(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129242
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】冷却装置
(51)【国際特許分類】
F28D 15/02 20060101AFI20240919BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240919BHJP
H02K 9/19 20060101ALN20240919BHJP
H02K 9/02 20060101ALN20240919BHJP
【FI】
F28D15/02 101L
F28D15/02 102A
H05K7/20 R
H02K9/19 Z
H02K9/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038323
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智之
【テーマコード(参考)】
5E322
5H609
【Fターム(参考)】
5E322AA05
5E322AA11
5E322BB03
5E322DA01
5E322DB02
5E322DB06
5E322DB12
5E322FA01
5H609QQ02
5H609QQ04
5H609RR32
5H609RR53
(57)【要約】 (修正有)
【課題】冷却効率の向上を図ることができる冷却装置を提供する。
【解決手段】冷却装置100は、発熱部材であるモータが収められる収容空間S3と、収容空間S3の外側に冷媒が流れる流路空間S4とが設けられ、流路空間S4には、収容空間S3側に位置する箇所が当該箇所よりも下方に位置するように、仕切る仕切板130が設けられる。流路空間が仕切板によって仕切られることで、側面流路131が形成される。この流路は、いずれも一面が収容空間を囲む内側面によって形成される。冷媒とモータとの熱交換に伴って、気泡が発生すると、側面流路において、気泡が側面流路の上方に移動する。側面流路において、内側面に隣接する箇所は、上端部よりも下方に位置する。これによって、側面流路では、気泡が上昇することで、内側面から離間し、内側面を介した熱交換が阻害されることが抑制される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱部材が収められる収容部と、
収容部の外側に冷媒が流れる流路と
が設けられ、
前記流路には、前記収容部側に位置する箇所が当該箇所よりも下方に位置するように、仕切る仕切り部が設けられる
冷却装置。
【請求項2】
前記流路は、略水平方向に延び、
前記仕切り部は、前記略水平方向に沿って延びる
請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記流路には、
上方に向かって延びる流路である上昇流路と、
前記上昇流路から分岐し、前記上昇流路から離間するにつれて、上方に向かって延びる分岐流路と、
が設けられる
請求項2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記流路は、略鉛直方向に延び、
前記仕切り部は、前記略鉛直方向に交差する方向に延びる
請求項1に記載の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷媒が流通可能な流路が設けられ、回転電機等の発熱部材を覆う、所謂ウォータージャケットを備える冷却装置が知られている。このような冷却装置は、発熱部材に対向する流路を流れる冷媒が当該発熱部材と熱交換することで、当該発熱部材の冷却を行う。
このような冷却装置には、ウォータージャケットにおいて、冷媒が流れる流路全体が単一の空間で形成されるものがある(例えば、特許文献1参照)。
また、ウォータージャケットを備える冷却装置には、発熱部材からの熱によって沸騰する冷媒を用いる、所謂沸騰冷却を行うものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように、冷媒が流れる流路全体が単一の空間で形成されるウォータージャケットで沸騰冷却を行うと、発熱部材に対向する箇所に、冷媒の沸騰に伴って発生する気泡が付着し、冷却効率が低下する虞がある。
