(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129288
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】計測装置、及び、計測システム
(51)【国際特許分類】
G01N 23/201 20180101AFI20240919BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
G01N23/201
H01L21/66 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038393
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 優輝
(72)【発明者】
【氏名】濱口 晶
(72)【発明者】
【氏名】橋本 隆希
(72)【発明者】
【氏名】野島 和弘
(72)【発明者】
【氏名】文田 香織
【テーマコード(参考)】
2G001
4M106
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA26
2G001BA29
2G001BA30
2G001CA01
2G001DA03
2G001DA09
2G001FA02
2G001FA14
2G001GA08
2G001GA13
2G001HA13
2G001JA04
2G001JA08
2G001JA09
2G001KA04
2G001KA05
2G001LA11
2G001MA05
2G001PA01
2G001PA11
2G001SA02
4M106BA20
4M106CA39
4M106CA48
4M106DH25
4M106DH34
4M106DH55
(57)【要約】
【課題】被検体に形成された凹部の3次元形状を、非破壊で精度よく計測することができる、計測装置、及び、計測システムを提供することを目的とする。
【解決手段】計測装置は、X線照射部21と、被検体7から生成される散乱X線を検出するX線検出部23と、散乱X線を光電変換して得られる回折像を解析して被検体7の3次元形状を推定する解析部24とを備える。被検体7は、ON積層膜72上に形成されたエッチングマスク膜73の開口部からON積層膜72に孔74が形成されている。解析部24は、被検体7に対するX線の照射角度を変えながら取得した複数の回折像と、被検体7を予め計測して得られた形状パラメータとに基づき被検体7の3次元形状を推定する。形状パラメータは、エッチングマスク膜73の膜厚Tm、ネック径CDn、ボトム径CDbを含む。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体にX線を照射するX線照射部と、
前記X線の照射により前記被検体から発せられる散乱X線を検出するX線検出部と、
前記散乱X線を光電変換して得られる回折像を解析して前記被検体における前記X線が照射される計測領域の3次元形状を推定する解析部と、
を備える計測装置において、
前記被検体の前記計測領域には、第1の膜と、前記第1の膜と異なる材料で形成された第2の膜が積層されており、かつ、前記領域の一部に前記第2の膜を貫通する凹部が形成されており、
前記解析部は、前記被検体に対する前記X線の照射角度を変えながら取得した複数の前記回折像と、前記被検体を予め計測して得られた形状データとに基づき、前記凹部の3次元形状を推定し、
前記形状データは、前記第2の膜の膜厚、前記第2の膜内における前記凹部の最小寸法、および、前記第1の膜と前記第2の膜との界面における前記孔凹部の寸法、を含むことを特徴とする、計測装置。
【請求項2】
前記形状データは、前記凹部の中心プロファイルをさらに含む、請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記形状データは、前記凹部の傾き度合いをさらに含む、請求項1に記載の計測装置。
【請求項4】
前記X線照射部は、前記被検体の表面側に前記X線を照射し、
前記X線検出部は、前記被検体の裏面側で前記散乱X線を検出する、請求項1に記載の計測装置。
【請求項5】
被検体にX線を照射するX線照射部と、
前記X線の照射により前記被検体から発せられる散乱X線を検出するX線検出部と、
前記散乱X線を光電変換して得られる回折像を解析して前記被検体における前記X線が照射される計測領域の3次元形状を推定する解析部と、
を備える計測装置と、
前記被検体の複数位置を予め計測して得られた形状データから、前記被検体における前記形状データの面内分布を推定する情報処理装置と、を備える計測システムであって、
前記被検体の前記計測領域には、第1の膜と、前記第1の膜と異なる材料で形成された第2の膜が積層されており、かつ、前記領域の一部に前記第2の膜を貫通する凹部が形成されており、
前記形状データは、前記第2の膜の膜厚、前記第2の膜内における前記凹部の最小寸法、および、前記第1の膜と前記第2の膜との界面における前記凹部の寸法、の少なくとも1つを含み、
前記解析部は、前記被検体に対する前記X線の照射角度を変えながら取得した複数の前記回折像と、前記情報処理装置から入力された前記形状データとに基づき、前記凹部の3次元形状を推定し、
前記情報処理装置は、前記面内分布から前記計測領域の位置における前記形状データを抽出して前記計測装置に入力することを特徴とする、計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、計測装置、及び、計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板上の成膜部位に形成された凹部(深孔・深溝)の深さや側壁の3次元形状を計測する装置として、透過型小角X線散乱(Transmission Small Angle X-ray Scattering、以下、T-SAXSと示す)技術を用いた計測装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本実施形態は、被検体に形成された凹部の3次元形状を、非破壊で精度よく計測することができる、計測装置、及び、計測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態の計測装置は、被検体にX線を照射するX線照射部と、前記X線の照射により前記被検体から発せられる散乱X線を検出するX線検出部と、前記散乱X線を光電変換して得られる回折像を解析して前記被検体における前記X線が照射される計測領域の3次元形状を推定する解析部とを備える。
【0006】
前記被検体の前記計測領域には、第1の膜と、前記第1の膜と異なる材料で形成された第2の膜が積層されており、かつ、前記領域の一部に前記第2の膜を貫通する凹部が形成されている。
【0007】
前記解析部は、前記被検体に対する前記X線の照射角度を変えながら取得した複数の前記回折像と、前記被検体を予め計測して得られた形状データとに基づき、前記凹部の3次元形状を推定する。
【0008】
前記形状データは、前記第2の膜の膜厚、前記第2の膜内における前記凹部の最小寸法、および、前記第1の膜と前記第2の膜との界面における前記凹部の寸法を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態にかかる計測装置を有する計測システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】被検体の構造の一例を説明する断面図である。
【
図3】T-SAXS計測装置の構成の一例を説明する概略図である。
【
図4】T-SAXS計測装置の構成の一例を説明する概略図である。
【
図5】T-SAXS計測装置の構成の一例を説明する概略図である。
【
図6】X線の照射角度と回折像との関係を説明する図である。
【
図7】T-SAXS計測装置の構成の一例を説明するブロック図である。
【
図8】第1の多波長光計測装置の測定原理の一例を説明する図である。
【
図9】電子線計測装置の測定原理の一例を説明する図である。
【
図10】第2の多波長光計測装置の測定原理の一例を説明する図である。
