(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129047
(43)【公開日】2024-09-26
(54)【発明の名称】フラックスを有するアルミニウム表面を不動態化するための方法
(51)【国際特許分類】
B23K 1/00 20060101AFI20240918BHJP
C23C 26/00 20060101ALI20240918BHJP
B23K 1/19 20060101ALI20240918BHJP
B23K 1/20 20060101ALI20240918BHJP
F28F 19/00 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
B23K1/00 C
C23C26/00 A
B23K1/00 330L
B23K1/19 E
B23K1/00 330K
B23K1/20 A
F28F19/00 511Z
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024099562
(22)【出願日】2024-06-20
(62)【分割の表示】P 2021572496の分割
【原出願日】2020-05-26
(31)【優先権主張番号】102019209249.7
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】エングラート ペーター
(72)【発明者】
【氏名】コッホ ハンス
(72)【発明者】
【氏名】メンバー オリヴァ
(72)【発明者】
【氏名】シェーン ベアトラム
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、フラックスを有するアルミニウム表面を不動態化する方法に関する。
【解決手段】この方法によれば、フラックスを有するアルミニウム表面が設けられ、その後、供給されたアルミニウム表面に不動態化溶液が塗布され、その結果、不動態化溶液と、フラックスが供給されたアルミニウム表面との反応によって不動態層が形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラックスを有するアルミニウム表面を設ける工程a)と、
前記工程a)で提供されたアルミニウム表面に不動態化溶液を適用することにより、不動態化溶液と、フラックスを有するアルミニウム表面との反応によって不動態層を生成する工程b)とを含む
ことを特徴とするフラックスを有するアルミニウム表面を不動態化する方法。
【請求項2】
前記不動態化溶液の適用後に、アルミニウム表面が加熱及び加圧によって、好ましくは圧力釜中で、不動態化される
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルミニウム表面が、100℃を超える温度、好ましくは120℃を超える温度に加熱される
ことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記アルミニウム表面が、1バールを超え、最大2バールの圧力で加圧される
ことを特徴とする、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記工程a)で提供されるフラックスが、フッ化カリウムアルミニウムを含むか、又はフッ化カリウムアルミニウムである
ことを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記工程b)において適用される不動態化溶液が、ケイ酸ジルコニウム溶液と水ガラス分散液とを混合することによって製造される
ことを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ケイ酸ジルコニウム溶液が0.1~5g/Lのケイ酸ジルコニウムを含有する
ことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ケイ酸ジルコニウム溶液は、pH値2~6の硫酸溶液に炭酸ジルコニウムを溶解し、続いてアンモニアで中和することによって製造される
ことを特徴とする、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記ケイ酸ジルコニウム溶液が0.1~2%の濃度のセバシン酸を含有し、及び/又は、
前記ケイ酸ジルコニウム溶液が0.05~0.5%の濃度のトリエタノールアミンを含有する
ことを特徴とする、請求項6から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ケイ酸ジルコニウム溶液は、0.005~10重量%、好ましくは0.01~2.0重量%のシェアを有する、少なくとも1つの腐食防止剤を含み、
