、カプセル、カシェー、シロップ、エリクシール、加工食料品、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、ドロップ、もしくはゲルコート・アンプルなど、それぞれ所定の量の活性化合物を含有する、分離した単位として;粉末もしくは顆粒として;水性もしくは非水性の液体中の溶液もしくは懸濁液として;または水中油型もしくは油中水型エマルジョンとして、提供され得る。
【0191】
本明細書に記載される組成物は、直腸内送達のために、坐剤(たとえば、ココアバターおよび他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を用いて)または停留浣腸の形態でも調製され得る。直腸内投与に好適な製剤としては、ゲル、クリーム、ローション、水性もしくは油性懸濁液、分散性粉末もしくは顆粒、エマルジョン、溶解性固体物、灌注物等が挙げられる。製剤は、坐剤基剤を形成する1つまたは複数の固体担体、たとえばココアバター中に活性成分を含む、単位用量の坐剤として、好ましくは提供される。そのような製剤の好適な担体としては、ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、アルコール、およびそれらの組み合わせが挙げられる。代わりに、大腸内または直腸内投与用に、本開示の急速コロニー再形成展開剤を用いる大腸内洗浄剤を製剤化することができる。組成物は、インプラントを含め、放出制御製剤など、細菌がすぐに体外へ排出されないように保護する担体と一緒に、調製され得る。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルソエステル、およびポリ乳酸などの、生分解性、生体適合性ポリマーが使用され得る。そのような製剤は、標準的な技法を用いて調製され得る。材料は、たとえばAlza CorporationおよびNova Pharmaceuticals, Inc.から購入することもできる。リポソーム懸濁液も、薬学的に許容される担体として用いられ得る。これらは当業者に公知の方法により調製され得る。
【0192】
いくつかの態様では、組成物は、カプセル化またはマイクロカプセル化され得る(たとえば、腸溶コーティングされた製剤)。たとえば、組成物が経口投与される場合、剤形は、組成物が小腸の前に胃腸管に広く見られる条件、たとえば高酸性度および胃内に存在する消化酵素に曝露されないように、製剤化される。腸溶コーティングは、(胃内などの)低pHで安定であり得、かつ(たとえば小腸内の)より高いpHで溶解し得る。腸溶コーティングに用いることができる材料としては、たとえば、アルギン酸、酢酸フタル酸セルロース、プラスチック、ワックス、セラック、および脂肪酸(たとえば、ステアリン酸、パルミチン酸)が挙げられる。腸溶コーティングは、たとえば米国特許第5,225,202号、同第5,733,575号、同第6,139,875号、同第6,420,473号、同第6,455,052号、および同第6,569,457号に記載されており、これらはすべて参照により全体的に本明細書に組み入れられる。腸溶コーティングは、水性腸溶コーティングであり得る。腸溶コーティングに用いることができるポリマーの例としては、たとえば、セラック(商品名EmCoat 120 N、Marcoat 125);酢酸フタル酸セルロース(商品名AQUACOAT(商標)、AQUACOAT ECD(商標)、SEPIFILM(商標)、KLUCEL(商標)、およびETOLOSE(商標));ポリ酢酸フタル酸ビニル(商品名SURETERIC(商標));およびメタクリル酸(商品名EUDRAGIT(商標))が挙げられる。治療に用いられる組成物のカプセル化は、当技術分野で公知である。カプセル化には、乾燥粉末化成分に用いることができるハードシェルカプセル、またはソフトシェルカプセルが含まれ得る。カプセルは、動物タンパク質(たとえば、ゼラチン)、植物多糖またはカラギーナンのような誘導物、ならびに化工形態のデンプンおよびセルロースなどのゲル化剤の水溶液から作ることができる。可塑剤(たとえば、グリセリンおよび/またはソルビトール)、着色料、保存料、崩壊剤、潤滑剤、および表面処理剤などの他の成分が、ゲル化剤溶液に添加される場合がある。
【0193】
一態様では、本明細書に記載される腸溶コーティングされたプロバイオティクス組成物が、対象に投与される。別の態様では、腸溶コーティングされたプロバイオティクスおよびプレバイオティクス組成物が、対象に投与される。
【0194】
細菌組成物または細菌抽出物の製剤は、任意の好適な方法により調製され得、典型的には、細菌細胞を、液体もしくは粉砕した固体担体またはその両方と、所要の比率で均質によく混合すること、次いで必要に応じて、得られた混合物を所望の形状に成形することにより、調製され得る。いくつかの態様では、本明細書に記載される細菌株は、対象を処置する前に、1種類または複数種類のさらなるプロバイオティクス生物と組み合わされる。本明細書で使用する場合、「プロバイオティクス」という用語は、一過性または内在性フローラの少なくとも一部を形成し、それによって宿主生物にとって有益な予防効果および/または治療効果を示す微生物を指す。プロバイオティクスは正常な状況下では非病原性であり、限定ではないが、米国食品医薬品局により「一般に安全とみなされる(GRAS)」と指定されたものを含む。
【0195】
本明細書に記載される細菌または細菌共同体を含む栄養サプリメントとしては、ビタミン、ミネラル、必須および非必須アミノ酸、糖質、脂質、食材、栄養補助食品、短鎖脂肪酸等などのさまざまな栄養剤のすべてを挙げることができる。好ましい組成物は、ビタミンおよび/またはミネラルの任意の組み合わせを含む。本明細書に記載される組成物に使用されるビタミンとしては、ビタミンB、C、D、E、葉酸、K、ナイアシン、および同様のビタミンを挙げることができる。組成物は、特定の用途に有用と思われる任意のまたはさまざまなビタミンを含有することができ、したがって、ビタミン含有量は限定的なものと解釈すべきではない。典型的なビタミンは、たとえば毎日の摂取および一日所要量(RDA)が推奨されているものであるが、精密な量はさまざまであり得る。組成物は、好ましくは、RDAビタミン、ミネラル、および微量ミネラル、ならびに特に決まったRDAはないが健康なヒトまたは哺乳動物の生理に有益な役割を果たす栄養分の複合体を含み得る。好ましいミネラルのフォーマットとしては、たとえば乳酸細菌がより代謝しやすいグルコン酸塩またはクエン酸塩のいずれかの形態のものを挙げることができる。同様の配慮を、必要に応じて、他の分類の細菌のために用いることができる。関連の態様では、胃腸管から血液中への高効率かつ健全な物質吸収を確実なものにしたい場合、本明細書に記載される組成物が、本明細書に記載される1種類または複数種類の細菌または細菌共同体を、生存可能な乳酸細菌と組み合わせて、そして、限定ではないが栄養サプリメント、食材、ビタミン、ミネラル、薬、治療用組成物、抗生物質、ホルモン、ステロイド、および同様の化合物などの吸収させるべき任意の物質と組み合わせて含むことが企図される。組成物に含まれる物質の量は、その物質によって、およびその吸収に関する所期の目的によって、広く変わり得るので、組成物は限定的なものとはみなされない。
【0196】
本明細書に記載される組成物は、1日あたり、または毎日には満たないスケジュールで、約100 mg~約100 gの、あるいは約500 mg~約50 gの、あるいは約1 g~約40 gのプレバイオティクスを含み得る。
【0197】
細菌組成物の投与前に、患者は任意で、胃腸管が細菌組成物を受けるのに備えて、抗生物質の前処置プロトコルを受けてもよい。特定の態様では、患者が非常にレジリエントな病原体による急性炎症を有する場合などは、前処置プロトコルが勧められる。他の態様では、患者が病原体による炎症を有さない場合、またはたとえば、炎症の原因である病原体がレジリエントではない場合、または患者が急性炎症を有していたが成功裏に治療されており、しかし医師が炎症の再発を懸念する場合などは、前処置プロトコルは完全に任意である。これらの場合、前処置プロトコルは、細菌組成物が患者のマイクロビオームに影響を与える能力を増強し得、かつ/または治療結果を増強し得る。代替態様では、対象は抗生物質で事前に処置されない。
【0198】
患者を治療用微生物の投与に備えさせる一つの方法として、少なくとも1種類の抗生物質を投与して、患者体内の細菌を変化させる場合がある。患者を投与に備えさせる別の方法として、患者を大腸内視鏡検査に備えさせるのに用いられるような、標準的な大腸内クレンジング調製物を患者に投与して、大腸の内容物を実質的に空にする場合がある。「大腸の内容物を実質的に空にする」とは、大腸内容物の通常体積の少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または約100%を除去することを意味する。抗生物質処置は、大腸内クレンジングプロトコルの前に行われ得る。
【0199】
患者が炎症の治療のために抗生物質を受けている場合、または患者が特定の前処置プロトコルの一環として抗生物質を受けている場合、一態様では、抗生物質は、細菌組成物が投与される前に該抗生物質の腸内濃度を大幅に低下させるのに間に合うように、中止されなくてはならない。一態様では、抗生物質は、細菌組成物の投与の1、2、または3日前に中止され得る。一態様では、抗生物質は、細菌組成物の投与の3、4、5、6、または7抗生物質半減期前に中止され得る。前処置プロトコルが急性炎症の治療の一環である場合、抗生物質の選択は、炎症はその抗生物質に対し感受性があるが、投与される細菌組成物の構成要素はその抗生物質に対し感受性がないように、なされ得る。
【0200】
本明細書に記載される調製物はいずれも、数日間にわたり1日1回、または投与日に1日2回以上(1日2回、1日3回、または最大で1日5回を含む)など、1回もしくは単回で、または複数回で投与され得る。あるいは、調製物は、設定されたスケジュールにしたがい間欠的に、たとえば週に1回、月に1回、または患者の以前の病が再発したときに、投与され得る。別の態様では、調製物は、予防効果または治療効果を確実に維持するために、長期間ベースで投与され得る。なお、本明細書では上記およびそれ以外で細菌を送達する製剤に言及しているが、そのような細菌により産生された代謝物を含む製剤が、同様にして調製され得、かつ投与され得る。
【0201】
除外される細菌:当業者であればすぐに理解しようが、本明細書に記載される疾患治療用の組成物は、理想的には、1種類または複数種類の病原細菌を含まない。一態様では、本明細書に記載される組成物(たとえば細菌抽出物またはプロバイオティクス組成物)は、病原性または日和見性の生物に従来分類される生物を含まない。所与の分類学上のグループの全メンバーに共通するある機能、たとえば特定の代謝物を提供すること、は有益であり得るが、他の理由で、該グループの1つまたは複数の特定のメンバーの全体的な効果が有益ではない、たとえば病原性である、ということもある。病状たとえば急性の胃腸病の発生の原因となる所与の分類学上のグループのメンバーは、明確に、本明細書に記載される治療用または予防用の方法および組成物から除外される。
【0202】
一態様では、細菌組成物は、アシダミノコッカス・インテスティナリス(Acidaminococcus intestinalis)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラオウルテラ属の種(Raoultella sp.)、およびストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)の少なくとも1つを含まない。別の態様では、細菌組成物はこれらをどれも含まない。
【0203】
別の態様では、細菌組成物は、バルネシエラ・インテスティニホミニス(Barnesiella intestinihominis)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、エンテロコッカス・ヒラエ(Enterococcus hirae)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococus faecium)、またはエンテロコッカス・ドゥランス(Enterococcus durans)、アナエロスティペス・カカエ(Anaerostipes caccae)、クロストリジウム・インドリス(Clostridium indolis)、スタフィロコッカス・ワメリ(Staphylococcus wameri)、またはスタフィロコッカス・パステウリ(Staphylococcus pasteuri)、およびアドラークロイツィア・エクオリファシエンス(Adlercreutzia equolifaciens)の少なくとも1つを含まない。別の態様では、細菌組成物はこれらをどれも含まない。
【0204】
別の態様では、細菌組成物は、クロストリジウム・ボツリナム(Clostridium botulinum)、クロストリジウム・カダベリス(Clostridium cadaveris)、クロストリジウム・ショウベイ(Clostridium chauvoei)、クロストリジウム・クロストリジオフォルム(Clostridium clostridioforme)、クロストリジウム・コクレアリウム(Clostridium cochlearium)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、クロストリジウム・ヘモリティカム(Clostridium haemolyticum)、クロストリジウム・ハスティフォルム(Clostridium hastiforme)、クロストリジウム・ヒストリティカム(Clostridium histolyticum)、クロストリジウム・インドリス、クロストリジウム・イレグラレ(Clostridium irregulare)、クロストリジウム・リモサム(Clostridium limosum)、クロストリジウム・マレノミナタム(Clostridium malenominatum)、クロストリジウム・ノビ(Clostridium novyi)、クロストリジウム・オロティカム(Clostridium oroticum)、クロストリジウム・パラプトリフィカム(Clostridium paraputrificum)、クロストリジウム・ペルフリンゲンス(Clostridium perfringens)、クロストリジウム・ピリフォルム(Clostridium piliforme)、クロストリジウム・プトレファシエンス(Clostridium putrefaciens)、クロストリジウム・プトリフィカム(Clostridium putrificum)、クロストリジウム・セプティカム(Clostridium septicum)、クロストリジウム・ソルデリ(Clostridium sordellii)、クロストリジウム・スフェノイデス(Clostridium sphenoides)、およびクロストリジウム・テタニ(Clostridium tetani)の少なくとも1つを含まない。別の態様では、細菌組成物はこれらをどれも含まない。
【0205】
別の態様では、細菌組成物は、大腸菌およびラクトバチルス・ジョンソニ(Lactobacillus johnsonii)の少なくとも1つを含まない。別の態様では、細菌組成物はこれらをどれも含まない。
【0206】
別の態様では、細菌組成物は、クロストリジウム・イノキューム(Clostridium innocuum)、クロストリジウム・ブチリカム(Clostridium butyricum)、およびブラウティア・プロダクタ(Blautia producta)(以前はペプトストレプトコッカス・プロダクタス(Peptostreptococcus productus)として知られていた)の少なくとも1つを含まない。別の態様では、細菌組成物はこれらをどれも含まない。
【0207】
別の態様では、細菌組成物は、真正細菌(Eubacteria)、フソバクテリウム門(Fusobacteria)、プロピオニバクテリア(Propionibacteria)、大腸菌、およびゲミガー(Gemmiger)の少なくとも1つを含まない。
【0208】
別の態様では、本明細書に記載される組成物は、エルシニア(Yersinia)、ビブリオ(Vibrio)、トレポネーマ(Treponema)、ストレプトコッカス、スタフィロコッカス、シゲラ(Shigella)、サルモネラ(Salmonella)、リケッチア(Rickettsia)、オリエンティア(Orientia)、シュードモナス(Pseudomonas)、ナイセリア(Neisseria)、マイコプラズマ(Mycoplasma)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、リステリア(Listeria)、レプトスピラ(Leptospira)、レジオネラ(Legionella)、クレブシエラ(Klebsiella)、ヘリコバクター(Helicobacter)、ヘモフィルス(Haemophilus)、フランシエラ(Francisella)、エシエリキア(Escherichia)、エーリキア(Ehrlichia)、エンテロコッカス(Enterococcus)、コクシエラ(Coxiella)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、クラミジア(Chlamydia)、クラミドフィラ(Chlamydophila)、カンピロバクター(Campylobacter)、バークホルデリア(Burkholderia)、ブルセラ(Brucella)、ボレリア(Borrelia)、ボルデテラ(Bordetella)、バチルス(Bacillus)の各属、多剤耐性細菌、広域β-ラクタム耐性腸球菌(Enterococci)(ESBL)、カルバペネム耐性腸内細菌(Enterobacteriaceae)(CRE)、またはバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)の、病原性細菌を含まない。
【0209】
他の態様では、本明細書に記載される組成物は、エロモナス・ハイドロフィラ(Aeromonas hydrophila)、カンピロバクター・フィタス(Campylobacter fetus)、プレジオモナス・シゲロイデス(Plesiomonas shigelloides)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、腸管凝集性大腸菌、腸管出血性大腸菌、腸管侵入性大腸菌、腸内毒素原性大腸菌(たとえば限定ではないが、LTおよび/またはST)、大腸菌0157:H7、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、クレブシエラ・ニューモニア(Klebsiellia pneumonia)、リステリア・モノサイトジーン(Lysteria monocytogenes)、プレシオモナス・シゲロイデス(Plesiomonas shigelloides)、サルモネラ属の種、サルモネラ・チフィ(Salmonella typhi)、サルモネラ・パラチフィ(Salmonella paratyphi)、シゲラ属の種(Shigella spp.)、スタフィロコッカス属の種、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、バンコマイシン耐性腸球菌属の種、ビブリオ属の種、ビブリオ・コレラエ(Vibrio cholerae)、ビブリオ・パラヘモリティカス(Vibrio parahaemolyticus)、ビブリオ・ブルニフィカス(Vibrio vulnificus)、またはエルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica)などの病原性の種または株を含まない。
【0210】
一態様では、本明細書に記載される細菌組成物または製剤は、クレブシエラ・ニューモニアエ(Klebsiella pneumoniae)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、エンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)、またはビロフィラ・ワズワーシア(Bilophila wadsworthia)を含まない。
【0211】
有効性の測定
本明細書で使用する場合、「有効量」という用語は、ミトコンドリア機能不全関連疾患の少なくとも1つまたは複数の症状の緩和に必要な、細菌細胞またはそれらの構成要素もしくは代謝物の集団の量を指し、かつ所望の効果を提供するのに十分な組成物の量に関する。本明細書で使用する場合、有効量はまた、疾患の症状の発生を予防するもしくは遅延させるか、疾患の症状の進路を変える(たとえば限定ではないが、ミオパシーなどの疾患の症状の進行を緩慢化させる)か、疾患の症状を逆行させるのに十分な量を含む。任意の所与のケースに関して、適切な「有効量」は、当業者によりルーチンの実験を用いて決定され得ることが理解される。身体のおよび細胞樹立の性質の複雑さゆえに、細胞の「有効量」は種々の患者で異なり得るが、投与された細胞の量が本当に「有効量」であったかどうかは、後になれば容易に決定できる。したがって、それに応じて、さらなる治療を変更することができる。なお、長期のコロニー形成または樹立は、しばしば望ましいものではあるが、定期的な投与でも有効な治療を実現できるので、有効な治療に必要というわけではない。
【0212】
治療の有効性は、経験ある医師によって決定され得る。しかし、治療は、本明細書でこの用語が使用される場合、本明細書に記載される細菌細胞または細菌抽出物を含む組成物での処置後に、症状の、または他のミトコンドリア機能不全関連疾患の臨床的に認められる症状またはマーカーの、いずれか1つまたは全部が低下した場合、たとえば少なくとも10%低下した場合に、「有効治療」と考えられる。これらの目安を測定する方法は、当業者には公知であり、かつ/または本明細書に記載されている。
【0213】
一態様では、有効治療は、ミトコンドリア機能不全関連疾患の症状の適切な制御を維持するのに必要な従来の薬理学的治療剤の用量の低下により決定される。
【0214】
いくつかの態様では、対象は、1つまたは複数のさらなる診断手技、たとえば医療用画像法、身体検査、ラボ検査、臨床履歴、家族病歴、遺伝子検査等により、さらに評価される。医療用画像法は、当技術分野で周知である。そうした医療用画像法は、限定ではないが、超音波法、コンピューター断層撮影スキャン、ポジトロン放射断層撮影法、光子放射コンピューター断層撮影法、および磁気共鳴画像法などの任意の公知の画像法から選択され得る。
【0215】
本発明は、以下の番号付けされた項のいずれか1つに記載されるとおりであり得る。
1. 膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIのうちの1つまたは複数をコードする1つまたは複数の核酸配列を含みかつ発現する一定量の1種類または複数種類の細菌を含む、組成物。
2. 前記細菌が、酢酸菌科(Acetobacteriaceae family)の細菌である、項1記載の組成物。
3. 前記細菌が、グルコノバクター属の種(Gluconobacter spp.)(例えば、グルコノバクターEBT 405)、アセトバクター属の種(Acetobacter spp.)、グルコンアセトバクター属の種(Gluconoacaetobacter spp.)、アシドモナス属の種(Acidomonas spp.)、アメヤマエア属の種(Ameyamaea spp.)、アサイア属の種(Asaia spp.)、グラニュリバクター属の種(Granulibacter spp.)、コザキア属の種(Kozakia spp.)、ネオアサイア属の種(Neoasaia spp.)、ネオコマガタエア属の種(Neokomagataea spp.)、サッカリバクター属の種(Saccharibacter spp.)、スワミナタニア属の種(Swaminathania spp.)、またはタンチカロエニア属の種(Tanticharoenia spp.)である、項2記載の組成物。
4. 前記核酸配列のうちの1つまたは複数が、外来性核酸配列である、項1~3のいずれか一項記載の組成物。
5. 前記細菌が、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIの各々をコードする核酸配列を含みかつ発現する、項1~4のいずれか一項記載の組成物。
6. 前記一定量の1種類または複数種類の細菌が凍結乾燥されている、項1~5のいずれか一項記載の組成物。
7. 前記一定量が、それを必要とする対象に投与されると、ヒト細胞において、ミトコンドリア転写因子A(TFAM)またはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γコアクチベーター1(PGC)の発現および/または活性を誘導するのに有効な量である、項1~6のいずれか一項記載の組成物。
8. ヒト細胞においてTFAMまたはPGCの発現および/または活性を誘導するのに有効な前記量が、1×106個の細菌である、項7記載の組成物。
9. グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および2,5-ジケト-D-グルコン酸からなる群より選択される1つまたは複数の添加された細菌代謝物をさらに含む、項1~8のいずれか一項記載の組成物。
10. 前記細菌が、生存可能であるか、弱毒化されているか、または熱失活化されている、項1~9のいずれか一項記載の組成物。
11. 食品、飲料、飼料組成物、プロバイオティクス、栄養サプリメント、または薬学的組成物として製剤化されている、項1~10のいずれか一項記載の組成物。
12. プレバイオティクスをさらに含む、項1~11のいずれか一項記載の組成物。
13. 前記プレバイオティクスが、フルクトオリゴ糖、イヌリン、イソマルトオリゴ糖、ラクチロール、ラクトスクロース、ラクツロース、大豆オリゴ糖、トランスガラクトオリゴ糖、またはキシロオリゴ糖を含む、項12記載の組成物。
14. 薬学的に許容される担体をさらに含む、項1~13のいずれか一項記載の組成物。
15. 経口投与用に製剤化されている、項1~14のいずれか一項記載の組成物。
16. 腸溶コーティングされた製剤である、項15記載の組成物。
17. 膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIからなる群より選択される酵素をコードする1つまたは複数の核酸配列を含みかつ発現する少なくとも1種類の細菌に由来する治療有効量の抽出物またはフラクションを含む、組成物。
18. 前記少なくとも1種類の細菌が、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIの各酵素を含みかつ発現する、項17記載の組成物。
19. 前記抽出物またはフラクションが、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および2,5-ジケト-D-グルコン酸から選択される1つまたは複数の代謝物を含む、項17または18記載の組成物。
20. 前記抽出物またはフラクションが、
(i)1%グルコースを含有するLysogeny broth標準培地(1%トリプトン、0.5%酵母エキス、および1%塩化ナトリウム)、
(ii)Hestrin-Schramm標準培地(D-グルコース2%、0.5%酵母エキス、0.5%ペプトン、0.27%リン酸二ナトリウム、0.115%クエン酸)、または
(iii)8%グルコース、0.5%酵母エキス、0.2%マンニトール、0.05%硫酸マグネシウム、および10%炭酸カルシウムを含むCaCO3培地、
を含む培地で培養された細菌細胞に由来する、項17~19のいずれか一項記載の組成物。
21. 前記抽出物またはフラクションが、前記組成物を投与された宿主哺乳動物の少なくとも1つの細胞型におけるATP産生を促進する代謝物または細菌副産物を含む、項17~20のいずれか一項記載の組成物。
22. 前記抽出物またはフラクションが、生存可能な細菌細胞を含まない、項17~21のいずれか一項記載の組成物。
23. 前記抽出物またはフラクションが、検出可能な細菌を欠いている、項17~22のいずれか一項記載の組成物。
24. 前記抽出物またはフラクションが、弱毒化または熱失活化された細菌をさらに含む、項17~23のいずれか一項記載の組成物。
25. 前記細菌が、酢酸菌科の細菌である、項17~24のいずれか一項記載の組成物。
26. 前記細菌が、グルコノバクター属の種(例えば、グルコノバクターEBT 405)、アセトバクター属の種、グルコンアセトバクター属の種、アシドモナス属の種、アメヤマエア属の種、アサイア属の種、グラニュリバクター属の種、コザキア属の種、ネオアサイア属の種、ネオコマガタエア属の種、サッカリバクター属の種、スワミナタニア属の種、またはタンチカロエニア属の種である、項25記載の組成物。
27. 前記核酸配列のうちの1つまたは複数が、外来性核酸配列である、項17~26のいずれか一項記載の組成物。
28. 食品、飲料、飼料組成物、栄養サプリメント、または薬学的組成物として製剤化されている、項17~27のいずれか一項記載の組成物。
29. 薬学的に許容される担体をさらに含む、項17~28のいずれか一項記載の組成物。
30. 経口投与用に製剤化されている、項17~29のいずれか一項記載の組成物。
31. 細胞内ATP産生の増加を必要とする対象の少なくとも1つの細胞型において細胞内ATP産生を増加させる方法であって、少なくとも1つの細胞型において細胞内ATP産生を増加させるのに有効な量の、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIのうちの1つもしくは複数をコードする1つもしくは複数の核酸配列を含みかつ発現する少なくとも1種類の非病原性細菌またはその抽出物もしくはフラクションを含む組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
32. 前記少なくとも1種類の細菌が、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIの各々を発現する、項31記載の方法。
33. 前記少なくとも1種類の細菌が、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および2,5-ジケト-D-グルコン酸のうちの1つまたは複数を産生する、項31または32記載の方法。
34. 前記少なくとも1種類の細菌が、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および2,5-ジケト-D-グルコン酸の各々を産生する、項31~33のいずれか一項記載の方法。
35. 前記核酸配列のうちの1つまたは複数が、前記細菌に対し外来性である、項31~34のいずれか一項記載の方法。
36. 前記1つまたは複数の細胞型において、ミトコンドリア電子伝達系の複合体Iおよび/または複合体IIの活性が増加する、項31~35のいずれか一項記載の方法。
37. 前記投与することが、ミトコンドリア膜電位を増加させる、項31~36のいずれか一項記載の方法。
38. 前記対象がヒトである、項31~37のいずれか一項記載の方法。
39. ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γコアクチベーター1-α(PGC-1α)および/またはミトコンドリア転写因子A(TFAM)の発現が増加する、項31~38のいずれか一項記載の方法。
40. AMP活性化タンパク質キナーゼ(AMPK)リン酸化レベル、核呼吸因子-2(Nrf2)タンパク質レベル、PGCα mRNAレベル、TFAM mRNAレベル、および/またはミトコンドリアDNA複製が増加する、項31~39のいずれか一項記載の方法。
41. ミトコンドリアDNA(mtDNA)のコピー数が増加する、項31~40のいずれか一項記載の方法。
42. ミトコンドリア呼吸複合体I NADH:ユビキノンレダクターゼに変異を有する対象の発育成長速度を向上させる、項31~41のいずれか一項記載の方法。
43. 少なくとも1種類のミトコンドリアβ酸化酵素の発現が増加する、項31~42のいずれか一項記載の方法。
44. 前記少なくとも1種類のミトコンドリアβ酸化酵素が、B0303.3、cpt-2、cpt-1、ech-1.2、またはacdh-7である、項43記載の方法。
45. 前記対象の寿命が延びる、項31~44のいずれか一項記載の方法。
46. ミトコンドリア新生が維持されるかまたは増加する、項31~45のいずれか一項記載の方法。
47. 細胞内ATP産生が、前記組成物を投与する前の細胞内ATP産生と比べて、少なくとも10%増加する、項31~46のいずれか一項記載の方法。
48. 細菌抽出物を作る方法であって、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIのうちの1つまたは複数をコードする1つまたは複数の核酸配列を含みかつ発現する少なくとも1種類の細菌を、
(i)1%グルコースを含有するLysogeny broth標準培地(1%トリプトン、0.5%酵母エキス、および1%塩化ナトリウム)、
(ii)Hestrin-Schramm標準培地(D-グルコース2%、0.5%酵母エキス、0.5%ペプトン、0.27%リン酸二ナトリウム、0.115%クエン酸)、または
(iii)8%グルコース、0.5%酵母エキス、0.2%マンニトール、0.05%硫酸マグネシウム、および10%炭酸カルシウムを含むCaCO3培地、
を含む培地で培養することを含む、方法。
49. 前記少なくとも1種類の細菌が、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIの各々をコードする核酸配列を含みかつ発現する、項48記載の方法。
50. 前記少なくとも1種類の細菌が、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および2,5-ジケト-D-グルコン酸のうちの1つまたは複数を産生する、項48または49記載の方法。
51. 前記組成物を投与された宿主哺乳動物の少なくとも1つの細胞型における細胞内ATP産生を増加させるのに有効な量の、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および/または2,5-ジケト-D-グルコン酸を含む、組成物。
52. 前記組成物を投与されたヒト対象の少なくとも1つの細胞型においてミトコンドリア転写因子A(TFAM)またはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γコアクチベーター1(PGC)の発現および/または活性を増加させるのに有効な量の、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および/または2,5-ジケト-D-グルコン酸を含む、組成物。
53. 細菌抽出物またはその活性フラクションを含む、項51または52記載の組成物。
54. 食品、飲料、飼料組成物、栄養サプリメント、または薬学的組成物として製剤化されている、項51、52または53記載の組成物。
55. パーキンソン病を治療する方法であって、パーキンソン病を有する対象に、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIのうちの1つもしくは複数をコードする1つもしくは複数の核酸配列を含みかつ発現する治療有効量の少なくとも1種類の細菌またはその抽出物もしくはフラクションを含む組成物を投与することを含み、そうすることでパーキンソン病の少なくとも1つの症状を軽減させる、方法。
56. 前記少なくとも1種類の細菌が、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIの各々を発現する、項55記載の方法。
58. 前記少なくとも1種類の細菌が、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および/もしくは2,5-ジケト-D-グルコン酸のうちの1つまたは複数を産生し、かつ/または(ii)前記細菌がグルコノバクターEBT 405を含む、項55または56記載の方法。
59. (i)前記少なくとも1種類の細菌が、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および/または2,5-ジケト-D-グルコン酸の各々を産生する、項55~58のいずれか一項記載の方法。
60. 前記少なくとも1つの症状が、振戦、睡眠障害、運動障害、不随意運動、筋硬直、律動性筋収縮、動作緩慢、緩慢な引きずり歩行、疲労、めまい、バランス障害、不穏、健忘症、錯乱、認知症、認知障害、発話障害、不安、感情鈍麻、嗅覚の異常または喪失、尿失禁、表情低下、体重減少、および便秘からなる群より選択される、項55~59のいずれか一項記載の方法。
61. ミトコンドリア電子伝達系障害を治療する方法であって、ミトコンドリア電子伝達系障害を有する対象に、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIのうちの1つもしくは複数をコードする1つもしくは複数の核酸配列を含みかつ発現する治療有効量の少なくとも1種類の細菌またはその抽出物もしくはフラクションを含む組成物を投与することを含み、そうすることでミトコンドリア電子伝達系障害の少なくとも1つの症状を軽減させる、方法。
62. 前記ミトコンドリア電子伝達系障害が、複合体Iおよび/または複合体IIの障害または活性低下を含む、項61記載の方法。
63. 前記ミトコンドリア電子伝達系障害が、NADHデヒドロゲナーゼ(NADH-CoQレダクターゼ)欠損症、コハク酸デヒドロゲナーゼ欠損症、リー症候群、ミトコンドリアDNA枯渇、またはミトコンドリア不足である、項61または62記載の方法。
64. 前記少なくとも1つの症状が、ミオパシー、ミトコンドリア脳筋症、高度虚弱、発育遅延、筋緊張低下、傾眠、呼吸不全、運動失調、ミオクローヌス、乳酸アシドーシス、痙攣、疲労、眼振、反射不全、飲食困難、呼吸困難、運動失調、先天性ミオパシー、小児ミオパシー、およびヘパトパシーからなる群より選択される、項61~63のいずれか一項記載の方法。
65. 前記少なくとも1種類の細菌が、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIの各々を発現する、項61~64のいずれか一項記載の方法。
66. 前記少なくとも1種類の細菌が、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および/または2,5-ジケト-D-グルコン酸のうちの1つまたは複数を産生する、項61~65のいずれか一項記載の方法。
67. 前記少なくとも1種類の細菌が、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および/または2,5-ジケト-D-グルコン酸の各々を産生する、項61~66のいずれか一項記載の方法。
68. ペルオキシソーム障害を治療する方法であって、ペルオキシソーム障害を有する対象に、治療有効量の少なくとも1種類の細菌またはその細菌抽出物を含む組成物を投与することを含み、前記細菌が以下の酵素:膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIを発現するように、前記細菌が1つまたは複数の核酸配列を含み、前記投与することで、ペルオキシソーム障害の少なくとも1つの症状を軽減させる、方法。
69. 前記ペルオキシソーム障害が、Zellweger症候群スペクトラム(PBD-ZSD)または根性点状軟骨異形成症1型(RCDP1)である、項68記載の方法。
70. 前記PBD-ZSDが、乳児レフサム病、新生児副腎白質ジストロフィー、またはZellweger症候群である、項68または69記載の方法。
71. 前記少なくとも1つの症状が、骨格および頭蓋顔面異形症、肝機能障害、進行性感音難聴、ならびに網膜症からなる群より選択される、項68~70のいずれか一項記載の方法。
72. 前記少なくとも1種類の細菌が、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIの各々を発現する、項68~71のいずれか一項記載の方法。
73. 前記少なくとも1種類の細菌が、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および/または2,5-ジケト-D-グルコン酸のうちの1つまたは複数を産生する、項68~72のいずれか一項記載の方法。
74. 前記少なくとも1種類の細菌が、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および/または2,5-ジケト-D-グルコン酸の各々を産生する、項68~73のいずれか一項記載の方法。
75. 細胞におけるミトコンドリアまたはペルオキシソームの新生を増加させる方法であって、細胞におけるミトコンドリアまたはペルオキシソームの新生を増加させるのに有効な量の、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIをコードする1つまたは複数の核酸配列を含みかつ発現する少なくとも1種類の細菌またはそのフラクションもしくは抽出物を含む組成物を対象に投与することを含む、方法。
76. ペルオキシソームのサイズおよび/または数が増大する、項75記載の方法。
77. ミトコンドリア活性が増加する、項75または76記載の方法。
78. 前記少なくとも1種類の細菌が、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIをコードするの各々を発現する、項75、76、または77記載の方法。
79. 前記少なくとも1種類の細菌が、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および/または2,5-ジケト-D-グルコン酸のうちの1つまたは複数を産生する、項75~78のいずれか一項記載の方法。
80. 前記少なくとも1種類の細菌が、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および/または2,5-ジケト-D-グルコン酸の各々を産生する、項75~79のいずれか一項記載の方法。
81. アルツハイマー病を治療する方法であって、アルツハイマー病を有する対象に、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIのうちの1つもしくは複数をコードする1つもしくは複数の核酸配列を含みかつ発現する治療有効量の少なくとも1種類の細菌またはその抽出物もしくはフラクションを含む組成物を投与することを含み、そうすることでアルツハイマー病の少なくとも1つの症状を軽減させる、方法。
82. 前記少なくとも1種類の細菌が、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、TonB依存性受容体、炭素-窒素ヒドロラーゼ、およびユビキノールオキシダーゼサブユニットIIの各々を発現する、項81記載の方法。
83. 前記少なくとも1種類の細菌が、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および/または2,5-ジケト-D-グルコン酸のうちの1つまたは複数を産生する、項81または82記載の方法。
84. 前記少なくとも1種類の細菌が、グルコン酸、2-ケト-グルコン酸、5-ケト-グルコン酸、および/または2,5-ジケト-D-グルコン酸の各々を産生する、項81、82、または83記載の方法。
85. 前記少なくとも1つの症状が、認知低下、錯乱、妄想、失見当識、物忘れ、集中困難、新規記憶を形成できないこと、簡単な計算ができないこと、一般的な物を認識できないこと、攻撃性、激越、易怒性、意味のない独り言の繰り返し、人格変化、不穏、抑制欠如、徘徊、怒り、感情鈍麻、漠然とした不満、孤独感、気分変動、鬱、幻覚、妄想症、食欲喪失、筋運動の統合不能、および支離滅裂な会話からなる群より選択される、項81~84のいずれか一項記載の方法。
86. 前記細菌が、グルコノバクターEBT 405を含む、項81~85のいずれか一項記載の方法。
【実施例0216】
次に、本明細書に記載される技術を実証し、かつ支持する非限定的な実施例を提供する。
【0217】
実施例1:結果
C.エレガンスの3つのミトコンドリア変異株:spg-7(ad2249)1、gas-1(fc21)2、およびnduf-7(et19)3の発育成長速度遅延表現型を抑制する6種類の微生物を、定性的な視覚的選別により同定した。spg-7は、保存されたm-AAAメタロプロテアーゼであるAFG3L2のホモログをコードする1。別のm-AAAメタロプロテアーゼであるパラプレギンと同様に、AFG3L2は、ミトコンドリアからの異常タンパク質の除去に、ひいてはミトコンドリアプロテオームの維持に関与している。nduf-7は、ミトコンドリア電子伝達系の複合体Iの構成要素であるNADH-ユビキノンオキシドレダクターゼFe-Sをコードする3。gas-1は、ミトコンドリア電子伝達系の複合体Iの構成要素であるNADHデヒドロゲナーゼ[ユビキノン]鉄-硫黄タンパク質2をコードする2。gas-1(fc21)変異動物は、大幅に減少したミトコンドリア質量および膜電位を、ひいては低下した呼吸能を示す4、5、6。spg-7(ad2249)、gas-1(fc21)、およびnduf-7(et19)変異株は、大腸菌OP50を摂食した場合、野生型動物(図1A)と比べて大幅に緩慢な速度で成長する。大腸菌OP50は、典型的には実験室でのエレガンス線虫(Caenorhabditis elegans)の生育に用いられる微生物株である。自然界で野生のC.エレガンスと関連がある微生物のいずれかが、ミトコンドリア変異株の成長遅滞表現型を改変することができるかどうかを試験するために、選別を実施した。選別では、およそ200株の野生型微生物を、同調したL1ステージのspg-7(ad2249)、gas-1(fc21)、およびnduf-7(et19)変異株に個別に摂食させた。大腸菌OP50を摂食した動物と比べてかなり速い速度で成長した変異動物(図5A)を同定した。この選別では、ミトコンドリア変異株の成長遅滞表現型を部分的に抑制する6種類の微生物を同定した。この調査では、それらの微生物のうちの3つ、グルコンアセトバクター属の種、アセトバクター属の種、およびグルコノバクター属の種に着目する(図5A)。これらの微生物はどれもプロテオバクテリア(Proteobacteria)門の酢酸菌科に属し、発酵中に糖またはエタノールを酸化して酢酸を産生する能力を特徴とする7。これらは果実などの甘くて酸性のニッチ8に、特に天然アップルサイダービネガー9およびコンブチャ10などの発酵飲料中に自然に存在している。興味深いことに、これらの3種類の細菌(すなわち、グルコノバクター、アセトバクター、およびグルコンアセトバクター)は、野生型動物でも発育成長速度を加速できたことが見出された(図5B~5D)。3つの種のなかでもグルコンアセトバクター属の種は、発育成長速度の加速が比較的優れていた(図5A~5B)。グルコンアセトバクター属の種が具体的にどう発育成長速度を向上させるのかを決定するために、各幼虫ステージで発育加速率を調査した。グルコンアセトバクター属の種の摂食により、具体的には、動物がL4幼虫ステージから産卵する成虫ステージに達するまでの時間が短縮されたことが、見出された(図5E~5F)。
【0218】
発育成長速度の向上がすべてのミトコンドリア変異株に共通するものだったかどうかを試験するために、他のミトコンドリア呼吸鎖の変異、すなわちmev-1(kn1)およびisp-1(qm150)を試験した。mev-1は、ミトコンドリア電子伝達系の複合体IIのコハク酸-コエンザイムQオキシドレダクターゼのサブユニットをコードする11。isp-1は、シトクロムbc1複合体(複合体III)の鉄硫黄タンパク質(isp-1)である12。グルコンアセトバクター属の種の摂食は、mev-1(kn1)およびisp-1(qm150)変異株の低発育成長速度を抑制できず、複合体Iおよび/または複合体IIの活性の増強が作用機序である可能性が高いことが示された。グルコンアセトバクター属の種の摂食は、ミトコンドリアATP産生を増加させることにより、野生型およびミトコンドリア変異株の発育成長速度を向上させるのでは、という仮説を立てた。この仮説を試験するために、トランスジェニックホタルルシフェラーゼ発現C.エレガンス株13を用いて、ATPレベルの高速インビボ評価を行った。グルコンアセトバクター属の種を摂食したトランスジェニックルシフェラーゼ発現株は、大腸菌OP50を摂食した動物と比べてより高い生物発光を有し、増加したATP含有量が示された(図1B)。この結果を、インビトロATP決定アッセイにより確認した(図1C)。生物発光の増加は、グルコンアセトバクター属の種の摂食開始から早くも6時間以内に観測された(図5G)。さらに、大腸菌OP50を摂食したspg-7(ad2249)変異株のATPレベルは、大腸菌OP50を摂食した野生型動物と比べて低かったことが見出された。また、グルコンアセトバクター属の種の摂食は、spg-7(ad2249)変異株のATP含有量を回復させることができた(図1D)。同様に、グルコンアセトバクター属の種の摂食は、nduf-7(et19)変異株のATP含有量を部分的に回復させることができたことが見出された(図1E)。
【0219】
Mitotracker(商標)CMXRosを用いて評価すると、大腸菌OP50を摂食したspg-7(ad2249)、gas-1(fc21)、およびnduf-7(et19)変異株のミトコンドリア膜電位は、大腸菌OP50を摂食した野生型動物と比べて大幅に減少したことが見出された(図1F)。Mitotracker(商標)CMXRosはミトコンドリアを染色し、その生細胞における蓄積は膜電位に依存する。グルコンアセトバクター属の種の摂食は、spg-7(ad2249)、gas-1(fc21)、およびnduf-7(et19)変異株のミトコンドリア膜電位を部分的に回復させることができた(図1F)。活性ミトコンドリアにより隔離される別の色素であるテトラメチルローダミンエチルエステル(TMRE)を用いて、グルコンアセトバクター属の種を摂食したspg-7(ad2249)変異株が、大腸菌OP50を摂食した動物と比べて、大幅に増加した色素レベルを有したことが見出され(図5H)、ミトコンドリア膜電位が増加したことが示された。
【0220】
次に、異なるミトコンドリア毒がグルコンアセトバクター属の種を摂食した動物の増加したATP産生表現型に及ぼす効果を評価した。グルコンアセトバクター属の種を摂食しかつロテノンまたはパラコートまたはアジ化ナトリウムで処置された動物は、大腸菌OP50を摂食しかつロテノンまたはパラコートまたはアジ化ナトリウムで処置された動物と比べて、大幅に高いレベルの生物発光を有したことが見出された(図1G~1H;図5I)。パラコート(1,1'-ジメチル-4,4'-ビピリジニウムジクロリド)およびロテノンはどちらもミトコンドリア電子伝達系の複合体Iの阻害剤であり、アジ化ナトリウムおよびアンチマイシンは複合体IIIの阻害剤である。
【0221】
グルコンアセトバクター属の種を摂食した動物は、大腸菌OP50を摂食した動物よりも、ロテノンまたはパラコートに対する耐性があったことが見出された(図6A)。しかし、グルコンアセトバクター属の種を摂食した動物は、大腸菌OP50を摂食した動物と比べて、アジ化ナトリウムまたはアンチマイシンに対する耐性があるわけではなかった(図6A)。
【0222】
ミトコンドリアの小胞体ストレス応答(UPRmt)は、ミトコンドリアストレスにより開始され、hsp-6ミトコンドリアシャペロンなどのいくつかの核遺伝子の発現を活性化する14。hsp-6::gfpトランスジェニック動物株を用いて、グルコンアセトバクター属の種がUPRmt誘導に影響するかどうかを決定した。大腸菌OP50またはグルコンアセトバクター属の種を摂食したトランスジェニックhsp-6::gfp動物を、MPP+または6-OHDAまたはパラコートのいずれかで処置し、処置の24時間後にGFP発現の誘導について評価した。MPTP[1-メチル-4-フェニルピリジニウム(MPP+)]および6-ヒドロキシドーパミン(6-OHDA)は、ROS産生を誘導する神経毒であり、パーキンソン病(PD)の動物モデルで用いられる。大腸菌OP50を摂食し、かつMPP+または6-OHDAまたはパラコートのいずれかで処置された虫はGFP発現を誘導したが、グルコンアセトバクター属の種を摂食した虫はGFP発現を誘導できなかった(図2A)。gas-1(fc21)、nduf-7(et19)、mev-1(kn1)、およびisp-1(qm150)の遺伝子変異は、hsp-6::gfp発現を恒常的に誘導した。これらの変異株にグルコンアセトバクター属の種を与えても、hsp-6::gfp発現は抑制されなかった。UPRmtにおけるhsp-6::gfpの誘導はATFS-1転写因子により媒介されるが15、UPRmtにおいてアップレギュレートされた遺伝子のサブセットはATFS-1において独立して活性化する。最近、特徴決定されていないβチューブリンをコードするtbb-6が、ミトコンドリアETCの破壊後にATFS-1とは関係なくアップレギュレートされることが示された16。tbb-6::gfpトランスジェニック株を作製し、このGFPがspg-7(ad2249)変異株で誘導されたことが見出された(図6B図2B)。spg-7(ad2249);tbb-6::gfp動物にグルコンアセトバクター属の種を摂食させると、tbb-6::gfp発現が抑制された(図6B図2B)。
【0223】
グルコンアセトバクター属の種の摂食がミトコンドリア機能をどう向上させるかを検証するため、GFPレポータータンパク質、ならびにストレス応答、ミトコンドリア活性、ペルオキシソーム機能、自然免疫応答、および異なる信号伝達経路に関わる遺伝子産物を含む融合タンパク質をコードするコンストラクトを担持する虫などの、さまざまなトランスジェニック虫株を試験した(表1;図2C~2K;図6C~6L;図7A~7D)。
【0224】
【表1】
【0225】
この選別では、グルコンアセトバクター属の種の摂食が、ミトコンドリア機能またはペルオキシソーム活性のいずれかに必要な遺伝子のサブセットの発現を誘導したことが見出された。これらは、B0303.3(ヒトHADHB[3-ケトアシル-coAチオラーゼβサブユニット]のオルソログ)(図2D図6H)、prx-11(ヒトPEX11G[ペルオキシソーム新生因子11G]のオルソログ)(図2E)、cpt-2(ヒトCPT2[カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ]のオルソログ)(図2F図6C)、acox-1.2(ヒトACOX1[アシルCoAオキシダーゼ1]のオルソログ)(図2G図6D図6J)、ech-1.2(ヒトHADHA[3-ケトアシル-coAチオラーゼαサブユニット]のオルソログ)(図2H図6G)、acdh-7(ヒトACADM[アシル-CoAデヒドロゲナーゼ、中鎖]のオルソログ)(図2I図6F図6I)、pmp-4(ヒトABCD1[ペルオキシソーム膜ABCトランスポーター]のオルソログ)(図2J図6E)、prx-6(ヒトPEX6[ペルオキシソーム新生因子6]のオルソログ)(図2K)、cpt-1(ヒトCPT1[カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ]のオルソログ)(図6K)、およびicl-1(イソクエン酸リアーゼ/リンゴ酸シンターゼをコードする)(図7A)を含む。1つの遺伝子、hphd-1(ヒトADHFE1[アルコールデヒドロゲナーゼ]のオルソログ)の発現は、グルコンアセトバクター属の種を摂食した虫において大幅に低下した(図2C)。CPT(カルニチンO-パルミトイルトランスフェラーゼ)およびACADM(中鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ)はそれぞれ、脂肪酸からの2つの重要なエネルギー産生段階である、ミトコンドリアの脂肪酸吸収およびβ酸化において、主要な役割を果たす。同様に、HADHAおよびHADHBは、ミトコンドリアの長鎖脂肪酸β酸化を触媒作用するミトコンドリアヒドロキシアシル-CoAデヒドロゲナーゼ/3-ケトアシル-CoAチオラーゼ/エノイル-CoAヒドラターゼ(三機能性タンパク質)のαおよびβサブユニットをコードする。ACOX1は、アシル-CoAから2-トランス-エノイル-CoAへの不飽和化を触媒作用する、ペルオキシソーム脂肪酸β酸化経路の第1の酵素である。ICL-1は、グリオキシル酸を中間体としてイソクエン酸およびアセチル-CoAをコハク酸、リンゴ酸、およびCoAに変換するグリオキシル酸回路において機能する17。グルコンアセトバクター属の種の摂食がcpt-2::gfpを誘導したこと、およびech-1.2::gfp発現はtcer-1(TCERG1[転写伸長レギュレーター1]のオルソログ)に依存した18、19図2Fおよび2H)が、acox-1.2(図2G)、acdh-7(図2I)、pmp-4(図2J)、およびprx-6(図2K)発現はnhr-49(配列はHNF4αに似ているが機能的にはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体α(PPARα)の方により似ている核内ホルモン受容体をコードする)に依存した20ことが見出された。グルコンアセトバクター属の種を摂食したtcer-1(tm1452)およびnhr-49(nr2041)動物は、グルコンアセトバクター属の種を摂食した野生型虫と比べて成長が遅く(図3A)、TCER-1およびNHR-49の活性が、発育成長速度の加速を促進することが示された。nhr-49の腸特異性過剰発現は、グルコンアセトバクター属の種を摂食したnhr-49(nr2041)変異株の成長速度を加速させるのに十分であった(図7E)。さらに、nhr-49::gfpの強力な誘導が、グルコンアセトバクター属の種を摂食した虫で観測された(図7F)。NHR-49自体が発育成長速度を加速させるのに十分かどうかを試験するため、nhr-49(et7)、nhr-49(et8)、nhr-49(et13)において機能獲得型アレルを決定した21。これらの株はいずれも、大腸菌OP50を摂食した場合は成長速度加速表現型を有さなかったが、グルコンアセトバクター属の種を摂食した場合は加速された成長をなおも示した。
【0226】
また、グルコンアセトバクター属の種を摂食した虫の腸細胞では、大腸菌OP50を摂食した虫と比べて、TCER-1::GFPの強力な核局在化が観測された(図7G)。
【0227】
ペルオキシソーム機能と関連がある遺伝子がグルコンアセトバクター属の種の摂食に応答してアップレギュレートされたので、ペルオキシソーム遺伝子のRNAiが、発育成長速度加速表現型に影響するかどうかを試験した。prx-5(PXR1またはPEX5[I型ペルオキシソーム移行シグナルタンパク質ヒト受容体]のオルソログ)またはprx-11(ヒトPEX11G[ペルオキシソーム新生因子11G]のオルソログ)のRNAiが、グルコンアセトバクター属の種を摂食した野生型虫の発育成長速度加速表現型を抑制した(図3A)。tcer-1、nhr-49、およびprx-5のRNAiが、グルコンアセトバクター属の種の摂食により誘導される生物発光表現型の増加を抑制したことが見出され(図3B)、これらの遺伝子がグルコンアセトバクター属の種を摂食した後の増加したATP産生に必要であることが示された。さらに、nhr-49またはprx-5のRNAiは、グルコンアセトバクター属の種を摂食したspg-7(ad2249)およびnduf-7(et19)変異虫の発育進行加速表現型を抑制できた(図3C~3D)。Mito CMXRosにより評価すると、spg-7(ad2249)変異株は、野生型虫と比べて低下したミトコンドリア膜電位を有しており、この低下はnhr-49 RNAiによりさらに悪化した(図3E)。ミトコンドリア膜電位の部分的な低下が、nhr-49 RNAiを摂食した野生型虫で観測された(図3E)。
【0228】
グルコンアセトバクター属の種の摂食がミトコンドリアの形態に及ぼす効果を調査するために、C.エレガンスミトコンドリアインポート受容体サブユニットTOMM-20とモノマー赤色蛍光タンパク質(mRFP)との融合タンパク質を発現するトランスジェニック株を用い、発現は、体壁筋細胞においてmyo-3プロモーターにより誘導される22。グルコンアセトバクター属の種を摂食したトランスジェニック虫では、大腸菌OP50を摂食した虫と比べて、ミトコンドリアがより融合しているように見える(図3F)。ミトコンドリアを染色するローダミン6G色素を用いると、グルコンアセトバクター属の種を摂食した虫の皮下組織のミトコンドリアは、大腸菌OP50を摂食した虫と比べて、より融合しているようであることが、決定された(図7H)。ミトコンドリアは、融合および分裂の事象が常時生じている動的な小器官である。細長い形態は、上昇したATP産生効率23および減少したROS形成24と関連がある。したがって、理論に縛られるものではないが、グルコンアセトバクター属の種を摂食した虫における融合ミトコンドリア表現型の数の増加は、ATP産生増加表現型を説明し得る。ミトコンドリアの分裂および融合の動態は、drp-1(ヒトDNML1[ダイナミン関連タンパク質]のオルソログ)およびfzo-1(ヒトMFN1[マイトフュージン]/FZO1GTPaseのオルソログ)により密に調節されている25。fzo-1(tm1133)またはdrp-1(tm1108)の変異株は、大腸菌OP50またはグルコンアセトバクター属の種を摂食した場合、成長が極めて遅い(L1ステージから成虫期に達するのに6日かかる)。理論に縛られるものではないが、これらのデータは、グルコンアセトバクター属の種がミトコンドリア機能に及ぼす有益な効果が、ミトコンドリア動態の調節により得ることを示している。
【0229】
グルコンアセトバクター属の種の摂食が、ペルオキシソーム新生因子の発現を誘導したので、N末端側に緑色蛍光タンパク質(GFP)がタグ付けされたDAF-22融合タンパク質をvha-6腸内プロモーターの制御下で発現するトランスジェニック株を用いて、ペルオキシソームを調査した26。この株では点状シグナルが観測され、それはGFP-DAF-22融合タンパク質のペルオキシソーム移行を示す。グルコンアセトバクター属の種を摂食した虫で点状構造の増加が観測され、ペルオキシソームの増加が示された(図3G)。GFP-DAF-22融合タンパク質のペルオキシソームへの移行に必要なprx-5(PXR1またはPEX5[I型ペルオキシソーム移行シグナルタンパク質ヒト受容体]のオルソログ)のRNAiで処置され、かつ大腸菌OP50またはグルコンアセトバクター属の種のいずれかを摂食した虫では、点状ペルオキシソーム構造が観測されなかった(図8A)。このペルオキシソームの数の増加は特異的であり、ゴルジ体、腸内リソソーム顆粒、および小胞体などの他の細胞内構造(図8B~8D)の数または形態の変化は観測されなかった。ペルオキシソームは過酸化水素(H2O2)の主要な内在性供給源なので、グルコンアセトバクター属の種の摂食がH2O2を増加させるかどうかを調査した。内在性H2O2レベルを測定するために、HyPerセンサー発現トランスジェニックjrIs1[Prpl-17::HyPer]虫27にグルコンアセトバクター属の種および大腸菌OP50を摂食させた。大腸菌OP50を摂食した虫と比べて、グルコンアセトバクター属の種を摂食した虫は、わずかに低いH2O2レベルを有し、グルコンアセトバクター属の種が内在性H2O2産生を増加させないことが示された(図3H)。グルコンアセトバクター属の種を摂食し、かつH2O2で処置されたHyPerセンサー虫でも、大腸菌OP50を摂食した虫と比べてH2O2レベルはわずかに低いレベルであり(図3H)、上昇したH2O2解毒効率が示された。この観測と一致して、Amplex redアッセイを用いて評価すると、グルコンアセトバクター属の種を摂食し、かつH2O2で処置された虫は、大腸菌OP50を摂食した虫と比べてわずかに低いH2O2レベルを有した(図8E)。生物がH2O2などのROSに対処する主要な方法の一つが、グルタチオン酸化によるものである27。グルタチオン酸化還元電位を検出する比率計測バイオセンサーであるGrx1-roGFP2を発現するトランスジェニック虫株を用いて27、グルコンアセトバクター属の種を摂食した虫では、細胞内グルタチオン濃度が、大腸菌OP50を摂食した虫と比べて、影響されなかったことが見出された(図8F)。理論に縛られるものではないが、グルコンアセトバクター属の種を摂食した虫は、H2O2を解毒するペルオキシソームカタラーゼのより高いレベルを有する可能性がある。
【0230】
ミトコンドリアの老化関連の変化は、ミトコンドリア活性の低下と関連がある28。老化動物では、酸化能の低下、ATP産生の減少、酸化的リン酸化の低下、およびROS産生の増加などのミトコンドリア機能の障害が観測される29。ATP産生、代謝、ミトコンドリア含有量および機能の虫齢依存的な低下が、C.エレガンスで観測されている30、31。グルコンアセトバクター属の種の摂食がミトコンドリア機能に及ぼす効果を老虫で評価した。大腸菌OP50を摂食した虫では、虫の老化に伴いATPレベルが大幅に減少することが見出された(図4A)。ところが、グルコンアセトバクター属の種を摂食した虫は、虫が老化しても、大腸菌OP50を摂食した虫と比べて大幅に高いATP含有量を有した(図4A)。グルコンアセトバクター属の種を大腸菌OP50と混合しても、増加したATP産生の誘導には十分であったため、グルコンアセトバクター属の種の摂食の効果は優勢である(図4B)。
【0231】
グルコンアセトバクター属の種の摂食と関連がある表現型が株特異的であるかどうかを試験するために、他のグルコンアセトバクター株に応答したATP産生を評価した。グルコンアセトバクター・ハンセニ(Gluconacetobacter hansenii)(MGH単離物)などの他のグルコンアセトバクター株、基準のグルコンアセトバクター・ハンセニATCC 23769、およびG.ハンセニATCC 23769の非セルロース産生変異株の各々が、大腸菌OP50を摂食した虫と比べて増加したATP産生を誘導したことが見出された(図4C)。
【0232】
さらに、酸を産生し、CaCO3を含有する培地プレートの周囲に特徴的な澄んだハローを形成する細菌を、腐敗中のリンゴおよびブドウから選択することにより、さまざまなグルコノバクター株およびアセトバクター株を単離した7図8G)。C.エレガンスに対し病原性であったG.コンダニ(G. kondanii)およびG.フラテウリ(G. frateuri)を除き(図4D)、これらの微生物はすべて、大腸菌OP50を摂食した虫と比べて、増加したATP産生を誘導できた(図4D)。
【0233】
本発明者らが答えを出したかった重要な問いの一つが、グルコンアセトバクター属の種の摂食はミトコンドリア変異株と関連がある欠陥をどう抑制するのか、であった。この問いに取り組むために、spg-7(ad2249)変異株の発育成長表現型を抑制できなかった変異微生物株についての順遺伝学的トランスポゾン選別を実施した。グルコンアセトバクター属の種は成長速度が非常に遅いので、グルコノバクター・オキシダンスで変異株選別を実施した。およそ2000個のG.オキシダンストランスポゾン変異株を単離し、同調したL1ステージspg-7(ad2249)変異株に個別に摂食させた。3日間のインキュベーション後、L4ステージまたは成虫期に達した虫の割合(%)として、虫をスコア付けした。この選別で、spg-7(ad2249)変異株の発育成長遅延表現型を抑制できなかった11種の変異株を同定した(図8H~8I)。さらに、これら11種の変異株は、野生型虫の発育成長速度を加速できなかった(図9A)。また、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(GOX0265;mGDH)、シトクロムoユビキノールオキシダーゼサブユニットII(GOX1911)、およびユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニットの変異株を摂食した虫では、野生型G.オキシダンスを摂食した虫と比べて、ATP産生が減少した(図4E)。ところが、炭素-窒素ヒドロラーゼおよびTonB依存性外膜受容体タンパク質の変異株を摂食した虫では、ATPレベルは、G.オキシダンスを摂食した野生型虫と同様であった(図4E)。
【0234】
次に、CaCO3クリアランスアッセイを用いて、G.オキシダンス変異株が酸産生能力に影響するかどうかを試験した。膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(GOX0265;mGDH)、シトクロムoユビキノールオキシダーゼサブユニットII(GOX1911)、ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット、および炭素-窒素ヒドロラーゼの変異株が、CaCO3を含有する培地プレートの周囲に澄んだハローを形成できないことが見出された(図5B)。
【0235】
D-グルコースをD-グルコン酸へと酸化する(D-グルコン酸はさらに2つの異なるケト-D-グルコン酸である2-ケト-D-グルコン酸および5-ケト-D-グルコン酸、ならびに2,5-ジ-ケト-D-グルコン酸32、33へと酸化され得る)膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子の6つの独立したアレル(表2)を単離した。
【0236】
【表2】
【0237】
別のラボによって単離されたG.オキシダンスのグルコースデヒドロゲナーゼの独立した欠失変異34も、spg-7(ad2249)変異株の発育成長遅延表現型を抑制できなかった(図9C)。
【0238】
G.オキシダンスなどの酢酸菌の特徴的属性の一つは、糖などのさまざまな基質を不完全に酸化する能力である33。この不完全酸化は、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼなどのさまざまな膜結合型デヒドロゲナーゼにより触媒される34。さまざまなデヒドロゲナーゼの独立欠失アレルを試験し、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ、膜結合型FAD依存性デヒドロゲナーゼ、および膜結合型PQQ依存性デヒドロゲナーゼ3の欠失変異株を摂食したspg-7(ad2249)変異虫が、野生型G.オキシダンスを摂食した虫と比べて成長が遅かったことが見出された(図9C)。膜結合型FAD依存性デヒドロゲナーゼはD-グルコン酸-2-デヒドロゲナーゼであり、D-グルコン酸を2-ケト-グルコン酸へと酸化する34。膜結合型PQQ依存性デヒドロゲナーゼ3の機能は未知である。さらに、膜結合型PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ、膜結合型FAD依存性デヒドロゲナーゼ、および膜結合型PQQ依存性デヒドロゲナーゼ3の欠失変異株を摂食した虫では、野生型G.オキシダンスを摂食した虫と比べて、ATP産生が減少したことが見出された(図4F)。
【0239】
グルコンアセトバクター属の種がヒトにおいても同様の生物学的効果を有するかどうかを決定するために、ヒト初代皮膚線維芽細胞をグルコンアセトバクター属の種および大腸菌OP50に曝露した。大腸菌OP50をヒト初代皮膚線維芽細胞に曝露すると、ATP産生が大幅に低下するが、グルコンアセトバクター属の種は、擬似処置細胞と比べて、ATP産生に影響しない(図9D~9E)。ATPレベルは、細胞の生存能の指標である代謝活性細胞の目安なので、大腸菌OP50に曝露された細胞のATPレベルの低下は、細胞死または生存能の低下の目安になる。理論に縛られるものではないが、生存能の低下は、炎症の結果であり得る。興味深いことに、グルコンアセトバクター属の種は、より高い細菌用量でも、細胞内ATP産生を低下させず(図S5E)、グルコンアセトバクター属の種が細胞にとって毒性でも病原性でもないことを示している。PGC-1α(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γコアクチベーター1-α)は、ミトコンドリア新生のマスターレギュレーターであり、核内ホルモン受容体であるPPARαとの相互作用によって、エネルギー代謝に関与するいくつかの遺伝子を調節する35。RT-QPCRを用いて、グルコンアセトバクター属の種に曝露されたヒト初代皮膚線維芽細胞において、擬似処置細胞と比べてPGC-1α遺伝子発現が増加したことが見出された(図4H)。PGC-1αは、核呼吸因子1の転写を誘導し、ミトコンドリア転写因子A(TFAM)の増加した発現をもたらす36、37。TFAMは、ミトコンドリアの転写およびミトコンドリアゲノムの複製に必要な、ミトコンドリアリン酸化的酸化(mOXPHOS)のマスターレギュレーターである38。RT-QPCRを用いて、グルコンアセトバクター属の種に曝露されたヒト初代皮膚線維芽細胞において、擬似処置細胞と比べてTFAM遺伝子発現が増加したことが見出された(図4H)。TFAMはミトコンドリアDNAの複製を誘導するので、ミトコンドリアDNA(mtDNA)のコピー数のQPCRを実施した。グルコンアセトバクター属の種に曝露されたヒト初代皮膚線維芽細胞において、擬似処置細胞と比べてmtDNAのコピー数が増加したことが見出された(図4I)。PGC-1αおよびTFAMの発現ならびにmtDNAコピー数の増加は、ミトコンドリア活性の全体的な増強を明らかにしている。
【0240】
実施例1の参照文献
【0241】
実施例2:材料および方法
エレガンス線虫株を、記載されているように1、20℃で、NGMプレートおよびOP50大腸菌で維持した。野生型株はN2 Bristolであった。用いた株を表3に記載する。
【0242】
【表3】
【0243】
大腸菌OP50、グルコノバクター・オキシダンスDSM 2343(621H)およびその変異派生株を、1%グルコースを含有するLB培地を含有する培地で培養した。培養物を遠心機にかけ、抗生物質は一切なしでNGM培地に播種した。
【0244】
グルコンアセトバクター株を、標準Hestrin-Schramm寒天(D-グルコース20 g/L、酵母エキス5 g/L、ペプトン5 g/L、リン酸二ナトリウム2.7 g/L、クエン酸1.15 g/L、および寒天15 g/L)でルーチン的に増殖させ、そして4日間30℃でインキュベートした。液体培養では、培地から寒天を省いた。大腸菌OP50も同じ培地で30℃で増殖させた。液体培養物を、抗生物質は一切なしで、NGM培地プレートにスポットし、そして少なくとも3日間室温で放置して増殖させた。
【0245】
グルコンアセトバクター属の種に応答しての代謝遺伝子の誘導をもたらす転写因子の選別
グルコンアセトバクターの摂食に応答しての代謝遺伝子の誘導を媒介する転写因子を同定するために、本発明者らは、以前に代謝と関連付けられた遺伝子を厳選するRNAi選別を実施した2~13
【0246】
dsRNA対照、daf-16、pha-4、hlh-30、skn-1、hsf-1、daf-12、nhr-80、nhr-49、tcer-1、sbp-1、nhr-69、およびnhr-64に対応する栄養RNAiクローンを、25 μg/mlのカルベニシリンを含むLB培地で一晩増殖させ、1 mM IPTGを含有するRNAi寒天プレートに播種した。プレートをラミナーフローフード内で乾燥させ、そして室温で一晩インキュベートして、dsRNA発現を誘導した。pmp-4::gfp、cpt-2::gfp、ech-1.2::gfp、acox-1.2::gfp、acdh-7::gfp、およびprx-6::gfp発現動物の各々の200匹の同調したL1幼虫を、RNAi含有寒天プレートの各々に置き、20℃で4日間発育させた。動物が成虫ステージに達すると、虫をブリーチ処理した。次いで20匹の同調したL1幼虫をグルコンアセトバクター播種プレートに置き、GFP発現誘導の失敗についてスコア付けした。グルコンアセトバクター播種プレートを摂食し、かつdsRNA対照RNAiで処置された虫を対照として用いた。
【0247】
spg-7(ad2249)変異株の発育成長速度遅延表現型を抑制する微生物の選別
およそ200の微生物株を個別に増殖させ、そしてNGM培地プレートに播種した。およそ20匹の同調したL1ステージspg-7(ad2249)変異動物を該24ウェルプレートに置き、60時間後に、大腸菌OP50を摂食した虫と比べて成長が速い動物を含むウェルを視覚的に選別した。この選別で、6種類の微生物株を回収した。
【0248】
G.オキシダンスTn5トランスポゾン変異株の単離
G.オキシダンスにおけるTn5トランスポゾン変異誘導を、英国ノッティンガム大学のStephan Heeb教授から入手したベクターpME9978を用いて実施した。大腸菌S17-1にpME9978を取り込ませて形質転換させ、ゲンタマイシンおよびアンピシリンLB培地プレート上で選択した。大腸菌S17-1細胞内に存在するpME9978をコンジュゲーションによりG.オキシダンス内へ移入させた。コンジュゲーションは、pME9978を担持する大腸菌S17-1とG.オキシダンスとを懸濁液中で混合し、それらをLB培地にまき、そして30℃で4時間インキュベートすることにより、実施した。培養物をLBプレートから掻き取り、10 mlのM9バッファーに再懸濁させた。得られた細胞懸濁液を10-6まで段階希釈し、そして選択培地プレート(1%グルコース、10 μg/ml-1のゲンタマイシン、および50 μg ml-1のセフォキシチンを含有するLB培地)にまいた。G.オキシダンスはもともとセフォキシチン耐性であるが、大腸菌S17-1は感受性である。ゲンタマイシン耐性G.オキシダンスコロニーが、30℃、4日間のインキュベーション後に現れた。およそ2000のこれらのコロニーを、液体選択培地(1%グルコース、10 μg/ml-1のゲンタマイシン、および50 μg ml-1のセフォキシチンを含有するLB培地)を充填した96ウェルブロックへとピッキングし、30℃で2日間増殖させ、そして-80℃で貯蔵した。
【0249】
spg-7(ad2249)変異株の発育成長速度遅延表現型を抑制できなかったG.オキシダンス変異株の選別
G.オキシダンスTn5変異株を、1%グルコース、10 μg/ml-1のゲンタマイシン、および50 μg ml-1のセフォキシチンを含有するLB液体培地で増殖させ、そして24ウェルNGM培地プレートにスポットした。およそ20匹の同調したL1ステージspg-7(ad2249)変異動物を該24ウェルプレートに置き、そして60時間後に、野生型G.オキシダンスを摂食した虫と比べて成長が遅い動物を含むウェルを視覚的に選別した。この選別で、11種の変異株を回収した。
【0250】
G.オキシダンスTn5変異株のトランスポゾン挿入部位の同定
トランスポゾン変異細菌を、1%グルコース、10 μg/ml-1のゲンタマイシン、および50 μg ml-1のセフォキシチンを含有する、100 mlのLB液体培地中で増殖させ、そして2500gで15分間遠心機にかけた。市販のゲノムDNA単離キット(Qiagen)を用いてゲノムDNA単離を実施した。単離したゲノムDNAをNcoI(pME9978プラスミドは切断しない)を用いて制限消化に供し、そして熱失活させた。制限断片をT4 DNAリガーゼにより自己連結させ、電気穿孔によりpir大腸菌株に入れ、ゲンタマイシンを含有するLB培地プレートで37℃で一晩かけて選択した。トランスポゾンはR6Kγori複製起点を含むので、pir大腸菌株において独立したプラスミドとして増殖することができる。ゲンタマイシンプレートからの複数のコロニーを一緒にプールし、そしてゲンタマイシンを含有するLB培地プレート中、37℃で一晩かけて増殖させた。培養物を遠心機にかけ、プラスミド単離を実施した。以下のプライマーを用いてプラスミドを配列決定して、トランスポゾン挿入部位を見つけた:
【0251】
変異株におけるトランスポゾン挿入部位
グルコースデヒドロゲナーゼ_G7(記載順にそれぞれSEQ ID NO: 13および34):
【0252】
グルコースデヒドロゲナーゼ_G9(記載順にそれぞれSEQ ID NO: 14および35):
【0253】
シトクロムOユビキノールオキシダーゼサブユニット_G1(記載順にそれぞれSEQ ID NO: 15および36):
【0254】
グルコースデヒドロゲナーゼ_G6(記載順にそれぞれSEQ ID NO: 16および37):
【0255】
tonB_G2(記載順にそれぞれSEQ ID NO: 17および38):
【0256】
ユビキノール-シトクロムcレダクターゼ鉄-硫黄サブユニット_G3(記載順にそれぞれSEQ ID NO: 18および39):
【0257】
グルコースデヒドロゲナーゼ_G14(記載順にそれぞれSEQ ID NO: 19および40):
【0258】
グルコースデヒドロゲナーゼ_プロモーター_G15(記載順にそれぞれSEQ ID NO: 20および41):
【0259】
tonB_G11(記載順にそれぞれSEQ ID NO: 21および42):
【0260】
グルコースデヒドロゲナーゼ_G13(記載順にそれぞれSEQ ID NO: 22および43):
【0261】
炭素-窒素ヒドロラーゼ_G5(記載順にそれぞれSEQ ID NO: 23および44):
【0262】
果実からの酢酸菌の単離
酢酸菌科のメンバーは酸を産生し、その結果CaCO3が除かれて、炭酸カルシウム含有培地上のコロニーの周囲にハローが形成されることを特徴とする2。腐敗中のリンゴ、ブドウ、およびオレンジの試料を無菌的に潰し、9 mlのM9バッファーと混合し、10-6希釈まで段階希釈した。100 μlの希釈物をCaCO3培地(8%グルコース、0.5%酵母エキス、0.2%マンニトール、0.05%硫酸マグネシウム、10%炭酸カルシウム、100 μg/mlのシクロヘキシミド、10 μg/mlのニスタチン)上に広げた。
【0263】
プレートは、好気性条件で、30℃で3~4日間インキュベートした。澄んだハローを示すコロニーを選択した。以下のプライマーを用いてコロニーPCRを実施した:
【0264】
タッチダウンコロニーPCRに用いた条件は、次のとおりであった:95℃で10分、続いて95℃で30秒、65℃で30秒(サイクルごとに-1℃のステップダウン)、および72℃で1分を、15サイクル実施した。次に、95℃で30秒、50℃で30秒、および72℃で1分30秒を、40サイクル実施した。
【0265】
単離物の同定のために、単離物について16S rRNAシーケンシングを実施した。
【0266】
顕微鏡法
高倍率微分干渉観察および蛍光画像のために、適切な条件で処置した虫を寒天パッドに載せ、Zeiss AxioCam(商標)HRcカメラを取り付けたZeiss AXIO(商標)Imager Z1顕微鏡、およびAxiovision(商標)ソフトウェアを使って画像を取得した。蛍光画像を16ビットの画像に変換し、閾値を決め、ImageJを用いて定量化した。統計学的有意性をスチューデントのt検定により決定した。これらの計算およびグラフの作成にはGraphPad(商標)Prism 8.0を用いた。Hammamatsu Orca(商標)flash 4.0デジタルカメラを備えたZeiss AxioZoom(商標)V16顕微鏡を使って、かつAxiovision(商標)ソフトウェアを用いて、低倍率明視野画像を取得した。Delta Visionシステム(ペンシルバニア州ピッツバーグのApplied Precision)駆動の冷却CCDカメラ(CH350; Roper Scientific)を取り付けたIX-70顕微鏡(マサチューセッツ州ウォルサムのOlympus)により、(図2に示す)免疫蛍光画像を取得した。SoftWoRx 3.3.6ソフトウェア(Applied Precision)を使って画像を解析した。
【0267】
HyPer株を用いての内在性過酸化水素レベルの測定
内在性過酸化水素レベルを測定するために、記載3されているHyPer発現トランスジェニックjrIs1[Prpl-17::HyPer]虫を用いた。同調したL1ステージトランスジェニックjrIs1[Prpl-17::HyPer]動物を大腸菌OP50およびG.ハンセニの中で飼育し、そして約1000匹のL4ステージ虫を96ウェルマイクロタイタープレートに収集した。H2O2処置実験のために、96ウェルの虫にH2O2そのものを添加し、15分以内に測定を行った。535 nmのエミッションフィルターで、490 nmまたは405 nmの励起波長を用いて、それぞれ酸化したまたは低下したHyPer(商標)プローブ蛍光を測定した。620 nmの吸収を用いて虫の数を正規化した。条件間の統計学的有意差は、対応のないt検定により決定した。これらの計算にはGraphPad(商標)Prism 8.0を用いた。
【0268】
内在性GSSG/2GSH比の測定
インビボのGSSG/2GSH比を測定するために、記載されているような3Grx1-roGFP2発現トランスジェニックjrIs2[Prpl-17::Grx1-roGFP2]虫を用いた。同調したL1ステージトランスジェニックjrIs2[Prpl-17::Grx1-roGFP2]動物を大腸菌OP50およびG.ハンセニの中で飼育し、約1000匹のL4ステージ虫をM9バッファーで少なくとも6回洗った後、96ウェルマイクロタイタープレートに収集した。H2O2処置実験のために、96ウェルの虫にH2O2そのものを添加し、15分以内に測定を行った。535 nmのエミッションフィルターで、490 nmまたは405 nmの励起波長を用いて、それぞれ酸化したまたは低下したGrx1-roGFP2プローブ蛍光を測定した。620 nmの吸収を用いて虫の数を正規化した。条件間の統計学的有意差は、対応のないt検定により決定した。これらの計算にはGraphPad(商標)Prism 8.0を用いた。
【0269】
Amplex(商標)Redアッセイによる内在性過酸化水素レベルの測定
Amplex(商標)Redアッセイによる内在性過酸化水素レベルの測定を、記載されているように4実施した。
【0270】
ROS産生を測定するために、同調したL1ステージ野生型虫を大腸菌OP50およびG.ハンセニの中で飼育し、約1000匹のL4ステージ虫をM9バッファーで少なくとも6回洗い、次いでAmplex(商標)Red過酸化水素/ペルオキシダーゼアッセイキットを補充した反応バッファーで3回洗った後、96ウェルマイクロタイタープレートに収集した。次いで等量のAmplex(商標)Red反応バッファーをウェルに添加し、3時間後に540 nmの吸収度をプレートリーダー(SpectraMax(商標)プレートリーダー)で読んだ。H2O2処置実験のために、96ウェルの虫にH2O2そのものを添加し、2時間後に測定を行った。620 nmの吸収を用いて虫の数を正規化した。すべての値を対照の無処置虫の値に対し正規化した。条件間の統計学的有意差は、対応のないt検定により決定した。これらの計算にはGraphPad(商標)Prism 8.0を用いた。
【0271】
ヒトmtDNAコピー数の推定
ヒト皮膚初代線維芽細胞(Coriell GM25438)を、10%ウシ胎仔血清、1%MEM非必須アミノ酸、および1%ペニシリン-ストレプトマイシンを含有するEMEMの入った6ウェルプレートで、37℃、5% CO2の加湿インキュベーター内で、細胞がおよそ90%コンフルエントに達するまで増殖させた。細胞は、擬似処置または106 CFUのG.ハンセニ処置で、24時間処置し、市販のDNA単離キット(Qiagen)を用いてゲノムDNAを単離した。単離したDNAの量および純度を、Nanodrop(商標)2000分光光度計(米国デラウェア州ウィルミントンのThermo Scientific)を用いてアッセイし、そして試料を-70℃で使用時まで貯蔵した。相対的なmtDNAコピー数を、記載されているように5、qPCRにより測定した。記載されているように、値をシングルコピー核DNA遺伝子の値に対し正規化した。使用したプライマー配列は以下の通りであった。
【0272】
L394/H475はmtDNA含有量に関し、そしてHBG1F/Rプライマーは核β-グロビン遺伝子に関した5。qPCRは、iQ SYBR MasterMix(Bio-Rad)を用いてiCycler(商標)機(Bio-Rad)で実施し、次の条件でアッセイを実施した:95℃で10分の変性、次いで95℃で10秒、60℃で30秒、および72℃で30秒を40サイクル。すべてのアッセイを、反応1回につき10 ngのDNA鋳型を用いて、三連で実行した。すべての反応を三連で、かつ3つの生物学的複写物について実施した。相対的なmtDNAコピー数をΔCt法により計算した。
【0273】
PGC-1およびTFAMのRNA単離および定量RT-PCR分析
ヒト初代線維芽細胞を、10%ウシ胎仔血清、1%MEM非必須アミノ酸、および1%ペニシリン-ストレプトマイシンを含有するEMEMの入った6ウェルプレートで、37℃、5% CO2の加湿インキュベーター内で、細胞がおよそ90%コンフルエントに達するまで増殖させた。細胞は、擬似処置または106 CFUのG.ハンセニ処置で、24時間処置した。各条件で24時間インキュベーションした後、細胞から、市販のRNA単離キット(Qiagen)を用いて全細胞RNAを単離した。TURBO DNA-freeキット(Applied Biosystems)を用いて、全RNAをDNAase処置した。InvitrogenのFirst strand cDNA合成キットを用いてcDNAを調製した。qRT-PCRアッセイを次の条件で実施した:95℃で10分の変性、次いで95℃で10秒、55℃で30秒、および72℃で30秒を40サイクル。使用したプライマー配列6、7
【0274】
すべての反応を三連で、かつ3つの生物学的複写物について実施した。すべての値を、内部対照としての核β-グロビン遺伝子に対し、ならびに擬似処置細胞における転写物レベルに対し、正規化した。
【0275】
ATP決定アッセイ
ATPの決定を、記載されているように8実施した。ATPレベルを測定するために、同調したL1ステージ虫を大腸菌OP50およびG.ハンセニの中で飼育し、M9バッファーで少なくとも6回洗った後で収集し、100 μlのM9中およそ1000匹の虫を液体窒素で冷凍し、そして-80℃で分析時まで貯蔵した。試料は直ちに沸騰水浴中に15分間置かれた。2倍量の蒸留水を加えた後、14,000 rpmで5分間遠心法を行い、上澄みを第2のチューブに移した。等量のルシフェラーゼ試薬(Promega(商標))を添加し、プレートリーダー(SpectraMax(商標)マイクロプレートリーダー)を用いて蛍光を測定した。タンパク質含有量をBCA法により測定した。ATP濃度を試料のタンパク質含有量に対し正規化した。すべての値を、大腸菌OP50を摂食した野生型に対し正規化した。
【0276】
ルシフェラーゼ株を用いてのATP決定アッセイ
ルシフェラーゼ株を用いてのATP決定アッセイが記載されている9。インビボのATP産生を測定するために、同調したL1ステージPsur-5::luc+::gfp虫を大腸菌OP50およびG.ハンセニの中で飼育し、各ウェルにつき約1000匹の成虫ステージの虫を、M9バッファーで少なくとも6回洗った後、96ウェルマイクロタイタープレートに収集した。100 μMのD-ルシフェリンをウェルに添加し、5分以内にSpectraMax(商標)マイクロプレートリーダーで蛍光を測定した。GFP蛍光を、SpectraMax(商標)マイクロプレートリーダーで、485 nmの励起および520 nmのエミッションフィルターを用いて定量化した。バックグラウンド測定値を読取値から差し引いた。蛍光値を試料のGFP蛍光に対し正規化した。すべての値を、大腸菌OP50を摂食した野生型に対し正規化した。RNAi実験では、同調したL1ステージPsur-5::luc+::gfp虫を、対応するdsRNAを担持する大腸菌HT115株の中で、成虫期に達し産卵するようになるまで飼育した。次に、L1ステージの虫を大腸菌OP50またはG.ハンセニ播種培地プレートのいずれかに移した。ロテノン、パラコート、アジド、およびアンチマイシンを用いた実験では、大腸菌OP50またはG.ハンセニで飼育した虫を少なくとも6回洗ってから、薬物を含有する大腸菌OP50プレートに移した。適切な濃度の薬物を含む大腸菌OP50プレートは、使用の前日に作った。すべてのアッセイを大腸菌OP50プレートで実施して、G.ハンセニによる薬物解毒の可能性を排除した。
【0277】
Mitotracker CMXRos染色
Mitotracker(商標)CMXRosを用いた実験では、大腸菌OP50またはG.ハンセニで飼育した虫を少なくとも6回洗ってから、10 μMのMitotracker(商標)CMXRosを含有する大腸菌OP50プレートに移した。24時間後、虫を少なくとも6回洗って色素を落とし、そして大腸菌OP50プレートに滴下して非特異的腸染色を取り除いた。2時間後、虫を少なくとも6回洗い、そして撮像のため寒天プレートに移した。
【0278】
テトラメチルローダミンエチルエステル(TMRE)染色
TMREを用いた実験では、大腸菌OP50またはG.ハンセニで飼育した虫を少なくとも6回洗ってから、1 μMのTMREを含有する大腸菌OP50プレートに移した。24時間後、虫を少なくとも6回洗って色素を落とし、そして大腸菌OP50プレートに滴下して非特異的腸染色を取り除いた。2時間後、虫を少なくとも6回洗い、およそ1000匹の虫を96ウェルプレートの各ウェルに移し、そしてSpectraMax(商標)マイクロプレートリーダーで、549 nmの励起および575 nmのエミッションフィルターを用いて蛍光を定量化した。
【0279】
代謝物産生の最適化
0~5%酵母エキスブロスで細菌を増殖させても代謝物は産生されないことが発見された。さらに、代謝物の産生には、グルコース、またはフルクトースなどの他の代謝可能単糖、またはスクロースなどの二糖を3%酵母エキス培地に添加することが、必要であることが見出された。また、そうした糖は、わずか0.5%でも、最適な代謝物産生にとって十分であることが発見された。したがって、代謝物産生に用いられる培地はどれでも、少なくとも0.5~5%の代謝可能糖供給源を含むことが推奨される。
【0280】
さらなる実験により、3%コーンスティープリカーが最適な代謝物産生にとって十分であることが示され、したがって、代謝物の最適な産生のためには0.5~5%コーンスティープリカーが推奨される。本明細書では、細菌を工業スケールで増殖させる場合、3%コーンスティープリカーが好ましい発酵法となり得ることが、企図される。
【0281】
実施例2の参照文献
【0282】
実施例3:パーキンソン病の治療
パーキンソン病(PD)は、中高年の疾患として最も一般的な運動関連障害であり、世界中でおよそ620万人が罹患している1。PDは、ニューロンにおけるα-シヌクレイン封入体の蓄積、ならびにドーパミン作動性神経の変性および/または喪失を特徴とする。PDの主な臨床症状としては、動作緩慢、静止時振戦、硬直、および体位不安定が挙げられる2。PD事例の大半は原因不明で、孤発性であるが、いくつかの遺伝子の変異が、稀な家族性の疾患と関連付けられている。いくつかの筋のエビデンスによると、PDの病因および発症にはミトコンドリア呼吸の欠陥が関与している。第1に、電子伝達系の複合体Iの阻害剤、MPTPが、PDを誘導し得る3、4。複合体Iの阻害により、減少したミトコンドリアATP産生、増加したミトコンドリア由来活性酸素種(ROS)産生、およびミトコンドリア依存性アポトーシス経路の活性化がもたらされる。第2に、PD患者の検死調査で、ドーパミン作動性神経において酸化ストレスマーカー/産物レベルの上昇が見られた5~7。第3に、PD患者の脳ならびに周辺組織で、ミトコンドリア複合体Iの活性の30%の低下が観測された8、9。第4に、動物モデルでは、ロテノン、パラコート、および6-ヒドロキシドーパミン(6-OHDA)などの神経毒がミトコンドリア機能不全を誘導し、その結果PD随伴表現型が生じる10。最後に、α-シヌクレイン、LRRK2(ロイシンが豊富なリピートキナーゼ2)、パーキン、PINK1、およびDJ-1などのPD随伴遺伝子は、ミトコンドリア動態、輸送、オートファジー、および質制御に影響する11、12
【0283】
ニューロンを含めすべての細胞は、エネルギー需要のためにミトコンドリアを必要とし、そうした需要は適切なミトコンドリア機能に強く依存している。ニューロンは高代謝活性を有し、生体エネルギー需要をミトコンドリアに大きく依存している。ニューロン全般、特にドーパミン作動性神経を変性しやすくする要因がいくつかあり、それにはROS(ドーパミン代謝およびミトコンドリア機能不全の結果である)、低い内在性抗オキシダントレベル、および高レベルの鉄およびカルシウム(ROS形成を促進することがわかっている)が含まれる13。さらに、ニューロン組織は、リンの過酸化および毒性産物の生成が生じやすい、高レベルのポリ不飽和脂肪酸を含有している14。ミトコンドリア機能不全は、それが根本的な原因であるか副次的な原因であるかに関わらず、潜在的な治療標的として有力である。老化はPDの最大のリスク要因15なので、平均余命が世界的に延びる16なか、PDに罹患する人の数は近い将来相当増加しよう。かくして、PDの進行を遅らせるのみならず高齢化人口の予防策としても使用できる新たな治療アプローチに対する未解決の大きな臨床的需要がある。
【0284】
ミトコンドリアは、細胞のエネルギー産生、酸化ストレスへの応答、およびアポトーシスに必要な、極めて動的な小器官である。したがって、電子伝達系の効率の喪失およびATP合成の低下を特徴とするミトコンドリア機能不全が、老化および老化関連神経変性疾患の特徴であることは、驚きに値しない17、18。個々の病理的および臨床的特徴を有するにもかかわらず、アルツハイマー病、ハンチントン病、および筋萎縮性側索硬化症などのいくつかの他の神経変性障害もまた、ミトコンドリア機能不全由来の酸化ストレスと関連があり19、このことは、ニューロン変性をもたらす共通の機構を示唆している20
【0285】
PDの初期の研究の大半は脳病理だけに着目していたが、現在は胃腸(GI)系がPD発症の重要なソースと認識されている21~23。便秘などのGI症状は、PD患者のおよそ80%を悩ませており、原因不明の便秘はPDの重要なリスク要因である24。PDでは、便秘は、腸神経系におけるα-シヌクレイン蓄積25、腸炎症、および腸透過性の増加26と関連付けられている。さらに、腸粘膜の炎症は腸神経におけるシヌクレイン蓄積をもたらすと考えられており、それが自律神経の連絡によってプリオンのように中枢神経系に広がる場合がある27~29。胃腸管の変化の多くがニューロン症状の発生以前にも観測され30、したがってPDの発症はまずは胃腸管を通じて作用する場合もある31、32
【0286】
モデルとしてのC.エレガンスは、PD関連の発見において重要な役割を果たすと位置付けられている33。C.エレガンスは、蛍光顕微鏡下で目視できる詳細に定義されているドーパミン作動性(DA)ニューロンを有し、かつ幅広い自発運動活性を有する34。α-シヌクレインを除いて、家族性PDと関連付けられている遺伝子の全オルソログが、C.エレガンスに存在する。α-シヌクレインの異所性過剰発現は神経毒性効果を生成するが、それは神経保護遺伝子によりブロックすることができる。MPP+または6-OHDAなどの神経毒に虫を曝露することによって、または遺伝型PDと関連のある変異もしくはヒト遺伝子を導入することによって、多数のPD虫モデルが作られている35~41。これらの虫モデルは、ドーパミンニューロンの変性または喪失、低ドーパミンレベル、ドーパミン依存性ふるまいの障害、および運動障害などのPD随伴表現型を示す。
【0287】
DAニューロン特異性プロモーターの制御下のヒトα-シヌクレインの過剰発現は、年齢依存性神経変性をもたらす42。この株を用いて、有望な神経保護の潜在力について30株以上の微生物を選別した。ドーパミン作動性神経におけるヒトα-シヌクレインの発現は、成虫期10日目には、完全なニューロン変性および喪失を誘導する。1 uMのロテノンと組み合わせると、ドーパミン作動性神経の喪失はもっと速く、4日で実現されることが観測された。ロテノンは適用範囲の広い殺虫剤であって、動物モデルにおいてDAergicニューロンの選択的破壊を伴うPD様の症状を誘導することが実証されている。C.エレガンスでは、慢性的なロテノン曝露により、ドーパミン作動性神経変性がもたらされた43。ロテノンは、ミトコンドリア呼吸複合体Iを阻害することにより作用する44。選別では、ヒトα-シヌクレイン動物に、第1幼虫ステージから、単一株の微生物叢を自由に摂食させ、第4幼虫ステージでロテノン処置に供した。60時間のロテノン処置後、前CEP(頭)ドーパミン作動性神経の生存を、ドーパミン作動性神経において誘導されるGFPの同時発現により可視化して、動物を選別した。対照大腸菌op50を摂食した虫のおよそ75%がCEPニューロンを喪失していたが、グルコンアセトバクターEBT405を摂食した虫ではCEP神経変性が減少していた(図10A~10B)。
【0288】
実施例3の参照文献
【0289】
実施例4:アルツハイマー病の治療
ADは、記憶および認知機能の進行性の低下を特徴とする致死性の神経変性疾患である。APPまたはγ-セクレターゼ遺伝子の変異と関連がある早発性家族性ADが全事例の5%未満を占め、孤発性または遅発性ADの95%は病因不明である1。ADの病理的特徴は、AD患者の脳内の細胞外老人斑の蓄積および細胞内神経原線維タングル(NFT)である。老人斑は、主な構成要素として、β-アミロイドペプチド(Aβ)からなり、NFTは、主な構成要素として、異常線維形態の微小管関連タンパク質tauからなる2。Aβの蓄積およびNFTは、ニューロン機能不全および切迫したニューロン死滅の目安と考えられている2
【0290】
ミトコンドリア機能不全およびエネルギー代謝障害が、ヒトAD患者で常に観測されている3、4。Aβおよびtauの病理は、ADのミトコンドリア機能不全と強く関連付けられている。Aβおよびtauは、ミトコンドリア機能に直接影響し、ATP産生障害、増加した活性酸素種(ROS)産生、減少した酸素消費、ならびに減少したミトコンドリア複合体IおよびIVの機能をもたらす5。ミトコンドリア機能不全は、AD初期の事象であることが見出されている。孤発性ADの場合、老化に伴う酸化ストレスの進行的増加が、Aβ堆積およびNFT形成をもたらすことがわかっている6。このことは、Aβおよびtauがミトコンドリア機能不全を悪化させ、それによってAD症状が急速に進行するという、連続的な事象のサイクルをもたらし得る。かくして、高齢化人口においてミトコンドリア機能を回復させること、またはAβ誘発性のダメージに対しミトコンドリアを保護すること、またはミトコンドリアの数および機能を補填することを目指す治療努力は、AD治療薬を同定するための有望なルートである。
【0291】
モデルとしてのC.エレガンスは、AD関連の発見において重要な役割を果たすと位置付けられている。アミロイド前駆タンパク質(APP)およびtauなどのADの原因と関連付けられている遺伝子のオルソログが、C.エレガンスで保存されている。ADと関連のある変異またはヒト遺伝子を導入することによって、多数のAD虫モデルが作られている7~9。これらの虫モデルは、アミロイド堆積、増加した酸化ストレス、および進行性麻痺などのAD随伴表現型を示す7~9。さらに、AD患者で観測されるものと似た電子伝達系機能の障害およびミトコンドリア機能不全が、C.エレガンスADモデルにおいて見つかっている10、11。さらに、これらのモデルは、神経保護化合物の同定に成功裡に用いられている9
【0292】
今日クリニックで用いられている薬物の約3分の1が、当初は植物または微生物から単離されたものである。新奇の治療薬を同定する供給源として、製薬業界では化合物の化学合成が優勢になっているが、治療剤として植物および微生物のような天然の供給源をバイオ探査することは、依然として重要な役割を果たしている。最近の研究は、薬物供給源としてヒトのマイクロビオームの探索を開始している12。人体は、総称マイクロビオームとして知られる良性の相利的な共生および病原性の微生物の集合体の拠点である。これらの微生物は、腸脳軸、ならびにGABA、グルタミン酸、およびセロトニンなどのいくつかの代謝物の産生を介して、宿主の脳の機能およびふるまいを調節することができる。
【0293】
マイクロビオーム由来代謝物シグナリングの機能不全は、ADなどの神経障害をもたらし得る13、14。要するに、マイクロビオームは、ADに適するであろう新奇の神経保護化合物または生体バイオ治療薬を探り当てるための、手つかずの豊かな供給源なのである。
【0294】
本発明者らは、マイクロビオームに基づくAD治療薬を同定するためにC.エレガンス全動物モデル系を用いて高速で「単一の」微生物種を優先付けする高処理選別(HTS)アッセイを開発した。すべてのニューロンにおいてAD関連のヒト病原性Aβまたはtauを発現するトランスジェニック株では、((UPRmt)レポーターコンストラクトphsp-6::gfpを用いて評価すると)ミトコンドリア小胞体ストレス応答が腸を含む多くの組織で引き起こされていたことが見出された(図11および12)。hsp-6は、ミトコンドリアマトリックスシャペロンHSP70をコードしており、後者はミトコンドリアの構造または機能の不良に応答して特異的にアップレギュレートされ15、hsp-6遺伝子のプロモーターがGFPでタグ化されているphsp-6::gfp株を用いて評価することができる。これらのデータは、C.エレガンスにおけるAβ発現の結果異常ミトコンドリアが蓄積すること16、およびAβの筋肉特異的な発現がhsp-6などのミトコンドリアストレス遺伝子を誘導したこと11を示す過去の研究と一致している。ニューロン特異性(unc-119)プロモーターによるニューロンにおけるAβまたはtauの発現は、主に腸内でのミトコンドリアストレスレポーター(UPRmt)の発現を誘導し(図11および12)、この応答の性質は非細胞自律的である。同様に、腸細胞非自律性のUPRmt誘導のニューロンが他のラボで観測されており、C.エレガンスの神経ペプチドおよびセロトニン信号伝達経路を通じて機能することが提案されている17~19
【0295】
興味深いことに、セロトニンシグナリングの調節は、ADの認知症状の潜在的な対症療法とみなされている20、21。UPRmtの活性化がAβ凝集体の直接的な結果であるかどうかを決定するために、Aβおよびphsp-6::gfpレポーターを発現するトランスジェニック虫を、インビボでAβ凝集を低下させること、および麻痺表現型を救済することがわかっているアミロイドフィブリル結合性フラボノイド22、チオフラビンTで処置した。チオフラビンTで処置した虫ではUPRmtの誘導が低下したことが見出され、UPRmtの誘導がAβ凝集に直接的に起因することが示された。したがって、Aβの凝集またはミトコンドリアに対するAβの毒性を調節することによりUPRmt誘導を低下させるような治療法を選別することが可能である。
【0296】
選別では、陰性対照細菌の大腸菌OP50を含む30の微生物株を適切な培養培地条件で増殖させ、そして標準的な線虫増殖培地プレートにスポットした。全ニューロン的にAβ1-42またはtauを発現するおよそ30匹の同調したL1幼虫ステージのトランスジェニック虫を播種プレートに滴下し、4日後に蛍光顕微鏡下でphsp-6::gfp発現の変化について目視でスコア付けした(図13)。虫を同調させるためにブリーチ処理法を用い、また、それによって単一培養物を摂食させた無菌動物を作製した。本発明者らは、phsp-6::gfpレポーターの発現の変化について選別し、グルコノバクターEBT 405細菌を摂食した虫が、Aβ1-42発現またはトランスジェニックtauにより誘導されるphsp-6::gfpの発現の大幅な低下を示したことを見出した(図11および12)。
【0297】
インビボのAβ凝集状態を評価するために、体壁筋肉に結合したヒトAβ3-42を発現するトランスジェニック株23を用いた。このモデルでEBT405細菌を試験し、陰性対照細菌を摂食したトランスジェニック虫と比べてAβ堆積物の大幅な低下が見出された(図14)。この株は、HTS選別でヒットしたものをAβ堆積物の低下について試験するのに用いられることになる。
【0298】
グルコノバクターEBT 405が、Aβが誘導する麻痺表現型を抑制する能力を評価するために、本発明者らは、全長ヒトAβ1-42ペプチドを体壁筋細胞で発現する株を用いた24。L4または成虫初期の動物を20℃から25℃に移すと、対照細菌を摂食した虫で麻痺が生じるが、グルコノバクターEBT 405を摂食した虫では麻痺が発生する時期が大幅に遅延される。
【0299】
実施例4の参照文献
【0300】
配列情報
SEQUENCE LISTING
<110> THE GENERAL HOSPITAL CORPORATION
<120> COMPOSITIONS AND METHODS FOR IMPROVING MITOCHONDRIAL FUNCTION
<150> US 62/721,979
<151> 2018-08-23
<150> US 62/620,641
<151> 2018-01-23
<160> 44
<170> PatentIn version 3.5

