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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129180
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】電動機
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/20 20060101AFI20240919BHJP
   H02K 5/08 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
H02K5/20
H02K5/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038206
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢▲崎▼ 学
【テーマコード(参考)】
5H605
【Fターム(参考)】
5H605AA01
5H605BB05
5H605BB17
5H605CC01
5H605CC02
5H605DD13
5H605EB10
5H605GG18
(57)【要約】
【課題】 電動機において、モールド樹脂の膨張を許容すると共に、製造作業を容易にする。
【解決手段】 電動機1は、周壁6、及び周壁の両端に設けられた一対の端壁7、8を有する円筒形のケーシング2と、周壁の内周面に沿って設けられる円筒形のステータ3と、ステータの内側に配置され、ケーシングに回転可能に支持されたロータ4とを有する。ステータは、ステータコア15と、ステータコアに巻き回されたステータ巻線16と、ステータコア及びステータ巻線をモールドするモールド樹脂17とを有する。ステータと、端壁の一方との間に、可撓性を有するスペーサ20が介装されている。スペーサは、モールド樹脂よりも低い弾性率を有するとよい。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機であって、
周壁と、前記周壁の両端に設けられた一対の端壁とを有する円筒形のケーシングと、
前記周壁の内周面に沿って設けられる円筒形のステータと、
前記ステータの内側に配置され、前記ケーシングに回転可能に支持されたロータとを有し、
前記ステータは、ステータコアと、前記ステータコアに巻き回されたステータ巻線と、前記ステータコア及び前記ステータ巻線をモールドするモールド樹脂とを有し、
前記ステータと、前記端壁の一方との間に、可撓性を有するスペーサが介装されている電動機。
【請求項2】
前記スペーサは、前記モールド樹脂よりも低い弾性率を有する請求項1に記載の電動機。
【請求項3】
前記スペーサの単位体積当たりの質量は、前記モールド樹脂の単位体積当たりの質量よりも小さい請求項2に記載の電動機。
【請求項4】
前記スペーサは、環状の板状部と、前記板状部に突設された可撓性を有する複数の凸部とを有し、
前記板状部及び前記凸部の一方が、前記ステータに当接し、
前記板状部及び前記凸部の他方が、前記端壁に当接している請求項1に記載の電動機。
【請求項5】
複数の前記凸部は、前記ステータの軸線を中心とした放射方向に配列されている請求項4に記載の電動機。
【請求項6】
複数の前記凸部のそれぞれは、柱状に形成され、前記板状部から前記ステータの軸線と平行に直線状に延びている請求項5に記載の電動機。
【請求項7】
前記板状部は、前記ステータに当接すると共に、その外周部において前記周壁に当接している請求項5に記載の電動機。
【請求項8】
前記端壁には、冷却液が流れる第1冷却液通路が形成されている請求項1~請求項7のいずれか1つの項に記載の電動機。
【請求項9】
前記第1冷却液通路は、前記ステータの軸線を中心とした周方向に延びている請求項8に記載の電動機。
【請求項10】
前記第1冷却液通路は、前記周壁に形成された第2冷却液通路に接続している請求項8に記載の電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ステータコアと、ステータコアに巻き回されたステータ巻線と、ステータコアの周方向外周部に設けられたケーシングと、ステータコア、ステータ巻線、及びケーシングの隙間に充填された熱伝導を有するモールド樹脂とを有するステータを開示している。モールド樹脂は、ステータ巻線において発生した熱をケーシングに放熱する。
【0003】
