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特開2024-129045樹脂組成物、化合物(Z)、基材(i)、光学フィルターおよびその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129045
(43)【公開日】2024-09-26
(54)【発明の名称】樹脂組成物、化合物(Z)、基材(i)、光学フィルターおよびその用途
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20240918BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20240918BHJP
   C07D 311/58 20060101ALI20240918BHJP
   C07D 311/60 20060101ALI20240918BHJP
   C07D 311/92 20060101ALI20240918BHJP
   C07D 311/76 20060101ALI20240918BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20240918BHJP
   G02B 5/28 20060101ALI20240918BHJP
   G01J 1/04 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K5/00
C07D311/58 CSP
C07D311/60
C07D311/92 101
C07D311/76
G02B5/22
G02B5/28
G01J1/04 B
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024099258
(22)【出願日】2024-06-20
(62)【分割の表示】P 2021018596の分割
【原出願日】2021-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2020028548
(32)【優先日】2020-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020030349
(32)【優先日】2020-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川部 泰典
(72)【発明者】
【氏名】長屋 勝也
(72)【発明者】
【氏名】内田 洋介
(72)【発明者】
【氏名】大崎 仁視
(72)【発明者】
【氏名】畠中 創
(72)【発明者】
【氏名】下河 広幸
(72)【発明者】
【氏名】面手 真人
(72)【発明者】
【氏名】大橋 幸恵
(57)【要約】      (修正有)
【課題】波長700~750nm付近、または、波長720~900nm付近に吸収極大を有し、可視光域の吸光度に対する赤外線域の吸光度の比が大きく、耐光性(耐久性)に優れる樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】樹脂と式(I)で表される化合物とを含有する樹脂組成物。
Cn+An-(I)[式(I)中、Cn+は式(II)で表される一価のカチオン、An-は一価のアニオン。]

[Aは置換基を有してもよいベンゾピリリウムカチオン塩の構造、Bは置換基を有してもよいベンゾピランの構造を表す。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と、下記式(I)で表される化合物(Z)とを含有する樹脂組成物。
Cn+An- (I)
[式(I)中、Cn+は下記式(II)で表される一価のカチオンであり、An-は一価のアニオンである。]
【化1】
[式(II)中、
ユニットAは、下記式(A-I)であり、
ユニットBは、下記式(B-I)であり、
A~YEはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、ニトロ基、-NRgh基、アミド基、イミド基、シアノ基、シリル基、-Q1、-N=N-Q1、-S-Q2、-SSQ2、または、-SO23であり、
AとYC、YBとYD、YCとYEは互いに結合して、炭素数6~14の芳香族炭化水素基、窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子を少なくとも一つ含んでもよい4~7員の脂環基、または、窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子を少なくとも一つ含む、炭素数3~14の複素芳香族基を形成していてもよく、これらの芳香族炭化水素基、脂環基および複素芳香族基は、水酸基、炭素数1~9の脂肪族炭化水素基またはハロゲン原子を有してもよく、また該脂環基は、=Oを有していてもよく、
gおよびRhはそれぞれ独立に、水素原子、-C(O)Ri基または下記La~Lhのいずれかであり、Q1は独立に、下記La~Lhのいずれかであり、Q2は独立に、水素原子または下記La~Lhのいずれかであり、Q3は、水酸基または下記La~Lhのいずれかであり、Riは下記La~Lhのいずれかである。]
【化2】
[式(A-I)中の-*は、前記式(II)のYAが結合する炭素と単結合することを示し、
式(B-I)中の=**は、前記式(II)のYEが結合する炭素と二重結合することを示し、
式(A-I)および(B-I)中、
Xは独立に、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子または-NR8-であり、
1~R3およびR5~R6はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基、-NRgh基、-SRi基、-SO2i基、-OSO2i基、-C(O)Ri基または下記La~Lhのいずれかであり、
4はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基、-SRi基、-SO2i基、-OSO2i基、-C(O)Ri基または下記La~Lhのいずれかであり、
隣接するR1~R6は互いに結合して、炭素数6~14の芳香族炭化水素基、窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子を少なくとも一つ含んでもよい4~7員の脂環基、または、窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子を少なくとも一つ含む、炭素数3~14の複素芳香族基を形成していてもよく、これらの芳香族炭化水素基、脂環基および複素芳香族基は、水酸基、炭素数1~9の脂肪族炭化水素基またはハロゲン原子を有してもよく、また該脂環基は、=Oを有していてもよく、
8は独立に、水素原子、ハロゲン原子、-C(O)Ri基、下記La~Lhのいずれかであり、
gおよびRhはそれぞれ独立に、水素原子、-C(O)Ri基または下記La~Lhのいずれかであり、
iは独立に、下記La~Lhのいずれかであり、
(La):炭素数1~15の脂肪族炭化水素基
(Lb):炭素数1~15のハロゲン置換アルキル基
(Lc):置換基Kを有してもよい炭素数3~14の脂環式炭化水素基
(Ld):置換基Kを有してもよい炭素数6~14の芳香族炭化水素基
(Le):置換基Kを有してもよい炭素数3~14の複素環基
(Lf):-OR(Rは置換基Lを有してもよい炭素数1~12の炭化水素基)
(Lg):置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアシル基
(Lh):置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアルコキシカルボニル基
前記置換基Kは、前記La~Lbより選ばれる少なくとも一種であり、前記置換基Lは、前記La~Lfより選ばれる少なくとも一種である。]
【請求項2】
前記化合物(Z)が下記要件(A)を満たす、請求項1に記載の樹脂組成物。
要件(A):前記化合物(Z)をジクロロメタンに溶解させた溶液を用いて測定される透過スペクトル(但し、該透過スペクトルは、吸収極大波長における透過率が10%となるスペクトルである。)において、波長430~580nmにおける透過率の平均値が93%以上である
【請求項3】
前記R1~R6の少なくとも1つが前記La、LcまたはLdである、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記化合物(Z)が下記要件(B-1)を満たす、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
要件(B-1):前記化合物(Z)をジクロロメタンに溶解させた溶液を用いて測定される吸収スペクトルにおいて、波長720~900nmの範囲に極大値を有する
【請求項5】
前記化合物(Z)が下記要件(B-2)を満たす、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
要件(B-2):前記化合物(Z)をジクロロメタンに溶解させた溶液を用いて測定される吸収スペクトルにおいて、波長700~750nmの範囲に極大値を有する
【請求項6】
前記樹脂が、環状(ポリ)オレフィン系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリパラフェニレン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、フッ素化芳香族ポリマー系樹脂、(変性)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、アリルエステル系硬化型樹脂、シルセスキオキサン系紫外線硬化型樹脂、アクリル系紫外線硬化型樹脂およびビニル系紫外線硬化型樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成された化合物(Z)を含有する基材(i)。
【請求項8】
前記基材(i)が、
前記化合物(Z)を含有する樹脂層からなる基材、
2層以上の樹脂層を含む基材であって、該2層以上の樹脂層のうち少なくとも1つが前記化合物(Z)を含有する樹脂層である基材、または、
ガラス支持体と前記化合物(Z)を含有する樹脂層とを含む基材である、
請求項7に記載の基材(i)。
【請求項9】
請求項7または8に記載の基材(i)と、誘電体多層膜とを有する、光学フィルター。
【請求項10】
固体撮像装置用である、請求項9に記載の光学フィルター。
【請求項11】
光学センサー装置用である、請求項9に記載の光学フィルター。
【請求項12】
請求項9に記載の光学フィルターを具備する固体撮像装置。
【請求項13】
請求項9に記載の光学フィルターを具備する光学センサー装置。
【請求項14】
下記式(III)で表される化合物(Z)。
Cn+An- (III)
[式(III)中、Cn+は下記式(IV)で表される一価のカチオンであり、An-は一価のアニオンである。]
【化3】
[式(IV)中、
ユニットAは、下記式(A-I)であり、
ユニットBは、下記式(B-I)であり、
A~YEはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、ニトロ基、-NRgh基、アミド基、イミド基、シアノ基、シリル基、-Q1、-N=N-Q1、-S-Q2、-SSQ2、または、-SO23であり、
AとYC、YBとYD、YCとYEは互いに結合して、炭素数6~14の芳香族炭化水素基、窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子を少なくとも一つ含んでもよい4~7員の脂環基、または、窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子を少なくとも一つ含む、炭素数3~14の複素芳香族基を形成していてもよく、これらの芳香族炭化水素基、脂環基および複素芳香族基は、水酸基、炭素数1~9の脂肪族炭化水素基またはハロゲン原子を有してもよく、また該脂環基は、=Oを有していてもよく、
gおよびRhはそれぞれ独立に、水素原子、-C(O)Ri基または下記La~Lhのいずれかであり、Q1は独立に、下記La~Lhのいずれかであり、Q2は独立に、水素原子または下記La~Lhのいずれかであり、Q3は、水酸基または下記La~Lhのいずれかであり、Riは下記La~Lhのいずれかである。]
【化4】
[式(A-I)中の-*は、前記式(IV)のYAが結合する炭素と単結合することを示し、
式(B-I)中の=**は、前記式(IV)のYEが結合する炭素と二重結合することを示し、
式(A-I)および(B-I)中、
Xは独立に、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子または-NR8-であり、
1~R3およびR5~R6はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基、-NRgh基、-SRi基、-SO2i基、-OSO2i基、-C(O)Ri基または下記La~Lhのいずれかであり、
4はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基、-SRi基、-SO2i基、-OSO2i基、-C(O)Ri基または下記La~Lhのいずれかであり、
隣接するR1~R6は互いに結合して、炭素数6~14の芳香族炭化水素基、窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子を少なくとも一つ含んでもよい4~7員の脂環基、または、窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子を少なくとも一つ含む、炭素数3~14の複素芳香族基を形成していてもよく、これらの芳香族炭化水素基、脂環基および複素芳香族基は、水酸基、炭素数1~9の脂肪族炭化水素基またはハロゲン原子を有してもよく、また該脂環基は、=Oを有していてもよく、
8は独立に、水素原子、ハロゲン原子、-C(O)Ri基、下記La~Lhのいずれかであり、
gおよびRhはそれぞれ独立に、水素原子、-C(O)Ri基または下記La~Lhのいずれかであり、
iは独立に、下記La~Lhのいずれかであり、
(La):炭素数1~15の脂肪族炭化水素基
(Lb):炭素数1~15のハロゲン置換アルキル基
(Lc):置換基Kを有してもよい炭素数3~14の脂環式炭化水素基
(Ld):置換基Kを有してもよい炭素数6~14の芳香族炭化水素基
(Le):置換基Kを有してもよい炭素数3~14の複素環基
(Lf):-OR(Rは置換基Lを有してもよい炭素数1~12の炭化水素基)
(Lg):置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアシル基
(Lh):置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアルコキシカルボニル基
前記置換基Kは、前記La~Lbより選ばれる少なくとも一種であり、前記置換基Lは、前記La~Lfより選ばれる少なくとも一種である。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、化合物(Z)、基材(i)、光学フィルター、ならびに、該光学フィルターを用いた固体撮像装置および光学センサー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、カメラ機能付き携帯電話などの固体撮像装置には、カラー画像の固体撮像素子であるCCDやCMOSイメージセンサーが使用されている。これら固体撮像素子では、その受光部において人間の目では感知できない近赤外線に感度を有するシリコンフォトダイオード等が使用されている。また、光学センサー装置でも、シリコンフォトダイオード等が使用されている。例えば、固体撮像素子では、人間の目で見て自然な色合いにさせる視感度補正を行うことが必要であり、特定の波長領域の光線を選択的に透過もしくはカットする光学フィルター(例えば、近赤外線カットフィルター)を用いることが多い。
【0003】
このような近赤外線カットフィルターとしては、従来から、各種方法で製造されたものが使用されている。例えば、基材として樹脂を用い、樹脂中に近赤外線吸収色素を含有させた近赤外線カットフィルターが知られている(例えば特許文献1参照)。しかしながら、特許文献1に記載された近赤外線カットフィルターは、近赤外線吸収特性が必ずしも充分ではない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-303130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記近赤外線吸収色素としては、従来、ポリメチン系、スクアリリウム系、ポルフィリン系、ジチオール金属錯体系、フタロシアニン系、ジイモニウム系などの色素が使用されているが、中でもポリメチン系、スクアリリウム系等の色素は、熱に対して十分な耐性を有することから多用されている。
【0006】
しかしながら、従来用いられてきたこれらの色素は、
吸収極大波長が長波長域にあるため、波長700~750nm付近、または、波長720~900nm付近に吸収極大を有する化合物が求められていた点、
可視光域の吸光度に対する赤外線域の吸光度の比が小さい点、
耐光性(耐久性)が十分ではない点、
の少なくともいずれかの点で、改良の余地があった。
【0007】
また、従来の近赤外線カットフィルターは、該フィルター由来の反射光がフレアやゴーストなどとして、カメラ画像などの画像に悪影響を与えることがあり、特に、近赤外線カットフィルターの反射帯域と、センサーが光電変換可能な波長帯域とが重なった場合、前記悪影響がより顕著になる場合がある。
【0008】
本発明は以上のことに鑑みてなされたものであり、波長700~750nm付近、または、波長720~900nm付近に吸収極大を有し、可視光域の吸光度に対する赤外線域の吸光度の比が大きく、耐光性(耐久性)に優れる樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、下記構成例によれば、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明の構成例を以下に示す。
なお、本発明において、数値範囲を表す「A~B」等の記載は、「A以上、B以下」と同義であり、AおよびBをその数値範囲内に含む。また、本発明において、波長A~Bnmとは、波長Anm以上、波長Bnm以下の波長領域における波長分解能1nmにおける特性を表す。
【0010】
[1] 樹脂と、下記式(I)で表される化合物(Z)とを含有する樹脂組成物。
Cn+An- (I)
[式(I)中、Cn+は下記式(II)で表される一価のカチオンであり、An-は一価のアニオンである。]
【0011】
【化1】
[式(II)中、
ユニットAは、下記式(A-I)~(A-III)のいずれかであり、
ユニットBは、下記式(B-I)~(B-III)のいずれかであり、
A~YEはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、ニトロ基、-NRgh基、アミド基、イミド基、シアノ基、シリル基、-Q1、-N=N-Q1、-S-Q2、-SSQ2、または、-SO23であり、
AとYC、YBとYD、YCとYEは互いに結合して、炭素数6~14の芳香族炭化水素基、窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子を少なくとも一つ含んでもよい4~7員の脂環基、または、窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子を少なくとも一つ含む、炭素数3~14の複素芳香族基を形成していてもよく、これらの芳香族炭化水素基、脂環基および複素芳香族基は、水酸基、炭素数1~9の脂肪族炭化水素基またはハロゲン原子を有してもよく、また該脂環基は、=Oを有していてもよく、
Aと下記式(A-III)におけるR1またはR5、YEと下記式(B-III)におけるR5またはR1は、互いに結合して、窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子を少なくとも一つ含んでもよい4~7員の脂環基を形成してもよく、
gおよびRhはそれぞれ独立に、水素原子、-C(O)Ri基または下記La~Lhのいずれかであり、Q1は独立に、下記La~Lhのいずれかであり、Q2は独立に、水素原子または下記La~Lhのいずれかであり、Q3は、水酸基または下記La~Lhのいずれかであり、Riは下記La~Lhのいずれかである。]
【0012】
【化2】
[式(A-I)~(A-III)中の-*は、前記式(II)のYAが結合する炭素と単結合することを示し、
式(B-I)~(B-III)中の=**は、前記式(II)のYEが結合する炭素と二重結合することを示し、
式(A-I)~(B-III)中、
Xは独立に、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子または-NR8-であり、
1~R6はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基、-NRgh基、-SRi基、-SO2i基、-OSO2i基、-C(O)Ri基または下記La~Lhのいずれかであり、
隣接するR1~R6は互いに結合して、炭素数6~14の芳香族炭化水素基、窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子を少なくとも一つ含んでもよい4~7員の脂環基、または、窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子を少なくとも一つ含む、炭素数3~14の複素芳香族基を形成していてもよく、これらの芳香族炭化水素基、脂環基および複素芳香族基は、水酸基、炭素数1~9の脂肪族炭化水素基またはハロゲン原子を有してもよく、また該脂環基は、=Oを有していてもよく、
