(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129120
(43)【公開日】2024-09-26
(54)【発明の名称】流路の高温ガスから根元を保護するための改善されたタービン及びブレード
(51)【国際特許分類】
F01D 11/04 20060101AFI20240918BHJP
F01D 5/06 20060101ALI20240918BHJP
F01D 9/04 20060101ALI20240918BHJP
F02C 7/28 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
F01D11/04
F01D5/06
F01D9/04
F02C7/28 Z
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024107829
(22)【出願日】2024-07-04
(62)【分割の表示】P 2022550225の分割
【原出願日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】102020000004585
(32)【優先日】2020-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】517029381
【氏名又は名称】ヌオーヴォ・ピニォーネ・テクノロジー・ソチエタ・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】Nuovo Pignone Tecnologie S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディ シスト、パオロ
(72)【発明者】
【氏名】トナレッリ、レオナルド
(72)【発明者】
【氏名】クベーダ、シモーネ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】低圧ガスタービンからホイールスペースへと通過する高温ガス流路のガスの吸い込みを低減させる。
【解決手段】タービン14、特に低圧タービンが開示され、このタービンは、複数のロータ部材2と、ロータ部材の間に配置されて、高温ガス流路チャネルFからの吸い込まれたガス流がホイールスペースに到達することを回避するためのスペーサ7と、を備える。ロータ部材は、各々が偏向器8を含む。偏向器は、各スペーサに対応して配設され、ロータ部材によってホイールスペースからポンプ圧送されたパージ空気Pを偏向させて、吸い込まれたガス流がブレード4の根元を加熱することを阻止する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン(14)であって、
高温ガス流路チャネル(F)に流れ込む高温燃焼ガスの膨張により回転するように構成された複数のロータ部材(2)であって、各ロータ部材(2)が、ロータホイール(3)を備え、ホイールスペース(5)が、2つの隣接したロータ部材(2)の2つのロータホイール(3)の間に個別化されている、複数のロータ部材(2)と、
2つの対向するロータ部材(2)の間に配置され、かつ前記高温ガス流路チャネル(F)からの吸い込まれたガス流(F’)が前記ホイールスペース(5)に到達することを回避するように構成された保護スペーサ(7)と、
各々が2つの隣接したロータ部材(2)の間に配置された複数のステータスペーサ(6)であって、
チャネル(74)が、各保護スペーサ(7)と対応するステータスペーサ(6)との間に区切られている、複数のステータスペーサ(6)と、を備え、
少なくとも1つのロータ部材(2)が、前記ロータ部材(2)によって前記ホイールスペース(5)からポンプ圧送されたパージ空気(P)を前記チャネル(74)に偏向させるように構成された偏向器(8)を備えることを特徴とし、
前記チャネル(74)が、前記偏向器(8)によって偏向された前記ガスの圧力よりも低い圧力である、タービン(14)。
【請求項2】
前記偏向器が、前記保護スペーサ(7)に対応して配置されている、請求項1に記載のタービン(14)。
【請求項3】
各ロータホイール(3)が、外側リム(31)を有し、
前記偏向器(8)が、前記ロータホイール(3)の前記外側リム(31)に配置されている、請求項1又は2のいずれか一項に記載のタービン(14)。
【請求項4】
前記偏向器(8)が、前記保護スペーサ(7)とロータホイール(3)との間のギャップ(73)の一部を覆っている、請求項1~3のいずれか一項に記載のタービン(14)。
【請求項5】
各ロータ部材(2)が、
回転軸の周りを回転するように構成されたロータホイール(3)であって、外側リム(31)及び前記ロータホイール(3)の外側リム(31)の周りに円周方向に離間された複数の溝(32)を有する、ロータホイール(3)と、
