(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129236
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】ステアリング装置の性能評価装置
(51)【国際特許分類】
G01M 17/06 20060101AFI20240919BHJP
B62D 3/12 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
G01M17/06
B62D3/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038311
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002549
【氏名又は名称】弁理士法人綾田事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀内 誠
(57)【要約】
【課題】 コスト増加を抑制したステアリング装置の性能評価装置を提供することにある。
【解決手段】 ステアリング装置の性能評価装置は、車輪を転舵させるラック軸とラック軸に接続されて操舵負荷を与えるステアリングホイールとを有する操舵出力部を備えたステアリング装置の性能評価装置であって、性能評価装置は、作動負荷力を発生させる作動負荷手段と、作動負荷手段が発生した作動負荷力を操舵出力部に伝達する伝達部材と、伝達部材に配置されて、車両のバネ下荷重に相当する重量を有する重量負荷部を備え、作動負荷手段と伝達部材は、ラック軸の軸方向に配置され、作動負荷手段は、作動負荷力を直線方向に発生させ、伝達部材は、作動負荷力を直線運動で操舵出力部に伝達するようにしている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を転舵させるラック軸と前記ラック軸に接続されて操舵負荷を与える操舵出力部を備えたステアリング装置の性能評価装置であって、
前記性能評価装置は、
作動負荷力を発生させる作動負荷手段と、
前記作動負荷手段が発生した前記作動負荷力を前記操舵出力部に伝達する伝達部材と、
を備え、
前記作動負荷手段と前記伝達部材は、前記ラック軸の軸方向に配置され、
前記作動負荷手段は、前記作動負荷力を直線方向に発生させ、
前記伝達部材は、前記作動負荷力を直線運動で前記操舵出力部に伝達する、
ことを特徴とするステアリング装置の性能評価装置。
【請求項2】
請求項1に記載のステアリング装置の性能評価装置において、
前記伝達部材に配置されて、車両のバネ下荷重に相当する重量を有する重量負荷部を備える、
ことを特徴とするステアリング装置の性能評価装置。
【請求項3】
請求項2に記載のステアリング装置の性能評価装置において、
前記重量負荷部は、少なくともナックルアーム、ブレーキ装置、車輪のタイヤ、車輪のホイールのいずれか1つの荷重を含む車両のバネ下荷重に相当する重量を有する、
ことを特徴とするステアリング装置の性能評価装置。
【請求項4】
請求項3に記載のステアリング装置の性能評価装置において、
前記重量負荷部は、前記伝達部材からの取り外しが可能である、
ことを特徴とするステアリング装置の性能評価装置。
【請求項5】
請求項2に記載のステアリング装置の性能評価装置において、
ドライバの操舵トルクを再現する操舵トルク再現手段を備える、
ことを特徴とするステアリング装置の性能評価装置。
【請求項6】
車輪を転舵させるラック軸と前記ラック軸に接続されて操舵負荷を与えるステアリングホイールとを有する操舵出力部を備えたステアリング装置の性能評価装置であって、
前記性能評価装置は、
作動負荷力を発生させる作動負荷手段と、
前記作動負荷手段が発生した前記作動負荷力を前記操舵出力部に伝達する伝達部材と、
前記伝達部材に配置されて、車両のバネ下荷重に相当する重量を有する重量負荷部と、
を備える、
ことを特徴とするステアリング装置の性能評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリング装置の性能評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、テコ機構を使用したステアリング装置のラックハウジングの耐久性を評価する性能評価装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2008/075590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の実車搭載時のタイヤ負荷を忠実に再現可能なステアリング装置のラックハウジングの耐久性を評価する性能評価装置の構造が複雑でコストが増加するという課題を有している。
本発明の目的の一つは、コスト増加を抑制したステアリング装置のラックハウジングの耐久性を評価する性能評価装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態におけるステアリング装置の性能評価装置は、車輪を転舵させるラック軸とラック軸に接続されて操舵負荷を与えるステアリングホイールとを有する操舵出力部を備えたステアリング装置の性能評価装置であって、性能評価装置は、作動負荷力を発生させる作動負荷手段と、作動負荷手段が発生した作動負荷力を操舵出力部に伝達する伝達部材と、伝達部材に配置されて、車両のバネ下荷重に相当する重量を有する重量負荷部を備え、作動負荷手段と伝達部材は、ラック軸の軸方向に配置され、作動負荷手段は、作動負荷力を直線方向に発生させ、伝達部材は、作動負荷力を直線運動で操舵出力部に伝達するようにしている。
