(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129071
(43)【公開日】2024-09-26
(54)【発明の名称】植物寄生性センチュウ防除剤及び植物寄生性センチュウの防除方法
(51)【国際特許分類】
A01N 43/60 20060101AFI20240918BHJP
A01P 5/00 20060101ALI20240918BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
A01N43/60 101
A01P5/00
A01G7/00 602Z
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024103114
(22)【出願日】2024-06-26
(62)【分割の表示】P 2021522823の分割
【原出願日】2020-05-27
(31)【優先権主張番号】P 2019098327
(32)【優先日】2019-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】303020956
【氏名又は名称】三井化学クロップ&ライフソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】弁理士法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武内 晴香
(72)【発明者】
【氏名】小野▲崎▼ 保道
(72)【発明者】
【氏名】堀越 亮
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 篤志
(57)【要約】 (修正有)
【課題】非標的生物への安全性が高く、かつ、簡便に使用できる、チレンクス上科の植物寄生性センチュウ防除剤及び前記植物寄生性センチュウの防除方法を提供すること。
【解決手段】式(1)等で表される化合物、並びに、これらのエナンチオマー及び農園芸上許容可能な酸付加塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を有効成分として含有する、チレンクス上科(Tylenchoidea)の植物寄生性センチュウ防除剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物、下記式(2)で表される化合物、及び下記式(3)で表される化合物、並びに、これらのエナンチオマー及び農園芸上許容可能な酸付加塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を有効成分として含有する、チレンクス上科(Tylenchoidea)の植物寄生性センチュウ防除剤。
【化1】
【化2】
【化3】
【請求項2】
前記チレンクス上科(Tylenchoidea)の植物寄生性センチュウが、メロイドギネ(Meloidogyne)属、ヘテロデラ(Heterodera)属、ロチレンクルス(Rotylenchulus)属、及びプラチレンクス(Pratylenchus)属からなる群から選択される少なくとも1種の植物寄生性センチュウである、請求項1に記載の植物寄生性センチュウ防除剤。
【請求項3】
さらに粉末状固体担体を含有し、粉剤又は粉末剤である、請求項1又は2に記載の植物寄生性センチュウ防除剤。
【請求項4】
さらに粒状又は粉末状固体担体及び界面活性剤を含有し、粒剤又は粉粒剤である、請求項1又は2に記載の植物寄生性センチュウ防除剤。
【請求項5】
さらに液体担体、界面活性剤、及び増粘剤を含有し、フロアブル剤である、請求項1又は2に記載の植物寄生性センチュウ防除剤。
【請求項6】
さらに粉末状固体担体及び界面活性剤を含有し、水和剤である、請求項1又は2に記載の植物寄生性センチュウ防除剤。
【請求項7】
さらに双子葉植物の生育促進用の剤でもある、請求項1~6のうちのいずれか一項に記載の植物寄生性センチュウ防除剤。
【請求項8】
下記式(1)で表される化合物、下記式(2)で表される化合物、及び下記式(3)で表される化合物、並びに、これらのエナンチオマー及び農園芸上許容可能な酸付加塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物の有効量で対象を処理する工程を含む、チレンクス上科(Tylenchoidea)の植物寄生性センチュウの防除方法。
【化4】
【化5】
【化6】
【請求項9】
前記チレンクス上科(Tylenchoidea)の植物寄生性センチュウが、メロイドギネ(Meloidogyne)属、ヘテロデラ(Heterodera)属、ロチレンクルス(Rotylenchulus)属、及びプラチレンクス(Pratylenchus)属からなる群から選択される少なくとも1種の植物寄生性センチュウである、請求項8に記載の植物寄生性センチュウの防除方法。
【請求項10】
前記対象が、チレンクス上科の植物寄生性センチュウ、植物、土壌、及び土壌以外の培養担体からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項8又は9に記載の植物寄生性センチュウの防除方法。
【請求項11】
前記対象が土壌又は土壌以外の培養担体であり、前記有効量が前記土壌10アール当たり0.1g~1000gである、請求項10に記載の植物寄生性センチュウの防除方法。
【請求項12】
前記対象が植物の種子であり、前記有効量が前記植物の種子1kg当たり0.01g~100gである、請求項10に記載の植物寄生性センチュウの防除方法。
【請求項13】
前記化合物の有効量で双子葉植物、土壌、及び土壌以外の培養担体からなる群から選択される少なくとも1種の対象を処理する工程を含み、前記双子葉植物の生育促進方法でもある、請求項8~12のうちのいずれか一項に記載の植物寄生性センチュウの防除方法。
【請求項14】
チレンクス上科(Tylenchoidea)の植物寄生性センチュウ防除剤の製造のための、下記式(1)で表される化合物、下記式(2)で表される化合物、及び下記式(3)で表される化合物、並びに、これらのエナンチオマー及び農園芸上許容可能な酸付加塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物の使用。
【化7】
【化8】
【化9】
【請求項15】
前記チレンクス上科(Tylenchoidea)の植物寄生性センチュウが、メロイドギネ(Meloidogyne)属、ヘテロデラ(Heterodera)属、ロチレンクルス(Rotylenchulus)属、及びプラチレンクス(Pratylenchus)属からなる群から選択される少なくとも1種の植物寄生性センチュウである、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記植物寄生性センチュウ防除剤が、双子葉植物の生育促進用の剤でもある、請求項14又は15に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植物寄生性センチュウ防除剤及び植物寄生性センチュウの防除方法に関し、より詳細には、チレンクス上科の植物寄生性センチュウの防除剤及び前記植物寄生性センチュウの防除方法に関する。
【背景技術】
【0002】
センチュウ(線虫)は、多種多様に分化しており、生態もまた多様である。センチュウの中でも、チレンクス上科(Tylenchoidea)の植物寄生性センチュウであるサツマイモネコブセンチュウ、ダイズシストセンチュウ、ネグサレセンチュウ等は、農作物の植物の根から栄養を得て増殖するため、農作物の生育不良や奇形を引き起こし、作物生産に及ぼす被害額は年間数十億ドルになるとも言われている(非特許文献1)。したがって、農作物の生産量向上のためには、特にこれらチレンクス上科のセンチュウの防除剤開発が必須である。
【0003】
これまでに、植物寄生性センチュウに対する防除手段として、燻蒸剤及び非燻蒸剤(接触剤)による防除が行われているが、オゾン層及び非標的生物への影響が強い既存の防除剤の使用制限が進んでいる。また、薬剤抵抗性センチュウの発生による既存剤の不効果事例も見られており、人畜安全性が高く、環境負荷が低く、かつ既存剤とも交差抵抗性を示さない防除剤の開発が求められている。
【0004】
PF1378A物質(16-ケトアスペルギルイミド:16-keto aspergillimide)は、アスペルギルス(Aspergillus)属の生産する代謝産物として報告され、哺乳類の消化管寄生センチュウであるHaemonchus contortusの3令幼虫に対する駆虫活性物質として知られている(非特許文献2)。また、PF1378B、Cを含むアスペルパラリン(asperparaline)類については、カイコに対する麻痺活性、並びに、シロイチモジヨトウ、トビイロウンカ、及びゴキブリに対する殺虫活性を示すことが報告されている(非特許文献3及び4、特許文献1及び2)。さらに、PF1378A物質は、トビイロウンカなどの農業害虫に対して浸透移行的な殺虫活性を示すことも報告されている(特許文献3)。また、PF1378A物質が、マダニ、ノミなどの動物寄生性害虫に対して殺虫活性を示すことや、哺乳動物に対して安全性を有することも報告されている(特許文献4)。
【0005】
さらに、アスペルパラリンAが、蚕の神経細胞に発現するニコチン性アセチルコリン受容体に対し、アセチルコリンと非競合的に顕著なアンタゴニスト活性を示すことや、哺乳動物由来の受容体と比較して昆虫受容体に高い選択性を示すことが報告されており、殺虫剤として新規な作用性を有することが示唆されている(非特許文献5)。また、アスペルパラリンAと類似の骨格を有するパラハカアミドは、駆虫剤として知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-245383号公報
【特許文献2】国際公開第2008/156165号
【特許文献3】国際公開第2010/071218号
【特許文献4】国際公開第2010/071219号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】農薬の創製研究の動向,株式会社シーエムシー出版,2018年,第7章,p.128~135
【非特許文献2】The Journal of Antibiotics,1997,50(10),840-846
【非特許文献3】Tetrahedron Letters,1997,38(32),5655-5658
【非特許文献4】Bioscience,Biotechnology and Biochemistry,2000、64(1),111-115
【非特許文献5】PLoS ONE 6 (4),e18354 (2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、これまで植物寄生性センチュウに対する防除手段が研究されており、現在までに多数のセンチュウ防除剤が開発上市されているが、従来の防除剤ではチレンクス上科の植物寄生性センチュウを防除することが困難な場合があり、かかるセンチュウの防除剤及び防除方法については未だ開発が不十分であった。また、非標的生物への悪影響の少ない新規なセンチュウ防除剤の開発もいまなお望まれている。さらに、環境への暴露リスクが比較的低く、使用者の病害虫防除に掛かる労力も少ない種子処理のように、省力的に利用できる防除剤も求められている。
