(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012924
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】ブラケット及び屋根構造体
(51)【国際特許分類】
E04G 5/12 20060101AFI20240124BHJP
【FI】
E04G5/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114752
(22)【出願日】2022-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】521313072
【氏名又は名称】川上塗装工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】川上 秀郎
(57)【要約】
【課題】取り付けや取り外しが容易な簡易な構造でありつつも、自由度高く屋根構造体を設置することが可能なブラケットを提供する。
【解決手段】本発明のブラケット1は、鉛直方向に延びる足場20の支柱201に取り付けられ、板状部材2が載置されることにより屋根構造体10を構成する。ブラケット1は、支柱201に着脱自在に連結される第1連結部11と、第1連結部11の下方において支柱201に着脱自在に連結される第2連結部12と、基端部が第1連結部11に回動自在に軸着されており、板状部材2が載置されて固定される載置面131を上部に有する載置部13と、基端部が第2連結部12に、先端部が載置部13にそれぞれ回動自在に軸着されている支持部14と、を備える。支持部14が、載置部13が第1連結部11に対して回動することに応じて伸縮するとともに、その伸縮した状態を保持可能に構成されており、第1連結部11と第2連結部12とが、それらの相対的な位置関係を変化させることができるように構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に延びる足場の支柱に取り付けられ、板状部材が載置されることにより屋根構造体を構成するブラケットであって、
前記支柱に着脱自在に連結される第1連結部と、
前記第1連結部の下方において前記支柱に着脱自在に連結される第2連結部と、
基端部が前記第1連結部に回動自在に軸着されており、前記板状部材が載置されて固定される載置面を上部に有する載置部と、
基端部が前記第2連結部に、先端部が前記載置部にそれぞれ回動自在に軸着されている支持部と、を備え、
前記支持部が、前記載置部が前記第1連結部に対して回動することに応じて伸縮するとともに、その伸縮した状態を保持可能に構成されており、
前記第1連結部と前記第2連結部とが、それらの相対的な位置関係を変化させることができるように構成されている、ブラケット。
【請求項2】
前記第1連結部及び前記第2連結部の上方の空間を覆うように前記載置部から前記支柱に向かって延設され、前記支柱が挿通される支柱挿通孔が形成された平板状の被覆部を備える、請求項1に記載のブラケット。
【請求項3】
前記被覆部が、第1切り欠き部を有する略矩形状の第1板材と、第2切り欠き部を有する略矩形状の第2板材とを備え、
前記第1切り欠き部と前記第2切り欠き部とが重なって前記支柱挿通孔を形成するように、前記第1板材と前記第2板材とが重ね合わせて連結されている、請求項2に記載のブラケット。
【請求項4】
前記第1板材の少なくとも一部が前記載置部の前記載置面に上方から重なるように、前記第1板材が前記載置部に締結されている、請求項3に記載のブラケット。
【請求項5】
前記第1板材には、長手方向が前記支柱から前記載置部が延びる方向に沿った長穴形状を有する貫通孔が形成されており、
前記載置部の前記載置面に形成された締結孔と前記第1板材の前記貫通孔とに締結部材を挿通することによって、前記第1板材と前記載置部とが締結されている、請求項4に記載のブラケット。
【請求項6】
前記第2板材の上面が前記第1板材の下面に着脱自在に連結されている、請求項3に記載のブラケット。
【請求項7】
少なくとも2つの請求項1-6に記載のブラケットと、少なくとも1つの前記板状部材とを備え、
隣り合う2つの前記ブラケットの間に前記板状部材が跨設されるように、前記板状部材が前記ブラケットの前記載置面に載置されている、屋根構造体。
【請求項8】
前記少なくとも1つの前記板状部材が、隣り合って平板状に連結された第1板状部材と第2板状部材とを含み、