<210> 1
<211> 2427
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
polynucleotide
<400> 1
atgagcacaa tttcccggcc agggctctgg gccctgataa cggccgcggt attcgcgctt 60
tgcggcgcga tccttaccgt tggcggcgca tgggtcgctg ccatcggcgg ccctctttat 120
tatgtcatcc ttggcctggc acttctcgcc acggctttcc tctcattccg gcgcaatccg 180
gctgccctct atctgttcgc agtcgtcgtc ttcggaacgg tcatctggga actcaccgtt 240
gtcggtctcg acatctgggc cctgatcccg cgctcggaca tcgtcatcat cctcggcatc 300
tggctgctgc tgccgttcgt ctcgcgccag atcggtggca cgcggacgac cgtcctgccg 360
ctcgccggcg ccgttggcgt tgcggttctg gccctgttcg ccagcctctt caccgacccg 420
catgacatca gcggcgaact gccgacgcag atcgcaaacg cctcccccgc cgacccggac 480
aacgttccgg ccagcgagtg gcacgcttat ggtcgtacgc aggccggtga ccgctggtcc 540
ccgctgaacc agatcaatgc gacgaacgtc agcaacctca aggtcgcatg gcatatccac 600
accaaggata tgatgaactc caacgacccg ggcgaagcga cgaacgaagc gacgccgatc 660
gagttcaaca acacgcttta tatgtgctca ctgcatcaga agctgtttgc ggttgatggt 720
gccaccggca acgtcaagtg ggtctacgat ccgaagctcc agatcaaccc tggcttccag 780
catctgacct gccgtggcgt cagcttccac gaaacgccgg ccaatgccat ggattccgat 840
ggcaatcctg ctccgacgga ctgcgccaag cgcatcatcc tgccggtcaa tgatggccgt 900
ctggttgaag tcgatgccga cacgggcaag acctgctccg gcttcggcaa caatggcgag 960
atcgacctgc gcgttccgaa ccagccttac acgacgcctg gccagtacga gccgacgtcc 1020
ccgccggtca tcacagacaa gctgatcatc gccaacagcg ccatcaccga taacggttcg 1080
gtcaagcagg cttcgggcgc cacgcaggca ttcgacgtct acaccggcaa gcgcgtctgg 1140
gtgttcgatg cgtccaaccc ggatccgaac cagcttccgg atgagagcca ccctgtcttc 1200
cacccgaact cgccaaactc ctggatcgtg tcgtcctacg acgccaacct gaacctcgtg 1260
tacatcccga tgggcgtggg gactcccgac cagtggggcg gtgaccgcac gaaggattcc 1320
gagcgtttcg ctccgggtat cgttgcgctg aacgccgata cgggcaagct cgcctggttc 1380
taccagaccg ttcatcacga tctgtgggac atggacgttc cgtcccagcc gagcctcgtg 1440
gatgtgacac agaaggacgg cacgcttgtt ccggccatct acgctccgac caagaccggc 1500
gacattttcg tcctcgaccg tcgtaccggc aaggaaatcg tcccggctcc ggaaaccccg 1560
gttccccagg gtgctgctcc gggtgaccac accagcccga cccagccgat gtcgcagctg 1620
accctgcgtc cgaagaaccc gctgaacgac tccgatatct ggggcggcac gatcttcgac 1680
cagatgttct gcagcatcta tttccacacc ctccgctacg aaggcccctt cacgccgccg 1740
tcgctcaagg gctcgctcat cttcccgggt gatctgggaa tgttcgaatg gggtggtctg 1800
gccgtcgatc cgcagcgtca ggtggctttc gccaacccga tttccctgcc gttcgtctct 1860
cagcttgttc cccgcggacc gggcaacccg ctctggcctg aaggaaatgc caagggcacg 1920
ggtggtgaaa ccggcctgca gcacaactat ggcatcccgt atgccgtcaa cctgcatccg 1980
ttcctggatc cggtgctgct gccgttcggc atcaagatgc cgtgccgcac gccgccctgg 2040
ggctatgtcg ccggtattga cctgaagacc aacaaggtcg tctggcagca ccgcaacggc 2100
accctgcgtg actcgatgta tggcagctcc ctgccgatcc cgctgccgcc gatcaagatc 2160
ggtgtcccga gcctcggtgg cccgctctcc acggctggca atctcggctt cctgacggcg 2220
tccatggatt actacatccg tgcgtacaac ctgacgacgg gcaaggtgct gtggcaggac 2280
cgtctgccgg ctggtgctca ggcaacgccg atcacctatg ccatcaacgg caagcagtac 2340
atcgtgacct atgcaggcgg acacaactcg ttcccgaccc gcatgggcga cgacatcatc 2400
gcctacgccc tgcccgatca gaaatga 2427