【0009】
したがって、本発明は、非標的生物への安全性が高く、かつ、簡便に使用できる、チレンクス上科の植物寄生性センチュウ防除剤及び前記植物寄生性センチュウの防除方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、PF1378A物質(16-ケトアスペルギルイミド)、PF1378B物質(アスペルパラリンA)及びPF1378C物質(アスペルパラリンB)が、土壌処理や種子処理等の簡便な処理方法により、特にチレンクス上科の植物寄生性センチュウに対して優れた防除効果を示すことを見出した。さらに、これらの化合物のうちの少なくとも1種を有効成分として含有する防除剤によれば、非標的生物である作物(有用植物)に対して悪影響を及ぼさず安全性が高い上に、前記作物が特に双子葉植物である場合には、驚くべきことに、その生育を促進する新規の作用をも有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下の発明を提供するものである。
[1]下記式(1)で表される化合物、下記式(2)で表される化合物、及び下記式(3)で表される化合物、並びに、これらのエナンチオマー及び農園芸上許容可能な酸付加塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を有効成分として含有する、チレンクス上科(Tylenchoidea)の植物寄生性センチュウ防除剤。
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
[2]前記チレンクス上科(Tylenchoidea)の植物寄生性センチュウが、メロイドギネ(Meloidogyne)属、ヘテロデラ(Heterodera)属、ロチレンクルス(Rotylenchulus)属、及びプラチレンクス(Pratylenchus)属からなる群から選択される少なくとも1種の植物寄生性センチュウである、[1]に記載の植物寄生性センチュウ防除剤。
[3]さらに粉末状固体担体を含有し、粉剤又は粉末剤である、[1]又は[2]に記載の植物寄生性センチュウ防除剤。
[4]さらに粒状又は粉末状固体担体及び界面活性剤を含有し、粒剤又は粉粒剤である、[1]又は[2]に記載の植物寄生性センチュウ防除剤。
[5]さらに液体担体、界面活性剤、及び増粘剤を含有し、フロアブル剤である、[1]又は[2]に記載の植物寄生性センチュウ防除剤。
[6]さらに粉末状固体担体及び界面活性剤を含有し、水和剤である、[1]又は[2]に記載の植物寄生性センチュウ防除剤。
[7]さらに双子葉植物の生育促進用の剤でもある、[1]~[6]のうちのいずれか一項に記載の植物寄生性センチュウ防除剤。
[8]前記式(1)で表される化合物、前記式(2)で表される化合物、及び前記式(3)で表される化合物、並びに、これらのエナンチオマー及び農園芸上許容可能な酸付加塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物の有効量で対象を処理する工程を含む、チレンクス上科(Tylenchoidea)の植物寄生性センチュウの防除方法。
[9]前記チレンクス上科(tylenchoidea)の植物寄生性センチュウが、メロイドギネ(Meloidogyne)属、ヘテロデラ(Heterodera)属、ロチレンクルス(Rotylenchulus)属、及びプラチレンクス(Pratylenchus)属からなる群から選択される少なくとも1種の植物寄生性センチュウである、[8]に記載の植物寄生性センチュウの防除方法。
[10]前記対象が、チレンクス上科の植物寄生性センチュウ、植物、土壌、及び土壌以外の培養担体からなる群から選択される少なくとも1種である、[8]又は[9]に記載の植物寄生性センチュウの防除方法。
[11]前記対象が土壌又は土壌以外の培養担体であり、前記有効量が前記土壌10アール当たり0.1g~1000gである、[10]に記載の植物寄生性センチュウの防除方法。
[12]前記対象が植物の種子であり、前記有効量が前記植物の種子1kg当たり0.01g~100gである、[10]に記載の植物寄生性センチュウの防除方法。
[13]前記化合物の有効量で双子葉植物、土壌、及び土壌以外の培養担体からなる群から選択される少なくとも1種の対象を処理する工程を含み、前記双子葉植物の生育促進方法でもある、[8]~[12]のうちのいずれか一項に記載の植物寄生性センチュウの防除方法。
[14]チレンクス上科(Tylenchoidea)の植物寄生性センチュウ防除剤の製造のための、前記式(1)で表される化合物、前記式(2)で表される化合物、及び前記式(3)で表される化合物、並びに、これらのエナンチオマー及び農園芸上許容可能な酸付加塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物の使用。
[15]前記チレンクス上科(Tylenchoidea)の植物寄生性センチュウが、メロイドギネ(Meloidogyne)属、ヘテロデラ(Heterodera)属、ロチレンクルス(Rotylenchulus)属、及びプラチレンクス(Pratylenchus)属からなる群から選択される少なくとも1種の植物寄生性センチュウである、[14]に記載の使用。
[16]前記植物寄生性センチュウ防除剤が、双子葉植物の生育促進用の剤でもある、[14]又は[15]に記載の使用。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、非標的生物への安全性が高く、かつ、簡便に使用できる、チレンクス上科の植物寄生性センチュウ防除剤及び前記植物寄生性センチュウの防除方法を提供することが可能となる。
【0017】
また、本発明の植物寄生性センチュウ防除剤及び植物寄生性センチュウの防除方法によれば、土壌処理や種子処理等の簡便な処理により、チレンクス上科の植物寄生性センチュウに対して優れた防除効果を奏することに加えて、非標的生物への安全性が高く、特に双子葉植物に対しては生育促進効果も奏するため、穀類、豆類、砂糖製造用緑草類、野菜類、果樹類等の農作物、特に好ましくはダイズ、キュウリ、ダイコン等の作物の収量を大幅に向上させることができる。また、低濃度で十分に前記効果をいずれも奏するために環境暴露のリスクが低い点でも安全性の高い、チレンクス上科の植物寄生性センチュウの防除剤及び前記植物寄生性センチュウの防除方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一つの態様によれば、下記式(1)で表される化合物、下記式(2)で表される化合物、及び下記式(3)で表される化合物(以下、それぞれ、単に「化合物(1)」、「化合物(2)」、及び「化合物(3)」と表す場合もある。なお、下記式(1)~(3)中、Meはメチル基を表す。)、並びに、これらのエナンチオマー及び農園芸上許容可能な酸付加塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を有効成分として含有する、チレンクス上科の植物寄生性センチュウ防除剤(以下、単に「センチュウ防除剤」と表す場合もある。)が提供される。
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
さらに、本発明の別の態様によれば、化合物(1)、化合物(2)、及び化合物(3)、並びに、これらのエナンチオマー及び農園芸上許容可能な酸付加塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物の有効量で対象を処理する工程を含む、チレンクス上科の植物寄生性センチュウの防除方法(以下、単に「センチュウ防除方法」又は「防除方法」と表す場合もある。)が提供される。
【0023】
なお、本発明において、「チレンクス上科の植物寄生性センチュウ防除剤」及び「チレンクス上科の植物寄生性センチュウの防除方法」には、下記のチレンクス上科の植物寄生性センチュウを殺虫又は衰弱させるための剤及び方法の他、下記の植物からチレンクス上科の植物寄生性センチュウを除くための剤及び方法、チレンクス上科の植物寄生性センチュウの植物への寄生を防止するための剤及び方法、チレンクス上科の植物寄生性センチュウから植物を保護するための剤及び方法を含む。
【0024】
さらに、本発明の別の態様によれば、化合物(1)、化合物(2)、及び化合物(3)、並びに、これらのエナンチオマー及び農園芸上許容可能な酸付加塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を有効成分として含有する、双子葉植物の生育促進剤が提供される。また、本発明の別の態様によれば、前記本発明のセンチュウ防除剤として、さらに双子葉植物の生育促進用の剤でもある、植物寄生性センチュウの防除用及び双子葉植物生育促進用の剤も提供される。
【0025】
さらに、本発明の別の態様によれば、化合物(1)、化合物(2)、及び化合物(3)、並びに、これらのエナンチオマー及び農園芸上許容可能な酸付加塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物の有効量で双子葉植物、土壌、及び土壌以外の培養担体からなる群から選択される少なくとも1種の対象を処理する工程を含む、双子葉植物の生育促進方法が提供される。また、本発明の別の態様によれば、前記本発明のセンチュウ防除方法として、さらに双子葉植物の生育促進方法でもある、植物寄生性センチュウの防除及び双子葉植物生育促進の方法も提供される。
【0026】
本発明に係る化合物(1)は、「PF1378A物質(16-ケトアスペルギルイミド)」ともいい、化合物(2)は、「PF1378B物質(アスペルパラリンA)」ともいい、化合物(3)は、「PF1378C物質(アスペルパラリンB)」ともいう。これら化合物(1)~(3)は、それぞれ、従来公知の方法又はそれに準じた方法によって製造することができ、例えば、The Journal of Antibiotics,1997,50(10),840-846に記載の方法に従って、各化合物の生産菌株の培養物よりそれぞれ製造することができる。
【0027】
また、本発明では、有効成分として、化合物(1)~(3)のみならず、これらのエナンチオマー、及びエナンチオマーの混合物を用いることができる。
【0028】
また、本発明では、有効成分として、化合物(1)~(3)それぞれの農園芸上許容可能な酸付加塩も用いることができる。前記酸付加塩の例としては、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、及び酢酸塩などが挙げられる。
【0029】
これらの本発明に係る化合物(有効成分)、すなわち、前記式(1)で表される化合物、前記式(2)で表される化合物、及び前記式(3)で表される化合物、並びに、これらのエナンチオマー及び農園芸上許容可能な酸付加塩としては、1種を単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい(以下、これらの化合物の1種又は2種以上の組み合わせを総称して単に「本発明に係る化合物」という場合がある。)。これらの中でも、前記本発明に係る化合物としてより好ましくは、前記式(1)で表される化合物、及び/又は、前記式(2)で表される化合物であり、さらに好ましくは、前記式(1)で表される化合物である。