8は独立に、水素原子、ハロゲン原子、-C(O)Ri基、下記La~Lhのいずれかであり、
gおよびRhはそれぞれ独立に、水素原子、-C(O)Ri基または下記La~Lhのいずれかであり、
iは独立に、下記La~Lhのいずれかであり、
(La):炭素数1~15の脂肪族炭化水素基
(Lb):炭素数1~15のハロゲン置換アルキル基
(Lc):置換基Kを有してもよい炭素数3~14の脂環式炭化水素基
(Ld):置換基Kを有してもよい炭素数6~14の芳香族炭化水素基
(Le):置換基Kを有してもよい炭素数3~14の複素環基
(Lf):-OR(Rは置換基Lを有してもよい炭素数1~12の炭化水素基)
(Lg):置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアシル基
(Lh):置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアルコキシカルボニル基
前記置換基Kは、前記La~Lbより選ばれる少なくとも一種であり、前記置換基Lは、前記La~Lfより選ばれる少なくとも一種である。]
【0013】
[2] 前記化合物(Z)が下記要件(A)を満たす、[1]に記載の樹脂組成物。
要件(A):前記化合物(Z)をジクロロメタンに溶解させた溶液を用いて測定される透過スペクトル(但し、該透過スペクトルは、吸収極大波長における透過率が10%となるスペクトルである。)において、波長430~580nmにおける透過率の平均値が93%以上である
【0014】
[3] 前記R1~R6の少なくとも1つが前記La、LcまたはLdである、[1]または[2]に記載の樹脂組成物。
【0015】
[4] 前記化合物(Z)が下記要件(B-1)を満たす、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
要件(B-1):前記化合物(Z)をジクロロメタンに溶解させた溶液を用いて測定される吸収スペクトルにおいて、波長720~900nmの範囲に極大値を有する
【0016】
[5] 前記化合物(Z)が下記要件(B-2)を満たす、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
要件(B-2):前記化合物(Z)をジクロロメタンに溶解させた溶液を用いて測定される吸収スペクトルにおいて、波長700~750nmの範囲に極大値を有する
【0017】
[6] 前記樹脂が、環状(ポリ)オレフィン系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリパラフェニレン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、フッ素化芳香族ポリマー系樹脂、(変性)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、アリルエステル系硬化型樹脂、シルセスキオキサン系紫外線硬化型樹脂、アクリル系紫外線硬化型樹脂およびビニル系紫外線硬化型樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0018】
[7] [1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物から形成された化合物(Z)を含有する基材(i)。
【0019】
[8] 前記基材(i)が、
前記化合物(Z)を含有する樹脂層からなる基材、
2層以上の樹脂層を含む基材であって、該2層以上の樹脂層のうち少なくとも1つが前記化合物(Z)を含有する樹脂層である基材、または、
ガラス支持体と前記化合物(Z)を含有する樹脂層とを含む基材である、
[7]に記載の基材(i)。
【0020】
[9] [7]または[8]に記載の基材(i)と、誘電体多層膜とを有する、光学フィルター。
[10] 固体撮像装置用である、[9]に記載の光学フィルター。
[11] 光学センサー装置用である、[9]に記載の光学フィルター。
【0021】
[12] [9]に記載の光学フィルターを具備する固体撮像装置。
[13] [9]に記載の光学フィルターを具備する光学センサー装置。
【0022】
[14] 下記式(III)で表される化合物(Z)。
Cn+An- (III)
[式(III)中、Cn+は下記式(IV)で表される一価のカチオンであり、An-は一価のアニオンである。]
【0023】
【化3】
[式(IV)中、
ユニットAは、下記式(A-I)~(A-III)のいずれかであり、
ユニットBは、下記式(B-I)~(B-III)のいずれかであり、
A~YEはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、ニトロ基、-NRgh基、アミド基、イミド基、シアノ基、シリル基、-Q1、-N=N-Q1、-S-Q2、-SSQ2、または、-SO23であり、
AとYC、YBとYD、YCとYEは互いに結合して、炭素数6~14の芳香族炭化水素基、窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子を少なくとも一つ含んでもよい4~7員の脂環基、または、窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子を少なくとも一つ含む、炭素数3~14の複素芳香族基を形成していてもよく、これらの芳香族炭化水素基、脂環基および複素芳香族基は、水酸基、炭素数1~9の脂肪族炭化水素基またはハロゲン原子を有してもよく、また該脂環基は、=Oを有していてもよく、
Aと下記式(A-III)におけるR1またはR5、YEと下記式(B-III)におけるR5またはR1は、互いに結合して、窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子を少なくとも一つ含んでもよい4~7員の脂環基を形成してもよく、
gおよびRhはそれぞれ独立に、水素原子、-C(O)Ri基または下記La~Lhのいずれかであり、Q1は独立に、下記La~Lhのいずれかであり、Q2は独立に、水素原子または下記La~Lhのいずれかであり、Q3は、水酸基または下記La~Lhのいずれかであり、Riは下記La~Lhのいずれかである。]
【0024】
【化4】
[式(A-I)~(A-III)中の-*は、前記式(II)のYAが結合する炭素と単結合することを示し、
式(B-I)~(B-III)中の=**は、前記式(II)のYEが結合する炭素と二重結合することを示し、
式(A-I)~(B-III)中、
Xは独立に、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子または-NR8-であり、
1~R6はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基、-NRgh基、-SRi基、-SO2i基、-OSO2i基、-C(O)Ri基または下記La~Lhのいずれかであり、
隣接するR1~R6は互いに結合して、炭素数6~14の芳香族炭化水素基、窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子を少なくとも一つ含んでもよい4~7員の脂環基、または、窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子を少なくとも一つ含む、炭素数3~14の複素芳香族基を形成していてもよく、これらの芳香族炭化水素基、脂環基および複素芳香族基は、水酸基、炭素数1~9の脂肪族炭化水素基またはハロゲン原子を有してもよく、また該脂環基は、=Oを有していてもよく、
8は独立に、水素原子、ハロゲン原子、-C(O)Ri基、下記La~Lhのいずれかであり、
gおよびRhはそれぞれ独立に、水素原子、-C(O)Ri基または下記La~Lhのいずれかであり、
iは独立に、下記La~Lhのいずれかであり、
(La):炭素数1~15の脂肪族炭化水素基
(Lb):炭素数1~15のハロゲン置換アルキル基
(Lc):置換基Kを有してもよい炭素数3~14の脂環式炭化水素基
(Ld):置換基Kを有してもよい炭素数6~14の芳香族炭化水素基
(Le):置換基Kを有してもよい炭素数3~14の複素環基
(Lf):-OR(Rは置換基Lを有してもよい炭素数1~12の炭化水素基)
(Lg):置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアシル基
(Lh):置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアルコキシカルボニル基
前記置換基Kは、前記La~Lbより選ばれる少なくとも一種であり、前記置換基Lは、前記La~Lfより選ばれる少なくとも一種である。]
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、波長700~750nm付近、または、波長720~900nm付近に吸収極大を有し、可視光域の吸光度に対する赤外線域の吸光度の比が大きく、熱や光に対して十分な耐性を有する樹脂組成物を提供することができる。さらに、本発明によれば、これらの特性を有する、特に、赤外域の光を十分に遮蔽しつつ、可視光域の光を高い割合で透過可能な光学フィルターを提供することができる。このため、本発明によれば、近赤外線カットフィルター(NIR-CF)のみならず、可視光-近赤外線選択透過フィルター(DBPF)や近赤外線透過フィルター(IRPF)などの光学フィルターをも容易に作製することができる。
なお、本発明において、熱や光に対して十分な耐性を有するとは、熱をかけたり、光を照射した前後において、光学特性が大きく変化しないことをいう。
【0026】
前述の通り、本発明によれば、前記特性を有する光学フィルターを提供することができるため、波長700~750nm付近、または、波長720~900nm付近の光の反射光を抑制することができ、フレアやゴーストの少ない良好な画像を与えることができる光学フィルターを容易に得ることができる。また、前記光学フィルターが誘電体多層膜を有するフィルターである場合の、該誘電体多層膜による入射角依存性を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施例20で得られた基材の分光透過率スペクトルである。
図2】実施例28で得られた基材の分光透過率スペクトルである。
図3】実施例20で得られた光学フィルターの分光透過率スペクトルである。
図4】実施例28で得られた光学フィルターの分光透過率スペクトルである。
図5】実施例36で得られた基材の分光透過率スペクトルである。
図6】実施例36で得られた光学フィルターの分光透過率スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
≪樹脂組成物≫
本発明に係る樹脂組成物(以下「本組成物」ともいう。)は、樹脂と前記化合物(Z)とを含んでいれば特に制限されない。
このような樹脂組成物の形態としては、例えば、化合物(Z)を含む樹脂製フィルム(樹脂層、樹脂製基板);支持体(例:樹脂製支持体、ガラス支持体)上に形成された化合物(Z)を含む樹脂膜(樹脂層);樹脂、化合物(Z)および溶剤を含む液状組成物が挙げられる。
本組成物は、2種以上の樹脂を含んでいてもよく、2種以上の化合物(Z)を含んでいてもよい。
【0029】
<化合物(Z)>
化合物(Z)は、下記式(I)で表される化合物である。
該化合物(Z)は、波長700~750nm付近、または、波長720~900nm付近における吸収極大での高い近赤外線カット性能と高い可視光透過性能とを有し、光学特性に優れ、熱や光に対して十分な耐性を有する。
Cn+An- (I)
[式(I)中、Cn+は下記式(II)で表される一価のカチオンであり、An-は一価のアニオンである。]
【0030】
【化5】
[式(II)中、
ユニットAは、下記式(A-I)~(A-III)のいずれかであり、
ユニットBは、下記式(B-I)~(B-III)のいずれかであり、
A~YEはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、ニトロ基、-NRgh基、アミド基、イミド基、シアノ基、シリル基、-Q1、-N=N-Q1、-S-Q2、-SSQ2、または、-SO23であり、
AとYC、YBとYD、YCとYEは互いに結合して、炭素数6~14の芳香族炭化水素基、窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子を少なくとも一つ含んでもよい4~7員の脂環基、または、窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子を少なくとも一つ含む、炭素数3~14の複素芳香族基を形成していてもよく、これらの芳香族炭化水素基、脂環基および複素芳香族基は、水酸基、炭素数1~9の脂肪族炭化水素基またはハロゲン原子を有してもよく、また該脂環基は、=Oを有していてもよく、
Aと下記式(A-III)におけるR1またはR5、YEと下記式(B-III)におけるR5またはR1は、互いに結合して、窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子を少なくとも一つ含んでもよい4~7員の脂環基を形成してもよく、
gおよびRhはそれぞれ独立に、水素原子、-C(O)Ri基または下記La~Lhのいずれかであり、Q1は独立に、下記La~Lhのいずれかであり、Q2は独立に、水素原子または下記La~Lhのいずれかであり、Q3は、水酸基または下記La~Lhのいずれかであり、Riは下記La~Lhのいずれかである。]
【0031】
【化6】
[式(A-I)~(A-III)中の-*は、前記式(II)のYAが結合する炭素と単結合することを示し、
式(B-I)~(B-III)中の=**は、前記式(II)のYEが結合する炭素と二重結合することを示し、
式(A-I)~(B-III)中、
Xは独立に、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子または-NR8-であり、
1~R6はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基、-NRgh基、-SRi基、-SO2i基、-OSO2i基、-C(O)Ri基または下記La~Lhのいずれかであり、
隣接するR1~R6は互いに結合して、炭素数6~14の芳香族炭化水素基、窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子を少なくとも一つ含んでもよい4~7員の脂環基、または、窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子を少なくとも一つ含む、炭素数3~14の複素芳香族基を形成していてもよく、これらの芳香族炭化水素基、脂環基および複素芳香族基は、水酸基、炭素数1~9の脂肪族炭化水素基またはハロゲン原子を有してもよく、また該脂環基は、=Oを有していてもよく、
8は独立に、水素原子、ハロゲン原子、-C(O)Ri基、下記La~Lhのいずれかであり、
gおよびRhはそれぞれ独立に、水素原子、-C(O)Ri基または下記La~Lhのいずれかであり、
iは独立に、下記La~Lhのいずれかであり、
(La):炭素数1~15の脂肪族炭化水素基
(Lb):炭素数1~15のハロゲン置換アルキル基
(Lc):置換基Kを有してもよい炭素数3~14の脂環式炭化水素基
(Ld):置換基Kを有してもよい炭素数6~14の芳香族炭化水素基
(Le):置換基Kを有してもよい炭素数3~14の複素環基
(Lf):-OR(Rは置換基Lを有してもよい炭素数1~12の炭化水素基)
(Lg):置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアシル基
(Lh):置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアルコキシカルボニル基
前記置換基Kは、前記La~Lbより選ばれる少なくとも一種であり、前記置換基Lは、前記La~Lfより選ばれる少なくとも一種である。]
【0032】
また、本発明に係る化合物(Z)は、下記式(III)で表される化合物である。
Cn+An- (III)
[式(III)中、Cn+は下記式(IV)で表される一価のカチオンであり、An-は一価のアニオンである。]
【0033】
【化7】
[式(IV)中、
ユニットAは、下記式(A-I)~(A-III)のいずれかであり、
ユニットBは、下記式(B-I)~(B-III)のいずれかであり、
A~YEはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、ニトロ基、-NRgh基、アミド基、イミド基、シアノ基、シリル基、-Q1、-N=N-Q1、-S-Q2、-SSQ2、または、-SO23であり、
AとYC、YBとYD、YCとYEは互いに結合して、炭素数6~14の芳香族炭化水素基、窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子を少なくとも一つ含んでもよい4~7員の脂環基、または、窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子を少なくとも一つ含む、炭素数3~14の複素芳香族基を形成していてもよく、これらの芳香族炭化水素基、脂環基および複素芳香族基は、水酸基、炭素数1~9の脂肪族炭化水素基またはハロゲン原子を有してもよく、また該脂環基は、=Oを有していてもよく、
Aと下記式(A-III)におけるR1またはR5、YEと下記式(B-III)におけるR5またはR1は、互いに結合して、窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子を少なくとも一つ含んでもよい4~7員の脂環基を形成してもよく、
gおよびRhはそれぞれ独立に、水素原子、-C(O)Ri基または下記La~Lhのいずれかであり、Q1は独立に、下記La~Lhのいずれかであり、Q2は独立に、水素原子または下記La~Lhのいずれかであり、Q3は、水酸基または下記La~Lhのいずれかであり、Riは下記La~Lhのいずれかである。]
【0034】
【化8】
[式(A-I)~(A-III)中の-*は、前記式(II)のYAが結合する炭素と単結合することを示し、
式(B-I)~(B-III)中の=**は、前記式(II)のYEが結合する炭素と二重結合することを示し、
式(A-I)~(B-III)中、
Xは独立に、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子または-NR8-であり、
1~R6はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基、-NRgh基、-SRi基、-SO2i基、-OSO2i基、-C(O)Ri基または下記La~Lhのいずれかであり、
隣接するR1~R6は互いに結合して、炭素数6~14の芳香族炭化水素基、窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子を少なくとも一つ含んでもよい4~7員の脂環基、または、窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子を少なくとも一つ含む、炭素数3~14の複素芳香族基を形成していてもよく、これらの芳香族炭化水素基、脂環基および複素芳香族基は、水酸基、炭素数1~9の脂肪族炭化水素基またはハロゲン原子を有してもよく、また該脂環基は、=Oを有していてもよく、
8は独立に、水素原子、ハロゲン原子、-C(O)Ri基、下記La~Lhのいずれかであり、
gおよびRhはそれぞれ独立に、水素原子、-C(O)Ri基または下記La~Lhのいずれかであり、
iは独立に、下記La~Lhのいずれかであり、
(La):炭素数1~15の脂肪族炭化水素基
(Lb):炭素数1~15のハロゲン置換アルキル基
(Lc):置換基Kを有してもよい炭素数3~14の脂環式炭化水素基
(Ld):置換基Kを有してもよい炭素数6~14の芳香族炭化水素基
(Le):置換基Kを有してもよい炭素数3~14の複素環基
(Lf):-OR(Rは置換基Lを有してもよい炭素数1~12の炭化水素基)
(Lg):置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアシル基
(Lh):置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアルコキシカルボニル基
前記置換基Kは、前記La~Lbより選ばれる少なくとも一種であり、前記置換基Lは、前記La~Lfより選ばれる少なくとも一種である。]
【0035】
なお、前記-NR8-は下記式(a)で表される基であり、前記-NRgh基は下記式(b)で表される基であり、前記-SRi基は下記式(c)で表される基であり、前記-SO2i基は下記式(d)で表される基であり、前記-OSO2i基は下記式(e)で表される基であり、前記-C(O)Ri基は下記式(f)で表される基である。
また、前記-SSQ2は-S-S-Q2で表される基であり、前記-SO23は下記式(d)で表される基において、RiをQ3に置き換えた基である。
【0036】
【化9】
【0037】
なお、前記ユニットAが前記式(A-I)であり、前記ユニットBが前記式(B-I)である場合、Cn+は下記式(II-1)で表される。つまり、前記式(A-I)~(A-III)における「*-」の単結合(-)は、前記式(II)や(IV)中のYAが結合している炭素原子とユニットAとの間の単結合に相当し、前記式(B-I)~(B-III)における「**=」の二重結合(=)は、前記式(II)や(IV)中のYEが結合している炭素原子とユニットBとの間の二重結合に相当する。
