(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129175
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】椅子のヘッドレスト
(51)【国際特許分類】
A47C 7/38 20060101AFI20240919BHJP
【FI】
A47C7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038199
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000108627
【氏名又は名称】タカノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 智昭
【テーマコード(参考)】
3B084
【Fターム(参考)】
3B084DB02
3B084DC02
3B084DD01
(57)【要約】
【課題】コンパクトな構成でありながらも使用者の体格や体型に応じて適切な位置で使用者の頭部に頭受部を当接させることができ、省スペースでの椅子の使用が可能な椅子のヘッドレストを提供すること。
【解決手段】椅子100の背凭れ40の上端部に着脱可能であって、背凭れ40の上側前方に向けて延出され、後方側が凸となる円弧状に形成された筒部72Aを有するベース71と、背凭れ40の上側前方に向けて延出され、後方側が凸となる円弧状に形成されると共に筒部72Aの内部空間に挿入され、筒部72Aの延設方向に沿ってスライド移動可能なアーム76と、アーム76の上端に取り付けられた頭受部79と、を具備することを特徴とする椅子のヘッドレスト70である。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
椅子の背凭れの上端部に着脱可能であって、前記背凭れの上側前方に向けて延出され、後方側が凸となる円弧状に形成された筒体を有するベースと、
前記背凭れの上側前方に向けて延出され、後方側が凸となる円弧状に形成されると共に前記筒体の内部空間に挿入され、前記筒体の延設方向に沿ってスライド移動可能なアームと、
前記アームの上端に取り付けられた頭受部と、を具備することを特徴とする椅子のヘッドレスト。
【請求項2】
前記アームには前記アームの外壁面から前記筒体の内壁面の側に突出し、少なくとも前記筒体の前記内壁面の位置まで弾性変形可能な係合爪が形成されており、
前記筒体の前記内壁面には前記筒体の前記延設方向に沿って前記係合爪が係合可能な係合部が複数箇所に設けられていることを特徴とする請求項1記載の椅子のヘッドレスト。
【請求項3】
前記係合爪は、側面視三角形状に形成されていると共に、下側から上側に近づくにつれて幅寸法が徐々に小さくなっていることを特徴とする請求項2記載の椅子のヘッドレスト。
【請求項4】
前記アームの幅方向両端部における厚さ寸法が、前記アームの幅方向における他の部分の厚さ寸法よりも大きく形成されていることを特徴とする請求項1~3のうちのいずれか一項に記載の椅子のヘッドレスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は椅子のヘッドレストに関する。
【背景技術】
【0002】
椅子のヘッドレストには様々なものが提案されている。このような椅子のヘッドレストとしては、たとえば特許文献1(特開2003-325596号公報)に示すようなものが提案されている。
【0003】
特許文献1に開示されている椅子のヘッドレストは、椅子の背凭れに取り付けられ、頭受部が椅子の高さ方向および前後方向に移動させることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-325596号公報(明細書段落0020―0024、
図4、
図5等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている椅子のヘッドレストによれば、使用者の体格や体型等に応じて適切な位置で使用者の頭部に当接させることができるが、椅子の背面側に広いスペースを確保しなければならないといった課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明は上記課題を解決するためのものであり、その目的とするところは、コンパクトな構成でありながらも使用者の体格や体型に応じて適切な位置で使用者の頭部に頭受部を当接させることができ、省スペースでの椅子の使用が可能な椅子のヘッドレストを提供することにある。