【0030】
前記式(1)で表される化合物、前記式(2)で表される化合物、及び前記式(3)で表される化合物、並びに、これらのエナンチオマー及び農園芸上許容可能な酸付加塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物は、特にチレンクス上科(Tylenchoidea)の植物寄生性センチュウに対して優れた防除効果を奏する。
【0031】
前記チレンクス上科の植物寄生性センチュウとしては、チレンクス科(Tylenchidae)、クリコネマ科(Criconematidae)、ヘテロデラ科(Heteroderidae)、ネオチレンクス科(Neotylenchidae)、チレンクルス科(Tylenchuidae)、アラントネマチド科(Allantonematidae)が挙げられ、チレンクス科(Tylenchidar)及びヘテロデラ科(Heteroderidae)が好ましい。チレンクス科(Tylenchidar)の亜科としては、Pratylechinae(ロチレンクルス(Rotylenchulus)属、プラチレンクス(Pratylenchus)属)、Tylenchinae、Dolichodorinae、Hoploaiminaeが挙げられる。ヘテロデラ科(Heteroderidae)の亜科としては、Heteroderinae(メロイドギネ(Meloidogyne)属、及びヘテロデラ(Heterodera)属)が挙げられる。
【0032】
メロイドギネ属として具体的には、ネコブセンチュウ、より具体的には、サツマイモネコブセンチュウ(Meloidogyne incognita)、Meloidogyne acronea、Meloidogyne africana、Meloidogyne arenaria、Meloidogyne arenaria thamesi、Meloidogyne artiella、Meloidogyne chitwoodi、Meloidogyne coffeicola、Meloidogyne ethiopica、Meloidogyne exigua、Meloidogyne graminicola、Meloidogyne graminis、Meloidogyne hapla、Meloidogyne incognita acrita、Meloidogyne javanica、Meloidogyne kikuyensis、Meloidogyne naasi、Meloidogyne paranaensis、Meloidogyne thamesi、Meloidogyne suginamiensis、Meloidogyne fallax、Meloidogyne enterolobii、Meloidogyne mayaguensisが挙げられる。
【0033】
ヘテロデラ属として具体的には、シストセンチュウ、より具体的には、ダイズシストセンチュウ(Heterodera glycines)、Heterodera avenae、Heterodera cruciferae、Heterodera oryzae、Heterodera schachtii、Heterodera zeae、Globodera pallida、Globodera rostochiensis、Globodera solanacearum、Globodera tabacum、Globodera virginiae、Heterodera elachistaが挙げられる。
【0034】
ロチレンクルス属として具体的には、ニセフクロセンチュウ(Rotylenchulus reniformis)、Rotylenchus parrusが挙げられる。
【0035】
プラチレンクス属として具体的には、ネグサレセンチュウ(Pratylenchus penetrans)、Pratylenchus alleni、Pratylenchus brachyurus、Pratylenchus coffeae、Pratylenchus crenatus、Pratylenchus dulscus、Pratylenchus fallax、Pratylenchus flakkensis、Platylenchus goodeyi、Pratylenchus hexincisus、Pratylenchus loosi、Pratylenchus minutus、Pratylenchus mulchandi、Pratylenchus musicola、Pratylenchus neglectus、Pratylenchus pratensus、Pratylenchus reniformia、Pratylenchus scibneri、Pratylenchus thornei、Pratylenchus vulnus、Pratylenchus zeaeが挙げられる。
【0036】
これらのチレンクス上科の植物寄生性センチュウとしては、1種を単独であっても2種以上の組み合わせであってもよいが、中でも、前記本発明に係る化合物は、メロイドギネ属、ヘテロデラ属、ロチレンクルス属、及びプラチレンクス属からなる群から選択される少なくとも1種に対して特に優れた防除活性を示す。これらの中でもさらに好ましくは、ネコブセンチュウ、シストセンチュウ、ニセフクロセンチュウ、及びネグサレセンチュウからなる群から選択される少なくとも1種であり、さらにより好ましくは、サツマイモネコブセンチュウ、ダイズシストセンチュウ、ネグサレセンチュウ、ニセフクロセンチュウからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0037】
前記本発明に係る化合物は、非標的生物に対する安全性が高いため、本発明のセンチュウ防除剤及び防除方法の対象となる植物は特に限定されるものではないが、例えば、穀類、豆類、砂糖製造用緑草類、野菜類、果樹類などの有用植物が挙げられ、より具体的には、イネ科(イネ、ムギ類(大麦、小麦、ライ麦)、トウモロコシ、サトウキビ、ソルガム、シバ)、マメ科(ダイズ、アズキ、インゲン、ハナマメ、ラッカセイ、パルス)、アブラナ科(ナタネ、ダイコン、キャベツ、ハクサイ)、ヒユ科(テンサイ)、サトイモ科(サトイモ、コンニャクイモ)、アオイ科(ワタ)、ナス科(トマト、ナス、ピーマン、トウガラシ、バレイショ、タバコ)、ウリ科(キュウリ、メロン、スイカ)、バラ科(イチゴ)、セリ科(ニンジン)、ヒルガオ科(サツマイモ)、キク科(キク、ゴボウ)、ヒガンバナ科(タマネギ、ニンニク)、ツバキ科(チャ)、アカネ科(コーヒーノキ)、マツ科(マツ)、ブドウ科(ブドウ)、バショウ科(バナナ)、ミカン科(カンキツ)等の作物が挙げられ、これらのうちの1種を単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
【0038】
また、前記本発明に係る化合物は、特に双子葉植物に対して生育促進効果も奏する。そのため、前記本発明に係る化合物は、双子葉植物の生育促進剤及び生育促進方法(センチュウ防除剤及び防除方法を兼ねる場合も含む、以下同じ)の有効成分としても用いることができる。この場合に対象となる植物としては、双子葉植物であれば特に限定されるものではないが、例えば、ウリ科(キュウリ、メロン、スイカ、カボチャ)、マメ科(ダイズ、アズキ、インゲン、ハナマメ、ラッカセイ、パルス)、アブラナ科(ナタネ、ダイコン、キャベツ、ハクサイ)、ヒユ科(テンサイ)、アオイ科(ワタ)、ナス科(トマト、ナス、ピーマン、トウガラシ、バレイショ、タバコ)、バラ科(イチゴ)、セリ科(ニンジン)、ヒルガオ科(サツマイモ)、キク科(キク、ゴボウ)、ヒガンバナ科、ツバキ科(チャ)、アカネ科(コーヒーノキ)、ブドウ科(ブドウ)、ミカン科(カンキツ)等の作物が挙げられる。前記双子葉植物としては、これらのうちの1種を単独であっても2種以上の組み合わせであってもよいが、中でも、ウリ科、マメ科、又はアブラナ科の植物であることが好ましい。
【0039】
また近年、微生物農薬、遺伝子組み換え作物等を組み合わせた様々な防除技術が進歩しており、本発明はこれらの技術と組み合せることができる。そのため、本発明のセンチュウ防除剤及び防除方法、並びに、双子葉植物の生育促進剤及び生育促進方法の対象としては、例えば、昆虫に対するBT(Bacillus thringensis)毒素タンパク質を産生し、昆虫耐性を示す植物(ダイズ、トウモロコシ、ワタ、ナタネ)や、除草剤であるグリホサートやグルホシネートに対して耐性を示す植物(ダイズ、トウモロコシ、ワタ、ナタネ)や、昆虫及び除草剤双方に耐性を示す植物であってもよい。
【0040】
本発明のセンチュウ防除剤及び防除方法の対象としては、前記チレンクス上科の植物寄生性センチュウのうちの少なくとも1種、前記植物のうちの少なくとも1種、前記植物の生育する土壌、及び土壌以外の培養担体(水耕栽培、砂耕、NFT(Nutrient Film Technique)、ロックウール耕等の養液;人工培土、育苗用人工マット等の固形培地など)からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。前記植物としてより具体的には、前記植物の茎葉部、種子、根、塊茎、球根、及び根茎が挙げられる。これらの中でも、処理が簡便であるという観点から、前記対象としては、土壌及び/又は植物の種子であることが好ましい。
【0041】
また、本発明が双子葉植物の生育促進剤又は生育促進剤である場合、これらの対象としては、前記双子葉植物のうちの少なくとも1種、前記双子葉植物の生育する土壌、及び土壌以外の培養担体からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。これらの中でも、処理が簡便であるという観点から、前記対象としては、土壌及び/又は双子葉植物の種子であることが好ましい。
【0042】
本発明のセンチュウ防除剤及び双子葉植物の生育促進剤は、前記本発明に係る化合物を有効成分として含有する。本発明のセンチュウ防除剤及び双子葉植物の生育促進剤としては、それぞれ、前記本発明に係る化合物のうちの少なくとも1種をそのままであってもよいし、希釈したものであってもよい。また、本発明のセンチュウ防除剤及び双子葉植物の生育促進剤としては、それぞれ、前記本発明に係る化合物以外の他の有害生物防除剤(殺虫剤(殺ダニ剤、及び殺センチュウ剤を含む)、殺菌剤、除草剤)、植物成長調節剤、肥料等のうちの少なくとも1種をさらに含有していてもよい。これらの具体的な薬剤の例としては、例えば、ペスティサイド マニュアル(The Pesticide Manual、第17版 The British Crop Protection Council 発行)及びシブヤインデックス(SHIBUYA INDEX、2014年、SHIBUYA INDEX RESEARCH GROUP 発行)に記載のものが挙げられる。本発明のセンチュウ防除剤及び双子葉植物の生育促進剤において、前記他の有害生物防除剤としては、好ましくは、殺虫剤及び/又は殺菌剤である。
【0043】
前記他の有害生物防除剤の好ましい具体例としては、例えば、有機リン酸エステル系化合物、カーバメート系化合物、ネライストキシン誘導体、有機塩素系化合物、ピレスロイド系化合物、ベンゾイルウレア系化合物、幼若ホルモン様化合物、脱皮ホルモン様化合物、ネオニコチノイド系化合物、神経細胞のナトリウムチャンネルブロッカー、殺虫性大環状ラクトン、γ-アミノ酪酸(GABA)拮抗剤、リヤノジンレセプター作用性化合物、殺虫性尿素類、BT剤、昆虫病原ウイルス剤、ポリエーテル系抗生物質、チアミン拮抗薬、及びサルファ剤・葉酸拮抗薬配合剤などが挙げられる。
