(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129093
(43)【公開日】2024-09-26
(54)【発明の名称】ドローンポートシステム
(51)【国際特許分類】
B64U 70/90 20230101AFI20240918BHJP
B64U 10/13 20230101ALI20240918BHJP
B65G 61/00 20060101ALI20240918BHJP
B64U 101/64 20230101ALN20240918BHJP
【FI】
B64U70/90
B64U10/13
B65G61/00 500
B64U101:64
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024104861
(22)【出願日】2024-06-28
(62)【分割の表示】P 2020003410の分割
【原出願日】2020-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097515
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100136700
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 俊博
(72)【発明者】
【氏名】小野 右季
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 克之
(72)【発明者】
【氏名】▲曽▼我 隆之
(72)【発明者】
【氏名】▲曽▼我 友貴
(72)【発明者】
【氏名】佐々 直人
(57)【要約】
【課題】互いに干渉することなく隣接して複数設置することができ、かつ、ドローンが搬送した荷物の位置が変動しても、荷物を確実に内部に搬送し、安全に保管できるドローンポートシステムとその運転方法を提供する。
【解決手段】スライドルーフ20、ランディングユニット30、センタリング装置40、及び、搬送装置60が中空構造10の中空内部11に設置されている。中空構造10は、上面にドローン1が着陸可能な大きさの上面開口12を有する。ランディングユニット30は、ドローン1が着陸する着陸面33を有し、着陸用の上昇高さH1とその下方の下降高さH3との間で着陸面33を昇降可能に構成されている。センタリング装置40は、着陸面33に載る荷物9を着陸面上の基準線上まで水平移動させる機能を有する。搬送装置60は、基準線上の荷物9を、着陸面33の下方に搬送する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面にドローンが着陸し、ドローンが搬送した荷物を内部に保管するドローンポートシステムであって、
中空内部を有し上面に前記ドローンが着陸可能な大きさの上面開口を有する中空構造と、
前記ドローンが着陸する着陸面を有し、着陸用の上昇高さとその下方の下降高さとの間で前記着陸面を昇降可能なランディングユニットと、
前記着陸面に載る前記荷物を着陸面上の基準線上まで水平移動させるセンタリング装置と、
前記基準線上の前記荷物を搬送する搬送装置と、を備え、
前記ランディングユニット、前記センタリング装置、及び、前記搬送装置が前記中空内部に設置されており、
前記ランディングユニットは、
前記着陸面を有し四隅の耳部のみが前記上面開口の外側空間に位置する昇降支持台と、
前記着陸面を水平に保持して前記昇降支持台を昇降可能に案内する昇降ガイドと、
前記昇降支持台を昇降させる昇降駆動ユニットと、を有する、ドローンポートシステム。
【請求項2】
上面にドローンが着陸し、ドローンが搬送した荷物を内部に保管するドローンポートシステムであって、
中空内部を有し上面に前記ドローンが着陸可能な大きさの上面開口を有する中空構造と、
前記ドローンが着陸する着陸面を有し、着陸用の上昇高さとその下方の下降高さとの間で前記着陸面を昇降可能なランディングユニットと、
前記着陸面に載る前記荷物を着陸面上の基準線上まで水平移動させるセンタリング装置と、
前記基準線上の前記荷物を搬送する搬送装置と、を備え、
前記ランディングユニット、前記センタリング装置、及び、前記搬送装置が前記中空内部に設置されており、
前記中空構造は、その側面に前記中空内部を外部と連通させる外壁開口を有し、
前記搬送装置は、その上の前記荷物を前記外壁開口の内側直前まで搬送する補助コンベア装置を有する、ドローンポートシステム。
【請求項3】
上面にドローンが着陸し、ドローンが搬送した荷物を内部に保管するドローンポートシステムであって、
中空内部を有し上面に前記ドローンが着陸可能な大きさの上面開口を有する中空構造と、
前記ドローンが着陸する着陸面を有し、着陸用の上昇高さとその下方の下降高さとの間で前記着陸面を昇降可能なランディングユニットと、
前記着陸面に載る前記荷物を着陸面上の基準線上まで水平移動させるセンタリング装置と、
前記基準線上の前記荷物を搬送する搬送装置と、を備え、
前記ランディングユニット、前記センタリング装置、及び、前記搬送装置が前記中空内部に設置されており、
前記中空構造は、その側面に前記中空内部を外部と連通させる外壁開口を有し、
前記搬送装置は、前記荷物を上下方向に通す荷物用開口の下方に位置し前記荷物を水平に搬送する主コンベア装置と、前記主コンベア装置を介して前記荷物を前記外壁開口の反対側内側に保管する保管装置とを有する、ドローンポートシステム。
【請求項4】
前記上昇高さは、前記中空構造の上面高さであり、
前記着陸面は干渉物がないフラットな形状である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のドローンポートシステム。
【請求項5】
前記上昇高さは、前記中空構造の上面より下であり、前記着陸面はフラットである、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のドローンポートシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドローンが離着陸でき、ドローンが搬送した荷物を内部に保管し、いつでも外部に取り出すことができるドローンポートシステムとその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
「ドローン」とは、小型の無人ヘリコプターの一種である。近年、ドローンを用いて、小型の荷物を無人で搬送したり、橋梁等の建造物を点検したり、農薬を散布したりすることが計画されている。かかるドローンを「産業用ドローン」と呼ぶ。