本発明は、冷却効率の向上を図ることができる冷却装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、発熱部材が収められる収容部と、収容部の外側に冷媒が流れる流路とが設けられ、前記流路には、前記収容部の側に位置する箇所が当該箇所よりも下方に位置するように、仕切る仕切り部が設けられる冷却装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、冷却効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して実施形態1、2について説明する。
各図面において、符号FRは、モータ80が下面を設置面に接する底面として設置(載置)された状態における前方を示し、符号UPは、上記状態におけるモータ80の上方を示し、符号LHは、上記状態におけるモータ80の左方を示す。以下の説明において、特に説明がない限り、各方向は、これらのモータ80の方向に沿った方向である。
【0009】
<実施形態1>
図1は、本実施形態に係る冷却装置1を示す図である。
図1では、筐体10と、モータ80との断面を示す。当該断面は、上下方向、及び軸心LCに平行な平面での縦断面である。
図1に示すように、本実施形態の冷却装置1は、モータ80を冷却する装置である。
モータ80は、ステータ82を備え、ステータ82の内周側にエアギャップGPを空けてロータ84が回転可能に配置される。このモータ80は、電動車両、又はハイブリッド車両の駆動源等として利用されるインナーロータ型のモータである。
図1中の符号LCは、ロータ軸86の軸心を示す。ロータ軸86の軸心LCは、ロータ軸86の中心軸、モータ80の軸心及び中心軸と一致する。本実施形態において、モータ80は、軸心LCが略水平方向に延びるように配置される。
【0010】
本実施形態のモータ80は、永久磁石の代わりにロータ巻線85をロータ84が備える巻線界磁式である。モータ80は、ロータ巻線85を備えるロータ84と、ステータ巻線83を備えるステータ82と、を備える。ロータ巻線85は、界磁巻線とも称され、ステータ巻線83は、電気子巻線とも称される。なお、
図1及び後述する各図においては、ロータ巻線85及びステータ巻線83等を模式的に示す。
【0011】
ロータ84には、ロータ84に給電するスリップリングが固定され、このスリップリングとブラシを介して電流がロータ巻線85に供給される。なお、本実施形態では、モータ80が巻線界磁式の場合を説明するが、巻線界磁式に限定されず、例えば、ロータ84に永久磁石を有する永久磁石式でもよい。
【0012】
ロータ84は、ロータ軸86と、ロータ軸86に固定されるロータコア88と、ロータコア88の軸方向両側に配置されるアウターリング90と、を備える。アウターリング90は、ロータ軸86に固定され、エンドプレートとも称されるモータ構成部品である。
ロータコア88とアウターリング90との間には、絶縁材からなるインシュレータ92が配置される。なお、モータ80は、
図1及び
図2に記載するモータ構造に限定されず、ステータ82、ロータ84及びアウターリング90を有する任意のモータ構造を適用してもよい。
【0013】
冷却装置1は、モータ80を覆う筐体10を備える。筐体10は、内部にステータ82が固定され、モータ80の所謂モータケースとして機能する。
筐体10には、冷媒Rが流通可能な空間が設けられ、当該空間に流通する冷媒Rとモータ80とで熱交換することで、モータ80が冷却される。このため、筐体10は、モータ80の所謂ウォータージャケットとして機能する。
【0014】
冷媒Rは、液相状態で筐体10を流れると共に、モータ80からの熱で気相変化する流体である。冷媒Rは、モータ80の発熱温度よりも低い沸点を有する。これによって、冷媒Rは、モータ80の発熱で沸騰可能である。当該冷媒Rには、水やジエチルエーテル、ロングライフクーラント、フロン系冷媒等、モータ80の発熱温度に応じて、任意の冷媒が用いられてもよい。
【0015】
筐体10には、流入管20と、流出管22とを介して、熱交換器24と、循環ポンプ26とが接続される。
流入管20と、流出管22とは、冷媒Rが流通する配管である。
【0016】