モールド樹脂は、ステータ巻線の昇温によって膨張する。モールド樹脂の膨張を許容するために、特許文献2は、ケーシングの端壁とモールド樹脂の端部との間に隙間を設けた電動機を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-69226号公報
【特許文献2】特開2004-120923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ケーシングの端壁との間に微小な隙間を残して、モールド樹脂をモールドするためには、隙間を形成するための成形型が必要になる等、製造工程が複雑になるという問題がある。また、微小な隙間を精度良く形成することが難しいという問題がある。
【0006】
本発明は、以上の背景を鑑み、電動機において、モールド樹脂の膨張を許容すると共に、製造作業を容易にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、電動機(1)であって、周壁(6)と、前記周壁の両端に設けられた一対の端壁(7、8)とを有する円筒形のケーシング(2)と、前記周壁の内周面に沿って設けられる円筒形のステータ(3)と、前記ステータの内側に配置され、前記ケーシングに回転可能に支持されたロータ(4)とを有し、前記ステータは、ステータコア(15)と、前記ステータコアに巻き回されたステータ巻線(16)と、前記ステータコア及び前記ステータ巻線をモールドするモールド樹脂(17)とを有し、前記ステータと、前記端壁の一方との間に、可撓性を有するスペーサ(20)が介装されている。
【0008】
この態様によれば、スペーサが弾性変形することによって、モールド樹脂の膨張が許容される。電動機の製造時には、スペーサをケーシング内に配置した状態で、モールド樹脂をモールドすることによって、ステータをケーシング内に配置することができる。これにより、電動機の製造作業を容易にすることができる。
【0009】
上記の態様において、前記スペーサは、前記モールド樹脂よりも低い弾性率を有してもよい。
【0010】
この態様によれば、モールド樹脂の伸縮に応じてスペーサが弾性変形することができる。
【0011】
上記の態様において、前記スペーサの単位体積当たりの質量は、前記モールド樹脂の単位体積当たりの質量よりも小さくてもよい。
【0012】
この態様によれば、スペーサを用いることによって、電動機を軽量化することができる。
【0013】
上記の態様において、前記スペーサは、環状の板状部(21)と、前記板状部に突設された可撓性を有する複数の凸部(22)とを有し、前記板状部及び前記凸部の一方が、前記ステータに当接し、前記板状部及び前記凸部の他方が、前記端壁に当接してもよい。
【0014】
この態様によれば、複数の凸部が弾性変形することによって、スペーサは伸縮することができる。また、複数の凸部によって、スペーサの表面積が増加し、放熱性が向上する。
【0015】
上記の態様において、複数の前記凸部は、前記ステータの軸線を中心とした放射方向に配列されてもよい。
【0016】
この態様によれば、スペーサは、複数の凸部においてステータ又はケーシングの端壁に安定性良く当接することができる。
【0017】
上記の態様において、複数の前記凸部のそれぞれは、柱状に形成され、前記板状部から前記ステータの軸線と平行に直線状に延びてもよい。
【0018】
この態様によれば、各凸部の剛性を高くすることができるため、各凸部の断面積を小さくすることができる。その結果、スペーサを軽量化することができる。
【0019】
上記の態様において、前記板状部は、前記ステータに当接すると共に、その外周部において前記周壁に当接してもよい。
【0020】
この態様によれば、スペーサを介してステータからケーシングの周壁に放熱することができる。また、スペーサのケーシングに対する位置が安定する。
【0021】
上記の態様において、前記端壁には、冷却液が流れる第1冷却液通路(35)が形成されてもよい。
【0022】
この態様によれば、ステータで発生した熱は、スペーサを介して端壁に放熱される。端壁は冷却液によって冷却されているため、ステータが効率良く冷却される。
【0023】
上記の態様において、前記第1冷却液通路は、前記ステータの軸線を中心とした周方向に延びてもよい。
【0024】
この態様によれば、第1冷却液通路とスペーサとを近づけることができ、ステータを効率良く冷却することができる。
【0025】
上記の態様において、前記第1冷却液通路は、前記周壁に形成された第2冷却液通路(41)に接続してもよい。