【0003】
産業用ドローンが普及するにつれ、ドローンが離着陸でき、ドローンが搬送した荷物を内部に保管できるドローンポートが要望されている。かかる要望を満たすために、例えば特許文献1が開示されている。
【0004】
特許文献1の「ドローンポートシステム」は、荷物の受取ボックスとセキュリティボックスを備える。ドローンが荷物を空輸してきて受取ボックス上面の着陸板上に着陸し、荷物を着陸板上に残してドローンが離陸する。次いで、スライドガイドに沿って着陸板がスライドし、受取ボックスの上部が開口して荷物が受取ボックス内に落とし込まれる。
【0005】
また、「ダウンウォッシュ」とは、ドローンの回転翼により発生する空気の下降流を意味する。
ドローンが離着陸するドローンポートの離着陸面には、従来、開口部の少ない平板が主に用いられていた。しかし、この場合、ドローンにより発生するダウンウォッシュが離着陸面ではね返り、ドローンの回転翼周辺は下降流と上昇流が混在する状態となる。そのため、離着陸時のドローンの姿勢制御が困難となり、着陸精度が低下し、安全性が損なわれる、可能性があった。
【0006】
そこで、ダウンウォッシュのはね返りを低減する手段として、例えば特許文献2が開示されている。
【0007】
特許文献2の「無人航空機の離着陸台」は、無人航空機が離着陸可能な離着陸台の盤面に、着陸時の地面効果を減少させる地面効果減少手段を備える。地面効果減少手段は、離着陸台の盤面に形成され上面と下面とを連通する貫通孔部と、開閉切替部と、空気吸引部とを備える。開閉切替部は、貫通孔部の連通状態を切り替えて地面効果を減少させる。空気吸引部は、貫通孔部の連通状態時に盤面の上面側の空気を下面側に流して地面効果を積極的に減少させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2019-89461号公報
【特許文献2】特許第6228706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ドローンポートシステムはその普及のため、以下の条件を満たすことが要望されている。
(1)例えば自走式駐車場の屋上等の駐車スペースに隣接して複数設置できること。
(2)天候等の影響でドローンの着陸精度が低下し、ドローンが搬送した荷物の位置が変動しても、荷物を確実に内部に搬送し、安全に保管できること。
(3)ドローンから発生するダウンウォッシュの影響を低減できること。
(4)ドローンの着陸面に干渉物がなくフラットであること。
(5)保管する荷物を風雨から守ることができ、かつ外部から第3者が荷物にアクセスできず荷物を安全に保管できること。
【0010】
しかし、特許文献1の手段には、以下の問題点があった。
(1)受取ボックス上部の着陸板をスライドして開口すると、受取ボックスの外側にスライドした着陸板が大きく張り出す。そのため、受取ボックスを隣接して設置できない。
また、この張り出しを無くすと、着陸板の大きさが半減し、ドローンの正確な着陸が困難になる。あるいは受取ボックスの大型化が必要になる。
(2)着陸板上の荷物はスライドする着陸板と共に移動に、受取ボックス内のランダムな位置に落下する。そのため荷物を整列して保管できない。
(3)着陸板の周囲にスライドガイドや荷物落としガードがある。そのため、これらが干渉物となりドローンの着陸面を完全なフラットにできない。
(4)雨天時に受取ボックス上部を開口すると、内部に雨水が直接流入する。そのため保管中の荷物を風雨から守ることができない。
【0011】
また特許文献2の手段には、以下の問題点があった。
(1)離着陸台の盤面に貫通孔部と開閉切替部が設けられるため、離着陸台の開口率が低く、ダウンウォッシュのはね返りが大きい。
(2)ダウンウォッシュは高速であり、空気吸引部が高速下降流を吸引するには、大型の空気吸引部(例えば大型のファンモータ)を必要とする。そのため、必要となるエネルギ(例えば電力)が大きい。
(3)ダウンウォッシュ(空気の下降流)には高速領域があり、空気吸引部を用いても吸引が不十分になりやすく、はね返りの低減効果が少ない。
【0012】
本発明は上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の第1の目的は、互いに干渉することなく隣接して複数設置することができ、かつ、ドローンが搬送した荷物の位置が変動しても、荷物を確実に内部に搬送し、安全に保管できるドローンポートシステムとその運転方法を提供することにある。
また、第2の目的は、ダウンウォッシュのはね返りを大幅に低減することができ、ドローンの着陸面に干渉物がなくフラットにでき、かつ、保管する荷物を風雨及び第3者から安全に保管することができることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、上面にドローンが着陸し、ドローンが搬送した荷物を内部に保管するドローンポートシステムであって、
中空内部を有し上面に前記ドローンが着陸可能な大きさの上面開口を有する中空構造と、
前記ドローンが着陸する着陸面を有し、着陸用の上昇高さとその下方の下降高さとの間で前記着陸面を昇降可能なランディングユニットと、
前記着陸面に載る前記荷物を着陸面上の基準線上まで水平移動させるセンタリング装置と、
前記基準線上の前記荷物を搬送する搬送装置と、を備え、
前記ランディングユニット、前記センタリング装置、及び、前記搬送装置が前記中空内部に設置されており、
前記ランディングユニットは、
前記着陸面を有し四隅の耳部のみが前記上面開口の外側空間に位置する昇降支持台と、
前記着陸面を水平に保持して前記昇降支持台を昇降可能に案内する昇降ガイドと、
前記昇降支持台を昇降させる昇降駆動ユニットと、を有する、ドローンポートシステムが提供される。
【0014】
また、本発明によれば、上面にドローンが着陸し、ドローンが搬送した荷物を内部に保管するドローンポートシステムであって、
中空内部を有し上面に前記ドローンが着陸可能な大きさの上面開口を有する中空構造と、
前記ドローンが着陸する着陸面を有し、着陸用の上昇高さとその下方の下降高さとの間で前記着陸面を昇降可能なランディングユニットと、
前記着陸面に載る前記荷物を着陸面上の基準線上まで水平移動させるセンタリング装置と、
前記基準線上の前記荷物を搬送する搬送装置と、を備え、
前記ランディングユニット、前記センタリング装置、及び、前記搬送装置が前記中空内部に設置されており、
前記中空構造は、その側面に前記中空内部を外部と連通させる外壁開口を有し、
前記搬送装置は、その上の前記荷物を前記外壁開口の内側直前まで搬送する補助コンベア装置を有する、ドローンポートシステムが提供される。
