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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129215
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】伝送装置および異常検出方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/26 20060101AFI20240919BHJP
   H04B 17/18 20150101ALI20240919BHJP
   H04B 17/29 20150101ALI20240919BHJP
【FI】
H04L27/26 300
H04L27/26 400
H04B17/18
H04B17/29 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038269
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩壁 冬樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124501
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 誠人
(72)【発明者】
【氏名】安江 信一
(57)【要約】
【課題】通信異常等が生ずるときに異常の原因がローカル発振器にあるのか否かを迅速に特定できるようにする。
【解決手段】伝送装置10は、ローカル発振器を含み、ローカル発振器からのローカル信号を用いて信号の周波数変換を行う機能を有し、周波数変換後の信号が占める周波数帯域の上端および下端のずれに基づいて、ローカル発振器の異常を検出する異常判定手段11を含む。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローカル発振器を含み、該ローカル発振器からのローカル信号を用いて信号の周波数変換を行う機能を有する伝送装置であって、
周波数変換後の信号が占める周波数帯域の上端および下端のずれに基づいて、前記ローカル発振器の異常を検出する異常判定手段を備える
伝送装置。
【請求項2】
前記異常判定手段は、周波数変換後の信号が周波数領域に変換されたデータを所定の周波数間隔でサンプリングし、サンプル値を用いて、周波数帯域の上端および下端を検出する
請求項1記載の伝送装置。
【請求項3】
前記異常判定手段は、周波数領域に変換される前に、信号の周波数帯域の上端および下端の傾きが急峻になるようなフィルタリングを該信号に施す
請求項2記載の伝送装置。
【請求項4】
OFDMに基づく信号の送信または受信を行い、ローカル発振器を含み、該ローカル発振器からのローカル信号を用いて信号の周波数変換を行う機能を有する伝送装置であって、
前記OFDMにおけるパイロットキャリアの自己相関と、該パイロットキャリア以外のキャリアの自己相関との関係に基づいて、前記ローカル発振器の異常を検出する異常判定手段を備える
伝送装置。
【請求項5】
前記異常判定手段は、周波数方向で前記パイロットキャリアを累算した累算値と、周波数方向で前記パイロットキャリア以外のキャリアのそれぞれについて累算した累算値とを比較することにとって、前記ローカル発振器に異常が生ずるか否か判定する
請求項4記載の伝送装置。
【請求項6】
前記異常判定手段は、前記パイロットキャリア以外のキャリアついて累算した累算値のうちに、前記パイロットキャリアを累算した累算値よりも大きい累算値があることを検出した場合に、前記ローカル発振器に異常が生ずると判定する
請求項5記載の伝送装置。
【請求項7】
ローカル発振器を含み、該ローカル発振器からのローカル信号を用いて信号の周波数変換を行う機能を有する伝送装置に適用される異常検出方法であって、
周波数変換後の信号が占める周波数帯域の上端および下端のずれに基づいて、前記ローカル発振器の異常を検出する
異常検出方法。
【請求項8】
OFDMに基づく信号の送信または受信を行い、ローカル発振器を含み、該ローカル発振器からのローカル信号を用いて信号の周波数変換を行う機能を有する伝送装置に適用される異常検出方法であって、
前記OFDMにおけるパイロットキャリアの自己相関と、該パイロットキャリア以外の各キャリアの自己相関との関係に基づいて、前記ローカル発振器の異常を検出する
異常検出方法。
【請求項9】
請求項1から請求項6のうちのいずれか1項に記載の伝送装置が複数設けられ、
複数の伝送装置のいずれかの出力を選択する切替手段を備える
伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数変換機能を有する伝送装置および異常検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周波数変換機能を有する伝送装置がある(例えば、特許文献1参照)。伝送装置は、無線送信装置または無線受信装置である。以下、無線送信装置を送信機という。また、無線受信装置を受信機という。
【0003】
