(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129233
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/471 20060101AFI20240919BHJP
A61F 13/532 20060101ALI20240919BHJP
A61F 13/56 20060101ALI20240919BHJP
A61F 13/535 20060101ALI20240919BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20240919BHJP
A61F 13/533 20060101ALI20240919BHJP
A61F 13/536 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
A61F13/471
A61F13/532 200
A61F13/56 110
A61F13/535 200
A61F13/53 200
A61F13/533
A61F13/536
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038298
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角田 亜梨加
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA14
3B200BB11
3B200DB05
3B200DB11
3B200DE03
(57)【要約】
【課題】主に、比較的単純な平面形状でありながら、男性用下着の種類を選ばずに使用でき、男性用下着の腹側部分から股下部分に回り込むように装着されることで、尿を受け易くした吸収性物品を提供する。
【解決手段】裏面シート3と吸収体4と表面シート5とを有する吸収性物品1に関する。裏面シート3は、腹側部22および股下部24を長手方向25に連ねた長さLを有する。裏面シート3または吸収体4は、腹側部22に非肌面側6へ凹むポケット部26を有する。吸収体4は、股下部24に幅縮小部27を有する。裏面シート3は、股下部24の両側に幅縮小部27を外側から挟むようにズレ止め部29を有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不透液性の裏面シートと、吸水性の吸収体と、透液性の表面シートとを、非肌面側から肌面側へ順に備えて、男性用下着の内側に装着される吸収性物品であって、
前記裏面シートは、前記男性用下着の腹側部分に設置される腹側部、および、前記男性用下着の股下部分に設置される股下部を長手方向に連ねた長さを有すると共に、
前記吸収体は、前記裏面シートの面内に、前記裏面シートの前記長手方向に沿って延設されており、
前記裏面シートまたは前記吸収体は、前記腹側部における、着用者の排尿口が当接する部分の周辺に、前記非肌面側へ凹むポケット部を有し、
前記吸収体は、前記股下部に、前記腹側部とは反対側へ向かって幅が狭くなる幅縮小部を有し、
前記裏面シートは、前記股下部の幅方向の両側における、前記吸収体の前記幅縮小部を外側から挟む位置に、ズレ止め部を有していることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
請求項1に記載の吸収性物品であって、
前記腹側部は、製品折り位置となる前記幅方向の折り目部を有し、
前記ポケット部は、前記折り目部に沿って形成される凹みの部分に形成されることを特徴とする吸収性物品。
【請求項3】
請求項2に記載の吸収性物品であって、
前記ポケット部は、幅範囲を規定する幅規定部、および、長さ範囲を規定する長さ規定部の少なくとも一方を有していることを特徴とする吸収性物品。
【請求項4】
請求項3に記載の吸収性物品であって、
前記ポケット部は、前記吸収体に形成したスリット部またはエンボス部によって形成されることを特徴とする吸収性物品。
【請求項5】
請求項3に記載の吸収性物品であって、
前記ポケット部は、前記裏面シートに設置した弾性部材、または、前記裏面シートに設けた剛性差部によって形成されることを特徴とする吸収性物品。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記表面シートの前記肌面側に、前記長手方向に延びる左右一対の立体ギャザーを有し、
前記ポケット部は、左右一対の前記立体ギャザーの先端部間に設けられることを特徴とする吸収性物品。
【請求項7】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記裏面シートまたは前記吸収体の前記幅縮小部は、前記股下部の幅中央に、前記長手方向に延びる谷折り誘導線部を有していることを特徴とする吸収性物品。
【請求項8】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の吸収性物品であって、
前記吸収体と前記表面シートとの間には、少なくとも前記ポケット部の位置にSAPシートが設置されていることを特徴とする吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
男性用下着の内側に装着して使用する吸収性物品が存在している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の吸収性物品は、男性用下着の前面(腹側の面)に対して、縦向きに設置するものとなっており、正面から見て、下辺の幅中央部に切欠部を有する二股形状を有している。そして、この吸収性物品は、下辺の切欠部を、トランクスの股下部分の山形になっている部分に嵌め合わせて設置するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-148439号公報(特許第6713788号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載された吸収性物品は、トランクス専用品となっており、下辺の幅中央部に切欠部を有する二股形状になっているため、平面形状が複雑であった。
【0006】
また、トランクスは、着用者との密着性が低い男性用下着である。そのため、トランクスのほぼ前面のみに縦向きに設置される吸収性物品は、着用者の体から離れ易かった。そのため、吸収性物品は、着用者の尿をうまく受けられないおそれがあった。
【0007】
そこで、本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に対して、本発明は、
不透液性の裏面シートと、吸水性の吸収体と、透液性の表面シートとを、非肌面側から肌面側へ順に備えて、男性用下着の内側に装着される吸収性物品であって、
裏面シートは、男性用下着の腹側部分に設置される腹側部、および、男性用下着の股下部分に設置される股下部を長手方向に連ねた長さを有すると共に、
吸収体は、裏面シートの面内に、裏面シートの長手方向に沿って延設されており、
裏面シートまたは吸収体は、腹側部における、着用者の排尿口が当接する部分の周辺に、非肌面側へ凹むポケット部を有し、
吸収体は、股下部に、腹側部とは反対側へ向かって幅が狭くなる幅縮小部を有し、
裏面シートは、股下部の幅方向の両側における、吸収体の幅縮小部を外側から挟む位置に、ズレ止め部を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上記構成によって、吸収性物品は、比較的単純な平面形状でありながらも、男性用下着の種類を選ばずに使用することができ、男性用下着の腹側部分から股下部分に回り込むように装着されることで、尿を受け易いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)は実施例にかかる吸収性物品を拡げた状態の平面図、(b)は(a)の腹側部の位置の幅方向に沿った縦断面図である。
【
図2】
図1の吸収性物品を男性用下着に装着した状態を示す斜視図である。
