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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129276
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】再生二軸配向ポリエステルフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/00 20060101AFI20240919BHJP
   C08J 11/06 20060101ALI20240919BHJP
   B29D 7/01 20060101ALI20240919BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
C08L67/00
C08J11/06 ZAB
B29D7/01
B32B27/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038376
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藥師堂 健一
【テーマコード(参考)】
4F100
4F213
4F401
4J002
【Fターム(参考)】
4F100AH02B
4F100AH03B
4F100AK25B
4F100AK36B
4F100AK41A
4F100AK41B
4F100AK51B
4F100AK53B
4F100AT00B
4F100BA02
4F100CA02B
4F100EJ38A
4F100JL11B
4F100JL16
4F213AG01
4F401AA22
4F401AD01
4F401AD07
4J002CF061
4J002GP00
(57)【要約】
【課題】 本発明は、着色や異物混入などによる品質の劣化が少ない、再生二軸配向ポリエステルフィルムを提供することを課題とする。
【解決手段】 再生ポリエステル樹脂Aを50質量%以上100質量%以下含有してなり、前記再生ポリエステル樹脂Aが、少なくとも片面に機能層Xを有する積層ポリエステルフィルムから前記機能層Xを除去したポリエステル樹脂であり、かつ要件1、2を満たす、再生二軸配向ポリエステルフィルム。
要件1:再生ポリエステル樹脂Aのb値が14.3以下。
要件2:式1で算出される再生ポリエステルAの表面積パラメータSが、3.0m/kg以上15.0m/kg以下。
式1:S=Σ((P/100)/(T×10-6×1400))
ただし、
S:原料となる積層ポリエステルフィルムの表面積パラメータ(m/kg)
P:原料となる積層ポリエステルフィルムの厚み毎の含有率(質量%)
T:原料となる積層ポリエステルフィルムの厚み(μm)
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生ポリエステル樹脂Aを50質量%以上100質量%以下含有してなる再生二軸配向ポリエステルフィルムであって、
前記再生ポリエステル樹脂Aが、少なくとも片面に機能層Xを有する積層ポリエステルフィルムから前記機能層Xを除去したポリエステル樹脂であり、かつ要件1および2を満たすことを特徴とする、再生二軸配向ポリエステルフィルム。
要件1:再生ポリエステル樹脂Aのb値が14.3以下である。
要件2:式1で算出される再生ポリエステルAの表面積パラメータSが、3.0m/kg以上15.0m/kg以下である。
式1:S=Σ((P/100)/(T×10-6×1400))
ただし、
S:原料となる積層ポリエステルフィルムの表面積パラメータ(m/kg)
P:原料となる積層ポリエステルフィルムの厚み毎の含有率(質量%)
T:原料となる積層ポリエステルフィルムの厚み(μm)
【請求項2】
前記機能層Xが高分子易接着層である、請求項1に記載の再生二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記機能層Xが、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、及びウレタン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種類の樹脂を含有する、請求項1または2に記載の再生二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項4】
前記機能層Xが、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、及びウレタン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種類の樹脂と、メラミン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、及びカルボジイミド系架橋剤からなる群より選ばれる少なくとも一種類の架橋剤とを含有する、請求項1または2に記載の再生二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項5】
少なくとも片面に機能層Yを有することを特徴とする、請求項1または2に記載の再生二軸配向ポリエステルフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生ポリエステルフィルムに関するものである。より詳しくは、再生ポリエステル樹脂を含有してなり、優れた色調を有し、内部異物の少ない再生二軸配向ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃プラスチックは、埋め立て、海洋投棄、焼却等の処理がなされていたが、埋め立て場所の確保が困難になりつつあり、海洋投棄は廃プラスチックが分解しないために環境面で問題になっている。また、焼却によって熱として利用することはできるが、炭酸ガスの排出により、地球温暖化につながるという問題がある。
【0003】
そこで、昨今の環境問題の高まりから、廃プラスチックの再利用、再生等のリサイクルが必要とされており、そのための研究開発が盛んに行われている。また、プラスチックはその多くが化石燃料により生産されており、資源の有効利用の点からも、リサイクル方法の構築が求められている。
【0004】
ところで、プラスチックフィルムの一種であるポリエステルフィルムは、基材フィルムとして有用であり、片面又は両面に種々の機能層が積層された、積層フィルムとして使用されることが多い。機能層としては、易接着層、離型層、ハードコート層、粘接着層、加飾層、遮光層、偏光層、紫外線遮蔽層など、様々なものがあり、機能層に応じた材料をポリエステルフィルムに積層した積層フィルムが使用されている。
【0005】
しかしながら、このような積層フィルムは、以下の通りリサイクルのハードルが高く、使用後にほとんど再利用されておらず、廃棄、焼却等がなされている。例えば、機能層が積層された積層フィルムをそのまま再溶融してリサイクルしようとすると、機能層を構成する材料が溶融ポリマー中に混入するため、押し出し時に異臭を発生したり、ポリマーの溶融粘度が低下したりしてフィルム製膜時の破断の原因となる。また、仮に製膜できたとしても、得られるフィルムの着色や異物混入などによる品質の劣化が避けられない。仮に機能層を物理的に削り取るなどして剥離除去し、溶融押出しした場合も、押し出し時の濾過工程で、残存した機能層によってフィルターが目詰まりを起こし、正常な製膜ができなくなるなどの問題が生じる。
【0006】
積層フィルムのリサイクル方法として、例えば、特許文献1や2に開示される技術がある。特許文献1の技術は、基材フィルムの少なくとも片面に易溶解性樹脂層と表面機能層をこの順に積層してなる積層フィルムを、使用後に、易溶解性樹脂層を溶解し基材フィルムを溶解しない溶媒で洗浄することにより、基材フィルムのみを分離回収しようというものである。本技術で分離回収した基材フィルムは再溶融され、基材フィルムを構成していた樹脂組成物として再生される。特許文献2の技術は、機能層として高分子易接着層が形成された二軸配向ポリエステルフィルムから生じる再生樹脂を原料とした再生フィルムである。特許文献2の技術においては、再生樹脂の含有量を40重量%以下としたり、フィルム原料を酸素不存在下にて減圧・乾燥したり、再生樹脂を酸素不存在下にて溶融させて得るなどの方法によって、着色の少ない再生フィルムを得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004-169005号公報