【0044】
より具体的には、殺虫剤として、アセフェート(acephate)、ジクロルボス(dichlorvos)、EPN、フェニトロチオン(fenitrothion)、フェナミホス(fenamifos)、プロチオホス(prothiofos)、プロフェノホス(profenofos)、ピラクロホス(pyraclofos)、クロルピリホスメチル(chlorpyrifos-methyl)、ダイアジノン(diazinon)、ホスチアゼート(fosthiazate)、イミシアホス(imicyafos)のような有機リン酸エステル系化合物;メソミル(methomy1)、チオジカルブ(thiodicarb)、アルジカルブ(aldicarb)、オキサミル(oxamyl)、プロポキスル(propoxur)、カルバリル(carbaryl)、フェノブカルブ(fenobucarb)、エチオフェンカルブ(ethiofencarb)、フェノチオカルブ(fenothiocarb)、ピリミカーブ(pirimicarb)、カルボフラン(carbofuran)、カルボスルファン(carbosulfan)、ベンフラカルブ(benfuracarb)のようなカーバメート系化合物;カルタップ(cartap)、チオシクラム(thiocyclam)のようなネライストキシン誘導体;ジコホル(dicofol)、テトラジホン(tetradifon)のような有機塩素系化合物;ペルメトリン(permethrin)、テフルトリン(tefluthrin)、シペルメトリン(cypermethrin)、デルタメトリン(deltamethrin)、シハロトリン(cyhalothrin)、フェンバレレート(fenvalerate)、フルバリネート(fluvalinate)、エトフェンプロックス(ethofenprox)、シラフルオフェン(silafluofen)、シハロスリン(cyhalothrin)のようなピレスロイド系化合物;ジフルベンズロン(diflubenzuron)、テフルベンズロン(teflubenzuron)、フルフェノクスロン(flufenoxuron)、クロルフルアズロン(chlorfluazuron)、のようなベンゾイルウレア系化合物;メトプレン(methoprene)のような幼若ホルモン様化合物;クロマフェノジドのような脱皮ホルモン様化合物;イミダクロプリド(imidacloprid)、クロチアニジン(c1othianidin)、チアメトキサム(thiamethoxam)、アセタミプリド(acetamiprid)、ニテンピラム(nitenpyram)、チアクロプリド(thiacloprid)、ジノテフラン(dinotefuran)、スルフォキサフロル(sulfoxaflor)、フルピラジフロン(flupyradifurone)、ジクロロメゾチアズ(dicloromezotiaz)、トリフルメゾピリム(triflumezopyrim)のようなニコチン性アセチルコリン受容体作用薬;フルベンジアミド(flubendiamide)、クロラントラニリプロール(chlorantraniliprole)、シアントラニリプロール(cyantraniliprole)、シクラニリプロール(cyclaniliprole)、テトラニリプロール(tetraniliprole)のようなジアミド化合物;エチプロール(ethiprole)、フィプロニル(fipronil)、ピラフルプロール(pyrafluprole)、ピリプロール(pyriprole)、ブロフラニリド(broflanilide)、フルキサメタミド(fluxametamide)のようなGABA受容体作用性化合物;ピリダベン(pyridaben)、フェンピロキシメート(fenpyroxymate)、ピリミジフェン(pyrimidifen)、テブフェンピラド(tebufenpyrad)、トルフェンピラド(tolfenpyrad)のような呼吸鎖電子伝達系複合体I阻害化合物;フルオピラム(fluopyram)、シフルメトフェン(cyflumetofen)、シエノピラフェン(cyenopyrafen)、ピフルブミド(pyflbumide)のような呼吸鎖電子伝達系複合体II阻害化合物;フルアクリピリム(fluacrypyrim)、アセキノシル(acequinocyl)、フロメトキン(flometoquin)のような呼吸鎖電子伝達系複合体III阻害化合物;スピロジクロフェン(spirodiclofen)、スピロメシフェン(spiromesifen)、スピロテトラマト(spirotetramat)のようなACCase阻害化合物、スピノサド(spinosad)、アバメクチン(avermectin)、ミルベマイシン(milbemycin)、スピネトラム(spinetoram)、レピメクチン(lepimectin)、エマメクチン安息香酸塩(emamectin benzoate)のようなマクロライド化合物が挙げられる。
【0045】
さらに、その他の化合物として、ブプロフェジン(buprofezin)、ヘキシチアゾクス(hexythiazox)、アミトラズ(amitraz)、クロルジメホルム(chlordimeform)、エトキサゾール(ethoxazole)、ピメトロジン(pymetrozine)、ビフェナゼート(bifenazate)、フロニカミド(flonicamid)、クロルフェナピル(chlorfenapyr)、ピリプロキシフェン(pyriproxyfen)、インドキサカルブ(indoxacarb)、ピリダリル(pyridalyl)、又はピリフルキナゾン(pyrifluquinazon)、メタフルミゾン(metaflumizone)、ヒドラメチルノン(hydramethylnon)、トリアザメート(triazamate)、アフィドピロペン(afidopyropen)、フルピリミン(flupyrimin)、レノフルスリン(renofluthrin)、クロロプパラレスリン(chloroprallethrin)、シハロジアミド(cyhalodiamide)、フルエンスルフォン(fluensulfone)、フルアザインドリジン(fluazaindolizine)、イプシロン-メトフルスリン(epsilon-metofluthrin)、イプシロン-モムフルオロスリン(psilon-momfluorothrin)、カッパ-ビフェントリン(kappa-bifenthrin)、カッパ-テフルトリン(kappa-tefluthrin)、フルヘキサホン(fluhexafon)、チオキサザフェン(tioxazafen)、モムフルオロスリン(momfluorothrin)、ヘプタフルスリン(heptafluthrin)、ピリミノストロビン(pyriminostrobin)、シクロキサプリド(cycloxaprid)、イソシクロセラム(isocycloseram)、オキサゾスルフリル(oxazosulfyl)、チクロピラゾロル(tyclopyrazoflor)、スピロピディオン(spiropidion)、アシノナピル(acynonapyr)、ベンゾピリモクサン(benzpyrimoxan)、ディンプロピリダズ(dimpropyridaz)、フルペンチオフェノックス(flupentiofenox)、シエトピラフェン(cyetpyrafen)、有機金属系化合物、ジニトロ系化合物、有機硫黄化合物、尿素系化合物、トリアジン系化合物、ヒドラジン系化合物が挙げられ、BT剤、昆虫病原ウイルス剤などのような微生物農薬も挙げられる。
【0046】
前記殺虫剤としては、これらのうちの1種を単独であっても2種以上の組み合わせであってもよいが、中でも、好ましくはフルピリミン(flupyrimin)が挙げられる。これらの殺虫剤としては、それぞれ、その農園芸上許容可能な酸付加塩であってもよい。
【0047】
また、より具体的には、殺菌剤として、例えば、アゾキシストルビン(azoxystrobin)、クレソキシムメチル(kresoxym-methyl)、トリフロキシストロビン(trifloxystrobin)、メトミノストロビン(metominostrobin)、オリサストロビン(orysastrobin)、ピラクロストロビン(pyraclostrobin)などのストロビルリン系化合物;メパニピリム(mepanipyrim)、ピリメサニル(pyrimethanil)、シプロジニル(cyprodinil)のようなアニリノピリミジン系化合物;トリアジメホン(triadimefon)、ビテルタノール(bitertanol)、トリフルミゾール(triflumizole)、メトコナゾール(metoconazole)、プロピコナゾール(propiconazole)、ペンコナゾール(penconazole)、フルシラゾール(flusilazole)、ミクロブタニル(myclobutanil)、シプロコナゾール(cyproconazole)、テブコナゾール(tebuconazole)、ヘキサコナゾール(hexaconazole)、プロクロラズ(prochloraz)、シメコナゾール(simeconazole)、プロチオコナゾール(prothioconazole)のようなアゾール系化合物;キノメチオネート(quinomethionate)のようなキノキサリン系化合物;マンネブ(maneb)、ジネブ(zineb)、マンコゼブ(mancozeb)、ポリカーバメート(polycarbamate)、プロビネブ(propineb)のようなジチオカーバメート系化合物;ジエトフェンカルブ(diethofencarb)のようなフェニルカーバメート系化合物;クロロタロニル(chlorothalonil)、キントゼン(quintozene)のような有機塩素系化合物;ベノミル(benomyl)、チオファネートメチル(thiophanate-methyl)、カーベンダジム(carbendazole)のようなベンズイミダゾール系化合物;メタラキシル(metalaxyl)、オキサジキシル(oxadixyl)、オフラセ(ofurase)、ベナラキシル(benalaxyl)、フララキシル(furalaxyl)、シプロフラン(cyprofuram)のようなフェニルアミド系化合物;ジクロフルアニド(dichlofluanid)のようなスルフェン酸系化合物;水酸化第二銅(copper hydroxide)、オキシキノリン銅(oxine-copper)のような銅系化合物;ヒドロキシイソキサゾール(hydroxyisoxazole)のようなイソキサゾール系化合物;ホセチルアルミニウム(fosetyl-aluminium)、トルクロホス-メチル(tolclofos-methyl)のような有機リン系化合物;キャプタン(captan)、カプタホール(captafol)、フォルペット(folpet)のようなN-ハロゲノチオアルキル系化合物;プロシミドン(procymidone)、イプロジオン(iprodione)、ビンクロゾリン(vinchlozolin)のようなジカルボキシイミド系化合物;フルトラニル(flutolanil)、メプロニル(mepronil)、フラメトピル(furamepyr)、チフルザミド(thifluzamide)、ボスカリド(boscalid)、ペンチオピラド(penthiopyrad)のようなカルボキシアニリド系化合物;フェンプロピモルフ(fenpropimorph)、ジメトモルフ(dimethomorph)のようなモルフォリン系化合物;水酸化トリフェニルスズ(fenthin hydroxide)、酢酸トリフェニルスズ(fenthin acetate)のような有機スズ系化合物;フルジオキソニル(fludioxonil)、フェンピクロニル(fenpiclonil)のようなシアノピロール系化合物が挙げられる。