複数のブレード(4)であって、各ブレード(4)が、シャンク(42)と、シャンク(42)に結合され、前記ロータホイール(3)の1つの対応する溝(42)と嵌合するように設計された根元(41)と、前記高温ガス流路(F)を捉えることによって前記ロータ部材(2)を回転させるためのエアフォイル(43)と、を備える、複数のブレード(4)と、を備え、
前記偏向器(8)が、前記シャンク(42)に配置され、
前記偏向器(8)が、前記保護スペーサ(7)と前記ロータホイール(3)との間の前記ギャップ(73)の一部を覆っている、請求項1又は2のいずれか一項に記載のタービン(14)。
【請求項6】
前記偏向器(8)が、前記吸い込まれたガス流(F’)の方向を反転させるように構成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載のタービン(14)。
【請求項7】
前記偏向器(8)が、吸い込まれたガス流(F’)の方向を前記シャンク(42)の上面へと反転させるように構成されている、請求項5に記載のタービン(14)。
【請求項8】
前記偏向器(8)が、前記吸い込まれたガス流(F’)の方向を反転させるために偏向させるように構成された上面(81)を有する、請求項6又は7に記載のタービン(14)。
【請求項9】
前記タービン(14)がベース負荷条件で動作しているときに、前記偏向器(8)は、パージ空気(P)が径方向に向かって流れて前記高温ガス流路チャネル(F)に到達して、前記高温ガスの吸い込みを阻止することを可能にする、請求項1~8のいずれか一項に記載のタービン(14)。
【請求項10】
ホイールスペース(5)が、2つの隣接したロータホイール(3)の間に画定され、
パージ空気(P)が、前記タービン(14)内に導入され、前記パージ空気(P)が、前記ホイールスペース(5)を通過して前記高温ガス流路チャネル(F)に到達し、
前記偏向器(8)が、前記ホイールスペース(5)から来る前記パージ空気の一部(P’)を、前記チャネル(74)における圧力との違いによって動かし、前記パージ空気(P)の別の一部(P’’)を、前記高温燃焼ガスが流れる前記高温ガス流路チャネル(F)の中へ流れるように動かすように構成された下面(82)を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のタービン(14)。
【請求項11】
前記ステータスペーサ(6)と前記保護スペーサ(7)との間にラビリンスシール(72)が介在している、請求項1~10のいずれか一項に記載のタービン(14)。
【請求項12】
前記偏向器(8)が、前記シャンク(42)と一体である、請求項5~11のいずれか一項に記載のタービン(14)。
【請求項13】
前記タービンが、低圧タービン(14)である、請求項1~12のいずれか一項に記載のタービン。
【請求項14】
ブレード(4)であって、シャンク(42)と、前記シャンク(42)に結合された根元(41)と、高温ガス流路を捉えるように構成されたエアフォイル(43)と、を備え、
前記ブレード(4)が、偏向器(8)を備えることを特徴とする、ブレード(4)。
【請求項15】
シャンク(42)と、前記シャンク(42)に結合され、ロータホイール(3)の1つの対応する溝(42)と嵌合するように設計された根元(41)と、前記高温ガスを捉えることによって前記ロータ部材(2)を回転させるためのエアフォイル(43)と、を備え、
前記偏向器(8)が、保護スペーサ(7)スペーサと前記ロータホイール(3)との間のギャップを覆っている、請求項14に記載のブレード(4)。
【請求項16】
前記偏向器(8)が、前記高温ガス流路(F)からの起こり得るガスの吸い込みを偏向させるように構成された上面(81)を有する、請求項14又は15のいずれか一項に記載のブレード(4)。
【請求項17】
前記偏向器(8)は、前記高温燃焼ガスが流れる前記高温ガス流路チャネル(F)にパージ空気(P)が流れ込むことを可能にするように構成された下面(82)を有する、請求項14~16のいずれか一項に記載のブレード(4)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、動作中に高温ガスをホイールスペース内に吸い込むことからロータアセンブリのホイールのリムを保護することができるガスタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
よく知られているように、ガスタービンは、エネルギー変換プラントであり、通常、とりわけ、ガスを引き込んで圧縮するための圧縮機と、燃料を加えて圧縮空気を加熱するための燃焼器(又はバーナ)と、複数のロータアセンブリを備え、高温ガス流路から出力を抽出して圧縮機を駆動するための高圧タービンと、同じく複数のロータアセンブリを備え、負荷に機械的に接続された低圧タービンと、を備える。
