(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129250
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】リクレーマのバケットおよびリクレーマ
(51)【国際特許分類】
B65G 65/20 20060101AFI20240919BHJP
B65G 63/00 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
B65G65/20
B65G63/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038332
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】平子 宏治
(72)【発明者】
【氏名】楠本 久夫
(57)【要約】
【課題】刃先の寿命が向上したリクレーマのバケットおよびそのバケットを備えるリクレーマを提供する。
【解決手段】リクレーマの一部分を構成し、回転軸が水平面から傾斜して設けられたバケットホイールの周方向に複数個取り付けられ、貯蔵ヤードに積みつけられたバラ物を、取り込み口を介して掻き取るバケットであって、前記バケットの取り込み口から突き出して取り付けられたバケット刃先金物のうち、前記バラ物の表面に向かって突出する角部が水平な前記バラ物表面または地面と線接触するように切り欠かれている、リクレーマのバケットである。そのリクレーマのバケットが、傾斜して回転するバケットホイールの周方向に均等に割り付けて複数個取り付けられている、リクレーマである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リクレーマの一部分を構成し、回転軸が水平面から傾斜して設けられたバケットホイールの周方向に複数個取り付けられ、貯蔵ヤードに積みつけられたバラ物を、取り込み口を介して掻き取るバケットであって、
前記バケットの取り込み口から突き出して取り付けられたバケット刃先金物のうち、前記バラ物の表面に向かって突出する角部が水平な前記バラ物表面または地面と線接触するように切り欠かれている、リクレーマのバケット。
【請求項2】
前記バケット刃先金物は切り欠かれた先端を包むように超硬材料でハードフェーシング加工されている、請求項1に記載のリクレーマのバケット。
【請求項3】
前記角部が切り欠かれた前記バケット刃先金物は超硬材料である、請求項1に記載のリクレーマのバケット。
【請求項4】
傾斜して回転するバケットホイールを備えるリクレーマであって、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のリクレーマのバケットが、前記バケットホイールの周方向に均等に割り付けて複数個取り付けられている、リクレーマ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯蔵ヤードに積み付けられた鉄鉱石や石炭などのバラ物を払い出して次工程に送り出すためのリクレーマのバケットホイールに取り付けられる掘削用のバケットに関し、そのバケットを備えたリクレーマに関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所における原料の焼結工程では、鉱石の運搬船内の粉鉱石をアンローダ等により粗鉱ヤードに銘柄別に山積みする。その後、銘柄別に山積みされた粗鉱の積山等を、所定の割合でリクレーマ及びブレンディングスタッカーにより払出し、均鉱ヤードに層状に山積みしてパイルを形成する。その後、ブレンディングリクレーマでパイルから各原料が混合するようにして払い出される。
【0003】
払い出しの際は、バケットホイールを一対で備えたダブルホイール式リクレーマを、パイルの払出し面に対向させて配置する。
【0004】
たとえば、特許文献1には、バケットホイールの回転軸が水平面から傾斜して取り付けられており、バケットの先には爪が取り付けられているバケットホイール式リクレーマが開示されている。バケットの爪の刃先はバケット縁に対して平行となる構造となっているため、地面に対してバケットホールの傾斜角分の角度をもって接触する。
【0005】
また、特許文献2には、ブームの先端にバラ物を掘削するバケットホイールを傾斜して取付けたバケットホイール式リクレーマが開示されている。そのバケットホイールのバケットを掘削面に垂直となるように設けている。これによりブームの旋回方向にかかわらず、掘削量を等量にすることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-144018号公報
