(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024129294
(43)【公開日】2024-09-27
(54)【発明の名称】光学フィルタ、検出装置および光学積層体
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20240919BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20240919BHJP
G01J 1/02 20060101ALI20240919BHJP
G01J 1/04 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
G02B5/20
G02B5/00 B
G01J1/02 C
G01J1/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038401
(22)【出願日】2023-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100139930
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 亮司
(74)【代理人】
【識別番号】100202142
【弁理士】
【氏名又は名称】北 倫子
(74)【代理人】
【識別番号】100218981
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】葛田 真郷
(72)【発明者】
【氏名】沼田 雄大
(72)【発明者】
【氏名】松田 祥一
【テーマコード(参考)】
2G065
2H042
2H148
【Fターム(参考)】
2G065AA04
2G065AB02
2G065AB04
2G065AB27
2G065AB28
2G065BB25
2H042AA06
2H042AA09
2H042AA21
2H148AA01
2H148AA14
2H148AA18
2H148AA25
(57)【要約】
【課題】可視光の吸収による発熱を低減し、かつ物体を赤外線で検出する際のぎらつきを低減することが可能な光学フィルタを提供する。
【解決手段】光学フィルタにおいて、波長550nmmの可視光が入射角0°で入射する場合のBRDF(双方向反射率分布関数)は、-30°以上-5°以下および5°以上30°の角度において0.1[1/sr]以上であり、波長850nmmの赤外線が入射角0°で入射する場合のBTDF(双方向透過率分布関数)において、(-1°の値)/(-10°の値)および(1°の値)/(10°の値)は30以下である。
【選択図】
図12D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長550nmmの可視光が入射角0°で入射する場合のBRDF(双方向反射率分布関数)は、-30°以上-5°以下および5°以上30°の角度において0.1[1/sr]以上であり、
波長850nmmの赤外線が入射角0°で入射する場合のBTDF(双方向透過率分布関数)において、(-1°の値)/(-10°の値)および(1°の値)/(10°の値)は30以下である、光学フィルタ。
【請求項2】
(-1°の値)/(-10°の値)および(1°の値)/(10°の値)は25以下である、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項3】
前記BTDFは、-5°以上5°以下の角度において50[1/sr]以下である、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項4】
波長800nm以上2000nm以下の範囲における拡散透過率の平均値は35%以上である、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項5】
前記可視光を後方散乱し、前記赤外線を前方散乱する光学層を備え、前記光学層は前記赤外線を前方散乱する散乱面を有する、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項6】
前記散乱面の算術平均粗さRaは、1μm以上であり、かつ、最大高さRzは、15μm以上である、請求項5に記載の光学フィルタ。
【請求項7】
前記可視光を後方散乱し、前記赤外線を直線透過させる光学層と、
前記光学層上に直接または他の層を介して配置され、前記赤外線を前方散乱する散乱層と、
を備える、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項8】
波長が800nm以上2000nm以下の範囲における前記光学フィルタのヘイズ値の平均値は、40%以上である、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項9】
分光測色計を用いてSCE(正反射除去)方式で測定した前記光学層のL*の値は20以上である、請求項5から7のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
【請求項10】
前記光学層は、マトリクスと、前記マトリクス中に分散された光散乱体となる微粒子とを有する、請求項5から8のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
【請求項11】
前記微粒子は、少なくともコロイドアモルファス集合体を構成している、請求項10に記載の光学フィルタ。
【請求項12】
前記光学層の可視光の波長領域の透過率曲線は、長波長側から短波長側にかけて直線透過率が単調に減少する曲線部分を有し、前記曲線部分は入射角の増大につれて長波長側にシフトする、請求項11に記載の光学フィルタ。
【請求項13】
物体を検出する検出装置であって、
前記物体を照射するための赤外線を出射する赤外光源と、
前記物体で反射された赤外線を検出する赤外センサと、
請求項1から8のいずれか1項に記載の光学フィルタであって、前記赤外光源から出射された前記赤外線を横切るように配置された光学フィルタと、
を備える、検出装置。
【請求項14】
請求項1から8のいずれか1項に記載の光学フィルタであって、第1主面と、前記第1主面の反対側の第2主面を有する光学フィルタと、
前記光学フィルタの前記第2主面側に配置され、前記光学フィルタを介して前記赤外線で読み取ることが可能なパターンを有する記録媒体層と、
を備える、光学積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルタならびにそれを利用する検出装置および光学積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線を利用した物体検出には、物体を照射するための赤外線を出射する赤外光源と、物体で反射された赤外線を検出する赤外センサとが用いられている(例えば特許文献1)。外観および意匠の問題から、赤外光源および赤外センサを視認されないように隠蔽することが求められる場合がある。
【0003】
隠蔽対象は、赤外光源および赤外センサに限られない。近年、バーコード、QRコード(登録商標)、ArUco、カメレオンコードなどのAR(Augmented Reality:拡張現実)マーカが種々の用途に用いられている(例えば特許文献2)。外観および意匠の問題から、ARマーカを視認されないように隠蔽することが求められる場合がある。ARマーカは赤外線で読み取り可能であるものとする。
【0004】
上記の隠蔽のために、例えば特許文献3の黒色顔料を含む光学フィルタを用いることが考えられる。特許文献3の黒色顔料は、可視光を吸収し、赤外線を透過させる。この黒色顔料を含む光学フィルタを用いれば、赤外線を利用した物体検出において、赤外光源および赤外センサを隠蔽した上で、赤外光源から出射された赤外線で物体を照射し、物体で反射された赤外線を赤外センサによって検出することができる。また、ARマーカを隠蔽した上で、ARマーカを赤外線で読み取ることができる。
【0005】
本明細書において、特に断らない限り、「赤外線」は、波長が780nm以上4000nm以下の範囲内の光を少なくとも含むものとする。また、「可視光」は、波長が380nm以上780nm未満の範囲内の光をいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2019-524602号公報
【特許文献2】特開2016-224485号公報
【特許文献3】特開2019-207303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3の黒色顔料は可視光を吸収するので、光学フィルタに熱が生じる可能性がある。光学フィルタで生じる熱は隠蔽対象に悪影響を及ぼし得る。さらに、特許文献3の黒色顔料は赤外線を高い直線透過率で透過させるので、この黒色顔料を含む光学フィルタを介して物体を赤外線で検出すると、物体で反射された赤外線に直線反射の成分が多く含まれる場合、ぎらつきが生じる可能性がある。
【0008】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、可視光の吸収による発熱を低減し、かつ物体を赤外線で検出する際のぎらつきを低減することが可能な光学フィルタならびにそれを利用する検出装置および光学積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態によると以下の項目に示す解決手段が提供される。
[項目1]
波長550nmmの可視光が入射角0°で入射する場合のBRDF(双方向反射率分布関数)は、-30°以上-5°以下および5°以上30°の角度において0.1[1/sr]以上であり、
波長850nmmの赤外線が入射角0°で入射する場合のBTDF(双方向透過率分布関数)において、(-1°の値)/(-10°の値)および(1°の値)/(10°の値)は30以下である、光学フィルタ。
[項目2]
(-1°の値)/(-10°の値)および(1°の値)/(10°の値)は25以下である、請求項1に記載の光学フィルタ。
[項目3]
前記BTDFは、-5°以上5°以下の角度において50[1/sr]以下である、項目1または2に記載の光学フィルタ。