【0007】
上記目的を達成するため発明者が鋭意研究した結果、以下の構成に想到した。すなわち本発明は、椅子の背凭れの上端部に着脱可能であって、前記背凭れの上側前方に向けて延出され、後方側が凸となる円弧状に形成された筒体を有するベースと、前記背凭れの上側前方に向けて延出され、後方側が凸となる円弧状に形成されると共に前記筒体の内部空間に挿入され、前記筒体の延設方向に沿ってスライド移動可能なアームと、前記アームの上端に取り付けられた頭受部と、を具備することを特徴とする椅子のヘッドレストである。
【0008】
これにより、アームがベースの円弧に沿って上下方向に突出入するので、椅子の背面側に大きなスペースを必要とせず、コンパクトな構成でありながらも使用者の体格や体型に応じて適切な位置で使用者の頭部に頭受部を当接させることができ、省スペースでの椅子の使用が可能になる。
【0009】
また、前記アームには前記アームの外壁面よりも前記筒体の内壁面の側に突出し、少なくとも前記筒体の前記内壁面の位置まで弾性変形可能な係合爪が形成されており、前記筒体の前記内壁面には前記筒体の前記延設方向に沿って前記係合爪が進入可能な係合部が複数箇所に設けられていることが好ましい。さらに、前記係合爪は、側面視三角形状に形成されていると共に、下側から上側に近づくにつれて幅寸法が徐々に小さくなっていることがより好ましい。
【0010】
これらにより、椅子のヘッドレストの高さ調整が容易になり、調整完了後は椅子のヘッドレストの高さを確実に維持することができる。
【0011】
また、前記アームの幅方向両端部における厚さ寸法が、前記アームの幅方向における他の部分の厚さ寸法よりも大きく形成されていることが好ましい。
【0012】
これにより、筒体の内部空間におけるアームの差し込みおよび引き出しを円滑に行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る椅子のヘッドレストの構成を採用することにより、コンパクトな構成でありながらも使用者の体格や体型に応じて適切な位置で使用者の頭部に頭受部を当接させることができ、省スペースでの椅子の使用が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態における椅子のヘッドレストを装着した椅子を正面側から臨んだ斜視図である。
【
図2】本実施形態における椅子のヘッドレストを装着した椅子を背面側から臨んだ斜視図である。
【
図3】本実施形態における椅子のヘッドレストを装着した椅子を左側から臨んだ図である。
【
図4】本実施形態における椅子のヘッドレストを装着した椅子を右側から臨んだ図である。
【
図6】ランバーサポートの要部構造を示す分解図である。
【
図7】ランバーサポートの背凭れへの取り付け構造図である。
【
図8】ランバーサポ―トの筐体の詳細構造図である。
【
図10】背凭れの上部と椅子のヘッドレスト部分を正面側から臨んだ図である。
【
図11】背凭れの上部と椅子のヘッドレスト部分を背面側から臨んだ図である。
【
図12】本実施形態における椅子のヘッドレストを正面側から臨んだ分解図である。
【
図13】本実施形態における椅子のヘッドレストを背面側から臨んだ分解図である。
【
図14】本実施形態における椅子のヘッドレストを左側から臨んだ分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の構成を図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、本明細書において、前後左右の方向は着座者を中心に定められている。即ち、「前あるいは前方」とは座部30および背凭れ40のそれぞれにおいて椅子100および着座者にとっての前あるいは前方であり、「後あるいは後方」とは同様に椅子100および着座者にとっての後あるいは後方である。また、前後方向と水平面内において直交する方向が座部30および背凭れ40のそれぞれにおいて着座者にとっての左右方向であり、椅子100の幅方向でもある。さらに、「上」および「下」は、座部30および背凭れ40のそれぞれにおいて椅子100および着座者にとっての上および下であり、鉛直面内の上と下である。
【0016】
図1~
