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特開2024-129183バッテリフレーム、バッテリモジュール及びバッテリモジュールを備える移動体
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  • 特開-バッテリフレーム、バッテリモジュール及びバッテリモジュールを備える移動体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129183
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】バッテリフレーム、バッテリモジュール及びバッテリモジュールを備える移動体
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/262 20210101AFI20240919BHJP
【FI】
H01M50/262 S
H01M50/262 M
H01M50/262 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038210
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】大平 亘
【テーマコード(参考)】
5H040
【Fターム(参考)】
5H040AA01
5H040AA03
5H040AY06
5H040LL01
5H040NN01
5H040NN03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】セル積層体に効率よく締付荷重を付与することができる軽量なバッテリフレームを提供する。
【解決手段】移動体は、バッテリモジュール12を備える。バッテリモジュールのバッテリフレーム10は、保持プレート28と、連結部材32とを有する。保持プレート28は、プレート中央部34と、複数のアーム部36と、複数の取付部38を含む。複数の取付部には、連結部材がそれぞれ取り付けられ、複数のアーム部が弾性変形することによりセル積層体に締付荷重が付与され、積層方向における取付部の寸法である第1寸法D1は、積層方向におけるプレート中央部の寸法である第2寸法D2よりも小さい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに積層された複数のバッテリセルを有するセル積層体を保持するバッテリフレームであって、
前記複数のバッテリセルの積層方向の両側に配置された金属製の一対の保持プレートと、
前記一対の保持プレートから前記セル積層体に締付荷重が付与されるように前記一対の保持プレートを互いに連結する複数の連結部材と、
を備え、
前記一対の保持プレートの各々は、
前記保持プレートの中央部に位置するプレート中央部と、
前記プレート中央部から径方向外方に延出した複数のアーム部と、
前記複数のアーム部の延出方向の端部に設けられた複数の取付部と、
を有し、
前記複数の取付部には、前記連結部材がそれぞれ取り付けられ、
前記複数のアーム部が弾性変形することにより前記セル積層体に前記締付荷重が付与され、
前記積層方向における前記取付部の寸法である第1寸法は、前記積層方向における前記プレート中央部の寸法である第2寸法よりも小さい、バッテリフレーム。
【請求項2】
請求項1に記載のバッテリフレームであって、
前記積層方向における前記アーム部の寸法である第3寸法は、前記第1寸法よりも大きく且つ前記第2寸法よりも小さい、バッテリフレーム。
【請求項3】
請求項2に記載のバッテリフレームであって、
前記第3寸法は、前記プレート中央部から前記取付部に向かって徐々に小さくなっている、バッテリフレーム。
【請求項4】
請求項1に記載のバッテリフレームであって、
互いに隣り合う前記アーム部の間には、切欠部が形成されている、バッテリフレーム。
【請求項5】
請求項4に記載のバッテリフレームであって、
前記保持プレートと前記セル積層体の間には、前記セル積層体の端面に面接触する受圧プレートが配置されている、バッテリフレーム。
【請求項6】
請求項5に記載のバッテリフレームであって、
前記受圧プレートには、前記切欠部に係合されることにより前記保持プレートを位置決めする位置決め凸部が設けられている、バッテリフレーム。
【請求項7】
請求項1に記載のバッテリフレームであって、
前記バッテリセルには、当該バッテリセルから前記積層方向と交差する方向に突出した端子部が設けられ、
