(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012921
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】微細気泡発生装置
(51)【国際特許分類】
B05B 1/18 20060101AFI20240124BHJP
B01F 23/23 20220101ALI20240124BHJP
B01F 25/10 20220101ALI20240124BHJP
B01F 25/452 20220101ALI20240124BHJP
E03C 1/084 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
B05B1/18
B01F23/23
B01F25/10
B01F25/452
E03C1/084
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114744
(22)【出願日】2022-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】592243553
【氏名又は名称】株式会社タカギ
(74)【代理人】
【識別番号】100114959
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 徹也
(72)【発明者】
【氏名】緒方 尚樹
【テーマコード(参考)】
2D060
4F033
4G035
【Fターム(参考)】
2D060CC17
4F033AA04
4F033BA04
4F033DA05
4F033EA01
4F033FA00
4F033KA01
4F033NA01
4G035AC26
4G035AC44
(57)【要約】
【課題】微細気泡の発生効率が良いコンパクトな微細気泡発生装置の提供。
【解決手段】円筒状の壁面a1と円環状の端面a2とを備えた旋回室Aと、旋回室Aの中に流水の旋回流を生成する旋回流生成部Bと、端面a2に形成され、旋回室Aの内径よりも小さい内径を有する筒状の絞り部Cと、絞り部Cの下流側に隣設され、絞り部Cの出口側開口の面積に対して拡大した空間を有する拡張室Dと、を備え、絞り部Cの軸心Xに沿って旋回室Aから拡張室Dに向かう方向を流水方向Wとするとき、軸心Xを含む平面による断面視において、絞り部Cの流入部c1が端面a2に対して流水方向Wに沿った手前側に設けられている微細気泡発生装置S。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の壁面と円環状の端面とを備えた旋回室と、
前記旋回室の中に流水の旋回流を生成する旋回流生成部と、
前記端面に形成され、前記旋回室の内径よりも小さい内径を有する筒状の絞り部と、
前記絞り部の下流側に隣設され、前記絞り部の出口側開口の面積に対して拡大した空間を有する拡張室と、を備え、
前記絞り部の軸心に沿って前記旋回室から前記拡張室に向かう方向を流水方向とするとき、
前記軸心を含む平面による断面視において、前記絞り部の流入部が前記端面に対して前記流水方向に沿った手前側に設けられている微細気泡発生装置。
【請求項2】
前記端面のうち前記絞り部を取り囲む状態に隣接する環状領域が、前記軸心に向けて凹んだ母線を有する円錐状に形成されている請求項1に記載の微細気泡発生装置。
【請求項3】
前記軸心を含む平面による断面視において、前記壁面と前記端面との境界部に形成された曲線の第1半径が、前記母線が形成する曲線の第2半径よりも小さく構成してある請求項2に記載の微細気泡発生装置。
【請求項4】
前記軸心を含む平面による断面視において、前記絞り部の内径が、前記流水方向に沿った何れの位置においても同じか、前記流水方向の奥側程小さく形成されている請求項2に記載の微細気泡発生装置。
【請求項5】
前記絞り部の内面のうち下流側領域に、下流側程拡径する状態の面取部が形成されている請求項4に記載の微細気泡発生装置。
【請求項6】
前記旋回流生成部が、前記軸心と同軸心状に配置された円盤状の本体部と、当該本体部の周囲に設けられた複数の羽根部と、を備えて前記旋回室に配置され、