前記ブラケットの前記載置面には、前記第1板状部材の前記第2板状部材と連結される側の端部と、前記第2板状部材の前記第1板状部材と連結される側の端部とが載置されている、請求項7に記載の屋根構造体。
【請求項9】
前記第1板状部材及び/又は前記第2板状部材には、前記第1板状部材と前記第2板状部材との連結部分の近傍において、前記支柱が挿通される挿通空間が形成されている、請求項8に記載の屋根構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工事用仮設足場に取り付けて用いられるブラケット及びそのブラケットに板状部材を取り付けて構成された屋根構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
家屋やビル等の建物の外壁の塗装工事は、建物の周囲に工事用仮設足場を立設し、作業者がその足場を利用して、洗浄、下塗り、上塗り等の作業を行なっていくが、雨や雪等の悪天候時にも塗装工事を行うためには、足場の上方に雨雪避けとなる屋根やシート構造物を設ける必要がある。
【0003】
例えば特許文献1には、塗装工事現場に立設された足場に取り付けられて家屋の上方に展張されて塗装工事中の家屋を雨雪から守る家屋被覆シートが開示されている。また、特許文献2には、クサビ式足場の支柱にフレーム部材を取り付け、二つのフレーム部材を繋ぐようにシート部材をそれらの間に取り付けて構成された屋根構造が開示されている。さらに、特許文献3には、仮設足場の隣接する垂直パイプにブラケットを取り付け、当該ブラケットに天幕シートを張設した移動フレーム及び固定フレームを屋根の勾配に合わせて固定した屋根部を具備した仮設足場が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3197548号公報
【特許文献2】特開2019-7179号公報
【特許文献3】実開平6-8616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されているように塗装工事現場の家屋の全体を上方から被覆しようとすると、かなり大きなシートを用意しなければならず、その取り付けや取り外しに手間も時間もかかるという問題があった。また、特許文献2や特許文献3に開示されているような、単に足場の支柱から建物方向に張り出させるように取付部材を取り付け、取付部材にシート状部材を取り付けた屋根構造体では、足場の支柱に存在する他の部材に干渉してしまうような位置には取付部材を取り付けることができないため、足場の支柱に対して取付部材を取り付けることができる場所が制限されてしまい、適切な位置に屋根構造体を設置することができないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、取り付けや取り外しが容易な簡易な構造でありつつも、自由度高く屋根構造体を設置することが可能なブラケットを提供することを目的とする。また、そのブラケットを用いて構成された屋根構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、第一に本発明は、鉛直方向に延びる足場の支柱に取り付けられ、板状部材が載置されることにより屋根構造体を構成するブラケットであって、前記支柱に着脱自在に連結される第1連結部と、前記第1連結部の下方において前記支柱に着脱自在に連結される第2連結部と、基端部が前記第1連結部に回動自在に軸着されており、前記板状部材が載置されて固定される載置面を上部に有する載置部と、基端部が前記第2連結部に、先端部が前記載置部にそれぞれ回動自在に軸着されている支持部と、を備え、前記支持部が、前記載置部が前記第1連結部に対して回動することに応じて伸縮するとともに、その伸縮した状態を保持可能に構成されており、前記第1連結部と前記第2連結部とが、それらの相対的な位置関係を変化させることができるように構成されている、ブラケットを提供する(発明1)。
【0008】
