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特開2024-129193加工澱粉含有粒子及び該粒子の製造方法
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  • 特開-加工澱粉含有粒子及び該粒子の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129193
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】加工澱粉含有粒子及び該粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08B 31/00 20060101AFI20240919BHJP
   C08J 3/05 20060101ALI20240919BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20240919BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
C08B31/00
C08J3/05 CEP
A61K8/73
A61K47/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038227
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】前山 洋輔
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C090
4F070
【Fターム(参考)】
4C076AA06
4C076AA16
4C076BB31
4C076EE38
4C076FF36
4C083AD241
4C083AD242
4C083BB25
4C083CC01
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
4C083FF01
4C090AA03
4C090AA08
4C090BA14
4C090BB64
4C090BB65
4C090BB96
4C090BB99
4C090BC10
4C090BD08
4C090BD14
4C090BD18
4C090BD19
4C090BD24
4C090CA35
4C090CA43
4C090CA46
4C090CA47
4C090DA11
4C090DA23
4C090DA26
4F070AA03
4F070AB07
4F070AD04
4F070BA07
4F070BA08
4F070CA02
4F070CB02
4F070CB15
(57)【要約】
【課題】高い疎水性及び優れた経時安定性を有する加工澱粉含有粒子を提供する。
【解決手段】加工澱粉を含有する粒子であって、該粒子の表面に水を滴下した直後の水に対する接触角A(°)と、該粒子の表面に水を滴下してから180秒後の水に対する接触角B(°)とが、下記式(i)及び(ii)の要件を満たす、加工澱粉含有粒子。
接触角A≧90° (i)
0.70≦(接触角B/接触角A)≦1.00 (ii)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工澱粉を含有する粒子であって、
前記粒子の表面に水を滴下した直後の水に対する接触角A(°)と、前記粒子の表面に水を滴下してから180秒後の水に対する接触角B(°)とが、下記式(i)及び(ii)の要件を満たす、加工澱粉含有粒子。
接触角A≧90° (i)
0.70≦(接触角B/接触角A)≦1.00 (ii)
【請求項2】
体積平均粒子径が、0.5μm以上100μm以下である、請求項1に記載の加工澱粉含有粒子。
【請求項3】
JIS Z 8781-4に準拠して測定したL表色系において、
値が+90以上+100以下であり、a値が-1以上+1以下であり、且つ、b値が0以上+5以下である、請求項1に記載の加工澱粉含有粒子。
【請求項4】
前記接触角Bが、90°以上である、請求項1に記載の加工澱粉含有粒子。
【請求項5】
加工澱粉をアルコキシシラン化合物で表面処理する工程を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の加工澱粉含有粒子の製造方法。
【請求項6】
前記加工澱粉の乾物換算濃度が16.7質量%であるスラリーの粘度を、下記の測定条件で測定した際に、95℃における粘度の最大値が50cP以下である、請求項5に記載の製造方法。
(測定条件)
ラピッドビスコアナライザーを用いて、パドルの回転数を160rpmとし、50℃で1分間維持し、50℃から95℃まで12.1℃/分で昇温し、95℃で3分30秒間維持し、及び95℃から50℃まで11.8℃/分で降温する。
【請求項7】
前記アルコキシシラン化合物が、下記式(1)で表される化合物である、請求項5に記載の製造方法。
-(CH)n-Si-(OR (1)
(式中、Rはメチル基、アミノ基、エポキシ基、チオール基、又は炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖状のパーフルオロアルキル基を示す。
は炭素数1~4の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。
nは0~19の整数を示す。
但し、R-(CH)nにおける炭素原子の合計数は1~19である。)
【請求項8】
前記表面処理を、触媒の存在下で行い、
前記触媒が、金属塩化物及び/又は無機酸である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項9】
前記表面処理を、有機溶媒中で行い、
前記有機溶媒が、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール及び2-メチル-2-プロパノールからなる群より選択される少なくとも一種である、請求項6に記載の製造方法。
【請求項10】
前記有機溶媒の使用量が、前記加工澱粉100質量部に対して、50質量部超200質量部以下である、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記加工澱粉に用いられる原料澱粉が、米澱粉である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項12】
請求項1~4のいずれか一項に記載の加工澱粉含有粒子を含む、外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工澱粉含有粒子及び該粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、澱粉粒子は、化粧料、医薬品、食品、塗料等への添加剤として幅広い用途に使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、アルミン酸アルカリ、水酸化アルカリ、スズ化合物、亜鉛化合物、アルミニウム化合物又はチタン化合物を触媒として用い、澱粉を、炭素数10以上のアルキル基を有するオルガノシランと反応させる変性澱粉の製造方法が記載されている。
【0004】
特許文献2には、アルミン酸アルカリまたは水酸化アルカリの存在下で、澱粉を、オルガノシランと接触させる、澱粉の変性方法が記載されている。
【0005】
特許文献3には、周期律第4A族及び第5A族に属する金属の酸エステルの存在下、有機溶剤中で澱粉を、オルガノシランと接触させる、澱粉の変性方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1-193301号公報
【特許文献2】特開昭59-179501号公報
【特許文献3】特開昭59-207902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1乃至3に記載の方法で得られる澱粉粒子は、疎水性が低いため、該粒子を油相に添加した場合に該粒子の凝集が避けられない問題がある。
【0008】
特許文献1乃至3に記載の方法で得られる澱粉粒子は、該粒子の表面に水を滴下した直後の接触角を長時間維持できないため、経時安定性に乏しい問題がある。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、高い疎水性及び優れた経時安定性を有する加工澱粉含有粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、加工澱粉を含有する所望の粒子を開発することに成功し、該粒子を使用することにより上記目的を達成できることを見出した。本発明は、さらに研究を重ね、完成させたものである。
【0011】
本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1.加工澱粉を含有する粒子であって、
前記粒子の表面に水を滴下した直後の水に対する接触角A(°)と、前記粒子の表面に水を滴下してから180秒後の水に対する接触角B(°)とが、下記式(i)及び(ii)の要件を満たす、加工澱粉含有粒子。
接触角A≧90° (i)
0.70≦(接触角B/接触角A)≦1.00 (ii)
項2.体積平均粒子径が、0.5μm以上100μm以下である、項1に記載の加工澱粉含有粒子。
項3.JIS Z 8781-4に準拠して測定したL表色系において、
値が+90以上+100以下であり、a値が-1以上+1以下であり、且つ、b値が0以上+5以下である、項1又は2に記載の加工澱粉含有粒子。
項4.前記接触角Bが、90°以上である、項1~3のいずれか一項に記載の加工澱粉含有粒子。
項5.加工澱粉をアルコキシシラン化合物で表面処理する工程を備える、項1~4のいずれか一項に記載の加工澱粉含有粒子の製造方法。
項6.前記加工澱粉の乾物換算濃度が16.7質量%であるスラリーの粘度を、下記の測定条件で測定した際に、95℃における粘度の最大値が50cP以下である、項5に記載の製造方法。
(測定条件)
ラピッドビスコアナライザーを用いて、パドルの回転数を160rpmとし、50℃で1分間維持し、50℃から95℃まで12.1℃/分で昇温し、95℃で3分30秒間維持し、及び95℃から50℃まで11.8℃/分で降温する。
項7.前記アルコキシシラン化合物が、下記式(1)で表される化合物である、項5又は6に記載の製造方法。
-(CH)n-Si-(OR (1)
(式中、Rはメチル基、アミノ基、エポキシ基、チオール基、又は炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖状のパーフルオロアルキル基を示す。
は炭素数1~4の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。
nは0~19の整数を示す。
但し、R-(CH)nにおける炭素原子の合計数は1~19である。)
項8.前記表面処理を、触媒の存在下で行い、
前記触媒が、金属塩化物及び/又は無機酸である、項5~7のいずれか一項に記載の製造方法。
項9.前記表面処理を、有機溶媒中で行い、
前記有機溶媒が、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール及び2-メチル-2-プロパノールからなる群より選択される少なくとも一種である、項5~8のいずれか一項に記載の製造方法。
項10.前記有機溶媒の使用量が、前記加工澱粉100質量部に対して、50質量部超200質量部以下である、項9に記載の製造方法。
項11.前記加工澱粉に用いられる原料澱粉が、米澱粉である、項5~10のいずれか一項に記載の製造方法。
項12.項1~4のいずれか一項に記載の加工澱粉含有粒子を含む、外用剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明の加工澱粉含有粒子は、高い疎水性及び優れた経時安定性を有する。本発明の加工澱粉含有粒子は、高い疎水性を有することから、化粧料等の外用剤に配合した場合、分散性が良好となるため、粒子の凝集を抑制することができる。また、本発明の加工澱粉含有粒子は、優れた経時安定性を有することから、化粧料等の外用剤に配合して肌に塗布する際に、塗布時の滑らかな感触(さらさら感)を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例8で得られた粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で約10000倍の倍率で撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態及び具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。
【0015】
本明細書において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0016】
本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。また、本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値又は実施例から一義的に導き出せる値に置き換えてもよい。更に、本明細書において、「~」で結ばれた数値は、「~」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。
【0017】
本明細書において、「A及び/又はB」とは、「A及びBの一方」又は「A及びBの両方」を意味し、具体的には、「A」、「B」、又は「A及びB」を意味する。
【0018】
本明細書において、「糊化」とは、澱粉を水の存在下で加熱した際に、周囲の水を吸収して膨潤し、それによって粘度が上昇することを意味する。
【0019】
