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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129239
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】健康スコア算出システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/107 20060101AFI20240919BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20240919BHJP
   G16H 20/00 20180101ALI20240919BHJP
   G16Y 10/60 20200101ALI20240919BHJP
   G16Y 20/40 20200101ALI20240919BHJP
   G16Y 40/20 20200101ALI20240919BHJP
【FI】
A61B5/107 300
A61B5/00 B
G16H20/00
G16Y10/60
G16Y20/40
G16Y40/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038317
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100151378
【弁理士】
【氏名又は名称】宮村 憲浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157484
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 智之
(72)【発明者】
【氏名】内山 亘
(72)【発明者】
【氏名】河合 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 優
(72)【発明者】
【氏名】越智 和弘
(72)【発明者】
【氏名】荻野 弘之
【テーマコード(参考)】
4C038
4C117
5L099
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VB14
4C038VC20
4C117XB01
4C117XB02
4C117XB15
4C117XC04
4C117XD28
4C117XD33
4C117XE13
4C117XE15
4C117XE24
4C117XE27
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】トイレ使用履歴や排泄時の息み強弱度合いから使用者の排泄に対する健康スコアを算出するシステムを提供する。
【解決手段】使用者の排泄姿勢に関する情報を取得する取得手段と、前記取得手段により取得した情報から排泄姿勢の変動タイプを測定する測定手段と、前記測定手段の出力情報に基づき使用者の排泄に関する健康スコアを算出する算出手段と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の排泄姿勢に関する情報を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得した情報から排泄姿勢の変動タイプを測定する測定手段と、
前記測定手段の出力情報に基づき使用者の排泄に関する健康スコアを算出する算出手段と、
を備える健康スコア算出システム。
【請求項2】
前記取得手段は使用者の排泄姿勢に関する情報に加えて、使用者のトイレ装置使用に関する情報を取得し、
前記測定手段は排泄姿勢の変動タイプに加えて、排泄回数を測定し、
前記測定手段により測定した排泄回数のうち特定の排泄姿勢の変動タイプである回数が占める割合を複数レベルに分けるレベル判定手段と、
前記レベル判定手段により判定したレベル値に基づき、使用者の排泄に関する健康スコアを算出する算出手段と、
を備える請求項1に記載の健康スコア算出システム。
【請求項3】
前記使用者のトイレ装置使用に関する情報は便座への着座および離座に関する情報であり、
前記排泄姿勢の変動タイプに関する情報は、大腿部から臀部までの物理的変化に関する情報、便座と肌との接触変化に関する情報、の少なくとも1つ以上の情報である、
請求項1または請求項2に記載の健康スコア算出システム。
【請求項4】
前記算出手段により算出する排泄に関する健康スコアは慢性便秘および下痢など便通の傾向を示すスコアおよび頻尿など排尿の傾向を示すスコアである、
請求項1または請求項2に記載の健康スコア算出システム。