【0048】
さらに、その他化合物として、トリシクラゾール(tricyclazole)、ピロキロン(pyroquilon)、カルプロパミド(carpropamid)、ジクロシメット(diclocymet)、フェノキサニル(fenoxanil)、フサライド(fthalide)、フルアジナム(fluazinam)、シモキサニル(cymoxanil)、トリホリン(triforine)、ピリフェノックス(pyrifenox)、フェナリモル(fenarimol)、フェンプロピディン(fenpropidin)、ペンシクロン(pencycuron)、フェリムゾン(ferimzone)、シアゾファミド(cyazofamid)、イプロバリカルブ(iprovalicarb)、ベンチアバリカルブイソプロピル(benthiavalicarb-isopropyl)、イミノクタジンアルベシル酸塩(iminoctadin-albesilate)、シフルフェナミド(cyflufenamid)、カスガマイシン(kasugamycin)、バリダマイシン(validamycin)、ストレプトマイシン(streptomycin)、オキソリニック酸(oxolinic-acid)、テブフロキン(tebufloquin)、プロベナゾール(probenazole)、チアジニル(tiadinil)イソチアニル(isotianil)、イソプロチオラン(isoprothiolane)、トルプロカルブ(tolprocarb)、ピジフルメトフェン(pydiflumetofen)、ピカルブトラゾクス(picarbutrazox)、マンデストロビン(mandestrobin)、ジピメチトロン(dipymetitrone)、ピラジフルミド(pyraziflumid)、オキサチアピプロピリン(oxathiapiprolin)、ペンフルフェン(penflufen)、フェンピコキサミド(fenpicoxamid)、フルキサピロキサド(fluxapyroxad)、イソフルシプラム(isoflucypram)、メチルテトラプロール(methyltetraprole)、ピラプロポイン(pyrapropoyne)、ピリジクロメチル(pyridachlomethyl)、イプフルフェノキン(ipflufenoquin)、フルオピモミド(fluopimomide)、フルインダピル(fluindapyr)、フロリルピコキサミド(florylpicoxamid)、ジクロベンチアゾクス(dichlobentiazox)などが挙げられる。
【0049】
前記殺菌剤としても、これらのうちの1種を単独でも2種以上の組み合わせであってもよい。また、これらの殺菌剤としては、それぞれ、その農園芸上許容可能な酸付加塩であってもよい。
【0050】
また、本発明のセンチュウ防除剤及び双子葉植物の生育促進剤としては、それぞれ、使用上適当な形状に製剤化して使用することが好ましい。
【0051】
本発明の別の態様によれば、本発明のセンチュウ防除剤及び/又は双子葉植物の生育促進剤として、適当な農園芸上許容可能な担体をさらに含有する態様が提供される。その形態としては、乳剤、液剤、水溶剤、乳濁剤、水和剤、顆粒状水和剤、フロアブル剤、サスポエマルション剤、粉剤、DL粉剤、粉末剤、粒剤、粉粒剤、錠剤、油剤、エアゾール、薫煙剤、マイクロカプセル剤等の任意の剤型に処方することができる。これら各種の剤型は、例えば「農薬製剤ガイド」(日本農薬学会・施用法研究会編、社団法人日本植物防疫協会発行、平成9年)に記載される方法によって製造することができる。
【0052】
前記農園芸上許容可能な担体としては、上記剤型に応じて、固体担体、液体担体、ガス状担体等から適宜選択できる。
【0053】
固体担体は、粒子径によって粉末状(平均粒子径63μm未満)と粒状(平均粒子径63μm以上)とに大別でき、剤型に応じて適宜選択できる。粉末状固体担体としては、例えば、タルク、ベントナイト、クレー、カオリン、ケイソウ土、ホワイトカーボン(非晶質ケイ素、ケイ酸カルシウム)、炭酸カルシウム、硫酸アンモニウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、木粉などの植物性粉末、でん粉、デキストリン等が挙げられる。粒状固体担体としてはバーミキュライト、珪砂、軽石、パーライト、ケイソウ土粒、アタパルジャイト粒、ゼオライト粒、ベントナイト粒、木片やコルク、トウモロコシ穂軸などの植物性粒状物等が挙げられ、また、粉末状固体担体であるクレー、炭酸カルシウムなどに結合剤等を加えて造粒成型したクレー造粒品、炭酸カルシウム造粒品などを粒状固体担体として使用してもよい。前記固体担体としては、これらのうちの1種を単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。その中でも好ましくは、タルク、ベントナイト、クレー、カオリン、ケイソウ土、ホワイトカーボン(非晶質ケイ素、ケイ酸カルシウム)、珪砂、硫酸カルシウム、クレー造粒品が挙げられる。
【0054】
液体担体としては、例えば、エタノール、n-ヘキサノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;γ-ブチロラクトン、シクロヘキサノン等のケトン類;n-ヘキサン、ノルマルパラフィン、流動パラフィン、ナフテン等の脂肪族炭化水素類;キシレン、アルキルベンゼン、メチルナフタレンなどの芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類;脂肪酸メチルエステル、酢酸エチルなどのエステル類;アセトニトリル、イソブチロニトリルなどのニトリル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの酸アミド類;ダイズ油、綿実油等の植物油類;ジメチルスルホキシド;N-アルキルピロリドン;水などが挙げられ、これらのうちの1種を単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。その中でも好ましくは、プロピレングリコール、流動パラフィン、水が挙げられる。
【0055】
また、ガス状担体としてはLPG、空気、窒素、炭酸ガス、ジメチルエーテルなどが挙げられ、これらのうちの1種を単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
【0056】
本発明のセンチュウ防除剤及び双子葉植物の生育促進剤としては、それぞれ、前記担体以外に、製剤補助剤として、乳化、分散、又は湿潤などの機能を有する界面活性剤;増粘剤;結合剤;着色剤;消泡剤;凍結防止剤;防黴剤;流動性改良剤;固着剤;溶剤からなる群から選択される少なくとも1種を、必要により適宜さらに含有していてもよい。
【0057】
前記界面活性剤としては、陰イオン性、非イオン性、陽イオン性、又は両性界面活性剤などの界面活性剤が挙げられる。
【0058】
陰イオン性界面活性剤としては、POA(POA:ポリオキシアルキレン)アルキルフェニルエーテルサルフェート、POAスチリルフェニルエーテルサルフェート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーサルフェート、ラウリル硫酸ナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム、α-オレフィンスルホン酸塩、ジアルキルスルホサクシネート、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩(ナトリウム塩等)、リグニンスルホン酸塩(ナトリウム塩等)、POAアルキルフェニルエーテルスルホネート、脂肪酸塩、POAアルキルフェニルエーテルホスフェート、POAスチリルフェニルエーテルホスフェート、ポリカルボン酸型界面活性剤などが挙げられる。なお、POAはポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンの1種若しくはそれらの混合を表す。前記陰イオン性界面活性剤としては1種を単独であっても2種以上の組み合わせであってもよく、その中でも好ましくは、ラウリル硫酸塩(より好ましくはナトリウム塩)、アルキルベンゼンスルホン酸塩(より好ましくはナトリウム塩)、リグニンスルホン酸塩(より好ましくはナトリウム塩)が挙げられる。
【0059】
非イオン性界面活性剤としては、POAスチリルフェニルエーテル、POAソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、POAヒマシ油、POA硬化ヒマシ油、POAアルキルエーテル、POAアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、POAアルキルアミン、シリコーン系界面活性剤及びアセチレングリコール系界面活性剤などが挙げられ、これらのうちの1種を単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。なお、POAはポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンの1種若しくはそれらの混合を表す。
【0060】
陽イオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、メチル・ポリオキシアルキレンアルキルアンモニウムクロライド、アルキルジメチルベンザイルコニウムクロライドなどが挙げられ、これらのうちの1種を単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
【0061】
両性界面活性剤としては、ジアルキルジアミノエチルベタイン、アルキルジメチルベンジルベタインなどが挙げられ、これらのうちの1種を単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
【0062】
前記増粘剤としては、有機系増粘剤として、キサンタンガム、ウェランガム、ダイユータンガム、グァーガム、トラガントガム、アラビアガム、デキストリン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール及び水溶性セルロースエーテルなどが挙げられ、無機系増粘剤として、モンモリロナイト系鉱物質微粉、サポナイト系粘土鉱物及び無水シリカ微粉が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらのうちの1種を単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
【0063】
前記結合剤としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなどの水溶性セルロースエーテル、デンプン、デキストリン、ベントナイトなどが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらのうちの1種を単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。また、剤型・製法によっては液体担体、固体担体や界面活性剤が結合剤としても機能するため、特別に結合剤を加えないことがある。