さらに本発明によれば、上面にドローンが着陸し、ドローンが搬送した荷物を内部に保管するドローンポートシステムであって、
中空内部を有し上面に前記ドローンが着陸可能な大きさの上面開口を有する中空構造と、
前記ドローンが着陸する着陸面を有し、着陸用の上昇高さとその下方の下降高さとの間で前記着陸面を昇降可能なランディングユニットと、
前記着陸面に載る前記荷物を着陸面上の基準線上まで水平移動させるセンタリング装置と、
前記基準線上の前記荷物を、前記着陸面の下方に搬送する搬送装置と、を備え、
前記ランディングユニット、前記センタリング装置、及び、前記搬送装置が前記中空内部に設置されており、
前記中空構造は、その側面に前記中空内部を外部と連通させる外壁開口を有し、
前記搬送装置は、前記荷物を上下方向に通す荷物用開口の下方に位置し前記荷物を水平に搬送する主コンベア装置と、前記主コンベア装置を介して前記荷物を前記外壁開口の反対側内側に保管する保管装置とを有する、ドローンポートシステムが提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ランディングユニット、センタリング装置、及び、搬送装置が中空内部に設置されているので、中空構造の外側に張り出す部分がなく、中空構造を互いに干渉することなく隣接して複数設置することができる。
【0016】
また、ランディングユニットが、着陸用の上昇高さとその下方の下降高さとの間で着陸面を昇降可能に構成されているので、着陸面を上昇高さ(例えば中空構造の上面高さ)まで上昇させることで、着陸面にドローンが着陸できる。これにより、ドローンの着陸面に干渉物がなくフラットにできる。
【0017】
また、着陸面に載る荷物を着陸面上の基準線上まで水平移動させるセンタリング装置を備えるので、ドローンが搬送した荷物の位置がランダムに変動しても、センタリング装置により荷物を着陸面の基準線上(例えば中心線上)まで水平移動させることができる。
さらに、基準線上の荷物を、着陸面の下方に搬送する搬送装置を備えるので、ドローンが搬送した荷物を下方に搬送でき、かつ搬送した荷物を風雨及び第3者から安全に保管することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明によるドローンポートシステムの正面図である。
【
図3】中空構造の内部構造を示すドローンポートシステムの正面図である。
【
図13】
図10のC-C断面図(A)とその部分上面図(B)である。
【
図14】ドローン着陸時の運転方法の説明図である。
【
図16】ドローンポートシステムの第2実施形態を示す図である。
【
図17】気象値に基づいて着陸を禁止するための構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0020】
図1は、本発明によるドローンポートシステム100の正面図である。
この図において、ドローンポートシステム100は、中空構造10を備え、その上にドローン1が着陸し、ドローン1が搬送した荷物9を中空構造10の内部に保管する。
【0021】
(中空構造10)
図2は、中空構造10の説明図であり、(A)は正面図、(B)は上面図、(C)は右側面図である。
中空構造10は、中空内部11を有し、かつ上面にドローン1が着陸可能な大きさの上面開口12を有する。
中空内部11はこの例では矩形柱であり、上面開口12は矩形開口であり中空構造10の上面中央に位置する。なお、本発明はこの例に限定されず、円形開口であっても、上面開口12が中央から外れていてもよい。
また、中空構造10は、その側面(この例で正面)に中空内部11を外部と連通させる外壁開口14を有する。
上述した構成により、中空構造10を互いに干渉することなく隣接して複数設置することができる。
【0022】
以下、中空内部11のうち、平面視で上面開口12の内側の空間を「内側空間11a」、外側の空間を「外側空間11b」と呼ぶ。内側空間11aは、この例では中実の矩形柱形状であり、外側空間11bはこの例では肉厚の中空矩形柱形状である。
【0023】
中空構造10の外形寸法は、例えば幅2m、奥行き2m、高さ2.3mである。また、上面開口12の大きさは、例えば幅1.6m、奥行き1.6mの正方形である。さらに、外壁開口14の大きさは、例えば幅660mm、高さ570mmである。
以下、この図において、幅方向をX方向、奥行方向をY方向、高さ方向をZ方向と呼ぶ。また、X-XはX方向の中心軸、Y-YはY方向の中心軸、Mは平面視における中心であり、中心軸X-Xと中心軸Y-Yの交点である。
【0024】
図3は、中空構造10の内部構造を示すドローンポートシステム100の正面図であり、
図4は、
図3のA-A矢視面である。なお、図面の明瞭化のため、本体フレームの図示を省略している。
【0025】
図3と
図4において、本発明のドローンポートシステム100は、スライドルーフ20とランディングユニット30を備える。
スライドルーフ20とランディングユニット30、及び後述するセンタリング装置40と搬送装置60は、中空構造10の内部(すなわち中空内部11)に設置されている。
【0026】
スライドルーフ20は、中空構造10の中空内部11において上面開口12を基準線Lに対し対称に開閉可能に構成されている。基準線Lはこの例では、
図2のY-Y線である。
また、ランディングユニット30は、ドローン1が着陸する着陸面33を有し、着陸用の上昇高さH1とその下方の下降高さH3との間で着陸面33を昇降可能に構成されている。
なお、この例で、上昇高さH1と下降高さH3の中間に中間高さH2が設定されている。
【0027】
上昇高さH1は、中空構造10の上面高さであることが好ましい。この構成により、ドローン1が着陸する際にドローン1の着陸面33の周囲に干渉物が全くなく完全なフラットにでき、かつ中空構造10の上面(枠部分)も着陸用に用いることができる。
なお、上昇高さH1は、中空構造10の上面より上であっても、下であってもよい。
【0028】
この例で中間高さH2は、その上に荷物9を載せた状態で、スライドルーフ20を開閉できる高さに設定する。
例えば、この例で荷物9の大きさが、幅200mm、奥行き200mm、高さ200mmの箱形である場合、中間高さH2は、上面開口12に位置するスライドルーフ20(ルーフ板22の下面)より200mm+α(例えば10mm以上)の下方であるのがよい。
【0029】
この例で下降高さH3は、中間高さH2より下方に位置する。なおこの構成は必須ではなく、下降高さH3を中間高さH2と同じ高さに設定してもよい。