特許文献1に記載された無線伝送装置は、ローカル発振器と周波数混合器とを有する。周波数混合器は、入力信号とローカル発振器からのローカル信号とを混合して、入力信号の周波数よりも高い周波数の信号を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-151553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
周波数変換機能を有する送信機の放送設備への適用を想定する。放送設備では、送信機について、現用系と待機系とからなる冗長構成が採用される。受信機についても、現用系と待機系とからなる冗長構成が採用される。
【0006】
送信機のローカル発振器に着目すると、現用系の送信機のローカル発振器に故障が生じたことが確認されると、稼働系が待機系に切り替えられる。現用系の送信機に関して通信異常が検出されると、例えば、送信機が検査場所に引き取られる。そして、検査場所において、送信機の複数の構成要素の各々に異常が生じていないか確認される。複数の構成要素には、ローカル発振器も含まれる。
【0007】
ローカル発振器に着目すると、一般に、ローカル発振器が故障して現用系の送信機に関して通信異常が発生しないと、待機系の送信機に切り替えられない。
【0008】
しかし、ローカル発振器において一時的な障害が発生したときには、検査場所において、ローカル発振器の異常が再現しないことがある。また、送信機の設置場所において生じている、他の機器からの妨害波や、送信機の付属設備からの雑音の混入や、送信機に対する振動が通信異常の原因である場合には、検査場所において、ローカル発振器の異常が再現しない。
【0009】
そのために、異常の原因を解明するのに長時間を要する。その結果、異常の原因解明を含む修理コストが大きくなる。
【0010】
なお、以上の説明は、ローカル発振器を有する受信機にも当てはまる。
【0011】
本発明は、通信異常等が生ずるときに異常の原因がローカル発振器にあるのか否かを迅速に特定できるとともに、現実に異常が発生する前に稼働系を待機系に切り替えることができる伝送装置および異常検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による伝送装置は、ローカル発振器を含み、ローカル発振器からのローカル信号を用いて信号の周波数変換を行う機能を有し、周波数変換後の信号が占める周波数帯域の上端および下端のずれに基づいて、ローカル発振器の異常を検出する異常判定手段を含む。
【0013】
本発明による他の態様の伝送装置は、OFDMに基づく信号の送信または受信を行い、ローカル発振器を含み、ローカル発振器からのローカル信号を用いて信号の周波数変換を行う機能を有し、OFDMにおけるパイロットキャリアの自己相関と、パイロットキャリア以外のキャリアの自己相関との関係に基づいて、ローカル発振器の異常を検出する異常判定手段を含む。
【0014】
本発明による異常検出方法は、ローカル発振器を含み、ローカル発振器からのローカル信号を用いて信号の周波数変換を行う機能を有する伝送装置に適用され、周波数変換後の信号が占める周波数帯域の上端および下端のずれに基づいて、ローカル発振器の異常を検出する。
【0015】
本発明による他の態様の異常検出方法は、OFDMに基づく信号の送信または受信を行い、ローカル発振器を含み、ローカル発振器からのローカル信号を用いて信号の周波数変換を行う機能を有する伝送装置に適用され、OFDMにおけるパイロットキャリアの自己相関と、パイロットキャリア以外の各キャリアの自己相関との関係に基づいて、ローカル発振器の異常を検出する。
【0016】
本発明による伝送システムは、上記の伝送装置が複数設けられ、複数の伝送装置のいずれかの出力を選択する切替手段を含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、通信異常等が生ずるときに異常の原因がローカル発振器にあるのか否かを迅速に特定できるとともに、現実に異常が発生する前に稼働系を待機系に切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1の実施形態の送信機および受信機の主要な構成要素を示すブロック図である。
図2】第1の実施形態の送信機における異常判定部の構成例を示すブロック図である。
図3】第1の実施形態における異常判定部の動作を示すフローチャートである。
図4】第1の実施形態の受信機における異常判定部の構成例を示すブロック図である。
図5】第2の実施形態の送信機および受信機の主要な構成要素を示すブロック図である。
図6】第2の実施形態の送信機における異常判定部の構成例を示すブロック図である。
図7】第2の実施形態における加算部および判定部の処理を説明するための説明図である。
図8】第2の実施形態における異常判定部の動作を示すフローチャートである。
図9】第2の実施形態の受信機における異常判定部の構成例を示すブロック図である。
図10】伝送システムの構成例を示すブロック図である。
図11】伝送装置の主要部を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。以下、放送設備における送信機100および受信機200を例にする。
【0020】
実施形態1.