【
図11】第1実施形態の計測システムにおけるデータの流れの一例を説明する図である。
【
図12】第1実施形態の計測方法の一例を説明するフローチャートである。
【
図13】比較例の方法で計測した形状プロファイルの一例を説明する図である。
【
図14】実施形態の方法で計測した形状プロファイルの一例を説明する図である。
【
図15】3次元構造のNANDメモリのメモリセルアレイを有する半導体記憶装置の一部領域の断面図である。
【
図16】メモリホールを形成する工程について説明する概略断面図である。
【
図17】メモリホールの形成手順の一例を説明するフローチャートである。
【
図18】第1実施形態にかかる計測装置を有する計測システムの別の構成例を示すブロック図である。
【
図19】
図18に示す計測システムにおけるデータの流れの一例を説明する図である。
【
図20】第1実施形態にかかる計測装置を有する計測システムの別の構成例を示すブロック図である。
【
図21】
図20に示す計測システムにおけるデータの流れの一例を説明する図である。
【
図22】半導体ウエハ上に配置されたメモリチップのレイアウトの一例を説明する平面図である。
【
図23】第2実施形態にかかる計測装置を有する計測システムの構成例を示すブロック図である。
【
図24】形状パラメータの計測対象領域の一例を説明する平面図である。
【
図25】3次元形状の計測領域の位置の一例を説明する平面図である。
【
図26】第2実施形態の計測システムにおけるデータの流れの一例を説明する図である。
【
図27】第2実施形態の計測方法の一例を説明するフローチャートである。
【
図28】第2実施形態の計測方法の一例を説明するフローチャートである。
【
図29】第2実施形態の計測方法の一例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態にかかる計測装置を有する計測システムの構成例を示すブロック図である。本実施形態の計測システム1は、T-SAXS計測装置2と、形状パラメータ計測ユニット3と、ホストコンピュータ4と、データベース5とを備える。計測システム1は、T―SAXS計測装置2と形状パラメータ計測ユニット3との間で被検体を搬送する搬送装置6を備えてもよい。実施形態の計測システム1は、被検体の表面に形成された周期パターンの3次元形状を計測するために用いられる。より具体的には、実施形態の計測システム1は、被検体に形成された凹部(孔や溝など)の深さや膜の厚さを含む、形状プロファイルを取得するために用いられる。
【0011】
図2は、被検体の構造の一例を説明する断面図である。
図2に示すように、被検体は、第1の膜としてのON積層膜72と第2の膜としてのエッチングマスク膜73とが、半導体基板71の表面に積層されている。ON積層膜72は、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とが交互に堆積されている膜である。
図2において、実線は、シリコン窒化膜に対応し、実線に隣接した空白がシリコン酸化膜に対応する。エッチングマスク膜73は、例えば、アモルファスカーボン膜である。被検体の一部領域には、エッチングマスク膜73の表面からON積層膜72の所定の深さまで、孔74が形成されている。なお、
図2において、エッチングマスク膜73の膜厚をTm、エッチングマスク膜73内における孔74の最小径(以下、ネック径と示す)をCDn、エッチングマスク膜73とON積層膜72との界面における孔74の径(以下、ボトム径と示す)をCDbと示している。
【0012】
T-SAXS計測装置2は、被検体の表面に形成された周期パターンの3次元形状を、透過X線を用いて計測する装置である。被検体へのX線の入射角度を変えて取得した複数枚の回折像(SAXS像群)を用いて、スポットサイズ(例えば、50~1000μm角程度)内に形成された周期パターンの平均的な3次元形状を計測することができる。
【0013】
図3~
図5は、T-SAXS計測装置の構成の一例を説明する概略図である。
図3に示すように、T-SAXS計測装置2は、X線源211から出射されたX線を、X線収束機構213によりビームスポットを収束させ、計測ステージ22に保持された被検体(半導体ウエハ)7の表面に照射する。
【0014】
図4に示すように、被検体7に照射されたX線は、被検体7の表面に形成されたパターンによって散乱される。散乱されたX線は、被検体7の裏面側に配置された検出器232において検出され、被検体7の特性を示す信号(回折像)に変換される。
【0015】
図5に示すように、被検体7は、被検体表面と平行な直交する2方向(x方向、y方向)のいずれか一方、または両方を回動軸として回動可能に設置されている。なお、被検体7が
図2に示す構造である場合、半導体基板71の表面を被検体表面とする。設定された回動軸を中心に、被検体7を回動させた状態でX線を照射することで、被検体7に対するX線の照射角度θiを調整することができる。T-SAXS計測装置2は、照射角度θiを少しずつ変化させながら複数の回折像(回折像群)を取得する。
図6は、X線の照射角度と回折像との関係を説明する図である。
図6には照射角度が異なる3つの回折像を示している。
図6において、各回折像の右側に照射角度θiを示している。取得した回折像群を、様々な3次元形状パターンに対応するX線回折光の強度分布をシミュレーションにより算出した複数の回折像群と比較する。複数の回折像群の中から一致度の高い回折像群を抽出し、この回折像群に対応する3次元形状パターンを、X線が照射された領域における、被検体7の表面に形成された3次元形状であると推定する。なお、X線の照射方向は、鉛直方向と直交する方向であってもよいし、鉛直方向であってもよい。被検体7を回動させない状態において、被検体7の表面を鉛直方向に対して平行に設置する場合、X線の照射方向は鉛直方向と直交する方向となる。被検体7を回動させない状態において、被検体7の表面を鉛直方向に対して垂直に設置する場合、X線の照射方向は鉛直方向となる。
【0016】
図7は、T-SAXS計測装置の構成の一例を説明する概略ブロック図である。T-SAXS計測装置2は、X線照射部21と、計測ステージ22と、X線検出部23と、解析部24とを備える。また、T-SAXS計測装置2は、搬送部25と、位置計測部26と、動作制御部27も備える。なお、
図7において、太線は、被検体7の搬送路を示している。また、点線は、照射光及び回折光の光路を示している。また、実線は、データや情報(電気信号)を伝達する信号伝達路を示している。
【0017】
X線照射部21は、X線源211と、シャッター212と、X線収束機構213とから主に構成される。X線源211は、所定の波長及びエネルギーを有するX線を生成する部位である。X線源211は、例えば、固体または液体ターゲットへの粒子照射によりX線を励起させるように構成された電子ビーム源として構成される。シャッター212は、計測ステージ22とX線源211との間に設置される。シャッター212は開閉動作が可能であり、動作制御部27によって制御される。シャッター212が開状態の場合、X線源211から出射されたX線が計測ステージ22に照射される。シャッター212が閉状態の場合、X線の光路が遮られるため、X線は計測ステージ22に照射されない。
【0018】
X線収束機構213は、第1スリット213aと、ミラー213bと、第2スリット213cとから主に構成される。X線収束機構213は、シャッター212と計測ステージ22との間に設置される。第1スリット213aは、出射X線の角度広がりを制限するために用いられる。ミラー213bは、出射X線を収束させ、ビームサイズを抑制する。第2スリット213cは、計測ステージ22に近接して配置され、出射X線のビームサイズを更に絞り込む。すなわち、X線収束機構213は、出射X線の散乱線が被検体7に照射されるのを防止し、また、被検体7におけるX線の照射範囲を絞り込むために設けられている。X線収束機構213により絞り込まれたX線は、計測ステージ22に設置された被検体7の計測領域に照射される。
【0019】
