(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129229
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】エアパージ装置、および、エアパージ方法
(51)【国際特許分類】
G03B 17/56 20210101AFI20240919BHJP
【FI】
G03B17/56 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038290
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣木 隆
【テーマコード(参考)】
2H105
【Fターム(参考)】
2H105DD03
2H105DD06
(57)【要約】
【課題】ケース内部への浮遊物等の異物侵入を抑制可能なエアパージ装置、および、エアパージ方法を提供する。
【解決手段】エアパージ装置1は、ケース本体11を備える。ケース本体11は、内部に保護対象物1を収容可能であって、保護対象物1と対向する位置に開口部12が設けられている。ケース本体11には、エア供給部13から内部にパージエアを供給可能である。エア供給部13と開口部12との間にはパージエアの流れを遮蔽する遮蔽物が設けられている。エア供給部13と開口部12との間に遮蔽物を設け、パージエアが開口部12へ直接的に流れないように配置することで、開口部12付近での内向きの乱流の発生が抑制され、乱流による開口部12からの浮遊物等の異物侵入を抑制可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に保護対象物(1、2)を収容可能であって、前記保護対象物と対向する位置に開口部(12、22、32、42、52)が設けられているケース本体(11、21、31、41、51)を備え、
前記ケース本体には、エア供給部(13、23、33、43、53)から内部にパージエアを供給可能であって、前記エア供給部と前記開口部との間にはパージエアの流れを遮蔽する遮蔽物(1、2、65)が設けられているエアパージ装置。
【請求項2】
前記遮蔽物は、前記保護対象物である請求項1に記載のエアパージ装置。
【請求項3】
前記遮蔽物は、前記エア供給部と前記保護対象物との間に設けられる遮蔽壁(65)である請求項1に記載のエアパージ装置。
【請求項4】
前記開口部が設けられている壁部(312)には、前記開口部から前記保護対象物側に延びる開口カバー部(35)が形成されている請求項1~3のいずれか一項に記載のエアパージ装置。
【請求項5】
前記開口部が設けられている壁部(512)と前記保護対象物との間には、前記開口部を前記保護対象物側に投影した箇所に孔部(56)が形成される保護壁(55)が設けられている請求項1~3のいずれか一項に記載のエアパージ装置。
【請求項6】
内部に保護対象物(1、2)を収容可能であって、前記保護対象物と対向する位置に開口部(12、22、32、42、52)が設けられているケース本体(11、21、31、41、51)を備え、
前記ケース本体には、エア供給部(13、23、33、43、53)から内部にパージエアを供給可能であって、前記エア供給部と前記開口部との間にはパージエアの流れを遮蔽する遮蔽物(1、2、65)が設けられているエアパージ装置を用いるエアパージ方法であって、
前記エア供給部からパージエアを供給するエア供給ステップを含むエアパージ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアパージ装置、および、エアパージ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、埃や塵などがカメラのレンズに付着しないように設けられるカメラカバー装置が知られている。例えば特許文献1では、カメラカバー装置はパージ機構を備えており、レンズカバーとカバーとの間の閉空間にエアを供給することで、ケース本体の外部から、ミストや微細な粉末等の微粒子が侵入、レンズに付着するのを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1のように、カメラ前方にエアを供給する場合、内向きの乱入により、外部のミストを吸い込み、浮遊物がケース内部に侵入する虞がある。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ケース内部への浮遊物等の異物侵入を抑制可能なエアパージ装置、および、エアパージ方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のエアパージ装置は、内部に保護対象物(1、2)を収容可能であって、保護対象物と対向する位置に開口部(12、22、32、42、52)が設けられているケース本体(11、21、31、41、51)を備える。ケース本体には、エア供給部(13、23、33、43、53)から内部にパージエアを供給可能であって、エア供給部と開口部との間にはパージエアの流れを遮蔽する遮蔽物が設けられている。