【特許文献2】特開2001-302994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示される方法は、上述のように、基材フィルムの表面に易溶解性樹脂層と表面機能層とをこの順に積層してなる積層フィルムを前提としており、易溶解性樹脂層を溶解させることによって、機能層を除去しようとするものである。すなわち、易溶解性樹脂層を有さない、大部分の積層ポリエステルフィルムに用いることはできず、汎用性の面で課題がある。特許文献2に開示される方法は、機能層を除去せずに再生樹脂を得ていることから再生フィルムへの異物混入が顕著であり、また再生樹脂の含有量が40質量%を超える場合、特に50質量%以上とする場合には、再生フィルムの着色が多くなる問題がある。
【0009】
そこで本発明は、上記実情に鑑みて、着色や異物混入などによる品質の劣化が少ない、再生二軸配向ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決せんとするものであって以下の構成からなる。
(1) 再生ポリエステル樹脂Aを50質量%以上100質量%以下含有してなる再生二軸配向ポリエステルフィルムであって、前記再生ポリエステル樹脂Aが、少なくとも片面に機能層Xを有する積層ポリエステルフィルムから前記機能層Xを除去したポリエステル樹脂であり、かつ要件1および2を満たすことを特徴とする、再生二軸配向ポリエステルフィルム。
要件1:再生ポリエステル樹脂Aのb値が14.3以下である。
要件2:式1で算出される再生ポリエステルAの表面積パラメータSが、3.0m/kg以上15.0m/kg以下である。
式1:S=Σ((P/100)/(T×10-6×1400))
ただし、
S:原料となる積層ポリエステルフィルムの表面積パラメータ(m/kg)
P:原料となる積層ポリエステルフィルムの厚み毎の含有率(質量%)
T:原料となる積層ポリエステルフィルムの厚み(μm)
(2) 前記機能層Xが高分子易接着層である、(1)に記載の再生二軸配向ポリエステルフィルム。
(3) 前記機能層Xが、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、及びウレタン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種類の樹脂を含有する、(1)または(2)に記載の再生二軸配向ポリエステルフィルム。
(4) 前記機能層Xが、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、及びウレタン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種類の樹脂と、メラミン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、及びカルボジイミド系架橋剤からなる群より選ばれる少なくとも一種類の架橋剤とを含有する、(1)~(3)のいずれかに記載の再生二軸配向ポリエステルフィルム。
(5) 少なくとも片面に機能層Yを有することを特徴とする、(1)~(4)のいずれかに記載の再生二軸配向ポリエステルフィルム。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、着色や異物混入などによる品質の劣化が少ない、再生二軸配向ポリエステルフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の再生二軸配向ポリエステルフィルムは、再生ポリエステル樹脂Aを50質量%以上100質量%以下含有してなる再生二軸配向ポリエステルフィルムであって、前記再生ポリエステル樹脂Aが、少なくとも片面に機能層Xを有する積層ポリエステルフィルムから前記機能層Xを除去したポリエステル樹脂であり、かつ要件1および2を満たすことを特徴とする、再生二軸配向ポリエステルフィルム、である。以下、本発明の再生二軸配向ポリエステルフィルムについて詳細に説明する。
要件1:再生ポリエステル樹脂Aのb値が14.3以下である。
要件2:式1で算出される再生ポリエステル樹脂Aの表面積パラメータSが、3.0m/kg以上15.0m/kg以下である。
式1:S=Σ((P/100)/(T×10-6×1400))
ただし、
S:原料となる積層ポリエステルフィルムの表面積パラメータ(m/kg)
P:原料となる積層ポリエステルフィルムの厚み毎の含有率(質量%)
T:原料となる積層ポリエステルフィルムの厚み(μm)。
【0013】
本発明の再生二軸配向ポリエステルフィルムは、再生ポリエステル樹脂Aを50質量%以上100質量%以下含有してなることを特徴とする。ここで再生ポリエステル樹脂Aを50質量%以上100質量%以下含有するとは、再生二軸配向ポリエステルフィルムの全構成成分を100質量%としたときに、再生ポリエステル樹脂Aを50質量%以上100質量%以下含まれることを意味する。再生ポリエステル樹脂Aの含有量を50質量%以上とすることで、再生二軸配向ポリエステルフィルムの環境負荷が低減し、またエコマーク認定基準を満たすことが可能となる。リサイクル性の観点から、再生二軸配向ポリエステルフィルムにおける再生ポリエステル樹脂Aの含有量は、80質量%以上100質量%以下がより好ましい。なお、本発明における「フィルム」とは、熱可塑性樹脂を主成分とする2次元的な構造物、例えば、シート、プレート、および膜などを含む意味に用いられ、主成分とは構造物全体を100質量%としたときに50質量%を超えて含まれる成分をいう。なお、本発明において、熱可塑性樹脂に該当する成分が複数含まれる場合は、個々の成分が50質量%に満たなくともこれらの成分の合計が50質量%を超えれば、熱可塑性樹脂を主成分とするものとして扱う。
【0014】
<再生ポリエステル樹脂A>
本発明の再生二軸配向ポリエステルフィルムに用いる再生ポリエステル樹脂Aは、少なくとも片面に機能層Xを有する積層ポリエステルフィルムから機能層Xを除去したポリエステル樹脂である。機能層Xを除去して再生ポリエステル樹脂Aを得ることにより、再生樹脂を50質量%以上含有する本発明の再生二軸配向ポリエステルフィルムの着色や異物混入などによる品質の劣化を低減することが可能となる。
【0015】
(機能層X)
機能層Xとしては、特に限定されず、易接着層、離型層、ハードコート層、粘接着層、加飾層、遮光層、偏光層、紫外線遮蔽層などを例示することができるが、再生ポリエステル樹脂Aの原料を確保しやすい観点から、易接着層や離型層であることが好ましい。易接着層や離型層はインラインコーティング法によって設けられる場合が多く、フィルムの製造工程で多量に発生する端材や不合格品などを再生ポリエステル樹脂Aの原料に採用することで、原料を確保しやすくなる。
【0016】
また、機能層Xとしては、易接着層であることがより好ましい。易接着層は比較的厚いフィルムに設ける場合が多く、これを原料とすることで後述する再生ポリエステル樹脂Aの表面積パラメータSを好適な範囲に調整しやすくなる。
【0017】
機能層Xとして採用することができる易接着層は、特に限定されず、公知の易接着層を採用することが可能であるが、再生ポリエステル樹脂Aを得る際に易接着層を除去しやすい観点から、高分子易接着層であることが特に好ましい。ここで高分子易接着層とは、高分子化合物を50質量%以上100質量%以下含有してなる易接着層をいい、また、高分子化合物とは合成樹脂をいう。
【0018】
