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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012904
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】位置指示器
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/03 20060101AFI20240124BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
G06F3/03 400F
G06F3/044 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114711
(22)【出願日】2022-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100173691
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 康久
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(72)【発明者】
【氏名】神谷 宙
(72)【発明者】
【氏名】七里 佑真
(72)【発明者】
【氏名】牧園 勝美
(72)【発明者】
【氏名】進藤 容
(57)【要約】
【課題】優れた操作性を有する位置指示器を提供する。
【解決手段】位置指示器1は、静電容量の変化に基づいて位置検出が行われる位置検出センサ9に対して使用され、筒状の第1シールド電極8と、第1シールド電極8内に設けられ、先端部が第1シールド電極8から突出する第1電極31と、第1電極31の先端側に位置し、位置検出センサ9と接触する接触部322を備える第2電極32と、を有し、第2電極32を介して位置検出センサ9の交流信号V1を受信し、第1電極31を介して位置検出センサ9へ出力信号V2を送出する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電容量の変化に基づいて位置検出が行われる位置検出センサに対して使用される位置指示器であって、
筒状の第1シールド電極と、
前記第1シールド電極内に設けられ、先端部が第1シールド電極から突出する第1電極と、
前記第1電極の先端側に位置し、前記位置検出センサと接触する接触部を備える第2電極と、を有し、
前記第2電極を介して前記位置検出センサの交流信号を受信し、前記第1電極を介して前記位置検出センサへ出力信号を送出することを特徴とする位置指示器。
【請求項2】
前記第1電極は、先端面に臨む切り欠き部を有する請求項1に記載の位置指示器。
【請求項3】
前記切り欠き部は、前記先端面から前記第1シールド電極と重なる部分まで延びる請求項2に記載の位置指示器。
【請求項4】
前記切り欠き部の中心角度は、60°以上90°以下である請求項2に記載の位置指示器。
【請求項5】
前記切り欠き部は、前記第1電極の周方向に沿って複数形成されている請求項2に記載の位置指示器。
【請求項6】
各前記切り欠き部は、他の前記切り欠き部が形成されていない部分と対向する請求項5に記載の位置指示器。
【請求項7】
前記第1電極は、3つの前記切り欠き部を有し、
各前記切り欠き部の中心角度は、45°以上60°以下である請求項6に記載の位置指示器。
【請求項8】
前記第1電極と前記第2電極との間に配置された第2シールド電極を有する請求項1に記載の位置指示器。
【請求項9】
前記交流信号に対して所定の信号処理を行い、前記出力信号を生成する信号処理回路を有する請求項1に記載の位置指示器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置指示器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、静電容量の変化を検出することにより位置検出が行われる位置検出センサと共に使用される位置指示器が記載されている。この位置指示器は、位置検出センサからの交流信号を受信するための第1電極と、第1電極を介して受信された交流信号に対して所定の信号増強処理を行うための信号増強処理回路と、信号増強処理回路から出力された信号が供給される第2電極と、を備えている。そして、位置指示器は、第1電極を介して受信された位置検出センサからの交流信号と所定の相関性を有する信号増強された信号を形成すると同時に、信号増強された信号を第2電極から位置検出センサに送出することにより位置を指示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-128556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような構成の位置指示器では、位置検出センサからの交流信号を第1電極で受信し、信号増強処理回路で信号増強処理された信号を第2電極から位置検出センサに送出するよう構成されているため、第1電極および第2電極は、導通を避けるために互いに離間して配置しなければならない。