(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129185
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】車両の情報表示方法および装置
(51)【国際特許分類】
B60K 35/23 20240101AFI20240919BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
B60K35/00 A
G02B27/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038215
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】荻巣 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 博司
【テーマコード(参考)】
2H199
3D344
【Fターム(参考)】
2H199DA03
2H199DA32
2H199DA46
3D344AA30
3D344AB01
3D344AC25
(57)【要約】
【課題】交差点のノードNの座標がずれていると、AR-HUDを介してノードN上に表示される経路案内用の仮想画像の表示位置が、車両がノードに近付くほど大きく偏る。
【解決手段】自車両13の前方に存在するノードNの座標を取得し、自車両13とノードNとの間の距離Dを取得し、この距離が所定値Dcに達したときに、水平面上で座標が示すノードNの方向L2と車両の前後方向に沿った視角基準線L1とがなす角度θcを求める。距離Dが所定値Dcよりも短い領域では、距離Dに応じて、「θ=θc×(D/Dc)」として求められる偏り角θの方向に仮想画像を表示する。従って、徐々に偏り角θが0に近づき、視角基準線L1の方向に仮想画像が表示される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行中の車両の前方に存在するノードの座標を取得し、
車両のAR-HUDを介して、ウインドシールドを通して見える前方の光景に重畳して、ノードの位置上に仮想画像を表示する、
車両の情報表示方法であって、
車両とノードとの間の距離を取得し、
この距離が所定値(Dc)に達したときに、水平面上で座標が示すノードの方向と車両の前後方向に沿った視角基準線とがなす角度(θc)を求め、
この角度(θc)に基づいて上記仮想画像の表示位置を補正する、
車両の情報表示方法。
【請求項2】
上記角度(θc)に基づいて、上記仮想画像の水平方向の表示位置を上記距離に応じて決定する、
請求項1に記載の車両の情報表示方法。
【請求項3】
ノードの座標は、地図情報に予め含まれている、
請求項1に記載の車両の情報表示方法。
【請求項4】
上記視角基準線は、車両の中央を通って前後に延びる仮想の線である、
請求項1に記載の車両の情報表示方法。
【請求項5】
上記視角基準線は、運転者の視点を通って前後に延びる仮想の線である、
請求項1に記載の車両の情報表示方法。
【請求項6】
上記仮想画像の水平方向の表示位置が、座標が示すノードの方向よりも上記視角基準線に近付くように補正を行う、
請求項1に記載の車両の情報表示方法。
【請求項7】
ノードとは異なる位置にターゲットを設定し、
上記距離が所定距離(Dc)にあるときに水平面上で上記視角基準線とターゲット方向とがなす角度(θT)を求め、
上記仮想画像の水平方向の表示位置が、座標が示すノードの方向よりも上記ターゲット方向に近付くように補正を行う、
請求項1に記載の車両の情報表示方法。
【請求項8】
上記距離が0に近付いたときに上記仮想画像の表示を終了する、
請求項1に記載の車両の情報表示方法。
【請求項9】
上記距離が所定距離(Dc)に達したときに、湾曲路走行中でかつ湾曲路の曲率が所定値以上の場合は、仮想画像の表示位置の補正は行わない、
請求項1に記載の車両の情報表示方法。
【請求項10】
走行中の車両の前方に存在するノードの座標を取得するノード座標取得部と、
ウインドシールドを通して見える前方の光景に重畳して仮想のオブジェクトを表示するAR-HUDと、
上記ノード座標に基づくノードの位置上に上記オブジェクトとして仮想画像を表示するように上記AR-HUDを制御する制御部と、