【発明の効果】
【0006】
よって、本発明にあっては、コスト増加を抑制したステアリング装置の性能評価装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態1の電動パワーステアリング装置の全体構成図である。
【
図2】実施形態1の電動パワーステアリング装置の性能評価装置の全体構成図である。
【
図3】実施形態1の電動パワーステアリング装置を設置した性能評価前の性能評価装置の全体構成図である。
【
図4】実施形態1の電動パワーステアリング装置の性能評価後の性能評価装置の全体構成図である。
【
図5】実施形態2の電動パワーステアリング装置の性能評価装置の全体構成図である。
【
図6】実施形態2の電動パワーステアリング装置を設置した性能評価前の性能評価装置の全体構成図である。
【
図7】実施形態2の電動パワーステアリング装置の性能評価後の性能評価装置の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔実施形態1〕
図1は、実施形態1の電動パワーステアリング装置の全体構成図である。
【0009】
(電動パワーステアリング装置の全体構成)
電動パワーステアリング装置(ステアリング装置)EPSは、ドライバによる操作に基づき操舵に供する操舵機構5と、運転者の操舵操作をアシストする操舵アシスト機構6とを備える。
【0010】
操舵機構5は、ドライバが操作するステアリングホイールSHと一端が接続するステアリングシャフト7と、ステアリングシャフト7の他端と不図示のトーションバーを介して一端が連結し、他端にピニオン歯を有する不図示のピニオン軸と、ラックハウジング5aに移動可能に支持され、ピニオン軸のピニオン歯と噛合う不図示のラック歯を有するラック軸5bと、ラック軸5bの両端のエンドストッパ(操舵出力部)5cと一端が連結し、他端がナックルアーム8aを介して、転舵輪(車輪)9に連結するタイロッド8から構成されるラック&ピニオン機構である。
【0011】
これにより、ドライバの操作によるステアリングホイールSHの回転が、ラック軸5bの長手方向であるラック軸線P方向の軸方向運動に変換され、転舵輪9に伝達される。
【0012】
操舵アシスト機構6は、操舵アシスト力を生成する電動モータ6aと、電動モータ6aを駆動制御する制御装置6bと、電動モータ6aの回転をラック軸5bに伝達する不図示の伝達機構とを有する。
すなわち、操舵アシスト機構6は、例えばセンサハーネス等を介して制御装置6bに入力される不図示の舵角センサ、トルクセンサ、車速センサなど各種センサの検出結果に基づいて駆動制御される電動モータ6aの回転駆動力をもって、ラック軸5bの長手方向であるラック軸線P方向の軸方向移動をアシストする。
【0013】
図2は、実施形態1の電動パワーステアリング装置の性能評価装置の全体構成図である。
【0014】
(性能評価装置の全体構成)
性能評価装置1は、ベース盤11の図示右側に、ロッド(伝達部材)12とロッド12の一端部に固定されたピストン13、油圧室2a、2bを備えるステアリングホイールSHからの操舵負荷とタイヤが転舵するときの路面からの反力を含む操舵反力を発生させる油圧式アクチュエータ(作動負荷手段)2が配置されている。
このタイヤが転舵するときの路面からの反力は、ステアリングホイールSHの操舵角、操舵トルク、車速と、により操舵反力を算出し、油圧式アクチュエータ2が操舵反力を発生させる。
なお、油圧式アクチュエータ2とロッド12は、ラック軸5bのラック軸線P方向の直線上に配置されている。
また、油圧式アクチュエータ2が不図示の油圧ポンプからの高圧の作動油を流入させることにより発生する直線方向の作動負荷力を、ロッド12を介して、直線運動によりエンドストッパ5cに伝達させるようにしている。
これにより、性能評価装置1のコスト増加を抑制することができる。
なお、ロッド12には、ロードセル3が設けてある。
また、ベース盤11の図示中央部付近には、電動パワーステアリング装置設置部11aが設けられている。
【0015】
図3は、実施形態1の電動パワーステアリング装置を設置した性能評価前の性能評価装置の全体構成図である。
【0016】
電動パワーステアリング装置5は、ラック軸5bを図示右方向にフル転舵した状態、すなわち、図示左側のラック軸5bのエンドストッパ5cがラックハウジング5aの端部に当接している状態にして、図示右側のラック軸5bのエンドストッパ5cをロッド12と連結し、電動パワーステアリング装置設置部11aに設置する。
【0017】
図4は、実施形態1の電動パワーステアリング装置の性能評価後の性能評価装置の全体構成図である。
【0018】
性能評価装置1による性能評価は、ラック軸5bのラック軸線P方向の直線上に配置されている油圧式アクチュエータ2の油圧室2aに不図示の油圧ポンプからの高圧の作動油を流入させることにより、直線方向の作動負荷力を発生させ、瞬間的に、ピストン13、ラック軸5bのラック軸線P方向に配置されているロッド12を図示左方向に移動させ、ロッド12と連結しているラック軸5bのエンドストッパ5cに作動負荷力を直線運動により伝達し、ラック軸5bのエンドストッパ5cがラックハウジング5aの端部に当接するまで、移動させる。