前記取付部は、前記一対の保持プレートによって前記セル積層体を保持した状態で、前記端子部の突出方向に沿うように前記アーム部から突出すると共に前記積層方向から見て前記端子部とは重なり合っていない、バッテリフレーム。
【請求項8】
請求項1に記載のバッテリフレームであって、
前記アーム部の前記延出方向と前記積層方向とに交差する前記アーム部の幅方向の寸法は、前記取付部に向かって徐々に小さくなっている、バッテリフレーム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のバッテリフレームと、
前記セル積層体と、
を備えるバッテリモジュール。
【請求項10】
請求項9に記載のバッテリモジュールを備える移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリフレーム、バッテリモジュール及びバッテリモジュールを備える移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、板状のバッテリセルが複数積層されたセル積層体を備えるバッテリモジュールが開示されている。このようなセル積層体には、例えば、バッテリセルの積層方向に沿った締付荷重がバッテリフレームによって付与される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5393365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
セル積層体に効率よく締付荷重を付与することができる軽量なバッテリフレームが求められている。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、互いに積層された複数のバッテリセルを有するセル積層体を保持するバッテリフレームであって、前記複数のバッテリセルの積層方向の両側に配置された金属製の一対の保持プレートと、前記一対の保持プレートから前記セル積層体に締付荷重が付与されるように前記一対の保持プレートを互いに連結する複数の連結部材と、を備え、前記一対の保持プレートの各々は、前記保持プレートの中央部に位置するプレート中央部と、前記プレート中央部から径方向外方に延出した複数のアーム部と、前記複数のアーム部の延出方向の端部に設けられた複数の取付部と、を有し、前記複数の取付部には、前記連結部材がそれぞれ取り付けられ、前記複数のアーム部が弾性変形することにより前記セル積層体に前記締付荷重が付与され、前記積層方向における前記取付部の寸法である第1寸法は、前記積層方向における前記プレート中央部の寸法である第2寸法よりも小さい、バッテリフレームである。
【0007】
本発明の第2の態様は、上述したバッテリフレームと、前記セル積層体と、を備えるバッテリモジュールである。
【0008】
本発明の第3の態様は、上述したバッテリモジュールを備える移動体である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、セル積層体に効率よく締付荷重を付与することができると共にバッテリフレームを軽量にできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るバッテリモジュールの斜視図である。
図2図2は、セル積層体の分解斜視図である。
図3図3は、図1のIII-III線に沿った断面模式図である。
図4図4は、バッテリモジュールの一部省略正面図である。
図5図5は、締付荷重の変化を示すグラフである。
図6図6は、バッテリモジュールが搭載される航空機の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態に係るバッテリフレーム10、バッテリモジュール12及びバッテリモジュール12を備える移動体13について図面を用いて以下に説明する。図1に示すように、本実施形態に係るバッテリモジュール12は、例えば、図6の移動体13としての航空機15に搭載される。航空機15は、例えば、電動垂直離着陸機(eVTOL:Electric Vertical Take-Off and Landing aircraft)である。航空機15は、機体17と、複数(例えば、4つ)のVTOLロータ21と、複数(例えば、2つ)のクルーズロータ23とを含む。VTOLロータ21は、航空機15に対して上方向の推力を発生させる。クルーズロータ23は、航空機15に対して水平方向の推力を発生させる。バッテリモジュール12は、機体17の内部に配置される。バッテリモジュール12は、VTOLロータ21及びクルーズロータ23の各々を駆動させる図示しない電動モータに電力を供給する。移動体13としては、例えば、車両、船舶等であってもよい。なお、バッテリモジュール12は、移動体13に搭載された例に限定されない。