【請求項5】
前記算出手段は、前記使用者の排泄回数と排泄姿勢の変動タイプに加え、排泄時間、排泄頻度、トイレ使用回数およびトイレ使用時刻、便器内の様子が撮像された画像、便器内の撮像画像を用いて排便の性状を判定した判定結果、の少なくとも1つ以上の情報と掛け合わせて、前記使用者の排泄に対する健康スコアを算出する、
請求項1または請求項2に記載の健康スコア算出システム。
【請求項6】
前記排泄回数と排泄姿勢の変動タイプの少なくとも1つを記憶する記憶手段さらに備え、前記算出手段は前記記憶手段に記憶した情報に基づき使用者の排泄に対する健康スコアを算出する、
請求項1または請求項2に記載の健康スコア算出システム。
【請求項7】
前記算出手段の算出結果など各種情報を表示する表示手段を備え、
前記表示手段は前記算出手段の算出結果や前記記憶手段に記憶した情報を表示する、
請求項1または請求項2に記載の健康スコア算出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレ使用履歴や排泄内容から使用者の排泄に対する健康スコアを算出するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
排便は腸内環境を反映しているといわれていることから、例えば問診票に排便状況を入力し健康状態を算出するシステムの提案は過去から多数ある。
【0003】
近年の超高齢社会において、高齢者が便秘の自覚症状を訴える人の割合が多いことを示す統計がある(例えば、平成25年 国民生活基礎調査 厚生労働省)。これは高齢になるにつれ腸の活動が衰えることから便秘に陥りやすい理由もあるが、反面、便秘の自覚は感じやすさの個人差が大きく、自覚がないまま便秘状態が長く続くことで重篤化し入院するケースも増えている。
【0004】
よって便秘状態にあるかどうかなど便通の状況を客観的に把握することができれば、本人のみならず家族などケアを行う者にも安心感を与えることができる。
【0005】
例えば、特許文献1のように、被験者が食事内容を紙の問診票に手書き入力することでデーターベースに蓄積した過去の事例と比較して同じようなパターンを見つけて健康状態を推定する技術や、特許文献2のように、問診票の入力方式をタブレットやパソコンを用いて入力することで利便性を高める技術が開示されている。
【0006】
一方で、近年の超高齢社会において、高齢者の便秘重篤化による入院が大きな社会課題となっており、医療界では問診票を用いて便通状態を健康スコアとして算出する提案もされている。(例えば、味村俊樹著、慢性便秘症の診断と治療、表2(慢性便秘症の診断基準)、表3(Constipation Scoring System))
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2022-157474号公報
【特許文献2】登録実用新案第3239803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1および特許文献2の技術では、被験者が排泄状況を問診票に記載する、つまり被験者の主観に依存し排泄時の困難さを回答するが、便秘の自覚は感じやすさの個人差が大きく客観性に欠け、高齢者によっては認知症も相まって排便回数や排便時間を覚えていない場合もあり、加えて、上記表2の「1.「便秘症」の診断基準(a項)」では、排便時における息みの強さ、つまり、息を込めて腹を張る行為の強弱度合いを、被験者が排便の度に自身で判断せざるをえず、手間が煩雑な上に主観による息み度合いの判断バラツキは大きく、ひいては、便通の把握が困難であるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の課題を解決するために、本発明の健康スコア算出システムは、使用者の排泄姿勢に関する情報を取得する取得手段と、前記取得手段により取得した情報から排泄姿勢の変動タイプを測定する測定手段と、前記測定手段の出力情報に基づき使用者の排泄に関する健康スコアを算出する算出手段と、を備える健康スコア算出システムであり、
例えば使用者の排泄姿勢に関する情報から排泄姿勢の変動タイプを測定し、排泄姿勢の変動タイプから排便状況の特性を把握することで、総合的に使用者の排泄に対する健康スコアを精度良く算出できるようにしたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の健康スコア算出システムによれば、使用者が問診票へ入力する手間や、健康状態を計測するためにトイレ装置を所定の操作する手間もなく利便性を高めながら、一連のトイレ装置を用いた排便を行うだけで、排泄に対する健康スコアを算出できる、つまり、便通の状況を客観的に把握することで、本人のみならず家族などケアを行う者にも安心感を与える効果を有する。