本明細書において、「原料澱粉」とは、トウモロコシ、馬鈴薯、甘藷、小麦、米、タピオカ、サゴヤシ、エンドウ等を原料とする澱粉を意味する。
【0020】
本明細書において、「室温」とは、15℃以上30℃以下の範囲内の温度を意味する。
【0021】
本明細書において、「パーフルオロアルキル基」とは、アルキル基の水素原子全てがフッ素原子に置換された基を意味する。
【0022】
本明細書において、「(メタ)アクリル」はアクリル又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」はアクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0023】
1.加工澱粉含有粒子
本発明の加工澱粉含有粒子は、以下の構成(1)及び(2)を備えている:
(1)加工澱粉を含有する。
(2)加工澱粉含有粒子の表面に水を滴下した直後の水に対する接触角A(°)と、加工澱粉含有粒子の表面に水を滴下してから180秒後の水に対する接触角B(°)とが、下記式(i)及び(ii)の要件を満たす。
接触角A≧90° (i)
0.70≦(接触角B/接触角A)≦1.00 (ii)
【0024】
本発明の加工澱粉含有粒子は、上述した構成(1)及び(2)を備えていることにより、上記本発明の効果が奏される。
【0025】
以下、上述した構成(1)及び(2)を備える本発明の加工澱粉含有粒子を、単に「本発明の粒子」と記載することもある。
【0026】
本発明の粒子は、通常、加工澱粉を主成分として含有する。「主成分として含有する」とは、本発明の粒子中の加工澱粉の含有量が50質量%超であることを意味する。
【0027】
本発明の粒子中の加工澱粉の含有量は、好ましくは75質量%以上、より好ましくは90質量%以上、より一層好ましくは95質量%以上、更に好ましは99質量%以上、特に好ましくは99.9質量%以上である。本発明の粒子は、加工澱粉のみからなることが最も好ましい。但し、本発明の粒子が、加工澱粉のみからなる場合であっても、加工澱粉以外の不可避的不純物(例えば、本発明の粒子の製造過程において、洗浄不良等により残留する極微量の原料澱粉等)の含有は許容される。
【0028】
本発明において、加工澱粉とは、トウモロコシ、馬鈴薯、甘藷、小麦、米、タピオカ、サゴヤシ、エンドウ等の澱粉を原料とし、これら原料澱粉に化学的処理、物理的処理、又は酵素的処理を加えることによって、該原料澱粉の特性を改良したものを意味する。
【0029】
上記化学的処理としては、架橋処理(好ましくは、リン酸架橋処理);酸処理、アルカリ処理、酸化処理;アセチル化、リン酸化、オクテニルコハク酸化等のエステル化処理;ヒドロキシプロピル化等のエーテル化処理等が挙げられる。このような処理は、1種の処理が単独で施されていてもよく、また2種以上の処理が組み合わされて施されていてもよい。
【0030】
上記物理的処理としては、例えば、加熱処理、α化処理、湿熱処理、ボールミル処理、微粉砕処理等が挙げられる。
【0031】
上記酵素的処理としては、例えば、アミラーゼ等の酵素による処理等が挙げられる。
【0032】
このような処理は、1種の処理が単独で施されていてもよく、また2種以上の処理が組み合わされて施されていてもよい。
【0033】
本発明において、原料澱粉を化学的処理した加工澱粉が好ましく、原料澱粉を架橋処理した加工澱粉がより好ましく、原料澱粉をリン酸架橋処理した加工澱粉がより一層好ましい。
【0034】
本発明において、加工澱粉としては、例えば、リン酸架橋澱粉及びその金属塩、アセチル化アジピン酸架橋澱粉及びその金属塩、アセチル化酸化澱粉及びその金属塩、アセチル化リン酸架橋澱粉及びその金属塩、酸化澱粉及びその金属塩、ヒドロキシプロピル澱粉及びその金属塩、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉及びその金属塩、カルボキシメチル澱粉及びその金属塩、酢酸澱粉及びその金属塩、アルケニルコハク酸澱粉及びその金属塩、リン酸澱粉及びその金属塩、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉及びその金属塩が挙げられる。これらの加工澱粉は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
本発明において、加工澱粉は、リン酸架橋澱粉、リン酸架橋澱粉の金属塩、アセチル化リン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉の金属塩、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉の金属塩、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉及びリン酸モノエステル化リン酸架橋澱の金属塩からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。
【0036】
上記金属塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩等が挙げられる。
【0037】
本発明において、加工澱粉は、リン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉及びリン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉からなる群より選択される少なくとも一種がより好ましい。本発明において、加工澱粉は、リン酸架橋澱粉がより一層好ましい。
【0038】
本発明において、リン酸架橋澱粉とは、原料澱粉をリン酸架橋処理することによって得られる。本発明において、リン酸架橋澱粉は、リン酸架橋処理によって、原料澱粉の分子内の水酸基又は分子間の水酸基が架橋され、その結果糊化が抑制される。リン酸架橋処理は、原料澱粉のグルコース残基をリン酸化合物によって架橋するものである。
【0039】
リン酸架橋処理の際に使用されるリン酸化合物は、好ましくは、トリメタリン酸ナトリウム、オキシ塩化リン、オルトリン酸、オルトリン酸カリウム、オルトリン酸ナトリウム及びトリポリリン酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも一種である。リン酸架橋処理の際に使用されるリン酸化合物は、より好ましくはトリメタリン酸ナトリウム及び/又はオキシ塩化リンである。
【0040】
本発明において、加工澱粉に用いられる原料澱粉は、トウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、小麦澱粉、米澱粉、タピオカ澱粉、サゴヤシ及びエンドウ澱粉からなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、米澱粉及び/又はタピオカ澱粉がより好ましい。米澱粉における米の種類としては、うるち米及び/又はもち米が好ましく、うるち米がより好ましい。タピオカ澱粉としては、ウルチ種のタピオカ澱粉、ワキシー種のタピオカ澱粉及びハイアミロース種のタピオカ澱粉からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。加工澱粉に用いられる原料澱粉は、米澱粉がより一層好ましい。
【0041】
本発明の粒子は、加工澱粉で構成される外殻(シェル)の内側に空洞が形成された中空構造を有していてもよく、又は、粒子の内部が加工澱粉で充填された中実構造を有していてもよい。
【0042】
本発明において、接触角A(°)は、粒子の表面に水滴を1滴滴下した直後の水に対する接触角を、接触角測定装置(商品名「Drop Master face」、協和界面科学株式会社製)で測定した値を意味する。
【0043】
本発明において、接触角B(°)は、粒子の表面に水滴を1滴滴下してから180秒後の水に対する接触角を、上記接触角測定装置で測定した値を意味する。接触角A及び接触角Bのより詳細な測定方法については、後述する実施例において説明する。
【0044】
接触角Aが90°未満である場合、粒子の疎水性に劣るため、該粒子を油相に添加した際に該粒子の凝集が起こりうる。
【0045】
本発明において、接触角Aは、粒子がより一層高い疎水性を有する点から、好ましくは90°以上150°以下である。
【0046】
本発明において、接触角Aの下限値は、90°、92°、94°、96°、98°、100°、102°、104°、106°、108°、110°、112°、114°、116°、118°、120°、122°、124°、及び126°の値をとり得る。接触角Aの上限値は、150°、148°、146°、144°、142°、140°、138°及び136°の値をとり得る。これらの上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
【0047】
本発明において、接触角Bは、粒子がより一層高い疎水性を有する点から、好ましくは90°以上であり、より好ましくは90°以上150°以下である。
【0048】
本発明において、接触角Bの下限値は、90°、92°、94°、96°、98°、100°、102°、104°、106°、108°、110°、112°、114°、116°、118°及び120°の値をとり得る。接触角Bの上限値は、150°、148°、146°、144°、142°、140°、138°、136°、134°及び132°の値をとり得る。これらの上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
【0049】
接触角Bの値を接触角Aの値で割った値(接触角B/接触角A)が、0.70未満である場合、粒子の経時安定性に劣るため、該粒子を化粧料等の外用剤に配合して使用する際にべたつき易くなる。
【0050】
本発明において、接触角B/接触角Aの下限値は、0.70、0.72、0.74、0.76、0.78、0.80、0.82、0.84、0.86、0.88、0.90及び0.92の値をとり得る。本発明において、接触角B/接触角Aの上限値は、好ましくは1.00未満、より好ましくは0.995である。より一層好ましくは0.99である。
【0051】
本発明において、粒子の表面に水滴を1滴滴下してから30秒後の水に対する接触角(以下、「接触角C」とも表記)は、粒子がより一層高い疎水性を有する点から、好ましくは90°以上150°以下、より好ましくは94°以上148°以下、より一層好ましくは96°以上146°以下、更に好ましくは98°以上144°以下である。
【0052】
接触角Cの下限値は、90°、92°、94°、96°、98°、100°、102°、104°、106°、108°、110°、112°、114°、116°、118°及び120°の値をとり得る。接触角Cの上限値は、150°、148°、146°、144°、142°、140°、138°、136°、134°及び132°の値をとり得る。これらの上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
【0053】
本発明において、粒子の表面に水滴を1滴滴下してから60秒後の水に対する接触角(以下、「接触角D」とも表記)は、粒子がより一層高い疎水性を有する点から、好ましくは90°以上150°以下、より好ましくは92°以上148°以下、より一層好ましくは94°以上146°以下、更に好ましくは96°以上144°以下である。
【0054】
接触角Dの下限値は、90°、92°、94°、96°、98°、100°、102°、104°、106°、108°、110°、112°、114°、116°、118°及び120°の値をとり得る。接触角Dの上限値は、150°、148°、146°、144°、142°、140°、138°、136°、134°及び132°の値をとり得る。これらの上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
【0055】
本発明の粒子は、通常、疎水化処理された表面を有する。
【0056】
本発明の粒子は、好ましくは、アルコキシシラン化合物で処理された表面を有する。
【0057】
上記アルコキシシラン化合物は、好ましくは、下記式(1)で表される化合物である、
-(CH)n-Si-(OR (1)
[式中、Rはメチル基、アミノ基、エポキシ基、チオール基、又は炭素数1~6(1、2、3、4、5又は6)の直鎖若しくは分岐鎖状のパーフルオロアルキル基を示す。
は炭素数1~4(1、2、3又は4)の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。
nは0~19(0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18又は19)の整数を示す。
但し、R-(CH)nにおける炭素原子の合計数は1~19(1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18又は19)である。]
【0058】
上記式(1)において、Rで示される炭素数1~6(1、2、3、4、5又は6)の直鎖若しくは分岐鎖状のパーフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロ-n-プロピル基、パーフルオロイソプロピル基、パーフルオロ-n-ブチル基、パーフルオロイソブチル基、パーフルオロ-sec-ブチル基、パーフルオロ-tert-ブチル基、パーフルオロ-n-ペンチル基、パーフルオロ-1,1-ジメチルプロピル基、パーフルオロ-1,2-ジメチルプロピル基、パーフルオロ-1-メチルブチル基、パーフルオロ-2-メチルブチル基、パーフルオロ-3-メチルブチル基、パーフルオロ-n-ヘキシル基、パーフルオロ-1-メチルペンチル基、パーフルオロ-2-メチルペンチル基、パーフルオロ-3-メチルペンチル基、パーフルオロイソヘキシル基、パーフルオロ-1,1-ジメチルブチル基、パーフルオロ-1,2-ジメチルブチル基、パーフルオロ-2,2-ジメチルブチル基、パーフルオロ-1,3-ジメチルブチル基、パーフルオロ-2,3-ジメチルブチル基、パーフルオロ-3,3-ジメチルブチル基、パーフルオロ-1-エチルブチル基、パーフルオロ-2-エチルブチル基、パーフルオロ-1,1,2-トリメチルプロピル基、パーフルオロ-1,2,2-トリメチルプロピル基、パーフルオロ-1-エチル-1-メチルプロピル基、パーフルオロ-1-エチル-2-メチルプロピル基等が挙げられる。
