(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129251
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】移植爪、移植爪の先端部品及びロータリー式ドラム
(51)【国際特許分類】
A01C 11/02 20060101AFI20240919BHJP
【FI】
A01C11/02 302E
A01C11/02 385B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038334
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】306017014
【氏名又は名称】地方独立行政法人 岩手県工業技術センター
(74)【代理人】
【識別番号】100209624
【弁理士】
【氏名又は名称】制野 友樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 龍徳
(72)【発明者】
【氏名】桑嶋 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 駿
【テーマコード(参考)】
2B060
【Fターム(参考)】
2B060AA06
2B060AC01
2B060AD06
2B060AE01
2B060BA04
2B060CC06
2B060CC08
2B060CC14
(57)【要約】
【課題】表面に付着した土を効率的に除去するとともに、受け取ったポット苗を、バランスを崩さずに保持できる移植爪を提供すること。
【解決手段】本発明の移植爪は、ポット苗を圃場に移植するロータリー式植付装置用の移植爪であって、先端が傾斜してなる傾斜先端部の傾斜面から突出する複数の保持爪を備え、保持爪は、先端側に配置され、移植爪の長手方向に対し移植爪の先端側に鋭角をなすか又は略垂直でありかつ移植爪の幅方向に略平行な第1の平面と、基端側に配置され、移植爪の長手方向に対し移植爪の先端側に第1の平面よりも小さい角度をなしかつ移植爪の幅方向に略平行な第2の平面とが交わってなす稜部を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポット苗を圃場に移植するロータリー式植付装置用の移植爪であって、
先端が傾斜してなる傾斜先端部の傾斜面から突出する複数の保持爪を備え、
前記保持爪は、先端側に配置され、前記移植爪の長手方向に対し前記移植爪の先端側に鋭角をなすか又は略垂直でありかつ前記移植爪の幅方向に略平行な第1の平面と、基端側に配置され、前記移植爪の長手方向に対し前記移植爪の先端側に前記第1の平面よりも小さい角度をなしかつ前記移植爪の幅方向に略平行な第2の平面とが交わってなす稜部を有する
移植爪。
【請求項2】
複数の前記保持爪は、略平行かつ略等間隔に連続配置されてなる
請求項1に記載の移植爪。
【請求項3】
ポット苗を圃場に移植するロータリー式植付装置用の移植爪の先端部品であって、
先端が傾斜してなる傾斜先端部の傾斜面から突出する複数の保持爪を備え、
前記保持爪は、先端側に配置され、前記移植爪の先端部品の長手方向に対し鋭角をなすか又は略垂直でありかつ前記移植爪の先端部品の幅方向に略平行な第1の平面と、基端側に配置され、前記移植爪の先端部品の長手方向に対し前記第1の平面よりも小さい角度をなしかつ前記移植爪の先端部品の幅方向に略平行な第2の平面とが交わってなす稜部を有する
移植爪の先端部品。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の移植爪を備える
ロータリー式ドラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移植爪、移植爪の先端部品及びロータリー式ドラムに関する。
【背景技術】
【0002】
圃場に、稲や野菜等のポット苗を移植するため、ポット苗用のロータリー式植付装置が用いられている。
【0003】