を備えた車両の情報表示装置であって、
上記制御部は、
車両とノードとの間の距離を取得し、
この距離が所定値(Dc)に達したときに、水平面上で座標が示すノードの方向と車両の前後方向に沿った視角基準線とがなす角度(θc)を求め、
この角度(θc)に基づいて上記仮想画像の表示位置を補正する、
車両の情報表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、AR-HUD(拡張現実ヘッドアップディスプレイ)を用いて交差点等のノードの上に経路案内表示等の仮想画像を表示する車両の情報表示に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の運転中に必要な種々の情報を運転席前方のウインドシールドに投影して表示するHUD(ヘッドアップディスプレイ)が普及しつつある。またHUDをより進化させた技術としてAR-HUD(拡張現実ヘッドアップディスプレイ)が知られている。このAR-HUDでは、ウインドシールドを通して見える現実情報に、虚像からなる仮想情報を重ねて表示することができ、ウインドシールドのガラス面上に情報が表示される一般的なHUDに比較して運転者の視点ないし焦点の移動が少なくなる。
【0003】
特許文献1には、AR-HUDを介してカーナビゲーションシステムの案内情報を表示する技術が開示されている。例えば、右折すべき交差点の現実の光景に重ねて交差点中央において右に向かった矢印を表示することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
デジタル化した道路地図において道路網はノードとリンクとの組み合わせによって表現されており、それぞれ固有の番号を有している。ノードは、交差点やその他の道路網表現上の結節点などの点を示しており、ノード間がリンクで接続されて、道路網を構成する。
【0006】
例えば右左折の矢印表示をAR-HUDを介して交差点中央に表示する場合、交差点を示すノードの座標に基づき、ノードの位置上に仮想画像を表示することになるが、ノードの座標が仮想画像の表示の上で理想的な交差点位置からずれている場合があり得る。
【0007】
例えば、交差点にアプローチする直線区間において、座標で示されるノードの位置が車両の正面方向から左側に僅かでもずれていたと仮定すると、車両が交差点から遠く離れている段階では、ノードの上にある仮想画像のずれはそれほど問題とならない。しかし、車両がノードに近付くにつれ、交差点を示す仮想画像が車両の正面に見える光景(例えば交差点中央付近)から左側へ偏って見えることになり、運転者が違和感を感じる。つまり、ノード位置の左右のずれに伴う仮想画像位置の角度的なずれ(偏り角)は、車両がノードに近付くに従って急に大きくなる。
【0008】
特許文献1には、このようなノードの位置のずれに関する記載はない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、
走行中の車両の前方に存在するノードの座標を取得し、
車両のAR-HUDを介して、ウインドシールドを通して見える前方の光景に重畳して、ノードの位置上に仮想画像を表示する、
車両の情報表示方法であって、
車両とノードとの間の距離を取得し、
この距離が所定値(Dc)に達したときに、水平面上で座標が示すノードの方向と車両の前後方向に沿った視角基準線とがなす角度(θc)を求め、
この角度(θc)に基づいて上記仮想画像の表示位置を補正する。
【0010】
座標が示すノードの位置が視角基準線の延長線上からずれていると、車両とノードとの間の距離が所定値(Dc)に達したときに、そのずれの大きさに対応した角度(θc)が生じる。上記の距離が所定値(Dc)に達した以降は、この角度(θc)に基づいて仮想画像の表示位置が補正される。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、座標が示すノードの位置が視角基準線の延長線上からずれている場合でも、所定の距離(Dc)に達したときのずれに対応した角度(θc)に基づいて仮想画像の表示位置の補正を行うことにより、ノードに近付いたときの表示位置をより適切なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】ノード位置のずれXeに基づく表示位置の影響を説明する説明図。