【0003】
特に低圧タービン設計では、通常、高温ガス流路からのガスの吸い込みを低減させるための予防措置がとられており、このガスの吸い込みは、ホイール及びスペーサのような非高温ガス構成要素に悪影響を及ぼし得る。高温ガス流路からのガス吸い込みの現象は、エンジンが部分負荷で動作するときに起こり得る。
【0004】
より具体的には、上述した典型的な低圧タービンは、複数のロータ部材を備え、これらのロータ部材は、各々、リムを有するロータホイールを有し、ロータホイールに複数のブレードが結合されている。
【0005】
各ブレードは、ロータホイールのリム上に得られた1つの対応する溝と嵌合するように設計された雄型形状ダブテール又は根元を備える。ホイールは、通常は、ブレードよりも卑な材料で作製される。
【0006】
2つの隣接して対向するロータホイールの間で、ホイールスペースが2つのロータ部材の2つのロータホイールの間に個別化されている。
【0007】
高温ガス流路からのガス吸い込みの現象は、通常、高温ガスの一部がホイールスペースに流れ込んだときに起こり、結果として、ホイールリムがそれらの材料温度限界を超えて、又は温度限界付近で動作させられ、これにより、卑な材料で作製されているホイールリムは、損傷を受け、ホイールの耐用年数が低減する場合がある。これは、この現象が、ホイールのダブテールの破損(例えば、大きな変形)及びその結果のブレードの離脱の原因になり得ることを意味する。
【0008】
上記に加えて、ホイールスペースは、通常、パージされる。このために、ガスタービンは、圧縮機から来るパージ空気を低圧タービンに提供するための配管システムを装備している。具体的には、パージ空気は、低圧タービンのホイールスペースの中へ導入される。これは、ホイールスペースの全体的な温度をある程度低下させる。
【0009】
高温ガスの吸い込みは、通常、パージ空気の量が、ホイールによってポンプ圧送される空気量以上であるときに阻止される。空気量よりも少ない場合、パージシステムによって提供されない分を、ポンプ効果が、ホイールの遠くで吸い込まれてホイールの近くで排出される高温ガス空気で補償する(再循環)。再循環は、エンジンが低出力で動作し、その後に圧縮機がより少ないパージ空気を低圧タービンに提供するが、低圧タービンが依然としてその高速度度で動作し得るときに起こり得る。
【0010】
低圧ガスタービンからホイールスペースへと通過する高温ガス流路のガスの吸い込みを低減させるために、最新技術では、いくつかの解決策を利用することができる。
【0011】
具体的には、スペーサがホイールの間に加えられ得、これらのスペーサは、ホイールによって覆われていない空間を軸方向に覆うリムを有し得、これらのスペーサリムはまた、ホイールスペースキャビティの上側のホイールリムの部分を最小にするために、ホイールの同じ外径まで半径方向にも延在し得る。スペーサは、高温ガスの吸い込みに対する物理的バリアを実現するが、通常、スペーサは隣接するホイールのリムと接触しておらず、したがって、高温ガスがギャップの内側に流れて、ホイールスペースに到達し得る。スペーサは、スペーサリムを円錐形に成形することによってホイールが異なる外径を有する場合であっても、隣接したホイールを保護し得る。
【0012】
したがって、本技術では、高温ガス流路からのあらゆる起こり得るガスの吸い込みを低減することができる、改善されたタービン及びブレードが歓迎される。
【発明の概要】
【0013】
上述したスペーサの改善は、高温ガス経路近くのホイールスペースシーリングを押すことができる、近流路シール(near seal flow path、NFPS)の提供である。NFPSは、ホイールキャビティの内側だけでなくラボシールを通しても起こり得る高温ガスの吸い込みからホイールリムをより良好に保護するために、より従来的なスペーサを置き換えている。構造的観点から、NFPSは、セグメント(すなわちアーム部材)であり、リングではなく(スペーサが行うような)、したがって、隣接したロータ部材間に漏れをもたらす。その上、NPFSは、内部支持ロータホイールに係合させるために、多重接続システムを必要とし、必然的に解決策の複雑さを増加させる。NFPSは、実際には、従来のスペーサと比較して小さい構成要素であり、したがって、より貴な材料で作製され得る。
【0014】
しかしながら、最近では、ガスタービンの出力及び効率を高めるために、高温ガス流路の温度が高くなっている。このために、圧縮機からのパージ空気の流れも低下し、高温ガス流路からガスを吸い込む危険性が増している。
【0015】
