IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ケミカルグラウト株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-貫通位置予測方法 図1
  • 特開-貫通位置予測方法 図2
  • 特開-貫通位置予測方法 図3
  • 特開-貫通位置予測方法 図4
  • 特開-貫通位置予測方法 図5
  • 特開-貫通位置予測方法 図6
  • 特開-貫通位置予測方法 図7
  • 特開-貫通位置予測方法 図8
  • 特開-貫通位置予測方法 図9
  • 特開-貫通位置予測方法 図10
  • 特開-貫通位置予測方法 図11
  • 特開-貫通位置予測方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129208
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】貫通位置予測方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/04 20060101AFI20240919BHJP
【FI】
E21D9/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038247
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】390002233
【氏名又は名称】ケミカルグラウト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096002
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 弘之
(74)【代理人】
【識別番号】100091650
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 規之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 博規
(72)【発明者】
【氏名】樋上 裕之
(72)【発明者】
【氏名】塩屋 祐太
(72)【発明者】
【氏名】石川 喜章
(72)【発明者】
【氏名】小池 遼太郎
(72)【発明者】
【氏名】柴田 華輝
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 和哉
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054EA07
2D054FA04
2D054FA07
2D054GA06
2D054GA17
2D054GA75
(57)【要約】
【課題】隔壁の外側から隔壁に貫通孔を形成するに際し、隔壁の内面における貫通位置を安全かつ簡易迅速に特定する。
【解決手段】回転するケーシング18を土壌26に押し込むことにより、土壌26を掘削する工程と、ケーシング18の先端がセグメント28に到達した時点で、回転を継続したままケーシング18の押し込み動作を停止する工程と、セグメント28の内側に配置されたサーマルカメラ30によってセグメント28の内面の温度分布を計測し、計測結果をサーモグラフィ34としてディスプレイ32に表示する工程と、サーモグラフィ34上において、ケーシング18の回転による摩擦熱によって相対的に温度が上昇している箇所を、ケーシング18の内面における貫通位置36と認定する工程と、からなる貫通位置予測方法。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転するケーシングを土壌に押し込むことにより、土壌を掘削する工程と、
ケーシングの先端が隔壁に到達した時点で、回転を継続したままケーシングの押し込み動作を停止または抑制する工程と、
隔壁の内側に配置されたサーマルカメラによって隔壁内面の温度分布を計測し、計測結果をサーモグラフィとしてディスプレイに表示する工程と、
サーモグラフィ上において、ケーシングの回転による摩擦熱によって相対的に温度が上昇している箇所を、隔壁内面における貫通位置と認定する工程と、
からなる貫通位置予測方法。
【請求項2】
上記サーモグラフィを表示させるディスプレイが、ケーシングを駆動する削孔機の近傍に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の貫通位置予測方法。
【請求項3】
隔壁内面における貫通位置に止水装置を固定する工程と、