【
図3】ノードまでの距離Dと表示位置(角度)との関係を示した説明図。
【
図5】距離Dに応じた表示位置の補正を示した説明図。
【
図7】湾曲路の場合の距離Dに応じた表示位置の補正を示した説明図。
【
図8】一実施例の制御の処理の流れを示したフローチャート。
【
図9】ノードとは異なる位置にターゲットを設定した第2実施例の説明図。
【
図10】第2実施例の距離Dに応じた表示位置の補正を示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図1は、一実施例の車両の情報表示装置の構成を示した説明図である。一実施例の車両は一般的な自動車であり、運転席に対してAR-HUD(拡張現実ヘッドアップディスプレイ)1を備えている。このAR-HUD1は、ウインドシールド2を通して見える現実情報に、仮想情報を重ねて表示するものである。本発明においては、その形式はどのようなものであってもよいが、例えばウインドシールド2の下部にプロジェクタを備え、ウインドシールド2の表面で反射して運転者の目に届く光により運転者前方の適当な距離(例えば数メートル)離れた仮想の焦点面に仮想情報の虚像が生成される。仮想情報としては、後述するように交差点に重畳して表示すべき経路案内のための右左折を示す仮想画像や、制限速度あるいは実車速等の適当な情報が含まれ得る。
【0015】
AR-HUD1は、コントローラ3によって制御される。つまりコントローラ3において仮想画像が生成され、かつその表示位置が制御される。コントローラ3には、車両の経路案内を行ういわゆるGPSを用いたカーナビゲーションシステム4が接続されている。カーナビゲーションシステム4は、地図情報を備えており、この地図情報には、交差点等のノードの座標データが含まれている。また、カーナビゲーションシステム4によって、自車位置が特定される。図示するシステムは、さらに、先行車や歩行者等の位置を検出するためにレーダー5やカメラ6等の情報取得デバイスを備えている。
【0016】
また、AR-HUD1を用いる一実施例の情報表示装置は、AR-HUD1の虚像位置を適切なものとするために運転者の視点位置を検出する視点検出用カメラ7を備えている。視点検出用カメラ7は、例えば、運転者の状態を監視するドライバーモニタリングシステム(DMS)の一部を構成する。視点検出用カメラ7は、例えばウインドシールド上縁付近に運転者頭部に向かって配置される。この視点検出用カメラ7が取得した画像をコントローラ3が処理することで、運転者の視点位置(つまり瞳の位置)が検出される。なお、運転者の視点位置の検出は、カメラによらずに行うようにしてもよく、例えば運転者の着座位置や運転者の身長等から間接的に視点位置の検出を行うものであってもよい。コントローラ3は、このように検出された視点位置に応じてAR-HUD1による虚像つまりオブジェクトの生成位置を修正し、ウインドシールド2を通して運転者が見る現実の光景とAR-HUD1のオブジェクトとが正しく重なり合うようにする。
【0017】
コントローラ3は、種々の制御を行う車載のコンピュータシステムの一部の機能として構成されており、カーナビゲーションシステム4によって経路案内を行っているモードにおいては、経路案内に必要な右左折箇所を示す仮想画像や目的地を示す仮想画像等をAR-HUD1を介して表示する。後述するように、カーナビゲーションシステム4を介したノードの座標の取得、仮想画像の基準表示位置の算出、自車両とノードとの間の距離の算出、この距離に応じた仮想画像の表示位置の補正、等がコントローラ3によって行われる。
【0018】
図11は、ノードとなる交差点に車両が近付いたときにウインドシールド2を通して見える光景を簡略化して示した説明図であり、ウインドシールド2を通して見える範囲の一部に、長方形をなすAR-HUD1の表示エリア1Aが存在する。表示エリア1Aは、基本的に、運転者の正面となる位置に配置される。なお、表示エリア1A外周の枠線は必ずしも表示しなくてもよい。この表示エリア1Aには、上述したようにAR-HUD1を介して運転中に必要な種々の仮想情報が表示される。例えば、交差点のノードの地点上に、右折すべきことを示す矢印状の仮想画像11(いわゆるアイコン)が表示される。図示例の仮想画像11は、3個の矢じり形記号11aが間隔をおいて並べられた形態を有している。この仮想画像11の例では、中央の矢じり形記号11aがノードの位置に対応する。なお、本発明が
