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特開2024-129066負極、ならびにこれを用いた電気化学装置および電子装置
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  • 特開-負極、ならびにこれを用いた電気化学装置および電子装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129066
(43)【公開日】2024-09-26
(54)【発明の名称】負極、ならびにこれを用いた電気化学装置および電子装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/587 20100101AFI20240918BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20240918BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20240918BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240918BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240918BHJP
   H01G 11/32 20130101ALI20240918BHJP
   C01B 32/21 20170101ALI20240918BHJP
【FI】
H01M4/587
H01M4/133
H01M10/0566
H01M10/052
H01M4/36 D
H01G11/32
C01B32/21
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2024102792
(22)【出願日】2024-06-26
(31)【優先権主張番号】202310791841.8
(32)【優先日】2023-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】513054978
【氏名又は名称】寧徳新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningde Amperex Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Xingang Road, Zhangwan Town, Jiaocheng District, Ningde City, Fujian Province, 352100, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】易 政
(72)【発明者】
【氏名】譚 福金
(72)【発明者】
【氏名】邵 文龍
(72)【発明者】
【氏名】謝 遠森
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低減されたインピーダンスならびに改善されたレート特性およびサイクル特性を有する電気化学装置を提供する。
【解決手段】本発明は、負極、ならびにこれを用いた電気化学装置および電子装置を提供する。本発明の負極は、負極集電体と、負極集電体の少なくとも一つの表面に位置する負極活物質層とを有し、負極活物質層は、負極活物質を含み、負極活物質は、黒鉛およびハードカーボンを含み、ハードカーボンの全質量に対して、ハードカーボンにおける炭素の含有量に対する水素の含有量の比をWとし、黒鉛の全質量に対して、黒鉛における炭素の含有量に対する水素の含有量の比をWとしたとき、W/Wは5~19の範囲である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学装置であって、
正極、負極および電解液を含み、
前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体の少なくとも一つの表面に位置する負極活物質層とを有し、
前記負極活物質層は、負極活物質を含み、
前記負極活物質は、黒鉛およびハードカーボンを含み、
前記ハードカーボンの全質量に対して、前記ハードカーボンにおける炭素の含有量に対する水素の含有量の比をWとし、
前記黒鉛の全質量に対して、前記黒鉛における炭素の含有量に対する水素の含有量の比をWとしたとき、
/Wは5~19の範囲である、電気化学装置。
【請求項2】
前記ハードカーボンの圧縮密度を、dg/cmとし、
前記黒鉛の圧縮密度を、dg/cmとしたとき、
/dは0.38~0.55の範囲である、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項3】
は、0.7~1.2であり、および/またはdは1.8~2.0である、請求項2に記載の電気化学装置。
【請求項4】
/Wは8~18.6の範囲である、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項5】
前記負極活物質の1300cm-1~1400cm-1におけるピーク強度を、IDとし、且つ、
1530cm-1~1630cm-1におけるピーク強度を、IGとしたとき、
ID/IGの値は0.2~0.5の範囲である、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項6】
前記黒鉛および前記ハードカーボンは、
(1)前記ハードカーボンのD50は、0.1μm~3μmであることと、
(2)前記黒鉛のD50は、7μm~20μmであることと、
(3)前記黒鉛のD50と前記ハードカーボンのD50は、D50/D50≧4.5を満たすことと、
(4)前記ハードカーボンのD50と前記ハードカーボンのD90は、1.5<D90/D50≦6を満たすことと、
(5)前記黒鉛のD50と前記黒鉛のD90は、D90/D50>1.5を満たすことと、
(6)前記ハードカーボンの比表面積は5m/g~30m/gの範囲であることと、
(7)前記負極活物質の全質量に対して、前記ハードカーボンの質量百分率は、1%~10%であることと、
(8)W/Wは12~18の範囲であることと、
のうちの少なくとも1つを満たす、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項7】
