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特開2024-129280導電性接着剤組成物および導電性接着剤組成物の使用方法
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  • 特開-導電性接着剤組成物および導電性接着剤組成物の使用方法 図1
  • 特開-導電性接着剤組成物および導電性接着剤組成物の使用方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129280
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】導電性接着剤組成物および導電性接着剤組成物の使用方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 4/02 20060101AFI20240919BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20240919BHJP
   C09J 163/10 20060101ALI20240919BHJP
   C09J 175/14 20060101ALI20240919BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
C09J4/02
C09J9/02
C09J163/10
C09J175/14
C09J11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038381
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000130581
【氏名又は名称】サトーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】前田 禎光
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040EC201
4J040EF181
4J040FA131
4J040HA066
4J040HB41
4J040JB10
4J040KA13
4J040KA32
4J040LA09
4J040NA19
(57)【要約】      (修正有)
【課題】熱でも、UVでも、硬化することが可能な、導電性接着剤組成物と、導電性接着剤の使用方法とを提供すること。
【解決手段】少なくとも以下の成分:エポキシ(メタ)アクリレート成分と、(メタ)アクリレート成分と、ウレタン(メタ)アクリレート成分と、光開始剤と、有機過酸化物と、を含む接着剤と、ニッケル粒子、金粒子、ニッケルで表面が被覆された樹脂粒子、および金で表面が被覆された樹脂粒子からなる群より選択される1以上の導電性粒子と、を含む、インレイ用アンテナとICチップとを接続するための導電性接着剤組成物、および当該導電性接着剤組成物を用いて、インレイ用アンテナとICチップとを接続する使用方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも以下の成分:
エポキシ(メタ)アクリレート成分と、
(メタ)アクリレート成分と、
ウレタン(メタ)アクリレート成分と、
光開始剤と、
有機過酸化物と、
を含む接着剤と、
ニッケル粒子、金粒子、ニッケルで表面が被覆された樹脂粒子、および金で表面が被覆された樹脂粒子からなる群より選択される1以上の導電性粒子と、
を含む、インレイ用アンテナとICチップとを接続するための導電性接着剤組成物。
【請求項2】
エポキシ(メタ)アクリレート成分が、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート、ノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、脂肪族型エポキシ(メタ)アクリレート、およびこれらの2種以上の混合物からなる群より選択され、
(メタ)アクリレート成分が、(メタ)アクリル酸の塩および、(メタ)アクリル酸と脂肪族アルコール、脂環式アルコールまたは芳香族アルコールとのエステル化合物、(メタ)アクリルアミド、およびこれらの2種以上の混合物からなる群より選択され、
ウレタン(メタ)アクリレート成分が、2官能性、3官能性または4官能性の脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート化合物、2官能性、3官能性または4官能性の脂環式ウレタン(メタ)アクリレート化合物、2官能性、3官能性または4官能性の芳香族ウレタン(メタ)アクリレート化合物、およびこれらの2種以上の混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の導電性接着剤組成物。
【請求項3】
導電性粒子が、導電性接着剤組成物の質量を基準として5~20%含まれる、請求項2に記載の導電性接着剤組成物。
【請求項4】
インレイ用アンテナ上の所定の基準位置に、導電性接着剤組成物を配置し、
配置した導電性接着剤組成物上にICチップを配置して、インレイ用アンテナと導電性接着剤組成物とICチップとから構成される積層物を形成し、
ICチップが配置された位置の近傍で、インレイ用アンテナ上の導電性接着剤組成物に向けて紫外線を照射して、導電性接着剤組成物を硬化させて、ICチップとインレイ用アンテナとを接続する、導電性接着剤組成物の使用方法であって、
導電性接着剤組成物が、少なくとも以下の成分:
エポキシ(メタ)アクリレート成分と、
(メタ)アクリレート成分と、
ウレタン(メタ)アクリレート成分と、
光開始剤と、
有機過酸化物と、
を含む接着剤と、
ニッケル粒子、金粒子、ニッケルで表面が被覆された樹脂粒子、および金で表面が被覆された樹脂粒子からなる群より選択される1以上の導電性粒子と、
を含む、使用方法。
【請求項5】