【0007】
本発明のエアパージ方法は、内部に保護対象物(1、2)を収容可能であって、保護対象物と対向する位置に開口部(12、22、32、42、52)が設けられているケース本体(11、21、31、41、51)を備え、ケース本体には、エア供給部(13、23、33、43、53)から内部にパージエアを供給可能であって、エア供給部と開口部との間にはパージエアの流れを遮蔽する遮蔽物が設けられているエアパージ装置を用いるものであって、エア供給部からパージエアを供給するエア供給ステップを含む。
【0008】
エア供給部と開口部との間に遮蔽物を設け、パージエアが開口部へ直接的に流れないように配置することで、開口部付近での内向きの乱流の発生が抑制され、乱流による開口部からの浮遊物等の異物侵入を抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態によるエアパージ装置を示す斜視図である。
【
図4】第2実施形態によるエアパージ装置を示す斜視図である。
【
図6】第3実施形態によるエアパージ装置を示す斜視図である。
【
図8】第4実施形態によるエアパージ装置を示す斜視図である。
【
図10】第5実施形態によるエアパージ装置を示す斜視図である。
【
図12】第6実施形態によるエアパージ装置を示す断面図である。
【
図13】第6実施形態によるエアパージ装置を示す断面図である。
【
図14】参考例によるエアパージ装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明によるエアパージ装置、および、エアパージ方法を図面に基づいて説明する。複数の実施形態において、実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0011】
(第1実施形態)
第1実施形態を
図1~
図3に示す。
図1等はいずれも模式的な図であって、エアの流れを矢印で示している。
図1~
図3に示すように、エアパージ装置10は、ケース本体11を備え、内部にカメラ等の保護対象物1が収納されている。エアパージ装置10は、例えば生産設備内に設けられており、設備内の油ミストや粉塵等の浮遊物から保護対象物1を保護するものである。
【0012】
ケース本体11は、例えば樹脂等により略直方体形状に形成されているが、樹脂以外の金属等で形成してもよく、また保護対象物1に応じた形状に形成してもよい。ケース本体11には、開口部12、および、エア供給部13が設けられている。
【0013】
開口部12は、ケース本体11の一方の壁面である前方壁部112に設けられている。開口部12は、保護対象物1がカメラである場合、設備内を撮像可能なように、レンズの形状に応じて設けられている。本実施形態では、レンズの前面が前方壁部112の内側面と略同位置となるように配置されており、開口部12はレンズ外径よりも大きく形成されている。
【0014】
エア供給部13は、保護対象物1を挟んで開口部12とは反対側の壁面である後方壁部113の中央に設けられている。以下適宜、開口部12が設けられる側を前方、エア供給部13が設けられる側を後方とする。エア供給部13には、図示しない継手を経由してエア配管と接続されており、エア供給装置から圧縮エアが供給される。
【0015】
ここで、参考例を
図14および
図15に示す。参考例によるエアパージ装置90では、エア供給部93が、ケース本体91の天板915に設けられており、矢印Acで示すように、上側から保護対象物1の前方に圧縮エアが供給されるエアカーテン式である。
【0016】
エアカーテン方式の場合、エア流量を確保するために配管径が大きくなったり、成り行きでエア圧力を調整したりすると、大量のエアを消費する虞がある。また、開口部92付近の風速が大きいと、エアの巻き込みにより内向きの乱流の発生により、周囲の油ミストや粉塵を含む浮遊物がケース本体91内部に侵入する虞がある(矢印Ar)。ケース内部に油ミストや粉塵が侵入すると、保護対象物1が故障したり、短期間で清掃等のメンテナンスが必要になったりする虞がある。
【0017】
そこで本実施形態では、
図1~
