(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129283
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】ワークの加工方法、放熱用の部品、付加加工装置、および制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B23K 26/34 20140101AFI20240919BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20240919BHJP
B23K 26/70 20140101ALI20240919BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240919BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240919BHJP
B22F 10/25 20210101ALI20240919BHJP
B22F 10/50 20210101ALI20240919BHJP
【FI】
B23K26/34
B23K26/21 Z
B23K26/70
B33Y10/00
B33Y30/00
B22F10/25
B22F10/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038384
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】523091202
【氏名又は名称】柿沼 康弘
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100185719
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 悠樹
(74)【代理人】
【識別番号】100150072
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 賢司
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 康弘
(72)【発明者】
【氏名】小池 綾
(72)【発明者】
【氏名】池田 優梨子
(72)【発明者】
【氏名】塩飽 紀之
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 一央
(72)【発明者】
【氏名】牧 鉄兵
(72)【発明者】
【氏名】廣野 陽子
(72)【発明者】
【氏名】森 貴則
(72)【発明者】
【氏名】小田 陽平
【テーマコード(参考)】
4E168
4K018
【Fターム(参考)】
4E168BA35
4E168BA56
4E168BA81
4E168CB03
4E168FB01
4K018DA18
4K018DA28
4K018DA31
4K018DA35
(57)【要約】
【課題】付加加工によるワークの温度上昇を抑制することが可能な新たな技術を提供する。
【解決手段】ワークの加工方法は、付加加工装置による加工対象のワークに対して放熱用の部品を装着するステップと、部品が装着されたワークに対して粉末材料を供給するとともにレーザ光を照射し、ワークに対する付加加工を行なうステップとを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加加工装置による加工対象のワークに対して放熱用の部品を装着するステップと、
前記部品が装着された前記ワークに対して粉末材料を供給するとともにレーザ光を照射し、前記ワークに対する付加加工を行なうステップとを備える、ワークの加工方法。
【請求項2】
前記加工方法は、さらに、前記付加加工の開始前に保持機構に前記ワークを保持させるステップを備え、
前記保持機構は、前記ワークを保持している状態で前記ワークの一端部と接しており、
前記部品は、前記ワークに装着された状態で前記ワークの他端部と接している、請求項1に記載のワークの加工方法。
【請求項3】
前記部品の熱伝導率は、前記ワークの熱伝導率よりも高い、請求項1または2に記載のワークの加工方法。
【請求項4】
前記付加加工は、前記粉末材料を前記ワークの表面にコーティングするための加工を含む、請求項1または2に記載のワークの加工方法。
【請求項5】
前記部品は、付加加工が行われない前記ワーク上の箇所に装着される、請求項1または2に記載のワークの加工方法。
【請求項6】
前記部品は、内周面を有し、
前記ワークは、外周面を有し、
前記部品の前記内周面は、前記部品が前記ワークに装着された状態で少なくとも一部において前記ワークの前記外周面と接する、請求項1または2に記載のワークの加工方法。
【請求項7】
前記部品は、外周面を有し、
前記ワークは、内周面を有し、
前記部品の前記外周面は、前記部品が前記ワークに装着された状態で少なくとも一部において前記ワークの前記内周面と接する、請求項1または2に記載のワークの加工方法。
【請求項8】
前記加工方法は、さらに、前記付加加工の実行中において冷媒で前記部品を冷却するステップを備える、請求項1または2に記載のワークの加工方法。
【請求項9】
前記加工方法は、さらに、前記付加加工の終了後において前記ワークから前記部品を取り外すステップを備える、請求項1または2に記載のワークの加工方法。
【請求項10】
付加加工装置で用いられる放熱用の部品であって、
前記付加加工装置は、
ワークを保持するための保持機構と、
前記ワークに対して前記粉末材料を供給するとともに前記ワークにレーザ光を照射することで付加加工を行うためのレーザヘッドとを備え、
前記部品は、前記レーザヘッドが前記付加加工を行う前に前記ワークに装着するために用いられる、放熱用の部品。
【請求項11】
付加加工装置であって、
ワークを保持するための保持機構と、
前記ワークに対して前記粉末材料を供給するとともに前記ワークにレーザ光を照射することで付加加工を行うためのレーザヘッドと、
前記付加加工装置を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記部品が前記ワークに装着された状態で前記付加加工を行うように前記レーザヘッドを制御する処理を実行する、付加加工装置。
【請求項12】
付加加工装置の制御プログラムであって、