かかる発明(発明1)によれば、第1連結部と第2連結部とを足場の支柱に取り付け、載置部の載置面に屋根となる板状部材を載置して固定するだけで、塗装工事の作業スペースを覆う屋根構造体を設置することができる。また、載置部の基端部が第1連結部に回動自在に軸着されており、支持部が、載置部が支柱に対して回動することに応じて伸縮するとともに、その伸縮した状態を保持可能に構成されているため、足場から建物方向に延びる載置部の傾斜角度を建物の屋根の勾配に合わせることが容易にでき、これにより建物と屋根構造体との間に隙間が形成されることが抑制される。さらに、第1連結部と第2連結部とが、それらの相対的な位置関係を変化させることができるように構成されているので、足場の支柱に存在する他の部材に干渉しないように第1連結部と第2連結部とを足場の支柱に取り付けることができ、適切な位置に屋根構造体を設置することができる。よって、本発明によれば、取り付けや取り外しが容易な簡易な構造でありつつも、自由度高く屋根構造体を設置することが可能なブラケットの提供が実現される。
【0009】
上記発明(発明1)において、前記第1連結部及び前記第2連結部の上方の空間を覆うように前記載置部から前記支柱に向かって延設され、前記支柱が挿通される支柱挿通孔が形成された平板状の被覆部を備えていることが好ましい(発明2)。
【0010】
単に足場の支柱から建物方向に張り出させるように取付部材を取り付け、取付部材にシート状部材を取り付けた従来の屋根構造体では、建物と屋根構造体との間や、足場の支柱と屋根構造体との間に隙間ができてしまい、その隙間からの雨漏りが作業効率に影響を与えてしまうという問題があった。かかる発明(発明2)によれば、ブラケットの支柱への連結部分の上方の空間を覆うように載置部から支柱に向かって平板状の被覆部が延設されており、当該被覆部には支柱が挿通される支柱挿通孔が形成されているため、被覆部を足場の外側(建物の反対側)にまで張り出させることができ、これにより足場の支柱と屋根構造体との間に隙間が形成されることが抑制される。その結果、雨漏りを極力抑制することのできる屋根構造体を構成可能なブラケットの提供が実現される。
【0011】
上記発明(発明2)において、前記被覆部が、第1切り欠き部を有する略矩形状の第1板材と、第2切り欠き部を有する略矩形状の第2板材とを備え、前記第1切り欠き部と前記第2切り欠き部とが重なって前記支柱挿通孔を形成するように、前記第1板材と前記第2板材とが重ね合わせて連結されていてもよい(発明3)。
【0012】
上記発明(発明3)において、前記第1板材の少なくとも一部が前記載置部の前記載置面に上方から重なるように、前記第1板材が前記載置部に締結されていてもよい(発明4)。
【0013】
上記発明(発明4)において、前記第1板材には、長手方向が前記支柱から前記載置部が延びる方向に沿った長穴形状を有する貫通孔が形成されており、前記載置部の前記載置面に形成された締結孔と前記第1板材の前記貫通孔とに締結部材を挿通することによって、前記第1板材と前記載置部とが締結されていてもよい(発明5)。
【0014】
上記発明(発明3)において、前記第2板材の上面が前記第1板材の下面に着脱自在に連結されていてもよい(発明6)。
【0015】
第二に本発明は、少なくとも2つの上記発明(発明1-6)のブラケットと、少なくとも1つの前記板状部材とを備え、隣り合う2つの前記ブラケットの間に前記板状部材が跨設されるように、前記板状部材が前記ブラケットの前記載置面に載置されている、屋根構造体を提供する(発明7)。
【0016】
上記発明(発明7)において、前記少なくとも1つの前記板状部材が、隣り合って平板状に連結された第1板状部材と第2板状部材とを含み、前記ブラケットの前記載置面には、前記第1板状部材の前記第2板状部材と連結される側の端部と、前記第2板状部材の前記第1板状部材と連結される側の端部とが載置されていてもよい(発明8)。
【0017】
上記発明(発明8)において、前記第1板状部材及び/又は前記第2板状部材には、前記第1板状部材と前記第2板状部材との連結部分の近傍において、前記支柱が挿通される挿通空間が形成されていてもよい(発明9)。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、取り付けや取り外しが容易な簡易な構造でありつつも、自由度高く屋根構造体を設置することが可能なブラケットを提供することができる。また、そのブラケットを用いて構成された屋根構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る屋根構造体の基本構成を概略的に示す説明図である。
【
図2】屋根構造体を構成するブラケットの基本構成を概略的に示す説明図である。
【
図3】ブラケットの構成を説明するための分解斜視図である。
