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特開2024-129281機械学習モデル、プログラム、超音波診断装置、超音波診断システム、画像処理装置及び訓練装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129281
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】機械学習モデル、プログラム、超音波診断装置、超音波診断システム、画像処理装置及び訓練装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/06 20060101AFI20240919BHJP
   A61B 8/08 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
A61B8/06
A61B8/08
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038382
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川端 章裕
(72)【発明者】
【氏名】松本 洋日
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601BB06
4C601DD01
4C601DD03
4C601DD04
4C601DD15
4C601DD27
4C601DE03
4C601EE09
4C601HH14
4C601JB16
4C601JB34
4C601KK01
4C601KK13
4C601KK17
4C601KK31
(57)【要約】
【課題】機械学習モデルの訓練に利用される時間変化画像データを効率的に生成するための技術を提供することである。
【解決手段】本開示の一態様は、超音波探触子で受信した画像生成用の受信信号に基づく第1の時間変化画像データを時間方向に規格化した第2の時間変化画像データと、前記第2の時間変化画像データに基づく第3の時間変化画像データとの少なくとも1つの訓練用時間変化画像データと、前記少なくとも1つの訓練用時間変化画像データに対応する検出対象を含む正解データと、のペアを含む訓練データを用いて訓練された機械学習モデルに関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波探触子で受信した画像生成用の受信信号に基づく第1の時間変化画像データを時間方向に規格化した第2の時間変化画像データと、前記第2の時間変化画像データに基づく第3の時間変化画像データとの少なくとも1つの訓練用時間変化画像データと、
前記少なくとも1つの訓練用時間変化画像データに対応する検出対象を含む正解データと、
のペアを含む訓練データを用いて訓練された機械学習モデル。
【請求項2】
前記検出対象は、時間変化画像において時間変化によって影響を受ける特徴に関する情報である、請求項1に記載の機械学習モデル。
【請求項3】
前記検出対象は、時間変化画像における1つ以上の点の位置に関する情報、幅に関する情報、波形の形状に関する情報、時間タイミングに関する情報、時間区間に関する情報、及びトレースに関する情報のうち少なくとも1つの情報である、請求項1に記載の機械学習モデル。
【請求項4】
前記第3の時間変化画像データは、前記第2の時間変化画像データを時間方向に規格化したデータである、請求項1に記載の機械学習モデル。
【請求項5】
前記第3の時間変化画像データは、前記第2の時間変化画像データを時間方向に変形したデータである、請求項1に記載の機械学習モデル。
【請求項6】
前記第2の時間変化画像データは、前記第1の時間変化画像データを生成する際に時間変化画像に時間方向に影響を与える情報に基づき、前記第1の時間変化画像データを時間方向に規格化したデータである、請求項1に記載の機械学習モデル。
【請求項7】
前記第2の時間変化画像データは、前記第1の時間変化画像データを生成する際の掃引速度と所定時間当たりの心拍数との一方又は双方に基づき、前記第1の時間変化画像データを時間方向に規格化したデータである、請求項1に記載の機械学習モデル。
【請求項8】
前記訓練用時間変化画像データは、所定の画像幅に切り出された時間変化画像データ、又は、所定の画像幅の背景画像データに貼り付けられた時間変化画像データである、請求項1に記載の機械学習モデル。
【請求項9】
前記第1の時間変化画像データは、ドプラ画像であり、
前記検出対象は、
i)VTI(Velocity-Time Integral)計測の対象となるスペクトル波形の時間方向の区間若しくは前記スペクトル波形の領域、
ii)PSV(Peak Systolic Velocity)及びEDV(End Diastolic Velocity)の位置若しくは時間軸上のタイミング、
iii)血流量計測の対象となるスペクトル波形の時間方向の区間の境界、又は、
iv)E/A計測におけるE波及びA波の血流速度の位置又は時間軸上のタイミング、
の何れかである、請求項1に記載の機械学習モデル。
【請求項10】
前記第1の時間変化画像データは、Mモード画像であり、
前記検出対象は、
i)TAPSE(Tricuspid Annular Plane Systolic Excursion)計測若しくはMAPSE(Mitral Annular Plane Systolic Excursion)計測における弁輪部の拡張期の位置及び収縮期の位置、時間軸上の拡張期及び収縮期タイミング、若しくは弁輪部のトレース、又は、
ii)MモードIVC(Inferior Vena Cava)径計測における下大静脈の血管径、呼気時及び吸気時のタイミング、若しくは下大静脈の前壁及び後壁のトレース、
の何れかである、請求項1に記載の機械学習モデル。
【請求項11】
請求項1から10の何れか一項に記載の機械学習モデルを用いて、超音波探触子で受信した画像生成用の受信信号に基づく第1の予測対象時間変化画像データを時間方向に規格化した第2の予測対象時間変化画像データから、前記検出対象を推論結果として出力する出力機能をコンピュータに実現させるプログラム。
【請求項12】
前記推論結果として出力される検出対象は、時間変化画像において時間変化によって影響を受ける特徴に関する情報である、請求項11に記載のプログラム。
【請求項13】
前記推論結果として出力される検出対象は、時間変化画像における1つ以上の点の位置に関する情報、幅に関する情報、波形の形状に関する情報、時間タイミングに関する情報、時間区間に関する情報、及びトレースに関する情報のうち少なくとも1つの情報である、請求項11に記載のプログラム。
【請求項14】
前記第2の予測対象時間変化画像データは、前記第1の予測対象時間変化画像データを生成する際に時間変化画像に時間方向に影響を与える情報に基づき、前記第1の予測対象時間変化画像データを時間方向に規格化したデータである、請求項11に記載のプログラム。
【請求項15】
前記第2の予測対象時間変化画像データは、前記第1の予測対象時間変化画像データを生成する際の掃引速度と所定時間当たりの心拍数との一方又は双方に基づき、前記第1の予測対象時間変化画像データを時間方向に規格化したデータである、請求項11に記載のプログラム。
【請求項16】
前記第2の予測対象時間変化画像データは、所定の画像幅に切り出された時間変化画像データ、又は、所定の画像幅の背景画像データに貼り付けられた時間変化画像データである、請求項11に記載のプログラム。
【請求項17】
前記第1の予測対象時間変化画像データは、ドプラ画像であり、
前記推論結果として出力される検出対象は、
i)VTI(Velocity-Time Integral)計測の対象となるスペクトル波形の時間方向の区間若しくは前記スペクトル波形の領域、
ii)PSV(Peak Systolic Velocity)及びEDV(End Diastolic Velocity)の位置若しくは時間軸上のタイミング、
iii)血流量計測の対象となるスペクトル波形の時間方向の区間の境界、又は、
iv)E/A計測におけるE波及びA波の血流速度の位置又は時間軸上のタイミング、
の何れかである、請求項11に記載のプログラム。
【請求項18】
前記第1の予測対象時間変化画像データは、Mモード画像であり、
前記検出対象は、
i)TAPSE(Tricuspid Annular Plane Systolic Excursion)計測若しくはMAPSE(Mitral Annular Plane Systolic Excursion)計測における弁輪部の拡張期の位置及び収縮期の位置、時間軸上の拡張期及び収縮期タイミング、若しくは弁輪部のトレース、又は、
ii)MモードIVC(Inferior Vena Cava)径計測における下大静脈の血管径、呼気時及び吸気時のタイミング、若しくは下大静脈の前壁及び後壁のトレース、
の何れかである、請求項11に記載のプログラム。
【請求項19】
被検体に対して超音波を送受信する超音波探触子と、
請求項1から10の何れか一項に記載の機械学習モデルを用いて、前記超音波探触子で受信した受信信号に基づく第1の予測対象時間変化画像データを時間方向に規格化した第2の予測対象時間変化画像データから、前記検出対象を推論結果として出力する出力部と、
を有する超音波診断装置。
【請求項20】
請求項1から10の何れか一項に記載の機械学習モデルを格納するデータベースと、
被検体に対して超音波を送受信する超音波探触子と、
前記機械学習モデルを用いて、前記超音波探触子で受信した受信信号に基づく第1の予測対象時間変化画像データを時間方向に規格化した第2の予測対象時間変化画像データから、前記検出対象を推論結果として出力する出力部と、
を有する超音波診断システム。
【請求項21】
請求項1から10の何れか一項に記載の機械学習モデルを用いて、超音波探触子で受信した受信信号に基づく第1の予測対象時間変化画像データを時間方向に規格化した第2の予測対象時間変化画像データから、前記検出対象を推論結果として出力する出力部と、
を有する画像処理装置。
【請求項22】
超音波探触子で受信した画像生成用の受信信号に基づく第1の時間変化画像データを時間方向に規格化した第2の時間変化画像データと、前記第2の時間変化画像データに基づく第3の時間変化画像データとの少なくとも1つの訓練用時間変化画像データと、
前記少なくとも1つの訓練用時間変化画像データに対応する検出対象を含む正解データと、
のペアを含む訓練データを用いて機械学習モデルを訓練する訓練装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、機械学習モデル、プログラム、超音波診断装置、超音波診断システム、画像処理装置及び訓練装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のディープラーニング技術の進展によって、機械学習モデルが様々な用途に利用されるようになってきている。例えば、医療分野では、超音波診断などの画像診断などに機械学習を利用する試みがなされている。
【0003】
典型的な超音波診断装置は、断層像を表示するBモードや血流像を表示するカラードプラモードの他、ドプラモードとMモードの2つのモードにより動作可能である。ドプラモードとは、血流(組織)の速度変化をスペクトル表示する画像モードであり、パルス波ドプラ(Pulse Wave Doppler:PWD)、連続波ドプラ(Continuous Wave Doppler:CWD)、組織ドプラ(Tissue Doppler Imaging:TDI)などの種類がある。他方、Mモードは、断層像(Bモード)上のある1ラインの時間変化を表示するモードである。超音波画像を利用した様々な画像診断技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-181058号公報
【特許文献2】特開2006-197969号公報
【特許文献3】特開2021-164533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ドプラモードにおいて、超音波診断装置の掃引速度(sweep speed)が異なる場合、同一の被検者でも超音波画像におけるスペクトルの時間方向の幅が異なりうる。掃引速度が低い場合、超音波画像においてスペクトルが時間方向に縮み、掃引速度が高い場合、スペクトルが時間方向に伸びる。また、被検者によって心拍数(Heart Rate:HR)が異なりうる。心拍が速い場合、超音波画像においてスペクトルが時間方向に詰まり、心拍が遅い場合、スペクトルが時間方向に拡がる。
【0006】
Mモードにおいても、掃引速度が低い場合、Mモード画像が時間方向に縮み、掃引速度が高い場合、Mモード画像が時間方向に伸びる。また、心拍が速い場合、Mモード画像が時間方向に詰まり、心拍が遅い場合、Mモード画像が時間方向に拡がる。
【0007】
ドプラモードやMモードなどの時間変化画像モードでは、掃引速度等の設定によって、時間変化画像データが時間方向に伸縮されたように変化する。そのため、時間変化画像に対する自動計測にAI(Artificial Intelligence)モデルが適用される場合、掃引速度の違いによって、AIモデルを訓練するのに必要とされるパターンが増加する。このため、掃引速度毎に時間変化画像の学習データ(訓練データ)が用意される必要があり、訓練データが少ない場合には、AI処理の性能が低くなるという問題が生じうる。
【0008】
また、時間変化画像モードでは、掃引速度が同じであっても、被検者の心拍数が異なる場合、取得されるデータは、見かけ上は時間方向に伸縮が変化したように見えうる。従って、心拍数の違いでも、上述した掃引速度の違いと同様の問題が生じうる。
【0009】
上記問題点に鑑み、本開示の1つの課題は、機械学習モデルの訓練に利用される時間変化画像データを効率的に生成するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様は、超音波探触子で受信した画像生成用の受信信号に基づく第1の時間変化画像データを時間方向に規格化した第2の時間変化画像データと、前記第2の時間変化画像データに基づく第3の時間変化画像データとの少なくとも1つの訓練用時間変化画像データと、前記少なくとも1つの訓練用時間変化画像データに対応する検出対象を含む正解データと、のペアを含む訓練データを用いて訓練された機械学習モデルに関する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によると、機械学習モデルの訓練に利用される時間変化画像データを効率的に生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本開示の一実施例による訓練データの規格化を示す概略図である。