【
図3】
図2の股下部に対する、吸収性物品の装着状態を示す縦断面図である。
【
図4】吸収体とポケット部との寸法関係を示す平面図である。
【
図5】(a)は吸収性物品の製品折り位置を示す平面図、(b)は吸収性物品を(a)の製品折り位置で折った状態を示す斜視図である。
【
図6】吸収体にポケット部を形成した場合の吸収性物品の層構造を示す断面図であり、(a)は単層の吸収体にスリットを設けた場合、(b)は二層のスリットの吸収体にスリットを設けた場合、(c)は単層の吸収体にエンボスを設けた場合である。
【
図7】裏面シートに弾性部材でポケット部を形成した場合を示す図であり、(a)は平面図、(b)は吸収性物品の層構造を示す断面図である。
【
図8】裏面シートに剛性差部でポケット部を形成した場合の、吸収性物品の層構造を示す断面図である。
【
図9】(a)は吸収性物品に設けた立体ギャザーを示す平面図、(b)は(a)の腹側部の位置の幅方向に沿った縦断面図である。
【
図10】(a)は立体ギャザーが一重の場合の、着用者の股間部の状態を示す図、(b)は立体ギャザーが二重の場合の、着用者の股間部の状態を示す図である。
【
図11】立体ギャザーでポケット部を形成した状態を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)の腹側部の位置の幅方向に沿った縦断面図である。
【
図12】谷折り誘導線部を有する吸収性物品の平面図である。
【
図13】SAPシートをポケット部の位置に設けた吸収性物品の層構造を示す断面図である。
【
図14】比較例にかかる吸収性物品の平面図である。
【
図15】ブリーフなどの男性用下着を示す図であり、(a)は正面図、(b)は股下部分を側方から見た断面図である。
【
図16】トランクスなどの男性用下着を示す図であり、(a)は正面図、(b)は股下部分を側方から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施の形態は、
図1~
図16を用いて詳細に説明される。
【実施例0012】
<構成>この実施例の構成は、以下の通りである。
【0013】
図1は、この実施例の吸収性物品1を示す図であり、(a)は吸収性物品1を拡げた状態の平面図、(b)は吸収性物品1の縦断面図である。
【0014】
この吸収性物品1は、
図2(
図3)に示すように、男性用下着2の内側に装着して使用する尿取りパッドである。吸収性物品1は、不透液性の裏面シート3と、吸水性の吸収体4と、透液性の表面シート5とを、非肌面側6から肌面側7へ順に重ねた構成を有している(
図1(b))。
【0015】
ここで、吸収性物品1は、例えば、夜間や日中などに、長時間トイレに行けずに不安を感じるような場合などに使用される。吸収性物品1は、男性用下着2に対して着脱交換可能に取付けられる。
【0016】
図2に示すように、男性用下着2は、衣服の内側に着用する衣類であり、体に直接触れる肌着である。この場合、男性用下着2は、男性の下半身に着用するものとなる。
【0017】
そして、直立姿勢の男性を基準として、直交する三方向を前後方向X、左右方向Y、上下方向Zとした場合、男性用下着2は、上部に胴回り開口8を有し、下部に左右の脚回り開口9を有する、ほぼ分岐筒状をしている。胴回り開口8には、胴回り開口8を絞って着用者Mとしての男性の胴体(腰部)に密着させるための糸ゴムなどの弾性部材8aが、周方向に取付けられている。男性用下着2は、各種のものが有り、それらの男性用下着2については、後述する。
【0018】
図1(b)に示すように、裏面シート3は、吸収性物品1の非肌面側6に設置されるシート状の部材であり、吸収性物品1の外面を形成する。裏面シート3は、尿などの体液(以下、水分または液体という)が外部へ染み出したり漏れ出したりしないように、シート状をした不透液性の素材によって形成される。
【0019】
裏面シート3に使われる不透液性のシートは、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどの少なくとも遮水性を有するシート材が使われる。なお、不透液性のシートは、ムレ防止の観点からは透湿性を有することが好ましい。このような遮水性と透湿性とを具備するシート材としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シート材が好適に用いられる。その他にも、不透液性を有するフィルム層と、通気性を有する不織布層と、からなるラミ不織布を用いても良い。ラミ不織布とは、例えばポリエチレンシート等に不織布を積層した、ラミネート不織布と呼ばれる不織布のことであり、不透液性と通気性を併せ持つ不織布である。
【0020】
吸収体4は、裏面シート3と表面シート5との間に挟まれる部材であり、吸収性物品1の主要部を構成する。吸収体4は、水分を吸収して閉じ込められるように、吸水性(または吸液性)の素材を面状にして形成される。
【0021】
吸収体4に使われる吸収体4は、例えば、綿やパルプなどの吸収性素材や、繊維或いはフィルム等のシート状基材に高吸水性樹脂(SAP;Super Absorbent Polymer)を絡めて分布させたものが使用される。吸収体4は、上述したSAPが、接触した液体を吸着して膨張することにより、水分を保持する。
【0022】
高吸水性樹脂としては、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸及びその塩類、アクリル酸塩重合体架橋物、澱粉-アクリル酸グラフト共重合体、澱粉-アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物、ポリオキシエチレン架橋物、カルボキシメチルセルロース架橋物、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド等の水膨欄性ポリマーを部分架橋したもの、あるいはイソブチレンとマレイン酸との共重合体等が好適に用いられる。
【0023】
なお、吸収体4は、形状保持等のために、例えば、クレープ紙や透液性の不織布や孔開きシートなどの透液性のシート材によって囲繞することが望ましい。
【0024】
表面シート5は、吸収性物品1の肌面側7に設置されるシート状の部材であり、吸収性物品1の内面を形成する。表面シート5は、水分を透過して吸収体4へと導かせるように、シート状をした透液性の素材によって形成される。
【0025】
表面シート5に使われる透液性のシートとしては、例えば、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート等の糸を平織り等したネット状のシート素材、多数の透孔を形成したフィルムシート材、ポリエチレンやポリプロピレンなどのフィルムシート材、透液性を有する織布、不織布が適し、特に不織布が適する。不織布としては、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラなどの再生繊維、綿等の天然繊維を繊維素材として、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって加工したものを用い得る。更に、表面シート5は、多数の透孔を形成することができ、このようにした場合には、水分がより速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。
【0026】
裏面シート3と表面シート5とは、吸収体4を間に挟んだ状態で、周縁部を接合される。裏面シート3と表面シート5とは、接着剤による接着、熱や超音波や高周波による融着または、これらの組み合わせなどによって接合される。接着剤よる接着には、例えば、ホットメルトなどが使われる。裏面シート3と表面シート5とは、周縁部をそのまま重ね合わせた状態で接合しても良いし、また、
図1(b)に示すように、周縁部を内側へ折り返して、裏面シート3の内側に表面シート5の周縁部を包み込んだ状態にして接合しても良い。
【0027】