[項目4]
波長800nm以上2000nm以下の範囲における拡散透過率の平均値は35%以上である、項目1から3のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
[項目5]
前記可視光を後方散乱し、前記赤外線を前方散乱する光学層を備え、前記光学層は前記赤外線を前方散乱する散乱面を有する、項目1から4のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
[項目6]
前記散乱面の算術平均粗さRaは1μm以上であり、かつ、最大高さRzは15μm以上である、項目5に記載の光学フィルタ。
[項目7]
前記可視光を後方散乱し、前記赤外線を直線透過させる光学層と、
前記光学層上に直接または他の層を介して配置され、前記赤外線を前方散乱する散乱層と、
を備える、項目1から4のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
[項目8]
波長が800nm以上2000nm以下の範囲における前記光学フィルタのヘイズ値の平均値は、40%以上である、項目1から7のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
[項目9]
分光測色計を用いてSCE(正反射除去)方式で測定した前記光学層のL*の値は20以上である、項目5から7のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
[項目10]
前記光学層は、マトリクスと、前記マトリクス中に分散された光散乱体となる微粒子とを有する、項目5から9のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
[項目11]
前記微粒子は、少なくともコロイドアモルファス集合体を構成している、項目10に記載の光学フィルタ。
[項目12]
前記光学層の可視光の波長領域の透過率曲線は、長波長側から短波長側にかけて直線透過率が単調に減少する曲線部分を有し、前記曲線部分は入射角の増大につれて長波長側にシフトする、項目11に記載の光学フィルタ。
[項目13]
物体を検出する検出装置であって、
前記物体を照射するための赤外線を出射する赤外光源と、
前記物体で反射された赤外線を検出する赤外センサと、
項目1から12のいずれか1項に記載の光学フィルタであって、前記赤外光源から出射された前記赤外線を横切るように配置された光学フィルタと、
を備える、検出装置。
[項目14]
項目1から12のいずれか1項に記載の光学フィルタであって、第1主面と、前記第1主面の反対側の第2主面を有する光学フィルタと、
前記光学フィルタの前記第2主面側に配置され、前記光学フィルタを介して前記赤外線で読み取り可能なパターンを有する記録媒体層と、
を備える、光学積層体。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によると、可視光の吸収による発熱を低減し、かつ物体を赤外線で検出する際のぎらつきを低減することが可能な光学フィルタならびにそれを利用する検出装置および光学積層体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】本発明の例示的な実施形態による検出装置の模式的な断面図である。
【
図1B】本発明の例示的な実施形態による検出装置の模式的な他の断面図である。
【
図2A】本発明の例示的な実施形態による光学積層体の模式的な断面図である。
【
図2B】本発明の例示的な実施形態による光学積層体の模式的な他の断面図である。
【
図3A】本発明の例示的な実施形態による光学フィルタの模式的な断面図である。
【
図3B】本発明の例示的な他の実施形態による光学フィルタの模式的な断面図である。
【
図3C】本発明のさらに他の実施形態による光学フィルタの模式的な断面図である。
【
図3D】本発明のさらに他の実施形態による光学フィルタの模式的な断面図である。
【
図4】光学フィルタに含まれる光学層の内部の模式的な断面図である。
【
図6】グラフを最大透過率で規格化したグラフであり、可視光散乱層の直線透過率スペクトルの入射角依存性を示す図である。
【
図7A】連続の模様の意匠の例を示す模式図である。
【
図7B】連続の模様の意匠の他の例を示す模式図である。
【
図7D】タイル調の意匠の他の例を示す模式図である。
【
図8A】BRDFの測定方法を説明するための模式的な断面図である。
【
図8B】BTDFの測定方法を説明するための模式的な断面図である。
【
図9A】実施例3の光学フィルタの断面TEM像である。
【
図9B】実施例6の光学フィルタの断面TEM像である。
【
図10A】波長550nmmの可視光が入射角0°で入射する場合における比較例1~4の光学フィルタのBRDFである。
【
図10B】波長550nmmの可視光が入射角0°で入射する場合における比較例1~4の光学フィルタのBTDFである。
【
図10C】波長850nmmの赤外線が入射角0°で入射する場合における比較例1~4の光学フィルタのBRDFである。
【
図10D】波長850nmmの赤外線が入射角0°で入射する場合における比較例1~4の光学フィルタのBTDFである。
【
図11A】波長550nmmの可視光が入射角0°で入射する場合における実施例1および2の光学フィルタのBRDFである。
【
図11B】波長550nmmの可視光が入射角0°で入射する場合における実施例1および2の光学フィルタのBTDFである。
【
図11C】波長850nmmの赤外線が入射角0°で入射する場合における実施例1および2の光学フィルタのBRDFである。
【
図11D】波長850nmmの赤外線が入射角0°で入射する場合における実施例1および2の光学フィルタのBTDFである。
【
図12A】波長550nmmの可視光が入射角0°で入射する場合における実施例3~6の光学フィルタのBRDFである。
【
図12B】波長550nmmの可視光が入射角0°で入射する場合における実施例3~6の光学フィルタのBTDFである。
【
図12C】波長850nmmの赤外線が入射角0°で入射する場合における実施例3~6の光学フィルタのBRDFである。
【
図12D】波長850nmmの赤外線が入射角0°で入射する場合における実施例3~6の光学フィルタのBTDFである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態)
以下では、図面を参照して、最初に、本発明の実施形態による光学フィルタを利用する検出装置および光学積層体を説明し、次に、本発明の実施形態による光学フィルタの構造を詳細に説明する。最後に、光学フィルタの実施例を説明する。本発明の実施形態による光学フィルタならびに本発明の実施形態による検出装置および光学積層は、以下で例示するものに限定されない。
【0013】
本発明の実施形態による光学フィルタによれば、波長550nmmの可視光が入射角0°で入射する場合のBRDF(双方向反射率分布関数)は、-30°以上-5°以下および5°以上30°の角度において0.1[1/sr]以上であり、波長850nmmの赤外線が入射角0°で入射する場合のBTDF(双方向透過率分布関数)において、(-1°の値)/(-10°の値)および(1°の値)/(10°の値)は30以下である。
【0014】
本発明の実施形態による光学フィルタでは、可視光の吸収による発熱を低減し、かつ物体を赤外線で検出する際のぎらつきを低減することが可能になる。
【0015】
本発明の実施形態による物体を検出する検出装置は、前記物体を照射するための赤外線を出射する赤外光源と、前記物体で反射された赤外線を検出する赤外センサと、前記赤外光源から出射された前記赤外線を横切るように配置された上記の光学フィルタとを備える。
【0016】
本発明の実施形態による光検出装置では、光学フィルタにより、赤外光源および赤外センサが視認される可能性を低減できる。
【0017】
本発明の実施形態による光学積層体は、第1主面と、前記第1主面の反対側の第2主面を有する上記の光学フィルタと、前記光学フィルタの前記第2主面側に配置され、前記光学フィルタを介して前記赤外線で読み取り可能なパターンを有する記録媒体層とを備える。
【0018】
本発明の実施形態による光学積層体では、光学フィルタにより、記録媒体層のパターンが視認される可能性を低減できる。
【0019】
[検出装置]
まず、
図1Aおよび
図1Bを参照して、本発明の実施形態による光学フィルタを利用する検出装置の構成例を説明する。
【0020】
図1Aに、本発明の例示的な実施形態による検出装置の模式的な断面図を示す。
図1Aには、検出対象の物体10も示されている。物体10は任意の物体であり、例えば、人であってもよいし、ベルトコンベアによって運ばれる製品であってもよい。
図1Aに示す検出装置100は、赤外光源110と、赤外センサ120と、光学フィルタ130と、赤外光源110および赤外センサ120を収容する筐体140とを備える。
【0021】
赤外光源110は、例えば、赤外線を出射する赤外ランプまたは赤外LEDであり得る。赤外センサ120は、例えば、赤外線の画像を取得するイメージセンサであり得る。光学フィルタ130は第1主面132とその反対側の第2主面134とを有する。光学フィルタ130は、第1主面132または第2主面134に入射する赤外線を前方散乱し、第1主面132または第2主面134に入射する可視光を後方散乱する。光学フィルタ130の詳細な構造ならびにBRDFおよびBTDFによる散乱特性の評価については後述する。物体10は光学フィルタ130の第1主面132側に位置し、赤外光源110および赤外センサ120は光学フィルタ130の第2主面134側に配置される。筐体140は1つの面が開放された箱形状を有し、開放された開口142は光学フィルタ130によって塞がれる。
【0022】
なお、筐体140は、検出装置100の必須の構成要素ではない。例えば、検出装置100を天井、壁、または床の一部として配置する場合、すなわち、赤外光源110および赤外センサ120が天井、壁、または床の内部に設けられており、光学フィルタ130がそれらを覆う場合、検出装置100は筐体140を備える必要はない。