図2図2は、本開示の一実施例による訓練データの規格化を示す概略図である。
図3図3は、本開示の一実施例による機械学習モデルの訓練処理を示す概略図である。
図4図4は、本開示の一実施例による機械学習モデルの推論処理を示す概略図である。
図5図5は、本開示の一実施例による超音波診断処理を示す概略図である。
図6図6は、本開示の一実施例による超音波診断処理を示す概略図である。
図7図7は、本開示の一実施例による超音波診断処理を示す概略図である。
図8図8は、本開示の一実施例による超音波診断装置の外観を示す図である。
図9図9は、本開示の一実施例による超音波診断装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図10図10は、本開示の一実施例による訓練装置及び画像処理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図11図11は、本開示の一実施例による訓練装置の機能構成を示すブロック図である。
図12図12は、本開示の一実施例による時間変化画像データの規格化を示す概略図である。
図13図13は、本開示の一実施例による時間変化画像データの規格化を示す概略図である。
図14図14は、本開示の一実施例による時間変化画像データの規格化を示す概略図である。
図15図15は、本開示の一実施例による超音波診断装置の機能構成を示すブロック図である。
図16図16は、本開示の一実施例によるVTI計測処理を示す図である。
図17図17は、本開示の一実施例によるVTI計測処理を示す図である。
図18図18は、本開示の一実施例によるVTI計測のための訓練処理を示す図である。
図19図19は、本開示の一実施例によるVTI計測のための推論処理を示す図である。
図20図20は、本開示の一実施例によるVTI計測処理を示すフローチャートである。
図21図21は、本開示の一実施例によるVTI計測処理を示す図である。
図22図22は、本開示の一実施例によるVTI計測のための訓練処理を示す図である。
図23図23は、本開示の一実施例によるVTI計測のための推論処理を示す図である。
図24図24は、本開示の一実施例によるVTI計測処理を示すフローチャートである。
図25図25は、本開示の一実施例によるPSV・EDV計測処理を示す図である。
図26図26は、本開示の一実施例によるPSV・EDV計測のための訓練処理を示す図である。
図27図27は、本開示の一実施例によるPSV・EDV計測のための推論処理を示す図である。
図28図28は、本開示の一実施例によるPSV・EDV計測処理を示すフローチャートである。
図29図29は、本開示の一実施例によるPSV・EDV計測処理を示す図である。
図30図30は、本開示の一実施例によるPSV・EDV計測のための訓練処理を示す図である。
図31図31は、本開示の一実施例によるPSV・EDV計測のための推論処理を示す図である。
図32図32は、本開示の一実施例によるPSV・EDV計測処理を示すフローチャートである。
図33図33は、本開示の一実施例による血流量計測処理を示す図である。
図34図34は、本開示の一実施例による血流量計測処理を示す図である。
図35図35は、本開示の一実施例による血流量計測処理を示すフローチャートである。
図36図36は、本開示の一実施例によるE/A比計測処理を示す図である。
図37図37は、本開示の一実施例によるE/A比計測処理を示す図である。
図38図38は、本開示の一実施例によるE/A比計測処理を示すフローチャートである。
図39図39は、本開示の一実施例によるE/A比計測処理を示す図である。
図40図40は、本開示の一実施例によるE/A比計測処理を示すフローチャートである。
図41図41は、本開示の一実施例によるTAPSE計測処理を示す図である。
図42図42は、本開示の一実施例によるTAPSE計測処理を示す図である。
図43図43は、本開示の一実施例によるTAPSE計測のための訓練処理を示す図である。
図44図44は、本開示の一実施例によるTAPSE計測のための推論処理を示す図である。
図45図45は、本開示の一実施例によるTAPSE計測処理を示すフローチャートである。
図46図46は、本開示の一実施例によるTAPSE計測処理を示す図である。
図47図47は、本開示の一実施例によるTAPSE計測のための訓練処理を示す図である。
図48図48は、本開示の一実施例によるTAPSE計測のための推論処理を示す図である。
図49図49は、本開示の一実施例によるTAPSE計測のための訓練処理を示す図である。
図50図50は、本開示の一実施例によるTAPSE計測のための推論処理を示す図である。
図51図51は、本開示の一実施例によるTAPSE計測処理を示すフローチャートである。
図52図52は、本開示の一実施例によるIVC径計測処理を示す図である。
図53図53は、本開示の一実施例によるIVC径計測のための訓練処理を示す図である。
図54図54は、本開示の一実施例によるIVC径計測のための推論処理を示す図である。
図55図55は、本開示の一実施例によるIVC径計測処理を示すフローチャートである。
図56図56は、本開示の一実施例によるIVC径計測処理を示す図である。
図57図57は、本開示の一実施例によるIVC径計測処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態を説明する。
【0014】
以下の実施例では、被検者から取得した時間変化画像から検出対象を出力する機械学習モデルを利用した画像処理装置が開示される。
【0015】
[概要]
一般に、同一の被検者であっても異なる掃引速度により超音波診断装置によって取得された時間変化画像は異なることが知られている。例えば、図1には、30mm/sec、40mm/sec及び60mm/secの3つの掃引速度によって取得された時間変化画像が示されている。3つの時間変化画像から、スペクトルの時間方向の幅が異なることがわかる。すなわち、掃引速度が遅いと、時間変化画像上のスペクトルが時間方向に縮み、掃引速度が速いと、スペクトルが時間方向に伸びる。すなわち、30mm/secの時間変化画像のスペクトルは、60mm/secの時間変化画像のスペクトルより時間方向に縮んでいる。このように、超音波診断装置のドプラモード、Mモードなどの時間変化画像モードでは、ユーザによって設定された掃引速度により取得される時間変化画像が時間方向に伸縮されうる。このため、時間変化画像データに対して機械学習モデルを適用する場合、掃引速度の相違によって、機械学習モデルの訓練に必要とされるパターン数が増加し、良好なモデル予測性能を充足するためには、様々な掃引速度に対する訓練データを準備することが必要とされる。
【0016】
以下の実施例では、画像診断装置によって取得された時間変化画像データに対してデータ拡張を実行し、時間変化画像データが所定の掃引速度に規格化される。規格化した時間変化画像を利用して機械学習モデルに対する訓練処理及び推論処理が実行される。例えば、図1に示されるように、30mm/sec及び60mm/secの2つの訓練用の時間変化画像データが40mm/secの掃引速度により規格化される。具体的には、掃引速度SSの時間変化画像データを所定の掃引速度SSに規格化する場合、掃引速度SSの時間変化画像は、時間軸方向、すなわち、画像の幅方向にSS/SS倍に拡大又は縮小される。すなわち、図1に示されるように、30mm/secの掃引速度により取得された時間変化画像は、40/30=1.33倍に拡大され、60mm/secの掃引速度により取得された時間変化画像は、40/60=0.66倍に縮小される。同一被検者に対して取得された異なる掃引速度の時間変化画像は、このような規格化によって揃えられうる。
【0017】
その後、拡大及び縮小された時間変化画像は、所定の画像の幅に合わされる。具体的には、図1に示されるように、拡大された時間変化画像は、40mm/secの掃引速度の時間変化画像の幅に合わせて切り出されてもよい。他方、縮小された時間変化画像は、40mm/secの掃引速度の時間変化画像の幅の背景画像に貼り付けられてもよい。
【0018】
このようにして、異なる掃引速度により取得された時間変化画像データから規格化された所定の掃引速度の時間変化画像データを利用して、機械学習モデルの訓練データを取得することが可能である。これにより、各掃引速度の時間変化画像データを訓練データとして用意することが不要になり、より少ないサンプル数の時間変化画像データにより機械学習モデルを訓練することが可能になる。規格化された時間変化画像データにより訓練された機械学習モデルを推論処理に利用する際には、推論対象の時間変化画像データは、所定の掃引速度の時間変化画像データに拡大又は縮小するよう前処理された後、訓練済み機械学習モデルに入力される。
【0019】
また、異なる被検者及び/又は異なる心拍数に対して取得される時間変化画像については、時間変化画像データがまず所定の掃引速度に規格化される。図2に示されるように、時間変化画像データは、40mm/secの掃引速度に規格化されてもよい。次に、掃引速度に関して規格化された時間変化画像データは、所定の心拍数に規格化されてもよい。ここで、心拍数に関する規格化は、上述した掃引速度に関する規格化と同様に、時間変化画像を時間軸方向、すなわち、画像の幅方向に拡大又は縮小することによって実行されてもよい。図2に示される例では、時間変化画像データは、80bpmの心拍数に規格化されてもよい。
【0020】
その後、拡大及び縮小された時間変化画像は、所定の画像の幅に合わされる。具体的には、図2に示されるように、拡大された時間変化画像は、所定の時間変化画像の幅に合わせて切り出されてもよい。他方、縮小された時間変化画像は、所定の時間変化画像の幅の背景画像に貼り付けられてもよい。
【0021】
このようにして、異なる掃引速度及び心拍数により取得された時間変化画像データから規格化された時間変化画像データを利用して、機械学習モデルの訓練データを取得することが可能である。これにより、各掃引速度及び各心拍数の時間変化画像データを訓練データとして用意することが不要になり、より少ないサンプル数の時間変化画像データにより機械学習モデルを訓練することが可能になる。規格化された時間変化画像データにより訓練された機械学習モデルを推論処理に利用する際には、推論対象の時間変化画像データは、所定の掃引速度及び/又は心拍数の時間変化画像データを拡大又は縮小するよう前処理された後、訓練済み機械学習モデルに入力される。
【0022】
例えば、上述したデータ拡張により生成された時間変化画像データを利用して機械学習モデルを訓練する際、図3に示されるように、異なる掃引速度及び/又は心拍数の時間変化画像データは、正解データと関連付けて訓練データデータベース(DB)20に格納され、訓練装置50は、訓練データDB20から取得した時間変化画像データに対して上述したデータ拡張を実行し、規格化された時間変化画像データを取得する。訓練装置50は、規格化された時間変化画像データを利用して訓練対象の機械学習モデル10を訓練する。例えば、訓練対象の機械学習モデル10が、畳み込みニューラルネットワークなどの何れかのタイプのニューラルネットワークとして実現されている場合、訓練装置50は、規格化された時間変化画像データを訓練対象のニューラルネットワークに入力し、ニューラルネットワークからの出力結果と正解データとの誤差に基づいて、誤差逆伝播法などの何れかの訓練アルゴリズムに従って訓練対象のニューラルネットワークのパラメータを更新する。
【0023】
このようにして機械学習モデル10の訓練が終了すると、訓練済み機械学習モデル10は、図4に示されるように、予測対象の時間変化画像から規格化された時間変化画像データを受け付けると、推論結果を出力する。例えば、超音波診断では、推論結果は、以下でより詳細に説明されるように、時間変化画像上のスペクトルによって表出される特定の位置、タイミング、領域などであってもよい。図5に示されるように、超音波診断装置100は、被検者30に超音波信号を送出し、被検者30からの反射信号に基づいて時間変化画像データを取得する。超音波診断装置100は、取得した時間変化画像データを規格化し、訓練装置50から提供された訓練済み機械学習モデル10に規格化した時間変化画像を入力し、訓練済み機械学習モデル10から取得した推論結果に対して前処理と逆の処理をした処理結果を出力する。
【0024】
なお、図5に示された例では、超音波診断装置100は、訓練装置50から提供された訓練済み機械学習モデル10を格納しているが、本開示による超音波診断装置100は、必ずしもこれに限定されず、図6に示されるように、クラウド上などの外部のモデルデータベース(DB)40に格納された訓練済み機械学習モデル10を利用してもよい。具体的には、超音波診断システム1は、超音波診断装置100及びモデルDB40を有し、超音波診断装置100は、被検者30から取得した予測対象の時間変化画像データを規格化し、規格化された時間変化画像データをモデルDB40にわたす。そして、規格化された時間変化画像データに対する推論結果をモデルDB40から取得すると、超音波診断装置100は、取得した推論結果を出力するようにしてもよい。
【0025】
あるいは、図7に示されるように、本開示による超音波診断装置100は、クラウド上などの外部の画像処理装置200とやりとりしてもよい。例えば、超音波診断装置100は、被検者30に送出した超音波信号に対して取得した受信信号を画像処理装置200に送信する。画像処理装置200は、受信信号を規格化し、訓練済み機械学習モデル10を利用して、規格化された受信信号から推論結果を取得する。画像処理装置200は、取得した推論結果を格納してもよいし、及び/又は超音波診断装置100に推論結果を提供してもよい。
【0026】
[超音波診断装置のハードウェア構成]
図8は、超音波診断装置100の外観の一例を示す図である。図9は、超音波診断装置100の制御系の主要部の構成例を示すブロック図である。
【0027】