例えば、このようなロータリー式植付装置として、特許文献1に開示される植付装置が挙げられる。
図10は、従来の移植爪を備えるロータリー式植付装置の要部の側面図である。
図11は、従来の移植爪を備えるロータリー式植付装置の要部の一部断面平面図である。
図11に示すように、ロータリー式植付装置200は、その進行方向Fに対し左右方向に水平張架された無端状搬送ベルト202と、搬送ベルト202の端縁から送り出されるポット苗Pを圃場に植え付ける植付部203を備え、植付部203は、ドラム204に取り付けられ、そのドラム204の回転に伴って周囲を旋回する一対の移植爪2を備えている。そして、それぞれの移植爪2が搬送ベルト202の端縁から送り出されたポット苗Pを略水平姿勢で受け取り、下方に回転して略直立姿勢になり圃場に植え込む。取付軸208は、ドラム204が駆動軸206によって回転するのに伴って動作するドラム204内のカムやギヤを用いた伝動機構を介して回動するようにして、移植爪2の先端部が設定した軌跡を描くように設けている。
【0004】
ドラム204の前方側には、移植爪2の弧状の軌跡に沿って一対のガイド板218が設置され、移植爪2の先端部(ポット苗Pの根鉢Paに押し当てる部分)はガイド板218の間を通って下降回転し、ポット苗Pの根鉢Paは移植爪2に押されてガイド板218の間を滑りながら下降し、略水平状態から地表直前までガイドされる。地表直前でガイド板218からリリースしたポット苗Pの根鉢Paは、さらに移植爪2により押されて圃場に押し込まれ、直立した状態で植え付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示される植付装置では、移植爪として、ポット苗Pを受け取る部分が平面である棒状体を用いている。一方で、このような移植爪は、回転しながら速い速度で圃場に叩きつけられる。ここで、圃場の土の粘度が高い場合等には、ポット苗Pを受け取る平面に土が付着しやすくなる。そして、ポット苗Pを受け取る面に土が付着すると、その土にポット苗が付着して連れ上がり、適切に圃場にリリースすることができず倒れてしまうことがある。また、ポット苗を受け取る際に表面に土が付着していると、ポット苗Pが移植爪の表面で略水平姿勢を保てずにバランスを崩したまま圃場に押し込まれたりして、直立姿勢を維持できず倒れてしまうこともある。さらに、ポット苗Pが碁盤目状に配置されたポット苗室から1列ずつ押し出される際に、ポット苗Pの生育状況により、根鉢Paの円錐台の形状が崩れて、ポット苗Pが移植爪の表面で略水平姿勢を保てずにバランスを崩したまま圃場に押し込まれ直立姿勢を維持できず倒れてしまうこともある。
【0007】
このように移植時にポット苗が倒れた場合、現在のところ、一本一本確認して人手で直立させる他ない。そして、ポット苗が転倒する割合が大きいと、特に広い圃場では倒れたポット苗を直立させる作業に莫大な時間を要してしまうこともある。したがって、ポット苗を圃場に植え付ける際に、転倒する確率を低減するため、改良の余地がある。
【0008】
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、表面に付着した土を効率的に除去するとともに、受け取ったポット苗を、バランスを崩さずに保持できる移植爪を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、ポット苗を圃場に移植するロータリー式植付装置用の移植爪であって、先端が傾斜してなる傾斜先端部の傾斜面から突出する複数の保持爪を備え、保持爪は、先端側に配置され、移植爪の長手方向に対し移植爪の先端側に鋭角をなすか又は略垂直でありかつ移植爪の幅方向に略平行な第1の平面と、基端側に配置され、移植爪の長手方向に対し移植爪の先端側に第1の平面よりも小さい角度をなしかつ移植爪の幅方向に略平行な第2の平面とが交わってなす稜部を有する移植爪は、表面に付着した土を効率的に除去するとともに、受け取ったポット苗を、バランスを崩さずに保持できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的に、本発明は、以下のものを提供する。