粒子径の測定により、前記負極活物質は、0.5μm~2μmの範囲内にピーク強度Aを有し、且つ8μm~17μmの範囲内にピーク強度Bを有し、且つB/Aは15であり、または15より大きいである、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の電気化学装置を含む、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー貯蔵分野に関し、具体的に、負極、ならびにこれを用いた電気化学装置および電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学装置(例えば、リチウムイオン電池)は、体積エネルギー密度および質量エネルギー密度が大きく、環境に優しく、動作電圧が高く、体積が小さく、重量が軽く、サイクル寿命が長いなどの利点を有し、携帯型家庭用電化製品の分野で広く使用されている。近年の電気自動車およびモバイル電子機器の急速な発展に伴い、電池のエネルギー密度、安全性、サイクル特性等に対する要求がますます高くなり、総合的な性能を全面的に向上させる新規な電気化学装置の出現が期待されている。そのうち、急速充放電特性、サイクル特性は既に早急に解決すべき重要な技術問題となっており、電極における活物質の改良は上記問題を解決する研究方向の一つである。
黒鉛は現在最も広く使用されている負極材料であり、高効率で、充放電プラットフォームが安定している等の利点を有するが、現在市販されている黒鉛の性能はほぼ極限まで開発されており、その急速充放電特性、レート特性およびサイクル特性をどのようにさらに向上させるかは主要な難題の一つである。これに基づき、改善された負極を提供して現在の黒鉛負極の急速充電特性、レート特性およびサイクル特性をさらに向上させおよび解決する必要がある。
【発明の概要】
【0003】
本発明の実施例は、関連分野に存在する少なくとも1つの問題をある程度で解決するために、負極およびその製造方法を提供する。本発明の実施例はさらに当該負極を使用する電気化学装置、および電子装置を提供する。
【0004】
一つの実施例において、本発明は、負極を提供する。当該負極は、負極集電体と、負極集電体の少なくとも一つの表面に位置する負極活物質層とを有し、負極活物質層は、負極活物質を含み、負極活物質は、黒鉛およびハードカーボンを含み、ハードカーボンの全質量に対して、ハードカーボンにおける炭素の含有量に対する水素の含有量の比をWとし、黒鉛の全質量に対して、黒鉛における炭素の含有量に対する水素の含有量の比をWとしたとき、W/Wは5~19の範囲である。
【0005】
いくつかの実施例において、ハードカーボンの圧縮密度を、dg/cmとし、黒鉛の圧縮密度を、dg/cmとしたとき、d/dは0.38~0.55の範囲である。
【0006】
いくつかの実施例において、dは、0.7~1.2であり、および/またはdは、1.8~2.0である。
【0007】
いくつかの実施例において、W/Wは8~18.6の範囲である。
【0008】
いくつかの実施例において、W/Wは12~18の範囲である。
【0009】
いくつかの実施例において、負極活物質の1300cm-1~1400cm-1におけるピーク強度を、IDとし、且つ1530cm-1~1630cm-1におけるピーク強度を、IGとしたとき、ID/IGの値は0.2~0.5の範囲である。
【0010】
いくつかの実施例において、黒鉛およびハードカーボンは、
(1)ハードカーボンのD50は、0.1μm~3μmであることと、
(2)黒鉛のD50は、7μm~20μmであることと、
(3)黒鉛のD50とハードカーボンのD50は、D50/D50≧4.5を満たすことと、
(4)前記ハードカーボンのD50とハードカーボンのD90は、1.5<D90/D50≦6を満たすことと、
(5)黒鉛のD50と黒鉛のD90は、D90/D50>1.5を満たすことと、
のうちの少なくとも1つを満たす。
【0011】
いくつかの実施例において、粒子径の測定により、負極活物質は、0.5μm~2μm範囲内にピーク強度Aを有し、且つ8μm~17μm範囲内にピーク強度Bを有し、且つB/Aは15であり、または15より大きいである。
【0012】
いくつかの実施例において、ハードカーボンの比表面積は5m/g~30m/gの範囲である。
【0013】
いくつかの実施例において、負極活物質の全質量に対して、ハードカーボンの質量百分率は、1%~10%である。
【0014】
他の実施例において、本発明は、本発明に記載された負極を調製する方法を提供し、前記調製方法は、
(1)ハードカーボンを調製し、前記ハードカーボンの調製プロセスは、
(a)グルコースまたは樹脂のうちの少なくとも1つを前駆体として使用し、前記前駆体を加熱して生成物を得るステップと、
(b)ステップ(a)における前記生成物を600℃-1500℃の温度下で焼成して、焼成生成物を得るステップと、
(c)アルカン類ガスを使用してステップ(b)における前記焼成生成物を被覆し、前記ハードカーボンを得るステップと、を含み、
(2)黒鉛を調製し、前記黒鉛の調製プロセスは、
人造黒鉛をCガスで500℃-1000℃まで加熱し、1~5時間維持し、不活性雰囲気下で降温した後に前記黒鉛を得るステップを含み、および
(3)ハードカーボンおよび黒鉛を負極活物質として使用し、負極を調製する。
【0015】
他の実施例において、本発明は、本発明に記載された負極を含む電気化学装置を提供する。
【0016】
他の実施例において、本発明は、本発明の実施例による電気化学装置を含む電子装置を提供する。
【0017】
本発明は、黒鉛である負極活物質にハードカーボンを添加することを制御し、且つハードカーボンにおける炭素の含有量に対する水素の含有量の比Wと、黒鉛における炭素の含有量に対する水素の含有量の比Wとの比を制御することによって負極の電流分布を改善し、それによって、電気化学装置のレート特性およびサイクル特性を向上させるとともに、電気化学装置のインピーダンスを低減させる。
【0018】
本発明の実施例の他の態様および利点は、後続の内容において部分的に述べられ、示され、または本発明の実施例の実施によって説明される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
以下では、本発明の実施例を説明するために、本発明の実施例または先行技術を説明するための必要な図面を簡単に説明する。明らかに、以下に説明される図面は本発明の実施例の一部にすぎない。当業者であれば、創造的な労働を必要とせずに、依然として、これらの図面に例示されている構造に基づいて他の実施例の図面を得ることができる。
図1図1は、本発明の実施例6における負極の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。
図2図2は、本発明の実施例6における負極活物質の粒子径分布曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。本発明の実施例は、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0021】