超音波診断装置100は、被検者30内の形状又は動態を超音波画像として可視化する。本実施形態に係る超音波診断装置100は、例えば、検出対象部位の超音波画像(すなわち、断層画像)を撮影し、検出対象部位に対する検査を実施する用途に用いられる。
【0028】
超音波診断装置100は、図8に示すように、超音波診断装置本体1010及び超音波プローブ1020を備える。超音波診断装置本体1010と超音波プローブ1020とは、ケーブル1030を介して接続される。
【0029】
超音波プローブ(超音波探触子)1020は、超音波ビーム(例えば、1~30MHz程度)を被検者30(例えば、人体)内に対して送信するとともに、送信した超音波ビームのうち被検者30内で反射された超音波エコーを受信して電気信号に変換する音響センサとして機能する。
【0030】
ユーザは、超音波プローブ1020の超音波ビームの送受信面を被検者30の検出対象部位の体表に接触させて超音波診断装置100を動作させ、検査を行う。なお、超音波プローブ1020には、コンベックスプローブ、リニアプローブ、セクタプローブ、又は三次元プローブ等の任意のものを適用することができる。
【0031】
超音波プローブ1020は、例えば、マトリクス状に配設された複数の振動子(例えば、圧電素子)と、当該複数の振動子の駆動状態のオンオフを個別に又はブロック単位(以下、「チャネル」と称する)で切替制御するためのチャネル切替装置(例えば、マルチプレクサ)を含んで構成される。
【0032】
超音波プローブ1020の各振動子は、超音波診断装置本体1010(送信部1012)で発生された電圧パルスを超音波ビームに変換して被検者30内へ送信し、被検者30内で反射した超音波エコーを受信して電気信号(以下、「受信信号」と称する)に変換し、超音波診断装置本体1010(受信部1013)へ出力する。
【0033】
超音波診断装置本体1010は、図9に示すように、操作入力部1011、送信部1012、受信部1013、超音波画像生成部1014、表示画像生成部1015、出力部1016、及び、制御部1017を備える。
【0034】
送信部1012、受信部1013、超音波画像生成部1014及び表示画像生成部1015は、例えば、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)等の、各処理に応じた専用又は汎用のハードウェア(電子回路)で構成され、制御部1017と協働して各機能を実現する。
【0035】
操作入力部1011は、例えば、診断開始等を指示するコマンド又は被検者30に関する情報の入力を受け付ける。操作入力部1011は、例えば、複数の入力スイッチを有する操作パネル、キーボード、及びマウス等を有してもよい。なお、操作入力部1011は、出力部1016と一体的に設けられるタッチパネルで構成されてもよい。
【0036】
送信部1012は、制御部1017の指示に従って、超音波プローブ1020に対して駆動信号として電圧パルスを送出する送信機である。送信部1012は、例えば、高周波パルス発振器、及びパルス設定部等を含んで構成されてもよい。送信部1012は、高周波パルス発振器で生成した電圧パルスを、パルス設定部で設定した電圧振幅、パルス幅及び送出タイミングに調整して、超音波プローブ1020のチャネルごとに送出してもよい。
【0037】
送信部1012は、超音波プローブ1020の複数のチャネルそれぞれにパルス設定部を有しており、複数のチャネルごとに電圧パルスの電圧振幅、パルス幅及び送出タイミングを設定可能になっている。例えば、送信部1012は、複数のチャネルに対して適切な遅延時間を設定することによって目標とする深度を変更したり、異なるパルス波形を発生させてもよい。
【0038】
受信部1013は、制御部1017の指示に従って、超音波プローブ1020で生成された超音波エコーに係る受信信号を受信処理する受信機である。受信部1013は、プリアンプ、AD変換部、及び受信ビームフォーマを含んで構成されてもよい。
【0039】
受信部1013は、プリアンプにて、チャネルごとに微弱な超音波エコーに係る受信信号を増幅し、AD変換部にて、受信信号を、デジタル信号に変換する。そして、受信部1013は、受信ビームフォーマにて、各チャネルの受信信号を整相加算することで複数チャネルの受信信号を1つにまとめて、音響線データとしうる。
【0040】
超音波画像生成部1014は、受信部1013から受信信号(音響線データ)を取得して、被検者30の内部の超音波画像(すなわち、断層画像)を生成する。
【0041】
超音波画像生成部1014は、例えば、超音波プローブ1020が深度方向に向けてパルス状の超音波ビームを送信した際に、その後に検出される超音波エコーの信号強度(Intensity)を時間的に連続してラインメモリに蓄積する。そして、超音波画像生成部1014は、超音波プローブ1020からの超音波ビームが被検者30内を走査するに応じて、各走査位置での超音波エコーの信号強度をラインメモリに順次蓄積し、フレーム単位となる二次元データを生成する。そして、超音波画像生成部1014は、当該二次元データの信号強度を輝度値に変換することによって、超音波の送信方向と超音波の走査方向とを含む断面内の二次元構造を表す超音波画像を生成しうる。
【0042】
なお、超音波画像生成部1014は、例えば、受信部1013から取得する受信信号を包絡線検波する包絡線検波回路、包絡線検波回路で検出された受信信号の信号強度に対して対数圧縮を行う対数圧縮回路、及び、深度に応じて周波数特性を変化させたバンドパスフィルタで、受信信号に含まれるノイズ成分を除去するダイナミックフィルタ等を有していてもよい。
【0043】
表示画像生成部1015は、超音波画像生成部1014から超音波画像のデータを取得すると共に、超音波画像の表示領域を含む表示画像を生成する。そして、表示画像生成部1015は、生成した表示画像のデータを出力部1016に送出する。表示画像生成部1015は、超音波画像生成部1014から新たな超音波画像を取得する毎に表示画像を順次更新し、動画形式で、表示画像を出力部1016に表示させてもよい。
【0044】
また、表示画像生成部1015は、制御部1017の指示に従って、超音波画像と共に、検出対象の時系列データをグラフィック表示した画像を、表示領域内に埋め込んだ表示画像を生成してもよい。
【0045】
なお、表示画像生成部1015は、超音波画像生成部1014から出力される超音波画像に対して、座標変換処理やデータ補間処理等の所定の画像処理を施した上で、表示画像を生成してもよい。
【0046】
出力部1016は、制御部1017の指示に従って、表示画像生成部1015から表示画像のデータを取得し、当該表示画像を出力する。例えば、出力部1016は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、又は、CRTディスプレイ等で構成されてもよく、表示画像を表示してもよい。
【0047】
制御部1017は、操作入力部1011、送信部1012、受信部1013、超音波画像生成部1014、表示画像生成部1015及び出力部1016を、それぞれの機能に応じて制御することによって、超音波診断装置100の全体制御を行う。
【0048】
制御部1017は、演算/制御装置としてのCPU(Central Processing Unit)1171、主記憶装置としてのROM(Read Only Memory)1172及びRAM(Random Access Memory)1173等を有してもよい。ROM1172には、基本プログラムや基本的な設定データが記憶される。CPU1171は、ROM172から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM1173に格納し、格納したプログラムを実行することにより、超音波診断装置本体1010の各機能ブロック(送信部1012、受信部1013、超音波画像生成部1014、表示画像生成部1015、及び出力部1016)の動作を集中制御する。
【0049】
[訓練装置及び画像処理装置のハードウェア構成]
次に、図10を参照して、本開示の一実施例による訓練装置50及び画像処理装置200のハードウェア構成を説明する。図10は、本開示の一実施例による訓練装置50及び画像処理装置200のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0050】
訓練装置50及び画像処理装置200はそれぞれ、サーバ、パーソナルコンピュータ(PC)、スマートフォン、タブレット等の計算装置によって実現されてもよく、例えば、図10に示されるようなハードウェア構成を有してもよい。すなわち、訓練装置50及び画像処理装置200はそれぞれ、バスBを介し相互接続されるドライブ装置101、ストレージ装置102、メモリ装置103、プロセッサ104、ユーザインタフェース(UI)装置105及び通信装置106を有する。
【0051】
訓練装置50及び画像処理装置200における後述される各種機能及び処理を実現するプログラム又は指示は、CD-ROM(Compact Disk-Read Only Memory)、フラッシュメモリ等の着脱可能な記憶媒体に格納されてもよい。当該記憶媒体がドライブ装置101にセットされると、プログラム又は指示が記憶媒体からドライブ装置101を介しストレージ装置102又はメモリ装置103にインストールされる。ただし、プログラム又は指示は、必ずしも記憶媒体からインストールされる必要はなく、ネットワークなどを介し何れかの外部装置からダウンロードされてもよい。
【0052】
ストレージ装置102は、ハードディスクドライブなどによって実現され、インストールされたプログラム又は指示と共に、プログラム又は指示の実行に用いられるファイル、データ等を格納する。
【0053】
メモリ装置103は、ランダムアクセスメモリ、スタティックメモリ等によって実現され、プログラム又は指示が起動されると、ストレージ装置102からプログラム又は指示、データ等を読み出して格納する。ストレージ装置102、メモリ装置103及び着脱可能な記憶媒体は、非一時的な記憶媒体(non-transitory storage medium)として総称されてもよい。
【0054】
プロセッサ104は、1つ以上のプロセッサコアから構成されうる1つ以上のCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、処理回路(processing circuitry)等によって実現されてもよく、メモリ装置103に格納されたプログラム、指示、当該プログラム若しくは指示を実行するのに必要なパラメータなどのデータ等に従って、後述されるモデル生成装置100の各種機能及び処理を実行する。
【0055】
ユーザインタフェース(UI)装置105は、キーボード、マウス、カメラ、マイクロフォン等の入力装置、ディスプレイ、スピーカ、ヘッドセット、プリンタ等の出力装置、タッチパネル等の入出力装置から構成されてもよく、ユーザと訓練装置50及び画像処理装置200との間のインタフェースを実現する。例えば、ユーザは、ディスプレイ又はタッチパネルに表示されたGUI(Graphical User Interface)をキーボード、マウス等を操作し、訓練装置50及び画像処理装置200を操作する。
【0056】
通信装置106は、外部装置、インターネット、LAN(Local Area Network)、セルラーネットワーク等の通信ネットワークとの有線及び/又は無線通信処理を実行する各種通信回路により実現される。
【0057】
しかしながら、上述したハードウェア構成は単なる一例であり、本開示による訓練装置50及び画像処理装置200は、他の何れか適切なハードウェア構成により実現されてもよい。
【0058】
[規格化処理]
次に、本開示の一実施例による超音波診断に利用される機械学習モデルの訓練及び推論処理のための規格化処理を説明する。訓練用及び推論用の時間変化画像データは、様々な掃引速度により被検者30から取得され、及び/又は、異なる心拍数の被検者30から取得されうる。異なる掃引速度及び/又は異なる心拍数の時間変化画像データをそのまま利用して機械学習モデルを訓練した場合、掃引速度毎及び/又は心拍数毎に機械学習モデル10を訓練するのに必要とされる数の訓練用時間変化画像データを準備する必要があり、訓練データを収集するのにコストがかかる。本実施例の規格化処理によると、異なる掃引速度及び/又は異なる心拍数の時間変化画像データは、所定の掃引速度及び/又は所定の心拍数に規格化され、規格化された時間変化画像データを利用して機械学習モデル10が訓練される。これにより、機械学習モデル10を訓練するため、掃引速度毎及び/又は心拍数毎に必要とされる数の訓練用の時間変化画像データを収集することが不要になり、より低いコストにより機械学習モデル10を生成することが可能になる。
【0059】
図11は、本開示の一実施例による訓練装置50の機能構成を示すブロック図である。図11に示されるように、本実施例による訓練装置50は、前処理部51及び訓練部52を有する。例えば、前処理部51及び訓練部52の1つ以上の機能部は、1つ以上のプロセッサ104がメモリ装置103に格納された1つ以上のプログラム又は指示を実行することによって実現されてもよい。
【0060】
前処理部51は、時間変化画像データを規格化する。具体的には、前処理部51は、超音波探触子1020で受信した画像生成用の受信信号に基づく時間変化画像データから、当該時間変化画像データを時間方向に規格化した時間変化画像データを取得してもよい。例えば、前処理部51は、ある掃引速度によって被検者30から超音波探触子1020において受信した信号に基づく時間変化画像データを所定の掃引速度の時間変化画像データに変換してもよい。具体的には、前処理部51は、掃引速度30mm/secの訓練用の時間変化画像データを所定の掃引速度40mm/secの時間変化画像データに変換するため、図12に示されるように、掃引速度30mm/secの訓練用時間変化画像データを時間方向に40/30=1.33・・・倍に拡大してもよい。
【0061】
さらに、前処理部51は、拡大された時間変化画像データを更に規格化した時間変化画像データを取得してもよい。すなわち、前処理部51は、掃引速度に対して規格化された心拍数72bpmの時間変化画像データを所定の心拍数80bpmに変換するため、図12に示されるように、心拍数72bpmの時間変化画像データを時間方向に72/80=0.9倍に縮小してもよい。