非肌面側6は、着用者Mの肌に接しない側であり、吸収性物品1の外側となる。非肌面側6は、装着時に男性用下着2の内面に接する。肌面側7は、着用者Mの肌に接する側であり、吸収性物品1の内側となる。
【0028】
吸収性物品1は、裏面シート3、吸収体4、表面シート5が、この順番で層状に重ねられていれば良く、例えば、全体の非肌面側6や肌面側7に別の部材を設けたり、吸収性物品1の層間に別の部材を介在させたりしても良い。
【0029】
上記のような基本的な構成に対し、この実施例では、以下のような構成を備えても良い。
【0030】
(1)
図1に示すように、吸収性物品1では、裏面シート3は、男性用下着2の腹側部分21に設置される腹側部22、および、男性用下着2の股下部分23に設置される股下部24を長手方向25に連ねた長さLを有している。吸収体4は、裏面シート3の面内に、裏面シート3の長手方向25に沿って延設される。
そして、裏面シート3または吸収体4は、腹側部22における、着用者M(男性)の排尿口が当接する部分の周辺に、非肌面側6へ凹むポケット部26を有している。
更に、吸収体4は、股下部24に、腹側部分21とは反対側へ向かって幅W1が狭くなる幅縮小部27を有している。裏面シート3は、股下部24の幅方向28の両側における、吸収体4の幅縮小部27を外側から挟む位置に、ズレ止め部29を有している。
【0031】
ここで、吸収性物品1は、平面状になるよう拡げたときに(または展開したときに)、均一な幅Wを有する細長いほぼ長方形状のものとされている。吸収性物品1の幅Wは、吸収性物品1の短辺の寸法である。吸収性物品1においては、裏面シート3および表面シート5は、吸収性物品1とほぼ同じ幅Wおよびほぼ同じ平面形状に仕上げられる。
【0032】
吸収性物品1または裏面シート3の幅Wは、男性用下着2に装着したときに左右方向Yに向けられる。よって、吸収性物品1および裏面シート3の幅方向28は、着用者Mの左右方向Yに相当する。
【0033】
男性用下着2の腹側部分21は、着用状態で、男性用下着2の前側に位置して、主に着用者Mの下腹部m1(
図10)を覆うほぼ縦向きの部分である。
【0034】
腹側部22は、男性用下着2の腹側部分21に装着される、吸収性物品1の前側の部分である。腹側部22は、男性用下着2の腹側部分21に対し、側方から見てほぼ縦向きに装着される。
【0035】
男性用下着2の股下部分23は、着用状態で、男性用下着2の下側に位置して、主に着用者Mの股間部m2(
図10)を下側から覆う部分である。
【0036】
なお、男性用下着2は、腹側部分21および股下部分23の他に、着用状態で、男性用下着2の後側に位置して着用者Mの臀部m3(
図10)を覆うほぼ縦向きの背側部分31がある。腹側部分21および背側部分31は、同じ側の両側部が互いに繋げられることで筒状の胴回り部となる。股下部分23は、胴回り部の下部を左右に分けて左右の脚回り開口9を形成する。
【0037】
図2(
図3)に示すように、股下部24は、男性用下着2の股下部分23に装着される、吸収性物品1の後側の部分である。股下部24は、男性用下着2の股下部分23に対し、側方から見てほぼ横向きに装着される。
【0038】
なお、吸収性物品1の股下部24は、男性用下着2の股下部分23の前後方向Xの全域に亘る長さとしても良い。吸収性物品1の股下部24は、少なくとも、股下部分23の前後方向Xの中間部に達するか、中間部を越えて後側へ延びる程度の長さに形成される。
【0039】
なお、吸収性物品1は、股下部24の後側に、更に男性用下着2の背側部分31に設置される背側部を有するものもあるが、この実施例の吸収性物品1は、背側部を有していない。
【0040】
長手方向25は、長方形状をした吸収性物品1の長辺が延びる方向である。長手方向25は、幅方向28と直交する。長手方向25は、男性用下着2に吸収性物品1を装着したときに、着用者Mの前後方向Xに向けられる。よって、吸収性物品1の長手方向25は、着用者Mの前後方向Xに相当する。よって、腹側部22は吸収性物品1の前側、股下部24は吸収性物品1の後側になる。
【0041】
なお、吸収性物品1の厚さ方向33は、裏面シート3と、吸収体4と、表面シート5とが積み重ねられる方向であり、長手方向25および幅方向28と直交する。
【0042】
「長手方向25に連ねて」は、腹側部22と股下部24とが長手方向25に連続して設けられていることである。
【0043】
裏面シート3の長さLは、吸収性物品1における裏面シート3の長手方向25の寸法であり、吸収性物品1の長辺の寸法となる。吸収性物品1は、腹側部22から股下部24までの長さLとなる。よって、吸収性物品1は、背側部を有する既存のものよりも短くなる。
【0044】
裏面シート3は、吸収体4を面内に納めた状態で、表面シート5と接合できるように、少なくとも接合代の分だけ吸収体4よりも大きくするのが好ましい。これにより、裏面シート3は、前後の接合代の分だけ吸収体4よりも若干長く、左右の接合代の分だけ吸収体4よりも若干幅広くなる。同様に、表面シート5は、吸収体4よりも大きく、裏面シート3とほぼ同じかそれよりも小さくなる。
【0045】
具体的には、
図1に示すように、吸収体4は、長辺を25cm~40cm程度の長さL1にするのが好ましい(吸収性物品1の長さL>吸収体4の長さL1)。より好ましくは、吸収体4は、長辺をほぼ30cm程度の長さL1にする。
【0046】
ポケット部26は、着用者Mの男性器を収容保持するために、吸収性物品1の腹側部22に形成される非肌面側6への凹みである。ポケット部26は、着用者M(男性)の排尿口が当接する部分の周辺に、男性器に合わせた所要の大きさで形成される。ポケット部26は、
図4に示すように、吸収体4の腹側部22の側の端部(前端部)から股下部24の側の端部(後端部)までの長さL1の1/3程度となる範囲内の長さL2に形成するのが好ましい。
【0047】
「腹側部分21とは反対側」は、吸収体4の腹側部分21から股下部24へ向かう側であり、男性用下着2への装着状態で、長手方向25の後側となる。または、「腹側部分21とは反対側」は、男性用下着2の背側部分31へ向かう側である。
【0048】
幅縮小部27は、股下部24における吸収体4の幅W1が、長手方向25の後側へ向かうに従い、徐々に縮小して括れるように形成された部分である。これに対し、吸収体4は、腹側部22では、裏面シート3の幅Wよりも若干狭い均一の幅W2になっている(幅均一部34)。
【0049】
幅縮小部27は、吸収性物品1の幅中心線CLに関して左右対称な状態を保ちつつ、幅両側部の位置が、後端側へ進むに連れて幅中心線CLに向かって狭くなって行く。幅中心線CLは、吸収性物品1の幅方向28の中央の位置を通り、吸収性物品1の長手方向25に延びる線である。
【0050】
吸収体4の幅縮小部27は、幅両側部が直線的な傾斜を描くように幅W1が縮小されても良いが、幅両側部が曲線を描くように幅W1が縮小されても良い。この実施例では、幅縮小部27は、幅両側部が、着用者Mの脚部m4(
図10)の内側の形状にほぼ沿った曲線形状を描くように幅W1が縮小されている。
【0051】
なお、幅縮小部27は、その大部分が、背側へ向かって幅W1が縮小していれば良い。そして、幅縮小部27は、幅均一部34の幅W2よりも幅W1が広くならなければ良い。そのため、例えば、幅縮小部27の途中や端部(後端部)に、幅W1が一定となる部分(平行部)や、幅W1が若干広がる部分(幅拡張部)などが有っても、それが僅かであれば許容される。
【0052】
この実施例では、上記したように、幅縮小部27は、幅両側部を着用者Mの脚部m4の内側の形状にほぼ沿った曲線形状にしている。そのため、幅縮小部27は、最も幅が狭くなった部分(最小幅部27a)の後側に、僅かに幅が広がって行く部分(幅拡張部27b)を有している。これにより、吸収性物品1は、股下部24が、男性用下着2の股下部分23の前後方向Xの中間部を僅かに越えて後側まで延びる長さとされる。
【0053】
