(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129181
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】自動閉鎖装置
(51)【国際特許分類】
A62C 2/24 20060101AFI20240919BHJP
【FI】
A62C2/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038207
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智広
(57)【要約】
【課題】防火防煙設備を保持状態とするための操作によって装置内部に加わる負荷を軽減する。
【解決手段】底板部を有するハウジングと、防火防煙設備に連動する連動部材と、ハウジング内に設けられており、連動部材を保持する保持状態と非保持状態との間で変化可能な保持機構と、保持状態から非保持状態へ保持機構の状態を復帰させる復帰機構と、底板部を貫通してスライド可能なスライド部材とを備え、底板部には、開口部が設けられており、連動部材は、開口部を通してハウジング内に挿入可能な挿入部と張り出し部とを有しており、連動部材は、挿入部がハウジング内に挿入される挿入位置へハウジングに対して移動することにより、張り出し部によってスライド部材を介して保持機構を操作して非保持状態を解除するようになっており、保持機構は、非保持状態の解除によって動作することにより保持状態となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板部を有するハウジングと、
防火あるいは防煙の区画を作るための防火防煙設備に連動する連動部材と、
前記ハウジング内に設けられており、前記連動部材を保持する保持状態と、前記連動部材の保持を解除している非保持状態との間で変化可能な保持機構と、
前記保持状態から前記非保持状態へ前記保持機構の状態を復帰させる復帰機構と、
前記底板部を貫通しており、前記底板部を貫通する方向へ前記底板部に対してスライド可能なスライド部材と
を備え、
前記底板部には、開口部が設けられており、
前記連動部材は、前記開口部を通して前記ハウジング内に挿入可能な挿入部と、前記ハウジング外において前記挿入部に設けられている張り出し部とを有しており、
前記連動部材は、前記挿入部が前記ハウジング内に挿入される挿入位置へ前記ハウジングに対して移動することにより、前記張り出し部によって前記スライド部材を介して前記保持機構を操作して前記非保持状態を解除するようになっており、
前記保持機構は、前記非保持状態の解除によって動作することにより前記保持状態となる
自動閉鎖装置。
【請求項2】
前記保持機構は、
掛かり位置と外れ位置との間で前記ハウジングに対して変位可能なフック部材と、
退避位置と前進位置との間で前記ハウジングに対して変位可能な変位カム部材と、
前記前進位置に向かう方向へ作動力を前記変位カム部材に加えている作動力発生体と
を有しており、
前記保持状態では、前記フック部材が前記掛かり位置に位置していることにより前記挿入部が前記フック部材に掛かるようになっており、
前記非保持状態では、前記フック部材が前記外れ位置に位置していることにより前記挿入部が前記フック部材に掛かることが回避されているとともに、前記変位カム部材が前記フック部材によって前記退避位置に保持されており、
前記フック部材には、前記外れ位置に向かう方向へフック後退力が加わっており、
前記非保持状態は、前記保持機構において、前記フック部材が前記フック後退力に逆らって前記外れ位置から前記掛かり位置に向かって変位されることにより解除され、
前記保持機構は、前記非保持状態の解除によって前記変位カム部材が前記退避位置から前記フック部材を押し退けながら前記前進位置へ変位することにより前記保持状態となり、前記保持状態となることで前記スライド部材が前記保持機構に対して非接触の状態となり、
前記復帰機構は、前記前進位置から前記退避位置へ前記変位カム部材を変位させることにより前記保持状態から前記非保持状態へ前記保持機構の状態を復帰させる
請求項1に記載の自動閉鎖装置。
【請求項3】
前記フック部材は、前記ハウジングに設けられたフック軸を中心として回転することにより、前記掛かり位置と前記外れ位置との間で変位する
請求項2に記載の自動閉鎖装置。
【請求項4】
前記フック部材は、ストッパを有しており、
前記フック部材が前記外れ位置に位置している状態では、前記変位カム部材が前記ストッパによって前記退避位置に保持されており、
前記変位カム部材が変位される方向は、前記ストッパが変位される方向に対して交差する方向である
請求項2または3に記載の自動閉鎖装置。
【請求項5】
前記復帰機構は、電磁石を有しており、
前記電磁石は、前記電磁石への通電により、前記作動力に逆らって前記変位カム部材を吸引する電磁吸引力を発生する