前記付加加工装置は、
ワークを保持するための保持機構と、
前記ワークに対して前記粉末材料を供給するとともに前記ワークにレーザ光を照射することで付加加工を行うためのレーザヘッドとを備え、
前記制御プログラムは、前記付加加工装置に、前記部品が前記ワークに装着された状態で前記付加加工を行うように前記レーザヘッドを制御するステップを実行させる、制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワークの加工方法、放熱用の部品、付加加工装置、および制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2022-165559号公報(特許文献1)は、レーザ積層造形によるワークの加工方法を開示している。当該加工方法では、温度上昇抑制部がワークに設けられている。温度上昇抑制部は、ワークの一部であり、レーザの照射部分とは異なる箇所に相当する。積層造形の最終工程では、温度上昇抑制部は、ワークから除去される。これにより、温度上昇抑制部は、加工中におけるワークの温度上昇を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、温度上昇抑制部がワークの一部として余分に設けられている。そのため、ワークが無駄に消費される。したがって、付加加工によるワークの温度上昇を抑制することが可能な新たな技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一例では、ワークの加工方法が提供される。当該加工方法は、付加加工装置による加工対象のワークに対して放熱用の部品を装着するステップと、上記部品が装着された上記ワークに対して粉末材料を供給するとともにレーザ光を照射し、上記ワークに対する付加加工を行なうステップとを備える。
【0006】
本開示の一例では、上記加工方法は、さらに、上記付加加工の開始前に保持機構に上記ワークを保持させるステップを備える。上記保持機構は、上記ワークを保持している状態で上記ワークの一端部と接している。上記部品は、上記ワークに装着された状態で上記ワークの他端部と接している。
【0007】
本開示の一例では、上記部品の熱伝導率は、上記ワークの熱伝導率よりも高い。
【0008】
本開示の一例では、上記付加加工は、上記粉末材料を上記ワークの表面にコーティングするための加工を含む。
【0009】
本開示の一例では、上記部品は、付加加工が行われない上記ワーク上の箇所に装着される。
【0010】
本開示の一例では、上記部品は、内周面を有する。上記ワークは、外周面を有する。上記部品の上記内周面は、上記部品が上記ワークに装着された状態で少なくとも一部において上記ワークの上記外周面と接する。
【0011】
本開示の一例では、上記部品は、外周面を有する。上記ワークは、内周面を有する。上記部品の上記外周面は、上記部品が上記ワークに装着された状態で少なくとも一部において上記ワークの上記内周面と接する。
【0012】
本開示の一例では、上記加工方法は、さらに、上記付加加工の実行中において冷媒で上記部品を冷却するステップを備える。
【0013】
本開示の一例では、上記加工方法は、さらに、上記付加加工の終了後において上記ワークから上記部品を取り外すステップを備える。
【0014】
本開示の他の例では、付加加工装置で用いられる放熱用の部品が提供される。当該付加加工装置は、ワークを保持するための保持機構と、上記ワークに対して上記粉末材料を供給するとともに上記ワークにレーザ光を照射することで付加加工を行うためのレーザヘッドとを備える。上記部品は、上記レーザヘッドが上記付加加工を行う前に上記ワークに装着するために用いられる。
【0015】
本開示の他の例では、付加加工装置が提供される。当該付加加工装置は、ワークを保持するための保持機構と、上記ワークに対して上記粉末材料を供給するとともに上記ワークにレーザ光を照射することで付加加工を行うためのレーザヘッドと、上記付加加工装置を制御する制御装置とを備える。上記制御装置は、上記部品が上記ワークに装着された状態で上記付加加工を行うように上記レーザヘッドを制御する処理を実行する。
【0016】
本開示の他の例では、付加加工装置の制御プログラムが提供される。当該付加加工装置は、ワークを保持するための保持機構と、上記ワークに対して上記粉末材料を供給するとともに上記ワークにレーザ光を照射することで付加加工を行うためのレーザヘッドとを備える。上記制御プログラムは、上記付加加工装置に、上記部品が上記ワークに装着された状態で上記付加加工を行うように上記レーザヘッドを制御するステップとを実行させる。
【0017】
本発明の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連して理解される本発明に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】放熱部品を用いた付加加工の工程を時系列に示す図である。
【
図3】付加加工中におけるレーザヘッドの断面図を示す。
【
図4】付加加工装置の駆動機構の一例を示すブロック図である。
【
図5】CNC(Computer Numerical Control)装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図6】付加加工装置による付加加工工程の流れを示すフローチャートである。
【
図9】放熱部品を用いた付加加工の工程を時系列に示す図である。
【
図10】冷却機構とワークWとを側面方向の一方向から表わす図である。
【
図11】
図10に示されるVI-VI線に沿った断面図である。
【
図12】冷却機構を用いた付加加工工程の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明に従う各実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらについての詳細な説明は繰り返さない。なお、以下で説明される各実施の形態および各変形例は、適宜選択的に組み合わされてもよい。
【0020】
<A.付加加工装置100の装置構成>
まず、
図1を参照して、実施の形態に従う付加加工装置100について説明する。
図1は、一例としての付加加工装置100を示す図である。
【0021】