機能層Xは、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、及びウレタン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種類の樹脂を含有することが好ましい。中でも、再生ポリエステル樹脂Aを得る際に機能層Xを除去しやすい観点から、前記した樹脂群のなかでも特にポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂を含有することが好ましい。機能層Xにポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂を含有する場合、機能層Xとポリエステル基材層との界面では水素結合によって密着されることとなり、再生ポリエステル樹脂Aを得る際に比較的容易に機能層Xを除去することができる。一方で、機能層Xにウレタン系樹脂を含有する場合には、機能層Xとポリエステル基材層との界面では化学結合によって密着されることとなり、再生ポリエステル樹脂Aを得る際に機能層Xが除去しにくく、再生フィルムの着色や異物混入などによる品質の劣化を引き起こすことがある。
【0019】
機能層Xは、メラミン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、及びカルボジイミド系架橋剤からなる群より選ばれる少なくとも一種類の架橋剤を含有することが可能であるが、再生ポリエステル樹脂Aを得る際に機能層Xを除去しやすい観点から、前記した架橋剤群のなかでも特にメラミン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤を含有することが好ましい。機能層Xにメラミン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤を含有する場合、機能層Xとポリエステル基材層との界面では水素結合によって密着されることとなり、再生ポリエステル樹脂Aを得る際に比較的容易に機能層Xを除去することができる。一方で、機能層Xにカルボジイミド系架橋剤を含有する場合には、機能層Xとポリエステル基材層との界面では化学結合によって密着されることとなり、再生ポリエステル樹脂Aを得る際に機能層Xが除去しにくく、再生フィルムの着色や異物混入などによる品質の劣化を引き起こすことがある。
【0020】
(機能層Xの除去)
機能層Xの除去方法としては特に限定されず、研磨材などを用いて機能層を物理的に削り取る方法や、洗浄剤を用いて剥離除去する方法など、公知の方法を採用することが可能であるが、洗浄剤によって機能層Xを剥離除去する方法が好ましい。洗浄剤によって機能層Xを除去することで、再生ポリエステル樹脂Aの回収率が向上し、機能層Xの残存が少なくなる。そのため、再生二軸配向ポリエステルフィルムとしたときに内部異物が少ない高品質のフィルムを得やすい。
【0021】
洗浄剤としては、アルカリ性化剤(a)と少なくとも一つの水酸基を有する化合物(b)とを含有する水系洗浄剤であることがより好ましい。アルカリ性化剤(a)と少なくとも一つの水酸基を有する化合物(b)とを含有する水系洗浄剤を用いることで、より効果的に機能層Xを除去しやすくなり、機能層Xの残存も少なく、ポリステルフィルムとしたときに異物が少ない高品質のフィルムを得やすい。
【0022】
(アルカリ性化剤(a))
アルカリ性化剤(a)は、洗浄剤をアルカリ性とするものであり、アルカリ剤とも呼ばれる。アルカリ性化剤としては、無機アルカリ性化剤であっても、有機アルカリ性化剤であってもよい。
【0023】
無機アルカリ性化剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、テトラポリリン酸ナトリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、トリポリリン酸カリウム等のアルカリ金属のリン酸塩;オルソケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のアルカリ金属のケイ酸塩;アンモニアなどが挙げられるが、アルカリ金属の水酸化物を用いることが好ましく、入手容易性の観点から水酸化ナトリウム、水酸化カリウムがより好ましく、洗浄性の観点から水酸化カリウムが特に好ましい。また、無機アルカリ性化剤は一種を単独で、または二種以上を組み合わせて使用することができる。特に、水酸化カリウムと水酸化ナトリウムを組み合わせて使用することが、効果及び取り扱い性の観点から好ましい。
【0024】
有機アルカリ性化剤としては、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-N-シクロヘキシルアミン、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、2-(ジメチルアミノ)エタノール、2-(ジエチルアミノ)エタノール、1-アミノ-2-プロパノール、トリイソプロパノールアミンなどの有機アミン化合物等が挙げられるが、汎用性の観点からモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンが好ましく、入手容易性の観点からモノエタノールアミン、ジエタノールアミンがより好ましく、洗浄性の観点からモノエタノールアミンが特に好ましい。なお、有機アルカリ性化剤として、少なくとも一つの水酸基を有する化合物が含まれる場合があるが、該化合物の酸性度定数(pKa)が30以上であれば、アルカリ性化剤として取り扱うことができる。
【0025】
さらに、無機アルカリ性化剤と、有機アルカリ性化剤を併用することも洗浄性の観点から好ましく、具体的には、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの少なくとも1種の無機アルカリ性化剤と、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、2-(ジメチルアミノ)エタノール、2-(ジエチルアミノ)エタノール、1-アミノ-2-プロパノール、トリイソプロパノールアミンから選択される少なくとも1種の有機アルカリ性化剤の組み合わせがより好ましく、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムから選択される少なくとも1種の無機アルカリ性化剤、及びモノエタノールアミン、ジエタノールアミンから選択される少なくとも1種の有機アルカリ性化剤を併用した組み合わせが特に好ましい。
【0026】
(少なくとも一つの水酸基を有する化合物(b))
少なくとも一つの水酸基を有する化合物(b)は、アルコール類、フェノール類などが挙げられる。
【0027】
アルコール類としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の単価アルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等の2価アルコール;グリセリン等の多価アルコール等を挙げることができる。
【0028】
フェノール類としては、フェノール、キシレノール、サリチル酸、ピクリン酸、ナフトール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ピロガロール、フロログルシノール、ジブチルヒドロキシトルエン、ビスフェノールA 、クレゾール、エストラジール、オイゲノール、没食子酸、グアイアコール、フェノールフタレイン、セロトニン、ドーパミン、アドレナリン、ノルアドレナリン、チモール、チロシン、ヘキサヒドロキシベンゼン等を挙げることができる。
【0029】
これらは1種を単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良いが、とりわけ、剥離洗浄効果を高める観点から、2種類以上を併用することが好ましく、中でもアルコール類を2種類以上併用することがより好ましい。
【0030】
これらのなかでも、洗浄剤のアルカリ性を損なわず、洗浄性を維持する観点から単価アルコール類が好ましい。特に、洗浄性の観点からは、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール及びベンジルアルコールがより好ましい。これらのアルコールは、プロトンが電離してアルコキシドが生成しやすく、高い洗浄性を有する。低揮発性及び使用可能な温度範囲の観点からは、ベンジルアルコールが特に好ましい。
【0031】