【0064】
前記着色剤としては、酸化鉄や酸化チタンなどの無機顔料;アリザリン染料、アゾ染料、又は金属フタロシアニン染料などの有機顔料;赤色2号、赤色3号、赤色40号、赤色102号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号、又は青色2号などの食用色素などが挙げられ、これらのうちの1種を単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
【0065】
前記消泡剤としては、オイル系、金属石けん系、シリコーン系などがあり、これらのうちの1種を単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
【0066】
前記凍結防止剤としては、エチレングリコールやプロピレングリコールなどのアルキレングリコール系やグリセリン、尿素などが挙げられ、これらのうちの1種を単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
【0067】
前記防黴剤としては、ソルビン酸カリウム、p-クロロ-メタキシレノール及びp-オキシ安息香酸ブチル、p-ヒドロキシ安息香酸エステル、サリチル酸誘導体及び1,2-ベンゾチアゾリン-3-オン誘導体等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、また、これらのうちの1種を単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
【0068】
前記流動性改良剤としては、ホワイトカーボン(非晶質ケイ素、ケイ酸カルシウム)や流動パラフィンなどの高粘性液体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0069】
前記固着剤としては、ポリエチレングリコールやポリビニルアルコールなどの水溶性高分子、酢酸ビニルやアクリル酸エステルなどの合成樹脂エマルション等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらのうちの1種を単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。また、剤型によっては前記の液体担体、固体担体、界面活性剤、結合剤等が固着剤としても機能するため、特別に固着剤を加えないことがある。
【0070】
前記製剤補助剤としては、ここで示した製剤補助剤に限定されるものではなく、本発明の目的を達成しうる範囲内であれば各種の補助剤を使用することができる。
【0071】
上記の担体、界面活性剤等の製剤補助剤は、必要に応じて各々単独で、或いは組み合わせて用いられる。
【0072】
本発明のセンチュウ防除剤及び双子葉植物の生育促進剤において、前記本発明に係る化合物(有効成分)の含有量(前記本発明に係る化合物が2種以上である場合にはそれらの合計量、以下同じ)としては、使用目的や処理方法にもよるものであるため特に限定されないが、0.1~99.9重量%、好ましくは0.1~80%重量%、より好ましくは0.2~80重量%である。本発明のセンチュウ防除剤及び/又は双子葉植物の生育促進剤が上記の他の有害生物防除剤をさらに含有する場合、前記本発明に係る化合物と他の有害生物防除剤との混合割合は、適宜広範囲に渡って変えることができる。
【0073】
また、本発明のセンチュウ防除剤及び/又は双子葉植物の生育促進剤が上記の農園芸上許容可能な担体をさらに含有する場合、前記本発明に係る化合物と前記担体との混合割合は、適宜広範囲に渡って変えることができるが、好ましい態様における組成としては、以下のものが挙げられる。
【0074】
(1)湿潤剤及び/又は分散剤(好ましくは界面活性剤)を0.6~30重量%、粉末状固体担体を20~95重量%含有する水和剤(wettable powder)である組成、
(1’)本発明に係る化合物を10~70重量%、湿潤剤及び/又は分散剤(好ましくは界面活性剤)を0.6~20重量%、粉末状固体担体を10~89.4重量%含有する水和剤(wettable powder)である組成、
(2)湿潤剤及び/又は分散剤(好ましくは界面活性剤)、並びに結合剤を計0.6~30重量%、粉末状固体担体を20~95重量%含有する顆粒状水和剤(water dispersible granule)である組成、
(2’)本発明に係る化合物を0.2~50重量%、湿潤剤及び/又は分散剤(好ましくは界面活性剤)、並びに結合剤を計0.6~30重量%、粉末状固体担体を20~99.2重量%含有する顆粒状水和剤(water dispersible granule)である組成、
(3)湿潤剤及び/又は分散剤(好ましくは界面活性剤)、増粘剤、凍結防止剤、防黴剤、並びに消泡剤から選択される少なくとも1種の製剤補助剤を5~40重量%、液体担体である水を20~94重量%含有するフロアブル剤(flowable formulation)である組成、
(3’)本発明に係る化合物を10~70重量%、湿潤剤及び/又は分散剤(好ましくは界面活性剤)、増粘剤、防黴剤、凍結防止剤、消泡剤、並びに固着剤から選択される少なくとも1種の製剤補助剤を5~28重量%、液体担体である水を2~85重量%含有するフロアブル剤(flowable formulation)である組成、
(4)乳化剤(好ましくは界面活性剤)を1~30重量%、液体担体である有機溶媒を20~97重量%含有する乳剤(emulsifiable concentrate)である組成、
(4’)本発明に係る化合物を10~70重量%、乳化剤(好ましくは界面活性剤)を1~25重量%、液体担体である有機溶媒を5~89重量%含有する乳剤(emulsifiable concentrate)である組成、
(5)粉末状固体担体を70~99.8重量%含有する粉剤(dust)である組成、
(5’)本発明に係る化合物を10~80重量%、粉末状固体担体を10~90重量%含有する粉剤(dust)又は粉末剤(powder formulation)である組成、
(6)溶剤又は結合剤を0.2~10重量%、粒状固体担体を70~99.6重量%含有する粉粒剤(dust-granule mixture)である組成、
(6’)本発明に係る化合物を0.1~20重量%、溶剤又は結合剤を0.2~10重量%、粒状固体担体を70~99.7重量%含有する粉粒剤(dust-granule mixture)である組成、
(7)湿潤剤及び/又は分散剤(好ましくは界面活性剤)、並びに結合剤を計0.5~30重量%、粉末状固体担体を20~98重量%含有する押出型粒剤(Extruded granule)である組成、
(7’)本発明に係る化合物を0.1~20重量%、湿潤剤及び/又は分散剤(好ましくは界面活性剤)、並びに結合剤を計0.5~30重量%、粉末状固体担体を50~99.4重量%、含有する押出型粒剤(Extruded granule)である組成、
(8)湿潤剤及び/又は分散剤(好ましくは界面活性剤)、粉末状固体担体、並びに結合剤を計0.5~30重量%、粒状固体担体を20~98重量%含有する被覆型粒剤(Coated granule)である組成、
(8’)本発明に係る化合物を0.1~20重量%、湿潤剤及び/又は分散剤(好ましくは界面活性剤)、粉末状固体担体、並びに結合剤を計0.5~30重量%、粒状固体担体を50~99.4重量%含有する被覆型粒剤(Coated granule)である組成、
(9)膜材と、乳化剤及び分散剤(好ましくは界面活性剤)、並びに防黴剤を計1~50重量%、液体担体である水を20~98重量%と、を含有するマイクロカプセル剤(micro capsule)である組成、
(9’)膜材と、本発明に係る化合物を0.1~20重量%、乳化剤及び分散剤(好ましくは界面活性剤)、並びに防黴剤を計1~50重量%、液体担体である水を30~98.9重量%と、を含有するマイクロカプセル剤(micro capsule)である組成。
【0075】
これらの中でも、農園芸上許容可能な担体をさらに含有する組成としてより好ましくは、上記(1’)、(3’)、(5’)、(6’)、(7’)、(8’)の組成が挙げられる。
【0076】
また、本発明のセンチュウ防除剤及び双子葉植物の生育促進剤としては、それぞれ、前記植物の種子を処理するための種子処理剤であってもよい。
【0077】
また、本発明の別の態様としては、前記本発明に係る化合物を含有する本発明のセンチュウ防除剤及び/又は双子葉植物の生育促進剤と、前記他の有害生物防除剤のうちの少なくとも1種を含有する防除剤と、の組み合わせ物が提供される。これらは、それぞれ単独で各剤の製剤形態を調製しておき、使用する際に、これらをその場で混合して用いてもよい。
【0078】
本発明の別の好ましい態様によれば、前記組み合わせ物において、本発明に係る化合物を含有する剤は、第1の組成物として提供され、他の有害生物防除剤を含有する剤は、第2の組成物として提供される。この場合、第1の組成物と第2の組成物とは、前記した本発明のセンチュウ防除剤及び双子葉植物の生育促進剤の場合と同様に、適当な担体及び/又は製剤補助剤を用いて任意の剤型であることができる。該組み合わせ物は、薬剤セットなどの形態で提供されてもよい。
【0079】
本発明のさらに別の態様によれば、本発明のセンチュウ防除方法及び/又は双子葉植物の生育促進方法として、前記本発明に係る化合物又はこれを含有する第1の組成物と、他の有害生物防除剤のうちの少なくとも1種又はこれを含有する第2の組成物と、を処理すべき領域に同時又は別々に(好ましくは、各成分を同時に)適用することを含んでなる方法が提供される。
【0080】
この方法において、「同時に」適用することには、本発明に係る化合物又は第1の組成物と、他の有害生物防除剤の少なくとも1種又は第2の組成物と、を処理すべき領域に適用する前に混合して、その混合物を適用することも包含される。「別々に」適用することには、それらをあらかじめ混合することなく、本発明に係る化合物又は第1の組成物を、他の有害生物防除剤の少なくとも1種又は第2の組成物よりも先に適用すること、前者を後者よりも後に適用することが包含される。
【0081】
本発明のさらに別の好ましい態様によれば、前記本発明に係る化合物を有効成分として含んでなる、第1の組成物と、他の有害生物防除剤の少なくとも1種を有効成分として含んでなる、第2の組成物と、を処理すべき領域に適用する工程を含む、チレンクス上科の植物寄生性センチュウの防除方法及び/又は双子葉植物の生育促進方法が提供される。
【0082】
本発明の別の態様によれば、植物寄生性センチュウの防除方法及び/又は双子葉植物の生育促進として、前記本発明に係る化合物、本発明のセンチュウ防除剤、本発明の双子葉植物の生育促進剤、又は前記組み合わせ物の有効量を、そのままで、或いは希釈して、前記対象、好ましくは、前記植物の種子又は土壌を処理する工程を含む、チレンクス上科の植物寄生性センチュウの防除方法が提供される。
【0083】