【0010】
(1)ポット苗を圃場に移植するロータリー式植付装置用の移植爪であって、
先端が傾斜してなる傾斜先端部の傾斜面から突出する複数の保持爪を備え、
前記保持爪は、先端側に配置され、前記移植爪の長手方向に対し前記移植爪の先端側に鋭角をなすか又は略垂直でありかつ前記移植爪の幅方向に略平行な第1の平面と、基端側に配置され、前記移植爪の長手方向に対し前記移植爪の先端側に前記第1の平面よりも小さい角度をなしかつ前記移植爪の幅方向に略平行な第2の平面とが交わってなす稜部を有する
移植爪。
【0011】
(2)複数の前記保持爪は、略平行かつ略等間隔に連続配置されてなる
上記(1)に記載の移植爪。
【0012】
(3)ポット苗を圃場に移植するロータリー式植付装置用の移植爪の先端部品であって、
先端が傾斜してなる傾斜先端部の傾斜面から突出する複数の保持爪を備え、
前記保持爪は、先端側に配置され、前記移植爪の先端部品の長手方向に対し前記移植爪の先端側に鋭角をなすか又は略垂直でありかつ前記移植爪の先端部品の幅方向に略平行な第1の平面と、基端側に配置され、前記移植爪の先端部品の長手方向に対し前記移植爪の先端側に第1の平面よりも小さい角度をなしかつ前記移植爪の先端部品の幅方向に略平行な第2の平面とが交わってなす稜部を有する
移植爪の先端部品。
【0013】
(4)上記(1)又は(2)に記載の移植爪を備える
ロータリー式ドラム。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、表面に付着した土を効率的に除去するとともに、受け取ったポット苗を、バランスを崩さずに保持できる移植爪を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係る移植爪を備えるロータリー式植付装置の要部の側面図である。
【
図2】本実施形態に係る移植爪を備えるロータリー式植付装置の要部の一部断面平面図である。
【
図3】本実施形態に係る移植爪の動作を説明するための図である。
【
図6】本実施形態に係る移植爪の先端の拡大側面図である。
【
図9】本実施形態に係る移植爪の先端部品の斜視図である。
【
図10】従来の移植爪を備えるロータリー式植付装置の要部の側面図である。
【
図11】従来の移植爪を備えるロータリー式植付装置の要部の一部断面平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は実施形態の記載によって何ら限定されるものではなく、適宜変更を加えて実施することができる。
【0017】
本発明において、「略垂直」、「略平行」とは、垂直、平行な姿勢に対して±5°以内であれば傾きが許容されることを意図する。
【0018】
≪移植爪≫
本実施形態に係る移植爪は、ポット苗を圃場に移植するロータリー式植付装置用の移植爪であって、先端が傾斜してなる傾斜先端部の傾斜面から突出する複数の保持爪を備え、保持爪は、先端側に配置され、移植爪の長手方向に対し移植爪の先端側に鋭角をなすか又は略垂直でありかつ移植爪の幅方向に略平行な第1の平面と、基端側に配置され、移植爪の長手方向に対し移植爪の先端側に第1の平面よりも小さい角度をなしかつ移植爪の幅方向に略平行な第2の平面とが交わってなす稜部を有するものである。
【0019】
まず、本実施形態に係る移植爪を適用し得るロータリー式植付装置の構成と動作について説明する。
図1は、本実施形態に係る移植爪を備えるロータリー式植付装置の要部の側面図である。また、
図2は、本実施形態に係る移植爪を備えるロータリー式植付装置の要部の一部断面平面図である。なお、
図1及び
図2においては、移植爪が備える保持爪について記載を省略している。
【0020】
以降の図において、矢印Fはかかるロータリー式植付装置100が取り付けられる走行機体の進行方向を、矢印Rはドラム104の回転方向をそれぞれ示している。
【0021】
図1及び