請求項2または3に記載の自動閉鎖装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、防火あるいは防煙の区画を作るための防火防煙設備を、常時は開放状態に保持し、火災発生時等の非常時には閉鎖させる自動閉鎖装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動閉鎖装置は、防火防煙シャッター、防煙垂幕、垂れ壁、窓用ダンパー、防火戸などを含む防火防煙設備に付随して用いられる装置である。自動閉鎖装置は、火災発生時等の非常時に防火防煙設備の駆動部(開閉機)のブレーキを開放し、降下(閉鎖)させ、防火防煙の区画を作る役割を果たす。
【0003】
以下では、防火防煙設備の代表例を防火戸として説明する。防火戸に用いられる自動開閉装置は、一般に、防火戸の係合部材と係合する係合部を有するラッチを備えており、常時は、ラッチの係合部と防火戸の係合部材との係合を保持して、防火戸を開放状態に保持する。
【0004】
一方、火災発生時等の非常時には、ソレノイド等の起動手段の動作に連動して、ラッチの係合部と防火戸の係合部材との係合の保持状態を解除し、防火戸をその自重により自動的に閉鎖させることができるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
自動閉鎖装置は、防火戸を開放状態に維持するとともに、必要に応じて防火戸を閉鎖状態にする役割を果たしている。このような自動閉鎖装置により防火戸を閉鎖状態にするための起動方法としては、感知器と連動して動作する連動起動と、手動操作に基づいて起動する手動起動の2種類がある。
【0007】
日常的に防火戸を手動起動により開閉するような場合には、自動閉鎖装置に繰り返しの負荷がかかる。一般的に、防火戸は重量が重く、このような防火戸を自動閉鎖装置によって開放させておく保持状態とするためには、防火戸と自動閉鎖装置を係合させるために強く押し込む操作をすることとなり、防火戸の係合部材と自動閉鎖装置の係合部との接触が繰り返されることとなる。この結果、自動閉鎖装置の内部部品に繰り返し負荷が加わり、自動閉鎖装置の故障に至るおそれがある。
【0008】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、防火戸に代表される防火防煙設備を保持状態とするための操作によって装置内部に加わる負荷を軽減することのできる自動閉鎖装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る自動閉鎖装置は、底板部を有するハウジングと、防火あるいは防煙の区画を作るための防火防煙設備に連動する連動部材と、ハウジング内に設けられており、連動部材を保持する保持状態と、連動部材の保持を解除している非保持状態との間で変化可能な保持機構と、保持状態から非保持状態へ保持機構の状態を復帰させる復帰機構と、底板部を貫通しており、底板部を貫通する方向へ底板部に対してスライド可能なスライド部材とを備え、底板部には、開口部が設けられており、連動部材は、開口部を通してハウジング内に挿入可能な挿入部と、ハウジング外において挿入部に設けられている張り出し部とを有しており、連動部材は、挿入部がハウジング内に挿入される挿入位置へハウジングに対して移動することにより、張り出し部によってスライド部材を介して保持機構を操作して非保持状態を解除するようになっており、保持機構は、非保持状態の解除によって動作することにより保持状態となるものである。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、防火戸に代表される防火防煙設備を保持状態とするための操作によって装置内部に加わる負荷を軽減することのできる自動閉鎖装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施の形態1に係る自動閉鎖装置の構成に関する第1の状態を示した説明図である。
【
図2】本開示の実施の形態1に係る連動部材の構成を示した説明図である。
【
図3】本開示の実施の形態1に係る自動閉鎖装置の構成に関する第2の状態を示した説明図である。
【
図4】本開示の実施の形態1に係る自動閉鎖装置の構成に関する第3の状態を示した説明図である。
【
図5】本開示の実施の形態1に係る自動閉鎖装置の構成に関する第4の状態を示した説明図である。
【
図6】本開示の実施の形態1に係る変位カム部材の構成に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の自動閉鎖装置の好適な実施の形態につき、図面を用いて説明する。
本開示に係る自動閉鎖装置は、ハウジングの底板部を貫通して奥行方向(壁1の裏側方向)にスライド可能なスライド部材を設け、防火防煙設備を保持状態とするための操作が行われた際には、スライド部材を介して装置内部に負荷が加わる構成を有していることを技術的特徴とするものである。この結果、防火戸に代表される防火防煙設備を保持状態とするための操作によって装置内部に加わる負荷を軽減することができる。
【0013】
なお、以下では、防火あるいは防煙の区画を作るための防火防煙設備の代表例を防火戸として説明する。
【0014】
実施の形態1.