【0023】
本発明の実施形態による検出装置100において、物体10は以下のようにして検出される。赤外光源110は、物体10を照射するための赤外線IR1を、光学フィルタ130を介して出射する。赤外線IR1の波長は、例えば780nm以上4000nm以下であり、好ましくは780nm以上2500nm以下であり得る。赤外センサ120は、物体10で反射された赤外線IR2を、光学フィルタ130を介して検出する。光学フィルタ130は赤外光源110から出射された赤外線IR1を横切るように配置される。光学フィルタ130は、第2主面134に入射する赤外線IR1を前方散乱し、前方散乱された赤外線IR1は物体10に入射する。光学フィルタ130は、さらに、物体10で反射され、第1主面132に入射する赤外線IR2を前方散乱し、前方散乱された赤外線IR2は赤外センサ120に入射する。
【0024】
本発明の実施形態による検出装置100とは異なり、赤外線を直線透過させる光学フィルタを用いる構成では、赤外光源110から出射され、物体10を経由して赤外センサ120に入射する赤外線は、物体10からの直線反射の成分を多く含む。したがって、そのような赤外線を検出すると、物体10からの直線反射の成分が原因でぎらつきが生じ、物体10を鮮明に検出できない可能性がある。
【0025】
これに対して、本発明の実施形態による検出装置100では、赤外光源110から出射され、物体10を経由して赤外センサ120に入射する赤外線は、光学フィルタ130によって2回前方散乱される。前方散乱された赤外線IR1で物体10を照射するので、物体10からの直線反射の成分を低減できる。加えて、物体10で反射され、前方散乱された赤外線IR2を検出するので、物体10からの直線反射の成分をさらに低減できる。その結果、物体10を赤外線IR1で検出する際のぎらつきを効果的に低減でき、物体10をより鮮明に検出することが可能になる。検出装置100による物体10の検出では、タイムオブフライト法を用いて検出装置100から物体10までの距離を測定してもよい。
【0026】
図1Bに、本発明の例示的な実施形態による検出装置100の模式的な他の断面図を示す。光学フィルタ130は、第1主面132に入射する可視光VLを後方散乱する。光学フィルタ130による後方散乱により、可視光VLが赤外光源110および赤外センサ120に届く光量を低減できる。可視光VLの一部が赤外光源110および赤外センサ120に入射しても、赤外光源110および赤外センサ120で反射され、第2主面134に入射する可視光は、光学フィルタ130によって後方散乱される。したがって、光学フィルタ130の第1主面132側から赤外光源110および赤外センサ120が視認される可能性を低減できる。
図1Aに示す物体10が人である場合、赤外光源110および赤外センサ120が視認できることによる心理的変化が原因で本来の人の行動や動作が変化し得る可能性を効果的に低減できる。
【0027】
本発明の実施形態による検出装置100とは異なり、可視光を吸収する光学フィルタを用いる構成では、光学フィルタで熱が生じる可能性がある。光学フィルタで生じる熱は、赤外光源110および赤外センサ120に悪影響を及ぼし得る。これに対して、本発明の実施形態による検出装置100では、光学フィルタ130が可視光VLを後方散乱するので、可視光VLの吸収による発熱を低減できる。
【0028】
光学フィルタ130は、後で詳しく説明するが、ミラー調の外観を有する誘電体多層膜とは異なり、白色を呈する光学層を有する。CIE1976色空間上のSCE方式で測定した光学層のL*の値は20以上である。
【0029】
白色を呈する光学層は、赤外光源110および赤外センサ120が外部から視認される可能性を低減し、かつ検出装置100の意匠性の自由度を向上させることができる。ミラー調の表面に意匠を付加した場合、意匠よりもミラー調の背景が目立ってしまう可能性がある。これに対して、白色を呈する表面に意匠を付加した場合、意匠を白色の背景よりも際立たせることができる。本明細書において、「意匠」は、物品の模様や色彩を意味する。模様は絵柄または図柄を含む。色彩は、単色であってもよく、色相が同じで彩度が異なる色の組み合わせを含み得る。色彩、絵柄または図柄はタイル調であってもよい。
【0030】
以上のように、本実施形態による検出装置100では、光学フィルタ130により、赤外光源110および赤外センサ120が視認される可能性を低減できる。さらに、可視光VLの吸収による光学フィルタ130の発熱を低減し、かつ物体10を赤外線IR1で検出する際のぎらつきを低減することができる。
【0031】
なお、検出装置100から赤外センサ120を除去した構成を、光源装置として利用してもよい。この光源装置では、前方散乱された赤外線IR1で物体10が照射されるので、物体10からの直線反射の成分を低減できる。あるいは、検出装置100から赤外光源110を除去した構成を、センサ装置として利用してもよい。このセンサ装置では、物体10で反射され、前方散乱された赤外線IR2が検出されるので、物体10からの直線反射の成分を低減できる。光源装置およびセンサ装置は、物体10を赤外線で鮮明に検出することに役立つ。
【0032】
[光学積層体]
隠蔽対象は、赤外光源110および赤外センサ120に限られない。次に、
図2Aおよび
図2Bを参照して、本発明の実施形態による光学フィルタを利用する光学積層体の構成例を説明する。
【0033】
図2Aに、本発明の例示的な実施形態による光学積層体の模式的な断面図を示す。
図2Aに示す光学積層体200は、上述した光学フィルタ130と、光学フィルタ130を介して赤外線で読み取ることが可能なパターンを有する記録媒体層150とを備える。
図2Aには、記録媒体層150のパターンを読み取るのに用いられる赤外光源110および赤外センサ120も示されている。赤外光源110および赤外センサ120は光学フィルタ130の第1主面132側に位置し、記録媒体層150は光学フィルタ130の第2主面134側に配置される。
図2Aに示す例において、記録媒体層150のパターンは、ARマーカの一種であるQRコードである。記録媒体層150のパターンは、ARマーカのように情報を含むパターンであってもよいし、一般的な意匠であってもよい。光学積層体200は、例えば天井、壁、または床の一部として配置され得る。
【0034】
本発明の実施形態による光学積層体200において、記録媒体層150のパターンは以下のようにして読み取られる。赤外光源110は、光学フィルタ130を介して記録媒体層150のパターンを照射するための赤外線IR1を出射する。赤外センサ120は、記録媒体層150で反射された赤外線IR2を、光学フィルタ130を介して検出する。光学フィルタ130は、第1主面132に入射する赤外線IR1を前方散乱する。前方散乱された赤外線IR1は記録媒体層150に入射する。光学フィルタ130は、さらに、記録媒体層150で反射され、第2主面134に入射する赤外線IR2を前方散乱する。前方散乱された赤外線IR2は赤外センサ120に入射する。
【0035】
本発明の実施形態による光学積層体200とは異なり、赤外線を直線透過させる光学フィルタを用いる構成では、赤外光源110から出射され、記録媒体層150を経由して赤外センサ120に入射する赤外線は、記録媒体層150からの直線反射の成分を多く含む。したがって、そのような赤外線を検出すると、記録媒体層150からの直線反射の成分が原因でぎらつきが生じ、記録媒体層150のパターンを鮮明に検出できない可能性がある。
【0036】
これに対して、本発明の実施形態による光学積層体200では、赤外光源110から出射され、記録媒体層150を経由して赤外センサ120に入射する赤外線は、光学フィルタ130によって2回前方散乱されるので、記録媒体層150からの直線反射の成分を効果的に低減できる。その結果、記録媒体層150のパターンを赤外線IR1で検出する際のぎらつきを低減することができ、記録媒体層150のパターンをより鮮明に検出することが可能になる。
【0037】
図2Bに、本発明の例示的な実施形態による光学積層体の模式的な他の断面図を示す。光学フィルタ130は、第1主面132に入射する可視光VLを後方散乱する。光学フィルタ130による後方散乱により、可視光VLが記録媒体層150に届く光量を低減できる。可視光VLの一部が記録媒体層150に入射しても、記録媒体層150で反射された可視光は、光学フィルタ130によって後方散乱される。したがって、光学フィルタ130の第1主面132側から記録媒体層150が視認される可能性を低減できる。
【0038】
本発明の実施形態による光学積層体200とは異なり、可視光を吸収する光学フィルタを用いる構成では、光学フィルタで熱が生じる可能性がある。光学フィルタで生じる熱は、記録媒体層150のパターンに悪影響を及ぼし得る。これに対して、本発明の実施形態による光学積層体200では、光学フィルタ130が可視光VLを後方散乱するので、可視光VLの吸収による発熱を低減できる。
【0039】
光学フィルタ130は、上述したように、白色を呈する光学層を有する。白色を呈する光学層は、記録媒体層150のパターンが外部から視認される可能性を低減し、かつ光学積層体200の意匠性の自由度を向上させることができる。
【0040】
以上のように、本実施形態による光学積層体200では、光学フィルタ130により、記録媒体層150のパターンが視認される可能性を低減できる。さらに、可視光VLの吸収による光学フィルタ130の発熱を低減し、かつ記録媒体層150のパターンを赤外線IR1で検出する際のぎらつきを低減することができる。
【0041】
なお、光学フィルタ130の隠蔽対象は、検出装置100に含まれる赤外光源110および赤外センサ120ならびに光学積層体200に含まれる記録媒体層150のパターンに限られず、任意の物体である。
【0042】
[光学フィルタの構造]
次に、
図3Aから
図3Dを参照して、本発明の実施形態による光学フィルタの構造を詳細に説明する。
【0043】
図3Aに、本発明の例示的な実施形態による光学フィルタの模式的な断面図を示す。
