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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129275
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】分離膜エレメントブロック
(51)【国際特許分類】
   B01D 63/08 20060101AFI20240919BHJP
   C02F 1/44 20230101ALI20240919BHJP
【FI】
B01D63/08
C02F1/44 A
C02F1/44 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038374
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】服部 翔太
(72)【発明者】
【氏名】井上 駿之介
(72)【発明者】
【氏名】安東 秀明
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA06
4D006GA07
4D006HA48
4D006JA04A
4D006JA04C
4D006JA08A
4D006JA08C
4D006JA24A
4D006JA30A
4D006JA30C
4D006JA31A
4D006JA53Z
4D006KA31
4D006KA43
4D006KB22
4D006MA03
4D006MA07
4D006MC11
4D006MC29
4D006MC56
4D006MC62
4D006MC63
4D006PA01
4D006PB08
4D006PC62
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低剛性の樹脂材質を用いた場合でも、膜保護板の変形を抑制することで、ハンドリング性を向上させるとともに、分離性能を最大限発揮させる分離膜エレメントブロックを提供する。
【解決手段】複数の分離膜カセット1が、分離膜エレメント2が平行になるようにフレームの中に並列に収容され、水平方向に隣接する分離膜カセット間の上端から下端までの上下鉛直方向中央付近に、上面からの投影図において膜保護板6と平行方向に分離膜カセット間の大半を占める長さをもつカセット間部材が、少なくとも1つ以上配置された分離膜エレメントブロックであって、膜保護板が、分離膜カセット間の上端から下端までの範囲において、カセット間部材の位置に対して鉛直方向上部または鉛直方向下部またはそのいずれもの方向に、水平方向に隣接する分離膜カセットの方向に少なくとも1つ以上の突起部を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の分離膜の透過側の面が互いに対向するように袋状に貼り合わされ、前記分離膜の間に集水流路が配置されるとともに、前記集水流路内の透過水を前記分離膜の外部へ排出する集水部を有する分離膜エレメントを、対向する2枚の膜保護板の間に、前記膜保護板と膜面が平行になるように複数配列させることで分離膜カセットが構成され、
複数の前記分離膜カセットが、前記分離膜エレメントが平行になるようにフレームの中に並列に収容され、水平方向に隣接する前記分離膜カセット間の上端から下端までの上下鉛直方向中央付近に、上面からの投影図において前記膜保護板と平行方向に前記分離膜カセット間の大半を占める長さをもつカセット間部材が、少なくとも1つ以上配置された分離膜エレメントブロックであって、
前記膜保護板が、前記分離膜カセット間の上端から下端までの範囲において、前記カセット間部材の位置に対して鉛直方向上部または鉛直方向下部またはそのいずれもの方向に、水平方向に隣接する前記分離膜カセットの方向に少なくとも1つ以上の突起部を有し、
前記突起部が、前記カセット間部材に対し、以下の(a)および(b)を満たすことを特徴とする分離膜エレメントブロック。
(a)前記突起部の上面からの投影面と前記カセット間部材の上面からの投影面に共通する領域αが、前記膜保護板と平行方向に大半を占める長さを有するように存在する。
(b)前記膜保護板と前記カセット間部材から形成される、被濾過液の流路のいずれかの箇所において、前記膜保護板と前記カセット間部材が対向する隙間が、前記分離膜カセットにおいて複数存在する隣接する前記分離膜エレメントの隙間および複数存在する前記分離膜エレメントと前記膜保護板との隙間のうち最も大きいものよりも小さい。