ズレ止め部29は、男性用下着2に対する吸収性物品1の位置ズレを防止する部分である。ズレ止め部29は、裏面シート3の非肌面側6の面に設けられ、男性用下着2に直接貼り付けられて男性用下着2の内面に固定されることで、位置ズレを止める。ズレ止め部29は、少なくとも、股下部24における、裏面シート3の幅方向28の両側の部位の、吸収体4の幅縮小部27がない部分(吸収体非設置部35)に設けられる。ズレ止め部29は、貼ったり剥がしたりの操作を繰り返して行えるような粘着性を有する素材によって形成される。ズレ止め部29は、例えば、ホットメルトなどの粘着剤で形成しても良い。ズレ止め部29には、保護用の剥離シート36が貼り付けられる。剥離シート36は、ズレ止め部29とほぼ同じ形状および大きさとしても良い。剥離シート36は、男性用下着2への吸収性物品1の装着時に、ズレ止め部29から剥がされる。
【0054】
なお、ズレ止め部29は、吸収体非設置部35の股下部24の位置にのみ部分的に設けても良いが、例えば、長手方向25の前側に延長して腹側部22まで連続させても良い。
【0055】
(2)上記において、吸収性物品1では、
図5(a)に示すように、腹側部22は、製品折り位置41となる幅方向28の折り目部42を有しても良い。ポケット部26は、折り目部42に沿って形成される凹み43の部分に形成されても良い。
【0056】
ここで、腹側部22は、吸収性物品1の前側に位置して、男性用下着2の腹側部分21にほぼ縦向きに設置される部分である。
【0057】
製品折り位置41は、吸収性物品1を、製品として取り扱い易い大きさおよび形状に整えるために、
図5(b)に示すように、長手方向25に例えば、三つ折りにして折り畳んだときの吸収性物品1を折り曲げる位置である。吸収性物品1は、非肌面側6の裏面シート3が外に出て、肌面側7の表面シート5が内部に隠れるように内折りの状態にして製品化される。これにより、吸収性物品1は、装着前に、肌面側7の表面シート5が安易に手で触られないように保護されて、衛生状態が保たれる。
【0058】
折り目部42は、製品折り位置41に形成される、吸収性物品1を折り曲げる線である。折り目部42は、裏面シート3、吸収体4、表面シート5の全てのほぼ同じ位置に形成される。折り目部42は、吸収性物品1に対し、幅方向28に延びるものが1本または2本程度形成される。吸収性物品1は、折り目部42が1本だと二つ折りにされ、折り目部42が2本だと三つ折りにされる。ポケット部26は、腹側部22の位置の折り目部42に形成される。
【0059】
凹み43は、吸収性物品1を折り目部42に沿って内折りにすることで、吸収性物品1を拡げたときに、吸収性物品1の肌面側7の面内に、幅方向28の全域に亘ってほぼ一定の形状で形成される。この凹み43は幅が広いため、ポケット部26は曖昧なものとなる。
【0060】
(3)上記において、吸収性物品1では、
図5に示すように、ポケット部26は、幅範囲W3を規定する幅規定部26a、および、長さ範囲L3を規定する長さ規定部26bの少なくとも一方を有しても良い。
【0061】
ここで、幅範囲W3は、腹側部22におけるポケット部26の幅方向28の形成範囲である。ポケット部26の幅範囲W3は、吸収性物品1の幅Wよりも狭くなるように規定するのが好ましい。幅範囲W3は、吸収性物品1の幅中心線CLを跨いで左右対称となるようにするのが好ましい。
【0062】
長さ範囲L3は、腹側部22におけるポケット部26の長手方向25の形成範囲である。ポケット部26の長さ範囲L3は、吸収性物品1の腹側部22よりも短くなるように規定するのが好ましい。長さ範囲L3は、折り目部42を前後に跨ぐように形成するのが好ましい。
【0063】
幅規定部26aおよび長さ規定部26bは、上記した折り目部42による幅全域に及ぶ凹み43を規定して、ポケット部26を最適化するためのものである。幅規定部26aおよび長さ規定部26bは、凹み43の位置に最適なポケット部26を形成するために設けられる。幅規定部26aおよび長さ規定部26bは、ポケット部26の内側と外側との境界の位置に形成される。幅規定部26aは、ポケット部26の幅方向28の位置を規定する。長さ規定部26bは、ポケット部26の長手方向25の位置を規定する。
【0064】
ポケット部26の内側と外側との境界は、例えば、ポケット部26の輪郭の少なくとも一部に沿って線や溝を設けることで形成できる。また、ポケット部26の内側と外側との境界は、例えば、ポケット部26の内側となる位置に、ポケット部26の内側部分と同じ形状および大きさの図形を設けることで形成できる。あるいは、ポケット部26の内側と外側との境界は、例えば、ポケット部26の外側となる位置に、ポケット部26の周囲の少なくとも一部を取り囲むような図形を設けることで形成できる。この実施例では、ポケット部26は、平面視ほぼ四角形状となるように規定している。この場合、ポケット部26の幅規定部26aは、ポケット部26の幅方向28の両側(図の左右)の位置に一対形成されても良い。一対の幅規定部26aは、一対の長さ規定部26bの間を結ぶように長手方向25に延ばされても良い。また、ポケット部26の長さ規定部26bは、ポケット部26の長手方向25の両側(図の上下)の位置に一対形成されても良い。一対の長さ規定部26bは、一対の幅規定部26aの間を結ぶように幅方向28に延ばされても良い。なお、ポケット部26の平面形状は、四角形状に限らないが、以下、四角形状として説明する。
【0065】
吸収性物品1に、上記した線や溝や図形を設けることで、ポケット部26の形成範囲が明確化される。また、上記した線や溝や図形を設けることによって、吸収性物品1は、線や溝や図形の縁部の位置で変形し易くなる。そのため、吸収性物品1を装着した男性用下着2を着用者Mが着用したときに、男性器が吸収性物品1を押すことで、線や溝や図形の縁部の位置で吸収性物品1が変形され、吸収性物品1に、ほぼ明確な形状でポケット部26が出現されるようになる。
【0066】
なお、幅規定部26aおよび長さ規定部26bは、上記した折り目部42による凹み43に追加して設けても良いし、折り目部42による凹み43を設けずに単独で設けても良い。凹み43は有る方が好ましいが、凹み43がなくても、幅規定部26aおよび長さ規定部26bは、ポケット部26を形成することが可能である。
【0067】
また、ポケット部26は、幅規定部26aと長さ規定部26bとの両方で規定しても良い。また、幅規定部26aを有することで、長さ範囲L3がほぼ自然に定まる場合や、反対に、長さ規定部26bを有することで、幅範囲W3がほぼ自然に定まる場合などには、ポケット部26は、幅規定部26aと長さ規定部26bとの一方で規定すれば良い。なお、幅規定部26aは、ポケット部26にとって長さ規定部26bよりも優先度が高い構成となる。よって、どちらか一方という場合には、ポケット部26は、幅規定部26aで規定するのが好ましい。
【0068】
例えば、上記した線や溝を、幅規定部26a、長さ規定部26bとして設ける場合、線や溝は、ポケット部26の輪郭に沿って形成するのが好ましい。なお、線や溝は、状況によっては、ポケット部26の輪郭から若干外れるように形成する場合もあり得る。
【0069】
例えば、ポケット部26の幅規定部26aを、線や溝にする場合、線や溝は、幅範囲W3とほぼ等しい幅方向28の間隔を有して、長手方向25に延びるように一対設ける。一対の線や溝は、吸収性物品1の幅中心線CLの両側に設けるようにする。これにより、一対の線や溝は、幅規定部26aとなり、一対の線や溝の間がポケット部26になる。同時に、一対の線や溝は、その長さと端部の位置を揃えることで、ポケット部26の長さ範囲L3も規定する。
【0070】
例えば、ポケット部26長さ規定部26bを、線や溝にする場合、線や溝は、長さ範囲L3とほぼ等しい長手方向25の間隔を有して、幅方向28に延びるように一対設ける。一対の線や溝は、折り目部42の前後の位置に設けるようにする。これにより、一対の線や溝は、長さ規定部26bとなり、一対の線や溝の間がポケット部26になる。同時に、一対の線や溝は、その長さと端部の位置を揃えることで、ポケット部26の幅範囲W3も規定する。