図1は、本開示の実施の形態1に係る自動閉鎖装置の構成に関する第1の状態を示した説明図である。本実施の形態1に係る自動閉鎖装置は、防火戸側に設けられた連動部材100と、自動閉鎖装置の設置面である壁1側に設置されるハウジング10を備えている。
【0015】
ハウジング10は、壁1から表面が突出している底板部11と、底板部11に設けられている開口部12と、フック軸13とを有している。底板部11には、底板部11を奥行方向に貫通しており、スライド可能なスライド部材40が設けられている。また、ハウジング10内には、保持機構20および復帰機構30が設けられている。
【0016】
保持機構20は、連動部材100を保持する保持状態と、連動部材100の保持を解除している非保持状態との間で変化可能である。保持機構20は、フック部材21、変位カム部材22、および作動力発生体23を備えている。
【0017】
フック部材21は、ハウジングに設けられたフック軸13を中心として回転するとともに、変位カム部材22の動きを保持するストッパ21aを有している。
【0018】
図2は、本開示の実施の形態1に係る連動部材の構成を示した説明図である。
図2(A)に示した連動部材100は、開口部12を通してハウジング10内に挿入可能な挿入部101と、ハウジング外において挿入部101に設けられている張り出し部102とを備えて構成されている。
【0019】
図2(B)に示した連動部材100aは、連動部材100の変形例であり、開口部12を通してハウジング10内に挿入可能な挿入部101aと、ハウジング外において挿入部101に設けられている張り出し部102とを備えて構成されている。
【0020】
図2(A)に示した挿入部101は、L字形状を有しており、フック部材21と係合することによってフック可能な形状となっている。また、
図2(B)に示した挿入部101aは、コ字形状を有しており、フック部材21と、挿入部101と張り出し部102で形成された開口部分とが係合することによってフック可能な形状となっている。このように、連動部材は、フック部材21と係合することによってフック可能な形状であればよく、以下では、
図2(A)に示した連動部材100を用いた場合を具体例として説明する。
【0021】
図1に戻り、本実施の形態1に係る自動閉鎖装置における各構成の動作および機能について説明する。
図1(A)は、連動部材100がフック部材21によって保持されていない状態、すなわち、連動部材100の保持が解除されている非保持状態、での全体構成を示している。非保持状態では、防火戸は閉鎖され、防火あるいは防煙のための区画が作られる状態となる。また、
図1(B)は、
図1(A)に示した非保持状態において、点線の円で囲った「X部」を右側から見た状態を示している。
【0022】
連動部材100は、防火あるいは防煙の区画を作るための防火防煙設備である防火戸に連動する部材である。連動部材100の挿入部101は、開口部12を通してハウジング10内に挿入可能であるが、
図1(A)では、挿入部101が開口部12を通してハウジング10内に挿入される前の状態を示している。
【0023】
フック部材21は、ハウジングに設けられたフック軸13を中心として回転することで、掛かり位置と外れ位置との間でハウジング10に対して変位可能となっている。フック部材21には、外れ位置に向かう方向へフック後退力が加わっている。
【0024】
図1(A)では、連動部材100がフック部材21によって保持されていない非保持状態を示しており、この非保持状態において、フック部材21は、フック後退力によって外れ位置に位置している。
【0025】
変位カム部材22は、退避位置と前進位置との間でハウジング10に対して変位可能となっている。なお、変位カム部材22が変位する方向は、フック部材21が変位する方向に対して交差する方向となっている。
【0026】