図1は、第1の実施形態の送信機100および受信機200の主要な構成要素を示すブロック図である。図1における矢印は、信号(データ)の流れの方向を端的に示すが、双方向性を排除するものではない。このことは、他のブロック図についても同様である。
【0021】
送信機100は、変調部110、アップコンバータ120、PA(電力増幅器:Power Amplifier)130、ローカル発振器160、および異常判定部170を含む。
【0022】
変調部110は、入力信号について所定の変調処理を行う。アップコンバータ120は、ローカル発振器160からのローカル信号を用いて、変調部110からの変調されたキャリアの周波数を高い周波数(例えば、UHF(Ultra High Frequency)帯の周波数)の送信信号に変換する。PA130は、送信信号を、所定の電力にまで増幅する。
【0023】
異常判定部170は、ローカル発振器160に異常が生じたか否かを判定する。異常判定部170は、例えば、ローカル信号の周波数(ローカル周波数)が、通常時の周波数に対して変動したか否か判定する。
【0024】
受信機200は、LNA(Low Noise Amplifier:低雑音増幅器)210、ダウンコンバータ220、A-D変換器230、FFT(Fast Fourier Transform)部240、復号部250、ローカル発振器260、および異常判定部270を含む。
【0025】
LNA210は、無線伝送路を介して受信した送信信号(すなわち、受信信号)を低雑音で増幅する。ダウンコンバータ220は、ローカル発振器260からのローカル信号を用いて、キャリアの周波数を低くする。A-D変換器230は、ダウンコンバータ220の出力をデジタル信号に変換する。FFT部240は、デジタル信号にFFT処理を施す。復号部250は、FFT部240の出力に基づいて、送信機100が送信しようとした情報を再生する。
【0026】
異常判定部270は、ローカル発振器260に異常が生じたか否かを判定する。異常判定部270は、例えば、ローカル周波数が、通常時の周波数に対して変動したか否か判定する。
【0027】
図2は、送信機100における異常判定部170の構成例を示すブロック図である。
【0028】
なお、図2には、各部における信号波形が模式的に示されている。周波数帯域を表す周波数スペクトラムの横軸は、周波数を表す。縦軸は、電力または電圧の振幅を表す。信号波形に付されている黒丸は、帯域端に関連しているサンプルであることを示す。斜線の丸は、その他のサンプル(検出点)を示す。
【0029】
図2に示す例では、異常判定部170は、ダウンコンバータ171、A-D変換器172、フィルタ部173、FFT部174、帯域端検出部175、および判定部176を含む。
【0030】
ダウンコンバータ171は、ローカル発振器(図示せず)からのローカル信号を用いて、入力信号すなわちPA130からの信号の周波数を低くする。なお、ダウンコンバータ171の動作は、例えば、ダウンコンバータ220の動作と同じでよい。A-D変換器172は、ダウンコンバータ171の出力をデジタル信号に変換する。
【0031】
フィルタ部173は、A-D変換器172の出力に対して、出力信号が占める周波数帯域の両端部(上端および下端)の傾きが急峻になるようなフィルタリングを施す。フィルタ部173は、例えば、傾きの特性が入力信号の特性の逆になっているフィルタを使用する。FFT部174は、フィルタ部173の出力にFFT処理を施す。
【0032】
帯域端検出部175は、所定の周波数間隔でFFT部174の出力をサンプリングする。そして、帯域端検出部175は、サンプルの値(例えば、振幅値)を用いて周波数帯域の端部を検出する。判定部176は、帯域端検出部175が検出した端部に基づいて、ローカル周波数が変動したか否か判定する。
【0033】
次に、図3のフローチャートを参照して、異常判定部170の動作を説明する。図3には、フィルタ部173、FFT部174、帯域端検出部175、および判定部176の動作が示されている。
【0034】
ステップS101において、フィルタ部173は、入力信号の周波数帯域の逆特性のフィルタによって、周波数帯域の両端部の傾きが急峻になるようなフィルタリングを施す(図2における(a),(b)参照)。FFT部174は、フィルタ部173の出力にFFT処理を施す(ステップS102)。帯域端検出部175は、周波数帯域の両端部を検出する(ステップS103)。