前記本体部には、前記軸心に沿った方向視において、前記絞り部の入口側開口と重なりつつ前記絞り部より大きな面積を有し、前記絞り部に対向配置された本体凹部が形成されている請求項1から5の何れか一項に記載の微細気泡発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流水経路の途中に旋回流を形成し微細な気泡を効果的に発生させ得る微細気泡発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような微細気泡発生装置に関連する技術としては、例えば以下の特許文献1(明細書第〔0007〕、〔0010〕、〔0025〕、〔0026〕段落、
図6等参照)に示すものがある。
【0003】
特許文献1に係る技術は、液体貯留槽に取り付けられる微細気泡噴出ノズルであって、空気を加圧溶解した液体を液体貯留槽に噴出するものである。この微細気泡噴出ノズルは、内部に液体が供給され先端部に設けられた噴出口から液体を噴出するノズル本体と、ノズル本体の先端に取り付けられたノズルカバーとを有する。ノズルカバーでは、噴出孔に対向する位置に設けられた円筒状の壁部材が液体の流通方向を変え、噴出孔から離間した位置に設けられたオリフィスから液体が噴出される。
【0004】
ノズル本体の先端側壁には円周方向に向かう三つの噴出孔が設けられ、内部に圧送された溶解空気を含む液体は、各噴出孔を通過する際に壁部材の円周方向に沿った流れ成分を付与される。液体はこのあとノズルカバーの底面に形成されたオリフィスから下方に噴出される。この噴出により液体の圧力が大気圧に低下し、溶解空気が液体から分離して白濁の微細気泡が発生する。この装置では、ノズル本体からノズルカバーに噴出された液体の圧力がノズルカバーの内部で一旦減圧され、オリフィスから噴出する液体の圧力はさらに低下する。よって、オリフィスからの高速流の周囲の負圧の程度が緩和され、大泡の発生が緩和される。また、噴出時の大きな金属音の発生も抑制されるとのことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の装置にあっては、ノズル本体の噴出口からノズルカバー内に噴出された液体は、ノズルカバーの内部を螺旋状に流通しながら下方のオリフィスに至り、螺旋状態を維持しながら噴出される。
【0007】
ただし、液体がノズルカバーの壁面に沿ってオリフィスに向かう間に螺旋状態が次第に緩和され、液体の流通方向はノズルカバーの軸心に沿った方向に変化する。このため、オリフィスを通過する際の液体の周方向速度が減少し、液体がオリフィスを通過する際の旋回速度が低下する。液体の旋回速度が低下することで、旋回流中央での液圧が十分に下がらず、溶解している空気の分離効果が十分に発揮されなくなる。
【0008】
このように、従来の微細気泡発生装置にあっては、気泡の発生効果の観点から未だ改善されるべき余地があり、より多くの気泡を発生させ、且つ、微細な気泡を発生させることのできる微細気泡発生装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(特徴構成)
本発明に係る微細気泡発生装置の特徴構成は、
円筒状の壁面と円環状の端面とを備えた旋回室と、
前記旋回室の中に流水の旋回流を生成する旋回流生成部と、
前記端面に形成され、前記旋回室の内径よりも小さい内径を有する筒状の絞り部と、
前記絞り部の下流側に隣設され、前記絞り部の出口側開口の面積に対して拡大した空間を有する拡張室と、を備え、
前記絞り部の軸心に沿って前記旋回室から前記拡張室に向かう方向を流水方向とするとき、前記軸心を含む平面による断面視において、前記絞り部の流入部が前記端面に対して前記流水方向に沿った手前側に設けられている点にある。
【0010】
(効果)
本構成では、旋回流生成部において旋回流となった流水を絞り部に流通させ、ここで旋回半径をさらに縮めて流水中でキャビテーションを発生させ微細気泡を得るものである。絞り部における微細気泡の発生量を増やすには、絞り部での流水の流速をできるだけ高め、旋回流の中心部での水圧を下げるのが好ましい。そのため本構成では、絞り部の軸心を含む平面による断面視において、絞り部の流入部を、旋回室の端面に対して流水方向に沿った手前側に設けてある。これにより、旋回流生成部において旋回流となった流水は、絞り部に流入する際に流水方向とは反対向きの速度成分を得ることとなる。絞り部に流入する流水の旋回方向は、流水方向に沿った旋回ピッチの浅いものとなる。よって、流水は絞り部に沿って流下し難い状態となる。
【0011】
