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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129173
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20240919BHJP
【FI】
H01L21/306 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038196
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 州作
(72)【発明者】
【氏名】加藤 視紅磨
(72)【発明者】
【氏名】川野 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 友哉
【テーマコード(参考)】
5F043
【Fターム(参考)】
5F043AA35
5F043BB23
5F043DD07
5F043EE01
5F043EE05
5F043EE24
5F043GG10
(57)【要約】
【課題】半導体基板等の基板の処理液による処理を均等化することを可能にした基板処理装置を提供する。
【解決手段】実施形態の基板処理装置1は、処理液で処理される複数の基板Wが、それらの基板面を略水平方向に向けて第1方向に配列された状態で配置され、処理液による複数の基板Wの処理が行われる第1領域A1と、第1領域A1の近傍に設けられた第2領域A2と、第1領域A1と第2領域A2との間に処理液が移動可能なように設けられた第3領域A3とを備える処理槽10と、処理槽10の第2領域A2内の処理液内に位置するように配置され、処理液に流れが生じるように移動する移動体20と、移動体20を移動させる移動機構30とを具備する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液で処理される複数の基板が、それらの基板面を略水平方向に向けて第1方向に配列された状態で配置され、前記処理液による前記複数の基板の処理が行われる第1領域と、前記第1領域の近傍に設けられた第2領域と、前記第1領域と前記第2領域との間に前記処理液が移動可能なように設けられた第3領域とを備える処理槽と、
前記処理槽の前記第2領域内の前記処理液内に位置するように配置され、前記処理液に流れが生じるように移動する移動体と、
前記移動体を移動させる移動機構と
を具備する基板処理装置。
【請求項2】
前記第2領域は、前記第1領域と前記第1方向に沿って、又は前記第1方向と水平方向に交差する第2方向に沿って隣接するように設けられており、
前記第1領域と前記第2領域との間には、前記処理槽の底面との間に前記第3領域が位置するように仕切り板が設けられており、
前記移動体は、前記第1方向に沿って配置されており、
前記移動機構は、前記移動体を前記第1方向と垂直方向に交差する第3方向に沿って移動させる、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記第2領域は、前記第3領域を間に挟んで、前記第1方向と水平方向に交差する第2方向に沿って前記第1領域と並んで設けられており、
前記移動体は、前記第1方向に沿って配置されており、
前記移動機構は、前記移動体を前記第2方向に沿って移動させる、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記第2領域は、前記第3領域を間に挟んで、前記第1方向と垂直方向に交差する第3方向に沿って前記第1領域と並んで設けられており、
前記移動体は、前記第1方向に沿って配置されており、
前記移動機構は、前記移動体を前記第3方向に沿って移動させる、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記移動体は、前記処理液内に配置される板状体を備える、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程においては、半導体基板上に形成された各種の膜をエッチングする工程が実施されている。例えば、メモリセルを三次元に積み上げた三次元積層型不揮発性メモリデバイスでは、メモリホールの周囲に絶縁膜と導電膜とを積層した積層体を形成するにあたって、ケイ素酸化物膜とケイ素窒化物膜とを交互に積層した積層体に対し、ケイ素窒化物膜を選択的にエッチングする工程が実施される。エッチング工程では、例えばエッチング液を収容した処理槽に複数の半導体基板を浸漬することによりエッチング工程を実施する基板処理装置が用いられる。このような基板処理装置においては、処理槽内に配置された半導体基板全体に対して、エッチング液等の処理液の流れを均等化し、半導体基板の処理液による処理を均等化することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-197814号公報