【特許文献2】実開平04-49126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術では、以下のような課題があった。
特許文献1に記載の技術によれば、バケットの角部に爪を配置することにより、角部の摩耗を抑制することができるとしている。しかしながらバケットは傾斜して取り付けられているため、バケットの刃先の頂点は地面に対して角度をもって接触する。そのため、ヤード底の硬い部分に対し、バケットの刃先の頂点が点接触に近い形で滑り摩擦を受ける。このため、バケットの刃先は頂点部から摩耗が進展してしまう問題があった。つまり、刃先全体では健全部位が残っているにもかかわらず、頂点部近傍の急速な摩耗により刃先の交換を余儀なくされてしまう。
【0008】
特許文献2に記載の技術は、リクレーマに1個のバケットホイールを有するものを想定している。ダブルホイール式リクレーマに適用した場合には、バケットやホイールを構成する部品点数が増加し、メンテナンスのための負荷や部品の保管負荷が増加する問題があった。
【0009】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであって、刃先の寿命が向上したリクレーマのバケットおよびそのバケットを備えるリクレーマを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を有利に解決する本発明にかかるリクレーマのバケットは、リクレーマの一部分を構成し、回転軸が水平面から傾斜して設けられたバケットホイールの周方向に複数個取り付けられ、貯蔵ヤードに積みつけられたバラ物を、取り込み口を介して掻き取るバケットであって、前記バケットの取り込み口から突き出して取り付けられたバケット刃先金物のうち、前記バラ物の表面に向かって突出する角部が水平な前記バラ物表面または地面と線接触するように切り欠かれていることを特徴とする。
【0011】
なお、本発明にかかるリクレーマのバケットは、
(a)前記バケット刃先金物は切り欠かれた先端を包むように超硬材料でハードフェーシング加工されていること、
(b)前記角部が切り欠かれた前記バケット刃先金物は超硬材料であること、
などがより好ましい解決手段になり得る。
【0012】
上記課題を有利に解決する本発明にかかるリクレーマは、傾斜して回転するバケットホイールを備えるリクレーマであって、上記いずれかのリクレーマのバケットが、前記バケットホイールの周方向に均等に割り付けて複数個取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかるリクレーマのバケットおよびそのバケットを備えるリクレーマは、バケットの刃先金物がバラ物と接触する頂点を切り欠いて、刃先金物とバラ物または地面との接触を線接触として、面圧を低減した。それにより、刃先の摩耗が低減できる。
【0014】
加えて、切り欠き部をハードフェーシング加工したり、切り欠き部を含む刃先金物を超硬材料としたりすることで切り欠きによる摩耗寿命の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態にかかるリクレーマのバケットを表す概略図であって、(a)は、バケットの取り込み口をのぞむ上面図であり、(b)はその側面図であり、(c)は正面図である。
【
図2】上記実施形態にかかるバケットを備えたバケットホイールの構造を示す断面図である。
【
図3】上記実施形態にかかるバケットを備えたダブルホイール式リクレーマの概略正面図である。
【
図4】上記実施形態にかかるバケットの各刃先金物を表す説明図である。
【
図5】従来のリクレーマのバケットを表す概略図であって、(a)は、バケットの取り込み口をのぞむ上面図であり、(b)はその側面図であり、(c)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための設備や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0017】
図1は本発明の一実施形態にかかるリクレーマのバケットを表す概略図である。
図1(a)はバケットの取り込み口をのぞむ上面図である。
図1(b)はバケットの側面図である。
図1(c)はバケットの正面図である。
図2は本実施形態にかかるバケットホイールの構造を示す断面図である。
図3は本実施形態にかかるバケットを備えたダブルホイール式リクレーマの概略正面図である。
図4は本実施形態にかかるバケットの刃先金物を説明する平面図および断面図である。