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態における適用例を示す図
図2】実施の形態における適用例を示す図
図3】実施の形態における健康スコア算出システムの構成図
図4】実施の形態における便落下情報と排便時間の関係を示す概略図
図5】実施の形態における排泄姿勢と測距センサとの関係を示す概略図
図6】実施の形態における排泄姿勢と測距センサとの関係を示す概略図
図7】実施の形態における息みの強さと測距センサとの関係を示す概略図
図8】実施の形態における排泄姿勢と測距センサとの関係を示す概略図
図9】実施の形態における息みの強さと測距センサとの関係を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態の健康スコア算出システムを、図面を参照して説明する。
【0014】
(実施形態:構成)
図1に示すように、トイレ装置1は、例えば、便器2と、便座3と、便蓋4と、センサヘッド6と、センサボックス7、制御手段11と、取得手段12とを備える。
【0015】
センサヘッド6とセンサボックス7は有線ケーブルで接続され、制御手段11は、例えばセンサボックス7の内側に収容される。
【0016】
取得手段12は、後述するがいくつかの検知手段(センサモジュール)であり、図示したようにセンサヘッド6の内側に収容される。
【0017】
センサヘッド6とトイレ装置1との位置関係であるが、センサヘッド6a、6bに示したようにトイレ装置1とは別体であり、便器2へ取得手段12が便器2内側の情報を得やすいように取り付ける。
【0018】
図2に示すように、トイレ装置へ後付けタイプは、センサヘッド6cを便器2に取り付け後、使用者が排泄を行う際に回転自在な便座3を着座可能な位置(便器2上部)に置くが、この状態もセンサヘッド6cの取得手段12の各センサは便座3の影響を受けず、例えば、使用者が便座に着座した情報や便器内へ便が落下した情報などを検知することが可能である。
【0019】
図3に示すように、健康スコア算出システム10は、大きく分けて制御手段11と取得手段12からなる。
【0020】
取得手段12は使用者のトイレ使用状況や排便状況などを各種検知する検知手段を少なくとも1つを具備するものである。
【0021】
取得手段12の1つである着座検知手段13は、使用者が便座へ着座したことを検知するセンサであり、図2ではセンサヘッド6cに収容して人感センサなど超音波を例えば大腿部に照射して人体からの反射波を受信することでセンサから人体まで距離を測定することで人の存在を検知する方式を用いている。
【0022】
便落下検知手段14は、排便時に便が便器内へ落下したことを検知するセンサモジュールであり、カメラを用いて逐次撮影する便器内側画像の変化から便落下を検知する方式や、上記した人感センサと同様の原理で赤外線や電波を照射して落下する便の反射光や反射波を受けることにより便落下を検知する方式などがある。
【0023】
便性状検知手段15は、便器内の便画像を撮影するものであり、一般的な可視光カメラを用いて便画像を撮影する方式や、暗がりの撮影に有利な赤外線カメラを用いる方式などがある、なお、便落下検知手段14と共通のデバイスを用いても構わない。
【0024】
制御手段11は取得手段12にて検知した入力情報に基づき測定や判定処理を行うものである。
【0025】
制御手段11の1つである測定手段16は、取得手段12から得た情報に基づき、息み強弱、排便回数、排便時間、排便頻度、トイレ使用回数および時刻、便器内の様子が撮像された画像を用いた便性状(形・色・量)の測定を行うものである。
【0026】
レベル判定手段17は、測定手段16で測定した排泄回数と排泄姿勢の変動タイプ(息み強弱)に基づき、排泄回数のうち特定の排泄姿勢の変動タイプである回数が占める割合、つまり、発生頻度の高低レベルを判定するものである。
【0027】
算出手段18は、レベル判定手段17で判定した特定の排泄姿勢の変動タイプ(強い息み)が発生する排便頻度レベルの情報に基づき、使用者の排泄に対する健康スコア算出するものである。
【0028】
記憶手段19は、取得手段12で取得したセンサデータや便鉢内側をカメラ撮影した画像や、測定手段16で測定した息み強弱、排便回数、排便頻度、便性状や、レベル判定手段17で判定したレベル値、算出手段18により算出した健康スコア値、を記憶するものである。
【0029】