付加加工装置100は、たとえば、ワークの付加加工(AM(Additive manufacturing)加工)と、ワークの除去加工(SM(Subtractive manufacturing)加工)とが可能な加工機である。付加加工装置100が有するSM加工機能は、たとえば、ミーリング機能と、固定工具を用いた旋削機能との少なくとも一方を含む。なお、付加加工装置100は、SM機能を有さない装置であってもよい。
【0022】
付加加工装置100は、機械ベッド111を備える。機械ベッド111上には、旋回テーブル112が設けられている。旋回テーブル112は、回転テーブル113を有する。回転テーブル113は、旋回テーブル112に回転可能に取り付けられている。
【0023】
回転テーブル113上には、保持機構113Aがクランプされる。保持機構113Aは、加工対象のワークWを保持するための固定機構である。一例として、保持機構113Aは、チャックである。
【0024】
付加加工装置100は、たとえば、回転テーブル113上にクランプされた保持機構113Aの回転に関して制御可能な2つの軸線(旋回軸線および回転軸線)を有する。旋回軸線は、機械ベッド111の上面に平行な軸線である。回転軸線は、旋回テーブル112の上面に直交する軸線である。回転テーブル113は、旋回軸線回りおよび回転軸線回りに回転可能に構成される。
【0025】
また、付加加工装置100は、第1スライド機構114を有する。第1スライド機構114は、機械ベッド111の後側の機械コラムに配置される。第1スライド機構114は、当該機械コラムに取り付けられたスライドガイドに沿って移動可能に構成される。
【0026】
また、付加加工装置100は、第2スライド機構115を有する。第2スライド機構115は、第1スライド機構114に取り付けられたスライドガイドに沿って移動可能に構成される。第2スライド機構115用のスライドガイドは、第1スライド機構114用のスライダガイドと直交するように第1スライド機構114に設けられる。これにより、第2スライド機構115は、第1スライド機構114の移動方向と直交する方向に移動可能に構成される。
【0027】
また、付加加工装置100は、除去加工用ヘッド116を有する。除去加工用ヘッド116は、第2スライド機構115に取り付けられたスライドガイドに沿って移動可能に構成される。除去加工用ヘッド116用のスライドガイドは、第1スライド機構114用のスライダガイドと、第1スライド機構114用のスライダガイドとの両方に直交するように第2スライド機構115に設けられる。これにより、除去加工用ヘッド116は、第1スライド機構114の移動方向と第2スライド機構115の移動方向との両方に直交する方向に移動可能に構成される。
【0028】
付加加工装置100は、第1スライド機構114の駆動と、第2スライド機構115の駆動と、除去加工用ヘッド116の駆動とを制御することにより、任意の位置に除去加工用ヘッド116を駆動する。第1スライド機構114および第2スライド機構115は、たとえば、サーボモータなどにより駆動される。
【0029】
また、付加加工装置100は、工具118Aなどの様々なユニットを収容するマガジン118と、自動工具交換装置(ATC:Automatic Tool Changer)119とを有する。工具118Aは、未使用時には、マガジン118に収容されている。自動工具交換装置119は、工具交換指示を受け付けたことに基づいて、装着対象のユニットをマガジン118から引き抜き、当該ユニットを主軸124に装着する。
【0030】
また、付加加工装置100は、DED方式により付加加工を行なうためのレーザヘッド131をさらに有する。レーザヘッド131は、付加加工中のワークWに粉末材料を供給するとともに、ワーク表面にレーザ光を照射する。当該粉末材料は、金属粉末であってもよいし、樹脂粉末であってもよいし、レーザ光によって融解するその他の種類の粉末であってもよい。
【0031】
レーザヘッド131は、ヘッド本体132と、レーザノズル136とを有する。ヘッド本体132には、ケーブルCBを介して粉末材料が供給される。レーザノズル136は、ワークに向けてレーザ光を照射するとともに、ワークにおけるレーザ光の照射領域を定める。レーザヘッド131に供給された粉末材料は、レーザノズル136を通じてワークWに向けて吐出される。
【0032】
レーザヘッド131は、第3スライド機構134に設けられる。第3スライド機構134は、スライドガイド133に設けられる。これにより、第3スライド機構134は、スライドガイド133に沿って移動可能に構成される。レーザヘッド131は、付加加工時において、主軸124の下方に位置するように駆動され、主軸124に装着される。主軸124に装着されたレーザヘッド131は、除去加工用ヘッド116と連動して任意の位置に駆動される。
【0033】
<B.温度上昇の抑制方法>
次に、
図2を参照して、付加加工中におけるワークWの温度上昇を抑制するための方法について説明する。
図2は、放熱部品10を用いた付加加工の工程を時系列に示す図である。
【0034】
図2には、付加加工対象のワークWが示されている。ワークWの種類は、任意である。
図2の例では、円筒シャフトとしてのワークWが示されている。
図2に示される軸AXは、円筒シャフトの中心軸に相当する。
【0035】
ワークWは、たとえば、ワーク部分PA~PCを有する。ワーク部分PBの一端はワーク部分PAに繋がっており、ワーク部分PBの他端はワーク部分PCに繋がっている。
【0036】
ワーク部分PAは、保持機構113Aによって保持される部分である。ワーク部分PAが保持機構113Aに挿入されることで、ワークWは、保持機構113Aに対して固定される。
【0037】
ワーク部分PBは、レーザヘッド131がレーザを照射し、付加加工を行う部分である。ワーク部分PBは、たとえば、円筒シャフトの大径部に対応している。
【0038】
ワーク部分PCは、放熱部品10が装着される部分である。典型的には、ワーク部分PCには、レーザヘッド131によってレーザが照射されない。
【0039】
ステップS1に示されるように、放熱部品10は、付加加工の開始前にワークWに装着される。次に、ステップS2において、付加加工装置100は、ワークWの付加加工を開始する。これにより、付加加工装置100は、ワークWに対して粉末材料を供給するとともにレーザ光211を照射し、放熱部品10が装着された状態でワークWの付加加工を行なう。