本発明に使用されたように、用語「約」は小さな変化を叙述して説明するためのものである。当該用語「約」を事例または状況と組み合わせて用いられる場合、前記用語は、その中での事例または状況が精確に発生した例、並びにその中での事例または状況が極めて近似的に発生した例を指しうる。例を挙げると、用語「約」を数値と組み合わせて使用する時に、用語は前記数値の±10%または±10%未満の変化の範囲、例えば±5%もしくは±5%未満、±4%もしくは±4%未満、±3%もしくは±3%未満、±2%もしくは±2%未満、±1%もしくは±1%未満、±0.5%もしくは±0.5%未満、±0.1%もしくは±0.1%未満、または±0.05%もしくは±0.05%未満の変化の範囲を指しうる。
【0022】
なお、本明細書では、量、比率および他の数値は、範囲形式で示される。このような範囲形式は、便宜上および簡潔にするために使用され、この範囲を柔軟に理解する必要があり、このような範囲は、範囲の制限として明示的に指定された値だけでなく、各値とサブ範囲が明示的に指定されているように、該範囲内に含まれた全ての各値とサブ範囲が含まれる。
【0023】
具体的な実施形態および請求の範囲において、用語「のうちの一方」、「のうちの一つ」、「のうちの一種」、または他の類似な用語で接続された項のリストは、リストされる項のいずれかを意味する。例えば、項AおよびBがリストされている場合、「AおよびBのうちの一方」という短句は、AのみまたはBのみを意味する。別の実例では、項A、BおよびCがリストされている場合、「A、BおよびCのうちの一方」という短句は、Aのみ、BのみまたはCのみを意味する。項Aは、単一の要素または複数の要素を含んでもよい。項Bは、単一の要素または複数の要素を含んでもよい。項Cは、単一の要素または複数の要素を含んでもよい。
【0024】
具体的な実施形態および請求の範囲において、「のうちの少なくとも一つ」、「のうちの少なくとも一個」、「のうちの少なくとも一種」という用語または他の類似的な用語で接続された項のリストとは、リストされた項の任意的な組み合わせを意味する。例えば、項AおよびBがリストされている場合、「AおよびBのうちの少なくとも一方」という短句は、Aのみ;Bのみ;またはAおよびBを意味する。別の実例では、項A、BおよびCがリストされている場合、「A、BおよびCのうちの少なくとも一つ」とは、Aのみ、またはBのみ、Cのみ、AおよびB(Cを除く)、AおよびC(Bを除く)、BおよびC(Aを除く)、またはA、BおよびCのすべてを意味する。項Aは、単一の要素または複数の要素を含んでもよい。項Bは、単一の要素または複数の要素を含んでもよい。項Cは、単一の要素または複数の要素を含んでもよい。
【0025】
一、電気化学装置
いくつかの実施例において、本発明は電気化学装置を提供し、前記電気化学装置は、正極、負極および電解液を含む。
【0026】
1、負極
本発明の実施例は、負極を提供する。当該負極は、負極集電体と、負極集電体の少なくとも一つの表面に位置する負極活物質層とを有し、負極活物質層は、負極活物質を含み、負極活物質は、黒鉛およびハードカーボンを含み、前記ハードカーボンの全質量に対して、ハードカーボンにおける炭素の含有量に対する水素の含有量の比をWとし、黒鉛の全質量に対して、黒鉛における炭素の含有量に対する水素の含有量の比をWとしたとき、W/Wは5~19の範囲である。
【0027】
ハードカーボンは、粒子内部および表面の両方に水素を含むことができるため、ハードカーボンにおける炭素の含有量に対する水素の含有量の比W1が比較的高い範囲となり得る。黒鉛は、内部結晶構造が完全であり、その表面に少量の水素を有するため、黒鉛における炭素の含有量に対する水素の含有量の比W2が比較的低い範囲にある。W1とW2との比は、負極活物質の組成を反映することができ、これは、負極活物質中のハードカーボンの粒子径、比表面積等の要素に関係するため、負極活物質を特徴付けるパラメータとして使用することができる。W1/W2の値が大きいほど、ハードカーボンの粒子径が小さく、比表面積が大きく、黒鉛と混合したときに均一に混合され、負極の孔隙率を平均化することができ、負極の電流分布を改善することができ、それによって、電気化学装置のレート特性およびサイクル特性を改善することができる。同時に、ハードカーボンの粒子径が小さいほど、活性イオンの輸送距離が短くなり、電気化学装置のレート特性の向上に寄与する。負極片の電流分布の改善および活性イオンの輸送距離の短縮はまた、負極側の電気化学インピーダンスおよび拡散インピーダンスの改善、ならびに電気化学装置のレート特性の改善に寄与する。
【0028】
いくつかの実施例において、W/Wの値は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、もしくは19であり、またはこれらの値のいずれか2つからなる範囲にある。いくつかの実施例において、W/Wは8~18.6の範囲である。いくつかの実施例において、W/Wは12~18の範囲である。W/Wが上記範囲内であると、電気化学装置のレート特性をより向上させることができる。
【0029】
いくつかの実施例において、Wは、0.05~0.2の範囲である。いくつかの実施例において、Wは、0.05、0.07、0.09、0.1、0.12、0.14、0.16、0.18、もしくは0.2であり、またはこれらの値のいずれか2つからなる範囲にある。Wが上記範囲内であると、活性イオンの輸送がより促進され、電気化学装置のレート特性が向上する。
【0030】
いくつかの実施例において、Wは、0.005~0.02の範囲である。いくつかの実施例において、W0.005、0.007、0.009、0.01、0.012、0.014、0.016、0.018、もしくは0.02であり、またはこれらの値のいずれか2つからなる範囲にある。いくつかの実施例において、本発明のハードカーボンは、
(1)グルコース溶液または樹脂のうちの少なくとも1つを前駆体として提供し、前駆体を加熱するステップと、
(2)ステップ(1)における生成物を600℃-1500℃の温度下で炭化するステップと、
(3)アルカン類ガスを使用してステップ(2)における炭化生成物を気相被覆するステップと、を含む調製方法によって調製される。
【0031】
いくつかの実施例において、本発明の黒鉛は、以下の調製方法によって調製される。
【0032】
市販の人造黒鉛を回転炉で10%Cガスで500℃-1000℃に加熱し、1~5時間維持し、その後ガスをNガスに切り替え、自然冷却して最終の黒鉛材料を得る。
当業者であれば、ハードカーボンおよび黒鉛における水素と炭素との含有比は、その調製条件(例えば、反応時間、温度等)を調整することにより制御できることを理解するであろう。
【0033】
いくつかの実施例において、ハードカーボンの圧縮密度を、dg/cmとし、黒鉛の圧縮密度を、dg/cmとしたとき、d/dは0.38~0.55の範囲である。
【0034】