【請求項2】
前記膜保護板と前記カセット間部材から形成される、被濾過液の流路のいずれの箇所においても、前記膜保護板と前記カセット間部材が対向する隙間が、前記分離膜カセットにおいて複数存在する隣接する前記分離膜エレメントの隙間および複数存在する前記分離膜エレメントと前記膜保護板との隙間のうち最も大きい隙間の2倍より小さいことを特徴とする請求項1に記載の分離膜エレメントブロック。
【請求項3】
前記膜保護板が、前記分離膜カセット間の上端から下端までの範囲において、前記カセット間部材の位置に対して鉛直方向上部および鉛直方向下部いずれもの領域において、前記突起部を少なくとも1つ以上有することを特徴とする請求項1または2に記載の分離膜エレメントブロック。
【請求項4】
前記膜保護板の前記突起部が、リブ構造によって構成されることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の分離膜エレメントブロック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は膜分離活性汚泥処理で使用される分離膜エレメントブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、平膜状や中空糸膜状の分離膜を汚泥槽の中に浸漬し、活性汚泥と処理水とに分離する膜分離活性汚泥法(MBR)による水浄化処理方法が、工業用排水の処理などに用いられている。膜分離活性汚泥法に一般的に用いられるモジュールは、複数の分離膜を収容した分離膜エレメントブロックと気泡を出す散気装置とを組み合わせたものである。ここで用いられる分離膜エレメントブロックは、特許文献1に示されるような複数の分離膜エレメントを収容した分離膜カセット(図6)を、フレームに収容した構造のものが知られている(図7)。ここでは、分離膜カセットを構成する分離膜エレメントの一部に故障が生じたときに、そのメンテナンス、すなわち故障した膜エレメントまたは分離膜カセットの取り出しまたは交換が容易に行えるように、分離膜カセットをスライド式にフレームに出し入れ容易な構造が開示されている。
【0003】
また、特許文献1では、フレームに出し入れする際のハンドリング性を考慮して、分離膜カセットの両端部には膜保護板106が備えられており、材質として、耐腐食性、重量、および耐摩耗性の観点からPP樹脂が好適とされている。
【0004】
さらに特許文献1では、分離膜カセット間の領域にカセット間部材110,111を設けることで、散気装置によって噴出される気泡と被濾過液が分離膜カセット間へ流れ込むことを抑制し、かつ分離膜カセット間の領域での流れをできるだけ中央部に集中させることで、カセット間部材と膜保護板との間の流れを抑制する構成が示されている。これにより、分離膜カセット間の領域と分離膜カセット内の領域との圧力差が低減し、結果、膜保護板の変形が抑えられるため、膜保護板変形によるカセット交換時のハンドリング性の悪化やエレメント間の被濾過液流路の狭窄による運転効率低下を抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022―144474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の構成では、カセット間部材と膜保護板との間の流れを完全に防止できるわけでは無く、特に低剛性の樹脂材質を用いた分離膜カセットの膜保護板を装着している場合には、気泡及び被濾過液が分離膜カセットの膜保護板を分離膜カセット側へ押し込みながら、膜保護板近傍(カセット間部材および分離膜カセットの膜保護板の間の領域)を通過することで、分離膜カセットの膜保護板が変形し、被濾過液流路が狭まることで、膜面洗浄効率や濾過のエネルギー効率が低下してしまうという運転効率低下の課題が引き続き残存していた。
【0007】