【0059】
上記式(1)において、Rはメチル基、アミノ基、エポキシ基、チオール基又は炭素数1~6(1、2、3、4、5又は6)の直鎖状のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0060】
上記式(1)において、Rはメチル基、アミノ基、エポキシ基又は炭素数1~6(1、2、3、4、5又は6)の直鎖状のパーフルオロアルキル基であることがより好ましい。
【0061】
上記式(1)において、Rはメチル基、アミノ基又は炭素数1~6(1、2、3、4、5又は6)の直鎖状のパーフルオロアルキル基であることがより一層好ましい。
【0062】
上記式(1)において、炭素数1~6(1、2、3、4、5又は6)の直鎖状のパーフルオロアルキル基は、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロ-n-プロピル基、パーフルオロ-n-ブチル基、パーフルオロ-n-ペンチル基又はパーフルオロ-n-ヘキシル基である。
【0063】
上記式(1)において、Rはメチル基であることが特に好ましい。
【0064】
上記式(1)において、Rで示される炭素数1~4(1、2、3又は4)の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基又はtert-ブチル基である。
【0065】
上記式(1)において、Rは、メチル基、エチル基、n-プロピル基又はイソプロピル基であることが好ましく、メチル基又はエチル基であることがより好ましい。
【0066】
上記式(1)において、R-(CH)nにおける炭素原子の合計数の上限値は、好ましくは18、より好ましくは8である。
【0067】
式(1)で表されるアルコキシシラン化合物は、好ましくは、メチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、トリメトキシカプリリルシラン、トリエトキシカプリリルシラン、n-オクタデシルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチルトリエトキシシラン、レチノキシトリメチルシラン及びステアロキシトリメチルシランからなる群より選択される少なくとも一種の化合物である。
【0068】
本発明の粒子に含まれる加工澱粉は、以下の特性を有することが好ましい。
・加工澱粉の乾物換算濃度が16.7質量%であるスラリーの粘度を、以下の条件で測定した際に、95℃における粘度の最大値(Va)が50cP以下である。
(測定条件)
ラピッドビスコアナライザー(商品名「RVA4800」、Perten INSTRUMENTS社製)を用いて、パドルの回転数を160rpmとし、50℃で1分間維持し、50℃から95℃まで12.1℃/分で昇温し、95℃で3分30秒間維持し、及び95℃から50℃まで、11.8℃/分で降温する。
【0069】
上記Vaが50cP以下である場合、加工澱粉の架橋度が高いと推測される。架橋度とは、加工澱粉中の架橋構造の含有割合を意味する。架橋構造とは、原料澱粉の分子内の水酸基又は分子間の水酸基が架橋されることによって形成される構造を意味する。
【0070】
Vaの上限値は、50cP、45cP、40cP、38cP、36cP、34cP及び32cPの値をとり得る。Vaの下限値は、20cP、15cP、10cP及び5cPの値をとり得る。これらの上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。Vaのより詳細な測定方法については、後述する実施例において説明する。
【0071】
本発明の粒子の体積平均粒子径は、本発明の粒子を化粧料等の外用剤に配合して使用する場合の触感及び光拡散性を良好にする点から、0.5μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0072】
本発明において、体積平均粒子径は、精密粒度分布測定装置(製品名「コールターMultisizer(登録商標)4e」、ベックマン・コールター株式会社製)で得られた10万個の粒子の体積基準の粒度分布における算術平均径を意味する。体積平均粒子径の具体的な測定方法については、後述する実施例において説明する。
【0073】
本発明において、体積平均粒子径は、より好ましくは1.0μm以上75μm以下、より一層好ましくは2.0μm以上50μm以下、更に好ましくは3.0μm以上40μm以下、特に好ましくは4.0μm以上30μm以下、最も好ましくは5.0μm以上25μm以下である。
【0074】
本発明において、JIS Z 8781-4:2013に準拠して測定したL表色系において、L値が+90以上+100以下であり、a値が-1以上+1以下であり、且つ、b値が0以上+5以下である、ことが好ましい。L値、a値及びb値がこの数値範囲内である場合、本発明の粒子を化粧料等の外用剤に配合した際に、外用剤の着色がより抑制される。
【0075】
本発明において、JIS Z 8781-4:2013に準拠して測定したL表色系において、L値が+95以上+99以下であり、a値が-0.55上+0.5以下であり、且つ、b値が0.35以上+3.5以下である、ことがより好ましい。L値、a値及びb値がこの数値範囲内である場合、本発明の粒子を化粧料等の外用剤に配合した際に、外用剤の着色がより一層抑制される。
【0076】
表色系において、明度はLで表され、色相及び彩度を示す色度はa値及びb値で表される。L値、a値及びb値の具体的な測定方法については、後述する実施例において説明する。
【0077】
本発明の一実施形態として、本発明の粒子は、アルミニウム元素及び/又はケイ素元素を含有していてもよい。
【0078】
本発明の別の実施形態として、本発明の粒子は、好ましくはケイ素元素を含有し、より好ましくはケイ素元素及びアルミニウム元素を含有する。
【0079】
本発明の粒子がアルミニウム元素を含有する場合、粒子中のアルミニウム元素の含有量は、10000質量ppm以下である。本発明の粒子がアルミニウム元素を含有する場合、粒子中のアルミニウム元素の含有量は、0質量ppm超である。
【0080】
本発明の粒子がアルミニウム元素を含有する場合、粒子中のアルミニウム元素の含有量の下限値は、0質量ppm超、0.1質量ppm、0.5質量ppm、1質量ppm、2.5質量ppm、5質量ppm、7.5質量ppm、10質量ppm、50質量ppm、100質量ppm、150質量ppm、200質量ppm、250質量ppm、300質量ppm、350質量ppm、400質量ppm、450質量ppm及び500質量ppmの値をとり得る。粒子中のアルミニウム元素の含有量の上限値は、10000質量ppm、7500質量ppm、5000質量ppm、3000質量ppm、2500質量ppm、2000質量ppm、1500質量ppm、1400ppm、1300ppm、1200質量ppm、1100ppm、1000質量ppm、900質量ppm、800質量ppm及び750質量ppmの値をとり得る。これらの上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
【0081】
本発明の粒子がケイ素元素を含有する場合、粒子中のケイ素元素の含有量は、10000質量ppm以下である。本発明の粒子がケイ素元素を含有する場合、粒子中のケイ素元素の含有量は、0.1質量ppm以上である。
【0082】
本発明の粒子がケイ素元素を含有する場合、粒子中のケイ素元素の含有量の下限値は、0.1質量ppm、0.2質量ppm、0.4質量ppm、0.6質量ppm、0.8質量ppm、1質量ppm、1.25質量ppm、1.5質量ppm、1.75質量ppm、2.0質量ppm、2.25質量ppm、2.5質量ppm、2.75質量ppm、3.0質量ppm、3.25質量ppm及び3.5質量ppmの値をとり得る。粒子中のケイ素の含有量の上限値は、10000質量ppm、5000質量ppm、2500質量ppm、1000質量ppm、500質量ppm、250質量ppm、100質量ppm、75質量ppm、50質量ppm、45質量ppm、40質量ppm、35質量ppm、30質量ppm、25質量ppm及び20質量ppmの値をとり得る。これらの上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
【0083】
粒子中のアルミニウム元素及びケイ素元素の含有量の具体的な測定方法については、後述する実施例において説明する。
【0084】
2.加工澱粉含有粒子の製造方法
本発明の加工澱粉含有粒子の製造方法は、加工澱粉をアルコキシシラン化合物で表面処理する工程を備える、ことを特徴としている。本発明の製造方法は、このような構成を採用することにより、高い疎水性及び優れた経時安定性を有する加工澱粉含有粒子を簡便な方法で製造することができる。
【0085】
以下、本発明の加工澱粉含有粒子の製造方法について、詳述する。以下、本発明の加工澱粉含有粒子の製造方法を、単に「本発明の製造方法」と記載することもある。本発明の製造方法における加工澱粉をアルコキシシラン化合物で表面処理する工程を、単に「表面処理工程」と記載することもある。
【0086】
本発明の製造方法によって製造された加工澱粉含有粒子の詳細は、特に言及がない限り、上記「1.加工澱粉含有粒子」に記載したとおりである。
【0087】
本発明の製造方法において使用する加工澱粉は、以下の特性を有することが好ましい。
・加工澱粉の乾物換算濃度が16.7質量%であるスラリーの粘度を、以下の測定条件で測定した際に、95℃における粘度の最大値(Va)が50cP以下である。
(測定条件)
ラピッドビスコアナライザー(商品名「RVA4800」、Perten INSTRUMENTS社製)を用いて、パドルの回転数を160rpmとし、50℃で1分間維持し、50℃から95℃まで12.1℃/分で昇温し、95℃で3分30秒間維持し、及び95℃から50℃まで、11.8℃/分で降温する。
【0088】
Vaの上限値は、50cP、45cP、40cP、38cP、36cP、34cP及び32cPの値をとり得る。Vaの下限値は、20cP、15cP、10cP及び5cPの値をとり得る。これらの上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
【0089】
加工澱粉に用いられる原料澱粉は、トウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、小麦澱粉、米澱粉、タピオカ澱粉、サゴヤシ及びエンドウ澱粉からなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、米澱粉及び/又はタピオカ澱粉がより好ましい。米澱粉における米の種類としては、うるち米及び/又はもち米が好ましく、うるち米がより好ましい。タピオカ澱粉としては、ウルチ種のタピオカ澱粉、ワキシー種のタピオカ澱粉及びハイアミロース種のタピオカ澱粉からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。加工澱粉に用いられる原料澱粉は、米澱粉がより一層好ましい。
【0090】
表面処理工程において、アルコキシシラン化合物は、好ましくは、下記式(1)で表される化合物である、
-(CH)n-Si-(OR (1)
[式中、Rはメチル基、アミノ基、エポキシ基、チオール基、又は炭素数1~6(1、2、3、4、5又は6)の直鎖若しくは分岐鎖状のパーフルオロアルキル基を示す。
は炭素数1~4(1、2、3又は4)の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。
nは0~19(0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18又は19)の整数を示す。
但し、R-(CH)nにおける炭素原子の合計数は1~19(1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18又は19)である。]
【0091】
上記式(1)において、Rで示される炭素数1~6(1、2、3、4、5又は6)の直鎖若しくは分岐鎖状のパーフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロ-n-プロピル基、パーフルオロイソプロピル基、パーフルオロ-n-ブチル基、パーフルオロイソブチル基、パーフルオロ-sec-ブチル基、パーフルオロ-tert-ブチル基、パーフルオロ-n-ペンチル基、パーフルオロ-1,1-ジメチルプロピル基、パーフルオロ-1,2-ジメチルプロピル基、パーフルオロ-1-メチルブチル基、パーフルオロ-2-メチルブチル基、パーフルオロ-3-メチルブチル基、パーフルオロ-n-ヘキシル基、パーフルオロ-1-メチルペンチル基、パーフルオロ-2-メチルペンチル基、パーフルオロ-3-メチルペンチル基、パーフルオロイソヘキシル基、パーフルオロ-1,1-ジメチルブチル基、パーフルオロ-1,2-ジメチルブチル基、パーフルオロ-2,2-ジメチルブチル基、パーフルオロ-1,3-ジメチルブチル基、パーフルオロ-2,3-ジメチルブチル基、パーフルオロ-3,3-ジメチルブチル基、パーフルオロ-1-エチルブチル基、パーフルオロ-2-エチルブチル基、パーフルオロ-1,1,2-トリメチルプロピル基、パーフルオロ-1,2,2-トリメチルプロピル基、パーフルオロ-1-エチル-1-メチルプロピル基、パーフルオロ-1-エチル-2-メチルプロピル基等が挙げられる。