図4は、本発明に係る椅子100のヘッドレスト70(以下、単にヘッドレスト70という)が装着された椅子100の一実施形態を示す。本実施形態における椅子100は、脚支柱10、脚支柱10に取り付けられたメインフレーム20、メインフレーム20に揺動可能に連結された座部30および背凭れ40、背凭れ40に取り付けられたランバーサポート50、肘掛け60およびヘッドレスト70を具備する。ランバーサポート50は、背枠41の背面(後面)側において背枠41の左右方向に掛け渡された状態で背枠41に着脱可能に取り付けられている。肘掛け60は、座部30の底面左右両側にねじにより着脱可能に取り付けられている。ヘッドレスト70は、背枠41の上端部にクランプさせることにより背凭れ40に着脱可能に取り付けられている。
【0017】
(脚支柱10)
本実施形態における脚支柱10は、
図1~
図4に示すように各々の先端部にキャスター11が取り付けられると共に各々の基端部が脚支柱10の下端部に平面視放射状に取り付けられた5本の脚羽根12を有している。また、本実施形態における脚支柱10には、脚支柱10を高さ方向に伸縮させるための昇降機構(図示はせず)が内蔵されている。この昇降機構は、
図2と
図4に示すように、座部30の右側面に配設された昇降レバー34の操作により昇降動作の操作が行われる。このようにして形成された脚支柱10の上端部には、
図2~
図4に示すようにメインフレーム20が取り付けられている。
【0018】
(メインフレーム20)
メインフレーム20は、下面の筒状部21が脚支柱10のガススプリングに嵌合されることにより脚支柱10に支持されている。メインフレーム20の前方には、左右一対の前リンク22が配設されている。メインフレーム20は、後方部分の左右両側面に配設された背凭れ連結部(図示はせず)に背枠41に取り付けられた背凭れフレーム42が揺動可能に連結されている。また、メインフレーム20の背凭れ連結部から上側に起立する背凭れフレーム42の起立部43には、回転軸(図示はせず)を介して座部支持部材31が連結されている。そしてメインフレーム20の前方部分に配設された前リンク22には、座部30を取り付けるための座部支持部材31が連結されている。このように本実施形態におけるメインフレーム20は、座部30と背枠41(背凭れ40)とを揺動自在に支持している。
【0019】
また、メインフレーム20は、構造物としての機械的剛性(特に捻り剛性等)を高めると共に内側に圧縮コイルばねを含む反力機構(図示省略)を収容するため箱形をなしている。この反力機構は、メインフレーム20の後端側に揺動自在に支持されている背枠41とメインフレーム20の前端側のリンク軸(本実施形態では、反力調整用の操作軸も兼ねている:図示省略)との間に背凭れ40の後傾に連動して背凭れ40を押し戻そうとする力を発生させるものである。このような反力機構は特開2021-61967号公報に開示されている公知の構成を採用することができるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0020】
(座部30)
座部30は、特定の構造並びに形状に限定されるものではないが、本実施形態の場合、
図5に示すように、座部支持部材31と、インナーシェル32およびクッション材33を有している。座部支持部材31、インナーシェル32およびクッション材33は、いずれも平面矩形形状に形成されている。座部支持部材31の右側面には、座部30の高さ位置調整を行う昇降機構を操作するための昇降レバー34と背凭れ40の角度調整を行うための背凭れ調整レバー35が配設されている。座部支持部材31の上面には図示しない取付金具によってインナーシェル32が固定されている。インナーシェル32の上面には嵌合によりクッション材33が装着されている。クッション材33は図示しない張地により覆われている。
【0021】
インナーシェル32の中央部分にはインナーシェル32の部材厚さ方向に貫通すると共に、インナーシェル32の前後方向に長い縦長貫通孔32Aが所要間隔をあけて横方向に複数配設されている。この縦長貫通孔32Aによりインナーシェル32が撓み易くなり、クッション材33の変形に追従した形にインナーシェル32が変形しやすくなっている。また、クッション材33の中央部分には左右方向に長い凹部33Aが所要間隔をあけて前後方向に複数配設されている。凹部33Aの長さ方向両端部における所要長さ範囲には細幅凹部33Bがそれぞれ形成されており、クッション材33の意匠性を向上させている。また、クッション材33は通気性に優れた材料が用いられていることに加え、凹部33Aおよび細幅凹部33Bの部分におけるクッション材33の肉厚が薄くなっているので、特に凹部33Aおよび細幅凹部33Bの部分においてクッション材33の通気性を向上させている。さらには、凹部33Aと細幅凹部33Bが配設されていることによりクッション材33がたわみ易くなって座り心地が向上すると共に、着座者が着座した姿勢からいわゆる前ズレ姿勢になることを防止できる。