また、低圧タービンが低速で回転するとき、高温ガス流路はより低い速度ではより少ない膨張を有し、1つの段から別の段へ、又は1つのロータアセンブから別のロータアセンブリへ通過するので、高温ガス流路では、圧力の違いの低下が比例的に起きる。同時に、上述のように、低圧タービンが低速で回転するとき、ポンピング効果が低下する。
【0016】
最後に、ホイールスペースの温度は、通常、適切な熱電対によって監視される。しかしながら、タービンの以前からのより小さいレイアウトにより、熱電対の設置がはるかにより複雑になり、その結果、熱電対の信頼性がより低くなる。更に、スペーサ又は任意の他の機械的バリアが2つのロータアセンブリの間に配置される場合、熱電対の設置が複雑になる。よって、設置される熱電対の数が低減される傾向があり、これは、ホイールリムの温度上昇及びそれらの起こり得る劣化の危険性の制御を低下させる。
【0017】
したがって、一態様では、本明細書に開示される主題は、複数のロータ部材を備え、高温ガス流路チャネルに流れ込む高温燃焼ガスの膨張により回転するタービンを対象とする。各ロータ部材は、ロータホイールを備えている。2つの隣接したロータホイールの間には、ホイールスペースが個別化されている。また、各ロータ部材は、2つの対向するロータ部材の間に配置され、吸い込まれたガス流が高温ガス流路チャネルからホイールスペースに到達することを回避するように構成された保護スペーサを有する。また、タービンは、ステータスペーサを有する。各ステータスペーサと関連する保護スペーサとの間には、チャネルが区切られている。ロータ部材はまた、ロータ部材によってホイールスペースからポンプ圧送されたパージ空気をチャネルに偏向させるように構成され、圧力が、偏向器によって偏向されるガスの圧力よりも低い、偏向器も備える。
【0018】
別の態様では、本明細書に開示される主題は、偏向器が、各ブレードのシャンクに配置されていることに関する。
【0019】
別の態様では、本明細書に開示される主題は、偏向器が、ブレードのロータホイールのリムに配置され、スペーサとホイールとの間のギャップを覆うことができることに関する。
【0020】
別の態様では、本明細書は、高温ガス流路チャネルからの起こり得るガスの吸い込みを、スペーサの上面に向けて偏向させるように構成された上面を有する偏向器が開示される。
【0021】
別の態様では、本明細書は、偏向器を開示し、偏向器は、吸い込まれたガス流をシャンクの上面へと方向転換させるように構成され、一方で、偏向器は、タービンがベース負荷条件で動作しているときに、パージ空気ガスが、径方向に向かって流れて高温ガス流路チャネルに到達して、高温ガスの吸い込みを阻止することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明の開示の実施形態とそれに付随する利点の多くは、添付図面に関連して考えながら以下の発明を実施するための形態を参照することによって、理解が深まるにつれてすぐにより完全に分かるようになるであろう。
【
図3】第1の実施形態による低出力タービンの部分断面図を例示する。
【
図4】第1の実施形態による低出力タービンセクションの断面図を例示し、通常動作条件でのパージ空気の流れを示す。
【
図5】
図4の低出力タービンの断面図を例示し、低いガスの吸い込みを示す。
【
図6】いわゆるベース負荷条件でのパージ流を伴う、
図4の低出力タービンの断面図を例示する。
【
図7】第2の実施形態による低出力タービンの部分断面図を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
ガスタービンの改善点が発見された。ガスタービンは、多数の部品、とりわけ、低圧タービンを有する。そのような低圧タービンは、中央ハブから放射状に広がっている多数のブレードで形成され、エンジンを通して空気を移動させるように角度付けされている。ガスタービンのいくつかの領域は、非常に高温である。他の領域は、より低温である。既知の問題は、ブレードによって移動される高温ガスの一部が、特定の条件に向かって、中央ハブに向かって流れ、したがって、損傷を生じさせて、タービンの耐用年数を低減させ得ることである。
【0024】
発明者らは、各ブレードのシャンクに対応し、かつブレード自体と2つの隣接したホイールの間に配置されたスペーサとの間に介在する新しい偏向器要素を配置することによって、この問題が軽減及び/又は対処され得ることを発見した。偏向器は、パージ空気を、2つの隣接したロータ部材間の低圧チャネル74に向けて、特にスペーサの上面に向けて偏向させて、続いて、起こり得る高温ガスの吸い込みを上へ偏向させるように成形されている。このようにして、偏向器は、タービン内部の部品を保護し、その中の温度の平均上昇を阻止する。