【0071】
なお、上記した幅規定部26aとなる一対の線や溝、または、長さ規定部26bとなる一対の線や溝は、それぞれ互いに平行に設けるのが好ましいが、状況によっては、平行に近い非平行の状態で設けても良い。また、上記した一対の線や溝は、その間に、補助的に、これらと同様の線や溝などを、ほぼ平行に単数または複数設けても良い。
【0072】
あるいは、幅規定部26a、長さ規定部26bを、上記した図形で設ける場合、図形は、例えば、ポケット部26の内側部分と同じ形状(例えば、四角形状)にして、ポケット部26の位置に設ける。これにより、図形は、周縁部が幅規定部26a、長さ規定部26bになると共に、ポケット部26を形成する。また、例えば、図形は、ポケット部26の内側に形成せずに、ポケット部26の外側に設けることができる。この場合、図形は、ポケット部26の周囲を外側から取り囲む枠状のものとしても良い。あるいは、図形は、ポケット部26の外側を、幅方向28の両側から挟む一対の縦枠状、または、長手方向25の両側から挟む一対の横枠状のものとしても良い。これらのいずれかにより、各図形は、ポケット部26との境界部分が幅規定部26a、長さ規定部26bの少なくとも一方を有すると共に、ポケット部26を形成する。
【0073】
より具体的には、ポケット部26、幅規定部26a、長さ規定部26bは、以下のようにする。
【0074】
(4)上記において、吸収性物品1では、
図6に示すように、ポケット部26は、吸収体4に形成したスリット部51(
図6(a)(b))、または、吸収体4に形成したエンボス部52(
図6(c))によって形成されても良い。
【0075】
ここで、スリット部51は、吸収体4に形成された溝状の部分である。スリット部51は、吸収体4の面の一部に積繊されない箇所を設けることで、吸収体4に部分的に形成される。スリット部51は、吸収体4を厚さ方向33に貫通した穴(貫通穴)でも非貫通の穴(非貫通穴)でも良い。
【0076】
例えば、
図6(a)は、単層の吸収体4に貫通穴を形成したスリット部51となっている。
図6(b)は、二層構造の吸収体4に非貫通穴を形成したスリット部51となっている。二層構造の吸収体4は、非肌面側6の下層4aと、肌面側7の上層4bとから成っている。下層4aは、溝を形成せずに、均一な厚みのままとなっている。上層4bは、厚さ方向33に貫通穴が形成されている。これらを重ねることで、二層の吸収体4のスリット部51は、全体として非貫通穴になっている。
【0077】
また、エンボス部52は、吸収体4に型押しすることなどによって形成される凹部である。エンボス部52は、非貫通穴となるように形成される(
図6(c))。
【0078】
吸収性物品1は、肌面側7に配置された表面シート5が男性器に押圧されて、スリット部51またはエンボス部52に押し込まれることで、肌面側7に凹んだポケット部26を形成するのが好ましい。そのために、スリット部51またはエンボス部52は、吸収体4の肌面側7が凹むように、吸収体4の肌面側7に形成するのが好ましい。
【0079】
この実施例では、スリット部51またはエンボス部52は、ポケット部26と同じ形状および大きさの図形となるように形成されている。この場合、スリット部51またはエンボス部52は、そのままポケット部26になり、周縁部が、幅規定部26a、長さ規定部26bとなる。
【0080】
なお、スリット部51またはエンボス部52は、ポケット部26の輪郭の少なくとも一部を形成する溝として設けても良い。
【0081】
例えば、吸収体4の幅中心線CLの両側に、長手方向25に沿って細長いスリット部51またはエンボス部52の溝を一対設けることで、ポケット部26の幅範囲W3を規定する幅規定部26aになる。同時に、一対のスリット部51またはエンボス部52は、その長さと端部の位置を揃えることで、長さ規定部26bにもなる。
【0082】
また、例えば、折り目部42の前後の位置に、幅方向28に沿って細長いスリット部51またはエンボス部52の溝を一対設けることで、ポケット部26の長さ範囲L3を規定する長さ規定部26bになる。同時に、一対のスリット部51またはエンボス部52は、その長さと端部の位置を揃えることで、幅規定部26aにもなる。
【0083】
(5)上記において、吸収性物品1では、ポケット部26は、
図7に示すように、裏面シート3に設置した弾性部材55、または、
図8に示すように、裏面シート3に設けた剛性差部56によって形成されても良い。
【0084】
ここで、
図7の弾性部材55は、例えば、裏面シート3を、二重のシート材3a,3bで形成して、二重のシート材3a,3bの間に設けるようにしても良い。弾性部材55は、例えば、糸ゴムなどのような線状のものを用いることができる。
【0085】
これにより、裏面シート3は、弾性部材55にほぼ沿って、線状の幅規定部26aおよび長さ規定部26bの少なくとも一方が形成される。
【0086】
更に、弾性部材55は、弾性変形が可能な範囲内で伸ばした状態にして裏面シート3に接合するのが好ましい。これにより、弾性部材55は、自然長に戻ろうとして、裏面シート3の弾性部材55が接合された部分(接合部分)を、伸びとは反対の方向に、局所的に縮める。そのため、裏面シート3は、弾性部材55の接合部分およびその周辺が、弾性部材55の収縮力によって変形され面外(非肌面側6など)へ突出し易くなる。これにより、弾性部材55は、より立体的なポケット部26を形成することが可能である。
【0087】
なお、弾性部材55が縮む際には、裏面シート3は、周辺部分を一緒に変形させるので、ポケット部26は、変形した周辺部分をも含んだ形状になる。そのため、弾性部材55は、周辺部分の変形を考慮して、ポケット部26の形成範囲から若干ズラして設けても良い。例えば、
図7(a)では、弾性部材55が収縮したときに丁度良い大きさのポケット部26が形成されるように、弾性部材55は、(最適な形状の)ポケット部26と比べて、幅が若干狭くなり、長さが若干長くなるように設置されている。なお、裏面シート3に対する弾性部材55の設置の仕方は、これに限るものではない。
【0088】
図8の剛性差部56は、裏面シート3に剛性の差を付ける部分である。剛性差部56は、例えば、上記したズレ止め部29と同様の粘着剤の層などで形成することができる。剛性差部56は、例えば、ホットメルトなどの粘着剤で形成しても良い。剛性差部56には、保護用の剥離シート57が貼り付けられる。剥離シート57は、吸収性物品1の男性用下着2への装着時に剥がされる。剛性差部56の粘着剤の層は、男性用下着2の前側の腹側部分21に貼り付けられることで、腹側部22のズレ止め部として機能する。
【0089】
剛性差部56となる粘着剤の層は、ポケット部26の形成領域の外側に、上記した図形として設けられる。
【0090】
即ち、剛性差部56は、ポケット部26の幅方向28の両側(左右)に、ポケット部26を前後に越えて長手方向25に延びるように一対設けても良い。また、剛性差部56は、ポケット部26の長手方向25の両側(前後)に、ポケット部26を左右に超えて幅方向28に延びるように一対設けても良い。あるいは、剛性差部56は、ポケット部26の外側を取り囲むように枠状に設けても良い。これらの場合、ポケット部26の内側の部分には、粘着剤の層は設けられない。
【0091】
これらにより、裏面シート3は、粘着剤の層を形成した部分の剛性が、粘着剤の層を形成していない部分よりも高くなる。そのため、裏面シート3は、境界部分が幅規定部26a、長さ規定部26bとなり、境界部分で面外に変形され易くなってポケット部26を形成する。
【0092】
なお、剛性差部56は、ポケット部26の境界部分に線状に設けても良いし、ポケット部26の内側全体に設けても良い。剛性差部56は、ポケット部26の幅方向28の両側から股下部24まで長手方向25に延ばしてズレ止め部29と連続させても良い。
【0093】
(6)上記において、吸収性物品1では、
図9、
図10に示すように、表面シート5の肌面側7に、長手方向25に延びる左右一対の立体ギャザー61,62を有しても良い。
更に、