ケーシングによって隔壁を貫通させ、ケーシング先端を止水装置内に導く工程と、
止水装置内に止水材を充填し、止水する工程と、
を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の貫通位置予測方法。
【請求項4】
上記隔壁が、シールド工法におけるセグメントであることを特徴とする請求項1または2に記載の貫通位置予測方法。
【請求項5】
上記隔壁が、山留め壁であることを特徴とする請求項1または2に記載の貫通位置予測方法。
【請求項6】
貫通位置が、隔壁の内面に設定された貫通許容範囲内に収まっているか否かをサーモグラフィ上で判定する工程と、
貫通位置が貫通許容範囲外である場合に、修正すべき方向及び距離を把握する工程と、
ケーシングを後退させ、ケーシング先端と隔壁との間に距離を確保する工程と、
ケーシング先端に設けられた傾斜板を修正すべき方向とは逆の方向に向ける工程と、
ケーシングを回転させずに押し込むことにより、ケーシングの進行方向を修正する工程と、
ケーシングを回転させながら前進させて、先端を隔壁に再度当接させる工程と、
を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の貫通位置予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は貫通位置予測方法に係り、特に、ケーシングで土壌を掘削していき、到達した隔壁に貫通孔を形成するに際し、隔壁の内側において貫通位置を事前に予測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
回転するケーシングを土壌に押し込むことによって土壌を掘削していき、その先に存する隔壁をケーシングによって貫通させる工法が種々存在している。
例えば、シールド工法によって地中に設置されたシールドトンネルのセグメント(隔壁)に対し、立坑内に設置された掘削機からケーシングを繰り出して土壌を掘削していき、セグメントに凍結管導入用の貫通孔を削孔することが行われている。
【0003】
この際、土壌に多量の水分が含まれた被圧水下での施工となる場合には、削孔口から土砂や地下水が立坑及びシールドトンネル内に流出することを防止するため、各削孔口に止水措置を施すことが必要となる。
まず、発進側の立坑については、下記の特許文献1に記載されたような既成の止水装置を装着することができる。
【特許文献1】特開2000-145363号公報
【0004】
この止水装置は、削孔に際し発進側から到達側に繰り出されるケーシングの外周面にゴムパッキンを密着させることにより、流体が貫通孔とケーシングの隙間から立坑内に流出することを防止する機能を備えている。
発進側では削孔開始位置を自由に選択できるため、このような既成の止水装置を用いて比較的簡単に止水措置を施すことが可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これに対し、到達側のシールドトンネル内ではケーシング先端の到達位置をピンポイントで絞り込むことが困難であるため、上記のような止水装置を用いることができない。
このため、ケーシング先端に取り付けられたリングビットの回転による音や振動に基づいて大凡の貫通位置が判明した時点で削孔を一旦停止し、容積の比較的大きな止水ボックスを隔壁内面に溶接した後、削孔を再開して隔壁を貫通させ、止水ボックス内にケーシングを導くことが行われている。
【0006】
しかしながら、この従来の施工法においては、隔壁に耳を近付けたり手を翳したりすることが求められる結果、誤って貫通してきたケーシングに作業員が接触する危険性があった。
この発明は、このような現状に鑑みて案出されたものであり、隔壁の外側から隔壁に貫通孔を形成するに際し、隔壁の内面における貫通位置を安全かつ簡易迅速に特定することを可能とする技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、この発明に係る貫通位置予測方法は、回転するケーシングを土壌に押し込むことにより、土壌を掘削する工程と、ケーシングの先端が隔壁に到達した時点で、回転を継続したままケーシングの押し込み動作を停止または抑制する工程と、隔壁の内側に配置されたサーマルカメラによって隔壁内面の温度分布を計測し、計測結果をサーモグラフィとしてディスプレイに表示する工程と、サーモグラフィ上において、ケーシングの回転による摩擦熱によって相対的に温度が上昇している箇所を、隔壁内面における貫通位置と認定する工程とからなることを特徴としている。
【0008】