【0038】
【化10】
【0039】
前記YBおよびYDはそれぞれ独立に、より好ましくは、水素原子、塩素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、YBおよびYD同士が互いに結合して形成された4~6員の脂環式炭化水素基(該脂環式炭化水素基は、水素原子、炭素数1~9の脂肪族炭化水素基、水酸基、ハロゲン原子、=Oから選ばれる置換基R9を有していてもよい。)である。
【0040】
なお、YBおよびYDが互いに結合して形成された4~6員の脂環式炭化水素基である場合、式(II)や(IV)は、それぞれ、好ましくは、下記式(C-I)~(C-III)で表すことができる。
【0041】
【化11】
【0042】
【化12】
【0043】
【化13】
【0044】
置換基R9としては、水素原子、水酸基、=O、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロヘキシル基が好ましく、水素原子、水酸基、=O、メチル基、エチル基、tert-ブチル基がより好ましい。
【0045】
前記YA、YCおよびYEはそれぞれ独立に、より好ましくは、水素原子、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、水酸基、フェニルアミノ基(NHPh)、ジフェニルアミノ基、メチルフェニルアミノ基、ジメチルアミノ基、メチル基、メトキシ基、フェニル基、フェノキシ基、4-メチルフェノキシ基、メチルチオ基、フェニルチオ基、-S-(4-tolyl)基である。
【0046】
前記Laは、好ましくは、メチル基(Me)、エチル基(Et)、n-プロピル基、イソプロピル基(i-Pr)、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基(tert-Bu)、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基であり、より好ましくは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基である。
【0047】
前記Laは、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、ブテニル基、1,3-ブタジエニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、2-メチル-1-プロピニル基、ヘキシニル基等のアルキニル基であってもよい。
【0048】
前記Lbにおける炭素数1~15のハロゲン置換アルキル基としては、例えば、炭素数1~15のアルキル基の少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換された基が挙げられ、好ましくは、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、1,1-ジクロロエチル基、ペンタクロロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタクロロプロピル基、ヘプタフルオロプロピル基である。
【0049】
前記Lcにおける置換基Kを有してもよい炭素数3~14の脂環式炭化水素基としては、好ましくは、シクロプロピル基、シクロプロピルメチル基、メチルシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基およびシクロオクチル基等のシクロアルキル基;ノルボルナン基およびアダマンチル基等の多環脂環式基が挙げられる。
【0050】
前記Ldにおける置換基Kを有してもよい炭素数6~14の芳香族炭化水素基としては、好ましくは、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基(トリメチルフェニル基)、クメニル基、ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ベンジル基(CH2Ph)である。
【0051】
前記Leにおける置換基Kを有してもよい炭素数3~14の複素環基としては、好ましくは、フラン、チオフェン、ピロール、インドール、インドリン、インドレニン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、モルホリン、ピリジンである。
【0052】
前記Lfにおける-ORとしては、好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、フェノキシ基(OPh)、4-メチルフェノキシ基、シクロヘキシルオキシ基である。
【0053】
前記Lgにおける置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアシル基としては、好ましくは、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ベンゾイル基、4-プロピルベンゾイル基、トリフルオロメチルカルボニル基である。
【0054】
前記Lhにおける置換基Lを有してもよい炭素数1~9のアルコキシカルボニル基としては、好ましくは、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、2-トリフルオロメチルエトキシカルボニル基、2-フェニルエトキシカルボニル基である。
【0055】
前記Xは、好ましくは、酸素原子、硫黄原子、-NR8-であり、特に好ましくは、酸素原子である。
【0056】
式(II)や(IV)において、左右のユニットAおよびBは同一であっても異なってもよいが、同一であることが合成上容易であるため好ましい。
なお、ここで、ユニットAおよびBが同一である組み合わせは、式(A-I)と式(B-I)、式(A-II)と式(B-II)、式(A-III)と式(B-III)である。
【0057】
前記R1~R6はそれぞれ独立に、好ましくは、水素原子、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、1,1-ジメチルブチル基、シクロプロピル基、シクロプロピルメチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、フェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、水酸基、アミノ基、ジメチルアミノ基(NMe2)、ジエチルアミノ基(NEt2)、ジブチルアミノ基(N(n-Bu)2)、シアノ基、ニトロ基、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、N-メチルアセチルアミノ基、トリフルオロメタノイルアミノ基、ペンタフルオロエタノイルアミノ基、tert-ブタノイルアミノ基、シクロヘキシノイルアミノ基、n-ブチルスルホニル基、ベンジル基、ジフェニルメチル基、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、メトキシ基であり、より好ましくは水素原子、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、アミノ基、ベンジル基、ジフェニルメチル基、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、メトキシ基である。
【0058】
前記R1~R6の少なくとも1つは、波長700~750nm付近、または、波長720~900nm付近における吸収極大での高い近赤外線カット性能と高い可視光透過性能とを有し、光学特性に優れ、熱や光に対して十分な耐性を有する化合物を容易に得ることができる等の点から、前記La、LcまたはLdであることが好ましい。なお、前記ユニットAが前記式(A-III)であり、前記ユニットBが前記式(B-III)である場合、「R1~R6の少なくとも1つがLa、LcまたはLdである」とは、「R1、R2、R4、R5の少なくとも1つがLa、LcまたはLdである」ことを意味する。
【0059】
前記R8としては、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、ベンジル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、tert-ブチル基であり、より好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、ベンジル基である。
【0060】
前記An-としては、一価のアニオンであれば特に制限されないが、好ましくは、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、PF4 -、過塩素酸アニオン、トリストリフルオロメタンスルホニルメチドアニオン、テトラフルオロボレートアニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオン、テトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレートアニオンなどが挙げられ、より好ましくは、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、トリストリフルオロメタンスルホニルメチドアニオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオン、テトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレートアニオンであり、耐熱性により優れる化合物(Z)を容易に得ることができる等の点から、さらに好ましくは、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン、トリストリフルオロメタンスルホニルメチドアニオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオン、テトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレートアニオンであり、特に好ましくはテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンである。
【0061】
式(I)や(III)で表される化合物の具体例としては、例えば、下記表1~4に記載の化合物(z-1)~(z-173)が挙げられる。
これらの化合物(Z)は、具体的には、例えば、下記実施例に記載の方法で合成することができる。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
なお、表4のR3およびR4の欄における「C-1、C-2」は、前記式(A-I)および前記式(B-I)におけるR3とR4とが互いに結合し、炭素数6の芳香族炭化水素基を形成していることを意味し、具体的には、ユニットAおよびBに相当する部分が、下記式C-1およびC-2で表される構造であることを意味する。
また、表4のYA,YE、R1およびR5の欄における「D-1」は、YAと前記式(A-III)におけるR1、YEと前記式(B-III)におけるR5が互いに結合して、6員の脂環基を形成していることを意味し、具体的には、化合物(z-163)のカチオンが、下記式D-1で表されることを意味する。
【0067】
【化14】
【0068】
【化15】
【0069】
化合物(Z)は、有機溶剤可溶の化合物であることが好ましく、特にジクロロメタン可溶の化合物であることが好ましい。
ここで、有機溶剤可溶とは、25℃の有機溶剤100gに対し、化合物(Z)が0.1g以上溶解する場合のことをいう。
【0070】
化合物(Z)は、下記要件(A)を満たす化合物であることが好ましい。
要件(A):化合物(Z)をジクロロメタンに溶解させた溶液を用いて測定される透過スペクトル(但し、該透過スペクトルは、吸収極大波長における透過率が10%となるスペクトルである。以下この透過スペクトルを「化合物(Z)の透過スペクトル」ともいう。)において、波長430~580nmにおける透過率の平均値が、好ましくは93%以上、より好ましくは95%以上である。該透過率の平均値は高い方が好ましいため、その上限は特に制限されず、100%であってもよい。
化合物(Z)がこの要件(A)を満たすと、カットしたい近赤外線領域の波長の光を十分にカットしながらも可視光透過率の低下をより抑制できる。
【0071】
なお、本発明において、波長A~Bnmの平均透過率は、Anm以上Bnm以下の、1nm刻みの各波長における透過率を測定し、その透過率の合計を、測定した透過率の数(波長範囲、B-A+1)で除すことで算出した値である。
【0072】
化合物(Z)は、下記要件(B-1)または(B-2)を満たす化合物であることが好ましい。
要件(B-1):化合物(Z)をジクロロメタンに溶解させた溶液を用いて測定される吸収スペクトルにおいて、好ましくは波長720~900nmの範囲、より好ましくは波長740~880nmの範囲、特に好ましくは波長740~860nmの範囲に極大値を有する。
化合物(Z)の吸収極大波長が前記範囲にあると、波長720~900nm付近の光の反射光を抑制することができ、フレアやゴーストの少ない良好な画像を与えることができる光学フィルターを容易に得ることができる。
前記要件(B-1)を満たす化合物(Z)の好適例としては、前記ユニットAが、前記式(A-I)~(A-II)のいずれかであり、前記ユニットBが、前記式(B-I)~(B-II)のいずれかである化合物が挙げられる。
【0073】
要件(B-2):化合物(Z)をジクロロメタンに溶解させた溶液を用いて測定される吸収スペクトルにおいて、好ましくは波長700~750nmの範囲、より好ましくは波長705~748nmの範囲、特に好ましくは波長710~745nmの範囲に極大値を有する。
化合物(Z)の吸収極大波長が前記範囲にあると、波長700~750nm付近の光の反射光を抑制することができ、フレアやゴーストの少ない良好な画像を与えることができる光学フィルターを容易に得ることができる。
前記要件(B-2)を満たす化合物(Z)の好適例としては、前記ユニットAが、前記式(A-III)であり、前記ユニットBが、前記式(B-III)である化合物が挙げられる。
【0074】
化合物(Z)は、下記要件(C)を満たす化合物であることが好ましい。
要件(C):樹脂と化合物(Z)とからなる樹脂板の、波長700~1000nmの範囲の極大吸収波長λaにおける吸光度Aiに対する、該樹脂板を30日間蛍光灯照射した後の前記λaおける吸光度Afの保持率D(=Af×100/Ai)が、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上である。該保持率Dは高い方が好ましいため、その上限は特に制限されず、100%であってもよい。
なお、前記樹脂板の厚みは、90~110μmの範囲内であり、樹脂に対する化合物(Z)の含有量は、該樹脂板の極大吸収波長λaにおける吸光度Aiが0.5~1.5の範囲内に入るような量であり、樹脂は、JSR(株)製アートンを使用するものとし、樹脂板中の樹脂100質量部に対して、Irganox 1010(BASFジャパン(株)製)を0.3質量部含むものとする。
【0075】
保持率Dが前記範囲にある化合物(Z)は、耐光性(耐久性)に優れるといえ、このような化合物(Z)を用いることで、長期にわたり所望の光学特性を示す光学フィルターを容易に得ることができる。
前記保持率Dは、具体的には、下記実施例に記載の方法で測定することができる。
【0076】
化合物(Z)は、下記要件(D)を満たすことがより好ましい。
要件(D):化合物(Z)をジクロロメタンに溶解させた溶液を用いて測定される分光吸収スペクトルにおいて、極大吸収波長のうち、最も長い波長における吸光度をεa、波長430~580nmにおける吸光度の最大値をεbmaxとした時、εa/εbmaxが、好ましくは20以上、より好ましくは25以上、さらに好ましくは27以上である。εa/εbmaxは、大きい方が好ましいためその上限は特に制限されないが、例えば、10000以下である。
化合物(Z)がこの要件(D)を満たすと、可視光域の吸光度に対する赤外線域の吸光度の比が大きいといえ、光学特性に優れるといえ、誘電体多層膜を有する光学フィルターにおいて、該多層膜による入射角依存性を抑制することができる。
【0077】
本組成物中の化合物(Z)の含有量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.02~2.0質量部、より好ましくは0.02~1.5質量部、特に好ましくは0.03~1.5質量部である。
化合物(Z)の含有量が前記範囲にあると、波長700~750nm付近、または、波長720~900nm付近の範囲の近赤外線を効率よくカットできるほか、可視光透過性により優れる組成物を容易に得ることができる。
【0078】
<樹脂>
本組成物に用いる樹脂としては特に制限されず、従来公知の樹脂を用いることができる。
本組成物に用いられる樹脂は、1種単独でもよく、2種以上でもよい。
【0079】
前記樹脂としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限されないが、例えば、熱安定性およびフィルム(板)形状への成形性等に優れ、かつ、100℃以上程度の蒸着温度で行う高温蒸着で誘電体多層膜を形成し得るフィルムを容易に得ることができる等の点から、ガラス転移温度(Tg)が、好ましくは110~380℃、より好ましくは110~370℃、特に好ましくは120~360℃である樹脂が挙げられる。また、前記樹脂のTgが140℃以上であると、誘電体多層膜をより高温で蒸着形成し得るフィルムが得られるため、特に好ましい。
【0080】
前記樹脂としては、当該樹脂からなる厚さ0.1mmの樹脂板の全光線透過率(JIS K 7375:2008)が、好ましくは75~95%、さらに好ましくは78~95%、特に好ましくは80~95%となる樹脂を用いることができる。
全光線透過率が前記範囲にある樹脂を用いると、透明性に優れる樹脂組成物や光学フィルターを容易に得ることができる。
【0081】
前記樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、通常15,000~350,000、好ましくは30,000~250,000であり、数平均分子量(Mn)は、通常10,000~150,000、好ましくは20,000~100,000である。
【0082】
前記樹脂としては、例えば、環状(ポリ)オレフィン系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド(アラミド)系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリパラフェニレン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)系樹脂、フッ素化芳香族ポリマー系樹脂、(変性)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、アリルエステル系硬化型樹脂、シルセスキオキサン系紫外線硬化型樹脂、アクリル系紫外線硬化型樹脂、ビニル系紫外線硬化型樹脂が挙げられる。
これらの樹脂の具体例としては、国際公開第2019/168090号に記載の樹脂等が挙げられる。
【0083】
<その他成分>
本組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、さらに、化合物(Z)以外の化合物(X)[紫外線吸収剤以外の吸収剤]、酸化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光消光剤および金属錯体系化合物等のその他成分を含有してもよい。
これらその他成分はそれぞれ、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0084】
これらその他成分は、本組成物を調製する際に、樹脂などとともに混合してもよいし、樹脂を合成する際に添加してもよい。また、添加量は、所望の特性等に応じて適宜選択すればよいが、樹脂100質量部に対して、通常0.01~5.0質量部、好ましくは0.05~2.0質量部である。
【0085】
[化合物(X)]
本組成物は、化合物(Z)以外の化合物(X)[紫外線吸収剤以外の吸収剤]を1種または2種以上含んでいてもよい。
該化合物(X)としては、例えば、スクアリリウム系化合物、フタロシアニン系化合物、ポリメチン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、クロコニウム系化合物、オクタフィリン系化合物、ジイモニウム系化合物、ペリレン系化合物、金属ジチオラート系化合物が挙げられる。
【0086】
前記化合物(X)としては、スクアリリウム系化合物を含むことが好ましく、スクアリリウム系化合物とその他の化合物(X')とをそれぞれ1種以上含むことがさらに好ましく、該その他の化合物(X')としては、フタロシアニン系化合物およびポリメチン系化合物が特に好ましい。
【0087】
前記スクアリリウム系化合物は、吸収ピークがシャープであり、優れた可視光透過性および高いモル吸光係数を有するが、光線吸収時に散乱光の原因となる蛍光が発生する場合がある。この場合、スクアリリウム系化合物と前記化合物(X')とを組み合わせて使用することにより、散乱光を抑制することができる。このように散乱光が抑制されると、本組成物から得られた光学フィルターを撮像装置などに使用した場合、得られるカメラ画質がより良好となる。
【0088】
前記化合物(X)の吸収極大波長は、好ましくは650~1100nm、より好ましくは650~950nm、さらに好ましくは680~850nm、特に好ましくは690~740nmである。