熱交換器24は、筐体10から流れ込む冷媒Rの熱を放熱して冷却する凝縮器として機能する。本実施形態の熱交換器24は、空気と熱交換することで冷却するラジエータである。冷却装置1は、熱交換器24に送風する送風機28を備える。
なお、冷却装置1は、送風機28が省略されてもよい。
また例えば、熱交換器24は、流入する冷媒Rを、他の冷温冷媒と熱交換させることで、冷媒Rを凝縮させる所謂チラーであってもよい。
熱交換器24は、「熱交換部」に相当する。
【0017】
循環ポンプ26は、冷媒R吸入して所定の圧力で吐出することで、冷媒Rを、筐体10と、流出管22と、熱交換器24と、流入管20とで形成される冷媒回路内に流通させる。本実施形態では、冷媒Rは、循環ポンプ26によって、筐体10から流出管22を介して、熱交換器24に流れ込み、当該熱交換器24から流入管20を介して筐体10に流入する。
【0018】
次いで、筐体10について詳述する。
上述の通り、筐体10は、内部にモータ80を収める部材である。筐体10は、熱伝導率が高い材料が用いられることが望ましい。
本実施形態の筐体10は、中空の円柱状に形成される。筐体10は、軸心LCと略同一の中心軸を備える。
筐体10は、背面部12と、前面部14と、側面部16とを備える。
【0019】
背面部12は、モータ80を背面側から覆い、筐体10の背面を形成する。背面部12は、平面視で円形状に形成される。
前面部14は、モータ80を前面側から覆い、筐体10の前面を形成する。前面部14は、平面視で円形状に形成される。
側面部16は、モータ80の側面を覆い、筐体10の側面を形成する。側面部16は、円筒形状に形成され、後端が背面部12によって閉塞され、前端が前面部14に閉塞される。
【0020】
筐体10には、内部にモータ80が収められる収容空間S1が設けられる。筐体10は、この収容空間S1を囲む内側面11を備える。モータ80は、この内側面11に取り付けられることで、筐体10に固定される。内側面11は、モータ80の外側面に対向する対向面となる。
【0021】
筐体10には、流路空間S2が設けられる。当該流路空間S2は、内側面11によって収容空間S1から隔てられる。筐体10において、流路空間S2は、収容空間S1を囲むように設けられる。筐体10には、流路空間S2が所定箇所で仕切られることで、管状の流路が複数形成される。当該流路には、冷媒Rが流される。
収容空間S1は、「収容部」に相当し、流路空間S2は、「流路」に相当する。
【0022】
図1に示すように、流入管20は、筐体10の下端部、且つ後端部に設けられる流入路13に接続される。
流入路13は、一端が背面部12の下端部に開口し、他端部が側面部16の下端部に沿って延びる管路状の流路である。流入路13は、軸心LCの略直下に位置し、軸心LCに略平行に延びる。
【0023】
図2は、
図1のII-II断面図である。
図2では、周縁流路21と、上昇流路23と、分岐流路25との各々が互いに合流する箇所を通る平面で、背面部12を切断した断面を示す。
図2には、説明の便宜上、軸心LCに交差し、上下方向に沿って延びる直線である基準線Vを一点鎖線で示す。
図2に示すように、背面部12において、流入路13には、一対の周縁流路21と、上昇流路23と、が接続される。換言すれば流入路13は、背面部12において、4方向に分岐する。
【0024】
一対の周縁流路21は、背面部12において、流入路13の左右両側から分岐する。分岐流路25の各々は、平面視で、背面部12の周縁に沿って円弧状に延び、背面部12の上端で互いに接続される。すなわち、一対の周縁流路21は、背面部12において、平面視で環状の流路を形成する。
上昇流路23は、背面部12の平面視で、背面部12の略中心を通って、当該背面部12の上端部にまで直線状に延び、周縁流路21の各々の接続箇所に接続される流路である。
【0025】
上昇流路23には、当該上昇流路23の中途部の複数個所で、当該上昇流路23から左右方向の各々に分岐する分岐流路25が設けられる。本実施形態の上昇流路23には、軸心LCよりも上方で、左右方向の各々に5つの分岐流路25が接続される。
分岐流路25は、いずれも上昇流路23から周縁流路21に直線状延び、当該周縁流路21に接続される。分岐流路25は、いずれも上昇流路23から周縁流路21に延びるにつれて上方に向かう。このため、上昇流路23の上端部と、上昇流路23と分岐流路25との分岐箇所と、分岐流路25の上端部とが成す角度は、鋭角となる。