表示手段20は、制御手段11が把握している情報を表示する手段であり、図示しないが便座ボックス5やセンサボックス7の表面に取り付けられた液晶ディスプレイであったり、トイレ装置1がリモコン操作を伴う機能を有する場合はリモコン表面に取り付けられた液晶ディスプレイであったり、制御手段11と無線接続されたスマートフォンの画面であったり、使用者が容易に情報確認可能な表示方式であれば方式にはこだわらない。
【0030】
(実施の形態:動作・作用)
健康スコア算出システム10について、以下、その動作、作用効果を説明する。
【0031】
使用者は、トイレ装置1を使用して大便をする際に、図2に位置関係を図示したように、便蓋4を開けて便器2の上に位置する便座3に着座する。
【0032】
図4に示すように、使用者の着座後、制御手段11は着座検知手段13により着座を検
知したタイミングである第1の時刻を検知し、並行して制御手段11は便性状検知手段15(一例として、可視光カメラ)により便器2の内側の状況を画像として逐次検知開始する。ここで一般的な傾向として使用者はこのタイミングから排便を促すために息みを開始する。
【0033】
その後、初めて排便が開始されると、制御手段11は、便落下検知手段14により便が便器2内側(すなわち、便鉢)へ落下したタイミングである第2の時刻を検知する。
【0034】
その後、使用者が数回の息みと排便を繰り返す。使用者が、最後の排便を終えて便座3から離座し、着座検知手段13が使用者の離座を検知する。これと同時に、制御手段11は、便落下検知手段14により、最後の便が便器2の内側(すなわち、便鉢)へ落下したタイミングである第3の時刻を検知する。併せて、制御手段11は、便性状検知手段15による便器2の内側の画像検知を停止する。制御手段11は、取得手段12により検知した時刻情報および便画像の情報を記憶手段19に記憶する。時刻情報および便画像情報は年月日の日付情報を含む。
【0035】
測定手段16は、排便時間、排便回数、排便頻度、便性状、および息み強弱を以下の方法で測定する。
【0036】
初めに、排便時間の測定方法について説明する。
【0037】
排便時間は取得手段12により検知した第1~第3の時刻を用いて3種類の排便時間を含む。これら3種類の排便時間は、測定値として測定手段16より出力される。
【0038】
第1の排便時間は、第1の時刻から第2の時刻までの測定時間である。すなわち、第1の排便時間は、使用者がトイレ装置1に着座したタイミングから排便開始までに要した時間である。
【0039】
第2の排便時間は、第2の時刻から第3の時刻までの測定時間である。すなわち、使用者が排便を開始したタイミングから最後の排便を終えたタイミングまでに要した時間である。
【0040】
第3の排便時間は、第1の時刻から第3の時刻までの測定時間である。すなわち、使用者がトイレ装置1に着座したタイミングから最後の排便を終えたタイミングまでに要した時間である。
【0041】
ここで、測定手段16は測定した第1~3の排便時間の各々について信憑性を勘案しながら、健康スコアを算出する上で最適な排便時間を1つだけ決定する。
【0042】
多くの場合、第3の排便時間(すなわち、使用者がトイレ装置1に着座したタイミングから最後の排便を終えたタイミングまでに要した時間)を用いる。なぜならば、第3の排便時間の長さは第1~2の排便時間の長さに比べて明らかに長く、本発明では、排便時間の長さと、使用者が排便を促すために息むなど苦痛を伴う便通困難度の大きさが略比例関係にあることを前提としているためである。例えば、すでに便秘状態であると判断する時間のしきい値を「30分以上」とし、便秘気味と判断する時間のしきい値を「20分以上30分未満」という風に、しきい値の幅を比較的大きな数値(例えば、10分間隔)を設定することは、毎回の排便時間に多少バラツキがあっても判定精度への影響が少ないので有利である。
【0043】
さらに、測定手段16は、今回測定した第3の排便時間の信憑性を確かめるため、記憶
手段19に記憶した前回測定した第3の排便時間と今回のそれとを比較する。例えばそれらの間の差が10分以内である場合、測定手段16は、最近測定した第3の排便時間と大差がなく安定した値であると確信することで、第3の排便時間を今回使用する排便時間と決定する。
【0044】