いくつかの実施例において、d/dの値は、0.38、0.4、0.42、0.44、0.46、0.48、0.5、0.52、0.54、もしくは0.55であり、またはこれらの値のいずれか2つからなる範囲にある。ハードカーボンまたは黒鉛の圧縮密度は、材料の粒子径の大きさを反映することができる。ハードカーボンおよび黒鉛の圧縮密度が上記の条件を満たす場合、ハードカーボンおよび黒鉛は適切な粒子径を有し、ハードカーボンは黒鉛の隙間に均一に分散され、それによって電気化学装置のレート特性およびサイクル特性をさらに改善し、電気化学装置のインピーダンスを低下させることができる。
【0035】
いくつかの実施例において、dは、0.7~1.2である。いくつかの実施例において、dは、0.7、0.8、0.9、1.0、もしくは1.2であり、またはこれらの値のいずれか2つからなる範囲にある。ハードカーボンの圧縮密度が上記の条件を満たす場合、電気化学装置のレート特性およびサイクル特性をより向上させることができる。
【0036】
いくつかの実施例において、dは、1.8~2.0である。いくつかの実施例において、dは、1.8、1.85、1.9、1.95、もしくは2.0であり、またはこれらの値のいずれか2つからなる範囲にある。黒鉛の圧縮密度が上記の条件を満たす場合、電気化学装置のレート特性およびサイクル特性をより向上させることができる。
【0037】
いくつかの実施例において、前記負極活物質の1300cm-1~1400cm-1における第1の特徴的なピーク強度を、IDとし、且つ1530cm-1~1630cm-1における第2の特徴的なピーク強度を、IGとしたとき、ID/IGの値は0.2~0.5の範囲である。いくつかの実施例において、ID/IGの値は、0.2、0.3、0.4、もしくは0.5であり、またはこれらの値のいずれか2つからなる範囲にある。ID/IGは、負極活物質の欠陥度を反映することができる。第1の特徴的なピークは、主に、より無秩序なハードカーボンに由来し、したがって、ハードカーボンの添加は、負極片のD/IG値を増加させることができる。ハードカーボンの粒子径が小さいほど、黒鉛中により均一に分布し、ID/IGの値が上記の範囲内にあるとき、ハードカーボンと黒鉛との間により良好な相乗効果を有し、例えば、均一な充放電中に電極片の面電流密度を増加させ、電気化学装置のレート特性を改善する。
【0038】
いくつかの実施例において、ハードカーボンのD50は、0.1μm~3μmである。いくつかの実施例において、D50は、0.1μm、0.5μm、1μm、1.5μm、2μm、2.5μm、もしくは3μmであり、またはこれらの値のいずれか2つからなる範囲にある。
【0039】
いくつかの実施例において、黒鉛のD50は、7μm~20μmである。いくつかの実施例において、D50は、7μm、9μm、11μm、13μm、15μm、17μm、19μm、もしくは20μmであり、またはこれらの値のいずれか2つからなる範囲にある。
【0040】
いくつかの実施例において、黒鉛のD50とハードカーボンのD50は、D50/D50≧4.5を満たす。いくつかの実施例において、D50/D50は、4.5-15である。いくつかの実施例において、D50/D50は、4.5、5、7、9、11、13、もしくは15であり、またはこれらの値のいずれか2つからなる範囲にある。
【0041】
いくつかの実施例において、ハードカーボンのD50とハードカーボンのD90は、1.5<D90/D50≦6を満たす。いくつかの実施例において、D90/D50は、1.6、2、3、4、5、もしくは6であり、またはこれらの値のいずれか2つからなる範囲にある。
【0042】
いくつかの実施例において、黒鉛のD50と黒鉛のD90は、D90/D50>1.5を満たす。いくつかの実施例において、D90/D50は、1.6-10である。いくつかの実施例において、D90/D50は、1.6、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10であり、またはこれらの値のいずれか2つからなる範囲にある。
ハードカーボンおよび黒鉛の粒子径が上記の条件を満たす場合、ハードカーボンおよび黒鉛の粒子径の組み合わせが適切であり、ハードカーボンを黒鉛の隙間に均一に分散させることができ、これにより、電気化学装置のレート特性およびサイクル特性をさらに向上させ、電気化学装置のインピーダンスを低下させることができる。
【0043】
いくつかの実施例において、粒子径の測定により、負極活物質は、0.5μm~2μm範囲内にピーク強度Aを有し、且つ8μm~17μm範囲内にピーク強度Bを有し、且つB/Aは15であり、または15より大きいである。
【0044】
いくつかの実施例において、B/Aの値は、15~100である。いくつかの実施例において、B/Aの値は、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、もしくは100であり、またはこれらの値のいずれか2つからなる範囲にある。いくつかの実施例において、ピーク強度Aの値は、0.4~0.8である。いくつかの実施例において、ピーク強度Aの値は、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、またはこれらの値のいずれか2つからなる範囲にある。
【0045】
いくつかの実施例において、ピーク強度Bの値は、6~12である。いくつかの実施例において、ピーク強度Bの値は、6、7、8、9、10、11、もしくは12であり、またはこれらの値のいずれか2つからなる範囲にある。
負極活物質のピーク強度AおよびBが上記の条件を満たす場合、電気化学装置のレート特性およびサイクル特性の向上に寄与し、電気化学装置のインピーダンスを低下させることができる。
【0046】
いくつかの実施例において、ハードカーボンの比表面積は、5m/g~30m/gの範囲である。いくつかの実施例において、ハードカーボンの比表面積は、5m/g、8m/g、10m/g、12m/g、15m/g、18m/g、20m/g、23m/g、25m/g、28m/g、もしくは30m/gであり、またはこれらの値のいずれか2つからなる範囲にある。
【0047】
いくつかの実施例において、黒鉛の比表面積は、0.5m/g~2m/gの範囲である。いくつかの実施例において、黒鉛の比表面積は、0.5m/g、0.8m/g、1m/g、1.2m/g、1.5m/g、1.8m/g、もしくは2m/gであり、またはこれらの値のいずれか2つからなる範囲にある。
ハードカーボンおよび黒鉛の比表面積が上記の範囲内にあるとき、電気化学装置のレート特性およびサイクル特性の向上に寄与し、電気化学装置のインピーダンスを低下させることができる。
【0048】
いくつかの実施例において、負極活物質の全質量に対して、ハードカーボンの質量百分率は、1%~10%である。いくつかの実施例において、負極活物質の全質量に対して、ハードカーボンの質量百分率は、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、もしくは10%であり、またはこれらの値のいずれか2つからなる範囲にある。
【0049】