【0018】
製鉄所などの貯蔵ヤードに積み付けられた鉄鉱石や石炭などのバラ物Sを掻き取って払い出すリクレーマ10として
図3に示すようなダブルホイール式リクレーマがある。リクレーマ10は、バラ物Sを掻き取るための掘削用のバケット1および周方向にバケット1を均等に複数個取り付けたバケットホイール2を備えている。
【0019】
たとえば、リクレーマ10はキャリッジフレーム20の移動方向に延びるブリッジフレーム11を有している。ブリッジフレーム11は走行フレームの台座に取り付けられたジブに指示されている。ブリッジフレーム11はキャリッジフレーム20を支持しており、キャリッジフレーム20は、ブリッジフレーム11の長手方向に移動可能となっている。このキャリッジフレーム20の移動を、横行という。
【0020】
キャリッジフレーム20は、キャリッジ本体21と、キャリッジ本体21から上方向に延びる1対のアーム22とを有している。キャリッジフレーム20をブリッジフレーム11に沿って移動させる機構としては、たとえば、ラック・ピニオン機構を用いることができる。なお、キャリッジフレーム20は、ブリッジフレーム11 に沿って移動することができればよく、他の駆動機構を用いることもできる。
【0021】
図3に示すようにキャリッジフレーム20には、2つのハロー( 掻き崩し具)12が設けられている。ハロー12は、ヤードに収容されたバラ物の積山を掻き崩して、バラ物Sを下方向に落下させるために用いられる。
【0022】
キャリッジフレーム20には、1対のバケットホイール2が面対称配置に、回転可能な状態で取り付けられている。バケットホイール2の回転軸RCは水平面HPに対しαの角度で傾斜している。具体的には、1対のバケットホイール2、2の上部が互いに近づく方向に、各バケットホイール2、2が傾斜している。
【0023】
図2に示すように、バケットホイール2の軸部2Aは軸受け2Eを介してキャリッジフレーム20のキャリッジ本体21に取り付けられている。軸部2Aには電動機2Bが連結されており、電動機2Bの駆動力が軸部2Aに伝達されるようになっている。電動機2Bと軸部2Aとの間に減速機等を配置してトルクの増大を図ってもよい。
【0024】
軸部2Aには複数のスポーク2Cが固定されており、複数のスポーク2Cは回転軸RCに対し放射状に延びている。各スポーク2Cは一端部が軸部2Aに固定され、他端部がリム2Dに固定されている。リム2Dは、回転軸RCを対象中心軸とする環状に形成され、回転軸RCと略平行に伸びる円筒面を有している。
【0025】
リム2Dの内周面にはスポーク2Cの他端部が固定されている。リム2Dの外周面には複数のバケット1が周方向に均等に固定されている。軸部2Aが回転軸RCを中心に回転すると、複数のバケットが回転軸RCを中心とした円に沿って移動する。
【0026】
バケット1はハロー12によって掻き崩されたバラ物Sを回転動作によって掻き取る。このため、バケットホイール2の回転動作によって、バケット1の取り込み口1Eからバケット1内にバラ物Sが進入するようになっている。
【0027】
バケット1に掻き取られたバケット内のバラ物Sは、バケット1がバケットホイール2の上部の予め設定された位置まで移動すると、重力によってバケット1から自然落下し、バケット1から排出される。バケット1から排出されたバラ物Sは、シュート4を介してバケット1の下方に設置されるコンベア3の上に落下し、コンベア3によって移送され、中継コンベア5を介して地上ベルトコンベア( 図示せず)に移送され搬出される。
【0028】
本実施形態では、バケットホイール2の回転軸RCと水平面HPとのなす角αは0°超え20°以下程度である。5~20°の範囲であることが好ましい。バケットホイール2の回転軸RCを傾斜させているため、バケット1も水平面HPに対し傾斜している。
【0029】
図1に示すように、バケット1の取り込み口1Eは多角形状をなしている。取り込み口1Eは、バラ物Sを掬い取るためのバケット刃先1Bと、バケット刃先1Bに固定された刃先金物1Cとで構成されている。バケットホイール2の回転により、刃先金物1Cの先端が最初にバラ物Sに接触することになる。刃先金物1Cをバケット刃先1Bに固定する方法は、固定さえできればどのような方法でもよい。たとえば、刃先金物の基端部をバケット刃先に備えたホルダに挿入してもよい。ボルト点結や溶接であってもよい。
【0030】