【特許文献2】米国特許第10978316号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は、半導体基板等の基板の処理液による処理を均等化することを可能にした基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の基板処理装置は、処理液で処理される複数の基板が、それらの基板面を略水平方向に向けて第1方向に配列された状態で配置され、前記処理液による前記複数の基板の処理が行われる第1領域と、前記第1領域の近傍に設けられた第2領域と、前記第1領域と前記第2領域との間に前記処理液が移動可能なように設けられた第3領域とを備える処理槽と、前記処理槽の前記第2領域内の前記処理液内に位置するように配置され、前記処理液に流れが生じるように移動する移動体と、前記移動体を移動させる移動機構とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1の実施形態の基板処理装置を一部断面で示す正面図である。
図2図1に示す基板処理装置における第1の処理液の流れを示す図である。
図3図1に示す基板処理装置における第2の処理液の流れを示す図である。
図4図1に示す基板処理装置における処理液の流れの数値解析結果を示す図である。
図5図1に示す基板処理装置における処理液の流速分布を示す図である。
図6図1に示す基板処理装置における反応生成物としてのシリカの濃度分布を示す図である。
図7】比較例の基板処理装置における処理液の流れの数値解析結果を示す図である。
図8】比較例の基板処理装置における処理液の流速分布を示す図である。
図9】比較例の基板処理装置における反応生成物としてのシリカの濃度分布を示す図である。
図10図1に示す基板処理装置における基板の配置を90度回転させたときの反応生成物としてのシリカの濃度分布を示す図である。
図11】第2の実施形態の基板処理装置を一部断面で示す正面図である。
図12図11に示す基板処理装置における処理液の流れの数値解析結果を示す図である。
図13図11に示す基板処理装置における処理液の流速分布を示す図である。
図14図11に示す基板処理装置における反応生成物としてのシリカの濃度分布を示す図である。
図15】第3の実施形態の基板処理装置を一部断面で示す正面図である。
図16図15に示す基板処理装置における処理液の流れの数値解析結果を示す図である。
図17図15に示す基板処理装置における処理液の流速分布を示す図である。
図18図15に示す基板処理装置における反応生成物としてのシリカの濃度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の基板処理装置について、図面を参照して説明する。なお、各実施形態において、実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、その説明を一部省略する場合がある。図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各部の厚さの比率等は現実のものとは異なる場合がある。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態の基板処理装置を一部断面で示す正面図である。図1に示す基板処理装置1は、複数の基板Wを一括して処理液で処理するバッチ式処理装置であって、処理液を貯留する処理槽10と、処理槽10に貯留された処理液内に位置するように配置され、処理液に流れが生じるように移動する移動体20と、移動体20を移動させる移動機構30とを具備している。各部の具体的な構成を以下に詳述する。
【0009】
処理槽10は、処理液を貯留すると共に、処理液で処理される複数の基板Wを所定の方向に配列された状態で収容する。処理槽10は、複数の基板Wが収容される第1領域A1と、第1領域A1の近傍に設けられた第2領域A2と、第1領域A1と第2領域A2との間に処理液が移動可能なように設けられた第3領域A3とを備えている。第1領域A1と第2領域A2との間には仕切り板21が設けられており、仕切り板21はそれと処理槽10の底面との間に第3領域A3が存在するように設けられている。