<210> 2
<211> 808
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
polypeptide
<400> 2
Met Ser Thr Ile Ser Arg Pro Gly Leu Trp Ala Leu Ile Thr Ala Ala
1 5 10 15
Val Phe Ala Leu Cys Gly Ala Ile Leu Thr Val Gly Gly Ala Trp Val
20 25 30
Ala Ala Ile Gly Gly Pro Leu Tyr Tyr Val Ile Leu Gly Leu Ala Leu
35 40 45
Leu Ala Thr Ala Phe Leu Ser Phe Arg Arg Asn Pro Ala Ala Leu Tyr
50 55 60
Leu Phe Ala Val Val Val Phe Gly Thr Val Ile Trp Glu Leu Thr Val
65 70 75 80
Val Gly Leu Asp Ile Trp Ala Leu Ile Pro Arg Ser Asp Ile Val Ile
85 90 95
Ile Leu Gly Ile Trp Leu Leu Leu Pro Phe Val Ser Arg Gln Ile Gly
100 105 110
Gly Thr Arg Thr Thr Val Leu Pro Leu Ala Gly Ala Val Gly Val Ala
115 120 125
Val Leu Ala Leu Phe Ala Ser Leu Phe Thr Asp Pro His Asp Ile Ser
130 135 140
Gly Glu Leu Pro Thr Gln Ile Ala Asn Ala Ser Pro Ala Asp Pro Asp
145 150 155 160
Asn Val Pro Ala Ser Glu Trp His Ala Tyr Gly Arg Thr Gln Ala Gly
165 170 175
Asp Arg Trp Ser Pro Leu Asn Gln Ile Asn Ala Thr Asn Val Ser Asn
180 185 190
Leu Lys Val Ala Trp His Ile His Thr Lys Asp Met Met Asn Ser Asn
195 200 205
Asp Pro Gly Glu Ala Thr Asn Glu Ala Thr Pro Ile Glu Phe Asn Asn
210 215 220
Thr Leu Tyr Met Cys Ser Leu His Gln Lys Leu Phe Ala Val Asp Gly
225 230 235 240
Ala Thr Gly Asn Val Lys Trp Val Tyr Asp Pro Lys Leu Gln Ile Asn
245 250 255
Pro Gly Phe Gln His Leu Thr Cys Arg Gly Val Ser Phe His Glu Thr
260 265 270
Pro Ala Asn Ala Met Asp Ser Asp Gly Asn Pro Ala Pro Thr Asp Cys
275 280 285
Ala Lys Arg Ile Ile Leu Pro Val Asn Asp Gly Arg Leu Val Glu Val
290 295 300
Asp Ala Asp Thr Gly Lys Thr Cys Ser Gly Phe Gly Asn Asn Gly Glu
305 310 315 320
Ile Asp Leu Arg Val Pro Asn Gln Pro Tyr Thr Thr Pro Gly Gln Tyr
325 330 335
Glu Pro Thr Ser Pro Pro Val Ile Thr Asp Lys Leu Ile Ile Ala Asn
340 345 350
Ser Ala Ile Thr Asp Asn Gly Ser Val Lys Gln Ala Ser Gly Ala Thr
355 360 365
Gln Ala Phe Asp Val Tyr Thr Gly Lys Arg Val Trp Val Phe Asp Ala
370 375 380
Ser Asn Pro Asp Pro Asn Gln Leu Pro Asp Glu Ser His Pro Val Phe
385 390 395 400
His Pro Asn Ser Pro Asn Ser Trp Ile Val Ser Ser Tyr Asp Ala Asn
405 410 415
Leu Asn Leu Val Tyr Ile Pro Met Gly Val Gly Thr Pro Asp Gln Trp
420 425 430
Gly Gly Asp Arg Thr Lys Asp Ser Glu Arg Phe Ala Pro Gly Ile Val
435 440 445
Ala Leu Asn Ala Asp Thr Gly Lys Leu Ala Trp Phe Tyr Gln Thr Val
450 455 460
His His Asp Leu Trp Asp Met Asp Val Pro Ser Gln Pro Ser Leu Val
465 470 475 480
Asp Val Thr Gln Lys Asp Gly Thr Leu Val Pro Ala Ile Tyr Ala Pro
485 490 495
Thr Lys Thr Gly Asp Ile Phe Val Leu Asp Arg Arg Thr Gly Lys Glu
500 505 510
Ile Val Pro Ala Pro Glu Thr Pro Val Pro Gln Gly Ala Ala Pro Gly
515 520 525
Asp His Thr Ser Pro Thr Gln Pro Met Ser Gln Leu Thr Leu Arg Pro
530 535 540
Lys Asn Pro Leu Asn Asp Ser Asp Ile Trp Gly Gly Thr Ile Phe Asp
545 550 555 560
Gln Met Phe Cys Ser Ile Tyr Phe His Thr Leu Arg Tyr Glu Gly Pro
565 570 575
Phe Thr Pro Pro Ser Leu Lys Gly Ser Leu Ile Phe Pro Gly Asp Leu
580 585 590
Gly Met Phe Glu Trp Gly Gly Leu Ala Val Asp Pro Gln Arg Gln Val
595 600 605
Ala Phe Ala Asn Pro Ile Ser Leu Pro Phe Val Ser Gln Leu Val Pro
610 615 620
Arg Gly Pro Gly Asn Pro Leu Trp Pro Glu Gly Asn Ala Lys Gly Thr
625 630 635 640
Gly Gly Glu Thr Gly Leu Gln His Asn Tyr Gly Ile Pro Tyr Ala Val
645 650 655
Asn Leu His Pro Phe Leu Asp Pro Val Leu Leu Pro Phe Gly Ile Lys
660 665 670
Met Pro Cys Arg Thr Pro Pro Trp Gly Tyr Val Ala Gly Ile Asp Leu
675 680 685
Lys Thr Asn Lys Val Val Trp Gln His Arg Asn Gly Thr Leu Arg Asp
690 695 700
Ser Met Tyr Gly Ser Ser Leu Pro Ile Pro Leu Pro Pro Ile Lys Ile
705 710 715 720
Gly Val Pro Ser Leu Gly Gly Pro Leu Ser Thr Ala Gly Asn Leu Gly
725 730 735
Phe Leu Thr Ala Ser Met Asp Tyr Tyr Ile Arg Ala Tyr Asn Leu Thr
740 745 750
Thr Gly Lys Val Leu Trp Gln Asp Arg Leu Pro Ala Gly Ala Gln Ala
755 760 765
Thr Pro Ile Thr Tyr Ala Ile Asn Gly Lys Gln Tyr Ile Val Thr Tyr
770 775 780
Ala Gly Gly His Asn Ser Phe Pro Thr Arg Met Gly Asp Asp Ile Ile
785 790 795 800
Ala Tyr Ala Leu Pro Asp Gln Lys
805