【0035】
ステップS103の処理で、帯域端検出部175は、所定の周波数間隔でFFT部174の出力をサンプリングする(図2における(c)参照)。所定の周波数間隔は短いほどよいが、異常判定部170の処理速度や周波数帯域の端部の検出に求められる精度等に応じて定められる。そして、帯域端検出部175は、各々のサンプルの値を、1つ前のサンプルの値と比較する。帯域端検出部175は、値が異なる2つのサンプルが見いだされた場合に(ステップS104)、そのようなサンプルを、周波数帯域の端部の両側のサンプルとする(図2における(d)参照)。換言すれば、帯域端検出部175は、そのようなサンプルの周波数の間を、周波数帯域の端部であると判定する。
【0036】
判定部176は、帯域端検出部175が検出した端部に基づいて、ローカル周波数が変動したか否か判定する(図2における(d),(e)参照)。具体的には、判定部176は、周波数帯域の両端部がずれたか否か判定する(ステップS105)。すなわち、判定部176は、周波数帯域の左端(周波数が低い方の端すなわち下端)がずれ、かつ、周波数帯域の右端(周波数が高い方の端すなわち上端)がずれたか否か確認する。なお、各々の端部がずれたか否か判定するためのしきい値は、例えば、通信異常が発生することになるずれ量の1/2程度である。ただし、しきい値は、そのような値に限定されない。また、通信異常が発生することになるずれ量は、あらかじめ実験等で決定されうる。
【0037】
両端部がずれたと判定されたときには、例えば、判定部176は、ローカル発振器160に異常が生じたことを報知する処理を行う(ステップS106)。報知する処理は、一例として、表示部(図示せず)に異常が生じた旨を表示する処理である。
【0038】
なお、図2には、周波数帯域の両端部が高い周波数の側にシフトした例示されているが、周波数帯域の両端部が低い周波数の側にシフトした場合にも、判定部176は、両端部がずれたと判定する。
【0039】
また、図3のフローチャートは、ステップS101の処理が完了したらステップS102の処理が実行され、ステップS102の処理が完了したらステップS103,S104の処理が実行されるように記載されているが、実際には、入力信号が入力されているときに、ステップS101の処理、ステップS102の処理、およびステップS103,S104の処理は、それぞれ、常時実行されている。
【0040】
図4は、受信機200における異常判定部270の構成例を示すブロック図である。
【0041】
なお、図4には、各部における信号波形が模式的に示されている。周波数帯域を表す周波数スペクトラムの横軸は、周波数を表す。縦軸は、電力または電圧の振幅を表す。信号波形に付されている黒丸は、帯域端に関連しているサンプルであることを示す。斜線の丸は、その他のサンプル(検出点)を示す。
【0042】
図4に示す例では、異常判定部270は、フィルタ部273、FFT部274、帯域端検出部275、および判定部276を含む。異常判定部270は、図1に示されたように、A-D変換器230の出力を導入するので、フィルタ部273は、A-D変換器230の出力を入力する。
【0043】
フィルタ部273は、フィルタ部173と同様の処理を行う。FFT部274は、FFT部174と同様の処理を行う。帯域端検出部275は、帯域端検出部175と同様の処理を行う。判定部276は、判定部176と同様の処理を行う。したがって、異常判定部270は、図3のフローチャートに示された処理と同様の処理を実行する。
【0044】
第1の実施形態では、実際に通信異常等が発生する前に、ローカル発振器に異常が生じた(厳密には、異常が発生する予兆が生じた。)ことを検出できる。すなわち、異常の原因がローカル発振器にあるのか否かを迅速に特定できる。また、実際に通信異常等が発生する前に装置の修理や交換等を行うことができるようになるので、異常の原因解明を含む修理コストを下げることができる。
【0045】
また、送信機と受信機とを含む放送システムが冗長構成されている場合に、現実に異常が発生する前に稼働系を待機系に切り替えることができる。
【0046】
また、送信機と受信機とのそれぞれに異常判定部が組み込まれているので、送信機と受信機とのいずれにおいて障害が発生したのかを容易に判別することができる。
【0047】
実施形態2.