図3Aに示す光学フィルタ130は、可視光を後方散乱し、赤外線を直線透過させる光学層130Aと、光学層130A上に配置され、赤外線を前方散乱する散乱層130Bと、光学層130Aを支持する基材層130Cとを備える。散乱層130Bは可視光を前方散乱または後方散乱する必要はない。散乱層130Bは光学層130A上に直接配置されてもよいし、光学層130A上に他の層を介して配置されてもよい。散乱層130Bは、例えば、アンチグレア層または散乱成分を含む粘着剤から形成された層であり得る。
図3Aに示す光学フィルタ130の赤外線に対するヘイズ値は、例えば40%以上であり、より好ましくは60%以上であり得る。ここで、赤外線に対するヘイズ値は、波長800nm以上2000nm以下におけるヘイズ値の平均値である。
【0044】
図3Aに示す光学フィルタ130において、
図1Aから
図2Bに示す第1主面132は散乱層130Bの光学層130Aとは反対側の表面であり、第2主面134は基材層130Cの光学層130Aとは反対側の表面である。第1主面132および第2主面134はその逆であってもよい。
【0045】
図3Aに示す光学フィルタ130において、散乱層130B側から入射する赤外線は、散乱層130Bによって前方散乱され、光学層130Aおよび基材層130Cをこの順に透過する。基材層130C側から入射する赤外線は、基材層130Cおよび光学層130Aをこの順に透過し、散乱層130Bによって前方散乱される。散乱層130B側から入射する可視光は、散乱層130Bを透過し、光学層130Aによって後方散乱され、散乱層130Bを再び透過する。基材層130C側から入射する可視光は、基材層130Cを透過し、光学層130Aによって後方散乱され、基材層130Cを再び透過する。このようにして、
図3Aに示す光学フィルタ130は、可視光を後方散乱し、赤外線を前方散乱する。
【0046】
図3Bに、本発明の例示的な他の実施形態による光学フィルタの模式的な断面図を示す。
図3Bに示す光学フィルタ130は、可視光を後方散乱し、赤外線を前方散乱する光学層130Dと、光学層130Dを支持する基材層130Cとを備える。光学層130Dは、赤外線を前方散乱する散乱面132Dを有する。散乱面132Dは可視光を前方散乱または後方散乱する必要はない。光学層130Dとは異なり、散乱面132Dではなく平坦面を有する光学層は、可視光を後方散乱し、赤外線を直線透過させる
図3Aに示す光学層130Aに相当する。散乱面132Dは、例えば、光学層130Aの平坦面に、凹凸部材の凹凸形状を転写したり、サンドブラストを施したりして形成され得る。散乱面132Dの算術平均粗さRaは、例えば1μm以上であり、かつ、最大高さRzは、例えば15μm以上であり得る。
図3Bに示す光学フィルタ130の赤外線に対するヘイズ値は、例えば40%以上であり、より好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは80%以上であり得る。ここで、赤外線に対するヘイズ値は、波長800nm以上2000nm以下におけるヘイズ値の平均値である。
【0047】
図3Bに示す光学フィルタ130において、
図1Aから
図2Bに示す第1主面132は光学層130Dの散乱面132Dであり、第2主面134は基材層130Cの光学層130Dとは反対側の表面である。第1主面132および第2主面134はその逆であってもよい。
【0048】
図3Bに示す光学フィルタ130において、光学層130D側から入射する赤外線は、散乱面132Dによって前方散乱され、光学層130Dおよび基材層130Cをこの順に透過する。基材層130C側から入射する赤外線は、基材層130Cおよび光学層130Dをこの順に透過し、散乱面132Dによって前方散乱される。光学層130D側から入射する可視光は、光学層130Dによって後方散乱される。基材層130C側から入射する可視光は、基材層130Cを透過し、光学層130Dによって後方散乱され、基材層130Cを再び透過する。このようにして、
図3Bに示す光学フィルタ130は、可視光を後方散乱し、赤外線を前方散乱する。
【0049】
通常、散乱層または散乱面は、視認した際のぎらつきを低減するために、可視光を前方散乱または後方散乱する。これに対して、本発明の実施形態による光学フィルタ130に含まれる散乱層130Bまたは散乱面132Dは、赤外線を前方散乱する。散乱層130Bまたは散乱面132Dにより、物体10または記録媒体層150のパターンを赤外線IR1で検出する際のぎらつきを低減できる点において、本発明の実施形態による光学フィルタ130は、赤外線を直線透過させる光学フィルタよりも優れている。
【0050】
本発明の実施形態による光学フィルタ130は他の層をさらに備えてもよい。
図3Cおよび
図3Dに、本発明のさらに他の実施形態による光学フィルタの模式的な断面図を示す。
図3Cに示す光学フィルタ130は、
図3Aに示す光学層130A、散乱層130Bおよび基材層130Cに加えて、散乱層130B上に配置された意匠層130Eを備える。
図3Dに示す光学フィルタ130は、
図3Bに示す光学層130Dおよび基材層130Cに加えて、光学層130D上に配置された意匠層130Eを備える。
【0051】
意匠層130Eは、高い赤外線透過率を有していることが好ましい。意匠層130Eは、加飾フィルムなどのフィルム状であってもよいし、フィルム状でなくてもよい。意匠層130Eの厚さは、例えば1μm以上150μm以下である。本明細書において、層の表面が平坦でない場合、層の最大の厚さを、層の厚さとして扱う。
【0052】
本発明の実施形態による光学フィルタ130は、特定の機能を発揮する他の機能層をさらに備えてもよい。その場合、単一の機能層が2以上の機能を発揮してもよく、上述した各層のうちの少なくとも1つの層に他の機能を付与してもよい。光学フィルタ130に付与され得る機能は特に限定されないが、本発明の実施形態による光学フィルタ130は、
図3Cおよび
図3Dに示すように、意匠層130E上に配置された表面保護層130Fをさらに備える。表面保護層130Fは、例えば、耐擦傷性を発揮するハードコート(HC:Hard Coating)機能、防汚機能、防眩(AG:Anti-Glare)機能、または反射防止(AR:Anti-Reflection)機能などを発揮するように構成される。
【0053】
図3Cおよび
図3Dに示す光学フィルタ130において、
図1Aから
図2Bに示す第1主面132は表面保護層130Fの意匠層130Eとは反対側の表面であり、第2主面134は基材層130Cの光学層130A、130Dとは反対側の表面である。
【0054】
本発明の実施形態による光学フィルタ130は、検出装置100および光学積層体200のカバーとしても機能する。光学フィルタ130に含まれる基材層130Cは、カバーとしての機械強度を有し、高い赤外線透過率を有する。基材層130Cは、例えば、アクリル樹脂などの透明なプラスチックで形成され得る。基材層130Cは、可視光における視認抑制能を向上させるため、ミラー調の外観を有する誘電多層膜を含んでいてもよい。基材層130Cの厚さは例えば、約2μm以上約10mm以下である。
【0055】
本発明の実施形態による光学フィルタ130に含まれる光学層130A、130Dは、白色を呈する。ここで、白色とは、標準光をD65光源としたときのCIE1931色度図上のx、y座標がそれぞれ0.25≦x≦0.40、0.25≦y≦0.40の範囲内にあるものを言う。もちろん、x=0.333、y=0.333に近いほど白色度は高く、好ましくは、0.28≦x≦0.37、0.28≦y≦0.37であり、さらに好ましくは0.30≦x≦0.35、0.30≦y≦0.35である。また、CIE1976色空間上のSCE方式で測定したL*は20以上であることが好ましく、40以上であることがより好ましく、50以上がさらに好ましく、60以上であることが特に好ましい。L*が20以上であれば概ね白色と言える。L*の上限値は例えば100である。例えば、SCE方式による測定は、分光測色計CM-2600-D(コニカミノルタジャパン株式会社製)を用いて行うことができる。
【0056】
光学層130A、130DのL*の値は、光学層130A、130Dの厚さを変えることによって調整可能である。光学層130A、130Dの厚さが大きいほど、光学層130A、130DのL*の値は大きくなる。
【0057】
図4に、光学フィルタ130に含まれる光学層130A、130Dの内部の模式的な断面図を示す。光学層130A、130Dは、マトリクス12と、マトリクス12中に分散された光散乱体となる微粒子14とを有する。微粒子14は光散乱体として振る舞う。微粒子14は、例えば、少なくともコロイドアモルファス集合体を構成し得る。このとき、微粒子14が構成するコロイドアモルファス集合体を乱さない他の微粒子を含んでもよい。
【0058】
光学層130A、130Dは、コレステリック液晶(高分子液晶、低分子液晶、これらの液晶混合物、および、これらの液晶材料に架橋剤を混合し、架橋するなどして固化したもので、コレステリック相を発現するものを広く包含する。)を含まない。なお、光学層130A、130Dは、例えば、概略的にフィルム状であるが、これに限られない。
【0059】
透明な微粒子14は、例えば、シリカ微粒子である。シリカ微粒子として、例えばストーバー法により合成されたシリカ微粒子を用いることができる。また微粒子として、シリカ微粒子以外の無機微粒子を用いてよく、樹脂微粒子を用いてもよい。樹脂微粒子としては、例えば、ポリスチレンおよびポリメタクリル酸メチルのうちの少なくとも1種からなる微粒子が好ましく、架橋したポリスチレン、架橋したポリメタクリル酸メチルまたは架橋したスチレン-メタクリル酸メチル共重合体からなる微粒子がさらに好ましい。なお、このような微粒子としては、例えば、エマルション重合により合成されたポリスチレン微粒子またはポリメタクリル酸メチル微粒子を適宜用いることができる。また、空気を含んだ中空シリカ微粒子および中空樹脂微粒子を用いることもできる。なお、無機材料で形成されている微粒子は、耐熱性・耐光性に優れるという利点を有する。微粒子の全体(マトリクスおよび微粒子を含む)に対する体積分率は、6%以上60%以下が好ましく、20%以上50%以下がより好ましく、20%以上40%以下がさらに好ましい。透明な微粒子14は光学的等方性を有してもよい。
【0060】