図2に示されるロータリー式植付装置100は、走行機体(図示せず。)に装着されるものであり、その走行機体から駆動力により駆動されるように構成されている。また、走行機体の下方には、前後方向に延びるフロート101が配設されている。
【0022】
ポット苗箱(図示せず。)内のポット苗Pは碁盤目状に配置されたポット苗室から1列ずつ押し出され、水平に置かれた無端状の搬送ベルト102上に供給される。搬送ベルト102上に供給されたポット苗Pは、搬送ベルト102の端縁から順次送り出される。搬送ベルト102の端縁近傍には植付部103が配置されている。植付部103は、ドラム104と、ドラム104に取り付けられドラム104の回転に伴って旋回する移植爪1と、ドラム104に回転の駆動力を伝達する伝動機構等からなり、移植爪1が搬送ベルト102から送り出されたポット苗Pを略水平姿勢で受け取り、下方に送り略直立姿勢で圃場に植え込むようになっている。
【0023】
植付部103の前方側には、一対のガイド板118、119が配設されており、移植爪1により下方に送られているときのポット苗Pの姿勢をガイドするようになっている。
【0024】
植付部103は、チェーンにより回転するスプロケット105、スプロケット105が固定された駆動軸106、駆動軸106の回転に伴い回転するドラム104(ドラム蓋104a,ドラム底104b)、一端が駆動軸106に、他端がドラム104にそれぞれ固定され、駆動軸106の回転をドラム104に伝達する駆動板107、ドラム蓋104aの周縁に取付軸108を介して取り付けられ、その取付軸108を中心として往復回動自在とされた移植爪1、及びドラム104の内部に収容され、移植爪1に往復回動を与えるカム機構等を備える。
【0025】
カム機構は、ドラム104の内部に固定された溝カム109、取付軸108の端部に固定された回動レバー111、回動レバー111の一端に固定されたローラ軸112、及びローラ軸112に回転自在に取り付けられたカムローラ113からなる。このカムローラ113は溝カム109のカム溝110内を走行自在である。なお、溝カム109は偏心位置において支持筒114に固定され、この支持筒114は、駆動軸106の周囲を囲みチェーンケース115に固定された筒状の支持部材116の先端部外周(軸方向に沿った多数のキー溝が形成されている)にはめ込まれ、回転しないように固定されている。なお、ドラム104は、軸受117により支持部材116に対し回転自在に支持されている。
【0026】
以下、図を用いて本実施形態に係る移植爪1の動作を説明する。
図3は、本実施形態に係る移植爪の動作を説明するための図である。なお、
図3においては、移植爪が備える保持爪について記載を省略している。ドラム104の周縁に、2つ設置された移植爪1の取付軸108は、ドラム104の中心である駆動軸106から等距離にあり、かつ回動レバー111の形状及びカムローラ113の取付位置は各移植爪1について同じであるが、カムローラ113が走行するカム溝110が駆動軸106に対して偏心し、かつ異形であるため、駆動軸106(及びドラム104)が回転して移植爪1が駆動軸106の周囲を回転するのに伴い、移植爪1は取付軸108を中心として回動(自転)し、移植爪1の長さ方向の向きと駆動軸106の位置関係が変化する。
【0027】
すなわち、移植爪1は、ドラム104の駆動軸106に対して取付軸108が略下方に位置したときに、ドラム104の略径方向外方に延びた突出状態Saでの略垂直姿勢によりポット苗Pを圃場に植え込んだ後、ドラム104の駆動軸106に対して取付軸108が進行方向Fの略後方に位置するまで、ドラム104の反回転方向に徐々に回動することにより、略垂直姿勢を保ったまま上昇し、非突出状態Sbになる。その後、移植爪1が上端位置に向かい、続いて回転下降するとき、ドラムの回転方向Rと同方向に回動する。言い換えると、移植爪1がそのタイミングで往復回動をするようにカム溝110の偏心位置及び平面形状が設定されている。
【0028】