計測ステージ22は、被検体7を、x方向、及び/または、y方向を回動軸として回動可能に支持する部材である。計測ステージ22は、例えば、筒状または棒状部材で構成される支持軸と、中空のリング状部材であるチャックとから構成される。チャックは、支持軸の一端に回動可能に係合されている。
【0020】
また、計測ステージ22は、図示しないモータなどの駆動手段により、x方向、及び/または、y方向に移動すると共に、x方向及びy方向と直交する方向(z方向)に移動可能になされている。x方向、及び/または、y方向に計測ステージ22を移動させることで、被検体7におけるX線の照射領域を移動させることができる。また、z方向に計測ステージ22を移動させることで、X線検出部23により検出される被検体7の回折像のフォーカスを変更することができる。
【0021】
X線検出部23は、真空管路231と、検出器232とから主に構成される。真空管路231は、内部が真空状態になされた柱状部材であり、計測ステージ22と検出器232との間に配置される。計測ステージ22に保持された被検体7から発生した回折X線は、真空管路231の一端面から真空管路231内に入射され、真空管路231内を通過して、真空管路231の他端面から検出器232に向けて出射される。真空管路231は、環境(空気攪乱など)による外乱により回折X線が影響を受け、回折像にノイズが重畳されることを防ぐために設けられる。
【0022】
検出器232は、被検体7から発生した回折X線を受光し、回折像を生成する。検出器232は、例えば、2次元のアレイ状に配置された複数個の半導体検出素子(固体撮像素子等)で構成される。半導体検出素子としては、例えば、CCD(電荷結合素子)や、CMOSイメージセンサが用いられる。被検体7の計測領域において照射X線により生成された回折X線は、検出器232の投影領域に配置された半導体検出素子により光電変換され、撮像信号(回折像)として出力される。
【0023】
解析部24は、検出器232から出力された回折像群(被検体7の回動角を変えて取得した複数の回折像)と、予め様々な3次元形状パターンに対応するX線回折光の強度分布をシミュレーションにより算出した回折像群とを比較する。複数の回折像群の中から一致度の高い回折像群を抽出し、この回折像群に対応する3次元形状パターンを、被検体7の表面に形成された3次元形状であると推定する。また、ホストコンピュータ4を介して形状パラメータ計測ユニット3で計測された形状パラメータを取得し、該形状パラメータも用いて3次元形状を推定することが可能になされている。解析部24は、シミュレーションにより算出した複数の回折像群や、形状パラメータ計測ユニット3が計測した形状パラメータを格納可能なデータ格納部241を備えている。
【0024】
搬送部25は、ロードポート251と、搬送ユニット252と、プリアライナ253を備える。ロードポート251は、T-SAXS計測装置2内に被検体7を挿入するために設けられた入口部である。搬送ユニット252は、T-SAXS計測装置2内の各部位に被検体7を自動搬送する部位である。プリアライナ253は、被検体7を計測ステージ22に設置するにあたり、被検体7に設けられた基準位置(例えば、ノッチ、オリフラ、アライメントマークなど)を、所望の位置に合わせる。
【0025】
T-SAXS計測装置2の計測ステージ22に被検体7をセットする場合、搬送部25は以下のように動作する。ロードポート251に被検体7が収納された容器が設置されると、搬送ユニット252は、容器から被検体7をピックアップし、プリアライナ253へ移動させる。プリアライナ253において、被検体7のx方向及びy方向の位置合わせ、及び、xy平面内において被検体7中心を軸とする回転方向の位置合わせが行われた後、搬送ユニット252が再び被検体7をピックアップし、計測ステージ22に設置する。また、回折像群の取得が終了し、被検体7をT-SAXS計測装置2から取り出す際には、搬送ユニット252が計測ステージ22から被検体7をピックアップし、ロードポート251に設置された容器内に移動させる。上述した搬送部25の動作は、動作制御部27によって制御される。
【0026】
位置計測部26は、アライメントカメラ261と、被検体傾き計測部262とを有する。アライメントカメラ261は、設定された計測位置(X線を照射したい位置)とX線の照射位置(X線が照射される位置)とのずれ量(xy平面におけるずれ量)を検出する。検出したずれ量は、動作制御部27に出力される。被検体傾き計測部262は、計測ステージ22に設置された被検体7の計測位置における表面の角度を計測する。
【0027】
動作制御部27は、T-SAXS計測装置2の各部位の動作を制御する。動作制御部27は、例えば、X線照射部21やX線検出部23に対して、X線の照射や検出に用いられる各種パラメータを指示する。また、例えば、計測ステージ22をxy平面内で移動させて、設定された計測位置にX線が照射されるように、計測ステージ22の位置を制御する。さらに、計測ステージ22の回動角度や回動方向を指示したりする。また、搬送部25の動作を指示したりする。
【0028】
図1に戻り、形状パラメータ計測ユニット3は、被検体7の表面に形成された3次元形状について、形状パラメータを計測する。具体的には、T-SAXS計測装置2で計測困難な(計測値と実測値のずれが大きい)形状パラメータが計測される。形状パラメータ計測ユニット3で計測される形状パラメータには、
図2に示す被検体7の構造におけるエッチングマスク膜73の膜厚Tm、エッチングマスク膜73内における孔74の最小径CDn、エッチングマスク膜73とON積層膜72との界面における孔74の径CDbの3つの形状パラメータが少なくとも含まれる。形状パラメータ計測ユニット3は、計測対象となる形状パラメータについて、T-SAXS計測装置2よりも精度よく計測することができる計測装置を具備する。
【0029】
例えば、形状パラメータ計測ユニット3は、膜厚Tmを計測する膜厚計測部3Aとして、赤外線を用いた第1の多波長光計測装置を具備している。また、ネック径CDnを計測するネック径計測部3Bとして、電子線計測装置を具備している。さらに、ボトム径CDbを計測するボトム径計測部3Cとして、赤外線を用いた第2の多波長光計測装置を具備している。
【0030】
第1の多波長光計測装置は、OCD(Optical Critical Dimension)手法を用いた計測装置であり、被検体7に対して光を所定の入射角で照射し、回折光の分光特性を取得する。照射する光は、例えば、波長~20μm程度の中赤外領域の多波長光である。
【0031】
図8は、第1の多波長光計測装置の測定原理の一例を説明する図である。
図8は、第1の多波長光計測装置31の一例として、赤外線エリプソメトリー方式を用いた計測装置について示している。
図8に示すように、多波長光源311から出射された赤外光(例えば、波長~20μm程度の波長帯の光)を、ビームスプリッタ312により2方向に分離する。分離された2つの光束のうち、一方の光束(第1の光束)はミラー313によって反射される。他方の光束(第2の光束)はミラー314によって反射される。反射された2つの光束は、ビームスプリッタ312に戻り光軸が同一となり、互いに干渉して所定の波長の照射光に合成される。ミラー313はビームスプリッタ312からの距離が可変になされており、距離を変化させることで、第2の光束の位相と第1の光束の位相の位相差が変化する。これにより、第1の光束と第2の光束が干渉して合成される光の波長を調整することができる。波長が調整された照射光は、被検体7に斜入射される。被検体7からの反射光は、検出器315において、被検体7の特性を示す信号(回折光強度スペクトル)に変換される。ミラー313とビームスプリッタ312の距離を変えながら、被検体7に照射する照射光の波長を変化させ、異なる波長の回折光強度スペクトルを時分割測定する。
【0032】
一方、EMA(Effective Medium Approximation)法を用いたシミュレーションにより、様々な膜構造および3次元形状パターンに対応する回折光強度スペクトルを算出し、分光特性ライブラリを作成しておく。なお、EMA法では、被検体7における膜の積層構造を近似した簡易的なモデルに基づき、分光特性ライブラリが作成される。回折光の分光特性を、分光特性ライブラリと比較して、一致度の高いスペクトルを抽出する。抽出されたスペクトルに対応する3次元形状パターン及び膜構造を、照射光のスポットサイズ内に形成された周期パターンの3次元形状及び膜構造と推定し、最上層の膜の膜厚を、膜厚Tmとして出力する。