【0022】
(背凭れ40)
背凭れ40は、背枠41、背凭れフレーム42、メッシュ部材44を有している。背枠41は正面視長方形状の枠体に形成されており、着座時における使用者の腰の高さ位置を背凭れ40の前方側に突出させた側面視への字状に形成されている。背枠41の下端部の左右両側部分には背凭れフレーム42がねじ止め等によって取り付けられている。背枠41の前面(正面)にはメッシュ部材44が張設され、メッシュ部材44の外周縁の所要幅部分は背面(後面)側にくるみ込まれている。背枠41へのメッシュ部材44の張設方法は公知の手法を用いることができるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0023】
背枠41の正面(前面)左右両側にはランバーサポート取付部82が形成されており、背枠41の高さ方向の一定の範囲にわたってランバーサポート50が高さ方向にスライド移動可能に取り付けられている。また、背枠41の上端(上面)中央部分には左右方向に延びる横溝46が形成されている。この横溝46を利用して背枠41の上端部分にヘッドレスト70が着脱可能に取り付けられている。
【0024】
(ランバーサポート50)
図6はランバーサポートの分解図である。ランバーサポート50は、背枠41の左右両側のフレーム間に着脱可能に架設される。ランバーサポート50は、上下方向から見ると後方側に凸となるように湾曲した概略直方体状に形成された筐体51と、筐体51の内部空間に収容されたポンプと、ポンプに接続されたエアバッグ53と、エアバッグ53を覆うと共にメッシュ部材44に当接する当接クッション54を有している。
【0025】
ランバーサポート50の筐体51は、左右方向に細長い形状をなし、筐体51の前面側の左右両側にそれぞれ左右方向に突出する取付アーム51Aが設けられている。また、筐体51の後面側の右側には操作レバー51Bが、
図6中の一点鎖線で示されている第1第1回転軸VAの周りに矢印Aの方向(前後方向)に回動可能に取り付けられている。操作レバー51Bを、矢印Aの方向(前後方向)に回動させることにより、ポンプに接続された給気チューブ52Aを経由してエアバッグ53に給気が行われる。また、ランバーサポート50の筐体51の後面側の左側(右側の操作レバー51Bと対称となる位置)には、左方向に突出する突出片80が設けられている。
【0026】
図7はランバーサポートの背凭れへの取り付け構造図である。ランバーサポート50は、右側については取付アーム51Aと操作レバー51Bとの間、左側については取付アーム51Aと突出片80との間で、背凭れ40の右外方向又は左外方向および上下方向の3方向に開放する隙間81を有している。ランバーサポート50の筐体51は、隙間81に背枠41の左右両側のフレームが位置するように配置されて、背枠41に対して上下位置変更可能に設けられている。本実施形態における隙間81は、手指を掛けることが可能な大きさを有している。
【0027】
また、ランバーサポート50の前面(より具体的には当接クッション54の前面)は、背枠41の左右両側のフレーム間に張り渡されたメッシュ部材44に沿う形状に形成されている。また、ランバーサポート50の背面(より具体的には筐体51の背面)は、ランバーサポート50の前面と同様に、背枠41の左右両側のフレーム間に張り渡されたメッシュ部材44に沿う形状に形成されている。
【0028】
ランバーサポート50の筐体51の前面側において左右両側に突設されている取付アーム51Aは、背枠41の左右両側のフレームの前面側に回り込んで配置されている。取付アーム51Aの背面には、背枠41の左右両側のフレームに設けられたランバーサポート取付部82の案内溝83にスライド可能に係合するスライドピン84と、ランバーサポート取付部82の案内溝83よりも内側に形成された節度凹部85に選択的に係合する節度用凸部(図示はせず)と、が設けられている。
【0029】