一方で、近年、使用者のトイレ空間に対する使用方法の多様化により、例えば、使用者がスマートフォンをトイレに持ち込み読書またはWEB閲覧など排泄以外の行為に興ずるケースも少なくない。この場合、第3の排便時間は、ある日は30分であったにも拘わらず、他の日では15分であるように安定した値でなく、かつ、連動して第2の排便時間も安定した値にならない、このように第3の排便時間が安定せず信憑性が低いと判断した場合、第1の排便時間(すなわち、使用者がトイレ装置1に着座したタイミングから排便開始までに要した時間)を今回使用する排便時間と決定する。多くの使用者はトイレ装置1の使用開始タイミングから排便開始までの間、排便を促すために息む行為に注力する傾向があり、つまり、スマートフォンの使用影響を受けにくい。ただし、第1の排便時間は第3の排便時間に比べて圧倒的に短いため、第1の排便時間に所定の倍率値(例えば、3倍)を乗じた時間を今回の排便時間として出力することができる。
【0045】
次に、排便回数と排便頻度の測定方法について説明する、使用者がトイレ装置1の便座3に着座し排便を行った後に便座3から離れる(すなわち、トイレ部屋を退出する)一連の排便行為を排便回数1回とカウントする。測定手段16は、1日あたりの排便回数、1週間あたりの排便回数、1ヶ月あたりの排便回数というように3種類の排便頻度を測定値として出力する。
【0046】
次に、便性状の測定方法について説明する。
【0047】
便性状検知手段15(一例として、可視光カメラ)は、便器2の内側を常に撮影しており、肛門から排出され落下中の便画像と、便器底部の溜まり水に落ちたあとの水没便画像を常に撮影している。
【0048】
近年AI技術の発達もあり水没便画像から医療界で広く普及している評価ツール・ブリストルスケールを用いて7分類に測定する提案もあるが、実際の便器底部の溜まり水は被験者の尿色で濃い黄色だったり、被験者がトイレ洗浄剤を利用している場合は濃い青色だったり、水没便の形が判定しにくい場合も多く、最初に落下中の便画像を用いて、空中で飛散しながら落下する画像の場合は、水分を多く含む便(すなわち、下痢便)である可能性が高いことから、少なくとも下痢便か否かを測定値として出力しておき、次に水別便画像からブリストルスケールを用いた7分類の測定値として出力する。
【0049】
なお、ここでは深く触れないが、便性状は便の形、色、量などのような便の状態を表す。測定手段16は、便性状検知手段15の便画像から色を識別することで血便を測定値として出力し、予め便器の大きさを把握することで便画像のうち便が占める大きさとの比較から排便した量を測定値として出力する。
【0050】
次に、息み強弱の測定方法について説明する。
【0051】
図5は、使用者Pが便器2の上に位置する便座3に着座した時点、つまり、息んでいない時の、使用者の肩P1、臀部P2、大腿部P3、膝P4と、センサヘッド6b、着座検知手段13、との位置関係を示したものであり、大腿部P3底部の一部は便座3の座面より内側下方に若干沈み込んでいる。
【0052】
着座検知手段13は超音波を大腿部P3底部に照射して人体からの反射波を受信するこ
と大腿部P3底部までの距離を常に把握しており、図の場合、測距値は10cm程度である。
【0053】
使用者は排泄を促すために、息む(息を込めて腹を張る)状態と息まない状態を交互に繰り返すが、息む状態において、大腿部から臀部までの物理的変化(変動パターン)は大きく分けて2つある。
【0054】
1つ目のパターンは、図6に示すように、息む状態の継続期間だけ、大腿部P3底部の位置が息まない状態のそれに比べて上方向に浮き上がるタイプであり、臀部P2や大腿部P3や腹筋を緊張させることで腹周りの筋肉を締め付ける類の息み方である。
【0055】
この場合、図7に示すように、着座検知手段13(測距センサ)による大腿部P3底部までの測距値は、息む状態が継続している間だけ測距値は変動し、息みの強さ(大きさ)に応じて変動する時間も長い傾向にある、図の場合、強い息み時間aは7秒間、弱い息み時間bは3秒間であり、複数回発生する測距値の変動に対して個別に強い息みまたは弱い息みと判定しながら各々をカウントし、排泄を終えた段階で強い息みと弱い息みの発生回数を比較し、今回の息み強弱として出力することができる。
【0056】
2つ目のパターンは、図8に示すように、息む状態の継続期間だけ、大腿部P3底部の位置が息まない状態のそれに比べて下方に沈み込むタイプであり、腹周りの筋肉に力が入らない場合に息を止めて前傾姿勢をとることで腹を圧迫する類の息み方である、この時に大腿部P3は便座内側下方向に沈み込む。
【0057】
この場合、図9に示すように、着座検知手段13(測距センサ)による大腿部P3底部までの測距値は、息む状態が継続している間だけ測距値は変動し、息みの強さ(大きさ)に応じて変動する時間も長い傾向にある、図の場合、強い息み時間cは7秒間、弱い息み時間dは3秒間であり、複数回発生する測距値の変動に対して個別に強い息みまたは弱い息みと判定しながら各々をカウントし、排泄を終えた段階で強い息みと弱い息みの発生回数を比較し、今回の息み強弱として出力することができる。