マトリクス12は、例えば、アクリル樹脂(例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸メチル)、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリ(ジエチレングリコールビスアリルカーボネート)、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリイミドを挙げられるが、これらに限られない。マトリクス12は、硬化性樹脂(熱硬化性または光硬化性)を用いて形成することが好ましく、量産性の観点から光硬化性樹脂を用いて形成することが好ましい。光硬化性樹脂としては、種々の(メタ)アクリレートを用いることができる。(メタ)アクリレートは、2官能または3官能以上の(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。また、マトリクス12は光学的等方性を有していることが好ましい。多官能モノマーを含む硬化性樹脂を用いると、架橋構造を有するマトリクス12が得られるので、耐熱性および耐光性を向上させることができる。
【0061】
マトリクス12が樹脂材料で形成された光学層130A、130Dは、柔軟性を有するフィルム状であり得る。光学層130A、130Dの厚さは、例えば、10μm以上10mm以下である。光学層130A、130Dの厚さが、例えば、10μm以上1mm以下、さらには10μm以上500μm以下であれば、柔軟性を顕著に発揮することができる。
【0062】
微粒子として、表面が親水性のシリカ微粒子を用いる場合、例えば親水性のモノマーを光硬化することによって形成することが好ましい。親水性モノマーとして、例えば、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールトリ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールトリ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、あるいは、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、アクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートを挙げることができるが、これらに限られない。またこれらのモノマーは1種類を単独で用いてもよいし、または2種類以上を混合して用いてもよい。もちろん、2種類以上のモノマーは、単官能モノマーと多官能モノマーとを含んでもよく、あるいは、2種類以上の多官能モノマーを含んでもよい。
【0063】
これらのモノマーは光重合開始剤を適宜用いて硬化反応させることができる。光重合開始剤としては、例えばベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、アントラキノン、チオキサン、ケタール、アセトフェノン等のカルボニル化合物や、ジスルフィド、ジチオカーバメート等のイオウ化合物、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物、アゾ化合物、遷移金属錯体、ポリシラン化合物、色素増感剤等が挙げられる。添加量は微粒子とモノマーとの混合物100質量部に対して0.05質量部以上3質量部以下が好ましく、0.05質量部以上1質量部以下がさらに好ましい。
【0064】
可視光に対するマトリクスの屈折率をnM、微粒子の屈折率をnPとするとき、|nM-nP|(以下、単に屈折率差ということがある。)が0.01以上であることが好ましく、0.6以下であることが好ましく、0.03以上であることがより好ましく、0.11以下であることがより好ましい。屈折率差が0.03よりも小さいと散乱強度が弱くなり、所望の光学特性が得られにくくなる。また、屈折率差が0.11を超えると、赤外線の直線透過率が低下することがある。また、例えば、ジルコニア微粒子(屈折率2.13)とアクリル樹脂とを用いることで、屈折率差を0.6にした場合は、厚さを小さくすることによって赤外線の直線透過率を調整することができる。このように、赤外線の直線透過率は、例えば、可視光散乱層の厚さと屈折率差とを制御することによって、調整することもできる。また、用途に応じて、赤外線を吸収するフィルタと重ねて用いることもできる。なお、可視光に対する屈折率は例えば546nmの光に対する屈折率で代表され得る。ここでは、特に断らない限り、屈折率は546nmの光に対する屈折率をいう。
【0065】
図5に、光学層130A、130Dの断面TEM像を示す。図中のTEM像における白い円はシリカ微粒子であり、黒い円はシリカ微粒子が抜け落ちた跡である。光学層130A、130Dの断面TEM像に示されるように、シリカ微粒子がほぼ均一に分散している。
【0066】
図6に、グラフを最大透過率で規格化したグラフであり、光学層130A、130Dの直線透過率スペクトルの入射角依存性を示す。
図6に示される光学層130A、130Dの透過率曲線を見ると、可視光から赤外線にかけて直線透過率が単調に上昇する曲線部分が、入射角の増大につれて長波長側にシフト(約50nm)している。言い換えると、赤外線から可視光にかけて直線透過率が単調に減少する曲線部分が、入射角の増大につれて長波長側にシフトする。この特徴的な入射角依存性は、光学フィルムに含まれるシリカ微粒子がコロイドアモルファス集合体を構成していることに起因すると考えられる。なお、光学層130A、130Dの構造や光学特性、製造方法の詳細は、本出願人による国際出願PCT/JP2021/010413に記載されている。国際出願PCT/JP2021/010413の開示内容のすべてを参照により本明細書に援用する。
【0067】
光学層130A、130Dは、マトリクス12中に光散乱体となる微粒子14が分散された層に限定されない。光学層130A、130Dは、例えばフッ素樹脂フィルムであってもよい。フッ素樹脂は、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロチレン)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、FEP(パーフルオロエチレンプロペンコポリマー)、ETFE(エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、ECTFE(エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー)、サイトップ(AGC社製)であってもよい。またフッ素樹脂が発泡体を形成していてもよい。また、機械強度を向上させるため、樹脂をガラスクロスに含侵させてもよい。光学層130A、130Dの厚さは、例えば、10μm以上10mm以下である。
【0068】
(光学フィルタ130に付加される意匠の例)
ここでは、検出装置100または光学積層体200が、天井、壁、または床の一部として配置される構成において、光学フィルタ130に付加される意匠の例を説明する。検出装置100または光学積層体200が配置される箇所の周辺の表面の意匠を周辺意匠といい、光学フィルタ130の表面の意匠をフィルタ意匠というとき、フィルタ意匠は周辺意匠と同一または類似する。フィルタ意匠よび周辺意匠は同じ模様や色彩を有し得る。例えば加飾フィルムを用いて、光学フィルタ130の表面および周辺の表面に模様や色彩の意匠を付加することができる。周辺の表面に、上述した表面保護層が設けられていてもよい。
【0069】
図7Aから
図7Dを参照して、光学フィルタ130の表面、および検出装置100または光学積層体200が配置される箇所の周辺の表面に付加され得る意匠の例を説明する。
図7Aに、光学フィルタ130の表面、および周辺100Pの表面に連続の模様の意匠が付加されている例を示す。この例では、周辺100Pの表面および光学フィルタ130の表面に単一の模様(意匠)が付加されている。この意匠は、1枚の加飾フィルムを用いて実現され得る。このため、物理的なフィルムの境界が存在しない。光学フィルタ130は、単一の模様の任意の箇所に位置し、検出装置100に含まれる赤外光源110および赤外センサ120または光学積層体200に含まれる記録媒体層150のパターンは、光学フィルタ130の背面側に隠蔽される。
【0070】
図7Bに、光学フィルタ130の表面および周辺100Pの表面にタイル調の模様の意匠が付加されている例を示す。この例の意匠は、図柄を含むタイル調の模様であり、複数枚の加飾フィルムを、光学フィルタ130の表面および周辺100Pの表面を含む平面または曲面に並べて配置することによって実現され得る。このため、各フィルムの繋ぎ目として物理的なフィルムの境界が存在する。タイル調の意匠は、
図7Bに示す同一形状を規則的に並べて構成される模様だけでなく、異なる形状を境界の幅が一定ではない状態で不規則に並べて構成される模様も含む。光学フィルタ130は、境界に配置されてもよいし、境界を跨ぐように配置されてもよい。検出装置100に含まれる赤外光源110および赤外センサ120または光学積層体200に含まれる記録媒体層150のパターンは、光学フィルタ130の背面側に隠蔽される。
図7Bに示す例において、星型形状を規則的に並べて構成される模様内の境界を跨ぐように光学フィルタ130が配置されている。
【0071】
図7Cに、光学フィルタ130の表面および周辺100Pの表面にタイル調の模様の意匠が付加されている他の例を示す。この例の意匠は、色相が同じで彩度が異なる色の組み合わせを含むタイル調の色彩であり、複数枚の加飾フィルムを、光学フィルタ130の表面および周辺100Pの表面を含む平面または曲面に並べて配置することによって実現され得る。このため、各フィルムの繋ぎ目として物理的なフィルムの境界が存在する。この意匠は、視認される境界100Bによって分割された複数の領域100Rを含む。光学フィルタ130は、複数の領域100Rのうちの1つの領域に配置される。検出装置100に含まれる赤外光源110および赤外センサ120または光学積層体200に含まれる記録媒体層150のパターンは、光学フィルタ130の背面側に隠蔽される。検出装置100または光学積層体200が複数個ある場合、複数の光学フィルタ130は、それぞれ、複数の領域100Rのうちの異なる領域に配置される。複数の領域100Rのそれぞれは、任意の色彩または模様を有し得る。