移植爪1は回転下降中、略水平姿勢になったとき、搬送ベルト102の端縁から落下するポット苗Pを受け取り、さらに回転下降して(S1)その先端部でポット苗Pの根鉢部Paを圃場の地中に略直立姿勢で埋め込み、続いて移植爪1が回転上昇して植え付けが完了する。そして、移植爪1が略最下端位置(S2)から回転上昇するとき、略直立姿勢を保って上昇する(S3)ことから、移植爪1は略最下端位置において圃場に植え付けたポット苗Pを後方に掻き上げることなく、上方に抜け出ることができる。
【0029】
植付部103の前方側に配設された一対のガイド板118、119は、一定の間隔で対向配置され、その間隔は、移植爪1が余裕をもって通過し、ポット苗Pの根鉢部Paが移植爪1に押されてガイド板118、119の内面を擦りながら通過し得る間隔に設定されている。
【0030】
図4は、本実施形態に係る移植爪の斜視図である。また、
図5は、本実施形態に係る移植爪の側面図である。さらに、
図6は、本実施形態に係る移植爪の先端の拡大側面図である。
【0031】
図4~6に示す移植爪1は、先端が傾斜してなる傾斜先端部11の傾斜面12から突出する複数の保持爪13を備え、保持爪13は、先端側に配置され、移植爪1の長手方向Lに対し移植爪1の先端側に鋭角(θ1)をなしかつ移植爪の幅方向Wに略平行な第1の平面14と、基端側に配置され、移植爪1の長手方向Lに対し移植爪1の先端側に第1の平面14よりも小さい角度(θ2)をなし、かつ移植爪1の幅方向Wに略平行な第2の平面15とが交わってなす稜部16を有する。
【0032】
移植爪1が傾斜面12を有することにより、移植爪1がポット苗Pを受け取って略水平姿勢からさらに回転下降し略垂直姿勢となる前(S1)の状態で、傾斜面12がロータリー式受付装置100の接地面に対し垂直になり、早い段階で、後述する保持爪13とともにポット苗Pをリリースしやすくできる。
【0033】
また、移植爪1が上述した形状の保持爪13を有することにより、移植爪1がポット苗Pを受け取って略水平姿勢からさらに回転下降し略垂直姿勢となる前(S1)の状態では、この稜部16がポット苗Pを押さえて保持するが、略垂直姿勢の状態(S2,S3)では、下方に存在する第1の平面14も、上方に存在する第2の平面も、ロータリー式受付装置100の接地面に対し、外側に向かうにつれて下方に傾いており、稜部16は下方に凸部を向けているため、稜部16がポット苗Pを押さえられないだけでなく、上方にある第2の平面15がスロープとして働き、ポット苗Pを滑らせてリリースする。土についても同様に、この略垂直姿勢の状態(S2,S3)で第2の平面15がスロープとして働くことで滑らせてリリースする。
【0034】
〔各部の構成〕
以下、移植爪1の各部の構成について詳細に説明する。
【0035】
(傾斜先端部)
傾斜先端部11は、移植爪の先端側(ポット苗Pを受け取る側)が傾斜して傾斜面12を有する。傾斜面12は、移植爪1の長手方向に対し移植爪1の基端側に鋭角をなしかつ移植爪1の幅方向に略平行に配置されるものである。
【0036】
言い換えると、移植爪1は、四角柱状の一面について長手方向の途中から、その面の先端まで、移植爪の幅方向に略平行な平面で切断した形状を有する。そして、傾斜面12は、その切断面に相当するものである。
【0037】
傾斜面12が移植爪1の長手方向Lに対しなす角度(θ3)としては、特に限定されないが、例えば10°以上、11°以上、12°以上、13°以上、14°以上、15°以上、16°以上であることが好ましい。一方、傾斜面12が移植爪1の長手方向に対しなす角度としては、45°以下、42°以下、40°以下、37°以下、35°以下、32°以下、30°以下、27°以下、25°以下であることが好ましい。
【0038】
(保持爪)
保持爪13は、傾斜面12で受けたポット苗Pを、バランスを崩さずに保持するとともに、圃場の土の付着を防止し、付着した土を除去できる。
【0039】