インレイ用アンテナ上の導電性接着剤組成物に向けて紫外線を照射した後に、積層物全体を昇温することをさらに含む、請求項4に記載の使用方法。
【請求項6】
エポキシ(メタ)アクリレート成分が、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート、ノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、脂肪族型エポキシ(メタ)アクリレート、およびこれらの2種以上の混合物からなる群より選択され、
(メタ)アクリレート成分が、(メタ)アクリル酸の塩および、(メタ)アクリル酸と脂肪族アルコール、脂環式アルコールまたは芳香族アルコールとのエステル化合物、(メタ)アクリルアミド、およびこれらの2種以上の混合物からなる群より選択され、
ウレタン(メタ)アクリレート成分が、2官能性、3官能性または4官能性の脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート化合物、およびこれらの2種以上の混合物からなる群より選択される、請求項4または5に記載の使用方法。
【請求項7】
導電性粒子が、導電性接着剤組成物の質量を基準として5~20%含まれる、請求項6に記載の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性接着剤組成物および導電性接着剤組成物の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物品の製造、管理、流通のために物品に取り付けられるラベルにおいてRFID(Radio Frequency Identification)ラベルが普及している。RFIDラベルでは、RFIDに適合したICチップ及び所定形状のアンテナパターンをベースフィルムに積層したRFIDインレイが組み込まれ、ICチップには物品に関する様々な情報を記憶することができる。このようなRFID仕様のICチップが組み込まれたタグ、ラベル、リストバンド等(以下、RFID媒体という)には、取り付けられる対象物、貼付される対象物、又は装着者(以下、これらを含めて被着体という)に関する情報が視認可能に印字されるとともに、組み込まれたICチップに、被着体に関する様々な情報を記憶することができる。
【0003】
RFIDラベルは、ラベル基材、粘着剤層、セパレータをこの順に積層した粘着紙において、粘着剤層とセパレータとの間にポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムをベースとしたRFIDインレイを配置したものが一般的である。
【0004】
従来、RFIDラベルへのICチップの実装は、熱硬化型樹脂組成物中に導電性粒子を混入した異方向性導電性接着剤(Anisotropic Conductive Paste、ACP)を使用し、ICチップを搭載するアンテナ上にACPを少量塗布し、さらにこの上にICチップ、および非粘着性シートを配置して積層物を作製し、積層物の上下から160℃ないし350℃に加熱された加圧ヘッドにより数時間挟み込んで熱硬化性樹脂組成物を硬化させて、ICチップの端子とアンテナとを接続することにより行っていた(特許文献1)。このような異方向性導電性接着剤を用いてイCチップを実装するために、主成分としてエポキシ系樹脂を含む組成物が用いられていた(特許文献2)。
【0005】
このように、RFIDラベルへのICチップの実装には、加熱が必要だったため、ラベル基材としてサーマル紙を使用すると、加熱の際にICチップ近傍のサーマル紙が変色してしまうおそれがあった。サーマル紙をラベル基材として用いる時には、加熱ではなく、紫外線(UV)による硬化が可能なUV硬化性のACPを別途用意する必要があった。このように、使用する材料を変更するたびに、ACPを塗布する装置の洗浄が必要となるため、工数が増えて生産効率が低下していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-140670号公報
【特許文献2】特開2021-106268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる従来技術の問題を解決すべく、熱でも、UVでも、硬化することが可能な、導電性接着剤組成物と、導電性接着剤の使用方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の態様は、少なくとも以下の成分:エポキシ(メタ)アクリレート成分と、(メタ)アクリレート成分と、ウレタン(メタ)アクリレート成分と、光開始剤と、有機過酸化物と、を含む接着剤と、
ニッケル粒子、金粒子、ニッケルで表面が被覆された樹脂粒子、および金で表面が被覆された樹脂粒子からなる群より選択される1以上の導電性粒子と、
を含む、インレイ用アンテナとICチップとを接続するための導電性接着剤組成物である。
【0009】
ここで、エポキシ(メタ)アクリレート成分が、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート、ノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、脂肪族型エポキシ(メタ)アクリレート、およびこれらの2種以上の混合物からなる群より選択され、
(メタ)アクリレート成分が、(メタ)アクリル酸の塩および、(メタ)アクリル酸と脂肪族アルコール、脂環式アルコールまたは芳香族アルコールとのエステル化合物、(メタ)アクリルアミド、およびこれらの2種以上の混合物からなる群より選択され、
ウレタン(メタ)アクリレート成分が、2官能性、3官能性または4官能性の脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート化合物、2官能性、3官能性または4官能性の脂環式ウレタン(メタ)アクリレート化合物、2官能性、3官能性または4官能性の芳香族ウレタン(メタ)アクリレート化合物、およびこれらの2種以上の混合物からなる群より選択されることが好ましい。