いくつかの実施例において、負極活物質の全質量に対して、黒鉛の質量百分率は、90%~99%である。いくつかの実施例において、前記負極活物質の全質量に対して、黒鉛の質量百分率は、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%であり、またはこれらの値のいずれか2つからなる範囲にある。
負極活物質中のハードカーボンおよび黒鉛の含有量が上記の範囲内にあるとき、電気化学装置のレート特性およびサイクル特性の向上、電気化学装置のインピーダンスの低下に寄与する。
【0050】
いくつかの実施例において、本発明は、
(1)グルコースまたは樹脂のうちの少なくとも1つを前駆体として使用し、前記前駆体を加熱して生成物を得るステップと、
(2)ステップ(1)における生成物を600℃-1500℃の温度下で焼成して、焼成生成物を得るステップと、
(3)アルカン類ガスを使用してステップ(2)における焼成生成物を被覆するステップと、を含むハードカーボンの調製方法を提供する。
【0051】
いくつかの実施例において、ステップ(1)における加熱温度は、150℃-500℃である。いくつかの実施例において、ステップ(1)における加熱温度は、150℃、200℃、250℃、300℃、350℃、400℃、450℃、もしくは500℃であり、またはこれらの値のいずれか2つからなる範囲にある。
【0052】
いくつかの実施例において、ステップ(1)における加熱時間は、3時間-30時間である。いくつかの実施例において、ステップ(1)における加熱時間は、3時間、4時間、6時間、10時間、15時間、20時間、23時間、25時間、もしくは30時間であり、またはこれらの値のいずれか2つからなる範囲にある。
【0053】
いくつかの実施例において、ステップ(2)における焼成温度は、600℃、680℃、1000℃、1200℃、1300℃、1400℃、もしくは1500℃であり、またはこれらの値のいずれか2つからなる範囲にある。
【0054】
いくつかの実施例において、ステップ(2)における焼成時間は、1時間-5時間である。いくつかの実施例において、ステップ(2)における焼成時間は、1時間、2時間、3時間、4時間、もしくは5時間であり、またはこれらの値のいずれか2つからなる範囲にある。
【0055】
いくつかの実施例において、アルカン類ガスは、Cを含む。
【0056】
いくつかの実施例において、ステップ(3)における被覆は、500℃-1000℃で行われる。いくつかの実施例において、ステップ(3)における被覆温度は、500℃、600℃、700℃、800℃、900℃、もしくは1000℃であり、またはこれらの値のいずれか2つからなる範囲にある。
【0057】
いくつかの実施例において、ステップ(3)における被覆時間は、2時間-10時間である。いくつかの実施例において、ステップ(3)における被覆時間は、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、もしくは10時間であり、またはこれらの値のいずれか2つからなる範囲にある。
【0058】
いくつかの実施例において、本発明は、黒鉛の調製方法を提供し、
人造黒鉛をCガスで500℃-1000℃に加熱し、1時間-5時間維持し、不活性雰囲気下で降温した後に前記黒鉛を得ることを含む。
【0059】
いくつかの実施例において、加熱温度は、500℃、600℃、700℃、800℃、900℃、もしくは1000℃であり、またはこれらの値のいずれか2つからなる範囲にある。
【0060】
いくつかの実施例において、加熱時間は、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、またはこれらの値のいずれか2つからなる範囲にある。
【0061】
いくつかの実施例において、本発明は、負極の調製方法を提供する。当該負極の調製方法は、上述の方法で調製されたハードカーボンおよび黒鉛を負極活物質として使用し、負極を調製することを含む。いくつかの実施例において、負極活物質層は粘着剤を含む。いくつかの実施例において、粘着剤は、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、アクリル酸(エステル)化されたスチレンブタジエンゴム、エポキシ樹脂またはナイロンを含むが、それらに限定されていない。
【0062】
いくつかの実施例において、負極活物質層は導電材料を含む。いくつかの実施例において、導電材料は、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンファイバー、金属粉末、金属繊維、銅、ニッケル、アルミニウム、銀またはポリフェニレン誘導体を含むが、それらに限定されない。
【0063】
いくつかの実施例において、集電体は、銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔、チタン箔、ニッケルフォーム、発泡銅、または導電性金属被覆ポリマー基板を含むが、それらに限定されない。
【0064】
いくつかの実施例において、負極片は、溶剤に活物質、導電材料および粘着剤を混合し、活物質組成物を調製し、その活物質組成物を集電体に塗工する方法によって得られることができる。
【0065】
いくつかの実施例において、溶媒はN-メチルピロリドンを含んでもよいが、これに限定されない。
【0066】
2、正極
本発明の実施例における正極に用いられる材料、構成およびその製造方法は、先行技術に開示された任意の技術を含む。いくつかの実施例において、正極は米国特許出願US9812739Bに記載された正極であり、その全内容が参照により本発明に取り込まれる。
【0067】
いくつかの実施例において、正極は、集電体およびその集電体に位置する正極活物質層を含む。
【0068】
いくつか実施例において、正極活物質は、コバルト酸リチウム(LiCoO)、リチウムニッケルコバルトマンガン(NCM)三元系材料、リン酸第一鉄リチウム(LiFePO)またはマンガン酸リチウム(LiMn)を含むが、それらに限定されない。
【0069】
いくつかの実施例において、正極活物質層は、さらに粘着剤を含み、また、任意に導電材料を含む。粘着剤は、正極活物質粒子同士の密着を向上させ、また、正極活物質と集電体との密着も向上させる。
【0070】
いくつかの実施例において、粘着剤は、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、アクリル酸(エステル)化されたスチレンブタジエンゴム、エポキシ樹脂またはナイロン等を含むが、それらに限定されない。
【0071】
いくつかの実施例において、導電材料は、炭素系材料、金属系材料、導電性重合体およびそれらの混合物を含むが、それらに限定されない。いくつかの実施例において、炭素系材料は、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンファイバー、およびそれらの任意の組み合わせから選択される。いくつかの実施例において、金属系材料は、金属粉末、金属繊維、銅、ニッケル、アルミニウム、および銀から選択される。いくつかの実施例において、導電性重合体はポリフェニレン誘導体である。