図11に例示したような形態の仮想画像11に限定されないことは言うまでもない。
【0019】
初めに、
図2を用いて、ノードの座標のずれについて説明する。2本の道路が交差する交差点において、図中の「×」印は仮想画像11を表示すべき理想的なターゲットTの位置を示し、「○」印はノードNの座標上の位置を示す。
図2の(a)は、理想的なターゲット位置とノード座標とが一致している例であり、従って、ノード座標に従って仮想画像11を表示することで
図11に例示したような良好な表示が得られる。
【0020】
これに対し、
図2の(b),(c)は、ノード座標Nが理想的なターゲットT位置(例えば交差点中央)から例えば左側にずれ量(ずれの長さないし距離)Xeだけずれているときの例を示す。ここではターゲットTの位置が自車両13の運転者の正面にあるものと仮定する。ノード座標NがターゲットTの位置から左側にずれていることで、運転者の正面にあるターゲットTの方向とノードNを指向する方向との間で角度的なずれ、つまり偏り角θが生じる。この偏り角θは、図(b)のように自車両13とノードNとの間の距離Dが比較的大きいときは比較的に小さく、ノードNの座標上に仮想画像11を表示しても運転者に違和感を与えることはない。しかし、図(c)のように自車両13とノードNとの間の距離Dが小さくなると、偏り角θが大きくなり、違和感が生じることとなる。
【0021】
図3の特性線Xe1,Xe2.Xe3は、それぞれ、ずれ量Xeが大・中・小の場合について、距離Dと偏り角θとの関係を示している。図示するように、ずれ量Xeが比較的小さくても、距離Dが小さくなると偏り角θは大きくなり、逆に、ずれ量Xeが比較的大きくても、距離Dが大きいと偏り角θは小さい。ここで、偏り角θの正負は、例えば左側に偏って見える場合を正とし、右側に偏って見える場合を負としてある。なお、ずれ量Xeが0であれば、特性線Xe0のように、偏り角θが常に0となる。
【0022】
次に、
図4および
図5に基づいて、一実施例の仮想画像11の表示位置の補正について説明する。一実施例の仮想画像11の表示方法は、自車両13とノードNとの間の距離Dを取得し、この距離Dが所定値Dcに達したときに、水平面上で座標が示すノードNの方向と自車両13の前後方向に沿った視角基準線とがなす角度θc(換言すれば距離Dc時点での偏り角)を求め、この角度θcに基づいて仮想画像11の表示位置を補正する。
図4の例では、
図2(b),(c)と同様に、座標が示すノードNと理想的なターゲットTの位置との間に、ある距離Xeのずれが存在する。
図4は、自車両13とノードNとの間の距離Dが所定値Dcに達したときの状態を示しており、このときに水面上で座標が示すノードNの方向(線L2で示す)と、自車両13の前後方向に沿った視角基準線L1と、の間の角度が角度θcとして算出される。
【0023】
視角基準線L1は、運転者の視点を通って車両の前後方向に延びる仮想の線である。あるいは、単純化のために、車両13の中央を通って車両の前後方向に延びる仮想の線を視角基準線L1としてもよい。
【0024】
図5は、このように求めた距離Dcにおける角度θcに基づく表示位置の補正を示す。図中の直線L11は、距離Dが所定値Dcに達したときの角度θcから定まる補正直線を示している。距離Dが所定値Dcよりも短い領域では、この補正直線L11に沿った偏り角θの方向に仮想画像11が表示される。所定値Dcよりも遠い領域では、仮想画像11の表示位置の補正は行わない。
【0025】
例えば、図中の特性線L12は、
図3の特性線Xe1と同様に、補正を行わない場合の偏り角θの特性を示しているが、自車両13が所定の距離Dcに達するまでは、仮想画像11の表示位置の補正は行わない。従って、座標が示すノードNの上に仮想画像11が表示されることとなり、正面を向いている運転者にとっては、車両の進行方向に対して偏り角θの方向に仮想画像11が表示される。しかし、このときにはノードNは比較的遠方にあり、かつ偏り角θが小さいので、違和感を与えることはない。