<210> 3
<211> 657
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
polynucleotide
<400> 3
atgacccagg acgatgcctc tctcatttct gatccaacgt cttccagaca ggaggagggg 60
tctcgccgca gggatgtgct ggcaacggta acagttgcca tgggatgtgc aggcgcgtgt 120
gctgtggcct atccttttct ggacagcctg aatgggacgc gcgccaatca tgtcggggag 180
agcgacatcc tggacgtgga tctctctacc ctcaaagccg gccagcagat tgttgtgaca 240
tggcgggggt ggcccgtgtt cgtgcagaga agaacgccag aaatgctgaa aacgcttcag 300
gatccggcaa tcctgcagaa actacgagat cctgagtcct gcattttcca acaacccaaa 360
gacgcaacaa actggcatcg ttccgtcagc cccgatatcg gcgtcatgat tgggatctgt 420
acccatctcg gctgcgtgcc gactttcgac gccccgacgc aggcagaacc tgccgggaaa 480
tacctctgcc cctgtcatgg ttcacagttt gacagtgcag gccgcgccta caggaacgcc 540
cctgcaccat acaatctgcc ggttccgccc gtgacaatga tttccgatac gcatctgcga 600
attggagaaa gcaaaaacga tcctgacttt gatattgcta acatccagca gatctga 657