【0030】
(スライドルーフ20)
図5は、スライドルーフ20の上面図であり、
図6はスライドルーフ20の正面図である。
図5と
図6において、スライドルーフ20は、長方形の複数のルーフ板22とルーフ開閉装置26を有する。
複数(この例で4枚)のルーフ板22は、X方向に互いに隣接して上面開口12を水平に塞ぐ。
ルーフ板22は、全閉位置Cにおいて、上面開口12を水平に塞ぐ。また、ルーフ板22は、全開位置Oにおいて、上面開口12を全開する。なお、全開位置Oでは、
図6に細線で示すように、複数のルーフ板22は中空構造10の内壁に沿って鉛直に位置する。
【0031】
図5と
図6において、4枚のルーフ板22は、幅方向(X方向)の内側に位置するルーフ板22aと外側に位置するルーフ板22bとからなる。
ルーフ板22は、それぞれ複数のガイドローラ23を有する。複数のガイドローラ23は、ルーフ板22の上面開口12の奥行方向両端外側に設けられ奥行方向Yの水平軸を中心に自由に回転する。
この例で、上面開口12の中心軸Y-Y(基準線L)の左右に2枚ずつのルーフ板22a,22bが配置されている。2枚ずつのルーフ板22a,22bのY方向両端にはそれぞれ3つずつガイドローラ23が取り付けられている。また、3つのうち中央のガイドローラ23(23a)は、2枚ずつのルーフ板22a,22bの両方に取り付けられ、両者間を水平軸を中心に回転可能に連結している。
【0032】
ルーフ開閉装置26は、複数のルーフ板22を、全閉位置Cと全開位置Oとの間で移動させる。
図5、
図6において、ルーフ開閉装置26は、ガイドプレート27とルーフ駆動装置28を有する。
ガイドプレート27は、着陸面33の奥行方向両端外側に設けられ、ガイドローラ23を全閉位置Cと全開位置Oとの間で案内する。
【0033】
ルーフ駆動装置28は、上面開口12の外側(すなわち外側空間11b)に設けられ、全閉位置Cと全開位置Oとの間でルーフ板22を駆動する。
この例で、ルーフ駆動装置28は、複数のスプロケット28a、複数のエンドレスチェーン28b、及び連結軸28cを有する。
複数のスプロケット28aは、上面開口12のX方向外側に位置しY方向の水平軸を中心に回転可能に構成されている。
複数のエンドレスチェーン28bは、上面開口12の外側(すなわち外側空間11b)のY方向両側に設けられ、スプロケット28aで案内されてX方向に水平に延びる。
連結軸28cは、外側空間11bに位置し、Y方向両側のスプロケット28aを連結して同期させる。
【0034】
この例で、ルーフ駆動装置28は、さらに外側空間11bに位置する複数のスプロケット29a、複数のエンドレスチェーン29b、及びチェーン駆動装置29cを有する。
複数のスプロケット29aは、上面開口12のX方向外側に上下に間隔を隔てて位置しスプロケット28aの一部(
図6で左側)を回転可能に構成されている。
チェーン駆動装置29cは、上面開口12のX方向外側の下方に位置し、スプロケット29aとスプロケット28aを介して、エンドレスチェーン28bを駆動する。
【0035】
上述したルーフ駆動装置28の構成により、チェーン駆動装置29cにより、上下に間隔を隔てて水平に延びるエンドレスチェーン28bを互いに反対方向に水平移動させることができる。
【0036】
図5、
図6において、上面開口12の中心軸Y-Y(すなわち基準線L)に最も近い2枚のルーフ板22aは、基準線Lに最も近いガイドローラ23bを上下のエンドレスチェーン28bにそれぞれ連結するアタッチメント24を有する。
この構成により、チェーン駆動装置29cにより、上下のエンドレスチェーン28bを互いに反対方向に水平移動させ、アタッチメント24を介して基準線Lに最も近い2枚のルーフ板22aを互いに反対方向に同期して水平移動させることができる。
【0037】
上述したスライドルーフ20の構成により、中空内部11において上面開口12を開閉可能であり、かつ平面視で上面開口12に相当する上面開口12の下方を中空に維持することができる。
【0038】
また、中心軸Y-Y(基準線L)に最も近い2枚のルーフ板22aには、中心軸Y-Yの側に弾性のシール材(図示せず)が取り付けられており、全閉位置Cにおいてその間から雨水が流入しないようになっている。
スライドルーフ20のその他の箇所にも、雨水の流入を防ぐシール材が取り付けられている。
この構成により、スライドルーフ20の全閉位置Cにおいて、中空構造10の内部に雨水が流入するのを防ぐことができる。
【0039】
図3と
図4において、搬送装置60は、基準線上の荷物9を、着陸面33の下方に搬送する機能を有する。
搬送装置60は、この例では開閉扉装置53、扉駆動装置54、揺動駆動装置55、主コンベア装置62、保管装置64、補助コンベア装置65、及び外壁開閉装置70を備える。
【0040】
図3において、ランディングユニット30は、着陸台32、昇降支持台34、昇降ガイド36、及び昇降駆動ユニット38を有する。
【0041】
(着陸台32)
図7は、着陸台32の平面図である。着陸台32は、水平に配列されたフレーム32aと、その上面に水平に取り付けられた着陸板32bとからなる。
着陸台32は、平面視で上面開口12の内側(すなわち内側空間11a)に位置し、ドローン1が離着陸可能な大きさの着陸面33を有する。着陸面33は、着陸板32bの上面である。
【0042】
また、この図において、搬送装置60は、荷物用開口32cと開閉扉装置53を有する。
荷物用開口32cは、着陸面33の基準線上に位置し荷物9を上下方向に通す大きさを有する。荷物用開口32cの奥行方向長さは、中心軸Y-Y(基準線L)に沿って着陸台32の奥行方向長さ-β(βはフレーム32aの幅であり、例えば80mm以内)であることが好ましい。例えば荷物用開口32cの大きさは、例えば幅430mm、奥行き1400mmである。
荷物用開口32cには、開閉可能な荷物用扉51が設けられている。また荷物用扉51の上面は全閉時において、着陸面33と同一高さに設定されている。
開閉扉装置53は、着陸台32又は昇降支持台34に固定され、荷物用開口32cを開閉可能に構成されている。荷物用扉51の開閉構造は後述する。
【0043】
(昇降支持台34)
図8は、昇降支持台34の平面図である。
昇降支持台34は、着陸台32の下方に一定の間隔を隔てて固定され、四隅の耳部34aのみが上面開口12の外側(すなわち外側空間11b)に位置する。
後述するガイドバー36aの上端は、上面開口12の外側(外側空間11b)において昇降支持台34の四隅の耳部34aに固定されている。