【0062】
このようにして、前処理部51は、異なる掃引速度及び/又は異なる心拍数の訓練用の時間変化画像データを所定の掃引速度及び/又は所定の心拍数の時間変化画像データに規格化する。前処理部51は、所定の掃引速度及び/又は所定の心拍数に規格化された時間変化画像データを、図13に示されるような所定の幅の時間変化画像データに変更し、時間方向に所定の幅を有する訓練用の時間変化画像データを取得する。
【0063】
また、前処理部51は、時間方向に規格化された時間変化画像データをさらに時間方向に変形させるデータ拡張を施してもよい。すなわち、被検者の心拍数が得られないケースでは、図14に示されるように、掃引速度に応じて規格化された時間変化画像データに対して、ランダムな比率で時間方向に拡大または縮小させるデータ拡張を施すことによって、心拍数の違いに対応してもよい。
【0064】
訓練部52は、このようにして前処理された時間変化画像データを利用して、訓練対象の機械学習モデル10を訓練する。具体的には、訓練部52は、掃引速度及び/又は心拍数に対して規格化された訓練用の時間変化画像データと、訓練用の時間変化画像データに対応する検出対象を含む正解データとから構成される訓練データを利用して、畳み込みニューラルネットワークなどの機械学習モデル10のパラメータを調整する。ここで、正解データは、時間変化画像において時間変化によって影響を受ける特徴に関する情報であってもよい。具体的には、正解データ(すなわち、ラベルデータ)は、時間変化画像における1つ以上の点の位置に関する情報、幅に関する情報、波形の形状に関する情報、時間タイミングに関する情報、時間区間に関する情報、トレースに関する情報などであってもよい。
【0065】
例えば、訓練対象の機械学習モデル10が画像処理に利用される畳み込みニューラルネットワークである場合、訓練部52は、規格化された訓練用の時間変化画像データを訓練対象の畳み込みニューラルネットワークに入力し、訓練対象の畳み込みニューラルネットワークからの出力結果と正解データとの誤差に基づいて、誤差逆伝播法に従って訓練対象の畳み込みニューラルネットワークのパラメータを調整してもよい。訓練部52は、所定の終了条件が充足されるまで当該訓練処理を継続し、所定の終了条件が充足されると、当該訓練処理を終了する。
【0066】
図15は、本開示の一実施例による超音波診断装置100の機能構成を示すブロック図である。図15に示されるように、本実施例による超音波診断装置100は、超音波制御部110、前処理部120及び推論部130を有する。例えば、超音波制御部110、前処理部120及び推論部130の1つ以上の機能部は、1つ以上のCPU 1171がROM 1172又はRAM 1173に格納された1つ以上のプログラム又は指示を実行することによって実現されてもよい。
【0067】
超音波制御部110は、超音波診断装置100において送受信される超音波信号を制御する。具体的には、超音波制御部110は、超音波探触子1020から被検者30に送出される超音波信号を制御するとともに、被検者30から反射された超音波信号を受信する。例えば、超音波制御部110は、超音波信号を超音波探触子1020から送出し、対象物から反射された超音波信号を受信してもよい。超音波制御部110は、受信した超音波信号に基づいてユーザによって設定された掃引速度にしたがって被検者30の検出対象領域における時間変化画像データを生成する。
【0068】
前処理部120は、時間変化画像データを前処理する。具体的には、訓練済み機械学習モデル10が所定の掃引速度及び/又は所定の心拍数により規格化された時間変化画像データにより訓練されている場合、前処理部120は、超音波制御部110によって被検者30から取得された時間変化画像データを、所定の掃引速度及び/又は所定の心拍数により規格化する。例えば、図12に示されるように、超音波制御部110によって取得された時間変化画像データが、掃引速度30mm/sec及び心拍数72bpmである場合、前処理部120はまず、取得された時間変化画像を所定の掃引速度40mm/secに規格化するため、40/30=1.33・・・倍に拡大し、さらに所定の心拍数80bpmに規格化するため、72/80=0.9倍に縮小する。前処理部120は、このようにして規格化された時間変化画像データを推論部130にわたす。
【0069】
推論部130は、訓練済み機械学習モデル10を利用して、前処理部120により規格化された時間変化画像データに対する推論結果を取得する。具体的には、推論部130は、規格化された時間変化画像データを訓練済み機械学習モデル10に入力し、訓練済み機械学習モデル10から検出対象領域に関する推論結果を取得する。推論部130は、前処理部120にて実行された拡大及び/又は縮小と逆の処理を推論結果に対して実行し、超音波制御部110により取得された時間変化画像データに対応する推論結果を取得する。
【0070】
[VTI計測の実施例]
本実施例による機械学習モデル10は、VTI(Velocity-Time Integral)計測に利用可能である。ここで、VTIとは、速度時間積分値であり、心臓の左室流出路(Left Venticular Outflow Tract:LVOT)におけるVTIは、心臓左室収縮機能の評価指標として利用される。PWドプラ速度波形の面積は、血流速度の時間積分値VTIに等しい。ここで、LVOT径は、例えば、図16に示されるように、傍胸骨左縁長軸像において計測されうる。図16において、時間変化画像データ上の包囲された領域の面積がVTIに相当する。VTI計測のため、機械学習モデル10は、入力された時間変化画像データから、図17に示されるようなVTI計測対象区間及び/又はVTI計測対象領域を検出するよう訓練される。
【0071】
機械学習モデル10の訓練処理では、例えば、図18に示されるような時間変化画像データと、当該時間変化画像データに対応する計測区間のラベルデータとが、訓練データとして準備される。訓練用の時間変化画像データは、異なる掃引速度及び/又は異なる心拍数により取得されるため、時間変化画像データとラベルデータとは、上述したように、所定の掃引速度及び/又は所定の心拍数に規格化され、図示されるように、時間方向に拡大及び/又は縮小される。例えば、図18に示された時間変化画像データとラベルデータとはまず、所定の掃引速度に規格化するため時間方向に縮小され、次に所定の心拍数に規格化するため時間方向に拡大される。このように拡大及び縮小された時間変化画像データとラベルデータとは、時間方向に所定の幅を有するよう背景画像に重畳される。そして、所定の幅を有する時間変化画像データとラベルデータが訓練処理に入力される。
【0072】
次に、訓練済み機械学習モデル10を利用した推論処理では、図19に示されるような推論対象の時間変化画像データが与えられると、推論対象の時間変化画像データは、時間方向に規格化され、時間方向に所定の幅を有するように背景画像に重畳される。このように所定の時間幅を有する規格化された時間変化画像データは、訓練済み機械学習モデル10に入力され、図19に示されるように、規格化された時間変化画像データにおけるVTI計測区間を予測する。その後、前処理と逆の処理が、予測されたVTI計測区間に対して実行される。すなわち、VTI計測区間から前処理で重畳された背景画像の部分が除外され、その後に時間方向に元の幅に戻される。このようにして取得されたVTI計測区間を、推論対象の時間変化画像データに重畳して表示してもよい。
【0073】
図20は、本開示の一実施例による超音波診断処理を示すフローチャートである。図20に示されるように、ステップS101において、超音波診断装置100は、Bモードで傍胸骨左縁長軸像を描出し、描出した画像をフリーズする。
【0074】
ステップS102において、超音波診断装置100は、LVOT径を計測する。例えば、超音波診断装置100は、フリーズされた傍胸骨左縁長軸像上においてユーザにより指定されたLVOT径を示す部分の長さを計測してもよい。
【0075】
ステップS103において、超音波診断装置100は、Bモードで心尖部長軸像(3チャンバビュー)を描出し、ドプラカーソルをLVOTに合わせる。例えば、超音波診断装置100は、描出された心尖部長軸像上においてユーザからLVOTを指示される。
【0076】
ステップS104において、超音波診断装置100は、PW(Pulsed Wave)ドプラモードに遷移する。
【0077】
ステップS105において、超音波診断装置100は、LVOTのPWドプラ速度波形とドプラトレースとを取得して時間変化画像データとしてのPWドプラ速度波形に対してVTI自動計測を実行し、VTI計測区間とドプラトレースとからVTIを算出及び表示する。すなわち、超音波診断装置100は、訓練済み機械学習モデル10に計測対象の時間変化画像データとしてPWドプラ速度波形を入力し、訓練済み機械学習モデル10からVTI計測区間を取得する。そして、超音波診断装置100は、取得したVTI計測区間とドプラトレースとからVTIを算出する。
【0078】
ステップS106において、超音波診断装置100は、フリーズ状態に遷移したか判定する。フリーズ状態に遷移していない場合(S106:NO)、超音波診断装置100は、ステップS105に移行し、上述した処理を繰り返す。他方、フリーズ状態に遷移した場合(S106:YES)、超音波診断装置100は、ステップS107に移行する。
【0079】
ステップS107において、超音波診断装置100は、フリーズ表示されているPWドプラ速度波形に対してVTI自動計測を実行し、VTI計測区間とドプラトレースとからVTIを算出及び表示する。すなわち、超音波診断装置100は、訓練済み機械学習モデル10に計測対象の時間変化画像データとしてPWドプラ速度波形を入力し、訓練済み機械学習モデル10からVTI計測区間を取得する。そして、超音波診断装置100は、取得したVTI計測区間とドプラトレースとからVTIを算出する。
【0080】
ステップS108において、超音波診断装置100は、LVOT径とVTIとから1回拍出量(Stroke Volume:SV)を算出し、SVと心拍数(Heart Rate:HR)とから心拍出量(Cardiac Output:CO)を算出する。
【0081】
このようにして、本実施例によると、規格化された時間変化画像データとVTI計測対象区間とから構成される訓練データによって訓練された機械学習モデル10を利用してVTI自動計測を実行し、推定されたVTI計測対象区間とドプラトレースとに基づいて、被検者30から取得した時間変化画像データからVTIを推定することができる。
【0082】
上述した実施例では、VTI自動計測によって推定されたVTI計測対象区間とドプラトレースとからVTIを推定したが、本実施例による機械学習モデル10は、図21に示されるように、VTI計測対象領域を検出するよう訓練されてもよい。
【0083】
機械学習モデル10の訓練処理では、例えば、図22に示されるような時間変化画像データと、当該時間変化画像データに対応する計測領域のラベルデータとが、訓練データとして準備される。訓練用の時間変化画像データは、異なる掃引速度及び/又は異なる心拍数により取得されるため、時間変化画像データとラベルデータとは、上述したように、所定の掃引速度及び/又は所定の心拍数に規格化され、図示されるように、時間方向に拡大及び/又は縮小される。例えば、図22に示された時間変化画像データとラベルデータとはまず、所定の掃引速度に規格化するため時間方向に縮小され、次に所定の心拍数に規格化するため時間方向に拡大される。このように拡大及び縮小された時間変化画像データとラベルデータとは、時間方向に所定の幅を有するよう背景画像に重畳される。そして、所定の幅を有する時間変化画像データとラベルデータが訓練処理に入力される。
【0084】
次に、訓練済み機械学習モデル10を利用した推論処理では、図23に示されるような推論対象の時間変化画像データが与えられると、推論対象の時間変化画像データは、時間方向に規格化され、時間方向に所定の幅を有するように背景画像に重畳される。このように所定の時間幅を有する規格化された時間変化画像データは、訓練済み機械学習モデル10に入力され、図23に示されるように、規格化された時間変化画像データにおけるVTI計測対象領域を予測する。その後、前処理と逆の処理が、予測されたVTI計測対象領域に対して実行される。すなわち、VTI計測対象領域から前処理で重畳された背景画像の部分が除外され、その後に時間方向に元の幅に戻される。このようにして取得されたVTI計測領域を、推論対象の時間変化画像データに重畳して表示してもよい。
【0085】
図24は、本開示の一実施例による超音波診断処理を示すフローチャートである。図24に示されるように、ステップS201において、超音波診断装置100は、Bモードで傍胸骨左縁長軸像を描出し、描出した画像をフリーズする。
【0086】
ステップS202において、超音波診断装置100は、LVOT径を計測する。例えば、超音波診断装置100は、フリーズされた傍胸骨左縁長軸像上においてユーザにより指定されたLVOT径を示す部分の長さを計測してもよい。
【0087】
ステップS203において、超音波診断装置100は、Bモードで心尖部長軸像(3チャンバビュー)を描出し、ドプラカーソルをLVOTに合わせる。例えば、超音波診断装置100は、描出された心尖部長軸像上においてユーザからLVOTを指示される。
【0088】
ステップS204において、超音波診断装置100は、PWドプラモードに遷移する。
【0089】
ステップS205において、超音波診断装置100は、LVOTのPWドプラ速度波形を取得して時間変化画像データとしてのPWドプラ速度波形に対してVTI自動計測を実行し、推定されたVTI計測対象領域からVTIを算出及び表示する。すなわち、超音波診断装置100は、訓練済み機械学習モデル10に計測対象の時間変化画像データとしてPWドプラ速度波形を入力し、訓練済み機械学習モデル10からVTI計測対象領域を取得する。そして、超音波診断装置100は、取得したVTI計測対象領域からVTIを算出する。
【0090】
ステップS206において、超音波診断装置100は、フリーズ状態に遷移したか判定する。フリーズ状態に遷移していない場合(S206:NO)、超音波診断装置100は、ステップS205に移行し、上述した処理を繰り返す。他方、フリーズ状態に遷移した場合(S206:YES)、超音波診断装置100は、ステップS207に移行する。