【
図4】ブラケットの載置部及び支持部の動き方を示す説明図である。
【
図5】ブラケットに板状部材を取り付けた状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態にのみ限定されるものではなく、記載された実施形態はあくまでも本発明の技術的特徴を説明するための例示にすぎない。また、各図面に示す形状や寸法はあくまでも本発明の内容の理解を容易にするために示したものであり、実際の形状や寸法を正しく反映したものではない。
【0021】
図1は本発明の一実施形態に係る屋根構造体10の基本構成を概略的に示す説明図である。屋根構造体10は、例えば塗装工事中の建物Hの周囲に立設された足場20に取り付けられて、悪天候時に雨雪避けとして機能するものである。足場20は支柱201に踏み板202が取り付けられており、踏み板202上で作業者が移動や作業をすることができるようになっている。屋根構造体10は、鉛直方向に延びる足場20の支柱201に取り付けられるブラケット1と、ブラケット1に載置されるルーフパネル2とによって構成される。屋根構造体10は、踏み板202上の作業者が雨雪に濡れないように、踏み板202を覆うように支柱201に取り付けられる。
【0022】
図2は、屋根構造体10を構成するブラケット1の基本構成を概略的に示す説明図であり、(a)はブラケット1を側方から見た図、(b)はブラケット1を上方から見た図である。また、
図3は、ブラケット1の構成を説明するための分解斜視図であり、支柱201は点線で示されている。
【0023】
図2及び3に示すように、ブラケット1は、支柱201に着脱自在に連結される第1連結部11と、第1連結部11の下方において支柱201に着脱自在に連結される第2連結部12と、基端部が第1連結部11に回動自在に軸着されており、ルーフパネル2が載置されて固定される載置面として機能する載置板131を上部に有する載置部13と、基端部が第2連結部12に、先端部が載置部13にそれぞれ回動自在に軸着されている支持部14と、第1連結部11及び第2連結部12の上方の空間を覆うように載置部13から支柱201に向かって延設され、支柱201が挿通される支柱挿通孔150が形成された平板状の被覆部15と、を備える。ブラケット1を構成する各部材の材質は、強度と耐久性に問題がない限り特に限定されるものではないが、例えば各種の鋼材やステンレス、アルミ等の金属を用いて製造することができる。
【0024】
第1連結部11は、支柱201を挟持するクランプ部材111と、クランプ部材111を支柱201に固定するための締結手段としてのボルト・ナット112と、クランプ部材111に載置部13を連結するための第1連結部材113とを備える。ボルト・ナット112を緩めた状態でクランプ部材111を支柱201に対して動かすことにより、第1連結部11の支柱201への取り付け位置は自由に変更することができる。第1連結部材113は支柱201の反対側に取付溝1131が形成された断面視コの字形状を有し、クランプ部材111に溶接や接着、ねじ止め等の公知の固定手段によって固定されている。
【0025】
第2連結部12は、支柱201を挟持するクランプ部材121と、クランプ部材121を支柱201に固定するための締結手段としてのボルト・ナット122と、クランプ部材121に支持部14を連結するための第2連結部材123とを備える。ボルト・ナット122を緩めた状態でクランプ部材121を支柱201に対して動かすことにより、第2連結部12の支柱201への取り付け位置は自由に変更することができる。第2連結部材123は平板形状を有し、クランプ部材121に溶接や接着、ねじ止め等の公知の固定手段によって固定されている。
【0026】
載置部13は、ルーフパネル2が載置されて固定される載置面として機能する載置板131と、載置板131の下側に配置され、載置板131が固定される角管形状の外管部材132とを備える。載置板131は、溶接や接着、ねじ止め等の公知の固定手段によって外管部材132に固定されている。外管部材132の基端部1321は、第1連結部11の第1連結部材113の取付溝1131に嵌合した状態で、第1連結部材113の上端部に回動自在に軸着されている。回動自在に軸着する具体的な方法は特に限定されるものではないが、例えば円柱状の軸部材を挿通するための挿通孔を外管部材132の基端部1321に穿設し、当該挿通孔に挿通した軸部材の両端を第1連結部材113に固定することができる。