<210> 4
<211> 218
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
polypeptide
<400> 4
Met Thr Gln Asp Asp Ala Ser Leu Ile Ser Asp Pro Thr Ser Ser Arg
1 5 10 15
Gln Glu Glu Gly Ser Arg Arg Arg Asp Val Leu Ala Thr Val Thr Val
20 25 30
Ala Met Gly Cys Ala Gly Ala Cys Ala Val Ala Tyr Pro Phe Leu Asp
35 40 45
Ser Leu Asn Gly Thr Arg Ala Asn His Val Gly Glu Ser Asp Ile Leu
50 55 60
Asp Val Asp Leu Ser Thr Leu Lys Ala Gly Gln Gln Ile Val Val Thr
65 70 75 80
Trp Arg Gly Trp Pro Val Phe Val Gln Arg Arg Thr Pro Glu Met Leu
85 90 95
Lys Thr Leu Gln Asp Pro Ala Ile Leu Gln Lys Leu Arg Asp Pro Glu
100 105 110
Ser Cys Ile Phe Gln Gln Pro Lys Asp Ala Thr Asn Trp His Arg Ser
115 120 125
Val Ser Pro Asp Ile Gly Val Met Ile Gly Ile Cys Thr His Leu Gly
130 135 140
Cys Val Pro Thr Phe Asp Ala Pro Thr Gln Ala Glu Pro Ala Gly Lys
145 150 155 160
Tyr Leu Cys Pro Cys His Gly Ser Gln Phe Asp Ser Ala Gly Arg Ala
165 170 175
Tyr Arg Asn Ala Pro Ala Pro Tyr Asn Leu Pro Val Pro Pro Val Thr
180 185 190
Met Ile Ser Asp Thr His Leu Arg Ile Gly Glu Ser Lys Asn Asp Pro
195 200 205
Asp Phe Asp Ile Ala Asn Ile Gln Gln Ile
210 215