ただし、旋回流生成部に対する流水の流入量が一定の場合、絞り部からの流出量も一定となる。つまり、絞り部における旋回ピッチは浅くなる代わりに周方向の旋回流速が高まることとなる。このため、旋回中心付近での水圧がより低下し、キャビテーションが発生し易くなって微細気泡の発生量が増加する。
【0012】
また、旋回ピッチが小さくなることで、絞り部の中心部での減圧効果が高まるため、絞り部を短く構成することができ、装置の小型化が可能となる。
【0013】
本発明に係る微細気泡発生装置にあっては、前記端面のうち前記絞り部を取り囲む状態に隣接する環状領域が、前記軸心に向けて凹んだ母線を有する円錐状に形成されていると好都合である。
【0014】
(効果)
本構成のように、絞り部の端面を曲面状の円錐面にすることで、旋回室から絞り部に至る流水の旋回流速が減速され難くなり、且つ、流通方向が装置の流水方向と反対方向に変向され易くなる。この結果、絞り部における旋回ピッチの減少効果および周方向の流速の増大効果がより促進されて微細気泡が発生し易くなる。
【0015】
本発明に係る微細気泡発生装置にあっては、前記軸心を含む平面による断面視において、前記壁面と前記端面との境界部に形成された曲線の第1半径を、前記母線が形成する曲線の第2半径よりも小さく構成しておくとよい。
【0016】
(効果)
本構成であれば、旋回室の壁面が、端面に近い位置にあっても大きな半径を備えていることとなる。この結果、旋回室から絞り部に流水が流れる際に、壁面に近い領域で形成される比較的緩やかな旋回流が端面近傍の領域においても維持され、その後、絞り部に流入して旋回流速が高まる。つまり、双方における速度差が大きくなり、双方における圧力差が大きく維持されて、絞り部における微細気泡の発生効果がより高まる。
【0017】
本発明に係る微細気泡発生装置にあっては、前記軸心を含む平面による断面視において、前記絞り部の内径を、前記流水方向に沿った何れの位置においても同じか、前記流水方向の奥側程小さく形成しておくことができる。
【0018】
(効果)
絞り部に流入した流水は旋回流速が高まり流水方向の旋回ピッチが小さくなる。ただし、内壁との摩擦などによって流下と共に旋回流は弱くなり、流水方向に沿った直線流に変化する。そこで本構成では、絞り部の内径を流水方向に沿って不変とし、あるいは、下流側程小さくなるように構成している。これにより、絞り部の下流側においても流通抵抗が所定の値に保たれ、旋回流から直線流への変化が緩和されることで微細気泡の発生が維持される。
【0019】
本発明に係る微細気泡発生装置にあっては、前記絞り部の内面のうち下流側領域に、下流側程拡径する状態の面取部を形成しておくとよい。
【0020】
(効果)
絞り部の下流側領域に面取部を形成することで流路面積が急激に広がり、絞り部の狭い領域を流通することで高まっていた流水の圧力が面取部において瞬時に低下する。このため、気泡の微細化が促進される。
【0021】
本発明に係る微細気泡発生装置にあっては、前記旋回流生成部が、前記軸心と同軸心状に配置された円盤状の本体部と、当該本体部の周囲に設けられた複数の羽根部と、を備えて前記旋回室に配置され、前記本体部には、前記軸心に沿った方向視において、前記絞り部の入口側開口と重なりつつ前記絞り部より大きな面積を有し、前記絞り部に対向配置された本体凹部が形成されていると好都合である。
【0022】
(効果)
本構成のように、周囲に羽根部を有する旋回流生成部を旋回室に設けることで、旋回室の壁面に沿って旋回流を確実に形成することができる。
【0023】
また、中央の本体部のうち絞り部に対向する面に絞り部よりも大きな本体凹部を形成することで、羽根部および本体部を絞り部に近付けて設置した場合でも、絞り部と本体部との間隔が維持され、旋回室から絞り部への流水の流入が円滑に維持される。
【0024】
よって、流水方向に沿った旋回室の寸法を縮小しつつ、絞り部において速い流速の旋回流を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の微細気泡発生装置を備えた水栓本体の外観を示す正面図
【
図2】本実施形態に係る微細気泡発生装置の要部の構成を示す分解斜視図
【
図3】本実施形態に係る微細気泡発生装置の要部の構成を示す断面図
【
図4】本実施形態に係る微細気泡発生装置の要部詳細の構成を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
(概要)
本発明に係る微細気泡発生装置S(以下、単に「本装置S」と称する)は例えば水栓装置Jに備えられるものであり、食材の洗浄や食器洗浄に際して微細な気泡を含む流水を得るものである。本装置Sの実施形態につき