【0026】
図1に示すように、周縁流路21に接続される分岐流路25は、当該接続箇所から、前方に向かって延びる。すなわち、分岐流路25は、側面部16に向かって延びる。
同様に、周縁流路21に接続される上昇流路23は、側面部16に向かって延びる。
【0027】
図3は、
図1のIII-III断面図である。
図3では、軸心LCが直交する平面で、側面部16を切断した断面を示す。
図3には、説明の便宜上、軸心LCに交差し、上下方向に沿って延びる直線である基準線Vを一点鎖線で示す。
図3に示すように、側面部16の内部には、流路空間S2が設けられる。流路空間S2は、側面部16の周方向全体、及び長手方向全体に亘って設けられる。
側面部16には、複数の仕切板30が設けられる。仕切板30は、水平方向に平面が直交するように配置される。すなわち、仕切板30は、平面が上下方向に沿って延びる。仕切板30の各々は、下端が内側面11に連結され、上端が側面部16の外側面19に接続される。
【0028】
仕切板30は、いずれも軸心LCよりも上方に設けられる。仕切板30は、軸心LCに交差し、上下方向に沿って延びる直線である基準線Vを挟んで略左右対称に配置される。これらの仕切板30によって、側面部16には、複数の側面流路31が設けられる。本実施の形態では、側面部16には、軸心LCから視て、当該軸心LCよりも上方で、左右方向の各々に5つの側面流路31が設けられる。さらに、側面部16には、軸心LC方向から視て、側面流路31の各々の上方に位置する上端部に、上端流路33が設けられる。
【0029】
側面流路31の各々と、上端流路33とは、外側面19と、内側面11とによって、上下が囲まれ、仕切板30によって左右から囲まれることで形成される。
仕切板30は、「仕切り部」に相当する。
【0030】
側面流路31と、上端流路33とは、側面部16の長手方向全体に亘って延びる。側面流路31の後端の各々には、上下方向、及び左右方向において、略同一位置に配置される分岐流路25の前端が連結される。
同様に、上端流路33の後端には、上昇流路23が連結される。
【0031】
図4は、側面部16の縦断面図である。
図4では、上下方向、及び軸心LCに平行な平面での側面部16の縦断面を示す。
図4では、説明の便宜上、第1側面流路35を1点鎖線で示し、第2側面流路37を二点鎖線で示す。
図3に示すように、側面部16には、下方側に下方流路39が設けられる。下方流路39は、モータ80の下方側全体を囲む単一の空間から成る流路である。下方流路39は、側面部16の外側面19と、内側面11とによって、上下が囲まれ、仕切板30によって左右から囲まれることで形成される。
図4に示すように、下方流路39には、複数の仕切体40が設けられる。仕切体40は、下方流路39において、軸心LCに直交する平面を備える板状部材である。仕切体40によって仕切られることで、下方流路39には、複数の分配流路41が設けられる。
【0032】
分配流路41は、いずれも下端が流入路13に接続され、上端が下方流路39の上部にまで延びると共に、上端が下方流路39に連通可能に設けられる。分配流路41は、側面部16の長手方向全体に亘って互いに所定の間隔を空けて設けられる。分配流路41は、正面視で、左右両方に配置差される。
【0033】
図1に示すように、上端流路33と、側面流路31と、流入路13の先端部には、接続流路51が設けられる。接続流路51は、前面部14において、側面部16側に位置する平面に一端が開口し、板厚方向に沿って前方に延びる流路である。
接続流路51の各々は、合流流路53に他端が接続される。合流流路53は、前面部14の内部において、上下方向に延びる流路である。合流流路53には、分配流路41よりも下方に位置する箇所において、冷媒戻し流路55が接続される。合流流路53に流れ込む冷媒Rのうち、一部の液相の冷媒Rは、この冷媒戻し流路55を介して、下方流路39に送り出される。
【0034】
合流流路53には、気相流出流路15と、液相流出流路17とが接続される。気相流出流路15は、合流流路53の上端部に接続され、液相流出流路17は、接続流路51の各々よりも下方で合流流路に接続される。気相流出流路15と、液相流出流路17とは、前面部14の板厚方向に沿って前方に延び、前面部14の前面側に開口する。気相流出流路15と、液相流出流路17とには、いずれも流出管22が連結される。本実施の形態では、流出管22は、中途部で分岐する分岐管である。