【0012】
図1に示すように、バッテリモジュール12は、4つのセル積層体14と、4つのバッテリフレーム10とを備える。4つのセル積層体14は、矢印Y方向に並んでいる。図2に示すように、セル積層体14は、複数のバッテリセル16と、複数の第1熱交換器18と、複数の第2熱交換器20とを有する。複数のバッテリセル16は、矢印X方向に配列されている。
【0013】
バッテリセル16は、ラミネート型のバッテリである。バッテリセル16は、矩形の板状に形成される。バッテリセル16の矢印Z方向の一辺には、複数の端子部22が突出している。複数のバッテリセル16は、端子部22を介して互いに直列に接続されている。なお、端子部22は、概念的に図示されている。
【0014】
複数の端子部22には、図示しない電気接続部材が接合装置100(図4参照)により接合される。接合装置100は、例えば、超音波接合装置である。なお、接合装置100は、超音波接合装置に限定されない。
【0015】
図2に示すように、第1熱交換器18は、板状のウォータジャケット24と、給排水ヘッダ26とを有する。ウォータジャケット24は、矢印Y方向に延在している。ウォータジャケット24の内部には、冷却水が流通する流路が形成されている。給排水ヘッダ26は、ウォータジャケット24の長手方向(矢印Y方向)の端部に設けられている。給排水ヘッダ26は、ウォータジャケット24に対する冷却水の供給及び排出を行う。
【0016】
第2熱交換器20は、第1熱交換器18と同様の構成を備える。第1熱交換器18は、矢印Y方向の一方側に給排水ヘッダ26が位置するように配置される。第2熱交換器20は、矢印Y方向の他端側に給排水ヘッダ26が位置するように配置される。第1熱交換器18と第2熱交換器20とは、矢印X方向に交互に配置される。
【0017】
互いに隣り合う第1熱交換器18と第2熱交換器20との間には、矢印X方向に2つのバッテリセル16が積層されている(図3参照)。また、互いに隣り合う第1熱交換器18と第2熱交換器20との間には、矢印Y方向に4つのバッテリセル16が配置されている。
【0018】
図1及び図3に示すように、バッテリフレーム10は、セル積層体14を保持する。バッテリフレーム10は、一対の保持プレート28と、一対の受圧プレート30と、4つの連結部材32とを備える。一対の保持プレート28は、バッテリモジュール12の矢印X方向の端部に位置する。受圧プレート30は、保持プレート28とセル積層体14との間に配置される。連結部材32は、一対の保持プレート28からセル積層体14に締付荷重(圧縮荷重)が付与されるように一対の保持プレート28を互いに連結する。これにより、バッテリセル16の膨張が抑制される。
【0019】
一対の保持プレート28は、バッテリセル16の積層方向の外方に位置する。保持プレート28は、例えば、チタン合金によって構成されている。なお、保持プレート28は、チタン合金以外の金属材料によって構成されてもよい。
【0020】
図4に示すように、保持プレート28は、保持プレート28の厚さ方向(矢印X方向)から見て、X字状に形成されている。保持プレート28は、点対称の形状を有する。保持プレート28は、プレート中央部34と、4つのアーム部36と、4つの取付部38とを含む。
【0021】
プレート中央部34は、保持プレート28の中央部に位置する。プレート中央部34には、円形の貫通孔40が形成されている。このような貫通孔40により、保持プレート28は軽量になる。
【0022】
4つのアーム部36は、プレート中央部34から径方向外方に延出している。4つのアーム部36は、プレート中央部34の周方向に等間隔に設けられている。アーム部36は、幅方向の寸法Wが径方向外方に向かって徐々に小さくなっている。なお、アーム部36の幅方向は、アーム部36の延出方向とバッテリセル16の積層方向(矢印X方向)とに交差する方向である。アーム部36は、セル積層体14に締付荷重が付与されることにより弾性変形する板ばね部である。
【0023】
互いに隣り合うアーム部36の間には、切欠部42が形成されている。切欠部42は、保持プレート28を厚さ方向から見て、三角形状に形成されている。プレート中央部34には、切欠部42によって円弧状に湾曲した湾曲面44が形成されている。湾曲面44の曲率半径は、貫通孔40の半径よりも大きい。
