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  • 特開-移動制御装置および移動制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129167
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】移動制御装置および移動制御方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20240919BHJP
【FI】
B66B5/00 G
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033146
(22)【出願日】2023-03-03
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-09-18
(71)【出願人】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】諸岡 悠児
(72)【発明者】
【氏名】金子 元樹
(72)【発明者】
【氏名】玉置 亜由美
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 功一
(72)【発明者】
【氏名】物部 愛
【テーマコード(参考)】
3F304
【Fターム(参考)】
3F304BA17
3F304BA24
3F304EB15
(57)【要約】
【課題】保守作業員の負担を減らしつつ、安全な保守点検を行えるよう保守作業員が乗車する乗りかごの移動を制御できる移動制御装置を実現する。
【解決手段】エレベータ制御装置(10)は、エレベータの保守作業員(W)が乗車する乗りかご(21)の移動を制御するエレベータ制御装置(10)であって、乗りかご(21)を予め設定された1つ以上の点検位置に移動させる移動制御部(114)と、保守作業員による所定の操作入力の有無を判定する操作入力判定部(113)と、を備え、移動制御部(114)は、操作入力判定部(113)において所定の操作入力が継続されていると判定される期間において、乗りかご(21)を次の点検位置に移動させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの保守作業員が乗車する乗りかごの移動を制御する移動制御装置であって、
前記乗りかごを予め設定された1つ以上の点検位置に移動させる移動制御部と、
前記保守作業員による所定の操作入力の有無を判定する操作入力判定部と、を備え、
前記移動制御部は、前記操作入力判定部において前記所定の操作入力が継続されていると判定される期間において、前記乗りかごを次の前記点検位置に移動させる、
移動制御装置。
【請求項2】
前記操作入力判定部は、前記保守作業員により所定のスイッチが押下されている間、前記所定の操作入力が継続されていると判定する、請求項1に記載の移動制御装置。
【請求項3】
前記乗りかごが前記点検位置に停止する場合の前記乗りかごの減速の度合いは、前記所定の操作入力が解除された際の前記乗りかごが停止する場合の前記乗りかごの減速の度合いよりも小さい、請求項1に記載の移動制御装置。
【請求項4】
前記点検位置において、前記保守作業員に点検を行う方向を報知する報知制御部をさらに備えている、請求項1に記載の移動制御装置。
【請求項5】
前記移動制御部は、前記保守作業員の身長に応じて前記乗りかごの停止位置を調整する、請求項1に記載の移動制御装置。
【請求項6】
点検開始時の前記乗りかごの位置に応じて、前記乗りかごの運転距離が最も短くなる点検順序を決定する点検順序決定部をさらに備え、
前記移動制御部は、前記点検順序決定部が決定した前記点検順序に沿って前記乗りかごを移動させる、請求項1に記載の移動制御装置。
【請求項7】
エレベータの保守作業員が乗車する乗りかごの移動を制御する移動制御装置の移動制御方法であって、
前記乗りかごを予め設定された1つ以上の点検位置に移動させる移動制御ステップと、
前記保守作業員による所定の操作入力の有無を判定する操作入力判定ステップと、を含み、