【0025】
図1は、全体的に参照番号1で示されるガスタービンを概略的に例示する。ガスタービン1は、とりわけ、燃料を加えて圧縮空気を加熱するための燃焼室又はバーナ(図示せず)に供給されるガスを引き込んで圧縮するための圧縮機11と、複数のロータアセンブリを備え、高温ガス流路から出力を抽出して、圧縮機11を駆動するための高圧タービン12と、圧縮機11及び高圧タービン12を接続しているシャフト13と、同じく複数のロータアセンブリを備え、更なるシャフト15によって、例えば、ギアボックス及び遠心圧縮機、又は任意の他の負荷を駆動するための低圧タービン14と、を含む。
【0026】
加えて、ガスタービン1は、パージ空気を低圧タービン14に提供するためのパージシステム16を含む。パージシステムは、概して、接続管162によって冷却器163に接続された抽気抽出161を備え、次に冷却器が、パージ管164によって低圧タービン14に接続されて、ロータアセンブリ間のホイールスペース(以下を参照されたい)をパージする。これは、ホイールスペースの全体的な温度をある程度低下させる効果及び機能を有する。
【0027】
ここで
図2及び
図3も参照すると、低圧タービン14は、通常、本明細書では参照番号2で示され、回転軸Rの周りを回転し、シャフト15と結合されている複数のロータ部材を備えている。
【0028】
より具体的には、各ロータ部材2は、シャフト15に結合され、リム31と、リム31の周りの、複数の円周方向に離間された雌型ダブテール形状のスロット又は溝32と、を有する、ロータホイール3を備えている。本実施形態では、各溝32は、モミの木形状を有する。しかしながら、いくつかの実施形態では、溝は、異なる形状を有することができる。
【0029】
各ロータ部材2はまた、複数のブレード4も備え、次に各ブレードは、挿入方向に沿って、ロータホイール31の1つの対応する溝32と嵌合するように設計された雄型形状のダブテール又は根元41を備えている。したがって、各根元41は、対応する溝32とほぼ同じ形状を有する。
【0030】
ブレード4の根元41は、ブレード4をロータホイール3に、特にロータホイール31の溝32に強固に結合するための機械的な機能だけを有する。
【0031】
各ブレード4はまた、根元41が接続されるプラットフォーム又はシャンク42と、シャンク42に結合されたエアフォイル43と、を備えている。エアフォイル43は、著しい熱及び機械的応力を受けるので、エアフォイル43は、貴な材料で作製される。エアフォイル43の頂部には、各ブレード4を近傍のものに接続するためのエアフォイルシュラウド44も存在している。
【0032】
上述のように、2つの隣接して対向するロータホイールの間には、ホイールスペース5が個別化されて2つのロータ部材2の2つのロータホイール3の間にある。
【0033】
図3はまた、2つのロータ部材2の間に介在している、タービン14のステータ(図示せず)のステータスペーサ6と、ノズル6’も例示する。
【0034】
高温ガス流路は、矢印Fで示され、当然ながらブレード4のエアフォイル43を通過する、高温ガス流路チャネルを流れる。
【0035】
2つの隣接したロータホイール3の間には、高温ガス流路チャネルFからホイールスペース5へのガスの吸い込みを阻止するためのバリアを実現する機能を有する保護スペーサ7が配置されており、ガスの吸い込みは、ホイールスペース5の上側の温度を上昇させ、その結果、ブレード4の根元41の温度を上昇させ得る。上述のように、根元41への過剰な熱応力は、根元の動作に悪影響をもたらす。この実施形態では、保護スペーサ7は、円錐形である。しかしながら、いくつかの実施形態では、保護スペーサ7は、円筒形とすることができ、又は他の形状を有することができ、常時、ホイールスペース5を画定し、ホイールスペース5の保護を生じさせる機能を有する。また、ステータスペーサ6に面する各スペーサ7の上面71には、スペーサ7とステータスペーサ6との間のギャップを通した高温の吸い込みを阻止するために必要とされるパージ流Pの量を最小にするためのラビリンスシール72が存在する(典型的には、ダイヤフラムと呼ばれる)。
【0036】
図3を更に参照すると、矢印Pは、パージシステム16から来るパージ空気経路を示す。パージ空気は、ホイールスペース5の温度を低下させることに加えて、パージ空気の圧力によって、高温ガス流路チャネルFからのガスの注入に対する圧力バリアを生じさせる機能を有する。各ブレード4のシャンク42は、偏向器8を有し、偏向器は、各ブレード4のシャンク42上に得られ、保護スペーサ7に、特にその縁部に対応して配置されて、各保護スペーサ7とロータ部材2との間の、特に、
図3の実施形態を参照すると、保護スペーサ7とロータホイール3のリム31との間のギャップ73を覆うように配置されている。