図1(A)では、連動部材100がフック部材21によって保持されていない非保持状態を示しており、この非保持状態において、変位カム部材22は、
図1(B)に示したように、ストッパ21aによって退避位置に保持されている。
【0027】
また、保持機構20は、前進位置に向かう方向への作動力を、変位カム部材22に加えている作動力発生体23を有しており、
図1(B)では白抜きの矢印として作動力発生体23が図示されている。
【0028】
復帰機構30は、保持機構20の状態を、保持状態から非保持状態へ復帰させる機構である。例えば、復帰機構30は、電磁石を有する構成とすることができる。この場合、復帰機構30は、電磁石への通電により、作動力発生体23による作動力に逆らって、変位カム部材22を吸引する電磁吸引力を発生することができる。
【0029】
次に、
図3を用いて、挿入部101が開口部12を通してハウジング10内に挿入される挿入位置へ、ハウジング10に対して移動した状態について説明する。
図3は、本開示の実施の形態1に係る自動閉鎖装置の構成に関する第2の状態を示した説明図である。
【0030】
先の
図1に示した第1の状態の説明図における非保持状態から、保持状態にするためには、防火戸側に設けられた連動部材100をハウジング10の開口部12に挿入させることとなる。
図3に示した第2の状態の説明図では、連動部材100の挿入部101が、開口部12を通過してハウジング10内に挿入されて挿入位置まで移動した状態を示している。
【0031】
図3(A)は、挿入部101が、開口部12を通してハウジング10内に挿入されて挿入位置まで移動した状態での全体構成を示している。また、
図3(B)は、
図3(A)に示した状態において、点線の円で囲った「X部」を右側から見た状態を示している。
【0032】
連動部材100が挿入位置まで移動することで、スライド部材40が張り出し部102によって押され、その結果、奥行方向にスライド部材40がスライドする。スライド部材40がスライドすることで、スライド部材40がフック部材21を押し、フック部材21は、フック後退力に逆らって外れ位置から掛かり位置に向かって変位する。
【0033】
フック部材21が外れ位置に位置している
図1(B)に示した状態では、変位カム部材22がストッパ21aによって退避位置に保持されていた。これに対して、
図3(A)に示したように、フック部材21が外れ位置から掛かり位置に向かって変位することに伴って、
図3(B)に示したように、ストッパ21aも変位し、変位カム部材22がストッパ21aによって退避位置に保持されていた状態が解除される。
【0034】
この結果、変位カム部材22は、ストッパ21aが変位する方向に対して交差する方向に変位できるようになる。
【0035】
次に、
図4を用いて、ストッパ21aが変位することに伴って、変位カム部材22が、退避位置から前進位置へ、ハウジング10に対して移動した状態について説明する。
図4は、本開示の実施の形態1に係る自動閉鎖装置の構成に関する第3の状態を示した説明図である。
【0036】
先の
図3に示した第2の状態の説明図において、ストッパ21aが変位することに伴って変位カム部材22が退避位置から前進位置に向かって移動できるようになる。
図4に示した第3の状態の説明図では、変位カム部材22が退避位置から前進位置に移動した状態を示している。
【0037】
図4(A)は、変位カム部材22が前進位置まで移動した状態での全体構成を示している。また、
図4(B)は、
図4(A)に示した状態において、点線の円で囲った「X部」を右側から見た状態を示している。
【0038】
変位カム部材22は、退避位置からフック部材21のストッパ21aを押し退けながら、前進位置へ変位することができる。すなわち、
図4(B)に示したように、変位カム部材22が前進位置まで変位することで、ストッパ21aがさらに変位し、その結果、
図4(A)に示したように、連動部材100の挿入部101がフック部材21によって保持状態となる。