【0091】
ステップS207において、超音波診断装置100は、フリーズ表示されているPWドプラ速度波形に対してVTI自動計測を実行し、推定されたVTI計測対象領域からVTIを算出及び表示する。すなわち、超音波診断装置100は、訓練済み機械学習モデル10に計測対象の時間変化画像データとしてPWドプラ速度波形を入力し、訓練済み機械学習モデル10からVTI計測対象領域を取得する。そして、超音波診断装置100は、取得したVTI計測対象領域からVTIを算出する。
【0092】
ステップS208において、超音波診断装置100は、LVOT径とVTIとから1回拍出量(SV)を算出し、SVと心拍数(HR)とから心拍出量(CO)を算出する。
【0093】
このようにして、本実施例によると、規格化された時間変化画像データとVTI計測対象領域とから構成される訓練データによって訓練された機械学習モデル10を利用してVTI自動計測を実行し、推定されたVTI計測対象領域に基づいて、被検者30から取得した時間変化画像データからVTIを推定することができる。
【0094】
[PSV・EDVの実施例]
本実施例による機械学習モデル10は、図25に示されるように、最大収縮血流速度(Peak Systolic Velocity:PSV)及び/又は拡張末期血流速度(End Diastolic Velocity:EDV)計測に利用可能である。ここで、PSVは1心拍中の最大血流速度であり、EDVは拡張末期(心臓が収縮する直前)の血流速度である。PSV及びEDVは、抵抗係数(Resistance Index:RI)及び拍動係数(Pulsatility Index:PI)の指標算出に利用されうる。すなわち、RI=(PSV-EDV)/PSVであり、PI=(PSV-EDV)/TAMVである。ここで、時間平均最大血流速度(Time Averaged Maximum Velocity:TAMV)は、最大流速の1心拍の時間平均である。PSV・EDV計測のため、機械学習モデル10は、入力された時間変化画像データから、PSV及びEDVの位置及び/又はタイミングを検出するよう訓練される。
【0095】
機械学習モデル10の訓練処理では、例えば、図26に示されるような時間変化画像データと、当該時間変化画像データに対応するPSV位置及びEDV位置のラベルデータとが、訓練データとして準備される。訓練用の時間変化画像データは、異なる掃引速度及び/又は異なる心拍数により取得されるため、時間変化画像データとラベルデータとは、上述したように、所定の掃引速度及び/又は所定の心拍数に規格化され、図示されるように、時間方向に拡大及び/又は縮小される。例えば、図26に示された時間変化画像データとラベルデータとはまず、所定の掃引速度に規格化するため時間方向に縮小され、次に所定の心拍数に規格化するため時間方向に拡大される。このように拡大及び縮小された時間変化画像データとラベルデータとは、時間方向に所定の幅を有するよう背景画像に重畳される。そして、所定の幅を有する時間変化画像データとラベルデータが訓練処理に入力される。
【0096】
次に、訓練済み機械学習モデル10を利用した推論処理では、図27に示されるような推論対象の時間変化画像データが与えられると、推論対象の時間変化画像データは、時間方向に規格化され、時間方向に所定の幅を有するように背景画像に重畳される。このように所定の時間幅を有する規格化された時間変化画像データは、訓練済み機械学習モデル10に入力され、図27に示されるように、規格化された時間変化画像データにおけるPSV位置及びEDV位置を予測する。その後、前処理と逆の処理が、予測されたPSV位置及びEDV位置に対して実行される。すなわち、PSV位置及びEDV位置から前処理で重畳された背景画像の部分が除外され、その後に時間方向に元の幅に戻される。このようにして取得されたPSV位置及びEDV位置を、推論対象の時間変化画像データに重畳して表示してもよい。
【0097】
図28は、本開示の一実施例による超音波診断処理を示すフローチャートである。図28に示されるように、ステップS301において、超音波診断装置100は、Bモードで計測対象の血管を描出し、ドプラカーソルを血管に合わせる。例えば、超音波診断装置100は、描出された血管上においてユーザから計測対象の血管部分及びドプラカーソルを指示される。
【0098】
ステップS302において、超音波診断装置100は、PWドプラモードに遷移する。
【0099】
ステップS303において、超音波診断装置100は、血管におけるPW速度波形とドプラトレースとを取得して時間変化画像データとしてのPWドプラ速度波形に対してPSV・EDV自動計測を実行し、PSV及びEDVの流速を算出及び表示する。
【0100】
ステップS304において、超音波診断装置100は、PSV及びEDVから抵抗係数RIを算出及び表示し、ドプラトレースから時間平均最大血流速度(TAMV)を算出して、PSVとTAMVとから拍動係数(PI)を算出及び表示する。
【0101】
ステップS305において、超音波診断装置100は、フリーズ状態に遷移したか判定する。フリーズ状態に遷移していない場合(S305:NO)、超音波診断装置100は、ステップS303に移行し、上述した処理を繰り返す。他方、フリーズ状態に遷移した場合(S305:YES)、超音波診断装置100は、ステップS306に移行する。
【0102】
ステップS306において、超音波診断装置100は、フリーズ表示されているPWドプラ速度波形に対してPSV・EDV自動計測を実行し、PSV位置とEDV位置とからPSV及びEDVの流速を算出及び表示する。すなわち、超音波診断装置100は、訓練済み機械学習モデル10に計測対象の時間変化画像データとしてPWドプラ速度波形を入力し、訓練済み機械学習モデル10からPSV位置とEDV位置とを取得する。そして、超音波診断装置100は、取得したPSV位置とEDV位置とからPSV及びEDVの流速を算出及び表示する。
【0103】
ステップS307において、超音波診断装置100は、PSV及びEDVから抵抗係数(RI)を算出及び表示し、ドプラトレースから時間平均最大血流速度(TAMV)を算出して、PSVとTAMVとから拍動係数(PI)を算出及び表示する。
【0104】
このようにして、本実施例によると、規格化された時間変化画像データとPSV位置及びEDV位置とから構成される訓練データによって訓練された機械学習モデル10を利用してPSV・EDV自動計測を実行し、推定されたPSV位置及びEDV位置とドプラトレース及びドプラトレースから算出したTAMVとに基づいて、被検者30から取得した時間変化画像データからRI及びPIを推定することができる。
【0105】
上述した実施例では、PSV・EDV自動計測によって推定されたPSV位置及びEDV位置とドプラトレースとからRI及びPIを推定したが、本実施例による機械学習モデル10は、図29に示されるように、PSVタイミング及びEDVタイミングを検出するよう訓練されてもよい。
【0106】
機械学習モデル10の訓練処理では、例えば、図30に示されるような時間変化画像データと、当該時間変化画像データに対応するPSVタイミング及びEDVタイミングのラベルデータとが、訓練データとして準備される。訓練用の時間変化画像データは、異なる掃引速度及び/又は異なる心拍数により取得されるため、時間変化画像データとラベルデータとは、上述したように、所定の掃引速度及び/又は所定の心拍数に規格化され、図示されるように、時間方向に拡大及び/又は縮小される。例えば、図30に示された時間変化画像データとラベルデータとはまず、所定の掃引速度に規格化するため時間方向に縮小され、次に所定の心拍数に規格化するため時間方向に拡大される。このように拡大及び縮小された時間変化画像データとラベルデータとは、時間方向に所定の幅を有するよう背景画像に重畳される。そして、所定の幅を有する時間変化画像データとラベルデータが訓練処理に入力される。
【0107】
次に、訓練済み機械学習モデル10を利用した推論処理では、図31に示されるような推論対象の時間変化画像データが与えられると、推論対象の時間変化画像データは、時間方向に規格化され、時間方向に所定の幅を有するように背景画像に重畳される。このように所定の時間幅を有する規格化された時間変化画像データは、訓練済み機械学習モデル10に入力され、図31に示されるように、規格化された時間変化画像データにおけるPSVタイミング及びEDVタイミングを予測する。その後、前処理と逆の処理が、予測されたPSVタイミング及びEDVタイミングに対して実行される。すなわち、PSVタイミング及びEDVタイミングから前処理で重畳された背景画像の部分が除外され、その後に時間方向に元の幅に戻される。このようにして取得されたPSVタイミング及びEDVタイミングを、推論対象の時間変化画像データに重畳して表示してもよい。
【0108】
図32は、本開示の一実施例による超音波診断処理を示すフローチャートである。図32に示されるように、ステップS401において、超音波診断装置100は、Bモードで計測対象の血管を描出し、ドプラカーソルを血管に合わせる。例えば、超音波診断装置100は、描出された血管上においてユーザから計測対象の血管部分及びドプラカーソルを指示される。
【0109】
ステップS402において、超音波診断装置100は、PWドプラモードに遷移する。
【0110】
ステップS403において、超音波診断装置100は、血管におけるPW速度波形とドプラトレースとを取得して時間変化画像データとしてのPWドプラ速度波形に対してPSV・EDV自動計測を実行し、推定されたPSVタイミング及びEDVタイミングとドプラトレースとからPSV及びEDVの流速を算出及び表示する。すなわち、超音波診断装置100は、訓練済み機械学習モデル10に計測対象の時間変化画像データとしてPWドプラ速度波形を入力し、訓練済み機械学習モデル10からPSVタイミングとEDVタイミングとを取得する。そして、超音波診断装置100は、取得したPSVタイミング及びEDVタイミングとドプラトレースとからPSV及びEDVの流速を算出及び表示する。
【0111】
ステップS404において、超音波診断装置100は、PSV及びEDVから抵抗係数(RI)を算出及び表示し、ドプラトレースから時間平均最大血流速度(TAMV)を算出して、PSVとTAMVとから拍動係数(PI)を算出及び表示する。
【0112】
ステップS405において、超音波診断装置100は、フリーズ状態に遷移したか判定する。フリーズ状態に遷移していない場合(S405:NO)、超音波診断装置100は、ステップS403に移行し、上述した処理を繰り返す。他方、フリーズ状態に遷移した場合(S405:YES)、超音波診断装置100は、ステップS406に移行する。
【0113】
ステップS406において、超音波診断装置100は、フリーズ表示されているPWドプラ速度波形に対してPSV・EDV自動計測を実行し、推定されたPSVタイミング及びEDVタイミングとドプラトレースとからPSV及びEDVの流速を算出及び表示する。すなわち、超音波診断装置100は、訓練済み機械学習モデル10に計測対象の時間変化画像データとしてPWドプラ速度波形を入力し、訓練済み機械学習モデル10からPSVタイミングとEDVタイミングとを取得する。そして、超音波診断装置100は、取得したPSVタイミング及びEDVタイミングとドプラトレースとからPSV及びEDVの流速を算出及び表示する。
【0114】
ステップS407において、超音波診断装置100は、PSV及びEDVから抵抗係数(RI)を算出及び表示し、ドプラトレースから時間平均最大血流速度(TAMV)を算出して、PSVとTAMVとから拍動係数(PI)を算出及び表示する。
【0115】
このようにして、本実施例によると、規格化された時間変化画像データとPSVタイミング及びEDVタイミングとから構成される訓練データによって訓練された機械学習モデル10を利用してPSV・EDV自動計測を実行し、推定されたPSVタイミング及びEDVタイミングとドプラトレース及びドプラトレースから算出したTAMVとに基づいて、被検者30から取得した時間変化画像データからRI及びPIを推定することができる。
【0116】
[血流量の実施例]
本実施例による機械学習モデル10は、図33に示されるように、血流量(Flow Volume:FL)計測に利用可能である。ここで、単位時間当たりの血流量FL[mL/min]は、ドプラ計測された1心拍の時間平均血流速度TAV[cm/sec]と、Bモード計測された血管径D[mm]から算出された血管断面積S[mm]とを乗算することによって算出されうる。すなわち、S=π×(D/2)であり、FL=(S/10)×(TAV×60)となる。血流量自動計測のため、機械学習モデル10は、入力された時間変化画像データから、血流量計測対象区間(すなわち、1心拍の区間)の境界を検出するよう訓練される。図示された計測対象区間の境界は、EDVのタイミングに基づいて設定されるが、本開示は必ずしもこれに限定されるものでない。
【0117】
機械学習モデル10の訓練処理では、例えば、図34に示されるような時間変化画像データと、当該時間変化画像データに対応するEDVタイミングのラベルデータとが、訓練データとして準備される。訓練用の時間変化画像データは、異なる掃引速度及び/又は異なる心拍数により取得されるため、時間変化画像データとラベルデータとは、上述したように、所定の掃引速度及び/又は所定の心拍数に規格化され、時間方向に拡大及び/又は縮小される。例えば、時間変化画像データとラベルデータとはまず、所定の掃引速度に規格化するため時間方向に縮小され、次に所定の心拍数に規格化するため時間方向に拡大される。このように拡大及び縮小された時間変化画像データとラベルデータとは、時間方向に所定の幅を有するよう背景画像に重畳される。そして、所定の幅を有する時間変化画像データとラベルデータが訓練処理に入力される。なお、訓練データに対する規格化は、上述したEDVタイミングの検出に関する実施例と同様であり、重複した説明を避けるため、詳細は割愛する。
【0118】