前記範囲に吸収極大波長を有する化合物(X)を用いることで、視感度補正により優れる光学フィルターを容易に得ることができる。
【0089】
[紫外線吸収剤]
前記紫外線吸収剤としては、例えば、アゾメチン系化合物、インドール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、アントラセン系化合物、特開2019-014707号公報等に記載の化合物が挙げられる。
【0090】
特にアゾメチン系化合物、インドール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物が好ましい。これら化合物を含有することで、近紫外波長領域においても入射角度依存性が少ない光学フィルターを容易に得ることができ、該光学フィルターを撮像装置などに使用した場合、得られるカメラ画質がより良好となる。
【0091】
[酸化防止剤]
前記酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,2'-ジオキシ-3,3'-ジ-tert-ブチル-5,5'-ジメチルジフェニルメタン、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンが挙げられる。
【0092】
<添加剤>
本組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、さらに、有機溶剤、離型剤、界面活性剤、帯電防止剤、密着助剤、光拡散材等の添加剤を含有していてもよい。
これら添加剤はそれぞれ、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0093】
特に、本組成物を液状組成物とする場合、有機溶剤を用いることが好ましい。該有機溶剤の例としては、樹脂を溶解できる溶剤であることが好ましく、具体的には、エステル類、ケトン類、芳香族炭化水素類、ハロゲン含有化合物類が挙げられる。
また、後述するキャスト成形により樹脂層を製造する場合には、レベリング剤や消泡剤を用いることで該樹脂層の製造を容易にすることができる。
【0094】
≪基材(i)≫
本発明に係る基材(i)は、本組成物から形成された前記化合物(Z)を含有する基材である。
該基材(i)は、単層であっても多層であってもよく、本組成物から形成された前記化合物(Z)を含有する樹脂層(以下「本樹脂層」ともいう。)を有すればよい。前記基材(i)は、2層以上の本樹脂層を有していてもよく、この場合、2層以上の本樹脂層は、同一であっても、異なっていてもよい。
【0095】
基材(i)が単層の場合は、該基材(i)は本樹脂層からなり、つまり、本樹脂層(樹脂製基板)が基材(i)である。
基材(i)が多層の場合は、該基材(i)としては、2層以上の樹脂層を含む基材であって、該2層以上の樹脂層のうち少なくとも1つが本樹脂層である基材や、本樹脂層とガラス支持体とを含む基材が挙げられ、好適例としては、ガラス支持体やベースとなる樹脂製支持体などの支持体上に本樹脂層が積層された積層体を含む基材(A)、本樹脂層上に、硬化性樹脂等からなるオーバーコート層などの樹脂層が積層された積層体を含む基材(B)が挙げられる。
製造コストや光学特性調整の容易性、さらに、本樹脂層の傷消し効果を達成できることや、基材(i)の耐傷つき性向上等の点から、前記基材(i)としては、基材(B)が特に好ましい。
【0096】
なお、前記樹脂製支持体や基材(B)におけるオーバーコート層などの樹脂層は、化合物(Z)を含まない樹脂層のことをいう。該化合物(Z)を含まない樹脂層は、樹脂を含めば特に制限されず、該樹脂としては、前記本組成物の欄に記載の樹脂と同様の樹脂等が挙げられる。また、該化合物(Z)を含まない樹脂層は、下記その他の機能膜であってもよい。
【0097】
前記ガラス支持体としては透明ガラス支持体や吸収ガラス支持体が好ましい。これらの中でも、吸収ガラス支持体を用いると近赤外線領域の波長の光を十分にカットすることができるため、好ましい。
【0098】
基材(i)の厚みは、所望の用途に応じて適宜選択することができ、特に制限されないが、好ましくは10~250μm、さらに好ましくは15~230μm、特に好ましくは20~150μmである。
基材(i)の厚みが前記範囲にあると、該基材(i)を用いた光学フィルターを薄型化および軽量化することができ、固体撮像装置等の様々な用途に好適に用いることができる。特に、前記単層の基材(i)をカメラモジュール等のレンズユニットに用いた場合には、レンズユニットの低背化、軽量化を実現することができるため好ましい。
【0099】
[基材(i)の製造方法]
前記本樹脂層、前記樹脂製支持体および前記オーバーコート層などの樹脂層は、例えば、溶融成形またはキャスト成形により形成することができ、さらに、必要により、成形後に、反射防止剤、ハードコート剤および/または帯電防止剤等のコーティング剤をコーティングしてもよい。
【0100】
前記基材(i)が、基材(A)である場合、例えば、前記支持体に、本組成物を溶融成形またはキャスト成形することで、好ましくはスピンコート、スリットコート、インクジェットなどの方法にて塗工した後に溶媒を乾燥除去し、必要に応じてさらに光照射や加熱を行うことで、支持体上に本樹脂層が形成された基材を製造することができる。
【0101】
・溶融成形
前記溶融成形としては、具体的には、本組成物を溶融混練りして得られたペレットを溶融成形する方法;本組成物を溶融成形する方法;溶剤を含む液状の本組成物から溶剤を除去して得られたペレットを溶融成形する方法などが挙げられる。溶融成形方法としては、射出成形、溶融押出成形またはブロー成形などを挙げることができる。
【0102】
・キャスト成形
前記キャスト成形としては、溶剤を含む液状の本組成物を適当な支持体の上にキャスティングして溶剤を除去する方法;前記樹脂として光硬化性樹脂および/または熱硬化性樹脂を含む、硬化性の本組成物を適当な支持体の上にキャスティングして溶媒を除去した後、紫外線照射や加熱などの適切な手法により硬化させる方法などが挙げられる。
前記基材(i)が、前記単層の基材(i)である場合には、該基材(i)は、キャスト成形後、支持体から塗膜を剥離することにより得ることができ、また、前記基材(i)が、前記基材(A)である場合には、該基材(i)は、キャスト成形後、塗膜を剥離しないことで得ることができる。
【0103】
前記適当な支持体としては、例えば、ガラス板、スチールベルト、スチールドラムおよび樹脂(例えば、ポリエステルフィルム、環状オレフィン系樹脂フィルム)製支持体が挙げられる。
【0104】
さらに、ガラス板、石英またはプラスチック製等の光学部品に、前記液状の本組成物をコーティングして溶剤を乾燥させる方法、または、前記硬化性の本組成物をコーティングして硬化および乾燥させる方法などにより、光学部品上に本樹脂層を形成することもできる。
【0105】
前記樹脂製支持体およびオーバーコート層などの樹脂層を溶融成形またはキャスト成形により形成する場合には、前記溶融成形やキャスト成形の欄における本組成物の代わりに、樹脂を含む所望の組成物(但し、化合物(Z)を含まない)を用いればよい。
【0106】
前記本樹脂層、前記樹脂製支持体および前記オーバーコート層などの樹脂層中の残留溶剤量は可能な限り少ない方がよい。具体的には、該残留溶剤量は、本樹脂層の重さに対して、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
残留溶剤量が前記範囲にあると、変形や特性が変化しにくい、所望の機能を容易に発揮できる樹脂層が得られる。
基材(i)を光学フィルターに用いる場合は、前記本樹脂層、前記樹脂製支持体および前記オーバーコート層などの樹脂層中の溶剤含有量を100質量ppm以下に抑えることが好ましい。
【0107】
≪光学フィルター≫
本発明に係る光学フィルター(以下「本フィルター」ともいう。)は、前記基材(i)と、誘電体多層膜とを有する。
本発明の効果がより発揮される等の点から、このような本フィルターとしては、具体的には、近赤外線カットフィルター(NIR-CF)、可視光-近赤外線選択透過フィルター(DBPF)、近赤外線透過フィルター(IRPF)が挙げられる。また、本フィルターは、科学捜査等に用いられる代替光源(ALS:Alternative Light Sources)用のフィルターとしても用いることができる。これらのフィルターは、前記基材(i)を有する以外は、従来公知の構成とすればよい。
【0108】
本フィルターが、NIR-CFやDBPFである場合、下記特性(a)を満たすフィルターであることが好ましい。
特性(a):波長430~580nmの領域において、光学フィルターの垂直方向から測定した場合の透過率の平均値が、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上である。該透過率の平均値は高い方が好ましいため、その上限は特に制限されず、100%であってもよい。
本フィルターがこの特性(a)を満たすと、カットしたい近赤外線領域の波長の光を十分にカットしながらも可視光透過率の低下をより抑制できるため、NIR-CFやDBPFとしてより好適に用いることができる。
【0109】
前記基材(i)が、前記要件(B-1)を満たす化合物を含む場合であって、本フィルターが、NIR-CFやDBPFである場合、下記特性(b-1)を満たすフィルターであることが好ましい。
特性(b-1):波長700~800nmの領域において、光学フィルターの少なくとも一方の面の垂直方向から5°の角度から入射する無偏光光線の平均反射率が、好ましくは25%以下、より好ましくは15%以下である。該平均反射率は低い方が好ましいため、その下限は特に制限されず、0%であってもよい。
この特性(b-1)を満たす本フィルターを用いることで、波長700~800nmの波長域の反射光強度の低減が可能であるため、該反射光に起因する画像不良を解消できる。
【0110】
前記基材(i)が、前記要件(B-2)を満たす化合物を含む場合であって、本フィルターが、NIR-CFやDBPFである場合、下記特性(b-2)を満たすフィルターであることが好ましい。
特性(b-2):波長650~800nmの領域において、光学フィルターの少なくとも一方の面の垂直方向から5°の角度から入射する無偏光光線の平均反射率が、好ましくは25%以下、より好ましくは15%以下である。該平均反射率は低い方が好ましいため、その下限は特に制限されず、0%であってもよい。
この特性(b-2)を満たす本フィルターを用いることで、波長650~800nmの波長域の反射光強度の低減が可能であるため、該反射光に起因する画像不良を解消できる。
【0111】
なお、本発明において、波長A~Bnmの平均反射率は、Anm以上Bnm以下の、1nm刻みの各波長における反射率を測定し、その反射率の合計を、測定した反射率の数(波長範囲、B-A+1)で除すことで算出した値である。
垂直方向から入射する無偏光光線の反射率を測定することは、限りなく困難であるため、本発明では、垂直方向から5°の角度から入射する無偏光光線の反射特性を測定した。
【0112】
「無偏光光線」とは、偏光方向の偏りを持たない光線のことであり、電場が全ての方向に概ね均一に分布している波の集合体のことをいう。「無偏光光線の平均透過率」は「S偏光光線の平均透過率」と「P偏光光線の平均透過率」の平均値を用いてもよい。「無偏光光線の平均反射率」は、「S偏光光線の平均反射率」と「P偏光光線の平均反射率」の平均値を用いてもよい。
【0113】
本フィルターが前記特性(a)および(b-1)または(b-2)を満たすことで、可視光の透過性を良好に維持しながら、近赤外光、特に、波長650~800nmの波長域の反射光強度の低減が可能であるため、近年、高性能化が進むデジタルスチルカメラ等の撮像装置等において、可視光領域の感度低下を最小限に抑えつつ、該反射光に起因する画像不良を解消できる。
【0114】
本フィルターの厚みは、所望の用途に応じて適宜選択すればよいが、近年の固体撮像装置等の薄型化、軽量化等の流れによれば、該本フィルターの厚みも薄いことが好ましい。
本フィルターは、前記基材(i)を含むため、薄型化が可能である。
【0115】
本フィルターの厚みは、好ましくは300μm以下、より好ましくは250μm以下、さらに好ましくは200μm以下、特に好ましくは150μm以下であり、下限は特に制限されないが、例えば、20μmであることが望ましい。
【0116】
<NIR-CF>
前記NIR-CFは、波長850~1200nmの領域におけるカット性能に優れ、可視波長域での透過性に優れる光学フィルターであることが好ましい。
このNIR-CFで用いる前記誘電体多層膜は、近赤外線反射膜であることが好ましい。
【0117】
NIR-CFを固体撮像素子などに使用する場合、近赤外波長域の透過率は低い方が好ましい。特に、波長800~1200nmの領域は固体撮像素子の受光感度が比較的高いことが知られており、この波長域の透過率を低減させることにより、カメラ画像と人間の目との視感度補正を効果的に行うことができ、優れた色再現性を達成することができる。また、さらに、波長850~1200nmの領域の透過率を低減させることで、セキュリティ認証機能に用いる近赤外光がイメージセンサー等に到達するのを効果的に防ぐことが可能になる。
【0118】
NIR-CFは、波長850~1200nmの領域において、該フィルターの垂直方向から測定した場合の平均透過率が、好ましくは5%以下、より好ましくは4%以下、さらに好ましくは3%以下、特に好ましくは2%以下である。
波長850~1200nmの平均透過率がこの範囲にあると、近赤外線を十分にカットすることができ、優れた色再現性を達成できるため好ましい。
【0119】
NIR-CFを固体撮像素子などに使用する場合、可視光透過率が高い方が好ましい。具体的には、波長430~580nmの領域において、該フィルターの垂直方向から測定した場合の平均透過率が、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは83%以上、特に好ましくは85%以上である。
波長430~580nmの平均透過率がこの範囲にあると、優れた撮像感度を達成することができる。
【0120】
<DBPF>
前記DBPFは、可視光と、近赤外線のうち透過させたい波長の光とを透過し、近赤外線のうちカットしたい波長の光をカットする光学フィルターであれば特に制限されない。
このDBPFで用いる前記誘電体多層膜は、可視光と、近赤外線のうち透過させたい波長の光とを透過し、近赤外線のうちカットしたい波長の光をカットする膜であることが好ましい。
【0121】
DBPFもNIR-CFと同様に、固体撮像素子などに使用する場合、可視光透過率が高い方が好ましく、前記と同様の理由から、波長430~580nmの平均透過率が、NIR-CFの該平均透過率と同様の範囲にあることが好ましい。
【0122】
<IRPF>
前記IRPFは、可視光をカットし、近赤外線のうち透過させたい波長の光を透過する光学フィルターであれば特に制限されない。
このIRPFで用いる前記誘電体多層膜は、カットしたい波長の光(可視光および/または近赤外線のうちの一部)をカットする膜であることが好ましい。
また、IRPFは、可視光吸収剤を用いて可視光をカットしてもよい。
【0123】
IRPFは、赤外線監視カメラ、車載赤外線カメラ、赤外線通信、各種センシングシステム、赤外線警報機、暗視装置等の光学系に好適に使用でき、これらの用途に使用する場合、透過させたい近赤外線以外の波長の光の透過率は低い方が好ましい。
特に、波長380~700nmの領域において、本フィルターの垂直方向から測定した場合の透過率の平均値が、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。
【0124】
また、IRPFは、透過させたい近赤外線の透過率は高い方が好ましく、具体的には、波長750nm以上の領域に、光線透過帯Yaを有し、前記光線透過帯Yaにおいて、本フィルターの垂直方向から測定した場合の最大透過率(TIR)は、好ましくは45%以上、より好ましくは50%以上である。
【0125】
<誘電体多層膜>
本フィルターは、前記基材(i)と誘電体多層膜とを有する。該誘電体多層膜としては、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した積層体等が挙げられる。
該誘電体多層膜は、前記基材(i)の片面に設けてもよいし、両面に設けてもよい。片面に設ける場合、製造コストや製造容易性に優れ、両面に設ける場合、高い強度を有し、反りやねじれが生じにくい光学フィルターを得ることができる。本フィルターを固体撮像素子などに使用する場合、該フィルターの反りやねじれが小さい方が好ましいことから、誘電体多層膜を基材(i)の両面に設けることが好ましい。
【0126】
前記高屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.7以上の材料が挙げられ、屈折率が通常は1.7~2.5の材料が選択される。このような材料としては、例えば、チタニア、酸化ジルコニウム、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛または酸化インジウム等を主成分とし、チタニア、酸化錫および/または酸化セリウム等を少量(例えば、主成分に対して0~10質量%)含有させたものが挙げられる。
【0127】
前記低屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.6以下の材料を用いることができ、屈折率が通常は1.2~1.6の材料が選択される。このような材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウムおよび六フッ化アルミニウムナトリウムが挙げられる。
【0128】
前記高屈折率材料層と低屈折率材料層とを積層する方法については、これらの材料層を積層した誘電体多層膜が形成される限り特に制限はない。例えば、基材(i)上に、直接、CVD法、スパッタ法、真空蒸着法、イオンアシスト蒸着法またはイオンプレーティング法等により、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した誘電体多層膜を形成することができる。
【0129】
前記高屈折率材料層および低屈折率材料層の各層の厚さは、通常、遮断しようとする光線(例:近赤外線)の波長をλ(nm)とすると、0.1λ~0.5λの厚さが好ましい。λ(nm)の値としては、NIR-CFの場合、例えば700~1400nm、好ましくは750~1300nmである。高屈折率材料層および低屈折率材料層の各層の厚さがこの範囲にあると、屈折率(n)と膜厚(d)との積(n×d)である光学的膜厚が、λ/4とほぼ同じ値となって、反射・屈折の光学的特性の関係から、特定波長の遮断・透過を容易にコントロールできる傾向にある。
【0130】
誘電体多層膜における高屈折率材料層と低屈折率材料層との合計の積層数は、例えばNIR-CFの場合、光学フィルター全体として16~70層であることが好ましく、20~60層であることがより好ましい。各層の厚み、光学フィルター全体としての誘電体多層膜の厚みや合計の積層数が前記範囲にあると、十分な製造マージンを確保できる上に、光学フィルターの反りや誘電体多層膜のクラックを低減することができる。
【0131】
本フィルターでは、化合物(Z)の吸収特性等に合わせて、高屈折率材料層および低屈折率材料層を構成する材料種、高屈折率材料層および低屈折率材料層の各層の厚さ、積層の順番、積層数を適切に選択することで、透過したい波長域(例:可視域)に十分な透過率を確保した上で、カットしたい波長域(例:近赤外域)に十分な光線カット特性を有し、かつ、斜め方向から光線(例:近赤外線)が入射した際の反射率を低減することができる。
【0132】
ここで、誘電体多層膜の条件を最適化するには、例えば、光学薄膜設計ソフト(例えば、Essential Macleod、Thin Film Center社製)を用い、透過したい波長域(例:可視域)の反射防止効果と、カットしたい波長域(例:近赤外域)の光線カット効果を両立できるようにパラメーターを設定すればよい。前記ソフトの場合、例えば、NIR-CFの誘電体多層膜を形成する場合には、波長400~700nmの目標透過率を100%、Target Toleranceの値を1とした上で、波長705~950nmの目標透過率を0%、Target Toleranceの値を0.5にするなどのパラメーター設定方法が挙げられる。
これらのパラメーターは基材(i)の各種特性などに合わせて波長範囲をさらに細かく区切ってTarget Toleranceの値を変えることもできる。
【0133】
<その他の機能膜>
本フィルターは、本発明の効果を損なわない範囲において、基材(i)と誘電体多層膜との間、基材(i)の誘電体多層膜が設けられた面と反対側の面、または、誘電体多層膜の基材(i)が設けられた面と反対側の面に、基材(i)や誘電体多層膜の表面硬度の向上、耐薬品性の向上、帯電防止および傷消しなどの目的で、反射防止膜、ハードコート膜や帯電防止膜などの機能膜を適宜設けることができる。
【0134】
本フィルターは、前記機能膜を1層含んでもよく、2層以上含んでもよい。本フィルターが、前記機能膜を2層以上含む場合には、同様の膜を2層以上含んでもよいし、異なる膜を2層以上含んでもよい。
【0135】
前記機能膜を積層する方法としては特に制限されないが、反射防止剤、ハードコート剤および/または帯電防止剤等のコーティング剤などを基材(i)または誘電体多層膜に、前記と同様に溶融成形またはキャスト成形する方法等を挙げることができる。
【0136】
また、コーティング剤などを含む硬化性組成物をバーコーター等で基材(i)または誘電体多層膜上に塗布した後、紫外線照射等により硬化することによっても製造することができる。
【0137】