【0010】
また、導電性粒子が、導電性接着剤組成物の質量を基準として5~20%含まれることが好ましい。
【0011】
本発明の二の態様は、インレイ用アンテナ上の所定の基準位置に、導電性接着剤組成物を配置し、
配置した導電性接着剤組成物上にICチップを配置して、インレイ用アンテナと導電性接着剤組成物とICチップとから構成される積層物を形成し、
ICチップが配置された位置の近傍で、インレイ用アンテナ上の導電性接着剤組成物に向けて紫外線を照射し、導電性接着剤を硬化させて、ICチップとインレイ用アンテナとを接続する、導電性接着剤組成物の使用方法であって、
導電性接着剤組成物が、少なくとも以下の成分:エポキシ(メタ)アクリレート成分と、(メタ)アクリレート成分と、ウレタン(メタ)アクリレート成分と、光開始剤と、有機過酸化物と、を含む接着剤と、
ニッケル粒子、金粒子、ニッケルで表面が被覆された樹脂粒子、および金で表面が被覆された樹脂粒子からなる群より選択される1以上の導電性粒子と、
を含む、使用方法である。
【0012】
ここで、インレイ用アンテナ上の導電性接着剤組成物に向けて紫外線を照射した後に、積層物全体を昇温することをさらに含むことが好ましい。
【0013】
エポキシ(メタ)アクリレート成分が、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート、ノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、脂肪族型エポキシ(メタ)アクリレート、およびこれらの2種以上の混合物からなる群より選択され、
(メタ)アクリレート成分が、(メタ)アクリル酸の塩および、(メタ)アクリル酸と脂肪族アルコール、脂環式アルコールまたは芳香族アルコールとのエステル化合物、(メタ)アクリルアミド、およびこれらの2種以上の混合物からなる群より選択され、
ウレタン(メタ)アクリレート成分が、2官能性、3官能性または4官能性の脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート化合物、2官能性、3官能性または4官能性の脂環式ウレタン(メタ)アクリレート化合物、2官能性、3官能性または4官能性の芳香族ウレタン(メタ)アクリレート化合物、およびこれらの2種以上の混合物からなる群より選択されることが好ましい。
【0014】
また、導電性粒子が、導電性接着剤組成物の重量を基準として5~20%含まれることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の導電性接着剤組成物は、熱でも、UVでも、硬化することが可能であり、通常のラベル基材だけでなくサーマル紙のラベル基材に対するICチップの実装にも用いることが可能である。本発明の導電性接着剤組成物は、熱で硬化させることも、UVで硬化させることもできるため、インレイ用アンテナにICチップをどのように接着させるかを問わずに使用することができる。本発明の導電性接着剤組成物を使用して、ICチップとインレイ用アンテナとを接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係るRFIDインレイの平面図である。
図2図1における要部Sを拡大して説明する拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
一の実施形態は、少なくとも以下の成分:エポキシ(メタ)アクリレート成分と、(メタ)アクリレート成分と、ウレタン(メタ)アクリレート成分と、光開始剤と、有機過酸化物と、を含む接着剤と、
ニッケル粒子、金粒子、ニッケルで表面が被覆された樹脂粒子、および金で表面が被覆された樹脂粒子からなる群より選択される1以上の導電性粒子と、
を含む、インレイ用アンテナとICチップとを接続するための導電性接着剤組成物である。
一の実施形態の導電性接着剤組成物は、接着剤と、導電性粒子とを含む。ここで接着剤とは、物体と物体とを接続するために使用される化学物質および化学物質の混合物のことである。
【0018】
一の実施形態において、インレイとは、RFIDインレイのことである。RFIDインレイは、たとえば図1に示すような構造をしたものを挙げることができる。本明細書ではRFIDインレイまたは単にインレイと呼ぶ。図1を用いてインレイを説明すると、インレイ1は、基材2と、基材2に金属箔により形成されたアンテナパターン3と、アンテナパターン3に接続されたICチップ4と、を備える。
【0019】
基材2は、吸湿性を有する基材である。一例として、基材2は、厚紙、上質紙、中質紙、これらの紙類の表面に塗工層を有するコート紙や、感熱紙の紙基材である。基材2は、樹脂フィルムの単体又はこれらの樹脂フィルムを複数積層してなる多層フィルムであってもよい。樹脂フィルムとして、たとえばポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレンナフタレート等を主成分として含むフィルムを使用できる。
【0020】
基材2として紙基材を使用する場合には、紙基材の厚さは、曲げ強度を確保する観点から、10μm以上300μm以下、特に50μm以上260μm以下であることが好ましく、曲げ強度と取扱性を考慮して、80μmとすることがより好ましい。基材2として樹脂フィルムを用いる場合は、25μm以上200μm以下の厚さを有するものを使用することができ、特に厚さ10μm以上200μm以下のものを使用することが好ましい。なお、基材2の厚さは、上記範囲内において、インレイ1を用いて作製される製品としてのRFID媒体の意匠性や用途等に応じて、適宜選択可能である。
【0021】
吸湿性を有する材料(たとえば紙)からなる基材2上に形成されたアンテナパターン3に導電性接着剤組成物E(図2参照)を用いてICチップ4を接着すると、導電性接着剤組成物Eが基材2に浸透するため、ICチップ4と基材2との接着強度が高められる。