図11に示すように、ポケット部26は、左右一対の立体ギャザー61,62の先端部63の間に設けられても良い。
【0094】
ここで、立体ギャザー61,62は、吸収性物品1に設けられた横モレ防止部材である。立体ギャザー61,62は、吸収性物品1を拡げたときに、
図10に示すように、肌面側7へ立ち上がって、主に、着用者Mの脚部m4の内側などに先端部63が線接触し、着用者Mとの隙間をなくすことで漏れを防止する。
【0095】
立体ギャザー61,62は、表面シート5とほぼ同様の素材などでできたギャザーシート64と、上記弾性部材55と同様の弾性部材65とを有している。例えば、立体ギャザー61は、液不透過性のギャザーシート64で形成され、立体ギャザー62は、親水性のギャザーシート64で形成される。立体ギャザー61,62は、ギャザーシート64の先端部63に、弾性部材65を接合して形成される。ギャザーシート64は、例えば、長手方向25に延びる帯状のものとされる。立体ギャザー61,62を構成するギャザーシート64は、例えば、前端縁部61a,62aを吸収性物品1の前端縁部に接合され、後端縁部61b,62bを吸収性物品1の後端縁部に接合され、外側縁部61c,62cを吸収性物品1に接合される。そして、吸収性物品1に接合されない内側縁部がギャザーシート64の先端部63となる。
【0096】
弾性部材65は、(ギャザーシート64の先端部における)少なくとも立体ギャザー61,62を立ち上げる部分の周辺に設けられる。
【0097】
立体ギャザー61,62は、吸収性物品1を折り目部42で折り畳んだときに、表面シート5に沿って寝た状態となるように、吸収性物品1の内側に折り込まれる。この際、立体ギャザー61,62は、吸収性物品1を拡げたときに立ち上がり得るように折り曲げられる。更に、弾性部材65は、吸収性物品1を折り畳んだときに、ほぼ自然長または僅かに伸びた状態となり、吸収性物品1を拡げたときに引っ張られて伸ばされるように立体ギャザー61,62に設置される。
【0098】
これにより、吸収性物品1を拡げることで、立体ギャザー61,62は、それ自体が立ち上がろうとすると共に、弾性部材65に引っ張られて立ち上げられる。そのため、柔軟な素材でできた立体ギャザー61,62は、弾性部材65の弾性力によって立ち上がった状態を保持される。このとき、立体ギャザー61,62の先端部63は、接合した弾性部材65の弾性力により、着用者Mの体型に合わせて変形されると共に、着用者Mの脚部m4の内側に密着する。
【0099】
立体ギャザー61,62は、例えば、
図10(a)に示すように、吸収性物品1の幅方向28の両側部の近傍に一対のみ設けても良い(立体ギャザー61)。
【0100】
また、例えば、
図10(b)に示すように、上記した一対の立体ギャザー61の内側に、更に別の一対の立体ギャザー62を設けて、立体ギャザー61,62を二重に設けても良い。立体ギャザー61,62の二重化によって、着用者Mの脚部m4との密着性やシール性が高まると共に、内側の立体ギャザー62が着用者Mの股間部m2の近くに位置するので、より確実に横モレを防止できる。
【0101】
図9、
図10のように、立体ギャザー61,62は、単に着用者Mの脚部m4の内側に密着するものとして設けても良い。これに対し、
図11に示すように、立体ギャザー61,62は、ポケット部26を形成することができる。立体ギャザー61,62は、一重の場合には、立体ギャザー61に対して、ポケット部26を設ける。立体ギャザー61,62は、二重の場合は、二重目となる内側の立体ギャザー62に対して、ポケット部26を設ける。これにより、吸収性物品1は、表面シート5の肌面側7に、立体ギャザー61,62によって、ポケット部26が直接形成される。なお、
図11では、立体ギャザー61,62を一重にした場合となっている。
【0102】
具体的には、立体ギャザー61,62(図では立体ギャザー61)でポケット部26を形成する場合、立体ギャザー61,62は、少なくとも腹側部22を、先端部63同士が互いに接する幅にする。そして、立体ギャザー61,62は、ポケット部26の位置で、先端部63同士を接合せずに互いに分離状態にする(分離部66)。そして、立体ギャザー61,62は、分離部66の少なくとも長手方向25の両側で、先端部63同士が互いに接合されるようにする(接合部67)。更に、立体ギャザー61,62は、少なくとも分離部66の周辺の先端部63に、弾性部材65を伸ばした状態で設ける。これにより、立体ギャザー61,62は、吸収性物品1を拡げたときに、分離部66の周辺が立ち上がると共に、分離部66の先端部63の間が開くことで腹側部22にポケット部26を形成する。
【0103】
なお、股下部24については、ポケット部26は設ける必要がないので、立体ギャザー61,62は、先端部63同士を、接合部67として立ち上がらないようにしても良い。しかし、立体ギャザー61,62は、股下部24で立ち上がらせても良い。そのため、股下部24については、立体ギャザー61,62は、先端部63同士を、全域に亘って分離部66にする。あるいは、立体ギャザー61,62は、先端部63同士が接しないように股下部24の幅を狭くして、離隔部68にしても良い。離隔部68は、着用者Mの脚部m4に対し、股間部m2に近い位置に先端部63が密着するように、先端部63の位置を設定、調整するのが好ましい。これにより、立体ギャザー61,62は、腹側部22にポケット部26を有し、股下部24は先端部63が着用者Mの脚部m4の内側に密着するものとなる。
【0104】
なお、上記した(2)~(6)の構成は、適宜組み合わせることができる。特に、好適なポケット部26は、上記(2)に(3)~(6)のいずれか1つ以上の構成を組み合わせることで得られるようになる。
【0105】
(7)上記において、吸収性物品1では、
図12に示すように、裏面シート3または吸収体4の幅縮小部27は、股下部24の幅中央に、長手方向25に延びる谷折り誘導線部71を有しても良い。
【0106】
ここで、幅中央は、吸収性物品1の幅中心線CLの上の位置である。
【0107】
谷折り誘導線部71は、吸収性物品1の股下部24を、
図3に示すように、幅中央が高くなり、幅方向28の両側部が低くなる山形に、正確に折り曲げられるように補助する屈曲予定線である。谷折り誘導線部71は、吸収性物品1の非肌面側6に形成されて、非肌面側6を谷折りにすることで、吸収性物品1は、股下部24が、長手方向25の谷折り誘導線部71に沿って山形に折り曲げられる。谷折り誘導線部71は、少なくとも、股下部24の、吸収体4を幅縮小部27とした部分の範囲内に形成される。
【0108】
谷折り誘導線部71は、例えば、上記ポケット部26の場合と同様に、吸収体4にスリット部51またはエンボス部52を設けて形成しても良い。また、谷折り誘導線部71は、例えば、上記ポケット部26の場合と同様に、裏面シート3に弾性部材55または剛性差部56を設けて形成しても良い。また、谷折り誘導線部71は、これらのスリット部51、エンボス部52、は、弾性部材55、剛性差部56を、適宜組み合わせて設けても良い。
【0109】
なお、谷折り誘導線部71は、上記(1)~(6)の構成のいずれにも組み合わせることができる。また、例えば、谷折り誘導線部71は、ポケット部26のスリット部51、エンボス部52、弾性部材55、剛性差部56などと長手方向25に連続するように形成しても良い。
【0110】
(8)上記において、吸収性物品1では、
図13に示すように、吸収体4と表面シート5との間には、少なくともポケット部26の位置にSAPシート75が設置されても良い。
【0111】
ここで、SAPシート75は、上記したSAPを透液性のシートに分散させて形成した吸水性の高いシートである。SAPシート75の設置範囲は、少なくとも、ポケット部26と同じかそれよりも一回り程度以上大きくするのが好ましい。
【0112】
また、例えば、SAPシート75は、吸収性物品1に対し、腹側部22のポケット部26の位置にのみ設けても良いし、ポケット部26を横切るように、腹側部22の幅方向28の全域に亘って形成しても良い。