【0072】
いくつかの実施例において、集電体はアルミニウムを含むが、それに限定されていない。
【0073】
正極は、本分野での既知の調製方法によって調製されてもよい。例えば、正極は、溶剤に活物質、導電材料および粘着剤を混合し、活物質組成物を調製し、その活物質組成物を集電体上に塗工する方法によって得られることができる。いくつかの実施例において、溶媒はN-メチルピロリドンを含んでもよいが、これに限定されていない。
【0074】
3、電解液
本発明の実施例に使用される電解液は、先行技術における既知の電解液であってもよい。
【0075】
いくつかの実施例において、前記電解液は、有機溶剤、リチウム塩および添加剤を含む。本発明による電解液の有機溶剤は、電解液の溶剤として用いられる先行技術における既知の任意の有機溶剤であってもよい。本発明による電解液に使用される電解質は、特に制限がなく、先行技術における既知の任意の電解質であってもよい。本発明による電解液の添加剤は、電解液の添加剤として用いられる先行技術における既知の任意の添加剤であってもよい。
【0076】
いくつかの実施例において、前記有機溶剤は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、プロピレンカーボネートまたはエチルプロピオネートを含むが、それらに限定されない。
いくつかの実施例において、前記リチウム塩は、有機リチウム塩および無機リチウム塩のうちの少なくとも一種を含む。
【0077】
いくつかの実施例において、前記リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムLiN(CFSO(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドLi(N(SOF))(LiFSI)、リチウムビス(オキサレート)ボレートLiB(C(LiBOB)またはリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートLiBF(C)(LiDFOB)を含むが、これらに限定されない。
【0078】
いくつかの実施例において、前記電解液におけるリチウム塩の濃度は約0.5~3mol/L、約0.5~2mol/Lまたは約0.8~1.5mol/Lである。
【0079】
4、セパレータ
いくつかの実施例において、正極片と負極片の間には、短絡を防止するためにセパレータが設けられる。本発明の実施例に使用されるセパレータの材料と形状は、特に制限がなく、先行技術に開示された任意の技術であってもよい。いくつかの実施例において、セパレータは、本発明の電解液に対して安定な材料から形成された重合体または無機物等を含む。
【0080】
例えば、セパレータは、基材層および表面処理層を含んでもよい。基材層は多孔質構造を有する不織布、フィルムまたは複合フィルムであり、基材層の材料はポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートおよびポリイミドから選ばれる少なくとも一種である。具体的には、ポリプロピレン多孔質膜、ポリエチレン多孔質膜、ポリプロピレン不織布、ポリエチレン不織布またはポリプロピレン-ポリエチレン-ポリプロピレン多孔質複合膜を選択して使用することができる。
【0081】
基材層の少なくとも一つの表面に表面処理層が設けられ、表面処理層は、重合体層または無機物層であってもよく、重合体と無機物を混合して形成された層であってもよい。
【0082】
無機物層は、無機粒子およびバインダーを含み、無機粒子は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化ハフニウム、酸化スズ、二酸化セリウム、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、炭化ケイ素、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムおよび硫酸バリウムから選ばれる一種または複数種の組み合わせである。バインダーは、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリメタクリル酸メチル、ポリテトラフルオロエチレンおよびポリヘキサフルオロプロピレンから選ばれる一種または複数種の組み合わせである。
【0083】
重合体層は、重合体を含み、重合体の材料は、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、アクリル酸エステルの重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリフッ化ビニリデンおよびポリ(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)から選ばれる少なくとも一種である。
【0084】
5、電気化学装置
本発明は、本発明に記載された負極を含む電気化学装置を提供する。いくつかの実施例において、電気化学装置の25℃での容量をV1とし、電気化学装置の45℃での容量をV2としたとき、V1/V2は0.985~1の範囲である。
【0085】
いくつかの実施例において、V1/V2は、0.985、0.986、0.987、0.988、0.989、0.992、0.994、0.996、0.998、もしくは1であり、またはこれらの値のいずれか2つからなる範囲にある。
【0086】
いくつかの実施例において、本発明の電気化学装置は、全ての種類の一次電池、二次電池、燃料電池、太陽電池またはコンデンサを含むが、それらに限定されない。
【0087】
いくつかの実施例において、前記電気化学装置はリチウム二次電池である。
【0088】
いくつかの実施例において、リチウム二次電池は、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池またはリチウムイオンポリマー二次電池を含むが、それらに限定されない。
【0089】
6、電子装置
本発明は、本発明の実施例による電気化学装置を含む電子装置を提供する。
【0090】
いくつかの実施例において、前記電子装置は、ノートコンピューター、ペン入力型コンピューター、モバイルコンピューター、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯型ファクシミリ、携帯型コピー機、携帯型プリンター、ステレオヘッドセット、ビデオレコーダー、液晶テレビ、ポータブルクリーナー、携帯型CDプレーヤー、ミニディスク、トランシーバー、電子ノートブック、電卓、メモリーカード、ポータブルテープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、オートバイ、アシスト自転車、自転車、照明器具、おもちゃ、ゲーム機、時計、電動工具、閃光灯、カメラ、大型家庭用ストレージバッテリー、およびリチウムイオンコンデンサーなどを含むが、これらに限定されていない。