ランバーサポート取付部82にランバーサポート50を取り付ける際は、以下のようにして行うことができる。まず、ランバーサポート取付部82に筐体51の取付アーム51Aを配置する。次に、取付アーム51Aの前面側に、板バネとして機能する取付プレート55を配置する。そして、取付プレート55をランバーサポート取付部82のねじ穴86に螺着されるねじ(図示はせず)を用いて背枠41の前面に取り付ける。このようにして背枠41に取り付けられたランバーサポート50を着座者が昇降させることにより、図示しない節度凸部と節度凹部85の嵌合位置が適宜変更し、背枠41に対するランバーサポート50の保持位置を調整することができる。
【0030】
図8はランバーサポートの筐体の詳細構造図である。筐体51は、筐体51の基本的形状を構成し、突出片80や取付アーム51Aが一体的に成形したベース部56と、背面枠57と、背面カバー58と、前面カバー59とを有する。
【0031】
ベース部56には、ポンプ(図示はせず)とポンプに取り付けられたリリースバルブ52と、が収納される収納凹部56Aが形成されている。収納凹部56Aの左側には、リリースバルブ52に接続されてポンプからのエアを供給する給気チューブ52Aが配置される給気チューブ配置凹部56Bが形成されている。
【0032】
リリースアーム90は、左側端部90Aが鉛直方向に延びる第2回転軸VBによって軸支され、前後方向に回動可能となるように設けられている。リリースアーム90の右側端部90Bは、操作レバー51Bから延びる基端押圧アーム92がその背面側に当接するように配置されている。また、リリースアーム90には、スプリング(図示はせず)が中央前面側に配置されている。
【0033】
収納凹部56A内に収納されるポンプ(図示はせず)は、握りハンドポンプと呼ばれるタイプのものを例示することができる。着座者が操作レバー51Bを前方、すなわち椅子100の前方向きに回動操作することにより、操作レバー51Bの基端押圧アーム92により図示しない鞴部を圧縮させて生じさせたエアをエアバッグ53に向けて吐出するようにしたものである。基端押圧アーム92は、鞴部の中間部分に位置し、鞴部の中間部分を効率的に凹変形させるべく、鞴部に向かって凸となる形状をなしている。
【0034】
また、鞴部が基端押圧アーム92により圧縮された後、操作レバー51Bに操作力が加えられなくなると、この種の握りハンドポンプと呼ばれるタイプのポンプとして周知のものと同様に、鞴部は外部からのエアの流入を受けて再び膨張する。これを受けて、鞴部が基端押圧アーム92を駆動し、操作レバー51Bが操作前の元の位置に復帰する。その後、着座者が操作レバー51Bの前方への回動操作と、操作レバー51Bへの操作力を解除する操作とを繰り返し行うことにより、エアがエアバッグ53に向けて順次吐出される。エアがエアバッグ53に供給され、エアバッグ53が膨張することにより当接クッション54がメッシュ部材44を背面(後面)側から正面(前面)側に張り出させることで着座者の腰部分がサポートされる。
【0035】
リリースバルブ52は、エアバッグ53のエアを外部に開放するためのもので、背面側にリリース操作ボタン(図示はせず)が設けられている。リリースアーム90の中央部の前面側には、リリースバルブ52の背面側のリリース操作ボタンが当接するように配置され、リリースアーム90によって背面から押圧されて動作する。リリース操作ボタンが押圧操作された場合にのみエアバッグ53内のエアを大気に開放し得る。本実施形態では、ポンプ、リリースバルブ52および給気チューブ52Aが一体に設けられている。
【0036】
リリースアーム90は、上述したように左側端部90Aをベース部56に前後方向に回動可能に第2回転軸VBを介して軸着すると共に中間部をリリースバルブ52の背面のリリース操作ボタンに対面させ、右側端部90Bを基端押圧アーム92の前方に位置させたものである。右側端部90Bは、ポンプをまたいでポンプの前方側を上下方向に沿って位置している。リリースアーム90の中間部は、リリース操作ボタンを確実に押圧できるようにすべく、リリース操作ボタンに向かう方向に突出している。着座者が操作レバー51Bを後方、すなわち椅子100の後方向きに回動操作してリリースアーム90の右側端部90Bを前方に押圧操作することにより、リリースアーム90の中間部でリリースバルブ52のリリース操作ボタンが押圧される。なお、リリースアーム90に設けられたスプリング(図示はせず)は、操作レバー51Bの操作力が消勢した場合に、リリースアーム90を元の待機位置に自己復帰させるための付勢部材である。
【0037】