また、本発明の別の態様によれば、チレンクス上科の植物寄生性センチュウを防除するための(好ましくはチレンクス上科の植物寄生性センチュウから前記植物を保護するための)及び/又は双子葉植物の生育を促進するための、前記本発明に係る化合物、本発明のセンチュウ防除剤、本発明の双子葉植物の生育促進剤、又は前記組み合わせ物の使用が提供される。
【0084】
本発明において、前記本発明に係る化合物、本発明のセンチュウ防除剤、本発明の双子葉植物の生育促進剤、又は前記組み合わせ物で前記対象を処理する手法としては、好ましくは、種子処理、土壌処理が挙げられる。
【0085】
前記種子処理としては、例えば、浸漬法、粉衣法、塗沫法、吹き付け法、ペレット法、皮膜法、薫蒸法が挙げられる。
【0086】
前記浸漬法は、液状の薬剤(本発明に係る化合物、本発明のセンチュウ防除剤、本発明の双子葉植物の生育促進剤、又は前記組み合わせ物、以下同じ)の中へ種子を浸漬する方法であり、前記粉衣法には、乾燥状の種子へ粉状の薬剤を付着させる乾粉衣法と、軽く水に浸した種子を粉状の薬剤を付着させる湿粉衣法とがある。
【0087】
前記塗沫法では、所定量の薬剤の水和剤に、少量の水及び任意の色素を添加し、スターラー上で数十秒間撹拌させた後、防除剤で覆われた均一な作物種子を得ることができる。また、前記吹き付け法は、種子表面へ薬剤を吹き付ける方法である。
【0088】
さらに、種子を充填剤と共に一定の大きさ・形へペレット化する際に、充填物に薬剤を混ぜて処理する前記ペレット法や、薬剤を含んだフィルムを種子にコーティングする前記皮膜法、密閉容器内でガス化した薬剤により種子を消毒する前記薫蒸法が挙げられる。また、播種時に薬剤を播種溝の土壌及び種子に直接散布する方法も挙げられる。
【0089】
また、前記本発明に係る化合物、本発明のセンチュウ防除剤、本発明の双子葉植物の生育促進剤、又は前記組み合わせ物は、前記種子以外に、発芽後、又は、土壌からの出芽後に移植される、発芽した植物、及び、幼植物にも適用することができる。浸漬による全体又は一部の処理によって、移植の前にこれらの植物を保護することができる。
【0090】
前記土壌処理としては、特に限定されないが、好ましくは本発明に係る化合物、本発明のセンチュウ防除剤、本発明の双子葉植物の生育促進剤、又は前記組み合わせ物を、土壌中又は土壌上に適用することが挙げられる。かかる土壌処理としては、混和処理、散布処理、帯、溝及び植付け穴適用処理(植溝内土壌散布処理、in furrow処理を含む)などの処理方法が挙げられ、好ましい処理方法としては、混和処理、散布処理、及び溝及び植付け穴適用処理が挙げられる。例えば、混和処理では、粒剤の薬剤を表層15~25cmの土壌中に手動及び機械で混和させることで、植物の栽培中においてチレンクス上科の植物寄生性センチュウを防除することができる。また、播種及び種芋の植付け時に、土壌表層の植溝内に薬剤を植物体及び土壌の両方に散布処理することで、チレンクス上科の植物寄生性センチュウを防除することもできる。さらに、薬剤を土壌に潅注することによって適用することも好ましい土壌処理方法である。
【0091】
これら以外にも、好ましい対象の処理方法の例として、野菜、及び花き類の生産のための、水耕栽培及び砂耕、NFT(Nutrient Film Technique)、ロックウール耕などの固形培地耕栽培のような養液栽培システムにおける養液への薬剤の添加や、イネ育苗用の育苗箱への薬剤の施用(床土混和など)が挙げられる。バーミキュライトを含む人工培土及び育苗用人工マットを含む固形培地に薬剤を直接適用する方法も挙げられる。
【0092】
前記対象が植物であってその茎葉部に散布処理により適用する場合、又は、前記対象が前記植物に寄生しているチレンクス上科の植物寄生性センチュウである場合、前記本発明に係る化合物の処理量(すなわち有効量:前記本発明に係る化合物が2種以上である場合にはそれらの合計量、以下同じ)としては、耕地10アール当たり0.1g~10kgであることが好ましく、1g~1000gであることがより好ましい。
【0093】
前記対象が植物の種子である場合、前記本発明に係る化合物の処理量(有効量)としては、特に限定されないが、種子1kg当たり0.01g~100gであることが好ましく、0.01~20gであることがより好ましく、0.1g~20gであることがさらに好ましく、0.2g~15gであることがさらにより好ましい。また、この場合、種子に付着させる有効量(コーティング中に存在する本発明の化合物の有効量)としては、0.002~10mg/種子の範囲内であり、好ましくは、0.1mg~5.0mg/種子である。
【0094】
前記対象が土壌又は土壌以外の培養担体(水耕栽培、砂耕、NFT(Nutrient Film Technique)、ロックウール耕等の養液;人工培土、育苗用人工マット等の固形培地等)である場合、前記本発明に係る化合物の処理量(有効量)としては、特に限定されないが、好ましくは、土壌10アール当たり0.1g~1000gであり、好ましくは1g~100gである。
【実施例0095】
以下、実施例として製剤例及び試験例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0096】
製剤例1〔粉剤・粉末剤〕
式(1)の化合物 50重量%
クレー 34重量%
ホワイトカーボン 5重量%
硫酸カルシウム 11重量%
上記成分を均一に混合し、粉砕して粉衣用粉剤を得た。
【0097】
製剤例2〔粉剤・粉末剤〕
式(2)の化合物 50重量%
クレー 34重量%
ホワイトカーボン 5重量%
硫酸カルシウム 11重量%
上記成分を均一に混合し、粉砕して粉衣用粉剤を得た。
【0098】
製剤例3〔水和剤〕
式(1)の化合物 30重量%
クレー 60重量%
ホワイトカーボン 4重量%
アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム 2重量%
ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物ナトリウム 4重量%
上記成分を均一に混合し、粉砕して水和剤を得た。
【0099】
製剤例4〔フロアブル剤〕
式(1)の化合物 50.0 重量%
ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル 5.0 重量%
ラウリル硫酸ナトリウム 2.0 重量%
プロピレングリコール 10.0 重量%
キサンタンガム 0.3 重量%
1,2-ベンゾチアゾリン-3-オン 0.05重量%
シリコーン系消泡剤 0.2 重量%
色素 3.0 重量%
水 29.45重量%
上記配合からキサンタンガム、1,2-ベンゾチアゾリン-3-オン及び適当量の水を除いた全量を予備混合した後、湿式粉砕機にて粉砕した。その後、キサンタンガム、1,2-ベンゾチアゾリン-3-オン及び残りの水を加えフロアブル剤を得た。
【0100】
製剤例5〔粒剤・被覆型粒剤〕
式(1)の化合物 2.0重量%
珪砂 85.1重量%
ラウリル硫酸ナトリウム 0.5重量%
リグニンスルホン酸ナトリウム 0.5重量%
ホワイトカーボン 0.5重量%
流動パラフィン 1.2重量%
色素 0.2重量%
カオリン 10.0重量%
上記成分のうち、式(1)の化合物、ラウリル硫酸ナトリウム、リグニンスルホン酸ナトリウム、ホワイトカーボン、色素、カオリンを均一に混合粉砕して、粉砕物を得た。珪砂に流動パラフィンを加えて均一に湿潤させた後、前記の粉砕物を珪砂に均一に混合して被覆させ、粒剤を得た。
【0101】
(試験例1)サツマイモネコブセンチュウ(Meloidogyne incognita)防除試験(薬液浸漬)
24ウェルプレートの各穴に、終濃度0.1%アセトン及び所定濃度の化合物(1)又は化合物(2)となるように調製した薬液1mLをそれぞれ入れ、これにサツマイモネコブセンチュウ2期幼虫20~30頭を放飼し、25℃暗所にて静置した。薬液添加2日後の生存、苦悶虫数を計測し、下記式により苦悶死虫率を算出した。
(苦悶死虫率算出式)
苦悶死虫率=(死亡虫数+苦悶虫数)/(全放虫数)×100
その結果、化合物(1)及び化合物(2)のいずれにおいても、10ppmの濃度で90%以上の苦悶死虫率を示した。
【0102】
(試験例2)ダイズシストセンチュウ(Heterodera glycines)防除試験(薬液浸漬)
24ウェルプレートの各穴に、終濃度0.1%アセトン及び所定濃度の化合物(1)となるように調製した薬液1mLをそれぞれ入れ、これにダイズシストセンチュウ2期幼虫20~30頭を放飼し、25℃暗所にて静置した。薬液添加2日後の生存、苦悶虫数を計測した。また、化合物(1)を処理していない無処理区における生存、苦悶虫数も同様に計測し、下記式により補正死虫率を算出した。
(補正死虫率算出式)
補正死虫率(%)={(処理区死虫率-無処理区死虫率)/(100-無処理区死虫率)}×100
その結果、化合物(1)においては10ppmの濃度で100%の補正死虫率を示した。
【0103】
(試験例3)サツマイモネコブセンチュウ(Meloidogyne incognita)防除試験(土壌灌注)
滅菌土壌を充填した3cmのスチロールカップにキュウリ種子を1粒ずつ播種した。発芽後、土壌に灌注した際に化合物(1)が100ppmになるように10%アセトン水にて調製した薬液を3mLずつ土壌に灌注した。1時間経過後にサツマイモネコブセンチュウ2期幼虫溶液200頭/mLを1mL/potずつ接種した。接種21日後にキュウリ根への根こぶ形成程度を、下記の6段階の根こぶ形成程度別基準で見取り調査にて分類し、根こぶ指数を算出した。また、化合物(1)を処理していない処理区(無処理)の場合の根こぶ指数も同様に算出した。各結果を下記の表1に示す。
(根こぶ指数算出式)
根こぶ指数=(0×a+1×b+2×c+3×d+4×e+5×f)/((a+b+c+d+e+f)×5)×100
a:根こぶ形成程度別基準0に該当する株数、b:根こぶ形成程度別基準1に該当する株数、c:根こぶ形成程度別基準2に該当する株数、d:根こぶ形成程度別基準3に該当する株数、e:根こぶ形成程度別基準4に該当する株数、f:根こぶ形成程度別基準5に該当する株数
(根こぶ形成程度別基準)
0…根こぶが全く認められない
1…わずかに認められるが被害は目立たない程度
2…認められるが、大きな根こぶは少ない
3…大小の根こぶを含めて多数認められる
4…大きな根こぶが多数認められる(50%以下)
5…大きな根こぶにより根が太くなっている(50%以上)
【0104】
【0105】
(試験例4)キュウリ薬害試験(種子粉衣)
滅菌土壌を充填した3cmのスチロールカップに、製剤例1又は製剤例2に示す粉衣用粉剤で、化合物(1)又は化合物(2)の処理量が所定量となるように粉衣処理したキュウリ種子を1粒ずつ播種した。播種10日後に発芽率を算出した。また、製剤例1(化合物(1))又は製剤例2(化合物(2))に代えてFluensulfoneで処理した種子を播種した場合、及びいずれの化合物でも処理していない種子を播種した場合(無処理)の場合の発芽率も同様に算出した。各結果を下記の表2に示す。
【0106】
【0107】
(試験例5)サツマイモネコブセンチュウ(Meloidogyne incognita)防除試験1(種子粉衣)