【0040】
このように、付加加工装置100は、放熱部品10がワークWに装着された状態でワークWの付加加工を行なう。これにより、放熱部品10がヒートシンクとして機能し、付加加工中におけるワークWの温度上昇が抑制される。結果として、ワークWの強度の低下が抑制される。
【0041】
なお、放熱部品10をワークWに装着する主体は、任意である。一例として、当該主体は、作業者などの人物である。他の例として、当該主体は、搬送機構(図示しない)である。搬送機構としては、たとえば、マニピュレータ(図示しない)と上述の主軸124とが挙げられる。マニピュレータとしては、たとえば、アームロボットと自走式ロボットとが挙げられる。搬送機構は、付加加工装置100の内部に設けられていてもよいし、付加加工装置100の外部に存在していてもよい。
【0042】
好ましくは、放熱部品10は、保持機構113AがワークWを保持しているワーク部分PAとは反対側のワーク部分PCから装着される。その結果、保持機構113Aは、ワークWの一端部であるワーク部分PAと接し、放熱部品10は、ワークWの他端部であるワーク部分PCと接する。このように、保持機構113AによるワークWの保持部分とは反対側から放熱部品10をワークWに装着する構成を採用することで、ワークWに対して放熱部品10を容易に装着することができる。
【0043】
放熱部品10は、たとえば、円筒形状を有する。この場合、放熱部品10の内径は、ワーク部分PCの外径以上である。その結果、放熱部品10の内周面は、放熱部品10がワークWに装着された状態で少なくとも一部においてワークWの外周面と接する。放熱部品10がワークWと接することで、ワークWの熱が放熱部品10に伝わり、ワークWの温度上昇が抑制される。
【0044】
好ましくは、放熱部品10の内径は、ワーク部分PCの外径と等しい。これにより、放熱部品10とワーク部分PCとの接触面積がより大きくなる。その結果、ワークWの熱が放熱部品10にさらに伝わりやすくなり、ワークWの温度上昇がより抑制される。
【0045】
なお、放熱部品10の熱伝導率は、ワークWの熱伝導率よりも高くてもよい。これにより、ワークWの熱が放熱部品10に伝わりやすくなり、ワークWから放熱部品10への放熱効果が向上する。一例として、放熱部品10は、熱伝導率の高い金属で構成される。放熱部品10は、たとえば、銀と、銅と、金と、アルミとの少なくとも1つを含む。
【0046】
また、放熱部品10の熱容量は、ワークWの熱容量よりも大きくてもよい。ここで、熱容量は、質量と比熱との積に等しい。そのため、放熱部品10の質量は、ワークWの質量よりも大きくてもよい。あるいは、放熱部品10の密度は、ワークWの密度よりも大きくてもよい。あるいは、放熱部品10の比熱は、ワークWの比熱よりも大きくてもよい。
【0047】
さらに、放熱部品10の熱抵抗は、ワークWの熱抵抗よりも小さくてもよい。これにより、熱がワークWから放熱部品10に伝わりやすくなり、ワークWから放熱部品10への放熱効果が向上する。
【0048】
なお、上述では、1つの放熱部品10がワークWに装着される例について説明を行ったが、複数の放熱部品10がワークWに装着されてもよい。一例として、第1の放熱部品10がワーク部分PAに装着され、第2の放熱部品10がワーク部分PCに装着されてもよい。他の例として、複数の放熱部品10がワーク部分PCに装着されてもよい。
【0049】
<C.付加加工の態様>
次に、
図3を参照して、付加加工装置100による付加加工の態様について説明する。
図3は、付加加工中におけるレーザヘッド131の断面図を示す。
【0050】
レーザヘッド131は、ワークW上を移動しながらワーク表面にレーザ光211を照射する。その結果、レーザ光211の照射部分が融解し、溶融池MPがワークWの表面上に形成される。並行して、レーザヘッド131は、粉末材料212を溶融池MPに供給する。粉末材料212は、レーザヘッド131から吐出されるガス213によって溶融池MPに導かれる。その結果、粉末材料212は、溶融池MPにおいて融解および液状化する。その後、溶融池MPが固まることで、ワークW上に層SLが形成される。なお、ガス213は、シールドガスとしての機能も有し、積層物であるワークWの酸化を防ぐ。
【0051】
付加加工装置100は、レーザヘッド131を制御することで様々な付加加工を実現することができる。付加加工の種類としては、積層加工とコーティング加工とが挙げられる。積層加工は、ワークWに層SLを積み上げていく加工である。コーティング加工は、ワークWの表面を層SLで覆う加工である。上述の放熱部品10による温度上昇の抑制効果は、ワークWのコーティング加工において特に顕著となる。
【0052】
<D.付加加工装置100の駆動機構>
次に、
図4を参照して、付加加工装置100の駆動機構の一例について説明する。
図4は、付加加工装置100の駆動機構の一例を示すブロック図である。
【0053】
付加加工装置100は、CNC装置100Aと、上述の第1スライド機構114と、上述の第2スライド機構115と、上述の除去加工用ヘッド116と、上述の主軸124と、駆動部140とを含む。
【0054】
CNC装置100Aは、後述の制御プログラム122(
図5参照)など各種プログラムを実行することで駆動部140の動作を制御する。
【0055】
駆動部140は、付加加工装置100内の各種機構を駆動するための機構である。駆動部140の装置構成は、任意である。駆動部140は、単体の駆動ユニットで構成されてもよいし、複数の駆動ユニットで構成されてもよい。
図4の例では、駆動部140は、サーボドライバ141A~141Dと、サーボモータ142A~142Dと、エンコーダ143A~143Dとで構成されている。
【0056】
サーボドライバ141Aは、CNC装置100Aから目標回転数(または目標位置)の入力を逐次的に受け、サーボモータ142Aが目標回転数で回転するようにサーボモータ142Aを制御し、第1スライド機構114を駆動する。
【0057】
より具体的には、サーボドライバ141Aは、エンコーダ143Aのフィードバック信号からサーボモータ142Aの実回転数(または実位置)を算出し、当該実回転数が目標回転数よりも小さい場合にはサーボモータ142Aの回転数を上げ、当該実回転数が目標回転数よりも大きい場合にはサーボモータ142Aの回転数を下げる。このように、サーボドライバ141Aは、サーボモータ142Aの回転数のフィードバックを逐次的に受けながらサーボモータ142Aの回転数を目標回転数に近付ける。これにより、サーボドライバ141Aは、第1スライド機構114を駆動し、主軸124に装着されたユニット(たとえば、放熱部品10など)を搬送する。