前記少なくとも1つの腐食防止剤は、カテコール-3,5-ジスルホン酸二ナトリウム塩、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、8-ヒドロキシ-(7)-ヨードキノリン-スルホン酸-(5)、8-ヒドロキシ-キノリン-5-スルホン酸、マンニトール、5-スルホサリチル酸、アセト-O-ヒドロキサム酸、ノルエピネフリン、2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-エチルアミン、L-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン(L-DOPA)、3-ヒドロキシ-2-メチル-ピラン-4-オン、クエン酸塩、カルボン酸塩、特に、オキサレート、ステアリン酸のアルカリ塩、ギ酸のアルカリ塩、アルカリグリコネート、四ホウ酸ナトリウム、ピロリン酸、及び/又はグルコン酸カルシウムの少なくとも1つを含む
ことを特徴とする、請求項6から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記水ガラス分散液が5~25%の濃度の水ガラスを含有する
ことを特徴とする、請求項6から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
水ガラス分散液が0.5~2%の濃度のグルコン酸カルシウムを含有する
ことを特徴とする、請求項6から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記工程b)において適用される不動態化溶液が、ヘキサフルオロジルコン酸を含有する
ことを特徴とする、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記工程b)において適用される不動態化溶液が、ポリウレタン分散液及びバナジン酸アンモニウムの少なくとも1つを含有する
ことを特徴とする、請求項1から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記工程a)で提供されるアルミニウム表面が、アルミニウム製のいくつかの構成要素(2,2a,3a,4,5)を含む熱交換器(1)の一部であり、これらの構成要素は、少なくとも1つのハンダ付け継手によって、好ましくは少なくとも1つのろう付け継手によって互いに接続される
ことを特徴とする、請求項1から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記ケイ酸ジルコニウム溶液が、酒石酸を含有する
ことを特徴とする、請求項6から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記不動態化溶液が、タール酸、特に不動態化溶液1リットル当たり5~30グラムのタール酸を含む
ことを特徴とする、請求項1から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つのハンダ接合によって、好ましくは、少なくとも1つのろう付け接合によって互いに接続された、アルミニウム製のいくつかの構成要素(2,2a,3a,4,5)を備え、
少なくとも1つの構成要素(2,2a,3a,4,5)のアルミニウム表面が、請求項1から17のいずれか1つによる方法によって不動態化される、熱交換器(1)。
【請求項19】
請求項18に記載の熱交換器(1)を含む、自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラックスを有するアルミニウム表面を不動態化する方法に関する。本発明はさらに、この方法を実施することによって製造される熱交換器に関する。本発明は、さらに、このような熱交換器を備える自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
フラックスが使用されるアルミニウム部品をろう付けすることが知られている。例えば、熱交換器は、アルミニウムで作ることができ、熱交換器は、熱交換器の製造中にろう付けによる物質間結合によって互いに接続される構成要素を含む。自動車用熱交換器は、通常、フラックスとしてフッ化カリウムアルミニウムを使用する、いわゆるCABハンダ付け法(雰囲気制御ろう付け法)によってろう付けされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、このフラックスのフッ化物フリーはアルミニウムの腐食につながる可能性がある。さらに、フッ化物フリーは、熱交換器内に受け入れられた冷却液の添加剤を腐食させて、多量の水酸化アルミニウムの形成が起こり、これが熱交換器内の冷却液経路を遮断するか、又は閉じさえすることがある。形成された水酸化アルミニウムのために、冷却液の電気伝導率は、冷却液を案内する冷却サイクルを介して危険な充填量が自動車に分配されるように、又は水性冷却液の場合に爆発性ガス形成を伴う水電解が行われるように、追加的に増加し得る。これは、特に、水素燃料電池又は金属空気燃料電池のような燃料電池を含む電気自動車において発生する。
【0004】