本発明に係る洗浄剤は水系洗浄剤であることが好ましい。水系洗浄剤は引火点を上げることができるため比較的安全性が高く、再生ポリエステル樹脂Aを製造する際の設備を防爆構造とする必要がないため比較的安価な設備での製造が可能となる。また、有機溶剤を使用せずに済む、あるいは有機溶剤を使用するとしても比較的少量で済むことから、環境負荷を小さくすることが容易となる。
【0032】
また、本発明に係る洗浄剤は、上記したアルカリ性化剤(a)や少なくとも一つの水酸基を有する化合物(b)以外にも種々の添加剤を配合することができ、例えば、界面活性剤、酸化防止剤、防錆剤、pH調整剤、防腐剤、粘度調整剤、消泡剤などを添加することができる。
【0033】
洗浄剤によって機能層Xを剥離除去する方法としては、特に限定されないが、例えば、洗浄剤の入った洗浄槽に浸漬する浸漬法、溶液状態の洗浄剤を塗布する塗布法、溶液状態の洗浄剤又は気化した洗浄剤を吹き付ける吹き付け法などが挙げられる。これらのうち、機能層への洗浄剤の浸透性の観点から浸漬法を採用することが好ましい。
【0034】
浸漬法における洗浄剤の温度としては20℃以上であることが好ましい。洗浄剤の温度が20℃以上であると、洗浄液の粘度が低く、機能層へ浸透しやすいため良好な洗浄性が得られやすい。浸漬法における洗浄剤の温度としては40℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることがさらに好ましく、60℃以上であることが特に好ましい。洗浄剤の温度の上限値としては、洗浄剤を溶液状態で用いる場合には、沸点以下の温度であることが実質的な上限となる。すなわち、洗浄剤に水系洗浄剤を用いる場合には100℃が上限となる。また、浸漬法における剥離洗浄ではマイクロ波照射を行ってもよい。浸漬時間については、機能層Xと洗浄剤の構成、洗浄剤の温度などによって適宜調整することができ、通常は10分以上60分以下の浸漬時間であれば機能層Xを十分に除去できる。
【0035】
浸漬法において、洗浄剤の入った洗浄槽に機能層Xを有する積層ポリエステルフィルムを浸漬する方法としては、機能層Xを有する積層ポリエステルフィルムをフレーク状に断裁して洗浄槽中に導入する方法や、機能層Xを有する積層ポリエステルフィルムからなるフィルムロールを連続的に巻き出しながら洗浄槽中に直接導入する方法などを例示することができる。
【0036】
機能層Xを有する積層ポリエステルフィルムをフレーク状に断裁して洗浄槽中に導入する方法を採用する場合には、あらかじめフレーク状に断裁したものをベルトコンベア等で連続的に洗浄槽中に導入する方法を採用してもよいし、機能層Xを有する積層ポリエステルフィルムからなるフィルムロールを連続的に巻き出しながらフレーク状に断裁しつつ連続的に洗浄槽中に直接導入する方法を採用してもよい。いずれの場合でも、機能層Xを剥離除去する工程をバッチ式で行いやすくなり、浸漬時間を比較的長く設定できるようになるなどの利点がある。
【0037】
さらに、機能層Xを有する積層ポリエステルフィルムからなるフィルムロールを連続的に巻き出しながらフレーク状に断裁しつつ連続的に洗浄槽中に直接導入する方法を採用する場合においては、積層ポリエステルフィルムがコンタミネーションしにくいため、原料の管理が容易となり、後述する再生ポリエステル樹脂Aの表面積パラメータSを好適な範囲に制御しやすいなどの利点がある。なお、積層ポリエステルフィルムから効率良く機能層Xを除去する目的で、洗浄槽内に、超音波、マイクロバブル、ナノバブル、水流、圧縮冷気などの物理的手段を備えた設備を設けてもよい。
【0038】
機能層Xを有する積層ポリエステルフィルムからなるフィルムロールを連続的に巻き出しながら洗浄槽中に直接導入する方法を採用する場合には、連続的に洗浄加工を施しやすくなり、高い生産効率を得やすい。また、積層ポリエステルフィルムから効率良く機能層Xを除去する目的で、前記フレーク状に断裁したものを洗浄槽中に導入する方法と同様、洗浄槽内に、超音波、マイクロバブル、ナノバブル、水流、圧縮冷気などの物理的手段を備えた設備を設けてもよいが、フレーク状に断裁したものを洗浄槽中に導入する方法では採用しにくかったロールブラシを設けることが容易となり、そうすることで機能層Xをより効果的に除去しやすくなるなどの利点がある。
【0039】
(再生ポリエステル樹脂Aの製造)
本発明の再生二軸配向ポリエステルフィルムに用いる再生ポリエステル樹脂Aは、前述のように機能層Xを除去して得られるが、機能層Xを除去した後に、リンス工程、乾燥工程、再生ペレット化工程をこの順に設けることが好ましい。以下、各工程について説明する。
【0040】
本発明に係るリンス工程とは、機能層Xを除去したフィルムに付着した洗浄剤や機能層Xを由来とした遊離成分をリンス液により洗い流す工程を指す。リンス液としては、洗浄剤や機能層Xを由来とした遊離成分を洗い流し得るものであれば特に限定されないが、洗浄剤として水系洗浄剤を用いる場合にはリンス液に水を用いることができる。リンス工程の温度としては、効率的に洗い流せるとの観点から室温付近であることが好ましく、具体的には5~50℃であることが好ましく、5~30℃であることがより好ましい。洗浄剤や機能層Xを由来とした遊離成分を洗い流す方法としては、機能層Xを除去したフィルムに対してリンス液を吹き付ける吹き付け法、フィルムをリンス液の入ったリンス槽に浸漬する浸漬法などが挙げられる。
【0041】
本発明に係るリンス工程は複数回行ってもよい。前述のように洗浄剤にはアルカリ性化剤(a)を含有することを好ましい態様としているが、仮にアルカリ性化剤(a)がリンス工程後にも残存している場合には、再生チップ化や再生フィルムの製造時にポリエステル樹脂の分解を促進しやすい場合があり、再生二軸配向ポリエステルフィルムを製造する際に製造工程の安定性が悪化することや、ゲル異物の増加を招く場合があることから、リンス工程を複数回行うなどしてアルカリ性化剤(a)を十分に洗い流すことが好ましい。同様の観点から、アルカリ性化剤(a)を中和させることを目的として、リンス液に酸性化剤を添加することも好ましい態様である。より具体的には、リンス工程を2回行うこととし、1回目のリンス工程にて酸性化剤を添加したリンス液を用いてアルカリ性化剤(a)の中和を行い、2回目のリンス工程にてリンス液として水を用いることも、より好ましい態様として例示できる。
【0042】
リンス工程の後には、乾燥工程を設けることが好ましい。乾燥工程によって、フィルム上に残存した洗浄剤やリンス液を除去でき、さらには、後述する再生ペレット化工程における加水分解を抑制しやすくなる。乾燥工程の条件としては、特に限定されず、通常140~160℃で4~8時間程度の時間乾燥すれば十分である。乾燥方法としては、赤外線ヒーターやオーブンなどによる加熱乾燥、熱風乾燥機などによる熱風乾燥やマイクロ波加熱乾燥など、一般的な方法を用いることができるが、より効率的に乾燥を行う観点から真空乾燥機によって減圧下で乾燥することが好ましい。
【0043】
乾燥工程の後には、再生ペレット化工程を設けることが好ましい。再生ペレット化工程によって再生ペレットを得ることができ、これを再生ポリエステル樹脂Aとすることで、保管性と再生フィルム製造時の押出機への供給性に優れる再生ポリエステル樹脂Aを得ることができる。再生ペレット化工程には公知の方法を採用することができ、例えば、290℃に設定した押出機に前記乾燥フレークを供給し、溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後に直ちにカッティングして、再生ペレット化された再生ポリエステル樹脂Aを得ることができる。
【0044】
(再生ポリエステル樹脂Aのb値)
本発明の再生二軸配向ポリエステルフィルムに用いる再生ポリエステル樹脂Aは、b値が14.3以下であることが重要である。再生ポリエステル樹脂Aのb値が14.3を超えると再生二軸配向ポリエステルフィルムの着色が顕著となり、実用に耐えられない。再生ポリエステル樹脂Aのb値を14.3以下とするためには、後述する再生ポリエステル樹脂Aの表面積パラメータSを3.0m/kg以上15.0m/kg以下とすることや、機能層Xを構成する成分を先述したように適宜選択することが効果的である(これらの方法は適宜併用可能である。)。上記観点から、再生ポリエステル樹脂Aのb値は、13.2以下とすることが好ましく、12.7以下とすることがより好ましく、12.1以下とすることが特に好ましい。また、再生ポリエステル樹脂Aが受ける熱履歴を考慮すると、9.5がb値の実質的な下限である。なお、再生ポリエステル樹脂Aのb値は実施例に記載の方法にて測定される。
