(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129216
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/24 20060101AFI20240919BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
E02F9/24 B
E02F9/26 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038270
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒坂 尚生
(72)【発明者】
【氏名】藤井 俊憲
(72)【発明者】
【氏名】稲場 康彦
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 智之
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015GA03
2D015GB06
2D015GB07
2D015HA03
2D015HB04
2D015HB05
(57)【要約】
【課題】オペレータと周囲に存在する作業者とが協調して作業を行うときの作業性を向上させる。
【解決手段】油圧ショベル1は、作業機4の操作を禁止するロック状態と操作を可能とするロック解除状態とに切換えられる操作ロック装置11と、車体の周囲に存在する物体を検出する第1,第2物体検出装置12,13と、オペレータと作業者との協調可能性レベルを判定し、協調可能性レベルに応じて第1表示灯15,第2表示灯16による報知を行う制御装置18とを備える。制御装置18は、操作ロック装置11がロック解除状態にあり、かつ第1作業範囲A1で物体が検出され、第2作業範囲A2で物体が非検出であった場合には、判定した協調可能性レベルの報知を第1表示灯15により行うと共に、判定した協調可能性レベルよりも高い協調可能性レベルの報知と第1作業範囲A1で物体が検出されたことの報知を第2表示灯16により行う。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な車体と、前記車体に設けられた作業機と、前記車体の周囲に存在する作業者を含む物体を検出する物体検出装置と、前記車体の周囲から目視可能な報知装置と、前記物体検出装置が作業範囲の中で物体を検出したか否かに基づいて前記作業機を操作するオペレータと前記作業者とが協調して作業可能か否かの指標である協調可能性レベルを判定し、前記協調可能性レベルに応じて前記報知装置による報知を行う制御装置とを備えてなる建設機械において、
前記物体検出装置は、前記作業範囲のうち第1作業範囲および第2作業範囲に存在する物体を検出し、
前記報知装置は、前記車体から前記第1作業範囲が存在する方向に対して前記協調可能性レベルを報知する第1報知装置と、前記車体から前記第2作業範囲が存在する方向に対して前記協調可能性レベルを報知する第2報知装置とを備え、
前記制御装置は、前記物体検出装置により前記第1作業範囲で物体が検出され、前記第2作業範囲で物体が非検出であった場合には、判定した前記協調可能性レベルの報知を前記第1報知装置により行うと共に、前記第1報知装置による前記協調可能性レベルよりも高い前記協調可能性レベルの報知と前記第1作業範囲で物体が検出されたことの報知とを前記第2報知装置により行うことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記作業機の操作を禁止するロック状態と前記作業機の操作を可能とするロック解除状態とに切換えられる操作ロック装置を更に備え、
前記制御装置は、
前記操作ロック装置が前記ロック状態にある場合には、前記第1報知装置および前記第2報知装置により第1報知を行い、
前記操作ロック装置が前記ロック解除状態にあり、前記物体検出装置が前記第1作業範囲および前記第2作業範囲のいずれからも物体を非検出であった場合には、前記第1報知装置および前記第2報知装置により前記第1報知よりも前記協調可能性レベルが低い第2報知を行い、
前記操作ロック装置が前記ロック解除状態にあり、かつ前記物体検出装置が前記第1作業範囲および前記第2作業範囲のうち一方の作業範囲から物体を検出した場合には、前記第1報知装置および前記第2報知装置のうち前記一方の作業範囲に対応する一方の報知装置により前記第2報知よりも前記協調可能性レベルが低い第3報知を行うと共に、前記第1報知装置および前記第2報知装置のうち他方の報知装置により前記第1報知、前記第2報知、前記第3報知のいずれとも異なる前記協調可能性レベルの第4報知を行うことを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記第1報知装置および前記第2報知装置は、それぞれ複数種類の発光色を点灯可能な第1表示灯および第2表示灯を用いて構成され、
前記制御装置は、前記第1報知、前記第2報知、前記第3報知を前記発光色の種類を変更することにより実行すると共に、前記第4報知を光の点滅によって実行することを特徴とする請求項2に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、油圧ショベル等の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械を代表する油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体とを有し、上部旋回体には作業機が設けられている。油圧ショベルには、下部走行体を走行させる走行用油圧モータ、上部旋回体を旋回させる旋回用油圧モータ、作業機を作動させる油圧シリンダ等の油圧アクチュエータが搭載されている。オペレータは、操作装置によって油圧アクチュエータに対する圧油の給排を制御することにより、下部走行体の走行動作、上部旋回体の旋回動作、作業機の動作を制御する。また、油圧ショベルには、オペレータによってロック状態とロック解除状態とに切換えられる操作ロック装置が設けられている。操作ロック装置がロック状態に切換えられたときには、作業機等の操作が禁止され、ロック解除状態に切換えられたときには、作業機等の操作が可能となる。
【0003】