前記コーティング剤としては、紫外線(UV)/電子線(EB)硬化型樹脂や熱硬化型樹脂などが挙げられ、具体的には、ビニル化合物類や、ウレタン系、ウレタンアクリレート系、アクリレート系、エポキシ系およびエポキシアクリレート系樹脂などが挙げられる。コーティング剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
これらのコーティング剤を含む前記硬化性組成物としては、ビニル系、ウレタン系、ウレタンアクリレート系、アクリレート系、エポキシ系およびエポキシアクリレート系硬化性組成物などが挙げられる。
【0138】
前記硬化性組成物は、重合開始剤を含んでいてもよい。前記重合開始剤としては、公知の光重合開始剤または熱重合開始剤を用いることができ、光重合開始剤と熱重合開始剤を併用してもよい。重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0139】
前記硬化性組成物中、重合開始剤の配合割合は、硬化性組成物の全量を100質量%とした場合、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.5~10質量%、さらに好ましくは1~5質量%である。重合開始剤の配合割合が前記範囲にあると、硬化特性および取り扱い性等に優れる硬化性組成物を容易に得ることができ、所望の硬度を有する反射防止膜、ハードコート膜や帯電防止膜などの機能膜を容易に得ることができる。
【0140】
さらに、前記硬化性組成物には溶剤として有機溶剤を加えてもよく、有機溶剤としては、公知の溶剤を使用することができる。有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類が挙げられる。
これら溶剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0141】
前記機能膜の厚さは、好ましくは0.1~20μm、より好ましくは0.5~10μm、特に好ましくは0.7~5μmである。
【0142】
また、基材(i)と機能膜および/または誘電体多層膜との密着性や、機能膜と誘電体多層膜との密着性を上げる目的で、基材(i)、機能膜または誘電体多層膜の表面にコロナ処理やプラズマ処理等の表面処理をしてもよい。
【0143】
[光学フィルターの用途]
本フィルターは、例えば、カットしたい領域の波長の光のカット能と、透過したい波長の光の透過能に優れる。従って、カメラモジュールのCCDやCMOSイメージセンサー等の固体撮像素子の視感度補正用として有用である。特に、デジタルスチルカメラ、スマートフォン用カメラ、携帯電話用カメラ、デジタルビデオカメラ、ウェアラブルデバイス用カメラ、PCカメラ、監視カメラ、自動車用カメラ、赤外線カメラ、テレビ、カーナビゲーション、携帯情報端末、ビデオゲーム機、携帯ゲーム機、指紋認証システム、デジタルミュージックプレーヤー、各種センシングシステム、赤外線通信等に有用である。さらに、自動車や建物等のガラス板等に装着される熱線カットフィルターなどとしても有用である。
【0144】
≪固体撮像装置≫
本発明に係る固体撮像装置は、本フィルターを具備する。ここで、固体撮像装置とは、CCDやCMOSイメージセンサー等の固体撮像素子を備えた装置であり、具体的にはデジタルスチルカメラ、スマートフォン用カメラ、携帯電話用カメラ、ウェアラブルデバイス用カメラ、デジタルビデオカメラ等の用途に用いることができる。
【0145】
≪光学センサー装置≫
本発明に係る光学センサー装置は、本フィルターを具備すれば特に制限されず、従来公知の構成とすればよい。
例えば、受光素子と本フィルターとを有する装置が挙げられ、具体的には、受光素子(半導体基板)、保護膜、本フィルターおよび他のフィルター等を有する装置が挙げられる。
【実施例0146】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0147】
[合成例]
下記実施例で用いた化合物(Z)および(X)は、一般的に知られている合成法に基づいて合成した。
化合物(Z)は、例えば、特開2009-108267号公報、特開平5-59291号公報、特開2014-95007号公報、特開2011-52218号公報、国際公開第2007/114398号、特開2003-246940号公報、Chemistry of Heterocyclic Compounds: The Cyanine Dyes and Related Compounds, Volume 18(Wiley, 1964年)、Near-Infrared Dyes for High Technology Applications(Springer, 1997年)に記載されている方法を参考に合成できる。
化合物(X)は、例えば、特許第3366697号公報、特許第2846091号公報、特許第2864475号公報、特許第3703869号公報、特開昭60-228448号公報、特開平1-146846号公報、特開平1-228960号公報、特許第4081149号公報、特開昭63-124054号公報、「フタロシアニン -化学と機能-」(アイピーシー、1997年)、特開2007-169315号公報、特開2009-108267号公報、特開2010-241873号公報、特許第3699464号公報、特許第4740631号公報に記載されている方法を参考に合成できる。
【0148】
[中間体合成例1]
【化16】
【0149】
撹拌子を入れた200mLのナス型フラスコに、Bioorganic and Medicinal Chemistry, 2013, vol. 21, # 11, p. 2826-2831に記載の方法で合成した化合物a-1 8.33gに、ピバル酸エチル21.8gを加え、5分後に、水素化ナトリウム(60%、dispersion in Paraffin Liquid)4.0gを加え、80℃にて3時間攪拌した。その後、室温まで冷却し、1N塩酸水溶液100mLを加え中和した後、分液ロートに移液し、酢酸エチル150mLで有機相を抽出した。次いで、抽出した有機相に、硫酸マグネシウム15gを加えて15分間攪拌した後、フィルターろ過にて硫酸マグネシウムを除去し、ろ液を300mLナス型フラスコに入れ、エバポレーターを用いて溶媒を留去することで、化合物a-2を得た。
【0150】
化合物a-2の入ったナス型フラスコに攪拌子を入れ、濃塩酸20mLを追加し、40℃で攪拌した。1時間攪拌の後、反応溶液を氷冷し、1N水酸化ナトリウム水溶液200mLを加えて中和した。次いで、分液ロートに移液し、酢酸エチル150mLを加えて有機相を抽出した後、硫酸マグネシウム15gを加え、15分間攪拌した。次いで、フィルターろ過にて硫酸マグネシウムを除去後、ろ液を300mLナス型フラスコに入れ、エバポレーターを用いて溶媒を留去した。その後、フラスコに残留した化合物をシリカゲルクロマトグラフィーにて単離精製することにより、目的の化合物a-3を5.0g得た。なお、化合物の同定は、LC-MSおよび1H-NMR分析により行った。
【0151】
[中間体合成例2]
【化17】
【0152】
撹拌子を入れた200mLのナス型フラスコに、化合物a-3 3g、ジエチルエーテル30mLを入れ、攪拌しながら氷冷した。氷冷5分後に、1mol/Lのメチルマグネシウムヨージドジエチルエーテル溶液13.5mLを10分かけて加え、その後35℃に加熱し、2時間攪拌した。次いで、反応溶液を氷冷し、20%過塩素酸水溶液を30mL加え、析出した固体をろ別し、水20mLで洗浄し、50℃で減圧乾燥することで、化合物a-4を2.5g得た。なお、化合物の同定は1H-NMR分析により行った。
【0153】
[化合物(z-1)の合成例]
【化18】
【0154】
撹拌子を入れた100mLのナス型フラスコに、化合物a-4 1.5g、N-[2-chloro-3-(phenylamino)-2-propenylidene]-benzenamine monohydrochloride 0.6g、アセトニトリル25mL、無水酢酸7.5mL、および、ピリジン0.6mLを加え、5時間加熱還流した。次いで、室温まで冷却し、エバポレーターにて溶媒を留去した後、酢酸5mLを加え、2日間5℃で冷却静置した。その後、析出した固体を減圧ろ過し、酢酸5mL、ヘキサン10mLで洗浄することにより、化合物a-5を0.17g得た。
【0155】
撹拌子を入れた100mLのナス型フラスコに、化合物a-5 0.1g、リチウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート0.2g、ジクロロメタン20mL、および、水10mLを加え、室温にて1時間攪拌した。次いで、分液ロートに移液し、水相を除去した後、有機相を水20mLで2回洗浄し、硫酸ナトリウム1gを加えて15分間攪拌した。その後、フィルターろ過にて硫酸ナトリウムを除去し、ろ液を300mLナス型フラスコに入れ、エバポレーターを用いて溶媒を留去し、50℃で減圧乾燥することにより、化合物(z-1)を0.05g得た。なお、化合物の同定はLC-MSおよび1H-NMR分析により行った。
【0156】
[中間体合成例3]
【化19】
【0157】
撹拌子を入れた300mLのナス型フラスコに、フラボン(化合物a-6)5gおよびTHF50mLを加え、氷冷した。氷冷5分後に、1mol/Lのメチルマグネシウムヨージドジエチルエーテル溶液24.7mLを10分間かけて加え、その後35℃に加熱し、2時間攪拌した。次いで、反応溶液を氷冷し、20%過塩素酸水溶液を50mL加え、析出した固体をろ別し、水50mLで洗浄し、50℃で減圧乾燥することで化合物a-7を4.5g得た。なお、化合物の同定は1H-NMR分析により行った。
【0158】
[化合物(z-16)の合成例]
【化20】
【0159】
撹拌子を入れた100mLのナス型フラスコに、化合物a-7 0.7g、マロンアルデヒドジアニリド塩酸塩 0.26g、アセトニトリル10mL、無水酢酸5mL、および、ピリジン0.2mLを加え、2時間加熱還流した。その後、室温まで冷却し、析出した固体を減圧ろ過にて回収し、ジエチルエーテル10mLで洗浄することにより、化合物a-8を0.6g得た。
【0160】
撹拌子を入れた100mLのナス型フラスコに、化合物a-8 0.1g、リチウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート0.2g、ジクロロメタン20mL、および、水10mLを加え、室温にて3時間攪拌した。次いで、分液ロートに移液し、水相を除去した後、有機相を水20mLで2回洗浄し、エバポレーターを用いて有機相から溶媒を留去した。その後、残留物をアセトン0.5mLに溶解させ、メタノールを10mL加えて氷冷し、析出した固体を吸引ろ過にて回収し、50℃で減圧乾燥することで、化合物(z-16)を0.07g得た。なお、化合物の同定はLC-MSおよび1H-NMR分析により行った。
【0161】
[中間体合成例4]
【化21】
【0162】
撹拌子を入れた200mLのナス型フラスコに、化合物a-9 4g、ピバル酸エチル21.8gを加え攪拌し、5分後に、水素化ナトリウム(60%、dispersion in Paraffin Liquid)3.2gを加えた後、80℃にて3時間攪拌した。その後、室温まで冷却し、1N塩酸水溶液30mLを加え中和した後、酢酸エチル150mLで有機相を抽出した。次いで、有機相に、硫酸マグネシウム15gを加えて15分間攪拌した後、フィルターろ過にて硫酸マグネシウムを除去し、ろ液を300mLナス型フラスコに入れ、エバポレーターを用いて溶媒を留去することで、化合物a-10を得た。
【0163】
化合物a-10の入ったナス型フラスコに攪拌子を入れ、濃塩酸20mLを追加し、40℃で攪拌した。1時間攪拌の後、反応溶液を氷冷し、1N水酸化ナトリウム水溶液240mLを加え中和した。次いで、分液ロートに移液し、酢酸エチル200mLを加えて有機相を抽出した後、硫酸マグネシウム15gを加えて15分間攪拌した。その後、フィルターろ過にて硫酸マグネシウムを除去し、ろ液を300mLナス型フラスコに入れ、エバポレーターを用いて溶媒を留去した。その後、フラスコに残留した化合物をシリカゲルクロマトグラフィーにて単離精製することにより、目的の化合物a-11を2.0g得た。なお、化合物の同定はLC-MSおよび1H-NMR分析により行った。
【0164】
[中間体合成例5]
【化22】
【0165】
撹拌子を入れた200mLのナス型フラスコに、化合物a-11 2.7g、ジエチルエーテル50mLを加え、氷冷した。氷冷5分後に1mol/Lのメチルマグネシウムヨージドジエチルエーテル溶液24.7mLを10分かけて加え、その後、35℃に加熱し、2時間攪拌した。次いで、反応溶液を氷冷し、20%過塩素酸水溶液を50mL加え、析出した固体をろ別し、水50mLで洗浄し、50℃で減圧乾燥することで、化合物a-12を0.7g得た。なお、化合物の同定は1H-NMR分析により行った。
【0166】
[化合物(z-59)の合成例]
【化23】
【0167】
撹拌子を入れた100mLのナス型フラスコに、化合物a-12 0.5g、マロンアルデヒドジアニリド塩酸塩 0.22g、アセトニトリル7.5mL、無水酢酸2.5mL、および、ピリジン0.2mLを加え、2時間加熱還流した。その後、室温まで冷却し、析出した固体を減圧ろ過にて回収し、酢酸10mL、アセトニトリル10mLで洗浄し、50℃で減圧乾燥することにより、化合物a-13を0.35g得た。
【0168】
撹拌子を入れた100mLのナス型フラスコに、化合物a-13 0.3g、リチウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート0.8g、ジクロロメタン50mL、および、水20mLを加え、室温にて3時間攪拌した。次いで、分液ロートに移液し、水相を除去した後、有機相を水20mLで2回洗浄し、エバポレーターを用いて有機相から溶媒を留去した。その後、残留物をアセトン20mLに溶解させ、水を100mL加え、エバポレーターで溶媒を13g分留去した後、氷冷した。その後、析出した固体を吸引ろ過にて回収し、メタノール50mLで洗浄した後、固体を50℃で減圧乾燥することにより、化合物(z-59)を0.5g得た。なお、化合物の同定はLC-MSおよび1H-NMR分析により行った。
【0169】
[中間体合成例6]
【化24】
【0170】
撹拌子を入れた200mLのナス型フラスコに、化合物a-14 4.5g、イソ酪酸エチル21.8gを加え攪拌し、5分後に水素化ナトリウム(60%、dispersion in Paraffin Liquid)3.2gを加えた後、80℃にて3時間攪拌した。その後、室温まで冷却し、1N塩酸水溶液30mLを加え中和した後、酢酸エチル150mLで有機相を抽出した。次いで、有機相に硫酸マグネシウム15gを加えて15分間攪拌した後、フィルターろ過にて硫酸マグネシウムを除去し、ろ液を300mLナス型フラスコに入れ、エバポレーターを用いて溶媒を留去することで、化合物a-15を得た。
【0171】
化合物a-15の入ったナス型フラスコに攪拌子を入れ、濃塩酸20mLを追加し、40℃で攪拌した。1時間攪拌の後、反応溶液を氷冷し、1N水酸化ナトリウム水溶液240mLを加え中和した。その後、分液ロートに移液し、酢酸エチル200mLを加えて有機相を抽出した後、硫酸マグネシウム15gを加えて15分間攪拌した。次いで、フィルターろ過にて硫酸マグネシウムを除去し、ろ液を300mLナス型フラスコに入れ、エバポレーターを用いて溶媒を留去した。その後、フラスコに残留した化合物をシリカゲルクロマトグラフィーにて単離精製することにより、目的の化合物a-16を0.4g得た。なお、化合物の同定はLC-MSおよび1H-NMR分析により行った。
【0172】
[中間体合成例7]
【化25】
【0173】
撹拌子を入れた100mLのナス型フラスコに、化合物a-16 0.4g、ジエチルエーテル10mLを加え、氷冷した。氷冷5分後に、1mol/Lのメチルマグネシウムヨージドジエチルエーテル溶液5.0mLを10分かけて加え、その後、35℃に加熱し、2時間攪拌した。次いで、反応溶液を氷冷し、20%過塩素酸水溶液を10mL加えた後、ジクロロメタン20mLを加え、分液ロートに移液し、有機相を回収した。エバポレーターを用いて有機相から溶媒を留去し、固形分残渣を攪拌し、ジエチルエーテル20mLを加えて20分間攪拌した。次いで、固形分を吸引ろ過にてろ取し、50℃で減圧乾燥させることで化合物a-17を0.5g得た。なお、化合物の同定は1H-NMR分析により行った。
【0174】
[化合物(z-62)の合成例]
【化26】
【0175】
撹拌子を入れた100mLのナス型フラスコに、化合物a-17 0.4g、マロンアルデヒドジアニリド塩酸塩 0.16g、アセトニトリル7.5mL、無水酢酸2.5mL、および、ピリジン0.2mLを加え、2時間加熱還流した。その後、室温まで冷却し、析出した固体を減圧ろ過にて回収し、ジエチルエーテル10mLで洗浄し、50℃で減圧乾燥することにより化合物a-18を0.35g得た。
【0176】
撹拌子を入れた100mLのナス型フラスコに、化合物a-18 0.3g、リチウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート0.8g、ジクロロメタン50mL、および、水20mLを加え、室温にて3時間攪拌した。その後、分液ロートに移液し、水相を除去した後、有機相を水20mLで2回洗浄し、エバポレーターを用いて有機相から溶媒を留去し、固体を50℃で減圧乾燥することにより、化合物(z-62)を0.4g得た。なお、化合物の同定はLC-MSおよび1H-NMR分析により行った。
【0177】
[中間体合成例8]
【化27】
【0178】
撹拌子を入れた200mLのナス型フラスコに、化合物a-19 15g、4,4-ジメチル-3-オキソ吉草酸メチル28.7gを加え、180℃にて24時間攪拌した。その後、室温まで冷却し、ヘキサン250mL、1N塩酸水溶液200mLを加え、分液ロートに移液し、水相を除去した。次いで、エバポレーターを用いて有機相から溶媒を留去した後、フラスコに残留した化合物をシリカゲルクロマトグラフィーにて単離精製することにより、目的の化合物a-20を7g得た。なお、化合物の同定はLC-MSおよび1H-NMR分析により行った。
【0179】
[中間体合成例9]
【化28】
【0180】
撹拌子を入れた100mLのナス型フラスコに、化合物a-20 3.5g、ジエチルエーテル20mLを加え、氷冷した。氷冷5分後に1mol/Lメチルマグネシウムヨージドジエチルエーテル溶液14.0mLを10分かけて加え、その後35℃に加熱し、2時間攪拌した。次いで、室温まで自然降温させた後、得られた反応溶液を、水100mLおよび攪拌子の入ったビーカーに5分かけて加えた。その後、40%フッ化ホウ素酸水溶液20gを10分かけて加え、30分間攪拌した後、分液ロートに移液した。次いで、ジクロロメタン30mLを加え、分液することで水相を除去し、エバポレーターを用いて有機相から溶媒を留去した。その後、残渣をジクロロメタン30mLに溶解させ、ジイソプロピルエーテル50mLを加え、エバポレーターにて溶媒を40g除去した後、氷冷し、析出した固形分を吸引ろ過にてろ取し、50℃で減圧乾燥させることで、化合物a-21を2.3g得た。なお、化合物の同定は1H-NMR分析により行った。
【0181】
[化合物(z-151)の合成例]
【化29】
【0182】
撹拌子を入れた100mLのナス型フラスコに、化合物a-21 0.5g、マロンアルデヒドジアニリド塩酸塩 0.18g、および、ピリジン15mLを加え、2時間加熱還流した。その後、室温まで冷却後、エバポレーターにて溶媒留去し、カラムクロマトグラフィーで分離することで、化合物a-22を0.2g得た。
【0183】
撹拌子を入れた100mLのナス型フラスコに、化合物a-22 0.2g、リチウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート0.8g、ジクロロメタン50mL、および、水20mLを加え、室温にて3時間攪拌した。その後、分液ロートに移液し、水相を除去した後、有機相を水20mLで2回洗浄し、エバポレーターを用いて有機相から溶媒を留去し、カラムクロマトグラフィーで分離することにより、化合物(z-151)を0.2g得た。なお、化合物の同定はLC-MSおよび1H-NMR分析により行った。
【0184】
[中間体合成例10]
【化30】
【0185】
撹拌子を入れた200mLのナス型フラスコに、化合物a-23 1.9g、ピバル酸エチル2.0gを加え攪拌し、5分後に、水素化ナトリウム(60%、dispersion in Paraffin Liquid)0.3gを加えた後、80℃にて3時間攪拌した。その後、室温まで冷却し、1N塩酸水溶液30mLを加え中和した後、酢酸エチル150mLで有機相を抽出した。次いで、有機相に、硫酸マグネシウム5gを加えて15分間攪拌した後、フィルターろ過にて硫酸マグネシウムを除去し、ろ液を300mLナス型フラスコに入れ、エバポレーターを用いて溶媒を留去することで、化合物a-24 1.3gを得た。
【0186】
化合物a-24 1.3gの入ったナス型フラスコに攪拌子を入れ、濃塩酸20mLを追加し、40℃で攪拌した。1時間攪拌の後、反応溶液を氷冷し、1N水酸化ナトリウム水溶液240mLを加え中和した。次いで、分液ロートに移液し、酢酸エチル200mLを加えて有機相を抽出した後、硫酸マグネシウム5gを加えて15分間攪拌した。その後、フィルターろ過にて硫酸マグネシウムを除去し、ろ液を300mLナス型フラスコに入れ、エバポレーターを用いて溶媒を留去した。その後、フラスコに残留した化合物をシリカゲルクロマトグラフィーにて単離精製することにより、化合物a-25を1.1g得た。なお、化合物の同定はLC-MSおよび1H-NMR分析により行った。
【0187】
[中間体合成例11]
【化31】
【0188】