【0092】
上記式(1)において、Rはメチル基、アミノ基、エポキシ基、チオール基又は炭素数1~6(1、2、3、4、5又は6)の直鎖状のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0093】
上記式(1)において、Rはメチル基、アミノ基、エポキシ基又は炭素数1~6(1、2、3、4、5又は6)の直鎖状のパーフルオロアルキル基であることがより好ましい。
【0094】
上記式(1)において、Rはメチル基、アミノ基又は炭素数1~6(1、2、3、4、5又は6)の直鎖状のパーフルオロアルキル基であることがより一層好ましい。
【0095】
上記式(1)において、炭素数1~6(1、2、3、4、5又は6)の直鎖状のパーフルオロアルキル基は、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロ-n-プロピル基、パーフルオロ-n-ブチル基、パーフルオロ-n-ペンチル基又はパーフルオロ-n-ヘキシル基である。
【0096】
上記式(1)において、Rはメチル基であることが特に好ましい。
【0097】
上記式(1)において、Rで示される炭素数1~4(1、2、3又は4)の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基又はtert-ブチル基である。上記式(1)において、Rは、メチル基、エチル基、n-プロピル基又はイソプロピル基であることが好ましく、メチル基又はエチル基であることがより好ましい。
【0098】
上記式(1)において、R-(CH)nにおける炭素原子の合計数の上限値は、好ましくは18、より好ましくは9、より好ましくは8である。
【0099】
式(1)で表されるアルコキシシラン化合物は、好ましくは、メチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、トリメトキシカプリリルシラン、トリエトキシカプリリルシラン、n-オクタデシルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチルトリエトキシシラン、レチノキシトリメチルシラン及びステアロキシトリメチルシランからなる群より選択される少なくとも一種の化合物である。
【0100】
表面処理工程において、アルコキシシラン化合物の使用量は、より一層高い疎水性及びより一層優れた経時安定性を付与する点から、加工澱粉100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上30質量部以下、より好ましくは1質量部以上25質量部以下、より一層好ましくは2質量部以上20質量部以下、更に好ましくは3質量部以上15質量部以下である。
【0101】
表面処理工程は、より一層高い疎水性及びより一層優れた経時安定性を付与する点から、触媒の存在下で行い、且つ、該触媒が、金属塩化物及び/又は無機酸である、ことが好ましい。
【0102】
金属塩化物は、より一層高い疎水性及びより一層優れた経時安定性を付与する点から、塩化アルミニウム、塩化第1錫、塩化第2錫、塩化カルシウム、塩化亜鉛及び塩化マグネシウムからなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、塩化アルミニウムがより好ましい。
【0103】
無機酸は、より一層高い疎水性及びより一層優れた経時安定性を付与する点から、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、希硫酸、濃硫酸、希硝酸、濃硝酸、希塩酸及び濃塩酸からなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、希硫酸及び濃硫酸からなる群より選択される少なくとも一種がより好ましく、リン酸、希硫酸及び濃硫酸からなる群より選択される少なくとも一種がより一層好ましく、リン酸及び/又は希硫酸が更に好ましく、リン酸が特に好ましい。
【0104】
表面処理工程において、触媒の使用量は、より一層高い疎水性及びより一層優れた経時安定性を付与する点から、加工澱粉100質量部に対して、好ましくは1質量部以上30質量部以下、より好ましくは2質量部以上25質量部以下、より一層好ましくは3質量部以上20質量部以下、更に好ましくは5質量部以上15質量部以下である。
【0105】
表面処理工程は、有機溶媒中で行うことが好ましい。有機溶媒は、簡便に溶媒を除去できる点から、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール及び2-メチル-2-プロパノールからなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、エタノールがより好ましい。
【0106】
有機溶媒の使用量は、簡便に溶媒を除去できる点から、加工澱粉100質量部に対して、好ましくは50質量部超200質量部以下、より好ましくは55質量部以上180質量部以下、より一層好ましくは70質量部以上160質量部以下、更に好ましくは80質量部以上140質量部以下である。加工澱粉100質量部に対する有機溶媒の使用量の上限値は、200質量部、190質量部、180質量部、170質量部、160質量部、150質量部、140質量部、130質量部、120質量部及び110質量部の値をとり得る。加工澱粉100質量部に対する有機溶媒の使用量の下限値は、50質量部超、55質量部、60質量部、65質量部、70質量部、75質量部、80質量部、85質量部及び90質量部の値をとり得る。これらの上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
【0107】
表面処理工程は、好ましくは、以下の工程(1)乃至工程(3)である。
工程(1):容器中で、加工澱粉とアルコキシシラン化合物と有機溶媒とを室温で攪拌して分散液を作製する。
工程(2):工程(1)で作製した分散液に、触媒を添加し、室温で攪拌してスラリーを作製する。
工程(3):工程(2)で作製したスラリーをオーブンへ入れて加熱する。
【0108】
上記工程(1)において、容器中で、有機溶媒にアルコキシシラン化合物を溶解させ、更に加工澱粉を添加し、室温で攪拌して分散液を作成することが好ましい。
【0109】
上記工程(3)において、作製したスラリーを30~60℃に設定したオーブンで30分~1時間静置し、その後、スラリーを90~200℃に設定したオーブンで1~4時間反応させる、ことが好ましい。
【0110】
本発明の製造方法において使用する加工澱粉の製造方法(以下、「加工澱粉の製造方法」とも表記する)としては、例えば、以下に記載の方法が挙げられる。
・澱粉をリン酸化合物で処理する工程(A)と、澱粉をプロテアーゼで処理する工程(B)とを連続的に行う。
【0111】
[工程(A)]
工程(A)は、原料澱粉をリン酸化合物で処理する工程である。工程(A)において、リン酸化合物は架橋剤として用いられる。工程(A)によって、原料澱粉がリン酸化合物で処理(リン酸架橋処理)された加工澱粉を得ることができる。
【0112】
工程(A)において、原料澱粉は、トウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、小麦澱粉、米澱粉、タピオカ澱粉、サゴヤシ及びエンドウ澱粉からなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、米澱粉及び/又はタピオカ澱粉がより好ましい。米澱粉における米の種類としては、うるち米及び/又はもち米が好ましく、うるち米がより好ましい。タピオカ澱粉としては、ウルチ種のタピオカ澱粉、ワキシー種のタピオカ澱粉及びハイアミロース種のタピオカ澱粉からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。加工澱粉に用いられる原料澱粉は、米澱粉がより一層好ましい。
【0113】
工程(A)において、加工澱粉は、リン酸架橋澱粉、リン酸架橋澱粉の金属塩、アセチル化リン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉の金属塩、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉の金属塩、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉及びリン酸モノエステル化リン酸架橋澱の金属塩からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。
【0114】
上記金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩等が挙げられる。
【0115】
工程(A)において、加工澱粉は、リン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉及びリン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉からなる群より選択される少なくとも一種がより好ましい。工程(A)において、加工澱粉は、リン酸架橋澱粉がより一層好ましい。
【0116】
工程(A)において、原料澱粉は、通常、水に懸濁させて分散液(原料澱粉を含む分散液)とする。水としては、例えば、天然水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水等が挙げられ、これらの中でも、イオン交換水が好ましい。
【0117】
原料澱粉を含む分散液中の原料澱粉と水との質量比は、好ましくは原料澱粉:水=100:75~200、より好ましくは原料澱粉:水=100:100~190である。原料澱粉を含む分散液の澱粉濃度は、好ましくは20質量%以上60質量%以下、より好ましくは25質量%以上55質量%以下、より一層好ましくは30質量%以上50質量%以下である。
【0118】
工程(A)において、リン酸化合物は、トリメタリン酸ナトリウム、オキシ塩化リン、オルトリン酸、オルトリン酸カリウム、オルトリン酸ナトリウム及びトリポリリン酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。リン酸化合物は、トリメタリン酸ナトリウム及び/又はオキシ塩化リンがより好ましく、トリメタリン酸ナトリウムが特に好ましい。
【0119】
工程(A)において、リン酸化合物の使用量は、原料澱粉100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上20質量部以下、より好ましくは1質量部以上15質量部以下、より一層好ましくは2質量部以上10質量部以下である。
【0120】
工程(A)を行う温度は、好ましくは10℃以上50℃以下、より好ましくは20℃以上48℃以下、より一層好ましくは25℃以上45℃以下である。
【0121】
工程(A)を行う時間は、好ましくは1時間以上30時間以下、より好ましくは3時間以上27時間以下、より一層好ましくは5時間以上24時間以下、更に好ましくは7時間以上22時間以下、特に好ましくは8時間以上20時間以下である。
【0122】
[工程(B)]
工程(B)は、澱粉をプロテアーゼで処理する工程(プロテアーゼ処理工程)である。澱粉をプロテアーゼで処理することによって、澱粉に含まれるタンパク質の含有量を低減させることが可能となる。
【0123】
工程(B)において、プロテアーゼで処理する前の澱粉は、通常、原料澱粉である。原料澱粉は、トウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、小麦澱粉、米澱粉、タピオカ澱粉、サゴヤシ及びエンドウ澱粉からなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、米澱粉及び/又はタピオカ澱粉がより好ましい。米澱粉における米の種類としては、うるち米及び/又はもち米が好ましく、うるち米がより好ましい。タピオカ澱粉としては、ウルチ種のタピオカ澱粉、ワキシー種のタピオカ澱粉及びハイアミロース種のタピオカ澱粉からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。加工澱粉に用いられる原料澱粉は、米澱粉がより一層好ましい。
【0124】
工程(B)において、原料澱粉は、通常、水に懸濁させて分散液(原料澱粉を含む分散液)とする。水としては、例えば、天然水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水等が挙げられ、これらの中でも、イオン交換水が好ましい。
【0125】
原料澱粉を含む分散液中の原料澱粉と水との質量比は、好ましくは原料澱粉:水=100:75~200、より好ましくは原料澱粉:水=100:100~190である。原料澱粉を含む分散液の澱粉濃度は、好ましくは20質量%以上60質量%以下、より好ましくは25質量%以上55質量%以下、より一層好ましくは30質量%以上50質量%以下である。
【0126】
本発明の一実施形態は、工程(B)において、プロテアーゼで処理する前の澱粉が、工程(A)を経て得られる、原料澱粉がリン酸化合物で処理された加工澱粉である。この場合、加工澱粉をプロテアーゼで処理することによって、加工澱粉に含まれるタンパク質の含有量を低減させることが可能となる。
【0127】
工程(B)において、加工澱粉は、リン酸架橋澱粉、リン酸架橋澱粉の金属塩、アセチル化リン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉の金属塩、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉の金属塩、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉及びリン酸モノエステル化リン酸架橋澱の金属塩からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。