【0027】
外管部材132には、外管部材132よりも若干径の小さい内管部材133が出没自在に挿入されており、載置されるルーフパネル2の大きさに応じて載置部13の長さを変更できるように構成されている。例えばルーフパネル2の支柱201から建物Hに向かう方向の長さが外管部材132の長さよりもかなり長い場合には、外管部材132の先端部から内管部材133が外部に引き出され、内管部材133の先端部に配置されている平板形状の支持板134と、外管部材132上部に配置されている載置板131とによってルーフパネル2が支持される。
【0028】
支持部14は、長尺状のケース部材141の内部にアーム部材142が出没自在に挿入されており、ケース部材141から引き出されたアーム部材142の長さを調節することによってその全長が伸縮可能に構成されている。支持部14には、ケース部材141から引き出されたアーム部材142をその状態で固定することができるロック機構143が設けられており、ロック機構143の操作によりワンタッチで支持部14の伸縮・固定が可能になっている。支持部14には、例えば自在ストップステーや多段階ロックステーと呼ばれる公知のステー部材を用いることができる。支持部14の伸縮・固定が簡単にできれば、載置部13の勾配も簡単に設定・調整することができる。
【0029】
支持部14のケース部材141の端部1411(すなわち支持部14の基端部)は、第2連結部12の第2連結部材123の一側面に回動自在に軸着されている。また、支持部14のアーム部材142の端部1421は、載置部13の外管部材132の下側中央やや先端寄りに回動自在に軸着されている。支持部14がこのように構成されていることにより、支持部14は、載置部13が第1連結部11に対して回動することに応じて伸縮するとともに、その伸縮した状態を保持可能に構成されていることになる。回動自在に軸着する具体的な方法は特に限定されるものではないが、例えば円柱状の軸部材を挿通するための挿通孔をケース部材141の端部1411やアーム部材142の端部1421に穿設し、当該挿通孔に挿通した軸部材を第2連結部材123や外管部材132に固定することができる。
【0030】
図4(a)に示すように、第1連結部11と第2連結部12とを支柱201に取り付ける間隔をS
1として取り付けた場合に、ルーフパネル2が水平になるように載置部13の勾配を水平軸に対して0度にした際の支持部14の長さをL
1とする。載置部13の勾配を、
図4(b)に示すように、水平軸に対してα度上方に設定すれば、支持部14の長さL
2は、勾配0度のときのL
1よりも長くしなければならなくなるので、ケース部材141からアーム部材142を引き出して支持部14の長さを伸ばすことになる。一方、載置部13の勾配を水平軸に対してα度上方に維持したまま、
図4(c)に示すように、第1連結部11と第2連結部12とを支柱201に取り付ける位置を変更し、その間隔を距離S
2だけ離して取り付けるようにすれば、支持部14の長さL
3は、第1連結部11と第2連結部12との取付位置の間隔がS
1のときのL
2よりもさらに長くしなければならなくなるので、ケース部材141からアーム部材142をさらに引き出し、支持部14の長さをさらに伸ばすことになる。
【0031】
このように、本実施形態のブラケット1であれば、第1連結部11と第2連結部12とを足場20の支柱201に取り付け、載置部13の載置面(載置板131)に屋根となる板状部材(ルーフパネル2)を載置して固定するだけで、塗装工事の作業スペースを覆う屋根構造体10を設置することができる。また、載置部13の基端部が第1連結部11に回動自在に軸着されており、支持部14が、載置部13が支柱201に対して回動することに応じて伸縮するとともに、その伸縮した状態を保持可能に構成されているため、足場20から建物方向に延びる載置部13の傾斜角度を建物Hの屋根Rの勾配に合わせることが容易にでき、これにより建物Hと屋根構造体10との間に隙間が形成されることが抑制される。
【0032】