【0045】
(再生ポリエステル樹脂Aの表面積パラメータS)
本発明の再生二軸配向ポリエステルフィルムに用いる再生ポリエステル樹脂Aは、表面積パラメータSが3.0m/kg以上15.0m/kg以下であることが重要である。なお、再生ポリエステル樹脂Aの表面積パラメータSは、再生ポリエステル樹脂Aを製造する際の原料となる積層ポリエステルフィルムの表面積の合計値であり、下記の式1にて算出される。
式1:S=Σ((P/100)/(T×10-6×1400))
ただし、
S:原料となる積層ポリエステルフィルムの表面積パラメータ(m/kg)
P:原料となる積層ポリエステルフィルムの厚み毎の含有率(質量%)
T:原料となる積層ポリエステルフィルムの厚み(μm)。
【0046】
例えば、再生ポリエステル樹脂Aを製造する際の原料として、厚み50μmの積層ポリエステルフィルムを50質量%と厚み100μmの積層ポリエステルフィルムを50質量%とを用いて再生ポリエステル樹脂Aを作製する場合には、再生ポリエステル樹脂Aの表面積パラメータSは10.7m/kgとなる。
【0047】
再生ポリエステル樹脂Aの表面積パラメータSが15.0m/kgを超えると、再生ポリエステル樹脂Aを製造する際に空気中の酸素に晒される面積が増えて酸化が促進されることで再生ポリエステル樹脂Aのb値が大きくなり、また、再生二軸配向ポリエステルフィルムの着色が顕著となるため実用に耐えられないものとなる。再生ポリエステル樹脂Aの表面積パラメータSを15.0m/kg以下とするためには、再生ポリエステル樹脂Aを製造する際の原料となる積層ポリエステルフィルムの厚みを厚くすることや、比較的薄い積層ポリエステルフィルムの含有量を減らすこと、比較的厚い積層ポリエステルフィルムの含有量を増やすこと等が効果的である。上記観点から、再生ポリエステル樹脂Aの表面積パラメータSの上限は、11.9m/kgとすることが好ましく、10.7m/kgとすることがより好ましく、9.0m/kgとすることがさらに好ましい。再生ポリエステル樹脂Aの表面積パラメータSの下限は、再生ポリエステル樹脂Aを作製する際の原料として用いる積層ポリエステルフィルムの供給性の観点から3.0m/kgが実質的な下限である。
【0048】
再生ポリエステル樹脂Aを製造する際の原料として用いる積層ポリエステルフィルムは、厚みが50μm以上1000μm以下であるものを90質量%以上含有することが好ましい。厚みが50μm以上1000μm以下の積層ポリエステルフィルムを90質量%以上含有することで、再生ポリエステル樹脂Aのb値と再生二軸配向ポリエステルフィルムの着色を抑制しやすく、また再生ポリエステル樹脂Aの生産効率が優れる。積層ポリエステルフィルムの厚みと含有量は、厚みが50μm以上1000μm以下の積層ポリエステルフィルムの含有量が95質量%以上であることがより好ましく、厚みが50μm以上1000μm以下の積層ポリエステルフィルムの含有量が99質量%以上であることがさらに好ましく、厚みが50μm以上250μm以下の積層ポリエステルフィルムの含有量が99質量%以上であることが特に好ましい。
【0049】
さらに、再生ポリエステル樹脂Aを製造する際の原料として用いる積層ポリエステルフィルムは、厚みが50μm以上75μm未満であるものを60質量%以下含有するか、あるいは、厚みが50μm以上75μm未満であるものをまったく含有しないことも、特に好ましい態様である。
【0050】
<再生二軸配向ポリエステルフィルム>
本発明の再生二軸配向ポリエステルフィルムは二軸配向していることが重要である。なお、ここでいう「二軸配向」とは、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。二軸配向フィルムは一般に、二軸延伸法、すなわち、未延伸状態のシートを長手方向および幅方向に各々2.5~5.0倍程度延伸し、その後、熱処理を施し、結晶配向を完了させることにより得ることができる。また、二軸延伸法としては、逐次二軸延伸法を用いても、同時二軸延伸法を用いてもよい。さらには、二軸延伸を施した後に再度、長手方向あるいは幅方向に延伸を施してもよい。フィルムを二軸配向フィルムとすることで、高い結晶性を得やすく、寸法安定性に優れたポリエステルフィルムを得ることができ、光学フィルムや工業材料用フィルムなど多岐にわたる用途に用いることができる。
【0051】
本発明の再生二軸配向ポリエステルフィルムは、少なくとも片面に機能層Yを有することが好ましい態様である。機能層Yとしては、特に限定されないが、機能層Xと成分の少なくとも一部が共通し、共通する度合いが大きいほど好ましい。すなわち、機能層Yと機能層Xが同様の機能層であることが最も好ましい態様である。機能層Yと機能層Xの成分が共通する度合いの高い態様とすることで、本発明の再生二軸配向ポリエステルフィルムの製造工程で多量に発生する端材や不合格品などを再生ポリエステル樹脂Aの原料に再度採用することが容易となり、循環型リサイクルのスキームを構築しやすいといった利点がある。
【0052】
本発明の再生二軸配向ポリエステルフィルムは、フィルムb値が14.0未満であることが好ましい。フィルムb値が低いことは着色が少ないことを意味し、フィルムb値が14.0未満であれば、特に光学フィルム用途や加飾フィルム用途などといったフィルム色調への品質要求が高い用途への採用が容易となる。フィルムb値は、再生ポリエステル樹脂Aのb値を低くしたり、再生ポリエステル樹脂Aの含有量を少なくしたりすることで制御でき、これらの方法は適宜併用してもよい。上記観点から、フィルムb値は13.0未満であることがより好ましく、11.0未満であることが特に好ましい。フィルムb値の下限は、再生ポリエステル樹脂Aの含有量の観点から8.0が実質的な下限である。なお、フィルムb値は実施例に記載の方法にて測定される。
【0053】
本発明の再生二軸配向ポリエステルフィルムは、内部異物量が100.0万個/m未満であることが好ましい。内部異物量が100.0万個/m未満であれば、特に光学フィルム用途や加飾フィルム用途などといった内部異物量への品質要求が高い用途への採用が容易となる。内部異物量は、再生ポリエステル樹脂Aを製造する際の機能層X剥離除去方法や各種条件を適宜調整したり、再生ポリエステル樹脂Aの含有量を少なくしたりすることで制御できる。内部異物量は50.0万個/m未満であることがより好ましく、20.0万個/m未満であることが特に好ましい。内部異物量の下限は、再生ポリエステル樹脂Aの含有量の観点から0.4万個/mが実質的な下限である。なお、本発明に係る内部異物とは、再生ポリエステル樹脂Aを製造する際の機能層Xの残存成分などに起因する、フィルム内部に観察される平板状あるいは波板状の異物を指し、内部異物量は実施例に記載の方法によって測定される。
【0054】
内部異物量を100.0万個/m未満若しくは上記の好ましい範囲とする方法としては、例えば再生ポリエステル樹脂Aの含有量を少なくする方法、再生ポリエステル樹脂Aの表面積パラメータSを低くする方法、機能層Xを洗浄で除去しやすいものとする方法、機能層Xの除去方法や除去条件を上述したように適宜適正化する方法、再生ポリエステル樹脂Aの原料となる積層ポリエステルフィルムとして片面のみに機能層Xを有するものを用いる方法等を用いることができ、これらは適宜併用することができる。
【0055】
次に、本発明の再生二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法を、ポリエステル樹脂としてホモポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略すことがある。)樹脂を用いた場合を例にして説明する。ただし、本発明の再生二軸配向ポリエステルフィルムはこれに限定されるものではない。
【0056】