<210> 5
<211> 2940
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
polynucleotide
<400> 5
atgatcgtat cgcgtcgcaa tacgttactt tgcgcatcgg tgctggggat gggggcgctt 60
tcgagcgttg ctcatgcggc aaccgaaagc actcacacgt cctcacatgt gcgccacaag 120
actgtgactc atggtccggt gcgttctgct gcgacgcctg caacaacagc tccggtctcg 180
gtagctcgtc cggtggcagc tccgcagttt tctgcacctg tagcggtcaa ccggtcccat 240
gccgttcgtt ccattgattc cggaacgcag gaaagcgttg tggtcacggg gtcggctctg 300
agcacgtcta acaatcagaa cgcgaacccg gtccagatcg tgaccagcaa gcagatcgag 360
cagactggca tcaacactct gggtgattac ctgcagcgcc tgccgtctgt cggttcttcg 420
ggtacgacga acagccaaac caacaatacg gcgggtgttt cttgcacgga tatccgtaac 480
cttggcaaaa gccgtgttct ggttctgatt gatggcaagc gtgcagcaat tgacggctcg 540
tcaagctgct ttgatctgaa caccatcaat attcaccagg tggcgagtgt cgaaatcctc 600
aaggatggtg gttctgagct gtatggtgct gatgccgttt ccggtgtcat caacatcaag 660
ctcaaacaca atctggatga cgcgaacctg acggttcgtg gaggcatcac tgaccgtgga 720
gatggccagt ccggcatgat ttctggctac aagggctgga attttgatca tggccgcggc 780
aacgtgacgg tctccggatc ttacatgacc cagagcggga tccgtcagaa cagccgtgac 840
tgggccaacc cggttgtgtc tggtctgatt gcaccgggtg gttcgccgac ttacggatcg 900
tccatcccga cggcgggtcg tttcatcact gatactgcgg ataatgttcc caatggtgat 960
ggatcgttcc acaatttcag caagaaagat cgctacaact acggtaatga tcagagcctg 1020
acgaactcct tgcaggatgc cacgctgtcg ttcgatgcac attacgacgt gaaccgtcat 1080
ttcacgccgt atggcaactt cctgtattcg catcgtaact ctaatacgca gatggcgccg 1140
attccggtgt ctggtagcat ctacccgtcc actctgccgg tagccatcac cattccagga 1200
agtgcgccgt acaattcgct tggcgaagat gccacgatgt acaagcgtat gggtgaatgg 1260
ggtgatcgcg tcagtcagac tgctaccgac acatacacgg caaagattgg cgcttcgggt 1320
gatatcaccc acggttggaa atatgacctg tcctatacct acggatggaa ccaggtcatg 1380
tcccagactt ctggcgttgg taattattcc aagctgcttc agagctacgg tctatccgct 1440
gaagagccgg gcaatcctga cagtgcgctg gtttacaacc cgtcgatctg cactgcagcg 1500
gctggctgca cactgtccaa ccctttcaac aagctttcgc cgcaagcggc tgattactcg 1560
aactacacgt cgcacgatca ctactactat cagctgcgtg atctgaacct gcgtattaac 1620
aataaccatg ttgttcacat gccgtggaag aacggtggcg atctaggtat cgcgctgggt 1680
atggagcatc gtggtgagca gcttgcctat catccggatg ccctcgttga atctggccag 1740
acgctgacga actctgcttc ctacacgggt ggtggattca acgtcacgga aggctacctc 1800
gaaggtaaag ccacgctgct gcacaatgca ttccttgcca aggatctgac gattgacggt 1860
cagggccgtt actcgtctta caacacgttc ggcagcacga agaactggaa ggcgtccatc 1920
aactgggcac cggttcagga catccgcttc cgtgcaacgc ttggcacgtc ctaccgtcag 1980
cctaacgtct atgagctgta tggcggtcag tctctcggct atgcatcagc aactgaccca 2040
tgcgacagcg ggcaggtcgg cacatatggc agtctgacgc caattgtggc ggcaaattgc 2100
gccaagcagg ggattaacag cagtaatttc gtgtctgctt cctccagtca ggttccgacc 2160
ctgtttggtg gcaatcccaa gctgaagcct gaaactggcc gtacctacac gtttggtaca 2220
acggtcacgc cgcgttggat tccaggcctc tcggcttccg tggaatactg gcattacacg 2280
ctcaagaaca tgatttcgta cctgagcagt cagtacatca tgaaccagtg ctacacgggt 2340
gcaaacacgt catattgcaa tgacattacc cgcgttggca gcacgaacca gctaaactcc 2400
gtgacagctc tgtatggcaa catcggcgga ctgaagacga gcggcatcga ctttgacctt 2460
gactaccgta tccgcgttac atctcgcgac gttctgacat tgtccaacaa ctttcagcaa 2520
cttgtgagct atcttcagca gaacgagctc ggcggaaagt ggtacaatta tgcaggtcgc 2580
atgttctacc aaaacggtac tggcaacccc cgcgttcgtg attatgcgac cgttggctgg 2640
cagcatggtg caattggcgt cacatatatg atgagctata tgggtggtat gcgttggaac 2700
gactcggaaa ctgatgtgac ccgttcagct tcgggccgca tcaagacgcc tggcatcttc 2760
tctcatgatg ttacggtgac ttatcgttgg aaaaagtgga acttcgaagc tggtgtgaac 2820
aacctgctcg acaagaagcc tccctttgtt tctggtggga cagacaacag cgcggctgcc 2880
ctttatggca acctttacat gggacgtaac gtcttcctgc aggcaggcgt gaacttctga 2940