操作レバー51Bの背面は、前方に向けて押圧する操作を行いやすくすべく、後方に開放するような凹形状、換言すれば後方に凹入する形状をなしている。さらにいえば、操作レバー51Bの背面は後方に開口する凹形状であるともいえる。また、操作レバー51Bの前面も、後方に向けて押圧する操作が行いやすくなるように、前方に開放するような凹形状、換言すれば前方に凹入する形状をなしている。さらにいえば、操作レバー51Bの前面は、前方に開口する凹形状であるともいえる。操作レバー51Bの第1回転軸VAよりも先端側の部位の厚さ寸法は、幅方向中央に近づくにつれ小さくなっている。また、操作レバー51Bと背枠41との間には、操作レバー51Bを前方に移動させる可動領域として十分な大きさの隙間81が設けられている。着座者がこの隙間81内に親指を掛け、操作レバー51Bの背面側にその他の指を掛ける等して、片手で操作できるように配置してある。
【0038】
操作レバー51Bは、前方への操作が加えられた際に、第1回転軸VAを中心に回転移動して、リリースアーム90の右側端部90Bを初期位置に残したまま、基端押圧アーム92がリリースアーム90の右側端部90Bと離間しつつ後方に移動する。このとき、基端押圧アーム92がポンプ(鞴部)を押圧して作動させる。また、操作レバー51Bは、後方への操作が加えられた際に、第1回転軸VAを中心に回動して基端押圧アーム92が前方に移動し、この基端押圧アーム92がリリースアーム90の右側端部90Bを前方に移動させる。このとき、リリースアーム90は左側端部90Aに設けた第2回転軸VBを中心に回転移動し、これに伴い中間部も前方に移動してリリースバルブ52のリリース操作ボタンを押圧操作し開放状態とする。このようにして、1つの操作レバー51Bによって、二つの機能、すなわちエアをエアバッグ53に供給する機能と、エアバッグ53のエアを外部に開放する機能とを実現することができる。
【0039】
また、エアバッグ53内に多量のエアが供給されると、エアバッグ53内のエアの圧力が大きくなる。その際に、このエアバッグ53内にさらにエアを供給すべく、このエアの圧力に抗して操作レバー51Bを前方へ操作を行うことは困難になる。このことを利用して、当接クッション54が必要以上に前方に移動することを防ぐべく、エアバッグ53内へのエアの流入量を制限するようにしている。
【0040】
なお、ベース部56の背面側には背面枠57と背面カバー58が配置される。背面枠57と背面カバー58は、ベース部56に対してはめ込まれて取り付けられ、ベース部56内に配置されるポンプやリリースアーム90やリリースバルブ52等を隠蔽して保護するようにカバーする。
【0041】
また、ベース部56の前面側には前面カバー59が配置される。前面カバー59には左右方向に延びる横長の開口部59Aが形成されている。開口部59Aからは給気チューブ52Aが露出しているため、前面カバー59の前方に配置したエアバッグ53のエアプラグ(図示はせず)を給気チューブ52Aの端部に接続してポンプからのエアをエアバッグ53に給気することができる。
【0042】
また、前面カバー59の開口部59Aにおけるリリースバルブ52の配置位置には、リリースバルブ52およびその近傍を隠して保護する第1隠蔽板59Bが開口部59Aの上下方向に沿って配置されている。また、ポンプの配置位置には、ポンプを隠して保護する第2隠蔽板59Cが開口部59Aの上下方向に沿って配置されている。この第1隠蔽板59Bと第2隠蔽板59Cの間には隙間59Dが形成されている。この隙間59Dにリリースアーム90の右側端部90Bが位置する。リリースアーム90は、上述したように第2回転軸VBを軸線として前後方向に回動する部位であるため、第1隠蔽板59B、と第2隠蔽板59Cに邪魔されることなく回動することが必要なためである。
【0043】
(肘掛け60)
肘掛け60は、
図9に示すように、肘フレーム61と肘あて支持部62と肘あて部63を有している。肘フレーム61は、平板状に形成されたベース体61Aとベース体61Aに対して直交する上側方向に起立する起立体61Bを有し、正面視L字状に形成されている。肘あて支持部62は、起立体61Bが挿入可能な内部空間を有する肘支柱62Aと肘支柱62Aに直交する肘あて支持部62Bを有し、側面視T字状に形成されている。肘支柱62Aと肘あて支持部62Bの正面(前面)側境界部分にはストッパ解除スイッチ62Cが配設されている。肘あて部63は、肘あて支持部62Bの平面形状に倣った平面形状を有する直方体状に形成されている。
【0044】