撹拌子を入れた200mLのナス型フラスコに、化合物a-25 1.5g、ジエチルエーテル50mLを加え、氷冷した。氷冷5分後に1mol/Lのメチルマグネシウムヨージドジエチルエーテル溶液1.5mLを10分かけて加え、その後、35℃に加熱し、2時間攪拌した。次いで、反応溶液を氷冷し、20%過塩素酸水溶液を50mL加え、析出した固体をろ別し、水50mLで洗浄し、50℃で減圧乾燥することで、化合物a-26を3.0g得た。なお、化合物の同定は1H-NMR分析により行った。
【0189】
[化合物(z-157)の合成例]
【化32】
【0190】
撹拌子を入れた100mLのナス型フラスコに、化合物a-26 7.0g、マロンアルデヒドジアニリド塩酸塩 2.5g、アセトニトリル50mL、無水酢酸10mL、および、ピリジン10mLを加え、2時間加熱還流した。その後、室温まで冷却し、析出した固体を減圧ろ過にて回収し、酢酸10mL、アセトニトリル10mLで洗浄し、50℃で減圧乾燥することにより、化合物a-27を5.1g得た。
【0191】
撹拌子を入れた100mLのナス型フラスコに、化合物a-27 0.6g、リチウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート1.2g、ジクロロメタン50mL、および、水50mLを加え、室温にて3時間攪拌した。次いで、分液ロートに移液し、水相を除去した後、有機相を水20mLで2回洗浄し、エバポレーターを用いて有機相から溶媒を留去した。その後、残留物をアセトン20mLに溶解させ、水を100mL加え、エバポレーターで溶媒を10g分留去した後、氷冷した。その後、析出した固体を吸引ろ過にて回収し、メタノール50mLで洗浄した後、固体を50℃で減圧乾燥することにより、化合物(z-157)を1.0g得た。なお、化合物の同定はLC-MSおよび1H-NMR分析により行った。
【0192】
[中間体合成例12]
【化33】
【0193】
撹拌子を入れた200mLのナス型フラスコに、1-アダマンタンカルボニルクロリド(化合物a-28)22gと、メチレンシクロヘキサン5.2gとを加え、90℃に加熱した後、トリフルオロメタンスルホン酸10gを滴下しながら10分間攪拌した。次いで、0℃まで冷却した後、ヘキサン150mLとジエチルエーテル50mLと水50mLとを添加して撹拌し、析出した固体をろ過にてろ別し、50℃で減圧乾燥することで、化合物a-35を4.2g得た。なお、化合物の同定は1H-NMR分析で行った。
【0194】
[化合物(z-163)の合成例]
【化34】
【0195】
撹拌子を入れた100mLのナス型フラスコに、化合物a-35 0.5g、マロンアルデヒドジアニリド塩酸塩 0.1g、アセトニトリル4mL、無水酢酸1mL、および、ピリジン1mLを加え、90℃で10分間撹拌した。0℃まで冷却した後、析出した固体をろ過にてろ別し、アセトニトリル2mLで洗浄の後、50℃で減圧乾燥することで、化合物a-36を0.3g得た。なお、化合物の同定は1H-NMR分析で行った。
【0196】
撹拌子を入れた100mLのナス型フラスコに、化合物a-36 0.3g、リチウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート0.4g、ジクロロメタン20mL、および、水20mLを加え、室温にて4時間攪拌した。次いで、分液ロートに移液し、水相を除去した後、有機相を水20mLで2回洗浄し、エバポレーターを用いて有機相から溶媒を留去した。その後、残留物をジクロロメタンに溶解させ、メタノールを加えた後、析出した固体を吸引ろ過にて回収し、50℃で減圧乾燥することで、化合物(z-163)を0.4g得た。なお、化合物の同定はLC-MSおよび1H-NMR分析により行った。
【0197】
[中間体合成例13]
【化35】
【0198】
化合物a-37(20.0g)のt-BuOH(150mL)溶液に、ピバル酸エチル(50.0g)を加え、水素化ナトリウム(60%, dispersion in Paraffin Liquid)5.5gを加えた後、80℃にて3時間攪拌した。その後、室温まで冷却し、濃塩酸20mLを加えた。酢酸エチル・水で分液洗浄後、硫酸ナトリウムを加えて乾燥させ、エバポレーターを用いて溶媒を留去し、化合物a-38を得た。
【0199】
その後、化合物a-38を精製せず、濃塩酸60mLを追加し、40℃で攪拌した。1時間後、反応溶液を氷冷し、1N水酸化ナトリウム水溶液を加え中和した。酢酸エチル・水で分液洗浄後、硫酸ナトリウムを加えて乾燥させ、エバポレーターを用いて溶媒を留去した。得られた混合物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製することにより、化合物a-39(15.4g)を得た。化合物の同定はLC-MSおよび1H-NMR分析により行った。
【0200】
[中間体合成例14]
【化36】
【0201】
化合物a-39(15.4g)、フェニルボロン酸(11.7g)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(1.0g)、および、炭酸カリウム(60.0g)を、トルエン50mL、水50mLの混合溶液に溶解させ、激しく撹拌させながら110℃で12時間加熱した。室温まで放冷後、トルエン・水で分液洗浄し、有機層に硫酸ナトリウムを加えて乾燥させ、エバポレーターを用いて溶媒を留去した。得られた混合物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製することにより、化合物a-40(12.4g)を得た。
【0202】
化合物a-40(12.4g)およびテトラヒドロフラン90mLを攪拌しながら氷冷した。氷冷5分後に、メチルマグネシウムヨージドジエチルエーテル溶液(1mol/L、50mL)を滴下し、35℃に加熱して2時間攪拌した。次いで、反応溶液を氷冷し、20%過塩素酸水溶液を90mL加え、析出した固体をろ別し、水60mLで洗浄し、50℃で減圧乾燥することで化合物a-41(10.4g)を得た。化合物の同定は1H-NMR分析により行った。
【0203】
[化合物(z-156)の合成例]
【化37】
【0204】
撹拌子を入れた100mLのナス型フラスコに、化合物a-41 7.0g、マロンアルデヒドジアニリド塩酸塩 2.5g、アセトニトリル50mL、無水酢酸10mL、および、ピリジン10mLを加え、2時間加熱還流した。その後、室温まで冷却し、析出した固体を減圧ろ過にて回収し、酢酸10mL、アセトニトリル10mLで洗浄し、50℃で減圧乾燥することにより、化合物a-42を5.0g得た。
【0205】
撹拌子を入れた100mLのナス型フラスコに、化合物a-42 0.6g、リチウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート1.2g、ジクロロメタン50mL、および、水50mLを加え、室温にて3時間攪拌した。次いで、分液ロートに移液し、水相を除去した後、有機相を水20mLで2回洗浄し、エバポレーターを用いて有機相から溶媒を留去した。その後、残留物をアセトン20mLに溶解させ、水を100mL加え、エバポレーターで溶媒を10g分留去した後、氷冷した。その後、析出した固体を吸引ろ過にて回収し、メタノール50mLで洗浄した後、固体を50℃で減圧乾燥することにより、化合物(z-156)を1.0g得た。なお、化合物の同定はLC-MSおよび1H-NMR分析により行った。
【0206】
[中間体合成例15]
【化38】
【0207】
ジクロロメタン(100mL)中で、化合物a-43(20.0g)、二塩化オキサリル(21.4g)、ピリジン(13.4g)およびDMF(1mL)を、室温下で1時間撹拌した。ジクロロメタンをエバポレーターにより除去し、化合物a-44を含む混合物を得た。
【0208】
[化合物(z-161)の合成例]
【化39】
【0209】
ピバル酸エチルを化合物a-44に変更した以外は中間体合成例10と同様の方法で化合物a-45を得た。
【0210】
化合物a-23を化合物a-45に変更し、マロンアルデヒドジアニリド塩酸塩をN-[2-chloro-3-(phenylamino)-2-propenylidene]-benzenamine monohydrochlorideに変更した以外は中間体合成例11および化合物(z-157)の合成例と同様の方法で化合物(z-161)を得た。なお、化合物の同定はLC-MSおよび1H-NMR分析により行った。
【0211】
<要件(A)>
下記試験で用いた化合物(Z)または(X)をジクロロメタンに溶解させた溶液を用い、日本分光(株)製の分光光度計(V-7200)を用いて測定される透過スペクトル(但し、該透過スペクトルは、吸収極大波長における透過率が10%となるスペクトルである。)を用いて、前記要件(A)を測定した。結果を表5に示す。なお、表5における要件A~Dはそれぞれ、前記<化合物(Z)>の欄の要件(A)、(B-1)、(C)および(D)のことを示す。
【0212】
<要件(B)>
下記試験で用いた化合物(Z)または(X)をジクロロメタンに溶解させた溶液を用い、日本分光(株)製の分光光度計(V-7200)を用いて測定される吸収スペクトルを用いて、前記要件(B)を測定した。結果を表5に示す。
【0213】
<要件(C)>
容器に、樹脂合成例1で得られた樹脂A 100質量部、Irganox 1010(BASFジャパン(株)製)0.3質量部、下記試験で用いた化合物(Z)または(X)、およびジクロロメタンを加えて樹脂濃度が20質量%の溶液を調製した。
なお、下記化合物(z-1)、(x-3)、(z-163)を用いた場合は、その使用量を0.05質量部とし、下記化合物(z-16)を用いた場合は、その使用量を0.06質量部とし、下記化合物(z-59)、(z-62)、(z-156)、(z-157)、(z-158)、(z-159)、(z-160)、(z-161)、(z-162)を用いた場合は、その使用量を0.04質量部とし、下記化合物(z-151)を用いた場合は、その使用量を0.08質量部とし、下記化合物(x-4)を用いた場合は、その使用量を0.03質量部とした。これら各化合物の使用量は、各化合物のモル吸光係数に応じ、得られる溶液の吸収極大波長における吸光度が約1となるように調整した量である。
【0214】
得られた溶液を平滑なガラス板上にキャストし、20℃で8時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。剥離した塗膜を更に減圧下100℃で8時間乾燥して、厚さ0.1mm、縦210mm、横210mmの耐光性評価用樹脂層を得た。
前記耐光性評価用樹脂層の吸光度を日本分光(株)製の分光光度計(V-7200)を用いて測定し、波長700~1000nmの範囲の極大吸収波長λaにおける吸光度Aiを測定した。その後、耐光性評価用樹脂層の面に対する垂直方向の直上から30cmの距離になるように蛍光灯(ツインバード工業(株)製、アーム型タッチインバータ蛍光灯LK-H766B、全光束:1334 lm)を設置し、蛍光灯を30日間照射した。蛍光灯照射30日後の耐光性評価用樹脂層の前記λaおける吸光度Afを測定し、吸光度の保持率D(=Af×100/Ai)を算出した。結果を表5に示す。
【0215】
<要件(D)>
下記試験で用いた化合物(Z)または(X)をジクロロメタンに溶解させた溶液を用い、日本分光(株)製の分光光度計(V-7200)を用いて測定される吸収スペクトルにおいて、極大吸収波長のうち、最も長い波長における吸光度をεa、波長430~580nmにおける吸光度の最大値をεbmaxとして、εa/εbmaxを算出した。結果を表5に示す。
【0216】
【表5】
【0217】
<分子量>
樹脂の分子量は、各樹脂の溶剤への溶解性等を考慮し、下記の(a)または(b)の方法にて測定を行った。
(a)ウォーターズ(WATERS)社製のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置(150C型、カラム:東ソー(株)製Hタイプカラム、展開溶剤:o-ジクロロベンゼン)を用い、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定した。
(b)東ソー(株)製GPC装置(HLC-8220型、カラム:TSKgelα-M、展開溶剤:THF)を用い、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定した。
【0218】
なお、後述する樹脂合成例3で合成した樹脂については、前記方法による分子量の測定ではなく、下記方法(c)による対数粘度の測定を行った。
(c)ポリイミド溶液の一部を無水メタノールに投入してポリイミドを析出させ、ろ過することで未反応単量体から分離した後、80℃で12時間真空乾燥した。得られたポリイミド0.1gをN-メチル-2-ピロリドン20mLに溶解(希薄ポリイミド溶液)し、キャノン・フェンスケ粘度計を使用して30℃における対数粘度(μ)を下記式により求めた。
μ={ln(ts/t0)}/C
t0:溶媒(N-メチル-2-ピロリドン)の流下時間
ts:希薄ポリイミド溶液の流下時間
C:0.5g/dL
【0219】
<ガラス転移温度(Tg)>
樹脂のガラス転移温度は、(株)日立ハイテクサイエンス製の示差走査熱量計(DSC6200)を用いて、昇温速度:毎分20℃、窒素気流下で測定した。
【0220】
[樹脂合成例1]
下記式(a)で表される8-メチル-8-メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン(以下「DNM」ともいう。)100質量部、1-ヘキセン(分子量調節剤)18質量部およびトルエン(開環重合反応用溶媒)300質量部を、窒素置換した反応容器に仕込み、この溶液を80℃に加熱した。次いで、反応容器内の溶液に、重合触媒として、トリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.6mol/リットル)0.2質量部と、メタノール変性の六塩化タングステンのトルエン溶液(濃度0.025mol/リットル)0.9質量部とを添加し、この溶液を80℃で3時間加熱攪拌することで開環重合反応させ、開環重合体溶液を得た。この重合反応における重合転化率は97%であった。
【0221】
【化40】
【0222】
前記で得られた開環重合体溶液1,000質量部をオートクレーブに仕込み、この開環重合体溶液に、RuHCl(CO)[P(C6533を0.12質量部添加し、水素ガス圧100kg/cm2、反応温度165℃の条件下で、3時間加熱撹拌して水素添加反応を行った。得られた反応溶液(水素添加重合体溶液)を冷却した後、水素ガスを放圧した。得られた反応溶液を大量のメタノール中に注いで凝固物を分離回収し、これを乾燥して、水素添加重合体(以下「樹脂A」ともいう。)を得た。得られた樹脂Aは、数平均分子量(Mn)が32,000、重量平均分子量(Mw)が137,000であり、ガラス転移温度(Tg)が165℃であった。
【0223】
[樹脂合成例2]
3Lの4つ口フラスコに、2,6-ジフルオロベンゾニトリル35.12g(0.253mol)、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン87.60g(0.250mol)、炭酸カリウム41.46g(0.300mol)、N,N-ジメチルアセトアミド443gおよびトルエン111gを添加した。続いて、4つ口フラスコに温度計、撹拌機、窒素導入管付き三方コック、ディーンスターク管および冷却管を取り付けた。次いで、フラスコ内を窒素置換した後、得られた溶液を140℃で3時間反応させ、生成する水をディーンスターク管から随時取り除いた。水の生成が認められなくなったところで、温度を徐々に160℃まで上昇させ、そのままの温度で6時間反応させた。その後、室温(25℃)まで冷却し、生成した塩をろ紙で除去し、ろ液をメタノールに投じて再沈殿させ、ろ別によりろ物(残渣)を単離した。得られたろ物を60℃で一晩真空乾燥することで、白色粉末(以下「樹脂B」ともいう。)を得た(収率95%)。得られた樹脂Bは、数平均分子量(Mn)が75,000、重量平均分子量(Mw)が188,000であり、ガラス転移温度(Tg)が285℃であった。
【0224】
[樹脂合成例3]
温度計、撹拌器、窒素導入管、側管付き滴下ロート、ディーンスターク管および冷却管を備えた500mLの5つ口フラスコに、窒素気流下で、1,4-ビス(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン27.66g(0.08モル)および4,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル7.38g(0.02モル)を入れ、γ-ブチロラクトン68.65gおよびN,N-ジメチルアセトアミド17.16gに溶解させた。得られた溶液を、氷水バスを用いて5℃に冷却し、同温に保ちながら1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物22.62g(0.1モル)およびイミド化触媒であるトリエチルアミン0.50g(0.005モル)を一括添加した。添加終了後、180℃に昇温し、留出液を随時留去させながら、6時間還流させた。反応終了後、内温が100℃になるまで空冷し、次いで、N,N-ジメチルアセトアミド143.6gを加えて希釈し、攪拌しながら冷却することで、固形分濃度20質量%のポリイミド溶液264.16gを得た。このポリイミド溶液の一部を1Lのメタノール中に注ぎ入れてポリイミドを沈殿させた。ろ別したポリイミドをメタノールで洗浄した後、100℃の真空乾燥機中で24時間乾燥することで、白色粉末(以下「樹脂C」ともいう。)を得た。得られた樹脂CのIRスペクトルを測定したところ、イミド基に特有の1704cm-1、1770cm-1の吸収が見られた。樹脂Cはガラス転移温度(Tg)が310℃であり、対数粘度を測定したところ、0.87であった。
【0225】
[実施例1]
〔基材の作製〕
容器に、樹脂合成例1で得られた樹脂A 100質量部、化合物(Z)として、下記化合物(z-1)(ジクロロメタン中での吸収極大波長787nm)0.20質量部、化合物(X)として、下記化合物(x-1)(ジクロロメタン中での吸収極大波長711nm)0.038質量部、下記化合物(x-2)(ジクロロメタン中での吸収極大波長738nm)0.075質量部、およびジクロロメタンを加えて樹脂濃度が20質量%の溶液を調製した。得られた溶液を平滑なガラス板上にキャストし、20℃で8時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。剥離した塗膜を更に減圧下100℃で8時間乾燥して、厚さ0.1mm、縦210mm、横210mmの樹脂層(1)を得た。
【0226】
・化合物(z-1)
【化41】
【0227】
・化合物(x-1)
【化42】
【0228】
・化合物(x-2)
【化43】
【0229】
得られた樹脂層(1)の片面に、下記樹脂組成物(1)を、得られる樹脂層(2)の厚みが3μmとなるようにバーコーターで塗布し、オーブン中70℃で2分間加熱して溶剤を揮発除去した。次にUVコンベア式露光機(アイグラフィックス(株)製、アイ紫外硬化用装置、型式US2-X0405、60Hz)を用いて露光(露光量500mJ/cm2、照度:200mW/cm2)を行い、樹脂組成物(1)を硬化させ、樹脂層(1)上に樹脂層(2)を形成した。同様にして、樹脂層(1)のもう一方の面にも樹脂組成物(1)からなる樹脂層(2)を形成した。これにより、化合物(Z)を含む樹脂層(1)の両面に化合物(Z)を含まない樹脂層(2)を有する基材を得た。
【0230】
樹脂組成物(1):トリシクロデカンジメタノールアクリレート60質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート40質量部、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン5質量部、およびメチルエチルケトン(溶剤、得られる組成物中の固形分濃度が30質量%となるよう使用)を含む組成物
【0231】
(耐光性)
得られた基材を、室内蛍光灯に500時間曝露させ、樹脂中に含まれる近赤外線吸収色素の耐光性を評価した。耐光性は、基材の最も吸収強度が高い波長(以下「λa」と称する。基材が複数の吸収極大を有する場合、λaはこのうち最も吸収強度が高い波長である。)における蛍光灯曝露前後の吸光度変化から色素残存率(%)を算出して評価した。
蛍光灯で500時間曝露後の色素残存率が、95%以上の場合を「○」、95%未満の場合を「×」とした。結果を表8に示す。
【0232】
〔光学フィルターの作製〕
前記基材の作製で得られた基材の片面に誘電体多層膜(I)を形成し、さらに基材のもう一方の面に誘電体多層膜(II)を形成し、厚さ約0.110mmの光学フィルターを得た。
【0233】
誘電体多層膜(I)は、蒸着温度100℃で、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とを交互に積層した積層体である(合計26層)。誘電体多層膜(II)は、蒸着温度100℃で、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とを交互に積層した積層体である(合計22層)。
誘電体多層膜(I)および(II)のいずれにおいても、シリカ層およびチタニア層を、基材側からチタニア層、シリカ層、チタニア層、・・・シリカ層、チタニア層、シリカ層の順となるように交互に積層し、光学フィルターの最外層をシリカ層とした。
【0234】
各層の厚さと層数については、可視域の良好な透過率と近赤外域の反射性能とを達成できるよう、基材の屈折率の波長依存特性や、使用した化合物(Z)および(X)の吸収特性に合わせて、光学薄膜設計ソフト(Essential Macleod、Thin Film Center社製)を用いて最適化を行った。最適化を行う際、本実施例においてはソフトへの入力パラメータ(Target値)を下記表6の通りとした。