油圧ショベルを用いて掘削作業等を行う場合には、通常、油圧ショベルの周囲で土木作業を行う複数の作業者が存在する。これら複数の作業者は、常に油圧ショベルの作業範囲から外れた位置(油圧ショベルから離れた位置)を保ちつつ土木作業を行う必要がある。このように、油圧ショベルのオペレータと油圧ショベルの周囲に存在する作業者とが、互いに協調しつつ作業を進めることにより、掘削作業、土木作業等の作業性を高めることができる。
【0004】
これに対し、オペレータによって操作される操作ロック装置と、周囲に存在する作業者、障害物を含む物体(以下、物体という)を検出する物体検出装置とを備えた油圧ショベルが提案されている。この油圧ショベルは、操作ロック装置の操作状態と物体検出装置による検出結果とに基づいて、オペレータと周囲の作業者とが協調して作業を進めることが可能か否かの指標を、3段階のレベル(協調可能性レベル)に分けて周囲の作業者に報知することができる(特許文献1参照)。
【0005】
この油圧ショベルによれば、操作ロック装置がロック状態に切換えられて油圧ショベルの作動が停止したときには、油圧ショベルから周囲の作業者に対し、協調可能性レベルが高レベルであることが報知される。この結果、周囲の作業者は、油圧ショベルとの距離に注意を払うことなく物体の除去作業等を行うことができる。また、操作ロック装置がロック解除状態にあり、物体検出装置が油圧ショベルの作業範囲内で物体を検出していない場合には、油圧ショベルから周囲の作業者に対し、協調可能性レベルが高レベルよりも低く、かつ低レベルよりも高い中間レベルであることが報知される。この結果、周囲の作業者は、油圧ショベルとの距離に注意を払いながら物体の除去作業等を行うことができる。
【0006】
一方、操作ロック装置がロック解除状態にあり、物体検出装置が油圧ショベルの作業範囲内で物体を検出した場合には、油圧ショベルから周囲の作業者に対し、協調可能性レベルが低レベルであることが報知される。この結果、作業者は油圧ショベルの作業範囲から離れ、オペレータは作業者が作業範囲から遠ざかるまで油圧ショベルの操作を待機することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、例えば油圧ショベルを挟んで左右方向の一方(左側)と他方(右側)とに作業者が存在する状態において、協調可能性レベルが低レベルであることが報知された場合には、一方の作業者と他方の作業者のどちらが油圧ショベルの作業範囲内に入ったのか、作業者当人が判断することができない。このため、例えば一方の作業者のみが油圧ショベルの作業範囲内に入った場合でも、他方の作業者は、自分が物体検出装置に検出されたと誤った判断をしてしまい、作業範囲から必要以上に遠ざかってしまう状況が考えられる。このように、油圧ショベルのオペレータと周囲の複数の作業者とが、協調可能性レベルに関する認識を共有することができない場合には、油圧ショベルと周囲の作業者とが協調して掘削作業、土木作業等を行うときの作業性が低下してしまうという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、オペレータと周囲に存在する作業者とが協調して作業を行うときの作業性を向上させることができるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、自走可能な車体と、前記車体に設けられた作業機と、前記車体の周囲に存在する作業者を含む物体を検出する物体検出装置と、前記車体の周囲から目視可能な報知装置と、前記物体検出装置が作業範囲の中で物体を検出したか否かに基づいて前記作業機を操作するオペレータと前記作業者とが協調して作業可能か否かの指標である協調可能性レベルを判定し、前記協調可能性レベルに応じて前記報知装置による報知を行う制御装置とを備えてなる建設機械において、前記物体検出装置は、前記作業範囲のうち第1作業範囲および第2作業範囲に存在する物体を検出し、前記報知装置は、前記車体から前記第1作業範囲が存在する方向に対して前記協調可能性レベルを報知する第1報知装置と、前記車体から前記第2作業範囲が存在する方向に対して前記協調可能性レベルを報知する第2報知装置とを備え、前記制御装置は、前記物体検出装置により前記第1作業範囲で物体が検出され、前記第2作業範囲で物体が非検出であった場合には、判定した前記協調可能性レベルの報知を前記第1報知装置により行うと共に、前記第1報知装置による前記協調可能性レベルよりも高い前記協調可能性レベルの報知と前記第1作業範囲で物体が検出されたことの報知とを前記第2報知装置により行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車体の周囲に存在する作業者に対し、第1報知装置と第2報知装置とによる報知が行われることにより、オペレータと周囲の作業者とが協調可能性レベルの認識を共有し、車体の周囲の状況に応じてオペレータと作業者とが協調して作業を行うときの作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態が適用された油圧ショベルの左側面図である。
【
図3】第1作業範囲側の協調可能性レベルが第1レベルの状態を示す油圧ショベルの模式図である。
【
図4】第1作業範囲側の協調可能性レベルが第2レベルの状態を示す油圧ショベルの模式図である。
【
図5】第1作業範囲側の協調可能性レベルが第3レベルの状態を示す油圧ショベルの模式図である。
【
図6】物体検出装置、ロックスイッチ、表示装置、制御装置を概略的に示すブロック図である。
【
図7】第1の実施形態による制御装置が実行する協調可能性レベルの判定処理を示す流れ図である。
【
図8】第1作業範囲側の協調可能性レベルが第3.5レベルの状態を示す油圧ショベルの模式図である。
【
図9】第2の実施形態による制御装置が実行する協調可能性レベルの判定処理を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態による建設機械を、油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、
図1ないし
図9を参照しつつ詳細に説明する。なお、実施形態では、油圧ショベルの走行方向を前後方向とし、油圧ショベルの走行方向と直交する方向を左右方向として説明する。
【0014】
図1ないし