<210> 6
<211> 979
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
polypeptide
<400> 6
Met Ile Val Ser Arg Arg Asn Thr Leu Leu Cys Ala Ser Val Leu Gly
1 5 10 15
Met Gly Ala Leu Ser Ser Val Ala His Ala Ala Thr Glu Ser Thr His
20 25 30
Thr Ser Ser His Val Arg His Lys Thr Val Thr His Gly Pro Val Arg
35 40 45
Ser Ala Ala Thr Pro Ala Thr Thr Ala Pro Val Ser Val Ala Arg Pro
50 55 60
Val Ala Ala Pro Gln Phe Ser Ala Pro Val Ala Val Asn Arg Ser His
65 70 75 80
Ala Val Arg Ser Ile Asp Ser Gly Thr Gln Glu Ser Val Val Val Thr
85 90 95
Gly Ser Ala Leu Ser Thr Ser Asn Asn Gln Asn Ala Asn Pro Val Gln
100 105 110
Ile Val Thr Ser Lys Gln Ile Glu Gln Thr Gly Ile Asn Thr Leu Gly
115 120 125
Asp Tyr Leu Gln Arg Leu Pro Ser Val Gly Ser Ser Gly Thr Thr Asn
130 135 140
Ser Gln Thr Asn Asn Thr Ala Gly Val Ser Cys Thr Asp Ile Arg Asn
145 150 155 160
Leu Gly Lys Ser Arg Val Leu Val Leu Ile Asp Gly Lys Arg Ala Ala
165 170 175
Ile Asp Gly Ser Ser Ser Cys Phe Asp Leu Asn Thr Ile Asn Ile His
180 185 190
Gln Val Ala Ser Val Glu Ile Leu Lys Asp Gly Gly Ser Glu Leu Tyr
195 200 205
Gly Ala Asp Ala Val Ser Gly Val Ile Asn Ile Lys Leu Lys His Asn
210 215 220
Leu Asp Asp Ala Asn Leu Thr Val Arg Gly Gly Ile Thr Asp Arg Gly
225 230 235 240
Asp Gly Gln Ser Gly Met Ile Ser Gly Tyr Lys Gly Trp Asn Phe Asp
245 250 255
His Gly Arg Gly Asn Val Thr Val Ser Gly Ser Tyr Met Thr Gln Ser
260 265 270
Gly Ile Arg Gln Asn Ser Arg Asp Trp Ala Asn Pro Val Val Ser Gly
275 280 285
Leu Ile Ala Pro Gly Gly Ser Pro Thr Tyr Gly Ser Ser Ile Pro Thr
290 295 300
Ala Gly Arg Phe Ile Thr Asp Thr Ala Asp Asn Val Pro Asn Gly Asp
305 310 315 320
Gly Ser Phe His Asn Phe Ser Lys Lys Asp Arg Tyr Asn Tyr Gly Asn
325 330 335
Asp Gln Ser Leu Thr Asn Ser Leu Gln Asp Ala Thr Leu Ser Phe Asp
340 345 350
Ala His Tyr Asp Val Asn Arg His Phe Thr Pro Tyr Gly Asn Phe Leu
355 360 365
Tyr Ser His Arg Asn Ser Asn Thr Gln Met Ala Pro Ile Pro Val Ser
370 375 380
Gly Ser Ile Tyr Pro Ser Thr Leu Pro Val Ala Ile Thr Ile Pro Gly
385 390 395 400
Ser Ala Pro Tyr Asn Ser Leu Gly Glu Asp Ala Thr Met Tyr Lys Arg
405 410 415
Met Gly Glu Trp Gly Asp Arg Val Ser Gln Thr Ala Thr Asp Thr Tyr
420 425 430
Thr Ala Lys Ile Gly Ala Ser Gly Asp Ile Thr His Gly Trp Lys Tyr
435 440 445
Asp Leu Ser Tyr Thr Tyr Gly Trp Asn Gln Val Met Ser Gln Thr Ser
450 455 460
Gly Val Gly Asn Tyr Ser Lys Leu Leu Gln Ser Tyr Gly Leu Ser Ala
465 470 475 480
Glu Glu Pro Gly Asn Pro Asp Ser Ala Leu Val Tyr Asn Pro Ser Ile
485 490 495
Cys Thr Ala Ala Ala Gly Cys Thr Leu Ser Asn Pro Phe Asn Lys Leu
500 505 510
Ser Pro Gln Ala Ala Asp Tyr Ser Asn Tyr Thr Ser His Asp His Tyr
515 520 525
Tyr Tyr Gln Leu Arg Asp Leu Asn Leu Arg Ile Asn Asn Asn His Val
530 535 540
Val His Met Pro Trp Lys Asn Gly Gly Asp Leu Gly Ile Ala Leu Gly
545 550 555 560
Met Glu His Arg Gly Glu Gln Leu Ala Tyr His Pro Asp Ala Leu Val
565 570 575
Glu Ser Gly Gln Thr Leu Thr Asn Ser Ala Ser Tyr Thr Gly Gly Gly
580 585 590
Phe Asn Val Thr Glu Gly Tyr Leu Glu Gly Lys Ala Thr Leu Leu His
595 600 605
Asn Ala Phe Leu Ala Lys Asp Leu Thr Ile Asp Gly Gln Gly Arg Tyr
610 615 620
Ser Ser Tyr Asn Thr Phe Gly Ser Thr Lys Asn Trp Lys Ala Ser Ile
625 630 635 640
Asn Trp Ala Pro Val Gln Asp Ile Arg Phe Arg Ala Thr Leu Gly Thr
645 650 655
Ser Tyr Arg Gln Pro Asn Val Tyr Glu Leu Tyr Gly Gly Gln Ser Leu
660 665 670
Gly Tyr Ala Ser Ala Thr Asp Pro Cys Asp Ser Gly Gln Val Gly Thr
675 680 685
Tyr Gly Ser Leu Thr Pro Ile Val Ala Ala Asn Cys Ala Lys Gln Gly
690 695 700
Ile Asn Ser Ser Asn Phe Val Ser Ala Ser Ser Ser Gln Val Pro Thr
705 710 715 720
Leu Phe Gly Gly Asn Pro Lys Leu Lys Pro Glu Thr Gly Arg Thr Tyr
725 730 735
Thr Phe Gly Thr Thr Val Thr Pro Arg Trp Ile Pro Gly Leu Ser Ala
740 745 750
Ser Val Glu Tyr Trp His Tyr Thr Leu Lys Asn Met Ile Ser Tyr Leu
755 760 765
Ser Ser Gln Tyr Ile Met Asn Gln Cys Tyr Thr Gly Ala Asn Thr Ser
770 775 780
Tyr Cys Asn Asp Ile Thr Arg Val Gly Ser Thr Asn Gln Leu Asn Ser
785 790 795 800
Val Thr Ala Leu Tyr Gly Asn Ile Gly Gly Leu Lys Thr Ser Gly Ile
805 810 815
Asp Phe Asp Leu Asp Tyr Arg Ile Arg Val Thr Ser Arg Asp Val Leu
820 825 830
Thr Leu Ser Asn Asn Phe Gln Gln Leu Val Ser Tyr Leu Gln Gln Asn
835 840 845
Glu Leu Gly Gly Lys Trp Tyr Asn Tyr Ala Gly Arg Met Phe Tyr Gln
850 855 860
Asn Gly Thr Gly Asn Pro Arg Val Arg Asp Tyr Ala Thr Val Gly Trp
865 870 875 880
Gln His Gly Ala Ile Gly Val Thr Tyr Met Met Ser Tyr Met Gly Gly
885 890 895
Met Arg Trp Asn Asp Ser Glu Thr Asp Val Thr Arg Ser Ala Ser Gly
900 905 910
Arg Ile Lys Thr Pro Gly Ile Phe Ser His Asp Val Thr Val Thr Tyr
915 920 925
Arg Trp Lys Lys Trp Asn Phe Glu Ala Gly Val Asn Asn Leu Leu Asp
930 935 940
Lys Lys Pro Pro Phe Val Ser Gly Gly Thr Asp Asn Ser Ala Ala Ala
945 950 955 960
Leu Tyr Gly Asn Leu Tyr Met Gly Arg Asn Val Phe Leu Gln Ala Gly
965 970 975
Val Asn Phe