【0033】
エッチングマスク膜73を構成するアモルファスカーボン膜と、ON積層膜72を構成するシリコン酸化膜やシリコン窒化膜との電子密度差は小さい。T-SAXS計測装置2を用いる場合、エッチングマスク膜73とON積層膜72との界面におけるX線散乱が弱く、電子密度差が小さい膜を個々に識別するのが困難である。これに対し、第1の多波長光計測装置31は、X線よりも波長が長い中赤外光を照射するので、電子密度差が小さい複数の膜(例えば、シリコン基板とシリコン酸化膜や、アモルファスカーボン膜とシリコン酸化膜など)を個々に識別することができる。従って、エッチングマスク膜73の膜厚Tmを、T-SAXS計測装置2よりも精度よく計測することができる。
【0034】
電子線計測装置は、電子線を試料に当てて被検体7の表面を観察する装置である。例えば、測長SEM(CD-SEM:Critical Dimension-Scanning Electron Microscope)である。
図9は、電子線計測装置の測定原理の一例を説明する図である。
図9に示すように、電子銃321から発せられた電子線は、加速された後、被検体7の表面に電子スポットとして集束される。被検体7の表面から放出される低角度方向の反射電子(BSE:Back Scattered Electron)は、環状の検出器322に入射される。検出器322は反射電子を検出し、反射電子の量を光信号に変換して出力する。図示しない走査コイルなどにより、被検体7上の照射位置を移動させながら、照射位置ごとに反射電子の量を検出する(電子線走査)。
【0035】
反射電子の量を、それぞれの照射位置における明るさとして示したのがBSE像である。反射電子の発生量は被検体7表面の凹凸構造で変化するため、BSE像には被検体7の表面形態が映し出される。BSE像において、孔の直径を横切る線上のラインプロファイル(明るさの変化)を抽出する。ラインプロファイルに所定の演算処理を施してネック径CDnを算出し、出力する。
【0036】
エッチングマスク膜73において、孔74の径が最小となるネック部分ではX線が透過しづらい。このため、被検体7からのX線散乱が弱く、十分な回折光強度を得ることが難しい。故に、T-SAXS計測装置2では、ネック部分が閉塞されていると誤検出される場合があった。これに対し、に示す電子線計測装置32は、被検体7の表面の凹凸形状に敏感な反射電子を計測し、BSE像からネック径CDnを算出している。従って、ネック径CDnを、T-SAXS計測装置2よりも精度よく計測することができる。
【0037】
第2の多波長光計測装置は、OCD手法を用いた計測装置であり、被検体7に対して光を所定の入射角で照射し、回折光の分光特性を取得する。照射する光は、例えば、波長~11μm程度の中赤外領域の多波長光である。
図10は、第2の多波長光計測装置の測定原理の一例を説明する図である。
【0038】
図10に示すように、第2の多波長光計測装置33は、多波長光源331から出射された多波長光(例えば、白色光)を、ポラライザ(偏向子)332、コンペンセータ(補償子)333により偏向状態を調整し、被検体7の表面に斜入射させる。被検体7に照射された多波長光は、被検体7の表面に形成されたパターンの膜構造によって、波長ごとに偏向状態や反射強度が変化される。被検体7から反射した回折光は、アナライザ(検光子)334により偏向状態が調整された後、プリズム335によって波長分解される。すなわち、プリズム335は、透過する回折光を波長によって分光する。分光された回折光は、検出器336において、光量に応じた信号(回折光強度スペクトル)に変換される。
【0039】
一方、RCWA(Rigorous Couple-Wave Analysis)法を用いたシミュレーションにより様々な3次元形状パターン及び膜構造に対応する回折光強度スペクトルを算出し、分光特性ライブラリを作成しておく。取得した回折光強度スペクトルを、この分光特性ライブラリと比較し、一致度の高いスペクトルを抽出する。抽出されたスペクトルに対応する3次元形状パターン及び膜構造を、照射光のスポットサイズ内に形成された周期パターンの3次元形状及び膜構造と推定し、最上層の膜とその直下の膜との界面における径を、ボトム径CDbとして出力する。
【0040】
第2の多波長光計測装置33は、中赤外光を照射するので、電子密度差が小さい複数の膜(例えば、シリコン基板とシリコン酸化膜や、アモルファスカーボン膜とシリコン酸化膜など)を個々に識別することができる。故に、界面の位置が精度よく計測できる。また、第2の多波長光計測装置33は、RCWA法により作成した分光特性ライブラリを用いており、EMA法により作成した簡易的な分光特性ライブラリを用いる場合よりも、精度よく3次元形状を推定できる。従って、T-SAXS計測装置2や、第1の多波長光計測装置よりもボトム径CDbを精度よく計測することができる。
【0041】
なお、形状パラメータ計測ユニット3において、膜厚Tmや、ネック径CDnや、ボトム径CDbを計測する装置は、上述の装置に限定されない。例えば、膜厚計測部3Aとして、レーザー超音波計測装置を用いてもよい。レーザー超音波計測装置は、例えば、以下のようにして膜厚Tmを計測する。まず、被検体7の表面にレーザービーム(励起レーザー)を照射し、被検体7の表面近傍を瞬間的に熱膨張させる。すると、熱膨張によって、被検体7の表面近傍に超音波が発生する。超音波は、被検体7内部に向かって伝搬され、膜の界面で反射する。反射した超音波が被検体7表面に到達すると、被検体7表面が振動する。この超音波の反射による被検体7表面の振動を検知し、励起レーザー照射開始から振動検知までの時間と、計測対象の膜中における超音波の伝搬速度音速とを用いて、膜厚Tmを算出することができる。
【0042】
ホストコンピュータ4は、中央演算処理装置(CPU)とメモリとを備えている。ホストコンピュータ4は、形状パラメータ計測ユニット3から出力される形状データを、T-SAXS計測装置2へ入力する。形状パラメータ計測ユニット3から複数の形状パラメータが出力される場合、ホストコンピュータ4は、ユーザなどにより指定された形状パラメータのデータ(形状データ)を抽出してT-SAXS計測装置2へ入力することも可能である。
【0043】
データベース5は、形状パラメータ計測ユニット3からホストコンピュータ4に入力されたデータを格納したり、T-SAXS計測装置2へ入力したデータを格納したり、T-SAXS計測装置2で計測された3次元形状を格納したりする。また、T-SAXS計測装置2へ入力したデータと、該データを用いて推定した3次元形状とを関連付けて格納することも可能である。
【0044】
次に、第1実施形態の計測システムによる3次元形状の計測方法について、
図11、12を用いて説明する。
図11は、第1実施形態の計測システムにおけるデータの流れの一例を説明する図である。
図11に示すように、被検体7の計測領域の位置座標は、T-SAXS計測装置2において設定され、ホストコンピュータ4を介して形状パラメータ計測ユニット3に入力される。なお、計測領域の位置座標は、ホストコンピュータ4において設定され、T-SAXS計測装置2と形状パラメータ計測ユニット3とに入力される場合もある。
【0045】
膜厚Tmは、形状パラメータ計測ユニット3の第1の多波長光計測装置31からホストコンピュータ4に出力される。ネック径CDnは、形状パラメータ計測ユニット3の電子線計測装置32からホストコンピュータ4に出力される。ボトム径CDbは、形状パラメータ計測ユニット3の第2の多波長光計測装置33からホストコンピュータ4に出力される。コンピュータ4は、膜厚Tm、ネック径CDn、及び、ボトム径CDbを、T-SAXS計測装置2に出力する。
【0046】