【0026】
この態様によれば、ステータで発生した熱は周壁に伝達され、周壁内を流れる冷却液に伝達される。これにより、ステータが効率良く冷却される。
【発明の効果】
【0027】
以上の構成によれば、電動機において、モールド樹脂の膨張を許容すると共に、生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施形態に係る電動機の断面図
図2】スペーサの斜視図
図3】電動機及び減速機の断面図
図4】電動機及び減速機の要部を拡大した断面図
図5】電動機及び減速機の要部を拡大した断面図
図6】電動機の冷却系を示す説明図
図7】成形型をケーシングにセットした状態を示す説明図
図8】変形実施形態に係る電動機の断面図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る電動機について説明する。電動機は、例えば回転翼機の推力発生装置に使用される。
【0030】
図1に示すように、電動機1は、ケーシング2と、ステータ3と、ロータ4とを有する。ケーシング2、ステータ3、及びロータ4のそれぞれは、軸線Aに沿って配置されている。ケーシング2は、円筒形に形成され、周壁6と、周壁6の両端に設けられた一対の端壁7、8とを有する。周壁6は、軸線Aを中心として配置されている。一方の端壁7と周壁6とは、一体に成形されている。他方の端壁8は、周壁6にボルトによって締結されているとよい。
【0031】
ステータ3は、円筒形に形成されている。ステータ3は、周壁6の内周面に沿って設けられている。
【0032】
ロータ4は、ステータ3の内側に配置され、ケーシング2に回転可能に支持されている。ロータ4は、シャフト11に結合されている。シャフト11は軸受12、13を介して端壁7、8に回転可能に支持されている。ロータ4は、永久磁石型ロータや、かご型ロータ等の公知のロータであってよい。
【0033】
ステータ3は、ステータコア15と、ステータコア15に巻き回されたステータ巻線16と、ステータコア15及びステータ巻線16をモールドするモールド樹脂17とを有する。
【0034】
ステータコア15は、導電性を有する。ステータコア15は、複数の電磁鋼板を軸方向に積層することによって形成されてもよく、粉体の焼成や鋳造によって単一部品として形成されてもよい。ステータコア15は、円筒形のコアバック15Aと、コアバック15Aの内周面から径方向内方に突出した複数のティース15Bと、隣り合うティース15B間に形成された複数のスロット15Cとを有する。各ティース15B及び各スロット15Cは、周方向に等間隔に配置されている。各ティース15B及び各スロット15Cは、軸線Aに沿った方向に延びている。複数のティース15Bの先端部は、互いに協動して軸線A方向に延びる円孔状のロータ収容空間を形成する。各ティース15Bは、微小な隙間を介してロータ4の外周面に対向する。各ティース15Bの表面には、各ティース15Bとステータ巻線16とを絶縁するために電気絶縁材からなるインシュレータが設けられている。
【0035】
ステータ巻線16は、銅やアルミニウム等の導線と、導線を被覆する電気絶縁皮膜とを有する。ステータ巻線16は、インシュレータを介して各ティース15Bに巻き回されている。ステータ巻線16は、各スロット15C内に配置された部分と、軸線A方向におけるステータコア15の端面から外方に突出したコイルエンド部とを有する。ステータ巻線16は、各ティース15Bの先端部(径方向内端)の所定の領域を避けて配置されている。
【0036】
モールド樹脂17は、ステータコア15及びステータ巻線16の隙間に充填される。モールド樹脂17によって、ステータ3の外径が円筒形に形成される。モールド樹脂17は、スロット15C内の隙間を埋めると共に、コイルエンド部を覆う。モールド樹脂17は、マトリクス樹脂と、マトリクス樹脂中に含まれる熱伝導フィラーとを有するとよい。熱伝導フィラーは、金属系のフィラーであるとよい。熱伝導フィラーは、例えば、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、アルミナ、無水炭酸マグネシウム、酸化ケイ素、酸化亜鉛等であるとよい。マトリクス樹脂は、非導電性であり、例えば、エポキシ樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、不飽和ポリエステル樹脂等であるとよい。
【0037】