【0039】
また、フック部材21により連動部材100の挿入部101が保持状態となることで、
図4(A)に示したように、フック部材21とスライド部材40との間には、ギャップが生じ、フック部材21がスライド部材40に対して非接触の状態となる。すなわち、挿入部101が挿入位置まで移動した状態において、ハウジング10内部の構成部品に加わる負荷を低減することができる。
【0040】
次に、
図5を用いて、火災発生時等の非常時において、防火戸の状態を
図4に示した保持状態から非保持状態にすることで、防火戸を閉鎖させる動作について説明する。
図5は、本開示の実施の形態1に係る自動閉鎖装置の構成に関する第4の状態を示した説明図である。
【0041】
図5では、火災発生時等の非常時においては、復帰機構30により、変位カム部材22を前進位置から退避位置へ復帰させることで、フック部材21を掛かり位置から外れ位置に変位させた状態を示している。この結果、保持機構20は、保持状態から非保持状態と変化し、連動部材100がハウジング10外に移動し、非保持状態となることで防火戸が閉鎖する。
【0042】
図5(A)は、復帰機構30により非保持状態となった状態での全体構成を示している。また、
図5(B)は、
図5(A)に示した状態において、点線の円で囲った「X部」を右側から見た状態を示している。
【0043】
図5(B)に示したように、復帰機構30により、変位カム部材22を前進位置から退避位置へ復帰させることで、フック部材21は、フック後退力によって、掛かり位置から外れ位置に変位できるようになる。この結果、フック部材21によるフック部材21の保持状態が解除され、防火戸が閉鎖することとなる。
【0044】
この後、復帰機構30が働かない状態にした場合には、先の
図1の状態となり、変位カム部材22は、ストッパ21aによって退避位置に保持された状態が維持されることとなる。
【0045】
図1、
図3~
図5の一連の動作をまとめると、以下のようになる。
・連動部材100は、挿入部101がハウジング10内に挿入される挿入位置へハウジング10に対して移動することにより、張り出し部102によってスライド部材40を介して保持機構20を操作して、非保持状態を解除するようになっている。
・保持機構20は、非保持状態の解除によって動作することにより、保持状態となる。
【0046】
また、保持機構20の構成を、フック部材21、変位カム部材22、および作動力発生体23とした場合に、各構成と保持状態、非保持状態との関係をまとめると、以下のようになる。
・保持状態では、フック部材21が掛かり位置に位置していることにより挿入部101がフック部材21に掛かるようになっている。
【0047】
・非保持状態では、フック部材21が外れ位置に位置していることにより、挿入部101がフック部材21に掛かることが回避されているとともに、変位カム部材22がフック部材21によって退避位置に保持されている。
【0048】
・フック部材21には、外れ位置に向かう方向へフック後退力が加わっているが、保持機構20において、フック部材21がフック後退力に逆らって外れ位置から掛かり位置に向かって変位することにより、非保持状態が解除される。
【0049】
・保持機構20は、非保持状態の解除によって変位カム部材22が退避位置からフック部材を押し退けながら前進位置へ変位することにより、保持状態となる。
【0050】
・復帰機構30は、前進位置から退避位置へ変位カム部材22を変位させることにより、保持状態から非保持状態へ保持機構(20)の状態を復帰させる。この結果、火災発生時等の非常時には、復帰機構30の働きにより、防火戸を閉鎖させることができる。
【0051】
なお、
図1、
図3~
図5用いた説明では、変位カム部材22が、軸を中心に回転する構成として説明したが、他の構成を採用することも可能である。
図6は、本開示の実施の形態1に係る変位カム部材22の構成に関する説明図である。