本発明の目的は、上述の課題を考慮した、フラックスを有するアルミニウム表面を不動態化するための改良された又は少なくとも代わりの方法を提供することである。高い耐食性を有するアルミニウムの成分は、特に、このような方法によって製造されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、この目的は、独立請求項の主題によって解決される。好ましい、さらに有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0006】
したがって、本発明の基本的な思想は、ハンダ付け工程後にアルミニウム表面上に存在するフラックス残渣物を不動態化溶液と結合させ、その結果、フラックス残渣物が、動作中に熱交換器を通って案内される冷却液と相互作用するのを防ぎ、さらに、アルミニウム表面の領域に耐食性不動態化層を生成することである。このようにして、特に50μS/cm未満又はさらには20μS/cm未満の、熱交換器に受け入れられる冷却液の特に低い電気伝導率が達成され、冷却液中の爆発性ガスの形成が回避される。さらに、コンパクトな不動態化耐食アルミニウム表面が生成される。したがって、欠点に関わるフラックス残渣物及びハンダ付け残渣物の複雑な除去は必要とされない。
【0007】
本発明による方法は、フラックスを有するアルミニウム表面を不動態化するのに役立つ。この方法によれば、フラックスを有するアルミニウム表面が設けられ、その後、供給されたアルミニウム表面に不動態化溶液が塗布され、その結果、不動態化溶液と、フラックスが供給されたアルミニウム表面との反応によって不動態層が形成される。
【0008】
アルミニウム表面は、不動態化溶液の適用後に、好ましくは高圧釜中で、加熱及び加圧によって不動態化されるのが有利である。このようにして、不動態化溶液と、フラックスを有するアルミニウム表面との反応が特に効果的に行われ、その結果、特にコンパクトで、したがって耐食性の不動態化層が形成される。
【0009】
好ましい実施形態によれば、アルミニウム表面は、100℃を超える、好ましくは120℃を超える温度に加熱される。この実施形態の場合、不動態化溶液と、フラックスを有するアルミニウム表面との反応も特に効果的に起こり、その結果、特にコンパクトで耐腐食性の不動態化層が生成される。
【0010】
同じことが、アルミニウム表面が1バールを超え、最大で2バールの圧力で加圧される、さらなる好ましい実施形態にも当てはまる。このようにして、不動態化溶液と、フラックスを有するアルミニウム表面との反応も、特に良好に行われ、その結果、特にコンパクトで耐食性の不動態化層が形成される。
【0011】
有利な実施形態によれば、提供されるフラックスは、フッ化カリウムアルミニウムであるか、又はそれを含む。この実施形態の場合、特にコンパクトな不動態層がアルミニウム表面の領域に形成される。
【0012】
適用される不動態化溶液は、好ましくは、ジルコニウム溶液を水ガラス分散液と混合することによって製造される。この実施形態の場合、特に大量のフラックスがアルミニウム表面に結合され、アルミニウム表面の領域に特にコンパクトで耐腐食性の不動態化層が形成される。
【0013】
好ましい実施形態によれば、ケイ酸ジルコニウム溶液は、0.1g/L~5g/Lのケイ酸ジルコニウムを含有する。このようにしてアルミニウム表面には特に大量のフラックスが結合され、アルミニウム表面の領域には特にコンパクトで耐食性の不動態化が形成される。
【0014】
ケイ酸ジルコニウム溶液は、好ましくは、炭酸ジルコニウムをpH値2~6の硫酸溶液に溶解し、続いてアンモニアで中和することによって製造される。このようにしてアルミニウム表面には特に大量のフラックスが結合し、アルミニウム表面の領域には特にコンパクトで耐食性の不動態化層が形成される。
【0015】
さらに好ましい実施形態によれば、ケイ酸ジルコニウム溶液は、0.1~2%の濃度のセバシン酸を含有する。
【0016】
ケイ酸ジルコニウム溶液はさらに、0.1~2%の濃度のセバシン酸、及び代わりに、又は加えて、0.05~0.5%の濃度のトリエタノールアミンを含有することができる。ケイ酸ジルコニウム溶液は、例えば酒石酸のような他のジカルボン酸を含有することも考えられる。
【0017】
好ましいさらなる実施形態の場合、不動態化溶液は酒石酸を含有する。不動態化溶液は、特に好ましくは、不動態化溶液1リットル当たり3~5グラムの酒石酸を含有する。このような不動態化溶液は特に有効である。
【0018】
さらなる好ましい実施形態によれば、ケイ酸ジルコニウム溶液は、0.05~0.5%の濃度のトリエタノールアミンを含有する。これらの2つの測定を単独で、又は組み合わせることによって、特に大量のフラックスもアルミニウム表面に結合され、アルミニウム表面の領域に特にコンパクトで、したがって耐腐食性の不動態化層が形成される。
【0019】