前記移動制御ステップでは、前記操作入力判定ステップにおいて前記所定の操作入力が継続されていると判定される期間において、前記乗りかごを次の前記点検位置に移動させる、移動制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移動制御装置および移動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの点検業務を行う保守作業員は、乗りかごで点検位置まで移動して点検作業を行う。従来、保守作業員の負担を減らし点検漏れを防ぐために、乗りかごの点検位置への移動を自動で行う技術が知られている。例えば、特許文献1では、任意の点検パターンの釦を押下することで、その点検パターンに応じて乗りかごが自動で点検位置に移動するエレベータの点検装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05-193854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、保守作業員が乗りかごの上に乗って点検作業を行う場合、例えば安全を確保するために、保守作業員は塔内の状況にあわせて移動する乗りかごを停止させたい場合がある。しかしながら、特許文献1に開示されている技術では、次の点検位置までの乗りかごの移動が、保守作業員が関知せずに自動で行われるため、乗りかごを円滑に停止させることができないという問題がある。
【0005】
本発明の一態様は、保守作業員の負担を減らしつつ、安全な保守点検を行えるよう保守作業員が乗車する乗りかごの移動を制御できる移動制御装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る移動制御装置は、エレベータの保守作業員が乗車する乗りかごの移動を制御する移動制御装置であって、前記乗りかごを予め設定された1つ以上の点検位置に移動させる移動制御部と、前記保守作業員による所定の操作入力の有無を判定する操作入力判定部と、を備え、前記移動制御部は、前記操作入力判定部において前記所定の操作入力が継続されていると判定される期間において、前記乗りかごを次の前記点検位置に移動させる。
【0007】
上記の構成によれば、移動制御部は保守作業員が乗車する乗りかごを予め設定された1つ以上の点検位置に移動させるため、保守作業員は自動で点検位置に行くことができる。そのため、点検時における保守作業員の負担を減らすことができる。
【0008】
また、移動制御部は、保守作業員により所定の操作入力が継続されている期間において、乗りかごを次の点検位置まで移動させる。言い換えると、保守作業員により所定の操作入力が中断されると乗りかごは移動を停止する。これにより、保守作業員が所定の操作入力を行わない限り乗りかごは移動しないため、例えば、保守作業員は安全な状態を確認した上で、自らの意図で乗りかごの移動を継続させることができる。その結果、保守作業員の負担を減らしつつ、安全な保守点検を行うことができる乗りかごの移動を実現することができる。
【0009】
本発明の他の態様に係る移動制御装置では、前記操作入力判定部は、前記保守作業員により所定のスイッチが押下されている間、前記所定の操作入力が継続されていると判定してもよい。
【0010】
上記の構成によれば、保守作業員はスイッチを押下している間、乗りかごを次の点検位置に移動させ、スイッチの押下を解除することで、簡単に乗りかごを停止させることができる。そのため、例えば、乗りかごが次の点検位置に移動中であっても保守作業員が安全を確保するためにすぐに乗りかごを停止させることができる。
【0011】
本発明の他の態様に係る移動制御装置では、前記乗りかごが前記点検位置に停止する場合の前記乗りかごの減速の度合いは、前記所定の操作入力が解除された際の前記乗りかごが停止する場合の前記乗りかごの減速の度合いよりも小さくてもよい。
【0012】
上記の構成によれば、急な停止が必要だと考えられる、所定の操作入力が解除された場合の乗りかごの停止は素早く行うことができ、点検位置に停止する場合の乗りかごは、所定の操作入力が解除された場合と比較してゆっくり減速させてから停止させることができる。
【0013】
通常、乗りかごの急停止を行うと、乗りかごの速度が急激にゼロとなるためメインロープの伸縮による上下動が生じ、その間は点検を行うことができない。そこで、点検位置で乗りかごが停止する場合は上述のように乗りかごを減速させてから停止させることで、乗りかごの停止時の上下動を抑制し、点検に取り掛かるまでの時間を短縮することができる。
【0014】
本発明の他の態様に係る移動制御装置では、前記点検位置において、前記保守作業員に点検を行う方向を報知する報知制御部をさらに備えていてもよい。
【0015】
上記の構成によれば、点検位置に到着した際に点検対象を容易に把握することができ、点検漏れを抑制することができる。
【0016】
本発明の他の態様に係る移動制御装置では、前記移動制御部は、前記保守作業員の身長に応じて前記乗りかごの停止位置を調整してもよい。
【0017】