保持爪13の数としては、複数であれば特に限定されないが、例えば3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上であることが好ましい。保持爪13の数としては、100以下、95以下、90以下、85以下、80以下、75以下、70以下、65以下、60以下、55以下、50以下、45以下、40以下、35以下であってよい。なお、傾斜面12以外にも保持爪13と同様の形態の爪を設けることを排除しないが、ここでの保持爪13の数は、傾斜面12から突出したもののみが対象である。
【0040】
保持爪13は、略平行かつ略等間隔に連続配置されてなることが好ましい。このように保持爪13が連続配置されることにより、保持爪13がポット苗Pを保持する際の保持力を高めることができる。
【0041】
保持爪13の表面は、少なくとも第1の平面14及び第2の平面15に囲まれてなる。第1の平面14及び第2の平面15が交わってなすのが稜部16であり、この両部16が外方に向けて突出し、ポット苗Pを保持する。
【0042】
第1の平面14は、移植爪1の先端側に配置され、移植爪1の長手方向Lに対し移植爪1の先端側に鋭角(θ1)をなしかつ移植爪の幅方向Wに略平行に配置されるものである。第1の平面14が移植爪1の長手方向Lに対しなす角度(θ1)としては、鋭角であれば特に限定されないが、例えば45°以上、50°以上、55°以上、60°以上、65°以上であることが好ましい。一方、第1の平面14が移植爪1の長手方向Lに対しなす角度(θ1)としては、90°以下、88°以下、86°以下、84°以下、82°以下、80°以下、79°以下、78°以下、77°以下、76°以下、75°以下であることが好ましい。
【0043】
第2の平面15は、移植爪1の基端側に配置され、移植爪1の長手方向Lに対し移植爪1の先端側に第1の平面14よりも小さい角度(θ2)をなしかつ移植爪1の幅方向Wに略平行に配置されるものである。第2の平面15が移植爪1の長手方向Lに対しなす角度(θ2)としては、第1の平面14がなす角度(θ1)よりも小さい角度であれば特に限定されないが、例えば5°以上、6°以上、7°以上、8°以上、9°以上、10°以上、11°以上、12°以上、13°以上、14°以上、15°以上であることが好ましい。一方、第2の平面15が移植爪1の長手方向Lに対しなす角度(θ2)としては、70°以下、65°以下、60°以下、55°以下、50°以下、45°以下、40°以下、35°以下、30°以下、25°以下、20°以下であることが好ましい。
【0044】
なお、保持爪13は、第1の平面14及び第2の平面15以外に、面を有していても有していなくてもよい。なお、
図4~6に示す移植爪1においては、保持爪13は、第1の側面17,第2の側面18を有している。
【0045】
保持爪13は、第1の平面14及び第2の平面15が露出している構造であれば、三角柱状体のように内部が空洞でなくても、三角筒状体のように内部が空洞であってもよい。
【0046】
(取付部)
取付部19は、先端と逆の端である基端に配置され、ロータリー式植付装置100の取付軸109に取り付けるため部位である。取付部19は、側面視、底部が膨らんだ略U字状であり、そのU字の中に取付軸109を配置して固定する。
【0047】
以上のような移植爪1によれば、表面に付着した土を効率的に除去するとともに、圃場の土の粘度が高い場合や根鉢Paの円錐台の形状が崩れた場合等であっても受け取ったポット苗を、バランスを崩すことなく保持でき、ポット苗を圃場に植え付ける際に、転倒する確率を低減することができる。
【0048】
〔変形例〕
保持爪は、傾斜面の全体にわたって配置する必要はなく、傾斜面の一部に配置されていればよい。
図7は、第1の変形例に係る移植爪の斜視図である。
図7に示される移植爪1Aは、傾斜面12Aの傾斜方向の一部のみに保持爪13Aが配置されている。また、
図8は、第2の変形例に係る移植爪の斜視図である。
図8に示される移植爪1Bは、傾斜面12Bにおいて、保持爪13Bは移植爪1の幅方向Wに2つの範囲に分けられている。これらの移植爪1A,1Bのように、傾斜面12A,12Bの部分的に保持爪13A,13Bが配置されていても、表面に付着した土を効率的に除去するとともに、受け取ったポット苗を、バランスを崩さずに保持でき、ポット苗を圃場に植え付ける際に、転倒する確率を低減することができる。