図7は、本発明の第1の実施形態を示している。建設機械を代表するクローラ式の油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3とを備え、これら下部走行体2と上部旋回体3とにより車体が構成されている。上部旋回体3の前側には作業機4が設けられ、油圧ショベル1は、上部旋回体3を旋回させつつ作業機4を俯仰動させることにより、土砂の掘削作業等を行う。
【0015】
上部旋回体3は、ベースとなる旋回フレーム5を有し、旋回フレーム5は、旋回装置を介して下部走行体2上に旋回可能に取付けられている。旋回フレーム5の前端側には作業機4が回動可能に取付けられ、作業機4は、ブーム4A、アーム4B、バケット4C、ブームシリンダ4D、アームシリンダ4E、バケットシリンダ4Fを含んで構成されている。旋回フレーム5の後端側には、作業機4との重量バランスをとるカウンタウエイト6が設けられている。旋回フレーム5の前部左側には、オペレータが搭乗するキャブ7が設けられている。また、旋回フレーム5には、カウンタウエイト6よりも前側に位置してエンジン、油圧ポンプ、熱交換装置等の各種の搭載機器(いずれも図示せず)が搭載され、これら搭載機器は、旋回フレーム5上に設けられた外装カバー8によって覆われている。
【0016】
キャブ7は、旋回フレーム5から上方に立上るボックス状に形成され、キャブ7の内部には運転室が形成されている。キャブ7の左側面には、オペレータがキャブ7に乗降するための乗降口7Aと、乗降口7Aを開閉するドア7Bとが設けられている。キャブ7内には、オペレータが座る運転席9が設けられ、運転席9の前側には、下部走行体2の走行動作を制御する走行レバー・ペダル装置(図示せず)が設けられている。運転席9の左右両側には、上部旋回体3の旋回動作、および作業機4の動作を制御する操作レバー装置10(左側のみ図示)が設けられている。また、運転席9の左前側には、後述の操作ロック装置11が設けられている。
【0017】
下部走行体2に設けられた走行用の油圧モータ、上部旋回体3に設けられた旋回用の油圧モータ、作業機4を構成するブームシリンダ4D、アームシリンダ4E、バケットシリンダ4F等の油圧アクチュエータと油圧ポンプとの間には、それぞれコントロールバルブ(図示せず)が設けられている。オペレータが走行レバー・ぺダル装置、操作レバー装置10を操作することにより、コントロールバルブにパイロット信号が供給され、油圧ポンプから吐出した圧油は、コントロールバルブを介してオペレータの操作に対応した油圧アクチュエータに供給される。これにより、下部走行体2の走行動作、上部旋回体3の旋回動作、および作業機4の動作が制御される。
【0018】
操作ロック装置11は、運転席9の左前側に配置されている。操作ロック装置11は、例えば運転席9に座ったオペレータにより回動操作されるロックレバー11Aと、ロックスイッチ11Bとを有し、ロックレバー11Aは、
図3に示すロック状態と
図4等に示すロック解除状態とに切換えられる。ロックレバー11Aがロック状態に切換えられたときには、コントロールバルブへのパイロット信号の出力が停止され、作業機4等の操作が禁止される。ロックレバー11Aがロック解除状態に切換えられたときには、コントロールバルブへのパイロット信号の出力が可能となり、作業機4等の操作が可能となる。ロックスイッチ11Bは、例えばロックレバー11Aがロック状態にあるか否かを検出し、検出結果に応じた検出信号を後述の制御装置18に出力する。
【0019】
上部旋回体3には、物体検出装置としての第1物体検出装置12、第2物体検出装置13、第3物体検出装置14が設けられている。第1物体検出装置12は、例えば外装カバー8の上面左側に配置され、上部旋回体3の左側方に設定される第1作業範囲A1内に、作業者、障害物を含む物体が存在するか否かを検出する。第2物体検出装置13は、例えば外装カバー8の上面右側に配置され、上部旋回体3の右側方に設定される第2作業範囲A2内に物体が存在するか否かを検出する。第3物体検出装置14は、例えばカウンタウエイト6の上面中央に配置され、上部旋回体3の後方に設定される第3作業範囲A3内に物体が存在するか否かを検出する。これら第1物体検出装置12、第2物体検出装置13、第3物体検出装置14は、それぞれ対応する作業範囲(第1作業範囲A1、第2作業範囲A2、第3作業範囲A3)に物体が存在するか否かを検出し、検出結果に応じた検出信号を制御装置18に出力する。
【0020】
ここで、作業機4を用いた油圧ショベル1の作動時に油圧ショベル1の周囲に設定される作業範囲は、例えば上部旋回体3が旋回動作を行うときにカウンタウエイト6の後端が描く円形状を120%程度拡大した円形状の領域である。この円形状の作業範囲のうち、上部旋回体3の左側方に位置する扇状の領域が第1作業範囲A1、上部旋回体3の右側方に位置する扇状の領域が第2作業範囲A2、上部旋回体3の後方に位置する扇状の領域が第3作業範囲A3となっている。従って、油圧ショベル1の稼働時には、第1,第2,第3作業範囲A1,A2,A3内に作業者が入ることは禁止され、第1,第2,第3作業範囲A1,A2,A3内に存在する障害物は除去する必要がある。
【0021】
また、上部旋回体3には、油圧ショベル1の周囲に存在する作業者から目視可能な位置に、報知装置としての第1表示灯15、第2表示灯16、第3表示灯17が設けられている。第1報知装置である第1表示灯15は、例えば旋回フレーム5の左側面に配置され、第1作業範囲A1側の作業者が目視する。第2報知装置である第2表示灯16は、旋回フレーム5の右側面に配置され、第2作業範囲A2側の作業者が目視する。第3報知装置である第3表示灯17は、例えばカウンタウエイト6の後面に配置され、第3作業範囲A3側の作業者が目視する。これら第1表示灯15、第2表示灯16、第3表示灯17は、それぞれ複数の点灯色(例えば青色、黄色、赤色)を有し、制御装置18から入力される制御信号に応じて、青色、黄色、赤色を選択的に点灯または点滅させる。
【0022】
油圧ショベル1の周囲に存在する作業者は、第1表示灯15、第2表示灯16、第3表示灯17のいずれかを目視可能な位置で作業を行い、第1表示灯15、第2表示灯16、第3表示灯17の点灯色、点灯または点滅に応じて、油圧ショベル1の作業範囲内に自分を含む物体が存在するか否かを把握する。このように、第1表示灯15、第2表示灯16、第3表示灯17は、オペレータと油圧ショベル1の周囲に存在する複数の作業者とが協調して作業を進めることが可能か否かの指標となる協調可能性レベルを、周囲の作業者に対して報知する。
【0023】