肘フレーム61は、ベース体61Aの上面を座部支持部材31の下面に当接させた状態でねじ止め等により固定される。これにより起立体61Bは座部30の座面に対し略直交方向に起立した状態になる。肘あて支持部62は、肘支柱62Aの内部空間に起立体61Bを挿入させることにより肘フレーム61に装着される。肘支柱62Aの内表面には起立体61Bに対する挿抜方向の動作を規制するストッパ(図示はせず)が設けられており、ストッパ解除スイッチ62Cを押下することでストッパを解除することができる。ストッパ解除スイッチ62Cを押下しながら肘あて支持部62を高さ方向にスライド移動させれば肘あて支持部62(肘あて部63)の高さ位置の調整が可能である。肘あて部63の配置面(下面)には装着体(図示はせず)が取り付けられており、この装着体を係合等によって肘あて支持部62Bの上面に装着している。
【0045】
(ヘッドレスト70)
ヘッドレスト70は、
図10と
図11に示すように背枠41の上端部にクランプさせることにより装着されている。ヘッドレスト70は、
図12~
図14に示すように、背枠41の上端部に着脱可能なベース71と、ベース71に挿抜可能なアーム76と、アーム76の上端に取り付けられた頭受部79を具備している。
【0046】
ベース71は、筒体72とクランパ74を有している。筒体72は、背枠41(背凭れ40)の上端部から背枠41の上側前方に向けて延設され、背枠41の背面(後面)側が凸となる円弧状に形成されている。クランパ74は、筒体72の下端部に着脱可能であって筒体72と共に背枠41をクランプするものである。本実施形態における筒体72には外装カバー73が取り付けられているが、外装カバー73は省略可能である。筒体72にはアーム76が挿入可能な側面視円弧状をなす筒部72Aが形成されており、クランパ74と共に背枠41の上端部をクランプする第1係合片72Bが筒体72の正面(前面)側に形成されている。
【0047】
また、
図13に示すように、筒体72の背面(後面)側には後述するストッパ77(係合爪)の係合部としての係合用凸部72Cが高さ方向に所要間隔をあけて複数箇所に配設されている。係合用凸部72Cは筒部72Aの幅(左右)方向の中心線を対称線とした左右対称配置に設けられている。筒体72の下端部には第2係合片74Aが形成されたクランパ74がねじ75により取り付けられている。
図10および
図11に示すように、ベース71は、背枠41の上端部に対し、筒体72の第1係合片72Bを横溝46に差し込み、クランパ74の第2係合片74Aを下側から正面(前面)側に差し込んだ状態でねじ75により着脱可能に固定されている。
【0048】
アーム76は、筒体72の筒部72Aの内部空間に挿入され、筒体72の延設方向に沿ってスライド可能とすべく筒部72Aの曲率と同一曲率の円弧状に形成されている。アーム76の幅方向両端部分76Aにおける厚さ寸法T1は、アーム76の幅方向中央部分76B(両端部分を除く部分)における厚さ寸法T2よりも大きく形成されており、アーム76は凹状や鼓型の断面形状に形成されている。このような断面形状を採用することにより、アーム76の幅方向両端部分76Aのみが筒部72Aの内壁面に当接し、アーム76と筒部72Aとの摩擦を削減すると共に、アーム76の両端部分をガイドレールとして使用することができ、筒部72Aに対するアーム76のスライド移動の円滑化が可能になる。
【0049】
また、筒部72Aとアーム76は側面視形状が緩やかな円弧状に形成されているので、頭受部79の位置を前後方向に変更可能にしながらも背枠41からの背面(後面)側への突出量を最小限にすることができる。これにより、椅子100の背面(後面)側に確保すべきスペースを最小限に抑えることができ、狭いスペースであっても椅子100のヘッドレスト70の位置調整をすることができる。
【0050】
また、アーム76の幅方向における中央部分には、厚さ寸法がさらに削減された片持ち梁状の薄肉板部77Aと薄肉板部77Aの先端部をアーム76の外壁面の背面(後面)から突出させた突出部77Bを有する係合爪としてのストッパ77が形成されている。アーム76を筒部72Aに差し込むと突出部77Bが筒部72Aの内壁面に当接して薄肉板部77Aが弾性変形し、アーム76を筒部72Aに差し込むことができる。薄肉板部77Aの弾性変形により筒部72Aの内壁面に沿ってスライド移動した突出部77Bは、筒部72Aの背面(後面)の下側所要高さ範囲に形成された係合用凸部72Cの位置で弾性変形が復元し、突出部77Bが係合用凸部72Cどうしの隙間部分に進入する。そして突出部77Bが係合用凸部72Cどうしの隙間部分に進入した際における直下位置の係合用凸部72Cと突出部77Bが係合することで、筒部72Aにアーム76が固定される。