【0024】
取付部38は、アーム部36の延出方向の端部に設けられている。取付部38は、アーム部36の延出方向の端部から矢印Z方向(端子部22の突出方向)に沿うように突出している。取付部38には、連結部材32が接続される。取付部38には、連結部材32のボルト部58が挿通する挿通孔46が形成されている(図3参照)。
【0025】
取付部38は、バッテリセル16の積層方向(矢印X方向)から見て、セル積層体14よりも外方に位置する。換言すれば、取付部38は、矢印X方向から見て端子部22とは重なり合っていない。これにより、端子部22を図示しない電気接続部材に接合する際に、接合装置100と取付部38とが互いに干渉することを回避できる。
【0026】
図3に示すように、バッテリセル16の積層方向における取付部38の寸法である第1寸法D1は、バッテリセル16の積層方向におけるプレート中央部34の寸法である第2寸法D2よりも小さい。換言すれば、取付部38は、プレート中央部34よりも薄肉である。そのため、取付部38をプレート中央部34と同じ肉厚に形成した場合と比較して、保持プレート28を軽量にできる。第1寸法D1は、例えば、第2寸法D2の70%以下に設定される。なお、第2寸法D2に対する第1寸法D1の割合は、適宜設定可能である。
【0027】
バッテリセル16の積層方向におけるアーム部36の寸法である第3寸法D3は、第1寸法D1よりも大きく且つ第2寸法D2よりも小さい。具体的には、第3寸法D3は、プレート中央部34から取付部38に向かって徐々に小さくなっている。第3寸法D3は、プレート中央部34から取付部38に向かって一次関数的に減少する。なお、第3寸法D3は、プレート中央部34から取付部38に向かって二次関数的に減少してもよい。
【0028】
図3及び図4に示すように、受圧プレート30は、保持プレート28から作用する締付荷重をセル積層体14に均等に付与させるための押さえプレートである。受圧プレート30は、四角形状に形成されている。図3に示すように、受圧プレート30のうちのセル積層体14を向く第1面48は、セル積層体14の端面に面接触する。また、受圧プレート30のうちのセル積層体14とは反対方向を向く第2面50には、保持プレート28のプレート中央部34が面接触する。
【0029】
受圧プレート30の平面寸法は、バッテリセル16の平面寸法と実質的に同じである。受圧プレート30の平面寸法は、バッテリセル16の平面寸法よりも大きくても小さくてもよい。受圧プレート30は、例えば、アルミニウム等の軽量な金属材料によって構成されている。なお、受圧プレート30の構成材料は、金属材料に限定されず、樹脂材料であってもよいし複合材料であってもよい。
【0030】
図4に示すように、受圧プレート30には、凸部52と、位置決め凸部54とが設けられている。凸部52は、受圧プレート30の中央部分からバッテリセル16の積層方向の外方に向かって突出している。凸部52は、円柱状に形成されている。凸部52は、プレート中央部34の貫通孔40に挿入される。これにより、バッテリフレーム10の組立時に受圧プレート30の中央部にプレート中央部34を簡単に位置決めできる。
【0031】
位置決め凸部54は、受圧プレート30の中央部からずれた位置からバッテリセル16の積層方向の外方に向かって突出している。位置決め凸部54は、保持プレート28の切欠部42に係合する。位置決め凸部54は、プレート中央部34の湾曲面44に接触する。これにより、バッテリフレーム10の組立時に凸部52の周方向において保持プレート28を受圧プレート30に位置決めできる。位置決め凸部54は、凸部52の周方向における保持プレート28の回転を阻止する回り止め部としても機能する。
【0032】
保持プレート28を受圧プレート30に取り付けた状態で、矢印X方向から見て4つのアーム部36は、受圧プレート30の4つの角部にそれぞれ重なり合うように延在する。なお、保持プレート28を受圧プレート30に取り付けた状態で、アーム部36と受圧プレート30の角部との間には隙間が設けられる。また、保持プレート28を受圧プレート30に取り付けた状態で、矢印X方向から見て4つの取付部38は、受圧プレート30よりも外方に位置する。
【0033】
図3に示すように、連結部材32は、連結シャフト56と、2つのボルト部58と、2つのナット60とを含む。連結シャフト56は、バッテリセル16の積層方向に沿って延在している。連結シャフト56は、例えば、ステンレス鋼等の金属材料によって構成されている。ボルト部58は、連結シャフト56の軸方向の端面から突出している。ボルト部58は、保持プレート28の取付部38の挿通孔46に挿通される。ナット60は、ボルト部58に螺合される。取付部38は、ナット60と連結シャフト56の間に位置する。