【0049】
≪移植爪の先端部品≫
本実施形態に係る移植爪の先端部品は、ポット苗を圃場に移植するロータリー式植付装置用の移植爪の先端部品であって、先端が傾斜してなる傾斜先端部の傾斜面から突出する複数の保持爪を備え、保持爪は、先端側に配置され、移植爪の先端部品の長手方向に対し鋭角をなすか又は略垂直でありかつ移植爪の先端部品の幅方向に略平行な第1の平面と、基端側に配置され、移植爪の先端部品の長手方向に対し第1の平面よりも小さい角度をなしかつ移植爪の先端部品の幅方向に略平行な第2の平面とが交わってなす稜部を有するものである。
【0050】
移植爪1は、特に基端側、ロータリー式植付装置100の取付軸109を収めるための取付部19の形状が複雑であり、この加工が移植爪1の製造コストが大きく増加する原因となっている。一方で、移植爪1の使用によって劣化しやすいのは、土に直接接触する移植爪1の先端側であり、この部分の加工のコストは高くはない。そこで、基端側の部分と、先端側の部分をそれぞれ部品として分割し、両者をボルト等で留めて一つの移植爪として用いる。これにより、製造コストが高く、劣化しにくい基端部品を長く使用し、製造コストが安く、劣化しやすい先端部品のみを交換する。
【0051】
図9は、本実施形態に係る移植爪の先端部品の斜視図である。
図9に示される先端部品2は、ポット苗を圃場に移植するロータリー式植付装置用の移植爪の先端部品である。具体的に、先端部品2は、先端が傾斜してなる傾斜先端部21の傾斜面22から突出する複数の保持爪23を備え、保持爪23は、先端側に配置され、移植爪の先端部品2の長手方向Lに対し鋭角をなし、かつ移植爪の先端部品2の幅方向Wに略平行な第1の平面と、基端側に配置され、移植爪の先端部品2の長手方向Lに対し第1の平面よりも小さい角度をなしかつ移植爪2の先端部品の幅方向Wに略平行な第2の平面とが交わってなす稜部を有する。
【0052】
傾斜先端部21、傾斜面22、保持爪23、第1の平面、第2の平面、稜部、第1の側面及び第2の側面については、移植爪1の傾斜先端部11、傾斜面12、保持爪13、第1の平面14、第2の平面15、稜部16、第1の側面17及び第1の側面28と同様のものを用いることができるため、ここでの説明は省略する。
【0053】
移植爪の先端部品2の基端側には、基端部品3と連結するための連結部29が設けられている。連結部にはボルト穴291,292が設けられており、基端部品3の連結部31のボルト穴311,312とボルトで締結することで、一つの移植爪として用いることができる。そして、このような先端部品2と基端部品3とを組み合わせてなる移植爪によれば、表面に付着した土を効率的に除去するとともに、受け取ったポット苗を、バランスを崩さずに保持でき、ポット苗を圃場に植え付ける際に、転倒する確率を低減することができる。
【0054】
本発明は、以上の具体的な実施形態に何ら制限されることなく、本発明の効果を阻害しない範囲において、適宜変更を加えて実施することができる。
【符号の説明】
【0055】
1,1A,1B,2 移植爪
11,11A,11B,21 傾斜先端部
12,12A,12B,22 傾斜面
13,13A,13B,23 保持爪
14 第1の平面
15 第2の平面
16 稜部
17 第1の側面
18 第2の側面
19 取付部
100 ロータリー式植付装置
101 フロート
102,202 搬送ベルト
103,203 植付部
104,204 ドラム
104a ドラム蓋
104b ドラム底
105 スプロケット
106,206 駆動軸
107 駆動板
108,208 取付軸
109 溝カム
110 カム溝
111 回動レバー
112 ローラ軸
113 カムローラ
114 支持筒
115 チェーンケース
116 支持部材
117 軸受
118,119,218 ガイド板
F 進行方向
R 回転方向
P ポット苗
Pa 根鉢