上記サーモグラフィを表示させるディスプレイは、隔壁の内側に設置することはもちろん、ケーシングを駆動する削孔機の近傍に配置することもできる。
上記隔壁としては、例えば、シールド工法におけるセグメントや山留め壁等が該当する。
【0009】
貫通位置を予測した後には、例えば、隔壁内面における貫通位置に止水装置を固定する工程と、ケーシングによって隔壁を貫通させ、ケーシング先端を止水装置内に導く工程と、止水装置内に止水材を充填し、止水する工程を続けることができる。
【0010】
上記貫通位置が、隔壁の内面に設定された貫通許容範囲内に収まっているか否かをサーモグラフィ上で判定する工程と、貫通位置が貫通許容範囲外である場合に、修正すべき方向及び距離を把握する工程と、ケーシングを後退させ、ケーシング先端と隔壁との間に距離を確保する工程と、ケーシング先端に設けられた傾斜板を修正すべき方向とは逆の方向に向ける工程と、ケーシングを回転させずに押し込むことにより、ケーシングの進行方向を修正する工程と、ケーシングを回転させながら前進させて、先端を隔壁に再度当接させる工程を設けることにより、貫通位置を所定の貫通許容範囲内に収めることが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係る貫通位置予測方法によれば、隔壁の外側から隔壁に貫通孔を形成するに際し、隔壁の内面における貫通位置を、非接触で安全かつ容易に特定可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】貫通位置予測方法を、シールド工法のセグメントに凍結管を導入する施工に適用する例を示す図である。
図2】貫通位置予測方法を、シールド工法のセグメントに凍結管を導入する施工に適用する例を示す図である。
図3】貫通位置予測方法を、シールド工法のセグメントに凍結管を導入する施工に適用する例を示す図である。
図4】貫通位置予測方法を、シールド工法のセグメントに凍結管を導入する施工に適用する例を示す図である。
図5】貫通位置予測方法を、高水圧下におけるタイロッド施工に適用する例を示す図である。
図6】貫通位置予測方法を、高水圧下におけるタイロッド施工に適用する例を示す図である。
図7】貫通位置予測方法を、高水圧下におけるタイロッド施工に適用する例を示す図である。
図8】貫通位置予測方法を、シールド工法のチェックボーリングに適用する例を示す図である。
図9】自在ボーリング技術を用いた削孔を示す図である。
図10】サーモグラフィ上の貫通位置が、隔壁内面における貫通許容範囲から逸脱している状態を示す図である。
図11】自在ボーリング技術を用いてケーシングの進路を修正する工程を示す図である。
図12】サーモグラフィ上の貫通位置が、隔壁内面における貫通許容範囲に収まった状態を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[第1の実施形態]
以下において、この発明に係る貫通位置予測方法を、シールド工法のスチールセグメントに凍結管導入用の貫通孔を形成する施工に適用する例を説明する。
まず、図1(a)に示すように、発進側となる立坑10の隔壁12の内面に、口元管14及び止水装置16を溶接する。
【0014】
つぎに、図1(b)に示すように、口元管14と止水装置16にケーシング18を挿通し、立坑10内に設置された削孔機20によってケーシング18を回転させながら到達側となるシールドトンネル22に向けて繰り出す。この際、ケーシング18に挿通された送水管24から削孔水が供給される。
【0015】
ケーシング18は、隔壁12及び土壌26を削孔しながら前進し、図2(a)に示すように、その先端18aがシールドトンネル22のセグメント(隔壁)28に到達した時点で、削孔機20からの送水が停止されると共に、ケーシング18の押し込み動作も停止または大幅に軽減される。
この結果、ケーシング18はセグメント28の外面に当接した状態で回転を継続することとなり、摩擦により発生した熱がセグメント28の内側に伝導する。
【0016】
一方、セグメント28の内側にはサーマルカメラ30が設置されており、図2(b)に示すように、そのディスプレイ32にはセグメント28の内面の温度分布を示すサーモグラフィ34が表示されている。
サーマルカメラ30は、周知の通り物体が発する遠赤外線の強度に基づいて対象物の表面温度を算出し、相対的な温度差を色彩の変化によって表現する機能を備えている。
セグメント28の内側に配置された作業員は、このサーモグラフィ34中の色彩(主として赤、橙、黄色)及び形状(主として円または楕円形)により、ケーシング18の先端18aが接触している位置、すなわち貫通位置36を非接触で正確に認識することができる。