【0010】
複数の基板Wは、それらの基板面(基板Wにおいてデバイスが形成される処理面もしくはその裏側の面)を略水平方向に向けて、例えば第1方向(図中、矢印D1で示す。)に配列された状態で収容される。処理液は基板Wの処理に応じて選択される。基板Wとして適用した半導体基板のエッチング処理を行う場合には、エッチング液が用いられる。エッチング液としては、各種公知のエッチング液が処理槽10内に貯留される。例えば、半導体基板上に設けられたケイ素窒化物膜をエッチングする場合、150℃前後に加熱されたリン酸水溶液が用いられる。
【0011】
ケイ素窒化物膜のエッチング液としてのリン酸水溶液には、一般的なHPOで表される無機リン酸(オルトリン酸)の水溶液が用いられる。HPOに代えて、もしくはHPOに加えて、H(ピロリン酸)等を用いてもよい。リン酸水溶液はケイ素窒化物のエッチングレートを高めるために、添加剤等を含有していてもよい。例えば、リン酸のアルカリ金属塩のようなリン酸塩や有機リン酸等が添加されていてもよい。ここでは、基板処理装置1をウェットエッチング装置に適用する場合について主として説明するが、基板処理装置1はこれに限定されるものではなく、基板洗浄装置等であってもよい。
【0012】
複数の基板Wは、リフター11に所定の方向(例えば、第1方向D1)に配列された状態で、略鉛直方向に立て掛けるように支持されて処理槽10の第1領域A1内に収容され、処理槽10内に貯留された処理液でエッチング処理等の所定の処理が行われる。リフター11は図示を省略した昇降ユニットによって、基板Wが処理槽10内に貯留された処理液に浸漬される処理位置(第1領域A1内の処理領域)と、処理槽10の上方における待機位置との間で昇降させることが可能とされている。複数の基板Wは、リフター11に支持された状態で、リフター11が処理位置に下降した際に、処理液に浸漬されてエッチング処理等の所定の処理が行われる。リフター11は、複数の基板Wを所定の間隔で支持することが可能なように設けられた、複数の基板Wの下縁中央部を支持する中央支持部材12と、複数の基板Wの側部を支持する一対の側部支持部材13A、13Bとを有する。
【0013】
処理槽10は、処理液を循環させる、オーバーフロー部14、循環ポンプ15、処理液を吐出させる処理液ノズル16、オーバーフロー部14と循環ポンプ15とを接続する第1配管17、及び循環ポンプ15と処理液ノズル16とを接続する第2配管18とを有する循環系を備えている。図示を省略したが、処理槽10には処理液を供給する処理液供給部や、必要に応じて処理液の温度を調整する処理液温調部等が設けられていてもよい。循環系中には処理液中の固形の反応生成物等を除去するためのフィルタが設けられてもよい。オーバーフロー部14は、処理槽10の上縁部に設けられており、処理液の循環により処理槽10の上縁から溢れた処理液を回収する。オーバーフロー部14で回収された処理液は、第1配管17を介して循環ポンプ15に送られる。循環ポンプ15から吐出された処理液は、第2配管18を介して処理液ノズル16に送られる。処理液は、処理液ノズル16から処理槽10内に吐出されることにより循環している。
【0014】
処理槽10は、リフター11に支持された複数の基板Wの処理領域を有する第1領域A1と、第1方向D1と水平方向に交差する第2方向D2に沿って第1領域A1と隣接する第2領域A2と、第1領域A1と第2領域A2との間に処理液が移動可能なように、第1方向D1と垂直方向に交差する第3方向D3に延伸する仕切り板21との間の空間に設けられた第3領域A3とを備えている。第1領域A1及び第2領域A2のいずれにも、処理液が貯留されている。第1領域A1と第2領域A2とを接続する第3領域A3にも、当然ながら処理液が満たされており、処理液を流通させることが可能とされている。
【0015】
第2領域A2には、処理液内に位置するように第1方向D1及び第2方向D2に沿って板状の移動体20が配置されている。移動体20は、駆動軸22を介して移動機構30に接続されている。移動機構30は、処理液内に配置された移動体20を上下方向(第3方向D3)に移動させ、移動体20の動きにより処理液に流れを生じさせるものである。移動体20は、例えば板状体により構成されており、複数の基板Wの配列と対応するように第1方向D1に延伸している。このような板状の移動体20を処理液内で上下方向(第3方向D3)に反復して移動させることによって、処理液に移動体20の移動に応じて流れが生じる。
