(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129212
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】樹脂製の咀嚼用品
(51)【国際特許分類】
A61C 19/06 20060101AFI20240919BHJP
A63B 71/08 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
A61C19/06 Z
A63B71/08 Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038264
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】305017354
【氏名又は名称】株式会社アールオーエヌ
(74)【代理人】
【識別番号】110001793
【氏名又は名称】弁理士法人パテントボックス
(72)【発明者】
【氏名】中村 純
(72)【発明者】
【氏名】石井 辰典
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052MM06
(57)【要約】
【課題】手軽に使用でき、使い捨て可能な、樹脂製の咀嚼用品を提供する。
【解決手段】樹脂製の咀嚼用品1は、弾性を有する樹脂材料から形成される本体部10を備え、この本体部10は、面取りされた板状乃至直方体状に成形されている。弾性を有する樹脂材料として、スチレン系エラストマーから形成される。スチレン系エラストマーは、所定の温度で所定の時間だけ滅菌処理されている。本体部10の縦と横と高さの3辺の長さの和は、20mm~44mmとされていることが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性を有する樹脂材料から形成される本体部を備え、
前記本体部は、面取りされた板状乃至直方体状に成形されている、
、樹脂製の咀嚼用品。
【請求項2】
弾性を有する樹脂材料として、エラストマーから形成される、請求項1に記載された、樹脂製の咀嚼用品。
【請求項3】
前記エラストマーは、所定の温度で所定の時間だけ滅菌処理されている、請求項2に記載された、樹脂製の咀嚼用品。
【請求項4】
前記本体部の縦と横と高さの3辺の長さの和は、20mm~44mmとされている、請求項3に記載された、樹脂製の咀嚼用品。
【請求項5】
前記本体部の少なくとも一部は、平面とされている、請求項3に記載された、樹脂製の咀嚼用品。
【請求項6】
前記樹脂材料には、香料が練り込まれている、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載された、樹脂製の咀嚼用品。
【請求項7】
前記本体部の表面及び裏面には格子状に凹部が形成されて、複数の凸部に分けられている、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載された、樹脂製の咀嚼用品。
【請求項8】
前記本体部には、1つ又は複数の孔が設けられている、請求項7に記載された、樹脂製の咀嚼用品。
【請求項9】
前記本体部の内部には、健康・運動のデータ取得のためのマイクロチップが埋設されている、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載された、樹脂製の咀嚼用品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製の咀嚼用品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、スポーツ業界において、日本でも咬合力緩衝のためのマウスガードや集中力向上のためにガムを噛んでいる姿をよく見かけるようになった。他方、マウスガードやガムを使用する場合もあるが、マウスガードは話しにくく異物感が残り、ガムは味・香りの持続性や弾性が弱く、最適な咀嚼用具が存在しない状況である。
【0003】
そのため、例えば特許文献1に記載されている咬合力緩衝具は、弾性材料で形成されたリング状の円板状部材と、摘み部材とを備えたストレス解消用の咬合力緩衝具が開示されている。この咬合力緩衝具を口内に挿入して咬合することで、咬合力を緩衝し、簡単かつ手軽にストレスを解消することが可能である、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1を含む従来のマウスピースは、割合に大型の器具として形成されるものであり、ガムのように手軽に使用できるものではなかった。
【0006】
そこで、本発明は、手軽に使用でき、使い捨て可能な、樹脂製の咀嚼用品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の樹脂製の咀嚼用品は、弾性を有する樹脂材料から形成される本体部を備え、前記本体部は、面取りされた板状乃至直方体状に成形されている。
【発明の効果】
【0008】
このように、本発明の樹脂製の咀嚼用品は、弾性を有する樹脂材料から形成される本体部を備え、この本体部は、面取りされた板状乃至直方体状に成形されている。このような構成であれば、手軽に使用でき、使い捨て可能な、樹脂製の咀嚼用品1となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態の樹脂製の咀嚼用品の斜視図である。
【
図2】実施の形態の樹脂製の咀嚼用品の側面図である。