【0128】
上記金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩等が挙げられる。
【0129】
工程(B)において、加工澱粉は、リン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉及びリン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉からなる群より選択される少なくとも一種がより好ましい。工程(B)において、加工澱粉は、リン酸架橋澱粉がより一層好ましい。
【0130】
工程(B)において、プロテアーゼの使用量は、原料澱粉100質量部に対して、通常0.05質量部以上10質量部以下、好ましくは0.1質量部以上8質量部以下、より好ましくは0.2質量部以上6質量部以下、より一層好ましくは0.3質量部以上5質量部以下、更に好ましくは0.4質量部以上4質量部以下、特に好ましくは0.5質量部以上3質量部以下である。
【0131】
工程(B)において、プロテアーゼは、アルカリ性プロテアーゼが好ましい。工程(B)において、プロテアーゼは、オリエンターゼ、アルカラーゼ、スミチーム、アロアーゼ、マキシプロ及びビオプラーゼからなる群より選択される少なくとも一種がより好ましく、オリエンターゼ、アルカラーゼ及びスミチームからなる群より選択される少なくとも一種であることがより一層好ましく、オリエンターゼが特に好ましい。
【0132】
工程(B)において、好ましいプロテアーゼは、公知の市販品を広く用いることができる。市販品としては、例えば、オリエンターゼ22BF(エイチビィアイ株式会社製)、アルカラーゼ2.4LFG(ノボザイムズジャパン株式会社製)、スミチームMP(新日本化学工業株式会社製)、アロアーゼXA-10(ヤクルト薬品工業株式会社製)、オリエンターゼOP(エイチビィアイ株式会社製)、マキシプロBAP(DSM株式会社製)、ビオプラーゼSP-20FG(ナガセケムテックス株式会社製等が挙げられる。これらの市販品は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0133】
工程(B)を行う温度は、好ましくは10℃以上50℃以下、より好ましくは20℃以上48℃以下、より一層好ましくは25℃以上45℃以下である。
【0134】
工程(B)を行う時間は、通常1時間以上30時間以下、好ましくは2時間以上28時間以下、より好ましくは4時間以上26時間以下、より一層好ましくは6時間以上24時間以下、更に好ましくは8時間以上22時間以下、特に好ましくは10時間以上20時間以下である。
【0135】
工程(A)と工程(B)とを連続的に行うとは、通常、同一容器内で工程(A)と工程(B)とを連続的に行うこと、又は、同一容器内で工程(A)と工程(B)とを並行して行うこと、をいう。ここで、「連続的に行う」又は「並行して行う」とは、絶えず工程(A)と工程(B)とが行われている場合だけを意味するものではなく、工程(A)及び/又は工程(B)が一時的に停止する場合も包含する。
【0136】
加工澱粉の製造方法において、リン酸化合物及びプロテアーゼを同一容器内に添加した後に、リン酸化合物及びプロテアーゼを追加で添加しない、ことが好ましい。加工澱粉の製造方法において、リン酸化合物及びプロテアーゼは、同じタイミングで添加を開始することが好ましい。
【0137】
加工澱粉の製造方法において、リン酸化合物及びプロテアーゼの添加終了タイミングは、それぞれ適宜設定することができる。例えば、プロテアーゼの添加終了前にリン酸化合物の添加を終了してもよく、リン酸化合物の添加終了前にプロテアーゼの添加を終了してもよく、リン酸化合物及びプロテアーゼの添加終了のタイミングを同じにしてもよい。
【0138】
加工澱粉の製造方法は、ナトリウム塩及び/又はpH調整剤の存在下で、工程(A)と工程(B)とを連続的に行うことが好ましい。
【0139】
ナトリウム塩は澱粉の膨潤抑制のために用いられる。ナトリウム塩は、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム及び炭酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、塩化ナトリウムがより好ましい。
【0140】
ナトリウム塩の使用量は、澱粉の分散に用いる水100質量部に対して、好ましくは10質量部以上50質量部以下、より好ましくは15質量部以上45質量部以下、より一層好ましくは20質量部以上40質量部以下である。
【0141】
pH調整剤は、水酸化ナトリウム及び/又は炭酸ナトリウムが好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。
【0142】
pH調整剤を使用する場合、工程(A)と工程(B)とを連続的に行う際のpHを、通常8以上13以下、好ましくは8.5以上12.5以下、より好ましくは9以上12以下に調整する。pH調整剤の使用量は、澱粉の分散に用いる水100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上5質量部以下、より好ましくは0.3質量部以上4質量部以下、より一層好ましくは0.5質量部以上3質量部以下である。
【0143】
加工澱粉の製造方法は、工程(A)及び工程(B)以外に、更に分離工程及び乾燥工程を備えていてもよい。なお、以下、分離工程を工程(C)、乾燥工程を工程(D)と称する。
【0144】
(分離工程)
分離工程は、工程(A)と工程(B)とを連続的に行うことで得られた加工澱粉の分散液から、例えば、ろ過、遠心分離等の方法により、固形分を分離する工程である。該分離工程を経て、加工澱粉のケーキ状物質が得られる。分離工程前に、加工澱粉の分散液に、塩酸等を加えて中和してもよい。ろ過は、加圧ろ過装置、遠心分離装置等を用いて行うことができる。遠心分離は、遠心分離装置等を用いて行うことができる。
【0145】
分離工程を経て得られたケーキ状物質を、イオン交換水、純水等で洗浄してもよい。洗浄により、無機塩等の不純分を低減することができる。さらに、洗浄したケーキ状物質を、遠心脱水機等で脱水してもよい。洗浄及び脱水を経て、粉体が得られる。
【0146】
(乾燥工程)
乾燥工程は、分離工程で得られたケーキ状物質又は粉体に含まれる水性媒体を、常圧(大気圧)又は減圧下での加熱により、蒸発させる工程である。該乾燥工程を経て、加工澱粉が得られる。
【0147】
乾燥工程において、加熱温度は、好ましくは40℃以上150℃以下、より好ましくは45℃以上130℃以下、より一層好ましくは50℃以上110℃以下、更に好ましくは55℃以上95℃以下、特に好ましくは60℃以上90℃以下である。乾燥工程において、加熱時間は、好ましくは3時間以上である。
【0148】
3.加工澱粉含有粒子の用途
本発明の粒子は、外用医薬品、化粧料等の外用剤の添加剤;塗料用艶消し剤、粉体塗料等のコーティング材料の添加剤;自動車材料、建築材料等の樹脂組成物の添加剤;ブロッキング防止剤の添加剤;又は光拡散フィルムの添加剤等として好適に使用することができる。
【0149】
本発明の粒子は、外用医薬品、化粧料等の外用剤の添加剤としてより好適に使用することができる。本発明の粒子は、化粧料の添加剤として特に好適に使用することができる。
【0150】
(外用剤)
本発明の粒子を含む外用剤の態様について、以下に例示する。本態様において、外用剤は、本発明の粒子を含む。外用剤は、肌に塗布されることで、毛穴、シミ、シワ等を目立たなくすることができる。
【0151】
本態様において、外用剤における本発明の粒子の含有割合は、外用剤の種類に応じて適宜設定できるが、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、より一層好ましくは5質量%以上であり、また、好ましくは80質量%以下、より好ましくは50質量%以下、より一層好ましくは40質量%以下である。
【0152】
本態様において、外用剤は、例えば、外用医薬品、化粧料として使用できる。外用医薬品としては、例えば、クリーム、軟膏、乳剤等が挙げられる。化粧料の剤型は、特に限定されるものではなく、水系、可溶化系、水中油系、油中水系、油系のいずれの剤型においても、適用することができる。
【0153】
化粧料としては、例えば、石鹸、ボディシャンプー、洗顔クリーム、スクラブ洗顔料、歯磨き等の洗浄用化粧品;おしろい類、フェイスパウダー(ルースパウダー、プレストパウダー等)、ファンデーション(パウダーファンデーション、リキッドファンデーション、乳化型ファンデーション等)、口紅、リップクリーム、頬紅、眉目化粧品(アイシャドー、アイライナー、マスカラ等)、マニキュア等のメイクアップ化粧料;プレシェーブローション、ボディローション等のローション剤;ボディパウダー、ベビーパウダー等のボディー用外用剤;化粧水、クリーム、乳液(化粧乳液)等のスキンケア剤;制汗剤(液状制汗剤、固形状制汗剤、クリーム状制汗剤等)、パック類、洗髪用化粧品、染毛料、整髪料、芳香性化粧品、浴用剤、日焼け止め製品、サンタン製品、ひげ剃り用クリーム等が挙げられる。
【0154】
本態様において、上記化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲で、一般に用いられている主剤又は添加物を目的に応じて配合できる。そのような主剤又は添加物としては、例えば、水、低級アルコール(炭素数5以下のアルコール)、油脂及びロウ類、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、ステロール、脂肪酸エステル、金属石鹸、保湿剤、界面活性剤、高分子化合物、色材原料、香料、粘土鉱物類、防腐・殺菌剤、抗炎症剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、有機無機複合粒子、pH調整剤(トリエタノールアミン等)、特殊配合添加物、医薬品活性成分等が挙げられる。
【0155】
上記油脂及びロウ類としては、例えば、アボガド油、アーモンド油、オリーブ油、カカオ脂、牛脂、ゴマ脂、小麦胚芽油、サフラワー油、シアバター、タートル油、椿油、パーシック油、ひまし油、ブドウ油、マカダミアナッツ油、ミンク油、卵黄油、モクロウ、ヤシ油、ローズヒップ油、硬化油、シリコーン油、オレンジラフィー油、カルナバロウ、キャンデリラロウ、鯨ロウ、ホホバ油、モンタンロウ、ミツロウ、ラノリン等が挙げられる。
【0156】
上記炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、ワセリン、パラフィン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン等が挙げられる。
【0157】
上記高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、ウンデシレン酸、オキシステアリン酸、リノール酸、ラノリン脂肪酸、合成脂肪酸等の炭素数11以上の脂肪酸が挙げられる。
【0158】
上記高級アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、ラノリンアルコール、水素添加ラノリンアルコール、へキシルデカノール、オクチルデカノール、イソステアリルアルコール、ホホバアルコール、デシルテトラデカノール等の炭素数6以上のアルコールが挙げられる。
【0159】
上記ステロールとしては、例えば、コレステロール、ジヒドロコレステロール、フィトコレステロール等が挙げられる。
【0160】
上記脂肪酸エステルとしては、例えば、リノール酸エチル等のリノール酸エステル;ラノリン脂肪酸イソプロピル等のラノリン脂肪酸エステル;ラウリン酸ヘキシル等のラウリン酸エステル;ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル等のミリスチン酸エステル;オレイン酸デシル、オレイン酸オクチルドデシル等のオレイン酸エステル;ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル等のジメチルオクタン酸エステル;イソオクタン酸セチル(2-エチルヘキサン酸セチル)等のイソオクタン酸エステル;パルミチン酸デシル等のパルミチン酸エステル;トリミリスチン酸グリセリン、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、ジオレイン酸プロピレングリコール、トリイソステアリン酸グリセリン、トリイソオクタン酸グリセリン、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、リンゴ酸ジイソステアリル、イソステアリン酸コレステリル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル等の環状アルコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0161】
上記金属石鹸としては、例えば、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ウンデシレン酸亜鉛等が挙げられる。
【0162】
上記保湿剤としては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、dl-ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ソルビトール、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリグリセリン、キシリット、マルチトール等が挙げられる。