図1(a)では、バケット1の取り込み口1Eをのぞむ上面図、つまり、バケットホイール2の回転方向から見た図で、バケット1は、時計回り方向に1C1~1C5の5個も刃先金物1Cを持っている。ここで、バケット1の取り込み口1Eを構成する多角形の辺のうち、リム2Dから最も離れた辺をバケットの底辺(1C3)とする。また、バケット本体1Aを構成する各面のうち、底辺を含み、底辺に平行な面を底面とする。なお、面対称に配置される他方のバケットホイール2は回転軸が逆方向に傾斜しているので、バケット1は、逆時計回りに1C1~1C5の刃先金物を互換して配置することができる。
【0031】
バケットホイール2の回転により最初にバラ物Sと接触するのは、
図1の例では、バケット1の底辺に位置する刃先金物1C3および隣り合う刃先金物1C4が構成する角部である。本実施形態では、この角部に切り欠き部1Dを設けている。切り欠き部1Dは、
図1(a)に示す、バケット1の取り込み口1Eをのぞむ上面図で、刃先金物1C3の底辺と角度αをなすように構成されている。したがって、
図2より、バケットホイール2の回転によりバケット1が最も下にきたとき、バケット1の刃先金物1Cの切り欠き部1Dがバラ物Sや地面の水平面HPと線接触するようになる。
【0032】
図5に示す、従来のバケット1では、摩耗箇所Dがバラ物Sと点接触し、面圧が高くなって、摩耗が著しく進行していた。本実施形態では、刃先金物1C3、1C4のバラ物Sや地面との接触が線接触となって、面圧が低減し、摩耗の低減が図れ、刃先金物の寿命が向上する。
【0033】
刃先金物1Cの切り欠き部1Dの形状については、以下のように定めることが好ましい。
(1)切り欠き部1Dは、バケットホイール2の回転軸RCを中心軸とする円錐面上にあり、水平面がその円錐の接平面であること。
(2)その切り欠き部1Dを含む円錐面が、バケットの他の構成物、たとえば、刃先金物1Cの取付ボルトの先端などを切断しないこと。
(3)切り欠き部1Dの高さ(
図4のh1やh2)を刃先金物1C3、1C4の突き出し高さ(
図4のH1やH2)の0.2~0.3倍の範囲とすること。
【0034】
刃先金物1Cの突き出し高さに対する切り欠き部1Dの高さの比、h1/H1やh2/H2が0.3を超えると、刃先金物1C本来の機能である、バケット本体の摩耗を抑えつつ、バラ物の掻き取りを効率的に行う機能を損なうおそれがある。一方、その比が0.2を下回ると線接触の長さが短くなりすぎ、面圧を低減する効果が小さくなりすぎて、摩耗の低減効果が損なわれるおそれがある。
【0035】
刃先金物1Cは耐摩耗鋼とすることが好ましい。耐摩耗鋼として、ブリネル硬さHB400以上の硬さとすることが好ましい。加えて、バケット1の取り込み口1Eを構成する刃先金物の先端部を超硬金属による肉盛り溶接などでハードフェーシング加工部1Fとすることが好ましい。
図4に示すように、ハードフェーシング加工部1Fは、刃先金物1Cの先端端面と、バケット1の内面側および外面側に板厚以上の高さとに加工することが好ましい。切り欠き部1Dの近傍のハードフェーシング加工部1Fは、刃先金物1Cの突き出し高さの0.5倍以上とすることが好ましい。バケットの外面側は内面側より厳しい摩耗条件となることから、内面側のハードフェーシング加工部1Fの高さは板厚の2倍以下、切り欠き部1D近傍を除く外面側は板厚の2倍または突き出し部高さの半分のうち大きい方以下程度とすることが好ましい。ハードフェーシング加工部1Fに用いる肉盛り溶接には、たとえば、JIS Z3326:1999に規定する呼び硬さ800、ビッカース硬度Hv750以上の溶接金属を用いて、硬化肉盛溶接することができる。
【0036】
そのほか、刃先金物1Cの少なくとも切り欠き部1D近傍を他の部分より硬度の高い超硬材料とすることもできる。ビッカース硬度Hv800以上とすることが好ましい。超硬材料としては、WC-Co系やWC-TiC-TaC-Co系の超硬合金とすることができる。それにより、切り欠き部1Dが他の部分より突き出し高さが短くなっても、他の部分と同等以上の摩耗寿命とすることができる。切り欠き部1Dを含む刃先金物1C全体を超硬材料としてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 バケット
1A バケット本体
1B バケット刃先
1C、1C1~1C5 (バケットの)刃先金物
1D (刃先金物の)切り欠き部
1E 取り込み口
1F ハードフェーシング加工部
2 バケットホイール
2A 軸部
2B 電動機(モータ)
2C スポーク
2D リム
2E 軸受け
3 コンベア
4 シュート
5 中継コンベア
10 リクレーマ
11 ブリッジフレーム
12 ハロー
20 キャリッジフレーム
21 キャリッジ本体
22 アーム
S バラ物(パイル)
α (バケットホイールの)傾斜角
RC 回転軸
HP 水平面
D 摩耗箇所