【0017】
図2(a)に示されたように、削孔機20側にディスプレイ38を設置すると共に、有線または無線でサーマルカメラ30と接続することにより、サーマルカメラ30のサーモグラフィ34をディスプレイ38にリアルタイムで表示させることができる。
この結果、削孔機20のオペレータはディスプレイ38上のサーモグラフィ34を見ながら、ケーシング18の回転速度や押し込み具合を加減することが可能となる。
【0018】
上記のようにして貫通位置36が特定された時点で、作業員から削孔機20のオペレータにその旨の通知がなされ、ケーシング18の回転動作が停止される。
つぎに、図3(a)に示すように、作業員によって貫通位置36に第1の止水ボックス40及び第2の止水ボックス42が溶接される。
【0019】
この第1の止水ボックス40及び第2の止水ボックス42の取付完了後、ケーシング18による削孔が再開され、図3(b)に示すように、セグメント28及び第1の止水ボックス40を貫通して第2の止水ボックス42内にケーシング18の先端18aが到達した時点で、削孔が停止される。
つぎに、立坑10側から送水管24にCB(セメントベントナイト)が注入され、第1の止水ボックス40及び第2の止水ボックス42内に充填される。
【0020】
つぎに、立坑10の口元管14内にLW(水ガラス&セメント)が注入され、図4(a)に示すように、止水装置16が撤去される。
またCBが固化した後、図4(b)に示すように、第2の止水ボックス42が切除され、ケーシング18の先端18aが露出される。
【0021】
最後に、ケーシング18の先端18aと第1の止水ボックス40間が溶接される。
このケーシング18が連絡管として機能し、立坑10側からケーシング18内に凍結管(図示省略)が挿通される。
【0022】
なお、第1の止水ボックス40及び第2の止水ボックス42の止水方法は上記に限定されるものではなく、以下の手順を適用することもできる。
(1) 第1の止水ボックス40の注水口40aからLWを注入する。
(2) LW硬化後、第2の止水ボックス42のバルブ42aを開けて止水されていることを確認した上で、第2の止水ボックス42を撤去する(万一止水できていない場合には、第2の止水ボックス42からLWが再注入される)。
【0023】
[第2の実施形態]
以下において、この発明に係る貫通位置予測方法を、間に高圧水地盤を挟んだ隔壁間をタイロッドで緊締する施工に適用する例を説明する。
まず、図5(a)に示すように、鋼矢板よりなる発進側の山留め壁(隔壁)50に既存の止水装置52を取り付け、削孔機54をセットする。
削孔機54は、ケーシング18を回転させながら前方に繰り出すことで、山留め壁50や土壌26等を穿孔する機能を有している。
【0024】
このケーシング18を止水装置52内に挿入し、先端18aに設けられたリングビットで発進側の山留め壁50を切断した後、ケーシング18の先端18aを止水装置52内に止めたまま、図示しない注入パイプから止水装置52内に止水材を投入する。
止水材が硬化した後、止水装置52からケーシング18を一旦抜き出し、内部の切断された鋼矢板を取り出す。
【0025】
つぎに、止水装置52内を清掃して止水材を取り除いた後、ケーシング18を再度止水装置52内に装填し、ケーシング18を回転させながら前へ押し込むことにより、図5(b)に示すように、数十mに及ぶ土壌26の削孔が開始される。
【0026】
この際、ケーシング18内には、逆流防止弁を備えたパッカー56が装填される。
すなわち、ケーシング18を用いた削孔時には、削孔機54から圧水がケーシング18内に供給されるが、このパッカー56を装填しておくと、ケーシング18の先端18aに対する圧水の供給を阻害することなく、ケーシング18の継ぎ足し時に排泥が発進側に逆流することを防止できる。
【0027】
つぎに、図6(a)に示すように、ケーシング18の先端が到達側の山留め壁(隔壁)58の外面に接触した時点で、削孔機54からの送水が停止されると共に、ケーシング18の押し込み動作も停止または大幅に軽減される。
この結果、ケーシング18の先端18aは山留め壁58の外面に当接した状態で回転を継続することとなり、摩擦により発生した熱が山留め壁58の内側に伝導する。
【0028】
一方、山留め壁58の内側にはサーマルカメラ30が設置されており、図7に示すように、そのディスプレイ32には山留め壁58の内面の温度分布を示すサーモグラフィ34が表示されている。