【0037】
チャネル74は、偏向器8によって偏向されたガスの圧力よりも低い圧力である。より具体的には、チャネル74に沿った圧力は、高温ガス流路チャネルFの方向に沿って低くなる。実際に、いくつかの隣接したロータ部材を考慮した分野では、高温ガス流路チャネルFの上流のロータ部材2は、前方ロータ部材と呼ばれ、そのような前方ロータ部材2を取り囲むパージ空気又はガスは、後方ロト(roto)部材と呼ばれる後続のものよりも高い圧力を有し、次いで、偏向器が、前方ロータ部材2に配置され、必然的にチャネル74よりも高い圧力を有する。
【0038】
換言すれば、いくつかの実施形態では、実際にはリング形状である偏向器8は、保護スペーサ7とロータホイール3との間のギャップを閉じるために、偏向器に対応するように、保護スペーサ7の縁部の前方に面した突出縁部を有する。実際には、保護スペーサ7もリング形状であり、縁部がロータホイール3に面している。偏向器8の表面は、下でより良好に説明されるように高温ガスを偏向することができるようなものである。
【0039】
図3に示される実施形態では、及び特に同じ図に示される拡大窓を参照すると、偏向器8は、起こり得るガのス吸い込みを、高温ガス流路チャネルFから
図5に示される主流れ経路へ戻すように偏向させることを意図した上面81と、ホイールスペース5から来るパージ空気又はガスが、各保護スペーサ7とロータ部材2との間のギャップ73を通過することを可能にすることを意図した下面82と、を有するように成形されている。
【0040】
いくつかの実施形態では、偏向器8は、異なる位置に配置することができ、より具体的には、リム31にほぼ対応して、ロータホイール3上に得られ得る(下で解説される
図7を参照されたい)。
【0041】
概して、保護スペーサ7の機械的バリアを乗り越えることができるように、例えば、ホイールスペーサ5からのパージ空気圧力Pが、概して、高温ガスがホイールスペース5に進入することを阻止するのに十分でないときにはいつでも、偏向器8が、任意の起こり得るガスの吸い込みを高温ガス流路チャネルFから偏向させることができることが必要である。
【0042】
低圧タービン14及び偏向器8は、以下のように動作する。
【0043】
低圧タービン14が動作してロータ部材2が回転すると、圧縮機163から来てパージ管164によって搬送されるパージ空気Pがホイールスペース5を冷却する。同時に、保護スペーサ7によって実現されるバリアとともに、低圧タービン14の、すなわちロータ部材2の回転速度によるポンピング効果の複合効果は、高温ガス流路チャネルFからホイールスペース5へのガスの吸い込みを阻止する。また、任意の起こり得るガスの吸い込みは、局所的であっても、偏向器8の作用によって更に阻止され、偏向器は、一方では、保護スペーサ7に対応して配置され、起こり得る局所的なガスの吸い込みを、第1の表面81によって高温ガス流路チャネルFから偏向させ、他方では、パージ空気Pがギャップ73を通過することも可能にする。局所的なガスの吸い込みは、高温ガス流路チャネルF内の高温ガス流れによって生じる圧力場が必ずしも円周方向に均一ではないという事実によっても起こり得る。偏向器8を参照すると、保護スペーサ7に対応して配置されていることは、いくつかの実施形態では、高温ガスをブレード4のシャンク42に向けて偏向させて上方へ戻すことができることを意味する。
【0044】
偏向器の動作は、低圧ガスタービン14の回転速度が低下した場合に、例えば、低圧ガスタービン14がその公称動作速度の50%で動作しているときに、特定の影響を及ぼす。この場合、ポンピング効果の保護作用は、速度の低下に比例して低下する。
【0045】
特に、偏向器8の動作をより良好に説明するために、
図4、
図5、及び
図6は、低圧タービン14のいくつかの動作状態を例示する。
図4では、パージ空気Pの典型的な流路が見られ、いかなるガスの吸い込みも予測されない。この場合、圧縮機11から来るパージ空気Pは、ホイールスペース5を通過して、高温ガス流路チャネルFに到達し、ホイールスペース5を高温ガスの高温から保護する。この動作条件では、要素8は、保護スペーサ7を覆っていないので、偏向器として動作しない。むしろ、ギャップ73を低減させる要素である。
【0046】
以下、
図5を参照すると、ガスタービンの低出力動作の場合のガスの吸い込み現象の阻止が例示されている。この場合、高温ガス流路チャネルFの高温ガスの一部(矢印F’を参照されたい)は、保護スペーサ7、特に、チャネル74、上面71、及びラビリンスシール72に到達しない。実際には、偏向器8は、ロータ部材2によってホイールスペース5からポンプ圧送されたパージ空気Pを偏向させる。パージ空気Pは、偏向器8によってチャネル74に偏向されて、チャネル74がパージ空気Pよりも低い圧力であるので、チャネル自体によって吸い込まれる。