本発明の目的は、任意の分離膜カセットを出し入れ可能な構造の分離膜エレメントブロックにおいて、分離膜カセットの膜保護板の構造を新たにし、カセット間部材と膜保護板の間を通過する気泡及び被濾過液の通過量を低減させ、低剛性の樹脂材質を用いた場合でも、膜保護板の変形を抑制させることで、ハンドリング性を向上させるとともに、分離性能を最大限発揮させることが可能な分離膜エレメントブロックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)シート状の分離膜の透過側の面が互いに対向するように袋状に貼り合わされ、前記分離膜の間に集水流路が配置されるとともに、前記集水流路内の透過水を前記分離膜の外部へ排出する集水部を有する分離膜エレメントを、対向する2枚の膜保護板の間に、前記膜保護板と膜面が平行になるように複数配列させることで分離膜カセットが構成され、
複数の前記分離膜カセットが、前記分離膜エレメントが平行になるようにフレームの中に並列に収容され、水平方向に隣接する前記分離膜カセット間の上端から下端までの上下鉛直方向中央付近に、上面からの投影図において前記膜保護板と平行方向に前記分離膜カセット間の大半を占める長さをもつカセット間部材が、少なくとも1つ以上配置された分離膜エレメントブロックであって、
前記膜保護板が、前記分離膜カセット間の上端から下端までの範囲において、前記カセット間部材の位置に対して鉛直方向上部または鉛直方向下部またはそのいずれもの方向に、水平方向に隣接する前記分離膜カセットの方向に少なくとも1つ以上の突起部を有し、
前記突起部が、前記カセット間部材に対し、以下の(a)および(b)を満たすことを特徴とする分離膜エレメントブロック。
(a)前記突起部の上面からの投影面と前記カセット間部材の上面からの投影面に共通する領域αが、前記膜保護板と平行方向に大半を占める長さを有するように存在する。
(b)前記膜保護板と前記カセット間部材から形成される、被濾過液の流路のいずれかの箇所において、前記膜保護板と前記カセット間部材が対向する隙間が、前記分離膜カセットにおいて複数存在する隣接する前記分離膜エレメントの隙間および複数存在する前記分離膜エレメントと前記膜保護板との隙間のうち最も大きいものよりも小さい。
【0009】
(2)前記膜保護板と前記カセット間部材から形成される、被濾過液の流路のいずれの箇所においても、前記膜保護板と前記カセット間部材が対向する隙間が、前記分離膜カセットにおいて複数存在する隣接する前記分離膜エレメントの隙間および複数存在する前記分離膜エレメントと前記膜保護板との隙間のうち最も大きい隙間の2倍より小さいことを特徴とする(1)に記載の分離膜エレメントブロック。
【0010】
(3)前記膜保護板が、前記分離膜カセット間の上端から下端までの範囲において、前記カセット間部材の位置に対して鉛直方向上部および鉛直方向下部いずれもの領域において、前記突起部を少なくとも1つ以上有することを特徴とする(1)または2に記載の分離膜エレメントブロック。
【0011】
(4)前記膜保護板の前記突起部が、リブ構造によって構成されることを特徴とする、(1)~(3)のいずれかに記載の分離膜エレメントブロック。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、カセット間部材と膜保護板の間の流路延長で流路抵抗が増すため、カセット間部材と膜保護板の間の流れを極小化でき、結果、膜保護板の変形を防止することができる。これにより、任意の分離膜カセットの出し入れをより容易にすることができ、また分離膜エレメントブロック全体での分離性能を最大限発揮させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の分離膜カセットの実施形態の一例を示す概略斜視図。
図2】本発明の分離膜エレメントブロックの一例。
図3】本発明の分離膜エレメントブロックの一例および本発明の分離膜エレメントブロックを用いた分離膜モジュールの一例を示す概略斜視図。
図4】本発明の膜保護板とカセット間部材から形成される被濾過液流路を示すための分離膜カセットの概略正面図の一例。
図5】本発明の膜保護板とカセット間部材から形成される被濾過液流路を示すための分離膜エレメントブロックの概略上面図の一例。
図6】従来発明の分離膜カセットの実施形態の一例を示す概略斜視図。
図7】従来発明の分離膜エレメントブロックの一例。
図8】従来発明のカセット間部材の構成を示すための分離膜エレメントブロックの概略模式図の一例。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0015】