また、昇降支持台34は、平面視で荷物用開口32cに相当する箇所にフレームがなく、荷物用開口32cから落下する荷物9がそのまま下方に素通りするようになっている。
【0044】
(着陸台32と昇降支持台34)
図9は、着陸台32と昇降支持台34を一体化した図であり、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は右側面図である。
【0045】
この図において、着陸台32と昇降支持台34は、外周部の複数(8つ)の連結金具35により一定の間隔を隔てて固定されている。
なお、本発明はこの構成に限定されず、着陸台32と昇降支持台34を一体の単一部材で構成してもよい。
【0046】
図9において、ガイドバー36aの上端が固定された昇降支持台34の四隅の耳部34aは、平面視で上面開口12の外側(外側空間11b)に位置する。
また、着陸台32と昇降支持台34は、平面視で上面開口12の内側(内側空間11a)に上面開口12の内縁から隙間を隔てて位置する。この隙間は、ドローン1の離着陸に支障のない限りで小さいことが好ましく、例えば5~20mmである。
【0047】
(昇降ガイド36)
図3において、昇降ガイド36は、複数(例えば4本)のガイドバー36aと複数(例えば4つ)のガイド板36bを有する。ガイドバー36aは、外側空間11bにおいて昇降支持台34の四隅の耳部34aに上端が固定され鉛直下方に延びる。ガイド板36bは、外側空間11bにおいて図示しない本体フレームに固定されガイドバー36aが嵌合する鉛直貫通穴を有する。
この昇降ガイド36の構成により、着陸面33を水平に保持した状態で着陸面33を上昇高さH1と下降高さH3との間で昇降可能に案内することができる。
【0048】
(昇降駆動ユニット38)
図3において、昇降駆動ユニット38は、例えばボールねじを電動機と減速機で回転駆動して取付盤38aを直線ガイドに沿って昇降させる電動リフタである。これにより、昇降駆動ユニット38は、取付盤38aに固定された連結金具38bを介して、昇降支持台34を水平を保持して昇降させるようになっている。
【0049】
(センタリング装置40)
図3と
図4において、ランディングユニット30は、さらに、着陸面33に載る荷物9を着陸面上の基準線上まで水平移動させるセンタリング装置40を有する。
【0050】
図10は、センタリング装置40の説明図であり、
図9(A)と同様の平面図である。
この図において、センタリング装置40は、1対の荷物寄せ部材42を有する。1対の荷物寄せ部材42は、着陸面33に近接し着陸面上の基準線Lに対し平行かつ水平に延び、着陸面33の外側と基準線Lの近傍との間で基準線Lに対し対称に水平移動する。
1対の荷物寄せ部材42の長さは、着陸台32の奥行方向長さより長いことが好ましい。また、センタリング装置40の作動時において、荷物寄せ部材42の着陸面33からの高さは、荷物9の重心より低い範囲で上下動してもよい。
また、荷物寄せ部材42は、この例では円管状部材である。円管状部材は、その軸心を中心に自由に回転できることが好ましいが、固定してもよい。
【0051】
この構成により、1対の荷物寄せ部材42を着陸面33の外側(図で左右外側)に位置決めすることで、荷物寄せ部材42と干渉せずに着陸面33を昇降させることができる。
また、1対の荷物寄せ部材42を着陸面33の外側から基準線Lの近傍まで中心に向けて互いに対称に水平移動することで、着陸面上の任意の位置に載る荷物9を基準線Lの上まで水平移動(センタリング)することができる。
【0052】
図11は、センタリング装置40の説明図であり、
図6と同様の正面図である。
この図において、センタリング装置40は、さらに、複数の吊下部材44を有する。
【0053】
複数の吊下部材44は、外側空間11bにおいて荷物寄せ部材42の両端部に下端44aが固定され、上方に延び、上端44bがスライドルーフ20の一部にY方向の水平軸を中心に回動可能に固定されている。この上端44bは、この例では、中心軸Y-Y(基準線L)に最も近いガイドローラ23と同軸に固定されている。
またこの例で、荷物寄せ部材42は、例えば直径20~40mmの円管状部材(中空管)であり、吊下部材44は、例えば金属製平板である。この構成により、吊下部材44により吊り下げられた荷物寄せ部材42がおもりとして機能し、上端44bを中心にX方向に振子のように自由に揺動するようになっている。
【0054】
上述した吊下部材44の上端44bは、スライドルーフ20の開閉と共にX方向に水平移動する。
従って、吊下部材44の上端44bは、スライドルーフ20の全開時に上面開口12の外側の外側空間11bに位置し、かつスライドルーフ20の全閉時に平面視で上面開口12の内側の内側空間11aにおいて基準線Lに対し対称位置に位置する。
なおセンタリング装置40の作動時に、着陸面33は、上昇高さH1と下降高さH3の中間の中間高さH2に位置する。
【0055】
上述したセンタリング装置40の構成により、スライドルーフ20の全開時に吊下部材44に吊り下げられた1対の荷物寄せ部材42を着陸面33の外側に位置決めして、荷物寄せ部材42と干渉せずに着陸面33を昇降することができる。
また、スライドルーフ20の全閉動作により、吊下部材44に吊り下げられた1対の荷物寄せ部材42が着陸面33の外側から基準線Lの近傍まで中心に向けて互いに対称に水平移動される。これにより、着陸面上の任意の位置に載る荷物9を基準線Lの上まで水平移動することができる。
【0056】
図12は、センタリング装置40の作動説明図であり、
図11と同様の正面図である。この図において、(A)は着陸面33が下降高さH3に位置し、(B)は着陸面33が中間高さH2に位置する。
この図において、センタリング装置40は、上面開口12の外側(外側空間11b)において上端が荷物寄せ部材42に固定され、下方に延びる制御アーム46を有する。制御アーム46は、例えば金属製平板であり、下端46aにY方向の水平軸を中心に自由に回転するローラを有することが好ましい。
また、ランディングユニット30は、着陸面33の外側かつ着陸面33より下方に固定されたガイド部材39a,39bを有する。またガイド部材39a,39bは、着陸面33の昇降時に制御アーム46の下端46aと接触する制御面を有する。
【0057】
この例で外側のガイド部材39aは、着陸面33の外側(外側空間11b)で制御アーム46の下端46aと接触するように固定され、内側のガイド部材39bは、基準線Lの近傍で制御アーム46の下端46aと接触するように固定されている。
【0058】