保守作業員は乗りかご上に立って作業する場合がある。その場合、上記の構成によれば、移動制御部が乗りかごの停止位置を保守作業員の身長に応じて調整するので、保守作業員がより作業しやすい位置に乗りかごを停止させることができる。
【0018】
本発明の他の態様に係る移動制御装置では、点検開始時の前記乗りかごの位置に応じて、前記乗りかごの運転距離が最も短くなる点検順序を決定する点検順序決定部をさらに備え、前記移動制御部は、前記点検順序決定部が決定した前記点検順序に沿って前記乗りかごを移動させてもよい。上記の構成によれば、点検完了までの時間を短くすることができる。
【0019】
本発明の一態様に係る移動制御装置の移動制御方法は、エレベータの保守作業員が乗車する乗りかごの移動を制御する移動制御装置の移動制御方法であって、前記乗りかごを予め設定された1つ以上の点検位置に移動させる移動制御ステップと、前記保守作業員による所定の操作入力の有無を判定する操作入力判定ステップと、を含み、前記移動制御ステップでは、前記操作入力判定ステップにおいて前記所定の操作入力が継続されていると判定される期間において、前記乗りかごを次の前記点検位置に移動させる。
【0020】
本発明の各態様に係る移動制御装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記移動制御装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記移動制御装置をコンピュータにて実現させる移動制御装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様によれば、保守作業員の負担を減らしつつ、安全な保守点検を行えるよう保守作業員が乗車する乗りかごの移動を制御できる移動制御装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係る移動制御装置を含む点検支援システムの機能ブロック図である。
図2】上記点検支援システムの概略構成を説明する斜視図である。
図3】上記移動制御装置の動作の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔実施形態〕
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。ただし、以下の説明は本発明に係るエレベータ制御装置10の一例であり、本発明の技術的範囲は図示例に限定されるものではない。
【0024】
<点検支援システム>
図1は、本発明の実施形態に係るエレベータ制御装置10を含む点検支援システム100の機能ブロック図であり、図2は、点検支援システム100の概略構成を説明する斜視図である。エレベータは安全を図るために保守作業員Wにより点検作業が行われる。点検支援システム100は、エレベータの点検作業を行う保守作業員Wにより所定の操作入力が継続されている期間のみ、保守作業員Wが乗車する乗りかご21を次の点検位置に自動で移動させる。これにより、点検支援システム100は、保守作業員Wの負担を減らしつつ、安全な保守点検を行えるように乗りかご21の移動を制御し保守作業員Wの点検を支援することができる。
【0025】
図1および図2に示すように、点検支援システム100は、エレベータ制御装置10(移動制御装置)と、操作盤30と、を備えている。
【0026】
<操作盤>
操作盤30は、乗りかご21上部の保守作業空間に設けられており、保守作業員Wの所定の操作入力を受け付ける。操作盤30には、作業員が上移動/下移動を指示入力する釦スイッチなどが設けられている。さらに、操作盤30は、スイッチ31と、入力部32と、表示部33と、通信部34と、を備えている。なお、スイッチ31は、作業員が上移動/下移動を指示入力する既存の釦スイッチを利用してもよい。
【0027】
操作盤30は、例えば、スイッチ31の釦が押下されることで操作入力を受け付ける。また、操作盤30は、入力部32により入力された保守作業員Wの身長L1、および、点検パターンを受け付ける。
【0028】
保守作業員Wの身長L1の入力は、例えば、操作盤30に設けられたテンキーもしくは、数値上下変更釦などにより入力されてもよい。数値上下変更釦は、例えば、釦を押すと1cmごとに身長の値が上下するなどの釦が考えられる。なお、数値上下変更釦は、既存の釦スイッチを利用してもよい。その場合、例えば、既存の釦スイッチの入力モードを身長入力モードに切り替えると、上下移動釦が数値上下釦として機能してもよい。
【0029】
点検パターンは、所定の点検パターンの中から保守作業員Wにより選択された点検パターンが、操作盤30に入力されることで決定される。
【0030】