被検体7の計測領域の形状プロファイルは、T-SAXS計測装置2からホストコンピュータ4へ出力される。形状プロファイルは、ホストコンピュータ4の図示しない表示装置に表示されたり、データベース5に出力されて格納されたりする。
【0047】
図12は、第1実施形態の計測方法の一例を説明するフローチャートである。
図12において、長方形は手順を示しており、平行四辺形はデータを示している。長方形から平行四辺形へ向かう矢印は、該長方形の示す手順を実行した場合に、該平行四辺形の示すデータが生成(取得)されることを示している。また、平行四辺形から長方形へ向かう矢印は、該平行四辺形の示すデータが該長方形の示す手順で使用されることを示している。
【0048】
最初に、形状パラメータ計測ユニット3において、以下のS11からS16の一連の手順を実行し、形状パラメータを取得する。まず、被検体7の計測領域において、第1の多波長光計測装置31を用いて回折光強度スペクトルを取得する(S11)。S11で取得した回折光強度スペクトルを解析し、被検体7の表面に形成されたエッチングマスク膜73の膜厚Tmを計測する(S12)。次に、被検体7の計測領域において、電子線計測装置32を用いてBSE像を取得する(S13)。S13で取得したBSE像を解析し、エッチングマスク膜73のネック径CDnを計測する(S14)。続いて、被検体7の計測領域において、第2の多波長光計測装置33を用いて回折光強度スペクトルを取得する(S15)。S14で取得した回折光強度スペクトルを解析し、エッチングマスク膜73のボトム径CDbを計測する(S16)。
【0049】
続いて、T-SAXS計測装置2において、計測ステージ22の回動角度を変えながら計測し、被検体7の計測領域について複数の回折像(SAXS像群)を取得する(S17)。S17で取得したSAXS像群を解析し、被検体7の計測領域の3次元形状を推定して形状プロファイルを取得する(S18)。S18におけるSAXS像群の解析において、解析部24は、形状パラメータ計測ユニット3で取得した各種形状パラメータ(S12で取得した膜厚Tm、S14で取得したネック径CDn、S16で取得したボトム径CDb)を解析パラメータとしてセットし、3次元形状を解析する。
【0050】
図13は、比較例の方法で計測した形状プロファイルの一例を説明する図である。比較例の方法とは、T-SAXS計測装置2のみで被検体7の3次元形状を計測する方法である。すなわち、T-SAXS計測装置2におけるSAXS像群の解析時には、形状パラメータ計測ユニット3で取得した各種形状パラメータを用いずに、形状プロファイルを推定する。
図14は、実施形態の方法で計測した形状プロファイルの一例を説明する図である。なお、
図13、14は、横軸をホール半径、縦軸を深さとして形状プロファイルを示している。
【0051】
図13において、一点鎖線は、比較例の方法で計測した形状プロファイルを示しており、実線は、測長値(断面SEMによる計測で得られた形状プロファイル)を示している。
図13に示すように、比較例の方法で計測した形状プロファイルは、孔74の深さ(エッチングマスク膜73の膜厚TmとON積層膜72における孔74の深さの和)は、測長値と同等である。しかし、比較例の方法で計測されたエッチングマスク膜73の膜厚Tmは測長値に対して小さく、比較例の形状プロファイルと測長値とは一致の度合いが小さい。
【0052】
図14において、二点鎖線は、実施形態の方法で計測した形状プロファイルを示しており、実線は、測長値(断面SEMによる計測で得られた形状プロファイル)を示している。
図14に示すように、実施形態の方法で計測した形状プロファイルは、比較例の方法で計測した形状プロファイルよりも、測長値との一致の度合いが高い。特に、実施形態の形状プロファイルにおける膜厚Tm、ネック径CDn、ボトム径CDbは、実測値とほぼ等しい。
【0053】
このように、実施形態の計測装置によれば、T-SAXS計測装置2において計測が困難である形状パラメータ(特に、エッチングマスク膜73の膜厚Tm、ネック径CDn、ボトム径CDb)を、形状パラメータ計測ユニット3で計測する。T-SAXS計測装置2は、形状パラメータ計測ユニット3で計測された形状パラメータを用いてSAXS像群を解析する。これにより、より精度の高い形状プロファイルを生成することができる。すなわち、被検体7に形成された凹部の3次元形状を、非破壊で精度よく計測することができる。
【0054】
なお、
図12においては、膜厚Tmの計測(S11、S12)と、ネック系CDnの計測(S13、S14)と、ボトム径CDbの計測(S15、S16)を逐次的に行っているが、形状パラメータを計測する順序はこれに限定されない。例えば、膜厚Tmの計測に先立って、ネック径CDnを計測してもよい。また、これらの形状パラメータの計測を並列的に行ってもよい。すなわち、S13はS12の終了を待たずに開始してもよいし、S15はS14の終了を待たずに開始してもよい。
【0055】
以上に説明した実施形態の計測システム1は、例えば、3次元構造のメモリセルアレイを有する半導体記憶装置のメモリホールを形成するエッチング工程において用いられる。ここで、3次元構造のメモリセルアレイを有する半導体記憶装置について、
図15を用いて説明する。
【0056】
図15は、3次元構造のNANDメモリのメモリセルアレイを有する半導体記憶装置の一部領域の断面図である。例えば、半導体記憶装置を製造するための半導体ウエハが、被検体7として機能する。
図15には、メモリセルアレイの一部領域を図示している。以下の説明では、半導体基板71表面と平行な平面にあって、ビット線BLの延伸する方向をD1方向とする。また、半導体基板71表面と平行かつD1方向と直交する方向をD2方向とする。また、半導体基板71表面と直交する方向をD3方向とする。すなわち、D3方向はz方向と一致する。
【0057】
図15に示すように、p型ウェル領域(P-well)上に複数のNANDストリングNSが形成されている。すなわち、p型ウェル領域上には、セレクトゲート線SGSとして機能する複数の配線層633、ワード線WLiとして機能する複数の配線層632、およびセレクトゲート線SGDとして機能する複数の配線層631が積層されている。なお、
図15においては、ワード線WLiとして機能する配線層632が8層積層された構造を示しているが、半導体記憶装置のメモリセルアレイにおいては、48層、64層、96層など更に多層の配線層632が積層されていてもよい。
【0058】
そして、これらの配線層633、632、631を貫通してp型ウェル領域に達するメモリホール634が形成されている。メモリホール634の側面には、ブロック絶縁膜635、電荷蓄積膜636、およびトンネル絶縁膜637が順次形成され、更にメモリホール634内に半導体柱638が埋め込まれている。半導体柱638は、例えばポリシリコンからなり、NANDストリングNSに含まれるメモリセルトランジスタMTi並びに選択トランジスタST1及びST2の動作時にチャネルが形成される領域として機能する。
【0059】
各NANDストリングNSにおいて、p型ウェル領域上に選択トランジスタST2、複数のメモリセルトランジスタMTi、及び選択トランジスタST1が形成されている。半導体柱638よりも上側には、ビット線BLとして機能する配線層が形成される。半導体柱638の上端には、半導体柱638とビット線BLとを接続するコンタクトプラグ639が形成されている。
【0060】
さらに、p型ウェル領域の表面内には、n+型不純物拡散層が形成されている。n+型不純物拡散層上にはコンタクトプラグ640が形成され、コンタクトプラグ640上には、ソース線SLとして機能する配線層が形成される。
【0061】
以上に示した構成が、
図15の紙面の奥行き方向(D2方向)に複数配列されており、奥行き方向に一列に並ぶ複数のNANDストリングの集合によって、1つのストリングユニットSUが形成される。
【0062】
ビット線BLやソース線SLなどの金属材料で形成される配線層は、NANDストリングNSを形成後、これより上層に形成される。通常、金属材料で形成される配線層は、絶縁膜を挟んで複数層形成される。
図15の例では、2層の配線層ML1、ML2が設けられている場合を示している。ビット線BLやソース線SLは、これらの配線層ML1、ML2のうちの1つ以上の層に形成される。例えば、