図5は、第2の実施形態の送信機101および受信機201の主要な構成要素を示すブロック図である。
【0048】
送信機101は、変調部110、アップコンバータ120、PA130、ローカル発振器160、および異常判定部180を含む。変調部110、アップコンバータ120、PA130、およびローカル発振器160は、第1の実施形態におけるそれらと同様に動作する。
【0049】
第2の実施形態では、変調部110は、所定の変調として、OFDM(直交周波数分割多重:Orthogonal Frequency-Division Multiplexing)に基づく変調を行う。
【0050】
異常判定部180は、ローカル発振器160に異常が生じたか否かを判定する。異常判定部180は、例えば、パイロットキャリアを利用して、ローカル発振器160に異常が生じたか否かを判定する。
【0051】
受信機201は、LNA210、ダウンコンバータ220、A-D変換器230、FFT部240、復号部250、ローカル発振器260、および異常判定部280を含む。LNA210、ダウンコンバータ220、A-D変換器230、FFT部240、復号部250、およびローカル発振器260は、第1の実施形態におけるそれらと同様に動作する。
【0052】
第2の実施形態では、FFT部240は、OFDM復調処理で用いられるFFT部の処理を行う。すなわち、FFT部240は、A-D変換器230を介して入力されるOFDM信号をフーリエ変換して、OFDM信号を各キャリア(サブキャリア)に分解する。
【0053】
図6は、送信機101における異常判定部180の構成例を示すブロック図である。図6に示す例では、異常判定部180は、ダウンコンバータ171、A-D変換器172、FFT部177、加算部178、および判定部179を含む。
【0054】
ダウンコンバータ171およびA-D変換器172は、第1の実施形態におけるそれらと同様に動作する。
【0055】
FFT部177は、OFDM復調処理で用いられるFFT部の処理を行う。すなわち、FFT部177は、PA130を介して入力されるOFDM信号をフーリエ変換して、OFDM信号を各キャリア(サブキャリア)に分解する。
【0056】
なお、OFDMでは、パイロットデータに基づくパイロットキャリアが、一定間隔(一例として、8キャリア毎)で配置される。パイロットキャリアは、所定の繰り返し周期を持つ信号であるから、全期間に亘って相関性を有する。
【0057】
加算部178は、FFT部177から出力される信号に含まれるパイロットキャリアを加算する。具体的には、加算部178は、パイロットキャリアのパワー(振幅値)を加算する。また、パイロットキャリア以外の複数のキャリアのそれぞれを対象として加算処理を行う。
【0058】
判定部179は、加算部178により加算結果から、ローカル発振器160に異常が生じたか否かを判定する。判定部179は、ローカル周波数が変動したか否か判定する。
【0059】
図7は、加算部178および判定部179の処理を説明するための説明図である。図7において、黒丸は、パイロットキャリアを示す。斜線の丸は、パイロットキャリア以外のキャリアを示す。
【0060】
図7に示す例では、パイロットキャリアは、8キャリア毎に配置されている。加算部178は、パイロットキャリアを加算する。図7に示す例では、パイロットキャリアは、0番目のキャリア(キャリア0)、キャリア8、およびキャリア16であるから、加算部178は、キャリア0、キャリア8、キャリア16を順次に加算する。すなわち、加算部178は、パイロットキャリを累算する。以下、パイロットキャリアの加算値(累算値)をD0とする。
【0061】
加算部178は、パイロットキャリア以外のキャリアについても、パイロットキャリアの場合と同様に、キャリアを累算する。例えば、パイロットキャリアの右側(周波数が高い側)に隣接するキャリアを累算して、加算値をD1とする。加算部178は、他のパイロットキャリア以外のキャリアについても、パイロットキャリアの右側に隣接するキャリアの場合と同様に加算処理(累算処理)を行う。これらの加算値を、D2~D7とする。
【0062】
なお、図7には、3つのキャリア(例えば、キャリア0、キャリア8、およびキャリア16)が加算される例が示されているが、実際には、加算部178は、キャリア25以降のキャリア(図示せず)も、加算対象にする。
【0063】