【0235】
【表6】
【0236】
膜構成最適化の結果、前記誘電体多層膜(I)を、物理膜厚約37~168nmのシリカ層と物理膜厚約11~104nmのチタニア層とを交互に積層した、積層数26層の多層蒸着膜とし、誘電体多層膜(II)を、物理膜厚約40~191nmのシリカ層と物理膜厚約10~110nmのチタニア層とを交互に積層した、積層数22層の多層蒸着膜とした。最適化を行った膜構成の一例を下記表7に示す。
【0237】
【表7】
【0238】
得られた光学フィルターについて、波長430~580nmにおける光学フィルターの垂直方向から測定した分光透過率の平均値T、および、波長700~800nmにおける誘電体多層膜(II)側の垂直方向から5°の角度から入射する無偏光光線の分光反射率の平均値Rを求めた。なお、該分光透過率および分光反射率は、日本分光(株)製の分光光度計(V-7200)を用いて測定した。結果を表8に示す。
【0239】
[実施例2]
実施例1において、化合物(z-1)0.2質量部の代わりに、下記化合物(z-16)(ジクロロメタン中での吸収極大波長825nm)0.08質量部を用いたこと、樹脂Aの代わりに樹脂Bを用いたこと以外は、実施例1と同様にして基材を得た。
得られた基材について、実施例1と同様に耐光性を評価した。結果を表8に示す。
【0240】
・化合物(z-16)
【化44】
【0241】
続いて、実施例1と同様に、得られた基材の片面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計26層の誘電体多層膜(I)を形成し、さらに基材のもう一方の面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計22層の誘電体多層膜(II)を形成し、厚さ約0.110mmの光学フィルターを得た。
誘電体多層膜の設計は、実施例1と同様に、基材の屈折率の波長依存性等を考慮した上で、実施例1と同じ設計パラメーターを用いて行った。
得られた光学フィルターについて、実施例1と同様に、平均値TおよびRを求めた。結果を表8に示す。
【0242】
[実施例3]
実施例1において、化合物(z-1)0.2質量部の代わりに、下記化合物(z-59)(ジクロロメタン中での吸収極大波長770nm)0.14質量部を用いたこと、樹脂Aの代わりに樹脂Cを用いたこと以外は、実施例1と同様にして基材を得た。
得られた基材について、実施例1と同様に耐光性を評価した。結果を表8に示す。
【0243】
・化合物(z-59)
【化45】
【0244】
続いて、実施例1と同様に、得られた基材の片面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計26層の誘電体多層膜(I)を形成し、さらに基材のもう一方の面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計22層の誘電体多層膜(II)を形成し、厚さ約0.110mmの光学フィルターを得た。
誘電体多層膜の設計は、実施例1と同様に、基材の屈折率の波長依存性等を考慮した上で、実施例1と同じ設計パラメーターを用いて行った。
得られた光学フィルターについて、実施例1と同様に、平均値TおよびRを求めた。結果を表8に示す。
【0245】
[実施例4]
実施例1において、化合物(z-1)0.2質量部の代わりに、下記化合物(z-62)(ジクロロメタン中での吸収極大波長757nm)0.2質量部を用いたこと、樹脂Aの代わりに(株)日本触媒製アクリビュアを用いたこと以外は、実施例1と同様にして基材を得た。
得られた基材について、実施例1と同様に耐光性を評価した。結果を表8に示す。
【0246】
・化合物(z-62)
【化46】
【0247】
続いて、実施例1と同様に、得られた基材の片面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計26層の誘電体多層膜(I)を形成し、さらに基材のもう一方の面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計22層の誘電体多層膜(II)を形成し、厚さ約0.110mmの光学フィルターを得た。
誘電体多層膜の設計は、実施例1と同様に、基材の屈折率の波長依存性等を考慮した上で、実施例1と同じ設計パラメーターを用いて行った。
得られた光学フィルターについて、実施例1と同様に、平均値TおよびRを求めた。結果を表8に示す。
【0248】
[実施例5]
実施例1において、化合物(z-1)0.2質量部の代わりに化合物(z-151)(ジクロロメタン中での吸収極大波長824nm)0.08質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして基材を得た。
得られた基材について、実施例1と同様に耐光性を評価した。結果を表8に示す。
【0249】
・化合物(z-151)
【化47】
【0250】
続いて、実施例1と同様に、得られた基材の片面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計26層の誘電体多層膜(I)を形成し、さらに基材のもう一方の面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計22層の誘電体多層膜(II)を形成し、厚さ約0.110mmの光学フィルターを得た。
誘電体多層膜の設計は、実施例1と同様に、基材の屈折率の波長依存性等を考慮した上で、実施例1と同じ設計パラメーターを用いて行った。
得られた光学フィルターについて、実施例1と同様に、平均値TおよびRを求めた。結果を表8に示す。
【0251】
[実施例6]
容器に、樹脂合成例1で得られた樹脂A 100質量部、化合物(X)として、化合物(x-1)0.38質量部、化合物(x-2)0.75質量部、およびジクロロメタンを加えて、樹脂濃度が20質量%の溶液を調製し、孔径5μmのミリポアフィルターでろ過を行い、樹脂溶液(E6-1)を得た。
同様にして、樹脂A 100質量部、化合物(Z)として、前記化合物(z-1)2質量部、およびジクロロメタンを加えて、樹脂濃度が20質量%の溶液を調製し、孔径5μmのミリポアフィルターでろ過を行い、樹脂溶液(E6-2)を得た。
【0252】
200mm×200mmの大きさにカットした、日本電気硝子(株)製の透明ガラス支持体「OA-10G」(厚み200μm)の両面に下記樹脂組成物(2)を、乾燥後の膜厚が約1μmとなるようにスピンコートで塗布した後、ホットプレート上80℃で2分間加熱して溶媒を揮発除去し、ガラス支持体と後述するコーティング樹脂層(1)およびコーティング樹脂層(2)との接着層として機能する接着層を形成した。
【0253】
次に、前記接着層が形成されたガラス支持体の片面にスピンコーターを用いて、樹脂溶液(E6-1)を乾燥後の膜厚が10μmとなるように塗布し、ホットプレート上80℃で5分間加熱して溶媒を揮発除去し、コーティング樹脂層(2)を形成した。
更に、前記接着層が形成されたガラス支持体のもう一方の面にスピンコーターを用いて、樹脂溶液(E6-2)を乾燥後の膜厚が10μmとなるように塗布し、ホットプレート上80℃で5分間加熱して溶媒を揮発除去し、コーティング樹脂層(1)を形成した。
これにより、ガラス支持体の一方の面に化合物(Z)を含む樹脂層を積層し、他方の面に化合物(Z)を含まない樹脂層を積層した厚み222μmの基材を得た。
得られた基材について、実施例1と同様に耐光性を評価した。結果を表9に示す。
【0254】
樹脂組成物(2):イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート(商品名:アロニックス M-315、東亜合成(株)製)30質量部、1,9-ノナンジオールジアクリレート20質量部、メタクリル酸20質量部、メタクリル酸グリシジル30質量部、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン5質量部、1-ヒドロキシシクロヘキシルベンゾフェノン(商品名:IRGACURE184、BASFジャパン(株)製)5質量部およびサンエイドSI-110主剤(三新化学工業(株)製)1質量部を混合し、固形分濃度が50質量%となるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解させた後、孔径0.2μmのミリポアフィルターでろ過した組成物
【0255】
続いて、実施例1を参考にして、コーティング樹脂層(2)面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計26層の誘電体多層膜(I)を形成し、さらにコーティング樹脂層(1)面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計22層の誘電体多層膜(II)を形成し、厚さ約0.226mmの光学フィルターを得た。
誘電体多層膜の設計は、実施例1と同様に、基材の屈折率の波長依存性等を考慮した上で、実施例1と同じ設計パラメーターを用いて行った。
得られた光学フィルターについて、実施例1と同様に、平均値TおよびRを求めた。結果を表9に示す。
【0256】
[実施例7]
実施例1において、さらに下記化合物(x-3)(ジクロロメタン中での吸収極大波長931nm)0.01質量部を追加で用いたこと以外は、実施例1と同様にして基材を得た。
得られた基材について、実施例1と同様に耐光性を評価した。結果を表8に示す。
【0257】
・化合物(x-3)
【化48】
【0258】
続いて、実施例1と同様に、得られた基材の片面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計26層の誘電体多層膜(I)を形成し、さらに基材のもう一方の面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計22層の誘電体多層膜(II)を形成し、厚さ約0.110mmの光学フィルターを得た。
誘電体多層膜の設計は、実施例1と同様に、基材の屈折率の波長依存性等を考慮した上で、実施例1と同じ設計パラメーターを用いて行った。
得られた光学フィルターについて、実施例1と同様に、平均値TおよびRを求めた。結果を表8に示す。
【0259】
[実施例8]
実施例1において、さらに下記化合物(x-5)(ジクロロメタン中での吸収極大波長1095nm)0.03質量部を追加で用いたこと以外は、実施例1と同様にして基材を得た。
得られた基材について、実施例1と同様に耐光性を評価した。結果を表8に示す。
【0260】
・化合物(x-5)
【化49】
【0261】
続いて、実施例1と同様に、得られた基材の片面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計26層の誘電体多層膜(I)を形成し、さらに基材のもう一方の面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計22層の誘電体多層膜(II)を形成し、厚さ約0.110mmの光学フィルターを得た。
誘電体多層膜の設計は、実施例1と同様に、基材の屈折率の波長依存性等を考慮した上で、実施例1と同じ設計パラメーターを用いて行った。
得られた光学フィルターについて、実施例1と同様に、平均値TおよびRを求めた。結果を表8に示す。
【0262】
[実施例9]
実施例1において、化合物(z-1)0.2質量部の代わりに、化合物(z-16)(ジクロロメタン中での吸収極大波長825nm)0.16質量部および化合物(z-59)(ジクロロメタン中での吸収極大波長770nm)0.12質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして基材を得た。
得られた基材について、実施例1と同様に耐光性を評価した。結果を表8に示す。
【0263】
続いて、実施例1と同様に、得られた基材の片面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計26層の誘電体多層膜(I)を形成し、さらに基材のもう一方の面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計22層の誘電体多層膜(II)を形成し、厚さ約0.110mmの光学フィルターを得た。
誘電体多層膜の設計は、実施例1と同様に、基材の屈折率の波長依存性等を考慮した上で、実施例1と同じ設計パラメーターを用いて行った。
得られた光学フィルターについて、実施例1と同様に、平均値TおよびRを求めた。結果を表8に示す。
【0264】
[実施例10]
実施例1において、さらに下記化合物(y-1)(ジクロロメタン中での吸収極大波長394nm)0.17質量部を追加で用いたこと以外は、実施例1と同様にして基材を得た。
得られた基材について、実施例1と同様に耐光性を評価した。結果を表8に示す。
【0265】
・化合物(y-1)
【化50】
【0266】
続いて、実施例1と同様に、得られた基材の片面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計26層の誘電体多層膜(I)を形成し、さらに基材のもう一方の面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計22層の誘電体多層膜(II)を形成し、厚さ約0.110mmの光学フィルターを得た。
誘電体多層膜の設計は、実施例1と同様に、基材の屈折率の波長依存性等を考慮した上で、実施例1と同じ設計パラメーターを用いて行った。
得られた光学フィルターについて、実施例1と同様に、平均値TおよびRを求めた。結果を表8に示す。
【0267】
[実施例11]
実施例6において、日本電気硝子(株)製の透明ガラス支持体「OA-10G」(厚み200μm)の代わりに、松波硝子工業(株)製の近赤外線吸収ガラス基板「BS-11」(厚み0.2mm)を用いたこと以外は実施例6と同様にして基材を得た。
得られた基材について、実施例1と同様に耐光性を評価した。結果を表9に示す。
【0268】
続いて、実施例6と同様に、コーティング樹脂層(2)面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計26層の誘電体多層膜(I)を形成し、さらにコーティング樹脂層(1)面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計22層の誘電体多層膜(II)を形成し、厚さ約0.226mmの光学フィルターを得た。
誘電体多層膜の設計は、実施例1と同様に、基材の屈折率の波長依存性等を考慮した上で、実施例1と同じ設計パラメーターを用いて行った。
得られた光学フィルターについて、実施例1と同様に、平均値TおよびRを求めた。結果を表9に示す。
【0269】
[実施例12]
実施例1において、化合物(z-1)0.2質量部の代わりに、下記化合物(z-156)(ジクロロメタン中での吸収極大波長785nm)0.1質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして基材を得た。
得られた基材について、実施例1と同様に耐光性を評価した。結果を表8に示す。
【0270】
・化合物(z-156)
【化51】
【0271】
続いて、実施例1と同様に、得られた基材の片面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計26層の誘電体多層膜(I)を形成し、さらに基材のもう一方の面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計22層の誘電体多層膜(II)を形成し、厚さ約0.110mmの光学フィルターを得た。
誘電体多層膜の設計は、実施例1と同様に、基材の屈折率の波長依存性等を考慮した上で、実施例1と同じ設計パラメーターを用いて行った。
得られた光学フィルターについて、実施例1と同様に、平均値TおよびRを求めた。結果を表8に示す。
【0272】
[実施例13]
実施例12において、化合物(z-156)0.1質量部の代わりに、下記化合物(z-157)(ジクロロメタン中での吸収極大波長788nm)0.1質量部を用いたこと以外は、実施例12と同様にして基材を得た。
得られた基材について、実施例1と同様に耐光性を評価した。結果を表8に示す。
【0273】
・化合物(z-157)
【化52】
【0274】
続いて、実施例1と同様に、得られた基材の片面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計26層の誘電体多層膜(I)を形成し、さらに基材のもう一方の面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計22層の誘電体多層膜(II)を形成し、厚さ約0.110mmの光学フィルターを得た。
誘電体多層膜の設計は、実施例1と同様に、基材の屈折率の波長依存性等を考慮した上で、実施例1と同じ設計パラメーターを用いて行った。
得られた光学フィルターについて、実施例1と同様に、平均値TおよびRを求めた。結果を表8に示す。
【0275】
[実施例14]
実施例12において、化合物(z-156)0.1質量部の代わりに、下記化合物(z-158)(ジクロロメタン中での吸収極大波長790nm)0.1質量部を用いたこと以外は、実施例12と同様にして基材を得た。
得られた基材について、実施例1と同様に耐光性を評価した。結果を表8に示す。
【0276】
・化合物(z-158)
【化53】
【0277】
続いて、実施例1と同様に、得られた基材の片面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計26層の誘電体多層膜(I)を形成し、さらに基材のもう一方の面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計22層の誘電体多層膜(II)を形成し、厚さ約0.110mmの光学フィルターを得た。
誘電体多層膜の設計は、実施例1と同様に、基材の屈折率の波長依存性等を考慮した上で、実施例1と同じ設計パラメーターを用いて行った。
得られた光学フィルターについて、実施例1と同様に、平均値TおよびRを求めた。結果を表8に示す。
【0278】
[実施例15]
実施例12において、化合物(z-156)0.1質量部の代わりに、下記化合物(z-159)(ジクロロメタン中での吸収極大波長800nm)0.1質量部を用いたこと以外は、実施例12と同様にして基材を得た。
得られた基材について、実施例1と同様に耐光性を評価した。結果を表8に示す。
【0279】
・化合物(z-159)
【化54】
【0280】
続いて、実施例1と同様に、得られた基材の片面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計26層の誘電体多層膜(I)を形成し、さらに基材のもう一方の面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計22層の誘電体多層膜(II)を形成し、厚さ約0.110mmの光学フィルターを得た。
誘電体多層膜の設計は、実施例1と同様に、基材の屈折率の波長依存性等を考慮した上で、実施例1と同じ設計パラメーターを用いて行った。
得られた光学フィルターについて、実施例1と同様に、平均値TおよびRを求めた。結果を表8に示す。
【0281】
[実施例16]
実施例12において、化合物(z-156)0.1質量部の代わりに、下記化合物(z-160)(ジクロロメタン中での吸収極大波長791nm)0.1質量部を用いたこと以外は、実施例12と同様にして基材を得た。
得られた基材について、実施例1と同様に耐光性を評価した。結果を表8に示す。
【0282】
・化合物(z-160)
【化55】
【0283】
続いて、実施例1と同様に、得られた基材の片面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計26層の誘電体多層膜(I)を形成し、さらに基材のもう一方の面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計22層の誘電体多層膜(II)を形成し、厚さ約0.110mmの光学フィルターを得た。
誘電体多層膜の設計は、実施例1と同様に、基材の屈折率の波長依存性等を考慮した上で、実施例1と同じ設計パラメーターを用いて行った。
得られた光学フィルターについて、実施例1と同様に、平均値TおよびRを求めた。結果を表8に示す。
【0284】
[実施例17]
実施例12において、化合物(z-156)0.1質量部の代わりに、下記化合物(z-161)(ジクロロメタン中での吸収極大波長800nm)0.1質量部を用いたこと以外は、実施例12と同様にして基材を得た。
得られた基材について、実施例1と同様に耐光性を評価した。結果を表8に示す。
【0285】
・化合物(z-161)
【化56】
【0286】
続いて、実施例1と同様に、得られた基材の片面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計26層の誘電体多層膜(I)を形成し、さらに基材のもう一方の面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計22層の誘電体多層膜(II)を形成し、厚さ約0.110mmの光学フィルターを得た。
誘電体多層膜の設計は、実施例1と同様に、基材の屈折率の波長依存性等を考慮した上で、実施例1と同じ設計パラメーターを用いて行った。
得られた光学フィルターについて、実施例1と同様に、平均値TおよびRを求めた。結果を表8に示す。
【0287】
[実施例18]
