(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129153
(43)【公開日】2024-09-26
(54)【発明の名称】バス調停回路及びそれを備えたデータ転送システム
(51)【国際特許分類】
G06F 13/36 20060101AFI20240918BHJP
H04L 12/40 20060101ALI20240918BHJP
G06F 13/362 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
G06F13/36 310B
H04L12/40 Z
G06F13/362 510B
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024110021
(22)【出願日】2024-07-09
(62)【分割の表示】P 2020193969の分割
【原出願日】2020-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】沈 標
(57)【要約】
【課題】バスの伝送速度が低下しないバス調停回路を提供すること。
【解決手段】ホストバスに接続された第一のバス端子と、ローカルバスに接続された第二のバス端子と、出力端子が前記第一のバス端子に接続された第一の出力回路と、出力端子が前記第二のバス端子に接続された第二の出力回路と、第一の入力端子と第二の入力端子と制御信号出力端子と出力端子を備え、前記第一の入力端子に前記第一のバス端子のデータが入力され、前記第二の入力端子に前記第二のバス端子のデータが入力され、前記出力端子から前記第一の出力回路の入力端子にデータが出力される制御回路と、入力端子が前記第一のバス端子に接続され、制御端子が前記制御回路の制御信号出力端子に接続され、出力端子から前記第二の出力回路の入力端子へホストバスのデータを出力するスイッチ回路を備えたことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホストバスを介してマスターICに接続された第一のバス端子と、
ローカルバスを介して複数のスレーブICに接続された第二のバス端子と、
出力端子が前記第一のバス端子に接続された第一の出力回路と、
出力端子が前記第二のバス端子に接続された第二の出力回路と、
第一の入力端子と第二の入力端子と制御信号出力端子と出力端子を備え、前記第一の入力端子に前記第一のバス端子のデータが入力され、前記第二の入力端子に前記第二のバス端子のデータが入力され、前記出力端子から前記第一の出力回路の入力端子にデータが出力される制御回路と、
入力端子が前記第一のバス端子に接続され、制御端子が前記制御回路の制御信号出力端子に接続され、出力端子から前記第二の出力回路の入力端子へ前記ホストバスのデータを出力するスイッチ回路と、
を備え、
前記マスターICから前記ホストバスにスタートコンディション信号が出力されると、
前記スイッチ回路は、前記スタートコンディション信号を前記出力端子から前記ローカルバスを介して前記複数のスレーブICに出力し、
前記制御回路は、リクエストがあった前記スレーブICのアドレス信号を含む前記ローカルバスの調停結果に応じた信号を、前記ホストバスを介して前記マスターICに出力することを特徴とするバス調停回路。
【請求項2】
前記制御回路は、前記待機状態において、前記第一の入力端子に前記スタートコンディション信号が入力されると、所定時間が経過した後に前記制御信号によって前記スイッチ回路を前記ホストバスのデータを出力しない状態にする、
ことを特徴とする請求項1に記載のバス調停回路。
【請求項3】
前記所定時間は、前記ローカルバスのアドレス信号が安定するまでの時間である、
ことを特徴とする請求項2に記載のバス調停回路。
【請求項4】
前記第二のバス端子と前記制御回路の前記第二の入力端子の間に接続され、前記ローカルバスの調停結果に応じた信号をラッチするフリップフロップ回路を更に備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のバス調停回路。
【請求項5】
前記制御回路は、前記フリップフロップ回路が前記ローカルバスの調停結果に応じた信号をラッチし終えた後に、前記制御信号によって前記スイッチ回路を前記ホストバスのデータを出力できる状態にする、
ことを特徴とする請求項4に記載のバス調停回路。
【請求項6】
ホストバスに接続されたマスターIC及びスレーブICと、
前記ホストバスに接続された請求項1から5のいずれかに記載のバス調停回路と、
前記バス調停回路に接続されたローカルバスと、
前記ローカルバスに接続されたスレーブICと、
を備えたことを特徴とするデータ転送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バス調停回路及びそれを備えたデータ転送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
データ転送システムは、シリアルデータバスであるI