制御装置18は、例えば上部旋回体3に搭載されている。制御装置18は、操作ロック装置11のロックスイッチ11Bから入力される検出信号と、第1,第2,第3物体検出装置12,13,14から入力される検出信号とに基づいて、協調可能性レベルを段階的(本実施形態では4段階)に判定する。ここで、協調可能性レベルとは、オペレータと周囲の作業者とが協調して作業を行うことが可能か否か、また協調して作業を行うときに両者が払うべき注意の程度を示す指標である。そして、制御装置18は、判定した協調可能性レベルに応じて、第1,第2,第3表示灯15,16,17を適宜の点灯色によって点灯または点滅させることにより、周囲の作業者に対して協調可能性レベルを報知する。
【0024】
図6に示すように、制御装置18は、ロック状態判定部19と、物体判定部20と、協調可能性レベル判定部21とを含んで構成されている。ロック状態判定部19の入力側には、操作ロック装置11のロックスイッチ11Bが接続され、ロック状態判定部19の出力側には、協調可能性レベル判定部21が接続されている。ロック状態判定部19は、ロックスイッチ11Bからの検出信号に基づき、ロックレバー11Aがロック状態であるかロック解除状態であるかを示す判定信号を協調可能性レベル判定部21に出力する。
【0025】
物体判定部20の入力側には、第1物体検出装置12、第2物体検出装置13、第3物体検出装置14が接続され、物体判定部20の出力側には、協調可能性レベル判定部21が接続されている。物体判定部20は、第1物体検出装置12からの検出信号に基づいて第1作業範囲A1に物体が存在するか否か、第2物体検出装置13からの検出信号に基づいて第2作業範囲A2に物体が存在するか否か、第3物体検出装置14からの検出信号に基づいて第3作業範囲A3に物体が存在するか否かを判定する。そして、物体判定部20は、判定結果に応じた判定信号を協調可能性レベル判定部21に出力する。
【0026】
協調可能性レベル判定部21の入力側には、ロック状態判定部19と物体判定部20が接続され、協調可能性レベル判定部21の出力側には、第1表示灯15、第2表示灯16、第3表示灯17が接続されている。協調可能性レベル判定部21は、ロック状態判定部19からの判定信号と物体判定部20からの判定信号とに基づいて、第1作業範囲A1、第2作業範囲A2、第3作業範囲A3のそれぞれに対応する協調可能性レベルを、後述する第1レベル、第2レベル、第3レベル、第2.5レベルの4段階に分けて判定する。
【0027】
そして、協調可能性レベル判定部21は、第1作業範囲A1に対応する協調可能性レベルの判定結果に応じた制御信号を、第1表示灯15に出力する。また、協調可能性レベル判定部21は、第2作業範囲A2に対応する協調可能性レベルの判定結果に応じた制御信号を、第2表示灯16に出力し、第3作業範囲A3に対応する協調可能性レベルの判定結果に応じた制御信号を、第3表示灯17に出力する。
【0028】
これにより、第1表示灯15は、第1作業範囲A1側の作業者に対する協調可能性レベルに応じた点灯色で点灯または点滅し、第1作業範囲A1が存在する方向への報知を行う。第2表示灯16は、第2作業範囲A2側の作業者に対する協調可能性レベルに応じた点灯色で点灯または点滅し、第2作業範囲A2が存在する方向への報知を行う。第3表示灯17は、第3作業範囲A3側の作業者に対する協調可能性レベルに応じた点灯色で点灯または点滅し、第3作業範囲A3が存在する方向への報知を行う。
【0029】
本実施形態による油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、キャブ7に乗込んだオペレータは、走行レバー・ペダル装置(図示せず)を操作することにより、油圧ショベル1を作業現場まで自走させる。作業現場に停止した後、オペレータは操作レバー装置10を操作することにより、上部旋回体3を旋回させつつ、作業機4を操作して土砂の掘削作業等を行う。ここで、油圧ショベル1の周囲には、土木作業を行う複数の作業者や、土木作業に用いる資材、道具等の障害物が存在する。
【0030】
油圧ショベル1の稼働時には、作業者が油圧ショベル1の作業範囲内に入ることは禁止される。一方、油圧ショベル1の作業範囲内に障害物が存在する場合には、作業者が障害物を除去することにより、油圧ショベル1の掘削作業が円滑に行われる。このように、油圧ショベル1のオペレータと周囲の作業者とが互いに協調して作業を進めるため、制御装置18は、油圧ショベル1の稼働時に常に協調可能性レベルを判定し、この協調可能性レベルを第1,第2,第3表示灯15,16,17によって作業者に報知する。これにより、オペレータと作業者とは、協調可能性レベルに関する認識を共有することができ、油圧ショベル1の周囲の状況に応じて協調して作業を行うことができる。
【0031】
次に、油圧ショベル1の稼働時に、周囲の作業者に対して協調可能性レベルを報知する具体例について、
図3ないし
図5を参照して説明する。
【0032】
まず、
図3は、キャブ7内に配置された操作ロック装置11(ロックレバー11A)が、ロック状態を保持している場合を示している。この場合には、ロックスイッチ11Bから制御装置18のロック状態判定部19に対し、ロック状態であることを示す検出信号が出力される。このロック状態では、油圧ショベル1の上部旋回体3、作業機4に対する操作は禁止され、油圧ショベル1は停止した状態を保持する。
【0033】
このように、操作ロック装置11がロック状態にあるときには、作業機4等の操作が禁止されるため、例えば第1作業範囲A1、第2作業範囲A2、第3作業範囲A3内に作業者W1,W2,W3あるいは障害物M等の物体が存在していたとしても、これら物体が作業機4に接触することはない。従って、操作ロック装置11がロック状態にあるときには、制御装置18の協調可能性レベル判定部21は、協調可能性が、最も高い第1レベルと判定する。この場合には、協調可能性レベル判定部21は、第1表示灯15、第2表示灯16、第3表示灯17を、それぞれ青色点灯(第1報知)させる。
【0034】
これにより、第1作業範囲A1側に存在する作業者W1は、第1表示灯15の青色点灯によって、第2作業範囲A2側に存在する作業者W2は、第2表示灯16の青色点灯によって、第3作業範囲A3側に存在する作業者W3は、第3表示灯17の青色点灯によって、それぞれ協調可能性レベルが第1レベルであると認識することができる。また、オペレータは、例えばキャブ7内に配置されたモニタ(図示せず)によって協調可能性レベルが第1レベルであると認識することができる。協調可能性レベルが第1レベルである場合には、作業者W1,W2,W3は、第1作業範囲A1、第2作業範囲A2、第3作業範囲A3に出入りしつつ土木作業を行うことができる。そして、例えば第1作業範囲A1内に障害物Mが存在する場合には、油圧ショベル1による掘削作業が開始される前に、作業者W1,W2,W3のいずれかが障害物Mを第1作業範囲A1から除去する。