図15では、下から一層目の配線層ML1にソース線SLが形成されており、下から二層目の配線層ML2にビット線BLが形成されている場合を示している。
【0063】
次に、
図15に示すような構造を有する半導体記憶装置における、メモリホール634の形成方法について、
図16を用いて説明する。
図16は、メモリホールを形成する工程について説明する概略断面図である。メモリホール634は、例えば、複数の工程を経て形成される。
図16には、メモリホール634を形成するための複数の工程における断面図を、時間的な順序に従って、左から右に並べて示している。
【0064】
まず、最初の工程(工程1)において、半導体基板71上に、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とが交互に堆積され、半導体基板71表面の全面にON積層膜72が形成される。
図16において、実線は、シリコン窒化膜に対応し、実線に隣接した空白がシリコン酸化膜に対応する。ON積層膜72におけるシリコン窒化膜は、後の工程で導電体膜(例えば、タングステン膜)に置換され、配線層631、配線層632、及び、配線層633となる。ON積層膜72におけるシリコン酸化膜は、上述の配線層631、632、633間の絶縁膜となる。
【0065】
続く工程(工程2)において、ON積層膜72の表面に、エッチングマスク膜73が堆積される。エッチングマスク膜73は、例えば、アモルファスカーボン膜などが用いられる。そして、次の工程(工程3)において、メモリホール634を形成する領域に位置するエッチングマスク膜73が除去され、エッチングマスク膜73に開口部が形成される。
【0066】
続く工程(工程4~工程7)において、エッチングマスク膜73をマスクとして用いるドライエッチングにより、エッチングマスク膜73の開口部の下部に形成されたON積層膜72が除去される。メモリホール634は、例えば直径が100nm程度で深さが数μmと高アスペクト比の孔である。従って、メモリホール634を形成する過程において、適正なエッチング条件が変化し得る。そこで、メモリホール634を形成する過程において、複数段階でエッチング条件の変更が行われる。例えば、予め定められた各段階が終了した時点では、エッチングが一旦中断され、孔の加工状態(エッチングマスク膜73の残膜厚、ON積層膜72のエッチング深さ、及び、断面形状など)が計測される。そして、計測された加工状態に応じて、エッチング条件を調整して、次の段階のエッチングを行う。
図16においては、ON積層膜72に浅くエッチングを施した時点における断面を工程4として示している。また、ON積層膜72の膜厚の半分に満たない程度にエッチングを施した時点における断面を工程5として示している。さらに、ON積層膜72の膜厚の半分より少し深い位置までエッチングを施した時点における断面を工程6として示している。なお、メモリホール634形成のためのエッチングにおいて、加工状態の計測とエッチング条件の調整をするための「段階」がさらに多く定められていてもよい。各段階が終了する都度、加工状態の計測が行われ、次の段階のエッチング条件の調整にフィードバックされる。また、加工状態の計測結果によっては、次の段階のエッチング条件が変更されないこともあり得る。
【0067】
図16においては、工程6より後の段階の終了時点における断面を工程7として示している。工程7において、エッチングマスク膜73の開口部の下部に形成されたON積層膜72が全て除去され、メモリホール634の形成が完了する。なお、
図16においては、ON積層膜72のエッチング深さをThと示している。
【0068】
実施形態の計測システム1は、メモリホール634形成時における加工状態の計測に適用することができる。
図17を用いて、実施形態の計測システム1を加工状態の計測に適用した場合における、メモリホール634の形成手順を説明する。
図17は、メモリホールの形成手順の一例を説明するフローチャートである。
【0069】
まず、半導体基板71上に、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とが交互に堆積され、ON積層膜72が形成される(S1)。続いて、ON積層膜72の表面に、ハードマスク材料としてのアモルファスカーボンが堆積され、エッチングマスク膜73が成膜される(S2)。次に、メモリホール634を形成する領域のエッチングマスク膜73が除去され、エッチングマスク膜73に開口部(メモリホールパターン)が形成される(S3)。
【0070】
続いて、ON積層膜72のドライエッチング(異方性エッチング)が行われる(S4)。上述のように、ON積層膜72は膜厚が厚く、かつ、メモリホール634の径は小さいため、エッチングマスク膜73の開口部の下部にメモリホール634として形成されるべき孔の高アスペクト比は大きい。従って、エッチングは複数の段階に分けて行われる。エッチング中は、エッチングの終了を判断するために、開口部の底部に半導体基板71が露出したか否かの検知(終点検知)が行われる(S5)。半導体基板71が検知された場合(S5、YES)、エッチングによって形成された孔が、ON積層膜72を貫通したとみなし、エッチングを終了する。以上により、メモリホール634の形成が完了する。
【0071】
一方、一段階目のエッチングが終了した時点で、終点検知において半導体基板71が検知されない場合(S5、NO)、エッチングが一時停止され、孔の加工形状(エッチングマスク膜73の残膜厚、ON積層膜72のエッチング深さ、及び、断面形状など)が実施形態の計測システム1によって計測される(S6)。S6は、メモリホール634形成途中の半導体ウエハを被検体7として、
図12のフローチャートに示す一連の手順により実行される。
図12に示す手順を実行することにより、計測時点において被検体7に形成されているメモリホール634(孔)の3次元形状が、形状プロファイルとして出力される。
【0072】
メモリホール634のようにアスペクト比の大きな孔を形成する場合、長時間にわたりエッチングが行われる。エッチング中においては、エッチング対象膜であるON積層膜72に比べてエッチングレートは小さいものの、エッチングマスク膜73も少しずつ削られる。エッチングマスク膜73が全て削られてしまうと、被検体7の上面にON積層膜72が露出する。被検体7の上面にON積層膜72が露出した状態でエッチングが継続されると、開口部底部だけでなく、ON積層膜72の表面もエッチングされてしまうため、後の工程で形成すべき配線層が形成できなくなり、不良品となる。
【0073】
また、エッチング中においては、削り取られたエッチングマスク膜73の残渣などが、エッチングマスク膜73の開口部側壁に付着する。開口部には、付着物によって孔の径が小さくなったり閉塞したりする、所謂ネッキングが生じる。ネッキングが生じると、エッチングレートが低下したり、孔が垂直でなく斜めに加工されたりする。エッチングレートの低下は生産性の低下を引き起こす。また、メモリホール634が斜めに形成されると、隣接するメモリホール634の距離が近くなったり、場合によっては隣接するメモリホール634同士が接続されたりする可能性があり、動作不良を引き起こす。このように、メモリホール634のようなアスペクト比の大きな孔を形成する際には、加工した孔の3次元形状と共に、エッチングマスク膜73の残膜厚Tmや、ネック径CDnに応じてエッチング条件を管理することが有効となる。従って、S6における加工形状の計測においては、膜厚Tmやネック径CDnの精度のよい計測が望まれる。
【0074】
続くS7においては、S6で計測された形状プロファイルに基づき、次段階のエッチングのパラメータが必要に応じて調整される。そして、S4に戻り、ON積層膜72の次段階のエッチングが行われる。S4からS7の一連の手順は、S5において終点が検出されるまで繰り返し実行される。
【0075】