実施例12において、化合物(z-156)0.1質量部の代わりに、下記化合物(z-162)(ジクロロメタン中での吸収極大波長810nm)0.1質量部を用いたこと以外は、実施例12と同様にして基材を得た。
得られた基材について、実施例1と同様に耐光性を評価した。結果を表8に示す。
【0288】
・化合物(z-162)
【化57】
【0289】
続いて、実施例1と同様に、得られた基材の片面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計26層の誘電体多層膜(I)を形成し、さらに基材のもう一方の面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計22層の誘電体多層膜(II)を形成し、厚さ約0.110mmの光学フィルターを得た。
誘電体多層膜の設計は、実施例1と同様に、基材の屈折率の波長依存性等を考慮した上で、実施例1と同じ設計パラメーターを用いて行った。
得られた光学フィルターについて、実施例1と同様に、平均値TおよびRを求めた。結果を表8に示す。
【0290】
[実施例19]
実施例12において、化合物(z-156)0.1質量部の代わりに、下記化合物(z-163)(ジクロロメタン中での吸収極大波長760nm)0.1質量部を用いたこと以外は、実施例12と同様にして基材を得た。
得られた基材について、実施例1と同様に耐光性を評価した。結果を表8に示す。
【0291】
・化合物(z-163)
【化58】
【0292】
続いて、実施例1と同様に、得られた基材の片面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計26層の誘電体多層膜(I)を形成し、さらに基材のもう一方の面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計22層の誘電体多層膜(II)を形成し、厚さ約0.110mmの光学フィルターを得た。
誘電体多層膜の設計は、実施例1と同様に、基材の屈折率の波長依存性等を考慮した上で、実施例1と同じ設計パラメーターを用いて行った。
得られた光学フィルターについて、実施例1と同様に、平均値TおよびRを求めた。結果を表8に示す。
【0293】
[比較例1]
実施例1において、化合物(Z)を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして基材を得た。
得られた基材について、実施例1と同様に耐光性を評価した。結果を表8に示す。
【0294】
続いて、実施例1と同様に、得られた基材の片面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計26層の誘電体多層膜(I)を形成し、さらに基材のもう一方の面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計22層の誘電体多層膜(II)を形成し、厚さ約0.110mmの光学フィルターを得た。
誘電体多層膜の設計は、実施例1と同様に、基材の屈折率の波長依存性等を考慮した上で、実施例1と同じ設計パラメーターを用いて行った。
得られた光学フィルターについて、実施例1と同様に、平均値TおよびRを求めた。結果を表8に示す。
【0295】
[比較例2]
実施例1において、化合物(Z)を用いず、化合物(X)として、化合物(x-1)0.038質量部、化合物(x-2)0.075質量部、および化合物(x-3)(ジクロロメタン中での吸収極大波長931nm)0.2質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして基材を得た。
得られた基材について、実施例1と同様に耐光性を評価した。結果を表8に示す。
【0296】
・化合物(x-3)
【化59】
【0297】
続いて、実施例1と同様に、得られた基材の片面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計26層の誘電体多層膜(I)を形成し、さらに基材のもう一方の面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計22層の誘電体多層膜(II)を形成し、厚さ約0.110mmの光学フィルターを得た。
誘電体多層膜の設計は、実施例1と同様に、基材の屈折率の波長依存性等を考慮した上で、実施例1と同じ設計パラメーターを用いて行った。
得られた光学フィルターについて、実施例1と同様に、平均値TおよびRを求めた。結果を表8に示す。
【0298】
[比較例3]
実施例1において、化合物(Z)を用いず、化合物(X)として、化合物(x-1)0.038質量部、化合物(x-2)0.075質量部、化合物(x-4)(ジクロロメタン中での吸収極大波長760nm)0.08質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして基材を得た。
得られた基材について、実施例1と同様に耐光性を評価した。結果を表8に示す。
【0299】
・化合物(x-4)
【化60】
【0300】
続いて、実施例1と同様に、得られた基材の片面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計26層の誘電体多層膜(I)を形成し、さらに基材のもう一方の面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計22層の誘電体多層膜(II)を形成し、厚さ約0.110mmの光学フィルターを得た。
誘電体多層膜の設計は、実施例1と同様に、基材の屈折率の波長依存性等を考慮した上で、実施例1と同じ設計パラメーターを用いて行った。
得られた光学フィルターについて、実施例1と同様に、平均値TおよびRを求めた。結果を表8に示す。
【0301】
【表8】
【0302】
【表9】
【0303】
前記実施例1~19で得られた光学フィルターは、可視光の透過性を良好に維持しながら、近赤外光、特に、波長700~800nmの波長域の反射光強度の低減が可能であるため、近年、高性能化が進むデジタルスチルカメラ等の撮像装置等において、可視光領域の感度低下を最小限に抑えつつ、該反射光に起因する画像不良を解消できるため、有用である。
【0304】
[化合物(z-164)の合成例]
ナスフラスコに、アセチルクロリド(2等量)、tert-ブチルアルコール(1等量)を仕込み、85℃に温調したオイルバスで加熱しながら攪拌した。そこに、トリフルオロメタンスルホン酸(1等量)を5分間かけて滴下し、滴下終了後、オイルバスの設定温度を100℃とし、30分間攪拌した。室温まで冷却した後、ジエチルエーテルおよび水を加えて析出した固体をろ取し、下記化合物(m-1)を得た。
【0305】
・化合物(m-1)
【化61】
【0306】
ナスフラスコに、前記で得られた化合物(m-1)(1等量)およびマロンアルデヒドジアニリド塩酸塩(0.5等量)を仕込み、そこに、アセトニトリルおよび無水酢酸を加え攪拌した。次いで、ピリジン(1等量)を滴下し、室温で2時間攪拌した。その後、アセトニトリル、無水酢酸、ピリジンをエバポレーターで除去し、塩化メチレン/水にて分液操作を行った。有機相を回収し、そこに、LiFABA(リチウム=テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラヌイド)1.5等量および水を加え、3時間激しく攪拌した。その後、有機相を回収し、塩化メチレンをエバポレーターで除去し、化合物(z-164)を得た。
【0307】
・化合物(z-164):ジクロロメタン中での吸収極大波長715nm
【化62】
【0308】
[化合物(z-165)の合成例]
化合物(z-164)の合成例において、アセチルクロリドを1-メチルシクロプロパンカルボン酸クロリドに変更したこと以外、該合成例と同様の方法で化合物(z-165)を得た。
【0309】
・化合物(z-165):ジクロロメタン中での吸収極大波長727nm
【化63】
【0310】
[化合物(z-166)の合成例]
化合物(z-164)の合成例において、アセチルクロリドを1-メチルシクロヘキサンカルボン酸クロリドに変更したこと以外、該合成例と同様の方法で化合物(z-166)を得た。
【0311】
・化合物(z-166):ジクロロメタン中での吸収極大波長719nm
【化64】
【0312】
[化合物(z-167)の合成例]
化合物(z-164)の合成例において、アセチルクロリドを1-アダマンタンカルボン酸クロリドに変更したこと以外、該合成例と同様の方法で化合物(z-167)を得た。
【0313】
・化合物(z-167):ジクロロメタン中での吸収極大波長721nm
【化65】
【0314】
[化合物(z-168)の合成例]
化合物(z-164)の合成例において、マロンアルデヒドジアニリド塩酸塩を下記化合物(m-2)に変更したこと以外、該合成例と同様の方法で化合物(z-168)を得た。
【0315】
・化合物(m-2)
【化66】
【0316】
・化合物(z-168):ジクロロメタン中での吸収極大波長720nm
【化67】
【0317】
[化合物(z-169)の合成例]
化合物(z-167)の合成例において、マロンアルデヒドジアニリド塩酸塩を前記化合物(m-2)に変更したこと以外、該合成例と同様の方法で化合物(z-169)を得た。
【0318】
・化合物(z-169):ジクロロメタン中での吸収極大波長726nm
【化68】
【0319】
[化合物(z-170)の合成例]
化合物(z-169)の合成例において、化合物(m-2)を下記化合物(m-3)に変更したこと以外、該合成例と同様の方法で化合物(z-170)を得た。
【0320】
・化合物(m-3)
【化69】
【0321】
・化合物(z-170):ジクロロメタン中での吸収極大波長739nm
【化70】
【0322】
[化合物(z-171)の合成例]
化合物(z-167)の合成例において、化合物(m-1)を下記化合物(m-4)に変更したこと以外、該合成例と同様の方法で化合物(z-171)を得た。
【0323】
・化合物(m-4)
【化71】
【0324】
・化合物(z-171):ジクロロメタン中での吸収極大波長734nm
【化72】
【0325】
[化合物(z-172)の合成例]
化合物(z-167)の合成例において、化合物(m-1)を下記化合物(m-5)に変更したこと以外、該合成例と同様の方法で化合物(z-172)を得た。
【0326】
・化合物(m-5)
【化73】
【0327】
・化合物(z-172):ジクロロメタン中での吸収極大波長738nm
【化74】
【0328】
[化合物(z-173)の合成例]
化合物(z-169)の合成例において、化合物(m-2)を下記化合物(m-6)に変更したこと以外、該合成例と同様の方法で化合物(z-173)を得た。
【0329】
・化合物(m-6)
【化75】
【0330】
・化合物(z-173):ジクロロメタン中での吸収極大波長724nm
【化76】
【0331】
[実施例20~32および比較例4~7]
〔基材の作製〕
実施例1と同様にして、具体的には以下のようにして基材を作製した。
表12に記載した通りの割合で樹脂、化合物(Z)、化合物(X)、化合物(Y)およびジクロロメタンを加えて樹脂濃度が20質量%の溶液を調製した。得られた溶液を平滑なガラス板上にキャストし、20℃で8時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。剥離した塗膜を更に減圧下100℃で8時間乾燥して、厚さ0.1mm、縦210mm、横210mmの樹脂層(1)を得た。
なお、表12中の化合物(Z)、化合物(X)および化合物(Y)の欄に記載の数値は、樹脂100質量部に対する各化合物の含有量(質量部)を示す。
【0332】
なお、表12中の化合物(x-6)は下記式で表される化合物である(ジクロロメタン中での吸収極大波長717nm)
【化77】
【0333】
得られた樹脂層(1)の片面に、下記樹脂組成物(1)を、得られる樹脂層(2)の厚みが3μmとなるようにバーコーターで塗布し、オーブン中70℃で2分間加熱して溶剤を揮発除去した。次にUVコンベア式露光機(アイグラフィックス(株)製、アイ紫外硬化用装置、型式US2-X0405、60Hz)を用いて露光(露光量500mJ/cm2、照度:200mW/cm2)を行い、樹脂組成物(1)を硬化させ、樹脂層(1)上に樹脂層(2)を形成した。同様にして、樹脂層(1)のもう一方の面にも樹脂組成物(1)からなる樹脂層(2)を形成した。
【0334】
樹脂組成物(1):トリシクロデカンジメタノールアクリレート60質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート40質量部、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン5質量部、およびメチルエチルケトン(溶剤、得られる組成物中の固形分濃度が30質量%となるよう使用)を含む組成物
【0335】
<分光透過率>
得られた基材の、波長650~800nmの近赤外領域の透過率、および、波長430~580nmの可視光透過率は、日本分光(株)製の分光光度計(V-7200)を用いて測定した。この透過率は、光が基材の面に対して垂直に入射する条件で、該分光光度計を使用して測定した。本装置を用いて測定したパラメーターは以下の通りである。結果を表12に示す。
実施例20および実施例28で得られた基材の分光透過率スペクトルを、それぞれ図1~2に示す。
なお、下記TcおよびTdは、得られた基材を、予め155℃に熱しておいたオーブンで7時間加熱し、この加熱試験後の基材の透過率を測定した(耐熱性評価)。
また、TeおよびTfは、得られた基材に、UV露光機(岩崎電気(株)製、アイ紫外線硬化用装置US2-KO4501、照度:180mW/cm2、照射量:560mJ/cm2)を用いてUVを照射し、このUV照射後の基材の透過率を測定した(耐UV性評価)。
【0336】
Xa:波長650~800nmにおいて、基材の垂直方向から測定した透過率が最も低い値となる光の波長
Ta:波長650~800nmにおいて、基材の垂直方向から測定した最低透過率
Tb:基材の垂直方向から測定した、波長430~580nmの光の平均透過率
Tc:基材の垂直方向から測定した、加熱試験後の波長650~800nmの光の最低透過率
Td:基材の垂直方向から測定した、加熱試験後の波長430~580nmの光の平均透過率
Te:基材の垂直方向から測定した、UV照射後の波長650~800nmの光の最低透過率
Tf:基材の垂直方向から測定した、UV照射後の波長430~580nmの光の平均透過率
【0337】
〔光学フィルターの作製〕
前記基材の作製で得られた基材の片面に誘電体多層膜(III)を形成し、さらに基材のもう一方の面に誘電体多層膜(IV)を形成し、厚さ約0.110mmの光学フィルターを得た。
【0338】
誘電体多層膜(III)は、蒸着温度100℃で、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とを交互に積層した積層体である(合計28層)。誘電体多層膜(IV)は、蒸着温度100℃で、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とを交互に積層した積層体である(合計24層)。
誘電体多層膜(III)および(IV)のいずれにおいても、シリカ層およびチタニア層を、基材側からチタニア層、シリカ層、チタニア層、・・・シリカ層、チタニア層、シリカ層の順となるように交互に積層し、光学フィルターの最外層をシリカ層とした。
【0339】
各層の厚さと層数については、可視域の良好な透過率と近赤外域の反射性能とを達成できるよう、基材の屈折率の波長依存特性や、使用した化合物(Z)および(X)の吸収特性に合わせて、光学薄膜設計ソフト(Essential Macleod、Thin Film Center社製)を用いて最適化を行った。最適化を行う際、本実施例においてはソフトへの入力パラメータ(Target値)を下記表10の通りとした。
【0340】
【表10】
【0341】
膜構成最適化の結果、前記誘電体多層膜(III)を、物理膜厚約32~159nmのシリカ層と物理膜厚約9~94nmのチタニア層とを交互に積層した、積層数28層の多層蒸着膜とし、誘電体多層膜(IV)を、物理膜厚約39~193nmのシリカ層と物理膜厚約12~117nmのチタニア層とを交互に積層した、積層数24層の多層蒸着膜とした。最適化を行った膜構成の一例を下記表11に示す。
【0342】
【表11】
【0343】
<分光透過率>
得られた光学フィルターの、波長650~800nmの近赤外領域の透過率、および、波長430~580nmの可視光透過率は、日本分光(株)製の分光光度計(V-7200)を用いて測定した。この透過率は、光が光学フィルターに対して垂直に入射する条件で、該分光光度計を使用して測定したものである。本装置を用いて測定したパラメーターは以下の通りである。結果を表12に示す。
実施例20および実施例28で得られた光学フィルターの分光透過率スペクトルを、それぞれ図3~4に示す。
【0344】
Tg:光学フィルターの垂直方向から測定した、波長650~800nmの光の平均透過率
Th:光学フィルターの垂直方向から測定した、波長430~580nmの光の平均透過率
【0345】
[実施例33~43および比較例8]
実施例6と同様にして、具体的には以下のようにして基材を作製した。
表13に記載した通りの割合で、樹脂A、化合物(X)、化合物(Y)およびジクロロメタンを加えて、樹脂濃度が20質量%の溶液を調製し、孔径5μmのミリポアフィルターでろ過を行い、樹脂溶液(E-1)を得た。
表13に記載した通りの割合で、樹脂A、化合物(Z)およびジクロロメタンを加えて、樹脂濃度が20質量%の溶液を調製し、孔径5μmのミリポアフィルターでろ過を行い、樹脂溶液(E-2)を得た。
【0346】
200mm×200mmの大きさにカットした、日本電気硝子(株)製の透明ガラス支持体「OA-10G」(厚み200μm)の両面に下記樹脂組成物(2)を、乾燥後の膜厚が約1μmとなるようにスピンコートで塗布した後、ホットプレート上80℃で2分間加熱して溶媒を揮発除去し、ガラス支持体と後述するコーティング樹脂層(1)およびコーティング樹脂層(2)との接着層として機能する接着層を形成した。
なお、実施例39のみ、「OA-10G」の代わりに、200mm×200mmの大きさにカットした、松波硝子工業(株)製の近赤外線吸収ガラス基板「BS-11」(厚み200μm)を用いた。
【0347】
次に、前記接着層が形成されたガラス支持体の片面にスピンコーターを用いて、樹脂溶液(E-1)を乾燥後の膜厚が10μmとなるように塗布し、ホットプレート上80℃で5分間加熱して溶媒を揮発除去し、コーティング樹脂層(2)を形成した。
更に、前記接着層が形成されたガラス支持体のもう一方の面にスピンコーターを用いて、樹脂溶液(E-2)を乾燥後の膜厚が10μmとなるように塗布し、ホットプレート上80℃で5分間加熱して溶媒を揮発除去し、コーティング樹脂層(1)を形成した。
これにより、ガラス支持体の一方の面に化合物(Z)を含む樹脂層を積層し、他方の面に化合物(Z)を含まない樹脂層を積層した厚み222μmの基材を得た。
なお、表13中の化合物z-164~z-173に記載の数値は、樹脂層(1)中の樹脂100質量部に対する各化合物の含有量(質量部)を示し、表13中の化合物x-1、x-2およびy-1に記載の数値は、樹脂層(2)中の樹脂100質量部に対する各化合物の含有量(質量部)を示す。
実施例20と同様にして、基材のXa、Ta~Tfを測定した。結果を表13に示す。
実施例36で得られた基材の分光透過率スペクトルを図5に示す。
【0348】
樹脂組成物(2):イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート(商品名:アロニックス M-315、東亜合成(株)製)30質量部、1,9-ノナンジオールジアクリレート20質量部、メタクリル酸20質量部、メタクリル酸グリシジル30質量部、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン5質量部、1-ヒドロキシシクロヘキシルベンゾフェノン(商品名:IRGACURE184、BASFジャパン(株)製)5質量部およびサンエイドSI-110主剤(三新化学工業(株)製)1質量部を混合し、固形分濃度が50質量%となるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解させた後、孔径0.2μmのミリポアフィルターでろ過した組成物
【0349】
続いて、実施例20と同様に、得られた基材の片面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計28層の誘電体多層膜(III)を形成し、さらに基材のもう一方の面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計24層の誘電体多層膜(IV)を形成し、厚さ約0.226mmの光学フィルターを得た。
誘電体多層膜の設計は、実施例20と同様に、基材の屈折率の波長依存性等を考慮した上で、実施例20と同じ設計パラメーターを用いて行った。
実施例20と同様にして、光学フィルターのTgおよびThを測定した。結果を表13に示す。
実施例36で得られた光学フィルターの分光透過率スペクトルを図6に示す。
【0350】
【表12】
【0351】
【表13】
【0352】
前記実施例20~43で得られた光学フィルターは、可視光の透過性を良好に維持しながら、近赤外光、特に、波長700~750nmの波長域の反射光強度の低減が可能であるため、近年、高性能化が進むデジタルスチルカメラ等の撮像装置等において、可視光領域の感度低下を最小限に抑えつつ、該反射光に起因する画像不良を解消できるため、有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6