【0035】
次に、
図4は、操作ロック装置11(ロックレバー11A)がロック解除状態に切換えられた状態で、第1作業範囲A1、第2作業範囲A2、第3作業範囲A3のいずれにも物体が存在しない場合を示している。この場合には、ロックスイッチ11Bから制御装置18のロック状態判定部19に対し、ロック解除状態であることを示す検出信号が出力され、作業機4等が操作可能となる。このため、オペレータが操作レバー装置10を操作することにより、上部旋回体3の旋回動作、作業機4による掘削動作等が行われる。
【0036】
ここで、
図4に示すように、操作ロック装置11がロック解除状態にあり、第1作業範囲A1、第2作業範囲A2、第3作業範囲A3のいずれにも物体が存在しない場合には、協調可能性レベル判定部21は、第1作業範囲A1側、第2作業範囲A2側、第3作業範囲A3側の協調可能性レベルが、第1レベルよりも低い第2レベルと判定する。この場合には、協調可能性レベル判定部21は、第1表示灯15、第2表示灯16、第3表示灯17を、それぞれ黄色点灯(第2報知)させる。
【0037】
これにより、第1作業範囲A1側に存在する作業者W1は、第1表示灯15の黄色点灯によって、第2作業範囲A2側に存在する作業者W2は、第2表示灯16の黄色点灯によって、第3作業範囲A3側に存在する作業者W3は、第3表示灯17の黄色点灯によって、それぞれ協調可能性レベルが第2レベルであると認識することができる。また、オペレータは、キャブ7内に配置されたモニタによって協調可能性レベルが第2レベルであるという認識を共有することができる。協調可能性レベルが第2レベルである場合には、第1作業範囲A1、第2作業範囲A2、第3作業範囲A3に物体が存在しないため、オペレータは、周囲の物体を気にすることなく油圧ショベル1を操作することができる。
【0038】
次に、
図5は、操作ロック装置11がロック解除状態にあり、第1作業範囲A1内に障害物Mが存在する場合を示している。この場合には、制御装置18の物体判定部20に対し、第1物体検出装置12から物体(障害物M)を検出したことを示す検出信号が出力されると共に、第2物体検出装置13および第3物体検出装置14から物体が非検出であることを示す検出信号が出力される。物体判定部20は、協調可能性レベル判定部21に対し、第1作業範囲A1内に物体が存在し、第2作業範囲A2および第3作業範囲A3内には物体が存在しないことを示す判定信号を出力する。
【0039】
これにより、協調可能性レベル判定部21は、第1作業範囲A1側の協調可能性レベルが、第2レベルよりも低い第3レベルであると判定し、第1表示灯15を赤色点灯(第3報知)させる。第1作業範囲A1内に障害物Mが存在する場合には、例えば油圧ショベル1の動作が制限される。一方、協調可能性レベル判定部21は、第2作業範囲A2側の協調可能性レベル、および第3作業範囲A3側の協調可能性レベルが、第3レベルよりも高く第2レベルよりも低い第2.5レベルであると判定し、第2表示灯16、第3表示灯17を、それぞれ黄色点滅(第1報知、第2報知、第3報知のいずれとも異なる協調可能性レベルの第4報知)させる。なお、
図5中の第2表示灯16、第3表示灯17は、破線で記載することにより点滅状態であることを表している。
【0040】
これにより、作業者W1は、第1表示灯15の赤色点灯によって、第1作業範囲A1側の協調可能性レベルが第3レベルであると認識することができる。作業者W2は、第2表示灯16の黄色点滅によって、第2作業範囲A2側の協調可能性レベルが第2.5レベルであると認識し、作業者W3は、第3表示灯17の黄色点滅によって、第3作業範囲A3側の協調可能性レベルが第2.5レベルであると認識することができる。また、オペレータは、例えばキャブ7内に配置されたモニタによって、第1作業範囲A1の協調可能性レベルが第3レベルであるという認識を共有することができ、油圧ショベル1に対する動作制限が解除されるまで待機する。
【0041】
このように、制御装置18は、操作ロック装置11がロック解除状態にあり、かつ第1作業範囲A1で物体が検出され、第2作業範囲A2および第3作業範囲A3で物体が非検出であった場合には、第1作業範囲A1側に存在する作業者W1に対し、協調可能性レベルが第3レベルであることを第1表示灯15の赤色点灯によって報知する。また、制御装置18は、第2作業範囲A2側に存在する作業者W2および第3作業範囲A3側に存在する作業者W3に対し、協調可能性レベルが第3レベルよりも高い第2.5レベルであることと、第1作業範囲A1等で物体が検出されたことを第2表示灯16および第3表示灯17の黄色点滅によって報知する。
【0042】
この場合、作業者W1は、第1表示灯15の赤色点灯により、第3レベルとなった原因が、第1作業範囲A1内に物体(障害物Mまたは作業者W1)が存在したことにあると認識できる。このため、作業者W1は、障害物Mを第1作業範囲A1から除去する行動、あるいは自分が油圧ショベル1から離れる行動をとることにより、速やかに第1作業範囲A1から物体を除去し、協調可能性レベルを第3レベルから第2レベルへと移行させることができる。
【0043】
一方、作業者W2は、第2表示灯16の黄色点滅により、第2作業範囲A2内に物体は存在せず、他の作業範囲(第1作業範囲A1または第3作業範囲A3)内に物体が存在することを認識できる。同様に、作業者W3は、第3表示灯17の黄色点滅により、第3作業範囲A3内に物体は存在せず、他の作業範囲(第1作業範囲A1または第2作業範囲A2)内に物体が存在することを認識できる。このため、作業者W2および作業者W3は、必要以上に油圧ショベル1から離れる行動、あるいは第2作業範囲A2、第3作業範囲A3の近くに存在する障害物Mを油圧ショベル1から遠ざける行動を自重し、第1作業範囲A1側の協調可能性レベルが、第3レベルから第2レベルに移行するまで、油圧ショベル1の近くで待機する。さらに、例えば第1作業範囲A1内に複数の障害物Mが存在している場合には、作業者W3(または作業者W2)が、第1作業範囲A1に移動して障害物M、を除去することにより、第1作業範囲A1側の協調可能性レベルを、速やかに第3レベルから第2レベルへと移行させることができる。