次に、訓練済み機械学習モデル10を利用した推論処理では、推論対象の時間変化画像データが与えられると、推論対象の時間変化画像データは、時間方向に規格化され、時間方向に所定の幅を有するように背景画像に重畳される。このように所定の時間幅を有する規格化された時間変化画像データは、訓練済み機械学習モデル10に入力され、規格化された時間変化画像データにおけるEDVタイミングを予測する。その後、前処理と逆の処理が、予測されたEDVタイミングに対して実行される。すなわち、EDVタイミングから前処理で重畳された背景画像の部分が除外され、その後に時間方向に元の幅に戻される。このようにして取得されたEDVタイミングを、推論対象の時間変化画像データに重畳して表示してもよい。なお、推論対象データに対する規格化は、上述したEDVタイミングの検出に関する実施例と同様であり、重複した説明を避けるため、詳細は割愛する。
【0119】
図35は、本開示の一実施例による超音波診断処理を示すフローチャートである。図35に示されるように、ステップS501において、超音波診断装置100は、Bモードで計測対象の血管を描出し、ドプラカーソルを血管に合わせる。例えば、超音波診断装置100は、描出された血管上においてユーザから計測対象の血管部分及びドプラカーソルを指示される。
【0120】
ステップS502において、超音波診断装置100は、PWドプラモードに遷移する。
【0121】
ステップS503において、超音波診断装置100は、血管におけるPW速度波形とドプラトレースとを取得してフリーズ状態に遷移する。
【0122】
ステップS504において、超音波診断装置100は、時間変化画像データとしてのPWドプラ速度波形に対して血流量自動計測を実行し、推定されたEDVタイミングなどの計測対象区間を検出する。すなわち、超音波診断装置100は、訓練済み機械学習モデル10に計測対象の時間変化画像データとしてPWドプラ速度波形を入力し、訓練済み機械学習モデル10からEDVタイミングを取得する。
【0123】
ステップS505において、超音波診断装置100は、計測対象区間の平均流速を時間平均し、時間平均血流速度TAVを取得する。
【0124】
ステップS506において、超音波診断装置100は、Bモード画像上で血管径Dを計測する。
【0125】
ステップS507において、超音波診断装置100は、時間平均血流速度TAVと血管径Dとから血流量FLを算出する。具体的には、超音波診断装置100は、S=π×(D/2)に従って血管径Dから血管断面積Sを算出し、FL=(S/10)×(TAV×60)に従って血管断面積Sと時間平均血流速度TAVとから血流量FLを算出する。
【0126】
このようにして、本実施例によると、規格化された時間変化画像データとEDVタイミングとから構成される訓練データによって訓練された機械学習モデル10を利用して血流量自動計測を実行し、推定されたEDVタイミングとドプラトレースとに基づいて、被検者30から取得した時間変化画像データから血流量を推定することができる。
【0127】
[E/A比の実施例]
本実施例による機械学習モデル10は、図36に示されるように、E/A比計測に利用可能である。ここで、E/A比は、左室拡張機能の評価指標であり、E/A比=最大E波速度/最大A波速度に従って算出されうる。例えば、E/A≦0.8である場合、左室は弛緩障害型であると判定され、E/A≧2.0である場合、左室は拘束型であると判定される。E/A比自動計測のため、機械学習モデル10は、入力された時間変化画像データから、最大E波速度の位置と最大A波速度の位置とを検出するよう訓練される。
【0128】
機械学習モデル10の訓練処理では、例えば、図37に示されるような時間変化画像データと、当該時間変化画像データに対応する最大E波速度の位置及び最大A波速度の位置のラベルデータとが、訓練データとして準備される。訓練用の時間変化画像データは、異なる掃引速度及び/又は異なる心拍数により取得されるため、時間変化画像データとラベルデータとは、上述したように、所定の掃引速度及び/又は所定の心拍数に規格化され、時間方向に拡大及び/又は縮小される。例えば、時間変化画像データとラベルデータとはまず、所定の掃引速度に規格化するため時間方向に縮小され、次に所定の心拍数に規格化するため時間方向に拡大される。このように拡大及び縮小された時間変化画像データとラベルデータとは、時間方向に所定の幅を有するよう背景画像に重畳される。そして、所定の幅を有する時間変化画像データとラベルデータが訓練処理に入力される。なお、訓練データに対する規格化は、上述したPSV・EDV位置の検出に関する実施例と同様であり、重複した説明を避けるため、詳細は割愛する。
【0129】
次に、訓練済み機械学習モデル10を利用した推論処理では、推論対象の時間変化画像データが与えられると、推論対象の時間変化画像データは、時間方向に規格化され、時間方向に所定の幅を有するように背景画像に重畳される。このように所定の時間幅を有する規格化された時間変化画像データは、訓練済み機械学習モデル10に入力され、規格化された時間変化画像データにおける最大E波速度の位置及び最大A波速度の位置を予測する。その後、前処理と逆の処理が、予測された最大E波速度の位置及び最大A波速度の位置に対して実行される。すなわち、最大E波速度の位置及び最大A波速度の位置から前処理で重畳された背景画像の部分が除外され、その後に時間方向に元の幅に戻される。このようにして取得された最大E波速度の位置及び最大A波速度の位置を、推論対象の時間変化画像データに重畳して表示してもよい。なお、推論対象データに対する規格化は、上述したPSV・EDV位置の検出に関する実施例と同様であり、重複した説明を避けるため、詳細は割愛する。
【0130】
図38は、本開示の一実施例による超音波診断処理を示すフローチャートである。図38に示されるように、ステップS601において、超音波診断装置100は、Bモードで心臓の心尖部四腔像(4チャンバビュー)を描出し、ドプラカーソルを僧帽弁尖先端間に合わせる。例えば、超音波診断装置100は、描出された心尖部四腔像上においてユーザからドプラカーソルの位置を指示される。
【0131】
ステップS602において、超音波診断装置100は、PWドプラモードに遷移する。
【0132】
ステップS603において、超音波診断装置100は、僧帽弁流入血流のPWドプラ速度波形を取得して時間変化画像データとしてのPWドプラ速度波形に対してE/A自動計測を実行し、最大E波速度と最大A波速度とを取得する。すなわち、超音波診断装置100は、訓練済み機械学習モデル10に計測対象の時間変化画像データとしてPWドプラ速度波形を入力し、訓練済み機械学習モデル10から最大E波速度の位置と最大A波速度の位置とを取得する。
【0133】
ステップS604において、超音波診断装置100は、取得した最大E波速度と最大A波速度とからE/A比を算出及び表示する。
【0134】
ステップS605において、超音波診断装置100は、フリーズ状態に遷移したか判定する。フリーズ状態に遷移していない場合(S605:NO)、超音波診断装置100は、ステップS603に移行し、上述した処理を繰り返す。他方、フリーズ状態に遷移した場合(S605:YES)、超音波診断装置100は、ステップS606に移行する。
【0135】
ステップS606において、超音波診断装置100は、フリーズ表示されているPWドプラ速度波形に対してE/A自動計測を実行し、最大E波速度と最大A波速度とを取得する。すなわち、超音波診断装置100は、訓練済み機械学習モデル10に計測対象の時間変化画像データとしてPWドプラ速度波形を入力し、訓練済み機械学習モデル10から最大E波速度の位置と最大A波速度の位置とを取得する。そして、超音波診断装置100は、取得した最大E波速度の位置と最大A波速度の位置とから最大E波速度と最大A波速度とを取得する。
【0136】
ステップS607において、超音波診断装置100は、最大E波速度と最大A波速度とからE/A比を算出及び表示する。
【0137】
このようにして、本実施例によると、規格化された時間変化画像データと最大E波速度の位置及び最大A波速度の位置とから構成される訓練データによって訓練された機械学習モデル10を利用してE/A自動計測を実行し、推定された最大E波速度の位置及び最大A波速度の位置に基づいて、被検者30から取得した時間変化画像データからE/A比を推定することができる。
【0138】
上述した実施例では、E/A自動計測によって推定された最大E波速度の位置及び最大A波速度の位置からE/A比を推定したが、本実施例による機械学習モデル10は、図39に示されるように、最大E波速度タイミング及び最大A波速度タイミングを検出するよう訓練されてもよい。
【0139】
機械学習モデル10の訓練処理では、例えば、図39に示されるような時間変化画像データと、当該時間変化画像データに対応する最大E波速度タイミング及び最大A波速度タイミングのラベルデータとが、訓練データとして準備される。訓練用の時間変化画像データは、異なる掃引速度及び/又は異なる心拍数により取得されるため、時間変化画像データとラベルデータとは、上述したように、所定の掃引速度及び/又は所定の心拍数に規格化され、図示されるように、時間方向に拡大及び/又は縮小される。例えば、時間変化画像データとラベルデータとはまず、所定の掃引速度に規格化するため時間方向に縮小され、次に所定の心拍数に規格化するため時間方向に拡大される。このように拡大及び縮小された時間変化画像データとラベルデータとは、時間方向に所定の幅を有するよう背景画像に重畳される。そして、所定の幅を有する時間変化画像データとラベルデータが訓練処理に入力される。なお、訓練データに対する規格化は、上述したPSV・EDVタイミングの検出に関する実施例と同様であり、重複した説明を避けるため、詳細は割愛する。
【0140】
次に、訓練済み機械学習モデル10を利用した推論処理では、推論対象の時間変化画像データが与えられると、推論対象の時間変化画像データは、時間方向に規格化され、時間方向に所定の幅を有するように背景画像に重畳される。このように所定の時間幅を有する規格化された時間変化画像データは、訓練済み機械学習モデル10に入力され、規格化された時間変化画像データにおける最大E波速度タイミング及び最大A波速度タイミングを予測する。その後、前処理と逆の処理が、予測された最大E波速度タイミング及び最大A波速度タイミングに対して実行される。すなわち、最大E波速度タイミング及び最大A波速度タイミングから前処理で重畳された背景画像の部分が除外され、その後に時間方向に元の幅に戻される。このようにして取得された最大E波速度タイミング及び最大A波速度タイミングを、推論対象の時間変化画像データに重畳して表示してもよい。なお、推論対象データに対する規格化は、上述したPSV・EDVタイミングの検出に関する実施例と同様であり、重複した説明を避けるため、詳細は割愛する。
【0141】
図40は、本開示の一実施例による超音波診断処理を示すフローチャートである。図40に示されるように、ステップS701において、超音波診断装置100は、Bモードで心臓の心尖部四腔像(4チャンバビュー)を描出し、ドプラカーソルを僧帽弁尖先端間に合わせる。例えば、超音波診断装置100は、描出された心尖部四腔像上においてユーザからドプラカーソルの位置を指示される。
【0142】
ステップS702において、超音波診断装置100は、PWドプラモードに遷移する。
【0143】
ステップS703において、超音波診断装置100は、僧帽弁流入血流のPWドプラ速度波形を取得して時間変化画像データとしてのPWドプラ速度波形に対してE/A自動計測を実行し、最大E波速度タイミングと最大A波速度タイミングとを取得する。すなわち、超音波診断装置100は、訓練済み機械学習モデル10に計測対象の時間変化画像データとしてPWドプラ速度波形を入力し、訓練済み機械学習モデル10から最大E波速度タイミングと最大A波速度タイミングとを取得する。そして、最大E波速度タイミングと最大A波速度タイミング及びドプラトレースとから、最大E波速度と最大A波速度とを取得する。
【0144】
ステップS704において、超音波診断装置100は、取得した最大E波速度と最大A波速度とからE/A比を算出及び表示する。
【0145】
ステップS705において、超音波診断装置100は、フリーズ状態に遷移したか判定する。フリーズ状態に遷移していない場合(S705:NO)、超音波診断装置100は、ステップS703に移行し、上述した処理を繰り返す。他方、フリーズ状態に遷移した場合(S705:YES)、超音波診断装置100は、ステップS706に移行する。
【0146】
ステップS706において、超音波診断装置100は、フリーズ表示されているPWドプラ速度波形に対してE/A自動計測を実行し、最大E波速度タイミングと最大A波速度タイミングとを取得する。すなわち、超音波診断装置100は、訓練済み機械学習モデル10に計測対象の時間変化画像データとしてPWドプラ速度波形を入力し、訓練済み機械学習モデル10から最大E波速度タイミングと最大A波速度タイミングとを取得する。そして、超音波診断装置100は、取得した最大E波速度タイミングと最大A波速度タイミング及びドプラトレースとから最大E波速度と最大A波速度とを取得する。
【0147】
ステップS707において、超音波診断装置100は、最大E波速度と最大A波速度とからE/A比を算出及び表示する。
【0148】
このようにして、本実施例によると、規格化された時間変化画像データと最大E波速度タイミング及び最大A波速度タイミングとから構成される訓練データによって訓練された機械学習モデル10を利用してE/A自動計測を実行し、推定された最大E波速度タイミング及び最大A波速度タイミングに基づいて、被検者30から取得した時間変化画像データからE/A比を推定することができる。
【0149】
[TAPSE・MAPSEの実施例]
本実施例による機械学習モデル10は、三尖弁輪収縮期移動距離(Tricuspid Annular Plane Systolic Excursion:TAPSE)及び/又は僧帽弁輪収縮期移動距離(Mitral Annular Plane Systolic Excursion:MAPSE)計測に利用可能である。ここで、TAPSEは、右心機能の評価指標であり、図41に示されるように、Mモードで三尖弁の弁輪部の動きの量を評価するのに利用される。また、MAPSEは、左心機能の評価機能であり、左室の描出が困難なケースで利用可能であり、Mモードで僧帽弁の弁輪部の動きの量を評価するのに利用される。図42に示されるように、TAPSEは、Mモード画像における拡張期の位置と収縮期の位置とに基づいて決定可能であり、図示しないが、MAPSEも同様に決定可能である。TAPSE・MAPSE自動計測のため、機械学習モデル10は、入力された時間変化画像データから、TAPSE及び/又はMAPSEの拡張期位置と収縮期位置とを検出するよう訓練される。