図1乃至
図4に基づいて説明する。
【0027】
図1に示すように、本装置Sは、水栓装置Jの吐水部1に設けられる。本装置Sの上流側には浄水カートリッジ2が設置され、切替機構Kによって通常の流水と浄水とが切り替えられる。これら流水は旋回室Aに流入する。
【0028】
本装置Sの構成を
図2に示す。本装置Sは流水の上流側から順に、カバーF、旋回板b、基体部3、底部Eを有する。旋回板bが基体部3の内部に挿入配置され、これらがカバーFで覆われる。カバーFの側面のうち対向する位置には夫々固定用の孔部faが設けてあり、基体部3にカバーFを位置合わせした状態で止め部材f1を差し込んで両者を固定する。
【0029】
基体部3の反対側には多数の吐水孔e1を有する底部Eがバヨネット構造を用いて固定される。尚、カバーFと基体部3との間、および、基体部3と底部Eとの間には図外のリング状のシールパッキンが設けられる。
【0030】
(旋回流生成部)
図2及び
図3に示すように、旋回室Aは、円筒状の壁面a1と円環状の端面a2とを備えている。旋回室Aの中央には旋回流生成部Bとしての旋回板bが設けられている。旋回板bは、中央の本体部b1と外周部に一体成形された羽根部b2とを有する。旋回板bは、羽根部b2の外周部に位置固定用の凸部b3を備えており、この凸部b3が旋回室Aの壁面a1に形成した凹部a3に嵌合して保持される。
【0031】
羽根部b2は最外周部が最も上流側に偏位し、中央側が下流側にオフセットしている。つまり、複数の羽根部b2は全体でロート状に形成され、本体部b1が下流側に凹んだ形状となっている。本構成であれば流体が本体部b1に衝突して外側の壁面a1に到達する前に羽根部b2によって旋回流となる。つまり、径外方向に向かう流れが減速することなく旋回流となるから旋回室Aで形成される旋回流速を高く維持することができる。
【0032】
周囲に形成された複数枚の羽根部b2を通過した流水は壁面a1によって下流側に変向され、端面a2に向かう。壁面a1の面形状は滑らかな円筒面であるから、流水は速度の減少を最小限に留めながら端面a2に至る。
【0033】
(絞り部)
図2および
図3に示すように、旋回室Aの端面a2は壁面a1と一体に形成されている。壁面a1と端面a2は略円筒状の基体部3の一部をなす。基体部3は樹脂成形などで予め一つの部材として構成され、水栓装置Jにバヨネット構造などを用いて固定される。端面a2の中央部には円筒状の絞り部Cが一体形成されている。絞り部Cは、その内径が旋回室Aの壁面a1の内径よりも狭く構成されており、螺旋流の速度をさらに高めつつ下流の拡張室Dに流通させる部位である。
【0034】
絞り部Cの断面を
図3および
図4に示す。ここでは、絞り部Cの軸心Xに沿って旋回室Aから拡張室Dに向かう方向を流水方向Wとするとき、軸心Xを含む平面による断面視において、絞り部Cの流入部c1が端面a2に対して流水方向Wに沿った手前側に設けられている。つまり、旋回室Aの端面a2が円環状の平面であるのに対して、絞り部Cの外面は絞り部Cの軸心Xに近付くにつれて旋回板bの側に変位している。より具体的には、絞り部Cの外面は、ベルの輪郭形状あるいはS字状をなし、軸心Xに近い位置ほど旋回板bに近付き、さらに軸心Xに近い位置では旋回板bとの距離変化は少なくなる。
【0035】
このような外面を形成しつつ、絞り部Cの軸心Xを含む平面による断面視において、絞り部Cの流入部c1を、旋回室Aの端面a2に対して流水方向Wに沿った手前側に設ける。絞り部Cでの微細気泡の発生量を増やすには流水の流速をできるだけ高め、旋回流の中心部での水圧を下げる必要がある。本構成であれば、旋回室Aにおいて旋回流となった流水は、絞り部Cに流入する際に流水方向Wとは反対向きの速度成分を得る。これにより、旋回室Aでは旋回ピッチがp1であったものが、絞り部Cに流入したあとでは流水方向Wに沿って浅い旋回ピッチp2となり、流水は絞り部Cを流下し難い状態となる。
【0036】
ただし、旋回室Aに対する流水の流入量が一定の場合、絞り部Cからの流出量も一定となる。つまり、絞り部Cにおける旋回流の旋回ピッチp2が浅くなれば周方向の流速が高まることとなる。このため、旋回中心付近での水圧がより低下してキャビテーションが発生し易くなり微細気泡の発生量が増加する。
【0037】
また、旋回ピッチを小さくしつつ減圧効果を高めることで絞り部Cを短くすることができ、装置Sの小型化が可能となる。