【0034】
ナット60がボルト部58に締め付けられると、保持プレート28が受圧プレート30に向かって押圧される。このとき、4つのアーム部36は、弾性変形する。4つのアーム部36の弾性力(ばね力)は、受圧プレート30を介してセル積層体14に締付荷重として付与される。
【0035】
図5は、ナット60をボルト部58に対して締め付けた際の締付荷重の変化を示した実験結果である。図5のグラフの横軸は、締付荷重が発生してからの保持プレート28のストローク量である。図5のグラフの縦軸は、締付荷重である。線分L1は、本実施形態に係るバッテリフレーム10の実験結果である。線分L2は、比較例に係るバッテリフレーム10の実験結果である。比較例に係るバッテリフレーム10は、保持プレート28の第1寸法D1及び第2寸法D2の各々が第3寸法D3と同じ寸法に設定されている点以外は、本実施形態に係るバッテリフレーム10と同様に構成されている。
【0036】
図5において、第1締付荷重P1は、バッテリセル16に必要な締付荷重の下限値である。第2締付荷重P2は、バッテリセル16に付与できる締付荷重の上限値である。第1ストローク量δ1は、バッテリセル16の積層方向におけるセル積層体14の製造公差が最小だった場合の保持プレート28の最大のストローク量である。第2ストローク量δ2は、バッテリセル16の積層方向におけるセル積層体14の製造公差が最大であり且つ使用時のバッテリセル16の膨らみ量が最大であった場合の保持プレート28の最大のストローク量である。
【0037】
図5に示すように、本実施形態に係るバッテリフレーム10(線分L1)では、保持プレート28のストローク量が大きくなるにつれて締付荷重が二次関数的に上昇する結果を得た。本実施形態に係る線分L1では、第1ストローク量δ1から第2ストローク量δ2までの範囲において、締付荷重が第1締付荷重P1と第2締付荷重P2との間の範囲内の締付荷重を得た。
【0038】
一方、比較例に係るバッテリフレーム10(線分L2)では、保持プレート28のストローク量が大きくなるにつれて締付荷重が一次関数的に上昇する結果を得た。なお、比較例に係る線分L2でも、第1ストローク量δ1から第2ストローク量δ2までの範囲において、締付荷重が第1締付荷重P1と第2締付荷重P2との間の範囲内の締付荷重を得た。
【0039】
線分L1の締付荷重は、ストローク量が第2ストローク量δ2よりも小さい範囲において、線分L2の締付荷重よりも小さかった。すなわち、図5の実験結果によれば、比較例に比べてセル積層体14に付与される締付荷重を抑制できるという効果が得られた。換言すれば、本実施形態では、セル積層体14に効率よく締付荷重を付与できるという効果が得られた。この場合、保持プレート28及び受圧プレート30の剛性を必要以上に大きくしなくてよいため、保持プレート28及び受圧プレート30を薄肉にすること可能になる。そのため、バッテリフレーム10を軽量にできる。
【0040】
本実施形態は、上述した構成に限定されない。アーム部36の幅方向の寸法Wは、プレート中央部34から取付部38に向かって一定であってもよい。アーム部36の第3寸法D3は、プレート中央部34から取付部38に向かって段階的に小さくなってもよい。第3寸法D3は、プレート中央部34から取付部38まで一定の値であってもよい。また、第3寸法D3は、第1寸法D1及び第2寸法D2のいずれかと同じであってもよい。アーム部36の数は、4つに限定されず、3つ又は5つ以上であってもよい。バッテリモジュール12を構成するセル積層体14及びバッテリフレーム10の各々の数は、1つ、2つ、又は5つ以上であってもよい。セル積層体14は、第1熱交換器18及び第2熱交換器20を有しなくてもよい。バッテリフレーム10は、受圧プレート30を有していなくてもよい。
【0041】
上述した開示に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0042】
(付記1)