【0044】
そして、第1作業範囲A1から物体(障害物M)が除去され、第1物体検出装置12が物体を非検出の状態に移行すると、制御装置18(協調可能性レベル判定部21)は、第1作業範囲A1側の協調可能性レベルが、第3レベルよりも高い第2レベルと判定すると共に、第2作業範囲A2側および第3作業範囲A3側の協調可能性レベルが、それぞれ第2.5レベルよりも高い第2レベルと判定する。これにより、制御装置18は、第1表示灯15、第2表示灯16、第3表示灯17を、それぞれ黄色で点灯させる。従って、作業者W1,W2,W3は、第1表示灯15、第2表示灯16、第3表示灯17の黄色点灯により、協調可能性レベルが第2レベルに移行したことを認識することができる。また、オペレータは、キャブ7内に配置されたモニタによって、協調可能性レベルが第2レベルに移行した認識することができ、迅速に油圧ショベル1による掘削作業を再開することができる。このように、オペレータと周囲の作業者W1,W2,W3とが、協調可能性レベルに関する認識を共有することにより、油圧ショベル1の周囲の状況に応じて協調して作業を行うときの作業性を向上させ、掘削作業、土木作業等の作業性を高めることができる。
【0045】
次に、制御装置18が実行する協調可能性レベルの判定処理について、
図7を参照して説明する。この判定処理は、第1作業範囲A1側の作業者W1に対する協調可能性レベルの判定を例示しており、第2作業範囲A2側の作業者W2、第3作業範囲A3側の作業者W3に対する協調可能性レベルの判定も同様に実行される。また、
図7に示す判定処理は、油圧ショベル1の稼働時に一定の周期で繰返して実行される。
【0046】
この判定処理は、例えば油圧ショベル1の始動によって制御装置18が起動されるとスタートし、ステップS1において操作ロック装置11のロックスイッチ11Bからの検出信号を読込んだ後、ステップS2において操作ロック装置11(ロックレバー11A)がロック状態か否かを判定する。ステップS2で「YES」と判定した場合には、操作ロック装置11がロック状態であるため、ステップS3で協調可能性レベルが第1レベルと判定して終了する。これにより、例えば
図3に示すように、第1表示灯15、第2表示灯16、第3表示灯17が青色点灯し、油圧ショベル1の周囲に存在する作業者W1,W2,W3に対して協調可能性レベルが第1レベルであることが報知される。
【0047】
ステップS2で「NO」と判定した場合には、操作ロック装置11がロック解除状態であるため、ステップS4で第1物体検出装置12、第2物体検出装置13、第3物体検出装置14からの検出信号を読込んだ後、ステップS5において第1作業範囲A1内に物体が存在するか否かを判定する。ステップS5で「NO」と判定した場合には、ステップS6において第1作業範囲A1以外(第2作業範囲A2または第3作業範囲A3)に物体が存在するか否かを判定する。ステップS6で「NO」と判定した場合には、第1作業範囲A1内にも、第1作業範囲A1以外にも物体が存在しないため、ステップS7において協調可能性レベルが第2レベルと判定して終了する。これにより、例えば
図4に示すように、第1表示灯15、第2表示灯16、第3表示灯17が黄色点灯し、作業者W1,W2,W3に対して協調可能性レベルが第2レベルであることが報知される。
【0048】
ステップS5で「YES」と判定した場合には、第1作業範囲A1内に物体が存在しているため、ステップS8で協調可能性レベルが第3レベルと判定して終了する。これにより、例えば
図5に示すように、第1表示灯15が赤色点灯し、第1作業範囲A1側の作業者W1に対して協調可能性レベルが第3レベルであることが報知される。一方、第2表示灯16、第3表示灯17は黄色点滅し、第2作業範囲A2側の作業者W2、第3作業範囲A3側の作業者W3に対して協調可能性レベルが第2.5レベルであることが報知される。
【0049】
ステップS6で「YES」と判定した場合には、第1作業範囲A1以外(第2作業範囲A2または第3作業範囲A3)に物体が存在しているため、ステップS9において協調可能性レベルが第2.5レベルと判定して終了する。これにより、第1表示灯15が黄色点滅し、第1作業範囲A1側の作業者W1に対して協調可能性レベルが第2.5レベルであることが報知される。一方、第2表示灯16および第3表示灯17は赤色点灯または黄色点滅し、第2作業範囲A2側の作業者W2および第3作業範囲A3側の作業者W3に対し、協調可能性レベルが第3レベルまたは第2.5レベルであることが報知される。
【0050】
かくして、実施形態による油圧ショベル1は、自走可能な車体と、車体に設けられた作業機4と、車体の周囲に存在する作業者を含む物体を検出する第1,第2物体検出装置12,13と、車体の周囲から目視可能な報知装置と、第1,第2物体検出装置12,13が作業範囲の中で物体を検出したか否かに基づいて作業機4を操作するオペレータと作業者とが協調して作業可能か否かの指標である協調可能性レベルを判定し、前記協調可能性レベルに応じて前記報知装置による報知を行う制御装置18とを備え、第1,第2物体検出装置12,13は、前記作業範囲のうち第1作業範囲A1および第2作業範囲A2に存在する物体を検出し、前記報知装置は、車体から第1作業範囲A1が存在する方向に対して協調可能性レベルを報知する第1表示灯15と、車体から第2作業範囲A2が存在する方向に対して協調可能性レベルを報知する第2表示灯16とを備え、制御装置18は、第1物体検出装置12により第1作業範囲A1で物体が検出され、第2物体検出装置13により第2作業範囲A2で物体が非検出であった場合には、判定した協調可能性レベルの報知を第1表示灯15により行うと共に、第1表示灯15による協調可能性レベルよりも高い協調可能性レベルの報知と第1作業範囲A1で物体が検出されたことの報知とを第2表示灯16により行うことを特徴としている。
【0051】