【0072】
図7Dに、光学フィルタ130の表面および周辺100Pの表面にタイル調の模様の意匠が付加されているさらなる他の例を示す。この意匠は、視認される境界100Bによって分割された複数の領域100Rを含み、複数の領域100Rのそれぞれは、任意の模様を有する。光学フィルタ130は、複数の領域100Rのうちの1つの領域に配置される。検出装置100に含まれる赤外光源110および赤外センサ120または光学積層体200に含まれる記録媒体層150のパターンは、光学フィルタ130の背面側に隠蔽される。
【0073】
以上のようにして、検出装置100または光学積層体200が配置される周辺部分の色と、検出装置100または光学積層体200に含まれる光学フィルタ130の表面の色とを区別できないほどに調和させることができる。検出装置100または光学積層体200が配置される箇所の周辺の表面の色を周辺色といい、光学フィルタ130の表面の色をフィルタ色というとき、周辺色およびフィルタ色はいずれも黒ではなく、SCE方式で測定したときの、周辺色とフィルタ色との色差が、3以下である。ここで、色差が3以下であるとは、L*a*b*表色系における周辺の表面のa*値、b*値をそれぞれa1
*、b1
*とし、L*a*b*表色系における光学フィルタ130の表面のa*値、b*値をそれぞれa2
*、b2
*とすると、数1の数式の条件を満足する場合を意味する。
[数1]
|a1
*-a2
*|≦3、かつ、|b1
*-b2
*|≦3
L*a*b*表色系の例はCIE1976L*a*b*表色系である。周辺色とフィルタ色との調和性を高める観点から、色差は1.5以下であることが好ましく、0.4以下であることがより好ましい。色差が3以下であれば、周辺色とフィルタ色とを区別できないほどに調和させることができ、優れた意匠性が発揮される。
【0074】
(実施例)
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。ここでは、比較例および実施例の光学フィルタをBRDF(双方向反射率分布関数)およびBTDF(双方向透過率分布関数)によって評価する。最初に、BRDFおよびBTDFの測定方法を説明する。次に、比較例および実施例の光学フィルタについて、可視光および赤外線に対するBRDFおよびBTDFを測定した結果を説明する。
【0075】
[BRDFおよびBTDFの測定方法]
図8Aおよび
図8Bを参照して、BRDFおよびBTDFの測定方法をそれぞれ説明する。BRDFは、物体を光で照射して生じる反射散乱光の強度の、反射角度についての関数である。BTDFは、物体を光で照射して生じる透過散乱光の強度の、透過角度についての関数である。RDFおよびBTDFの測定には、ゴニオフォトメータ(ニッカ電測製、型番:GP-4)が用いられた。
【0076】
図8Aに、BRDFの測定方法を説明するための模式的な断面図を示す。
図8Aに示す例では、光源80およびセンサ90が光学フィルタ130の第1主面132側に配置される。光源80から出射された光で光学フィルタ130の第1主面132が垂直に照射され、照射によって生じた反射散乱光がセンサ90によって検出される。反射散乱光の検出は、センサ90を-30°以上30°以下の角度の範囲で1°刻みで動かしながら行われる。この角度は、第1主面132の法線と、センサ90に含まれるレンズの光軸とがなす角度である。センサ90が光源80に重なる場合、反射散乱光は検出されない。以下の実施例および比較例において、-5°以上5°以下の角度におけるBRDFは測定されていない。
【0077】
図8Bに、BTDFの測定方法を説明するための模式的な断面図を示す。
図8Bに示す例では、光源80が光学フィルタ130の第2主面134側に配置され、センサ90が光学フィルタ130の第1主面132側に配置される。光源80から出射された光で光学フィルタ130の第2主面134が垂直に照射され、照射によって生じた透過散乱光がセンサ90によって検出される。透過散乱光の検出は、センサ90を-30°以上30°以下の角度の範囲で1°刻みで動かしながら行われる。
【0078】
[比較例および実施例の光学フィルタの構造]
最初に、比較例1~4の構造を説明する。
【0079】
比較例1の光学フィルタは、ガラスから形成された厚さが3mmの基材層と、基材層上に配置された厚さが1mmの以下の光学層とを備える。当該光学層は、上記国際出願の実施例6(シリカ平均粒径221μm、シリカ含有率:40質量%)の光学フィルタに相当する。
【0080】
比較例2の光学フィルタは、厚さが0.2mmのナフロン製のフィルム(アズワン製、型番:ナフロンテープ)である。
【0081】
比較例3の光学フィルタは、厚さが0.2mmのフッ素樹脂製のフィルム(日東電工製、型番:ニトフロン)である。
【0082】
比較例4の光学フィルタは、厚さが0.5mmの黒色フィルム(日東樹脂製、型番:CLAREX)である。
【0083】
次に、実施例1~6の光学フィルタの構造を説明する。実施例1および2の光学フィルタは、
図3Aに示す光学フィルタ130に相当する。実施例3~6の光学フィルタは、
図3Bに示す光学フィルタ130に相当する。
【0084】
実施例1の光学フィルタは、比較例1の光学フィルタに含まれる基材層および光学層に加えて、光学層上に配置された厚さが60μmのアンチグレア層(株式会社ダイセル製、型番:PEN60)を備える。
【0085】
実施例2の光学フィルタは、比較例1の光学フィルタに含まれる基材層および光学層に加えて、光学層上に配置された以下の層を備える。当該層は、ヘイズ値が80%に調整された粘着剤(日東電工製)から形成された厚さが30μmの層である。
【0086】
実施例3~6の光学フィルタは、比較例1の光学フィルタとは異なり、光学層に散乱面を有する。実施例3~6の光学フィルタの散乱面は、それぞれ、比較例1の光学フィルタに含まれる光学層の表面に、以下の表1に示す表面粗さの凹凸形状を形成することによって実現される。
【0087】
図9Aおよび
図9Bに、それぞれ、実施例3および6の光学フィルタの断面TEM像を示す。
図9Aおよび
図9Bに示すように、レンズ拡散板の拡散角が大きくなるほど、散乱面は粗くなる。
【0088】
比較例1ならびに実施例3および6の光学フィルタにおける散乱面の算術平均粗さRaおよび最大高さRzは、表1の通りである。算術平均粗さRaおよび最大高さRzの測定には、レーザー顕微鏡VK-X1000(キーエンス社製)を用いた。算術平均粗さRaおよび最大高さRzは、2800μm四方における1000×1000点を5倍の倍率で計測した結果に基づいて算出された。
【0089】
【0090】
比較例1の光学フィルタにおける表面の算術平均粗さRaは0.3μm以下であり、最大高さRzは14μm以下である。これに対して、実施例3および6の光学フィルタにおける散乱面の算術平均粗さRaは1μm以上であり、最大高さRzは15μm以上である。このように、実施例3および6の光学フィルタにおける散乱面は、比較例1の光学フィルタにおける表面よりも粗い。
【0091】
比較例1~4の光学フィルタおよび実施例1~6の光学フィルタの赤外線に対するヘイズ値は、表2の通りである。ここで、赤外線に対するヘイズ値は、波長が800nm以上2000nm以下の範囲におけるヘイズ値の平均値である。
【0092】
【0093】
比較例1~4の光学フィルタのヘイズ値は45%以下である。これに対して、実施例1~6の光学フィルタのヘイズ値は40%以上である。実施例1および3~6の光学フィルタのヘイズ値は60%以上である。実施例3~6の光学フィルタのヘイズ値は80%以上である。散乱層を備える実施例1および2の光学フィルタのヘイズ値は、散乱面を有する実施例3~6の光学フィルタのヘイズ値よりも小さいものの、散乱層を備えない比較例1の光学フィルタのヘイズ値よりも十分に大きい。
【0094】
[比較例および実施例の光学フィルタのBRDFおよびBTDF]
以下に、可視光および赤外線に対する比較例および実施例の光学フィルタのBRDFおよびBTDFを説明する。可視光として波長550nmの光を扱い、赤外線として波長850nmの光を扱う。ただし、光学フィルタに入射する可視光および赤外線の波長は、これら波長に限定されない。BTDFは対数表示される。可視光および赤外線が入射角0°で入射する場合におけるBRDFおよびBTDFは、角度0°を基準として左右対称である。なお、測定誤差により、測定されるBRDFおよびBTDFは、角度0°を基準として左右対称にならないこともある。
【0095】
まず、
図10Aから
図10Dを参照して、比較例1~4の光学フィルタのBRDFおよびBTDFを説明する。
【0096】
図10Aおよび
図10Bに、それぞれ、波長550nmmの可視光が入射角0°で入射する場合における比較例1~4の光学フィルタのBRDFおよびBTDFを示す。
図10Aに示すように、比較例1~3の光学フィルタのBRDFは、-30°以上-5°以下および5°以上30°以下の角度において0.1[1/sr]以上である。比較例4の光学フィルタのBRDFは、-30°以上-5°以下および5°以上30°以下の角度においてほぼゼロである。比較例4の光学フィルタは黒色フィルムであり、可視光を吸収するからである。
図10Bに示すように、比較例1の光学フィルタのBTDFは角度0°付近において150[1/sr]以上になる。言い換えれば、比較例1の光学フィルタは、可視光に対して高い直線透過率を示す。これに対して、比較例2および3の光学フィルタのBTDFは-30°以上30°以下の角度において3[1/sr]以下であり、比較例4の光学フィルタのBTDFは-30°以上30°以下の角度において0.2[1/sr]以下である。したがって、比較例1~3の光学フィルタは可視光を効果的に後方散乱し、比較例2および3の光学フィルタは可視光の透過を効果的に低減する。比較例4の光学フィルタは、可視光を効果的に吸収する。
【0097】