【0113】
なお、SAPシート75は、上記(1)~(7)の構成のいずれにも組み合わせることができる。
【0114】
<作用>この実施例の作用は、以下の通りである。
【0115】
男性用下着2の着用者Mは、例えば、長時間トイレに行けない場合などに、男性用下着2の内側に吸収性物品1を装着することができる。
【0116】
吸収性物品1は、着用者Mが排出した尿などの液体を透液性の表面シート5を通して吸水性の吸収体4で吸収する。不透液性の裏面シート3は、吸収体4で吸収した液体を外部へ逃がさないように保持する。
【0117】
吸収性物品1は、男性用下着2の腹側部分21に腹側部22を縦向きに設置し、男性用下着2の股下部分23に股下部24を横向きに設置するようにして、男性用下着2の内側に装着される。
【0118】
図14は、比較例となる既存の吸収性物品81の平面図である。この吸収性物品81は、男性用下着2の腹側部分21と股下部分23と背側部分31とに亘る長さL4を有している。また、吸収体82は、腹側部82aおよび背側部82cが均一幅になっており、股下部82bの両側が、着用者Mの脚部m4の内側の形状に合わせてくびれた形状になっている。また、ズレ止め部83は、吸収体4のある位置に、吸収体4の形状に合わせた配置となるように設けられている。
【0119】
一方、男性用下着2は、
図15のようなブリーフ型やボクサーパンツ型のもの(以下、ブリーフ2aと言う)や、
図16のようなトランクス型のもの(以下、トランクス2bと言う)がある。
【0120】
ブリーフ2aなどの男性用下着2は、着用者Mの胴体の下部にほぼ隙間なくフィットするような大きさおよび形状とされている。また、脚回り開口9は絞られて着用者Mの脚部m4に密着する。股下部分23は、前後方向Xに連続して存在するように平らな領域85が設けられている。そのため、
図14の吸収性物品81は、ブリーフ2a型の男性用下着2の股下部分23の平らな領域85の上に安定して装着することが可能である。また、ズレ止め部83も平らな領域85に自然に貼り付けられる。
【0121】
これに対し、トランクス2bなどの男性用下着2は、着用者Mに対して隙間を有する大きさおよび形状とされている。また、脚回り開口9は、着用者Mの脚部m4よりも一回り以上大きな脚回り筒部86の下端部に形成されており、絞られることがないため着用者Mの脚部m4に密着しない。そして、左右の脚回り筒部86が合流する股下部分23は、ブリーフ2aのように平らな領域85をほぼ有しておらず、正面および側面から見て山形に尖った部分87となっている。そのため、
図14の吸収性物品81は、トランクス型の男性用下着2の山形に尖った部分87に対して、うまく乗るように設置することができず、ズレ止め部83も貼り付ける相手先がないため、安定して装着することができなかった。
【0122】
よって、トランクス2bの着用者Mは、吸収性物品81を使用する場合には、男性用下着2をブリーフ2aなどに変更しなければならい。あるいは、トランクス2bの着用者Mは、パンツ型吸収性物品またはおむつ型吸収性物品への移行を強いられる。このような男性用下着2の変更や、おむつなどへ移行は、着用者Mにとって大きな精神的負担になる。
【0123】
そこで、この実施例では、吸収性物品1を、以下のようにした。
【0124】
即ち、吸収性物品1では、
裏面シート3は、男性用下着2の腹側部分21に設置される腹側部22、および、男性用下着2の股下部分23に設置される股下部24を長手方向25に連ねた長さLにする。吸収体4は、裏面シート3の面内に、裏面シート3の長手方向25に沿って延設される。
そして、裏面シート3または吸収体4は、腹側部22における、着用者M(男性)の排尿口が当接する部分の周辺に、非肌面側6へ凹むポケット部26を有する。
吸収体4は、股下部24に、腹側部22とは反対側へ向かって幅W1が狭くなる幅縮小部27を有する。
裏面シート3は、股下部24の幅方向28の両側における、吸収体4の幅縮小部27を外側から挟む位置に、ズレ止め部29を有する。
【0125】
吸収性物品1は、上記のような構成にすることで以下のような効果が得られる。
【0126】
<効果>この実施例の効果は、以下の通りである。
【0127】
(効果 1)この実施例の吸収性物品1は、腹側部22および股下部24を有して背側部を有さない長さLとなっている(吸収性物品1の長さL<吸収性物品81の長さL4)。そのため、背側部82cが無い分だけ、吸収性物品1は、吸収性物品81よりも取り扱い易く、男性用下着2に装着し易い長さLになる。
【0128】
なお、吸収性物品1は、上記した長さLと、均一な幅Wとを有することで、平面的に展開すると比較的単純で小型の長方形状になる。そのため、吸収性物品1は、取り扱い易く、男性用下着2に装着し易い形状になる。
【0129】
吸収性物品1は、腹側部22を男性用下着2の腹側部分21に縦向きに、股下部24を男性用下着2の股下部分23に横向きに設置するようにして装着される。吸収性物品1は、男性用下着2の背側部分31には設置されない。そして、男性用下着2に装着した状態で、吸収性物品1は、腹側部22がほぼ縦向きになり、股下部24がほぼ横向きとなって、着用者Mの下腹部m1から股間へと回り込む。そのため、着用者Mとの間に隙間が有っても、股下部24の吸収体4で尿を受けることが可能となり、尿の漏れが起こり難い。
【0130】
また、上記構成により、吸収性物品1は、どのような男性用下着2にも装着できる。例えば、ブリーフ2aや、ボクサーパンツなどのような着用者Mとの密着性が高い男性用下着2の場合、股下部分23は、平らな領域85になっている。そのため、吸収性物品1は、股下部24を、男性用下着2の股下部分23の平らな領域85の上に載せて装着でき、ズレ止め部83も平らな領域85に自然に貼り付けることができる。よって、吸収性物品1は、ブリーフ2aや、ボクサーパンツなどの男性用下着2に対して吸収性物品1を支障なく安定して装着できる。
【0131】
これに対し、例えば、トランクス2bなどのような着用者Mとの密着性が低く隙間を有する男性用下着2の場合、股下部分23は、ブリーフ2aなどのような平らな領域85がなく、正面および側面から見て山形に尖った部分87となっている。そのため、吸収性物品1は、ブリーフ2aや、ボクサーパンツなどのように、男性用下着2の股下部分23の平らな領域85上に載せて、面で安定して保持させることができない。
【0132】
そこで、トランクス2bに対しては、股下部分23の山形に尖った部分87に合わせて、股下部24を長手方向25に沿い半分に折り曲げることで山形にする。そして、トランクス2bの山形に尖った部分87の上に、山形に折り曲げた股下部24を重ねて設置する。ズレ止め部83は、トランクス2bの脚回り筒部86の内側面に貼り付ける。これにより、山形同士が上下に重なるため、トランクス2bの股下部分23に、吸収性物品1の股下部24が安定して設置される。
【0133】
この際、吸収性物品1は、股下部24の吸収体4が、腹側部22とは反対側へ向かって幅W1が狭くなる幅縮小部27を有している。そのため、股下部24の吸収体4が幅縮小部27であることで、吸収性物品1は、股下部24を長手方向25に沿って半分に折り易くなる。
【0134】
そして、吸収性物品1は、股下部24を半分に折ったときに、上側が幅縮小部27、下側が吸収体非設置部35の状態になる。そのため、上側は幅縮小部27で吸水でき、下側は吸収体非設置部35をズレ止め部83でトランクス型の男性用下着2の脚回り筒部86に容易に貼り付けることができる。特に、半分に折った股下部24の下側は吸収体4がないため、軽く、薄くなっており、吸収体4が着用者Mの脚部m4に擦れ難い。また、吸収体4が吸水して膨らんでも、ズレ止め部83が影響を受けることがない。
【0135】
以上により、吸収性物品1は、どのような種類の男性用下着2に対しても、安定して確実に装着することが可能になる。よって、男性用下着2の種類を選ばずに装着できるので、吸収性物品1は、高い汎用性が得られる。そして、吸収性物品1を装着するために、男性用下着2を変更したり、おむつに移行したりする必要がなくなる。