まず、再生PETペレットを50~100質量%とPETペレットを0~50質量%の割合でドライブレンドし、これを真空乾燥した後、押出機に供給し260~300℃で溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度10~60℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて、冷却固化せしめて未延伸PETフィルムを作製する。この未延伸フィルムを70~100℃に加熱されたロール間で縦方向(フィルムの進行方向を指し「長手方向」ともいう。)に2.5~5.0倍延伸する。続いて、この一軸配向フィルムをクリップで把持して予熱ゾーンに導き、75~95℃の温度まで加熱を行い、引き続き連続的に90~115℃の加熱ゾーンで横方向(フィルムの進行方向とフィルム面内で直交する方向を指し「幅方向」ともいう)に2.5~5.0倍、好ましくは3.0~5.0倍延伸し、続いて200~240℃の加熱ゾーンで5~60秒間熱処理を施し、100~200℃の冷却ゾーンを経て結晶配向の完了した二軸配向PETフィルム(本発明の再生二軸配向ポリエステルフィルムに相当)を得る。なお、上記熱処理中に必要に応じて3~12%の弛緩処理を施してもよい。二軸延伸は逐次延伸あるいは同時二軸延伸のいずれでもよく、また縦、横延伸後、縦、横いずれかの方向に再延伸してもよい。得られた二軸配向PETフィルムの幅方向両端部をトリミングして除去した後に巻き取り中間製品とし、その後スリッターを用いて所望の幅にカット後、円筒状のコアに巻き付け所望の長さのPETフィルムロールを得ることができる。なお、巻き取り時に巻姿改善のためにフィルム両端部にエンボス処理を施しても良い。
【0057】
本発明の再生二軸配向ポリエステルフィルムは、片面または両面に機能層Yを設けてもよい。また、機能層Yは一方の面に2層以上の複数層であってもよいし、両面に機能層Yを設ける場合は一方の面とその反対の面で異なるものとしてもよい。例えば、易滑性と易接着性、または易滑性とオリゴマーブロック性といった、複数の機能をひとつの機能層Yで補完することも可能であり、また、片方の面に易滑性と易接着性を補完する機能層Yを設け、その上にハードコート層を設け、さらにもう片方の面に易滑性とオリゴマーブロック性の両方を補完する機能層Yを設けるといった構成をとることができるなど、塗布面、機能、ひとつの機能層Yで補完する機能の数と種類、層数の組み合わせなどになんら制限はない。
【0058】
本発明の再生二軸配向ポリエステルフィルムの表面に機能層Yを設ける場合において、機能層Yを設ける方法としては、ポリエステルフィルムの製造工程とは別工程で塗布を行うことで機能層Yを設ける方法、いわゆるオフラインコーティング法と、ポリエステルフィルムの製造工程中に塗布を行うことで機能層Yが設けられたポリエステルフィルムを一気に得る、いわゆるインラインコーティング法のいずれの方法も用いることが可能である。本発明の再生二軸配向ポリエステルフィルムにおいては、コストの面や、塗布厚みの均一化の観点からインラインコーティング法によって機能層Yを設けることが好ましく、その場合に用いる塗液の溶剤は、環境汚染や防爆性の観点から水系であることが好ましい。
【0059】
本発明の再生二軸配向ポリエステルフィルムの表面に機能層Yを設ける場合においては、ポリエステルフィルムの製造方法として、前記インラインコーティング法を用いて、以下の工程1)~4)をこの順にて実施する方法が、機能層Yの特性を発現させ、かつ生産性を高める観点から、特に好ましい方法として挙げられる。
1)ベースとなるポリエステルフィルムの工程フィルムの少なくとも片面に、機能層Yを形成するための塗液を塗布する塗布工程。
2)ベースとなるポリエステルフィルムの工程フィルムに塗布された塗液を加熱乾燥することによって、機能層Yを形成せしめる加熱乾燥工程。
3)機能層Yが形成された工程フィルムを延伸する延伸工程。
4)延伸された工程フィルムを加熱し、熱処理を行う熱処理工程。
【0060】
前記1)項に記載した塗布工程における塗布方法は、特に限定されるものではなく、例えばリバースコート法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、ダイコート法などを用いることができるが、機能層Yの厚みムラを低減する観点から、グラビアコート法およびバーコート法を用いるが好ましく、計量バーによるバーコート方式を用いることが特に好ましい。計量バーによるバーコート方式を用いる場合に用いる計量バーに関して、その直径は特には限定されないが、通常は10~30mmの範囲となる。また、計量のための溝の作製方法は、ワイヤーを円筒形の部材に巻き付けるワイヤーバー方式を採用してよいし、部材表面に螺旋状溝を掘った方式を採用してもよい。なお、塗布均一性の観点から、計量バーの振れ量に関しては、150μm以下であるものを用いるが好ましく、100μm以下であるものを用いることが特に好ましい。
【0061】
前記2)項に記載した加熱乾燥工程において、加熱乾燥後の機能層Y面のフィルム表面の温度を75~95℃の範囲に調整することが好ましい。加熱乾燥後の機能層Y面のフィルム表面の温度が75℃未満である場合には、フィルムの予熱が不十分となり、引き続き実施される延伸工程でのフィルム破れが発生しやすい傾向がある。また、加熱乾燥後の機能層Y面のフィルム表面の温度が95℃を越える場合には、機能層Yの延伸時の均一性が損なわれる場合があり、機能層Yの厚みのバラツキが大きくなる傾向がある。
【0062】
また、加熱乾燥工程における加熱乾燥方法については特には限定されず、例えば熱風を吹き付ける方法や非接触式のヒーターで加熱する方法などを挙げることができるが、加熱乾燥の均一性の観点から、熱風を吹き付ける方法を採用することが好ましい。また、加熱乾燥工程終了後の機能層Y面のフィルム表面を非接触温度計にて測定し、該測定結果が上述の温度範囲となるように決められた目標値に制御されるように、加熱乾燥工程における熱風の風速や温度を制御する(目標温度より高くなった場合は風速を落とすか温度を下げる。目標温度より低くなったときは風速を上げるか温度を上げる)方法を用いることが、長時間連続生産時の機能層Yの厚みの変動抑制の観点で好ましい。
【0063】
なお、インラインコート法においては、通常、オーブンによる加熱乾燥後に横延伸を実施するが、幅方向両端部はクリップに把持されているため、塗布は幅方向中央部のみに実施される場合が多い。このため、塗布が施されているフィルム幅方向中央部と塗布が施されていないフィルム幅方向両端部とでは、延伸時のフィルム温度に差が生じる場合があり、この場合、相対的に温度が高いフィルム幅方向両端部が、より延伸されやすい状態となっている。また、機能層Yに各種架橋剤等が含有されている場合においては、計量バーやグラビアロールが長期の連続生産による目詰まりにより経時で塗布厚みが減少する傾向があり、この場合には、横延伸時のフィルム中央部のフィルム温度が上昇するため、フィルム幅方向中央部が比較的延伸されやすい傾向となり、フィルムは幅方向中央部の横延伸の実効倍率が上昇することで、横延伸後の機能層Yの厚みが薄くなる場合がある。これらの実情を鑑みて、加熱乾燥工程終了後のフィルム温度を、幅方向、あるいは連続生産時において経時的に一定水準に制御することが、好ましい態様となる。
【0064】
前記3)項の延伸工程においては、塗布層が形成された工程フィルムに90~115℃に設定した熱風を吹き付けながら、フィルム幅方向に2.5~5.0倍、好ましくは3.0~5.0倍に延伸することが好ましい態様である。熱風の温度が90℃以上である場合は、延伸時のフィルム破れが軽減され、一方、熱風の温度が115℃以下であることにより、加熱による機能層Yの厚みの均一性の悪化が軽減される。また、フィルムの横延伸倍率が2.5倍以上であることにより、幅方向の強度の悪化や幅方向の厚みむらが軽減され、一方で、フィルムの横延伸倍率が5.0倍以下であることにより、延伸時のフィルム破れが軽減される。
【0065】