2Cバスを介してマスターICと複数のスレーブICとの間でデータ転送を行うシステムが知られている。
図3は、I
2Cプロトコルに準拠したデータ転送システムを示すブロック図である。
当該データ転送システム200では、マスターIC230と複数のスレーブIC231~237とをシリアルデータライン210、及び、クロックライン220の2本のバスラインにより接続し、これらのバスラインを用いてI
2Cプロトコルに準拠したデータ転送を行う(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、I
2Cプロトコルに準拠したデータ転送システムは、簡単な構成の内部バスシステムとして開発されたため、ホストバスとローカルバスを有した多層システムを想定していなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多層システムは、ホストバスとローカルバスの間にバス調停回路を備えている。バス調停回路は、ホストバスとローカルバスを接続するための双方向スイッチ回路であるトランスミッションゲートを備えていることが一般的である。しかしながら、調停時にはトランスミッションゲートが閉状態になっているため、ホストバスには各ローカルバスに接続されたスレーブICが直接接続されることになる。従って、システム全体のスレーブICの数が多くなるとバスのデータ伝送速度が低下する、という課題がある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされ、バスの伝送速度が低下しないバス調停回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のバス調停回路は、ホストバスに接続された第一のバス端子と、ローカルバスに接続された第二のバス端子と、出力端子が前記第一のバス端子に接続された第一の出力回路と、出力端子が前記第二のバス端子に接続された第二の出力回路と、第一の入力端子と第二の入力端子と制御信号出力端子と出力端子を備え、前記第一の入力端子に前記第一のバス端子のデータが入力され、前記第二の入力端子に前記第二のバス端子のデータが入力され、前記出力端子から前記第一の出力回路の入力端子にデータが出力される制御回路と、入力端子が前記第一のバス端子に接続され、制御端子が前記制御回路の制御信号出力端子に接続され、出力端子から前記第二の出力回路の入力端子へホストバスのデータを出力するスイッチ回路を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ホストバスからローカルバスへの出力にスイッチ回路と出力回路を用い、ローカルバスからホストバスへの出力に出力回路を用いたため、ホストバスにはローカルバスのスレーブICが直接接続されることがなく、データの伝送速度が低下しないバス調停回路を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態のバス調停回路を示す回路図である。
【
図2】本実施形態のバス調停回路を備えた多層のデータ転送システムを示すブロック図である。
【
図3】I
2Cプロトコルに準拠したデータ転送システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
図2は、本実施形態のバス調停回路を備えた多層のデータ転送システム100を示すブロック図である。
データ転送システム100は、ホストバスであるシリアルデータライン10及びクロックライン20と、第一のローカルバスであるシリアルデータライン11及びクロックライン21と、第二のローカルバスであるシリアルデータライン12及びクロックライン22と、マスターIC30と、バス調停回路であるハブIC41~42と、スレーブIC51~56と、を備えている。これらのバスラインは、電源ラインにプルアップ抵抗で接続されているが、図ではシリアルデータライン10及びクロックライン20のみプルアップ抵抗を記載し、他は省略する。
【0011】
マスターIC30は、ホストバスに接続されている。スレーブIC51~52は、ホストバスに接続されている。ハブIC41は、ホストバスと第一のローカルバスの間に接続されている。ハブIC42は、ホストバスと第二のローカルバスの間に接続されている。スレーブIC53~54は、第一のローカルバスに接続されている。スレーブIC55~56は、第二のローカルバスに接続されている。
【0012】
図1は、本実施形態のバス調停回路を示す回路図である。
以下、バス調停回路であるハブIC41について説明するが、簡略化のため、ホストバスとローカルバスはシリアルデータラインのみを図示している。クロックラインは、シリアルデータラインと同様に接続されている。なお、ハブIC42もハブIC41と同様の構成である。
【0013】