そのため、信号の受信と送出とを互いに異なる電極で行う構成では、位置検出センサから交流信号を受信した位置と位置検出センサに信号増強処理回路で信号増強処理された信号を送出する位置とがずれ、位置指示器で指示する位置と位置検出センサが検出する位置とにずれが生じてしまう。したがって、特許文献1の位置指示器では、優れた操作性を発揮することができない。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、位置検出センサから信号を受信する位置と位置検出センサに信号を送出する位置とのずれを小さくし、優れた操作性を有する位置指示器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、以下の(1)の本発明により達成される。
【0007】
(1) 静電容量の変化に基づいて位置検出が行われる位置検出センサに対して使用される位置指示器であって、
筒状の第1シールド電極と、
前記第1シールド電極内に設けられ、先端部が第1シールド電極から突出する第1電極と、
前記第1電極の先端側に位置し、前記位置検出センサと接触する接触部を備える第2電極と、を有し、
前記第2電極を介して前記位置検出センサの交流信号を受信し、前記第1電極を介して前記位置検出センサへ出力信号を送出することを特徴とする位置指示器。
【発明の効果】
【0008】
本発明の位置指示器では、第1電極の先端部以外の部分が第1シールド電極に覆われているため、当該部分と位置検出センサとの容量性の結合を効果的に抑制することができる。そのため、第1電極の先端部を介して位置検出センサの交流信号を受信するか、または、位置検出センサへ出力信号を送出することができる。これにより、実質的に第1電極が第2電極に近づき、位置検出センサから交流信号を受信する受信位置と位置指示器から位置検出センサに出力信号を送出する送出位置とのずれ量を小さく抑えることができる。したって、位置指示器は、優れた操作性を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る位置指示器および位置検出センサを示す全体構成図である。
図2】位置検出センサの構成を示すブロック図である。
図3】位置検出センサの構成を示す断面図である。
図4】位置指示器の断面図である。
図5】位置指示器を上側から見た平面図である。
図6】位置指示器の電極構造を示す断面図である。
図7】位置指示器を位置検出センサに接触させた状態を示す図である。
図8】位置指示器を位置検出センサに接触させた状態を示す図である。
図9】位置指示器の回路構成を示す回路図である。
図10】第2実施形態に係る位置指示器の電極構造を示す断面図である。
図11図10の電極構造を側方から見た平面図である。
図12図10の電極構造を先端側から見た平面図である。
図13】位置指示器を位置検出センサに接触させた状態を示す図である。
図14】第3実施形態に係る位置指示器の電極構造を先端側から見た平面図である。
図15】位置指示器を位置検出センサに接触させた状態を示す図である。
図16】位置指示器を位置検出センサに接触させた状態を示す図である。
図17】位置指示器を位置検出センサに接触させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の位置指示器を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0011】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る位置指示器および位置検出センサを示す全体構成図である。図2は、位置検出センサの構成を示すブロック図である。図3は、位置検出センサの構成を示す断面図である。図4は、位置指示器の断面図である。図5は、位置指示器を上側から見た平面図である。図6は、位置指示器の電極構造を示す断面図である。図7および図8は、それぞれ、位置指示器を位置検出センサに接触させた状態を示す図である。図9は、位置指示器の回路構成を示す回路図である。
【0012】
図1に示す位置指示器1は、位置検出センサ9と組み合わせて使用される。位置指示器1は、位置検出センサ9の入力画面に接触すると、位置検出センサ9からの交流信号V1と所定の相関性を有する信号増強された出力信号V2を位置検出センサ9に送出することにより位置を指示する。位置検出センサ9は、位置指示器1から送出された出力信号V2に基づいて入力画面上での位置指示器1の接触位置を検出する。まずは、位置指示器1の説明に先立って、位置検出センサ9について簡単に説明する。
【0013】
≪位置検出センサ9≫
位置検出センサ9は、結合容量の変化に基づいて、位置指示器1が接触したタッチポイントの位置を検出する相互容量方式の位置検出センサである。
【0014】