前記4)項の熱処理工程においては、200℃~240℃に設定した熱風を5~60秒間吹き付ける方法が好ましい。この工程においては、工程フィルムの結晶化を促進することで、フィルムを構成する高分子の二次構造、三次構造を固定化し、フィルムの耐熱変形性、熱寸法安定性、耐薬品性などを向上させることができる。熱処理工程の温度および時間については、上記した範囲内において、目標とするフィルム特性に応じて調整することができる。
【実施例0066】
以下、実施例により本発明の構成、効果をさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。各実施例の記述に先立ち、各項目の評価方法を記載する。
【0067】
(1)樹脂のb値(-)
インジェクション成形機により幅100mm×長さ100mm×厚さ1mmのテストピースを作製し、測色色差計(日本電色工業株式会社製“ZE 6000”)を用いて、透過光によりb値を測定した。テストピースの作製及び測定を3回繰り返し、得られた値の平均値を樹脂のb値とした。
【0068】
(2)再生ポリエステル樹脂Aの表面積パラメータS(m/kg)
下記式1によって算出した。
式1:S=Σ((P/100)/(T×10-6×1400))
ただし、
S:原料となる積層ポリエステルフィルムの表面積パラメータ(m/kg)
P:原料となる積層ポリエステルフィルムの厚み毎の含有率(質量%)
T:原料となる積層ポリエステルフィルムの厚み(μm)
なお、T:原料となる積層ポリエステルフィルムの厚み(μm)は、下記(3)と同様の方法にて測定した。
【0069】
(3)フィルム厚み(μm)
ダイヤルゲージ(株式会社ミツトヨ製“No2110S-10”)を用いて、任意の20点を測定し、得られた値の平均値をフィルム厚み(μm)とした。
【0070】
(4)フィルムb値(-)
合計厚みが1mmになるようにフィルムを重ねて、これをサンプルとし、JIS Z 8722(2000年)に基づき、測色色差計(日本電色工業株式会社製“SE 2000”)を用いて、透過光によりb値を測定した。サンプルの作製及び測定を3回繰り返し、得られた値の平均値をフィルムb値とした。
【0071】
(5)内部異物量(個/m
フィルムサンプルを10cm四方に切り出し、一方の表面に5mm×50mmの長方形のマーキングを入れ、前記長方形のマーキングを入れた面とは反対の面に、マーキング領域がすべて埋まるように油性マーカー(寺西化学工業株式会社製“マジックインキ”(登録商標)極太 黒)により塗り潰した。次に、偏光顕微鏡(株式会社ニコン製“ECLIPSE”(登録商標)LV100)を用いて、倍率50倍、落射光の条件にて前記マーキングを入れた面からマーキング領域を観察した。このとき、焦点をフィルム表面に合わせて観察を行い、明るく光る異物が認められた場合にフィルムの深さ方向に焦点をずらしていき、当該異物がフィルム表面よりもフィルム内部で焦点が合う場合に内部異物と判定した。マーキング領域をすべて観察して内部異物の個数をカウントし、さらに別のサンプルを用いて同様の評価を繰り返し、3回の平均値を面積換算して内部異物量とした。各実施例及び各比較例では、以下の樹脂、塗液、積層ポリエステルフィルム等を用いた。
【0072】
(6)リサイクル性
再生二軸配向ポリエステルフィルムにおける再生ポリエステル樹脂Aの含有量から、下記の基準にて評価した。
・A:再生ポリエステル樹脂Aの含有量が80質量%以上であった。
・B:再生ポリエステル樹脂Aの含有量が50質量%以上80質量%未満であった。
・C:再生ポリエステル樹脂Aの含有量が50質量%未満であった。
【0073】
(7)着色の少なさ
前記(4)フィルムb値の評価結果から、下記の基準にて評価した。
・A:フィルムb値が11.0未満であった。
・B:フィルムb値が10.0以上13.0未満であった。
・C:フィルムb値が13.0以上14.0未満であった。
・D:フィルムb値が14.0以上であった。
【0074】
(8)異物の少なさ
前記(5)内部異物量の評価結果から、下記の基準にて評価した。
・A:内部異物量が20.0万個/m未満であった。
・B:内部異物量が20.0万個/m以上50.0万個/m未満であった。
・C:内部異物量が50.0万個/m以上100.0万個/m未満であった。
・D:内部異物量が100.0万個/m以上であった。
【0075】
<バージンポリエステル樹脂B1>
外部添加粒子を含有しないPETペレット(極限粘度0.63dl/g)を用いた。
【0076】
<バージンポリエステル樹脂B2>
外部添加粒子として粒径1.4μmのシリカ粒子を0.03質量%と粒径2.6μmのシリカ粒子を0.01質量%とを含有するPETペレット(極限粘度0.63dl/g)を用いた。
【0077】
<塗液A>
窒素ガス雰囲気下で、ジカルボン酸成分として2,6-ナフタレンジカルボン酸40モル部、テレフタル酸50モル部、5-スルホイソフタル酸ナトリウム5モル部、グリコール成分としてエチレングリコール95モル部、ジエチレングリコール5モル部をエステル交換反応器に仕込み、これにテトラブチルチタネート(触媒)を全ジカルボン酸成分100万質量部に対して100質量部添加して、160~240℃で5時間エステル化反応を行った後、溜出液を取り除いた。その後、トリメリット酸5モル部と、テトラブチルチタネートを更に全ジカルボン酸100万質量部に対して100質量部添加して、240℃で、反応物が透明になるまで溜出液を除いたのち、220~280℃の減圧下において、重縮合反応を行い、ポリエステル(A)を得た。その後、ポリエステル(A)を100.0質量部、メラミン系架橋剤(日本カーバイド工業株式会社製“ニカラック”(登録商標)MW12LF:有効成分50質量%、イソプロピルアルコール17質量%含有)を有効成分換算で50.0質量部、コロイダルシリカ(粒径140nm)を40質量部混合してなる水分散液を有効成分換算で2.2質量部、シリカ粒子(粒径300nm)を20質量部混合してなる水分散液を有効成分換算で0.6質量部、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルを3.0質量部、水を92.0質量部混合して、塗液Aを得た。
【0078】
<塗液B>
メチルメタクリレートを64.0質量部、エチルアクリレートを34質量部、アクリル酸を1質量部、アクリロニトリルを1質量部の組成で共重合してなるアクリル樹脂共重合体をアクリル(A)とし、ポリエステル(A)をアクリル(A)に変更したこと以外は塗液Aと同様の方法により、塗液Bを得た。
【0079】
<塗液C>
ポリエステル(A)100.0質量部を、アクリル(A)70.0質量部およびポリエステル(A)30.0質量部に変更したこと以外は塗液Aと同様の方法により、塗液Cを得た。
【0080】
<塗液D>
窒素ガス雰囲気下で、脂肪族ポリイソシアネート化合物として1,6-ヘキサンジイソシアネートを70質量部、ポリオール化合物としてポリイソブチレングリコールを30質量部、溶媒として、アセトニトリル60質量部、N-メチルピロリドン30質量部とを反応器に仕込み、触媒としてオクチル酸第1錫を0.06質量部加え、反応液温度を75~78℃に調整して7時間反応させ、ウレタン(A)を得た。その後、コロイダルシリカ(粒径140nm)を40質量部混合してなる水分散液を有効成分換算で2.2質量部、シリカ粒子(粒径300nm)を20質量部混合してなる水分散液を有効成分換算で0.6質量部、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルを3.0質量部、水を92.0質量部混合して、塗液Dを得た。
【0081】
<塗液E>
架橋剤を、メラミン系架橋剤(日本カーバイド工業株式会社製“ニカラック”(登録商標)50.0質量部(有効成分換算)から、カルボジイミド化合物(日清紡ケミカル株式会社製“カルボジライト”(登録商標)V02-L2(固形分濃度40質量%、溶媒:水))を有効成分換算で50.0質量部に変更したこと以外は塗液Aと同様の方法により、塗液Eを得た。
【0082】
<積層ポリエステルフィルム>