<210> 7
<211> 843
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
polynucleotide
<400> 7
atgcgcgttg ccctgatcca gatggctcct tcggcggacc ggagtgccaa tatccttcaa 60
gctcagcggc tggtttcaga agctgtcaaa gctcggaagc cagatcttgt ggtgctgcct 120
gaaatctgga gctgtctggg tggttcggct gcgaccaagc aggctaatgc agagcttcta 180
cctgatccag gcgatgctgg aggtgtactc tacgaagcgt tgagggccat ggcccgggaa 240
cataatgtct gggttcacgg tggttcaatc ggagaacttg tagggcctga gtcgggcgac 300
aagcttgcca atacttcact cgttttcaac cctgatggcg aggaatgtgg gcgttacaga 360
aaaatccatc tcttcgatgt tattacaccc aatggggacg gctatcgtga aagcgataat 420
tatgtgcccg gggaagcgat cgaagtcgtc gatattgatg gcgtcccaac cggcctcgcg 480
atttgctatg atttgaggtt tgctgagctg tttcttgcac ttcgggctgc ggatgttgag 540
atgattgttc tgcccgcagc gtttacgcag caaacgggtg aagctcactg ggacattctt 600
gtccgtgctc gcgctattga gtctcagacg tgggtgatag cgtgtggaac aacgggctgg 660
catgtcgatg ggcaaggcaa tcagcgccag acctatggcc attccatgat cgtcagccca 720
tggggcgagg ttgttcttca attgggtagt gaagaaggct ggggggtggc tgatcttgat 780
atggatgagg ttcgacaggt gcgggagaga atgcctgtgc agataaacag gcggctgatt 840
tga 843

<210> 8
<211> 280
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
polypeptide
<400> 8
Met Arg Val Ala Leu Ile Gln Met Ala Pro Ser Ala Asp Arg Ser Ala
1 5 10 15
Asn Ile Leu Gln Ala Gln Arg Leu Val Ser Glu Ala Val Lys Ala Arg
20 25 30
Lys Pro Asp Leu Val Val Leu Pro Glu Ile Trp Ser Cys Leu Gly Gly
35 40 45
Ser Ala Ala Thr Lys Gln Ala Asn Ala Glu Leu Leu Pro Asp Pro Gly
50 55 60
Asp Ala Gly Gly Val Leu Tyr Glu Ala Leu Arg Ala Met Ala Arg Glu
65 70 75 80
His Asn Val Trp Val His Gly Gly Ser Ile Gly Glu Leu Val Gly Pro
85 90 95
Glu Ser Gly Asp Lys Leu Ala Asn Thr Ser Leu Val Phe Asn Pro Asp
100 105 110
Gly Glu Glu Cys Gly Arg Tyr Arg Lys Ile His Leu Phe Asp Val Ile
115 120 125
Thr Pro Asn Gly Asp Gly Tyr Arg Glu Ser Asp Asn Tyr Val Pro Gly
130 135 140
Glu Ala Ile Glu Val Val Asp Ile Asp Gly Val Pro Thr Gly Leu Ala
145 150 155 160
Ile Cys Tyr Asp Leu Arg Phe Ala Glu Leu Phe Leu Ala Leu Arg Ala
165 170 175
Ala Asp Val Glu Met Ile Val Leu Pro Ala Ala Phe Thr Gln Gln Thr
180 185 190
Gly Glu Ala His Trp Asp Ile Leu Val Arg Ala Arg Ala Ile Glu Ser
195 200 205
Gln Thr Trp Val Ile Ala Cys Gly Thr Thr Gly Trp His Val Asp Gly
210 215 220
Gln Gly Asn Gln Arg Gln Thr Tyr Gly His Ser Met Ile Val Ser Pro
225 230 235 240
Trp Gly Glu Val Val Leu Gln Leu Gly Ser Glu Glu Gly Trp Gly Val
245 250 255
Ala Asp Leu Asp Met Asp Glu Val Arg Gln Val Arg Glu Arg Met Pro
260 265 270
Val Gln Ile Asn Arg Arg Leu Ile
275 280

<210> 9
<211> 939
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
polynucleotide
<400> 9
atgatgaaag caggaccgat gaaaaaactc tggcgatatc tcccagcgtt gccggcgctg 60
atgctatcgg gttgcacggt tgatctgctt cagccgcgcg gtccgatcgc agaaatgaac 120
cgcgacgtta tggtggcaga atttgccatc atgatggcga ttgtggttcc gacctgtatc 180
gcaacgcttt attttgcttg gaagtatcgc gcttccaata cccaggccga atatctgccg 240
acctgggatc actcaacgaa gattgagtat gtcatctggg gcgtccctgc tctgatcatt 300
attgcccttg gcgcgatcag ctggtacagc acccatgctt atgacccgta ccgcccgctc 360
cagacggctg acaacgtcaa gccgctgaac gttcaggtgg tctctctcga ctggaaatgg 420
ctgttcatct atccggatct ggggatcgcc acgatcaacc agctggatgt gcccacgaac 480
acgccgctga acttccagat cacctctgac actgtcatga cgtcgttctt catcccgcgt 540
ctgggatcaa tgatctactc catgccgggt cagcagacac agctgcatct tcttgcaact 600
gagtcgggtg actatctggg tgaagcttcc cagttcagtg gtcgcggttt ctctgacatg 660
aagttccgca ccctcgccat ggcacctgaa gaattcagcg cctgggtcga gaaggtgaag 720
agcggcagcg aaaacctcga tgacacgact tatccgaagt acgccgcccc gcaggaagct 780
gcgccggttc agtatttcgc gcatgtccag ccggatctct tcgacggcat cgtcgccaag 840
tacaacaatg gcatgatggt tgagaagacg acgggcaagg tcatgcatat gcagtccgct 900
tccagcgctg caccgtccga cactggcatg aaggaataa 939

<210> 10
<211> 312
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
polypeptide
<400> 10
Met Met Lys Ala Gly Pro Met Lys Lys Leu Trp Arg Tyr Leu Pro Ala
1 5 10 15
Leu Pro Ala Leu Met Leu Ser Gly Cys Thr Val Asp Leu Leu Gln Pro
20 25 30
Arg Gly Pro Ile Ala Glu Met Asn Arg Asp Val Met Val Ala Glu Phe
35 40 45
Ala Ile Met Met Ala Ile Val Val Pro Thr Cys Ile Ala Thr Leu Tyr
50 55 60
Phe Ala Trp Lys Tyr Arg Ala Ser Asn Thr Gln Ala Glu Tyr Leu Pro
65 70 75 80
Thr Trp Asp His Ser Thr Lys Ile Glu Tyr Val Ile Trp Gly Val Pro
85 90 95
Ala Leu Ile Ile Ile Ala Leu Gly Ala Ile Ser Trp Tyr Ser Thr His
100 105 110
Ala Tyr Asp Pro Tyr Arg Pro Leu Gln Thr Ala Asp Asn Val Lys Pro
115 120 125
Leu Asn Val Gln Val Val Ser Leu Asp Trp Lys Trp Leu Phe Ile Tyr
130 135 140
Pro Asp Leu Gly Ile Ala Thr Ile Asn Gln Leu Asp Val Pro Thr Asn
145 150 155 160
Thr Pro Leu Asn Phe Gln Ile Thr Ser Asp Thr Val Met Thr Ser Phe
165 170 175
Phe Ile Pro Arg Leu Gly Ser Met Ile Tyr Ser Met Pro Gly Gln Gln
180 185 190
Thr Gln Leu His Leu Leu Ala Thr Glu Ser Gly Asp Tyr Leu Gly Glu
195 200 205
Ala Ser Gln Phe Ser Gly Arg Gly Phe Ser Asp Met Lys Phe Arg Thr
210 215 220
Leu Ala Met Ala Pro Glu Glu Phe Ser Ala Trp Val Glu Lys Val Lys
225 230 235 240
Ser Gly Ser Glu Asn Leu Asp Asp Thr Thr Tyr Pro Lys Tyr Ala Ala
245 250 255
Pro Gln Glu Ala Ala Pro Val Gln Tyr Phe Ala His Val Gln Pro Asp
260 265 270
Leu Phe Asp Gly Ile Val Ala Lys Tyr Asn Asn Gly Met Met Val Glu
275 280 285
Lys Thr Thr Gly Lys Val Met His Met Gln Ser Ala Ser Ser Ala Ala
290 295 300
Pro Ser Asp Thr Gly Met Lys Glu
305 310

<210> 11
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 11
aacaagccag ggatgtaacg 20

<210> 12
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 12
cagcaacacc ttcttcacga 20

<210> 13
<211> 60
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
oligonucleotide
<400> 13
cagctgacgc ttcgtccgaa gaacccgctc tccgatgccg atatctgggg tggcacaatc 60

<210> 14
<211> 59
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
oligonucleotide
<400> 14
ctacatcccg accaagacgg gcgatatctt tgtcctcgac cgccgtacgg gcaaggaag 59

<210> 15
<211> 59
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
oligonucleotide
<400> 15
agcacccacg cctacgaccc gtaccgcccc cttcagacgg ctgacaacgt caagccctg 59

<210> 16
<211> 60
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
oligonucleotide
<400> 16
cgcaccaaca aggtggtctg gcagcatcgt aacggtacgc tccgtgactc catgcacggc 60

<210> 17
<211> 60
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
oligonucleotide
<400> 17
tacaagtggt atcgattggg attttgatta tcggatccgt ctgactagca tggattccat 60

<210> 18
<211> 37
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
oligonucleotide
<400> 18
catcggcgtc atgatcggga tctgcacgca tctgggc 37

<210> 19
<211> 59
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
oligonucleotide
<400> 19
cgatgcagaa accgggcaga agtgttccgg ctttggcaac gacggcgaac tggaacctg 59

<210> 20
<211> 40
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
oligonucleotide
<400> 20
tcttaatgcg cttctatgtg tttgtccgaa ggtcaagtgc 40

<210> 21
<211> 47
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
oligonucleotide
<400> 21
gcagtaattt cgtgtctgct tcctccagtc aggttccgac cctgttt 47

<210> 22
<211> 60
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
oligonucleotide
<400> 22
tggcgatcgc tggtctccgc tgaagcagat caattcgacc aatgttcaga acctcaaggt 60

<210> 23
<211> 60
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
oligonucleotide
<400> 23
agactcaata gcgcgagcac ggacaagaat gtcccagtga gcttcacccg tttgctgcgt 60

<210> 24
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 24
agagtttgat cmtggctcag 20

<210> 25
<211> 22
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 25
tacggytacc ttgttacgac tt 22

<210> 26
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 26
caccagccta accagatttc 20

<210> 27
<211> 22
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 27
gggttgtatt gatgagatta gt 22

<210> 28
<211> 27
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 28
gcttctgaca caactgtgtt cactagc 27

<210> 29
<211> 23
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 29
caccaacttc atccacgttc acc 23

<210> 30
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 30
tgttcacaat ggataggcac 20

<210> 31
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 31
tctgggtttt ccaaagcaag 20

<210> 32
<211> 21
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 32
tgaagacgga ttgccctcat t 21

<210> 33
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 33
gctggtgcca gtaagagctt 20

<210> 34
<211> 60
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
oligonucleotide
<400> 34
ggcacaatct tcgaccagat gttctgcagc atctacttcc actccctgcg ctacgaaggt 60

<210> 35
<211> 60
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
oligonucleotide
<400> 35
gggcaaggaa gtcgtcgctg ctcctgaaac accagttcca ggtggtgcag ctccgggcga 60

<210> 36
<211> 60
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
oligonucleotide
<400> 36
gacagcgtca agccactgaa tgttcaggtg gtctctctcg actggaaatg gctgttcatc 60

<210> 37
<211> 60
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
oligonucleotide
<400> 37
atgcacggca gctccctgcc catcccgctg cctccgatca agatcggtgt tccgagcctt 60

<210> 38
<211> 60
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
oligonucleotide
<400> 38
ggattccatc actgtcagca ataacctgca gaacctggtc aatttttccc agcagcagac 60

<210> 39
<211> 47
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
oligonucleotide
<400> 39
tgcgtgccga ctttcgacgc cccgacgcag gcagaacctg ccgggaa 47

<210> 40
<211> 60
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
oligonucleotide
<400> 40
gaactggaac tgcgcgagcc gaaccagcct tacgtcacgc caggcatgta tgagccgacg 60

<210> 41
<211> 58
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
oligonucleotide
<400> 41
aggtcaagtg ctgcaccaaa taacagctct aggaacatca tgagcacatc ttcccggc 58

<210> 42
<211> 51
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
oligonucleotide
<400> 42
ggtggtaata caaagctgcg tccagaagca gggcgtacct acacctttgg t 51

<210> 43
<211> 60
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
oligonucleotide
<400> 43
cctcaaggtg gcatggcaca tccacaccaa ggatctgatg ggaccgaatg atccgggcga 60

<210> 44
<211> 45
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
oligonucleotide
<400> 44
aaacgctgcg ggcagaacaa tcatctcaac atccgcagcc cgaag 45
図1A
図1B
図1C
図1D-F】
図1G-H】
図2A-C】
図2D-G】
図2H-K】
図3A-B】
図3C-D】
図3E-F】
図3G-H】
図4A-B】
図4C-D】
図4E-F】
図4G-I】
図5A-C】
図5D-G】
図5H-I】
図6A-B】
図6C-F】
図6G-J】
図6K-L】
図7A-B】
図7C-D】
図7E-H】
図8A-C】
図8D-F】
図8G-H】
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図10
図11
図12
図13
図14
【配列表】
2024129039000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-06-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
2024129039000001.xml