このように、実施形態の計測装置によれば、エッチングにより被検体に形成した孔の3次元形状をT-SAXS計測装置を用いて計測する際に、T-SAXS計測装置での計測が困難な形状パラメータを、形状パラメータ計測ユニットで予め計測する。形状パラメータ計測ユニットは、該形状パラメータを精度よく計測可能な計測装置を有する。T-SAXS計測装置は、形状パラメータ計測ユニットで計測された形状パラメータを用いて、SAXS像群を解析する。これにより、孔の3次元形状を精度よく計測することができる。特に、形状パラメータ計測ユニットにおいて、エッチングマスク膜の残膜厚、エッチングマスク膜における孔のネック径、および、エッチングマスク膜と加工対象膜(ON積層膜)との界面における孔の径(ボトム径)、の各形状パラメータを精度よく計測し、これらをT-SAXS計測装置に入力することで、孔の3次元形状の計測精度をより一層向上させることができる。
【0076】
また、上述のように半導体記憶装置の製造におけるエッチング工程(特に、メモリホールなどアスペクト比の大きい孔を形成するエッチング工程)の検査(加工形状の計測)に適用することで、エッチング条件を適正化しながら孔の加工を進めることができるので、孔の加工不良を未然に防ぐことができる。
【0077】
なお、形状パラメータ計測ユニット3で計測し、T-SAXS計測装置2に入力する形状パラメータは、上述の3つのパラメータに限定されない。例えば、上述の3つのパラメータに加え、中心プロファイルを形状パラメータ計測ユニット3で計測し、T-SAXS計測装置2に入力してもよい。中心プロファイルとは、xy平面に平行な面で切断したときの孔の中心位置を、z方向にプロットして得られる形状プロファイルである。
【0078】
図18は、第1実施形態にかかる計測装置を有する計測システムの別の構成例を示すブロック図である。また、
図19は、
図18に示す計測システムにおけるデータの流れの一例を説明する図である。
図18は、形状パラメータ計測ユニット3において、膜厚Tmと、ネック径CDnと、ボトム径CDbと、中心プロファイルPcの4つの形状パラメータを測定し、T-SAXS計測装置2に出力する計測システム1を示している。
図18に示すように、形状パラメータ計測ユニット3は、膜厚計測部3A、ネック径計測部3B、ボトム径計測部3Cに加えて、中心プロファイルPcを計測する中心プロファイル計測部3Dを有する。その他の構成は、
図1に示す計測システム1と同様である。ボトム径計測部3Cとして用いる第2の多波長光計測装置33は、ボトム径CDbだけでなく、中心プロファイルPcも精度よく計測することができる。このような場合、第2の多波長光計測装置33は、ボトム径計測部3Cと中心プロファイル計測部3Dの両方の役割を兼ねることができる。すなわち、
図19に示すように、第2の多波長光計測装置33からホストコンピュータ4に、ボトム径CDbと中心プロファイルPcとが出力される。ホストコンピュータ4は、膜厚Tm、ネック径CDn、ボトム径CDb及び、中心プロファイルPcを、T-SAXS計測装置2に出力する。T-SAXS計測装置2は、これらの4つの形状パラメータを用いてSAXS像群を解析する。精度よく計測された中心プロファイルPcを形状パラメータに加えることで、T-SAXS計測装置2で計測される孔の3次元形状の精度は、より一層向上する。
【0079】
また、中心プロファイルPcにかえて、チルトを形状パラメータ計測ユニット3で計測し、T-SAXS計測装置2に入力してもよい。チルトとは、被検体7の最表面における孔の中心を通りz方向に平行な線と中心プロファイルとの距離を、z方向にプロットして得られる形状パラメータである。
【0080】
図20は、第1実施形態にかかる計測装置を有する計測システムの別の構成例を示すブロック図である。また、
図21は、
図20に示す計測システムにおけるデータの流れの一例を説明する図である。
図20は、形状パラメータ計測ユニット3において、膜厚Tmと、ネック径CDnと、ボトム径CDbと、チルトTの4つの形状パラメータを測定し、T-SAXS計測装置2に出力する計測システム1を示している。
図20に示すように、形状パラメータ計測ユニット3は、膜厚計測部3A、ネック径計測部3B、ボトム径計測部3Cに加えて、チルトTを計測するチルト計測部3Eを有する。その他の構成は、
図1に示す計測システム1と同様である。ボトム径計測部3Cとして用いる第2の多波長光計測装置33は、ボトム径CDbだけでなく、チルトTも精度よく計測することができる。このような場合、第2の多波長光計測装置33は、ボトム径計測部3Cとチルト計測部3Eの両方の役割を兼ねることができる。すなわち、
図21に示すように、第2の多波長光計測装置33からホストコンピュータ4に、ボトム径CDbとチルトTとが出力される。ホストコンピュータ4は、膜厚Tm、ネック径CDn、ボトム径CDb及び、チルトTを、T-SAXS計測装置2に出力する。T-SAXS計測装置2は、これらの4つの形状パラメータを用いてSAXS像群を解析する。精度よく計測されたチルトTを形状パラメータに加えることで、T-SAXS計測装置2で計測される孔の3次元形状の精度は、より一層向上する。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態の計測装置は、T-SAXS計測装置2で用いられる形状パラメータの取得方法が、上述した第1実施形態と異なる。計測対象となる被検体7の構造については、上述した第1実施形態と同様であるので説明を省略する。以下、第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。
【0081】
図22は、半導体ウエハ上に配置されたメモリチップのレイアウトの一例を説明する平面図である。
図22に示すように、被検体7としての半導体ウエハには、複数のメモリチップ100が、x方向およびy方向に行列状に配列される。それぞれのメモリチップ100には、3次元形状の計測対象となる孔(メモリホール)を有するメモリセルアレイが形成されている。
【0082】
半導体ウエハ上に、CVD技術などにより各種の膜を堆積させる場合、半導体ウエハの全面において、均一な膜厚で成膜をすることは困難である。また、リソグラフィ技術及びエッチング技術により堆積された膜を加工する場合も、半導体ウエハの全面において、均一な形状で加工することは困難である。すなわち、計測対象となる孔74の位置によって、形状パラメータ(例えば、エッチングマスク膜73の膜厚Tmや、ネック径CDn、ボトム径CDb)は、異なる値をし得る。
【0083】
そこで、本実施形態の計測装置は、半導体ウエハの面内の複数箇所について、予め形状パラメータを計測し、形状パラメータの面内傾向を解析する。解析結果は、形状パラメータマップとして保持される。形状パラメータマップから、3次元形状の計測領域位置における形状パラメータのデータを抽出し、SAXS像の解析に用いる。このような構成により、計測の過程で3次元形状の計測領域の位置を変更しても、形状パラメータを計測しなおす必要がないので、SAXS像の解析を、高精度かつ短時間に行うことができる。
【0084】
図23は、第2実施形態にかかる計測装置を有する計測システムの構成例を示すブロック図である。本実施形態の計測システム1は、T-SAXS計測装置2と、形状パラメータ計測ユニット3と、ホストコンピュータ4´と、データベース5´とを備える。情報処理装置としてのホストコンピュータ4´は、形状パラメータマップ生成部41と、形状パラメータ取得部42とを具備する。データベース5´は、形状パラメータマップ51を格納する。
【0085】
形状パラメータマップ生成部41は、形状パラメータ計測ユニット3に対し、データを取得する位置(例えば、半導体ウエハにおける位置座標)を指示する。データを取得する位置としては、異なる複数の位置を指示する。
図24は、形状パラメータの計測対象領域の一例を説明する平面図である。
図24は、被検体7としての半導体ウエハ上における、形状パラメータの計測対象領域80を示している。計測対象領域80は、半導体ウエハ上に複数設定される。例えば、
図24に示すように、半導体ウエハの中心を原点とし、半径が異なる1つ以上の円において、各円の円周を略等分する位置にあるチップ100を、計測対象領域80とする。