滅菌土壌を充填した3cmのスチロールカップに、製剤例1に示す粉衣用粉剤で、化合物(1)の処理量が所定量となるように粉衣処理したキュウリ種子を1粒ずつ播種した。播種10日後にサツマイモネコブセンチュウ2期幼虫溶液200頭/mLを種子1粒に対して1mLずつ接種した。接種21日後にキュウリ根への根こぶ形成程度を、下記の6段階の根こぶ形成程度別基準で見取り調査にて分類し、根こぶ指数を算出した。また、製剤例1(化合物(1))に代えてParaherquamide Aで処理した種子を播種した場合、及びいずれの化合物でも処理していない種子を播種した場合(無処理)の場合の根こぶ指数も同様に算出した。各結果を下記の表3に示す。
(根こぶ指数算出式)
根こぶ指数=(0×a+1×b+2×c+3×d+4×e+5×f)/((a+b+c+d+e+f)×5)×100
a:根こぶ形成程度別基準0に該当する株数、b:根こぶ形成程度別基準1に該当する株数、c:根こぶ形成程度別基準2に該当する株数、d:根こぶ形成程度別基準3に該当する株数、e:根こぶ形成程度別基準4に該当する株数、f:根こぶ形成程度別基準5に該当する株数
(根こぶ形成程度別基準)
0…根こぶが全く認められない
1…わずかに認められるが被害は目立たない程度
2…認められるが、大きな根こぶは少ない
3…大小の根こぶを含めて多数認められる
4…大きな根こぶが多数認められる(50%以下)
5…大きな根こぶにより根が太くなっている(50%以上)
【0108】
【0109】
(試験例6)ニセフクロセンチュウ(Rotylenchulus reniformis)防除試験(種子粉衣)
製剤例1に示す粉衣用粉剤に、遺伝子組み換えダイズ種子、少量の水及び青色色素を添加し、スターラー上で数十秒間撹拌させることにより、この粉剤で均一に塗抹された遺伝子組み換えダイズ種子を得た。このダイズ種子を、あらかじめニセフクロセンチュウの卵及び幼虫を接種した土壌に播種した。播種80日後に土壌500mL中に生息するニセフクロセンチュウの数を計測した。また、製剤例1(化合物(1))で処理していない種子を播種した場合(無処理)も同様に計測した。各結果を下記の表4に示す。
【0110】
【0111】
(比較試験例1)鶏回虫(Asacaridia galli)防除試験(in vitro)
リンゲル液を用いて所定濃度の化合物(1)又は化合物(2)となるように調製した薬液10mL内に、それぞれ、鶏回虫6隻を投下し、42℃のウォーターバスで培養した。培養開始から24時間後の生存虫数を計測し、死虫率を算出した。
【0112】
その結果、化合物(1)及び化合物(2)のいずれにおいても、50ppmの濃度で0%の死虫率を示し、化合物(1)及び化合物(2)は動物内部寄生性センチュウに対して全く効果を示さないことが確認された。
【0113】
(比較試験例2)縮小条虫(Nipposronglus brasiliensis)防除試験(in vitro)
あらかじめ縮小条虫をラットに感染させ感染ラットを作製した。感染ラット3匹に、所定濃度の化合物(1)又は化合物(2)となるように調製した薬液をそれぞれ経口投与し、投与7日後のラット小腸中の縮小条虫を実体顕微鏡にて観察し、防除効果を判定した。
【0114】
その結果、化合物(1)及び化合物(2)のいずれにおいても、20mg/kgで投与したラットでは防除効果が確認されず、化合物(1)及び化合物(2)は動物内部寄生性センチュウに対して全く効果を示さないことが確認された。
【0115】
(比較試験例3)マツノザイセンチュウ(Bursaphelenchus xylophilus)防除試験(in vitro)
マツノザイセンチュウ防除試験として、綿球試験法を用いてマツノザイセンチュウ増殖抑制効果を確認した。先ず、脱脂綿の綿球(直径5mm)を昆虫針で固定し、化合物(1)又は化合物(2)が2000ppmとなるように調整したメタノール溶液をマイクロピペットで注入した。デシケーター中で約30分間減圧にし、溶媒を蒸発除去し、供試綿球とした。また、検定菌の灰色かびをポテトデキストロース寒天培地を入れたシャーレにて22℃で4日間培養した。次いで、このシャーレの中央に、前記供試綿球を置き、それにマツノザイセンチュウを1500匹(溶液100μL)注入した。このシャーレを26℃で5日間培養し、下記の評価基準に基づいて、マツノザイセンチュウによる灰色かびの摂食度を評価した。また、化合物(1)又は(2)に代えてMorantelを用いた場合も同様に評価した。各評価結果(スコア)を下記の表5に示す。
(評価基準)
スコア1:摂食への影響なし(効果なし)
スコア2:摂食度41%以上
スコア3:摂食度21~40%
スコア4:摂食度20%以下
スコア5:摂食なし(効果大)
【0116】
【0117】
上記の結果より、本発明のセンチュウ防除剤が、チレンクス上科の植物寄生性センチュウに対して特異的に、優れた防除効果を奏することが確認された。
【0118】
(試験例7)ダイズ生育影響試験(種子粉衣)
製剤例1に示す粉衣用粉剤に、遺伝子組み換えダイズ種子、少量の水及び青色色素を添加し、スターラー上で数十秒間撹拌させることにより、この粉剤で均一に塗抹された遺伝子組み換えダイズ種子を得た。このダイズ種子を、あらかじめサツマイモネコブセンチュウの卵及び幼虫を接種した土壌に播種した。播種80日後に茎葉部の草丈、及び、茎葉部の重量を測定し、化合物(1)のダイズの生育に及ぼす影響を評価した。また、製剤例1(化合物(1))に代えてアバメクチン製剤(Avitcta Complete、Syngenta社製)で処理した種子を播種した場合、及びいずれの化合物でも処理していない種子を播種した場合(無処理)の茎葉部の草丈、茎葉部の重量も同様に測定した。各結果を下記の表6に示す。なお、表6には、無処理の場合を100とした場合の草丈の相対値(対無処理)も合わせて示す。
【0119】
【0120】
また、上記と同様に処理したダイズ種子を、サツマイモネコブセンチュウに代えてダイズシストセンチュウ又はニセフクロセンチュウの卵及び幼虫を接種した土壌に播種し、播種80日後に茎葉部の草丈、及び、茎葉部の重量を測定したところ、上記と同様の結果が得られた。
【0121】
(試験例8)キュウリ生育影響試験
製剤例1に示す紛衣用粉剤に、キュウリ種子、少量の水を添加し、攪拌させることにより、この粉剤で均一に塗抹されたキュウリ種子を得た。このキュウリ種子をサツマイモネコブセンチュウで汚染された土壌に播種した。播種49日後に茎葉部の草丈を測定し、化合物(1)のキュウリの生育に及ぼす影響を評価した。また、製剤例1(化合物(1))で処理していない種子を播種した場合(無処理)の茎葉部の草丈も同様に測定した。各結果を下記の表7に示す。なお、表7には、無処理の場合を100とした場合の草丈の相対値(対無処理)も合わせて示す。
【0122】
【0123】
(比較試験例4)コムギ生育影響試験
24ウェルプレートの各穴に、終濃度10%アセトン及び所定の濃度の化合物(1)となるように調整した薬液200μLをそれぞれ入れ、これに芽出し済みのコムギの根部を浸漬させた。浸漬3日後に茎葉部の草丈を測定し、化合物(1)のコムギの生育に及ぼす影響を評価した。また、化合物(1)で処理していない種子を播種した場合(無処理)の茎葉部の草丈も同様に測定した。各結果を下記の表8に示す。なお、表8には、無処理の場合を100とした場合の草丈の相対値(対無処理)も合わせて示す。
【0124】
【0125】
上記の結果より、本発明のセンチュウ防除剤は、植物に対する高い安全性を示し、さらには、双子葉植物に対して特異的に、優れた生育促進効果を奏することが明らかとなった。
【0126】
(試験例9)サツマイモネコブセンチュウ(Meloidogyne incognita)防除試験2(種子粉衣)
育苗培土を充填した9cmポットに、製剤例1に示す粉衣用粉剤で、化合物(1)の処理量が所定量となるように粉衣処理したキュウリ種子を1粒ずつ播種した。播種13日後にサツマイモネコブセンチュウで汚染された圃場へ苗を定植し、定植27日後にキュウリ根への根こぶ形成程度を一般社団法人日本植物防疫協会の受託試験の試験法に従って、下記の5段階の根こぶ形成程度別基準で見取り調査にて分類し、根こぶ指数を算出した。また、製剤例1に代えてフルオピラム0.5%粒剤(ビーラム粒剤、バイエル社製)を混和処理した土壌に種子の播種を行ったこと以外は上記と同様にして根こぶ指数を算出した。さらに、いずれの化合物でも処理していない種子を播種した場合(無処理)の根こぶ指数も同様に算出した。なお、各区においては24株又は25株を調査し、結果はその平均とした。各結果を下記の表9に示す。表9中、投下薬量は、栽培面積当たりの化合物量を示す(以下同様)。
(根こぶ指数算出式)
根こぶ指数=(0×a+1×b+2×c+3×d+4×e)/((a+b+c+d+e)×4)×100
a:根こぶ形成程度別基準0に該当する株数、b:根こぶ形成程度別基準1に該当する株数、c:根こぶ形成程度別基準2に該当する株数、d:根こぶ形成程度別基準3に該当する株数、e:根こぶ形成程度別基準4に該当する株数
(根こぶ形成程度別基準)
0…根系全体に根こぶを全く認めない
1…細根にこぶをわずかに認める
2…細根にややこぶが目立つ
3…主根にもこぶが認められる
4…こぶが特に多く、かつ大きい
【0127】
【0128】
上記の結果より、本発明のセンチュウ防除剤は、サツマイモネコブセンチュウに対して、従来の対照薬剤を通常の使用法で使用した場合の投下薬量の40分の1の低薬量で、該対照薬剤と同等の高い被害抑制効果を示した。
【0129】
(試験例10)ネグサレセンチュウ(Pratylenchus penetrans)防除試験(種子粉衣)
製剤例1に示す粉衣用粉剤で、化合物(1)の処理量が所定量となるように粉衣処理したダイコン種子を1粒ずつ、ネグサレセンチュウに汚染された圃場に播種した。播種77日後に収穫し、根部の加害痕数を下記の評価基準に基づいて指数化した。次式に従い、薬剤処理区の根部被害度を算出した。また、製剤例1に代えてイミシアホス1.5%粒剤(ネマキック粒剤、アグロカネショウ社製)を混和処理した土壌に種子の播種を行ったこと以外は上記と同様にして根部被害度を算出した。さらに、いずれの化合物でも処理していない種子を播種した場合(無処理)の根部被害度も同様に算出した。なお、各区においては20株×2反復、計40株の調査を実施し、結果はその平均とした。各結果を下記の表10に示す。
(根部被害度算出式)
根部被害度=(0×a+1×b+2×c+3×d+4×e)/((a+b+c+d+e)×4)×100
a:根部被害指数基準0に該当する株数、b:根部被害指数基準1に該当する株数、c:根部被害指数基準2に該当する株数、d:根部被害指数基準3に該当する株数、e:根部被害指数基準4に該当する株数
(根部被害指数基準)
0…加害痕なし
1…加害痕の数が1~5
2…加害痕の数が6~10
3…加害痕の数が11~20
4…加害痕の数が21以上
【0130】
【0131】
上記の結果より、本発明のセンチュウ防除剤は、ネグサレセンチュウに対しても、従来の対照薬剤を通常の使用法で使用した場合の投下薬量の14分の1以下の低薬量で、該対照薬剤と同等の高い被害抑制効果を示した。
本発明のセンチュウ防除剤及びセンチュウ防除方法は、非標的生物への安全性が高く、かつ、簡便に使用でき、チレンクス上科の植物寄生性センチュウに対して優れた防除効果を奏するセンチュウ防除剤及びセンチュウ防除方法として有用である。
また、本発明のセンチュウ防除剤及びセンチュウ防除方法によれば、双子葉植物に対して特異的な生育促進効果も奏するため、穀類、豆類、砂糖製造用緑草類、野菜類、果樹類等の農作物、特に好ましくはダイズ、キュウリ、ダイコン等の作物の収量を大幅に向上させることができる。