図3に示すように、開口部12が設けられる前方壁部112とは保護対象物1を挟んで反対側の後方壁部113に設けられたエア供給部13からエア供給を行う(矢印Ab)。本実施形態の保護対象物1は、エア供給部13に対して相対的に体格が大きいため、保護対象物1自身を遮蔽物として外向きの層流(矢印Ao)を形成することで、外部から供給される圧縮エアが開口部12に直接的に流れないようにしている。パージされるエアの流れを外向きの層流とすることで、開口部12からのミストの侵入を抑制することができる。また、開口部12を最小化するとともに、エア配管、供給するエアの流量、圧力を最適化することで、エア消費量を抑制することができる。
【0018】
以上説明したように、エアパージ装置10は、ケース本体11を備える。ケース本体11は、内部に保護対象物1を収容可能であって、保護対象物1と対向する位置に開口部12が設けられている。ケース本体11には、エア供給部13から内部にパージエアを供給可能である。エア供給部13と開口部12との間には、パージエアの流れを遮蔽する遮蔽物が設けられている。
【0019】
本実施形態では、エア供給部13と開口部12との間に遮蔽物を設け、開口部12へ直接的にエアが流れないように配置することで、エア供給部13からのエアが、遮蔽物の外側を流れる外向きの層流をなして開口部12から流出するように構成している。これにより、開口部12付近で内向きの乱流の発生が抑制され、乱流による開口部12からのミストの侵入を抑制可能である。
【0020】
本実施形態の遮蔽物は、保護対象物1である。保護対象物1自体を遮蔽物として用いることで、部品点数を増やすことなく、外向きの層流を形成することができ、開口部12からのミストの侵入を抑制することができる。
【0021】
また、本実施形態のエアパージ方法では、エアパージ装置10を用い、エア供給部13からパージエアを供給するエア供給ステップを含む。エア供給部13と開口部12との間には、遮蔽物が設けられているので、エア供給部13からエアを供給することで外向きの層流が形成される。これにより、このようなエアパージ方法においても、開口部12からのミストの侵入を抑制することができる。
【0022】
(第2実施形態、第3実施形態)
第2実施形態を
図4および
図5に示す。第2実施形態のエアパージ装置20は、ケース本体21を備え、前方壁部212に開口部22が形成され、後方壁部213に開口部23が形成されている。
【0023】
本実施形態では、保護対象物1は、前方壁部212から隙間Gだけ後方にずらして配置されている。また、開口部22は、保護対象物1の前方側端面(例えば保護対象物1がカメラであればレンズ)の面積と略同等であって、第1実施形態の開口部12よりも相対的に小さい。
【0024】
本実施形態では、開口部22を可及的小さくするとともに、保護対象物1を後方側にずらして配置することで、水滴飛散が懸念される環境下において、保護対象物1に水滴が付着するのを防ぐことができる。
【0025】
第3実施形態を
図6および
図7に示す。第3実施形態のエアパージ装置30は、ケース本体31を備え、前方壁部312に開口部32が形成され、後方壁部213にエア供給部33が設けられている。
【0026】
第3実施形態では、第2実施形態と同様、水滴の付着を回避すべく、前方壁部312から後方にずらして配置されている。また、本実施形態のケース本体31には、開口部32から内側に延びる筒状の開口カバー部35が形成されている。本実施形態では、開口カバー部35は、開口部32の全周に設けられているが、エアパージ装置30の設置環境に応じ、必ずしも全周に設けられていなくてもよく、形状も筒状に限らない。開口カバー部35を設けることで、保護対象物1を、より水滴から保護することができる。
【0027】
本実施形態では、開口部12が設けられている壁面である前方壁部312には、開口部32から保護対象物1側に延びる開口カバー部35が形成されている。これにより、水滴飛散が懸念される環境においても、保護対象物1を適切に保護することができる。また、第2実施形態および第3実施形態においても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0028】
(第4実施形態、第5実施形態)
第4実施形態を
図8および
図9に示す。第4実施形態および第5実施形態では、保護対象物2は、例えば光電センサ等、比較的小さな機器である。第4実施形態のエアパージ装置40は、ケース本体41を備え、前方壁部412に開口部42が形成され、後方壁部413にエア供給部43が設けられている。本実施形態の開口部42は、光電センサの光が通過可能な程度の大きさ(例えば直径5mm程度)と、上記実施形態より相対的に小さく形成されている。
【0029】
第5実施形態を
図10および