山留め壁58の内側に配置された作業員は、このサーモグラフィ34を閲覧することにより、ケーシング18の先端18aが接触している位置、すなわち貫通位置36を非接触で正確に認識することができる。
【0029】
図6(a)に示されたように、削孔機54側にディスプレイ38を設置すると共に、有線または無線でサーマルカメラ30と接続することにより、サーマルカメラ30のサーモグラフィ34をディスプレイ38にリアルタイムで表示させることができる。
【0030】
上記のようにして貫通位置36が特定された時点で、作業員から削孔機54のオペレータにその旨の通知がなされ、ケーシング18の回転動作が停止される。
つぎに、作業員によって貫通位置36に応じた工作(金属材の切断及び溶接等)が施され、止水装置の設置に適した平面が山留め壁58の内面に形成された後、図6(b)に示すように、到達側の止水装置59が設置される。
【0031】
この止水装置59の取付完了後、ケーシング18による削孔が再開され、山留め壁58を貫通して止水装置59内にケーシング18の先端18aが到達した時点で、削孔が停止される。
【0032】
図示は省略するが、以下にタイロッド設置までの残りの工程を簡潔に説明する。
(1) 発進側からケーシング18内にインナーロッドを挿入し、ケーシング18内のパッカー56を止水装置59内まで押し出す。
(2) 止水装置59のシャッタを開けて内部のパッカー56を取り出した後、再度シャッタを閉じる。
(3) 止水装置59内に止水材を充填し、止水を行う。
(4) インナーロッドを発進側から抜き出し、代わりに塩ビパイプを発進側から挿入する。
(5) 発進側のケーシング18内に別のパッカーを装填した後、ケーシング18を後端から1本ずつ引き抜いていく。この際、引き抜くケーシング18の一つ前のケーシング18内にパッカーが位置するよう、インナーロッドで押し戻す。
(6) ケーシング18の先端18aが止水装置52内の中間程度の位置に来るまで、このケーシング18の引き抜き作業を繰り返した後、止水装置52内に止水材を投入し、止水する。
(7) 発進側から到達側まで渡された塩ビパイプ内に発進側からタイロッド(鋼材)を挿入し、到達側の山留め壁58まで送り出す。
(8) タイロッドの先端を到達側の山留め壁58に設けられた締着部に固定した後、発進側からタイロッドに緊張を与え、発進側の山留め壁50に設けられた締着部にタイロッドの後端を固定する。
【0033】
[第3の実施形態]
この発明を、シールド工法のチェックボーリング(線形確認)に応用することもできる。
すなわち、シールド工法を用いてトンネルを掘削する際には、トンネルが計画通りに掘削されているかを確認するため、一定の間隔で地上側から削孔機によって掘削箇所まで垂直削孔することが行われる。
【0034】
従来は、このチェックボーシングに際し、削孔機から繰り出されたケーシングがトンネルのセグメントに到達した時点でポンチングを行い、セグメントの内側からポンチングによって印を付けられた箇所に止水ボックスを取り付けた後、ケーシングによるセグメントの貫通が実行されていた(例えば、特開2008-291458号の[0046]~[0062]参照)。
【0035】
しかしながら、上記のようにセグメントの内面における貫通予定箇所をセグメントの外面へのポンチングによって示すためには、ケーシング内にポンチング用ロッドを地上から降下させる必要があり、その設置及び撤去に余計な手間暇を要していた。
これに対し、図8に示すように、この発明をチェックボーリングに適用することにより、このような問題を解消することが可能となる。
【0036】
図示の通り、地上に設置された削孔機60からガイド管64が地中に建て込まれ、このガイド管64に沿って削孔用のケーシング18が土壌26を垂直に削孔する。
そして、ケーシング18の先端18aがトンネル66のセグメント(隔壁)28に到達した時点で、削孔機60からの送水が停止されると共に、ケーシング18の押し込み動作も停止または大幅に軽減される。
この結果、ケーシング18はセグメント28の外面に当接した状態で回転を継続することとなり、摩擦により発生した熱がセグメント28の内側に伝導する。
【0037】
セグメント28の内側にはサーマルカメラ30が設置されており、そのディスプレイ32には天井部分の表面の温度分布を示すサーモグラフィ34が表示されている。
セグメント28の内側に配置された作業員は、上記と同様、このサーモグラフィ34中の色彩及び形状を手掛かりとして、ケーシング18の先端18aが接触している位置、すなわち貫通位置36を非接触で特定する。
【0038】