【
図3】実施の形態の樹脂製の咀嚼用品の物性値を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。ただし、以下の実施例に記載されている構成要素は例示であり、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0011】
(構成)
まず、
図1、
図2を用いて本発明の樹脂製の咀嚼用品1の全体構成を説明する。本発明の樹脂製の咀嚼用品1は、弾性を有する樹脂材料によって、
図1、
図2に示すように、角丸の(すなわち角を面取りした)板状、乃至、(薄い)直方体状に成形されている。なお、樹脂製の咀嚼用品1は、従来型のガムと異なり、食用ではないものであり、所定の時間だけ咀嚼した後は廃棄されるものである。
【0012】
すなわち、樹脂製の咀嚼用品1は、以下に示すように、比較的に簡単な構造とされ、安価な素材で製造できるため、従来型のガムと比べると1つ当りのコストは高いものの、従来型のマウスピースよりは安く製造できるため、所定時間(数十分~数時間程度)使用した後に廃棄(使い捨て)できるものである。
【0013】
この樹脂製の咀嚼用品1の形状は、使用者が口に入れて噛みやすい形状とすることが好ましい。樹脂製の咀嚼用品1は、例えば、本実施の形態で説明するような、辺や頂点を面取りした板状や直方体状に形成することができる。他にも、樹脂製の咀嚼用品1は、タブレット形状、粒状のガム形状、円盤形状、星形の板状、六角形の板状などとすることも可能である。さらに、板面に1つ又は複数の孔を設けることもできる。
【0014】
そして、本実施例の樹脂製の咀嚼用品1は、
図1、
図2に示すように、表面に凹凸が形成されている。具体的には、本体部10の表面と裏面に、格子状に凹部(溝)11を形成することで、凹部11以外の部分を凸部12とすることができる。凹部(溝)11の深さは、0.1mm以上とすることができ、好ましくは、0.3mm~1.0mmとすることがよい。なお、凹凸の態様は、他の態様でもよく、凸部の形状としては、(短)円柱形状や、(短)三角柱状や、(短)六角柱状等とすることもできる。
【0015】
さらに、図示しないが、歯との摩擦による咀嚼音軽減のために、本体部10の1面以上を平らな面とすることができる。例えば、表面のみを平面(凹凸のない平面)とすることができる。
【0016】
また、樹脂製の咀嚼用品1の大きさは、使用者が口に入れて噛みやすい大きさとすることが好ましい。具体的には、例えば、樹脂製の咀嚼用品1が薄い直方体状に形成される場合には、3辺の長さの和が20mm~44mmとすることが好ましい。より好ましくは、3辺の長さの和が29mm~35mmとすることがよい。さらに、1辺の長さは、最長でも35mm以下とすることが好ましい。
【0017】
加えて、樹脂製の咀嚼用品1の厚みは、使用者が口に入れて噛みやすい厚みとすることが好ましい。具体的には、樹脂製の咀嚼用品1の厚みは、2mm~11mmとすることが好ましい。より好ましくは、4mm~8mmとすることがよい。
【0018】
樹脂製の咀嚼用品1に使用する樹脂材料としては、スチレン系エラストマーを用いることが好ましい。より詳細に言えば、樹脂材料として、スチレン系熱可塑性エラストマーを用いることができる。スチレン系熱可塑性エラストマーは、ポリスチレン部分と柔らかい性質を与えるポリエチレン・ポリブチレンの部分(ソフトセグメント)をブロック状に共重合させた基本単位構造を有している。
【0019】
具体的に言うと、樹脂材料として、
図3に示すような、スチレン系エラストマーを用いることが好ましい。なお、スチレン系エラストマーは、乳児用の歯固め、哺乳瓶の乳首等に長年使用されており、万が一飲み込んだ場合でも、科学的に不活性で、体内で変化せず、消化されずにそのまま体外に排出される。
【0020】
スチレン系エラストマーとしては、例えば、
図3に示すアロン化成株式会社製のAR-800シリーズを使用することができる。実際に試用した感触としては、(噛み応えの好みにもよるが)AR-815C~AR-897Cのすべての製品を使用することができる。このうち、具体的な硬さは、JISK6253 タイプAによると、10~90ポイント、好ましくは、10~80ポイントの、スチレン系エラストマーを使用することが好ましい。
【0021】
さらに、樹脂材料には、あらかじめ香料を混ぜて成形し、咀嚼時の香りの持続時間を伸ばすようにされている。例えば、ミント、ブルーベリー、コーヒー、ココア、オレンジ、レモンなどのフレーバーを添加できる。このように、成形時点で香りを練り込むことにより、香りの持続時間の向上にもつながる。
【0022】
このスチレン系エラストマーには、以下のような特徴がある。
・滑りにくい製品が得られる。したがって、噛みやすくなる。
・架橋ゴムやオレフィン系エラストマーと比べて、臭いが少ない。
したがって、噛んでいる途中で、違和感が少ない。香料を足すことに適している。
・比較的に、衛生的に優れている。したがって、口に入れても安全性が高い。
・シリコーンゴム代替に適している。比較的に安価に製造できる。
・比較的に、耐久性に優れている。
したがって、噛み続けても、所定時間であれば形状を維持でき、噛みやすい。
【0023】
(作用・効果)
次に、本実施の形態の樹脂製の咀嚼用品1の作用・効果を列挙して説明する。
(1)上述してきたように、本発明の樹脂製の咀嚼用品は、弾性を有する樹脂材料から形成される本体部を備え、この本体部は、面取りされた板状乃至直方体状に成形されている。このような構成であれば、手軽に使用でき、使い捨て可能な、樹脂製の咀嚼用品1となる。