各々のパイロットキャリアと他のパイロットキャリアとの相関は強いので、D0の値は、D1~D7の値よりも大きい。つまり、D0~D7のうちの最大値は、D0である。しかし、一瞬ローカル周波数が変動したときなどに、最大値がD1~D7のいずれかになることがある。そこで、第2の実施形態では、判定部179は、D0以外が最大値になった場合に、ローカル発振器160に異常が生じたと判定する。
【0064】
次に、図8のフローチャートを参照して、異常判定部180の動作を説明する。図3には、FFT部177、加算部178、および判定部179の動作が示されている。
【0065】
FFT部177は、A-D変換器172の出力にFFT処理を施す(ステップS121)。
【0066】
加算部178は、パイロットキャリアおよびそれ以外の各々のキャリアについて、キャリアを累算する加算処理を行う(ステップS122)。
【0067】
なお、送信機101が稼働開始した直後では、加算部178は、パイロットキャリアの周波数方向での位置を特定するための処理を行ってもよい。例えば、加算部178は、連続する8キャリアのそれぞれについて、後続する8キャリア毎にキャリアを加算し、最大値を呈した加算値に対応するキャリアの位置を、パイロットキャリアの位置であるとする。
【0068】
判定部179は、加算部178からD0~D7を受け取る。そして、判定部179は、D0~D7のうちでD0で最大値であるか否か確認する(ステップS123)。判定部179は、D0以外が最大値になったことを検出した場合に、ローカル発振器160に異常が生じたと判定する。換言すれば、判定部179は、パイロットキャリア以外の複数のキャリアの自己相関のうちに、パイロットキャリアの自己相関よりも強くなったものがあることを検出すると、ローカル発振器160に異常が生じたと判定する。
【0069】
D0以外が最大値になったことを検出したときには、判定部179は、ローカル発振器160に異常が生じたことを報知する処理を行う(ステップS124)。報知する処理は、一例として、表示部(図示せず)に異常が生じた旨を表示する処理である。
【0070】
なお、図8のフローチャートは、ステップS121の処理が完了したらステップS122の処理が実行され、ステップS122の処理が完了したらステップS123,S124の処理が実行されるように記載されているが、実際には、入力信号が入力されているときに、ステップS121の処理、ステップS122の処理、およびステップS123,S124の処理は、それぞれ、常時実行されている。
【0071】
図9は、受信機201における異常判定部280の構成例を示すブロック図である。
【0072】
図9に示す例では、異常判定部280は、加算部278および判定部279を含む。異常判定部280は、図5に示されたように、FFT部240の出力を導入するので、加算部278は、FFT部240の出力を入力する。
【0073】
加算部278および判定部279は、異常判定部180における加算部178および判定部179と同様の処理を行う。したがって、異常判定部280は、図8のフローチャートに示された処理と同様の処理を実行する。ただし、異常判定部280は、ステップS 121の処理を実行しない。FFTは、受信機201におけるFFT部240で実行されているからである。
【0074】
第2の実施形態でも、実際に通信異常等が発生する前に、ローカル発振器に異常が生じた(厳密には、異常が発生する予兆が生じた。)ことを検出できる。すなわち、異常の原因がローカル発振器にあるのか否かを迅速に特定できる。また、実際に通信異常等が発生する前に装置の修理や交換等を行うことができるようになるので、異常の原因解明を含む修理コストを下げることができる。
【0075】
また、送信機と受信機とを含む放送システムが冗長構成されている場合に、現実に異常が発生する前に稼働系を待機系に切り替えることができる。
【0076】
なお、上記の各実施形態では、送信機と受信機との双方に異常判定部が組み込まれているが、一方にのみ異常判定部が組み込まれていてもよい。一方にのみ異常判定部が組み込まれている場合でも、異常判定部が組み込まれた装置のローカル発振器に異常が生じた(厳密には、異常が発生する予兆が生じた。)ことを検出できる。すなわち、異常の原因がローカル発振器にあるのか否かを迅速に特定できる。また、実際に通信異常等が発生する前に装置の修理や交換等を行うことができるようになるので、異常の原因解明を含む修理コストを下げることができる。