図2に示すように、位置検出センサ9は、センサ部90と、送信部91と、受信部92と、を有する。なお、以下では、説明の便宜上、指示入力面の横方向をX軸方向とし、縦方向をY軸方向する。センサ部90は、指示入力面のX軸方向に延伸し、Y軸方向に等間隔に並んで配置された複数(図2では64個)の送信導体9Y、9Y、…、9Y64と、指示入力面のY軸方向に延伸し、X軸方向に等間隔に並んで配置された複数(図2では64個)の受信導体9X、9X、…、9X64と、を有する。また、送信導体9Y~9Y64には送信部91が接続されており、受信導体9X~9X64には受信部92が接続されている。
【0015】
なお、本明細書中において、64本の送信導体9Y~9Y64のいずれであるかを区別する必要のないときには、単に「送信導体9Y」とも言い、同様に、64本の受信導体9X~9X64のいずれであるかを区別する必要のないときには、単に「受信導体9X」とも言う。
【0016】
送信導体9Y~9Y64と受信導体9X~9X64とは、例えば、基板の上面と下面とに分かれて形成されており、平面視で、互いに直交して重なり合って配置されている。送信導体9Y~9Y64と受信導体9X~9X64とが重なり合う部分にはクロスポイントCPが形成されている。図3に示すように、各クロスポイントCPでは、送信導体9Yと受信導体9Xとが静電容量C1を介して結合している。
【0017】
図2に示すように、送信部91は、各送信導体9Yに交流信号V1を供給する。交流信号V1の波形は、特に限定されず、矩形波信号、正弦波信号等どのような波形であってもよい。また、送信部91は、同一の交流信号を複数の送信導体9Y~9Y64に対して1本ずつ順番に供給してもよいし、互いに異なる複数の交流信号を複数の送信導体9Y~9Y64に同時に供給してもよい。また、複数の送信導体9Y~9Y64を複数個のグループに分け、グループ毎に異なる交流信号を供給してもよい。
【0018】
一方、受信部92は、各受信導体9Xに供給された交流信号V1を、静電容量C1を介して検出する。送信導体9Yと受信導体9Xとの間の結合静電容量が全クロスポイントCPにおいて等しいとすれば、位置指示器1が、センサ部90上に存在していないときには、受信部92において、全ての受信導体9Xから同レベルの受信信号が検出される。これに対して、位置指示器1がセンサ部90に接触すると、接触箇所に新たな結合静電容量が形成され、接触位置にあるクロスポイントでは静電容量C1が変化し、それに応じて、受信導体9Xから得られる受信信号レベルが変化する。
【0019】
位置検出センサ9は、交流信号を供給している送信導体9Yと、受信信号レベルの変化があった受信導体9Xと、を検出することにより、位置指示器1が接触しているクロスポイントCPを検出する。これにより、位置指示器1が接触したタッチポイントを検出することができる。
【0020】
以上、位置検出センサ9について簡単に説明した。次に、位置指示器1について説明する。
【0021】
≪位置指示器1≫
位置指示器1は、位置検出センサ9からの交流信号V1と所定の相関性を有する信号増強された出力信号V2を位置検出センサ9に送出することにより位置を指示する。
【0022】
また、位置指示器1は、スタイラス形状であり、図4に示すように、第1シールド電極8を兼ねる筐体2と、筐体2に設けられた電極構造3と、筐体2内に収容された配線基板5と、配線基板5に形成された信号処理回路6と、電源としてのバッテリー7と、を有する。
【0023】
また、電極構造3は、棒状の第2電極32と、第2電極32を囲む筒状の第1電極31と、第1電極31と第2電極32との間に設けられた第2シールド電極33と、第1電極31と第2シールド電極33との間に設けられた絶縁層34と、第2電極32と第2シールド電極33との間に設けられた絶縁層35と、を有する。つまり、電極構造3では、中心側から第2電極32、絶縁層35、第2シールド電極33、絶縁層34および第1電極31の順に位置し、互いが同心的に設けられている。
【0024】
このような構成の位置指示器1では、第2電極32を介して位置検出センサ9からの交流信号V1を受信し、信号処理回路6で交流信号V1から出力信号V2を生成し、第1電極31を介して出力信号V2を位置検出センサ9に送出する。
【0025】
筐体2は、棒状であり、略円筒形状を有する。筐体2は、金属材料で構成され、導電性を有する。本実施形態では、筐体2は、アルミニウムで構成されている。これにより、軽量で、高い強度を備えた筐体2となる。このような筐体2は、配線基板5のアース導体に電気的に接続されている。また、筐体2は、操作者が位置指示器1を把持した際に、操作者と接触する。そして、筐体2が操作者と接触することにより、配線基板5のアース導体がグランドに接続される。これにより、筐体2が第1シールド電極8として機能する。なお、筐体2の構成材料は、導電性を有していれば、特に限定されない。
【0026】