図1に、本発明で用いられる分離膜カセットの実施形態の一例を示す。本発明における分離膜エレメントブロックに用いられる分離膜カセット1は、図1のように複数の分離膜エレメント2を有する。分離膜エレメント2は、平膜構造をしたエレメントであれば特に限定されるものではないが、特許文献1に記載の分離膜エレメントを好適な例として挙げることができる。その分離膜エレメントは、分離膜、集水ノズル3を有し、透過側の面同士が対向するように分離膜を貼りあわせるに際し、膜の周縁部の一部に集水ノズル3を設け、かつ集水ノズル3を設けた集水部以外の周縁部を封止している。封止した周縁部よりも内側の分離膜の透過側表面領域に、樹脂部を配置し、この樹脂部で両側の分離膜の一部を接着させた構造を有することで、膜同士の固定と透過水流路を確保する。
【0016】
分離膜としては、孔径制御、耐久性の点で架橋高分子が好ましく使用され、成分の分離性能の点で多孔性支持層上に、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物とを重縮合させてなる分離機能層、有機無機ハイブリッド機能層などが積層された膜を好適に用いることができる。また、セルロース膜、ポリフッ化ビニリデン膜、ポリエーテルスルホン膜、ポリスルホン膜のような多孔性支持層であって、分離機能と支持体機能との両方を有する膜を用いることもできる。つまり、分離機能層と多孔性支持層とが、単一の層で実現されてもよい。
【0017】
分離膜を透過した水は、分離膜に挟まれた内部の集水流路を通って、集水部に取り付けられた集水ノズル3を経由して分離膜エレメント2の系外に取り出される。集水ノズル3には、チューブ(図示せず)を介して集水管(図示せず)が接続され、集水管の下流側に吸引ポンプ(図示せず)が接続され、分離膜エレメント2内部に陰圧をかけ、透過水を取り出す。
【0018】
分離膜カセット1は、図1に示すように、分離膜エレメント2の四隅に設けた貫通孔20にそれぞれシャフト4を通すようにして、分離膜エレメント2を複数平行に並べることで構成される。なお、シャフトの材質はステンレス、アルミなどの各種金属、PVC樹脂やABS樹脂などの各種熱可塑性樹脂、またポリウレタン樹脂やエポキシ樹脂などの各種熱硬化性樹脂など任意に選択可能であるが、耐腐食性および剛性の高いステンレス材が好適である。また、シャフト4は分離膜エレメント2を懸垂させられる構成であれば、中実および中空どちらのシャフトを使用してもよく、丸形形状に限定されず、楕円形状、四角形状など任意形状でも構わない。
【0019】
隣接する分離膜エレメント間には、被濾過液および気泡の流路を確保するため、クリアランス保持部材5が設けられる。クリアランス保持部材5は、特に限定されるものではないが、耐久性および衝撃吸収性の観点から、ポリウレタン製のワッシャやカラー、またはニトリルゴムやシリコンゴムに代表されるゴム製ワッシャやカラーなどが好適に使用される。このようなクリアランス保持部材5を配置することで、分離膜エレメント2には適度な剛性とともに曝気のエネルギーを逃がすような柔軟性が加わり、鉛直下部に設けられた散気装置からの曝気に対する優れた耐久性を示すこととなる。
【0020】
集水ノズル3は、貫通孔20の位置と干渉しないように、分離膜エレメント2の側面に配列されている。「干渉しないように」とは、集水ノズル3が、貫通孔20とは離間するように設けられること、つまり異なる位置に設けられることを意味する。集水ノズル3が集水流路に連通するのに対して、貫通孔は、透過水の漏れ防止のために、封止部または樹脂部等によって集水流路とは隔離された構造とする。よって、集水ノズル3と貫通孔20とは、離間するように設けられることが好ましい。
【0021】
分離膜カセット1の両端部には、フレームに収容する際、膜面への物品衝突による傷防止のため、膜保護板6が備えられている。膜保護板6は、図1では、一例として分離膜カセット1を懸架するためのシャフト4の両端部をねじ構造として、複数の分離膜エレメント2および膜保護板6を介して両端部をナット7で締め付けて固定している。別の固定方法としては、カラー等によるセット止めや、シャフト4に溝を切り、C型、E型止め輪を使用するなど、任意に選択可能である。
【0022】
膜保護板の材質としては、ステンレス、アルミなどの各種金属、PP樹脂、PVC樹脂やABS樹脂などの各種熱可塑性樹脂、またポリウレタン樹脂やエポキシ樹脂などの各種熱硬化性樹脂など任意に選択可能であるが、耐腐食性、重量、および耐摩耗性の観点からは樹脂を用いることが好ましい。
【0023】