図11に示す。第5実施形態のエアパージ装置50は、ケース本体51を備え、前方壁部512に開口部52が形成され、後方壁部513にエア供給部53が設けられている。本実施形態では、保護対象物2と前方壁部412との間に保護壁55が設けられている。保護壁55には、孔部56が形成されている。孔部56は、光電センサの光軸、および、開口部52と同軸に設けられている。保護壁55を設けることで、保護対象物2にミストが付着するのをより抑制することができる。
【0030】
本実施形態では、開口部52が設けられている壁面である前方壁部512と保護対象物2との間には、開口部52を保護対象物2側に投影した箇所に孔部56が形成される保護壁55が設けられている。保護壁55を設けることで、ミストや水滴からより適切に保護対象物2を保護することができる。また、第4実施形態および第5実施形態においても、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0031】
(第6実施形態)
第6実施形態を
図12および
図13に示す。なお、
図12は第1実施形態の
図2に対応する図であり、
図13は
図3に対応する図である。本実施形態のエアパージ装置60は、ケース本体11、および、遮蔽壁65を備える。ここでは、第1実施形態のケース本体11の例を記載しているが、ケース本体や保護対象物は、第2実施形態~第5実施形態のものとしてもよい。
【0032】
上記実施形態では、保護対象物1自身を遮蔽物として外向きの層流を形成していた。これに対し本実施形態では、保護対象物1とは別にケース本体11の内部に遮蔽壁65を設けている。遮蔽壁65は、例えば金属板等で形成されており、エア供給部13と対向する位置に配置される。
【0033】
遮蔽壁65は、エア供給部13から供給されるエアに対し、外向きの層流を形成可能な任意の位置に配置される。
図12の紙面上下方向を幅方向とし、ケース本体11の内部空間の幅Wとする。例えば、遮蔽壁65の幅を(2/3)Wに形成し、幅方向における中心に配置すると、遮蔽壁65の両側に(1/6)Wずつ、外向きの層流を形成するエア流路を確保できる。
【0034】
また、
図13の紙面左右方向を奥行方向、紙面上下方向を高さ方向とし、ケース本体11の内部空間の奥行きD、高さHとする。遮蔽壁65は、ケース本体11の後方壁部113の内壁から、エア供給部13を閉塞しない程度(例えば(1/6)D)、離間して設けられる。また、例えば、遮蔽壁65の高さを(2/3)H程度とすることで、遮蔽壁65の上側にも(1/3)H程度のエア流路を確保可能である。
【0035】
保護対象物1の形状や大きさによっては、自身を遮蔽物とすることでの外向きの層流を形成できない場合がある。本実施形態では、遮蔽壁65を保護対象物1とは別途に設けているので、保護対象物1の形状等によらず、外向きの層流を形成することができる。また、保護対象物1自身を遮蔽物とする場合と比較し、設計自由度が高いため、ケース本体11の形状等に応じて遮蔽壁の形状や設置位置を設計することで、エア供給部13から供給されるエアの流れを最適化することができる。これにより、パージされるエアの圧力や流量を最適最小化可能であり、省エネに寄与する。
【0036】
本実施形態では、遮蔽物は、エア供給部13と保護対象物1との間に設けられる遮蔽壁65である。これにより、保護対象物1の大きさや形状によらず、外向きの層流を適切に形成することができ、開口部12からのミストの侵入を抑制することができる。また、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0037】
(他の実施形態)
上記実施形態では、エア供給部は、後方壁部の中央に設けられている。他の実施形態では、エア供給部は、遮蔽物の位置や形状に応じ、外向きの層流を形成可能な位置であれば、後方壁部の中央からずれた位置に形成してもよい。また、保護対象物や遮蔽壁は、パージエアの外向きの層流を形成可能な位置、形状に設ければよい。また、遮蔽壁が設けられる場合、保護対象物は、開口部からのミストや水滴から付着を回避可能な任意の位置に配置すればよい。さらにまた、開口カバー部や保護壁の位置や形状、数等は、保護対象機器による検出等を阻害せず、水滴等から保護対象機器を保護可能なように設計可能である。以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0038】
1、2・・・保護対象物
10、20、30、40、50、60・・・エアパージ装置
11、21、31、41、51・・・ケース本体
12、22、32、42、52・・・開口部
13、23、33、43、53・・・エア供給部
12、22、32、42、52・・・開口部
35・・・開口カバー部
55・・・保護壁 56・・・孔部
65・・・遮蔽壁