表示部33は、入力部32で入力された点検パターンを指定する数字や、身長の数字を表示する。表示部33の形式は特に限定されず、ディスプレイでもよく、例えば7セグメントで数字のみが表示されるような簡易なものであってもよい。表示部33がディスプレイ形式であれば、点検方向や点検内容が表示されるような制御が行われてもよい。
【0031】
通信部34は、スイッチ31が押下されている間、操作入力がされていることを示す入力情報をエレベータ制御装置10に送信する。また、通信部34は、入力部32により入力された保守作業員Wの身長L1を含む保守作業員情報、および、点検パターンをエレベータ制御装置10に送信する。通信部34とエレベータ制御装置10との通信方法は特に限定されず、無線通信であってよく、有線通信であってもよい。
【0032】
保守作業員Wはスイッチ31を押下する(所定の操作入力を行う)ことで乗りかご21を移動させることができ、スイッチ31から手を離して押下を解除することで、乗りかご21を停止させることができる。スイッチ31の操作に基づくエレベータ制御装置10の動作処理について詳しくは後述する。
【0033】
点検が終了した点検位置から次の点検位置に移動している乗りかご21において、釦を押下することで乗りかご21を停止させる制御が行われている場合、乗りかご21を停止させるために保守作業員Wがわざわざ手を伸ばして釦を押す必要がある。そのため、保守作業員Wが安全を確保するために乗りかご21を瞬時に停止させることが難しい。また、点検が終了した位置から次の点検位置までの乗りかご21の移動が自動で行われる場合、乗りかご21の移動に保守作業員Wの意図が反映されない。
【0034】
それに対して、本実施形態では、保守作業員Wはスイッチ31を押下している間のみ、すなわち、保守作業員Wが意図する期間のみ、乗りかご21を点検が終了した点検位置から次の点検位置に向かって移動させることができる。
【0035】
また、本実施形態では、保守作業員Wがスイッチ31から手を離してスイッチ31の押下を解除することで、乗りかご21を停止させることができる。言い換えると、保守作業員Wによりスイッチ31の押下が中断されると乗りかご21は移動を停止する。これにより、保守作業員Wがスイッチ31の押下を継続しない限り乗りかご21は移動しないため、例えば、保守作業員Wは安全な状態を確認した上で、自らの意図で乗りかご21の移動を継続させることができる。その結果、保守作業員Wの負担を減らしつつ、安全な保守点検を行うことができる乗りかご21の移動を実現することができる。
【0036】
保守作業員Wが行う所定の操作は、操作盤30はスイッチ31の押下に限らず、例えば、手を離すと元の状態に戻るレバー等を操作するものであってもよい。これにより、手を離すという簡単な操作で操作入力を解除することができるので、例えば、保守作業員Wが安全を確保するために乗りかご21を瞬時に停止させることができる。
【0037】
<報知部>
報知部40は後述する報知制御部115の指示に基づき、保守作業員Wに点検を行う方向を報知する。報知部40は、乗りかご21の上面21aにおいて、各辺に沿って4方向に設置されている。報知部40が4方向に設置されることで、保守作業員Wの点検方向の把握が容易となる。保守作業員Wへの点検方向の報知方法は特に限定されず、保守作業員Wが視認できるように報知が行われてもよく、音により報知が行われてもよい。保守作業員Wが視認できるように報知が行われる場合、報知部40は、例えば発光部40aを用いることができる。この場合、点検方向に設置されている発光部40aを発光させることで、保守作業員Wに点検方向を報知する。また、ディスプレイなどを用いて、点検方向を文字等で表示することにより報知が行われてもよい。
【0038】
また、音で報知が行われる場合、報知部40は、例えばスピーカ40bを用いることができる。その場合、図2に示すように、1つのスピーカを設置し、点検方向により報知音(例えば、音色や言葉によるアナウンスの内容)を異ならせてもよい。報知音を、方向を示すような言葉によるアナウンスとすることで、保守作業員Wの点検方向の把握が容易となる。
【0039】
報知部40が設置されるのは乗りかご21の上面21aにおいて4方向に限らず、報知が必要な方向のみ(例えば2方向など)でもよい。報知部40の設置数を必要最小限とすることで報知部40の設置面積を小さくすることができるので、保守作業員Wの作業スペースを広く確保することができる。なお、報知が必要な方向を5方向以上とすることが好ましい場合には、必要な方向に応じて報知部40が設定されてもよい。
【0040】