なお、気相流出流路15と、液相流出流路17とは、少なくとも一方が前面部14の平面視で、当該前面部14の外周方向に延びてもよい。
【0035】
次いで、本実施形態の冷却装置1の動作について説明する。
モータ80が駆動すると、駆動熱が発生する。冷却装置1は、循環ポンプ26によって送り出されることで、筐体10の流路空間S2に設けられる流路の各々に流される。
筐体10の流路空間S2では、モータ80の発熱によって、冷媒Rが沸騰し、気相の冷媒Rとなる。具体的には、冷却装置1では、筐体10の内側面11を介して、モータ80と冷媒Rとが熱交換することで、筐体10の内側面11に接触する冷媒Rが沸騰する。沸騰する冷媒Rの気化潜熱によって、筐体10の内側面11を介して、モータ80が冷却される。
【0036】
沸騰した冷媒Rは、上述のように、気相の冷媒Rとなる。これによって、内側面11の周辺では、気相となった冷媒Rの気泡が発生する。
気泡が発生すると、表面張力によって、当該気泡が内側面11に付着する場合がある。これによって、気泡が内側面11における断熱空気層となり、冷媒Rと、モータ80との熱交換が阻害される虞がある。
【0037】
図3に示すように、本実施の形態では、流路空間S2が複数の仕切板30によって仕切られることで、複数の側面流路31と、上端流路33と、下方流路39とが形成される。これらの流路は、いずれも一面が内側面11によって形成される。
複数の側面流路31と、上端流路33と、下方流路39との各々には、いずれも個別に冷媒Rが流される。このため、筐体10では、これらの流路ごとに、冷媒Rと、モータ80との熱交換が行われる。
【0038】
このような熱交換に伴って、気泡が発生すると、複数の側面流路31と、上端流路33と、下方流路39との各々において、当該気泡が流路の上方に移動する。
図3に示すように、複数の側面流路31と、上端流路33と、下方流路39との各々において、上端部は、内側面11から離間する位置に配置される。換言すれば、これらの流路において、内側面11に隣接する箇所は、上端部よりも下方に位置する。これによって、これらの流路では、気泡が上昇することで、内側面11から離間し、当該内側面11を介した熱交換が阻害されることが抑制される。
【0039】
そして、これらの流路では、気泡が離間した内側面11に沿って、新たな液相の冷媒Rが供給される。すなわち、冷却装置1では、内側面11に沿って流れる液相の冷媒Rの流量の増加を図ることができる。これによって、冷却装置1は、より効率良くモータ80を冷却できる。
加えて、冷却装置1では、流路空間S2を複数の流路に分割することで、各流路を満たす冷媒Rの流通量の削減を図ることができる。
【0040】
筐体10では、側面部16に限らず、背面部12と、前面部14とにおいてもモータ80との熱交換が行われる。
上述のように、背面部12では、分岐流路25の各々が径方向外側、すなわち冷媒Rの流れる下流側に向かうにつれて、上方に延びる。これによって、背面部12に設けられる流路を流れる冷媒Rと、モータ80とが熱交換した場合に、これらの分岐流路25に沿って、気泡を背面部12の上方に誘導することができる。
【0041】
なお、本実施形態では、モータ80、及び筐体10は、軸心LCが水平に配置されるとした。しかしながらこれに限らず、軸心LCが鉛直方向に交差する方向に配置されてもよい。例えば、筐体10において、前面部14が背面部12よりも上方に位置するように配置される場合、上昇流路23の上端部と、上昇流路23と分岐流路25との分岐箇所と、分岐流路25の上端部とが成す角度は、本実施形態における角度よりもより鋭角であることが望ましい。これによって、冷却装置1では、軸心LCが鉛直方向に交差する方向に配置された場合であっても、分岐流路25に沿って、より確実に気泡を背面部12の上方に誘導することができる。
【0042】
図1に示すように、熱交換器24から供給される冷媒Rは、筐体10の下端部に位置する流入路13から筐体10に入り込み、気相流出流路15と、液相流出流路17とから流出する。気相流出流路15と液相流出流路17とは、流入路13よりも上方に位置する。気相の冷媒Rは、筐体10の上端部に位置する気相流出流路15から流出し、液相の冷媒Rは、液相流出流路17から流出する。