【0016】
第1の実施形態の基板処理装置1における処理液の流れについて、図2及び図3を参照して説明する。図2図1に示す基板処理装置1における移動体20の下方向の移動に伴う第1の処理液の流れを示す図、図3図1に示す基板処理装置1における移動体20の上方向の移動に伴う第2の処理液の流れを示す図である。図2に示すように、移動体20を下方向に移動(下降)させると、移動体20の移動に伴って、第2領域A2に処理液の下向きの流れF1が生じる。処理液の流れF1に続いて、第3領域A3に処理液の流れF2が生じ、流れF2に基づいて第1領域A1に処理液の上向きの流れF3が生じる。図2に示す状態に続いて、図3に示すように、移動体20を上方向に移動(上昇)させると、移動体20の移動に伴って、第2領域A2に処理液の上向きの流れF4が生じる。処理液の流れF4に続いて、第3領域A3に処理液の流れF5が生じ、流れF5に基づいて第1領域A1に処理液の下向きの流れF6が生じる。
【0017】
このように、第2領域A2の処理液内に配置した移動体20を上下方向に移動させることによって、複数の基板Wを配置した第1領域A1内に処理液の上向きの流れF3と下向きの流れF6を順に生じさせることができる。図4図1に示す基板処理装置1における処理液の流れの数値解析結果を示す図である。図4に示すように、基板Wの基板面の広範囲に対して同一方向に処理液の流れが生じることが分かる。このような処理液の流れを基板Wの基板面に対して生じさせることによって、基板Wの全面に対する処理液による処理を均一化しかつ効率化することが可能になる。
【0018】
図5図1に示す基板処理装置1を用いた際の処理液の流速分布を示している。図6図1に示す基板処理装置1を用いた際の反応生成物であるシリカの濃度分布を示している。図5及び図6は処理液としてリン酸を用いた際の処理液の流速分布と反応生成物であるシリカの濃度分布を示している。図5に示すように、実施形態の基板処理装置1を用いた場合、処理液の流速のバラツキが小さく、部分的に流速が速い部分や遅い部分の生じる割合が小さいことが分かる。さらに、図6に示すように、実施形態の基板処理装置1を用いた場合、反応生成物であるシリカの濃度分布のバラツキも小さい。これらによって、実施形態の基板処理装置1によれば、基板Wの全面に対する処理液による処理を均一化しかつ効率化することが可能になることが分かる。
【0019】
上記した実施形態の基板処理装置1との比較として、処理槽下部に処理液の噴射ノズルを配置し、噴射ノズルから噴射される処理液により処理液の流れを生じさせる従来の基板処理装置の処理液の流れを検討する。図7は比較例としての基板処理装置における処理液の流れの数値解析結果を示す図である。図7に示すように、処理槽下部に配置した噴射ノズルから処理液を噴射し、噴射される処理液により処理液の流れを生じさせた場合、処理液の流れのうち主とする上昇流に加えて、上昇流と対向する下降流が生じる。すなわち、中央に流速が速い上昇流の領域が生じ、その周辺の流速は遅くなると共に、上昇流に反向する下降流が生じる。これは、中央に流速が速い領域が生じることで、その周辺に下降流が形成されやすくなるため、周辺領域は上昇流と下降流とが対向することになる。従って、周辺領域の流速がより遅くなりやすい。これらによって、従来の基板処理装置では、基板Wの全面に対する処理液の流速がばらつきやすくなる。これは、基板Wの全面に対する処理液による処理の均一性を低下させる要因となる。
【0020】
図8図7に示す基板処理装置を用いた際の処理液の流速分布を示している。図9図7に示す基板処理装置を用いた際の反応生成物であるシリカの濃度分布を示している。図8に示すように、比較例の基板処理装置を用いた場合、処理液の流速のバラツキが大きく、部分的に流速が速い部分や遅い部分が生じやすいことが分かる。さらに、図9に示すように、比較例の基板処理装置を用いた場合、反応生成物であるシリカの濃度分布のバラツキも大きい。これらによって、比較例の基板処理装置では、基板Wの全面に対する処理液の流速のばらつきが大きく、基板の処理液による処理の均一性が低い。
【0021】