【0026】
距離Dが所定値Dcよりも短い領域では、距離Dに応じて、「θ=θc×(D/Dc)」として求められる偏り角θの方向に仮想画像11が表示される。つまり、補正直線L11で示すように、距離Dが0に近付くにつれて偏り角θが0に近付くように表示位置が補正される。換言すれば、
図4において、仮想画像11の表示位置の方向が徐々に理想的なターゲットTの方向に近付いていくことなる。従って、運転者にとっては、最終的に車両の進行方向正面に仮想画像11が見えることとなり、特性線L12のように偏り角θが大きくなることによる違和感を抑制できる。
【0027】
なお、距離Dの所定値Dcは、
図5の特性線L12から明らかなように、ずれ量Xeに基づく偏り角θが大きく増加し始める前に設定することが望ましい。
【0028】
図6および
図7は、交差点に進入する手前の道が湾曲路(いわゆるカーブ)である場合の例を示す。この場合も、
図4,
図5の例と全く同様に表示位置の補正を行うことができる。
図6に示すように、自車両13とノードNとの間の距離D(湾曲路の場合は湾曲に沿って計測した距離である)が所定値Dcに達したときに、水平面上で座標が示すノードNの方向(線L2)と視角基準線L1との間の角度θcを算出する。このときの角度θcは、ノードNのずれ量Xeのほかに湾曲路による自車両13の向きの影響を含んだものとなる。
【0029】
図7の特性線Xe0は、ずれ量Xeが0の場合の理想的な仮想画像11の表示位置を示す。つまり、この例では、
図6から明らかなように、湾曲の影響によって初めは左寄りに交差点が見え、徐々に正面近くに交差点中心が移動してくる。従って、特性線Xe0のように偏り角θが変化するのが理想的となる。
【0030】
特性線L22は、
図5の特性線L12と同様に、ずれ量Xeが存在し、かつ表示位置の補正を行わない場合の偏り角θの変化を示す。直線L21は、距離Dが所定値Dcに達したときの角度θcから定まる補正直線を示しており、距離Dが所定値Dcよりも短い領域では、この補正直線L21に沿った偏り角θの方向に仮想画像11が表示される。詳しくは、距離Dが所定値Dcよりも短い領域では、距離Dに応じて、「θ=θc×(D/Dc)」として求められる偏り角θの方向に仮想画像11が表示される。つまり、補正直線L21で示すように、距離Dが0に近付くにつれて偏り角θが0に近付くように表示位置が補正される。換言すれば、湾曲路であっても、
図6から理解できるように、仮想画像11の表示位置の方向が徐々に理想的なターゲットTの方向に近付いていくことなる。
【0031】
なお、距離Dが所定値Dcに達したときの湾曲路の曲率が所定値以上の場合は、逆に不自然な表示になるおそれがあるため、仮想画像11の表示位置の補正は行わないことが望ましい。
【0032】
また、同様の理由から、距離Dについての所定値Dcは、湾曲路の曲率が大きいほど短くするようにしてもよい。
【0033】
次に、
図8は、コントローラ3が実行する仮想画像11の表示制御の処理の流れを示したフローチャートである。ここには、仮想画像11の基準表示位置の算出(ステップ1~6)と、理想的なターゲットTの位置に近付くようにする表示位置の補正(ステップ7~13)と、が含まれている。なお、下記の座標系におけるx軸、y軸の方向は、x軸が車両の左右方向、y軸が車両の前後方向、である。
【0034】
最初のステップ1では、自車両13の位置座標(Xs,Ys)を取得する。ステップ2では、自車両13の前方に存在する交差点のノードNの座標(Xn,Yn)を取得する。なお、これらの座標はいわゆるグローバル座標である。ステップ3では、この交差点のノードNの座標と自車両13の位置との相対関係に基づき仮想画像11を表示すべき基準表示位置(θx,θy)を算出する。θxは正面に向かう視線基準線L1に対する左右方向の偏り角であり、θyは水平面もしくは基準の見下ろし角に対する上下方向の偏り角である。一つの例では、運転者が見る長方形をなすAR-HUD1の表示エリア1A(
図11参照)の中心を基準として表示位置(θx,θy)が定められる。右左折を示す仮想画像11の場合は、路面上ではなく適当な高さに浮遊しているように表示するようにしてもよい。そして、ステップ4において、ステップ2で求めた基準表示位置(θx,θy)に沿ってAR-HUD1による仮想画像11の表示位置を更新する。