前記バージンポリエステル樹脂B1を真空中160℃で4時間乾燥した後、押出機に供給し285℃で溶融押出を行った。溶融樹脂を、ステンレス鋼繊維を焼結圧縮した平均目開き5μmのフィルターで濾過し、次いで平均目開き14μmのステンレス鋼粉体を焼結したフィルターで濾過した。その後、溶融樹脂組成物をT字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度20℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化せしめた。こうして得られた未延伸フィルムを予熱ロールにて70℃に予熱後、上下方向からラジエーションヒーターを用いて90℃まで加熱しつつロール間の周速差を利用して長手方向に3.1倍延伸し、引き続き冷却ロールにて25℃まで冷却し、一軸配向フィルムとした。この一軸配向フィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施し、フィルムの表面張力を55mN/mとした。次いで、前記の塗液A、塗液B、塗液C、塗液D、塗液Eからなる群より選ばれる少なくとも一種類の塗液を適宜選択(各実施例、比較例で用いたものは表1に示す。)して、上記一軸配向フィルムの片面または両面にバーコーターを用いて塗布した。なお、メタリングワイヤーバーは直径13mm、ワイヤー径0.1mm(#4)のものを用いた。塗液を塗布した一軸延伸フィルムをクリップで把持してオーブンに導き、温度120℃、風速20m/分の熱風にて加熱乾燥した。引き続き連続的に延伸工程に導き、温度100℃、風速15m/分の熱風にて加熱しながら幅方向に3.7倍延伸した。得られた二軸配向フィルムを引き続き連続的に温度230℃、風速20m/分の熱風にて15秒間熱処理を実施後、230℃から120℃まで冷却しながら5%の弛緩処理を施し、続けて50℃まで冷却した。引き続き幅方向両端部を除去した後に巻き取り、フィルム厚み38μm~250μmのポリエステルフィルム中間製品を得た。その後、ポリエステルフィルム中間製品を1500mm幅にスリットし、フィルムがコアに巻き取られる部分で交流電圧印加式除電器により除電しながら、フィルムを2000m巻き取り、積層ポリエステルフィルムからなるフィルムロールを得た。
【0083】
<再生ポリエステル樹脂A1~18>
前記積層ポリエステルフィルムからなるフィルムロールを連続的に巻き出しながら、0.5~3cm角、平均約1.5cm角のフレーク状に断裁しつつ、内容積約7mの洗浄槽中に1600kg投入し、更に温水4500Lを投入した。次いで、アルカリ性化剤(a)として水酸化ナトリウム水溶液(有効成分50質量%)を480Lと、少なくとも一つの水酸基を有する化合物(b)としてエチルアルコールを20Lと、界面活性剤としてポリオキシエチレン誘導体(花王株式会社製“エマルゲン”(登録商標)A-500)を1kgとを投入し、洗浄槽内に設置した攪拌羽根を回転させながら、洗浄槽内の温度を90℃に昇温した。攪拌羽根を回転させつつ、洗浄槽内温度が90℃に到達してから30分間洗浄処理を行い、その後、洗浄槽下部から洗浄液を排出しつつ、洗浄槽上部に設置したシャワー装置より1000L/minの給水量で洗浄槽内に純水を供給し、12分間のシャワー水洗を行った。次いで、洗浄後のフレークを真空中160℃で4時間乾燥した後、290℃に設定した押出機に供給し、ステンレス鋼繊維を焼結圧縮した平均目開き10μmのフィルターで溶融樹脂を濾過した。その後、溶融樹脂をストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後に直ちにカッティングして、再生ポリエステル樹脂A1~17を得た。再生ポリエステル樹脂A1~17を製造する際に用いた積層ポリエステルフィルムの機能層Xの内容、フィルム厚み、配合量について表1に示す。ここで、表1中に記載のA面とはフィルム製造工程におけるキャスティングドラム接触面を意味し、またB面とはフィルム製造工程におけるキャスティングドラム非接触面を意味する。再生ポリエステル樹脂A1~17の再生ポリエステル樹脂Aの表面積パラメータSと樹脂のb値は表1に示す値であった。なお、再生ポリエステル樹脂A18として、表1に示す内容で再生ポリエステル樹脂Aの製造を試みたが、フィルムの断裁がうまくいかず、製造不可であった。
【0084】
【表1】
【0085】
表中、積層ポリエステルフィルム1~3は再生ポリエステル樹脂Aの原料となる積層ポリエステルフィルムを表す。また、積層ポリエステルフィルム1~3の含有量は、機能層Xはコーティングによって形成されたものであり厚みが極めて薄いことから、積層ポリエステルフィルム1~3の比率は実質的に再生ポリエステル樹脂Aにおいても保たれている。また、A面、B面は両面にコーティングを行う場合は任意とし、片面にのみコーティングを行った場合はコーティングを行う面をA面とした。
【0086】
(実施例1)
原料として、再生ポリエステル樹脂A1とバージンポリエステル樹脂B1とを質量比1:1でドライブレンドしたものを用い、真空中160℃で4時間乾燥した後、押出機に供給し285℃で溶融押出を行った。溶融樹脂を、ステンレス鋼繊維を焼結圧縮した平均目開き5μmのフィルターで、次いで平均目開き14μmのステンレス鋼粉体を焼結したフィルターで濾過した後、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度20℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化せしめた。こうして得られた未延伸フィルムを予熱ロールにて70℃に予熱後、上下方向からラジエーションヒーターを用いて90℃まで加熱しつつロール間の周速差を利用して長手方向に3.1倍延伸し、引き続き冷却ロールにて25℃まで冷却し、一軸配向フィルムとした。この一軸配向フィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施し、フィルムの表面張力を55mN/mとした。次いで、機能層Yとして、塗液Aを上記一軸配向フィルムの両面にバーコーターを用いて塗布した。なお、メタリングワイヤーバーは直径13mm、ワイヤー径0.1mm(#4)のものを用いた。塗液を塗布した一軸配向フィルムをクリップで把持してオーブンに導き、温度120℃、風速20m/分の熱風にて加熱乾燥した。引き続き連続的に延伸工程に導き、温度100℃、風速15m/分の熱風にて加熱しながら幅方向に3.7倍延伸した。得られた二軸配向フィルムを引き続き連続的に温度230℃、風速20m/分の熱風にて15秒間熱処理を実施後、230℃から120℃まで冷却しながら5%の弛緩処理を施し、続けて50℃まで冷却した。引き続き幅方向両端部をトリミングして除去した後に巻き取り、フィルム厚み50μmのポリエステルフィルム中間製品を得た。その後、ポリエステルフィルム中間製品を1500mm幅にスリットし、フィルムがコアに巻き取られる部分で交流電圧印加式除電器により除電しながら、フィルムを2000m巻き取り、本発明の再生二軸配向ポリエステルフィルムからなるフィルムロールを得た。ここで得られた本発明の再生二軸配向ポリエステルフィルムの評価結果を表2に示す。
【0087】
(実施例2~29)
表2記載の原料と機能層Yとフィルム厚みに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により、本発明の再生二軸配向ポリエステルフィルムからなるフィルムロールを得た。なお、表2中に記載のA面とはフィルム製造工程におけるキャスティングドラム接触面を意味し、またB面とはフィルム製造工程におけるキャスティングドラム非接触面を意味する。ここで得られた本発明の再生二軸配向ポリエステルフィルムの評価結果を表2に示す。
【0088】
(比較例1~9)
表2記載の原料と機能層Yとフィルム厚みに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により、二軸配向ポリエステルフィルムからなるフィルムロールを得た。ここで得られた二軸配向ポリエステルフィルムの評価結果を表2に示す。
【0089】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明によれば、着色や異物混入などによる品質の劣化が少ない、再生二軸配向ポリエステルフィルムを提供することができる。上記特性に優れるため、本発明の再生二軸配向ポリエステルフィルムは光学フィルム用途、加飾フィルム用途、工業材料用フィルム用途等に好適に利用可能である。