この構成によれば、第1作業範囲A1側の作業者W1は、第1表示灯15からの報知により第1作業範囲A1に物体が存在することを認識し、速やかに第1作業範囲A1から物体を除去することができる。一方、第2作業範囲A2側の作業者W2は、第2表示灯16からの報知により、第2作業範囲A2内に物体は存在せず、第1作業範囲A1に物体が存在することを認識できる。これにより、作業者W2は、必要以上に油圧ショベル1から離れることなく油圧ショベル1の近くで待機することができる上に、第1作業範囲A1に存在する物体(障害物等)を除去することができる。この結果、油圧ショベル1のオペレータと周囲の作業者W1,W2とが協調可能性レベルに関する認識を共有し、油圧ショベル1による掘削作業を迅速に再開させることができるので、油圧ショベル1による掘削作業、作業者W1,W2,W3による土木作業等の作業性を向上させることができる。
【0052】
実施形態では、作業機4の操作を禁止するロック状態と作業機4の操作を可能とするロック解除状態とに切換えられる操作ロック装置11を更に備え、制御装置18は、操作ロック装置11がロック状態にある場合には、第1表示灯15および第2表示灯16により第1報知を行い、操作ロック装置11がロック解除状態にあり、第1,第2物体検出装置12,13が第1作業範囲A1および第2作業範囲A2のいずれからも物体を非検出であった場合には、第1表示灯15および第2表示灯16により前記第1報知よりも協調可能性レベルが低い第2報知を行い、操作ロック装置11がロック解除状態にあり、かつ第1,第2物体検出装置12,13が第1作業範囲A1および第2作業範囲A2のうち一方の作業範囲(A1またはA2)から物体を検出した場合には、第1表示灯15および第2表示灯16のうち前記一方の作業範囲(A1またはA2)に対応する一方の表示灯により前記第2報知よりも協調可能性レベルが低い第3報知を行うと共に、第1表示灯15および第2表示灯16のうち他方の表示灯により第1報知、第2報知、第3報知のいずれとも異なる協調可能性レベルの第4報知を行うことを特徴としている。
【0053】
この構成によれば、一方の表示灯による第3報知により、一方の作業範囲(A1またはA2)側の作業者(W1またはW2)に対し、一方の作業範囲(A1またはA2)に物体が存在することが報知される。これと同時に、他方の表示灯による第4報知により、他方の作業範囲(A2またはA1)側の作業者(W2またはW1)に対し、他方の作業範囲(A2またはA1)には物体が存在せず、一方の作業範囲(A1またはA2)に物体が存在することが報知される。この結果、作業者W1,W2とが協調可能性レベルに関する認識を共有することができ、例えば他方の作業範囲(A2またはA1)側の作業者(W2またはW1)が、一方の作業範囲(A1またはA2)に存在する物体を除去することにより、掘削作業、土木作業等の作業性を向上させることができる。
【0054】
実施形態では、第1報知装置および第2報知装置は、それぞれ複数種類の発光色を点灯可能な第1表示灯15および第2表示灯16を用いて構成され、制御装置18は、第1報知、第2報知、第3報知を発光色の種類を変更することにより実行すると共に、第4報知を光の点滅によって実行することを特徴としている。この構成によれば、第1作業範囲A1側の作業者W1に対し、第1表示灯15が何色で点灯または点滅するかにより、複数の協調可能性レベルを段階的に報知することができ、第2作業範囲A2側の作業者W2に対し、第2表示灯16が何色で点灯または点滅するかにより、複数の協調可能性レベルを段階的に報知することができる。
【0055】
次に、
図8および
図9は本発明の第2の実施形態を示している。本実施形態の特徴は、制御装置18は、操作ロック装置11がロック解除状態にあり、かつ第1作業範囲A1および第2作業範囲A2の両方の作業範囲で物体が検出された場合には、協調可能性レベルが低レベルよりも低いレベルであることを報知するため、第1表示灯15および第2表示灯16を点滅させることにある。なお、第2の実施形態では、第1の実施形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0056】
本実施形態による制御装置18は、第1の実施形態による制御装置18と同様に、ロック状態判定部19と、物体判定部20と、協調可能性レベル判定部21とを含んで構成されている。しかし、本実施形態による制御装置18は、
図9に示す協調可能性レベルの判定処理が、
図7に示す判定処理とは異なっている。
【0057】
図8は、操作ロック装置11がロック解除状態にあり、かつ第1作業範囲A1および第2作業範囲A2に物体が存在する場合を示している。この場合には、制御装置18の物体判定部20に対し、第1物体検出装置12および第2物体検出装置13から物体を検出したことを示す検出信号が出力されると共に、第3物体検出装置14から物体を非検出であることを示す検出信号が出力される。物体判定部20は、協調可能性レベル判定部21に対し、第1作業範囲A1および第2作業範囲A2内に物体が存在し、第3作業範囲A3内には物体が存在しないことを示す判定信号を出力する。
【0058】
この場合には、協調可能性レベル判定部21は、第1作業範囲A1側および第2作業範囲A2側の協調可能性レベルが、第3レベルよりも低い第3.5レベルと判定する。一方、協調可能性レベル判定部21は、第3作業範囲A3側の協調可能性レベルが、第3レベルよりも高く第2レベルよりも低い第2.5レベルであると判定する。そして、協調可能性レベル判定部21は、第1表示灯15と第2表示灯16とを、それぞれ赤色点滅させると共に、第3表示灯17を黄色点滅させる。なお、
図8中の第1表示灯15、第2表示灯16、第3表示灯17は、破線で記載することにより点滅状態であることを表している。
【0059】
これにより、作業者W1は、第1表示灯15の赤色点滅により第1作業範囲A1側の協調可能性レベルが第3.5レベルであると認識し、作業者W2は、第2表示灯16の赤色点滅により第2作業範囲A2側の協調可能性レベルが第3.5レベルであると認識する。作業者W3は、第3表示灯17の黄色点滅によって、第3作業範囲A3側の協調可能性レベルが第2.5レベルであると認識する。また、オペレータは、例えばキャブ7内に配置されたモニタによって、第1作業範囲A1側の協調可能性レベルと第2作業範囲A2側の協調可能性レベルとが第3.5レベルであると認識し、油圧ショベル1の操作を控える。
【0060】
このように、制御装置18は、操作ロック装置11がロック解除状態にあり、かつ第1作業範囲A1および第2作業範囲A2の両方の作業範囲で物体が検出された場合には、協調可能性レベルが第3レベルよりも低い第3.5レベルであることを報知するため、第1表示灯15および第2表示灯16を赤色点滅させる。また、制御装置18は、第3作業範囲A3側に存在する作業者W3に対し、協調可能性レベルが第3レベルよりも高い第2.5レベルであることを報知するため、第3表示灯17を黄色点滅させる。