このように、冷却装置1は、筐体10の下端から冷媒Rが流入し、筐体10の上端から流出する。これによって、冷却装置1では、筐体10の流路空間S2において、気泡が滞留することが抑制される。
【0043】
<実施形態2>
次に、実施形態2について説明する。
図5は、実施形態2に係る冷却装置100を示す。
図5において、
図1と同一箇所には、同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施形態の冷却装置100は、軸心LCが上下方向に沿って延びるように配置される筐体110を備える点で冷却装置1と相違する。
筐体110は、筐体10と同様に、モータ80を覆う所謂モータケースとして機能する。
筐体110には、冷媒Rが流通可能な流路空間S4が設けられ、当該流路空間S4に流通する冷媒Rとモータ80とで熱交換することで、モータ80が冷却される。本実施形態では、モータ80は、軸心LCが略鉛直方向に沿って延びるように配置される。
【0044】
本実施形態の筐体110は、中空の円柱状に形成される。筐体110は、軸心LCと略同一の中心軸を備える。
筐体110は、底面部112と、上面部114と、側面部16とを備える。
【0045】
底面部112は、モータ80を底面側から覆い、筐体110の背面を形成する。底面部112は、平面視で円形状に形成される。
上面部114は、モータ80を上面側から覆い、筐体110の前面を形成する。上面部114は、平面視で円形状に形成される。
側面部116は、モータ80の側面を覆い、筐体110の側面を形成する。側面部116は、円筒形状に形成され、下端が底面部112によって閉塞され、上端が上面部114に閉塞される。
【0046】
筐体110には、内部にモータ80が収められる収容空間S3が設けられる。筐体110は、この収容空間S3を囲む内側面111を備える。モータ80は、この内側面111に取り付けられることで、筐体110に固定される。内側面111は、モータ80の外側面に対向する対向面となる。
【0047】
筐体110には、流路空間S4が設けられる。当該流路空間S4は、内側面111によって収容空間S3から隔てられる。筐体110において、流路空間S2は、収容空間S1を囲むように設けられる。筐体110には、流路空間S2が所定箇所で仕切られることで、管状の流路が複数形成される。当該流路には、冷媒Rが流される。
【0048】
流路空間S4は、側面部116の内部に設けられる。流路空間S4は、側面部16の周方向全体、及び長手方向全体に亘って設けられる。
側面部16の内部には、仕切板130が設けられる。仕切板130は、長尺の板状部材である。仕切板130は、流路空間S4の下端部から上端部に亘って、らせん状に上昇しながら内側面111に沿って、延びるように配置される。
収容空間S3は、「収容部」に相当し、流路空間S4は、「流路」に相当する。
【0049】
仕切板130は、長手方向に直交する方向に位置する一端が内側面111に連結され、他端が側面部116の外側面119に接続される。
仕切板130は、流路空間S4において、長手方向に直交する平面での断面視で、内側面111から外側面119に向かうにつれて、上方に延びるように配置される。
【0050】
これによって、流路空間S4には、上下方向が仕切板130によって囲まれ、左右方向が内側面111と側面部116とによって囲まれる管状の流路である側面流路131が形成される。側面流路131は、側面部116において、下端部から上端部に亘って、らせん状に上昇しながら延びる。
側面流路131の下端部には、流入管20が接続され、上端部には、流出管22が接続される。
【0051】
筐体110の流路空間S4では、モータ80の発熱によって、冷媒Rが沸騰し、気相の冷媒Rとなる。この場合、冷却装置100では、筐体110の内側面111を介して、モータ80と冷媒Rとが熱交換することで、筐体110の内側面111に接触する冷媒Rが沸騰する。沸騰する冷媒Rの気化潜熱によって、筐体10の内側面111を介して、モータ80が冷却される。これによって、内側面111の周辺では、気相となった冷媒Rの気泡が発生する。
【0052】
本実施の形態では、流路空間S4が仕切板130によって仕切られることで、側面流路131が形成される。この流路は、いずれも一面が内側面111によって形成される。