【0091】
以下では、例としてリチウムイオン電池を挙げ、具体的な実施例を参照してリチウムイオン電池の調製について説明し、当業者は、本発明に記載されている製造方法が単なる例示であり、他のいかなる好適な製造方法が本発明の範囲内にあることを理解すべきである。
【0092】
実施例
以下の説明では、本発明のリチウムイオン電池の実施例および比較例により、特性評価を行う。
一、リチウムイオン電池の調製
1、負極の調製
A、以下の方法でハードカーボン材料を調製した。
(1)一定濃度のグルコース溶液を調製し、700mLのグルコース溶液を1Lの反応釜に加え、密封した後に水熱反応を行った。水熱反応条件は180-330℃まで昇温し、5時間保持した後に25℃まで自然降温することであった。
(2)ステップ(1)で得られた材料を濾過して乾燥させることによって黒褐色粉末を得て、次にそれをNガスで保護された回転炉に入れて炭化し、炭化温度は、1000℃であり、時間が2時間であった。
(3)必要に応じて、炭化後の粉末を1000℃から700℃まで降温し、ガスを10%Cガスに切り替え、5時間維持し、次にガスをNガスに切り替え、自然降温した後に最終のハードカーボン材料を得た。
上記の調製ステップに関係するパラメータを表1に示す。
【0093】
【表1】
【0094】
B、以下の方法で黒鉛材料を調製した。
市販の人造黒鉛を回転炉中に10%Cガスで700℃まで加熱し、一定時間保持し、その後ガスをNガスに切り替え、自然冷却して最終の黒鉛材料を得た。具体的な調製パラメータは表2に示す。
【0095】
【表2】
【0096】
C、負極活物質(黒鉛材料または黒鉛材料とハードカーボン材料)、スチレンブタジエンゴム(SBR)およびカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)を97:2:1の重量比で適量の脱イオン水に十分に撹拌して混合し、均一な負極スラリーに形成し、負極スラリーの固形分は40wt%であった。このスラリーを負極集電体(銅箔)に塗工し、85℃で乾燥させた後、冷間プレス、切断、スリットを経た後、120℃の真空条件で12時間乾燥させ、負極を得た。
負極活物質中のハードカーボンおよび黒鉛の含有量を表3および表5に示す。ここで、表3の実施例1における「3%ハードカーボン1+黒鉛1」は、負極活物質の全質量に対して、ハードカーボン1の質量百分率が3%であり、残りの97%が黒鉛1であることを示す。表3および表5には、他の実施例および比較例におけるハードカーボンおよび黒鉛の含有量も同様に記載する。
【0097】
2、正極の調製
正極活物質であるコバルト酸リチウム(LiCoO)、導電剤であるSuper Pおよびバインダーであるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を97:1.4:1.6の重量比で適量の溶剤であるN-メチルピロリドン(NMP)に十分に撹拌して混合し、均一な正極スラリーに形成し、正極スラリーの固形分は72wt%であった。このスラリーを正極集電体であるアルミニウム箔に塗工し、85℃で乾燥させた後、冷間プレス、切断、スリットを経た後、85℃の真空条件で4時間乾燥させ、正極を得た。
【0098】
3、電解液の調製
乾燥したアルゴンガス雰囲気のグローブボックスにおいて、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)をEC:EMC:DEC=30:50:20の質量比で均一に混合し、リチウム塩であるLiPFを加え、均一に混合した後に電解液を得て、電解液の質量に対して、LiPFの質量百分率は、12.5%であった。
【0099】
4、セパレータの調製
セパレータとして、厚さ7μmのポリエチレン(PE)多孔質重合体フィルムを用いた。
【0100】
5、リチウムイオン電池の調製
正極、セパレータ、負極を順に積層し、セパレータを正極と負極との間に位置させて隔離の役割を果たし、次に巻き付け、タブを溶接した後、外装箔であるアルミプラスチックフィルム中に配置し、電解液を注入し、真空パッケージ、静置、フォーメーション、整形、容量測定等の工程を経て、ソフトパックリチウムイオン電池が得られた。
【0101】
二、リチウムイオン電池特性の測定方法
1、負極活物質H/C値の測定方法
H/C値の定義:ハードカーボン材料または黒鉛材料におけるC元素に対するH元素のモル比。H元素とC元素は元素分析装置で測定し、測定装置はUNICUBE元素分析装置であった。H/C値は、ハードカーボン材料または黒鉛材料を高純度酸素雰囲気中で十分に燃焼させた後、HOおよびCOのモル含有量を測定することによって得られた。
ハードカーボン材料における炭素の含有量に対する水素の含有量の比H/CをWとし、黒鉛材料における炭素の含有量に対する水素の含有量の比H/CをWとした。
【0102】
2、負極活物質ID/IGの値の測定方法
負極片に対してイオン研磨の方法で断面を切り出した後、断面をラマンスペクトルの測定台に置き、集束した後に測定した。測定する時に200μm×500μmの範囲を選択し、この範囲内に等間隔で200個以上の点を測定し、各点の測定範囲はいずれも1000-2000cm-1の間にある。1320-1370cm-1の間に出現するピークをDピークとし、そのピーク強度をIDとし、1570-1620cm-1の間に出現するピークをGとし、そのピーク強度をIGとし、各点のID/IGの強度比を統計し、平均値を統計することにより、負極活物質のID/IGの値を測定した。
【0103】
3、黒鉛およびハードカーボン材料の比表面積(BET)の測定:
比表面積の測定方法はGB/T 19587-2017を参照し、具体的なプロセスは、ハードカーボン材料または黒鉛材料のサンプル1g~8g(サンプルは少なくともボール部の体積の1/3をカバーするように秤量する)を秤量して1/2インチのボール部付きのチューブ(ボール部のチューブ径は、12mmである)に入れ、200℃で2h前処理した後に測定装置TriStar3030 (米国のMicromeritics社)に入れて測定し、使用した吸着ガスはN(純度:99.999%)であり、測定条件77Kで行い、かつブルナウアー・エメット・テラー吸着理論およびその式(BET)に基づいて測定し、比表面積を計算した。
【0104】
4、粒度測定:
50mlのきれいなビーカーに負極活物質サンプル約0.02gを加え、脱イオン水約20mlを入れ、さらに2~3滴の1%の界面活性剤を滴下し、サンプルを水に完全に分散させ、120Wの超音波洗浄機で5分間超音波処理し、MasterSizer 2000を利用して粒度分布を測定した。