ケイ酸ジルコニウム溶液は、0.005~10重量%、好ましくは0.01~2.0重量%のシェアを有する少なくとも1つの腐食防止剤を含み、ここで、少なくとも1つの腐食防止剤は、カテコール-3,5-ジスルホン酸二ナトリウム塩、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、8-ヒドロキシ-(7)-ヨードキノリン-スルホン酸-(5)、8-ヒドロキシ-キノリン-5-スルホン酸、マンニトール、5-スルホサリチル酸、アセト-O-ヒドロキサム酸、ノルエピネフリン、2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-エチルアミン、L-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン(L-DOPA)、3-ヒドロキシ-2-メチル-ピラン-4-オン、クエン酸塩、カルボン酸塩、特に、オキサレート、ステアリン酸のアルカリ塩、ギ酸のアルカリ塩、アルカリグリコネート、四ホウ酸ナトリウム、及びピロリン酸、代わりに、又は追加して、グルコン酸カルシウムを含むと有利である。この実施形態は、特に耐腐食性の不動態層を形成する。
【0020】
水ガラス分散液は、5~25%の濃度の水ガラスを含有することが特に好ましい。特に大量のフラックスもこのようにしてアルミニウム表面に結合し、アルミニウム表面の領域には、特にコンパクトで耐食性の不動態化層が作られる。
【0021】
好ましい実施形態によれば、水ガラス分散液は、0.5~2%の濃度のグルコン酸カルシウムを含有する。特に大量のフラックスもこのようにしてアルミニウム表面に結合し、アルミニウム表面の領域には特にコンパクトで耐食性の不動態化層が作られる。
【0022】
有利な実施形態によれば、塗布された不動態化溶液は、ヘキサフルオロジルコン酸を含有する。特に大量のフラックスもこのようにしてアルミニウム表面に結合し、アルミニウム表面の領域には特にコンパクトで耐食性の不動態化層が作られる。
【0023】
さらなる有利な実施形態によれば、塗布された不動態化溶液は、ポリウレタン分散液、代わりに、又はそれに加えて、バナジン酸アンモニウムを含有する。特に大量のフラックスも、このようにしてアルミニウム表面に結合し、アルミニウム表面の領域には特にコンパクトで耐食性の不動態化層が作られる。
【0024】
提供されるアルミニウム表面は、少なくとも1つのハンダ付け継手によって、好ましくは少なくとも1つのろう付け継手によって互いに接続される、アルミニウム製のいくつかの構成要素を備える熱交換器の一部であると有利である。このようにして、不動態化溶液を熱交換器に導入することによって、アルミニウム表面を容易かつ効率的に不動態化することができる。
【0025】
本発明は、さらに、少なくとも1つのハンダ付け継手によって、好ましくは少なくとも1つのろう付け継手によって互いに接続されるアルミニウム製のいくつかの構成要素を備える熱交換器に関し、少なくとも1つの構成要素のアルミニウム表面は、本発明による方法によって不動態化される。したがって、本発明による方法の、上述の利点は、本発明による熱交換器にも適用される。
【0026】
本発明は、さらに、上記熱交換器を含む自動車に関する。したがって、本発明による方法及び本発明による熱交換器の、上述の利点は、本発明による自動車にも適用される。
【0027】
本発明のさらなる重要な特徴及び利点は、従属請求項、図面、及び図面に基づく対応する図面の説明から得られる。
【0028】
なお、以下に説明する上記の特徴及び特徴は、本発明の範囲を逸脱することなく、特定の組合せのみならず、他の組合せ、又は単独で用いることができることは言うまでもない。
【0029】
本発明の好ましい例示的な実施形態を図面に示し、以下の説明でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明による熱交換器1の単純化された例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本発明による熱交換器1の単純化された例を示しており、特に電気自動車用である。熱交換器1は、長手方向Lに沿って延び、それを通って冷却液Kが流れることができる、複数の管状体2を備えている。長手方向Lに直交する積層方向Sに沿って、管状体2は互いに離間して配置されている。
図1の例では、16個の管状体2が例示的な方法で示されているが、異なる数の管状体2も代替的に可能であることは言うまでもない。
【0032】
管状体2は、管状体2に冷却液Kを分配するための冷却液分配器4と、管状体2の貫流後に冷却液を収集するための冷却液収集器5とに流体的に接続される。このために、冷却液分配器4及び冷却液収集器5は、管状体2の長手方向の端部2bを受け入れるスロット4a,5aを有する。
【0033】
また、冷却液分配器4と冷却液収集器5とは、長手方向Lに沿って対向配置された管状体2の長手方向端部2bの領域に配置されており、管状体2内には、冷却液を導くリブからなるリブ構造2aが設けられており、このリブ構造2aで管状体2の管壁内面がさらに支持されている。
【0034】
ガスG、特にチャージエアが流通する流体経路3は、積層方向Sに沿って管状体2間に設けられた中間空間により形成されている。リブ構造3a(分かりやすくするために