波長550nmmの可視光に対する比較例1~3の光学フィルタのBRDFのより詳細な振る舞いは以下の通りである。比較例1および3の光学フィルタのBRDFは、-30°以上-5°以下および5°以上30°以下の角度においてほぼ一定であり、0.1[1/sr]以上である。比較例2の光学フィルタのBRDFは、角度が-5°から-30°に近づくにつれて、また5°から30°に近づくにつれて単調減少するが、0.1[1/sr]以上である。
【0098】
図10Cおよび
図10Dに、それぞれ、波長850nmmの赤外線が入射角0°で入射する場合における比較例1~4の光学フィルタのBRDFおよびBTDFを示す。
図10Cに示すように、比較例1~4の光学フィルタのBRDFは、-30°以上-5°以下および5°以上30°以下の角度において0.1[1/sr]以下である。
図10Dに示すように、比較例1~4の光学フィルタのBTDFは角度0°付近において、100[1/sr]以上の高い値を示す。言い換えれば、比較例1~4の光学フィルタは赤外線に対して高い直線透過を示す。比較例1~4の光学フィルタのBTDFの対数表示は角度が0°から±30°に近づくにつれて単調減少する。比較例1~4の光学フィルタのBTDFの対数表示は、-30°以上0°より小さい角度、および0°より大きく30°以下の角度において下に凸に変化する。このように、比較例1~4のBTDFの対数表示はランバーシアン分布を示す。したがって、比較例1~4の光学フィルタは、赤外線の反射を効果的に低減し、赤外線を効果的に直線透過させる。
【0099】
波長850nmmの赤外線に対する比較例1~4の光学フィルタのBTDFのより詳細な振る舞いは以下の通りである。比較例1および4の光学フィルタのBTDFはほぼ同じある。比較例1および4の光学フィルタのBTDFの対数表示は角度が0°から±30°に近づくにつれて下に凸に単調減少し、BTDFは0.01[1/sr]に近づく。それに対して、比較例2および3の光学フィルタのBTDFの対数表示は、角度0°から±30°に近づくにつれて下に凸に単調減少するが、BTDFは0.1[1/sr]以上である。
【0100】
比較例1~4の光学フィルタのBTDFは(-1°の値)/(-10°の値)および(1°の値)/(10°の値)によって規定することができる。(-1°の値)/(-10°の値)および(1°の値)/(10°の値)の値が大きいほど、赤外線の直線透過率は高くなる。―1°におけるBTDFの値をA値とし、―10°におけるBTDFの値をB値とし、1°におけるBTDFの値をC値とし、10°におけるBTDFの値をD値とする場合、比較例1~4の光学フィルタのBTDFにおけるA値、B値、C値、D値、A値/B値、およびC値/D値は、表3の通りである。A値/B値は(-1°の値)/(-10°の値)に相当し、C値/D値は(1°の値)/(10°の値)に相当する。
【0101】
【0102】
比較例1~4の光学フィルタのBTDFにおいて、(-1°の値)/(-10°の値)および(1°の値)/(10°の値)は30よりも大きい。各比較例の光学フィルタについては以下の通りである。比較例3の光学フィルタのBTDFにおいて、(-1°の値)/(-10°の値)および(1°の値)/(10°の値)は30よりも大きい。比較例2の光学フィルタのBTDFにおいて、(-1°の値)/(-10°の値)および(1°の値)/(10°の値)は40よりも大きい。比較例1および4の光学フィルタのBTDFにおいて、(-1°の値)/(-10°の値)および(1°の値)/(10°の値)は500よりも大きい。
【0103】
上記のことから、比較例1~3の光学フィルタは、可視光を効果的に後方散乱し、赤外線を効果的に直線透過させる。比較例4の光学フィルタは、可視光を効果的に吸収し、赤外線を効果的に直線透過させる。
【0104】
次に、
図11Aから
図11Dを参照して、実施例1および2の光学フィルタのBRDFおよびBTDFを説明する。
【0105】
図11Aおよび
図11Bに、それぞれ、波長550nmmの可視光が入射角0°で入射する場合における実施例1および2の光学フィルタのBRDFおよびBTDFを示す。
図11Aに示すように、実施例1および2の光学フィルタのBRDFは、-30°以上-5°以下および5°以上30°以下の角度において0.1[1/sr]以上である。
図11Bに示すように、実施例1および2の光学フィルタのBTDFは、-30°以上30°以下の角度において、12[1/sr]以下である。したがって、実施例1および2の光学フィルタは、可視光を効果的に後方散乱し、可視光の透過を効果的に低減する。
【0106】
波長550nmmの可視光に対する実施例1および2の光学フィルタのBRDFのより詳細な振る舞いは以下の通りである。散乱層を備える実施例1および2の光学フィルタのBRDFは、散乱層を備えない比較例1の光学フィルタのBRDFよりも、-10°以上-5°以下および5°以上10°以下の角度において大きくなる。このことから、実施例1および2の光学フィルタに含まれる散乱層は可視光の後方散乱を増加させることがわかる。
【0107】
図11Cおよび
図11Dに、それぞれ、波長850nmmの赤外線が入射角0°で入射する場合における実施例1および2の光学フィルタのBRDFおよびBTDFを示す。
図11Cに示すように、実施例1および2の光学フィルタのBRDFは、-30°以上-5°以下および5°以上30°以下の角度において0.1[1/sr]以下であり、より具体的には-30°以上-15°以下および15°以上30°以下の角度において0.35[1/sr]以下である。
図11Dに示すように、実施例2の光学フィルタのBTDFは角度0°付近において、100[1/sr]以上の高い値を示すが、実施例1の光学フィルタのBTDFは、角度0°付近のー5°以上5°以下の角度において50[1/sr]以下であり、より具体的には30[1/sr]以下である。実施例1および2の光学フィルタのBTDFの対数表示は角度が0°から±30°に近づくにつれて単調減少する。実施例1および2の光学フィルタのBTDFの対数表示は、-30°以上-2°以下の角度、および2°以下の30°以下の角度において上に凸に変化する部分を有する。各実施例の光学フィルタについては以下の通りである。実施例1の光学フィルタのBTDFの対数表示は、-10°以上-2°以下の角度、および2°以下の10°以下の角度において上に凸に変化する部分を有する。実施例2の光学フィルタのBTDFの対数表示は、-15°以上-5°以下の角度、および5°以下の15°以下の角度において上に凸に変化する部分を有する。このように、実施例1および2のBTDFの対数表示は非ランバーシアン分布を示す。上に凸に変化する部分は、前方散乱が増えることを意味する。したがって、実施例1および2の光学フィルタは、赤外線の反射を効果的に低減し、赤外線を効果的に前方散乱する。
【0108】
波長850nmmの赤外線に対する実施例1および2の光学フィルタのBTDFのより詳細な振る舞いは以下の通りである。散乱層を備える実施例1および2の光学フィルタのBTDFは、散乱層を備えない比較例1の光学フィルタのBTDFよりも、-30°以上-2°小さい角度、および2°より大きく30°以下の角度において大きくなる。このことから、実施例1および2の光学フィルタに含まれる散乱層は赤外線の前方散乱を増加させることがわかる。
【0109】
赤外線を前方散乱させる実施例1および2の光学フィルタのBTDFは、(-1°の値)/(-10°の値)および(1°の値)/(10°の値)によって規定することができる。(-1°の値)/(-10°の値)および(1°の値)/(10°の値)の値が小さいほど、赤外線の前方散乱は増加する。実施例1および2の光学フィルタのBTDFにおけるA値、B値、C値、D値、A値/B値、およびC値/D値は、表4の通りである。
【0110】
【0111】
実施例1および2の光学フィルタのBTDFにおいて、(-1°の値)/(-10°の値)および(1°の値)/(10°の値)は20以下である。各実施例の光学フィルタについては以下の通りである。実施例1の光学フィルタのBTDFにおいて、(-1°の値)/(-10°の値)および(1°の値)/(10°の値)は20以下であり、より具体的には16以下である。実施例2の光学フィルタのBTDFにおいて、(-1°の値)/(-10°の値)および(1°の値)/(10°の値)は10以下であり、より具体的には8以下である。実施例1および2の光学フィルタのBTDFにおける(-1°の値)/(-10°の値)および(1°の値)/(10°の値)は、比較例1~4の光学フィルタのBTDFにおける(-1°の値)/(-10°の値)および(1°の値)/(10°の値)よりも小さい。
【0112】
上記のことから、実施例1および2の光学フィルタは、可視光を効果的に後方散乱し、赤外線を効果的に前方散乱させる。
【0113】
次に、
図12Aから
図12Dを参照して、実施例3~6の光学フィルタのBRDFおよびBTDFを説明する。
【0114】
図12Aおよび
図12Bに、それぞれ、波長550nmmの可視光が入射角0°で入射する場合における実施例3~6の光学フィルタのBRDFおよびBTDFを示す。
図12Aに示すように、実施例3~6の光学フィルタのBRDFはほぼ同じであり、-30°以上-5°以下および5°以上30°以下の角度において0.1[1/sr]以上である。
図12Bに示すように、実施例3~6の光学フィルタのBTDFは、-30°以上30°以下の角度において、2[1/sr]以下である。したがって、実施例3~6の光学フィルタは、可視光を効果的に後方散乱し、可視光の透過を効果的に低減する。
【0115】
波長550nmmの可視光に対する実施例3~6の光学フィルタのBRDFのより詳細な振る舞いは以下の通りである。光学層に散乱面を有する実施例3~6の光学フィルタのBRDFは、光学層に散乱面を有しない比較例1の光学フィルタのBRDFとほぼ同じである。このことから、実施例3~6の光学フィルタに含まれる光学層の散乱面は、可視光の後方散乱にほとんど影響を及ぼさないことがわかる。
【0116】
図12Cおよび
図12Dに、それぞれ、波長850nmmの赤外線が入射角0°で入射する場合における実施例3~6の光学フィルタのBRDFおよびBTDFを示す。
図12Cに示すように、実施例3~6の光学フィルタのBRDFは、-30°以上-5°以下および5°以上30°以下の角度において0.1[1/sr]以下である。