【0022】
アンテナパターン3は、ループ部31と、ICチップ4が接続されるICチップ接続部32と、ループ部31から左右対称に延びるメアンダ33、34と、メアンダ33、34の端部に接続されたキャパシタハット35、36とを備える。すなわち、アンテナパターン3は、ダイポールアンテナを構成する。アンテナパターン3は、一例として、UHF帯(300MHz~3GHz、特に860MHz~960MHz)に対応したアンテナ長さ及びアンテナ線幅になるように設計されている。またアンテナパターン3は、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤等の粘着剤により、基材2に接着されている。なお、アンテナパターン3は、金属箔で形成されている。アンテナパターン3に適用可能な金属としては、例えば、銅、アルミニウムがあげられる。製造コストを抑える観点から、アルミニウム箔を用いることが好ましい。インレイ1の全体の厚さ、RFID媒体に成型された際のRFID媒体全体の厚さ、及び製造コスト等の観点から、金属箔の厚さは、3μm以上25μm以下であることが好ましい。一の実施形態においては、一例として、厚さ20μmのアルミニウム箔が使用される。
【0023】
インレイ用アンテナに接続されるICチップ4は、図2に示すように、アンテナパターン3のループ部31の一部に形成されたICチップ接続部32に、一の実施形態の導電性接着剤組成物Eによって電気的及び機械的に接続される。導電性接着剤組成物Eは、以下に詳細に説明する通り、接着成分であるバインダ樹脂中に、所定粒径に調製された導電性フィラーが混合された熱硬化型の接着剤組成物である。導電性接着剤組成物Eは、UVの照射、あるいは熱圧着処理、場合によりこれらの併用により、アンテナパターン3とICチップ4、および基材2とICチップ4とを電気的および機械的に接続することができる。
【0024】
一の実施形態の導電性接着剤組成物は、接着剤と、導電性粒子と、を含む。ここで接着剤は、少なくともエポキシ(メタ)アクリレート成分と、(メタ)アクリレート成分と、ウレタン(メタ)アクリレート成分と、光開始剤と、有機過酸化物と、を含む。
【0025】
接着剤の構成成分の一つとして、エポキシ(メタ)アクリレート成分が含まれる。エポキシ(メタ)アクリレート成分は、熱または放射線の照射等により硬化させることができる。エポキシ(メタ)アクリレート成分とは、分子中に活性なエポキシ基を1つ以上有するエポキシ化合物と、(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる化合物のことである。エポキシ化合物として、ビスフェノール型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物およびフェノールノボラック型エポキシ化合物を含むノボラック型エポキシ化合物、および脂肪族型エポキシ化合物、およびこれらの混合物を用いることができる。また、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸とメタクリル酸とを含む。用いるエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸の種類を変更することで、多様なビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート、ノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、または脂肪族型エポキシ(メタ)アクリレート、およびこれらの混合物を得ることができる。エポキシ(メタ)アクリレート成分は、上記の通り、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との付加反応(エステル化反応)により得ることができる他、市販のEBECRYL600、EBECRYL645、(ダイセル・オルネクス株式会社)、エポキシエステル40EM、エポキシエステル3002M(N)(共栄社化学株式会社)、NKオリゴEA-1010N、EA-1010LC(新中村化学工業株式会社)等を用いても良い。
【0026】
接着剤の構成成分の一つとして、(メタ)アクリレート成分が含まれる。一の実施形態で用いられる(メタ)アクリレート成分は、(メタ)アクリル酸の塩の他、(メタ)アクリル酸と脂肪族アルコール、脂環式アルコールまたは芳香族アルコールとのエステル化合物、(メタ)アクリルアミド、およびこれらの2種以上の混合物を挙げることができる。(メタ)アクリレート成分は、熱または放射線の照射等により硬化させることができる。本明細書において単に(メタ)アクリレート成分という場合は、上記のエポキシ(メタ)アクリレート成分は含まないものとする。一の実施形態での使用に好適な(メタ)アクリレート成分の具体例として、たとえば、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。(メタ)アクリレート成分として、活性の水酸基を1つ以上有するアルコール化合物またはエーテル化合物と(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる化合物を用いることが特に好ましい。このような(メタ)アクリレート成分は、(メタ)アクリル酸とアルコール化合物またはエーテル化合物との付加反応(エステル化反応)により得ることができる他、市販の(メタ)アクリレート成分(たとえば、東京化成工業株式会社、三菱ガス化学株式会社、株式会社日本触媒、共栄社化学株式会社、大阪有機化学工業株式会社)を適宜用いることもできる。
【0027】