【0058】
サーボドライバ141Bは、サーボドライバ141Aと同様のモータ制御により、CNC装置100Aからの制御指令に従って第2スライド機構115を駆動する。
【0059】
サーボドライバ141Cは、サーボドライバ141Aと同様のモータ制御により、CNC装置100Aからの制御指令に従って除去加工用ヘッド116を駆動する。
【0060】
サーボドライバ141Dは、サーボドライバ141Aと同様のモータ制御により、CNC装置100Aからの制御指令に従って、主軸124の回転速度を制御する。
【0061】
付加加工装置100は、さらに、上述の回転テーブル113(
図1参照)を旋回軸線周りに駆動するための第1駆動機構(図示しない)を含む。当該旋回軸線は、機械ベッド111(
図1参照)の上面に平行な軸線である。第1駆動機構は、たとえば、サーボドライバ、サーボモータ、およびエンコーダなどで構成される。当該サーボドライバは、サーボドライバ141Aと同様のモータ制御により、CNC装置100Aからの制御指令に従って、回転テーブル113の旋回軸周りの回転角度を制御する。
【0062】
付加加工装置100は、さらに、上述の回転テーブル113(
図1参照)を回転軸線周りに駆動するための第2駆動機構(図示しない)を含む。当該回転軸線は、旋回テーブル112の上面に直交する軸線である。第2駆動機構は、たとえば、サーボドライバ、サーボモータ、およびエンコーダなどで構成される。当該サーボドライバは、サーボドライバ141Aと同様のモータ制御により、CNC装置100Aからの制御指令に従って、回転テーブル113の回転軸周りの回転角度を制御する。
【0063】
<E.CNC装置100Aのハードウェア構成>
次に、
図5を参照して、
図4に示されるCNC装置100Aのハードウェア構成について説明する。
図5は、CNC装置100Aのハードウェア構成の一例を示す図である。
【0064】
CNC装置100Aは、制御回路101と、ROM(Read Only Memory)102と、RAM(Random Access Memory)103と、通信インターフェイス104と、フィールドバスコントローラ105と、補助記憶装置120とを含む。これらのコンポーネントは、内部バス109に接続される。
【0065】
制御回路101は、たとえば、少なくとも1つの集積回路によって構成される。集積回路は、たとえば、少なくとも1つのCPU(Central Processing Unit)、少なくとも1つのGPU(Graphics Processing Unit)、少なくとも1つのASIC(Application Specific Integrated Circuit)、少なくとも1つのFPGA(Field Programmable Gate Array)、またはそれらの組み合わせなどによって構成され得る。
【0066】
制御回路101は、制御プログラム122などの各種プログラムを実行することでCNC装置100Aの動作を制御する。制御プログラム122は、ワークの付加加工を実現するためのプログラムである。制御回路101は、制御プログラム122の実行命令を受け付けたことに基づいて、ROM102からRAM103に制御プログラム122を読み出す。RAM103は、ワーキングメモリとして機能し、制御プログラム122の実行に必要な各種データを一時的に格納する。
【0067】
通信インターフェイス104は、各種装置と通信を実現するためのインターフェイスである。付加加工装置100は、通信インターフェイス104を介してネットワークNWに接続される。ネットワークNWに接続される装置としては、たとえば、放熱部品10を搬送するための搬送機構などが挙げられる。
【0068】
フィールドバスコントローラ105は、フィールドバスに接続される各種ユニットとの通信を実現するための通信ユニットである。当該フィールドバスに接続されるユニットの一例として、ワークの付加加工を実現するための各種駆動ユニット(たとえば、上述のサーボドライバ141A~141Dなど)が挙げられる。
【0069】
補助記憶装置120は、たとえば、ハードディスクやフラッシュメモリなどの記憶媒体である。補助記憶装置120は、制御プログラム122などを格納する。制御プログラム122の格納場所は、補助記憶装置120に限定されず、制御回路101の記憶領域(たとえば、キャッシュメモリ)、ROM102、RAM103、外部機器(たとえば、サーバー)などに格納されていてもよい。
【0070】
<F.制御フロー>
次に、
図6を参照して、付加加工装置100の制御フローについて説明する。
図6は、付加加工装置100による付加加工工程の流れを示すフローチャートである。
【0071】
図6に示される処理は、付加加工装置100の制御回路101で実行されてもよいし、CNC装置100Aで実行されてもよいし、その他の装置で実行されてもよい。
【0072】
ステップS110において、制御回路101は、付加加工の実行指示を受け付けたか否かを判断する。制御回路101は、付加加工の実行指示を受け付けたと判断した場合(ステップS110においてYES)、制御をステップS112に切り替える。そうでない場合には(ステップS110においてNO)、制御回路101は、制御をステップS110に戻す。
【0073】
ステップS112において、制御回路101は、放熱部品10をワークWに装着するための処理を実行する。一例として、当該処理は、放熱部品10を把持させるように搬送機構を制御する処理と、把持している放熱部品10をワークWに装着するように搬送機構を制御する処理とを含む。
【0074】
他の例として、当該処理は、放熱部品10をワークWに装着することを作業者に指示するための報知処理を含む。当該報知処理は、たとえば、付加加工装置100に設けられているディスプレイにメッセージを表示することにより実現される。あるいは、当該報知処理は、付加加工装置100に設けられているスピーカーから音声を出力することにより実現される。
【0075】
好ましくは、放熱部品10は、付加加工が行われないワークW上の部分(たとえば、上述のワーク部分PB)に装着される。これにより、ワークWの付加加工を行いながらワークWの温度上昇を抑制することができる。