後述するように、モールド樹脂17は、ステータ巻線16が巻かれたステータコア15がケーシング2内に配置された状態で、ステータコア15及びステータ巻線16をモールドする。モールド樹脂17は、ステータコア15の外周面とケーシング2の周壁6の内周面との隙間も埋めるとよい。
【0038】
ステータ3と端壁7との間には、可動性を有するスペーサ20が介装されている。図2に示すように、スペーサ20は、環状の板状部21と、板状部21に突設された可撓性を有する複数の凸部22とを有する。板状部21及び凸部22の一方が、ステータ3に当接し、板状部21及び凸部22の他方が、端壁7、8に当接しているとよい。本実施形態では、板状部21がステータ3に当接し、複数の凸部22が端壁7に当接している。板状部21の中央には、厚み方向に貫通する断面円形の透孔23が形成されている。
【0039】
複数の凸部22は、ステータ3の軸線(軸線A)を中心とした放射方向に配列されている。複数の凸部22のそれぞれは、柱状に形成され、板状部21からステータ3の軸線(軸線A)と平行に直線状に延びている。板状部21は、その外周部において周壁6に当接している。
【0040】
スペーサ20は樹脂又は金属によって形成されているとよい。板状部21と複数の凸部22とは、単一の材料によって一体に成形されているとよい。スペーサ20は、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)によって形成されているとよい。また、スペーサ20は、例えば、アルミニウムによって形成されてもよい。
【0041】
スペーサ20は、モールド樹脂17よりも低い弾性率を有する。これにより、モールド樹脂17とスペーサ20とが互いに押し合うときには、スペーサ20がモールド樹脂17よりも大きく変形する。例えば、スペーサ20を構成する樹脂の弾性率は、モールド樹脂17を構成するマトリクス樹脂の弾性率より低いとよい。また、スペーサ20の軸線A方向における剛性は、ステータ3の軸線A方向における剛性よりも低いとよい。
【0042】
スペーサ20の単位体積当たりの質量は、モールド樹脂17の単位体積当たりの質量よりも小さいとよい。
【0043】
図3図6に示すように、端壁7には、冷却液が流れる第1冷却液通路35が形成されている。第1冷却液通路35は、ステータ3の軸線Aを中心とした周方向に延びている。図3に示すように、第1冷却液通路35は、端壁7の外面に凹設された溝である。端壁7の外面には、減速機37のケーシングである減速機ケーシング38が結合されている。減速機ケーシング38によって第1冷却液通路35は閉じられている。シャフト11は、減速機37の入力軸39に接続されている。
【0044】
周壁6には、第2冷却液通路41が形成されている。周壁6の外周面には円筒形のカバー42が装着され、周壁6とカバー42との間に第2冷却液通路41が形成されている。周壁6の外周面には、径方向外方に突出し、カバー42の内周面に当接する隔壁43が形成されている。隔壁43は、周壁6とカバー42との間の空間を区間し、入口41Aから出口41Bに延びる第2冷却液通路41を形成している。隔壁43は、軸線Aを中心とした螺旋状に延びている。隔壁43によって、第2冷却液通路41は、軸線Aを中心とした螺旋状に延びている。
【0045】
第2冷却液通路41の入口41Aは、端壁8側に設けられていればよく、端壁8又はカバー42に設けられているとよい。第2冷却液通路41の入口41Aは、管を介して冷却液ポンプに接続されているとよい。第2冷却液通路41の出口41Bは、端壁7の外面に開口している。図4及び図6に示すように、第2冷却液通路41の出口41Bは、減速機ケーシング38に形成された第1接続通路45の一端と接続している。第1接続通路45の他端は、第1冷却液通路35の入口35Aに接続している。図5及び図6に示すように、第1冷却液通路35の出口35Bは、減速機ケーシング38に形成された第2接続通路47の一端に接続している。第2接続通路47の他端は管を介して冷却液ポンプに接続されているとよい。図6に示すように、冷却液は、冷却液ポンプから第2冷却液通路41、第1接続通路45、第1冷却液通路35、第2接続通路47を通過して冷却液ポンプに戻る。
【0046】
ケーシング2にステータ3を配置する手順は以下の通りである。ケーシング2は、端壁8が周壁6から取り外されており、一端が開口している。最初に、周壁6の内側にスペーサ20が配置される。このとき、複数の凸部22の先端が端壁7に当接し、かつ板状部21の外周部が周壁6の内周面に当接するように、ケーシング2内にスペーサ20が配置される。次に、ステータ巻線16が巻き回されたステータコア15がケーシング2内に挿入される。ステータコア15は、ケーシング2に、圧入されるとよい。また、ステータコア15は、焼き嵌めによってケーシング2内に固定されてもよい。また、ステータコア15は、ボルト等の締結具によってケーシング2内に固定されてもよい。