また、筐体2の先端部は、徐々に先細りするテーパ部23である。筐体2の先端部をテーパ部23とすることで、位置指示器1を位置検出センサ9の指示入力面に対して傾け易くなり、位置指示器1の操作性が向上する。そして、このテーパ部23内に電極構造3が設けられている。なお、テーパ部23の内周面には、電極構造3の最外周に位置する第1電極31との絶縁を図る絶縁層24が形成されている。本実施形態では、絶縁層24は、酸化アルミニウムで構成されている。絶縁層24は、例えば、テーパ部23の内周面をアルマイト処理することにより形成される。ただし、絶縁層24の構成材料および形成方法は、特に限定されない。
【0027】
なお、本実施形態では、テーパ部23がそれよりも基端側の部分と別体で構成されているが、これに限定されず、これらが一体形成されていてもよい。また、筐体2の形状、特に断面形状としては、円形に限定されず、例えば、三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形であってもよいし、楕円形、長円形等であってもよいし、その他異形であってもよい。
【0028】
このような筐体2には、バッテリー7が収容されている。バッテリー7は、信号処理回路6に電圧を供給する。また、筐体2の基端面にはバッテリー7と電気的に接続された充電用のレセプタクル28が設けられている。そして、レセプタクル28に充電用ケーブルを接続することにより、バッテリー7の充電が可能となる。なお、本実施形態のレセプタクル28は、USB Type-Cである。これにより、レセプタクル28が小型となり、位置指示器1の小型化を図ることができる。
【0029】
ただし、レセプタクル28としては、これに限定されない。また、レセプタクル28を介した有線給電による充電ではなく、非接触給電等の無線給電による充電であってもよい。また、充電式のバッテリー7に替えて、例えば、電池を信号処理回路6用の電源として用いてもよい。
【0030】
また、図5に示すように、筐体2には、スイッチ素子25および発光素子26が設けられている。スイッチ素子25は、筐体2外に露出し、筐体2に対してスライド可能な操作子251を有する。使用者により操作子251がスライド操作されることにより電源のON/OFFが切り替わる。電源ONとなれば、バッテリー7から信号処理回路6に電圧が印加されて信号処理回路6が駆動する。反対に、電源OFFとなれば、バッテリー7から信号処理回路6への電圧の印加が停止されて信号処理回路6の駆動が停止する。
【0031】
また、電源ONとなると発光素子26が点灯し、電源OFFとなると発光素子26が消灯する。筐体2には窓部27が設けられており、この窓部27を介して発光素子26からの光が筐体2外に出射される。このように、電源ON/OFFに呼応させて発光素子26を点灯/消灯することにより、電源ON/OFFを使用者により確実にかつ容易に報知することができる。なお、発光素子26としては、特に限定されないが、例えば、LED(Light Emitting Diode)を用いることができる。ただし、電源ON/OFFの方法や、その報知方法としては、特に限定されない。
【0032】
次に、テーパ部23内に設けられた電極構造3について説明する。前述したように、電極構造3は、棒状の第2電極32と、第2電極32を囲む筒状の第1電極31と、第1電極31と第2電極32との間に設けられた第2シールド電極33と、第1電極31と第2シールド電極33との間に設けられた絶縁層34と、第2電極32と第2シールド電極33との間に設けられた絶縁層35と、を有する。このような電極構造3は、筐体2の中心軸Jと同心的に設けられている。
【0033】
図6に示すように、第2電極32は、筐体2の中心軸J上に延在する棒状の中心電極である。また、第2電極32は、棒状の基部321と、基部321の先端側に設けられた接触部322と、を有する。基部321は、第1電極31の内側に設けられ、その先端部が第1電極31から突出している。基部321は、接触部322と信号処理回路6とを電気的に接続する配線の一部として機能する。
【0034】
また、接触部322は、第1電極31よりも先端側に位置し、位置指示器1の外に露出している。また、接触部322は、位置指示器1の最先端に位置し、位置検出センサ9との接触部を構成する。これにより、接触部322を介して位置検出センサ9からの交流信号V1を受信することができる。なお、電極構造3の各部は、接触部322とテーパ部23との接線Lの内側に収まるように設けられている。これにより、位置指示器1を位置検出センサ9の指示入力面に対して傾け易くなり、位置指示器1の操作性が向上する。
【0035】
また、接触部322は、基部321に対して拡径した略半球形状(ドーム形状)を有する。なお、接触部322の寸法は、特に限定されないが、例えば、直径を2mm~3mm程度、高さを1mm~1.5mm程度とすることができる。これにより、接触部322が適度なサイズとなる。そのため、位置指示器1は、優れた操作性を発揮することができる。
【0036】
このような構成の第2電極32は、例えば、アルミニウム、銅等の各種金属材料で構成されている。