図2の(a)に、本発明で用いられる分離膜エレメントブロック8の概略斜視図の一例を、図2の(b)に概略側面図の一例を示す。ここで、本発明の分離膜エレメントブロック8は、分離膜カセット1、分離膜カセット1を複数、並列に収容したフレーム9、下部カセット間部材10、上部カセット間部材11によって構成されており、フレーム9については、従来技術と同じ構成を有する。
【0024】
図3の(a)に本発明の分離膜エレメントブロック8を用いた分離膜エレメントモジュール12の概略斜視図の一例を示すが、分離膜エレメントブロック8に分離膜を透過した水を系外に出すためのチューブ(図示せず)、集水管(図示せず)、そしてフレームの下部(-Z方向端面側)には散気装置13が取り付けられ、分離膜エレメントモジュール12として、膜分離活性汚泥処理で使用される。なお、散気装置13では、活性汚泥槽内の被濾過液中に沈められた分離膜エレメントブロック8に向けて気泡が噴出され、気泡水流により分離膜エレメント2(図1参照)の表面が洗浄され、被濾過液を濾過する際の目詰まりを防止する。
【0025】
分離膜エレメントブロック8のフレーム9は、分離膜カセットを並列に収容するためのラックの役割を果たす構造物であり、図2の(a)に例示するように、側面(-Y方向端面)に分離膜カセット1を出し入れ可能な開口部を有する。このような構造にすることで、分離膜カセット毎にフレームより着脱可能となるため、メンテナンスおよび膜エレメントの交換または取り出しを容易にすることができる。図2では、分離膜カセット1を並列に3基、鉛直方向に2段配置した例を示したが、特にこれに限定されず、浸漬する槽のサイズ、要求される処理能力、等々により任意に設定することが可能である。
【0026】
また、分離膜カセット1を出し入れする際、シャフト4(図1参照)の端部ないしは固定部材を通過せしめるための溝ガイド14をフレームに備えることが好ましい。こうすることで、分離膜カセット1を懸架させる際の位置決めになるとともに、分離膜カセット1を出し入れする際のハンドリング性が向上する。
【0027】
また、分離膜エレメントブロック8の側面のうち、鉛直方向上面および下面以外の側面(+X方向端面、-X方向端面、+Y方向端面、-Y方向端面)は、側面からの被濾過液および気泡の流出入を阻止するために、図3の(b)に例示するように側板15で覆っても構わない。側板15を取り付けることで、側面からの被濾過液および気泡の流出入がなくなり、分離膜エレメント2に対して均等に被濾過液および気泡が流れ、分離性能が向上する。なお、側板15はフレーム9に固定しても、分離膜カセット1を出し入れ可能な構造であれば、フレーム9と一体の構造をしていても構わない。
【0028】
フレーム、シャフト用溝ガイド、側板等を構成する主要構造材の材質は、ステンレス、アルミなどの各種金属、PP樹脂、PVC樹脂やABS樹脂などの各種熱可塑性樹脂、またポリウレタン樹脂やエポキシ樹脂などの各種熱硬化性樹脂など任意に選択可能であるが、強度と被濾過液への耐腐食性の観点からステンレスを用いるのが好ましい。
【0029】
本発明では、分離膜カセット間の上端から下端までの範囲において、カセット間部材10、11の鉛直方向上部または鉛直方向下部またはそのいずれもの方向に、水平方向に隣接する分離膜カセットの方向に少なくとも1つ以上の突起部16を有し、かつカセット間部材11に対し、以下の(a)および(b)を満たす膜保護板6を含むことを特徴とする。
(a)前記突起部16の上面からの投影面と前記カセット間部材11の上面からの投影面に共通する領域α(領域17)が、前記膜保護板6と平行方向に大半を占める長さを有するように存在する。
(b)前記膜保護板6と前記カセット間部材11から形成される、被濾過液の流路のいずれかの箇所において、前記膜保護板6と前記カセット間部材11が対向する隙間が、前記分離膜カセットにおいて複数存在する隣接する前記分離膜エレメント2の隙間および複数存在する前記分離膜エレメント2と前記膜保護板6との隙間のうち最も大きいものよりも小さい。
【0030】
本構成とすることにより、カセット間部材と膜保護板の間の流路延長で流路抵抗が増すことで、カセット間部材と膜保護板の間の流れを極小化でき、結果、膜保護板の変形を防止することができる。さらにカセット間部材に開口部を設け、カセット間部材を上面から見た投影図の領域において被濾過液が鉛直方向上下に通過可能とした場合には分離膜カセット間の流れをカセット間部材の中央部分へより集中させることができ、さらにカセット間部材と膜保護板の間の流れを極小化できるため好ましい。