また、報知部40を携帯端末のアプリで実現してもよい。その場合、例えば、携帯端末により点検方向を音声でアナウンスしてもよく、点検方向を文字等により携帯端末に表示してもよい。また、携帯端末の振動パターンを異ならせることで点検方向を報知するものであってもよい。報知部40を携帯端末とすることで報知部40の設置面積を削減することができるので、より広い保守作業員Wの作業スペースを確保することができるとともに、報知部40の設置コストを削減することができる。
【0041】
<エレベータ制御装置>
エレベータ制御装置10は、エレベータの保守作業員Wが乗車する乗りかご21の移動を制御する。
【0042】
乗りかご21は、エレベータにおいて、例えば、利用者を乗せて塔内T1(図2参照)を昇降する筐体であり、エレベータの点検時では、保守作業員Wは、乗りかご21の上面21aに乗車してエレベータの点検を行う。そのため、図2に示すように、乗りかご21の上面21aには各辺に沿って安全柵25が設置されている。
【0043】
エレベータ制御装置10は、制御部11と、メモリ12と、を備えている。制御部11は、エレベータ制御装置10の各部を統括的に制御する。制御部11の機能は、メモリ12に記憶されたプログラムを、CPU(Central Processing Unit)が実行することで実現されてよい。制御部11の詳細については後述する。メモリ12は、制御部11が実行する各種のプログラム、およびプログラムによって使用されるデータを格納する。また、メモリ12には、例えば、保守作業員Wにより選択される数字に対応する点検パターンの詳細情報が格納されている。各点検パターンには、それぞれ、点検項目および点検順序等の情報が含まれている。
【0044】
エレベータ制御装置10は、エレベータの点検時には乗りかご21の通常の運行を停止し、操作盤30の入力に基づき乗りかご21を動作させる。エレベータの通常運転時と点検時との運転の切り替えは、例えば、手動で行われてもよい。また、エレベータ制御装置10の機能は、複数台の乗りかご21の運行を統合的に制御する装置である群管理制御装置が有していてもよい。
【0045】
(エレベータ制御装置の制御部の構成)
制御部11は、情報取得部111と、点検順序決定部112と、操作入力判定部113と、移動制御部114と、報知制御部115と、を備えている。
【0046】
情報取得部111は、制御部11で行う処理に必要な情報を取得する。具体的には、情報取得部111は、操作盤30から入力情報、保守作業員情報および点検パターンを指定する数字を取得する。また、情報取得部111は、乗りかご21の現在位置情報を取得する。
【0047】
点検順序決定部112は、保守作業員Wに入力された数字により指定された点検パターンおよび点検開始時の乗りかご21の位置に応じて、乗りかご21の運転距離が最も短くなる点検順序を決定する。これに基づき、乗りかご21を移動させることで点検完了までの時間を短くすることができる。
【0048】
エレベータの点検は、乗りかご21の現在位置に近い階から順に行われる場合がある。その場合、例えば、10階建ての建物において、点検開始時に乗りかご21が8階にいるとすると、8階から1階まで順次降下しつつ点検し、再度上昇して9階および10階を点検するよりも、8階から10階まで順次上昇しつつ点検し、再度下降して7階から1階までを順次下降しつつ点検する方が乗りかご21の運転距離が短くなる。このような場合、点検順序決定部112は、8階から10階に上昇しつつ点検してから7階から1階まで下降しつつ点検するように点検順序を決定する。
【0049】
また、通常、乗りかご21を一度最下階に下降させてから、最下階から最上階まで順次点検するような場合であっても、点検順序決定部112は、状況に応じて運転距離が最も短くなる点検順序を決定してもよい。
【0050】
このように、点検順序決定部112は、点検パターンに応じて、点検時の運転距離が短くなるように点検順序を決定する。点検順序決定部112は、決定した点検順序を移動制御部114に出力する。
【0051】
操作入力判定部113は、保守作業員Wによる所定の操作入力の有無を判定する。具体的には、操作入力判定部113は、保守作業員Wによりスイッチ31が押下されている間、所定の操作入力が継続されていると判定する。操作入力判定部113は、判定結果を移動制御部114に出力する。
【0052】
移動制御部114は、点検時において、点検順序決定部112が決定した点検順序に沿って、乗りかご21を予め設定された1つ以上の点検位置に移動させる。また、移動制御部114は、操作入力判定部113においてスイッチ31の押下が継続されていると判定される期間において、乗りかご21を次の点検位置に移動させる。