【0076】
ステップS114において、制御回路101は、ワークWに対する付加加工を開始する。
【0077】
ステップS120において、制御回路101は、付加加工が終了したか否かを判断する。一例として、制御回路101は、付加加工プログラムの実行が終了したことに基づいて、ワークの付加加工が終了したと判断する。制御回路101は、付加加工が終了したと判断した場合(ステップS120においてYES)、制御をステップS122に切り替える。そうでない場合には(ステップS120においてNO)、制御回路101は、制御をステップS120に戻す。
【0078】
ステップS122において、制御回路101は、ワークWから放熱部品10を取り外すための処理を実行する。一例として、当該処理は、ワークWに装着されている放熱部品10を把持させるように搬送機構を制御する処理と、把持している放熱部品10をワークWから取り外すように搬送機構を制御する処理とを含む。
【0079】
他の例として、当該処理は、ワークWから放熱部品10を取り外すことを作業者に報知する処理を含む。当該報知処理は、たとえば、付加加工装置100に設けられているディスプレイにメッセージを表示することにより実現される。あるいは、当該報知処理は、付加加工装置100に設けられているスピーカーから音声を出力することにより実現される。
【0080】
ステップS122の処理は、付加加工が終了した直後に実行されてもよいし、付加加工が終了してから予め定められた時間が経過したタイミングで実行されてもよい。付加加工が終了してからしばらくの間、放熱部品10をワークWに装着しておくことで、ワークWの温度をより早く下げることができる。
【0081】
また、ステップS112の処理とステップS122の処理とは、コーティング加工のときに実行され、コーティング加工以外の付加加工においては実行されなくてもよい。
【0082】
<G.実験1>
次に、
図7を参照して、発明者が行なった実験(以下、「実験1」ともいう。)について説明する。
図7は、実験1の結果をグラフで示す図である。本実験では、発明者は、上述の放熱部品10による放熱効果を確認した。
【0083】
図7に示されるグラフの横軸は、時間を表わす。時間の単位は、秒「S」で表わされている。
【0084】
図7に示されるグラフの縦軸は、ワーク部分PB(
図2参照)における平均温度を表わす。温度の単位は、度「℃」で表わされている。温度の測定には、サーモカメラが用いられた。
【0085】
また、
図7に示される時間「T0」は、付加加工を開始したタイミングに相当する。
図7に示される時間「T1」は、付加加工を終了したタイミングに相当する。
【0086】
発明者は、2つの放熱部品10(以下、「第1,第2の放熱部品10」ともいう。)を用いて本実験を行なった。第2の放熱部品10は、軸AX(
図2参照)方向において第1の放熱部品10よりも長い。
【0087】
図7に示される実験結果R0は、放熱部品10をワークWに装着せずに付加加工を行なった場合におけるワークWの温度変化を示す。
【0088】
図7に示される実験結果R1は、第1の放熱部品10をワークWに装着した状態で付加加工を行なった場合におけるワークWの温度変化を示す。
【0089】
図7に示される実験結果R2は、第2の放熱部品10をワークWに装着した状態で付加加工を行なった場合におけるワークWの温度変化を示す。
【0090】
図7に示されるように、実験結果R1,R2が示す温度上昇率は、付加加工中において、実験結果R0が示す温度上昇率よりも低かった。
【0091】
また、実験結果R1,R2が示す温度低下率は、付加加工の終了後において、実験結果R0が示す温度低下率よりも高かった。
【0092】
<H.実験2>
次に、
図8を参照して、発明者が行なった別の実験(以下、「実験2」ともいう。)について説明する。
図8は、実験2の結果をグラフで示す図である。本実験では、発明者は、付加加工後におけるワークWの硬度を確認した。
【0093】
図8に示されるグラフの横軸は、ワーク部分PB(
図2参照)の大径部の表面から内側に進んだ距離を表わす。距離の単位は、ミリメートル「mm」で表わされている。
【0094】
図8に示されるグラフの縦軸は、ワークWの硬度を表わす。硬度の単位は、ビッカース硬さ「HV」で表わされている。
【0095】
発明者は、2つの放熱部品10(すなわち、第1,第2の放熱部品10)を用いて本実験を行なった。上述のように、第2の放熱部品10は、軸AX(
図2参照)方向において第1の放熱部品10よりも長い。
【0096】
図8に示される実験結果R5は、放熱部品10を装着せずに付加加工が行なわれたワークWについて大径部表面から内側に向かう硬度の変化を示す。
【0097】
図8に示される実験結果R6は、第1の放熱部品10を装着した状態で付加加工が行なわれたワークWについて大径部表面から内側に向かう硬度の変化を示す。
【0098】
図8に示される実験結果R7は、第2の放熱部品10を装着した状態で付加加工が行なわれたワークWについて大径部表面から内側に向かう硬度の変化を示す。
【0099】
図8に示されるように、実験結果R6,R7が示す硬度は、ワーク表面付近においては、実験結果R5が示す硬度よりも高くなった。
【0100】
<I.変形例1>
次に、
図9を参照して、変形例に従う放熱部品10Aについて説明する。
図9は、
図9は、放熱部品10Aを用いた付加加工の工程を時系列に示す図である。
【0101】
上述の
図2では、円筒形状の放熱部品10について説明を行ったが、放熱部品10の形状は、他の形状であってもよい。
【0102】
図9には、円筒形状の放熱部品10の代わりに、円柱形状の放熱部品10AがワークWに装着されている例が示されている。
【0103】
より具体的には、ステップS1Aにおいて、放熱部品10AがワークWに装着される。このとき、放熱部品10Aは、保持機構113AがワークWを保持しているワーク部分PAとは反対側のワーク部分PCから装着される。
【0104】
放熱部品10Aの外径は、ワーク部分PCの内径以下である。その結果、放熱部品10Aの外周面は、放熱部品10AがワークWに装着された状態で少なくとも一部においてワークWの内周面と接する。放熱部品10AがワークWと接することで、ワークWから放熱部品10Aに熱が伝わり、ワークWの温度上昇が抑制される。