【0047】
また、ガス吸い込み流Fは、偏向器8の上面81の形状のおかげで、半径方向上方へ方向転換させられる。換言すれば、偏向器8は、吸い込まれたガス流F’の方向を反転させる。特に、吸い込まれたガス流F’は、シャンク42の上面へと方向転換させられる。この場合、ホイールスペース5のガスの吸い込みは、偏向器8によって、並びに特に圧縮機163から来るパージ空気Pのいずれかによって阻止される。偏向器8はまた、高温ガス流路チャネルFの高温ガス流から来る起こり得る高温の吸い込まれたガスF’がホイールスペース5内に漏れることによってリム31を加温し得ることを防止することを支援する。
【0048】
図6では、ガスタービン1がベース負荷条件で動作する場合の、すなわちロータ部材2が公称速度で回転する場合の偏向器8の動作が示されている。
図6に例示されるように、ホイールスペース5から来るパージ空気Pは、2つの流れ、P’及びP’’に分かれ、一方(P’)は、偏向器8、具体的には、下面82によって、チャネル74における圧力との違い(チャネル74に沿った圧力はパージガスPの圧力よりも低い)によって動かされ、一方で、パージ空気Pが分けられる他方の流れP’’は、ポンピング効果によってエアフォイル43に向けて動かされる。分かるように、この場合、偏向器8は、ロータ部材2のポンピング効果を妨げず、パージ空気Pの流れが、流路Fに到達して、流れが吸い込まれることを回避することを可能にする。
【0049】
図7を参照すると、改善された低圧タービン14の第2の実施形態が示されている。言及した図では、同じ参照番号は、
図3にすでに例示されており、上で説明したものと同じ又は対応する部品、要素、又は構成要素を表し、ここでは再度説明しない。しかしながら、この場合、保護スペーサ7は、円錐形ではなく、円筒形である。また、この場合、偏向器8は、スペーサ7に対応して、シャンク7に、又はロータホイール3のリム31に配設されている。
【0050】
図7はまた、パージ管164通って圧縮機11から来るパージ空気Pのいくつかの経路も例示する。
【0051】
この場合、低出力タービン14の動作は、先の図に開示されたものと同じである。
【0052】
本発明は、様々な特定の実施形態に関して説明されてきたが、当業者には、特許請求の範囲の趣旨及び範囲を逸脱することなく多くの修正、変更、及び省略が可能であることが、当業者には明らかであろう。加えて、本明細書で別段の指定がない限り、いずれのプロセス又は方法ステップの順序又は配列も、代替的な実施形態に従って変更又は再配列され得る。
【0053】
本開示の実施形態に対して詳細な参照がなされており、これらの1つ以上の例は、図面に例示されている。各例は、本開示を限定するものではなく、本開示の説明として提供するものである。実際には、本開示の範囲又は趣旨から逸脱しない限り、本開示に様々な修正及び変形を加えることができるということが、当業者には明らかであろう。本明細書全体を通して「ある実施形態」又は「一実施形態」又は「いくつかの実施形態」への言及は、一実施形態に関して述べられる特定の特徴、構造、又は特性が、開示の主題の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して様々な個所における「ある実施形態では」又は「一実施形態では」又は「いくつかの実施形態では」という句が現れると、それは、必ずしも同じ実施形態を指しているものではない。また、特定の特徴、構造、又は特性は、1つ以上の実施形態において、任意の好適な様式において組み合わされ得る。
【0054】
様々な実施形態の要素を提示する際、冠詞「ある(a)」、「ある(an)」、「その(the)」、及び「当該(said)」は、要素のうちの1つ以上があることを意味することを意図している。「備える(comprising)」、「含む(including)」、及び「有する(having)」という用語は、非排他的であることが意図され、列記された要素以外の追加の要素が存在し得ることを意味するものである。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンであって、
高温ガス流路チャネルに流れ込む高温ガスの膨張により回転するように構成された下流ロータ部材と上流ロータ部材であって、前記下流ロータ部材と前記上流ロータ部材の各々が、ロータホイールを備え、前記上流ロータ部材と前記下流ロータ部材のロータホイールがホイールスペースを形成する、下流ロータ部材と上流ロータ部材と、
前記下流ロータ部材と前記上流ロータ部材の間に配置され、かつ前記高温ガス流路チャネルからの吸い込まれたガス流が前記ホイールスペースに到達することを回避するように構成された保護スペーサと、