【0037】
なお、第2電極32の構成は、特に限定されない。例えば、接触部322は、弾性を有する保護導体で覆われていてもよい。これにより、位置指示器1を位置検出センサ9に接触させたときに位置検出センサ9の指示入力面を傷付けないようにすると共に、指示入力面との接触面積を大きくすることができる。前記保護導体は、例えば、導電性の弾性ゴムで構成することができる。また、基部321を省略し、基部321の替わりに接触部322と信号処理回路6とを電気的に接続する配線を第1電極31内に配置してもよい。
【0038】
第1電極31は、筒状を有し、その先端部がテーパ部23から突出している。以下、テーパ部23から突出した部分を「突出部310」とも言う。このように、第1電極31の基端部を第1シールド電極8として機能するテーパ部23で覆うことにより、位置検出センサ9から交流信号V1を受信する受信位置Pinと位置指示器1から位置検出センサ9に出力信号V2を送出する送出位置Poutとのずれ量Dを小さく抑えることができる。そのため、優れた操作性を有する位置指示器1となる。以下、この原理について簡単に説明する。
【0039】
図7にテーパ部23が第1シールド電極8として機能しない場合を示す。この状態では、第1電極31の全体から位置検出センサ9に出力信号V2を送出するため、出力信号V2の電界強度のピークが接触部322に対して位置指示器1の基端側に大きくずれる。そのため、受信位置Pinと送出位置Poutとのずれ量Dが大きくなる。
【0040】
これに対して、本実施形態では、図8に示すように、テーパ部23(第1シールド電極8)によって、第1電極31の突出部310以外の部分と位置検出センサ9との容量性の結合を抑制することができる。そのため、実質的に突出部310だけから出力信号V2が位置検出センサ9に送出される。これにより、接触部322に対する出力信号V2の電界強度分布のピークの偏りが、図7の構成と比べて小さくなる。したがって、受信位置Pinと送出位置Poutとのずれ量Dを小さく抑えることができる。その結果、優れた操作性を有する位置指示器1となる。
【0041】
なお、突出部310の長さ(テーパ部23からの突出量)としては、特に限定されないが、例えば、0.5mm~2mm程度であること好ましい。これにより、出力信号V2の強度を十分に確保しつつ、ずれ量Dをより小さくすることができる。
【0042】
図6に示すように、第1電極31の内径は、接触部322の外径よりも大きい。そのため、接触部322は、電極構造3の平面視(中心軸Jに沿う方向からの平面視)で、第1電極31の内側に位置している。このような構成とすることにより、第1電極31と第2電極32との重なり合いが抑制され、これらの容量性の結合を抑制することができる。その結果、第1電極31と第2電極32とのクロストークが抑制され、交流信号V1や出力信号V2へのノイズの混入を抑制することができる。
【0043】
このような第1電極31は、例えば、アルミニウム、銅等の各種金属材料で構成されている。
【0044】
第2シールド電極33は、筒状であり、第1電極31と第2電極32との間に設けられている。また、第2シールド電極33は、配線基板5のアース導体に電気的に接続され、位置指示器1が操作者に把持されることによりグランドに接続される。したがって、第2シールド電極33によって、第1電極31と第2電極32との容量性の結合を抑制することができる。そのため、第1電極31と第2電極32とのクロストークが抑制され、交流信号V1や出力信号V2へのノイズの混入を効果的に抑制することができる。
【0045】
特に、本実施形態では、第2シールド電極33の先端部が第1電極31から突出し、接触部322と第1電極31との間にも第2シールド電極33が位置する。そのため、第1電極31と第2電極32との容量性の結合をより効果的に抑制することができる。したがって、第1電極31と第2電極32とのクロストークがより効果的に抑制され、交流信号V1や出力信号V2へのノイズの混入をより効果的に抑制することができる。
【0046】
なお、後述するように、絶縁層35は、基部321と接触部322との段差を埋めるように設けられている。そのため、絶縁層35の外周面に設けられた第2シールド電極33は、電極構造3の平面視で、接触部322の外側に位置する。したがって、第2シールド電極33を接触部322と第1電極31との間に位置させ易くなる。
【0047】
また、第2シールド電極33の先端部は、徐々に先細りするテーパ状である。これにより、位置指示器1を位置検出センサ9の指示入力面に対して傾け易くなり、位置指示器1の操作性が向上する。
【0048】
このような第2シールド電極33は、例えば、アルミニウム、銅等の各種金属材料で構成されている。
【0049】