【0058】
ここで補足するが、息んでいる期間は、息まない期間に比べて圧倒的に短い、つまり、測定手段16は、大腿部P3底部までの測距値を検知し続け、短時間変動のあった期間を息み時間として測定するものであり、変動方向がプラス方向であるかマイナス方向であるかを問うものではない。
【0059】
なお、実施の形態における排泄姿勢の変動タイプを測定する方法は、大腿部から臀部までの物理的変化を測距センサの測距値変動を用いる例を挙げて説明したが測距センサに限定することなく、例えば、便座3の表面にシート型の圧力センサを貼り付けることで便座3と大腿部P3(肌)との接触状態の変化から息み強弱を出力してもよい。
【0060】
また、排泄姿勢の変動だけに拘らず、息みを継続している間は、心拍や脈波の脈動周期の変化、血圧(上昇)変化、呼吸周期の変化(息を止める)など生体情報は著しく変化するので、これらの変化を用いて息み強弱を出力してもよい。
【0061】
このようにして、測定手段16は、排便時間、排便回数、排便頻度、便性状、および息み強弱を測定値として出力できる。
【0062】
レベル判定手段17は、測定手段16にて測定した排泄回数と排泄姿勢の変動タイプ(息み強弱)の情報に基づき、排泄回数のうち特定の排泄姿勢の変動タイプ(強い息み)である回数が占める割合に基づき、表1に示したしきい値により、発生頻度の高低レベルを
判定し、発生頻度レベル値(例えば、0点~4点)を出力できる。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
さらに、レベル判定手段17は、測定手段16にて測定した排便時間や排便頻度の値に基づき、表3に示したしきい値により、時間の長短レベルや頻度の高低レベルを判定してもよい。
【0066】
【表3】
【0067】
例えば、排便時間を用いて排便時間レベル判定する場合は表3(項目:排便に関する時間)を用いて、排便時間の長さに応じた排便時間レベル値(例えば、0点~4点)を出力し、排便回数(例えば、1週間あたりの排便回数、1ヶ月あたりの排便回数)、すなわち排便頻度の値に基づき、表3(項目:排便回数)を用いて、排便頻度の高低に応じた排便頻度レベル値(例えば、0点~4点)を出力する。
【0068】
算出手段18は、レベル判定手段17で判定した強い息みを伴う排泄頻度レベル(0点~4点)、排便時間レベル値(0点~4点)、排便頻度レベル値(0点~4点)を用いて、使用者の排泄に対する健康スコアを算出する。
【0069】
健康スコアは1日単位でスコア算出し記憶手段19に保存することで、1週間毎、1ケ
月毎、1年単位で使用者の排泄トレンドを把握することができ、例えば、季節の変わり目に排泄困難(苦痛を伴う便秘あるいは下痢)に陥る傾向があるとか、地域や施設の定期的なイベント(例えば、体操や食事会)に参加することで排泄負担が軽減する傾向があるなど個人ごとの特性を把握することができる。
【0070】
これら健康スコアおよびトレンドは、表示手段20の一例であるトイレ装置1のリモコン(図示せず)表面に取り付けられた液晶ディスプレイに表示することで、使用者本人が便秘の自覚を感じにくい場合であっても医者などに相談する機会を得ることができ、さらに、表示手段20の一例である制御手段11とインターネットを経由で接続されたスマートフォン画面に表示することで、使用者本人のみならず家族や高齢者施設の介護スタッフなどケアを行う者および医療従事者にとっても使用者の便通状況を客観的に把握することで、例えば献立変更や施設内での運動プログラム変更などケア内容の変更で便秘による消化器系疾患の重篤化を防ぐことができ、高齢者施設における隔週ごとの訪問診療にて便秘タイプ判定およびIBS(過敏性腸症候群)診断への応用が期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上のように、本発明にかかる健康スコア算出システムは、排便回数、息み強弱を精度よく測定することで便通状況を容易に把握するものであり、その対象は人のみならず、家畜やペットのバイタルデータに基づく健康管理システムにも適用できる。
【符号の説明】
【0072】
1 トイレ装置
2 便器
3 便座
4 便蓋
5 便座ボックス
6 センサヘッド
7 センサボックス
10 健康スコア算出システム
11 制御手段
12 取得手段
13 着座検知手段
14 便落下検知手段
15 便性状検知手段
16 測定手段
17 レベル判定手段
18 算出手段
19 記憶手段
20 表示手段
P 使用者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9