【0163】
上記界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸石鹸、高級アルコール硫酸エステル、N-アシルグルタミン酸塩、リン酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤;アミン塩、第4級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤;ベタイン型、アミノ酸型、イミダゾリン型、レシチン等の両性界面活性剤;脂肪酸モノグリセリド、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、酸化エチレン縮合物等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0164】
上記高分子化合物としては、例えば、アラビアゴム、トラガントガム、グアーガム、ローカストビーンガム、カラヤガム、アイリスモス、クインスシード、ゼラチン、セラック、ロジン、カゼイン等の天然高分子化合物;カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、エステルガム、ニトロセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース等の半合成高分子化合物;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミド樹脂、シリコーン油、ナイロン粒子、ポリ(メタ)アクリル酸エステル粒子(例えば、ポリメタクリル酸メチル粒子等)、ポリスチレン粒子、シリコーン粒子、ウレタン粒子、ポリエチレン粒子、シリカ粒子等の合成高分子化合物が挙げられる。
【0165】
上記色材原料としては、例えば、酸化鉄(赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄等)、群青、コンジョウ、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、マンガンバイオレット、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、雲母、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー等の無機顔料、アゾ系、ニトロ系、ニトロソ系、キサンテン系、キノリン系、アントラキノリン系、インジゴ系、トリフェニルメタン系、フタロシアニン系、ピレン系等のタール色素が挙げられる。
【0166】
なお、上記した高分子化合物の粉体原料や色材原料などの粉体原料は、予め表面処理を行ったものも使用することができる。表面処理の方法としては、公知の表面処理技術が利用でき、例えば、炭化水素油、エステル油、ラノリン等による油剤処理、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等によるシリコーン処理、パーフルオロアルキル基含有エステル、パーフルオロアルキルシラン、パーフルオロポリエーテルおよびパーフルオロアルキル基を有する重合体等によるフッ素化合物処理、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等によるシランカップリング剤処理、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート等によるチタンカップリング剤処理、金属石鹸処理、アシルグルタミン酸等によるアミノ酸処理、水添卵黄レシチン等によるレシチン処理、コラーゲン処理、ポリエチレン処理、保湿性処理、無機化合物処理、メカノケミカル処理等の処理方法が挙げられる。
【0167】
上記粘土鉱物類としては、例えば、体質顔料および吸着剤などの数種の機能を兼ね備えた成分、例えば、タルク、マイカ、セリサイト、チタンセリサイト(酸化チタンで被覆されたセリサイト)、白雲母、バンダービルト社製のVEEGUM(登録商標)等が挙げられる。
【0168】
上記香料としては、例えば、アニスアルデヒド、ベンジルアセテート、ゲラニオール等が挙げられる。
【0169】
上記防腐・殺菌剤としては、例えば、メチルパラペン、エチルパラペン、プロピルパラペン、ベンザルコニウム、ベンゼトニウム等が挙げられる。
【0170】
上記酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、トコフェロール等が挙げられる。
【0171】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、微粒子酸化セリウム、微粒子酸化鉄、微粒子酸化ジルコニウム等の無機系吸収剤、安息香酸、パラアミノ安息香酸、アントラニリック酸、サルチル酸、桂皮酸、ベンゾフェノン、ジベンゾイルメタン等の有機系吸収剤が挙げられる。
【0172】
上記特殊配合添加物としては、例えば、エストラジオール、エストロン、エチニルエストラジオール、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン等のホルモン類、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンE等のビタミン類、クエン酸、酒石酸、乳酸、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム・カリウム、アラントインクロルヒドロキシアルムニウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛、硫酸亜鉛等の皮膚収斂材剤、カンタリスチンキ、トウガラシチンキ、ショウキョウチンキ、センブリエキス、ニンニクエキス、ヒノキチオール、塩化カルプロニウム、ペンタデカン酸グリセリド、ビタミンE、エストロゲン、感光素等の発毛促進剤、リン酸-L-アスコルビン酸マグネシウム、コウジ酸等の美白剤等が挙げられる。
【0173】
(コーティング剤)
本発明の粒子を含むコーティング剤の態様について、以下に例示する。本態様において、コーティング剤は、本発明の粒子を含む。本態様において、コーティング剤における本発明の粒子の含有割合は、コーティング剤の種類に応じて適宜設定できるが、好ましくは1~90質量%、より好ましくは3~80質量%である。
【0174】
本態様において、コーティング材料は、必要に応じてバインダー樹脂、紫外線硬化樹脂、溶剤を含むことができる。バインダー樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、アモルファスポリオレフィン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0175】
上記紫外線硬化性樹脂としては、多官能(メタ)アクリレート樹脂が好ましく、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多価アルコール多官能(メタ)アクリレート樹脂がより好ましい。
【0176】
1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多価アルコール多官能(メタ)アクリレート樹脂としては、具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、1,2,4-シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリアクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。これらの樹脂は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0177】
紫外線硬化性樹脂を用いる場合には、紫外線硬化性樹脂に光重合開始剤を加えてバインダー樹脂とする。光重合開始剤は、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、α-ヒドロキシアルキルフェノン類、α-アミノアルキルフェノン、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類(特開2001-139663号公報等に記載)、2,3-ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類、芳香族スルホニウム類、オニウム塩類、ボレート塩、活性ハロゲン化合物、α-アシルオキシムエステル等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0178】
上記溶剤としては、例えば、油系塗料であれば、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤等が挙げられ、水系塗料であれば、水、アルコール類等が挙げられる。これらの溶剤は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0179】
本態様において、コーティング材料には、必要に応じて、公知の塗面調整剤、流動性調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤、硬化触媒、体質顔料、着色顔料、金属顔料、マイカ粉顔料、染料等が含まれていてもよい。
【0180】
本態様において、コーティング材料を使用した塗膜の形成方法としては、例えば、スプレー塗装法、ロール塗装法、ハケ塗り法等の公知の塗膜形成方法が挙げられる。コーティング材料は、必要に応じて粘度を調整するために、希釈剤で希釈してもよい。
【0181】
上記希釈剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族化合物系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶剤;天然水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水等の水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤等が挙げられる。これらの希釈剤は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0182】
また、基材等の任意の塗工面に塗工して塗工膜を作製し、この塗工膜を乾燥させた後、必要に応じて塗工膜を硬化させることによって、架塗膜を形成することができる。なお、コーティング材料を使用した塗膜は各種基材にコーティングして使用され、金属、木材、ガラス、プラスチックス等特に限定されない。また、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、アクリル樹脂等の透明基材にコーティングして用いることもできる。
【0183】
(樹脂組成物)
本発明の粒子を含む樹脂組成物の態様について、以下に例示する。本態様において、樹脂組成物は、基材樹脂及び本発明の粒子を含む。
【0184】
上記基材樹脂としては、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコ-ル酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブシレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリ(エチレンサクシネート・テレフタレート)、ポリ(ブチレンサクシネート・テレフタレート)、ポリ(ブチレンアジペート・テレフタレート)、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(β-プロピオラクトン)、ポリアミド4、ポリ(3-ヒドロキシブチレ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシバリレ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシカプロレ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシヘプタノエ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシオクタノエ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート・3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート・3-ヒドロキシバリレート)、デンプン系樹脂、セルロース系樹脂、グルコサミン系樹脂等の生分解性樹脂;ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド12、ABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂)、AS樹脂(アクリロニトリル-スチレン共重合樹脂)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルサルファイド、ポリスチレン、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、熱可塑性ポリアミドエラストマー、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE樹脂)、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー(PFA樹脂)、ポリエーテルケトン等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの基材樹脂は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0185】