絶縁層34は、筒状であり、第1電極31と第2シールド電極33との間に設けられている。このような絶縁層34により、第1電極31と第2シールド電極33とが絶縁されている。また、絶縁層35は、筒状であり、第2電極32と第2シールド電極33との間に設けられている。このような絶縁層35により、第2電極32と第2シールド電極33とが絶縁されている。また、絶縁層35は、第2電極32の基部321の全域を覆い、その先端部が第1電極31から突出している。また、絶縁層35は、接触部322を覆わない。つまり、接触部322は、絶縁層35から露出している。また、絶縁層35は、接触部322と基部321との間の段差とほぼ等しい厚みを有し、当該段差を埋めるようにして設けられている。そのため、前述したように、第2シールド電極33を接触部322と第1電極31との間に位置させ易くなる。
【0050】
このような絶縁層34、35の構成材料としては、特に限定されず、例えば、各種樹脂材料を用いることができる。
【0051】
次に、信号処理回路6について説明する。図9に示すように、信号処理回路6は、電源回路部61と、信号処理部62と、を有する。電源回路部61は、DC/DCコンバータ611を備えており、バッテリー7の電圧から電源電圧Vccを生成して信号処理部62に供給する。電源回路部61では、DC/DCコンバータ611とバッテリー7との間にスイッチ素子25が設けられている。また、DC/DCコンバータ611の出力端と配線基板5のアース導体との間には、抵抗612および発光素子26の直列回路が接続されている。
【0052】
このような電源回路部61では、スイッチ素子25が操作されて電源ONとなると、DC/DCコンバータ611にバッテリー7の電圧が供給されて電源電圧Vccが発生すると同時に発光素子26が点灯して電源ONが使用者に報知される。反対に、スイッチ素子25が操作されて電源OFFとなると、DC/DCコンバータ611へのバッテリー7の電圧の供給が停止されて電源電圧Vccの発生が停止すると同時に発光素子26が消灯して、電源OFFが使用者に報知される。ただし、電源回路部61の構成は、特に限定されない。
【0053】
信号処理部62は、信号増強処理回路を構成するものであり、位置検出センサ9からの交流信号V1を反転増幅させて出力信号V2を生成し、出力信号V2を位置検出センサ9へ送出する。このような信号処理部62は、増幅回路64と、反転増幅回路65と、を有する。
【0054】
増幅回路64は、オペアンプ641と、オペアンプ641の反転入力端子と出力端子との間に接続された抵抗642、643と、を有する。オペアンプ641の非反転入力端子には、第2電極32がカップリング用のコンデンサを挟んで接続されている。位置指示器1が位置検出センサ9上にあるときには、第2電極32と位置検出センサ9とが静電容量C2を介して結合し、位置検出センサ9を流れる交流信号V1が静電容量C2および第2電極32を介して電流信号として増幅回路64に入力される。そして、増幅回路64は、入力された交流信号V1を増幅して、反転増幅回路65に出力する。
【0055】
反転増幅回路65は、増幅回路64から出力された信号を反転増幅して第1電極31に出力する。反転増幅回路65は、オペアンプ651と、オペアンプ651の非反転入力端子と出力端子との間に接続された抵抗652、653と、を有する。また、オペアンプ651の反転入力端子にはカップリング用のコンデンサを挟んでオペアンプ641の出力端子が接続されている。
【0056】
以上、位置指示器1の構成について説明した。次に、位置指示器1の使用方法について説明する。位置指示器1が電源ONとなると、電源回路部61から信号処理部62に電源電圧Vccが供給され、信号処理部62が駆動する。この状態で、位置指示器1の接触部322を位置検出センサ9の位置指示面に接触させると、第2電極32と位置検出センサ9とが静電容量C2を介して結合し、位置検出センサ9を流れる交流信号V1が静電容量C2および第2電極32を介して信号処理部62に入力され、増幅回路64での振幅増幅、反転増幅回路65での位相反転増幅を経て出力信号V2となり、この出力信号V2が第1電極31および静電容量C3を介して位置検出センサ9に送出(帰還)される。
【0057】
前述したように、位置検出センサ9に送出される出力信号V2は、送信導体9Yに供給される交流信号V1とは逆相の増強された信号である。そのため、位置指示器1は、受信導体9Xから得られる受信信号レベルの変化をより増大させるように機能する。したがって、位置検出センサ9は、位置指示器1の接触位置を高感度で検出することができる。特に、位置指示器1では、筐体2が操作者に触れることにより、配線基板5のアース導体がグランドに接続されるため、位置検出センサ9での検出動作がより一層安定する。
【0058】
また、前述したように、信号処理回路6は、交流信号V1に対して所定の信号処理を行い、出力信号V2を生成する。このように、交流信号V1から出力信号V2を生成することにより、交流信号V1との相関性を有する出力信号V2の生成が容易となる。
【0059】
<第2実施形態>
図10は、第2実施形態に係る位置指示器の電極構造を示す断面図である。図11は、図10の電極構造を側方から見た平面図である。図12は、図10の電極構造を先端側から見た平面図である。図13は、位置指示器を位置検出センサに接触させた状態を示す図である。