接着剤の構成成分の一つとして、ウレタン(メタ)アクリレート成分が含まれる。ウレタン(メタ)アクリレート成分とは、分子内に(メタ)アクリレートセグメントと、イソシアネートセグメントと、ポリオールセグメントとを含む化合物成分のことである。ウレタン(メタ)アクリレート成分は、2官能性、3官能性または4官能性の脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート化合物、2官能性、3官能性または4官能性の脂環式ウレタン(メタ)アクリレート化合物、2官能性、3官能性または4官能性の芳香族ウレタン(メタ)アクリレート化合物、およびこれらの2種以上の混合物であることが好ましい。ウレタン(メタ)アクリレート成分は、熱または放射線等により硬化させることができる。ウレタン(メタ)アクリレート成分を硬化させると、柔軟なソフトセグメントと、硬いハードセグメントとが生じる。
【0028】
ウレタン(メタ)アクリレート成分中の(メタ)アクリレートセグメントは、たとえば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートから構成され、イソシアネートセグメントは、たとえば、トルエンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)から構成され、ポリオールセグメントは、たとえば、ポリエステルポリオール(ポリ1,6-ヘキサメチレンアジペート、ポリカプロラクトンポリオール、ポリ1,6-ヘキサンジオールフタレート等)、ポリエーテルポリオール(ポリテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレントリオール等)、ポリカーボネートポリオール(1,6-ヘキサンジオールまたは1,5-ペンタンジオールを主骨格として有するポリカーボネートジオール等)、ポリオキシアルキレンポリオールから構成される。ウレタン(メタ)アクリレート成分は、(メタ)アクリレートセグメント、イソシアネートセグメント及びポリオールセグメントをそれぞれ構成する化合物を付加反応させて得ることができる他、市販のウレタン(メタ)アクリレート成分(たとえば、共栄社化学株式会社、ダイセル・オルネクス株式会社、三菱ケミカル株式会社、東亜合成株式会社、新中村化学工業株式会社)を適宜用いることもできる。
【0029】
一の実施形態に用いられる接着剤において、エポキシ(メタ)アクリレート成分の質量と、(メタ)アクリレート成分およびウレタン(メタ)アクリレート成分の合計質量とが約1:1となるように配合することが好ましい。このような割合で接着剤の材料を配合することにより、一の実施形態の導電性接着剤組成物をUVのみで硬化させることが可能となる。
【0030】
一の実施形態において用いられる接着剤は、光開始剤を含む。光開始剤は、紫外線(UV)、電子線等の照射により開裂して、組成物の重合反応や架橋反応を開始する物質のことである。光開始剤として、光ラジカル重合開始剤が挙げられる。光ラジカル重合開始剤として、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾインメチルエーテル、4-ベンゾイル安息香酸、ジフェニルエタンジオン、3’-ヒドロキシアセトフェノン、4、4’-ジメチルベンシル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、1-ヒドロキシシクロヘキサン-1-イルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン等が挙げられる。
【0031】
一の実施形態において用いられる接着剤は、有機過酸化物を含む。有機過酸化物は、加熱、あるいは紫外線(UV)、電子線等の照射により開裂して、遊離のラジカルを発生させ、組成物の重合反応や架橋反応を開始する化合物のことである。有機過酸化物として、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ビス(p-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、過酢酸等を挙げることができる。
【0032】
一の実施形態の導電性接着剤組成物は、上記の成分を含む接着剤と、導電性粒子を含む。導電性粒子とは、電気を流す機能を有する比較的小さい物体のことである。導電性粒子として代表的なものは金属粒子であり、ここでは金属粉末を含む。一の実施形態に用いることができる導電性粒子として、金属粒子(粉末)の他、金属で被覆された樹脂粒子を挙げることができる。導電性粒子として、たとえば、銀粒子または粉末、銀合金粒子または粉末、銀コート銅粒子(銀電表面が被覆された銅粒子)または粉末、銀コートニッケル粒子または粉末、銀コートアルミニウム粒子または粉末、銀コートガラス粒子または粉末、ニッケル粒子または粉末、金粒子または粉末、ニッケルコート樹脂粒子、金コート樹脂粒子を挙げることができる。一の実施形態において、ニッケル粒子、金粒子、ニッケルで表面が被覆された樹脂粒子、および金で表面が被覆された樹脂粒子からなる群より選択される1以上の導電性粒子を用いることが特に好ましい。一の実施形態では、ニッケル粒子、ニッケルで表面が被覆された樹脂粒子、または金で表面が被覆された樹脂粒子を用いることが特に好ましい。特にニッケルで表面が被覆された樹脂粒子、または金で表面が被覆された樹脂粒子は、導電性接着剤組成物がインレイ用アンテナとICチップとの間に配置されて、これらを接続するために使用された際に、加圧により変形して、インレイ用アンテナとICチップとの電気的接続をより強固にすることができるため、好ましい。ニッケルまたは金により被覆する樹脂粒子として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、シリコーン樹脂等のビーズまたはマイクロビーズを用いることができる。接続する導電性粒子の平均粒径は、約1~20μm、好ましくは2~8μmである。導電性粒子の平均粒径は、また導電性粒子は、一の実施形態の導電性接着剤組成物の質量を基準として5~20%、好ましくは6~18%含まれていることが好ましい。
【0033】