本態様において、樹脂組成物における本発明の粒子の含有量は、基材樹脂と本発明の粒子との総質量を基準にして、好ましくは0.1~70質量%であり、より好ましくは0.5~50質量%であり、より一層好ましくは1~30質量%である。
【0186】
本態様において、樹脂組成物には、必要に応じて、公知の添加剤が含まれていても良い。添加剤としては、ガラス繊維や炭素繊維などの強化繊維、難燃剤、流動性調整剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、滑剤、体質顔料、着色顔料、金属顔料、染料などを挙げることができる。
【0187】
本態様において、樹脂組成物の製造方法は、特に限定されず、基材樹脂と本発明の粒子とを機械式粉砕混合方法等のような従来広く知られている方法で混合することにより製造できる。
【0188】
上記機械式粉砕混合方法では、例えば、ヘンシェルミキサー、V型混合機、ターブラミキサー、ハイブリダイザー、ロッキングミキサー等の装置を用いて、基材樹脂と本発明の粒子とを混合し撹拌することにより、樹脂組成物を製造できる。
【0189】
本態様において、樹脂組成物を使用した成形体の形成方法は、特に限定されず、公知の方法をいずれも使用できる。例えば、基材樹脂と本発明の粒子とを混合機で混合し、押出機等の溶融混練機で混練することで樹脂組成物からなるペレットを得た後、このペレットを押出、射出、ブロー等で成形することにより、自動車材料、建築材料、包装材料等に適した任意の形状の成形体を得ることができる。
【0190】
(ブロッキング防止剤)
本発明の粒子を含むブロッキング防止剤の態様について、以下に例示する。本発明の粒子は、樹脂フィルムを巻き取ったときなどに、互いに接した樹脂フィルム表面同士が密着して剥がれなくなること(ブロッキング)を防止するために、樹脂フィルムの表面に凹凸を付与するブロッキング防止剤として使用できる。
【0191】
本態様において、ブロッキング防止剤は、本発明の粒子の他、必要に応じて、公知の酸化防止剤、流動性調整剤、光安定剤、着色顔料等が含まれていてもよい。
【0192】
本態様において、ブロッキング防止剤における本発明の粒子の含有量は、好ましくは70~100質量%であり、より好ましくは80~100質量%であり、より一層好ましくは90~100質量%である。
【0193】
本態様において、ブロッキング防止剤を使用できる樹脂フィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコ-ル酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブシレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリ(エチレンサクシネート・テレフタレート)、ポリ(ブチレンサクシネート・テレフタレート)、ポリ(ブチレンアジペート・テレフタレート)、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(β-プロピオラクトン)、ポリアミド4、ポリ(3-ヒドロキシブチレ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシバリレ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシカプロレ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシヘプタノエ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシオクタノエ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート・3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート・3-ヒドロキシバリレート)、デンプン系樹脂、セルロース系樹脂、グルコサミン系樹脂等の生分解性樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、(メタ)アクリロニトリル系樹脂、ノルボルネン系樹脂、非晶質ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、トリアセチルセルロース樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0194】
本態様において、樹脂フィルムにおける本発明の粒子の含有量は、好ましくは0.01~10質量%であり、より好ましくは0.01~5質量%であり、より一層好ましくは0.01~3質量%であり、特に好ましくは0.01~1質量%である。
【0195】
(光拡散フィルム)
本発明の粒子を含む光拡散フィルムの態様について、以下に例示する。本態様において、光拡散フィルムは、本発明の粒子を含む。
【0196】
本態様において、光拡散フィルムにおける本発明の粒子の含有量は、光拡散フィルムの種類に応じて適宜設定できるが、好ましくは1~90質量%、より好ましくは3~80質量%である。
【0197】
本態様において、光拡散フィルムは、例えば、本発明の粒子、バインダー樹脂、希釈剤などを公知の方法により混合して分散液を調製し、これを公知の方法により基材となるフィルム上に塗布・乾燥することにより製造することができる。
【0198】
本態様において、光拡散フィルムの製造に使用する基材としては、例えば、ガラス;ポリカーボネート(PC)、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)等からなるプラスチックシート、プラスチックフィルム、プラスチックレンズ、プラスチックパネル等が挙げられる。
【0199】
本態様において、光拡散フィルムの製造に使用するバインダー樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、アモルファスポリオレフィン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0200】
本態様において、光拡散フィルムの製造に使用する希釈剤としては、希釈剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族化合物;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン化合物;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル化合物;ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル化合物;天然水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水等の水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール等が挙げられる。これらの希釈剤は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【実施例0201】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、「室温」とは、15℃以上30℃以下の範囲内の温度を意味する。
【0202】
まず、実施例の項における測定方法及び評価方法について説明する。なお、測定方法及び評価方法において、各実施例、各比較例で得られた粒子を、単に「測定対象の粒子」と称する。
【0203】
実施例及び比較例における評価は以下の測定方法により実施した。
【0204】
(使用した澱粉の糊化粘度)
以下に示す方法により、各実施例及び各比較例で使用した澱粉(本段落において、単に「澱粉」と表記)の糊化粘度をラピッドビスコアナライザー(Rapid Visco Analyzer:RVA)(商品名「RVA4800」、Perten INSTRUMENTS社製)を使用して測定した。まず、専用のアルミニウム容器に、澱粉5gとイオン交換水25gとを添加して混合し、澱粉の乾物換算濃度が約16.7質量%のスラリーを調製した。該アルミニウム容器に専用のパドル(RVA4800に付属のパドル)を入れ、ラピッドビスコアナライザーにセットした。調製した澱粉の乾物換算濃度が約16.7質量%であるスラリーの粘度を、下記の測定条件でラピッドビスコアナライザーにより測定した際に、95℃における粘度の最大値(cP)を、使用した澱粉の糊化粘度とした。95℃における粘度の最大値が50cP以下である場合を〇、50cPを超える場合を×として評価した。
<測定条件>
測定開始から測定終了までの間パドルの回転数を160rpmに維持した。50℃で1分間維持し、50℃から95℃まで12.1℃/分で昇温した。昇温後、95℃で3分30秒間維持し、95℃から50℃まで11.8℃/分で降温した。
【0205】
(疎水性)
測定対象の粒子の疎水性は、水に対する接触角(°)の大きさによって評価した。具体的には、スライドガラス上に、両面テープ(商品名:ナイスタック、登録商標:NW-10S、ニチバン株式会社製)を貼り合わせ、該両面テープ上に測定対象の粒子0.5gをのせて、該両面テープの粘着面に軽く擦り付けた。その後、余分な粒子をブロワーで除去し、水に対する接触角測定用の試験サンプルとした。試験サンプルの水に対する接触角は、以下の測定条件に基づき、接触角測定装置(商品名「Drop Master face」、協和界面科学株式会社製)を用い、液滴法(静的接触角)及びJIS-R3257-1999に基づき測定した。より詳細には、測定対象の粒子の表面に、蒸留水をシリンジで1滴(1μL~5μL)滴下した直後の水に対する接触角(接触角A)、並びに、蒸留水をシリンジで1滴(1μL~5μL)滴下してから30秒後、60秒後及び180秒後の水に対する接触角を測定した。測定は各試験サンプルで3回ずつ行い、その平均値を測定対象の粒子の水に対する接触角(以下、「水に対する接触角」と表記)とした。測定対象の粒子の表面に、蒸留水をシリンジで1滴(1μL~5μL)滴下してから180秒後の水に対する接触角(接触角B)の値が90°以上である場合を〇、90°未満である場合を×として評価した。
<測定条件>
・温度 :23±1℃
・湿度 :50±5%
・使用した水 :蒸留水
【0206】
(経時安定性)
測定対象の粒子の経時安定性は、上記疎水性の評価の際に行った水に対する接触角の結果に基づいて評価した。具体的には、接触角Bの値を接触角Aの値で割った値(接触角B/接触角A)が0.70以上である場合を〇、0.70未満である場合を×として評価した。
【0207】
(体積平均粒子径の測定)
測定対象の粒子の体積平均粒子径は、精密粒度分布測定装置(製品名「コールターMultisizer(登録商標)4e」、ベックマン・コールター株式会社製)により測定した。測定は、ベックマン・コールター株式会社発行のMultisizer(登録商標)4eユーザーズマニュアルに従って校正されたアパチャーを用いて実施した。測定に用いたアパチャーは、測定対象の粒子の大きさによって、適宜選択した。例えば、0.2μm~6μmの粒子径範囲で測定する場合は10μmのサイズを有するアパチャーを選択し、0.4μm~16μmの粒子径範囲で測定する場合は20μmのサイズを有するアパチャーを選択し、2.0μm80~μmの粒子径範囲で測定する場合は100μmのサイズを有するアパチャーを選択した。測定用試料としては、測定対象の粒子0.1gを0.1質量%ノニオン性界面活性剤水溶液(花王株式会社製、「ぺレックスSS-H」)10mLに添加し、タッチミキサー(ヤマト科学株式会社製、「TOUCHMIXER MT-31」)及び超音波洗浄器(株式会社ヴェルヴォクリーア製、「ULTRASONIC CLEANER VS-150」)を用いて分散させ、分散液としたものを使用した。測定中は、ビーカー内を気泡が入らない程度に緩く攪拌しておき、粒子を10万個測定した時点で測定を終了した。測定対象の粒子の体積平均粒子径は、10万個の粒子の体積基準の粒度分布における算術平均径とした。
【0208】
(色調)
測定対象の粒子の色調は、JIS Z 8781-4:2013に準拠してL表色系にて色度測定を行うことによって得た。色調を測定した分析機器及び測定条件は以下のとおりである。測定対象の粒子をφ30mm×高さ15mmの専用測定セルケースにすりきり一杯充填した後、色度測定を実施した。
<分析機器>
・色彩色差計:Spectrophotometer SE7700(NIPPONDENSHOKU製)
<測定条件>
・測定方法 :反射率測定
・測定径 :28mm
・光源 :D65
・視野 :10°
・表色系 :L
【0209】
(アルミニウム元素及びケイ素元素の含有量)
測定対象の粒子中のアルミニウム元素及びケイ素元素の含有量を次のように測定した。0.5gの精秤された測定対象の粒子を、電気炉(株式会社いすず製「マッフル炉STR-15K」)を用いて450℃で3時間加熱して灰化した。容器中で得られた灰分と濃塩酸(関東化学社製「Ultrapur-100 超高純度試薬」)2mLとを混合した。ADAVANTEC No.7濾紙で混合物中の不溶分を濾過後、濾液を純水で50mLにメスアップして試料とした。該試料中の元素濃度を、マルチタイプICP発光分光分析装置(株式会社島津製作所製「ICPE-9000」)を用いて以下の測定条件にて測定した。元素濃度は、検量線より求めた。検量線は、以下の検量線用標準液(I)及び(II)を用いて、1/2、1/4、1/10及び1/40にそれぞれ希釈したものを測定し、得られた結果をプロットして作成した。該試料中の元素含有量は下式より算出した。
元素含有量(μg/g)=元素濃度(μg/mL)×50(mL)÷試料質量(g)