【0105】
5、ピーク強度Aおよびピーク強度Bの測定方法
満放電された負極片をDMC溶液で洗浄し、乾燥させ、負極活物質を集電体から軽く掻き落とし、さらにエタノールで5回洗浄し、遠心分離して乾燥させた。次に上記粒度測定の方法によって粒度測定を行い、ピーク強度と粒子径の分布曲線を取得した。0.1-5umの間のピークをピークAとし、5-25umの間のピークをピークBとし、ピークBとピークAの強度を読み取り、その強度比を算出した。
【0106】
6、圧縮密度の測定方法
中国国家標準GB/T 24533-2009「リチウムイオン電池黒鉛系負極材料」に基づいて圧縮密度の測定を行った。測定装置は、三思縦横UTM7305測定装置であった。測定時に約1gの黒鉛またはハードカーボン材料サンプルを装置の型に置き、一定の圧力(1~5t)を設定し、装置によりサンプルの異なる圧力での厚さを記録してサンプルの異なる圧力での体積を取得し、式ρ=m/Vによってサンプルの圧縮密度を算出した。ここで、前記ハードカーボンの圧縮密度をdとし、前記黒鉛の圧縮密度をdとし、いずれも3tの圧力での圧縮密度であった。
【0107】
7、インピーダンスの測定方法:
リチウムイオン電池(電気化学装置)を3.0Vまで放電した後、すなわち0%SOC状態で、その直流インピーダンスを測定し、0%SOCインピーダンスとした。
【0108】
8、レート特性の測定方法
リチウムイオン電池を一定の温度でレート充電を行い、まず満放電されたリチウムイオン電池を1Cの定電流で4.48Vまで充電し、定電圧で0.05Cまで充電した後、1Cの定電流で3.0Vまで放電し、得られた放電容量を容量Aとし、さらに5Cの定電流で4.48Vまで充電し、定電圧で0.05Cまで充電した後、1Cの定電流で3.0Vまで放電し、得られた放電容量を容量Bとし、B/Aを5C/1Cレート特性とした。
【0109】
9、低温-20℃/25℃維持率特性の測定方法
リチウムイオン電池を異なる温度で充放電測定を行った。まず満放電されたリチウムイオン電池を室温25℃で1Cの定電流で4.48Vまで充電し、定電圧で0.05Cまで充電した後、1Cの定電流で3.0Vまで放電し、得られた放電容量を容量Cとし、さらに1Cの定電流で4.48Vまで充電し、定電圧で0.05Cまで充電した後、リチウムイオン電池を-20℃の恒温器に移し、8h放置した後に1Cの定電流で3.0Vまで放電し、得られた放電容量を容量Dとし、D/Cを低温-20℃/25℃の維持率とした。
【0110】
10、常温サイクル特性の測定方法
25℃の雰囲気において、満放電されたリチウムイオン電池を3Cの定電流で電圧4.48Vまで充電し、次に0.05Cまで定電圧充電し、1Cの定電流で3Vまで放電することを1サイクルとし、且つ初回サイクルの放電容量Eを記録した。800回のサイクル後、800回目のサイクルの放電容量Fを記録した。F/Eの比を25℃でのサイクル維持率とした。
【0111】
11、高温サイクル特性の測定方法
45℃の雰囲気において、満放電されたリチウムイオン電池を3Cの定電流で電圧4.48Vまで充電し、次に0.05Cまで定電圧充電し、1Cの定電流で3Vまで放電することを1サイクルとし、且つ初回サイクルの放電容量Gを記録した。800回のサイクル後、800回目のサイクルの放電容量Hを記録した。H/Gの比を45℃でのサイクル維持率とした。
【0112】
12、V1およびV2の測定方法
リチウムイオン電池を異なる温度で充放電測定を行った。まず満放電されたリチウムイオン電池を室温25℃で1Cの定電流で4.48Vまで充電し、定電圧で0.05Cまで充電した後、1Cの定電流で3.0Vまで放電し、得られた放電容量を容量V1とした。さらにリチウムイオン電池を45℃の恒温器に移し、8h放置した後に1Cの定電流で4.48Vまで充電し、定電圧で0.05Cまで充電し、1Cの定電流で3.0Vまで放電し、得られた放電容量を容量V2とし、V2/V1の比を計算した。
【0113】
三、リチウムイオン電池特性の測定結果
表3および表4に、各実施例および比較例のハードカーボン、黒鉛およびリチウムイオン電池に関するパラメータを示す。表5に、各実施例および比較例のリチウムイオン電池の特性を示す。
【0114】
【表3】
【0115】
【表4】
【0116】
【表5】
【0117】
以上の比較例および実施例の比較から分かるように、ハードカーボン材料を含まない負極活物質と比較して、負極活物質としてハードカーボンおよび黒鉛を用いた負極は、リチウムイオン電池のインピーダンスを大幅に低下させることができ、レート特性およびサイクル特性を大幅に向上させることができる。また、ハードカーボンにおける炭素の含有量に対する水素の含有量の比Wと、黒鉛における炭素の含有量に対する水素の含有量の比Wとの比(W/W)が5~19の範囲内であると、リチウムイオン電池のインピーダンスを大幅に低下させることができ、レート特性およびサイクル特性を大幅に向上させることができる。
【0118】
図1は実施例6における負極の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示し、これから分かるように、負極はフレーク状の黒鉛および球状のハードカーボンを含み、ハードカーボンは黒鉛の隙間に均一に分布している。図2は本発明の実施例6における負極活物質の粒子径分布曲線を示し、これから分かるように、粒子径分布曲線は2つのピークを有し、そのうち、粒子径が小さいピークはハードカーボンであり、粒子径が大きいピークは黒鉛である。
【0119】
そして、W1/W2、d、d、ID/IG、D50、D50、D90、D90およびB/Aなどのパラメータが特定の関係を満たすか、または特定の範囲内にある場合、リチウムイオン電池は、より低いインピーダンスならびにより良好なレート特性およびサイクル特性を有する。
【0120】
明細書全体では、「いくつかの実施例」、「一部の実施例」、「一つの実施例」、「他の例」、「例」、「具体的な例」、または「一部の例」の引用とは、本発明の少なくとも一つの実施例または例が、当該実施例または例に記載の特定の特徴、構造、材料または特性を含むことを意味する。したがって、明細書全体の各場所に記載された、例えば「いくつかの実施例において」、「実施例において」、「一つの実施例において」、「他の例において」、「一つの例において」、「特定の例において」または「例」は、必ずしも本発明における同じ実施例または例を引用するわけではない。また、本明細書の特定の特徴、構造、材料、または特性は、一つまたは複数の実施例または例において、あらゆる好適な形態で組み合わせることができる。
【0121】
例示的な実施例が開示および説明されているが、当業者は、上述実施例が本発明を限定するものとして解釈されることができず、且つ、本発明の技術思想、原理、および範囲から逸脱しない場合に実施例を改変、置換および変更することができること、を理解すべきである。
図1
図2