【0136】
更に、裏面シート3または吸収体4は、腹側部22における、着用者M(男性)の排尿口が当接する部分の周辺に、非肌面側6へ凹むポケット部26を有している。そのため、ポケット部26が、男性器を収容保持して、男性器の位置を安定させると共に、ポケット部26は、排出した直後の尿を素早く受けることができる。
【0137】
なお、吸収性物品1を、男性用下着2に対して安定して装着できないような場合には、例え、ポケット部26を設けたとしても、ポケット部26は、男性器を安定してうまく収容保持できないので、十分に機能しないおそれが高い。
【0138】
この実施例の吸収性物品1は、上記したように、どのようなタイプの男性用下着2にでも、安定して確実に装着できるため、ポケット部26で男性器を安定して収容保持することが可能となり、ポケットは十分に機能を発揮できる。
【0139】
(効果 2)吸収性物品1では、腹側部22は、製品折り位置41となる幅方向28の折り目部42を有し、ポケット部26は、折り目部42に沿って幅方向28の全域に形成される凹み43の部分に形成されても良い。
【0140】
吸収性物品1は、コンパクト化のために折り畳んだ状態で提供されることが一般的である。この際、吸収性物品1を折り畳む位置が製品折り位置41であり、製品折り位置41には、幅方向28に延びる折り目部42が形成される。一般的に、折り目部42は、吸収性物品1の長手方向25の中央の位置などに形成される。また、折り目部42は、吸収性物品1にとって、最も強い曲げグセであるため、吸収性物品1を男性下着に装着した後も、ほぼそのまま曲げグセとして残る。吸収性物品1は、裏面シート3が製品外面となり、表面シート5が製品内面となるように折り畳まれるので、折り目部42は、装着後は、非肌面側6へ突出する凹み43となる。
【0141】
そこで、吸収性物品1の製品折り位置41を、一般的な長手方向25の中央の位置から腹側部22へと移動する。これにより、腹側部22の、製品折り位置41とした部分が、装着後に非肌面側6への凹み43になるため、腹側部22に凹み43によるポケット部26が形成される。製品折り位置41に形成される凹み43は、比較的深くなるため、ポケット部26は、着用者Mの男性器を収容保持するのには丁度良い深さになる。
【0142】
なお、製品折り位置41を、中央の位置から腹側部22へ移動しても、吸収性物品1はコンパクトに折り畳むことができる。必要な場合には、吸収性物品1の股下部24などにも、補助的な別の製品折り位置41を設ければ良い。
【0143】
(効果 3)吸収性物品1では、ポケット部26は、幅範囲W3を規定する幅規定部26a、および、長さ範囲L3を規定する長さ規定部26bの少なくとも一方を有しても良い。
【0144】
製品折り位置41の折り目部42によって形成される凹み43は、幅方向28の全域に亘る大きさになる。そのため、凹み43だけだと、ポケット部26は、幅範囲W3が広くなり過ぎる。また、折り目部42による凹み43は、ポケット部26の長さ範囲L3を特に規定しないため、ポケット部26の長さ範囲が定まらない。
【0145】
そこで、腹側部22に、幅規定部26a、長さ規定部26bの少なくとも一方を設ける。幅規定部26aは、ポケット部26の幅範囲W3を規定する。長さ規定部26bは、ポケット部26の長さ範囲L3を規定する。これにより、折り目部42によって形成された凹み43は、幅範囲W3、長さ範囲L3の少なくとも一方が規定されることで、凹み43の位置に最適な大きさのポケット部26が形成される。
【0146】
なお、幅規定部26a、長さ規定部26bは、折り目部42によって凹み43が形成されない場合であっても、腹側部22に設けることで、ポケット部26を規定したり形成したりすることが可能である。
【0147】
幅規定部26a、長さ規定部26bは、ポケット部26の輪郭の少なくとも一部を形成するように設けても良いし、ポケット部26の内側や外側の形状に合わせた面形状に設けても良い。
【0148】
(効果 4)吸収性物品1では、ポケット部26は、吸収体4に形成したスリット部51またはエンボス部52によって形成されても良い。
【0149】
スリット部51またはエンボス部52は、例えば、ポケット部26の輪郭の少なくとも一部に沿って設けることで、幅規定部26a、長さ規定部26bになる。また、スリット部51またはエンボス部52は、例えば、ポケット部26の内側または外側の形状に合わせた面形状に設けることで、幅規定部26a、長さ規定部26bになる。そして、吸収体4にスリット部51またはエンボス部52を設けることで、吸収体4は、スリット部51またはエンボス部52の位置で変形し易くなるので、スリット部51またはエンボス部52は、ポケット部26を形成する。
【0150】
(効果 5)吸収性物品1では、ポケット部26は、裏面シート3に設置した弾性部材55、または、裏面シート3に設けた剛性差部56によって形成しても良い。弾性部材55、剛性差部56は、一方または両方を設けることができる。
【0151】
弾性部材55、剛性差部56は、例えば、ポケット部26の輪郭の少なくとも一部に沿って設けることで、幅規定部26a、長さ規定部26bになる。また、弾性部材55、剛性差部56は、例えば、ポケット部26の内側または外側の形状に合わせた面形状に設けることで、幅規定部26a、長さ規定部26bになる。そして、裏面シート3に弾性部材55、剛性差部56を設置することで、裏面シート3は、弾性部材55、剛性差部56の位置で変形し易くなるので、弾性部材55、剛性差部56は、ポケット部26を形成する。
【0152】
特に、弾性部材55は、伸ばした状態にして裏面シート3に接合することで、弾性部材55の収縮力で裏面シート3を直接変形させるため、より大きな(または深い)ポケット部26を形成することができる。
【0153】
(効果 6)吸収性物品1は、表面シート5の肌面側7に、長手方向25に延びる左右一対の立体ギャザー61,62を有しても良い。また、ポケット部26は、左右一対の立体ギャザー61,62の先端部63の間に設けられても良い。
【0154】
立体ギャザー61,62は、吸収性物品1を折り畳み状態から拡げたときに、吸収性物品1から立ち上がるようにした部分である。立体ギャザー61,62は、吸収性物品1から立ち上がることで、裏面シート3を男性用下着2の内側に装着したときに、立体ギャザー61,62の先端部63が着用者Mの下腹部m1や脚部m4などに当接し密着する。そして、立体ギャザー61,62は、吸収性物品1と着用者Mとの隙間を塞いで尿の漏れを防止する。
【0155】
また、左右一対の立体ギャザー61,62は、立ち上がったときに、腹側部22にて、先端部63の間が、ポケット部26の幅範囲W3の大きさに開くようにできる。これにより、立ち上がった立体ギャザー61,62の間がポケット部26になる。よって、左右一対の立体ギャザー61,62は、表面シート5の肌面側7にポケット部26を形成することができる。
【0156】
(効果 7)吸収性物品1では、裏面シート3または吸収体4の幅縮小部27は、股下部24の幅中央に、長手方向25に延びる谷折り誘導線部71を有しても良い。
【0157】
谷折り誘導線部71は、裏面シート3の股下部24、および、吸収体4の幅縮小部27を、幅中心線CL部の位置で容易かつ正確に折り曲げられるように補助する。裏面シート3の股下部24、および、吸収体4の幅縮小部27は、谷折り誘導線部71により、幅中心線CL部で正確に折り曲げられることで、トランクス2bなどの男性用下着2に対し、より安定して装着できるようになる。
【0158】
(効果 8)吸収性物品1では、吸収体4と表面シート5との間には、少なくともポケット部26の位置にSAPシート75が設置されても良い。
【0159】
ポケット部26にSAPシート75が設置されることによって、少なくともポケット部26は、他の部分よりも吸水性が高くなる。そのため、ポケット部26は、SAPシート75によって、確実に、そして、集中的に尿モレを吸収できる。