一の実施形態の導電性接着剤組成物は、放射線、特にUVにより硬化させることが可能である。一の実施形態の導電性接着剤組成物は、特にインレイ用アンテナとICチップとを接続するために用いられる。インレイ用アンテナとICチップとを接続する際に、UVによる硬化だけでなく、必要に応じて、加熱することも可能であり、これによりインレイ用アンテナとICチップとの接着を強固にすることができる。たとえば、インレイ用アンテナとICチップとの接続に一の実施形態の導電性接着剤組成物を用いる場合に、まず短時間UVを照射して、これらの部材同士を仮止めし、次いで加熱して接着強度を上げることができる。このように部材同士の仮止めを行うことで、インレイ用アンテナとICチップとをより精密な位置関係にて接続することができる。
【0034】
一の実施形態の導電性接着剤組成物は、UV照射のみで効果的に硬化するものであり、加熱でしか硬化しない接着剤組成物と比べると短時間で所望の接着強度を得ることができるという利点も有している。一の実施形態の導電性接着剤組成物は、従来の接着剤と同様加熱により硬化させることもできる。実装の方法を問わずに一の実施形態の導電性接着剤組成物を使用し続けることが可能となるので、実装機械の洗浄等の工数を省略することができる。
【0035】
一の実施形態の導電性接着剤組成物の接着強度を高める、導電性接着剤組成物の貯蔵安定性を高める、あるいは導電性接着剤組成物の物性を調整する等の目的のために、既知の添加剤(可塑剤、溶剤、粘度調節剤、密着性付与剤、安定剤、帯電防止剤、充填剤、増粘剤、顔料、老化防止剤、消泡剤等)を導電性接着剤組成物に適宜加えることができる。
【0036】
二の実施形態は、インレイ用アンテナ上の所定の基準位置に、導電性接着剤組成物を配置し、
配置した導電性接着剤組成物上にICチップを配置して、インレイ用アンテナと導電性接着剤組成物とICチップとから構成される積層物を形成し、
ICチップが配置された位置の近傍で、インレイ用アンテナ上の導電性接着剤組成物に向けて紫外線を照射して、導電性接着剤組成物を硬化させて、ICチップとインレイ用アンテナとを接続する、導電性接着剤組成物の使用方法である。ここで導電性接着剤組成物が、少なくとも以下の成分:エポキシ(メタ)アクリレート成分と、(メタ)アクリレート成分と、ウレタン(メタ)アクリレート成分と、光開始剤と、有機過酸化物と、を含む接着剤と、ニッケル粒子、金粒子、ニッケルで表面が被覆された樹脂粒子、および金で表面が被覆された樹脂粒子からなる群より選択される1以上の導電性粒子と、を含むことを特徴とする。
【0037】
二の実施形態において、インレイとは、RFIDインレイのことであり、樹脂フィルム等の基材の上にICチップとアンテナとを配置した、アンテナ付きICチップのことである。インレイは、たとえば図1のような構造をしたものである。上記の通り、インレイ用アンテナは、樹脂フィルム、厚紙、上質紙、中質紙、これらの紙類の表面に塗工層を有するコート紙や、感熱紙等の基材の上に配置されていても良い。インレイ用アンテナが基材の上に配置されている場合、基材の厚さは10μm以上300μm以下のものが使用できる。なかでも紙類の基材を用いる場合は、50μm以上260μm以下の厚さを有するものを使用することが好ましく、通常は、80μm程度の厚さのものを使用することが好ましい。樹脂フィルムの基材を用いる場合は、25μm以上200μm以下の厚さを有するものを使用することができ、特に厚さ10μm以上200μm以下のものを使用することが好ましい。樹脂フィルムとして、たとえばポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレンナフタレート等を主成分として含むフィルムを使用できる。複数の樹脂フィルムを積層した多層樹脂フィルムを用いることも可能である。
【0038】
インレイ用アンテナは、導電性材料が含まれた導電性シートから形成されている。導電性シートとして、金属箔、特にアルミニウム箔や銅箔等シート形状のものを使用することが好ましい。
【0039】
二の実施形態の導電性接着剤組成物の使用方法は、まず、インレイ用アンテナ上の所定の基準位置に、導電性接着剤組成物を配置する。インレイ用アンテナ上の所定の基準位置とは、インレイ用アンテナにICチップを接着すべき位置のことである。次いで配置した導電性接着剤組成物の上にICチップを配置して、インレイ用アンテナと導電性接着剤組成物とICチップとから構成される積層物を形成する。インレイ用アンテナが基材の上に配置されている場合は、積層物は基材とインレイ用アンテナと導電性接着剤組成物とICチップとから構成されることになる。この積層物の近傍であって、ICチップが配置された位置の近傍に向けて、紫外線を照射する。紫外線が照射された導電性接着剤組成物に含まれている導電性接着剤が重合および架橋反応して硬化し、これによりインレイ用アンテナとICチップとが接続する。
【0040】
二の実施形態の使用方法を、図2を用いて説明する。図2において中央に示されるアンテナパターン3の所定の基準位置に導電性接着剤組成物Eを配置する。配置した導電性接着剤組成物Eの上にICチップ4を配置する。こうして、インレイ用アンテナパターン3と導電性接着剤組成物EとICチップ4とから構成された積層物が得られる。この積層物のICチップ4の近傍に向けて紫外線を照射する。紫外線が照射されると導電性接着剤組成物Eが重合および架橋して硬化し、アンテナパターン3とICチップ4とが接続される。
【0041】
以下に説明する二の実施形態に用いられる導電性接着剤組成物は、UVの照射により充分に硬化させることが可能であるが、上記のようにインレイ用アンテナ上の導電性接着剤組成物に向けて紫外線を照射した後に、積層物全体を昇温することをさらに含んでいてもよい。導電性接着剤組成物をこのように使用することで、UV照射によってインレイ用アンテナとICチップとを仮止めし、ついで積層物全体を昇温することにより導電性接着剤組成物を完全に硬化させることができる。積層物の昇温は、積層物を加熱および加圧することが可能な装置を用いて行うことができる。積層物を昇温させるには、160℃以上350℃以下の温度で、1秒間程度、積層物を加熱することが好ましい。