図24に示す一例では、中心に1カ所、2つの同心円のうち内側の円の円周上に8カ所、外側の円の円周上に12カ所、計21カ所の計測対象領域80が設定されている。なお、計測対象領域80は、形状パラメータごとに異なる位置を設定したり、異なる個数を設定したりしてもよい。
【0086】
また、形状パラメータマップ生成部41は、設定した計測対象領域80について、形状パラメータ計測ユニット3が計測した形状パラメータのデータに基づき、形状パラメータごとに面内傾向を解析する。具体的には、計測対象領域80のデータを用いて、形状パラメータが計測されていない位置のデータを推定し、補間する。さらに、形状パラメータマップ生成部41は、解析結果を、形状パラメータの面内分布を示す形状パラメータマップ51としてデータベース5´に出力する。
【0087】
形状パラメータ取得部42は、3次元形状の計測領域の位置に対応する各形状パラメータのデータを、形状パラメータマップ51から抽出する。
図25は、3次元形状の計測領域の位置の一例を説明する平面図である。さらに、形状パラメータ取得部42は、抽出したデータを、T-SAXS計測装置2へ出力する。
図25は、被検体7としての半導体ウエハ上における、3次元形状の計測領域70を示している。例えば、
図25に示すように、x座標がx1、y座標がy1である計測領域70が設定されると、形状パラメータ取得部42は、データベース5´に格納されている形状パラメータマップ51から(x、y)=(x1、y1)のデータを抽出し、T-SAXS計測装置2へ出力する。
【0088】
次に、第2実施形態の計測システムによる3次元形状の計測方法について、
図26~29を用いて説明する。
図26は、第2実施形態の計測システムにおけるデータの流れの一例を説明する図である。
図26は、形状パラメータ計測ユニット3において、膜厚Tm、ネック系CDn、ボトム径CDbが計測され、これらの形状パラメータがT-SAXS計測装置2におけるSAXS像群解析に用いられる場合についての一例を示している。
【0089】
膜厚Tm、ネック系CDn、ボトム径CDbの各形状パラメータについて、複数の計測対象領域80の位置座標が、ホストコンピュータ4´から形状パラメータ計測ユニット3に入力される(不図示)。入力された位置座標について、形状パラメータ計測ユニット3で計測された形状パラメータは、形状パラメータマップ生成部41へ出力される。膜厚Tmは、形状パラメータ計測ユニット3の第1の多波長光計測装置31から形状パラメータマップ生成部41に出力される。ネック径CDnは、形状パラメータ計測ユニット3の電子線計測装置32から形状パラメータマップ生成部41に出力される。ボトム径CDbは、形状パラメータ計測ユニット3の第2の多波長光計測装置33から形状パラメータマップ生成部41に出力される。なお、形状パラメータのデータは、計測対象領域80の位置座標と対にして出力される。
【0090】
形状パラメータ計測ユニット3で計測されたデータに基づき生成された形状パラメータマップ51は、形状パラメータマップ生成部41からデータベース5´に出力され、格納される。形状パラメータマップ51は、形状パラメータごとに生成される。例えば、
図26に示す一例の場合、膜厚Tmマップ、ネック径CDnマップ、ボトム径CDbマップ、の3つの形状パラメータマップ51が生成され、格納される。
【0091】
一方、被検体7の計測領域の位置座標は、T-SAXS計測装置2において設定され、ホストコンピュータ4´の形状パラメータ取得部42に入力される。形状パラメータ取得部42は、データベース5´に格納されている形状パラメータマップ51から、計測領域の位置座標に対応するデータを抽出する。抽出されたデータ(膜厚Tm、ネック径CDn、ボトム径CDb)は、形状パラメータ取得部42からT-SAXS計測装置2に出力される。
【0092】
被検体7の計測領域の形状プロファイルは、T-SAXS計測装置2からホストコンピュータ4´へ出力される。形状プロファイルは、ホストコンピュータ4´の図示しない表示装置に表示されたり、データベース5´に出力されて格納されたりする。
【0093】
図27~29は、第2実施形態の計測方法の一例を説明するフローチャートである。図中に示す長方形、平行四辺形、矢印は、
図12と同義である。
図27に示すように、まず、形状パラメータマップ51を生成する(S61)。
図28は、膜厚Tmを一例とし、S61の具体的な手順を示している。他の形状パラメータ(ネック径CDn、ボトム径CDbなど)のマップも、
図28に示す手順と同様にして取得する。
【0094】
まず、ホストコンピュータ4´において、形状パラメータである膜厚Tmの計測対象領域を複数箇所設定し、第1の多波長光計測装置31に指示する(S611)。第1の多波長光計測装置31は、最初の計測対象領域に光が照射されるように被検体7の位置を調整し(S612)、回折光強度スペクトルを取得する(S613)。S613で取得した回折光強度スペクトルを解析し、被検体7の表面に形成されたエッチングマスク膜73の膜厚Tmを計測する(S614)。第1の多波長光計測装置31は、S612で設定された計測対象領域の座標と、S614で計測された膜厚Tmとを、ホストコンピュータ4´に出力する。S611において指示された計測対象領域のうち、膜厚Tmが未計測の領域がある場合(S616、YES)、次の計測対象領域に光が照射されるように被検体7の位置を調整し(S617)、S613からS615の手順を繰り返し実行して膜厚Tmの計測を継続する。一方、S611において指示された計測対象領域のうち、膜厚Tmが未計測の領域がない場合(S616、NO)、ホストコンピュータ4´は、入力されたデータを解析して膜厚Tmの面内傾向を解析し、形状パラメータマップ51(膜厚Tmマップ)を生成する(S618)。膜厚Tm以外の形状パラメータ(ネック径CDn、ボトム径CDbなど)のマップも、
図28に示す手順に準じて生成する。
【0095】
図27に戻り、T-SAXS計測装置2において、S61で生成された形状パラメータマップ51から3次元形状の計測領域と対応する形状パラメータのデータを取得し、孔の形状を計測する(S62)。S62の具体的な手順を、
図29を用いて説明する。
【0096】
まず、被検体7において、3次元形状の計測領域を設定する(S621)。次に、形状パラメータマップ51から、S621で設定された計測領域の位置におけるデータ(膜厚Tm、ネック径CDn、ボトム径CDbの値)を取得する(S622)。続いて、T-SAXS計測装置2において、計測ステージ22の回動角度を変えながら計測し、被検体7の計測領域について複数の回折像(SAXS像群)を取得する(S623)。S623で取得したSAXS像群を解析し、被検体7の計測領域の3次元形状を推定して形状プロファイルを取得する(S624)。S624におけるSAXS像群の解析において、解析部24は、S622で取得した各種形状パラメータ(膜厚Tm、ネック径CDn、ボトム径CDb)を解析パラメータとしてセットし、3次元形状を解析する。
【0097】
以上のように、本実施形態の計測装置によれば、3次元形状の計測に先立ち、被検体7の面内の複数箇所について形状パラメータを計測し、形状パラメータの面内傾向を解析する。解析結果を形状パラメータマップ51としてデータベース5´に格納しておき、3次元形状を計測する際には、計測領域における形状パラメータの値を形状パラメータマップ51から抽出し、SAXS像群の解析に用いる。これにより、計測領域が変更される場合にも、形状パラメータを計測し直す必要がなく、SAXS像の解析を、高精度かつ短時間に行うことができる。
【0098】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、一例として示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0099】
1…計測システム、2…T-SAXS計測装置、3…形状パラメータ計測ユニット、4、4´…ホストコンピュータ、5、5´…データベース、6…搬送装置、7…被検体、3A…膜厚計測部、3B…ネック径計測部、3C…ボトム径計測部、31…第1の多波長光計測装置、32…電子線計測装置、33…第2の多波長光計測装置。