【0060】
本実施形態の位置指示器1は、第1電極31の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態の位置指示器1と同様である。そのため、以下の説明では、本実施形態に関して、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関しては、その説明を省略する。また、本実施形態の各図において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0061】
図10ないし図12に示すように、本実施形態の位置指示器1では、第1電極31の突出部310に切り欠き部311が形成されている。切り欠き部311は、中心軸Jに沿って延在し、その先端が第1電極31の先端面に臨んでいる。つまり、切り欠き部311は、その先端部において第1電極31の先端面に開口している。このような切り欠き部311を有することにより、受信位置Pinと送出位置Poutとのずれ量Dを前述した第1実施形態よりもさらに小さく抑えることができる。そのため、優れた操作性を有する位置指示器1となる。以下、この原理について簡単に説明する。
【0062】
図13に示すように、切り欠き部311を下側に向けた姿勢(位置検出センサ9の入力画面と対向させた姿勢)で位置指示器1を使用すると、切り欠き部311からは出力信号V2が送出されないため、接触部322に対する出力信号V2の電界強度のピークの偏りが、前述した第1実施形態と比べてさらに小さくなる。したがって、受信位置Pinと送出位置Poutとのずれ量Dをより小さく抑えることができる。その結果、優れた操作性を有する位置指示器1となる。
【0063】
特に、本実施形態では、切り欠き部311は、第1電極31の先端面からテーパ部23と重なる部分まで延在している。つまり、切り欠き部311は、突出部310を縦断して設けられている。そのため、接触部322に対する出力信号V2の電界強度のピークの偏りがより小さくなり、受信位置Pinと送出位置Poutとのずれ量Dをより小さくすることができる。
【0064】
ここで、切り欠き部311の中心角θとしては、特に限定されないが、例えば、60°以上90°以下であることが好ましい。これにより、切り欠き部311を十分に大きくすることができ、上述の効果がより顕著となる。また、使用時に位置指示器1の姿勢が変化しても切り欠き部311が位置検出センサ9の入力画面に対向した状態を容易に維持することができる。また、切り欠き部311による第1電極31の過度な欠損が防止され、少ない電力で、第1電極31から送出される出力信号V2の強度を十分に確保することができる。
【0065】
なお、本実施形態では、切り欠き部311が矩形であるが、切り欠き部311の形状は、特に限定されない。例えば、切り欠き部311の幅(第1電極31の周方向の長さ)が基端側に向けて漸増するテーパ形状であってもよいし、反対に、幅が基端側に向けて漸減するテーパ状であってもよい。
【0066】
ところで、切り欠き部311の位置が分からないと、切り欠き部311が下側を向かない姿勢(位置検出センサ9の入力画面と対向しない姿勢)で位置指示器1を使用されるおそれがある。このような姿勢で位置指示器1を使用すると、上述の効果が十分に発揮されないおそれがある。そこで、本実施形態の位置指示器1では、図10および図11に示すように、切り欠き部311の位置を使用者に報知する目印部29が筐体2に設けられている。そのため、使用者は、目印部29に基づいて切り欠き部311の位置を確認し、そして、切り欠き部311が下側を向く姿勢で位置指示器1を使用することができる。
【0067】
目印部29の構成としては、その機能を発揮することができれば、特に限定されないが、本実施形態では、テーパ部23の切り欠き部311と対向する位置に表示したマーカ291で構成され、マーカ291を上側に向けた姿勢で使用するよう使用者に促す。これにより、位置指示器1は、より確実に、切り欠き部311を下側に向けた姿勢で使用されることになる。なお、スイッチ素子25や発光素子26を目印部29として用いてもよいし、また、位置指示器1が対象物に固定するためのクリップを有する場合には、このクリップを目印部29としてもよい。また、切り欠き部311を下側に向けた状態で位置指示器1が最も握り易くなるように、筐体2を形状付けしてもよい。
【0068】
以上のような第2実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0069】
<第3実施形態>
図14は、第3実施形態に係る位置指示器の電極構造を先端側から見た平面図である。図15ないし図17は、それぞれ、位置指示器を位置検出センサに接触させた状態を示す図である。
【0070】