図1に示した基板処理装置1においては、複数の基板Wを第1方向D1に配列された状態で第1領域A1に収容しているが、複数の基板Wの配列方向は第2方向D2であってもよい。すなわち、図1に示した基板処理装置1において、複数の基板Wを90度回転させた状態で配置してもよい。図4に示したように、処理液は下から上に向かって流れるため、複数の基板Wの配列方向は第1方向D1及び第2方向D2のいずれであっても、処理液の流速のバラツキ及び反応生成物であるシリカの濃度分布のバラツキを小さくすることができる。図10図1に示す基板処理装置1における基板Wの配置を90度回転させたときの反応生成物としてのシリカの濃度分布を示す。図10に示すように、基板Wの配置を90度回転させた場合であっても、シリカの濃度分布のバラツキを小さくすることができる。これは図6との対比から明らかである。
【0022】
(第2の実施形態)
図11は第2の実施形態の基板処理装置を一部断面で示す正面図である。図11に示す基板処理装置1は、第1の実施形態の基板処理装置1と同様に、複数の基板Wを一括して処理液で処理するバッチ式処理装置であって、処理液を貯留する処理槽10と、処理槽10に貯留された処理液内に位置するように配置され、処理液に流れが生じるように移動する移動体20と、移動体20を移動させる移動機構30とを具備している。以下においては、図11に示す第2の実施形態の基板処理装置1の図1に示す第1の実施形態の基板処理装置1との違いについて、主として説明する。
【0023】
図11に示す基板処理装置1の処理槽10において、第2領域A2は複数の基板Wが収容される第1領域A1の近傍に、第1領域A1と第2方向D2に沿って並んで設けられている。この点は図1に示す基板処理装置1と同様である。ただし、第1領域A1と第2領域A2との間に仕切り板21は設けられておらず、第1領域A1と第2領域A2との間が第3領域A3とされている。複数の基板Wは、それらの基板面を略水平方向に向けて、第1方向D1に沿って配列された状態で収容される。
【0024】
第2領域A2には、処理液内に位置するように第1方向D1及び第3方向D3に沿って板状の移動体20が配置されている。板状の移動体20は、その板面が複数の基板Wの配列に対向するように、第1方向D1に延伸している。移動体20は、駆動軸22を介して移動機構30に接続されている。移動機構30は、処理液内に配置された移動体20を第2方向D2(図中、左右方向)に繰り返し反復移動させ、移動体20の動きにより処理液に流れを生じさせるものである。このような板状の移動体20を処理液内で左右方向(第2方向D2)に反復移動させることによって、処理液に移動体20の移動に応じて流れが生じる。
【0025】
このように、第2領域A2の処理液内に配置した移動体20を左右方向に反復移動させることによって、複数の基板Wを配置した第1領域A1内に処理液の左向きの流れと右向きの流れを順に生じさせることができる。図12図11に示す基板処理装置1における処理液の流れの数値解析結果を示す図である。図12に示すように、基板Wの基板面の広範囲に対して同一方向に処理液の流れが生じることが分かる。このような処理液の流れを基板Wの基板面に対して生じさせることによって、基板Wの全面に対する処理液による処理を均一化しかつ効率化することが可能になる。
【0026】
図13図11に示す基板処理装置1を用いた際の処理液の流速分布を示している。図14図11に示す基板処理装置1を用いた際の反応生成物であるシリカの濃度分布を示している。図13及び図14は処理液としてリン酸を用いた際の処理液の流速分布と反応生成物であるシリカの濃度分布を示している。図13に示すように、実施形態の基板処理装置1を用いた場合、処理液の流速のバラツキが小さく、部分的に流速が速い部分や遅い部分の生じる割合が小さいことが分かる。さらに、図14に示すように、実施形態の基板処理装置1を用いた場合、反応生成物であるシリカの濃度分布のバラツキも小さい。これらによって、実施形態の基板処理装置1によれば、基板Wの全面に対する処理液による処理を均一化しかつ効率化することが可能になることが分かる。
【0027】
(第3の実施形態)
図15は第3の実施形態の基板処理装置を一部断面で示す正面図である。図15に示す基板処理装置1は、第1の実施形態の基板処理装置1と同様に、複数の基板Wを一括して処理液で処理するバッチ式処理装置であって、処理液を貯留する処理槽10と、処理槽10に貯留された処理液内に位置するように配置され、処理液に流れが生じるように移動する移動体20と、移動体20を移動させる移動機構30とを具備している。以下においては、図15に示す第3の実施形態の基板処理装置1の図1に示す第1の実施形態の基板処理装置1との違いについて、主として説明する。なお、図15に示す基板処理装置1の図1に示す基板処理装置1との同一部分については、一部説明を省略する。