【0047】
次に、図7に示すように、ケーシング2内に成形型50が挿入される。成形型50は、ロータ4に対応した円柱部51を有する。円柱部51は、ステータ3の内部及びスペーサ20の透孔23を通過する。円柱部51の外周部は透孔23の縁部と全周にわたって接触する。これにより、ケーシング2の周壁6、スペーサ20の板状部21、及び成形型50の柱状部が、モールド樹脂17が充填されるモールド空間を画定する。
【0048】
次に、モールド空間にモールド樹脂17が注入される。これにより、モールド樹脂17は、コアバック15Aと周壁6との隙間、ステータ巻線16間の隙間、ステータ巻線16とステータコア15との隙間、隣り合うティース15Bの先端間の隙間に充填される。モールド樹脂17は、板状部21と端壁7との間には進入しない。
【0049】
ステータ3が周壁6内に取り付けられた後に、ロータ4がステータ3内に配置される。その後に、端壁8が周壁6に取り付けられ、ケーシング2が閉じられる。
【0050】
以下に、電動機1の作用及び効果について説明する。電動機1では、スペーサ20が弾性変形することによって、モールド樹脂17の膨張が許容される。電動機1の製造時には、スペーサ20をケーシング2内に配置した状態で、モールド樹脂17をモールドすることによって、ステータ3をケーシング2内に配置することができる。これにより、電動機1の製造作業を容易にすることができる。
【0051】
スペーサ20がモールド樹脂17よりも低い弾性率を有するため、モールド樹脂17の伸縮に応じてスペーサ20が弾性変形することができる。スペーサ20の単位体積当たりの質量が、モールド樹脂17の単位体積当たりの質量よりも小さいため、スペーサ20を用いることによって、電動機1を軽量化することができる。
【0052】
スペーサ20の複数の凸部22が弾性変形することによって、スペーサ20は伸縮することができる。また、複数の凸部22によって、スペーサ20の表面積が増加し、放熱性が向上する。複数の凸部22が軸線Aを中心とした放射方向に配列されているため、スペーサ20は、複数の凸部22において端壁7に安定性良く当接することができる。各凸部22が、柱状に形成され、板状部21から軸線Aと平行に直線状に延びているため、軸線A方向における荷重に対して各凸部22の剛性が向上する。これにより、各凸部22の断面積を小さくすることができ、スペーサ20を軽量化することができる。
【0053】
ステータ3は周壁6に接しているため、熱を周壁6に放熱することができる。周壁6は第2冷却液通路41によって冷却されているため、ステータ3を効率良く冷却することができる。また、スペーサ20の板状部21の外周部が周壁6に当接しているため、スペーサ20を介してステータ3からケーシング2の周壁6に放熱することができる。また、ステータ3で発生した熱は、スペーサ20を介して端壁7、8に放熱される。端壁7は、冷却液によって冷却されているため、ステータ3が効率良く冷却される。端壁7の第1冷却液通路35が軸線Aを中心とした周方向に延びているため、第1冷却液通路35とスペーサ20とを近づけることができ、ステータ3を効率良く冷却することができる。
【0054】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、スペーサ20は、様々な構造を適用することができる。図8に示すように、凸部22が省略され、板状部21のみによってスペーサ20が構成されてもよい。また、板状部21の表面に複数の肉抜き部が形成されてもよい。また、板状部21は、厚み方向に貫通する複数の貫通孔を有してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 :電動機
2 :ケーシング
3 :ステータ
4 :ロータ
6 :周壁
7 :端壁
8 :端壁
15 :ステータコア
16 :ステータ巻線
17 :モールド樹脂
20 :スペーサ
21 :板状部
22 :凸部
35 :第1冷却液通路
37 :減速機
38 :減速機ケーシング
41 :第2冷却液通路
43 :隔壁
45 :第1接続通路
47 :第2接続通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8