図12(A)(B)に示すように、外側のガイド部材39aの制御面は、着陸面33が下降高さH3から中間高さH2へ上昇する際に、制御アーム46の下端46aと接触して荷物寄せ部材42を着陸面33の外側(外側空間11b)に案内するように設定されている。
この構成により、荷物寄せ部材42が着陸面33の内側(内側空間11a)に入り、上昇する着陸面33と干渉するのを確実に防止することができる。
【0059】
また、
図12(A)(B)に示すように、内側のガイド部材39bの制御面は、着陸面33の中間高さH2において、基準線Lから荷物寄せ部材42までの最小水平距離XMを制限するように設定されている。最小水平距離XMは、荷物9の大きさに合わせて設定することが好ましい。
この構成により、基準線Lの近傍において、1対の荷物寄せ部材42を基準線Lに対し対称に位置決めすることができ、荷物寄せ部材42で挟まれた荷物9を正確に基準線上に位置決めすることができる。
【0060】
さらに、内側のガイド部材39bの制御面は、着陸面33が中間高さH2から下降高さH3へ下降する際に、荷物寄せ部材42を最小水平距離XMより外側に広げるように設定されている。
この構成により、着陸面33が中間高さH2から下降高さH3へ下降する際に、荷物9から荷物寄せ部材42を外側に離し、荷物9に作用する荷物寄せ部材42の抵抗を無くすことができる。
【0061】
(開閉扉装置53)
図13は、
図10のC-C断面図(A)とその部分上面図(B)である。
この図において、搬送装置60は、荷物用開口32cを開閉可能な開閉扉装置53を有する。
開閉扉装置53は、1対の荷物用扉51と扉駆動装置54とを有する。
1対の荷物用扉51は、隣接して水平に位置し、荷物用開口32cを全閉する。1対の荷物用扉51のX方向外端は、Y方向の回転軸51aを中心に回転可能に支持されている。
扉駆動装置54は、1対の荷物用扉51を回転軸51aを中心にそれぞれ下方に揺動(旋回)させる。扉駆動装置54は、この例では、1対の揺動駆動装置55からなる。
【0062】
上述した開閉扉装置53の構成により、荷物用開口32cを全閉した状態で、1対の荷物用扉51を下方に揺動(旋回)させて、荷物用開口32cを下方に開き、荷物用扉51の上に載る荷物9を下方に落下させることができる。
なお、1対の荷物用扉51の揺動は、同期させても、一方を先行し他方を少し遅らせてもよい。一方を先行させることで、荷物9の一辺を先行する荷物用扉51に沿わせて、Y-Y方向に整列することができる。
【0063】
(主コンベア装置62と保管装置64)
図3と
図4において、搬送装置60は、さらに荷物用開口32cの下方に位置し、荷物9を水平にY方向に搬送する主コンベア装置62と、荷物9をX方向に搬送し保管する保管装置64とを有する。
【0064】
図3において、搬送装置60は、コンベア装置62を昇降させる昇降駆動ユニット68を備える。昇降駆動ユニット68は、例えばボールねじを電動機と減速機で回転駆動して取付盤68aを直線ガイドに沿って昇降させる電動リフタであり、取付盤68aに固定された連結金具63を介して、コンベア装置62を昇降させるようになっている。
この構成により、コンベア装置62を荷物用開口32cの真下近くまで上昇させることで、荷物用開口32cから落下する荷物9の損傷を防止することができる。また、保管装置64と整合する高さ、及び外壁開口14と整合する高さにコンベア装置62を位置決めすることができる。
【0065】
また、搬送装置60は、主コンベア装置62と外壁扉72の中間部に固定された補助コンベア装置65を有している。補助コンベア装置65は、主コンベア装置62から荷物9を受け取り、外壁扉72の内側直前まで荷物9を搬送するようになっている。
この構成により、外壁扉72を全開した際に、荷物9に容易にアクセスでき、外部へ荷物9を取り出すことができる。
【0066】
なお、
図4に示すように、主コンベア装置62の図で左端に鉛直に延びる目隠し板66を設け、主コンベア装置62を上昇することで、外壁扉72を全開した時に目隠し板66により装置内部が目視できないようにすることが好ましい。
【0067】
図4において、保管装置64は、主コンベア装置62を介して荷物9を外壁開口14の反対側内側に保管するようになっている。
保管装置64は、例えば荷物9をY方向とX方向との間で方向転換させる直角方向転換機(図示せず)とこれに連続して設置されX方向に荷物9を搬送するコンベア装置(図示せず)とからなる。
この構成により、保管装置64に複数の荷物9を整列して保管することができる。
なお、保管装置64の上部に屋根を付けてもよい。この構成により、雨天時にドローン1が着陸する際に、荷物9が雨で濡れることを防止できる。
【0068】
(外壁開閉装置70)
図4において、搬送装置60は、さらに外壁開口14を開閉する外壁開閉装置70を備える。
外壁開閉装置70は、外壁開口14を中空構造10の内側から全閉する外壁扉72と、外壁扉72を中空構造10の内側から開閉駆動する開閉駆動装置74とを備える。
開閉駆動装置74は、外壁扉72を前面から後退させて上方にスライドさせるスライドガイド75と、外壁扉72を上下動させる上下駆動装置76とからなる。
この構成により、外壁扉72を中空構造10の内側から開閉駆動して、外壁開口14を開閉することができる。
なお、外壁開閉装置70は、外壁扉72を手動で開閉できるようにしてもよい。
【0069】
上述したドローンポートシステム100を用いた本発明の運転方法を以下に説明する。
【0070】
(待機状態)
待機状態では、
図2に示した中空構造10の上面の上面開口12は、ルーフ板22により全閉され、正面の外壁開口14は、外壁扉72により全閉されている。
従って、待機状態において、中空構造10の内部に保管されている荷物9に第3者が外部からアクセスすることができず、荷物9を安全に保管することができる。
また、待機状態において、スライドルーフ20に設けられたシール材により、中空構造10の内部に雨水が流入するのを防ぐことができる。
【0071】
(ドローン着陸時)
図14は、ドローン着陸時の運転方法の説明図である。この図において、(A)は、待機状態、(B)は着陸時を示している。
図14(A)の状態において、ドローン1が着陸する際、ドローン1が近づくとスライドルーフ20を全開させ、次いで着陸面33を上昇高さH1まで上昇させる。この状態で、上昇高さH1の着陸面33にドローン1が着陸する。
従って、ドローン着陸時において、
図14(B)に示すように、上面開口12の内側には着陸面33のみが露出しており、かつ着陸面33の高さは上昇高さH1(好ましくは、中空構造10の上面高さ)に位置している。そのためドローン1が着陸する着陸面33の周囲に干渉物が全くなく完全なフラットにでき、かつ中空構造10の上面(枠部分)も着陸用に用いることができる。