【0053】
例えば、2階の次に7階の点検を行うよう点検順序が決定されている場合、2階の点検を終了した際に保守作業員Wがスイッチ31を押下すると、乗りかご21は2階から7階への移動を開始し、保守作業員Wがスイッチ31の押下を継続している期間、乗りかご21は2階から7階に自動で移動する。また、保守作業員Wがスイッチ31の押下を解除すると、2階から7階に移動中であっても、乗りかご21は停止する。
【0054】
これにより、保守作業員Wはスイッチ31を押下している間、乗りかご21を次の点検位置に移動させ、スイッチ31の押下を解除することで、簡単に乗りかご21を停止させることができる。そのため、例えば、乗りかご21が次の点検位置に移動中であっても保守作業員Wが安全を確保するためにすぐに乗りかご21を停止させることができる。
【0055】
乗りかご21が点検位置に停止する場合の乗りかご21の減速の度合いは、スイッチ31の押下が解除された際に乗りかご21が停止する場合の乗りかご21の減速の度合いよりも小さい。つまり、スイッチ31の押下が解除された際の乗りかご21の停止は急停止であるのに対して、乗りかご21が点検位置に停止する場合の乗りかご21の停止は、スイッチ31の押下が解除された際の乗りかご21の停止と比較してゆっくりと減速して停止する。
【0056】
これにより、急な停止が必要だと考えられる、所定の操作入力が解除された場合の乗りかご21の停止は素早く行うことができ、点検位置に停止する場合の乗りかご21は、ゆっくり減速させてから停止させることができる。通常、乗りかご21の急停止を行うと、乗りかご21の速度が急激にゼロとなるためエレベータのメインロープの伸縮による上下動が生じ、その間は点検を行うことができない。そこで、点検位置で乗りかご21が停止する場合は上述のように乗りかご21を減速させてから停止させることで、乗りかご21の停止時の上下動を抑制し、点検に取り掛かるまでの時間を短縮する。
【0057】
また、移動制御部114は、点検位置に停止する際、情報取得部111によって取得された保守作業員情報に含まれる、保守作業員Wの身長L1の情報に応じて乗りかご21の停止位置を調整する。
【0058】
保守作業員Wは乗りかご21の上面21a上に立って作業する場合がある。その場合、例えば、点検個所が任意の階の扉の開閉装置である場合、移動制御部114は、保守作業員Wが起立した状態で保守作業員Wの作業可能な範囲に当該扉の開閉装置がくるように乗りかご21の停止位置を調整し、乗りかご21を停止させる。これにより、保守作業員Wがより作業しやすい位置に乗りかご21が停止するため、保守作業員Wの作業効率を向上させることができる。
【0059】
報知制御部115は、点検位置において、保守作業員Wに入力された数字により指定された点検パターンの詳細情報に基づいて、保守作業員Wに点検を行う方向を報知するように報知部40を制御する。エレベータの各点検位置における点検個所は各階のドア周りなど多岐にわたる。そこで、報知制御部115の指示に基づき報知部40により、予め設定された点検順序に基づき保守作業員Wに点検を行う方向を報知することで、点検位置に到着した際に保守作業員Wは点検対象を容易に把握することができ、点検漏れを抑制することができる。
【0060】
<点検支援システムの動作の一例>
エレベータの保守作業員Wが乗車する乗りかご21の移動を制御するエレベータ制御装置10の移動制御方法は、乗りかご21を予め設定された1つ以上の点検位置に移動させる移動制御ステップと、保守作業員Wによる所定の操作入力の有無を判定する操作入力判定ステップと、を含み、移動制御ステップでは、操作入力判定ステップにおいて所定の操作入力が継続されていると判定される期間において、乗りかご21を次の点検位置に移動させる。
【0061】
図3は、エレベータ制御装置10の動作の一例を示すフロー図である。エレベータ制御装置10は、エレベータの点検が開始されると、点検順序決定部112が点検順序を決定する(ステップS1)。その後、操作入力判定部113は、スイッチ31が押下されたか否かを判定する(ステップS2)。スイッチ31が押下された場合(ステップS2でYES)、移動制御部114は、スイッチ31が押下されている期間、乗りかご21を次の点検位置に向かって移動させる(ステップS3)。スイッチ31が押下されていない場合(ステップS2でNO)、移動制御部114は、ステップS2の処理を繰り返す。
【0062】
操作入力判定部113は、スイッチ31の押下が継続されているか否かを判定する(ステップS4)。スイッチ31の押下が継続されている場合(ステップS4でYES)、移動制御部114は、乗りかご21が次の点検位置に到着したか否かを判定する(ステップS5)。