ハブIC41は、電源ラインにプルアップ抵抗で接続されたシリアルデータライン10が接続される第一のバス端子と、電源ラインにプルアップ抵抗で接続されたシリアルデータライン11が接続される第二のバス端子と、第一のバス端子に接続される第一の出力回路であるNMOSトランジスタ411と、第二のバス端子に接続される第二の出力回路であるNMOSトランジスタ412と、制御回路413と、スイッチ回路414と、フリップフロップ回路415と、マルチプレクサ416を備えている。本実施形態では、スイッチ回路414はNOR回路で構成している。制御回路413は、出力端子と、第一の入力端子と、第二の入力端子と、クロック出力端子と、第一の制御信号出力端子と、第二の制御信号出力端子と、データ出力端子を備えている。なお、シリアルデータライン10とシリアルデータライン11は、同じ電源ラインに接続されているが、異なった電源ラインに接続されても良い。
【0014】
NMOSトランジスタ411は、ドレインが第一のバス端子に接続され、ゲートが制御回路413の出力端子に接続され、ソースが接地端子に接続されている。NMOSトランジスタ412は、ドレインが第二のバス端子に接続され、ゲートがマルチプレクサ416の出力端子に接続され、ソースが接地端子に接続されている。制御回路413は、第一の入力端子が第一のバス端子に接続され、第二の入力端子がフリップフロップ回路415の出力端子に接続され、クロック出力端子がフリップフロップ回路415のクロック端子に接続され、第一の制御信号出力端子がスイッチ回路414の制御端子に接続され、第二の制御信号出力端子がマルチプレクサ416の制御端子に接続され、データ出力端子がマルチプレクサ416の第一の入力端子に接続されている。スイッチ回路414は、入力端子が第一のバス端子に接続され、出力端子がマルチプレクサ416の第二の入力端子に接続されている。フリップフロップ回路415は、入力端子が第二のバス端子にNOT回路を介して接続されている。なお、出力回路をNMOSトランジスタで構成したため、論理を合わせる目的で第二のバス端子にNOT回路を設けたが、制御回路など何処で論理を合わせも良い。
【0015】
本実施形態のハブIC41は、シリアルデータライン10、11に対してオープンドレイン出力回路を構成している。なお、その他のハブICやスレーブICも同様の出力回路を構成している。これは、調停時に必要な構成であって、調停時以外ではCMOS出力回路となるように構成しているが、図では省略する。また、マルチプレクサ416は、NMOSトランジスタ412に対して、調停時にはスイッチ回路414の信号を出力し、それ以外では制御回路413のデータ出力端子の信号を出力するように制御される。従って、以下の調停時の説明では、マルチプレクサ416は、NMOSトランジスタ412に対してスイッチ回路414の信号を出力するように制御されているとして説明する。
【0016】
マスターIC30は、シリアルデータライン10へ各ICにリクエストの有無を問合せるためのスタートコンディション信号を出力する。スレーブIC51~52は、スタートコンディション信号が入力されると、リクエストがある場合にはクロック信号に合わせて自身のアドレス信号を出力する。
【0017】
ハブIC41~42は、スタートコンディション信号が入力されると、各々のローカルバスにスタートコンディション信号を出力する。そして、ハブIC41~42は、各々のローカルバスのアドレス信号を、リクエストがある場合には自身のアドレス信号を合わせたアドレス信号をホストバスに出力する。その時、安定して調停が実施されるように、ホストバスと各々のローカルバスの接続を制御する機能を有する。
【0018】
スレーブIC53~56は、スタートコンディション信号が入力されると、リクエストがある場合にはクロック信号に合わせて自身のアドレス信号を出力する。
【0019】
次に、本実施形態のバス調停回路を備えた多層のデータ転送システムの調停動作について
図1及び
図2を参照して説明する。動作説明は、ハブIC41についてするが、ハブIC42も同様の動作をするものとする。
【0020】
マスターIC30は、シリアルデータライン10へ各ICにリクエストの有無を問合せるためのスタートコンディション信号を出力する。スタートコンディション信号は、ホストバスに接続されたハブIC41~42とスレーブIC51~52に入力される。スタートコンディション信号は、例えば、クロック信号がHiレベルを維持した状態で、シリアルデータライン10がHiレベルからLoレベルに立下がる時である。
【0021】
ハブIC41は、第一のバス端子からスタートコンディション信号が入力される。スタートコンディション信号は、制御回路413の第一の入力端子とスイッチ回路414の入力端子に入力される。スイッチ回路414は、待機状態において、制御回路413の制御信号によって閉状態に制御されている。
図1において、スイッチ回路414はNOR回路で構成しているので、制御回路413は制御信号出力端子にLoレベルを出力している。従って、シリアルデータライン10から第一のバス端子に入力されスタートコンディション信号は、スイッチ回路414とNMOSトランジスタ412を介して第二のバス端子からシリアルデータライン11に出力される。
【0022】