【0061】
この場合、作業者W1は、第1表示灯15の赤色点滅により、第1作業範囲A1内に物体が存在しているだけでなく、他の作業範囲(第2作業範囲A2または第3作業範囲A3)内にも物体が存在していると認識できる。また、作業者W2は、第2表示灯16の赤色点滅により、第2作業範囲A2内に物体が存在しているだけでなく、他の作業範囲(第1作業範囲A1または第3作業範囲A3)内にも物体が存在していると認識できる。また、作業者W3は、第3表示灯17の黄色点滅により、第3作業範囲A3内には物体が存在しないものの、他の作業範囲(第1作業範囲A1または第2作業範囲A2)内に物体が存在することを認識できる。さらに、オペレータは、キャブ7内に配置されたモニタによって、第1作業範囲A1、第2作業範囲A2の両方に物体が存在し、第3作業範囲A3に物体が存在しないことを認識することができる。このように、オペレータと周囲の作業者W1,W2,W3とが、協調可能性レベルに関する認識を共有することにより、油圧ショベル1の周囲の状況に応じて協調して作業を行うことができ、油圧ショベル1による掘削作業、作業者W1,W2,W3による土木作業等の作業性を高めることができる。
【0062】
次に、第2の実施形態による制御装置18が実行する協調可能性レベルの判定処理について、
図9を参照して説明する。この判定処理は、第1作業範囲A1に物体が存在するか否かに応じて協調可能性レベルを判定する場合を例示しており、第2作業範囲A2、第3作業範囲A3に物体が存在するか否かに応じた協調可能性レベルの判定も同様に実行される。また、
図9に示す判定処理は、制御装置18に予めプログラムされ、一定の周期で繰返して実行される。
【0063】
図9において、ステップS11からステップS17までは、第1の実施形態による制御装置18が実行するステップS1からステップS7までの制御処理と同様である。ステップS15で「YES」と判定した場合には、第1作業範囲A1内に物体が存在しているため、ステップS18において第1作業範囲A1以外に物体が存在しているか否かを判定する。ステップS18で「NO」と判定した場合は、第1作業範囲A1のみに物体が存在しているため、ステップS19で協調可能性レベルが第3レベルと判定して終了する。この場合には、第1表示灯15が赤色点灯し、第1作業範囲A1側の作業者W1に対して協調可能性レベルが第3レベルであることが報知される。一方、第2表示灯16、第3表示灯17が黄色点滅し、第2作業範囲A2側の作業者W2、第3作業範囲A3側の作業者W3に対して協調可能性レベルが第2.5レベルであることが報知される。
【0064】
ステップS16で「YES」と判定した場合には、第1作業範囲A1以外(第2作業範囲A2または第3作業範囲A3)に物体が存在しているため、ステップS20において協調可能性レベルが第2.5レベルと判定して終了する。これにより、第1表示灯15が黄色点滅し、第1作業範囲A1側の作業者W1に対して協調可能性レベルが第2.5レベルであることが報知される。一方、第2表示灯16および第3表示灯17は赤色点灯または黄色点滅し、第2作業範囲A2側の作業者W2および第3作業範囲A3側の作業者W3に対し、協調可能性レベルが第3レベルまたは第2.5レベルであることが報知される。
【0065】
ステップS18で「YES」と判定した場合には、第1作業範囲A1以外(第2作業範囲A2、第3作業範囲A3)にも物体が存在しているため、ステップS21で協調可能性レベルが第3.5レベルと判定して終了する。この場合には、第1表示灯15が赤色点滅し、第1作業範囲A1側の作業者W1に対して協調可能性レベルが第3.5レベルであることが報知される。
【0066】
一方、第2作業範囲A2内に物体が存在している場合には、第2表示灯16が赤色点滅することにより第2作業範囲A2側の作業者W2に対して協調可能性レベルが第3.5レベルであることが報知され、第2作業範囲A2内に物体が存在していない場合には、第2表示灯16が黄色点滅することにより第2作業範囲A2側の作業者W2に対して協調可能性レベルが第2.5レベルであることが報知される。また、第3作業範囲A3内に物体が存在している場合には、第3表示灯17が赤色点滅することにより第3作業範囲A3側の作業者W3に対して協調可能性レベルが第3.5レベルであることが報知され、第3作業範囲A3内に物体が存在していない場合には、第3表示灯17が黄色点滅することにより第3作業範囲A3側の作業者W3に対して協調可能性レベルが第2.5レベルであることが報知される。
【0067】
このように、本実施形態による制御装置18は、操作ロック装置11がロック解除状態にあり、かつ第1作業範囲A1および第2作業範囲A2の両方の作業範囲で物体が検出された場合には、第1表示灯15および第2表示灯16を赤色点滅させることにより、協調可能性レベルが第3レベルよりも低い第3.5レベルであることを報知する。この結果、オペレータと周囲の作業者W1,W2,W3とが、協調可能性レベルに関する認識を共有することにより、油圧ショベル1の周囲の状況に応じて協調して作業を行うことができる。
【0068】
なお、実施形態では、油圧ショベル1の周囲に存在する物体を検出するため、3台の物体検出装置(第1物体検出装置12、第2物体検出装置13、第3物体検出装置14)を用いた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば油圧ショベル1の周囲を全周に亘って検出する1台の回転式の物体検出装置を用いる構成としてもよい。
【0069】
また、実施形態では、油圧ショベル1の周囲の作業範囲を第1作業範囲A1、第2作業範囲A2、第3作業範囲A3に3分割した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば2分割、あるいは4分割以上に分割する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0070】
2 下部走行体(車体)
3 上部旋回体(車体)
4 作業機
11操作ロック装置
11B ロックスイッチ
12 第1物体検出装置
13 第2物体検出装置
15 第1表示灯(第1報知装置)
16 第2表示灯(第2報知装置)
18 制御装置
A1 第1作業範囲
A2 第2作業範囲
W1,W2,W3 作業者