【0063】
乗りかご21が次の点検位置に到着した場合(ステップS5でYES)、移動制御部114は、乗りかご21を減速させて停止する(ステップS6)。また、報知制御部115は、報知部40を制御して点検方向を保守作業員Wに報知する(ステップS7)。
【0064】
移動制御部114は、エレベータの点検が終了したか否かを判定する(ステップS8)。エレベータの点検が終了した場合(ステップS8でYES)、エレベータ制御装置10は、処理を終了する。エレベータの点検が終了していない場合(ステップS8でNO)、ステップS2の処理に戻る。
【0065】
スイッチ31の押下が解除された場合(ステップS4でNO)、エレベータ制御装置10は、乗りかご21を停止させる(ステップS9)。そして、ステップS2の処理に戻る。
【0066】
乗りかご21が次の点検位置に到着していない場合(ステップS5でNO)、ステップS4の処理を行う。
【0067】
〔ソフトウェアによる実現例〕
エレベータ制御装置10(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に制御部11に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0068】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0069】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0070】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0071】
また、上記実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0072】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0073】
10 エレベータ制御装置(移動制御装置)
31 スイッチ
112 点検順序決定部
113 操作入力判定部
114 移動制御部
115 報知制御部
L1 身長
W 保守作業員
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-04-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの保守作業員が乗車する乗りかごの移動を制御する移動制御装置であって、
前記乗りかごを予め設定された1つ以上の点検位置に移動させる移動制御部と、
前記保守作業員による所定の操作入力の有無を判定する操作入力判定部と、を備え、
前記移動制御部は、前記操作入力判定部において前記所定の操作入力が継続されていると判定される期間において、前記乗りかごを次の前記点検位置に移動させ、前記所定の操作入力が中断されると前記乗りかごの移動を停止させる、
移動制御装置。
【請求項2】
前記操作入力判定部は、前記保守作業員により所定のスイッチが押下されている間、前記所定の操作入力が継続されていると判定する、請求項1に記載の移動制御装置。
【請求項3】
前記乗りかごが前記点検位置に停止する場合の前記乗りかごの減速の度合いは、前記所定の操作入力が解除された際の前記乗りかごが停止する場合の前記乗りかごの減速の度合いよりも小さい、請求項1に記載の移動制御装置。
【請求項4】
前記点検位置において、前記保守作業員に点検を行う方向を報知する報知制御部をさらに備えている、請求項1に記載の移動制御装置。
【請求項5】
前記移動制御部は、前記保守作業員の身長に応じて前記乗りかごの停止位置を調整する、請求項1に記載の移動制御装置。
【請求項6】
点検開始時の前記乗りかごの位置に応じて、前記乗りかごの運転距離が最も短くなる点検順序を決定する点検順序決定部をさらに備え、
前記移動制御部は、前記点検順序決定部が決定した前記点検順序に沿って前記乗りかごを移動させる、請求項1に記載の移動制御装置。
【請求項7】
エレベータの保守作業員が乗車する乗りかごの移動を制御する移動制御装置の移動制御方法であって、
前記乗りかごを予め設定された1つ以上の点検位置に移動させる移動制御ステップと、
前記保守作業員による所定の操作入力の有無を判定する操作入力判定ステップと、を含み、
前記移動制御ステップでは、前記操作入力判定ステップにおいて前記所定の操作入力が継続されていると判定される期間において、前記乗りかごを次の前記点検位置に移動させ、前記所定の操作入力が中断されると前記乗りかごの移動を停止させる、移動制御方法。