【0035】
ステップ5では、自車両13の位置から交差点を示すノードNまでの距離Dを取得し、ステップ6において、距離Dが所定値Dc以下であるかを判定する。NOであれば、ステップ1に戻り、上述の処理を繰り返す。従って、距離Dが所定値Dcに達するまでは、座標が示すノードNの地点上に仮想画像11が表示される。なお、
図8のフローチャートでは視点位置の検出に基づく表示位置の補正の説明を省略してあるが、実際には、検出した視点位置に応じて補正がなされる。
【0036】
距離Dが所定値Dcに達したらステップ6からステップ7へ進み、その時点でのx軸方向の偏り角θcを取得する。この偏り角θcは、前述したように、距離Dが所定値Dcに達したときに、水平面上で座標が示すノードNの方向(L2)と車両の前後方向に沿った視角基準線L1とがなす角度θcに相当する。次に、ステップ8において自車両13の位置から交差点を示すノードNまでの距離Dを取得し、ステップ9において、この距離Dに基づいてx軸方向の表示位置θxを算出する。具体的には、「θx=θc×(D/Dc)」として求める。また、上下方向の表示位置の補正は不要であるので、その時点でのy軸方向の自車両13の位置座標Ysを取得し(ステップ10)、見下ろし角に相当するy軸方向の表示位置つまり偏り角θyを求める(ステップ11)。そして、ステップ12において、このように算出した表示位置(θx,θy)に沿ってAR-HUD1による仮想画像11の表示位置を更新する。
【0037】
ステップ13では、距離Dが0となったか判定し、NOであれば、ステップ8に戻り、上述の処理を繰り返す。従って、距離Dが所定値Dcから0となるまでは、前述した補正直線L11,L21に沿うような特性でもってx軸方向の表示位置θxが制御される。これにより、仮想画像11のx軸方向の表示位置θxが徐々に視線基準線L1に近付いていくことになる。距離Dが0となったら、仮想画像11の表示が終了する。実際には、距離Dが0となる前の適当なところで仮想画像11の表示が終了する。
【0038】
次に、ノードNからずれているターゲットTの位置が視線基準線L1上にない場合の第2実施例を
図9および
図10に基づいて説明する。つまり、この発明は、ノードNと異なる任意の位置(x軸方向にずれた位置)に、仮想画像を表示すべきターゲットTを設定することができる。例えば、仮想画像として、目的地等の地点を表すピン形状のものを用い、これを道路の側縁付近に表示したい場合等に適用できる。
【0039】
図9および
図10の例では、座標が示すノードNと視線基準線L1との間にターゲットTが設定されている。この場合、
図9に示すように、自車両13とノードNとの間の距離Dが所定値Dcとなったときに、水平面上でノードNの方向と視角基準線L1とがなす角度θcを求めるとともに、ターゲットTの方向と視角基準線L1とがなす角度θTを求める。そして、距離Dが所定値Dcよりも短い領域では、距離Dに応じて、「θ=(θc-θT)×(D/Dc)+θT」として求められる偏り角θの方向に仮想画像11を表示する。
【0040】
つまり、
図10に補正直線L31として示すように、距離Dが0に近付くにつれて偏り角θがθTに近付くように表示位置が補正される。換言すれば、
図9において、仮想画像の表示位置の方向がノードNの方向から徐々にターゲットTの方向に近付いていくことなる。従って、最終的には、より正確にターゲットTの位置に重なって仮想画像を表示することができる。
【0041】
以上、この発明の一実施例を詳細に説明したが、この発明は、上記実施例に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。また、この発明は、他の表示位置補正技術と組み合わせて適用してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1…AR-HUD
2…ウインドシールド
3…コントローラ
4…カーナビゲーションシステム
7…視点検出用カメラ
11…仮想画像
N…ノード
T…ターゲット
L1…視角基準線
L11,L21,L31…補正直線