【0042】
二の実施形態の方法に使用する導電性接着剤組成物は、少なくとも以下の成分:エポキシ(メタ)アクリレート成分と、(メタ)アクリレート成分と、ウレタン(メタ)アクリレート成分と、光開始剤と、有機過酸化物と、を含む接着剤と、ニッケル粒子、金粒子、ニッケルで表面が被覆された樹脂粒子、および金で表面が被覆された樹脂粒子からなる群より選択される1以上の導電性粒子と、を含む。二の実施形態で使用する導電性接着剤組成物に含まれている接着剤は、少なくともエポキシ(メタ)アクリレート成分と、(メタ)アクリレート成分と、ウレタン(メタ)アクリレート成分と、光開始剤と、有機過酸化物と、を含む。
【0043】
二の実施形態で用いられる導電性接着剤組成物は、接着剤と、導電性粒子とを含む。接着剤の構成成分の一つとして、エポキシ(メタ)アクリレート成分が含まれる。エポキシ(メタ)アクリレート成分は、熱または放射線の照射等により硬化させることができる。エポキシ(メタ)アクリレート成分とは、分子中に活性なエポキシ基を1つ以上有するエポキシ化合物と、(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる化合物のことである。エポキシ化合物として、ビスフェノール型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物およびフェノールノボラック型エポキシ化合物を含むノボラック型エポキシ化合物、および脂肪族型エポキシ化合物、およびこれらの混合物を用いることができる。また、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸とメタクリル酸とを含む。用いるエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸の種類を変更することで、多様なビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート、ノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、または脂肪族型エポキシ(メタ)アクリレート、およびこれらの混合物を得ることができる。エポキシ(メタ)アクリレート成分は、上記の通り、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との付加反応(エステル化反応)により得ることができる他、市販のEBECRYL600、EBECRYL645、(ダイセル・オルネクス株式会社)、エポキシエステル40EM、エポキシエステル3002M(N)(共栄社化学株式会社)、NKオリゴEA-1010N、EA-1010LC(新中村化学工業株式会社)等を用いても良い。
【0044】
接着剤の構成成分の一つとして、(メタ)アクリレート成分が含まれる。一の実施形態で用いられる(メタ)アクリレート成分は、(メタ)アクリル酸の塩の他、(メタ)アクリル酸と脂肪族アルコール、脂環式アルコールまたは芳香族アルコールとのエステル化合物、(メタ)アクリルアミド、およびこれらの2種以上の混合物を挙げることができる。(メタ)アクリレート成分は、熱または放射線の照射等により硬化させることができる。本明細書において単に(メタ)アクリレート成分という場合は、上記のエポキシ(メタ)アクリレート成分は含まないものとする。一の実施形態での使用に好適な(メタ)アクリレート成分の具体例として、たとえば、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。(メタ)アクリレート成分として、活性の水酸基を1つ以上有するアルコール化合物またはエーテル化合物と(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる化合物を用いることが特に好ましい。このような(メタ)アクリレート成分は、(メタ)アクリル酸とアルコール化合物またはエーテル化合物との付加反応(エステル化反応)により得ることができる他、市販の(メタ)アクリレート成分(たとえば、東京化成工業株式会社、三菱ガス化学株式会社、株式会社日本触媒、共栄社化学株式会社、大阪有機化学工業株式会社)を適宜用いることもできる。
【0045】
接着剤の構成成分の一つとして、ウレタン(メタ)アクリレート成分が含まれる。ウレタン(メタ)アクリレート成分とは、分子内に(メタ)アクリレートセグメントと、イソシアネートセグメントと、ポリオールセグメントとを含む化合物成分のことである。ウレタン(メタ)アクリレート成分は、2官能性、3官能性または4官能性の脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート化合物、2官能性、3官能性または4官能性の脂環式ウレタン(メタ)アクリレート化合物、2官能性、3官能性または4官能性の芳香族ウレタン(メタ)アクリレート化合物、およびこれらの2種以上の混合物であることが好ましい。ウレタン(メタ)アクリレート成分は、熱または放射線等により硬化させることができる。ウレタン(メタ)アクリレート成分を硬化させると、柔軟なソフトセグメントと、硬いハードセグメントとが生じる。
【0046】