また、本実施形態のブラケット1は、支持部14が、載置部13が第1連結部11に対して回動することに応じて伸縮するとともに、その伸縮した状態を保持可能に構成されていることにより、第1連結部11と第2連結部12とが、それらの相対的な位置関係を変化させることができるように構成されている。つまり、ブラケット1では、第1連結部11と第2連結部12とを支柱201に取り付けた際の鉛直方向における位置関係が可変になっており、第1連結部11と第2連結部12との間の距離が固定されていない構造になっているので、足場20の設置場所や、足場20の支柱201に存在する他の部材に影響を受けることなく、足場20に取り付けることができるようになっている。
【0033】
第1連結部11と第2連結部12とが一つの部材として構成されているものや、第1連結部11と第2連結部12とが別部材であっても両者が載置部13及び支持部14以外の部材を用いて連結されているものでは、このように第1連結部11と第2連結部12との相対的な位置関係を変化させることができず、足場への設置場所が制限されてしまうおそれがある。本実施形態のブラケット1であれば、第1連結部11と第2連結部12とが、それらの相対的な位置関係を変化させることができるように構成されているので、足場20の支柱201に存在する他の部材に干渉しないように第1連結部11と第2連結部12とを足場20の支柱201に取り付けることができ、適切な位置に屋根構造体10を設置することができる。
【0034】
建物Hと屋根構造体10との間や、足場20の支柱201と屋根構造体10との間に隙間ができてしまい、その隙間からの雨漏りが作業効率に影響を与えてしまうという問題を解決すべく、本実施形態のブラケット10は、第1連結部11及び第2連結部12の上方の空間を覆うように載置部13から支柱201に向かって延設され、支柱201が挿通される支柱挿通孔150が形成された平板状の被覆部15を備えている。被覆部15は、輪郭が略U字状の第1切り欠き部1511を有する略矩形状の第1板材151と、輪郭が略U字状の第2切り欠き部1521を有する略矩形状の第2板材152とを備え、第1切り欠き部1511と第2切り欠き部1521とが重なって支柱挿通孔150を形成するように、第1板材151と第2板材152とが重ね合わされて連結されている。
【0035】
第1板材151は、その少なくとも一部が載置部13の載置板131(ルーフパネル2が載置されて固定される載置面として機能)に上方から重なるように、載置部13にボルト・ナットやねじ等の公知の締結手段を用いて締結される。本実施形態においては、第1板材151には、長手方向が支柱201から載置部13が延びる方向に沿った長穴形状を有する貫通孔1512が形成されており、載置部13の載置板131に形成された締結孔1311と第1板材151の貫通孔1512とに締結部材(ボルトやねじ等)を挿通することによって、第1板材151と載置部13とが締結されている。載置部13の勾配を変更した場合に、第1板材151と載置部13との締結状態が固定されてしまっていると、支柱201と第1切り欠き部1511との間に隙間が生じてしまったり、支柱201に第1切り欠き部1511が干渉してしまったりする。そこで、貫通孔1512を、長手方向が支柱201から載置部13が延びる方向に沿った長穴形状を有するように形成することで、第1板材151の載置部13への締結位置をスライドさせることができるようになっている。
【0036】
第2板材152は、その上面が第1板材151の下面に着脱自在に連結されている。具体的には、第2板材152の上面において、第2切り欠き部1521の両側部に面ファスナ部材1522(例えばフック面部材)が固着されており、第1板材151の下面において、第1切り欠き部1511の両側部に面ファスナ部材1513(例えばループ面部材)が固着されている。第2板材152の面ファスナ部材1522の固着されている位置と、第1板材151の面ファスナ部材1513の固着されている位置とを合わせることにより、両者は着脱自在に連結されることになる。第1板材151の面ファスナ部材1513は、第2板材152の面ファスナ部材1522よりも大きく、具体的には第2板材152の面ファスナ部材1522を複数個繋げた程度の長さを有している。このような構成にすることにより、面ファスナ部材1522を面ファスナ部材1513のどこに係着させるかによって、第1板材151と第2板材152との重なり具合を調整して連結することができ、それによって、第1板材151の第1切り欠き部1511と第2板材152の第2切り欠き部1521とを重ねることで形成される支柱挿通孔150の大きさ、形状を変更することができる。また、第2板材152は、第1板材151と第2板材152とを連結した状態(すなわち被覆部15を1つの部材とした状態)で、第1板材151を載置部13に締結した場合に、載置板131と第2板材152とが重ならないような大きさ・形状になっている。