【0105】
好ましくは、放熱部品10Aの外径は、ワーク部分PCの内径と等しい。これにより、放熱部品10Aとワーク部分PCとの接触面積がより大きくなる。その結果、ワークWの熱が放熱部品10Aにさらに伝わりやすくなり、ワークWの温度上昇がより抑制される。
【0106】
次に、ステップS2Aにおいて、付加加工装置100は、ワークWの付加加工を開始する。これにより、付加加工装置100は、ワークWに対して粉末材料を供給するとともにレーザ光211を照射し、放熱部品10Aが装着された状態でワークWの付加加工を行なう。
【0107】
<J.変形例2>
【0108】
(J1.冷却機構20)
次に、
図10および
図11を参照して、ワークWの放熱方法に関して変形例を説明する。本変形例に従う付加加工装置100は、冷却機構20を用いてワークWの放熱をより促進する。
【0109】
図10は、冷却機構20とワークWとを側面方向の一方向から表わす図である。
図11は、
図10に示されるVI-VI線に沿った断面図である。
【0110】
上述では、放熱部品10がワークWに装着されることで付加加工中におけるワークWの温度上昇が抑制されていた。これに対して、本変形例に従う付加加工装置100は、ワークWの付加加工の開始前において冷却機構20を放熱部品10に装着する。これにより、付加加工装置100は、放熱部品10による放熱効果を向上する。
【0111】
図11に示されるように、冷却機構20は、筐体22と、連結機構24とを含む。筐体22は、連結機構24を介して放熱部品10に装着可能に構成される。連結機構24は、たとえば、ベアリングやOリングなどで構成される。
【0112】
冷却機構20が放熱部品10に装着されることで、筐体22の内部には空間が形成される。すなわち、当該空間は、放熱部品10と筐体22とで形成される。当該空間は、冷媒の流路26として機能する。冷媒は、たとえば、水などを含む液体である。あるいは、冷媒は、ガスなどの気体であってもよい。あるいは、冷媒は、ドライアイスなどの固体であってもよい。
【0113】
また、筐体22には、流路26と連通している貫通孔H1,H2が形成されている。貫通孔H1,H2は、たとえば、軸AXを介して互いに対向する位置に形成される。貫通孔H1,H2は、冷媒の流入口として機能する。
図11の例では、貫通孔H1は冷媒の流入口として示されており、貫通孔H2は冷媒の流出口として示されている。
【0114】
また、貫通孔H1は、管などを介して冷却装置(図示しない)に繋げられている。同様に、貫通孔H2は、管などを介して当該冷却装置に繋げられている。
【0115】
冷媒は、貫通孔H1から流路26に送られ、貫通孔H2から流出する。この過程で、放熱部品10は冷却される。貫通孔H2から流出した冷媒は、冷却装置に送られ、冷やされる。その後、冷やされた冷媒は、貫通孔H1を通じて流路26に再び送られる。
【0116】
付加加工装置100は、付加加工の実行中において冷媒を流路26に流す。これにより、冷媒は、放熱部品10を冷却する。その結果、放熱部品10によるワークWの放熱効果が向上する。
【0117】
(J2.制御フロー)
次に、
図12を参照して、冷却機構20を用いたワークWの冷却方法の流れについて説明する。
図12は、冷却機構20を用いた付加加工工程の流れを示すフローチャートである。
【0118】
図12に示される処理は、付加加工装置100の制御回路101で実行されてもよいし、CNC装置100Aで実行されてもよいし、その他の装置で実行されてもよい。
【0119】
図12に示されるフローチャートは、ステップS113A,S113B,S121A,S121Bをさらに含む点で上述の
図6に示されるフローチャートとは異なる。ステップS113A,S113B,S121A,S121B以外の処理については
図6で説明した通りであるので、それらの説明については繰り返さない。
【0120】
ステップS113Aにおいて、制御回路101は、冷却機構20を放熱部品10に装着するための処理を実行する。一例として、当該処理は、冷却機構20を把持させるように搬送機構を制御する処理と、把持している冷却機構20を放熱部品10に装着するように搬送機構を制御する処理とを含む。
【0121】
他の例として、当該処理は、冷却機構20を放熱部品10に装着することを作業者に指示するための報知処理を含む。当該報知処理は、たとえば、付加加工装置100に設けられているディスプレイにメッセージを表示することにより実現される。あるいは、当該報知処理は、付加加工装置100に設けられているスピーカーから音声を出力することにより実現される。
【0122】
ステップS113Bにおいて、制御回路101は、冷却機構20への冷媒の供給を開始する。
【0123】
ステップS121Aにおいて、制御回路101は、冷却機構20への冷媒の供給を停止する。ステップS121Aの処理は、付加加工が終了した直後に実行されてもよいし、付加加工が終了してから予め定められた時間が経過したタイミングで実行されてもよい。付加加工が終了してからしばらくの間、冷媒が供給されることで、ワークWの温度をより早く下げることができる。
【0124】
ステップS121Bにおいて、制御回路101は、放熱部品10から冷却機構20を取り外すための処理を実行する。一例として、当該処理は、放熱部品10に装着されている冷却機構20を把持させるように搬送機構を制御する処理と、把持している冷却機構20を放熱部品10から取り外すように搬送機構を制御する処理とを含む。
【0125】
他の例として、当該処理は、放熱部品10から冷却機構20を取り外すことを作業者に報知する処理を含む。当該報知処理は、たとえば、付加加工装置100に設けられているディスプレイにメッセージを表示することにより実現される。あるいは、当該報知処理は、付加加工装置100に設けられているスピーカーから音声を出力することにより実現される。
【0126】
なお、
図12の例では、ステップS113Bの処理が付加加工の開始前に実行されているが、ステップS113Bの処理は、付加加工の実行中に開始されてもよいし、付加加工の開始後に実行されてもよい。
【0127】
(J3.実験3)
次に、
図13を参照して、上述の放熱部品10Aに関して発明者が行なった実験(以下、「実験3」ともいう。)について説明する。
図13は、実験3の結果をグラフで示す図である。本実験では、発明者は、上述の放熱部品10Aによる放熱効果を確認した。