【0038】
絞り部Cの外面の形状は例えばベルの輪郭形状としたが、異なる表現では、端面a2のうち絞り部Cを取り囲む状態に隣接する環状領域が軸心Xに向けて凹んだ母線を有する円錐状となるのがよい。端面a2から絞り部Cの流入部c1に向けて外面が曲面状に変化することで、旋回室Aから絞り部Cに至る流水の旋回速度が減速され難くなる。さらに、流水が旋回板bに向かって逆向きに変向され易くなる。この結果、絞り部Cにおける旋回ピッチp2の減少効果および旋回速度の増大効果がより促進されて微細気泡が発生し易くなる。
【0039】
端面a2と絞り部Cとの境界の円錐形状に加え、旋回室Aの壁面a1と端面a2との境界位置における面形状も規定しておくのが好ましい。具体的には、
図4に示すように、軸心Xを含む平面による断面視において、壁面a1と端面a2との境界部に形成された曲線の第1半径r1を、端面a2と絞り部Cの外面との円錐形状に係る母線が形成する曲線の第2半径r2よりも小さく構成しておくとよい。つまり、端面a2と壁面a1との境界における面形状の変化は、端面a2と絞り部Cとの境界における面形状の変化に比べて急変するものとする。
【0040】
本構成であれば、旋回室Aの壁面a1が、端面a2に近い位置にあっても同じ半径を備えていることとなり、流水が旋回室Aから絞り部Cに流れる際に、壁面a1に近い領域で形成される所定速度の旋回流が端面a2の近傍の領域においても維持される。その後、流水は絞り部Cに流入して旋回流速が高まるが、双方における速度差を高めることで圧力差が大きく維持され、絞り部Cにおけるキャビテーションの発生効果がより高まる。
【0041】
絞り部Cの内面c2の形状については、例えば、軸心Xを含む平面による断面視において、絞り部Cの内径を、流水方向Wに沿った何れの位置においても同じか、流水方向Wの奥側程小さく形成しておく。
図3および
図4には後者の形状を示している。
【0042】
絞り部Cに流入した流水は旋回流速が高まり流水方向Wに沿った旋回ピッチp2が小さくなる。ただし、内面c2との摩擦等によって流下と共に旋回流速は弱まり、流水方向Wに沿った直線流に変化する。この直線流への変化の度合いは、絞り部Cの軸心Xに沿った長さに応じて変化する。例えば、軸心Xに沿った長さが長くなるほど直線流化の影響が大きくなる。
【0043】
そのため、本実施形態のように水栓装置Jの吐水部1に用いる場合には、コンパクト化を図るべく絞り部Cの長さは短く形成される。その場合には、絞り部Cの内径を流水方向Wに沿って不変とする。ただし、絞り部Cを射出成形で得る場合のように型抜き勾配が必要な場合には下流側程小さくなるように構成するとよい。これにより、絞り部Cの下流側領域においては、開口径の縮小により流通抵抗が増えて軸心Xに沿った流速が減少し、それを補うように周方向の速度が増大する。よって、旋回流から直線流への変化が緩和されて旋回流中心での減圧状態が維持され、キャビテーションの形成が継続される。
【0044】
絞り部Cの出口形状については、
図3および
図4に示すように、絞り部Cの内面c2のうち下流側領域に、下流側程拡径する面取部c3を形成しておくとよい。本実施形態では、母線が直線状の円錐形状としてある。母線の角度は、例えば軸心Xに対して45度の傾斜を持たせてあるが、この角度の設定は任意である。
【0045】
このような面取部c3を設けることで流路面積が急激に広がり、絞り部Cの狭い領域を流通することで高まっていた流水の圧力が面取部c3において瞬時に低下する。このため、気泡の微細化が促進される。
【0046】
図3および
図4に示すように、絞り部Cの入り口近傍には旋回板bが位置するが、旋回板bの本体部b1には、絞り部Cの軸心Xに沿った方向視において、絞り部Cの流入部c1と重なりつつ絞り部Cより大きな面積を有し、絞り部Cに対向配置された本体凹部b4が形成されている。つまり、流水が絞り部Cに流入すべく絞り部Cの外面に沿って旋回板bの側に逆流する際に、絞り部Cと本体部b1との間隔を広げて流速の低下を防止している。また、本構成によれば、流水方向Wに沿った旋回室Aの寸法を縮小しつつ、絞り部Cにおいて速い流速の旋回流を形成することが可能となる。
【0047】
(拡張室)
図3および