【0150】
機械学習モデル10の訓練処理では、例えば、図43に示されるような時間変化画像データと、当該時間変化画像データに対応する拡張期の弁輪部の位置及び収縮期の弁輪部の位置のラベルデータとが、訓練データとして準備される。訓練用の時間変化画像データは、異なる掃引速度及び/又は異なる心拍数により取得されるため、時間変化画像データとラベルデータとは、上述したように、所定の掃引速度及び/又は所定の心拍数に規格化され、時間方向に拡大及び/又は縮小される。例えば、図43に示された時間変化画像データとラベルデータとはまず、所定の掃引速度に規格化するため時間方向に縮小され、次に所定の心拍数に規格化するため時間方向に拡大される。このように拡大及び縮小された時間変化画像データとラベルデータとは、時間方向に所定の幅を有するよう背景画像に重畳される。そして、所定の幅を有する時間変化画像データとラベルデータが訓練処理に入力される。
【0151】
次に、訓練済み機械学習モデル10を利用した推論処理では、例えば、図44に示されるように、推論対象の時間変化画像データが与えられると、推論対象の時間変化画像データは、時間方向に規格化され、時間方向に所定の幅を有するように背景画像に重畳される。このように所定の時間幅を有する規格化された時間変化画像データは、訓練済み機械学習モデル10に入力され、規格化された時間変化画像データにおける拡張期の弁輪部の位置及び収縮期の弁輪部の位置を予測する。その後、前処理と逆の処理が、予測された拡張期の弁輪部の位置及び収縮期の弁輪部の位置に対して実行される。すなわち、拡張期の弁輪部の位置及び収縮期の弁輪部の位置から前処理で重畳された背景画像の部分が除外され、その後に時間方向に元の幅に戻される。このようにして取得された拡張期の弁輪部の位置及び収縮期の弁輪部の位置を、推論対象の時間変化画像データに重畳して表示してもよい。
【0152】
図45は、本開示の一実施例による超音波診断処理を示すフローチャートである。図45に示されるように、ステップS801において、超音波診断装置100は、Bモードで心臓の心尖部四腔像(4チャンバビュー)を描出し、Mモードカーソルを三尖弁輪部に合わせる。例えば、超音波診断装置100は、描出された心尖部四腔像上においてユーザからMモードカーソルの位置を指示される。
【0153】
ステップS802において、超音波診断装置100は、Mモードに遷移する。
【0154】
ステップS803において、超音波診断装置100は、三尖弁輪部のMモード画像を取得して時間変化画像データとしてのMモード画像に対してTAPSE自動計測を実行し、三尖弁輪部の拡張期の位置と収縮期の位置とを取得する。すなわち、超音波診断装置100は、訓練済み機械学習モデル10に計測対象の時間変化画像データとしてMモード画像を入力し、訓練済み機械学習モデル10から三尖弁輪部の拡張期の位置と収縮期の位置とを取得する。
【0155】
ステップS804において、超音波診断装置100は、取得した三尖弁輪部の拡張期の位置と収縮期の位置とからTAPSE値を算出及び表示する。
【0156】
ステップS805において、超音波診断装置100は、フリーズ状態に遷移したか判定する。フリーズ状態に遷移していない場合(S805:NO)、超音波診断装置100は、ステップS803に移行し、上述した処理を繰り返す。他方、フリーズ状態に遷移した場合(S805:YES)、超音波診断装置100は、ステップS806に移行する。
【0157】
ステップS806において、超音波診断装置100は、フリーズ表示されているMモード画像に対してTAPSE自動計測を実行し、三尖弁輪部の拡張期の位置と収縮期の位置とを取得する。すなわち、超音波診断装置100は、訓練済み機械学習モデル10に計測対象の時間変化画像データとしてMモード画像を入力し、訓練済み機械学習モデル10から三尖弁輪部の拡張期の位置と収縮期の位置とを取得する。
【0158】
ステップS807において、超音波診断装置100は、取得した三尖弁輪部の拡張期の位置と収縮期の位置とからTAPSE値を算出及び表示する。
【0159】
このようにして、本実施例によると、規格化された時間変化画像データと三尖弁輪部の拡張期の位置と収縮期の位置とから構成される訓練データによって訓練された機械学習モデル10を利用してTAPSE自動計測を実行し、推定された三尖弁輪部の拡張期の位置と収縮期の位置とに基づいて、被検者30から取得した時間変化画像データからTAPSE値を推定することができる。
【0160】
なお、MAPSEについては、Mモード画像において僧帽弁輪部の拡張期の位置と収縮期の位置とを推定するよう訓練された機械学習モデル10を利用して、同様にMAPSE値を取得することができる。
【0161】
上述した実施例では、TAPSE自動計測によって推定された三尖弁輪部の拡張期の位置と収縮期の位置とからTAPSE値を推定したが、本実施例による機械学習モデル10は、図46に示されるように、三尖弁輪部の拡張期タイミング及び収縮期タイミングを検出するよう訓練されてもよい。
【0162】
機械学習モデル10の訓練処理では、例えば、図47に示されるような時間変化画像データと、当該時間変化画像データに対応する拡張期タイミング及び収縮期タイミングのラベルデータとが、訓練データとして準備される。訓練用の時間変化画像データは、異なる掃引速度及び/又は異なる心拍数により取得されるため、時間変化画像データとラベルデータとは、上述したように、所定の掃引速度及び/又は所定の心拍数に規格化され、時間方向に拡大及び/又は縮小される。例えば、図47に示された時間変化画像データとラベルデータとはまず、所定の掃引速度に規格化するため時間方向に縮小され、次に所定の心拍数に規格化するため時間方向に拡大される。このように拡大及び縮小された時間変化画像データとラベルデータとは、時間方向に所定の幅を有するよう背景画像に重畳される。そして、所定の幅を有する時間変化画像データとラベルデータが訓練処理に入力される。
【0163】
次に、訓練済み機械学習モデル10を利用した推論処理では、例えば、図48に示されるように、推論対象の時間変化画像データが与えられると、推論対象の時間変化画像データは、時間方向に規格化され、時間方向に所定の幅を有するように背景画像に重畳される。このように所定の時間幅を有する規格化された時間変化画像データは、訓練済み機械学習モデル10に入力され、規格化された時間変化画像データにおける拡張期タイミング及び収縮期タイミングを予測する。その後、前処理と逆の処理が、予測された拡張期タイミング及び収縮期タイミングに対して実行される。すなわち、拡張期タイミング及び収縮期タイミングから前処理で重畳された背景画像の部分が除外され、その後に時間方向に元の幅に戻される。このようにして取得された拡張期タイミング及び収縮期タイミングを、推論対象の時間変化画像データに重畳して表示してもよい。
【0164】
また、本実施例による機械学習モデル10は、図49に示されるように、Mモード画像における三尖弁輪部のトレースラインを検出するよう訓練されてもよい。機械学習モデル10の訓練処理では、例えば、図49に示されるような時間変化画像データと、当該時間変化画像データに対応する三尖弁輪部のトレースラインのラベルデータとが、訓練データとして準備される。訓練用の時間変化画像データは、異なる掃引速度及び/又は異なる心拍数により取得されるため、時間変化画像データとラベルデータとは、上述したように、所定の掃引速度及び/又は所定の心拍数に規格化され、時間方向に拡大及び/又は縮小される。例えば、図48に示された時間変化画像データとラベルデータとはまず、所定の掃引速度に規格化するため時間方向に縮小され、次に所定の心拍数に規格化するため時間方向に拡大される。このように拡大及び縮小された時間変化画像データとラベルデータとは、時間方向に所定の幅を有するよう背景画像に重畳される。そして、所定の幅を有する時間変化画像データとラベルデータが訓練処理に入力される。
【0165】
次に、訓練済み機械学習モデル10を利用した推論処理では、例えば、図50に示されるように、推論対象の時間変化画像データが与えられると、推論対象の時間変化画像データは、時間方向に規格化され、時間方向に所定の幅を有するように背景画像に重畳される。このように所定の時間幅を有する規格化された時間変化画像データは、訓練済み機械学習モデル10に入力され、規格化された時間変化画像データにおける三尖弁輪部のトレースラインの位置を予測する。その後、前処理と逆の処理が、予測された三尖弁輪部のトレースラインに対して実行される。すなわち、三尖弁輪部のトレースラインから前処理で重畳された背景画像の部分が除外され、その後に時間方向に元の幅に戻される。このようにして取得された三尖弁輪部のトレースラインを、推論対象の時間変化画像データに重畳して表示してもよい。
【0166】
図51は、本開示の一実施例による超音波診断処理を示すフローチャートである。図51に示されるように、ステップS901において、超音波診断装置100は、Bモードで心臓の心尖部四腔像(4チャンバビュー)を描出し、Mモードカーソルを三尖弁輪部に合わせる。例えば、超音波診断装置100は、描出された心尖部四腔像上においてユーザからMモードカーソルの位置を指示される。
【0167】
ステップS902において、超音波診断装置100は、Mモードに遷移する。
【0168】
ステップS903において、超音波診断装置100は、三尖弁輪部のMモード画像を取得して時間変化画像データとしてのMモード画像に対してTAPSE自動計測を実行し、三尖弁輪部の拡張期タイミング及び収縮期タイミングと、トレースラインとを取得する。すなわち、超音波診断装置100は、訓練済み機械学習モデル10に計測対象の時間変化画像データとしてMモード画像を入力し、訓練済み機械学習モデル10から三尖弁輪部の拡張期タイミング及び収縮期タイミングと、トレースラインとを取得する。
【0169】
ステップS904において、超音波診断装置100は、取得した三尖弁輪部の拡張期タイミングと収縮期タイミングにおけるトレースラインより拡張期位置と収縮期位置とを取得し、拡張期位置と収縮期位置とからTAPSE値を算出及び表示する。
【0170】
ステップS905において、超音波診断装置100は、フリーズ状態に遷移したか判定する。フリーズ状態に遷移していない場合(S905:NO)、超音波診断装置100は、ステップS903に移行し、上述した処理を繰り返す。他方、フリーズ状態に遷移した場合(S905:YES)、超音波診断装置100は、ステップS906に移行する。
【0171】
ステップS906において、超音波診断装置100は、フリーズ表示されているMモード画像に対してTAPSE自動計測を実行し、三尖弁輪部の拡張期タイミング及び収縮期タイミングと、トレースラインとを取得する。すなわち、超音波診断装置100は、訓練済み機械学習モデル10に計測対象の時間変化画像データとしてMモード画像を入力し、訓練済み機械学習モデル10から三尖弁輪部の拡張期タイミング及び収縮期タイミングと、トレースラインとを取得する。
【0172】
ステップS907において、超音波診断装置100は、取得した三尖弁輪部の拡張期タイミングと収縮期タイミングにおけるトレースラインより拡張期位置と収縮期位置とを取得し、拡張期位置と収縮期位置とからTAPSE値を算出及び表示する。
【0173】
このようにして、本実施例によると、規格化された時間変化画像データと、三尖弁輪部の拡張期及び収縮期タイミング並びにトレースラインとから構成される訓練データによって訓練された機械学習モデル10を利用してTAPSE自動計測を実行し、推定された三尖弁輪部の拡張期及び収縮期タイミングとトレースラインとに基づいて、被検者30から取得した時間変化画像データからTAPSE値を推定することができる。
【0174】
なお、MAPSEについては、Mモード画像において僧帽弁輪部の拡張期及び収縮期タイミングとトレースラインとを推定するよう訓練された機械学習モデル10を利用して、同様にMAPSE値を取得することができる。
【0175】
[IVC径の実施例]
本実施例による機械学習モデル10は、下大静脈(Inferior Vena Cava:IVC)計測に利用可能である。ここで、IVC径は、Bモード画像又はMモード画像上で呼吸に伴う下大静脈の血管径の最大値と呼吸変動とを計測するのに利用されうる。血管径の呼吸性変動は、例えば、(最大径-最小径)/最大径×100[%]で表されうる。図52に示されるように、最大径は呼気時の下大静脈の径であり、最小径は吸気時の下大静脈の径である。IVC径は、例えば、輸液管理のための指標として利用可能である。IVC径自動計測のため、機械学習モデル10は、入力された時間変化画像データから、呼気時の血管の位置及び幅と吸気時の血管の位置及び幅とを検出するよう訓練される。
【0176】
機械学習モデル10の訓練処理では、例えば、図53に示されるような時間変化画像データと、当該時間変化画像データに対応する呼気時の血管の位置及び幅と吸気時の血管の位置及び幅とのラベルデータとが、訓練データとして準備される。訓練用の時間変化画像データは、異なる掃引速度により取得されるため、時間変化画像データとラベルデータとは、上述したように、所定の掃引速度に規格化され、時間方向に拡大及び/又は縮小される。なお、IVC径は、心臓の拍動に関する計測ではなく、呼吸変動に関する計測であるので、心拍数に応じた規格化は実施されない。例えば、図53に示された時間変化画像データとラベルデータとはまず、所定の掃引速度に規格化するため時間方向に縮小される。次に異なる呼吸速度に対応するために、時間方向にランダムな比率で拡大・縮小するデータ拡張を施してもよい。このように拡大及び縮小された時間変化画像データとラベルデータとは、時間方向に所定の幅を有するよう背景画像に重畳される。そして、所定の幅を有する時間変化画像データとラベルデータが訓練処理に入力される。
【0177】
次に、訓練済み機械学習モデル10を利用した推論処理では、例えば、図54に示されるように、推論対象の時間変化画像データが与えられると、推論対象の時間変化画像データは、時間方向に規格化され、時間方向に所定の幅を有するように背景画像に重畳される。このように所定の時間幅を有する規格化された時間変化画像データは、訓練済み機械学習モデル10に入力され、規格化された時間変化画像データにおける呼気時の血管の位置及び幅と吸気時の血管の位置及び幅とを予測する。その後、前処理と逆の処理が、予測された呼気時の血管の位置及び幅と吸気時の血管の位置及び幅とに対して実行される。すなわち、呼気時の血管の位置及び幅と吸気時の血管の位置及び幅とから前処理で重畳された背景画像の部分が除外され、その後に時間方向に元の幅に戻される。このようにして取得された呼気時の血管の位置及び幅と吸気時の血管の位置及び幅を、推論対象の時間変化画像データに重畳して表示してもよい。