側面流路131には、冷媒Rが流される。
【0053】
冷媒Rとモータ80との熱交換に伴って、気泡が発生すると、側面流路31において、当該気泡が側面流路131の上方に移動する。
側面流路131において、上端部は、内側面111から離間する位置に配置される。換言すれば、側面流路131において、内側面111に隣接する箇所は、上端部よりも下方に位置する。これによって、側面流路131では、気泡が上昇することで、内側面111から離間し、当該内側面11を介した熱交換が阻害されることが抑制される。
【0054】
そして、側面流路131では、気泡が離間した内側面111に沿って、新たな液相の冷媒Rが供給される。すなわち、冷却装置100では、内側面111に沿って流れる液相の冷媒Rの流量の増加を図ることができる。これによって、冷却装置100は、より効率良くモータ80を冷却できる。
加えて、冷却装置1では、流路空間S4を仕切板130で仕切ることで、側面流路131を満たす冷媒Rの流通量の削減を図ることができる。
【0055】
上述した実施形態は、本発明の一態様を例示したものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形、及び応用が可能である。
【0056】
冷却装置1は、モータ80に限らず、オルタネータ等の他の回転電機や、インバータのように電子基板や電気部品を備える電子機器等、駆動に伴って発熱する各種の発熱部材であってもよい。この場合、筐体10は、柱状に限らず、冷却装置1が冷却する発熱部材の形状に合わせて、当該発熱部材を収容可能な任意の形状に形成されてもよい。
【0057】
上述した実施の形態では、冷却装置1、100は、循環ポンプ26によって冷媒Rが循環するとした。しかしながらこれに限らず、冷却装置1、100は、所謂熱対流で冷媒Rを循環可能に形成されてもよい。
【0058】
上述した実施の形態では、冷媒Rは、発熱部材の熱によって蒸発する冷媒であるとしたが、これに限らず、発熱部材との熱交換後に相変化しない冷媒であってもよい。
【0059】
上述した実施形態における水平、及び垂直等の方向や各種の数形状は、特段の断りがない限り、それら方向や形状と同じ作用効果を奏する所謂均等の範囲を含む。
【0060】
[上記実施の形態によりサポートされる構成]
上記実施の形態は、以下の構成をサポートする。
【0061】
(構成1)発熱部材が収められる収容部と、収容部の外側に冷媒が流れる流路とが設けられ、前記流路には、前記収容部側に位置する箇所が当該箇所よりも下方に位置するように、仕切る仕切り部が設けられる冷却装置。
この構成によれば、冷却装置では、流路において、気相となる冷媒を収容部から離間する方向に誘導できる。これによって、冷却装置は、冷却効率の低下を抑制できる。
加えて、冷却装置では、流路を複数の流路に分割することで、各流路を満たす冷媒の流通量の削減を図ることができる。
【0062】
(構成2)前記流路は、略水平方向に延び、前記仕切り部は、前記略水平方向に沿って延びる構成1に記載の冷却装置。
この構成によれば、冷却装置は、流路に生じた気泡を、上方に誘導することができる。
【0063】
(構成3)前記流路には、上方に向かって延びる流路である上昇流路と、前記上昇流路から分岐し、前記上昇流路から離間するにつれて、上方に向かって延びる分岐流路と、が設けられる構成2に記載の冷却装置。
この構成によれば、冷却装置は、分岐流路に沿って、流路空間に生じた気泡を、上方に誘導することができる。
【0064】
(構成4)前記流路は、略鉛直方向に延び、前記仕切り部は、前記略鉛直方向に交差する方向に延びる構成1に記載の冷却装置。
この構成によれば、冷却装置は、流路に生じた気泡を、上方に誘導することができる。
【符号の説明】
【0065】
1、100 冷却装置
10、110 筐体
11、111 内側面
13 流入路
15 気相流出流路
16、116 側面部
17 液相流出流路
19、119 外側面
20 流入管
22 流出管
23 上昇流路
24 熱交換器
25 分岐流路
30、130 仕切板(仕切り部)
31 側面流路
33 上端流路
39 下方流路
40 仕切体
80 モータ
LC 軸心
S1、S3 収容空間(収容部)
S2、S4 流路空間(流路)