【0052】
図6(A1)から
図6(A4)は、
図1、
図3~
図5を用いて説明したように、軸を中心に回転することで、退避位置と前進位置との間でハウジング10に対して変位可能となっている変位カム部材22であり、それぞれ以下の状態を示している。
【0053】
図6(A1):前進位置に向かう方向への作動力が作動力発生体23から変位カム部材22に加わっているものの、ストッパ21aにより変位カム部材22が退避位置(あるいは退避位置の近傍)に保持されている状態であり、
図1(B)の状態に相当。
【0054】
図6(A2):フック部材21の変位に伴って、ストッパ21aにより変位カム部材22を保持できなくなった状態であり、
図3(B)の状態に相当。
【0055】
図6(A3):変位カム部材22が前進位置まで変位したことに伴って、フック部材21がさらに変位した状態であり、
図4(B)の状態に相当。
【0056】
図6(A4):復帰機構30により、変位カム部材22を、後退位置に強制的に移動させることで、防火戸を閉鎖させる状態であり、
図5(B)の状態に相当。
【0057】
これに対して、
図6(B1)から
図6(B4)は、1軸方向にスライドすることで、退避位置と前進位置との間でハウジング10に対して変位可能となっている変位カム部材22であり、それぞれ以下の状態を示している。
【0058】
図6(B1):前進位置に向かう方向への作動力が作動力発生体23から変位カム部材22に加わっているものの、ストッパ21aにより変位カム部材22が退避位置(あるいは退避位置の近傍)に保持されている状態であり、
図6(A1)に対応する状態。
【0059】
図6(B2):フック部材21の変位に伴って、ストッパ21aにより変位カム部材22を保持できなくなった状態であり、
図6(A2)に対応する状態。
【0060】
図6(B3):変位カム部材22が前進位置まで変位したことに伴って、フック部材21がさらに変位した状態であり、
図6(A3)に対応する状態。
【0061】
図6(B4):復帰機構30により、変位カム部材22を、後退位置に強制的に移動させることで、防火戸を閉鎖させる状態であり、
図6(A4)に対応する状態。
【0062】
このように、変位カム部材22は、退避位置と前進位置との間でハウジング10に対して変位可能な構成を有していればよい。
【0063】
以上のように、実施の形態1によれば、非保持状態から保持状態にするために連動部材を移動させた際の負荷は、ハウジングの底板部、および底板部を貫通してスライドするスライド部材に加わるが、装置内部の部品には直接加わらない構成を備えている。この結果、防火戸に代表される防火防煙設備の保持状態とするための押し込み操作によって装置内部に加わる負荷を軽減することのできる自動閉鎖装置を実現できる。
【0064】
また、連動部材が保持された状態で、フック部材がスライド部材に対して非接触の状態となるような構成を備えた場合には、さらなる負荷の軽減を図ることができる。
【0065】
また、開口部のサイズを大きくする、挿入部とフック部材における互いに係合する部分をテーパ形状にする、などの工夫により、自動閉鎖装置を設置する際の位置決め調整を容易化することができる。
【0066】
また、スライド部材が張り出し部によって押されたときにフック部材が掛かり位置に変位するものとしたので、連動部材を入れ込む開口部の間口を広くすることなく、斜め方向からの連動部材の入れ込みにも対応することができる。これにより、防火戸の角度に合わせて自動閉鎖装置を設置面に対して斜め方向になるように設置するなど、設置位置の調整が不要となる。
【符号の説明】
【0067】
1 壁、10 ハウジング、11 底板部、12 開口部、13 フック軸、20 保持機構、21 フック部材、21a ストッパ、22 変位カム部材、23 作動力発生体、30 復帰機構、40 スライド部材、100、100a 連動部材、101、101a 挿入部、102 張り出し部。