図1には完全には示されていない)は、ガスGを導くリブを備え、さらに積層方向Sに隣り合う管状体2の管壁の外側が支持されたものであり、流体経路3に設けられている。
【0035】
熱交換器1の構成要素は、
図1の例では、これらが、管状体2、リブ構造2a,3a、冷却液分配器4、及び冷却液収集器5であり、材料としてアルミニウムを含んでいるか、又はアルミニウムからなっている。
【0036】
熱交換器1の製造の一部として、熱交換器1のこれらの個別成分は、フラックスとしてフッ化カリウムアルミニウムを使用することによって、それぞれの接触点10で互いにハンダ付けされ、すなわち、ろう付けされ、したがって、物質間結合によって互いに接続される。フッ化カリウムアルミニウムの代わりに、フッ化物を含有する異なるフラックスを使用することもできる。
【0037】
管状体3は、冷却液分配器4及び冷却液収集器5にろう付けされているので、それぞれの管状体2並びに冷却液分配器4及び冷却液収集器5との間に接触点10が存在する。リブ構造2a,3aが管状体3にろう付けされていることにより、このような接触点10がリブ構造3aと管状体3との間にも設けられている。
【0038】
以下、熱交換器1の例を用いて、本発明の方法を説明する。
【0039】
上記の熱交換器1のアルミニウム部品のろう付け後(フラックスを使用することによって)これらの部品は、本発明による方法のために提供される。これは、前記部品のアルミニウム表面が接触点11の領域にも設けられていることを意味する。熱交換器1の動作中に、リブ構造3a並びに冷却液分配器4及び冷却液収集器5からなる管状体3内を冷却液が流れることにより、冷却液がアルミニウム表面に接触するため、本発明の方法によりアルミニウム表面が不動態化される。
【0040】
この目的のために、不動態化溶液が、提供されたアルミニウム表面に適用され、その結果、不動態化溶液と、フラックスが提供されたアルミニウム表面との反応によって、不動態化層が生成される。熱交換器1の例では、これは、不動態化溶液を冷却液分配器4に導入し、管状体2に導入し、冷却液収集器5に導入することによって達成することができる。
【0041】
不動態化溶液は、ケイ酸ジルコニウム溶液を水ガラス分散液と混合することによって製造される。
【0042】
ケイ酸ジルコニウム溶液は、0.1~5g/Lのケイ酸ジルコニウムを含有する。ケイ酸ジルコニウム溶液は、炭酸ジルコニウムをpH値2~6の硫酸溶液に溶解し、続いてアンモニアで中和することによって製造される。ケイ酸ジルコニウム溶液の代わりに、例えばランタンのような異なるフッ化物錯化性元素の溶液を使用することもできる。
【0043】
ケイ酸ジルコニウム溶液はさらに、0.1~2%の濃度のセバシン酸、代わりに、又は加えて、0.05~0.5%の濃度のトリエタノールアミンを含有することができる。ケイ酸ジルコニウム溶液は、例えば酒石酸のような他のジカルボン酸を含有することも考えられる。
【0044】
不動態化溶液は、酒石酸を含有することができる。不動態化溶液は、例えば、不動態化溶液1リットル当たり3~5グラムの酒石酸を含有することができる。
【0045】
ケイ酸ジルコニウム溶液は、0.01~2.0重量%の割合で腐食防止剤カテコール-3,5-ジスルホン酸二ナトリウム塩をさらに含有する。しかしながら、ケイ酸ジルコニウム溶液は、代替として、又は追加として、二ナトリウム塩、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、8-ヒドロキシ-(7)-ヨードキノリン-スルホン酸-(5)、8-ヒドロキシ-キノリン-5-スルホン酸、マンニトール、5-スルホサリチル酸、アセト-O-ヒドロキサム酸、ノルエピネフリン、2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-エチルアミン、L-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン(L-DOPA)、3-ヒドロキシ-2-メチル-ピラン-4-オン、クエン酸塩、カルボン酸塩、特にオキサレート、ステアリン酸のアルカリ塩、ギ酸のアルカリ塩、アルカリグリコネート、四ホウ酸ナトリウム、ピロリン酸、又はグルコン酸カルシウムの1つ又はいくつかの物質を含有することも考えられる。
【0046】
水ガラス分散液は、5~25%の濃度の水ガラスを含有する。それによって、水ガラスは、ケイ酸ナトリウム、リチウム水ガラス、又はカリウム水ガラスであり得る。水ガラス分散液はさらにグルコン酸カルシウムを0.5~2%の濃度で含有する。
【0047】
不動態化溶液は、ヘキサフルオロジルコン酸を含有することもできる。不動態化溶液がポリウレタン分散液を含有することも考えられる。不動態化溶液は、バナジン酸アンモニウムを含有することもできる。
【0048】
不動態化溶液を適用した後、熱交換器を圧力釜に導入し、フラックスを有するアルミニウム表面を加熱及び加圧によって不動態化する。これにより、アルミニウム表面は120℃を超える温度に加熱される。アルミニウム表面は、さらに、1バールを超え、最大で2バールの圧力で加圧される。