【0024】
さらに、食材ではなくエラストマーを使用することによって、従来のチューインガムと比べて、一定の弾力性の維持、糖質・カロリーが0、粘着力が無く歯の詰め物が取れない、路上や競技場が汚れない、といった効果もある。
【0025】
(2)また、弾性を有する樹脂材料として、スチレン系エラストマーから形成されることが好ましい。このように樹脂材料としてスチレン系エラストマーを用いることで、滑りにくい製品が得られるため噛みやすくなる、架橋ゴムやオレフィン系エラストマーと比べて、臭いが少ないため、噛んでいる途中で、違和感が少なく香料を足すことに適している、比較的に、衛生的に優れているため、口に入れても安全性が高い、といった効果を奏する。
【0026】
(3)さらに、スチレン系エラストマーは、所定の温度で所定の時間だけ滅菌処理されていることが好ましい。具体的には、120度の高温雰囲気に20分曝露させることができる。このように滅菌されることで、細菌による感染を防止できる。
【0027】
(4)また、本体部10の縦と横と高さの3辺の長さの和は、20mm~44mmとされていることが好ましい。より好ましくは、3辺の長さの和が29mm~35mmとすることがよい。さらに、1辺の長さは最長でも35mm以下とすることが好ましい。このようなサイズであれば、口に入れた際に、噛みやすく、かつ、万が一飲み込んでしまった際の安全性も高い。
【0028】
(5)さらに、本体部10の少なくとも一部は、平面とされていることが好ましい。このように平面があると、噛み込んだ際に、摩擦に起因して発生する音―キュッキュッという(不快な)音―を抑制できる。
【0029】
(6)また、樹脂材料には、香料が練り込まれていることが好ましい。このように香料を練り込むことで、噛んでいる最中のリラックス効果をいっそう高めることができる。例えば、ミント、ブルーベリー、コーヒー、ココア、オレンジ、レモンなどのフレーバーを添加できる。
【0030】
(7)また、本体部10の表面及び/又は裏面には格子状に凹部11が形成されて、複数の凸部12に分けられていることが好ましい。このように表面に凹凸があれば、噛み込んだ際に樹脂製の咀嚼用品1がそれ自体の弾性によって位置ずれすることを防止できる。さらに、噛みごたえや、香料を練り込んだ場合には香料の滲出具合を調整できる。
【0031】
(8)さらに、本体部10には、1つ又は複数の孔が設けられていることで、食感が得られるとともに、表面積が増えることで香料の浸み出る量を調整できる。加えて、万が一、飲み込んだ場合でも、貫通孔を通じて空気が出入りしやすくなるため、より安全性が高くなる。
【0032】
(9)また、本体部10の内部には、健康・運動のデータ取得のためのマイクロチップが埋設されていることで、必要なデータを採取しつつ、機械を保護しながら安全に口腔内に入れることができる。
【実施例0033】
次に、実施例として、樹脂製の咀嚼用品(1)の用途について、パターンA~Dに分けて説明する。
【0034】
(パターンA:ドライマウス対策用品(口内衛生商品)として)
ドライマウス対策として、現状チューインガム、飴、スプレー、薬(錠剤)などの市販品が発売されている。
新しいドライマウス対策として、加糖やカロリー、副作用がないエラストマーを使用した咀嚼用品を提供する。
また、樹脂製の咀嚼用品の中に健康、運動等のデータ取得のためのマイクロチップや小型コンピュータを入れることにより機械を保護しながら安全に口腔内に入れることができる。
【0035】
(パターンB:チューインガムの代替品として)
現在のチューインガムの「味、香りの持続力が弱い」、「硬さが持続しない」、「柔らかくなる」、「硬さが一定ではない」、「歯にくっつく」、「粘着性があるため路面が汚れやすい」、「糖質、カロリーの接種」を解決する樹脂製の咀嚼用品である。
また、樹脂製の咀嚼用品の中に健康、運動等のデータ取得のためのマイクロチップや小型コンピュータを入れることにより機械を保護しながら安全に口腔内に入れることができる。
【0036】
(パターンC:スポーツ用-マウスガードの代替品として)
ウェイトトレーニングや奥歯を食いしばることが多い競技で使用されるマウスガードの代替品として、より使用しやすく衛生的な樹脂製の咀嚼用品を提供する。
また、樹脂製の咀嚼用品の中に健康、運動等のデータ取得のためのマイクロチップや小型コンピュータを入れることにより機械を保護しながら安全に口腔内に入れることができる。
【0037】
(パターンD:集中力向上、禁煙トレーニング、小顔ダイエットのための咀嚼用品として)
学習中、禁煙トレーニング中、又は、小顔ダイエット中に使用することのできる、樹脂製の咀嚼用品である。
また、樹脂製の咀嚼用品の中に健康、運動等のデータ取得のためのマイクロチップや小型コンピュータを入れることにより機械を保護しながら安全に口腔内に入れることができる。
【0038】
以上、図面を参照して、本発明の実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0039】
例えば、実施例では、樹脂材量としてスチレン系エラストマーを使用する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、スチレン系以外のエラストマーも使用することができる。また、実施例では特に説明しなかったが、樹脂製の咀嚼用品1の全部をエラストマーにするのではなく、一部にエラストマー以外の素材を使用することも可能である。