【0077】
また、上記の各実施形態における異常判定部は、個別論理回路やLSI(Large Scale Integration)で実現可能であるが、少なくとも、異常判定部を構成するフィルタ部、FFT部、帯域端検出部(または、加算部)、判定部を、1つまたは複数のCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphic Processing Unit)で実現可能である。
【0078】
図10は、上記の実施形態の送信機および受信機を利用した伝送システムの構成例を示すブロック図である。
【0079】
図10に示す送信機100Aとして、上記の実施形態における送信機100または送信機101が用いられる。送信機100Bとして、上記の実施形態における送信機100または送信機101が用いられる。切替部300は、送信機100Aの出力と送信機100Bの出力とのいずれかを選択して出力する。
【0080】
図10に示す受信機200Aとして、上記の実施形態における受信機200または受信機201が用いられる。受信機200Bとして、上記の実施形態における受信機200または受信機201が用いられる。切替部400は、受信機200Aの出力と受信機200Bの出力とのいずれかを選択する。すなわち、送信側と受信側のそれぞれは冗長構成されている。
【0081】
例えば、送信機100Aが現用系であり、送信機100Bが待機系であった場合、送信機100Aにおける異常判定部170または異常判定部180がローカル周波数の変動を検出したときに、迅速に、待機系である送信機100Bを稼働系に切り替えることができる。
【0082】
また、例えば、受信機200Aが現用系であり、受信機200Bが待機系であった場合、受信機200Aにおける異常判定部270または異常判定部280がローカル周波数の変動を検出したときに、迅速に、待機系である受信機200Bを稼働系に切り替えることができる。
【0083】
なお、図10には、二重に冗長化された伝送システムが例示されているが、伝送システムは、三重以上に冗長化されていてもよい。
【0084】
また、上記の各実施形態では、放送システムにおける送信機および受信機が例にされたが、各実施形態における送信機および受信機は、ローカル発振器を含む、放送システム以外のシステムに適用される伝送装置に適用することができる。
【0085】
図11は、伝送装置の主要部を示すブロック図である。図11に示す伝送装置10(実施形態では、送信機100,101または受信機200,201で実現される。)は、周波数変換後の信号が占める周波数帯域の上端および下端のずれに基づいて、ローカル発振器の異常を検出する異常判定手段11(実施形態では、異常判定部170,180,270,280で実現される。)を備えている。
【0086】
異常判定手段11は、周波数変換後の信号が周波数領域に変換されたデータ(たとえば,FFT後のデータ)を所定の周波数間隔でサンプリングし、サンプル値を用いて、周波数帯域の上端および下端を検出するように構成されていてもよい。
【0087】
異常判定手段11は、OFDMにおけるパイロットキャリアの自己相関と、パイロットキャリア以外のキャリアの自己相関との関係に基づいて、ローカル発振器の異常を検出する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0088】
10 伝送装置
11 異常判定手段
100,101,100A,100B 送信機
200,201,200A,200B 受信機
110 変調部
120 アップコンバータ
130 PA
160 ローカル発振器
170,180 異常判定部
171 ダウンコンバータ
172 A-D変換器
173 フィルタ部
174 FFT部
175 帯域端検出部
176 判定部
177 FFT部
178 加算部
179 判定部
210 LNA
220 ダウンコンバータ
230 A-D変換器
240 FFT部
250 復号部
260 ローカル発振器
270,280 異常判定部
273 フィルタ部
274 FFT部
275 帯域端検出部
276 判定部
278 加算部
279 判定部
300,400 切替部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11