ウレタン(メタ)アクリレート成分中の(メタ)アクリレートセグメントは、たとえば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートから構成され、イソシアネートセグメントは、たとえば、トルエンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)から構成され、ポリオールセグメントは、たとえば、ポリエステルポリオール(ポリ1,6-ヘキサメチレンアジペート、ポリカプロラクトンポリオール、ポリ1,6-ヘキサンジオールフタレート等)、ポリエーテルポリオール(ポリテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレントリオール等)、ポリカーボネートポリオール(1,6-ヘキサンジオールまたは1,5-ペンタンジオールを主骨格として有するポリカーボネートジオール等)、ポリオキシアルキレンポリオールから構成される。ウレタン(メタ)アクリレート成分は、(メタ)アクリレートセグメント、イソシアネートセグメント及びポリオールセグメントをそれぞれ構成する化合物を付加反応させて得ることができる他、市販のウレタン(メタ)アクリレート成分(たとえば、共栄社化学株式会社、ダイセル・オルネクス株式会社、三菱ケミカル株式会社、東亜合成株式会社、新中村化学工業株式会社)を適宜用いることもできる。
【0047】
二の実施形態に用いられる導電性接着剤組成物に含まれる接着剤において、エポキシ(メタ)アクリレート成分の質量と、(メタ)アクリレート成分およびウレタン(メタ)アクリレート成分の合計質量とが約1:1となるように配合することが好ましい。このような割合で接着剤の材料を配合することにより、二の実施形態において導電性接着剤組成物をUVのみで硬化させることが可能となる。
【0048】
二の実施形態の導電性接着剤組成物に含まれる接着剤は、光開始剤を含む。光開始剤は、紫外線(UV)、電子線等の照射により開裂して、組成物の重合反応や架橋反応を開始する物質のことである。光開始剤として、光ラジカル重合開始剤が挙げられる。光ラジカル重合開始剤として、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾインメチルエーテル、4-ベンゾイル安息香酸、ジフェニルエタンジオン、3’-ヒドロキシアセトフェノン、4、4’-ジメチルベンシル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、1-ヒドロキシシクロヘキサン-1-イルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン等が挙げられる。
【0049】
二の実施形態の導電性接着剤組成物に含まれる接着剤は、有機過酸化物を含む。有機過酸化物は、加熱、あるいは紫外線(UV)、電子線等の照射により開裂して、遊離のラジカルを発生させ、組成物の重合反応や架橋反応を開始する化合物のことである。有機過酸化物として、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ビス(p-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、過酢酸等を挙げることができる。
【0050】
二の実施形態で用いられる導電性接着剤組成物は、上記の成分を含む接着剤と、導電性粒子を含む。導電性粒子として代表的なものは金属粒子であり、ここでは金属粉末を含む。二の実施形態に用いられる導電性接着剤組成物に含まれる導電性粒子として、金属粒子の他、金属で被覆された樹脂粒子を挙げることができる。導電性粒子として、たとえば、銀粒子または粉末、銀合金粒子または粉末、銀コート銅粒子(銀電表面が被覆された銅粒子)または粉末、銀コートニッケル粒子または粉末、銀コートアルミニウム粒子または粉末、銀コートガラス粒子または粉末、ニッケル粒子または粉末、金粒子または粉末、ニッケルコート樹脂粒子、金コート樹脂粒子を挙げることができる。二の実施形態において、ニッケル粒子、金粒子、ニッケルで表面が被覆された樹脂粒子、および金で表面が被覆された樹脂粒子からなる群より選択される1以上の導電性粒子を用いることが特に好ましい。二の実施形態では、ニッケル粒子、ニッケルで表面が被覆された樹脂粒子、または金で表面が被覆された樹脂粒子を用いることが特に好ましい。特にニッケルで表面が被覆された樹脂粒子、または金で表面が被覆された樹脂粒子は、導電性接着剤組成物がインレイ用アンテナとICチップとの間に配置されて、これらを接続するために使用された際に、加圧により変形して、インレイ用アンテナとICチップとの電気的接続をより強固にすることができるため、好ましい。ニッケルまたは金により被覆する樹脂粒子として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、シリコーン樹脂等のビーズまたはマイクロビーズを用いることができる。接続する導電性粒子の平均粒径は、約1~20μm、好ましくは2~8μmである。導電性粒子の平均粒径は、また導電性粒子は、二の実施形態で用いられる導電性接着剤組成物の質量を基準として5~20%、好ましくは6~18%含まれていることが好ましい。
【0051】
二の実施形態で用いる導電性接着剤組成物の接着強度を高める、導電性接着剤組成物の貯蔵安定性を高める、あるいは導電性接着剤組成物の物性を調整する等の目的のために、既知の添加剤(可塑剤、溶剤、粘度調節剤、密着性付与剤、安定剤、帯電防止剤、充填剤、増粘剤、顔料、老化防止剤、消泡剤等)を導電性接着剤組成物に適宜加えることができる。
【実施例0052】
以下の成分:
エポキシアクリレート(35部)
アクリレートモノマー(40部)
ウレタンアクリレートポリマー(5部)
光開始剤(2部)
シリカ(5部)
有機過酸化物(2部)
密着性付与剤および安定剤(100%になる量)
を含む接着剤を、ケミテック株式会社(商品名:ケミシール、型番:U-1730)より入手した。接着剤に、導電性粒子として異方導電性ペーストエポウェル-CP(積水化学工業)を混合し、導電性接着剤組成物を得た。異方導電性ペーストは、導電性接着剤組成物の質量に対して導電性粒子の質量が5%~10%(粒子サイズにより調整)となるような量用いた。
【0053】
得られた導電性接着剤組成物を、サーマル紙に配置されたRFIDアンテナの所定の基準位置に配置し、その上にICチップを配置して、配置された導電性接着剤組成物に向けて紫外線を0.5秒間照射して、導電性接着剤組成物を硬化させた。RFIDアンテナとICチップとが完全に接着した。
図1
図2