図12Dに示すように、実施例3~6の光学フィルタのBTDFは、角度0°付近のー5°以上5°以下の角度において、10[1/sr]以下である。実施例3~6の光学フィルタのBTDFの対数表示は角度が0°から±30°に近づくにつれて単調減少する。実施例3~6の光学フィルタのBTDFの対数表示は、-30°以上-2°以下の角度、および2°以下の30°以下の角度において上に凸に変化する部分を有する。このように、実施例3~6のBTDFの対数表示は非ランバーシアン分布を示す。上述したように、上に凸に変化する部分は、前方散乱が増えることを意味する。したがって、実施例3~6の光学フィルタは、赤外線の反射を効果的に低減し、赤外線を効果的に前方散乱する。
【0117】
波長850nmmの赤外線に対する実施例3~6の光学フィルタのBTDFのより詳細な振る舞いは以下の通りである。光学層に散乱面を有する実施例3~6の光学フィルタのBTDFは、光学層に散乱面を有しない比較例1の光学フィルタのBTDFよりも、-30°以上-2°小さい角度、および2°より大きく30°以下の角度において大きくなる。角度0°付近におけるBTDFは、レンズ拡散板の拡散角が大きいほど減少する。このことから、実施例3~6の光学フィルタに含まれる光学層の散乱面は赤外線の前方散乱を増加させることがわかる。
【0118】
赤外線を前方散乱させる実施例3~6の光学フィルタのBTDFは、実施例1および2の光学フィルタのBTDFと同様に、(-1°の値)/(-10°の値)および(1°の値)/(10°の値)によって規定することができる。実施例3~6の光学フィルタのBTDFにおけるA値、B値、C値、D値、A値/B値、およびC値/D値は、表5の通りである。
【0119】
【0120】
実施例3~6の光学フィルタのBTDFにおいて、(-1°の値)/(-10°の値)および(1°の値)/(10°の値)は5以下であり、より具体的には2以下である。実施例3~6の光学フィルタのBTDFにおける(-1°の値)/(-10°の値)および(1°の値)/(10°の値)は、比較例1~4の光学フィルタのBTDFにおける(-1°の値)/(-10°の値)および(1°の値)/(10°の値)よりも十分小さい。
【0121】
上記のことから、実施例3~6の光学フィルタは、可視光を効果的に後方散乱し、赤外線を効果的に前方散乱させる。
【0122】
可視光および赤外線に対する実施例1~6の光学フィルタのBRDFおよびBTDFからわかった結果をまとめると以下のようになる。
【0123】
実施例1~6の光学フィルタについて、波長550nmmの可視光が入射角0°で入射する場合のBRDF(双方向反射率分布関数)は、-30°以上-5°以下および5°以上30°の角度において0.1[1/sr]以上である。したがって、実施例1~6の光学フィルタは、可視光を効果的に後方散乱することができる。その結果、可視光の吸収による発熱を低減することが可能になる。
【0124】
実施例1~6の光学フィルタについて、波長850nmmの赤外線が入射角0°で入射する場合のBTDFの対数表示は、-30°以上-2°以下および2°以上30°の角度において上に凸に変化する部分を有する。したがって、実施例1~6の光学フィルタは、赤外線を効果的に前方散乱させることができる。その結果、物体を赤外線で検出する際のぎらつきを低減することが可能になる。
【0125】
波長850nmmの赤外線が入射角0°で入射する場合の実施例1~6の光学フィルタのBTDFにおいて、(-1°の値)/(-10°の値)および(1°の値)/(10°の値)は20以下である。各実施例の光学フィルタについては以下の通りである。実施例1の光学フィルタのBTDFにおいて、(-1°の値)/(-10°の値)および(1°の値)/(10°の値)は20以下である。実施例2の光学フィルタのBTDFにおいて、(-1°の値)/(-10°の値)および(1°の値)/(10°の値)は10以下である。実施例3~6の光学フィルタのBTDFにおいて、(-1°の値)/(-10°の値)および(1°の値)/(10°の値)は5以下である。
【0126】
波長850nmmの赤外線が入射角0°で入射する場合の比較例1~4の光学フィルタのBTDFにおいて、(-1°の値)/(-10°の値)および(1°の値)/(10°の値)は30よりも大きい。したがって、波長850nmmの赤外線が入射角0°で入射する場合の光学フィルタのBTDFにおいて、(-1°の値)/(-10°の値)および(1°の値)/(10°の値)が30以下である場合、当該光学フィルタは、比較例1~4の光学フィルタよりも、赤外線を効果的に前方散乱させることができる。(-1°の値)/(-10°の値)および(1°の値)/(10°の値)が25以下である場合、当該光学フィルタは、赤外線をより効果的に前方散乱させることができる。(-1°の値)/(-10°の値)および(1°の値)/(10°の値)が20以下である場合、当該光学フィルタは、赤外線をさらに効果的に前方散乱させることができる。
【0127】
実施例1および3~6の光学フィルタについて、波長850nmmの赤外線が入射角0°で入射する場合のBTDFは、-5°以上5°以下の角度において50[1/sr]以下である。特に、実施例3~6の光学フィルタについて、波長850nmmの赤外線が入射角0°で入射する場合のBTDFは、-5°以上5°以下の角度において10[1/sr]以下である。したがって、実施例1および3~6の光学フィルタは、赤外線の直線透過をより効果的に低減でき、その結果、物体を赤外線で検出する際のぎらつきをより効果的に低減することが可能になる。特に実施例3~6の光学フィルタは、赤外線の直線透過をさらに効果的に低減でき、その結果、物体を赤外線で検出する際のぎらつきをさらに効果的に低減することが可能になる。
【0128】
[比較例および実施例の光学フィルタの可視光に対する直線透過率および拡散透過率]
比較例1~4の光学フィルタおよび実施例の1~6光学フィルタの可視光に対する直線透過率、拡散透過率および全透過率は、以下の表6に示す通りである。ここで、可視光に対する直線透過率、拡散透過率および全透過率は、それぞれ、波長380nm以上780nm以下における直線透過率、拡散透過率および全透過率の平均値である。
【0129】
【0130】
直線透過率は以下のようにして評価した。直線透過率は、光学積層体を積分球の開口部から一定の距離(例えば20cm)離して配置した状態で測定した透過率である。分光器として、紫外可視近赤外分光光度計UH4150(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いた。拡散透過率は以下のようにして評価した。拡散透過率は、全光線透過率と直線透過率の差によって得られた。全光線透過率は、光学積層体を積分球の開口部に配置した状態で測定した透過率である。
【0131】
表6に示すように、比較例1の光学フィルタの直線透過率は15%以上である。これに対して、比較例2~4および実施例1~4の光学フィルタの直線透過率は10%以下である。比較例1~4および実施例1~4の光学フィルタの拡散透過率は51%以下である。比較例1~4および実施例1~4の光学フィルタの全透過率は、54%以下である。
【0132】
このことから、比較例2~4および実施例1~4の光学フィルタは、10%以下の直線透過率を有するので、可視光の直線透過を効果的に低減することがわかる。比較例1~3および実施例1~4の光学フィルタは、54%以下の全透過率を有するので、可視光をそれほど効果的に透過しないことがわかる。
【0133】
[比較例および実施例の光学フィルタの赤外線に対する直線透過率および拡散透過率]
比較例1~4の光学フィルタおよび実施例の1~6光学フィルタの赤外線に対する直線透過率、拡散透過率および全透過率は、以下の表7に示す通りである。ここで、赤外線に対する直線透過率、拡散透過率および全透過率は、それぞれ、波長800nm以上2000nm以下の範囲における直線透過率、拡散透過率および全透過率の平均値である。
【0134】
【0135】
表7に示すように、比較例1~4の光学フィルタの直線透過率は40%以上である。これに対して、実施例1および3~6の光学フィルタは35%以下の直線透過率を有する。実施例3~6の光学フィルタは、15%以下、より具体的には11%以下の直線透過率を有する。このことからも、実施例1および3~6の光学フィルタは、比較例1~4の光学フィルタと比較して、赤外線の直線透過を効果的に低減できることがわかる。特に、実施例3~6の光学フィルタは、赤外線の直線透過をより効果的に低減できることがわかる。
【0136】
表7に示すように、比較例1~4の光学フィルタの拡散透過率は35%未満である。特に、比較例1および4の光学フィルタの拡散透過率は、5%以下である。これに対して、実施例1~6の光学フィルタは、35%以上の拡散透過率を有する。実施例1および3~6の光学フィルタは、53%以上の拡散透過率を有する。特に、実施例3~6の光学フィルタは、70%以上の拡散透過率を有する。散乱層を備える実施例1および2の光学フィルタは、散乱面を有する実施例3~6の光学フィルタと比較して、低い拡散透過率を有するものの、散乱層を備えない比較例1の光学フィルタと比較して、高い拡散透過率を有する。このことからも、実施例1~6の光学フィルタは、比較例1~4の光学フィルタと比較して、赤外線の前方散乱を効果的に増加できることがわかる。特に、実施例3~6の光学フィルタは、赤外線の前方散乱をより効果的に増加できることがわかる。
【0137】
なお、表7に示すように、比較例1~4および実施例1~6の光学フィルタの全透過率は75%以上である。したがって、直線透過率および拡散透過率を含めると、比較例1~4および実施例1~6の光学フィルタは、赤外線を効果的に透過することがわかる。
【符号の説明】
【0138】
10:物体 12:マトリクス 14:微粒子 100:検出装置 100B:境界 100P:周辺 100R:領域 110:赤外光源 120:赤外センサ 130:光学フィルタ 130A:光学層 130B:散乱層 130C:基材層 130D:光学層 130E:意匠層 130F:表面保護層 132:第1主面 132D:散乱面 134:第2主面 140:筐体 142:開口 150:記録媒体層 200:光学積層体