バッテリフレーム(10)は、互いに積層された複数のバッテリセル(16)を有するセル積層体(14)を保持するバッテリフレームであって、前記複数のバッテリセルの積層方向の両側に配置された金属製の一対の保持プレート(28)と、前記一対の保持プレートから前記セル積層体に締付荷重が付与されるように前記一対の保持プレートを互いに連結する複数の連結部材(32)と、を備え、前記一対の保持プレートの各々は、前記保持プレートの中央部に位置するプレート中央部(34)と、前記プレート中央部から径方向外方に延出した複数のアーム部(36)と、前記複数のアーム部の延出方向の端部に設けられた複数の取付部(38)と、を有し、前記複数の取付部には、前記連結部材がそれぞれ取り付けられ、前記複数のアーム部が弾性変形することにより前記セル積層体に前記締付荷重が付与され、前記積層方向における前記取付部の寸法である第1寸法(D1)は、前記積層方向における前記プレート中央部の寸法である第2寸法(D2)よりも小さい。
【0043】
このような構成によれば、取付部の第1寸法をプレート中央部の第2寸法と同じ寸法にした場合と比較して保持プレート(バッテリフレーム)を軽量にできる。また、アーム部を弾性変形させることによりセル積層体に効率よく締付荷重を付与することができる。
【0044】
(付記2)
付記1に記載のバッテリフレームにおいて、前記積層方向における前記アーム部の寸法である第3寸法(D3)は、前記第1寸法よりも大きく且つ前記第2寸法よりも小さくてもよい。
【0045】
このような構成によれば、バッテリフレームを一層軽量にできる。
【0046】
(付記3)
付記2に記載のバッテリフレームにおいて、前記第3寸法は、前記プレート中央部から前記取付部に向かって徐々に小さくなってもよい。
【0047】
このような構成によれば、バッテリフレームをより一層軽量にできる。また、セル積層体に作用する締付荷重を二次関数的に変化させることができるため、セル積層体により効率よく締付荷重を付与できる。
【0048】
(付記4)
付記1~3のいずれかに記載のバッテリフレームにおいて、互いに隣り合う前記アーム部の間には、切欠部(42)が形成されてもよい。
【0049】
このような構成によれば、切欠部によって保持プレートを軽量にできる。
【0050】
(付記5)
付記1~4のいずれか1つに記載のバッテリフレームにおいて、前記保持プレートと前記セル積層体の間には、前記セル積層体の端面に面接触する受圧プレート(30)が配置されてもよい。
【0051】
このような構成によれば、受圧プレートによって締付荷重をセル積層体に均等に付与できる。
【0052】
(付記6)
付記5に記載のバッテリフレームにおいて、前記受圧プレートには、前記切欠部に係合されることにより前記保持プレートを位置決めする位置決め凸部(54)が設けられてもよい。
【0053】
このような構成によれば、受圧プレートに保持プレートを簡単且つ精度よく組み付けることができる。
【0054】
(付記7)
付記1~6のいずれか1つに記載のバッテリフレームにおいて、前記バッテリセルには、当該バッテリセルから前記積層方向と交差する方向に突出した端子部(22)が設けられ、前記取付部は、前記一対の保持プレートによって前記セル積層体を保持した状態で、前記端子部の突出方向に沿うように前記アーム部から突出すると共に前記積層方向から見て前記端子部とは重なり合っていなくてもよい。
【0055】
このような構成によれば、端子部を電気接続部材に接合する際に接合装置と端子部とが互いに干渉することを回避できる。
【0056】
(付記8)
付記1~7のいずれか1つに記載のバッテリフレームにおいて、前記アーム部の前記延出方向と前記積層方向とに交差する前記アーム部の幅方向の寸法(W)は、前記取付部に向かって徐々に小さくなっていてもよい。
【0057】
このような構成によれば、バッテリフレームをさらに軽量にできる。
【0058】
バッテリモジュール(12)は、付記1~8のいずれか1つに記載のバッテリフレームと、前記セル積層体と、を備える。
【0059】
(付記10)
移動体(13)は、付記9に記載のバッテリモジュールを備える。
【0060】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々
の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0061】
10…バッテリフレーム 12…バッテリモジュール
13…移動体 14…セル積層体
16…バッテリセル 22…端子部
28…保持プレート 30…受圧プレート
32…連結部材 34…プレート中央部
36…アーム部 38…取付部
42…切欠部 54…位置決め凸部
D1…第1寸法 D2…第2寸法
D3…第3寸法 W…アーム部の幅方向の寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6