【0128】
図13に示されるグラフの横軸は、時間を表わす。時間の単位は、秒「S」で表わされている。
【0129】
図13に示されるグラフの縦軸は、ワーク部分PB(
図9参照)における平均温度を表わす。温度の単位は、度「℃」で表わされている。温度の測定には、サーモカメラが用いられた。
【0130】
また、
図13に示される時間「T0」は、付加加工を開始したタイミングに相当する。
図13に示される時間「T1」は、付加加工を終了したタイミングに相当する。
【0131】
図13に示される実験結果R10は、放熱部品10Aを使用せずに付加加工を行なった場合におけるワークWの温度変化を示す。
【0132】
図13に示される実験結果R11は、放熱部品10AをワークWに装着した状態で付加加工を行なった場合におけるワークWの温度変化を示す。
【0133】
図13に示されるように、実験結果R11が示す温度上昇率は、付加加工中において、実験結果R10が示す温度上昇率よりも低かった。
【0134】
(J4.実験4)
次に、
図14を参照して、上述の放熱部品10Aに関して発明者が行なった別の実験(以下、「実験4」ともいう。)について説明する。
図14は、実験4の結果をグラフで示す図である。本実験では、発明者は、付加加工後におけるワークWの硬度を確認した。
【0135】
図14に示されるグラフの横軸は、ワーク部分PB(
図9参照)の大径部表面から内側に進んだ距離を表わす。距離の単位は、ミリメートル「mm」で表わされている。
【0136】
図14に示されるグラフの縦軸は、ワークWの硬度を表わす。硬度の単位は、ビッカース硬さ「HV」で表わされている。
【0137】
図14に示される実験結果R15は、放熱部品10Aを使用せずに付加加工を行なった場合におけるワークWについて大径部表面から内側に向かう硬度の変化を示す。
【0138】
図14に示される実験結果R16は、放熱部品10AをワークWに装着した状態で付加加工を行なった場合におけるワークWについて大径部表面から内側に向かう硬度の変化を示す。
【0139】
図14に示されるように、実験結果R16が示す硬度は、ワーク表面付近においては、実験結果R15が示す硬度よりも高くなった。
【0140】
(J5.実験5)
次に、
図15を参照して、上述の冷却機構20に関して発明者が行なった実験(以下、「実験5」ともいう。)について説明する。
図15は、実験5の結果をグラフで示す図である。本実験では、発明者は、上述の冷却機構20による冷却効果を確認した。
【0141】
図15に示されるグラフの横軸は、時間を表わす。時間の単位は、秒「S」で表わされている。
【0142】
図15に示されるグラフの縦軸は、ワーク部分PB(
図9参照)における平均温度を表わす。温度の単位は、度「℃」で表わされている。温度の測定には、サーモカメラが用いられた。
【0143】
また、
図15に示される時間「T0」は、付加加工を開始したタイミングに相当する。
図15に示される時間「T2」は、付加加工を終了したタイミングに相当する。
【0144】
図15に示される実験結果R21は、放熱部品10AをワークWに装着した状態で、かつ冷却機構20を使用せずに付加加工を行なった場合におけるワークWの温度変化を示す。
【0145】
図15に示される実験結果R22は、放熱部品10AをワークWに装着した状態で、かつ冷却機構20を放熱部品10Aに装着した状態で付加加工を行なった場合におけるワークWの温度変化を示す。
【0146】
図15に示されるように、実験結果R22が示す温度上昇率は、付加加工中において、実験結果R21が示す温度上昇率よりも低かった。
【0147】
また、実験結果R22が示す温度低下率は、付加加工の終了後において、実験結果R21が示す温度低下率よりも高かった。
【0148】
(J6.実験6)
次に、
図16を参照して、上述の冷却機構20に関して発明者が行なった別の実験(以下、「実験6」ともいう。)について説明する。
図16は、実験6の結果をグラフで示す図である。本実験では、発明者は、付加加工後におけるワークWの硬度を確認した。
【0149】
図16に示されるグラフの横軸は、ワーク部分PB(
図9参照)の大径部表面から内側に進んだ距離を表わす。距離の単位は、ミリメートル「mm」で表わされている。
【0150】
図16に示されるグラフの縦軸は、ワークWの硬度を表わす。硬度の単位は、ビッカース硬さ「HV」で表わされている。
【0151】
図16に示される実験結果R25は、放熱部品10AをワークWに装着した状態で、かつ冷却機構20を使用せずに付加加工を行なった場合におけるワークWについて大径部表面から内側に向かう硬度の変化を示す。
【0152】
図16に示される実験結果R26は、放熱部品10をワークWに装着した状態で、かつ冷却機構20を放熱部品10に装着した状態で付加加工を行なった場合におけるワークWについて大径部表面から内側に向かう硬度の変化を示す。
【0153】
図16に示されるように、実験結果R26が示す硬度は、ワーク表面付近において、実験結果R25が示す硬度よりも高くなった。
【0154】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0155】
10 放熱部品、10A 放熱部品、20 冷却機構、22 筐体、24 連結機構、26 流路、100 付加加工装置、100A CNC装置、101 制御回路、102 ROM、103 RAM、104 通信インターフェイス、105 フィールドバスコントローラ、109 内部バス、111 機械ベッド、112 旋回テーブル、113 回転テーブル、113A 保持機構、114 第1スライド機構、115 第2スライド機構、116 除去加工用ヘッド、118 マガジン、118A 工具、119 自動工具交換装置、120 補助記憶装置、122 制御プログラム、124 主軸、131 レーザヘッド、132 ヘッド本体、133 スライドガイド、134 第3スライド機構、136 レーザノズル、140 駆動部、141A サーボドライバ、141B サーボドライバ、141C サーボドライバ、141D サーボドライバ、142A サーボモータ、142B サーボモータ、142C サーボモータ、142D サーボモータ、143A エンコーダ、143B エンコーダ、143C エンコーダ、143D エンコーダ、211 レーザ光、212 粉末材料、213 ガス。