本実施形態の位置指示器1は、第1電極31の構成が異なること以外は、前述した第2実施形態の位置指示器1と同様である。そのため、以下の説明では、本実施形態に関して、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関しては、その説明を省略する。また、本実施形態の各図において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0071】
図14に示すように、本実施形態の第1電極31は、複数の切り欠き部311を有する。また、複数の切り欠き部311は、第1電極31の周方向に沿って等間隔に設けられている。また、各切り欠き部311は、中心軸Jを介して第1電極31の他の切り欠き部311が形成されていない部分と対向する。つまり、切り欠き部311同士が中心軸Jを介して対向しないように構成されている。このような構成の位置指示器1によっても、図15に示すように、切り欠き部311を下側に向けた姿勢(位置検出センサ9の入力画面と対向させた姿勢)で位置指示器1を使用することで、受信位置Pinと送出位置Poutとのずれ量Dを小さくすることができる。
【0072】
なお、本実施形態では、3つの切り欠き部311が120°間隔で設けられている。このように、切り欠き部311の数を3つとすることにより、複数の切り欠き部311を等間隔に配置すれば、容易に、各切り欠き部311と中心軸Jを介して対向する箇所に第1電極31が存在する構成とすることができる。つまり、切り欠き部311同士が中心軸Jを介して対向しない構成とすることができる。ただし、切り欠き部311の数は、2つ以上であれば、特に限定されない。
【0073】
さらに、本実施形態の位置指示器1によれば、次の効果を発揮することもできる。例えば、図16に示すように、前述した第2実施形態の位置指示器1を位置検出センサ9の入力画面に対して垂直な姿勢とすると、出力信号V2の電界強度のピークが接触部322に対して切り欠き部311と反対側にずれて分布する。そのため、受信位置Pinと送出位置Poutとに僅かなずれ量Dが生じる。
【0074】
これに対して、図17に示すように、本実施形態の位置指示器1では、切り欠き部311が第1電極31の周方向に等間隔で配置されていることから、接触部322に対する出力信号V2の電界強度のピークの偏りが実質的に生じない。そのため、受信位置Pinと送出位置Poutとのずれ量Dをより小さく、実質的にゼロにすることができる。このように、本実施形態の位置指示器1によれば、位置検出センサ9の入力画面に対して立てた姿勢での、受信位置Pinと送出位置Poutとのずれ量Dをより小さくすることができる。
【0075】
ここで、各切り欠き部311の中心角θとしては、特に限定されず、切り欠き部311の数によっても異なるが、本実施形態のように切り欠き部311が3つの場合は、例えば、45°以上60°以下であることが好ましい。これにより、より確実に、切り欠き部311同士が中心軸Jを介して対向しない構成とすることができる。また、その上で、各切り欠き部311を十分に大きくすることができ、上述の効果をより確実に発揮することができる。また、使用時に位置指示器1の姿勢が変化しても切り欠き部311が位置検出センサ9の入力画面に対向した状態を容易に維持することができる。また、切り欠き部311による第1電極31の過度な欠損が防止され、少ない電力で、第1電極31から送出される出力信号V2の強度を十分に確保することができる。
【0076】
以上のような第3実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0077】
以上、本発明の位置指示器を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1…位置指示器 2…筐体 23…テーパ部 24…絶縁層 25…スイッチ素子 251…操作子 26…発光素子 27…窓部 28…レセプタクル 29…目印部 291…マーカ 3…電極構造 31…第1電極 310…突出部 311…切り欠き部 32…第2電極 321…基部 322…接触部 33…第2シールド電極 34,35…絶縁層 5…配線基板 6…信号処理回路 61…電源回路部 611…DC/DCコンバータ 612…抵抗 62…信号処理部 64…増幅回路 641…オペアンプ 642…抵抗 643…抵抗 65…反転増幅回路 651…オペアンプ 652…抵抗 653…抵抗 7…バッテリー 8…第1シールド電極 9…位置検出センサ 9X,9X~9X64…受信導体 9Y,9Y~9Y64…送信導体 90…センサ部 91…送信部 92…受信部 C1,C2,C3…静電容量 CP…クロスポイント D…ずれ量 J…中心軸 L…接線 Pin…受信位置 Pout…送出位置 V1…交流信号 V2…出力信号 Vcc…電源電圧 θ…中心角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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図17