即ち、マスターIC30が出力したスタートコンディション信号は、ローカルバスであるシリアルデータライン11に接続されたスレーブIC53~54にも入力される。従って、スレーブIC51~56は、マスターIC30が出力したスタートコンディション信号が入力されることによって、リクエスト有無の問合せを受信したと判断することができる。
【0023】
次に、クロック信号が立下がると、リクエストが有るハブICとスレーブICは、入力されるクロック信号に応じて自身のアドレスデータをシリアルデータラインに出力する。この時、ハブICは、ローカルバスのアドレスデータと自身のアドレスデータを合成してホストバスに出力する。
【0024】
この時のハブIC41の動作について、詳細に説明する。
【0025】
制御回路413は、クロック信号の立下がりに同期して、第一の制御信号出力端子にHiレベルを出力してスイッチ回路414を開状態に制御する。スイッチ回路414を開状態に制御することで、シリアルデータライン10のアドレスデータはシリアルデータライン11に伝わらない。このように制御すると、シリアルデータライン11、即ち、ローカルバス内でのみ調停を行うことが出来る。
【0026】
制御回路413は、クロック信号の立下がりから第一の所定時間経過後に、クロック出力端子にクロック信号を出力する。ここで、第一の所定時間は、シリアルデータライン11のアドレスデータが安定するまでの時間である。フリップフロップ回路415は、クロック端子にクロック信号が入力されると、ローカルバスの調停結果に応じた信号をラッチして、出力端子に出力する。制御回路413は、第二の入力端子にフリップフロップ回路415からローカルバスの調停結果が入力されると、ハブIC41にリクエストがある場合は自身のアドレスデータと合成して、そのアドレスデータをNMOSトランジスタ411のゲートに出力する。
【0027】
従って、シリアルデータライン11のアドレスデータがシリアルデータライン10に伝わるため、ホストバス上でホストバスとローカルバスに接続されている全てのハブICとスレーブICのアドレスデータによる調停が行われる。
【0028】
制御回路413は、クロック信号の立下がりから第二の所定の時間経過後に、制御信号出力端子にLoレベルを出力してスイッチ回路414を閉状態に制御する。スイッチ回路414が閉状態になると、シリアルデータライン10のアドレスデータがシリアルデータライン11に伝わる、即ち、スレーブIC53、54に全てのハブICとスレーブICによる調停結果が伝達される。ここで、第二の所定時間は、フリップフロップ回路415がローカルバスの調停結果に応じた信号をラッチし終えるまでの時間である。
【0029】
アドレスデータによる調停は、アドレスデータが一番小さいハブICかスレーブICにリクエストの優先権があるとして説明する。即ち、今回のアドレスデータが0(Loレベル)のハブICやスレーブICは、次のクロック信号の立下りにもアドレスデータを出力することが出来る。今回のアドレスデータが1(Hiレベル)のハブICやスレーブICは、シリアルデータラインがLoレベルであったら、次回以降のクロック信号の立下りにアドレスデータを出力することが出来ない。即ち、それらICは、以降調停に参加しない。
【0030】
そして、マスターIC30がアドレスデータのビット数と同じクロック信号を出力して、上述の動作を繰り返すことによって、シリアルデータライン10上で調停が実施される。そして、マスターIC30は、調停よって決定されたICのリクエストを受付ける。
【0031】
以上説明したように、本実施形態のバス調停回路は、ホストバスからローカルバスへの出力にスイッチ回路と出力回路を用い、ローカルバスからホストバスへの出力に出力回路を用いたため、ホストバスにはローカルバスのスレーブICが直接接続されることがない。従って、ローカルバスに接続されたスレーブICが多くなったとしても、そのことによってデータの伝送速度が低下することはない。
【0032】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0033】
例えば、制御回路413の第二の入力端子と第二のバス端子の間にフリップフロップ回路415を備えているが、信号をラッチする回路であればよく、これに限らない。また、制御回路413が第一の所定時間後に第二の入力端子のデータを有効にするように制御するように構成すれば、フリップフロップ回路415を備えなくても良い。また例えば、スイッチ回路414はNOR回路で構成したが、入力論理と出力論理に応じて構成されれば、これに限定されない。また例えば、調停はマスターICがスタートコンディション信号を送信したことで開始するように説明したが、ハブICやスレーブICが出力する信号や、他の信号でも良い。
【符号の説明】
【0034】
10、11、12 シリアルデータライン
20、21、22 クロックライン
30 マスターIC
41、42 ハブIC
51、52、53、54、55、56 スレーブIC
100 データ転送システム
411、412 NMOSトランジスタ
413 制御回路
414 スイッチ回路
415 フリップフロップ回路
416 マルチプレクサ