図4に示すように、絞り部Cの下流側には拡張室Dが隣設してある。拡張室Dは円筒状であり、旋回室Aの内径よりもやや大きな内径を有する。ここでは、微細気泡を含んだ流水が一旦貯留され、底部Eに多数形成された吐水孔e1から吐水として放出される。拡張室Dの内径を大きく確保することで、絞り部Cで高速に旋回する流体の流量域が急激に広がり、流体の圧力開放の程度が大きくなる。その結果、絞り部Cから拡張室Dに移行する領域での微細気泡の発生率を高めることができる。
【0048】
(実施例)
上記実施形態に係る装置Sにあっては、各部の具体的寸法、使用材料など以下の様に構成することができる。
【0049】
例えば旋回板bや基体部3はABS樹脂(Acrylonitrile-Styrene-Acrylate resin)で構成することができる。ABS樹脂であれば必要な強度を備え、係合爪などの形成にも優れている。また、樹脂成形時の湯じわ等の成形不良も少ないうえコストも合理的である。ただし、これに限られるものではなく、この他に、PC(polycarbonate)やPP(polypropylene)、POM(polyacetal)等を用いることとしても良い。
【0050】
絞り部Cの内面c2を下流側程狭く形成する場合、軸心Xに対して1~5度の傾斜を設けることができる。仮に、傾斜角度が過大となると流通抵抗が過大となり、効果的な旋回流が形成されなくなる。
【0051】
(旋回板の別実施形態)
図5に示すように、旋回板bの羽根部b2の外周部に環状部b5を備えるものであってもよい。本構成であれば、基体部3に旋回板bを固定する際に環状部b5の全体で旋回板bを支持することができる。また、各羽根部b2の剛性が環状部b5によって高まり、羽根部b2どうしの相対位置が変化し難くなる。よって、羽根部b2の形状設定の自由度が増し、流速の大きな装置Sにあっても取り付け状態が安定化する羽根部b2を得ることができる。
【0052】
(各部構成の組合せ)
上記実施形態では、各部の構成を分説したが、各部の構成は各種の組み合わせが可能である。以下には、各部の組み合わせのバリエーションを示す。
【0053】
本装置Sは、基本構成として、円筒状の壁面a1と円環状の端面a2とを備えた旋回室Aと、旋回室Aにおいて流水の旋回流を生成する旋回流生成部Bと、旋回室Aの端面a2に形成され、旋回室Aの内径よりも小さい内径を有する筒状の絞り部Cと、絞り部Cの下流側に隣設され、絞り部Cの出口側開口の面積に対して拡大した空間を有する拡張室Dと、を備えており、絞り部Cの軸心Xに沿って旋回室Aから拡張室Dに向かう方向を流水方向Wとするとき、軸心Xを含む平面による断面視において、絞り部Cの流入部c1が端面a2に対して流水方向Wに沿った手前側に設けられている構成を有する。
【0054】
このような装置Sに対して、端面a2のうち絞り部Cを取り囲む状態に隣接する環状領域が、軸心Xに向けて凹んだ母線を有する円錐状に形成されていてもよい。
【0055】
上記〔0053〕または〔0054〕の装置Sに加えて、軸心Xを含む平面による断面視において、壁面a1と端面a2との境界部に形成された曲線の第1半径r1が、母線が形成する曲線の第2半径r2よりも小さく構成されていてもよい。
【0056】
上記〔0053〕から〔0055〕のいずれか一つの装置Sに加えて、軸心Xを含む平面による断面視において、絞り部Cの内径が、流水方向Wに沿った何れの位置においても同じか、流水方向Wの奥側程小さく形成されていてもよい。
【0057】
上記〔0053〕から〔0056〕のいずれか一つの装置Sに加えて、絞り部Cの内面c2のうち下流側領域に、下流側程拡径する状態の面取部c3が形成されていてもよい。
【0058】
上記〔0053〕から〔0057〕のいずれか一つの装置Sに加えて、旋回流生成部Bが、軸心Xと同軸心状に配置された円盤状の本体部b1と、当該本体部b1の周囲に設けられた複数の羽根部b2と、を備えて旋回室Aに配置され、本体部b1には、軸心Xに沿った方向視において、絞り部Cの入口側開口と重なりつつ絞り部Cより大きな面積を有し、絞り部Cに対向配置された本体凹部b4が形成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明に係る微細気泡発生装置Sは、流水経路の途中に旋回流を形成し微細な気泡を効果的に発生させるものとして広く適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
A 旋回室
a1 壁面
a2 端面
B 旋回流生成部
b2 羽根部
C 絞り部
c1 流入部
c3 面取部
D 拡張室
r1 第1半径
r2 第2半径
S 微細気泡発生装置
W 流水方向
X 軸心