<測定条件>
・測定元素=アルミニウム元素及びケイ素元素
・観測方向=軸方向
・高周波出力=1.20kW
・キャリアー流量=0.7L/min
・プラズマ流量=10.0L/min
・補助流量=0.6L/min
・露光時間=30秒
・検量線用標準液=(I)米国SPEX社「XSTC-13」汎用混合標準溶液31元素混合(ベース5%HNO)-各約10mg/L、及び(II)米国SPEX社「XSTC-8」汎用混合標準溶液13元素混合(ベースHO/trace HF)-各約10mg/L
【0210】
(表面形状の観察)
試料台に導電性テープを貼り付け、その上に、測定対象の粒子を搭載した。日本電子株式会社製「オートファインコータ JFC-1300」スパッタ装置を用いて、表面処理(40mA、180秒)を行った。次いで、株式会社日立ハイテク(旧社名「株式会社日立ハイテクノロジーズ」)製「SU1510」走査電子顕微鏡(SEM)の二次電子検出器を用いて、表面処理した測定対象の粒子の表面形状を撮影した。
【0211】
(総合評価)
使用した澱粉の糊化粘度、疎水性及び経時安定性及の3項目において以下の条件で評価した。
A:3項目全てが〇
B:3項目のうち×が1つ
C:3項目のうち×が2つ
D:3項目全てが×評価
【0212】
(製造例1)
容器に、イオン交換水121質量部と、塩化ナトリウム(赤穂化成株式会社製「御塩」)35質量部と、水酸化ナトリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製「水酸化ナトリウム」)1.2質量部とを入れ、室温で攪拌して溶解させ、水溶液を作製した。作製した水溶液に、米澱粉(上越スターチ株式会社製「ファインスノウ」)100質量部を投入し、攪拌翼を用いて回転数425rpmにて室温で攪拌して分散させ、米澱粉の分散液を作製した。作製した分散液に、リン酸化合物としてトリメタリン酸ナトリウム(米山化学工業株式会社製「トリメタリン酸ナトリウム」)5質量部と、アルカリ性プロテアーゼとしてオリエンターゼ22BF(エイチビィアイ株式会社製)0.54質量部とを入れ、室温で攪拌して溶解させた。次いで、攪拌機を用いて、40℃の温度に維持して18時間反応させた。18時間後、加工澱粉の分散液に塩酸(富士フイルム和光純薬株式会社製「20%塩酸」)を添加して中和し、中和した分散液を加圧ろ過装置(株式会社アドバンテック製の製品名「KST-293-16-UH」)に投入して加圧ろ過した。加圧ろ過後、イオン交換水で洗浄し、更に脱水することにより、粉体を得た。得られた粉体を真空定温乾燥機(ヤマト科学株式会社製の製品名「DP43」)を用いて、80℃で24時間乾燥して、加工澱粉Aを得た。
【0213】
(実施例1)
50mLガラス瓶中で、有機溶媒としてのエタノール5質量部に、アルコキシシラン化合物としてのメチルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBM-13」)0.25質量部を溶解させ、更に製造例1で得られた加工澱粉Aを5質量部添加し、薬さじを用いて手混合にて室温で攪拌して分散液を作製した。作製した分散液に、触媒として5質量%塩化アルミニウム(富士フイルム和光純薬株式会社製「塩化アルミニウム」)水溶液を0.525質量部添加し、薬さじを用いて手混合にて室温で5分間攪拌してスラリーを作製した。作製したスラリーを50℃に設定したオーブンへ入れ、50℃で30分間静置した。その後、スラリーを110℃に設定したオーブンへ入れ、110℃で3時間反応と溶媒除去とを同時に行い、加工澱粉Aがメチルトリメトキシシランで表面処理された加工澱粉含有粒子を得た。
【0214】
(実施例2)
アルコキシシラン化合物としてn-プロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBM-3033」)を0.25質量部使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で、加工澱粉Aがプロピルトリメトキシシランで表面処理された加工澱粉含有粒子を得た。
【0215】
(実施例3)
アルコキシシラン化合物としてn-ヘキシルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBM-3063」)を0.25質量部使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で、加工澱粉Aがヘキシルトリメトキシシランで表面処理された加工澱粉含有粒子を得た。
【0216】
(実施例4)
アルコキシシラン化合物としてトリエトキシカプリリルシラン(信越化学工業株式会社製「AES-3083」)を0.25質量部使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で、加工澱粉Aがトリエトキシカプリリルシランで表面処理された加工澱粉含有粒子を得た。
【0217】
(実施例5)
アルコキシシラン化合物としてn-オクタデシルトリメトキシシラン(東京化成工業株式会社製「Octadecyltrimethoxysilane」)を0.25質量部使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で、加工澱粉Aがオクタデシルトリメトキシシランで表面処理された加工澱粉含有粒子を得た。
【0218】
(実施例6)
アルコキシシラン化合物として3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBM-903」)を0.25質量部使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で、加工澱粉Aがアミノプロピルトリメトキシシランで表面処理された加工澱粉含有粒子を得た。
【0219】
(実施例7)
アルコキシシラン化合物として1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチルトリエトキシシラン(Evonik Indutries社製「Dynasylan(登録商標) F 8261」)を0.25質量部使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で、加工澱粉Aがパーフルオロヘキシルエチルトリエトキシシランで表面処理された加工澱粉含有粒子を得た。
【0220】
(実施例8)
アルコキシシラン化合物としてトリエトキシカプリリルシラン(信越化学工業株式会社製「AES-3083」)を0.25質量部使用したこと、及び触媒として1質量%リン酸(富士フイルム和光純薬株式会社製「りん酸」)水溶液を0.525質量部使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で、加工澱粉Aがトリエトキシカプリリルシランで表面処理された加工澱粉含有粒子を得た。得られた粒子のSEM写真を図1に示す。
【0221】
(実施例9)
アルコキシシラン化合物としてトリエトキシカプリリルシラン(信越化学工業株式会社製「AES-3083」)を0.25質量部使用したこと、及び触媒として0.5質量%希硫酸水溶液を0.525質量部使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で、加工澱粉Aがトリエトキシカプリリルシランで表面処理された加工澱粉含有粒子を得た。なお、触媒として使用した0.5質量%希硫酸水溶液は、富士フイルム和光純薬株式会社製「硫酸」(濃度=90質量%以上)を、0.5質量%の濃度となるように水で希釈した水溶液である。
【0222】
(実施例10)
加工澱粉として加工澱粉Aの代わりにリン酸架橋澱粉(原料澱粉=タピオカ澱粉、日澱化学株式会社製の「PB-9000」)を5質量部使用したこと、及びアルコキシシラン化合物としてトリエトキシカプリリルシラン(信越化学工業株式会社製「AES-3083」)を0.25質量部使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で、リン酸架橋澱粉がトリエトキシカプリリルシランで表面処理された加工澱粉含有粒子を得た。
【0223】
(比較例1)
加工澱粉Aの代わりに原料澱粉として米澱粉(上越スターチ株式会社製「ファインスノウ」)を5質量部使用したこと、及びアルコキシシラン化合物としてトリエトキシカプリリルシラン(信越化学工業株式会社製「AES-3083」)を0.25質量部使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で、米澱粉がトリエトキシカプリリルシランで表面処理された原料澱粉含有粒子を得た。なお、本比較例では加工澱粉を使用しなかった。
【0224】
(比較例2)
加工澱粉Aの代わりに原料澱粉としてタピオカ澱粉(日本食品化工株式会社製「クリアテクストB-3」)を5質量部使用したこと、及びアルコキシシラン化合物としてトリエトキシカプリリルシラン(信越化学工業株式会社製「AES-3083」)を0.25質量部使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で、タピオカ澱粉がトリエトキシカプリリルシランで表面処理された原料澱粉含有粒子を得た。なお、本比較例では加工澱粉を使用しなかった。
【0225】
(比較例3)
加工澱粉Aの代わりに原料澱粉として馬鈴薯澱粉(東海デキストリン株式会社製「馬鈴薯でん粉」)を5質量部使用したこと、及びアルコキシシラン化合物としてトリエトキシカプリリルシラン(信越化学工業株式会社製「AES-3083」)を0.25質量部使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で、馬鈴薯澱粉がトリエトキシカプリリルシランで表面処理された原料澱粉含有粒子を得た。なお、本比較例では加工澱粉を使用しなかった。
【0226】
(比較例4)
加工澱粉として加工澱粉Aの代わりにリン酸架橋澱粉(原料澱粉=米澱粉、上越スターチ株式会社製の「アドバンススノウP」)を5質量部使用したこと、及びアルコキシシラン化合物としてトリエトキシカプリリルシラン(信越化学工業株式会社製「AES-3083」)を0.25質量部使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で、リン酸架橋澱粉がトリエトキシカプリリルシランで表面処理された加工澱粉含有粒子を得た。
【0227】
(比較例5)
加工澱粉として加工澱粉Aの代わりにリン酸架橋澱粉(原料澱粉=米澱粉、AGRANA株式会社製の「RICEPO4NATURAL」)を5質量部使用したこと、及びアルコキシシラン化合物としてトリエトキシカプリリルシラン(信越化学工業株式会社製「AES-3083」)を0.25質量部使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で、リン酸架橋澱粉がトリエトキシカプリリルシランで表面処理された加工澱粉含有粒子を得た。
【0228】
(比較例6)
加工澱粉として加工澱粉Aの代わりにリン酸架橋澱粉(原料澱粉=タピオカ澱粉、日澱化学株式会社製の「PB7000」)を5質量部使用したこと、及びアルコキシシラン化合物としてトリエトキシカプリリルシラン(信越化学工業株式会社製「AES-3083」)を0.25質量部使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で、リン酸架橋澱粉がトリエトキシカプリリルシランで表面処理された加工澱粉含有粒子を得た。
【0229】
(比較例7)
加工澱粉として加工澱粉Aの代わりにリン酸架橋澱粉(原料澱粉=タピオカ澱粉、日澱化学株式会社製の「PB5000」)を5質量部使用したこと、及びアルコキシシラン化合物としてトリエトキシカプリリルシラン(信越化学工業株式会社製「AES-3083」)を0.25質量部使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で、リン酸架橋澱粉がトリエトキシカプリリルシランで表面処理された加工澱粉含有粒子を得た。
【0230】
(比較例8)
加工澱粉として加工澱粉Aの代わりにリン酸架橋澱粉(原料澱粉=タピオカ澱粉、日澱化学株式会社製の「PB2000」)を5質量部使用したこと、及びアルコキシシラン化合物としてトリエトキシカプリリルシラン(信越化学工業株式会社製「AES-3083」)を0.25質量部使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で、リン酸架橋澱粉がトリエトキシカプリリルシランで表面処理された加工澱粉含有粒子を得た。
【0231】
(比較例9)
有機溶媒としてエタノール2.5質量部使用したこと、及びアルコキシシラン化合物としてトリエトキシカプリリルシラン(信越化学工業株式会社製「AES-3083」)0.25質量部使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で、加工澱粉Aがトリエトキシカプリリルシランで表面処理された加工澱粉含有粒子を得た。
【0232】
各実施例及び各比較例の結果を表1に示す。表1の「使用した澱粉の種類」において、括弧内の澱粉は原料澱粉の種類を意味する。
【0233】
表1の「ラピッドビスコアナライザーによる95℃における粘度の最大値」とは、アルコキシシラン化合物による表面前の、加工澱粉(実施例1~10及び比較例4~9)又は原料澱粉(比較例1~3)の糊化粘度を意味する。
【0234】
比較例1~8では超音波分散時に測定対象の粒子が崩壊し、水へ溶出したので、体積平均粒子径を測定することができなかった。よって、比較例1~8では表1の「体積平均粒子径」を「測定不可」と記載している。
【0235】
表1の「検出限界未満」とは、マルチタイプICP発光分光分析装置では具体的な数値として測定できないほど元素含有量が少ないことを意味する。
【0236】
【表1】
図1