【0051】
なお、
図14に示すように、突出部77B側面視三角形状に形成されていると共に、下側から上側に近づくにつれて幅寸法が徐々に小さくなるようになっているため、筒部72Aに対するアーム76の引き抜きは許容されるが、筒部72Aに対するアーム76の差し込みは規制される。このようなストッパ77を採用することにより、高さ位置を調整したヘッドレスト70は、使用中に高さ位置が低くなってしまうことがない。
【0052】
アーム76の上端部には頭受部79を取り付けるための取付部76Cが形成されている。頭受部79にはアーム76を幅(左右)方向に挟み込むようにしてフレーム基部79Aaが形成されており、フレーム基部79Aaと取付部76Cにはそれぞれ貫通孔(図示はせず)が形成されており、この貫通孔に位置合わせして摩擦材としてのワッシャ78Aを複数枚幅(左右)方向に重ねた状態で回転軸78Bが挿通されている。そして取付部76Cの幅(左右)方向両端面にはワッシャ78Aを押さえるための化粧ねじ78Cが取り付けられている。このようなワッシャ78A、回転軸78Bおよび化粧ねじ78Cによりアーム76の上端部に対し頭受部79が水平軸周り(
図14の矢印B方向)に回動可能に取り付けられている。
【0053】
頭受部79は、アーム76の上端部である取付部76Cに回動可能なフレーム79Aとフレーム79Aに着脱可能な頭部クッション79Bを有している。頭受部79は高さ方向の中央部分が正面(前)側に突出する湾曲形状に形成されているが、頭受部79の具体的形状は特に限定されるものではない。
【0054】
以上に、本発明に係るヘッドレスト70が装着された椅子100について実施形態に基づいて詳細に説明したが、本発明は以上の実施形態に限定されるものではない。例えば、以上の実施形態においては、ヘッドレスト70に頭受部79の高さ位置を固定するためのストッパ構造(係合用凸部72Cとストッパ77)が配設されているが、ストッパ構造の具体的形態は特に限定されるものではない。また、ストッパ構造の配設を省略したヘッドレスト70の形態を採用することもできる。
【0055】
また、以上の実施形態においては、ヘッドレスト70のアーム76の断面形状が倒コ字型に形成されているが、アーム76の断面形状は特に限定されるものではない。
【0056】
さらには、以上に説明した実施形態と明細書中に記載されている任意の構成どうしが適宜組み合わされたヘッドレスト70の形態も本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0057】
10:脚支柱
11:キャスター,12:脚羽根
20:メインフレーム
21:筒状部,22:前リンク
30:座部
31:座部支持部材,32:インナーシェル,32A:縦長貫通孔,
33:クッション材,33A:凹部,33B:細幅凹部,34:昇降レバー,
35:背凭れ調整レバー
40:背凭れ
41:背枠,42:背凭れフレーム,43:起立部,44:メッシュ部材,46:横溝
50:ランバーサポート
51:筐体,51A:取付アーム,51B:操作レバー,
52:リリースバルブ,52A:給気チューブ,
53:エアバッグ,54:当接クッション,55:取付具,
56:ベース部,56A:収納凹部,56B:給気チューブ配置凹部,
57:背面枠,58:背面カバー,
59:前面カバー,59A:開口部,59B:第1隠蔽板,59C:第2隠蔽板,
59D:隙間
60:肘掛け
61:肘フレーム,61A:ベース体,61B:起立体,
62:肘あて支持部,62A:肘支柱,62B:肘あて支持部,
62C:ストッパ解除スイッチ,
63:肘あて部
70:椅子のヘッドレスト
71:ベース,72:筒体,72A:筒部,72B:第1係合片,72C:係合用凸部,
73:外装カバー,74:クランパ,74A:第2係合片,75:ねじ,
76:アーム,76A:幅方向両端部分,76B:幅方向中央部分,76C:取付部,
77:ストッパ,77A:薄肉板部,77B:突出部,
78A:ワッシャ,78B:回転軸,78C:化粧ねじ,
79:頭受部,79A:フレーム,79Aa:フレーム基部,79B:頭部クッション
80:突出片,81:隙間,82:ランバーサポート取付部,83:案内溝,
84:スライドピン,85:節度凹部,86:ねじ穴
90:リリースアーム,90A:左側端部,90B:右側端部,92:基端押圧アーム
100:椅子
T1:厚さ寸法
T2:厚さ寸法
VA:第1回転軸
VB:第2回転軸