【0019】
次に、実施形態1の電動パワーステアリング装置の性能評価装置の作用効果を説明する。
【0020】
(1)ラック軸5bのラック軸線P方向の直線上に配置されている油圧式アクチュエータ2が発生する直線方向の作動負荷力を、ラック軸5bのラック軸線P方向の直線上に配置されているロッド12を介して、直線運動でラック軸5bのエンドストッパ5cに伝達するようにした。
よって、性能評価装置1のコスト増加を抑制することができる。
【0021】
〔実施形態2〕
図5は、実施形態2の電動パワーステアリング装置の性能評価装置の全体構成図であり、
図6は、実施形態2の電動パワーステアリング装置を設置した性能評価前の性能評価装置の全体構成図であり、
図7は、実施形態2の電動パワーステアリング装置の性能評価後の性能評価装置の全体構成図である。
【0022】
(性能評価装置の全体構成)
実施形態1の性能評価装置に加え、ロッド12には、ナックルアーム8a、不図示のブレーキ装置、転舵輪9のタイヤ、転舵輪9のホイール等の車両のバネ下荷重に相当する重量を有する重量負荷部4が設けてある。
これにより、走行中の車両としての性能評価、例えば、高速のバック走行からの意図的な180度スピンターンを行うJ-turnに対するラックハウジング5aの耐久性を評価する性能評価を的確に行うことが可能となる。
すなわち、J-turnの場合には、エンドストッパ5cがラックハウジング5aに激しく当たり、バネ下荷重相当の重量をラックハウジング5aに急激に伝達するためである。
また、重量負荷部4は、ロッド12に対し取り外しが可能であり、その重量は、調整可能である。
これにより、様々なバネ下荷重の車両に適応することができる。
さらに、ベース盤11の図示左側には、スプリング(操舵トルク再現手段)10の一端側が保持されるスプリング保持部11bが設けられている。
また、スプリング10の他端側は、ステアリングホイールSHに連結し、スプリング10により、急激に変化するドライバの操舵トルクを再現するようにしている。
【0023】
これにより、ドライバによりステアリングホイールSHが握られている運転状態として、J-turnを忠実に再現でき、ラックハウジング5aの耐久性の評価精度を高めることができる。
【0024】
次に、実施形態2の電動パワーステアリング装置の性能評価装置の作用効果を説明する。
実施形態2では、実施形態1の作用効果に加え、以下のような作用効果を奏する。
【0025】
(1)ロッド12には、ナックルアーム8a、不図示のブレーキ装置、転舵輪9のタイヤ、転舵輪9のホイール等の車両のバネ下荷重に相当する重量を有する重量負荷部4を設けるようにした。
よって、走行中の車両としての性能評価、例えば、高速のバック走行からの意図的な180度スピンターンを行うJ-turnに対するラックハウジング5aの耐久性を評価する性能評価を的確に行うことが可能となる。
【0026】
(2)重量負荷部4は、ロッド12に対し取り外しが可能であり、その重量は、調整可能であるようにした。
よって、様々なバネ下荷重の車両に適応することができる。
【0027】
(3)ステアリングホイールSHとベース盤11のスプリング保持部11bとの間にスプリング10を設けるようにした。
よって、ドライバによりステアリングホイールSHが握られている運転状態として、J-turnを忠実に再現でき、ラックハウジング5aの耐久性の評価精度を高めることができる。
【0028】
〔他の実施形態〕
以上、本発明を実施するための実施形態を説明したが、本発明の具体的な構成は実施形態の構成に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、実施形態1では、ステアリング装置を電動パワーステアリング装置として説明したが、ステアリング装置として油圧式パワーステアリング装置、マニュアルステアリング装置を使用してもよい。
また、実施形態1では、作動負荷手段として油圧式アクチュエータとして説明したが、作動負荷手段として空圧式アクチュエータ、電動アクチュエータを使用してもよい。
さらに、実施形態2では、操舵トルク再現手段としてスプリングで説明したが、操舵トルク再現手段として操舵アシスト力を生成する電動モータを使用してもよい。
なお、実施形態2では、重量負荷部としてナックルアーム、ブレーキ装置、転舵輪のタイヤ、転舵輪のホイール等の車両のバネ下荷重相当の重量として説明したが、重量負荷部として少なくともいずれか1つのバネ下荷重であればよい。
また、実施形態2では、ロッド12を直線運動させるようにと説明したが、これに限らず、テコ機構等の運動の方向を変更するものでもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 性能評価装置、2 油圧式アクチュエータ(作動負荷手段)、4 重量負荷部、5 操舵機構、5a ラックハウジング、5b ラック軸、5c エンドストッパ(操舵出力部)、8 タイロッド、8a ナックルアーム、9 転舵輪(車輪)、10 スプリング(操舵トルク再現手段)、12 ロッド(伝達部材)