図示のように、地上の削孔機60側にディスプレイ38を設置すると共に、有線または無線でサーマルカメラ30と接続することにより、サーマルカメラ30のサーモグラフィ34をリアルタイムでディスプレイ38に表示させることができる。
【0039】
上記のようにして貫通位置36が特定された時点で、作業員から削孔機60のオペレータにその旨の通知がなされ、ケーシング18の回転動作が停止される。
つぎに、作業員によって貫通位置36に止水装置(図示省略)が設置される。
【0040】
この止水装置の取付完了後、ケーシング18による削孔が再開され、セグメント28を貫通して止水装置内にケーシング18の先端18aが到達した時点で、削孔が停止される。
あとは、止水装置内に止水材が充填された後、止水装置とケーシング18の先端18aが溶接され、チェックボーリングが完了となる。
【0041】
[第4の実施形態]
この発明を用いることにより、隔壁の外側から隔壁に貫通孔を形成するに際し、隔壁の内側において貫通位置を非接触で安全かつ容易に探知可能となるが、その貫通位置が設計上の許容範囲から外れていた場合、本来は削孔のやり直しとなる。
これに対し、地中において掘削コースを変更可能な自在ボーリング(曲がりボーリング)技術と組み合わせることで、より柔軟な対応をすることもできる。
【0042】
ここで自在ボーリング技術とは、掘削時は先端に傾斜板(方向制御板)が設けられたケーシングを回転させながら押し込むことで前進するが、進路がずれた場合などには回転を停止して傾斜板を必要方向に固定したままケーシングを押し込むことにより、土壌の反力を利用して削孔方向を修正する技術である(例えば特開2002-194733号公報参照)。
【0043】
この自在ボーリング技術を本発明に適用する場合には、以下の工程を辿る。
(1) 図9(a)に示すように、先端に傾斜板70が形成されたケーシング18を回転させながら押し込むことで土壌26を掘削し、隔壁72を目指す。
(2) 図9(b)に示すように、ケーシング18の先端18aが隔壁72に到達した時点で削孔水の供給及びケーシング18の押し込み動作が停止され、ケーシング18の回転のみが継続される。
(3) この際、図10に示すように、隔壁72の内側に設置されたサーマルカメラ30のサーモグラフィ34を観察し、貫通位置36が設計上の貫通許容範囲74に収まっているか否かを、現場の作業員がチェックする。
(4) 図示のように隔壁72上の貫通位置36が設計上の貫通許容範囲74から外れている場合、修正すべき方向(図においては右方向)及び距離Xを把握する。
(5) つぎに、図11(a)に示すように、ケーシング18を隔壁72の外面から必要量後退させた上で、図11(b)に示すように、傾斜板70を曲げたい方向の反対側(図においては左側)に向けた状態で、ケーシング18を回転させずに隔壁72に向けて押し込む。この結果、ケーシング18の進行方向は土壌26の反力を受けて右方向に曲げられる。
(6) この後、ケーシング18の回転及び押し込みによる削孔を再開し、ケーシング18の先端18aが隔壁72に到達した時点で削孔水の供給及び押し込み動作を停止し、ケーシング18の回転のみに切り替える。
(7) 図12に示すように、再度、隔壁72の内側に設置されたサーマルカメラ30のサーモグラフィ34を観察し、摩擦熱の伝導によって相対的に高熱となった貫通位置36が、設計上の貫通許容範囲74に収まっていることを確認する。
【0044】
一度の軌道修正で足りない場合には、貫通位置36が貫通許容範囲74内に収まるまで上記工程を繰り返す。
以上の結果、削孔を一からやり直す場合に比べ、極めて簡単に隔壁72の必要位置に貫通孔を形成することが可能となる。
【0045】
隔壁としては鋼製のものに限定されるものではなく、この発明は熱伝導性を備えた他の物質(例えば銅やアルミニウム、コンクリート)よりなる隔壁に対し広く適用可能である。
【符号の説明】
【0046】
10 立坑
12 隔壁
14 口元管
16 止水装置
18 ケーシング
20 削孔機
22 シールドトンネル
24 送水管
26 土壌
28 セグメント
30 サーマルカメラ
32 ディスプレイ
34 サーモグラフィ
36 貫通位置
38 ディスプレイ
40 第1の止水ボックス
42 第2の止水ボックス
50 山留め壁
52 止水装置
54 削孔機
56 パッカー
58 山留め壁
58 削孔機
59 止水装置
60 削孔機
64 ガイド管
66 トンネル
70 傾斜板
72 隔壁
74 貫通許容範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12