従って、天候等(例えば風)の影響でドローン1の着陸精度が低下しても、中空構造10の上面に容易に着陸できる。
【0072】
次いで、ドローン1が搬送した荷物9を着陸面33に残して離陸した後、着陸面33を中空構造内に下降させ、センタリング装置40により荷物9を着陸面33の基準線上まで水平移動させる。また、この水平移動の前又は水平移動と同時に、スライドルーフ20を全閉する。
なお、上述の構成により、スライドルーフ20の全閉動作により、これと連動して同時に荷物9を着陸面33の基準線上まで水平移動させることが好ましい。
【0073】
次いで、搬送装置60により基準線上の荷物9を、着陸面33の下方に搬送し主コンベア装置62に荷物9を移載して保管することで、ドローン1が搬送した荷物9を内部に安全に保管できる。
さらに、ドローンポートシステム100の管理者(又は使用者)は、例えばリモコンスイッチ又はドローンポートの操作パネルで、主コンベア装置62、保管装置64及び外壁開閉装置70を作動させて、内部に保管した荷物9をいつでも外部に取り出すことができる。
【0074】
図15は、中空構造10の別の実施形態を示す図であり、
図14と同様の図である。この図において、(A)は待機状態、(B)は着陸時を示している。
この図に示すように、上面開口12は円形であってもよい。
この場合、ランディングユニット30の着陸台32及び着陸面33を円形にすることで実現可能である。
スライドルーフ20、センタリング装置40、及び、搬送装置60は上述した構成をそのまま適用することができる。
【0075】
図16は、ドローンポートシステム100の第2実施形態を示す図である。
この図において、着陸面33は、上面の空気を下方に流す複数の排気開口33aを有する。
また中空構造10は、排気開口33aから下方に流出した空気流を外部に排気する外部排気口15を有する。着陸面33は、例えば、金網、パンチングメタル、格子板、又は連子板の上面である。
中空構造10の高さHは例えば約2.3mであり、外部排気口15は中空構造10の下端に複数設けられ、その隙間高さは、例えば20~100mmである。
その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0076】
上述した構成によれば、着陸面33が、上面の空気を下方に流す複数の排気開口33aを有しており、排気開口33aの大きさ及び位置を制限する部材(例えば、従来の開閉切替部)が無いので、着陸面33の開口率を大きく設定できる。
従って、ドローン1の回転翼により発生するダウンウォッシュ(空気の下降流)の大部分を着陸面33の下方へ流出(通過)させることができる。
【0077】
また、中空構造10の内部において、排気開口33aから下方に流出(通過)した空気流の向きが外部排気口15から水平方向外方にそらされるので、着陸面33による上方へのはね返りを防止することができる。
【0078】
本発明のドローンポートシステム100は、さらに制御装置80を備える。制御装置80は、ランディングユニット30、センタリング装置40、及び、搬送装置60を制御する。
制御装置80は、ドローン1が着陸面33に荷物9を置く場合に、ドローン1から認証情報を受信し、荷物9を着陸面上の基準線上まで水平移動させるようにセンタリング装置40を動作させる。
次いで、制御装置80は、中空内部11における複数の保管スペースに荷物9を搬送するように搬送装置60を制御し、保管スペースの位置を示す位置情報と認証情報とを互いに関連づけて保持する。
その後、制御装置80は、認証情報が入力された場合に、認証情報と、保持している認証情報とが一致するときに、認証情報と関連付けられた位置情報が示す位置の保管スペースの荷物9を外壁開口14へ搬送するように搬送装置60を制御する。
【0079】
また制御装置80は、保管スペースの荷物9を外壁開口14へ搬送する場合に、外壁開口14を開ける位置へ外壁扉72を動作させ又は外壁開口14を閉じている外壁扉72の施錠を解除する。
【0080】
上述したように本発明では、受取人から認証情報が制御装置80に入力された場合に、認証情報と、制御装置80が保持している認証情報とが一致するときに、以下を実施する。
第1に制御装置80は、認証情報と関連付けられた位置情報が示す位置の格納スペースの荷物9を外壁開口14へ搬送するように搬送装置60を制御する。また、第2に制御装置80は、外壁扉72の駆動装置(図示せず)を制御して外壁開口14を開ける位置へ外壁扉72を動作させる。
【0081】
このような認証情報の入力と、この入力による制御装置80の制御は、例えば次のように行われてよい。保管された荷物9の受取人は、暗証番号等の認証情報を、ドローンポートシステム100に設けた制御装置80に入力する。認証情報は、受取人に適宜の方法で通知される。例えば、認証情報は、ドローン1による荷物9の搬送を行う業者から荷物9の受取人に通知される。受取人は、携帯端末を操作することにより無線で、又は、ドローンポートシステム100の外部に設けた適宜の入力装置を操作することにより、又は、他の方法により、認証情報を制御装置80に入力する。
【0082】
制御装置80は、入力された認証情報と一致する認証情報を保持している場合には、認証情報に関連づけられた位置の格納スペースの荷物9を、取出し位置へ移動させる。次いで、制御装置80は、外壁開口14を閉じている外壁扉72の駆動装置を制御して外壁開口14を開ける位置へ動作させる。
【0083】
その後、受取人は、取出し位置の荷物9を、取出し位置から取り出して受け取る。
【0084】
なお、制御装置80は、外壁開口14を開ける位置へ外壁扉72を動作させ、荷物9を、外壁開口14を通過させて外部まで搬送してもよい。この場合、コンベア装置は、外壁開口14の外部にも配置されていてよく、受取人は、外壁開口14から出て来た荷物9を受け取る。
また、受取人は、手動で、外壁扉72を、外壁開口14を閉める位置から開ける位置へ動作させてもよい。この場合、制御装置80は、外壁開口14を閉める位置の外壁扉72の施錠を解除する。
【0085】
[気象値に基づいて着陸を禁止するための構成]
図17(A)は、制御装置80が、気象値に基づいて、ドローン1又はドローン1の管制装置85と通信するシステムの構成例1を示す。
【0086】
制御装置80は、気象値取得装置81と判定装置83を更に備える。気象値取得装置81は、中空構造10の位置に関する気象値を計測する。この気象値は、中空構造10の位置を含む局所エリアの気象値であってよい。