【0031】
分離膜カセット1と膜保護板6、カセット間部材10、11からなる正面図の図4(a)に示すように、膜保護板6に設計された突起部16はカセット間部材10または11に対して鉛直方向上下部のいずれかまたはいずれもの方向かつ、水平方向に隣接する分離膜カセット1の方向に設置される。図4(a)の拡大図である図4(b)の網掛部に示すように、膜保護板6および付随する突起部16とカセット間部材11によって形成される被濾過液流路18は、膜保護板6とカセット間部材11の隙間の大小によって被濾過液流路18に流れ込む流量を決定する。
【0032】
本発明で解決したい課題は膜保護板6の変形抑制であり、特に気泡を多く含む被濾過液が被濾過液流路18に流れこむ場合には、通過時に瞬時的な負荷がかかることが考えられることから、被濾過液流路18の流量は低減されることが好ましく、複数存在する隣接する分離膜エレメント2の隙間および複数存在する隣接する分離膜エレメント2と膜保護板6との隙間のうち最も大きいものと比較して、被濾過液流路18のいずれかの箇所の隙間が小さく設計されている。さらに、被濾過液流路18に流入する被濾過液量を低減させるために被濾過液流路18のいずれの箇所においても、複数存在する隣接する分離膜エレメント2の隙間および複数存在する隣接する分離膜エレメント2と膜保護板6との隙間のうち最も大きい隙間の2倍よりも小さいことがより好ましい。
【0033】
分離膜カセット1と膜保護板6、カセット間部材10、11からなる上面図の図5(a)およびその拡大図である図5(b)図5(c)の通り、突起部16の上面からの投影面とカセット間部材11の上面からの投影面の共通する領域17(図5(c)の斜線部)は、膜保護板6平行方向(図5のY方向)に大半を占める長さを有するように設計されている。分離膜カセット間の領域に遮蔽物を設計し、分離膜カセット間の被濾過液の流路抵抗を増大させることで分離膜カセット1内および分離膜カセット間領域の静圧差が低減され、膜保護板6に与える応力負荷を低減するために膜保護板6の変形を抑制する。そのため、カセット間部材11は上面から見た膜保護板6平行方向の大半を占める長さを有する。好ましくは膜保護板6平行方向(図5のY方向)の80%以上の長さを覆う形状であり、突起部16は領域17がカセット間部材11と膜保護板6平行方向(図5のY方向)70%以上の長さを共有するように設計されることが好ましい。すなわち、領域17は膜保護板6平行方向(図5のY方向)の長さの56%以上の長さを有することが好ましく、膜保護板6平行方向(図5のY方向)の長さの75%以上の長さを有することがより好ましい。さらに突起部16について、隣接する分離膜カセットの方向(図5のX方向)の長さは、被濾過液流路18の流路長を延長させるほど被濾過液流路の流路抵抗が大きくなり、膜保護板6とカセット間部材11との間の被濾過液の流れを減少させることと、膜保護板6の鉛直方向(図1のZ軸方向)の断面係数を増大させ被濾過液および気泡による応力負荷に起因する変形に対する強度向上を目的として、水平方向に隣接する分離膜カセットの膜保護板と接触しない最長で設計されることが好ましい。なお、分離膜カセット1はフレーム9からの出し入れが容易であることを特徴とするため、膜保護板6および付随する突起部16はフレーム9との接触が発生しない寸法にて設計されることが好ましい。
【0034】
膜保護板6に付随する突起部16は、重量およびハンドリング性の観点から中実の構造でなくても良く、好ましくは耐変形性の向上のため格子状やハニカム構造状の幾何学様となるリブにより形成されていても構わない。
【符号の説明】
【0035】
1 分離膜カセット
2 分離膜エレメント
3 集水ノズル
4 シャフト
5 クリアランス保持部材
6 膜保護板
7 ナット
8 分離膜エレメントブロック
9 フレーム
10 下部カセット間部材
11 上部カセット間部材
12 分離膜エレメントモジュール
13 散気装置
14 溝ガイド
15 側板
16 水平方向に隣接する分離膜カセットの方向の突起部
17 突起部の上面からの投影面とカセット間部材の上面からの投影面に共通する領域
18 膜保護板およびその突起部とカセット間部材により形成される被濾過液流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8