【0049】
フラックスを有する他のアルミニウム表面も、同様に、上述の方法で不動態化することができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラックスを有するアルミニウム表面を設ける工程a)と、
前記工程a)で提供されたアルミニウム表面に不動態化溶液を適用することにより、不動態化溶液と、フラックスを有するアルミニウム表面との反応によって不動態層を生成する工程b)とを含み、
前記工程a)で提供されるフラックスが、フッ化カリウムアルミニウムを含むか、又はフッ化カリウムアルミニウムであり、
前記工程b)において適用される不動態化溶液が、ジルコニウム溶液と水ガラス分散液とを混合することによって製造され、前記ジルコニウム溶液が0.1~5g/Lのケイ酸ジルコニウムを含有する
ことを特徴とするフラックスを有するアルミニウム表面を不動態化する方法。
【請求項2】
前記不動態化溶液の適用後に、アルミニウム表面が加熱及び加圧によって、不動態化される
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルミニウム表面が、100℃を超える温度に加熱される
ことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記アルミニウム表面が、1バールを超え、最大2バールの圧力で加圧される
ことを特徴とする、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記ジルコニウム溶液が0.1~2重量%の濃度のセバシン酸を含有し、及び/又は、
前記ジルコニウム溶液が0.05~0.5重量%の濃度のトリエタノールアミンを含有する
ことを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ジルコニウム溶液は、0.005~10重量%のシェアを有する、少なくとも1つの腐食防止剤を含み、
前記少なくとも1つの腐食防止剤は、カテコール-3,5-ジスルホン酸二ナトリウム塩、ジエチレントリアミン五酢酸、8-ヒドロキシ-(7)-ヨードキノリン-スルホン酸-(5)、8-ヒドロキシ-キノリン-5-スルホン酸、マンニトール、5-スルホサリチル酸、アセト-O-ヒドロキサム酸、ノルエピネフリン、2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-エチルアミン、L-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン(L-DOPA)、3-ヒドロキシ-2-メチル-ピラン-4-オン、クエン酸塩、カルボン酸塩、オキサレート、ステアリン酸のアルカリ塩、ギ酸のアルカリ塩、アルカリグリコネート、四ホウ酸ナトリウム、ピロリン酸、及び/又はグルコン酸カルシウムの少なくとも1つを含む
ことを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記水ガラス分散液が5~25重量%の濃度の水ガラスを含有する
ことを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
水ガラス分散液が0.5~2重量%の濃度のグルコン酸カルシウムを含有する
ことを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記工程b)において適用される不動態化溶液が、ヘキサフルオロジルコン酸を含有する
ことを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記工程b)において適用される不動態化溶液が、ポリウレタン分散液及び/又はバナジン酸アンモニウムを含有する
ことを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記工程a)で提供されるアルミニウム表面が、アルミニウム製のいくつかの構成要素(2,2a,3a,4,5)を含む熱交換器(1)の一部であり、これらの構成要素は、少なくとも1つのろう付け継手によって互いに接続される
ことを特徴とする、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記ジルコニウム溶液が、酒石酸を含有する
ことを特徴とする、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記不動態化溶液の適用後に、圧力釜中で、アルミニウム表面が加熱及び加圧によって不動態化されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記アルミニウム表面が、120℃を超える温度に加熱されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項15】
前記ジルコニウム溶液は、0.01~2.0重量%のシェアを有する、少なくとも1つの腐食防止剤を含む、請求項6に記載の方法。
【外国語明細書】