【0178】
図55は、本開示の一実施例による超音波診断処理を示すフローチャートである。図55に示されるように、ステップS1001において、超音波診断装置100は、BモードでIVCの長軸像を描出し、Mモードカーソルを計測対象のIVCの位置に合わせる。例えば、超音波診断装置100は、描出されたIVCの長軸像上においてユーザからMモードカーソルの位置を指示される。
【0179】
ステップS1002において、超音波診断装置100は、Mモードに遷移する。
【0180】
ステップS1003において、超音波診断装置100は、IVCのMモード画像を取得して時間変化画像データとしてのMモード画像に対してIVC径自動計測を実行し、呼気時及び吸気時のIVCの血管径を取得する。
【0181】
ステップS1004において、超音波診断装置100は、取得した呼気時及び吸気時のIVC径からIVC径の呼吸性変動を算出及び表示する。
【0182】
ステップS1005において、超音波診断装置100は、フリーズ状態に遷移したか判定する。フリーズ状態に遷移していない場合(S1005:NO)、超音波診断装置100は、ステップS1003に移行し、上述した処理を繰り返す。他方、フリーズ状態に遷移した場合(S1005:YES)、超音波診断装置100は、ステップS1006に移行する。
【0183】
ステップS1006において、超音波診断装置100は、フリーズ表示されているMモード画像に対してIVC径自動計測を実行し、呼気時及び吸気時のIVCの血管径を取得する。すなわち、超音波診断装置100は、訓練済み機械学習モデル10に計測対象の時間変化画像データとしてMモード画像を入力し、訓練済み機械学習モデル10から呼気時の血管の位置及び幅と吸気時の血管の位置及び幅を取得する。
【0184】
ステップS1007において、超音波診断装置100は、取得した呼気時及び吸気時のIVCの血管径からIVC径の呼吸性変動を算出及び表示する。
【0185】
このようにして、本実施例によると、規格化された時間変化画像データと、呼気時の血管の位置及び幅と吸気時の血管の位置及び幅とから構成される訓練データによって訓練された機械学習モデル10を利用してIVC径自動計測を実行し、推定された呼気時の血管の位置及び幅と吸気時の血管の位置及び幅に基づいて、被検者30から取得した時間変化画像データからIVC径の呼吸性変動を推定することができる。
【0186】
上述した実施例では、IVC径自動計測によって推定された呼気時の血管の位置及び幅と吸気時の血管の位置及び幅からIVC径の呼吸性変動を推定したが、本実施例による機械学習モデル10は、図56に示されるように、IVCの呼気時及び吸気時タイミングと、前壁及び後壁トレースとを検出するよう訓練されてもよい。
【0187】
機械学習モデル10の訓練処理では、例えば、時間変化画像データと、当該時間変化画像データに対応するIVCの呼気時及び吸気時タイミングのラベルデータとが、訓練データとして準備される。訓練用の時間変化画像データは、異なる掃引速度により取得されるため、時間変化画像データとラベルデータとは、上述したように、所定の掃引速度に規格化され、時間方向に拡大及び/又は縮小される。例えば、時間変化画像データとラベルデータとはまず、所定の掃引速度に規格化するため時間方向に縮小される。次に異なる呼吸速度に対応するために、時間方向にランダムな比率で拡大・縮小するデータ拡張を施してもよい。このように拡大及び縮小された時間変化画像データとラベルデータとは、時間方向に所定の幅を有するよう背景画像に重畳される。そして、所定の幅を有する時間変化画像データとラベルデータが訓練処理に入力される。なお、訓練データに対する規格化は、上述したTAPSE/MAPSE計測における拡張期及び収縮期タイミングの検出に関する実施例と同様であり、重複した説明を避けるため、詳細は割愛する。ただし、IVC径は、心臓の拍動に関する計測ではなく、呼吸変動に関する計測であるので、心拍数に応じた規格化は実施されない。
【0188】
次に、訓練済み機械学習モデル10を利用した推論処理では、例えば、推論対象の時間変化画像データが与えられると、推論対象の時間変化画像データは、時間方向に規格化され、時間方向に所定の幅を有するように背景画像に重畳される。このように所定の時間幅を有する規格化された時間変化画像データは、訓練済み機械学習モデル10に入力され、規格化された時間変化画像データにおけるIVCの呼気時及び吸気時タイミングを予測する。その後、前処理と逆の処理が、予測されたIVCの呼気時及び吸気時タイミングに対して実行される。すなわち、IVCの呼気時及び吸気時タイミングから前処理で重畳された背景画像の部分が除外され、その後に時間方向に元の幅に戻される。このようにして取得されたIVCの呼気時及び吸気時タイミングを、推論対象の時間変化画像データに重畳して表示してもよい。なお、推論対象データに対する規格化は、上述したTAPSE/MAPSE計測における拡張期及び収縮期タイミングの検出に関する実施例と同様であり、重複した説明を避けるため、詳細は割愛する。
【0189】
また、本実施例による機械学習モデル10は、例えば、Mモード画像における前壁及び後壁のトレースラインを検出するよう訓練されてもよい。機械学習モデル10の訓練処理では、例えば、時間変化画像データと、当該時間変化画像データに対応する前壁及び後壁のトレースラインのラベルデータとが、訓練データとして準備される。訓練用の時間変化画像データは、異なる掃引速度により取得されるため、時間変化画像データとラベルデータとは、上述したように、所定の掃引速度に規格化され、時間方向に拡大及び/又は縮小される。例えば、時間変化画像データとラベルデータとはまず、所定の掃引速度に規格化するため時間方向に縮小される。このように拡大及び縮小された時間変化画像データとラベルデータとは、時間方向に所定の幅を有するよう背景画像に重畳される。そして、所定の幅を有する時間変化画像データとラベルデータが訓練処理に入力される。なお、訓練データに対する規格化は、上述したTAPSE/MAPSE計測における三尖弁輪部/僧帽弁輪部のトレースラインの検出に関する実施例と同様であり、重複した説明を避けるため、詳細は割愛する。ただし、IVC径は、心臓の拍動に関する計測ではなく、呼吸変動に関する計測であるので、心拍数に応じた規格化は実施されない。
【0190】
次に、訓練済み機械学習モデル10を利用した推論処理では、例えば、推論対象の時間変化画像データが与えられると、推論対象の時間変化画像データは、時間方向に規格化され、時間方向に所定の幅を有するように背景画像に重畳される。このように所定の時間幅を有する規格化された時間変化画像データは、訓練済み機械学習モデル10に入力され、規格化された時間変化画像データにおける前壁及び後壁のトレースラインを予測する。その後、前処理と逆の処理が、予測された前壁及び後壁のトレースラインに対して実行される。すなわち、前壁及び後壁のトレースラインから前処理で重畳された背景画像の部分が除外され、その後に時間方向に元の幅に戻される。このようにして取得された前壁及び後壁のトレースラインを、推論対象の時間変化画像データに重畳して表示してもよい。なお、推論データに対する規格化は、上述したTAPSE/MAPSE計測における三尖弁輪部/僧帽弁輪部のトレースラインの検出に関する実施例と同様であり、重複した説明を避けるため、詳細は割愛する。
【0191】
図57は、本開示の一実施例による超音波診断処理を示すフローチャートである。図57に示されるように、ステップS1101において、超音波診断装置100は、BモードでIVCの長軸像を描出し、Mモードカーソルを計測対象のIVCの位置に合わせる。例えば、超音波診断装置100は、描出されたIVCの長軸像上においてユーザからMモードカーソルの位置を指示される。
【0192】
ステップS1102において、超音波診断装置100は、Mモードに遷移する。
【0193】
ステップS1103において、超音波診断装置100は、IVCのMモード画像を取得して時間変化画像データとしてのMモード画像に対してIVC径自動計測を実行し、呼気時及び吸気時のタイミングと、IVCの前壁及び後壁のトレースラインとを取得する。
【0194】
ステップS1104において、超音波診断装置100は、取得した呼気時及び吸気時のタイミングにおける前壁及び後壁のトレースラインから呼気時及び吸気時のIVC径を取得し、IVC径から呼吸性変動を算出及び表示する。すなわち、取得された呼気時及び吸気時のタイミングにおける前壁と後壁のトレースライン間の距離がIVC径となる。
【0195】
ステップS1105において、超音波診断装置100は、フリーズ状態に遷移したか判定する。フリーズ状態に遷移していない場合(S1105:NO)、超音波診断装置100は、ステップS1103に移行し、上述した処理を繰り返す。他方、フリーズ状態に遷移した場合(S1105:YES)、超音波診断装置100は、ステップS1106に移行する。
【0196】
ステップS1106において、超音波診断装置100は、フリーズ表示されているMモード画像に対してIVC径自動計測を実行し、呼気時及び吸気時のタイミングと、IVCの前壁及び後壁のトレースラインを取得する。すなわち、超音波診断装置100は、訓練済み機械学習モデル10に計測対象の時間変化画像データとしてMモード画像を入力し、訓練済み機械学習モデル10から呼気時及び吸気時のタイミングとIVCの前壁及び後壁のトレースラインとを取得する。
【0197】
ステップS1107において、超音波診断装置100は、取得した呼気時及び吸気時のタイミングにおける前壁及び後壁のトレースラインから呼気時及び吸気時のIVC径を取得し、IVC径から呼吸性変動を算出及び表示する。すなわち、取得された呼気時及び吸気時のタイミングにおける前壁と後壁のトレースライン間の距離がIVC径となる。
【0198】
このようにして、本実施例によると、規格化された時間変化画像データと、呼気時及び吸気時のタイミングと前壁及び後壁のトレースラインとから構成される訓練データによって訓練された機械学習モデル10を利用してIVC径自動計測を実行し、推定された呼気時及び吸気時のタイミングと前壁及び後壁のトレースラインとに基づいて、被検者30から取得した時間変化画像データからIVC径の呼吸性変動を推定することができる。
【0199】
上述した実施例によると、超音波探触子で受信した画像生成用の受信信号に基づく時間変化画像データを時間方向に伸縮することによって規格化された時間変化画像データ及び/又は当該規格化された時間変化画像データに基づき生成された時間変化画像データから構成される訓練用時間変化画像データと、訓練用時間変化画像データに対応する検出対象を含む正解データとのペアを含む訓練データを用いて、機械学習モデルが訓練される。例えば、機械学習モデルは、畳み込みニューラルネットワークなどの何れかのタイプのニューラルネットワークにより実現されてもよい。また、超音波探触子において受信された信号に基づく時間変化画像データは、ドプラ画像、Mモード画像などであってもよく、当該時間変化画像データから規格化された時間変化画像データは、所定の掃引速度に規格化された時間変化画像データであってもよい。また、規格化された時間変化画像データに基づき生成される時間変化画像データは、所定の心拍数に規格化された時間変化画像データであってもよい。
【0200】
また、機械学習モデルによる検出対象は、時間変化画像において時間変化によって影響を受ける特徴に関する情報であってもよい。具体的には、検出対象は、時間変化画像における1つ以上の点の位置に関する情報、幅に関する情報、波形の形状に関する情報、時間タイミングに関する情報、時間区間に関する情報、トレースに関する情報などであってもよい。例えば、超音波診断装置によってドプラ画像が取得された場合、機械学習モデルは、取得したドプラ画像から、
i)VTI(Velocity-Time Integral)計測の対象となるスペクトル波形の時間方向の区間若しくはスペクトル波形の領域、
ii)PSV(Peak Systolic Velocity)及びEDV(End Diastolic Velocity)の位置若しくは時間軸上のタイミング、
iii)血流量計測の対象となるスペクトル波形の時間方向の区間の境界、又は、
iv)E/A計測におけるE波及びA波の血流速度の位置又は時間軸上のタイミング、
を検出対象として検出するよう訓練されうる。
【0201】
また、超音波診断装置によってMモード画像が取得された場合、機械学習モデルは、取得したMモード画像から、
i)TAPSE(Tricuspid Annular Plane Systolic Excursion)計測若しくはMAPSE(Mitral Annular Plane Systolic Excursion)計測における弁輪部の拡張期の位置及び収縮期の位置、時間軸上の拡張期及び収縮期タイミング、若しくは弁輪部のトレース、又は、
ii)MモードIVC(Inferior Vena Cava)径計測における下大静脈の血管径、呼気時及び吸気時のタイミング、若しくは下大静脈の前壁及び後壁のトレース
を検出対象として検出するよう訓練されうる。
【0202】
以上、本開示の実施例について詳述したが、本開示は上述した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0203】
10 機械学習モデル
20 訓練データベース(DB)
30 被検者
40 モデルデータベース(DB)
50 訓練装置
51 前処理部
52 訓練部
100 超音波診断装置
110 超音波制御部
120 前処理部
130 推論部
200 画像処理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
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図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
図46
図47
図48
図49
図50
図51
図52
図53
図54
図55
図56
図57