【0087】
気象値取得装置81は、例えば、風速計である。風速計81は、中空構造10の上面(上面の隅)に設けられてもよいし、他の位置に設けられてもよい。風速計81は、気象値としての風速を繰り返し計測する。
【0088】
判定装置83は、気象値取得装置81が計測により取得した気象値(例えば上述の風速)が許容範囲内であるかを判定する。この判定は、気象値が計測される度に行われてよい。この判定の結果が否定である場合には、判定装置83は、着陸面33へドローン1が着陸することを禁止する禁止信号を送信する。この時、判定装置83は、禁止信号を、例えば無線通信により、ドローン1へ、又はドローン1の管制装置85へ送信する。
【0089】
例えば、ドローン1は、着陸面33に荷物9を置くために、又は、飛行中に、その旨の信号を、例えば無線通信で判定装置83へ送信する。判定装置83は、この信号を受信した時、最新の上記判定の結果が否定である場合(例えば上記風速が10mを超える場合)には、この信号に対する返答として、そのドローン1に禁止信号を送信する。これにより、ドローン1は、着陸面33への飛行を中断する。
【0090】
別の例では、判定装置83は、上記判定の結果が否定となったら、管制装置85へ禁止信号を送信する。管制装置85は、禁止信号を受けたら、着陸面33への飛行を中断させる信号を、該当するドローン1に無線通信で送信する。これにより、ドローン1は、着陸面33への飛行を中断する。
【0091】
なお、上述の気象値は、風速に限定されず、他の気象値(例えば降雨量、降雪量など)であってもよい。この場合、当該他の気象値を計測する気象値取得装置81が設けられ、他の点は上述と同じであってよい。
【0092】
図17(B)は、制御装置80が、気象値に基づいて、ドローン1又はドローン1の管制装置85と通信するシステムの構成例2を示す。構成例2では、気象値取得装置81は、最新の気象値を、気象データ元87(例えば気象観測機関又は気象データ管理機関)から、例えば無線通信により繰り返し受信する。判定装置83は、気象値取得装置81が受信により取得した気象値が許容範囲内であるかを判定する。この判定は、気象値が受信される度に行われてよい。この判定の結果が否定である場合には、判定装置83は、上述の禁止信号を送信する。他の点は、上述の構成例1と同じであるので、その説明を省略する。
【0093】
上述の実施形態において、ドローンポートシステム100は、荷物9が保管される内部空間Sの温度を調節する温度調節装置(図示せず)を備えていてもよい。温度調節装置は、広く用いられている圧縮式のものであってもよいし、他の形式のものであってもよい。温度調節装置は、冷却機能と暖房機能の一方または両方を有していてよい。
【0094】
荷物9が、冷蔵を要する荷物(例えば生鮮食品)である場合には、上記温度調節装置は、冷却機能により、内部空間の温度を冷蔵に適した温度範囲内に調節する。荷物9が、冷凍を要する荷物(例えば食品)である場合には、上記温度調節装置は、冷却機能により、内部空間Sの温度を冷凍に適した温度範囲内に調節する。
【0095】
温度調節装置は、寒冷地や冬場において、暖房機能により、内部空間Sを温めることにより(例えば、内部空間Sの温度を20℃以上の温度に暖めることにより)、荷物9とともにドローンのバッテリーを温める。これにより、低温環境によるバッテリーの能力低下を防止できる。
【0096】
上述した本発明の実施形態によれば、スライドルーフ20、ランディングユニット30、センタリング装置40、及び、搬送装置60が中空内部11に設置されている。この構成により、中空構造10の外側に張り出す部分がなく、中空構造10を互いに干渉することなく隣接して複数設置することができる。
【0097】
また、ランディングユニット30が、上昇高さH1と下降高さH3との間で着陸面33を昇降可能に構成されているので、着陸面33を上昇高さH1(例えば中空構造10の上面高さ)まで上昇させることで、着陸面33にドローン1が着陸できる。これにより、ドローン1の着陸面33に干渉物がなくフラットにできる。
【0098】
また、センタリング装置40を備えるので、ドローン1が搬送した荷物9の位置がランダムに変動しても、センタリング装置40により荷物9を着陸面33の基準線上(例えば中心線上)まで水平移動させることができる。
さらに、基準線上の荷物9を、着陸面33の下方に搬送し保管する搬送装置60を備えるので、ドローン1が搬送した荷物9を定位置に搬送して保管でき、かつ保管する荷物9を風雨及び第3者から安全に保管することができる。
また、上述した排気開口33aと外部排気口15を設けることで、着陸面33によるダウンウォッシュのはね返りを大幅に低減することができる。
【0099】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0100】
C 全閉位置、H1 上昇高さ、H2 中間高さ、H3 下降高さ、
L 基準線、M 中心、O 全開位置、X 幅方向、XM 最小水平距離、
Y 奥行方向、Z 高さ方向、1 ドローン、9 荷物、
10 中空構造、11 中空内部、11a 内側空間、
11b 外側空間、12 上面開口、14 外壁開口、
20 スライドルーフ、22,22a,22b ルーフ板、
23,23a,23b ガイドローラ、24 アタッチメント、
26 ルーフ開閉装置、27 ガイドプレート、
28 ルーフ駆動装置、28a スプロケット、
28b エンドレスチェーン、28c 連結軸、
29a スプロケット、29b エンドレスチェーン、
29c チェーン駆動装置、30 ランディングユニット、
32 着陸台、32a フレーム、32b 着陸板、
32c 荷物用開口、33 着陸面、33a 排気開口、
34 昇降支持台、34a 耳部、35 連結金具、
36 昇降ガイド、36a ガイドバー、36b ガイド板、
38 昇降駆動ユニット、38a 取付盤、38b 連結金具、
40 センタリング装置、42 荷物寄せ部材、44 吊下部材、
46 制御アーム、46a 下端、48 水平駆動装置、
48a 直線ガイド、48b ボールねじ駆動装置、
51 荷物用扉、51a 回転軸、53 開閉扉装置、
54 扉駆動装置、55 揺動駆動装置、60 搬送装置、
62 コンベア装置、63 連結金具、64 保管装置、
65 補助コンベア装置、66 目隠し板、
68 昇降駆動ユニット、68a 取付盤、
70 外壁開閉装置、72 外壁扉、74 開閉駆動装置、
80 制御装置、81 気象値取得装置(風速計)、
83 判定装置、85 管制装置、87 気象データ元、
100 ドローンポートシステム