【0037】
このように、ブラケット1の支柱201への連結部分の上方の空間を覆うように載置部13から支柱201に向かって平板状の被覆部15(連結された第1板材151及び第2板材152)が延設されており、当該被覆部15には支柱が挿通される支柱挿通孔150(重なった第1切り欠き部1511及び第2切り欠き部1521)が形成されているため、被覆部15を足場20の外側(建物Hの反対側)にまで張り出させることができ、これにより足場20の支柱201と屋根構造体10との間に隙間が形成されることが抑制される。このようなブラケット1であれば、雨漏りを極力抑制することのできる屋根構造体10を構成可能となる。
【0038】
屋根構造体10は、少なくとも2つのブラケット1と、少なくとも1つのルーフパネル2とを備え、隣り合う2つのブラケット1の間にルーフパネル2が跨設されるように、ルーフパネル2がブラケット1の載置部13の載置板131(載置面)に載置されている。複数のブラケット1を足場20に取り付け、1つのブラケット1に対して両側から2つのルーフパネル2を載置することにより、複数のルーフパネル2を、足場20の支柱201に干渉しないように、かつ、隙間を開けないように連続して並設することができる。
【0039】
図5(a)に示すように、隣り合って平板状に連結された2枚のルーフパネル2a、2bを1つのブラケット1に載置する場合、ブラケット1の載置板131(載置面)には、ルーフパネル2aのルーフパネル2bと連結される側の端部と、ルーフパネル2bのルーフパネル2aと連結される側の端部とが載置される。
【0040】
このルーフパネル2a及びルーフパネル2bには、ルーフパネル2aとルーフパネル2bとの連結部分の近傍において、支柱201が挿通される挿通空間が形成されている。本実施形態においては、ルーフパネル2aのルーフパネル2b側の一つの角周辺と、ルーフパネル2bのルーフパネル2a側の一つの角周辺とが削り取られており、ルーフパネル2aとルーフパネル2bとを連結させた状態では、輪郭が略U字状の挿通部21が形成されている。このようにルーフパネル2aとルーフパネル2bとの連結部分の近傍において挿通部21が形成されていれば、ルーフパネル2aとルーフパネル2bとの連結部分がブラケット1の載置板131の上部に位置するように屋根構造体10を構成することができるので、ルーフパネル2a及びルーフパネル2bの間からの雨漏りを極力抑制することができる。
【0041】
図5(b)には、1つのブラケット1に対して両側から2つのルーフパネル2を載置する場合の変形例が示されている。本変形例においても、ルーフパネル2cとルーフパネル2dとの連結部分の近傍において、支柱201が挿通される挿通空間として、輪郭が略U字状の挿通部22が形成されているが、2つのルーフパネル2c、2dの両者を用いて挿通部22を形成してはおらず、ルーフパネル2dのルーフパネル2c側の端部に輪郭が略U字状の挿通部22が形成されている。このように、隣り合って平板状に連結された2枚のルーフパネル2c又はルーフパネル2dのどちらか一方にのみ支柱201が挿通される挿通空間が形成されていてもよい。
【0042】
なお、ブラケット1における被覆部15の支柱挿通孔150と支柱201との間や、屋根構造体10における挿通部21、22と支柱201との間には多少の隙間が生じてしまうが、この隙間からの雨漏りを極力抑制するために、当該隙間を塞ぐようなパッキン部材を支柱201に取り付けてもよい。
【0043】
以上、本発明に係るブラケット及び屋根構造体について図面に基づいて説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、種々の変更実施が可能である。
【符号の説明】
【0044】
10 屋根構造体
1 ブラケット
11 第1連結部
111 クランプ部材
112 ボルト・ナット
113 第1連結部材
12 第2連結部
121 クランプ部材
122 ボルト・ナット
123 第2連結部材
13 載置部
131 載置板
132 外管部材
133 内管部材
134 支持板
14 支持部
15 被覆部
151 第1板材
152 第2板材
2,2a,2b ルーフパネル(板状部材)
21 挿通部
20 足場
201 支柱
202 踏板
H 建物
R 屋根