前記下流ロータ部材と前記上流ロータ部材の間に配置され、前記保護スペーサとの間にチャネルを形成するように前記保護スペーサから離間されたステータスペーサと、
前記下流ロータ部材と前記上流ロータ部材の一つに配置された偏向器と、
パージ空気を冷却する冷却器を有し、前記ホイールスペースに流体接続されたパージシステムであって、前記冷却器を通った前記パージ空気を前記ホイールスペースに供給するように構成されたパージシステムと、
を備え、
前記偏向器は、前記ホイールスペースから流れる前記パージ空気を前記チャネルに偏向させ、
前記チャネルが、前記偏向器によって偏向された前記パージ空気の圧力よりも低い圧力である、タービン。
【請求項2】
前記偏向器が、前記保護スペーサに対応して配置されている、請求項1に記載のタービン。
【請求項3】
前記下流ロータ部材と前記上流ロータ部材の各前記ロータホイールが、外側リムを有し、
前記偏向器が、前記上流ロータ部材の前記ロータホイールの前記外側リムに配置されている、請求項1又は2のいずれか一項に記載のタービン。
【請求項4】
前記偏向器が、前記保護スペーサと前記上流ロータ部材の前記ロータホイールとの間のギャップの一部を覆っている、請求項1~3のいずれか一項に記載のタービン。
【請求項5】
前記下流ロータ部材と前記上流ロータ部材の各々が、
回転軸の周りを回転するように構成されたロータホイールであって、外側リム及び前記ロータホイールの外側リムの周りに円周方向に離間された複数の溝を有する、ロータホイールと、
複数のブレードであって、各ブレードが、シャンクと、当該シャンクに結合され、前記ロータホイールの1つの対応する溝と嵌合するように設計された根元と、前記高温ガス流路チャネルからの高温ガスを受けることによって当該ロータ部材を回転させるためのエアフォイルと、を備える、複数のブレードと、を備え、
前記偏向器が、前記上流ロータ部材の前記シャンクに配置され、
前記偏向器が、前記保護スペーサと前記上流ロータ部材の前記ロータホイールとの間のギャップの一部を覆っている、請求項1又は2のいずれか一項に記載のタービン。
【請求項6】
前記偏向器が、前記吸い込まれたガス流の方向を反転させるように構成されている、請求項5のいずれか一項に記載のタービン。
【請求項7】
前記偏向器が、吸い込まれたガス流の方向を前記シャンクの上面へと反転させるように構成されている、請求項5又は6に記載のタービン。
【請求項8】
前記偏向器が、前記吸い込まれたガス流の方向を反転させるために偏向させるように構成された上面を有する、請求項6又は7に記載のタービン。
【請求項9】
前記タービンがベース負荷条件で動作しているときに、前記偏向器は、パージ空気が径方向に向かって流れて前記高温ガス流路チャネルに到達して、高温ガスの吸い込みを阻止することを可能にする、請求項1~8のいずれか一項に記載のタービン。
【請求項10】
前記偏向器が、前記パージ空気の一部を、前記高温ガスが流れる前記高温ガス流路チャネルの中へ流れるように動かすように構成された下面を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のタービン。
【請求項11】
前記ステータスペーサと前記保護スペーサとの間にラビリンスシールが介在している、請求項1~10のいずれか一項に記載のタービン。
【請求項12】
前記偏向器が、前記シャンクと一体である、請求項5~8のいずれか一項に記載のタービン。
【請求項13】
前記タービンが、低圧タービンである、請求項1~12のいずれか一項に記載のタービン。
【請求項14】
タービンであって、
シャンクと、前記シャンクに結合された根元と、高温ガス流路を捉えるように構成されたエアフォイルと、高温ガス流を偏向させるように構成された偏向器と、を備えた、ブレードと、
第1のスペーサと、
前記第1のスペーサと平行であり、前記第1のスペーサから離間されて前記第1のスペーサとの間にチャネルを形成する、第2のスペーサと、
パージ空気を冷却する冷却器を備えたパージシステムと、
を備え、
前記パージシステムの前記冷却器からのパージ空気が前記偏向器と接して前記チャネルに流入する、タービン。
【請求項15】
ロータホイールをさらに備え、
前記偏向器が、保護スペーサと前記ロータホイールとの間のギャップを覆っている、請求項14に記載のタービン。
【請求項16】
前記偏向器が、前記高温ガス流路からの起こり得るガスの吸い込みを偏向させるように構成された上面を有する、請求項14又は15のいずれか一項に記載のタービン。
【請求項17】
前記偏向器は、高温ガスが流れる前記高温ガス流路にパージ空気が流れ込むことを可能にするように構成された下面を有する、請求項14~16のいずれか一項に記載のタービン。