【0028】
図15に示す基板処理装置1の処理槽10は、処理液を貯留すると共に、処理液で処理される複数の基板Wが第1方向D1に沿って配列された状態で収容される第1領域A1と、第1領域A1と第3方向D3(上下方向)に沿って並んで設けられた第2領域A2と、第1領域A1と第2領域A2との間に処理液が移動可能なように設けられた第3領域A3とを備えている。第2領域A2は第1領域A1の下側近傍に配置されている。第1領域A1と第2領域A2との間に、仕切り板等は設けられておらず、第1領域A1と第2領域A2との間が第3領域A3とされている。
【0029】
第2領域A2には、処理液内に位置するように第1方向D1及び第2方向D2に沿って第1領域A1の下側に板状の移動体20が配置されている。移動体20は、板状体の4隅に設けられた駆動軸22を介して移動機構30に接続されている。板状体の4隅に設けられた駆動軸22に代えて、移動体20は板状体の一辺に設けられた板状の駆動体を有していてもよい。移動機構30は、処理液内に配置された移動体20を上下方向(第3方向D3)に移動させ、移動体20の動きにより処理液に流れを生じさせるものである。移動体20は、例えば板状体により構成されており、その板面が複数の基板Wの配列に対向するように、第1方向D1に延伸している。このような板状の移動体20を処理液内で上下方向(第3方向D3)に反復移動させることによって、処理液に移動体20の移動に応じて流れが生じる。
【0030】
このように、第2領域A2の処理液内に配置した移動体20を上下方向に反復移動させることによって、複数の基板Wを配置した第1領域A1内に処理液の上向きの流れと下向きの流れを順に生じさせることができる。図16図15に示す基板処理装置1における処理液の流れの数値解析結果を示す図である。図16に示すように、基板Wの基板面の広範囲に対して同一方向に処理液の流れが生じることが分かる。このような処理液の流れを基板Wの基板面に対して生じさせることによって、基板Wの全面に対する処理液による処理を均一化しかつ効率化することが可能になる。
【0031】
図17図15に示す基板処理装置1を用いた際の処理液の流速分布を示している。図18図15に示す基板処理装置1を用いた際の反応生成物であるシリカの濃度分布を示している。図17及び図18は処理液としてリン酸を用いた際の処理液の流速分布と反応生成物であるシリカの濃度分布を示している。図17に示すように、実施形態の基板処理装置1を用いた場合、処理液の流速のバラツキが小さく、部分的に流速が速い部分や遅い部分の生じる割合が小さいことが分かる。さらに、図18に示すように、実施形態の基板処理装置1を用いた場合、反応生成物であるシリカの濃度分布のバラツキも小さい。これらによって、実施形態の基板処理装置1によれば、基板Wの全面に対する処理液による処理を均一化しかつ効率化することが可能になることが分かる。
【0032】
図15に示した基板処理装置1においては、複数の基板Wを第1方向D1に配列された状態で第1領域A1に収容しているが、複数の基板Wの配列方向は第2方向D2であってもよい。すなわち、図15に示した基板処理装置1において、複数の基板Wを90度回転させた状態で配置してもよい。このように、図15に示した基板処理装置1において、処理液は下から上に向かって流れると共に、上から下に向かって流れるため、複数の基板Wの配列方向は第1方向D1及び第2方向D2のいずれであっても、処理液の流速のバラツキ及び反応生成物であるシリカの濃度分布のバラツキを小さくすることができる。
【0033】
なお、上述した各実施形態の構成は、それぞれ組合せて適用することができ、また一部置き換えることも可能である。ここでは、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図するものではない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施し得るものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の省略、置き換え、変更等を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0034】
1…基板処理装置、10…処理槽、11…リフター、14…オーバーフロー部、15…循環ポンプ、20…移動体、21…仕切り板、22…駆動軸、30…移動機構。
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